説明

高圧式ホモジナイザーの配管の洗浄方法、及びそのための洗浄液

【課題】高圧式ホモジナイザーの配管内の樹脂を簡便に除去する。
【解決手段】内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管に、水系洗浄液を導入し、配管内を通して排出することにより、配管内に付着した樹脂を除去する方法であって、水系洗浄液は界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有し、配管に導入された水系洗浄液を樹脂のTg以上の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤の製造において、バインダー樹脂を含有するトナー材料を微粒化するために使用される高圧式ホモジナイザーを洗浄するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧式ホモジナイザーとは、高圧下で粒子を細孔(以下ノズル)に通過させることにより微粒化する方法であり、粒子が熱可塑性樹脂を含むものである場合、樹脂のTg以上の温度に加熱し、樹脂を溶融状態にすることにより、無溶剤で微粒化を行うことが可能である。現像剤の製造方法において、高圧式ホモジナイザーは、その瞬間的な高いせん断力によりポリエステル等、エステル結合を有するバインダー樹脂の微粒子を作製するのに好適である。
【0003】
しかしながら、バインダー樹脂に熱可塑性樹脂を用いた場合、一度溶融状態まで加熱した後にせん断力を供する必要があり、その高い粘弾性により高圧式ホモジナイザーの各配管にバインダー樹脂及びその他添加物が固着してしまうため、高圧式ホモジナイザーを繰り返し使用する場合、使用前及び使用後に配管を洗浄し、付着した樹脂等を除去する必要がある。しかしながら、付着した樹脂等を効率よく除去することが難しい。電子写真用トナーの製造において、このような付着物が微粒化分散液作成中に流出すると、最終的に不純物(以下コンタミ)としてトナーに存在してしまい、トナーの組成や特性が不均一になる。有機溶剤等を用いれば容易に配管を洗浄することができるが、廃液処理など環境負荷がかかってしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高圧式ホモジナイザーの配管内の樹脂を簡便に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる高圧式ホモジナイザーの洗浄方法は、内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管に、界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有する水系洗浄液を導入し、前記水系洗浄液を前記樹脂のTg以上の温度に加熱し、該配管内を通して排出することにより、該配管内に付着した樹脂を除去することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る高圧式ホモジナイザーの洗浄方法の一例を表すフロー図である。
【図2】実施形態に使用可能な高圧式ホモジナイザーの一例を表す概略図である。
【図3】高圧式ホモジナイザーを用いた現像剤の製造方法の一例を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係る高圧式ホモジナイザーの洗浄方法は、内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管に、水系洗浄液を導入し、配管内を通して排出することにより、配管内に付着した樹脂を除去する方法であって、水系洗浄液は界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有し、配管に導入された水系洗浄液を樹脂のTg以上の温度に加熱する。
【0008】
また、実施形態にかかる現像剤は、内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管を洗浄するために使用される水系洗浄液であって、界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有する。
【0009】
以下、図面を参照し、実施の形態についてより詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る高圧式ホモジナイザーの洗浄方法の一例を表すフローを示す。
【0011】
図示するように、まず、水、界面活性剤、及び塩基性化合物を含む水系洗浄液を調製する(Act 1)。
【0012】
得られた洗浄液を高圧式ホモジナイザーに導入する(Act2)。
【0013】
次に、高圧式ホモジナイザー内で導入された洗浄液を除去しようとするとするバインダー樹脂のガラス転移点温度Tgよりも高い温度に加熱する(Act3)。
【0014】
加熱された洗浄液を高圧式ホモジナイザーの配管内に通して、洗浄を行う(Act4)。
【0015】
その後、洗浄液を排出させる(Act5)。
【0016】
洗浄液は高圧式ホモジナイザーを連続運転することにより連続的に導入することが出来る。あるいは、洗浄液は高圧式ホモジナイザーを間欠運転することにより間欠的に導入することが出来る。
【0017】
界面活性剤、及び塩基性化合物を両方含む水系洗浄液を使用して洗浄を行うことにより、界面活性剤だけでは落ちにくい酸価を有する樹脂を容易に除去することが出来る。
【0018】
また、水系洗浄液を樹脂のTg以上の温度に加熱することにより、より効率良く樹脂を除去することが出来る。
【0019】
高圧式ホモジナイザーを間欠運転することにより洗浄液を間欠的に導入すると、配管内を連続的に洗浄液が流れている場合よりも、管内に付着した樹脂が、界面活性剤及び塩基性化合物を両方含む水系洗浄液中に溶出しやすくなる。このため、連続運転よりも、より効率良く樹脂の除去が可能となる。
【0020】
少なくともトナー用バインダー樹脂を含む粒子を高圧式ホモジナイザーにより微粒化した後、微粒子を凝集することによりトナーを得る方法において、高圧式ホモジナイザーを洗浄することによって均一な特性を有するトナー粒子を安定的に製造することができる。
【0021】
そこで、以下のような洗浄方法を行うことにより、コンタミのない均一なトナーを製造することが可能となった。
【0022】
実施形態に使用される洗浄液に含まれる界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、及び多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤が挙げられるが、微粒子作製に用いる界面活性剤と同じものか、それと同イオン性のものを用いることが好ましい。この界面活性剤は1種単独でもよいし、2種以上を併用してももちろんよい。また、界面活性剤の添加量としては特に制限はなく、用いる界面活性剤の臨界ミセル濃度以上の濃度において用いれば良い。臨界ミセル濃度未満の濃度では、十分なミセルが形成されないため、効率よく洗浄することができない。
【0023】
洗浄液に含まれる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の他に、アミン化合物を使用することができる。アミン化合物として、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン,イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパンなどが挙げられる。
【0024】
洗浄液のpHは好ましくは10以上13未満にすることができる。pHが10未満では配管付着物がポリエステル等酸価を有する樹脂の場合効率よく洗浄することができない。また、13以上ではその高い塩基性により配管表面が溶出してしまうため好ましくない。この塩基性化合物は1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
高圧式ホモジナイザーは50MPa以上200Mpaの圧力で連続または間欠運転することができる。
【0026】
洗浄方法として、好ましくは、洗浄液を樹脂のTg以上の温度に加熱し、50MPa以上200MPa未満に加圧し、高圧式ホモジナイザー処理することにより、樹脂の架橋成分等、通常の洗浄液では洗浄困難な付着物をより効率よく除去することができる。
【0027】
樹脂のTg以上の温度に加熱するのは、樹脂を溶融状態にすることにより洗浄液中に溶出しやすくするためであり、Tg+50℃以上であることがより好ましく、更にTg+100℃以上であることがより好ましい。
【0028】
また、50MPa以上に加圧するのは、完全に溶融していない樹脂の塊にせん断力を供して高圧式ホモジナイザーのノズル部での詰まりを防止するためであり、100MPa以上であることがより好ましい。更に、加圧上限が200MPaであることは、200MPa以上に加圧すると、洗浄液の滞留時間が短く、十分に樹脂を洗浄することができないことに加え、高圧ポンプやノズル部に負荷がかかってしまうためである。更に以上のような条件にて、高圧式ホモジナイザーを間欠運転することが望ましい。間欠運転を行うことで、特に分子量の大きい架橋成分のような、通常の連続運転では除去しきれない成分を洗浄液中に溶出することができる。ここで、間欠運転とは、高圧式ホモジナイザーを60秒ごとに、少なくとも10秒以上停止時間を設けて運転することを示す。このような間欠運転を行うことにより、高圧式ホモジナイザー配管に付着した樹脂をより効率よく洗浄することが可能になる。
【0029】
高圧式ホモジナイザーとして、例えばNANO3000(美粒)、ナノマイザー(吉田機械興業)、スターバースト(スギノマシン)、マイクロフルイタイザー(みずほ工業)、ホモゲナイザー(三和機械)等、一般に市販されている物から、それらを組み合わせたものにまで適用されるが、ノズル部手前に少なくとも1つ以上の熱交換器が設置されているものが望ましい。また、100℃以上の温度で洗浄する場合は、排出部手前に少なくとも1つ以上の冷却器が設置されていることが望ましい。
【0030】
高圧式ホモジナイザー
図2に、実施形態に使用可能な高圧式ホモジナイザーの一例を表す概略図を示す。
【0031】
図示するように、高圧式ホモジナイザー10は、ホッパータンク1、送液ポンプ2、高圧ポンプ3、高圧ポンプ3の上流側及び下流側にそれぞれ設けられた逆止弁12,13、加熱部4、微粒化部5、減圧部6、冷却部7、及び減圧部8を順に配置した構成と、各部を接続する配管とを含む。
【0032】
ホッパータンク1は、分散液を投入するタンクである。装置稼動時は、装置内に空気を送り込まないよう常に液を満たしておく必要が有る。処理液の粒子径が大きく、沈降性があるものの場合は、さらに攪拌機を設けることができる。
【0033】
送液ポンプ2は、高圧ポンプ3に分散液を連続的に送るために設置する。また、高圧ポンプ3の上流側及び下流側に各々設けられた逆止弁12,13での詰まりを回避するためにも有効である。この送液ポンプ2としては、例えばダイアフラムポンプ、チュービングポンプ、ギアポンプ等が使用できる。
【0034】
高圧ポンプ3は、プランジャー式ポンプであり、図示しない処理液入口及び処理液出口に逆止弁を有する。プランジャーの数は生産規模に応じ、1から10個使用される。脈流を極力減らすために、2個以上あることが望ましい。
【0035】
加熱部4は、オイルバス等の加熱器具内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された高圧配管9が設置されている。この加熱部4は、分散液の流れる方向に対し、高圧ポンプ3の上流側または下流側のどちらでも問題が無いが、少なくとも微粒化部5の上流側である必要がある。高圧ポンプ3の上流側に加熱部4を設置する場合は、ホッパー1に加熱装置を付与しても良いが、高温下での滞留時間が長いため、バインダー樹脂の加水分解が起こり易くなる。
【0036】
微粒化部5には、強力なせん断をかけるための微小な径を有するノズルが含まれている。ノズルの径及び形状は様々あるが、ノズル径は0.05mmから0.5mmが望ましく、形状は、通過型ノズル、または衝突型ノズルが望ましい。また、このノズルは多段で構成しても良く、多段にする場合は異なるノズル径を複数並べても良い。複数並べる方法は並列でも直列でも良い。ノズルの材質は高圧に耐えることが可能なダイヤモンド等が使用される。
【0037】
冷却部7には、冷水が連続的に流されるバス内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された配管11が設置されている。
【0038】
必要に応じ、上記冷却部7の前後に減圧部6,8を設けることができる。減圧部の構成としては、微粒化部5のノズル径より、大きくかつ接続配管径より小さい流路を有するセル、または2方向バルブを1つ以上配置する。
【0039】
この高圧型湿式微粒化機による処理は以下のように行う。
【0040】
まず、微粒化されるべき材料を含む処理液をホッパーに投入し、微粒化処理を行う。
【0041】
処理液は、バインダー樹脂のガラス転移温度Tg以上に加熱される。加熱を行う理由は、バインダー樹脂を溶融させる目的がある。
【0042】
この加熱温度は、バインダー樹脂の溶融特性により異なる。融け易い樹脂は低い温度でも問題無いが、溶け難い樹脂は高い温度が必要となる。また、連続的に熱交換器を通過させ加熱する方法の場合、分散液の流速及び熱交換の配管の長さにも影響する。流速が速い場合や配管が短い場合は高い温度が必要で、逆に流速が遅い場合や配管が長い場合は充分に分散液が加熱されるため、低い温度で処理が可能となる。流量が300から400cc/min、熱交換配管が3/8インチ・12mの高圧配管、バインダー樹脂のTgが60℃、トナーの軟化点Tmが130℃の場合、加熱温度は、100℃から200℃で良い。加熱温度は、好ましくは、ガラス転移温度TgないしTg+150℃の範囲である。加熱温度が高すぎると、バインダー樹脂の加水分解する傾向がある。加熱温度がTgないしTg+150℃程度であれば、定着性が悪化するような問題がない。
【0043】
トナーの軟化点測定は、島津製作所製フローテスターCFT−500の昇温法により行い、フローチャートよりプランジャー降下量の2mmに相当する曲線上の点を軟化点とする。
【0044】
次に、この加熱された分散液を10MPa以上の圧力をかけながらせん断を与える。この時、せん断を与えるのはノズルである。10MPa以上の高圧をかけながら、ノズルを通過することにより、溶融したトナー成分が微粒化される。この時の圧力は10MPaから300MPaあると良い。
【0045】
最後にTg以下まで冷却する。この冷却により、溶融した微粒子が固化される。処理液が急速に冷却されるため、冷却による凝集や合一が起こり難くなる。
【0046】
必要に応じ、上記冷却部の前後に背圧を付与したり、減圧を行っても良い。背圧または減圧とは、ノズル通過後にすぐに大気圧開放するのではなく、1段階(背圧)または、多段階(減圧)で大気圧付近に戻すことを意味する。背圧部または減圧部通過後の圧力は0.1MPa〜10MPa、望ましくは0.1〜5MPaである。この減圧部は径の異なるセル又はバルブを複数個並べるとさらに良い。多段階で減圧することにより粗粒子が少なく粒度分布がシャープな微粒子を得ることができる。
【0047】
以上により2μm以下の微粒子を得ることが可能となる。
【0048】
図3に、高圧式ホモジナイザーを用いた現像剤の製造方法の一例を表すフローを示す。
【0049】
図示するように、少なくともポリエステル樹脂を含む粒状化されたトナー材料を用意する。
【0050】
粒状化されたトナー材料は、粉砕法例えばバインダー樹脂及び任意に着色剤等を含むトナー材料を溶融混練し、混練物を作成した後、粉砕することにより得られる。
【0051】
粒状化されたトナー材料を水系媒体と混合してトナー材料分散液を得る(Act11)。
【0052】
該トナー材料分散液をバインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)以上の温度で溶融し、機械的せん断に供して微粒化せしめ、例えば2μmの体積平均粒径を有する微粒子を形成する(Act12)。
【0053】
得られた微粒子を含む分散液を凝集して、凝集粒子を得る(Act13)。
【0054】
凝集粒子を冷却(Act14)、洗浄(Act15)、及び乾燥する(Act16)ことにより、トナー粒子を作製する。
【0055】
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いることが出来る。
【0056】
ポリエステル樹脂として1以上の酸価を有するポリエステル樹脂を用いることが出来る。
【0057】
なお、凝集粒子の形成(Act13)と、冷却(Act14)との間で、別工程において作成した微粒子を添加し、前記凝集粒子を母粒子としてそこへヘテロ凝集させることにより、凝集粒子のカプセル化を行うことができる。
【0058】
機械的せん断は、図2に示す高圧式ホモジナイザーを用いて行うことが出来る。
【0059】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0060】
実施例
高圧式ホモジナイザー
実施例では、高圧式ホモジナイザーとして、美粒社製NANO3000にφ0.13mmのノズルを設置した装置を用い、更に、ノズル部上流側に内径3.18mm長さ12mの螺旋状のコイル配管をオイルバス中に設置し加熱ユニットとした。更に、ノズル部下流側に内径2.77mm長さ6mの螺旋状のコイル配管をチラー水を連続的に流すことができるバス内に設置し冷却ユニットとした。
【0061】
洗浄率の測定方法
洗浄率A(%)は洗浄液1Lで洗浄された固形分量とし、洗浄液1Lを高圧式ホモジナイザーにて処理した際に回収された回収液1L中の1g当たりの水分量a(%)を水分計にて計測し、aに洗浄液に添加した界面活性剤量b(%)を加えた値を100(%)から引いた値を洗浄率Aとした。同時に、洗浄率Aは洗浄された固形分濃度、すなわち、高圧式ホモジナイザー配管から溶出して洗浄された配管付着物とする。
【0062】
高圧式ホモジナイザー処理
上記洗浄率Aが0になり、更に洗浄回収物のpHが洗浄液と同等になるまで洗浄を繰り返した後に、ポリエステル樹脂(酸価10mgKOH/g,Tg58℃,Mw15000)90重量部と銅フタロシアニン顔料(大日精化製)5重量部とライスワックス(5重量部)を120℃に設定された二軸混練機にて溶融混練した混練物を固形分濃度30%になるようにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムにて水中に分散し、ジメチルアミノエタノールにてpHを11に調整後、180℃150MPaの条件にて該混練物の微粒子分散液を連続運転にて10L作製した。
【0063】
洗浄率の測定条件
上記高圧式ホモジナイザー処理直後に、回収液のpHが5.8になるまで純水にて高圧式ホモジナイザーを連続運転にて洗浄した直後から下記実施例のような条件で洗浄液を1L処理して測定した。なお、洗浄処理の連続運転とは、所定の圧力において高圧式ホモジナイザーを連続運転することを示し、間欠運転とは、60秒間連続運転した後に、10秒間処理を停止する動作を繰り返すことを示す。
【0064】
実施例1
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3%溶液をジメチルアミノエタノールにてpHを11に調整した洗浄液1Lを180℃100MPaの連続運転にて洗浄処理したところ、洗浄率は3.2%と良好であった。
【0065】
実施例2
水酸化ナトリウムにてpHを12に調整した以外は実施例1と同じにして洗浄処理したところ、洗浄率は3.5%であった。
【0066】
実施例3
洗浄処理を間欠運転にした以外は、実施例1と同じにして洗浄処理したところ、洗浄率は6.2%であった。
【0067】
実施例4
洗浄処理を50MPaにした以外は実施例3と同様に洗浄処理したところ、洗浄率は5.8%であった。
【0068】
比較例1
ジメチルアミノエタノールにてpHを調整しないこと以外、実施例1と同様に洗浄処理したところ、洗浄率は1.2%であった。
【0069】
比較例2
洗浄液を純水にした以外、実施例1と同様に洗浄処理したところ、洗浄率は0.2%であった。
【0070】
比較例3
洗浄処理を30MPaにした以外、実施例3と同様に洗浄処理したところ、ノズル部にて詰まりが発生した。
【0071】
比較例4
洗浄液をテトラヒドロフランにし、25℃にした以外、実施例1と同様に洗浄処理したところ、洗浄率は6.5%であった。
【0072】
比較例5
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を添加しないこと以外実施例3と同様にして洗浄処理を行ったところ、洗浄率は2.2%であった。
【0073】
実施例5
高圧式ホモジナイザーを間欠運転にしたこと以外は実施例2と同様に洗浄処理を行ったところ、洗浄率は6.8%であった。
【0074】
実施例6
洗浄処理を50MPaにした以外実施例5と同様に洗浄処理を行ったところ、洗浄率は5.7%であった。
【0075】
比較例6
洗浄処理を40MPaにした以外実施例3と同様に洗浄処理を行ったところ、ノズル部にて詰まりが発生した。
【0076】
比較例7
洗浄処理を40MPaにした以外、実施例5と同様に洗浄処理を行ったところ、ノズル部にて詰まりが発生した。
【0077】
実施例7
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液にした以外、実施例3と同様に洗浄処理を行ったところ、洗浄率は5.9%であった。
【0078】
実施例8
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液にした以外、実施例4と同様に洗浄処理を行ったところ、洗浄率は6.2%であった。
【0079】
得られた結果を下記表1−1及び表1−2に示す。
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
上記のように、水系洗浄液が界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有し、そのpHを10以上13未満とし、高圧式ホモジナイザーを間欠運転させることで有機溶媒を用いて洗浄した場合と同等以上に洗浄できることがわかった。
【符号の説明】
【0082】
3…高圧ポンプ、5…微粒化部、10…高圧式ホモジナイザー、12,13…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管に、界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有する水系洗浄液を導入し、前記水系洗浄液を前記樹脂のTg以上の温度に加熱し、該配管内を通して排出することにより、該配管内に付着した樹脂を除去することを特徴とする高圧式ホモジナイザーの洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液は10以上13未満のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配管の内表面が金属である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂のTg以上の温度は100℃以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸価を有する樹脂は、ポリエステル樹脂である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水系洗浄液は、前記高圧式ホモジナイザーを間欠的に運転することにより、前記配管に間欠的に導入されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧式ホモジナイザーは、60秒間運転するごとに、少なくとも10秒以上停止時間を設けて繰り返して運転される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
内面に酸価を有する樹脂が付着した高圧式ホモジナイザーの配管を洗浄するために使用される水系洗浄液であって、界面活性剤と塩基性化合物と水とを含有することを特徴とする水系洗浄液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−280988(P2010−280988A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127100(P2010−127100)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】