説明

高周波融着用のポリウレタン発泡体及びそれを用いた吸音部材

【課題】高周波融着により短時間で接着でき、優れた接着強度を発揮できると共に、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を維持することができる高周波融着用のポリウレタン発泡体及びそのポリウレタン発泡体を高周波融着により熱可塑性樹脂基材に接着してなる吸音部材を提供する。
【解決手段】高周波融着可能なポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び補助発泡剤を含有する原料を反応及び発泡させて得られる。この場合、ポリオール類100質量部当たり、発泡剤として水の含有量が3.5〜5.0質量部、補助発泡剤として液化炭酸ガスの含有量が2.3〜6.0質量部、融点が60〜170℃である熱可塑性樹脂の粉体が1〜30質量部含まれる。そして、発泡体の見掛け密度が12〜25kg/m、電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が0.3秒以上、1.0秒未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波振動により熱可塑性樹脂基材に容易に接着され、例えば自動車の車体パネルの内装トリムなどの材料として用いられる高周波融着用のポリウレタン発泡体及びそれを用いた吸音部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体パネルの内装トリムの裏面には、吸音部材が接着剤により接着固定されており、係る吸音部材によって車外の騒音が車室内に伝播するのを防止し、車室内の静粛性を高めるように構成されている。この内装トリムとしては、所望とする曲面形状に成形できる点から、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂の射出成形体又はモールドプレス成形体が使用され、吸音部材としてはフェルト、不織布などの繊維質マットが使用されている。
【0003】
係る繊維質マットを樹脂成形品に固定する場合、樹脂成形品の対向面に繊維質マットを添装し、所定スポット毎に超音波ホーンによる溶着加工を施し、繊維質マットを樹脂成形品に固定する繊維質マットの固定構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この固定構造によれば、超音波ホーンを用いて溶着加工を行うことから、作業性が良く、外観を良好に維持することができるが、吸音材として繊維質マットを用いているため、軽量化による燃費低減を果たすことができなかった。そのため、より軽量な吸音材を用いた内装トリムが求められている。
【0004】
一方、自動車のシート用クッション材などを形成する軟質な材料として、軟質ポリウレタン発泡体が知られている。すなわち、軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類及びポリイソシアネート化合物を、触媒、発泡剤及び補助発泡剤の存在下に反応させて得られ、イソシアネートインデックスが110〜120、補助発泡剤が液化炭酸ガスであり、かつ25%圧縮時の荷重が30〜70Nのものである(例えば、特許文献2を参照)。さらに、合成皮革用に有用な高周波融着性に優れたポリウレタン樹脂の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。すなわち、特定のポリオキシアルキレングリコールとアルキレンジオールとジオールとを有機ジイソシアネートと反応させる方法である。
【特許文献1】特開2006−142705号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献2】特開2006−131755号公報(第2頁及び第9頁)
【特許文献3】特開平7−3149869号公報(第2頁及び第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなポリウレタン発泡体は熱硬化性樹脂であることから、ポリウレタン発泡体そのものを溶融してその溶融物により融着を行うことは難しい。このため、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂とを超音波融着によって接着しようとしても十分な接着強度を得ることができなかった。一方、特許文献3に記載のポリウレタン樹脂は高周波融着性を向上させるために、ポリオール類として3種類の特定のポリオキシアルキレングリコール、アルキレンジオール及びジオールを使用しているが、被着体の種類、接着条件などによって接着性が変化するため、その都度ポリオール類の組成を検討しなければならず、煩雑であった。従って、ポリウレタン発泡体とその他の熱可塑性樹脂との接着を高周波融着により簡便に、しかも優れた接着強度を発現でき、成形加工が可能なポリウレタン発泡体が求められている。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、高周波融着により短時間で接着でき、優れた接着強度を発揮することができると共に、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を維持することができる高周波融着用のポリウレタン発泡体及びそのポリウレタン発泡体を高周波融着により熱可塑性樹脂基材に接着してなる吸音部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る高周波融着用のポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び補助発泡剤を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなり、高周波融着可能なものである。この場合、発泡剤は水であってその含有量がポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部であり、補助発泡剤は液化炭酸ガスであってその含有量がポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部であると共に、ポリウレタン発泡体の原料には、融点が60〜170℃である熱可塑性樹脂の粉体がポリオール類100質量部当たり1〜30質量部含まれ、かつポリウレタン発泡体の見掛け密度が12〜25kg/mであることを特徴とする。
【0008】
請求項2の高周波融着用のポリウレタン発泡体は、請求項1に係る発明において、前記熱可塑性樹脂に対して電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が0.3秒以上、1.0秒未満であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の高周波融着用のポリウレタン発泡体は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記原料に含まれる化合物の活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したイソシアネート指数が80〜110であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の高周波融着用のポリウレタン発泡体は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記ポリオール類はポリエーテルポリオールであることを特徴とする。
【0011】
請求項5の吸音部材は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に積層し、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合面が高周波融着されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係る高周波融着用のポリウレタン発泡体においては、発泡剤として水をポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部用いると共に、補助発泡剤として液化炭酸ガスをポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部併用して発泡が行われる。この発泡は、水と液化炭酸ガスにより十分に促進され、かつ調整される。そのため、発泡体の見掛け密度が12〜25kg/mという低密度のポリウレタン発泡体が得られる。さらに、ポリウレタン発泡体の原料には、融点が60〜170℃である熱可塑性樹脂の粉体がポリオール類100質量部当たり1〜30質量部含まれている。
【0013】
このため、高周波融着時には、熱可塑性樹脂の粉体が溶融して接着に寄与し、低密度のポリウレタン発泡体も溶融して接着が促進される。従って、熱可塑性樹脂基材に対するポリウレタン発泡体の接着は、高周波融着により短時間で行われ、優れた接着強度を発揮することができる。加えて、前記低密度の熱可塑性樹脂はポリウレタン発泡体の機械的物性に大きな支障を与えないため、ポリウレタン発泡体は圧縮残留ひずみ等の機械的物性を良好に維持することができる。
【0014】
請求項2の高周波融着用のポリウレタン発泡体では、熱可塑性樹脂に対して電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が0.3秒以上、1.0秒未満であることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、高周波融着により一層短時間で接着を行うことができる。
【0015】
請求項3の高周波融着用のポリウレタン発泡体では、イソシアネート指数が80〜110であることから、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を一層向上させることができる。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、ポリウレタン発泡体の成形加工性を向上させることができ、容易に吸音部材を製造することができる。
【0016】
請求項4の高周波融着用のポリウレタン発泡体では、ポリオール類がポリエーテルポリオールであることから、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、ポリウレタン発泡体中のセルの連通性が良くなり、吸音性を向上させることができる。
【0017】
請求項5の吸音部材では、上記高周波融着用のポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に積層し、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合面が高周波融着されて構成されている。このため、高周波融着により短時間で接着でき、優れた接着強度を発揮することができると共に、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における高周波融着用のポリウレタン発泡体(以下、ポリウレタン発泡体又は単に発泡体ともいう)は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び補助発泡剤を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させて得られ、高周波融着可能なものである。この場合、発泡剤は水であってその含有量がポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部であり、補助発泡剤は液化炭酸ガスであってその含有量がポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部に設定される。さらに、ポリウレタン発泡体の原料には、融点が60〜170℃である熱可塑性樹脂の粉体がポリオール類100質量部当たり1〜30質量部含まれる。そして、得られるポリウレタン発泡体は、JIS K 7222:1999に準拠して測定される見掛け密度が12〜25kg/mである。そして、熱可塑性樹脂基材に対して電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が例えば0.3秒以上、1.0秒未満である。
【0019】
次に、前記ポリウレタン発泡体の原料について順に説明する。
(ポリオール類)
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が用いられる。それらのうち、ポリエーテルポリオールは、発泡体に連続気泡構造を形成することができ、通気性が良く、吸音性を向上させることができる点で好ましい。さらに、ポリエーテルポリオールは、ポリイソシアネート類との反応性に優れ、ポリエステルポリオールのように加水分解をしないという利点をも有している。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、それらの変性体等が用いられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールにはポリエーテルエステルポリオールが含まれる。係るポリエーテルエステルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物と環状エーテル基を有する化合物とを反応させることにより得られる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸等の無水物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが用いられる。これらのポリオール類は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。
(ポリイソシアネート類)
前記ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。ポリイソシアネート類のイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を越えてもよいが、通常80〜130程度であり、80〜110であることが好ましい。イソシアネート指数が80未満の場合、得られる発泡体が柔らかくなり過ぎて、圧縮残留ひずみ等の機械的物性が低下する。一方、130を越える場合、発泡体の製造時に発熱が大きくなり、発泡体が着色する傾向を示す。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール類、発泡剤としての水等のもつ活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を越えるということは、ポリイソシアネート類がポリオール類等より過剰であることを意味する。
(発泡剤)
発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体とするためのもので、水が用いられる。水は、泡化反応の反応性が高く、取扱いが容易である。発泡剤が水の場合には、ポリウレタン発泡体の見掛け密度を12〜25kg/mにするため、その含有量はポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部に設定される。水の含有量が3.5質量部未満の場合、泡化反応による発泡が不足し、発泡体の見掛け密度が25kg/mを越え、高周波による接着性に欠ける。その一方、5.0質量部を越える場合には、発泡体の見掛け密度が12kg/mを下回り、発泡体の溶融が過剰となって所望の接着力が得られず、また発泡体の反応及び発泡時に温度が上昇し、発泡体内部のやけ(スコーチ)が発生しやすく、その温度を低下させることが難しくなる。
(補助発泡剤)
補助発泡剤は、発泡剤による発泡を補助し、発泡体の密度を調整するためのものである。この補助発泡剤としては、液化炭酸ガスが用いられる。液化炭酸ガスは、ポリオール類及びポリイソシアネート類に対して非反応性であり、塩化メチレン等の有機溶剤と異なり、発泡体を溶解しないため、樹脂化反応などの反応を阻害せず、反応を円滑に進行させることができる。そして、得られる発泡体の通気性を良くし、硬度を下げ、強度や圧縮残留ひずみ等の機械的物性を良好にすることができる。
【0022】
液化炭酸ガスを使用することにより、発泡体原料中で液化炭酸ガスが気化し、安定した泡が微細に分散して高粘度のソフトクリーム状に形成され(フロス効果)、その状態から泡化反応が開始されるため、セル膜が形成され難いと考えられる。従って、その状態から泡化反応により発生する炭酸ガスによって、セルが膨張し、セルの連通化が図られるものと推測される。さらに、補助発泡剤は、樹脂化反応、泡化反応などの反応に対して以下に示すような影響を及ぼす。
【0023】
ポリイソシアネート類とポリオール類との反応による樹脂化反応(ウレタン結合の生成反応)は、次の反応式(1)に基づいて進行する。
−R−NCO+R′OH → −R−NH−CO−O−R′ ・・・(1)
また、ポリイソシアネート類と水との反応による泡化反応は次の反応式(2)に従って進行する。
【0024】
−R−NCO+HO → −R−NH+CO ・・・(2)
さらに、反応式(2)で生成したアミン化合物(−R−NH)がポリイソシアネート類と反応し、ウレア(尿素)結合を生成する反応は、次の反応式(3)に従って進行する。
【0025】
−R−NCO+−R−NH → −R−NH−CO−NH−R ・・・(3)
加えて、ウレア結合がイソシアネート基と反応(ビューレット反応)し、或いはウレタン結合がイソシアネート基と反応(アロファネート反応)して架橋(硬化)が進行する。
【0026】
補助発泡剤として液化炭酸ガスを使用すると、反応式(2)において炭酸ガス(CO)の濃度が高くなるため、反応の進行が抑制され、アミン化合物(−R−NH)の生成が抑えられる。そのため、反応式(3)において左辺の反応原料が少なくなって反応の進行が規制される。ウレア結合は、ウレタン結合に比べて水素結合による凝集力が強く、その存在により発泡体の硬度が高くなるが、ウレア結合の生成が規制されることで、発泡体の硬度を下げることができる。
【0027】
補助発泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部である。補助発泡剤の含有量が2.3質量部より少ない場合には、補助発泡剤の効果が十分に発揮されず、発泡体の見掛け密度が高くなると共に、セルが連通化され難くなって硬くなる。その一方、6.0質量部より多い場合には、過剰な発泡により発泡体の見掛け密度が低くなり過ぎ、また樹脂骨格の強度が不足し、発泡体の機械的強度が低下する。液化炭酸ガスを発泡体原料に供給する場合には、例えばポリオール類に溶解させて供給される。その際には5〜7MPaの圧力及び−12〜−20℃の温度で炭酸ガスが液化状態を保持できる条件にて行われる。
(整泡剤)
整泡剤は、発泡剤によって行われる発泡を円滑に進行させるために必要に応じて用いられる。そのような整泡剤としては、軟質ポリウレタン発泡体を製造する際に通常使用されるものを用いることができる。整泡剤として具体的には、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。この整泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜3.0質量部であることが好ましい。この含有量が0.5質量部より少ない場合、発泡体原料の発泡時における整泡作用が十分に発現されず、良好な発泡体を得ることが難しくなる。一方、3.0質量部より多い場合、整泡作用が強く働き、セルの連通性が低下する傾向を示す。
(触媒)
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応、発泡剤としての水とポリイソシアネート類との泡化反応などを促進するためのものであり、具体的にはトリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物(金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。
【0028】
この触媒としては、その効果を高めるためにアミン触媒と金属触媒とを組合せて用いることが好ましい。アミン触媒の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.01〜0.5質量部であることが好ましい。アミン触媒の含有量が0.01質量部未満の場合には、ウレタン化反応及び泡化反応を十分にかつバランス良く促進させることができなくなる。その一方、0.5質量部を越える場合には、ウレタン化反応や泡化反応が過度に促進されたり、両反応のバランスを損なう結果を招くおそれがある。また、金属触媒の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.1〜0.5質量部であることが好ましい。金属触媒の含有量が0.1質量部未満の場合には、ウレタン化反応と泡化反応とのバランスを欠き、発泡を良好に行うことができなくなる。その一方、0.5質量部を越える場合には、ウレタン化反応や泡化反応が過剰に促進されるとともに、両反応のバランスが悪くなり、発泡体のひずみ特性が低下する。
(低融点の熱可塑性樹脂の粉体)
係る熱可塑性樹脂の粉体は、融点が60〜170℃の低融点のものである。そのような低融点の熱可塑性樹脂の粉体を配合することにより、ポリウレタン発泡体の高周波融着時に該粉体が溶融し、発泡体表面に存在する溶融した熱可塑性樹脂が接着に貢献できるようになっている。熱可塑性樹脂の融点が60℃未満の場合には、高周波融着時における熱可塑性樹脂の溶融が過度になって熱可塑性樹脂基材に対するポリウレタン発泡体の接着性が悪化する。その一方、融点が170℃を越える場合には、高周波融着時における熱可塑性樹脂の溶融が困難になり、熱可塑性樹脂基材に対する接着性の向上を図ることができなくなる。
【0029】
そのような低融点の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(融点80〜110℃)、ポリプロピレン樹脂(融点160℃)、ポリスチレン樹脂(融点100℃)、エチレン−アクリル酸共重合樹脂(融点105℃)等が用いられる。熱可塑性樹脂の粉体の平均粒子径は、5〜40μmであることが好ましい。この平均粒子径が5μmより小さい場合には、そのような微細な粉体の製造が難しくなり、取扱いも困難になって好ましくない。一方、40μmより大きい場合には、ポリウレタン発泡体中における熱可塑性樹脂の分散性が低下し、高周波融着時における融着時間の短縮を図ることができなくなる。
【0030】
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリオール類100質量部当たり1〜30質量部である。熱可塑性樹脂の含有量が1質量部を下回る場合、発泡体中の熱可塑性樹脂の含有量が少なく、熱可塑性樹脂の溶融による接着性の向上が見込めなくなる。一方、30質量部を上回る場合、過剰な熱可塑性樹脂によりポリウレタン発泡体の圧縮残留ひずみ等の機械的物性が低下し、ポリウレタン発泡体の成形加工性が悪くなる。
(その他の原料成分)
ポリウレタン発泡体の原料にはその他必要に応じて、架橋剤、難燃剤、充填剤、安定剤、着色剤、可塑剤等が常法に従って配合される。架橋剤としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類などが挙げられる。難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が挙げられる。
(ポリウレタン発泡体の製造)
前記ポリウレタン発泡体の原料を常法に従って反応及び発泡させることによりポリウレタン発泡体が製造される。ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法或はポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。また、常温大気圧下に反応及び発泡させるスラブ発泡法及び成形型内にポリウレタン発泡体の原料(反応混合液)を注入、型締めして型内で反応及び発泡させるモールド発泡法のいずれの方法であってもよい。
【0031】
ポリウレタン発泡体の原料の反応は複雑であり、基本的には前述した反応が主体となっている。すなわち、ポリオール類とポリイソシアネート類との付加重合によるウレタン化反応、その反応生成物等とポリイソシアネート類との架橋反応及びポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応である。
(ポリウレタン発泡体)
このようにして得られるポリウレタン発泡体は、通常軟質ポリウレタン発泡体である。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、軽量で、一般にセル(気泡)が連通する連続気泡構造を有し、柔軟性があり、かつ復元性を有するものをいう。従って、軟質ポリウレタン発泡体は、吸音性、クッション性、衝撃吸収性、高弾性、低反発弾性等の特性を発揮することができる。また、ポリウレタン発泡体は、JIS K 7222:1999に準拠して測定される見掛け密度が12〜25kg/mである。この見掛け密度が12kg/m未満の場合、発泡体が低密度になり過ぎて、発泡体に高周波振動を与えたとき、発泡体が過度に溶融し、熱可塑性樹脂基材に対する接着ができなくなる。その一方、見掛け密度が25kg/mを越える場合、発泡体の溶融が不足して熱可塑性樹脂基材に対する接着が行われなくなる。また、ポリウレタン発泡体は、JIS A 1405に準拠して測定される垂直入射吸音率が75%以上のものである。
【0032】
さらに、JIS K 6400−2:2004に規定された硬さが30〜115N、JIS K 6400−4:2004に規定された圧縮残留ひずみが1〜20%及び着色性(ΔYI)が1以下となる。特に、圧縮残留ひずみが20%を越える場合には、打ち抜き加工等の成形加工が難しくなって好ましくない。従って、係る軟質ポリウレタン発泡体を、車体パネルの内装トリム等の自動車内装部品などとして好適に利用することができる。
(高周波融着)
上述した高周波融着用のポリウレタン発泡体を用いることにより、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材とを、高周波振動を加える高周波融着によって速やかに、かつ良好に接着することができる。熱可塑性樹脂基材を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂基材を自動車部品として用いる場合には、耐久性等の点からポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合部位に高周波電圧を印加することにより、発泡体及び熱可塑性樹脂基材が振動発熱して溶融し、この溶融によりポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材とが融着されるものと考えられる。ここで、高周波融着は、超音波融着を含む概念である。
【0033】
高周波融着の条件としては、高周波電圧の周波数が通常10〜40kHz、振幅が通常60〜70μm、高周波振動を加える時間は0.3秒以上、1.0秒未満、また高周波融着時の圧力は0.1〜1MPa程度である。ここで、高周波振動を加える時間0.3秒以上、1.0秒未満は、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との融着時間を示している。融着時間が0.3秒より短い場合には、熱可塑性樹脂基材に対するポリウレタン発泡体の接着が不足し、目的とする吸音部材等の接合体を得ることができなくなる。一方、融着時間が1.0秒以上の場合には、接着速度が遅く、十分な接着強度に達するまでの時間が長く、接合体の製造効率が悪くなって不適当である。
(吸音部材)
吸音部材は、上記のポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に積層し、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合面が高周波融着されて構成されている。この場合、熱可塑性樹脂基材はその融点がポリウレタン発泡体の分解温度より低いものであることが好ましい。軟質ポリウレタン発泡体の分解温度は、例えば175℃である。一方、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂は融点160℃、ポリエチレン樹脂は融点80〜110℃、ポリスチレン樹脂は融点100℃である。熱可塑性樹脂基材はその融点がポリウレタン発泡体の分解温度より低いものであることにより、高周波融着時に熱可塑性樹脂基材が溶融しやすく、ポリウレタン発泡体との接合面における接着力を発現することができる。ポリウレタン発泡体は、前述のように高周波融着性を有しているため、高周波融着時には溶融し、熱可塑性樹脂基材との接合面における接着力を発揮することができる。
(作用)
さて、本実施形態の作用について説明すると、高周波融着用のポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び補助発泡剤を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させることにより得られる。この際、発泡剤として水をポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部、補助発泡剤として液化炭酸ガスをポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部用いることにより十分な発泡が行われ、発泡が所望の程度に調整される。そのため、得られる発泡体は、見掛け密度が12〜25kg/mという低密度に形成される。さらに、発泡体原料には、低融点の熱可塑性樹脂の粉体がポリオール類100質量部当たり1〜30質量部含まれているため、その粉体がポリウレタン発泡体中に分散される。
【0034】
このため、高周波融着によりポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に接着する場合、例えば超音波溶着装置によりポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂との接合界面に高周波振動を与えると、その高周波振動によって発泡体表面に存在する低融点の熱可塑性樹脂の粉体が溶融し、その溶融物により発泡体が熱可塑性樹脂基材に接着される。さらに、熱可塑性樹脂基材が振動発熱して溶融し、そこにポリウレタン発泡体が食い込んで接着される(アンカー効果)。その上、ポリウレタン発泡体も振動発熱して溶融し、熱可塑性樹脂基材と溶融一体化され、接着される。その結果、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との界面で高分子鎖間が結合され、強固な接着力が発現されるものと推測される。
(実施形態の効果のまとめ)
・ 本実施形態における発泡体原料には、ポリオール類100質量部当たり発泡剤として水が3.5〜5.0質量部、補助発泡剤として液化炭酸ガスが2.3〜6.0質量部、及び低融点の熱可塑性樹脂の粉体が1〜30質量部含まれる。このため、発泡体の見掛け密度が12〜25kg/mという低密度のポリウレタン発泡体が得られる。
【0035】
従って、熱可塑性樹脂基材に対するポリウレタン発泡体の接着は、電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が0.3秒以上、1.0秒未満という短い時間で行われ、吸音部材等を成形するに際して生産性を向上させることができる。よって、熱可塑性樹脂基材に対するポリウレタン発泡体の接着を高周波融着により短時間で行うことができ、優れた接着強度を発揮することができると共に、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を維持することができる。さらに、発泡体は連続気泡構造を有する軟質ポリウレタン発泡体であるため、吸音性に優れると共に、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度が12〜25kg/mという低密度であることから、軽量化を図ることができる。従って、係る発泡体は自動車内装部品などとして有用である。
【0036】
・ イソシアネート指数を80〜110に設定することにより、発泡体の圧縮残留ひずみ等の機械的物性を良好にすることができる。このため、ポリウレタン発泡体の成形加工性を向上させることができ、容易に吸音部材を製造することができる。
【0037】
・ ポリオール類としてポリエーテルポリオールを用いることにより、ポリウレタン発泡体中のセルの連通性が良く、吸音性を向上させることができる。
・ 吸音部材は、上記高周波融着用のポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に積層し、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合面が高周波融着されて構成される。このため、高周波融着によりポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に短時間で接着でき、優れた接着強度を発揮できると同時に、圧縮残留ひずみ等の機械的物性を維持することができる。
【0038】
・ また、熱可塑性樹脂基材はその融点がポリウレタン発泡体の分解温度より低いものであることにより、高周波融着時に熱可塑性樹脂基材が容易に溶融し、ポリウレタン発泡体との接着性を向上させることができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜15及び比較例1〜5)
まず、各実施例及び比較例で用いたポリウレタン発泡体の原料を以下に示す。
【0040】
ポリエーテルポリオールGP3000:グリセリンにプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを付加重合させたポリエーテルポリオールで、分子量3000、水酸基の官能基数が3、水酸基価56(mgKOH/g)、三洋化成工業(株)製
ポリイソシアネートT−80:トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%との混合物)、日本ポリウレタン工業(株)製、T−80
ジメチルエタノールアミン:アミン触媒
金属触媒MRH110:ジブチルスズジラウレート、城北化学工業(株)製
ポリエチレン、ポリワックス400:ポリエチレンの粉体、数平均分子量400、融点80℃、平均粒子径20μm、密度0.93g/cm、ベーカー・ペトロライト社製、ポリワックス400
低密度ポリエチレン、LE−2080:低密度ポリエチレンの粉体、融点107℃、平均粒子径12μm、密度0.918g/cm、住友精化(株)製、LE−2080
エチレン・アクリル酸共重合体、EA−209:エチレン・アクリル酸共重合体の粉体、融点105℃、平均粒子径10μm、密度0.940g/cm、住友精化(株)製、EA−209
整泡剤B8232:ポリエーテル変性ポリシロキサン、ゴールド・シュミット・ジャパン社製
そして、表1及び表2に示す含有量(質量部)で各例におけるポリウレタン発泡体の原料を調製した。これらのポリウレタン発泡体の原料を縦、横及び深さが各500mmの発泡容器内に注入し、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて架橋(硬化)させることにより軟質ポリウレタン発泡体(軟質スラブ発泡体)を得た。
【0041】
ここで、比較例1及び2では低融点の熱可塑性樹脂を配合しなかった例、比較例3では補助発泡剤としての液化炭酸ガスの含有量が少なく、発泡体の見掛け密度が25kg/mを越える例を示す。比較例4では低融点の熱可塑性樹脂の含有量が過剰である例、比較例5では低融点の熱可塑性樹脂の含有量が過少である例を示す。
【0042】
そして、得られた軟質ポリウレタン発泡体について、見掛け密度、硬さ、圧縮残留ひずみ、超音波融着時間、接着性、吸音率、最高温度及び着色性を以下に示す測定方法に従って測定した。それらの結果を表1及び表2に示す。
(測定方法)
見掛け密度(kg/m):JIS K 7222:1999に準拠して測定した。
【0043】
硬さ(N):JIS K 6400−2:2004に準拠して測定した。
圧縮残留ひずみ(%):JIS K 6400−4:2004に準拠して測定した。
超音波融着時間(秒):厚さ10mmの軟質ポリウレタン発泡体(分解温度175℃)と厚さ5mmのポリプロピレン(融点160℃)の各サンプルを用意し、超音波溶着装置(超音波工業(株)製のミニウェルダーP128)を使用して下記に示す条件にて軟質ポリウレタン発泡体とポリプロピレンとの接着を実施し、融着時間(秒)を測定した。
(超音波融着の条件)
周波数:28kHz、振幅60〜70μm、電力(出力):100W、圧力:0.5MPa。
【0044】
接着性:前記超音波融着時間の測定後に、軟質ポリウレタン発泡体の表面にミニウェルダーの治具の痕が残っている場合には接着されたと判断し(○)、治具の痕が残っていない場合には接着されなかったと判断した(×)。
【0045】
吸音率:JIS A 1405に準拠し、厚さ10mm、周波数2000Hzにおける垂直入射吸音率(%)を測定した。
最高温度:発泡容器の中心部に熱電対を差込み、反応及び発泡時において上昇した最も高い温度(℃)を示した。
【0046】
着色性(ΔYI):反応及び発泡時における温度の高い発泡体の部位(中心部)と温度の低い部位(側面部)について、色差計〔スガ試験機(株)製、SMカラーコンピューター SM−4〕により黄変度(白色度)を測定し、それらの色差(ΔYI)で示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

表1及び表2に示したように、実施例1〜15においては、低融点の熱可塑性樹脂粉体をポリオール類100質量部当たり1〜30質量部配合すると共に、発泡剤としての水及び補助発泡剤としての液化炭酸ガスを所定量使用し、発泡体の見掛け密度を12〜25kg/mに設定した。そのため、超音波による融着時間を0.5〜0.8秒という極めて短い時間にでき、接着強度も優れているという結果が得られた。また、吸音率が76〜89%で良好であると共に、硬さが33〜115N及び圧縮残留歪が5〜19%で機械的物性が良好で、かつ着色もほとんどないという結果が得られた。
【0049】
一方、比較例1及び2では低融点の熱可塑性樹脂を配合しなかったことから、超音波融着時間が長くなるか、或いは接着しない結果となった。比較例3では補助発泡剤としての液化炭酸ガスの含有量が少なく、発泡体の見掛け密度が25kg/mを越えたため、超音波融着時間が長くなった。比較例4では低融点の熱可塑性樹脂の含有量が過剰であったため、発泡体の圧縮残留ひずみが大きくなり、打ち抜き加工等の成形加工ができなくなった。比較例5では低融点の熱可塑性樹脂の含有量が過少であったため、超音波融着時間が長くなった。
【0050】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記ポリウレタン発泡体の原料に、減熱剤としての無機化合物の水和物を配合することもできる。係る無機化合物の水和物は、ポリウレタン発泡体の製造過程で加熱されたときに減熱(吸熱)作用を発現できる物質であり、加熱によって分解し、分解により水を生成する材料である。無機化合物の水和物として具体的には、硫酸カルシウム・2水和物(二水石膏)、硫酸マグネシウムの水和物等が用いられる。
【0051】
・ 前記ポリウレタン発泡体の原料に、接着性向上剤、相溶化剤、分散剤などを配合することもできる。
・ 前記ポリウレタン発泡体の原料に配合する低融点の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂基材と同種の熱可塑性樹脂を用い、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接着性を向上させるように構成することができる。
【0052】
・ 前記ポリウレタン発泡体として、半硬質ポリウレタン発泡体などを使用することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0053】
・ 前記ポリウレタン発泡体は、軟質ポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、クッション性、衝撃吸収性、高弾性、低反発弾性等の特性を発揮することができる。
【0054】
・ 前記ポリウレタン発泡体は、軟質スラブ発泡体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、ポリウレタン発泡体を簡便に、かつ連続生産により得ることができる。
【0055】
・ 前記高周波による融着は、0.1〜1MPaの加圧下に行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、高周波融着による接着強度を向上させることができる。
【0056】
・ 前記熱可塑性樹脂基材は、その融点がポリウレタン発泡体の分解温度より低いものであることを特徴とする請求項5に記載の吸音部材。この場合、請求項5に係る発明の効果に加えて、高周波融着時に熱可塑性樹脂基材が容易に溶融し、ポリウレタン発泡体との接着性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び補助発泡剤を含有するポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させてなり、高周波融着可能なポリウレタン発泡体であって、
前記発泡剤は水であってその含有量がポリオール類100質量部当たり3.5〜5.0質量部であり、補助発泡剤は液化炭酸ガスであってその含有量がポリオール類100質量部当たり2.3〜6.0質量部であると共に、ポリウレタン発泡体の原料には、融点が60〜170℃である熱可塑性樹脂の粉体がポリオール類100質量部当たり1〜30質量部含まれ、かつポリウレタン発泡体の見掛け密度が12〜25kg/mであることを特徴とする高周波融着用のポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリウレタン発泡体は、熱可塑性樹脂に対して電力100W、周波数28kHzの高周波による融着時間が0.3秒以上、1.0秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記原料に含まれる化合物の活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したイソシアネート指数が80〜110であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記ポリオール類はポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波融着用のポリウレタン発泡体を熱可塑性樹脂基材に積層し、ポリウレタン発泡体と熱可塑性樹脂基材との接合面が高周波融着されて構成されていることを特徴とする吸音部材。

【公開番号】特開2008−111045(P2008−111045A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294771(P2006−294771)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】