説明

高圧放電灯点灯装置、照明器具、及び照明システム

【課題】回路構成を複雑にすることなく、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定な放電を形成することを可能にする。
【解決手段】放電灯点灯装置1は、直流電力を入力して交流電力に変換するフルブリッジ回路11と、ランプDLを絶縁破壊させるための始動用高電圧を発生させるための始動回路12と、直流電源Eの出力電圧を降圧してフルブリッジ回路11に出力する降圧チョッパ13と、ランプDLの点灯状態を検出するランプ点灯状態検出部14と、フルブリッジ回路11及び始動回路13を制御する制御回路15を備える。制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14によって検出された累積点灯時間に応じて、ランプ始動時の電極加熱期間におけるランプの電力供給量を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯を点灯させるための高圧放電灯点灯装置、及びこれを用いた照明器具、及び複数個の照明器具から構築される照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、HID(High-Intensity Discharge)と呼ばれる高輝度の高圧放電灯が、主に車両用として多く使用されている。この高圧放電灯では、点灯時にランプ内で放電を発生させる必要があるため、直流電力を入力して交流電力を出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御するための制御回路を備える点灯装置が必要である。
【0003】
高圧放電灯点灯装置として、制御回路により電力変換回路の電圧を高くして高圧放電灯に印加し、絶縁破壊(ブレークダウン)を起こさせてアーク放電を発生させるイグニションの期間(以下、「フェーズ1」と略記する)と、電力変換回路における交流電力の周波数を高くすることにより定格以上の電力を高圧放電灯に供給して、電極の温度を短時間で上昇させる引継ぎ/ウォームアップの期間(以下、「フェーズ2」と略記する)と、定格の交流電力を電力変換回路から高圧放電灯に印加して定常動作を行う期間(以下、「フェーズ3」と略記する)の各フェーズを設定し、フェーズ2におけるランプ供給電流を最適化することで、短時間で高圧放電灯の電極を十分に加熱するようにした例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来の例では、ある特定の高圧放電灯の電極に対しては十分な加熱が行われるが、別の高圧放電灯の電極に対しては、以下に述べる実験結果から加熱が不足することがある。
【0005】
図35は、上記のように構成された高圧放電灯点灯装置を用い、高圧放電灯(HCI−TC/E70W/NDL:OSRAM製)を点灯させて実験を行った際に、フェーズ2の継続時間を変化させた場合のランプ電流の波形を示す図である。
【0006】
図35(a)に示すように、フェーズ2の継続時間が十分に長い場合は、ランプ電流は両方の電極に対して次第に略均等に流れるようになり、安定した放電を形成した後にフェーズ3へ移行していることが分かる。
【0007】
一方、図35(b)に示すように、フェーズ2の継続時間が短い場合は、ランプ電流波形は両方の電極に対して均等にならず、半波放電状態になっていることが分かる。そのため、電極が十分に加熱されず、この状態のままフェーズ3へ移行すると、放電が非常に不安定となって立ち消えなどが発生する虞がある。
【0008】
一般に、寿命末期の高圧放電灯は、未使用の高圧放電灯に比べて始動しにくく、例えばフェーズ3に移行した後で立ち消えやちらつき等が起こりやすい。寿命末期の高圧放電灯では、フェーズ2における電極の加熱が不十分となり、半波放電状態のままフェーズ3へ移行させようとすることが、この要因である。
【0009】
また、高圧放電灯の製造工程上で混入する不純物によっても、始動不良が引き起こされる。例えば、製造工程において不純物HOがランプ内に混入すると、次の化学式(1)〜(3)に示すように、不純物HOがランプ封入物(金属)と酸化物を形成して水素とヨウ素が発生し、これらの電子付着物質が電子を取り込む。
【0010】
【化1】

【化2】

【化3】

【0011】
電子を取り込んだ電子付着物質は放電を阻害し、始動性が悪化して放電維持電圧が上昇するなど、放電が不安定になり易い。また、製造工程において混入する不純物の量は、高圧放電灯毎にばらつきが生じるため、高圧放電灯の始動性にも個体差が生じる。
【0012】
これらの問題を解決するには、いずれの高圧放電灯に対しても電極の十分な加熱を確保できるように、フェーズ2の時間を長く設定するか、或いはフェーズ2におけるランプ電流値を大きく設定すれはよい。
【0013】
しかしながら、これらの解決方法を全ての高圧放電灯に対して一律に適用すると、使用初期の高圧放電灯、又は不純物の混入が少ない高圧放電灯の場合では電極の加熱が過剰となり、このため高圧放電灯の寿命が短くなる等の不具合を招いてしまう虞がある。
【0014】
また、フェーズ2において高圧放電灯に供給する電流又は電圧を検出し、検出した電流又は電圧が正負両極性で略均等でないと判定した場合に、高圧放電灯に供給する電流を変化させて両電極を均等に加熱する方法が考えられる。この方法によれば、フェーズ2の早い段階でランプ電流が略均等に流れるようになり、フェーズ3へ移行する際に安定した放電が形成される。
【0015】
しかしながら、上記の方法を実現するには、複雑な構成の検出回路および制御回路が必要となり、部品数の増加に伴うコストアップが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特表2005−507553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、回路構成を複雑にすることなく、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定な放電を形成することの可能な高圧放電灯点灯装置、照明器具、及び照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の高圧放電灯点灯装置は、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、高圧放電灯を始動させるための高電圧を発生させる始動回路と、前記電力変換回路および前記始動回路を制御する制御回路を備え、前記高圧放電灯の絶縁破壊後に、前記高圧放電灯の電極を加熱する電極加熱期間と、前記高圧放電灯に交流電流を供給して放電を安定に持続させる安定期間を有する高圧放電灯点灯装置であって、前記高圧放電灯の点灯状態を検出するランプ点灯状態検出部を備え、前記制御回路は、前記ランプ点灯状態検出部によって検出した前記高圧放電灯の点灯状態の情報に応じて、前記電極加熱期間における前記高圧放電灯への供給電力量を設定することを特徴とするものである。
【0019】
この構成により、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。また、これらを複雑な回路構成を要することなく実現できる。
【0020】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記点灯状態の情報は、前記高圧放電灯の累積点灯時間であることを特徴とするものである。
【0021】
この構成により、新しい高圧放電灯に対して過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯に対しても十分な電極の加熱を行うことができ、いずれの高圧放電灯においても、安定期間に移行する時点で安定な放電が形成され、立ち消えやちらつきを防止することが可能となる。
【0022】
更に、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記点灯状態の情報は、前記高圧放電灯の電気特性であることを特徴とするものである。
【0023】
この構成により、高圧放電灯の検出した電気特性に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0024】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記点灯状態の情報は、前記累積点灯時間および前記電気特性であることを特徴とするものである。
【0025】
この構成により、高圧放電灯の検出した累積点灯時間と電気特性に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極を最適に加熱することができ、過剰な加熱によってランプの寿命に著しい悪影響を与えることを回避して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0026】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、前記高圧放電灯を装着した時と、前回の電気特性との変化値であることを特徴とするものである。
【0027】
この構成により、高圧放電灯の装着時と前回の両電気特性の変化値に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、ランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0028】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、前記高圧放電灯を装着した時から、所定の前記累積点灯時間までの電気特性であることを特徴とするものである。
【0029】
この構成により、高圧放電灯の装着時から所定の前記累積点灯時間までの電気特性に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することでランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0030】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、前記高圧放電灯の絶縁破壊後から、前記安定期間に至るまでの電気特性であることを特徴とするものである。
【0031】
この構成により、高圧放電灯の絶縁破壊後から安定期間に至るまでの電気特性に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、ランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0032】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、最低ランプ電圧であることを特徴とするものである。
【0033】
この構成により、高圧放電灯の最低ランプ電圧に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、ランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0034】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、前記安定期間におけるランプ電圧の実効値であることを特徴とするものである。
【0035】
この構成により、高圧放電灯の安定期間におけるランプ電圧の実効値に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、高圧放電灯の個体差および累積点灯時間に関わらず、電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0036】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電気特性は、前記安定期間における再点弧電圧であることを特徴とするものである。
【0037】
この構成により、高圧放電灯の安定期間における再点弧電圧に応じて高圧放電灯への供給電力量を設定することで、高圧放電灯の個体差および累積点灯時間に関わらず、電極を最適に加熱することができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0038】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電力供給量は、前記高圧放電灯への供給電流値であることを特徴とするものである。
【0039】
この構成により、高圧放電灯への電力供給量として供給電流値を設定することで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0040】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記電力供給量は、前記電極加熱期間の継続時間であることを特徴とするものである。
【0041】
この構成により、高圧放電灯への電力供給量として電極加熱期間の継続時間を設定することで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0042】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記高圧放電灯への供給電流値と、前記電極加熱期間の継続時間は、初期設定値から増加する方向に変化することを特徴とするものである。
【0043】
この構成により、高圧放電灯への電力供給量として設定する供給電流値と電極加熱期間の継続時間は、初期設定値から増加する方向に変化することで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0044】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記高圧放電灯への供給電流値と、前記電極加熱期間の継続時間との積に、上限を設けることを特徴とするものである。
【0045】
この構成により、高圧放電灯への電力供給量として設定する供給電流値と電極加熱期間の継続時間との積に、上限を設けることで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0046】
また、本発明は、上記の高圧放電灯点灯装置において、前記累積点灯時間、前記高圧放電灯を装着した時から所定の前記累積点灯時間までの電気特性、前記変化値のそれぞれは、前記高圧放電灯が交換された際に、初期化されることを特徴とするものである。
【0047】
この構成により、高圧放電灯への電力供給量として設定する累積点灯時間、高圧放電灯を装着した時から所定の累積点灯時間までの電気特性、及び変化値のそれぞれは、高圧放電灯が交換された際に、初期化されることで、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定期間における立ち消えやちらつきを防止して、安定な放電を形成することが可能となる。
【0048】
本発明の照明器具は、上記の高圧放電灯点灯装置と、高圧放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置に電気的に接続されるとともに、前記高圧放電灯を電気的、且つ機械的に接続するソケットと、前記高圧放電灯点灯装置および前記ソケットを保持する器具本体と、を備えることを特徴とするものである。
【0049】
この構成により、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、立ち消えやちらつきのない照明器具を提供することができる。
【0050】
本発明の照明システムは、上記の複数個の照明器具と、前記複数個の照明器具をそれぞれ制御する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0051】
この構成により、高圧放電灯の使用時間の長短に関わらず、立ち消えやちらつきのない照明システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、回路構成を複雑にすることなく、電極の必要且つ十分な加熱を行うことができ、安定な放電を形成することの可能な高圧放電灯点灯装置、照明器具、及び照明システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の概略構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、スイッチング素子の各ゲートに印加される駆動信号を示す図
【図3】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯に印加されるランプ電圧とランプ電流の波形を示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図5】(a)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を直線的に増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を一定の曲線的に増加するように設定する説明図
【図6】(a)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を一定の刻み間隔で増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を累積点灯時間に応じて変化する刻み間隔で増加するように設定する説明図
【図7】(a)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を直線的に増加するように設定する場合に、上限を設けることの説明図 (b)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の継続時間を一定の曲線的に増加するように設定する場合に、上限を設けることの説明図
【図8】(a)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、未使用の高圧放電灯を点灯した場合におけるランプ電流の波形を示す図 (b)本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置において、寿命末期の高圧放電灯を点灯した場合におけるランプ電流の波形を示す図
【図9】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の変形例の概略構成を示す図
【図10】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の変形例において、スイッチング素子の各ゲートに印加される駆動信号を示す図
【図11】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の他の変形例の概略構成を示す図
【図12】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の他の変形例において、スイッチング素子の各ゲートに印加される駆動信号を示す図
【図13】本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図14】(a)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を直線的に増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を一定の曲線的に増加するように設定する説明図
【図15】(a)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を一定の刻み間隔で増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を累積点灯時間に応じて変化する刻み間隔で増加するように設定する説明図
【図16】(a)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間をパラメータとし、ランプ電圧に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を一定に設定する説明図 (b)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間をパラメータとし、VIカーブのランプ電圧に応じてフェーズ2の高圧放電灯電流値を設定する説明図
【図17】(a)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、未使用の高圧放電灯を点灯した場合におけるランプ電流の波形を示す図 (b)本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置において、寿命末期の高圧放電灯を点灯した場合におけるランプ電流の波形を示す図
【図18】本発明の実施の形態3に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図19】(a)本発明の実施の形態3に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の電流時間積を直線的に増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態3に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯の累積点灯時間に応じてフェーズ2の電流時間積を曲線的に増加するように設定する説明図
【図20】本発明の実施の形態4に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図21】本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図22】本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置において、フェーズ3ランプ電圧の波形を例示する図
【図23】本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置において、ランプ電圧の再点弧電圧Vpを検出する回路を例示する図
【図24】(a)本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯のランプ電圧実効値の差に応じてフェーズ2の電流時間積を直線的に増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯のランプ電圧実効値の差に応じてフェーズ2の電流時間積を曲線的に増加するように設定する説明図
【図25】本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図26】本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置において、始動時におけるランプ電圧を示す図
【図27】(a)本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯のランプ電圧に応じてフェーズ2の電流時間積を直線的に増加するように設定する説明図 (b)本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置において、高圧放電灯のランプ電圧に応じてフェーズ2の電流時間積を曲線的に増加するように設定する説明図
【図28】本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの別の動作手順を説明するためのフローチャート
【図29】本発明の実施の形態7に係る高圧放電灯点灯装置の概略構成を示す図
【図30】本発明の実施の形態7に係る高圧放電灯点灯装置において、累積点灯時間に対するランプ電圧の変化を示す図
【図31】本発明の実施の形態7に係る高圧放電灯点灯装置において、始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャート
【図32】本発明の実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置において、ランプ電圧に対する累積点灯時間の変化を示す図
【図33】(a)本発明の実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置において、累積点灯時間に対するランプ電圧の変化を示す図 (b)本発明の実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置において、累積点灯時間に対する電流時間積の変化を示す図
【図34】(a)本発明の実施の形態8に係る照明器具の例を示す斜視図 (b)本発明の実施の形態8に係る照明器具の他の例を示す斜視図 (c)本発明の実施の形態8に係る照明器具の更に他の例を示す斜視図
【図35】(a)従来の放電灯点灯装置において、フェーズ2の継続時間が十分に長い場合のランプ電流の波形を示す図 (b)従来の放電灯点灯装置において、フェーズ2の継続時間が短い場合のランプ電流の波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置、照明器具、及び照明システムについて、図面を用いて説明する。本発明の実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置は、高圧放電灯のHIDランプ等を点灯させるものである。
【0055】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の概略構成を示す図である。
【0056】
図1において、本実施の形態の高圧放電灯点灯装置1は、高圧放電灯であるHID等のランプDLを点灯させるものであって、直流電源Eから入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換回路として、4石のスイッチング素子Q1〜Q4から構成されたフルブリッジ回路11を備えるものである。本実施の形態では、スイッチング素子Q1〜Q4として、電界効果トランジスタ(FET)を用いている。
【0057】
フルブリッジ回路11のそれぞれ直列に接続されたスイッチング素子Q1、Q2とQ3、Q4は、直流電源Eに並列に接続されるとともに、スイッチング素子Q1、Q2の接続点は、第1インダクタL1を介してランプDLの一方の電極に接続され、スイッチング素子Q3、Q4接続点は、第2インダクタL2を介してランプDLの他方の電極に接続されている。
【0058】
第1インダクタL1は、タップを有するオートトランス構造となっており、このタップは第1コンデンサC1と抵抗R1との直列回路を介して直流電源Eのグランド側に接続され、スイッチング素子Q1、Q2と共に、ランプDLを絶縁破壊させるための高電圧を発生させるための始動回路12を構成している。なお、この始動回路12は、共振電圧を利用して高電圧を発生させる方式であるが、パルス的な高電圧を発生することが可能な他の方式、例えば圧電素子などを用いる方式であってもよい。
【0059】
また、第1インダクタL1とスイッチング素子Q1、Q2の接続点には、第2コンデンサC2が接続され、スイッチング素子Q3、Q4及び第2インダクタL2と共に、直流電源Eの出力電圧を降圧してフルブリッジ回路11に出力する降圧チョッパ13を構成している。
【0060】
本実施の形態の高圧放電灯点灯装置1は、更に、ランプDLの点灯状態を検出して検出結果を記憶するランプ点灯状態検出部14と、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフ制御する制御回路15を備える。
【0061】
ランプ点灯状態検出部14は、不図示の不揮発性メモリを備え、ランプDLの点灯時間を計時するとともに、計時した時間を積算した累積点灯時間を記憶する。
【0062】
制御回路15は、例えばマイコン等から構成され、スイッチング素子Q1〜Q4の互いに対角に位置するスイッチング素子同士が同時にオンされ、且つ、互いに直列に接続されたスイッチング素子同士が交互にオン/オフされるように、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフ駆動する。これにより、直流電源Eから入力された直流電力が交流電力に変換され、この交流電力の周波数は、スイッチング素子Q1〜Q4のオン/オフ駆動による極性反転の周波数(以下、「動作周波数」と略記する)となる。
【0063】
次に、以上のように構成された高圧放電灯点灯装置1の動作について説明する。まず、概略動作を、図2及び図3に示す図を用いて説明する。図2は、スイッチング素子Q1〜Q4のゲートに印加される駆動信号を示す図であり、図3は、ランプDLに実際に印加されるランプ電圧とランプ電流の波形を示す図である。
【0064】
図2において、スイッチング素子Q1〜Q4は駆動信号がHレベルである期間にオンされ、Lレベルである期間にオフされる。なお、H及びLの各レベル期間は等しく設定されている。
【0065】
電源がオンすると、制御回路15はランプDLが安定な点灯状態に至るまでの始動シーケンスを開始する。また同時に、ランプ点灯状態検出部14は、計時を開始する。
【0066】
始動シーケンスは、ランプDLに絶縁破壊に必要な高周波の高電圧を印加する期間(以下、「フェーズ1」と略記する)と、ランプDLが絶縁破壊した後に電極を十分に加熱する期間(以下、「フェーズ2」と略記する)と、ランプDLに低周波の矩形波電流を流して安定に点灯させる定常動作の期間(以下、「フェーズ3」と略記する)に分けられる。以下、各フェーズにおける動作について、詳細に説明する。
【0067】
フェーズ1において、制御回路15は動作周波数を数十kHz〜数百kHzの範囲内で周期的に変化させてスイッチング素子Q1、Q2に印加する。すると、動作周波数が第1インダクタL1の一次巻線側N1と第1コンデンサC1からなる共振回路の共振周波数(又は、その整数分の1)となり、このとき発生した共振電圧がオートトランス構造の第1インダクタL1によって巻数比N1:N2比で昇圧されることで、ランプDLに印加される電圧(以下、「ランプ電圧」と略記する)が放電の開始に必要な電圧、例えば、3〜4kVに達してランプDLが始動する。
【0068】
図3では、周期的な動作周波数の変化の3周期目で絶縁破壊が生じ、ランプDLが始動してランプ電流が流れ始め、ランプDLの始動に伴うインピーダンスの変化によりランプ電圧の振幅が小さくなっていることを示している。
【0069】
以上の動作を所定の時間継続した後フェーズ1を終了し、動作周波数を更に低く、例えば数十kHzにして、ランプDLの電極を加熱する期間であるフェーズ2に移行する。
【0070】
フェーズ2における動作周波数は、後述するフェーズ3の動作周波数に比べ、フルブリッジ回路11の出力端間に接続された負荷回路の共振周波数に近い周波数であり、これによってランプDLの各電極の加熱がなされる。なお、動作周波数およびランプ電流は、超低周波であってもよい。
【0071】
フェーズ2の動作を、後述するようにランプDLの累積点灯時間に応じて定められた所定の時間継続して、引き続きフェーズ3の動作を開始する。
【0072】
フェーズ3において、制御回路15は、動作周波数をフェーズ2の動作中よりも更に低く、例えば数百Hzにすることで、ランプDLの点灯維持のための矩形波交流電力をランプDLに供給する。このフェーズ3に、制御回路15は、一方の直列回路のスイッチング素子Q3、Q4について対角に位置するスイッチング素子Q1、Q2がオンしている期間中であっても常にはオンすることなく、所定のデューティ比でオン/オフすることで、ランプDLへの供給電力を調整するためのPWM制御を行う。
【0073】
ここで、ランプ点灯状態検出部14の動作について、図4〜図8を用いて説明する。
【0074】
高圧放電灯点灯装置の前述した始動シーケンスのうちフェーズ2は、ランプDLが絶縁破壊された直後であって電極が十分に加熱されておらず、このためランプ電流が、図8に示すような正負極性間で非対称となる半波放電が発生する。この半波放電が続くと、フェーズ3に移行しても、立ち消えやちらつきが発生する可能性があり、安定に点灯しないことが起こる。これは、累積点灯時間が長い寿命末期の高圧放電灯において多く見られる。
【0075】
ランプ点灯状態検出部14は、この課題を解決するために備えたものであり、ランプDLの点灯状態を表すものとして点灯時間を検出し、検出した点灯時間を積算した累積点灯時間Xを不図示の不揮発性メモリに記憶する。なお、この累積点灯時間Xを記憶する機能は、制御回路15のマイコンに通常備えられるメモリで代替することもできる。また、高圧放電灯点灯装置1に付随する外部記憶装置を設け、それに累積点灯時間Xを記憶するようにしてもよい。
【0076】
また、ランプ点灯状態検出部14は、新しい高圧放電灯DLが交換された際に、累積点灯時間Xを初期値にリセットする機能を有する。図4は、ランプ点灯状態検出部14が累積点灯時間Xを初期値にリセットする機能を有する場合における始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0077】
電源がオンされた後、ステップS101において、新しい高圧放電灯DLに交換されたか否かを判定する。判定の結果、新しい高圧放電灯DLに交換されていない場合は、ランプ点灯状態検出部14に記憶されている累積点灯時間Xを読み出す(ステップS102)。
【0078】
次いで、制御部15は、読み出した累積点灯時間Xに応じてフェーズ2の継続時間を設定する(ステップS103)。
【0079】
一方、ステップS101の手順で、新しい高圧放電灯DLに交換されていると判定した場合は、ステップS104において、ランプ点灯状態検出部14に記憶されている累積点灯時間XをリセットしてからステップS103の手順に進む。
【0080】
フェーズ2の継続時間は、ランプ累積点灯時間に応じて変化させる。図5は、累積点灯時間Xに応じてフェーズ2の継続時間TA2を、(a)直線的に増加させる、(b)曲線的に増加させる、それぞれの場合を例示した図である。
【0081】
また、図6は、累積点灯時間Xに応じてフェーズ2の継続時間TA2を段階的に増加させる場合を例示した図であり、(a)は累積点灯時間Xの刻み間隔ΔXが一定、(b)は刻み間隔ΔXが累積点灯時間Xに応じて変化する。
【0082】
図5、6において、累積点灯時間がゼロである未使用の高圧放電灯では、電極の加熱に十分なフェーズ2の継続時間を初期値TA2_iとして設定するとともに、過剰な加熱による著しいランプの寿命低下を防ぐために、フェーズ2の継続時間に所定の最大値TA2_MAXを設定する。
【0083】
また、図7に示すように、累積点灯時間Xが高圧放電灯の定格寿命時間を経過した際に、フェーズ2の継続時間TA2が、設定しておいた最大値TA2_MAXに到達するようにしてもよい。例えば、パナソニック製セラメタ150Wランプ(MT150CE)の定格寿命は12000時間であり、累積点灯時間が12000時間を経過した時点で、フェーズ2における電流時間積TA2は、設定しておいた最大値TA2_MAX値に到達する。
【0084】
このように、フェーズ2の継続時間TA2を設定することにより、新しい高圧放電灯において過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯においても、十分な電極加熱を行うことができ、高圧放電灯の累積点灯時間に関わらず、フェーズ3へ移行する時点で安定な放電を形成することが可能となる。
【0085】
図8(a)、(b)は、このようにランプ累積点灯時間Xに応じて設定したフェーズ2の継続時間により、それぞれ未使用および寿命末期の各高圧放電灯を点灯した場合におけるランプ電流の波形を示す図である。
【0086】
図8(a)、(b)において、未使用および寿命末期の各高圧放電灯それぞれの累積点灯時間X1、X2(X1<X2)に応じて、フェーズ2の継続時間T1、T2(T1<T2を設定することにより、いずれの高圧放電灯においても、フェーズ3で安定な放電が形成されていることが分る。
【0087】
図4のフローチャートに戻り、ステップS105〜S107では、先に説明した始動シーケンスのフェーズ1〜3を実行する。続くステップS108において、ランプDLの点灯判定動作を実行し、点灯していないと判定した場合は、ステップS105の手順に戻って以降の手順を再び繰り返す。
【0088】
一方、ステップS108の手順で、ランプDLが点灯していると判定した場合は、ステップS109において、ランプ点灯状態検出部14により累積点灯時間Xを計時して記憶する。その後、ステップS108の手順に戻ってランプDLの点灯判定動作を繰り返す。
【0089】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプDLの累積点灯時間を計時して記憶するランプ点灯状態検出部14を備え、制御回路15の制御の下で、累積点灯時間に応じて始動シーケンスのフェーズ2の継続時間を設定することで、新しい高圧放電灯に対して過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯に対しても十分な電極の加熱を行うことができ、いずれの高圧放電灯においても、フェーズ3へ移行する時点では安定な放電が形成される。
【0090】
なお、高圧放電灯点灯装置の回路構成は、上記したものに限ることはなく、例えば、図1に示す降圧チョッパ回路13に替えて、直流電源Eの出力電圧を降圧してフルブリッジ回路11に出力する別の降圧チョッパ回路を備える、図9に示すような回路構成であってもよい。なお、図9において図1と同じ構成については、同一符号を付して説明を簡略に、若しくは省略する。
【0091】
図9において、高圧放電灯点灯装置2の電力変換回路は、スイッチング素子Q1〜Q4からなるフルブリッジ回路11と、降圧チョッパ回路23を備える構成である。
【0092】
降圧チョッパ回路26は、一端が直流電源Eの高電圧側に接続され、他端がインダクタL3を介してフルブリッジ回路11の入力端に接続されるスイッチング素子Q5と、カソードがスイッチング素子Q5とインダクタL3の接続点に接続され、アノードがグランドに接続されたダイオードD1と、フルブリッジ回路11の入力端に並列に接続されたコンデンサC3から構成される。なお、図1の降圧チョッパ回路13における第2インダクタL2と第2コンデンサC2が省略されている。また、スイッチング素子Q5のゲートには、制御回路15によって制御される降圧チョッパ駆動回路24が接続される。
【0093】
以上のように構成された高圧放電灯点灯装置2において、直流電源Eの出力電流が降圧チョッパ回路26によって制御され、フルブリッジ回路11に供給される。この制御は、図10に示すように、降圧チョッパ駆動回路27によって駆動されるスイッチング素子Q5のオン/オフのデューティ比によって行われるので、フェーズ3中であってもフルブリッジ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4のオン/オフによるPWM制御は行われることがない。
【0094】
また、本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の他の例として、図11に示すような高圧放電灯点灯装置3の回路構成であってもよい。図11における図1と同じ構成については、同一符号を付して説明を簡略に、若しくは省略する。
【0095】
図11において、高圧放電灯点灯装置3は、互いに直列に接続された2個のスイッチング素子Q1、Q2からなるハーフブリッジ回路31と、図1のフルブリッジ回路11において一方の直列回路を構成するスイッチング素子Q3、Q4をそれぞれコンデンサC4、C5に置換した降圧チョッパ回路33から構成される。
【0096】

ハーフブリッジ回路31におけるスイッチング素子Q1、Q2のオン/オフ駆動は、図12に示すように、フェーズ1とフェーズ2では、放電灯点灯装置1の図2に示した場合と共通であるが、フェーズ3では、極性を反転させない期間中にオンされるべきスイッチング素子Q1、Q2のオン/オフのデューティ比によって、ランプDLへの出力電力を調整するPWM制御が行われる。
【0097】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態1において示した高圧放電灯点灯装置と共通であり、図示を省略する。
【0098】
本実施の形態の高圧放電灯点灯装置において、制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14に記憶されたランプの累積点灯時間Xに応じて、フェーズ2におけるランプDLへの供給電流値を設定する。
【0099】
次に、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。図13は、本実施の形態の放電灯点灯装置における始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャートである。なお、図13のフローチャートにおけるステップS201、S202、S204〜S209の各手順は、実施の形態1において図4に示したステップS101、S102、S104〜S109とそれぞれ同じ手順であり、説明を省略する。
【0100】
ステップS203において、制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14のメモリから累積点灯時間Xを読み出し、読み出した累積点灯時間Xに応じてフェーズ2におけるランプ電流値を設定する。
【0101】
フェーズ2において設定するランプ電流値は、ランプ累積点灯時間Xに応じて変化させる。図14は、フェーズ2において設定するランプ電流値IA2を、累積点灯時間Xに応じて、(a)直線的に増加させる、(b)曲線的に増加させる、それぞれの例を示す図である。
【0102】
また、図15は、フェーズ2において設定するランプ電流値IA2を累積点灯時間Xに応じて段階的に増加させる例を示す図であり、(a)は累積点灯時間Xの刻み間隔ΔXが一定、(b)は刻み間隔ΔXが累積点灯時間Xに応じて変化する。
【0103】
図14、15において、累積点灯時間がゼロである未使用の高圧放電灯では、電極の加熱に十分なフェーズ2の高圧放電灯電流値を初期値IA2_iとして設定するとともに、過剰な加熱による高圧放電灯の著しい寿命低下を防ぐために、所定の最大値IA2_MAXを設定する。
【0104】
このように設定したランプ電流値の初期値IA2は、制御回路15によって定電流制御するが、この他に、累積点灯時間をパラメータとして、ランプ電圧に応じてランプ電流を設定する方法がある。
【0105】
図16は、フェーズ2において設定するランプ電流値IA2を、累積点灯時間Xをパラメータとし、ランプ電圧VA2に応じて、(a)一定に制御、(b)VIカーブによる制御、それぞれの例を示す図である。
【0106】
このように、フェーズ2におけるランプ電流値IA2を設定することにより、新しい高圧放電灯に過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯においても、電極を十分に加熱することができ、ランプの累積点灯時間に関わらず、フェーズ3へ移行する時点で安定な放電を形成することが可能となる。
【0107】
図17は、このようにランプ累積点灯時間Xに応じて設定したフェーズ2におけるランプ電流値により、(a)未使用、(b)寿命末期、の各高圧放電灯を点灯した場合のランプ電流を示す波形図である。
【0108】
図17において、未使用および寿命末期の各高圧放電灯それぞれの累積点灯時間X1、X2(X1<X2)に応じて、フェーズ2におけるランプ電流値I1、I2(I1<I2を設定することにより、未使用および寿命末期の各高圧放電灯のいずれも、フェーズ3で安定な放電が形成されていることが分る。
【0109】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプDLの累積点灯時間を計時して記憶するランプ点灯状態検出部14を備え、制御回路15の制御の下で、累積点灯時間Xに応じて始動シーケンスのフェーズ2におけるランプ電流値を設定することで、新しい高圧放電灯に対して過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯に対しても電極の加熱に十分な加熱を行うことができ、いずれの高圧放電灯においても、フェーズ3へ移行する時点では安定な放電が形成される。
【0110】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態1において示した放電灯点灯装置と共通であり、図示を省略する。
【0111】
本実施の形態の放電灯点灯装置において、制御回路15は、実施の形態1におけるフェーズ2の継続時間TA2の制御と、実施の形態2におけるフェーズ2の高圧放電灯電流値IA2の制御を組み合わせた電流時間積を設定し、設定した電流時間積に基づいて、ランプ累積点灯時間Xに応じたフェーズ2におけるランプDLへの供給電力量を制御する。
【0112】
次に、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。図18は、本実施の形態における始動シーケンスの動作手順を説明するフローチャートである。なお、図18のフローチャートにおけるステップS301、S302、S304〜S309の各手順は、実施の形態1において図4に示したステップS101、S102、S104〜S109とそれぞれ同じ手順であり、説明を省略する。
【0113】
ステップS303において、制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14のメモリから読み出した累積点灯時間Xに応じてフェーズ2におけるランプの電流時間積を設定する。
【0114】
フェーズ2において設定する電流時間積は、ランプ累積点灯時間Xに応じて変化させる。図19は、フェーズ2において設定する電流時間積ITA2を、累積点灯時間Xに応じて、(a)直線的に増加させる、(b)曲線的に増加させる、それぞれの例を示す図である。
【0115】
図19において、累積点灯時間がゼロである未使用の高圧放電灯では、電極の加熱に十分なフェーズ2の高圧放電灯の電流時間積を初期値ITA2_jとして設定するとともに、過剰な加熱による著しいランプの寿命低下を防ぐために、所定の最大値ITA2_MAXを設定する。
【0116】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態3に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプDLの累積点灯時間を計時して記憶するランプ点灯状態検出部14を備え、制御回路15の制御の下で、累積点灯時間Xに応じて始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積を設定し、設定した電流時間積に基づいて高圧放電灯への供給電力量を制御することで、新しい高圧放電灯に対しては過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯に対しても電極の十分な加熱を行うことができ、いずれの高圧放電灯においても、フェーズ3へ移行する時点では安定な放電が形成される。
【0117】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態1において示した放電灯点灯装置と共通であり、図示を省略する。
【0118】
本実施の形態の放電灯点灯装置において、ランプ点灯状態検出部14は、ランプDLの始動回数を検出して加算し、累積始動回数Yとして記憶する。制御回路15は、ランプDLの累積始動回数Yに応じてフェーズ2における電流時間積の設定を行うとともに、設定した電流時間積に基づいてランプDLに供給する供給電力量を制御する。
【0119】
次に、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。図20は、本実施の形態における始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0120】
電源がオンされた後、ステップS401において、新しい高圧放電灯DLに交換されたか否かを判定する。判定の結果、新しい高圧放電灯DLに交換されていない場合は、ランプ点灯状態検出部14に記憶されている累積始動回数Yを読み出す(ステップS402)。
【0121】
次いで、読み出した累積始動回数Yに応じてフェーズ2におけるランプの電流時間積を設定する(ステップS403)。
【0122】
一方、ステップS401の手順で、新しい高圧放電灯DLに交換されたと判定した場合は、ステップS404において、ランプ点灯状態検出部14に記憶されている累積始動回数Yをリセットして、ステップS403の手順にスキップする。
【0123】
フェーズ2において設定する電流時間積は、実施の形態3において説明したと同様であるので、説明を省略する。
【0124】
ステップS405では、制御回路15の制御の下で、先に説明した始動シーケンスのフェーズ1を実行する。その後、ステップS406で、ランプDLの累積点始動回数Yに1を加算して記憶する。
【0125】
ステップS407においては、制御回路15の制御の下で、設定した電流時間積に基づいて先に説明した始動シーケンスのフェーズ2を実行し、続くステップS408でフェーズ3を実行する。
【0126】
次いで、ランプDLの点灯判定動作を実行し(ステップS409)、点灯していないと判定した場合は、ステップS405に戻って以降の手順を再度繰り返す。
【0127】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態4に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプDLの累積始動回数を計数して記憶するランプ点灯状態検出部14を備え、制御回路15の制御の下で、累積始動回数Yに応じて始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積を設定し、設定した電流時間積ITA2に基づいてフェーズ2の高圧放電灯DLへの供給電力量を制御することで、新しい高圧放電灯に対しては過剰なストレスを与えることがなく、放電が不安定になり易い累積点灯時間が長い高圧放電灯に対しても電極の加熱に十分な加熱を行うことができ、いずれの高圧放電灯においても、フェーズ3へ移行する時点では安定な放電が形成される。
【0128】
なお、このようなランプDLの累積始動回数Yと、実施の形態1〜3において説明したランプDLの累積点灯時間Xの両情報から、フェーズ2におけるランプDLへの電力供給量を設定してもよい。
【0129】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態1において示した放電灯点灯装置と共通であり、図示を省略する。
【0130】
本実施の形態の放電灯点灯装置において、ランプ点灯状態検出部14は、点灯した際のランプDL両端の電圧を抵抗などで分圧し、フェーズ3におけるランプ電圧の実効値を検出する。そして、ランプ電圧実効値のランプDLを装着した際の点灯初期時と、最近点灯時における各データを記憶する。なお、フェーズ3におけるランプ電圧の実効値の代わりに、再点弧電圧を用いてもよい。
【0131】
図22は、フェーズ3の安定時におけるランプ電圧の波形を例示する図であり、ランプ電圧の1周期におけるピークが再点弧電圧Vpである。
【0132】
図23は、ランプ電圧の再点弧電圧Vpを検出する回路の例を示す図であり、ランプの両端電圧を抵抗R4、R5で分圧した後、コンパレータOpを用いてランプ電圧のピーク値Vpを検出する。
【0133】
制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14から最近及び初期点灯時におけるランプ電圧実効値を読み出してその差を求め、実効値の差に応じてフェーズ2における電流時間積の設定を行うとともに、設定した電流時間積に基づいてランプDLに供給する電力量を制御する。
【0134】
一般的に、累積点灯時間の長い(古い)ランプは、放電維持電圧が高くなり、安定点灯時のランプ電圧も高くなる。本実施の形態はこの性質を利用してランプDLに供給する電力量を制御することで、ランプDLの放電時における安定性を向上させるものである。
【0135】
次に、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。図21は、本実施の形態における始動シーケンスの動作手順を説明するフローチャートである。
【0136】
電源がオンされた後、ステップS501において、新しい高圧放電灯DLに交換されたか否かを判定する。判定の結果、新しい高圧放電灯DLに交換されていない場合は、ランプ点灯状態検出部14から点灯初期時におけるランプ電圧実効値Vla_iを読み出す(ステップS502)。
【0137】
次いで、ランプ点灯状態検出部14から最近の点灯時におけるランプ電圧実効値Vlaを読み出し(ステップS503)、初期点灯時におけるランプ電圧実効値Vla_iとの差ΔVlaを求める(ステップS504)。
【0138】
そして、ランプ電圧実効値の差ΔVlaに応じて、フェーズ2におけるランプの電流時間積を設定する(ステップS505)。
【0139】
一方、ステップS501の手順で、新しい高圧放電灯DLに交換されたと判定した場合は、ステップS506において、ランプ点灯状態検出部14に記憶されている初期点灯時におけるランプ電圧実効値Vla_iをリセットし、ステップS505の手順にスキップする。
【0140】
フェーズ2において設定する電流時間積は、ランプ電圧実効値の差ΔVlaに応じて変化させる。図24は、フェーズ2において設定する電流時間積ITA2を、ランプ電圧実効値の差ΔVlaに応じて、(a)直線的に増加させる、(b)曲線的に増加させる、それぞれの例を示す図である。
【0141】
また、図24において、累積点灯時間がゼロである未使用の高圧放電灯では、電極の加熱に十分なフェーズ2の電流時間積を初期値ITA2_jとして設定するとともに、過剰な加熱による高圧放電灯の著しい寿命低下を防ぐために、所定の最大値ITA2_MAXを設定する。
【0142】
図21に示すフローチャートに戻り、テップSS507〜S510の各手順は、実施の形態1において図4に示したステップSS105〜S108とそれぞれ同じ手順であり、説明を省略する。
【0143】
ステップS511では、ランプDLを点灯してから1時間経過したか否かを判定し、1時間が経過していないと判定した場合は、ステップS510の手順に戻って以降の手順を繰り返す。
【0144】
一方、ステップS511で点灯後1時間が経過したと判定した場合は、ステップS512において、最近点灯時におけるランプ電圧の実効値Vlaをランプ点灯状態検出部14に書き込んでデータを更新する。
【0145】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態5に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプDLの点灯初期と最近のランプ電圧実効値を検出して記憶するランプ点灯状態検出部14を備え、検出したランプ電圧実効値の差に応じて始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を設定し、設定した電流時間積ITA2に基づいてフェーズ2の高圧放電灯DLに供給する電力量を制御することで、ランプ使用の初期から寿命末期に至るまで、フェーズ2において電極を最適に加熱することが可能となり、過剰な加熱によってランプの寿命に著しい悪影響を与えることを回避することができる。その結果、フェーズ3に移行する時点では安定な放電が形成される。
【0146】
また、本実施の形態の放電灯点灯装置によれば、ランプDLの点灯状態を検出する頻度が少なくて済むので、メモリの記憶容量を含む回路構成が簡単となる。
【0147】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態1において示した放電灯点灯装置と共通であり、図示を省略する。
【0148】
本実施の形態の放電灯点灯装置において、ランプ点灯状態検出部14は、ランプDLの点灯時に、絶縁破壊してから後の始動時電気特性を検出して記憶する。
【0149】
制御回路15は、ランプ点灯状態検出部14から始動時電気特性を読み出し、始動時電気特性に応じてフェーズ2における電流時間積の設定を行うとともに、設定した電流時間積に基づいてランプDLに供給する電力量を制御する。
【0150】
一般的に、始動時における電気特性には、高圧放電灯管内の不純物等による個体差に関する情報が表れる。不純物が多く含まれる高圧放電灯では、放電維持電圧が高くなり、始動時のランプ電圧も高くなる。本実施の形態は、この性質を利用してランプDLに供給する電力量を制御することで、ランプDLの放電の安定性を向上させるものである。
【0151】
次に、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。図25は、本実施の形態における始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0152】
電源がオンされた後、ステップS601において、先に説明した始動シーケンスのフェーズ1を実行し、続いて、ランプDLに絶縁破壊が生じたか否かを判定する(ステップS602)。
【0153】
ステップS602の手順で、ランプDLに絶縁破壊が生じていないと判定した場合は、ステップS601の手順に戻って以降の手順を繰り返す。
【0154】
一方、ステップS602でランプDLに絶縁破壊が生じたと判定した場合は、ランプ点灯状態検出部14により、ランプDLの始動時におけるランプ電圧VA1を検出する(ステップS603)。
【0155】
図26は、検出するランプ電圧VA1の例を示すものであり、最低電圧Vmin、絶縁破壊電圧Vign、グロー放電時の電圧Vgがある。最低電圧Vminを検出するには、ランプDLの電極間電圧を抵抗で分圧し、マイコン等でサンプリングする。また、グロー放電時の電圧VGの検出には、ランプ電流ILAが非常に小さい時点、例えば10mA程度である時のランプ電圧を測定する。
【0156】
ステップS604では、検出したランプ電圧VA1に応じて、フェーズ2におけるランプの電流時間積を設定する。
【0157】
フェーズ2において設定する電流時間積は、ランプ電圧VA1に応じて変化させる。図27は、フェーズ2において設定する電流時間積ITA2を、ランプ電圧VA1に応じて、(a)直線的に増加させる、(b)曲線的に増加させる、それぞれの例を示す図である。
【0158】
ステップS605では、制御回路15の制御の下で、設定した電流時間積に基づいて先に説明した始動シーケンスのフェーズ2を実行し、続くステップS506でフェーズ3を実行する。
【0159】
次いで、ランプDLの点灯判定動作を実行し(ステップS607)、点灯していないと判定した場合は、ステップS601に戻って以降の手順を繰り返す。
【0160】
なお、このような動作手順によると、ランプ点灯状態14にメモリを用意しなくても、ランプ個々の個体差に関する情報を得ることができるという利点がある。しかし、始動シーケンスにおいて、フェーズ2が開始する前の電気特性を検出すると、フェーズ2より後の電気特性は検出することができない。例えば、図26に示した最低電圧Vminを測定しようとした場合、フェーズ1ではランプ電圧が下がりきっておらず、本来の最低電圧Vminより高い値が検出されてしまう。
【0161】
この問題は、図28に示すフローチャートの手順を実行することにより、解決することできる。
【0162】
電源がオンされた後、ステップS701において、ランプ点灯状態14のメモリから先に記憶しておいたランプ電圧VAを読み出す。
【0163】
次いで、読み出したランプ電圧VAに応じて、フェーズ2におけるランプの電流時間積を設定する。
【0164】
続くステップS703において、前述したように、始動シーケンスのフェーズ1〜3をサブルーチンとして実行する。
【0165】
その後、ランプ電圧VAを検出して、ランプ点灯状態14のメモリに記憶し(ステップS704)、ランプDLの点灯判定動作を実行する(ステップS705)。
【0166】
このように、ランプDLを前回点灯した際の、始動時から安定して放電するまでの電気特性を検出してランプ点灯状態14のメモリに記憶し、次回にランプDLを始動する際は、記憶された電気特性に応じて、フェーズ2の高圧放電灯に供給する電力量を設定してもよい。
【0167】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態6に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプ点灯状態検出部14によって、絶縁破壊してから後の始動時電気特性を検出し、検出した始動時電気特性に応じて、始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を設定し、設定した電流時間積ITA2に基づいてフェーズ2の高圧放電灯DLに供給する電力量を制御することで、ランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、フェーズ3に移行する時点で安定な放電を形成することが可能となる。
【0168】
(実施の形態7)
一般に、高圧放電灯の管内に不純物として、例えば水が混入すると、水素と酸素に分離する。このうち、水素は高圧放電灯の点灯に従って徐々に管外に抜け出していき、点灯約100時間でほぼ抜け切ってしまうといわれる。しかし、酸素はその後も管内に残り、次第に高圧放電灯管壁の蛍光物質と結合して高圧放電灯の始動性を悪化させる要因となる。
【0169】
本実施の形態は、この問題を回避するために、高圧放電灯を点灯した略100時間以内において、高圧放電灯個々の個体差に関する情報である電気特性を検出して記憶し、点灯の100時間が経過した後は、記憶された電気特性に応じてフェーズ2における電流時間積を設定し、高圧放電灯に供給する電力量を制御するものである。
【0170】
図29は、本発明の実施の形態7に係る高圧放電灯点灯装置の概略構成を示す図である。本実施の形態の高圧放電灯点灯装置4は、実施の形態1において図9に示した高圧放電灯点灯装置2のランプ点灯状態検出部14に替えて、ランプ点灯状態検出部24を有する構成である。なお、図29において、図9と同じ構成については、同一符号を付して説明を簡略に、若しくは省略する。
【0171】
ランプ点灯状態検出部24は、累積点灯時間カウンタ241と、ランプ電圧検出部242、及び記憶部243を備えている。
【0172】
累積点灯時間カウンタ241は、ランプDLが点灯している時間を常に計時し、その値を記憶部243に記憶する。記憶された値は、電源がオフされ電力の供給が絶たれても保持される。
【0173】
ランプ電圧検出部242は、ランプDLが装着されてから、所定の累積点灯時間内のランプ電気特性を検出して記憶部243に記憶する。記憶したランプ電気特性は、ランプDLが交換されるまで保持される。本実施の形態におけるランプ電気特性は、ランプDLが絶縁破壊してからフェーズ2を開始するまでの最低ランプ電圧Vminであり、所定の累積点灯時間として、100時間を設定する。
【0174】
最低ランプ電圧Vminは、図30に示すように、累積点灯時間Xの経過と共に減少する。また、最低ランプ電圧Vminは高圧放電灯によっても異なる。図30では、累積点灯時間が100時間以内であるX時間において、高圧放電灯A、Bそれぞれの最低ランプ電圧Vmin_A、Vmin_Bを黒点で示している。
【0175】
なお、検出するランプ電気特性は、最低ランプ電圧Vminに限るものではない。例えば、図26において示したランプの絶縁破壊電圧Vign、グロー放電時の電圧Vg、及び安定点灯時のランプ電圧実効値Vls、更には、再点弧電圧Vpであってもよい。
【0176】
次に、このように構成された本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の始動シーケンス動作について説明する。図31は、本実施の形態における始動シーケンスの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0177】
電源がオンされた後、ステップS801において、新しい高圧放電灯DLに交換されたか否かを判定する。判定の結果、新しい高圧放電灯DLに交換されていない場合は、ランプ点灯状態検出部24から累積点灯時間X、最低ランプ電圧Vmin、ランプ電圧実効値Vlaを読み出す。
【0178】
次いで、読み出した累積点灯時間Xは100時間より短いか否かを判定する(ステップS803)。
【0179】
ステップS803における判定の結果、100時間以上であると判定した場合は、読み出した最低ランプ電圧Vminに応じて、フェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を設定する(ステップS804)。
【0180】
ここでの最低ランプ電圧Vminは、例えば、図33に示すように、X=0でのVminと、X=100時間でのVminとの平均値を、初期データVmin[0−100H]として算出し、ランプ点灯状態検出部24の記憶部243に記憶していたもので、この値は新しい高圧放電灯に交換されるまで保持される。
【0181】
そして、以降のランプ始動時には、記憶されていた初期データVmin[0−100H]の値に応じて、フェーズ2での電流時間積ITA2の設定を行う。この場合、Vmin[0−100H]の値が大きい程、フェーズ2ITA2が大きくなるように設定する。
【0182】
なお、上記した点灯初期データVmin[0−100H]は、X=0とX=100時間の2点におけるVminの平均値に限らず、X=0〜100時間における連続分布の平均値でもよい。または、所定の点灯時間X1、例えば0時間、或いは50時間におけるVminであってもよい。
【0183】
電流時間積ITA2は、図32に示すように、ランプ毎にその最低ランプ電圧Vminに応じて、図32に示すように、Vminの値が大きいほど大きくなるよう設定する。
【0184】
ステップS805では、制御回路15の制御の下で、設定した電流時間積に基づいて先に説明した始動シーケンスのフェーズ1〜3をサブルーチンとして実行する。
【0185】
更に、ランプDLの点灯判定動作を実行し(ステップS806)、点灯していないと判定した場合は、ステップS805に戻って再度フェーズ1〜3のサブルーチンを実行する。
【0186】
一方、ステップS806の手順で、ランプDLが点灯したと判定した場合は、ステップS807において、ランプ点灯状態検出部24の累積点灯時間カウンタ241によって累積点灯時間Xをカウントする。
【0187】
ステップS801の手順において、新しい高圧放電灯DLに交換されていると判定した場合は、ランプ点灯状態検出部24に記憶されている累積点灯時間X、最低ランプ電圧Vmin、ランプ電圧実効値Vlaをリセットする(ステップS808)。
【0188】
そして、ステップS809において、フェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を最低ランプ電圧Vminに応じて設定する。この手順は、先のステップS803において、累積点灯時間Xが100時間以内である場合も同様に行う。
【0189】
ステップS810では、設定した電流時間積に基づいて、始動シーケンスのフェーズ1〜3をサブルーチンとして実行する。
【0190】
次いで、ランプ点灯状態検出部24のランプ電圧検出部242によってランプ電圧VAを検出し、記憶部243に記憶する。
【0191】
そして、ランプDLの点灯判定動作を実行し(ステップS812)、点灯していないと判定した場合は、ステップS810に戻って以降の手順を繰り返す。
【0192】
一方、ステップS812の手順で、ランプDLが点灯したと判定した場合は、ステップS813において、ランプ点灯状態検出部24の累積点灯時間カウンタ241によって累積点灯時間Xをカウントし、ランプDLを点灯してから1時間が経過したか否かを判定する(ステップS814)。
【0193】
その結果、1時間が経過していないと判定した場合は、ステップS812の手順に戻って以降の手順を繰り返す。
【0194】
また、ステップS814の手順で、点灯後1時間が経過したと判定した場合は、ステップS815において、放電の安定時におけるランプ電圧実効値Vlaをランプ点灯状態検出部24のランプ電圧検出部242によって検出し、その後ステップS812の手順に戻って以降の手順を繰り返す。
【0195】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態7に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプの個体情報である絶縁破壊の最低ランプ電圧に応じて、始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を設定し、設定した電流時間積ITA2に基づいてフェーズ2の高圧放電灯DLに供給する電力量を制御することで、ランプ内部に混入した不純物の量など、高圧放電灯の個体差に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、フェーズ3に移行する時点で安定な放電を形成することが可能となる。
【0196】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置の回路構成は、実施の形態7において示した図29の放電灯点灯装置4と共通であり、図示を省略する。
【0197】
本実施の形態が実施の形態7と異なる点は、電流時間積ITA2を設定するために検出する高圧放電灯の個体差に関する情報として、ランプの電気特性のみならず、実施の形態1と同様の累計点灯時間をも加味することである。
【0198】
以下、本実施の形態に係る高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。
【0199】
図29において、ランプ電圧検出部243は、高圧放電灯の個体差に関する情報として、累積点灯時間Xが100時間未満においては、ランプDLの絶縁破壊からフェーズ2が開始されるまでの最低ランプ電圧Vminを検出し、記憶部243に記憶する。そして、この値を読み出して電流時間積ITA2の設定を行う。
【0200】
一方、累積点灯時間Xが100時間以上経過後においては、累積点灯時間Xが大きくなるにつれて、電流時間積ITA2も大きく設定するが、記憶部243に記憶された累積点灯時間Xが100時間未満における最低ランプ電圧Vminを用いて、最低ランプ電圧Vminの点灯初期データVmin[0−100H]を算出し、電流時間積ITA2の設定を補正する。
【0201】
点灯初期データVmin[0−100H]は、図33に示すように、X=0でのVminと、X=100時間でのVminとの平均値として算出する。そして、このVmin[0−100H]の値に応じて、累積点灯時間Xに対する電流時間積ITA2の傾きを補正する。
【0202】
例えば、図33において、ランプA、Bの累積点灯時間Xに対する最低ランプ電圧Vminは、累世点灯時間の0から100時間の範囲でランプBが大きく、そのため最低ランプ電圧Vmin点灯初期データVmin[0−100H]も、ランプBの方が大きくなる。これにより、累積点灯時間Xに対する電流時間積ITA2の傾きを、図34に示すように、ランプBの方が大きくなるように補正する。
【0203】
なお、上記した点灯初期データVmin[0−100H]は、X=0とX=100時間の2点におけるVminの平均値に限らず、X=0〜100時間における連続分布の平均値でもよい。または、所定の点灯時間X1、例えば0時間、或いは50時間におけるVminであってもよい。
【0204】
以上説明したように、このような本発明の実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置によれば、ランプの固体情報である絶縁は介護の最低ランプ電圧と、ランプの累積点灯時間に応じて、始動シーケンスのフェーズ2におけるランプの電流時間積ITA2を設定し、設定した電流時間積ITA2に基づいてフェーズ2の高圧放電灯DLに供給する電力量を制御することで、高圧放電灯の個体差および累積点灯時間に関わらず、フェーズ2において電極を最適に加熱することができ、フェーズ3に移行する時点では安定な放電を形成することが可能となる。
【0205】
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9は、実施の形態1〜実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置を用いた照明器具である。図34(a)は、本発明の実施の形態9に係る照明器具の一種であるダウンライト、図34(b)、(c)はスポットライト、のそれぞれ外観を示す斜視図である。
【0206】
図34(a)〜(c)に示す照明器具は、実施の形態1〜実施の形態8に係る高圧放電灯点灯装置1〜4のいずれかを収納した器具本体51と、ランプDL及びランプソケットを収納した灯体52を備える。また、図34(a)、(b)の照明器具は、それぞれ、高圧放電灯点灯装置1〜4のいずれかとランプソケットを電気的に接続する給電線53を備える。
【0207】
また、図34(a)〜(c)に示すいずれかの照明器具の複数個を、それぞれ制御する制御装置と共に用いることにより、照明システムを構築することができる。
【0208】
このような本発明の実施の形態9に係る照明器具および照明システムによれば、ランプの累積点灯時間に関わらず、安定した点灯始動を実現できる。
【符号の説明】
【0209】
1〜4 高圧放電灯点灯装置
11 フルブリッジ回路
12 始動回路
13 チョッパ
14、24 ランプ点灯状態検出部
15 始動回路
241 累積点灯時間カウンタ
242 ランプ電圧検出部
243 記憶部
15 制御回路
51 器具本体
52 灯体
53 給電線
DL 高圧放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、高圧放電灯を始動させるための高電圧を発生させる始動回路と、前記電力変換回路および前記始動回路を制御する制御回路を備え、前記高圧放電灯の絶縁破壊後に、前記高圧放電灯の電極を加熱する電極加熱期間と、前記高圧放電灯に交流電流を供給して放電を安定に持続させる安定期間を有する高圧放電灯点灯装置であって、
前記高圧放電灯の点灯状態を検出するランプ点灯状態検出部を備え、
前記制御回路は、
前記ランプ点灯状態検出部によって検出した前記高圧放電灯の点灯状態の情報に応じて、前記電極加熱期間における前記高圧放電灯への供給電力量を設定することを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記点灯状態の情報は、
前記高圧放電灯の累積点灯時間であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記点灯状態の情報は、
前記高圧放電灯の電気特性であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記点灯状態の情報は、
前記累積点灯時間および前記電気特性であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
前記高圧放電灯を装着した時と、前回の電気特性との変化値であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
前記高圧放電灯を装着した時から、所定の前記累積点灯時間までの電気特性であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
前記高圧放電灯の絶縁破壊後から、前記安定期間に至るまでの電気特性であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項8】
請求項7に記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
最低ランプ電圧であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項9】
請求項3乃至5のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
前記安定期間におけるランプ電圧の実効値であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項10】
請求項3乃至5のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電気特性は、
前記安定期間における再点弧電圧であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電力供給量は、
前記高圧放電灯への供給電流値であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置であって、
前記電力供給量は、
前記電極加熱期間の継続時間であることを特徴とする
高圧放電灯点灯装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置と、
前記放電灯点灯装置に電気的に接続されるとともに、前記高圧放電灯を電気的、且つ機械的に接続するソケットと、
前記高圧放電灯点灯装置および前記ソケットを保持する器具本体と、
を備えることを特徴とする
照明器具。
【請求項14】
請求項13に記載の複数個の照明器具と、
前記複数個の照明器具をそれぞれ制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする
照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2010−198785(P2010−198785A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39649(P2009−39649)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】