説明

高圧流体用バルブ

【課題】バルブの開弁が容易であり、小型化を図ることができる高圧流体用バルブを提供する。
【解決手段】一次側流路R1に流入する高圧流体を二次側流路R2に排出する高圧流体用バルブであって、一次側流路R1と二次側流路R2との間に設けられた弁座11と、この弁座11に着離可能に設けられた弁体40と、を備え、弁体40は、弁座11から離座するときの移動方向において、一次側流路R1の高圧流体の圧力が相殺される第1の作用面P1と、二次側流路R2の低圧流体の圧力が相殺される第2の作用面P2と、を備えて構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス等の高圧流体を貯蔵する高圧容器に搭載される高圧流体用バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、燃料電池電気自動車に用いられる水素ガス等の貯蔵を行う場合に、高圧容器が使用されている。燃料電池電気自動車に用いられる水素は、液体に比べて取り扱いが容易であることから気体の状態のものが用いられ、高圧容器のガス供給口には、通流孔を開閉する電磁開閉式の高圧流体用バルブが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された高圧流体用バルブは、図4(a)に示すように、電磁コイル60への通電・非通電によりプランジャ61がコイルに吸引・吸引解除され、弁体62が弁座63に着離して高圧容器50の内部と外部とを連通する弁室V1を開閉し、水素ガスを供給または停止するようになっている。
弁体62はパイロット弁64を備えており、開弁時には、図4(b)に示すように、プランジャ61によってこのパイロット弁64が弁体62よりも先に開弁するように構成されている。つまり、開弁時には、プランジャ61の作動によってパイロット弁64が先に開弁し、これによって、弁体62の一次側流路R1と二次側流路R2との圧力差が小さくされる。そして、パイロット弁64の開弁に続き、図4(c)に示すように、プランジャ61によって弁体62が弁座63から離座し、弁体62を通じて高圧容器50の内部と外部とが連通される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−163896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、従来の高圧流体用バルブでは、パイロット弁64が弁体62より先に開かれることで、弁体62の一次側流路R1と二次側流路R2との圧力差を小さくすることが可能である。
しかしながら、パイロット弁64のパイロットシートφ1は、バルブシートφ2に比べて小径に形成されてはいるものの、一次側流路R1と二次側流路R2との差圧が大きい場合には、開弁時にプランジャ61を引く力を大きく設定する必要がある。
具体的には、例えば、一次側流路R1の圧力を35MPa、二次側流路R2の圧力を1MPa、φ1=1とすると、差圧から単純にパイロット弁64を開くために必要となるプランジャ61の吸引力Nは、次式(1)により求められ、
吸引力N=1/4×1×π(パイロットシート面積)×34MPa(差圧)・・(1)
26.7Nとなる。つまり、パイロットシートφ1が小径であっても、前記差圧が大きい場合には、結果としてプランジャ61を引く力を大きく設定する必要がある。
このため、従来の高圧流体用バルブでは、電磁コイル60を大きくしてプランジャ61を吸引する力が大きくなるように設定しなければならず、全体が大型化するという問題を有していた。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、弁体の開弁が容易であり、小型化を図ることができる高圧流体用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、一次側流路に流入する高圧流体を二次側流路に排出する高圧流体用バルブであって、前記一次側流路と前記二次側流路との間に設けられた弁座と、この弁座に着離可能に設けられた弁体と、を備え、前記弁体は、前記弁座から離座するときの移動方向において、前記一次側流路の高圧流体の圧力が相殺される第1の作用面と、前記二次側流路の低圧流体の圧力が相殺される第2の作用面と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁座から離座するときの移動方向において、弁体は、一次側流路の高圧流体の圧力が第1の作用面によって相殺され、また、二次側流路の低圧流体の圧力が第2の作用面によって相殺されるので、一次側流路と二次側流路との差圧による、弁座に対する弁体の押し付け力を低減することができる。したがって、従来のように、弁体を離座させる力(プランジャを吸引する力)が大きくなるように電磁コイルを設定する必要がなく、小さな力(吸引力)で吸引することができて、弁体の開閉が容易になる。また、大きな電磁コイルを必要としないので、高圧用流体バルブの小型化を図ることができる。
【0009】
また本発明は、前記弁座における受圧面積と前記第1の作用面における受圧面積とが同等である構成とするのがよい。このように構成することによって、一次側流路の高圧流体の圧力を第1の作用面によって好適に相殺することができる。
【0010】
また本発明は、前記一次側流路から区画されて前記弁体の背部側に形成され、前記弁座から当該弁体が離座するときの移動に伴って容積が変化する圧力バランス室と、前記二次側流路と前記圧力バランス室とを連通する連通路とを備え、前記圧力バランス室に前記第1の作用面および前記第2の作用面が設けられている構成とするのがよい。このような高圧流体用バルブによれば、弁体の背部側に形成された圧力バランス室に、連通路を通じて二次側流路の圧力が導入される。圧力バランス室には、第1,第2の作用面が設けられているので、一次側流路の高圧流体の圧力、および二次側流路の低圧流体の圧力がともに相殺され、これによって、一次側流路と二次側流路との差圧に基づいて弁体が弁座に押し付けられる力を低減することができる。
【0011】
さらに本発明は、前記圧力バランス室は、前記弁体に設けられたシリンダ部と、このシリンダ部に挿入された固定ピストンとによって構成されるのがよい。このような高圧流体用バルブによれば、簡単な構成によって圧力バランス室を形成することができる。
【0012】
また本発明は、前記固定ピストンは、シール手段を介して前記弁体の前記シリンダ部に嵌挿されているとともに、前記弁体は、前記シリンダ部の外周面に前記一次側流路の高圧流体の圧力が作用する第3の作用面を有してなる構成とするのがよい。このような構成によれば、固定ピストンは、シール手段を介して弁体のシリンダ部に嵌挿されるとともに、一次側流路の高圧流体の圧力は、シリンダ部の外周面の第3の作用面に作用するので、固定ピストンと弁体との間のシール性を好適に確保することができる。
【0013】
また本発明は、前記弁体に連結されたプランジャと、前記プランジャを前記弁座へ向けて付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記プランジャを移動させる電磁コイルとを備えた構成とするのがよい。このような構成によれば、付勢手段によって弁体が弁座に着座したときの高いシール性能を確実にしかも安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バルブの開弁が容易であり、小型化を図ることができる高圧流体用バルブが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を適宜図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る高圧流体用バルブを示す断面図、図2(a)は閉弁時の要部の拡大断面図、図2(b)は開弁時の要部の拡大断面図である。なお、本実施形態では、燃料電池電気自動車に搭載された水素ガスの高圧容器に適用した例を示すが、これに限定される意味ではなく、その他の高圧流体の高圧容器等に対しても適用することができる。また、以下では、「上下」は、高圧流体用バルブを高圧容器に取り付けた状態を基準としている。
【0016】
図1に示すように、高圧流体用バルブは、高圧容器50に装着されて、この高圧容器50に貯留された高圧ガスとしての水素ガスを供給するためのものであり、弁装着体10と、この弁装着体10の下部に装着され、電磁コイル21が装着された円筒状のソレノイド部材20と、このソレノイド部材20の内空に配置されたプランジャ30と、このプランジャ30を後記する弁座11へ向けて付勢する付勢手段としての戻しばね31と、ソレノイド部材20の上部内空に固定された固定ピストン35と、この固定ピストン35が挿入される弁体40と、を主として備えて構成される。そして、固定ピストン35が挿入された弁体40内には、本実施形態の特徴的構成である圧力バランス室45が形成される。このような高圧流体用バルブは、電磁コイル21が励磁されると、弁体40が弁座11から離座して開弁され、高圧容器50に貯留された水素ガスを図示しない減圧弁等を介して燃料電池スタックのアノード側に供給する。
【0017】
以下、各部について詳細に説明する。
弁装着体10は、高圧容器50の容器口部51に装着されて容器口部51を密閉する段付き円筒状の部材であり、下部外壁に設けられた図示しないねじ部を容器口部51の内壁に螺着させることで取り付けられる。弁装着体10内には、弁体40が対峙する弁室Vが形成されており、この弁室Vに通じる二次側流路R2(低圧の水素ガスが通流する流路)が弁装着体10の上部側方へ向けて形成されている。弁室Vには、下側に配置される弁体40に向けて円筒状の弁座11が突設されている。弁座11の下端部は、弁体40が密着した状態で着座するように、丸く面取りされている。
また、弁装着体10の内空に面する下部内壁には、ソレノイド部材20が螺合されるねじ部12が形成されている。
【0018】
ソレノイド部材20は、その上部外壁に形成されたねじ部22を、弁装着体10の前記ねじ部12に螺合することで、弁装着体10に組み付けられる。ソレノイド部材20には、ねじ部22の下方周部につば部23が形成されており、弁装着体10にソレノイド部材20が組み付けられた状態で、弁装着体10の下端部にこのつば部23が当接する。これによって、弁装着体10の内空にソレノイド部材20が必要以上に挿入されず、弁装着体10に対するソレノイド部材20の組み付け状態が確定する。
【0019】
ソレノイド部材20には、つば部23の下方に、高圧容器50内とソレノイド部材20の内空とを連通する透孔24が形成されている。この透孔24は、高圧容器50内に貯留された水素ガスの導入ポートとして機能する。本実施形態では、透孔24がソレノイド部材20の周方向に所定の間隔を置いて計4個(2個のみ図示)形成されている。また、ソレノイド部材20の内空は、これらの透孔24に通じる部分の径寸法がプランジャ30の外径寸法よりも大きくされており、プランジャ30の外壁面との間に、透孔24を通じて導入された水素ガスの一次側流路R1(高圧の水素ガスが通流する流路)が形成されるようになっている。この一次側流路R1は、弁体40の周りを通って弁座11の側方へ連通している。
【0020】
電磁コイル21は、ソレノイド部材20の下部側に環装されており、ソレノイド部材20の下部に装着される固定コア25とともに、カバー21bで覆われている。電磁コイル21には、ワイヤーハーネス21aを介して制御電流が供給され、このワイヤーハーネス21aは、弁装着体10に設けられた図示しない孔部を貫通する等して、高圧容器50の外部へ引き出され、図示しない制御ユニット等に接続されている。
【0021】
固定コア25は、鉄や鉄合金等の磁性材料からなり、ソレノイド部材20の中空に下側から挿入さてソレノイド部材20の下端に固定される。
【0022】
プランジャ30は、鉄や鉄合金等の磁性材料からなり、その上部にピン32を介して弁体40を連結させた状態で、ソレノイド部材20の内部を上下方向に移動する。固定コア25とプランジャ30との間には、圧縮状態で戻しばね31が介設されており、この戻しばね31によって、プランジャ30は弁座11へ向けて付勢されている。すなわち、プランジャ30は、制御ユニット等の指令に基づいて電磁コイル21を励磁したときに、固定コア25に引き寄せられて下方向に移動し、弁体40を下方向に引っ張る。なお、固定コア25とプランジャ30との間には、プランジャ30の下方向の移動を許容するスペースSが形成されている。
【0023】
固定ピストン35は、図2(a)に示すように、切断面によっては断面ハット状を呈しており、ピストン部36と、固定用のフランジ部37とを有している。ピストン部36は、弁体40の後記するシリンダ部42に嵌挿されてシリンダ部42内に圧力バランス室45を形成する。ピストン部36には、周壁部に周状の凹溝36aが形成されており、この凹溝36aには、シール手段としてのOリング36bとリング状のシール部材36cとが配設されている。Oリング36bは、ゴム等の弾性を有する部材からなり、圧力バランス室45を封止する。シール部材36cは、樹脂製の材料からなり、Oリング36bとともに圧力バランス室45を封止するとともに、凹溝36a内に配置されるスペーサとして機能し、Oリング36bの位置ずれ、はみ出しを規制するようなっている。
フランジ部37は、図3に示すように、ピストン部36の下部両側から側方へそれぞれ張り出すように設けられており、ソレノイド部材20の上部内壁に形成された円筒段部26に載置された状態で上部内空に嵌め入れられる。
【0024】
また、固定ピストン35の上には、リング状の固定部材38がソレノイド部材20の上部内壁に対して圧入されて固定される。このような固定部材38の圧入によって、固定ピストン35は、図2(a)に示すように、ソレノイド部材20の上部内空から抜け出し不能に固定される。
【0025】
弁体40は、図3に示すように、有底円筒状の弁部41と、弁部41の下部に連続して形成された円筒状のシリンダ部42とからなり、プランジャ30の上部にピン32を介して連結されている(図1参照)。
弁部41には、弁装着体10(図1参照)の弁座11に当接するシール材43が装着される。弁部41およびシール材43には、弁室V(図2(a)参照)とシリンダ部42とを連通する連通路41a,43aがそれぞれ形成されている。
【0026】
シリンダ部42の下部には、図3に示すように、切欠部42b,42b(一方のみ図示)が形成されており、この切欠部42b,42bに固定ピストン35のフランジ部37,37が配置されて、固定ピストン35のピストン部36がシリンダ部42に嵌挿されるようになっている。シリンダ部42の下部には、ピン32が嵌め入れられる孔部42cが設けられている。なお、ピン32は、プランジャ30の上部に設けられた貫通孔30aを介して孔部42cに嵌め入れられる。
【0027】
固定ピストン35のピストン部36がシリンダ部42に嵌挿されると(シリンダ部42にピストン部36が嵌挿されるように、ピストン部36にシリンダ部42を被せるようにして装着すると)、シリンダ部42の内部には、閉弁状態において一次側流路R1から区画された圧力バランス室45が形成される。
この圧力バランス室45は、弁座11に弁部41が着離するときの弁体40の上下移動に伴って、容積が変化するようになっている。このような圧力バランス室45は、弁座11に弁体40が着座した状態で、連通路41a,43aを通じて二次側流路R2にのみ連通し、一次側流路R1の高圧の水素ガスが流入不可の状態となる。つまり、弁座11に弁体40が着座した状態で、圧力バランス室45には、一次側流路R1の高圧の水素ガスの圧力が作用することがない。
【0028】
本実施形態では、図2(a)に示すように、弁座11の径φ4と、圧力バランス室45の底面(第1の作用面P1)を形成する固定ピストン35のピストン部36の径φ3とを同径としてあり、弁座11における受圧面積と圧力バランス室45の底面の受圧面積とが同等となるようにしてある。つまり、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力は、弁体40が弁座11から離座するときの移動方向に対して作用することがなく、圧力バランス室45の底面の受圧面積によって実質的に相殺されてキャンセルされるようになっている。
また、圧力バランス室45の上面は、弁部41の背部側(下部側)に位置しており、弁体40が弁座11から離座するときの移動方向に対して、二次側流路R2の低圧の水素ガスの圧力をその上面の受圧面積に対応して相殺する第2の作用面P2として機能するようになっている。
なお、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力は、圧力バランス室45を取り囲むシリンダ部42の外周面(第3の作用面P3)42a,弁体41の側面に作用する。つまり、高圧の水素ガスの圧力は、いずれも弁体40の移動方向に直交する方向に弁体40に対して作用する。
【0029】
次に、水素ガスを供給する際の作用について図2(a)(b)を参照して説明する。
図2(a)に示すように、水素ガスの非供給時は、戻しばね31(図1参照)の付勢力によってプランジャ30が上方向へ移動しており、弁体40が弁座11に着座して弁体40の弁部41に設けられたシール材43が弁座11に密着する。これによって、一次側流路R1と二次側流路R2との間が流通不能に遮断されている。この場合、二次側流路R2、弁室Vおよび圧力バランス室45が相互に連通した状態となっているので、二次側流路R2の水素ガスが、弁室Vから連通路41a,43aを通じて圧力バランス室45に流入し、圧力バランス室45は低圧の水素ガスで満たされた状態になる。ここで、圧力バランス室45の底面側には、固定ピストン35が嵌挿され、シリンダ部42と固定ピストン35との間が、Oリング36b、シール部材36cで封止されているので、圧力バランス室45に対して一次側流路R1の高圧の水素ガスが流入することがなく、圧力バランス室45は低圧の状態に保持されることとなる。
【0030】
この状態から、図示しない制御ユニット等の指令によって、電磁コイル21(図1参照)に制御電流が供給されると、図2(b)に示すように、プランジャ30が固定コア25(図1参照)に引き寄せられて下方向に移動し、弁体40が下方向に引っ張られる。これによって、弁座11から弁部41が離座し、一次側流路R1の高圧の水素ガスが二次側流路R2に通流する。なお、この状態で、圧力バランス室45は、その容積が小さくされるか、閉じられた状態にされる。
ここで、図2(a)に示すように、弁座11の径φ4と、圧力バランス室45の底面の径φ3とが同径とされており、弁座11における受圧面積と圧力バランス室45の底面の受圧面積とが同等とされているので、圧力バランス室45の第1の作用面P1(底面)が、弁体40が弁座11から離座するときの移動方向に対し、一次側流路R1の高圧の水素ガスの圧力を実質的に相殺するように作用し、その高圧の水素ガスの圧力をキャンセルする。
【0031】
また、圧力バランス室45の第2の作用面P2(上面)が、弁部41の背部側(下部側)に位置して、弁体40が弁座11から離座するときの移動方向に対し、二次側流路R2の低圧の水素ガスの圧力をその受圧面積に対応して相殺するように作用する。
【0032】
具体的に、例えば、一次側流路R1の圧力を35MPa、二次側流路R2の圧力を1MPaとし、φ3=φ4=10とすると、弁体40を開くために必要となる吸引力は、単純に差圧のみに基づいて求めると、次式(2)により、
吸引力=1/4×(10−10)π(実質的な受圧面積)×34MPa(差圧)・・(2)
0(ゼロ)Nとなる。つまり、弁体40の開弁時にプランジャ30を引く力が、一次側流路R1と二次側流路R2との差圧に依存しなくなり、一定かつ低設定にすることができる。
【0033】
なお、図示しない制御ユニット等の指令によって、電磁コイル21(図1参照)への制御電流の供給が停止されると、プランジャ30が戻しばね31の付勢力によって上方向へ移動し、弁体40の弁部41が弁座11に着座する。これによって、一次側流路R1と二次側流路R2とが流通不能に遮断される。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、弁座11から弁体40が離座するときの移動方向において、弁体40は、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力が第1の作用面P1によって相殺され、また、二次側流路R2における低圧の水素ガスの圧力が第2の作用面P2によって相殺されるので、一次側流路R1と二次側流路R2との差圧による、弁座11に対する弁体40の押し付け力を低減することができる。したがって、従来のように、プランジャ30を吸引する力が大きくなるように電磁コイル21として大きなものを使用する必要がなく、小さな吸引力でプランジャ30を吸引することができて、弁体40の開閉が容易になる。また、大きな電磁コイルを必要としないので、高圧用流体バルブの小型化を図ることができる。
【0035】
また、弁座11における受圧面積と第1の作用面P1における受圧面積とが同等であるので、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力を第1の作用面P1によって好適に相殺することができる。
【0036】
また、圧力バランス室45には、第1,第2の作用面P1,P2が設けられているので、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力、および二次側流路R2における低圧の水素ガスの圧力がともに相殺され、これによって、一次側流路R1と二次側流路R2とにおける水素ガスの差圧による、弁座11に対する弁体40の押し付け力を低減することができる。
【0037】
さらに、圧力バランス室45は、弁体40に設けられたシリンダ部42と、このシリンダ部42に挿入された固定ピストン35とを備えてなるので、構成が簡単であるとともに、低コストであるという利点が得られる。
【0038】
また、固定ピストン35は、Oリング36bおよびシール部材36cを介して弁体40のシリンダ部42に嵌挿されるとともに、一次側流路R1における高圧の水素ガスの圧力は、シリンダ部42の外周面42aの第3の作用面P3に作用するので、固定ピストン35と弁体40との間のシール性を好適に確保することができる。
【0039】
また、戻しばね31によって弁体40が弁座11に着座したときの高いシール性能を確実にしかも安価に実現することができる。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、発明の主旨に応じた適宜の変更実施が可能であることはいうまでもない。例えば、弁体40や固定ピストン35、圧力バランス室45の形状は任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高圧流体用バルブを示す断面図である。
【図2】(a)は閉弁時の要部の拡大断面図、(b)は開弁時の要部の拡大断面図である。
【図3】高圧流体用バルブを構成する主部材の分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 弁装着体
11 弁座
20 ソレノイド部材
21 電磁コイル
21a ワイヤーハーネス
24 透孔
25 固定コア
30 プランジャ
31 戻しばね(付勢手段)
35 固定ピストン
36 ピストン部
36b Oリング(シール手段)
36c シール部材(シール手段)
38 固定部材
40 弁体
41 弁部
41a,43a 連通路
42 シリンダ部
42a 外周面
45 圧力バランス室
50 高圧容器
P1 第1の作用面
P2 第2の作用面
P3 第3の作用面
R1 一次側流路
R2 二次側流路
V 弁室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路に流入する高圧流体を二次側流路に排出する高圧流体用バルブであって、
前記一次側流路と前記二次側流路との間に設けられた弁座と、電磁コイルにより前記弁座に着離可能に設けられた弁体と、を備え、
前記弁体は、前記弁座から離座するときの移動方向において、
前記一次側流路の高圧流体の圧力が相殺される第1の作用面と、
前記二次側流路の低圧流体の圧力が相殺される第2の作用面と、を備えて構成されることを特徴とする高圧流体用バルブ。
【請求項2】
前記弁座における受圧面積と前記第1の作用面における受圧面積とが同等であることを特徴とする請求項1に記載の高圧流体用バルブ。
【請求項3】
前記一次側流路から区画されて前記弁体の背部側に形成され、前記弁座から当該弁体が離座するときの移動に伴って容積が変化する圧力バランス室と、
前記二次側流路と前記圧力バランス室とを連通する連通路とを備え、
前記圧力バランス室に前記第1の作用面および前記第2の作用面が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧流体用バルブ。
【請求項4】
前記圧力バランス室は、前記弁体に設けられたシリンダ部と、このシリンダ部に挿入された固定ピストンとによって構成されることを特徴とする請求項3に記載の高圧流体用バルブ。
【請求項5】
前記固定ピストンは、シール手段を介して前記弁体の前記シリンダ部に嵌挿されているとともに、
前記弁体は、前記シリンダ部の外周面に前記一次側流路の高圧流体の圧力が作用する第3の作用面を有してなることを特徴とする請求項4に記載の高圧流体用バルブ。
【請求項6】
前記弁体に連結されたプランジャと、前記プランジャを前記弁座へ向けて付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記プランジャを移動させる電磁コイルとを備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高圧流体用バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−115965(P2008−115965A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300531(P2006−300531)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】