説明

高圧電源装置および画像形成装置

【課題】 帯電装置の寿命の維持と小型化とを両立させることが可能な高圧電源装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 第1パルス信号は、第1パルス発振器P1で生成され、第2パルス信号は、第2パルス発振器P2で生成され、それぞれトランジスタU1,U2のオン、オフを制御する。トランジスタU1,U2からの出力(交流成分)は、高圧トランスT1によって昇圧されて2次側巻線からは高圧電圧Voutが出力される。また自励発振器ACからの出力が、整流および平滑化された直流バイアス電圧Vdcは、高圧トランスT1の2次側巻線に入力され、高圧トランスT1の出力電圧Voutに、直流バイアス電圧Vdcが重畳される。第1および第2パルス信号のそれぞれのパルス幅は等しく、いずれもオンである期間がオフである期間よりも短く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置に放電のための電源電圧を印加する高圧電源装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの、電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像手段から供給されかつトナーを含む現像剤により現像して可視像とし、この可視像を紙などの記録材に転写した後、定着ローラによって加熱および加圧し、記録材に定着させることにより、記録材上に画像が形成される。
【0003】
カラー画像形成装置では、複数の色のトナーを用いて画像を形成するため、上記のような感光体を中心とする画像形成手段を色ごとに備え、各色のトナー像を一旦中間転写体と呼ばれるベルト状の転写媒体上に重ねるように転写する。全てのトナー像を中間転写体に転写したのち、改めて記録材に転写して画像を形成する。
【0004】
中間転写体に積層されたトナー像の転写特性を向上させるために、転写ベルト上のトナー像に対してイオン放電により帯電を施すための帯電装置が備えられる。
【0005】
帯電装置に高圧電源からの出力を印加する場合、高圧トランスの一次側にスイッチング用のトランジスタを接続し、高圧トランスの二次側の出力を帯電装置に接続している。パルス信号によりトランジスタを制御し、トランジスタのスイッチング動作によって一次側を周期的にDC(直流)電源と接地電位とに切り替えて帯電装置を放電させていた。
【0006】
現在のところ帯電装置には寿命の制約(放電回数の制約)があり、スイッチングの周期を短くすると、放電回数が増加することになり帯電装置の寿命を短くしてしまう。一方で、帯電装置の寿命を長くするようにトランジスタのスイッチング周期を長くすると、L(インダクタンス)成分の大きい大型の高圧トランスが必要となり、高圧電源が大型化するデメリットがあり、帯電装置の寿命の維持と高圧電源の小型化とを両立させることは困難である
特許文献1記載の画像形成装置では、帯電手段へ高圧出力を給電する際に、高圧トランス一次側に印加した入力パルス電圧のデューティー比を、二次側高圧巻線に伝達し、二次側高圧巻線から直接帯電手段へ給電する。
【0007】
【特許文献1】特開平1−112259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帯電装置の寿命の維持と小型化とを両立させることが可能な高圧電源装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯電装置で放電させるための電圧を供給する高圧電源装置において、
高圧トランスと、
高圧トランスの一次側に電源電圧を印加するようスイッチング動作を行う第1のスイッチング手段と、
高圧トランスの一次側を接地電位に接続するようスイッチング動作を行う第2のスイッチング手段と、
第1のスイッチング手段のスイッチング動作を制御する第1パルス信号を発生する第1発生部と、
第2のスイッチング手段のスイッチング動作を制御する第2パルス信号を発生する第2発生部とを備え、
第1発生部および第2発生部が発生する第1パルス信号および第2パルス信号は、オンである期間がオフである期間よりも短く設定されていることを特徴とする高圧電源装置である。
【0010】
また本発明は、帯電装置は、沿面放電帯電装置であることを特徴とする。
また本発明は、第1パルス信号がオフになると同時に第2パルス信号がオンになるように設定されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1パルス信号および第2パルス信号のオン期間の和は1/10k秒であり、それぞれのオン期間とオフ期間の和は1/700秒であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記の高圧電源装置によって駆動される帯電装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1パルス信号によって、高圧トランスの一次側への電源電圧を印加が制御され、第2パルス信号によって、高圧トランスの一次側の接地電位への接続が制御される。これらの第1パルス信号および第2パルス信号は、オンである期間がオフである期間よりも短く設定される。
【0014】
これにより、スイッチングの周期を短くすることなくL(インダクタンス)成分の小さい小型の高圧トランスが利用可能となり、帯電装置の寿命の維持と高圧電源の小型化を両立させることができる。
【0015】
また本発明によれば、帯電装置として沿面放電帯電装置に対して出力電圧を供給することが好ましい。
【0016】
また本発明によれば、第1パルス信号がオフになると同時に第2パルス信号がオンになるように設定されることで、高圧トランスの駆動周波数を高くすることができる。
【0017】
また本発明によれば、第1パルス信号および第2パルス信号のオン期間の和を1/10k秒とすることが好ましく、それぞれのオン期間とオフ期間の和を1/700秒とすることが好ましい。
【0018】
また本発明によれば、上記の高圧電源によって駆動される帯電装置を備えることにより、装置寿命を縮めることなく画像形成装置の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の一形態である高圧電源装置を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置100は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および中間転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0020】
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像手段14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像手段14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11の回転方向まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像手段14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
【0021】
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子と導電性ポリマーとの少なくともいずれか1つを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0022】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温と低湿との少なくともいずれか1つの環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
【0023】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環とフルオレノン環との少なくともいずれか1つを含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0024】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
【0025】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0026】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0027】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0028】
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。
【0029】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像手段14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb,c,m,yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0030】
現像手段14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ、供給ローラ、撹拌ローラなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラが回転駆動可能に設けられる。現像ローラは、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラは現像ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ周辺にトナーを供給する。攪拌ローラは供給ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0031】
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置100においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0032】
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0033】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b,c,m,y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0034】
トナー像帯電装置50は、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像に対してイオン放電により帯電を施す。トナー像帯電装置50は、沿面放電を行う帯電装置であって放電面を中間転写ベルト25に対向するように、すなわちベルト表面に担持されたトナー像に対向するように設けられる。トナー像帯電装置50には、放電のための高圧電源装置が接続される。トナー像帯電装置50およびこれに電源電圧を供給する高圧電源装置についての詳細は後述する。
【0035】
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0036】
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0037】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0038】
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital
Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュー
タ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
【0039】
図2は、トナー像帯電装置50の層構成を示す断面図であり、図3は、トナー像帯電装置50の各層の構成を示す平面図である。
【0040】
トナー像帯電装置50は、誘電体で構成される基板51と、帯状に形成され1つの面が装置から露出するように基板51の表層に設けられる放電電極52と、基板51内にU字状に内層され、放電電極52と所定の間隔を空けて設けられる接地電極53と、接地電極53の下方に、接地電極53と同様にU字状に内層され、電流が流れることによりジュール熱を発生するヒータ54とを備える。
【0041】
放電電極52に外部の高圧電源装置から高圧電圧が印加されることにより、接地電極53との間で表面に沿ってイオン放電(沿面放電)が発生し、この放電によって中間転写ベルト25に担持されたトナー像を帯電させる。これによりトナー像が中間転写ベルト25から記録用紙へ良好に転写される。またヒータ54は、発熱によりトナー像帯電装置50を加熱し、装置表面の結露を防止して放電特性を改善することができる。
【0042】
図4は、トナー像帯電装置50に電源電圧を供給する高圧電源装置60の構成を示す回路図である。
【0043】
第1パルス信号は、第1パルス発振器P1で生成され、第1スイッチング手段であるトランジスタU1のベース端子に入力され、第2パルス信号は、第2パルス発振器P2で生成され、第2スイッチング手段であるトランジスタU2のベース端子に入力されることで、それぞれトランジスタU1,U2のオン、オフを制御する制御パルスである。
【0044】
第1および第2パルス信号は、CPUの制御により第1および第2パルス発振器で生成されるか、またはCPUのシーケンス制御により生成されるように構成されていてもよい。
【0045】
トランジスタU1,U2には、自励発振器ACから交流電圧が入力され、トランジスタU1,U2からの出力(交流成分)は、コンデンサC1を介して高圧トランスT1の1次側巻線に入力される。高圧トランスT1によって昇圧されて2次側巻線からは高圧電圧Voutが出力される。
【0046】
また自励発振器ACからの出力は、高圧トランスT2の1次側巻線に供給され、2次側巻線の出力はダイオードD1Aにより半波整流されてコンデンサC3で平滑されて高圧の直流バイアス電圧Vdcが生成される。
【0047】
生成された直流バイアス電圧Vdcは、高圧トランスT1の2次側巻線に入力され、高圧トランスT1の出力電圧Voutに、直流バイアス電圧Vdcが重畳される。
【0048】
図5は、従来の高圧電源の制御パルスと出力電圧の波形を示す図である。
図5(a)は、第1パルス信号の波形を示し、図5(b)は、第2パルス信号の波形を示し、図5(c)は、出力電圧Voutの波形を示す。
【0049】
制御パルスである第1および第2パルス信号は、周波数700Hzの矩形波で、いずれもオンである期間とオフである期間が同じである。また第2パルス信号は、第1パルス信号の反転出力である。出力電圧Voutは、第2パルス信号がオンのタイミングで−3kVを出力する。
【0050】
本件発明者によって、沿面放電型の帯電装置においては、出力電圧Voutが高圧(−3kV)となった直後の微小時間tの期間でしかイオン放電が生じないことがわかっている。これに着目し、帯電装置の放電回数を従来と同一にすることで帯電装置の寿命を維持するとともに、高圧トランスの駆動周波数を高くすることでL(インダクタンス)成分が小さい小型の高圧トランスを用いることを可能とした。
【0051】
図6は、本発明の高圧電源の制御パルスと出力電圧の波形を示す図である。
図6(a)は、第1パルス信号の波形を示し、図6(b)は、第2パルス信号の波形を示し、図6(c)は、出力電圧Voutの波形を示す。
【0052】
制御パルスである第1および第2パルス信号のそれぞれのパルス幅は等しく、周波数は700Hzであるが、いずれもオンである期間がオフである期間よりも短く設定される。
【0053】
たとえば、オフ期間が1/20k秒であるのに対してオン期間は((1/700)−(1/20k))秒である。
【0054】
第2パルス信号は、第1パルス信号に対して1パルス幅分遅れてパルスが発生する。すなわち、第1パルス信号がオフになると同時に第2パルス信号がオンになる。いずれの信号のパルス幅も同じで1/20k秒であるので、第1パルス信号および第2パルス信号のオン期間の和は1/10k秒となり、駆動周波数は10kHzとなる。また、それぞれの周波数は700Hzであるので、オン時間とオフ時間の和は1/700秒である。
【0055】
出力電圧Voutについては、第1パルス信号がオンになるとともに0Vを出力し、第1パルス信号がオンの間は0Vが出力される。第1パルス信号がオフ、第2パルス信号がオンになると−3kVを出力する。第1パルス信号がオフ、第2パルス信号もオフになると重畳された直流バイアス電圧Vdc−1.5kVを出力する。
【0056】
このとき、イオン放電の期間は、第1パルス信号および第2パルス信号のオン期間の和は1/10k秒であり、放電回数は従来と変わらない。
【0057】
このように、従来と同じインダクタンス成分のトランスを用いたときでも、高圧トランスの駆動周波数を高くし、放電回数は従来の回数を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の一形態である高圧電源装置を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。
【図2】トナー像帯電装置50の層構成を示す断面図である。
【図3】トナー像帯電装置50の各層の構成を示す平面図である。
【図4】トナー像帯電装置50に電源電圧を供給する高圧電源装置60の構成を示す回路図である。
【図5】従来の高圧電源の制御パルスと出力電圧の波形を示す図である。
【図6】本発明の高圧電源の制御パルスと出力電圧の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
2 トナー像形成手段
3 転写手段
4 定着手段
5 記録媒体供給手段
6 排出手段
50 トナー像帯電装置
51 基板
52 放電電極
53 接地電極
54 ヒータ
60 高圧電源装置
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電装置で放電させるための電圧を供給する高圧電源装置において、
高圧トランスと、
高圧トランスの一次側に電源電圧を印加するようスイッチング動作を行う第1のスイッチング手段と、
高圧トランスの一次側を接地電位に接続するようスイッチング動作を行う第2のスイッチング手段と、
第1のスイッチング手段のスイッチング動作を制御する第1パルス信号を発生する第1発生部と、
第2のスイッチング手段のスイッチング動作を制御する第2パルス信号を発生する第2発生部とを備え、
第1発生部および第2発生部が発生する第1パルス信号および第2パルス信号は、オンである期間がオフである期間よりも短く設定されていることを特徴とする高圧電源装置。
【請求項2】
帯電装置は、沿面放電帯電装置であることを特徴とする請求項1記載の高圧電源装置。
【請求項3】
第1パルス信号がオフになると同時に第2パルス信号がオンになるように設定されることを特徴とする請求項1または2記載の高圧電源装置。
【請求項4】
第1パルス信号および第2パルス信号のオン期間の和は1/10k秒であり、それぞれのオン期間とオフ期間の和は1/700秒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の高圧電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の高圧電源装置によって駆動される帯電装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−300980(P2009−300980A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158471(P2008−158471)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】