説明

高容量アルカリ電池

【課題】アルカリ電気化学電池及びその構成要素部品を提供する。
【解決手段】本発明の態様は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に配置されたセパレータとを有する高容量電気化学電池を提供する。カソードは、第1の成分と、第2の成分と、第3の成分とを有する混合物を含む。第1の成分は、第1の元素を含み、第2の成分は、第2の元素を含み、第3の成分は、第1の元素と第2の元素とを含む。混合物は、例えば、混合した金属酸化物とすることができる。セパレータは、アノードとカソードの間の適切なイオン移動をもたらすように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2004年6月4日出願の米国特許仮出願第60/577,292号、2004年8月9日出願の米国一般特許出願第10/914,958号、2004年8月9日出願の米国一般特許出願第10/914,911号、及び2004年8月9日出願の米国一般特許出願第10/914,934号の恩典を主張するものであり、これらの各々の開示は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。
【0002】
連邦政府補助研究又は開発に関する記述
該当しない
【背景技術】
【0003】
アルカリ電気化学電池は、一般的に、細長い円筒形電池(例えば、AA−、AAA−、C−、又はD−サイズ電池)として、又は平坦な電池(例えば、プリズム電池及びボタン電池)として構成される。1次アルカリ電池は、負極(アノード)、正極(カソード)、電解質、セパレータ、正電流コレクタ、及び負電流コレクタを含む。従来の1次アルカリ電気化学電池のカソードは、水酸化カリウムのような水性アルカリ電解質で浸潤された混合物に二酸化マンガン(MnO2)と、当業技術で広く認識されているような合成、天然、膨張グラファイト、又はその混合物のような典型的にはグラファイトである導電炭素質材料とを含む。円筒形電池では、カソード混合物は、環状リングに圧縮されてバッテリ缶に積み重ねられ、又は混合物は、正電流コレクタの役目をする缶内に直接に押し出すことができる。
【0004】
1次アルカリ電池のアノードは、一般的に、カルボキシメチルセルロース(CMC)のようなゲル化剤及び界面活性剤のような他の添加物と共に水酸化カリウムのようなアルカリ電解質に配置された様々な寸法及び形状の亜鉛又は亜鉛合金粒子を含む。負電流コレクタは、通常、真鍮ピン又は釘であるが、ゲル化アノードと電気的に接触するように配置される。電極間に配置されたセパレータは、材料が互いに直接に接触して短絡を引き起こすのを防止しながら、電子ではなく、イオンがカソードとアノードの間で移動することを可能にするものである。従来的に、セパレータは、電解質で浸潤された多孔性不織繊維材料である。セパレータは、一般的に、カソードの半径方向内方に配置される。従来のアルカリ電池の他の態様は公知である。
【0005】
これらの1次電池の商業化の市場での成功と共に、長い使用寿命で保管寿命に問題がなく、かつ一般の携帯装置を作動させる電圧特性を有する電池を設計する新たな手法の開発が続いている。
【0006】
しかし、二酸化マンガン材料は、密度が低く、従来の亜鉛二酸化マンガンアルカリ電気化学電池の放電反応中に水を消費するために(設計担当者は、必要な水を供給する必要がある)、亜鉛アノードに対する利用可能空間の量が制限され(これが使用寿命を決める)、それによって比較的低い容積エネルギ密度をもたらす。認定代替カソード材料は、酸化銅であり、これは、材料密度が高く、2電子放電反応中にいかなる正味の水も消費せず、放電曲線が平坦で、容積エネルギ密度が高く、放電時に容積膨張が殆どない。それは、長寿命バッテリの優れた候補のように思えるが、亜鉛アノードと酸化銅カソードを有する従来のバッテリの作動電圧は、残念ながら、約1.05Vを越えず、適度なカレントドレインで現代の電子装置を作動させるには低すぎる。あらゆる実質的な装置カレントドレインにおいて、従来の酸化銅バッテリは、1Vを著しく下回り、電子装置を殆ど作動不能にする可能性がある。
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/577,292号
【特許文献2】米国一般特許出願第10/914,958号
【特許文献3】米国一般特許出願第10/914,911号
【特許文献4】米国一般特許出願第10/914,934号
【特許文献5】米国特許第5,814,419号
【非特許文献1】Allen J.Bard及びLarry R.Faulkner共著「電気化学法」、「John Wiley & Sons」
【非特許文献2】Wendell M.Latimer著「水溶液における元素の酸化状態及びその電位」、第2版、「Prentice Hall,Inc」、1952年
【発明の開示】
【0008】
本発明の1つの態様によると、電気化学電池は、アノードとカソードを含む。カソードは、カソード活物質を含む。カソード活物質は、混合物を含む。混合物は、第1の成分、第2の成分、及び第3の成分を含む。第1の成分は、第1の元素を含み、第2の成分は、第2の元素を含み、第3の成分は、第1の元素と第2の元素を含む。セパレータは、アノードとカソードの間に配置される。
【0009】
本発明の別の態様によると、電気化学電池は、アノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置されたセパレータを含む。カソードは、カソード活物質を含み、カソード活物質は、MxCuyzで特定される銅の酸化物を含み、Mは、混合酸化物複合体又は錯体を生成することができるあらゆる元素であり、x≦20、y≦20、及びz≦100である。
【0010】
本発明の更に別の態様によると、電気化学電池は、アノード及びカソードを含む。カソードは、カソード活物質を含む。カソード活物質は、酸化マンガンと、銅の酸化物と、MnxCuyzで特定される成分との混合物を含む。セパレータは、アノードとカソードの間に配置される。
【0011】
本発明の更に別の態様によると、電気化学電池は、アノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置されたセパレータを含む。セパレータは、少なくとも1×10-6モル/センチメートル/時の水浸透率を有する。
【0012】
本発明の1つの変形によると、サイズAAアルカリ電気化学電池は、単一の実質的に円筒形のアノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置されたセパレータを含む。電池は、1Aの一定電流放電速度で少なくとも45分にわたって少なくとも1.0Vの放電電圧を有する。
【0013】
他の態様及び利点は、特許請求の範囲と共に様々な実施形態の以下の詳細説明を吟味すれば明らかになり、特定の適応例、構成上の変形、及び物理的属性のより完全な理解が得られるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、アルカリ電気化学電池及びその構成要素部品に関する。代表的な従来の円筒形電池を図1に示すが、当業者は、本発明は、図示の電池に限定されるのではなく、他の円筒形電池構成及び平坦電池(プリズム電池及びボタン電池)のような他の非円筒形電池にも適用されることを認めるであろう。最初に、図1について説明すると、軸線方向に延びる円筒形電池18は、正端子21と、負端子23と、非メッキ処理スチール製円筒形容器20の形態の正電流コレクタとを有する。容器20は、一般的に当業者によって理解されように、電池18を閉鎖するために容器の負端部が圧着されるように正端子21近くの正端部25が始めは閉鎖状態であり、負端子23近くの端部は開放状態である。
【0015】
外周側壁の外径が正電流コレクタ20の内径よりも若干大きいように形成された少なくとも1つ又はそれよりも多くの円筒形環状カソードリング24が、正電流コレクタに圧入される。コーティング22、望ましくは炭素を容器20の半径方向内面に付加してカソードリング24と容器の電気接続を高めることができる。カソードリング24の設置でコーティング22との圧接が成される。カソード24は、更に、アノード26が配置される円筒形電池の中心部に成形された空隙28を形成する内面27を呈している。
【0016】
セパレータ32は、アノード26とカソード24の間に配置される。カソードリング24内側に配置されるアノード26は、略円筒形であり、セパレータ32内面と係合する外周面を有し、本発明の少なくとも1つの態様によるゲル化亜鉛を含む。セパレータは、カソード24とアノード26の間にある内壁27近くに配置される。一般的に水酸化カリウムと水を含むアルカリ水性電解質は、少なくとも部分的にはアノード26、カソードリング24、及びセパレータ32を湿潤させる。
【0017】
ビード30は、負端部41で容器に転造されて密封ディスク34を支持する。負電流コレクタ36が通って延びる密封ディスク34は、容器20の開放端に入れられ、ビード30に接触する。容器20の負開放端41は、密封ディスク34を覆うように圧着されて、電池を封鎖かつ密封するように圧着部とビード30の間でそれを圧縮する。中央開口を有する絶縁ワッシャ38は、負電流コレクタ36の端部が開口を通って突出するように電池圧着端部を覆うように配置される。負電流コレクタ36の端部に接触バネ40が固定される。接触バネ40と正電流コレクタ20にそれぞれ接触するように負端子キャップ42と正端子キャップ44が配置され、絶縁チューブ46とスチールシェル48を電池18周りに配置して両端で圧着して端子キャップを所定の位置に保持することができる。スチールシェル48と絶縁チューブ46を排除すると活性成分が占有可能な電池の内部容積が増大すると考えられることを認めるべきである。このような配置は、「Rayovac Corporation」に譲渡された米国特許第5,814,419号に説明されており、この特許の開示内容は、背景情報目的で本明細書において引用により組み込まれている。
【0018】
カソード24は、酸化物、例えば、銅の酸化物(又は酸化第二銅)、又は銅及び少なくとも1つの他の金属を含む混合酸化物複合体を含み、他の金属は、還元可能な酸化状態を有し、かつカソード活物質として機能することができる。亜鉛アルカリ電池で有用であるこの種のカソード活物質は、例えば、一般的に、MnO2還元時に生成することができる酸化マンガンMn34相の還元中に達成される電圧に比する放電電圧を有することができる。このようなカソードは、その2つの物理的混合物、又は2つ又はそれよりも多くの元素の化学合成複合酸化物を含むことができる。
【0019】
また、本発明のある一定の態様により構成された電池は、1Amp連続放電が必要なもののような高ドレイン用途で改善した性能(従来の電池に対して)を電池が達成することを可能にするセパレータ材料を含む。本発明はまた、電池、アノード、セパレータ、及び電解質の他の成分に関連する可能性があり、これらの成分は、必要に応じて結合させ、本発明による放電電圧及び寿命特性が改善した電池を生成することができる。本明細書で特筆しない本発明の電池の他の態様は、従来のものとすることができる。
【0020】
本発明はまた、カソード、アノード、電解質、セパレータ/障壁、セパレータ/障壁シール、及びアルカリ電気化学電池を作り、かつ使用する方法に関する。
【0021】
カソード材料及び設計
最初に、カソードを中心として説明すると、本発明の1つの態様は、酸化銅が、現在市販されているアルカリ電池と比較して著しく長寿命化する潜在性を有する高容量(電子1個の還元の場合は約337mA/g、電子2個の還元の場合は674mAh/g)カソード材料として公知であることを認識するものである。「酸化銅」という用語は、銅が実質的に+2の酸化銅状態を有する時の酸化第二銅を指すことを意図している。最適条件の下では、酸化銅は、2段階で放電する、すなわち、まずCu23を生成し、次にCu2Oを生成してCu金属を生成する。しかし、いくつかの問題により、一般的に、当業者が従来の亜鉛ゲル化アノードアルカリ電池のカソード材料として酸化銅を含める可能性が小さくなっている。1つの問題は、酸化銅の作動電圧が適切なカレントドレインで1.1Vを超える開回路電圧又は1.0Vを超える閉回路電圧が必要な用途には低すぎるという結果から生じる。本発明の様々な変形により、銅酸化物を含む混合物を含有する電池の作動電圧の少なくとも一部の増加が可能になる。
【0022】
別の問題は、当業技術では「速度能力」とも呼ばれる一般的な市販の酸化銅の電流搬送能力である。この大部分は、利用可能材料の反応速度、表面積、表面活性が過度の電圧降下なしに高いカレントドレインを持続するには不適切であるということに関連する。本発明は、高い放電容量並びに高い速度能力を有するカソード材料の合成を可能にするものである。
【0023】
別の問題は、アルカリ電解質における銅含有カソードからの銅の可溶性である。特に、これらの材料に属する可溶性種は、セパレータを通過してアノードに移動させる場合にアルカリ電池のゲル化亜鉛アノードの保管及び放電に有害なものになる可能性がある。本発明の様々な実施形態では、この問題を緩和及び/又は制御して使用寿命及び保管寿命が改善した電池を達成する方法を開示する。同様の問題は、銀含有カソード材料、ニッケル含有カソード材料、ヨウ素酸塩含有カソード材料、及び/又は硫黄含有カソード材料にも生じている。
【0024】
新材料及び材料の組合せを評価すると共にカソード活物質改善の可能性を調べるために、完全な電気化学電池の試験の前の迅速かつ確実な試験方法は、非常に有用である。見込みのある材料のみを完全な電気化学電池で評価することにより、最適化された電気化学電池の全ての可能な材料の評価に必要な大きなソースを使い果たすことなく開発が大幅に加速する。特別設計の固定具における半割電池試験を以下で説明する。
【0025】
半割電池試験
電気化学システムは、アノード電極とカソード電極を含む。これらの電極の各々は、付随の固有の半反応を有する。例えば、ある一定の放電条件の下のアルカリバッテリでは、アノード半反応は、亜鉛アノードが酸化してZn(OH)2を生成することを伴い、これは、以下の半反応によって表すことができる。
【0026】
Zn+2OH- → ZnO+H2O+2e-
【0027】
同様に、カソード半反応では、二酸化マンガンが還元してMnOOHを生成する。
【0028】
2MnO2+2H2O+2e- → 2MnOOH+2OH-
【0029】
2つの半反応は、組み合わせると、その結果、以下で表されるような電池反応になる。
【0030】
Zn+2MnO2+H2O → ZnO+2MnOOH
【0031】
半反応の電圧挙動(半割電池反応とも呼ばれる)は、Allen J.Bard及びLarry R.Faulkner共著「電気化学法」、「John Wiley & Sons」に説明されているように、安定した基準電極を使用してモニタ又は調査することができる。
【0032】
新しい電極材料の開発、既存の材料の改良において又は電極材料と新しい電解質又は添加物との相互作用をより良く理解するために、当業者は、一般的に、電気化学半割電池を利用し、他方の電極半反応からの干渉がないか又はそれを最小限に抑えるようにしてこのような電極を基準電極に対して調べる。本明細書で説明する新しいカソード材料の開発は、本発明の電気化学電池での使用に対する適性を判断するために、新開発材料の評価、様々な材料の比較及び調査、材料又はその組合せの放電特性の評価を迅速かつ容易に促進するように構成した特殊半割電池を使用して裏付けられたものである。
【0033】
このようなカソード材料の代表的なサンプルをまずモルタル及びすりこぎで少なくとも5分間導電剤と良く混ぜ合わせて、カソードが80%の活物質と20%のグラファイトを含むようにする。このグラファイトは、オハイオ州44145、Westlake所在の「Timcal America」から市販されているKS4合成グラファイトであった。他のグラファイトを使用することもできるが、KS4は、粒径が小さいために、様々な粒径範囲のカソード活物質を評価する上で優れた導電母体になる。電極母体の不適切な電子導電率の影響を最小限に抑えるために、過度の導電剤を必ず使用する。次に、8000ポンドの圧力でペレットプレスにより0.32gの活物質を含む0.4mgの電子/グラファイト混合物を円筒形の側面を有する平坦ペレットに入れる。ペレットダイの内径は、1.07cmである。
【0034】
次に、この圧縮式自立形ペレットをNi拡張金属電流コレクタに当たるように電気化学半割電池固定具に入れる。電気化学電池固定具の概略図を図2aに示すが、固定具は、「Delrin(登録商標)」のような耐アルカリポリマー製である。PTFE又はナイロンのような他のポリマーを使用してもよい。固定具は、2つの部分、すなわち、ブロック68とプレート69を含み、各々が4つの通し穴を有する。カソード電流コレクタ、カソードペレット、セパレータディスクがブロック内の所定の位置に収まった状態で、プレートを4つの「Delrin」ネジとナットを使用してブロックに当たるように固定し、セパレータ、カソード、電流コレクタは、圧縮されて所定の位置に収まる。ブロックとプレートは、各々、ネジのための4つの合い通し穴と、電解質がカソードに進入するために1つの円形中央開口部70とを有する。ブロックとプレートの概略図を図2bに示している。「Delrin」ブロックの中央開口部70は、図2cの正面図に示すステップ72を含む。
【0035】
電池を組み立てるには、不織セパレータ材料から切り取った円形ディスク、例えば、セルロースとPVAを含むF3T23(日本のクラレ株式会社から販売)をまずブロックのスロットに入れる。次に、スロットの厚みよりも若干厚いカソードペレットをセパレータディスクに載置する。次に、Ni拡張金属カソード電流コレクタをカソード表面に載置して表面全体を覆う。次に、プレートを電流コレクタに載置し、緊密にねじ込んで、電流コレクタ、カソード、セパレータの組合せ全体を圧縮する。ブロックは、更に、円形開口部70に垂直な軸線に沿って延びる基準電極開口部69を含み、基準電極開口部69は、中央円形開口部70で終端し、かつ半割電池のオーム電圧降下を最小限に抑えるように、セパレータ表面で基準電極先端が終端するように位置する。Hg/HgO又は亜鉛ワイヤ基準のようなあらゆる標準的な基準電極を使用してもよい。初期の作業は、Hg/HgO基準電極に照らして報告されていたが、簡単さ及び再現性のために、最近の作業では、Znワイヤ基準電極が利用されており、各実験では、新鮮な新しいワイヤを使用している。半割電池試験を目的として、全ての電圧は、亜鉛ワイヤ基準電極に対して報告されていることに注意すべきである。固定具のブロックとプレートから成る部分を組み込むと、カソードペレットが下にある状態でセパレータに面するように、金メッキNiメッシュ製カウンタ電極をブロック表面と当接しかつ中央開口部と面一になるように配置する。次に、このアセンブリ全体を側面を90°回転させて29%KOH電解質を含有する容器に漬ける。
【0036】
サンプルカソードペレットの半割電池試験では、電源ガルバノスタット又はテキサス州カレッジ・ステーション所在の「Arbin Instruments」製のもののような試験システムを使用して、5mA、10mA、又は30mAの一定の電流を印加する。カソードペレットは、同じ表面積及び同じ質量を常に有するので、電流密度/単位面積及び単位当たりの質量は、どの実験でも常に同じままである。一般的に、5mA(15.625mA/g有効)のような低電流は、mAh/gの活物質のカソード材料の重量測定放電容量の判断に使用される。30mA(93.73mA/g)のような高電流は、材料の速度能力の判断に使用される。このような高い電流密度は、高ドレイン、限定電解質条件の下でバッテリ内で十分に性能を発揮しないような粗悪な材料を篩い落とすために使用される。速度能力不足の材料では、放電電流を5mAから30mAに上げると電圧が降下する、すなわち、傾斜プロファイルになる。固定終点電圧までで送出可能容量が大幅に小さくなった場合、その材料は、速度能力不良であり、かつ高電流時の放電効率が低いことを示している。一方、十分な速度能力を有する材料は、電流上昇時の電圧降下は遥かに小さい。また、同じ固定終点電圧までの放電効率が高い。
【0037】
本発明の様々な実施形態は、CuOと実質的に類似の高い放電容量を維持すると同時に、CuOだけの電圧レベルに対して、カソードに金属酸化物、特に、銅酸化物を含む電池の作動放電電圧の少なくとも一部を上げる物理的かつ化学的手法を提供する。本発明の理論に限定されることを意図することなく、熱力学的かつ動力学的考察によって、開示する手法が裏付けられていると考えられる。
【0038】
市販の酸化銅に対してカソードの作動電圧を上げる3種類の一般的な手法を本明細書で開示する。これらの一般的な手法の各範囲内でいくつかの例及び方法を開示する。これらの手法の一部の制限事項、付随にする諸問題、及び問題緩和手段も開示する。
【0039】
第1の一般的な手法では、CuOよりも高い作動電圧を有する少なくとも1つの更に別のカソード活物質、例えば、例示的な二酸化マンガン(EMD、CMD、NMD)、NiO、NiOOH、Cu(OH)2、酸化コバルト、PbO2、AgO、Ag2O、AgCuO2、CuMnO2、Cu2-xMnx2(ここではx<2)、Cu3-xMnx4(ここではx<3)、Cu2Ag24、Cu2Ag23によってCuOを補う。従って、この添加物とCuOの結合は、半割電池試験で判断されるCuOだけよりも高い作動電圧の少なくとも一部も有することになる。
【0040】
第2の一般的な手法では、CuOを基準電極に対してCuOの放電電圧よりも低い放電電圧を有する少なくとも1つの添加物で捕捉してカソードの放電電圧を上げることができる。この手法では、(例えば)CuOと硫化銅(CuS)のような追加材料との間の置換反応の結果として亜鉛の反応全体のギブス自由エネルギが大きくなるように、少なくとも1つの追加材料と様々な方法で混合つまり結合されたCuOを有するカソードが得られる。しかし、適切な添加物とCuOを結合させた時、この組合せは、添加物又はCuOだけよりも高い放電電圧を有する。開回路電圧とCuO、添加物、CuOと添加物の組合せの放電電圧とは、言うまでもなく当業者が実験的に決めることができる。代替的に、本発明者は、適切な添加物の選択は、最初に、亜鉛に対する組合せのギブス自由エネルギの変化、従ってギブス自由エネルギの方程式を利用した還元反応の開回路電圧を推定することによって実験せずとも複数の候補材料を選別して行うことができると認識している。特に、亜鉛に対する組合せの還元反応のギブス自由エネルギの変化が亜鉛に対するいずれかの個々の成分の還元反応のギブス自由エネルギの変化よりも高い時に適切な添加物と特定することができる。言うまでもなく、当業者が理解しているような亜鉛アノードと異なるアノードを有するバッテリには、亜鉛アノードの代替物を代わりに使用することができる。開回路電圧は、熱力学上の特性であり、その値が高いからといって、動力学的考察事項のために生成される電圧が常に高いとは限らないが、開回路電圧が高いということは、適切な添加物候補になる可能性があることを示している。ギブス自由エネルギの変化の計算に基づいて候補材料が選択された状態で、当業者は、単純な実験を行ってその組合せの放電電圧を定めることができることを認識するであろう。この態様について、CuO/CuS混合物を参照して以下で説明する。
【0041】
酸化銅を含むカソードの放電電圧の少なくとも一部を上げる第3の手法では、複数の成分を混合又は合成し、一般的に銅と少なくとも1つ他の金属又は非金属とを含む新しいカソード活物質及び混合物を合成する。銅とマンガンを例として用いて、この手法のいくつかの変形を開示する。1つの変形では、酸化銅を二酸化マンガンの表面に堆積する。第2の変形では、二酸化マンガンを酸化銅の表面に堆積する。これらのいずれも、第1の手法で説明する2つの成分の単純な混合によって起きる急激な遷移及び電圧低下を低減するか又は最小限に抑えることが望ましい。第3の変形では、CuとMnを含む新しいカソード活物質を合成する。第4の変形では、成分の混合物を合成し、銅酸化物を含む成分の速度能力を増大するという更に別の改良点と共に酸化マンガンと酸化銅の望ましい特性を利用する。
【0042】
ここでは銅とマンガンについて詳しく説明するが、ここで開示するこの一般的な手法は、あらゆる材料の組合せに適用される。例えば、MnO2、NiOOH、CuOの電圧特性を組み合わせることを望む場合があるであろう。これらの3つの材料を物理的に混合すれば、バッテリにおける実際的な有用性を限定するような電圧遷移及び恐らくは電圧降下が発生する。本発明で教示する概念を利用すれば、例えば、Mn/Cu、Mn/Ni、Ni/Cu、又はMn/Ni/Cuの混合化合物を合成して、放電反応が混合物において高い電圧の材料から次に低い電圧の材料に切り換わった時に滑らかな電圧遷移をもたらす「架橋」化合物を生成することができる。別の類似の方法では、Cu/Ag酸化物の場合、本発明は、酸化銀、酸化銅、銅/銀混合酸化物を含む混合物として合成されるカソード活物質を提供することができ、混合酸化物相は、混合物の僅かに一部を表し、CuO相は、実質的に大部分を表す。これは、経費軽減上の大きな意味合いを有する。
【0043】
これらの材料の使用は、単に配合させるという方法であっても、使用していない時に発生する電圧降下を低減するか又は最小限に抑える際に有効と考えられる。関連の実施形態では、第4の変形の変形は、合成混合物を二酸化マンガン、NiO、NiOOH、酸化銀のような公知のカソード活物質と混合させて、望ましい放電特性を有する結合カソード活物質を生成する。
【0044】
説明した一般的な手法の様々な組合せを用いると、望ましい特性を有するカソードと電池を達成することができることが更に認識される。
【0045】
第1の手法
第1の手法では、当業者に公知の標準的な処理法を用いてカソードでの使用に望ましい物理的特性(例えば、粒径、表面積など)を有する化学成分を物理的に混合させて均質にすることができる。使用時には、このような物理的混合物は、より高度な酸化物の放電挙動から銅酸化物の放電挙動に遷移する。銅酸化物に対する補足的金属酸化物添加物は、放電の初期部分において亜鉛に対して銅酸化物よりも高い作動電圧を独立してもたらす一般的に公知の正極材料の群から選択することができる。正極材の適切な例としては、以下に限定されるものではないが、二酸化マンガン(EMD、CMD、NMD)、NiO、NiOOH、Cu(OH)2、酸化コバルト、PbO2、AgO、Ag2O、Ag2Cu23、CuAgO2、CuMn24、Cu2MnO4、Cu3-xMnx4、Cu1-xMnx2、Cu2-xMnx2(ここではx<2)、Cu3-xMnx4(ここではx<3)、Cu24、及びその適切な組合せを含むことができる。
【0046】
Mnは、現在最も広く使用されているカソード活物質であることから、本明細書では一例として使用している。従って、CuOを含むカソードの放電曲線の少なくとも初期部分を増大すると同時にCuOによって得られる長寿命を維持するために、MnをCuと組み合わせて使用する。Ni、Co、Pb、Agのような他の元素を使用して類似の方法を利用し、必要に応じて放電曲線の初期部分の電圧を増大することができる。一般的に、活物質の酸化状態が高いほど放電電圧が高くなる。
【0047】
一例として、作動電圧は、最初は高いが放電曲線はかなり傾斜形であるEMDのMnO2(例えば、5%から60%)を適切な量で有するカソードをCuOと混合させて、〜1VでMnO2の高い初期作動電圧とCuOの方の特性である長寿命とを備えた混合カソードが得られる。MnO2が最初に放電すると、次にCuOが放電し、MnO2とCuOの間の遷移は比較的鮮明である。MnO2を約20%まで添加することにより、CuOとほぼ同じ(かつMnO2自体よりも著しく高い)放電容量を得ることができ、ボタン電池においてEMDがCuOと様々な比率で物理的に混合された時の作動電圧の増加を示す図3に示すように、放電の最初の6時間では酸化マンガンの高い作動電圧という利点が得られると考えられる。参考までに、25時間で0.8Vに至るEMDの挙動も示している。この例は、EMD自体よりも少なくとも50%高い容量を有することができる単純な混合カソード材料の電位を示している。望ましい放電特性を満たすために広範囲な比率でこの2つの成分を得ることができる。Ni、Co、Ag、Pbなどのような他の元素を有する化合物も同様に使用することができる。
【0048】
以下に書いた半割電池の反応で分るように、MnO2とCuOの放電機構は、非常に異なっている。
【0049】
MnO2+H2O+le- → MnOOH+OH-
【0050】
MnO2の還元反応では、MnO21モル当たり水1モルが消費される。
【0051】
2CuO+H2O → Cu2O+2OH-
【0052】
この反応では、CuO1モル当たり水1モルが消費される。
【0053】
標準的なZn/MnO2電池では、MnO2は、密度は4.5g/cc、MnO21モル当たりで消費する水は1モルであり、陽子をその構造体に組み込んでMnOOH(不良電子導電体かつ低密度材料)を生成する。カソードの反応には水が必要であるために、電池で使用可能な活物質(例えば、亜鉛とMnO2)の量に限界があり、その結果、容積エネルギ密度が比較的低い。また、カソードは、放電特性は傾斜形であり、有用な容量が殆どなく中間カレントドレイン及び高カレントドレインでは1V未満である。一方、酸化銅(CuO)は、密度は6.3g/cc、最初の電子(体積膨張は殆どなし)で放電するCuO1モル当たりで消費する水は僅かに0.5モルであり、放電特性は、非常に平坦であり、電池内の容積エネルギ密度は高い。
【0054】
Zn/MnO2電池の反応全体において水が必要であるために、一般的に、様々な成分の量の均衡を取りながら行う利用可能容積での電池性能の最適化において電池設計担当者の柔軟性が制限される。理論に制約されるものではないが、本発明者は、銅酸化物を含む電池の水所要量は、カソードが二酸化マンガンだけである電池よりも少なくて済むと判断している。従って、二酸化マンガン及び銅酸化物を含む電池でも、水所要量は同等の二酸化マンガン電池よりも少なくて済むことになる。理論的には、アルカリ二酸化マンガンにおける水とMnO2のモル比は、電子1個の放出の場合は約1を上回らなくてもよい。市販の電池で使用される一般的にモル比は、中間ドレイン及び高ドレインでの電池内の水の移動に関して、かつ低ドレインでの第2の放電の一部を考慮して不足分を補うために、約1.3/1から約1.351/1である。電池に含める水の量を必要以上に増すことは望ましくなく、その理由は、必要以上に増すと、電池の固定内部容積に適合することができる活物質の量が制限されるためである。二酸化マンガンのカソード放電効率は、浸水電解質条件の下での半割電池放電から分るように、水/MnO2モル比が大きくなる時に大きくなることは当業者には公知であろう。
【0055】
本明細書で説明するように、銅酸化物(水の必要性が小さい)を含むカソード材料の混合物並びに二酸化マンガンとの混合物の組合せを利用することにより、本発明者は、電池内で市販のZn/MnO2電池の最先端の設計を大幅に超える水/MnO2モル比を達成することによってMnO2のより高い放電効率を利用することができることを発見した。それによって、本発明の電気化学電池のカソードのMnO2分の放電効率が大幅に改善し、その結果、従来の電池と比較すると全体的に優れた使用寿命になる。限定としてではなく一例として、本明細書で開示する銅酸化物と二酸化マンガン(例えば、EMD、CMD、NMD)との混合物を含む電池を設計して、通常、1.3:1、1.35:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、2:1、5:1、10:1、及び代替的に15:1よりも多い水/MnO2モル比を有するように電池を設計することができる。当業者は、上述の比率の判断が、二酸化マンガンにおけるMnO2の純度に依存することを理解するであろう(これは、二酸化マンガン供給源、すなわち、EMD、CMD、又はNMD、並びに製造法によって変る場合がある)。水/MnO2モル比は、以下のように判断する:a)全ての水供給源、例えば、アノード、カソード、予湿潤電解質などを含む電池の水総モル数を判断する、b)カソード内の二酸化マンガンの質量、86.94の分子量、二酸化マンガン供給源における純度に基づいてMnO2総モル数を計算する(例えば、MnO2純度は、一般的に約90%から約92%である)。
【0056】
2つの部分から成る物理的混合物を含むカソードでは、カソードのCuO分の性能は、恐らく以下の理由でMnO2含有量が多くなる時に劣化するように思われる。理論によって制限されるものではないが、このようなカソードでは、MnO2が実質的に第1の電子を放出した後にCuO放電反応が優勢になる。しかし、効率的な反応にはCuOに対して電解質が不十分であることにより、恐らく材料移動による分極及び電圧降下が生じると考えられる。更に、MnO2放電生成物OH-の結果として電解質濃度も高めであり、これは、酸化銅還元には好ましくない。放電時のMnO2体積膨張により、CuO粒子がそれ自体からかつ通常はカソード内に供給されている導電材料(例えば、合成又は膨張グラファイト)から分離されると考えられる。それによって、カソード内でオーム抵抗が大きくなり、その結果、電圧が更に消散される。
【0057】
電池が連続的に放電した時に、この電圧損失は、カソードがカソードの殆どMnO2成分の放電から殆どCuO成分の放電に遷移する領域で放電電圧曲線の下降という形で現れることが多い。更に、アノードは、CuO放電が始まった時には既に部分的に放電状態であり、アノードの分極も電池電圧に貢献する。これらの過程の正味効果を推測すると、CuO材料は、他の場合よりも低い電圧で作動し、その結果、バッテリ電圧は、図3に示すように望ましい値よりも低いものになる。更に、高いカレントドレインでは、遷移下降が起こるとすれば、遷移下降により、時期尚早にバッテリ電圧が試験又は装置の終点遮断電圧よりも下に押し下げられる可能性があり、バッテリの有用性が大幅に小さくなる。本発明のある一定の態様によれば、この降下を十分に除去して、バッテリが装置の終点電圧になるのが早すぎないことを保証することができる。これは、少なくとも第1の成分の第1の元素と第2の成分の第2の元素とを含むような混合物の第3の成分の適切な選択によって可能にされる。次に、この混合物で作られた電気化学電池の放電曲線は、連続的なものになり、カソード活物質の表示される連続的な放電曲線は、正未満の傾斜を有する。
【0058】
また、本発明のある一定の態様(すなわち、CuO≧カソード活物質の40重量%)は、亜鉛アノード及び本発明のカソードを有する電池の作動電圧がZn/CuO電池よりも高いように、電池の別々の層又はペレットに(又は酸化物の混合物を含む別々の層に)複数のカソード活物質を任意的に提供して異種の放電挙動の悪影響を緩和しようとするものである。
【0059】
本発明の1つの態様は、得られるカソードの放電電圧がCuOの電圧と比較して放電の最小部分よりも高いように、1つよりも多い成分を含む活物質を有するカソードを提供する。適切な態様においては、1)第1のカソード活物質よりも高い放電電圧か、又は2)第1のカソード活物質よりも低い放電電圧を有する添加物と共にカソード材料を組み込んだバッテリの放電電圧は、第1のカソード活物質と組み合わされた時に、第1のカソード活物質よりも高い放電電圧を有する組合せを生成する、すなわち、電池放電時期の少なくとも初期の5%について少なくとも5mA/gの電流密度で1.05Vよりも大きい放電電圧を生成する(これは、作動電圧が0.8Vのレベルに低減されるまで電池が連続的に放電されることを意味する)。従って、本発明の態様に従って構成されたカソードは、酸化銅カソード活物質を含む従来技術の電池よりも高い放電電圧を達成するが、従来技術の電池の放電電圧は、最新の装置を作動させるほど高いものではない。この実施形態は、銅酸化物と物理的に混合される添加物の事例に限定されるものではないことを認めるべきである。この実施形態は、本明細書で開示する様々な手法で説明する方法を包含するものとする。
【0060】
第2の手法
また、第2の一般論では、CuOよりも低い放電電圧を有するがCuOと組み合わされるとあらゆる成分単独よりも高い放電電圧を生成する元素又は化合物から、結合のための補足的添加物を選択することができる。反応速度が適切に急激である時、これらの結合の放電電圧も開回路電圧と同じ傾向を辿る。このような材料の例としては、以下に限定されるものではないが、元素状態で存在する硫黄、セレニウム、テルル、硫化物、セレン化物、テルル化物、CuS、Ag2S、ZnS、B23、SnS、FeS、Fe23、CoS、NiS、CuSe、CuTe、CuAgS、CuAg3Sのような沃素酸塩、及びそれらの適切な化合物及び混合物を含むことができる。例えば、CuO/CuSの組合せの場合では、放電電圧は、CuOとCuS(すなわち、CuOよりも低い放電電圧を有するCuO)との間の置換反応の結果、予想外に高いものであると考えられる。従って、純粋なCuS自体の方がznに対して放電電圧が低いが(znに対して0.7V)、CuSとCuOを組み合わせると、あらゆる材料自体よりも高い電圧が放電される。CuO/CuOシステムを例示しやすいように、このような反応の理論的な開回路電圧を以下に示している。
【0061】
酸化銅還元反応:(反応1)
2CuO+2e+H2O → Cu2O+2OH-
ΔG=−50.2Kcal
理論OCV:1.089V対Zn
【0062】
硫化銅還元反応(反応2)
2CuS+2e+H2O → Cu2S+HS-+OH-
ΔG=−32.6Kcal
理論OCV:0.078対Zn
【0063】
酸化銅/硫化銅混合物還元反応:(反応3)
CuO+CuS+2e+H2O → Cu2S+2OH-
ΔG=−54.6Kcal
理論OCV:1.183V対Zn
【0064】
上述の自由エネルギと開回路電圧の変化を判断するために、使用したアノード反応は、以下のものであった。
【0065】
Zn+2OH- → ZnO+H2O+2e-
【0066】
得られた実験的なOCV値は、理論値をかなり良く反映していることが判明した。また、反応速度は、十分に急激であり、その結果、CuO/CuSの組合せの放電電圧は、亜鉛に対するCuO又はCuS単独の放電電圧よりも高いと判断した。ギブス自由エネルギの変化は、Wendell M.Latimer著「水溶液における元素の酸化状態及びその電位」、第2版、「Prentice Hall,Inc」、1952年で利用可能である反応材料及び生成物の形成の自由エネルギから計算したものであり、この開示内容は、本明細書で説明する形式の反応材料及び生成物の形成の自由エネルギを説明する範囲で本明細書において引用により組み込まれている。開放回路電圧は、公式ΔG=−nFEを利用して計算したものであり、当業者が容易に認識するように、デルタGは、反応の自由エネルギ変化を示し、nは、反応に介入する電子数を示し、Fは、ファラデー定数(96500クーロン/モル)であり、Eは、Vによる電圧である。
【0067】
CuOとCuSの比率で放電電圧プロファイルが決まると考えられる。例えば、CuO/CuS混合物でのCuOが過剰であれば、反応は、2つの段階で進むことになり、CuSが消費されるまで、反応3は、最初に約1.18Vで進行し、次に、亜鉛に対して約1.09Vで反応1が進む。酸化銅と硫化銅の混合物の還元反応では、CuOとCuSの等モル量が消費されるので、1:1のモル比のCuOとCuSを含む混合物を使用すると、上述のようにCuO過剰時に観察される低放電水平域なしで容量全体についてほぼ1.1Vでの放電プロファイルが得られる。1:1のモル比は、この混合物ではCuO/CuSの重量比が45:55であることを表す。図4は、純粋なCuOと半割電池対Hg/HgO基準電極に様々なモル比のCuO/CuSとを含むカソード混合物の放電挙動を示している。作動電圧は、純粋なCuO単独よりも著しく高いことは注目に値する。本発明は、更に、例えばMnO2よりもCuOのものに更に似た平坦な電圧プロファイルを有するカソード材料を提供する。
【0068】
本発明の様々な変形は、約1:1の適切なモル比により、0.5:1及び1:1.5CuO/CuSの範囲内のモル比と、0.5:1と1.5:1の間のCuOの1/10増分とを包含する。
【0069】
表1は、様々なCuO/CuSモル比配合を含むカソードから得ることができる−0.9Vまでの理論容量対Hg/HgO基準電極を示している。






【0070】
(表1)

【0071】
環状円筒形カソードが原位置外に又は原位置に形成される円筒形電池(AAA、AA、C、D)の場合、市販のアルカリバッテリでこれまで見られなかったタブレット密度を可能にするようにCuS材料の固有の特性を作ることができる。現在の市販のアルカリバッテリのカソードは、約3.2g/ccのカソード容積の密度を有する。CuO、CuS、導電炭素(例えば、約3%又はKS4及び/又は膨張グラファイト)、及び処理条件(例えば、標準的な油圧プレス又はペレット成形プレスを使用する)の適切な選択(例えば、約97%)を用いて、約3.5g/ccから最大約4.5g/ccカソード容積までのカソード密度を達成することができる。当業者は、これらの濃度の変形でも、上述のカソード密度をもたらすことができることを認めるであろう。それによって、著しく活性度の高い材料を電池に充填して、バッテリにこれまでに公知のものよりも長い使用寿命を与えることができる。約2.5〜2.8Ahの送出可能容量を有する現在の市販のアルカリバッテリよりも著しく改善した4Ahまでの送出可能容量を有するAA電池を生成することができる。
【0072】
本発明者はまた、粒径低減及び表面積増大に対して市販CuOをジェットミル処理すると、結果的に作動電圧が高くなることを認識している。表面積は、反応速度、従ってバッテリの作動電圧に重要な役割を果たす。本発明では、カソードに電流を印加すると、カソードの表面積全体に分布する応力が生じることが認識されている。従って、表面積が大きいカソードの方が、図5に示すように表面積が小さいカソードよりも性能が良い。
【0073】
機械的な摩滅及びエアジェットミル処理に加えて、特に溶液法を使用する場合には、CuO合成時に処理条件を変えることによってもCuO表面積を増大させることができる。受入れ時のままの市販CuO(ミズーリ州セントルイス所在のSigma/Aldrichから販売)のジェットミル処理では、BET表面積が〜1.27m2/gから〜5.57m2/gに2倍よりも大きくなることが示されている。溶液合成CuOを取得することができ、その場合、表面積は著しく大きくなることにより、電極の分極が低くなる。粉体表面積を判断する一般的に公知である方法は、BET法であり、BET法では、粒子の表面の気体吸着を用いて表面積を推定する。ジョージア州ノークロス所在の「Micromeretics Corp」製造の市販「トライスター3000気体吸着分析装置及びスマート準備脱気剤」を分析に使用した。2時間にわたる脱気後に1グラムサンプルを使用した。結果を表2に示している。







【0074】
(表2)

【0075】
ナノCuOの化学合成集塊もカソードに使用することができる。このような材料は、米国カンザス州66502、マンハッタン、リサーチパークドライブ1310所在の「NanoScale Materials、Inc.」から取得することができる。本発明の1つの態様によれば、粒径は、下端が0.1ミクロンと10ミクロンの間でありかつこれを含み、上端が50ミクロンと150ミクロンの間でありかつこれを含む範囲内にある。本発明の別の態様によれば、CuOは、下端が0.5m2/g、1m2/g、及び5m2/gの間でありかつこれを含み、上端が20m2/g、30m2/g、60m2/g、70m2/g、及び100m2/gの間でありかつこれを含む範囲内の表面積を有する。
【0076】
CuSの粒径、粒径分布(PSD)、「ブルナウアー、エメット、及びテラー(BET)」表面積は、望ましいカソード充填密度及び一体性、並びに放電電圧特性の達成に重要な役割を果たすと考えられる。CuO及びCuSの相対PSDも、当業者によって理解されるように、混合物製造における重要な考察事項であると考えられる。
【0077】
図6は、浸水半割電池のジェットミル処理CuO/CuSカソードの速度能力に及ぼすCuS粒径の影響を示すものであり、ここでは、電流は、5mAと35mAの間で漸進的な段階式となっている。20mA及びそれよりも高い電流では、25ミクロンよりも小さい粒径のCuSを含む電極は、直径が>25ミクロンメートルのCuS粒径を含むカソードよりも低い分極(よりも高い電圧)を示している。同じ質量では、大きな粒径よりも小さな粒径の方が広い表面積に貢献するので、この結果から、表面積が大きいCuSにより、CuO/CuSを含むカソードでは優れた電流搬送機能(速度能力)が得られることが分る。
【0078】
粒径及び粒径分布の測定は、小容積モジュールを有する「CoulterシリーズLS230レーザ回折粒径分析装置」(「Beckman−Coulter Corporation」、フロリダ州33196、マイアミ)を使用して行った。当業者は、バッテリの最適放電特性を供給するには、望ましい物理的堅牢性、導電母体、間隙サイズ、及び有孔率分布を達成するようにカソードを含む全ての材料の物理的特性を最適化する必要があることを認識するであろう。酸化銅並びに本発明で開示する複数の成分による合成混合物を含む銅は、二酸化マンガン(EMD、CMD、NMD)のような材料よりも低い電子導電率を有する。電気化学電池の電極の設計においては、グラファイトのような導電添加物が必ず添加される。本発明者は、有効な適切な導電率を有する電極を得るには、グラファイトの粒径を活物質の粒径に適合させることが非常に重要であることを既に発見している。これは、特に、約15ミクロンから40ミクロンの範囲(供給元/製造業者に依存する)の平均粒径を有するEMDのような市販の材料が本明細書で開示する合成多重成分混合物と混合される時に重要である。導電炭素の粒径の適合は、二酸化マンガンと多重成分混合物の両方が取り囲む適切な導電母体を有するように慎重に行なわなければならない。カーボンブラック(例えば、イリノイ州シカゴ所在の「Cabot Corp」から得られる「Vulcan XC−72R アセチレンブラック」)のような小さな粒径を有する導電添加物をグラファイトと組み合わせて使用することができる。本発明の1つの態様によれば、この導電添加物は、活物質の平均粒径と類似の平均粒径を有する。
【0079】
表面積を増大することは、電極構造及び性能に有用である。表面積を50m2/g又は100m2/gまでも大きくすれば、電気化学電池で望ましい利点が得られると考えられる。表面積は、例えば、エアジェットミル処理のようないくつかの従来の方法によって増大することができる。当業者はまた、表面積は、製造時に合成条件の適切な制御によっても増大することができることを認識するであろう。
【0080】
本発明の1つの態様によれば、CuSの粒径は、下端が0.1ミクロンと10ミクロンの間でありかつこれを含み、上端が50ミクロンと150ミクロンの間でありかつこれを含む範囲内にある。本発明の別の態様によれば、CuSは、下端が0.5m2/g、1m2/g、及び5m2/gの間でありかつこれを含み、上端が20m2/g、30m2/g、60m2/g、70m2/g、及び100m2/gの間でありかつこれを含む範囲内の表面積を有する。
【0081】
カソードの銅又は銀含有材料の1つの問題は、アルカリ電解質(KOHなど)内の材料の可溶性、及び汚れてアノードの反応を妨げて不動態化、自己放電、又は状況によってはアノード電圧又は電池電圧を低下させる他の望ましくない状況に至る可能性がある亜鉛アノードに対するこれらの種の移動である。従って、適切な保管寿命を有する実用的なバッテリを製造するために種の発生及び移動のこの過程を阻止、凍結、又は鈍化することが望ましい。本発明の様々な態様では、高い作動電圧を利用しながらも適切な保管寿命を有するバッテリを製造することができるように、特殊なセパレータ材料の使用並びにシーム密封の製造及び密封を実施する方法が教示されている。
【0082】
本発明の様々な変形では、実際面でCuSの良好な潤滑特性及び高い導電率が認識されている。従って、混合物でCuSを使用するとカソード内の導電炭素を低減又は排除することができるので、活物質に更に5重量%から7重量%が得られ、その結果、電池容量が更に大きくなる。関連の態様では、CuSの導電及び潤滑特性を利用して、アルカリバッテリの缶内面に現在使用されている導電炭素コーティング22に取って代わることができる(図1を参照されたい)。
【0083】
CuOとCuSのこの組合せの初期電圧は、MnO2、NiO、NiOOH、CuAg24のような電圧がより高い他のカソード活物質の存在によって更に増大させることができる。残念ながら、個々の材料特性の適正な適合がなかった場合、また、放電時及びその前後で不適合があった場合には、それが原因となって、図3に示すようにその後の放電材料の性能が通常の放電挙動よりも劣る。これは、特に、第1の放電材料の放電時に著しい容積又は密度変化が発生するか、水又は電解質を消費するか、又は不良な電子導電率を有する放電生成物を生成する場合に当て嵌まる。これが発生すると、第2の放電材料は、もはや放電のために理想的な状態ではなく、従って電池の全体的な挙動が損なわれ、2つの材料を混合した利点が打ち消される。
【0084】
これを図3の例で示したが、それは、可溶性の硫黄種又は硫化物が、MnO2との混合物に存在し、硫黄種又は硫化物が、MnO2との陽子挿入を妨げ、それによってMnO2部分の作動電圧が著しく小さくなると考えられる状況で更に例示される。MnO2がCuO及びCuSの混合物から分離されたか、又は硫黄種がMnO2と接触することが妨げられた場合、この悪影響は低減されると考えられる。従って、先の理由(物理的及び/又は化学的)のいずれかによる作動電圧低減を防止するために、異なる活物質が互いに混合されない方法を提供する。詳しく言えば、不適合を有する個々の活物質は、少なくとも第2の放電材料の挙動に影響を与えるのが1つの材料のみであるように、別々の層内又はペレット内に維持される。
【0085】
各層又はペレットは、異なるカソード活物質、又は本発明との組合せでの使用に適切な材料の物理的混合物を含む。別々のカソード層又はペレットを供給する場合、少なくとも1つの層又はペレットは、酸化銅と別の添加物(例えば、金属酸化物又は硫化物)を含むことができ、一方、別の層又はペレットは、混合化合物を含むことができることが特に考えられている。同様に、層又はペレットは、混合酸化物化合物と添加物(例えば、別の金属酸化物又は硫化物)の物理的混合物を含むことができる。
【0086】
この概念をCuOとMnO2の場合について図7に示している。特に、初期EMD放電及び遷移後にCuO放電が同じく図示の純粋CuO放電よりも著しく低い電圧で発生するEMDとCuOの均質な物理的混合物を示している。EMDとCuOが図8のように互いの上の別々の層である層状カソードを使用すると、EMDとCuOの間の相互作用のために引き起こされる問題が大幅に緩和される。
【0087】
カソードがディスクの形であるボタン電池バッテリにおいては、活物質は、図8に示すように交互に重なり合う層とするか又は他方の内側に一方がある同心円(ディスク)とすることができる。また、活物質は、互いに近接する位置にある半円セグメントの形とすることができる。
【0088】
外部加圧して挿入するか又は缶内で原位置で製造されるかのいずれかで缶内で円筒形カソードを使用する長球円筒形バッテリ構成の場合、同じ概念を使用して材料を図9に示すように分離状態に維持することができる。材料同士は接触しているが、混合又は互いに混ぜ合わされていない。
【0089】
カソードのCuOとCuSの混合物は、CuOだけを含むカソードと比較すると、アルカリ溶液のカソードの作動電圧を上げることができることが認識されている。しかし、CuOとCuSの混合物は、アルカリ溶液内に蓄えられた時に反応し、アノードに不注意に自然移動する場合は亜鉛アノードの性能に悪影響を与え兼ねない可溶性硫黄種を生成することがあることが既に見出されている。本明細書の目的上、亜鉛アノードに悪影響を与える種をアノード汚染種と呼ぶ。アノード汚染種の例は、当業者には公知であり、様々なCu種、Ag種、S種、Fe種、Ni種、及びSb種がある。
【0090】
これらの状況では、これらの種がアノードを汚染する機能を抑える添加物を供給することが望ましい。この添加物は、アノード、カソード、電解質、又はセパレータに含められ、アノード汚染種が生成される場所で、汚染種が移動してセパレータを通過した場合にセパレータで、又はアノード汚染種がセパレータを通過してカソードからアノードに向かった後であるが汚染種がアノードと相互作用してアノードを汚染する前に作用することができる。添加物は、種と結合するか又は種と相互作用して(例えば、酸化、還元錯化、配位により)可溶性が小さくなった非アノード汚染生成物を形成することによって作用することができる。更に、添加物は、電極内の局所的水酸化物を調整することによって可溶性アノード汚染種の影響を軽減することができる。理論によって制限されることは意図していないが、析出は、一部の種を溶液から移動させることによって可溶性種を溶液から除去するための手段であると認識されている。種の可溶性は、Ksp値で表される。添加物と可溶性アノード汚染種の間の反応の生成物のうちの可溶性の低い生成物は、有用であると既に判断されている。1つのこのような有用な可溶性生成物は、2×10-25に等しいか又はそれ未満であることがこれまで判明している。従って、添加物は、カソードからアノードへの移動を実質的に限定され、及び/又は銅種又は銀種と反応して無害の生成物又は汚染性の低い生成物を形成することによってアノード汚染を緩和することができることが認められるであろう。本発明の様々な変形では、適切な添加物としては、以下に限定されるものではないが、蒼鉛酸化物(Bi23)、蒼鉛水酸化物(Bi(OH)3)、亜鉛硫化物(ZnS)、及び酸化亜鉛(ZnO)があることが認識されている。例えば、以下の実施例9は、CuO/CuSカソード内のZnO添加物の効果に関するものである。これらの化学材料の各々は、銅含有カソードに添加されると、種と反応するか又は種がセパレータを通過してアノードに至るのを実質的に制限することによって種がアノードを汚染する機能を低減することが見出されている。当業者は、同様の機能を実行する添加物の目標を可溶性アノード汚染銅種とすることができることを認識するであろう。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、エタノールアミン、蓚酸、又はクエン酸のような錯化剤は、溶液中の金属イオンと相互作用する。
【0091】
第3の手法
既に指摘したように、MnO2には、いくつかの望ましい特性があり、特に、高電圧、高速度能力、低コストである。酸化銅自体は、優れた重量容量、材料密度、平坦な放電電圧プロファイルであるが、低速度能力、比較的低い放電電圧を有する。本出願人の研究の重要な目的は、各材料の非常に魅力的な特徴を組み合わせて、図3に示すように、これら2つの明らかに両立しない材料の物理的混合で観察される電圧遷移の著しい不連続性がなく、バッテリ内で適切に高い電圧、高速度能力、遥かに長い使用寿命を有する新しい材料を開発することであった。マンガンと銅の両方を含む混合酸化物材料を合成すると、高放電速度に対してさえ大きな「降下」が実質的にない電圧プロファイルを示すこれらの2つの材料をより適合可能にする「架橋」を得ることができると考えられる。一部の特定の条件の下での化学合成によってこのような材料が得られることが既に発見されている。従って、1つ又はそれよりも多くの相に存在する混合酸化物化合物又は錯体を生成するために可溶性陽性元素を用いた溶液相複合又は合成により、純粋CuOよりも高い作動電圧と、上述の方法におけるよりも円滑かつ連続的な遷移とを得ることができる。適切な元素としては、以下に限定されるものではないが、Mn、Ni、Co、Fe、Sn、V、Mo、Pb、又はAg、又はその組合せを含むことができる。また、このような混合酸化物化合物は、当業者が容易に理解するように、適切な温度での固相反応を通じても生成することができる。
【0092】
当業者によって容易に認識されるように、MnO2をカソードの主成分として利用する現在の市販アルカリ電気化学電池は、供給材料内の不純物の仕分けの結果として存在する微量の銅を有する。本発明の様々な態様では、これらの微量の不純物は不十分であり、従って、電池放電に測定可能な性能上の利点をもたらす上で効果がないと認識されている。本発明の態様によれば、カソードの銅含有量は、混合物重量比で約0.5%を超えている。
【0093】
本発明のこの態様によれば、銅ベースの混合酸化物材料の一般式は、MxCuyzである(ここで、Mは、上述のようにあらゆる適切な元素であり、xは、20未満であり(代替的に、1≦x≦5)、yは、20未満であり(代替的に、1≦y≦5)、zは、100未満である(代替的に、1≦z≦20))。AwxCuyz(wは、<20であり、Aは、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ni、Baとすることができる)を一般式として有する化合物もカソード活物質として使用されるように設計することができる。MxCuyzのような調製の範囲にわたる材料は、電池性能に関して利点の程度が異なる可能性があると予測されるが、本発明の態様では、黒銅鉱タイプのこのような混合金属酸化物は、構造の形式及びカソード内の他の種との類似性のために特定の利点を有する可能性があると予測される。黒銅鉱タイプ及びスピネルタイプの構造は、当業者に公知である。
【0094】
混合金属酸化物MxCuyzがこの公式を有することは、本発明の更に別の態様と調和しており、x=3−y及びz=4であり、yは正であり、y<3である。本発明の更に別の態様では、混合金属酸化物MxCuyzは、この式を有し、ここで、x=2−y、z=2であり、yは正であり、y<2である。
【0095】
混合酸化物カソード活物質を作る方法の一例では、錯化剤と還元剤(例えば、ナトリウム4水素化ホウ素(NaBH4)、蟻酸ナトリウム、蟻酸、ホルムアルデヒド、フマル酸又はヒドラジン)と共に塩の混合溶液を化学的に還元して、それらの金属を含む化合物を生成する。式AMxCuyの複合化合物も、この還元段階の前駆材料として第3の金属塩を添加して作ることができる。得られる生成物を酸状態で酸化剤(例えば、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、又は塩素酸カリウム)で酸化して一般式AwxCuyzの銅ベースの混合酸化物を生成することができる。
【0096】
例えば、このようにして作られたCu/Mn化合物は、X線回折(XRD)分析によって新しい相の混合マンガン銅酸化化合物であることを確認した。この酸化物に対応するASTMカードはないが、回折パターンは、Cu2Mn38と類似のものである。過酸化水素のpHの酸化時に酸性度を上げると、Cu2Mn25だけのもの又はCuOと組み合わせたもののような他の化合物も検出される。酸化状態は、銅ベースの混合酸化物の結晶構造及び性能に著しく影響を与える可能性がある。混合酸化物相に加えて、合成生成物は、酸化マンガン及び酸化銅を含む他の相も含む。当業者には公知のように、本明細書で説明したような低温溶液及び中温溶液ベースの合成法では、著しい量のアモルファス材料を生成する傾向があり、これらの材料は、X線回折分析では特徴付け難いものである。
【0097】
また、Cu/Mn化合物の酸化は、例えば、アルカリ溶液中で又は中性pHを有する溶液中で実行することができることが想定されている。有機酸及び無機酸(又は塩基)を使用して酸化溶液のpHを調整することができる。また、化学的酸化の前に、化合物をまず熱処理することができる。更に、導電材料と混合してカソードを形成する前に銅混合酸化物化合物を熱処理することができる。
【0098】
また、化合物は、高エネルギボールミルを用いた公知の機械式合金法によって又は炉での直接高温溶融によって作ることができる。代替的に、MxCuyz又はAwxCuyzの銅ベースの混合酸化物材料は、金属塩溶液の混合物を共沈させ、次に、適切な状態で沈殿物を加熱することによって作ることができるように更に想定されている。
【0099】
図10は、このような混合酸化物材料の挙動並びに浸水電解質半割電池におけるカソード材料合成でのCu含有量増加の影響を示している。上述のように、新しいカソード材料は、通常、浸水半割電池固定具内で試験され、カソードのみを中心に説明するために他の処理からの意味合いは排除されている。このような固定具においては、過度の電解質があり、アノードは、Niガーゼのような表面積が大きな不活性電極である。アルカリシステムの場合は、当業者には公知であるHg/HgO基準を含む基準電圧に対して電圧が記録される。図10で分るように、Mnの存在によって初期放電電圧が大きくなり、材料におけるCuの割合が大きくなる時に、放電容量も大きくなり、初期高電圧に及ぼす悪影響が最小になる。従って、組成を調整することにより、高い初期電圧及び長い使用寿命を含む望ましい放電特性を得ることができる。
【0100】
混合金属酸化物を作る別の方法では、アルカリ溶液中で銅(I又はII)塩(例えば、酢酸第二銅)のような可溶性第1金属塩を過マンガン酸カリウムで酸化させる。第1金属をより高い酸化状態に酸化し、一方、過マンガン酸塩中のMnは還元される。図11は、CuOカソードに対してこのようにして作られたCu/Mnカソードの性能を比較するものであり、CuOよりも高い望ましい初期電圧を達成することができることを示している。また、図11は、CuOの放電容量の約90%は、活性カソード内に維持されることを示している。これらの特性は、合成物中のCuとMnの相対比率を調整することによって作ることができるように想定されている。更に、放電曲線の平坦な部分は、市販のCuO材よりも少なくとも30mV高い平均電圧を示している。活物質の表面活性及び表面積も、ここでは性能に一役を演じている。また、沈殿材料の形態及び表面積は、より高い電圧放出には好ましいものであると考えられる。
【0101】
いくつかの一般的な合成手法を利用して、異なる前駆材料、混合及び反応条件を用いて、全てがMnO2とCuOの望ましい特性の組合せを有する材料を取得するという共通の目標で、銅マンガン混合酸化物材料を含むカソード活物質を得ることができることは理解されるものとする。低温固相合成又は共沈を利用することもできる。前駆材料内の銅が1の酸化状態を有する場合、化学酸化剤又は熱酸化を利用して、銅酸化状態が少なくとも実質的に+2である最終生成物を得ることができる。
【0102】
本発明の1つの態様に従って混合金属酸化物を合成する方法では(図12に図示)、一例では3:1のモル比で混合し、乾燥させて空気中で250Cに加熱するCuSO4とKMnO2の間の低温固相還元を伴っている。次に、この材料を細かくすり潰して20%KOH溶液中で還元する。生成した材料は、MnO2、CuO、混合「架橋」相の放電挙動を示す混合物である。9:1、5:1のモル比、異なる加熱条件(時間、温度など)、10%と25%の間の範囲にあるKOH溶液濃度などを伴うこの合成法のいくつかの変形により、優れた容量及び速度能力を有する材料が生成される。図13は、5mAと30mAの間の半割電池放電を示している。ここでMCS5Aと呼ぶ生成された材料は、一般的に、高い初期電圧を示す酸化マンガン相、遷移を表す混合相(又は架橋相)、及び市販のCuOよりも大幅に高い速度能力及び作動電圧を有するCuOタイプの相を含む。この混合物の平均粒径及び粒子分布は、「Coulter LS」シリーズ粒径分析器を使用して判断した。この合成条件の修正により、必要に応じて粒径範囲を生成することができることは当業者には公知である。
【0103】
本発明の1つの態様によれば、合成混合物は、下端が約.5ミクロン、及び代替的に1ミクロン、3ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、及び20ミクロンと定められ、上端が50ミクロンと定められた範囲内にある平均粒径を有する。別の態様によれば、合成混合物は、30ミクロン未満の平均粒径を有する。本発明の別の態様によれば、合成混合物は、2ミクロンと10ミクロンの間の平均粒径を有する。0.1ミクロンから約200ミクロンの粒子は、体積率測定に基づいている。
【0104】
上述の固相合成の変形では、過マンガン酸カリウムの代わりに、酸化剤としてのチオ硫酸ナトリウムと共に硫酸銅(CuSO45H2O)及び硫酸マンガンMnSO42Oを使用する。この流れ図を図4に示すと共に、この材料をNMCと指定する。ここでもまた、本発明の精神から逸脱することなく、他のモル比並びに合成条件を利用することができる。放電表3は、性能特性を示している。
【0105】
粒径、サイズ分布、及び形状により、材料を非常に効率的に締め固めることができる。EMD二酸化マンガンとの混合においては、材料は、同じく非常に効率的に充填される。従って、下端が約3.0g/cc、3.1g/cc、3.2g/cc、3.4g/cc、3.6g/ccのカソード容積と定められ、上端が3.8g/cc、4.0g/cc、及び4.2g/ccのカソード容積と定められる範囲内にあるカソード密度を容易に得ることができる。また、それによってアノードゲルを含む電池に充填する活物質を大幅に増量してバッテリにこれまでに公知のものよりも長い使用寿命を与えることができる。約3.5Ahを超える送出可能容量を有するAA電池を製造することができる。
【0106】
本発明の別の態様によれば、約0.5Ah/ccを超えるアノード容量と電池容積の比が達成される。更に、アノード容量と電池容積の比は、約0.55Ah/ccよりも大きく、更に、約0.6Ah/ccよりも大きく、更に、約0.9Ah/ccよりも大きい。
【0107】
CuSO45H2OとMnSO42OがKMnO4と混合し、加熱されてCMK法として指定される活性カソード混合物を生成する上述の処理の更に別の変形を図15に示している。
【0108】
尿素ベースの共沈法を行い、次に、図16に示すような熱酸化を行う。材料は、CuMnZ10Bとして指定される。
【0109】
別の処理を用いてより高い電圧を有する銅含有カソード活物質を合成することができる。特に、AgNO3とCu(NO32・3H2Oを用いて銀化合物中で+3状態のCuを合成し、KOHが存在する状態でK228を用いて混合溶液を酸化させる。しかし、KOH中にこのような酸化物があれば、アノード汚染銀種及びアノード銀種が発生することになる。従って、本発明は、この問題を克服すると共に、以下でより詳細に説明するように、満足できる保管寿命を有する実行可能なバッテリをもたらすセパレータシステムも提供する。
【0110】
共沈/ゲル化法と指定した更に別の処理では、図17に概略的に示すようなゾルを形成する。共沈−ゲル化法で銅(II)、三水和硝酸塩(1M)、マンガン(II)、一水化硝酸塩(0.5M)、及び尿素(1.5M)を含む溶液から銅とマンガンを含む活性カソード混合物を作る。混合溶液を100℃まで加熱し、次に、約1のpHが達成されるまでこの温度に維持した。ゲル形成前に、ゾルが11のpHになるまでKOH(10%)の水溶液と0.5MのK228の高温混合物を滴下により添加した。得られた沈殿物を濾過によって分離して、脱イオン水で徹底的に洗浄し、次に、60℃で約15時間炉で乾燥させた。最後に、混合酸化物ケークをより小さな粒子にすり潰して空気中で250℃で2時間熱処理した。この材料は、表3に示すように、優れた電圧、速度能力、放電容量を示している。このような処理で得られたこの材料のBET表面積は、約100m2/gであると判断した。
【0111】
表3は、本明細書で開示する要領で生成し、かつ本明細書で説明する半割電池試験を使用して評価した複合成分活性カソードサンプルの放電容量を要約したものである。






【0112】
(表3)

【0113】
本発明の1つの態様によれば、カソードは、亜鉛基準に対して1Vに対する5mA定電流で行った上述の半割電池試験から判断すると、活性剤の約220mAh/gよりも大きく、活性剤の約250mAh/gよりも大きく、約275mAh/gよりも大きく、約300mAh/gよりも大きく、約320mAh/gよりも大きい放電容量を有する。
【0114】
本発明の別の態様によれば、カソードは、亜鉛基準に対して1Vに対する30mA定電流放電で行った上述の半割電池試験から判断すると、活性剤の約180mAh/gを超えるか、活性剤の約200mAh/gを超えるか、約220mAh/gを超えるか、約250mAh/gを超えるか、約275mAh/gを超えるか、又は約300mAh/gを超える放電容量を有する。
【0115】
本発明の更に別の態様によれば、カソード材料を含む合成混合物は、約1m2/gよりも大きく、約5m2/gよりも大きく、約20m2/gよりも大きく、約30m2/gよりも大きく、約60m2/gよりも大きく、約70m2/gよりも大きく、約100m2/gよりも大きく、約150m2/gよりも大きいBET表面積を有する。
【0116】
関連実施形態では、物理的混合と化学合成の組合せによって活性カソード混合物を得ることができる。この組合せは、酸化マンガンの表面上に酸化銅を作り、個々の化合物の相及び放電プロファイル間の滑らかな遷移を助けるものである。この組合せを用いると、図18に示す電圧プロファイルを得ることができる。また、この反対も適用可能と考えられ、それによってMnO2又は他の材料をCuOの表面に作ることができる。
【0117】
本方法の実施形態によれば、CuO及びAg2Oは、それぞれ、EMDが存在する場合にアルカリ媒質中でCuSO4及びAgNO3から沈殿される。カソード材料は、例えば、64%のCuO、35%のEMD、及び導電率促進剤として添加される約1%のAg2Oを含むことができる。Ag2Oが最初に放電すると、カソード中に導電率が高い金属銀が生成される。当業技術で公知である合成グラファイト、天然グラファイト、又は膨張グラファイトにより、カソードに適切な電子導電率及び一体性が与えられることになる。図18に示す得られたカソードは、初期電圧の大幅な増加を示すと同時に、MnO2よりも大幅に大きな放電容量をもたらす。また、放電の平坦な部分は、CuOだけの電圧よりも平均で約45mV高い。MnO2挙動からCuO挙動への遷移は、図3の遷移よりも滑らかである。電池の放電容量が放電速度の範囲にわたって従来の電池よりも高いことは、本発明の利点である。
【0118】
従って、本発明のある一定の態様では、電気化学電池は、アノードと、カソード活物質を含むカソードとを含むことを認めるべきである。カソード活物質は、混合物を含み、その混合物は、第1の成分、第2の成分、及び第3の成分を含む。第1の成分は、第1の元素を含み、第2の成分は、第2の元素を含み、第3の成分は、第1の元素と第2の元素を含む。セパレータは、アノードとカソードの間に配置される。
【0119】
ある一定の態様では、第1の成分と第2の成分の比率は、1/100よりも大きく、又は代替的に1/20よりも大きく、又は代替的に1/10よりも大きく、又は代替的に1/2よりも大きく、又は代替的に1/1よりも大きい。
【0120】
他の態様では、第2の成分と第1の成分の重量比は、1/100よりも大きく、又は代替的に1/20よりも大きく、又は代替的に1/10よりも大きく、又は代替的に1/2よりも大きく、又は代替的に1/1よりも大きい。
【0121】
本発明の更に他の態様では、更に、混合物を酸化銅、酸化マンガン、酸化銀、酸化ニッケルのうちの少なくとも1つと組み合わせて活物質の組合せを生成し、この混合物は、少なくとも約1重量%、又は代替的に少なくとも約2重量%、又は代替的に少なくとも約5重量%、又は代替的に少なくとも約10重量%、又は代替的に約99重量%未満、又は代替的に約95重量%未満、又は代替的に約90重量%未満で存在する。
【0122】
本発明の別の態様では、電気化学電池は、アノードと、カソード活物質を含むカソードとを含む。カソード活物質は、酸化マンガン、銅酸化物、MxCuyzによって特定された成分の混合物を含み、Mは、混合酸化物又は化合物又は錯体を生成することができる元素である。セパレータをアノードとカソードの間に配置する。この混合物は、この組合せの少なくとも約1重量%、又は代替的に組合せの少なくとも約2重量%、又は代替的に組合せの少なくとも約5重量%、又は代替的に組合せの少なくとも約10重量%、又は代替的に組合せの約99重量%未満、又は代替的に組合せの約95重量%未満、又は代替的に組合せの約90重量%未満で存在する。
【0123】
アノード
高容量アノードの調製は、アルカリ電池での使用のためにも行われる。既に注意したように、従来のアルカリ電池のカソード、例えば、カソード活性成分がMnO2であるカソードがカソード反応で消費する水量は、アノード反応(すなわち、亜鉛アノードと電解質の反応)によって生成される量よりも多い。従って、電池反応全体では、説明したように、以下に示すように水を消費し、従って「水消費型」と呼ばれる。
【0124】
Zn+MnO2+H2O → ZnO+MnOOH
【0125】
従って、従来のアルカリ電池の亜鉛アノードは、一般的に、亜鉛充填量が多くなっても、カソードにおける水消費反応を適正に持続するのに十分な量の電解質をアノードは含んでいないと思われるために放電が効率的に行われず、アノードにおける70重量%未満の亜鉛濃度に限定される。更に、従来の粒径分布で亜鉛充填量が多いと、その結果、これらのアノードの有孔率が低いために材料移動による分極が盛んになり、早期のアノード不動態化及び時期尚早の故障をもたらす。
【0126】
実施形態に従って提供されるアノードは、カソードの水消費量が従来のアルカリ二酸化マンガン電池よりも少ない電気化学電池で使用可能であり、従来のカソードと比較して放電効率の改善を達成する。カソードの酸化銅と混合酸化銅活物質は、消費水量が少ないために、アノードで必要とされる電解質量は、従来の亜鉛二酸化マンガンアルカリ電池に対して低減される。この反応は、水消費量が少ないために、有利な態様では、アノード中の亜鉛充填量を増大することができ、その結果、電池の使用寿命が長くなる。
【0127】
CuO含有カソードは、水消費量がアルカリ二酸化マンガン電池よりも少ないカソードの一例であることは既に判断されている。亜鉛/空気バッテリカソードは、反応で水を消費せず、かつアノードがアノード全重量(電解質を含む)に対して従来のアルカリマンガン電池よりも大幅に多い68重量%から76重量%のアノード亜鉛充填量で効率的に作動する例である。
【0128】
実施形態に従ってこのように構成されたアノードは、従来の電気化学電池よりも「乾燥している」ことが可能であり、これは、アノードが、以下のアノード電池反応を考慮すると、減少した電解質濃度で効率的に放電させることができる亜鉛粒子の増加した充填量を有することを意味する。
【0129】
Zn+4OH- → Zn(OH)42-+2e-
【0130】
従来のアルカリバッテリにおいては、水酸化物イオンの枯渇は、中及び高程度の連続放電速度(例えば、サイズAA電池の場合は250mAを超える)の間に顕著になり、これらの場合ではアノード不良のために電池性能の低下を誘発する可能性がある。更に、電解質が上述の反応で生成された亜鉛酸塩Zn(OH)42-で飽和した場合、亜鉛酸塩が沈殿して酸化亜鉛を形成し、酸化亜鉛は、亜鉛アノードを不動態化し、その結果、電池性能が低下する。従来の亜鉛粉体は、数ミクロンから約1000ミクロンまでの範囲の粒径の広い分布を有する粒子を含み、粒径分布の大半は、25ミクロンと500ミクロンの間の範囲である。従って、このような従来の亜鉛粉体の適正な放電を達成するためには、34%を超えるKOH濃度が従来使用されており、かつ必要である。
【0131】
本発明者は、以下でより詳細に説明するように、粒径分布が狭いと、従来のアルカリバッテリにおけるよりも大幅に低い電解質濃度を使用することができることを発見した。これは、次に、電解質内への低いCuの可溶性に更に有利であり、カソード表面の湿潤化を改善させ、カソードの放電効率を高める。
【0132】
具体的には、従来の電池で発生すると思われる時期尚早のアノード不動態化を回避しながら本発明の原理を使用すると、36%よりも小さいKOH濃度(例えば、25%と34%の間のKOH濃度)が望ましい。
【0133】
本発明の様々な態様は、亜鉛の粒径分布(PSD)が、以下でより詳細に説明するように、低電解質濃度アノード及び/又は高亜鉛充填アノードでの放電効率の改善に一役を演じることを認識している。特に、高亜鉛充填時の効率的な放電に必要な亜鉛有孔率をもたらすと同時に低電解質濃度の使用を可能にするいくつかのPSDが既に特定されている。
【0134】
本発明者は、アノード単独であれ、上述の化学的修正との組合せであれ、アノードの物理的修正も電池使用寿命を改善することができることを既に認識している。例えば、水酸化物イオンについて拡散抵抗を低減することにより、従来の電池で使用することができる濃度よりも有利に低い濃度の水酸化物イオンを電解質中に有する電池を効率的に放電させることができる。これは、例えば、亜鉛粒径分布を調整してアノード内に類似の亜鉛粒径をもたらすことにより、水酸化物イオン移動のために有孔率(拡散経路)を高めることによって達成することができる。本発明の粒径分布は、ゲル化アノード母体内での質量輸送を改善させるだけでなく、亜鉛粒子表面上のZnO沈殿量低下を考慮する有孔率増加をもたらし、その結果、従来の電池で一般的に見られる粒径分布と比較すると、アノード不動態化が遅くなる。この手法は、本発明の様々な態様のアノードでの使用に有効であり、かつ単独で又は本明細書で開示する他の改善策と組み合わせて使用することができる。
【0135】
同様に、適切な亜鉛粒径分布は、粒子の少なくとも約70%が、100ミクロンサイズ範囲内の標準的なメッシュ篩処理粒径を有し、かつ分布のモードが、約100ミクロンと約300ミクロンの間である分布である。粒子の70%の分布が、100ミクロンよりも一層狭いサイズ分布範囲、例えば50ミクロン、又は更に40ミクロン又はそれ未満であることが望ましい。
【0136】
本明細書で説明するような適切なゲル化アノードは、金属合金粉体(望ましくは、合金亜鉛粉体)、ゲル化剤、及びアルカリ電解質を含む。当業者は、適切な亜鉛粉体(In、Bi、Ca、Al、Pbなどとの合金)を容易に選択することができる。本明細書で使用される時、「亜鉛」は、当業者に公知の亜鉛合金を含むことができる亜鉛粒子を指す。本明細書で説明する電気化学電池の別の態様は、アノードが水銀を全く又は殆ど含まない(例えば、約0.025重量%未満)とすることができるということである。望ましいポリアクリレートナトリウムゲル化剤以外の公知のゲル化剤も本発明の様々な態様での使用に適することに注意されたい。このようなゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース、架橋タイプの分岐ポリアクリレート酸、及び天然ゴムなどがある。
【0137】
本発明者は、電池性能を制御する別の要素は、アノードの表面積に関連すると認識している。具体的には、活性アノード電極表面積を増大すると、高放電速度時のカソード反応に追随するのに必要な十分な活性反応の場が得られる。従って、アノードゲルに添加される所定の量の亜鉛粒子(亜鉛又は亜鉛合金の形態とすることができる)を有する電池が提供される。本発明の一実施形態によれば、約75%ミクロン(−200メッシュサイズ)未満の亜鉛粒子、すなわち、200メッシュ篩サイズを通る粒子が、アノード中の総亜鉛(亜鉛粗粒子を含む)に対して約10重量%未満の量で、及び望ましくは1%と10%の範囲内で、代替的に1%と8%の間の範囲で、又は代替的に4%と8%の間の範囲でアノード中に存在するように考えられており、粒子が小さいほどアノードの有効表面積が更に大きくなることが認められる。メッシュサイズは、本明細書では、粒径の範囲を指定するために説明されている。例えば、−200メッシュは、75ミクロンよりも小さい粒子を示し、一方、+200メッシュは、75ミクロンよりも大きい粒子を示している。代替的に、10%よりも大きい亜鉛微粒子の量を用いても望ましい結果を達成することができ、一方、75ミクロンと105ミクロンの間の直径(+75及び−140メッシュサイズ)を有する亜鉛粒子は、アノード中に存在する総亜鉛の1%と50%の間で、より適切には10重量%と40重量%の間のどこでも存在することができる。
【0138】
本発明の様々な態様は、75ミクロンと105ミクロン(+200メッシュサイズと−140メッシュサイズ)の間の粒子を含む105ミクロン(−140メッシュサイズ)未満の直径を有する複数の範囲の亜鉛粒子と75ミクロン(−200メッシュサイズ)未満の複数の範囲の亜鉛微粒子とを用いて電池性能を上げることができることを認識している。例えば、アノードは、75マイクロメートルと105マイクロメートルの間の亜鉛粒子を含むことができ、電池性能における利点は、アノードゲルが30%未満、代替的に20%と30%の間の電解質(KOH)濃度を有する時に高められる。亜鉛微粒子が、20マイクロメートルと75マイクロメートル(+625メッシュサイズと−200メッシュサイズ)、及び代替的に38マイクロメートルと75マイクロメートル(+400メッシュサイズと−200メッシュサイズ)の間の範囲のサイズを有する時、電池性能が特に高められるのは、KOH濃度が30%と40%の間、望ましくは33%と38%の間である時である。更に別の適切な範囲は、20%と34%の間、代替的に25%と33%の間、及び代替的に25%と30%の間である。本明細書で使用される時、「低KOH濃度」とは、上述の範囲のいずれかの範囲内か又はそれよりも低いKOH濃度を指している。
【0139】
電池性能の改善は、低KOH濃度と組み合わされた亜鉛微粒子の使用からもたらすことができることは公知であるが、当業者は、亜鉛微粒子の使用及びKOH濃度低下の利点も個々に認識するであろう。
【0140】
電池電位の低下と一般的に関連付けられるCuO含有電池での電池作動電圧を上げることが特に望ましいが、本発明のある一定の態様は、銅を含む酸化物を含有するがCuO単独ではなく、他の酸化物、硫化物、又は混合酸化銅材料と組み合わされたCuOを含有するカソードを提供するものであることが認められるであろう。ある一定の実施形態では、カソードは、他のものよりも水消費型とすることができる。カソードの組成によっては、当業者は、このようなカソードの水消費量低下に対応するアノードの満足できる修正を判断することができることになる。
【0141】
電解質濃度の低下は、反応速度を改善し、銅又は銀分解(従って、アノードへの移動)を低減し、高い作動電圧を達成する上で銅又は銀含有システムでは望ましいものである。カソードを予め湿潤化するために低い濃度の電解質(アノード中の電解質濃度に対して)を使用すると、結果的にカソードの濡れ性の改善に帰する性能改善になると考えられる。亜鉛への銅又は銀イオンの移動の低下により、自己放電及び貯蔵時のアノードでのガス発生が低減され、その結果、保管寿命が改善する。アノード分極の低減はまた、電池内の所望の閉回路電圧の達成に寄与するものである。
【0142】
本明細書で説明するアノードの様々な変形は、典型的なZn/MnO2アルカリ電池で使用可能な従来のアノードと比較していくつかの当業技術の前進をもたらしている。これらの前進には、以下のものがある。
【0143】
1.従来のZn/MnO2アルカリ電池と比較して低い水消費量カソード反応を利用した充填亜鉛の増量。仮に従来の電池で亜鉛充填量を増大する場合、一般的に電池で利用可能な電解質量が少なくなる(水が少なくなる)ことにより、電池放電性能が妨げられる。従って、化学的に水消費量が多いので従来の電池での電池設計全体が制約される。更に、CuOの容量及び/又は密度が高いので、容量がより高いカソードをMnO2カソードよりも少ない容積に詰めることができ、電池内に入れるアノードを増量することができると同時に、依然として電池によって必要とされるレベルの電解質が維持される。これは、従来のアルカリ電池と比較して、電池容積に対するアノード容量の比率(Ah/cc)を以前は達成不可能として知られていた範囲に大幅に増大させる。例えば、従来の市販のアルカリ電池は、820mAh/gの亜鉛容量に基づく〜0.5Ah/ccのアノード容量/内部電池容積比に、及びMnO2の1.33電子還元に基づく400mAh/gのMnO2容量に制限される。本発明の様々な態様に従って構成された電池は、>0.5Ah/cc、0.55Ah/ccと0.9Ah/ccの間、更には0.55Ah/ccと0.7Ah/ccの間のアノード容量/電池内部容積比を達成する。本発明のPSD、粒子形状、及び電解質濃度は、高い亜鉛充填量のアノードを高い効率で放電させることを可能にする。これは、より高い電池容量をもたらす。
【0144】
2.本発明の亜鉛粒子PSDの適正な選択は、本発明以外では従来のアノード容量で通常の粉体を使用して発生すると考えられる時期尚早の不動態化なしに、低い電解質濃度の使用を可能にする。特に、不動態化は、一般的に、アノード反応によって酸化亜鉛が生成された時に電気化学電池に発生し、酸化亜鉛は、アノード中の残りの亜鉛を覆い、それによってKOHが残りの亜鉛に接近して反応することを妨げる。従来のPSDを有する従来のMnO2アルカリ電池アノードは、低い電解質濃度が使用された時に時期尚早に不動態化することは公知である。従来のアノード粒径は、45から500ミクロンの間に分布し、従って455ミクロンの広い範囲内であり、本発明で想定されている100から150ミクロンの狭い範囲ではない。
【0145】
代替的な実施形態によれば、本明細書で開示する亜鉛PSDは、200ミクロン、及び代替的に150ミクロンの狭い範囲内で分布することができることが望ましく、これは、粒径の重量比で90%と95%の間かつこれらを含み、かつ100%までが150ミクロン又は200ミクロンの範囲内であり、特に、実質的に100μm、175μm、250μm、300μmを中心とした緊密な分布であることを意味する(亜鉛粒子の90%と95%の間かつこれらを含み、かつ100%までが、指定のサイズを中心とした粒径を有することを意味する)。当業者は、これらの粒径に対応するメッシュサイズは、ASTM指定:B214−99を用いて特定することができることを認識するであろう。本明細書のPSDで亜鉛アノードの有孔率が大きくなり、その結果、不動態化が少なくなる。100μmを中心とした緊密なPSDを伴う亜鉛粒子は、例えば図19に示している。本発明は、上述のように、約175μm及び250μmを中心とした類似の分布を含む。図19に示す亜鉛粒子としては、当業者によって理解されるように、ビスマス、インジウム、鉛を含む添加物がある。これらの例で言及した「篩処理亜鉛」とは、図19に示すように分布する粒径を有する亜鉛を指すことに注意されたい。当業者は、BIPとは、製造業者によって組み込まれる合金添加物を指し、亜鉛中のビスマス、インジウム、鉛を指すことを認識するであろう。
【0146】
3.PSDが低い電解質濃度と組み合わされると、一般的に、結果的に電池作動電圧が上がる。特に、図20は、1)37%の電解質濃度(電解質混合物に対するKOHの重量比による濃度)と、アノード中の2%の酸化亜鉛濃度と、従来の分布によるアノードとを有する第1の対照電池と、2)30%KOH時の電解質と、アノード中の2重量%の酸化亜鉛濃度と、本明細書で説明するようなアノード分布とを有する本明細書で説明する原理に従って構成された第2の電池とに対する電池性能を示している。従って、図20は、本明細書で説明するようなアノードが亜鉛CuO電池で使用される時の作動電圧の増加を示している。電池放電前のアノード中の初期酸化亜鉛濃度は、0.5重量%と6重量%の間とすることができ、また、酸化亜鉛の濃度は、ZnOの可溶性がKOHの濃度の関数であることから電解質濃度の関数であることを認めるべきである。
【0147】
4.電解質濃度の低下により、銅イオンの可溶性が小さくなり、その結果、アノードへの銅イオンの移動が低減されると考えられる。ここで図21を参照すると、濃度30%KOHと濃度35%KOHの電解質が、1)室温、及び2)60℃でCuOと混合されている。両方の場合、KOH中のCuOの可溶性は、KOH濃度の上昇と共に大きくなる。電池中の平衡KOH濃度が小さくなれば、カソード中の銅イオンの分解が低減される。理論に限定されることなく、銅イオンの分解と移動が低減されるので結果的にアノードでの自己放電及びガス発生が少なくなり、それによってバッテリ保管寿命が改善すると考えられる。
【0148】
5.電解質濃度の低下により、銅又は酸化銀を含むカソードの濡れ性も改善し、それによって結果的に反応速度が改善すると考えられる。CuOは、図22で分るように、EMDのMnO2よりも疎水性であり、低い湿潤前KOH濃度を使用すると、カソードの濡れ性が改善し、その結果、本発明の電気化学電池の性能が改善する。
【0149】
セパレータ
適切なセパレータ材料の1つのバージョンは、直鎖、分鎖、又はその変形から形成されたポリマーバックボーンを有する。適切なセパレータを提供することが見出されているこのようなバックボーンを有する材料の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)と、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール−EVOH)と、ポリスチレンのコポリマーと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのような材料とのこれら及び類似材料の配合物又は共押出し物と、これらの変形とを含む。付加的な適切なセパレータ材料としては、セロファンのようなセルロースフィルム及びその変形がある。しかし、このようなポリマーの全てが適切なものであるわけではない。むしろ、適切なポリマーは、セパレータ中に電解質を保持し、セパレータ中で、保持された電解質は、カソード及びアノードで見られるバルク電解質よりも低いpH値を有する。セパレータに保持された電解質は、バルク電解質pHよりも0.5pHから3pH単位低いpH値を有することが望ましい。電解質がセパレータ中に保持される程度及び保持された電解質のpHがバルク電解質のpHから変動することができる程度は、バックボーンに供給されるポリマー側基によって調整することができる。アルコール側基は適切であり、その範囲は、単純な水酸基からより複雑な側鎖までであり、この複雑な側鎖は、炭素、窒素、酸素、硫黄、及びシリコンなどを含むことができる線状、環状、及び分岐側鎖を含む少なくとも1つのアルコール部分を含む。カルボン酸官能基のような他の側基をセパレータ上に供給してセパレータ中の電解質又はpHの保持を強化するか又は抑制することができる。セパレータは、従来の電池におけるものと同様に、バルクアルカリ水成電解質によって水和されるが、水和セパレータ中に保持される電解質は、バルク電解質よりも低い固有のpHを有する。
【0150】
セパレータは、フィルムとすることができ、任意的に、カソード上に形成されるか又は電池製造時に電池に挿入される。特に適切なフィルムは、実際的な程度の小さな断面厚みを有すると同時に、製造上の処理可能性(例えば、撓み性、機械的安定性、処理温度での一体性、電池内での一体性など)、適切な電解質吸収力、並びに本明細書で説明する有利な特性を保持する。適切な乾燥フィルムの厚みは、一般的に約10ミクロンから約250ミクロンの範囲である。本発明者は、バルク電解質のpH値とセパレータ中に保持された電解質のpH値の差に応じて、フィルムセパレータの厚みを選択的に最適化して可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができることを既に認識している。
【0151】
本発明の1つの変形は、上述のタイプのゲル化亜鉛アノードと上述のように銅か銀又はその両方の可溶性種を含有するカソードとの間に配置された電気化学電池の密封セパレータシステムを含む。従って、「密封セパレータシステム」という用語は、本明細書では、電池アノードをカソードから物理的に分離し、水酸基イオンと水がアノードとカソードの間で移動することを可能にし、シームと底部シールによって材料自体を通じた以外の移動を制限し、銅、銀、ニッケル、ヨウ素酸塩、及び硫黄種のような他の可溶性種のカソードからアノードへのセパレータを通じた移動を実質的に制限する構造を定めるために使用されることを認めるべきである。
【0152】
可溶性アノード汚染種がカソードからアノード区画内への移動を実質的に制限すると同時に水酸基イオンの移動を可能にする改良型障壁セパレータシステムを電池内に設置することにより、本発明の原理に従って構成されたアルカリ電気化学電池の有用性を大幅に高めることができる。CuO、CuS、CuAg24、Cu2Ag23のようなある一定のカソード材料については、生成されるCu、Ag、Sのような可溶性種の移動に対して障壁を採用するセパレータシステムを使用することは有利である(移動は、少なくとも約50%、代替的に、少なくとも約60%、最後に、本明細書で説明するような試験では少なくとも約70%低減される)。このような障壁材料としては、PVA(ポリビニルアルコール)フィルム、改質又は架橋PVA(ポリビニルアルコール)フィルム、EVA、EVOH(エチルビニルアルコール)、セルロース系フィルム、又はこのようなフィルムの積層又は非積層組合せ又は合成混成物を含むことができる。これらの材料により、本発明の態様に従って更に様々な酸化物、硫化物、及び金属錯体を活性カソード混合物として使用して保管寿命が改善したバッテリを製造することができる。
【0153】
セパレータは、セパレータに組み込まれた構造体及び導電率促進剤を更に有することができる。天然粘土又は合成粘土のような媒介又は「Laponite」のような珪酸塩などは、イオン種を吸収又は阻止する機能を既に示しており、セパレータ材料中に又はセパレータ表面に組み込むことができる。セパレータは、電気化学電池で使用される等角セパレータとすることができ、セパレータは、可溶性種が通過するのを実質的に制限する(すなわち、少なくとも約50%、代替的に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、及び最後に、少なくとも約90%)。
【0154】
また、本発明のカソードには、可溶性種と相互作用することによって可溶性アノード汚染種がカソードからアノードに向けて移動するのを実質的に制限する媒介を供給することができる。ポリビニルアルコール、活性炭素、天然粘土又は合成粘土、及び「Laponite」のような珪酸塩などは、イオン種を吸収又は阻止する機能を既に示している。
【0155】
従って、本発明の態様は、カソード内に可溶性カソード材料を有する電池に付随する少なくともいくつかの困難を克服する。これらの問題には、以下が含まれる。
【0156】
1.カソードの可溶性銅種又は銀種は、拡散してアノード側に移動して金属の形態で沈殿する傾向があり、架橋短縮、アノードガス発生、又はアノード不動態化を引き起こすことがある。架橋短絡は、酸化亜鉛、銅、又は銀が沈殿してセパレータを通過する時に発生してアノードとカソードの間に架橋が形成されることにより、バッテリ寿命を短くする。架橋短縮は、高抵抗短絡である可能性があり、カソード容積及び容量の緩やかな減衰が発生する。「laponite」のような媒体をセパレータ内又はセパレータ上に組み込んで捩れを増大することにより、架橋短絡を最小限に抑えることができる。アノード不動態化は、異なる程度のアノード汚染に至る可能性があり、この程度は、アノード抵抗の増加(従って、バッテリ内の内部抵抗の上昇)からアノード反応の完全な遮断までの範囲である。
【0157】
また、硫黄種は、存在する硫化物添加物又は他の硫黄含有化合物から分解してアルカリ電解質中に可溶性硫黄種を形成することができる。これらの種は、更に、互いに及び電解質中で分解する他のイオンと反応することができ、セパレータ内か又はセパレータと電極の境界部に沈殿し、その結果、カソードとアノードの間の電解質移動が阻止されるか又は架橋短絡が発生する。
【0158】
2.カソードが硫黄を硫化物として又は金属酸化物と混合された硫黄として含む時、硫化物及び硫黄は、アルカリ及びアルカリ土類水酸化物と反応して溶液中に硫化物、多硫化物、亜硫酸塩を形成し、これらは、拡散して及び/又は電池アノード側に移動ことができ、その結果、アノードが不動態化し、拡散抵抗並びに保管寿命が妨害される。
【0159】
3.また、上述の種は、互いにかつ電解質中で分解する他のイオンと反応して、セパレータ内か又はセパレータと電極の境界部で沈殿し、その結果、カソードとアノードの間の望ましいイオン及び電解質の移動が阻止される。
【0160】
4.セパレータ材料が可溶性の銅種、銀種、硫化物、多硫化物、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ヨウ素酸塩、又は類似の可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する時でさえも、円筒形電池セパレータは、適切なシームではないにしてもこれらの種が依然として拡散してアノードに移動する道になることができるシームを有すること(特に1つ又はそれよりも多くの端部及び円筒形電池セパレータの側面に沿って)を認めるべきである。従来の円筒形電池セパレータは、このような可溶性種がアノード区画に移動するのを適切に制限することはできない。「側面シーム」は、本明細書では、円筒形セパレータの重なり合う端部(又は、可能性としては隣接端部)に位置するシームとして定められる。「端部シーム」は、本明細書では、円筒形電池セパレータの開放端の一方に配置されるシームとして定められる。従って、「正の端部」及び「負の端部」という用語は、電池内へのセパレータ設置後に、それぞれ、円筒形電池の正の端部及び負の端部の近くに配置されたセパレータ端部を指すことを認めるべきである。「周囲端部シーム」は、本明細書では、ボタン又はプリズム電池に設けられた時に密封すべき平坦かつ円形、四角形、又は矩形のセパレータの外周部と定められる。
【0161】
本発明の様々な態様は、銅、銀、硫黄のような様々なアノード汚染種を有するか又は生成する電気化学電池に関する上述の困難の多くを克服するセパレータ組合せ及び構成を提供する。
【0162】
セパレータ材料及び組合せ
困難1、2、及び3は、適切なセパレータ材料又は材料の組合せを選択することによって対処することができる。
【0163】
本発明の様々な態様によれば、いくつかの材料及びその組合せは、ゲル化亜鉛アノード、及びカソードに銅、銀、及び硫黄イオンを有するアルカリ電池に有効であることが見出されている。更に、これらの材料を評価してどのような材料が可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するのかを判断した。
【0164】
セパレータを通じてセパレータアノード側からセパレータカソード側に延びる通気孔の形態の比較的高い物理有孔率は、セパレータには望ましくないと既に判断している。例えば、セロファン、PVA、EVOH、TiO2充填高モジュール重量ポリエチレン(HMWPE)膜などについて以下の実施例1から3を参照して説明する。HMWPEサンプルは、マサチューセッツ州ビルリカ所在の「Advanced Membrane Systems」から販売されており、TiO2を充填すると有孔率を低減し、かつセパレータ間隙の捩れを増大することができる有孔膜である。
【0165】
また、「混成セパレータ」として本明細書で定められるPVA、EVA、EVOH(その各々を架橋することができる)のようなポリマーを被覆又は含浸するPVAフィルム又は繊維は、有孔率が最小限に抑えられるか又は排除された場合、以下の実施例6を参照して説明するような可溶性アノード汚染種の移動を制限するのに有効であると判断されている。
【0166】
PVA又はEVAのような適切なポリマーを被覆又は含浸した不織繊維基体は、Cu、Ag、Sの移動の制限に有効であるが、材料を薄くし、また、このような材料を使用した比較的不透水性のフィルムを形成することが望ましい。この点において、乾燥フィルムが容易に剥げ落ちる可能性がある基体上でPVAフィルムを直接水ベースの溶液から付加することができる。70℃のマイラー基体/剥離フィルム上に10%PVA溶液(テキサス州ダラス所在の「Celanese Ltd.」製の「Celvol」等級350PVA)が流し込まれる。規定の「排除試験」法による実験の結果、フィルムは、銅種、銀種、硫黄種の移動に対して望ましい障壁特性を有することが公知である。また、市販のPVAフィルムを既に評価しており、同様の傾向を示している。このようなPVAフィルムの製造業者の一例は、インディアナ州ポーテッジ所在の「Monosol LLC」である。「Monosol」製の同じサンプルを評価したところ、一部は、加工助剤及び/又は可塑剤を含む。また、濃縮KOH中のフィルムの抵抗を測定し、アノード汚染種の移動を実質的に制限する機能が改善する時に、イオン抵抗が大きくなることが公知である。一般的に、多量の可塑剤を含むPVAサンプルは、可溶性種移動の制限の効果が劣っており、一方、維持するイオン抵抗は、問題ないほどに低い。可溶性種移動の制限は、化学組成、分子量、分子量分布、添加剤を含むポリマー特性を設定することによって、かつ適切な架橋によって達成することができることを当業者は認めるであろう。
【0167】
当業者は、亜鉛アノードと、可溶性アノード汚染種を含むカソードとを有する電気化学電池のセパレータとして使用される時に、他のポリマー溶液を使用して不織セパレータ又はセロファンセパレータに被覆又は含浸してPVAで見られるのと類似の効果を達成することができることを認めるであろう。代替的に、ポリマー溶液は、アノード又はカソードに直接に被覆することができ、その結果、等角セパレータが得られる。従って、混成セパレータ(例えば、ポリマーを被覆又は含浸した不織繊維セパレータ)の一部を形成するように以下で説明するポリマー溶液の多くは、代替的に、カソード内面又はアノード外面に直接に付加し、水酸化物イオン移動を可能にすると同時に可溶性銅種、銀種、及び硫黄種の移動を実質的に制限する等角セパレータをもたらすことができることを認めるべきである。このタイプのセパレータは、別の側面シームの必要性を最小限に抑えることができる。
【0168】
他のこのようなポリマーは、不織セパレータ上に被覆又は含浸し、例えば、以下の実施例7で説明するような銅、銀、硫化物、多硫化物、チオ硫酸塩、ヨウ素酸塩、燐酸塩、珪酸塩、又は炭酸塩のような可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができるエチルビニルアセテート(EVA)エマルジョン(ビニルアセテートを含む)、ビニルアセテートエチレンコポリマー、及びビニルアセテートポリマーである。別の適切なポリマーは、EVOHである。
【0169】
「Laponite」粘土、ベントナイト粘土、又はスメクタイト粘土、又は粘土状の材料のような有機又は無機材料をポリマー溶液中に組み込んで、更に、構造をもたらすか又はイオン移動又はイオン導電率を高めることによってポリマー被覆セパレータの性能を高めることができる。類似の電荷を有する可溶性種が通過するのを妨げるために表面電子電荷を有する材料も組み込むことができる。「Laponite」が357サイズ電池内の架橋PVA被覆不織F3T23セパレータに組み込まれたセパレータの性能を実施例8に示すと共に以下で説明する。
【0170】
セパレータは、アノード汚染可溶性硫黄種の移動を実質的に制限する第2のグループ(グループII)のセパレータ材料(例えば、PVAフィルム、又は架橋に有無を問わず不織セパレータ内に被覆又は含浸したPVA)と組み合わせてアノード汚染可溶性銅種及び銀種の移動を実質的に制限する第1のグループ(グループI)のセパレータ材料(例えば、セロファン、TiO2充填MHWPEなど)を含むことができることを既に発見している。この組合せは、可溶性の銅種、Ag種、及び硫黄種を実質的に制限する。従って、グループIとグループIIの組合せを含むセパレータは、上述の困難1、2、及び3を最小限に抑えるのに有効である。このようなセパレータを実施例5及び6で以下で試験している。2つのセパレータ材料は、様々な組合せで積み重ねるか、積層するか、又は被覆することができる。例えば、グループIの材料は、グループIIの不織セパレータ(又は適切な不織セパレータの層)のアノードと面するか又はカソードと面する表面上に被覆することができ、又は代替的に、PVAを被覆した不織セパレータの隣接層又は適切な不織セパレータの組合せの間に配置することができる。
【0171】
更に、セルロース系材料(例えば、セロファン)のような一部の材料は、他の材料よりも多くの量のCuイオンのような可溶性種を吸収することを既に発見している。更に、ポリビニルアルコールのような他の材料の方が、可溶性種の移動の制御には効率的であることも既に発見している。従って、最終的にアノードに入る材料の量を実質的に制限するためには、このような材料の組合せは、このような材料の1つだけよりも適切と考えられる。従って、セパレータは、アノード汚染種の移動の方を実質的に制限する別のグループ(グループIV)のセパレータ材料(例えば、PVAフィルム、又は架橋に有無を問わず不織セパレータ内に被覆又は含浸したPVA)と組み合わせて、アノード汚染可溶性銅種及び銀種の方をより多く有効に吸収するグループ(グループIII)のセパレータ材料(例えば、セロファン)を含むことができる。この組合せは、可溶性銅種、Ag種、及び他の種がアノードに到達するのを実質的に制限する。2つのセパレータ材料は、様々な組合せで積み重ねるか、積層するか、又は被覆することができる。例えば、グループIIIの材料は、グループIVの不織セパレータ(又は、適切な不織セパレータの層)のアノードと面するか又はカソードと面する表面上に被覆することができ、又は代替的に、PVAを被覆した不織セパレータの隣接層又は適切な不織セパレータの組合せの間に配置することができる。
【0172】
可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するセパレータの適性の1つの尺度は、セパレータの通気性である。通気性は、当業者によって理解されているように、ガーリー秒で測定することができる。ガーリー試験では、所定の容積の空気をセパレータに通すのに必要な時間の長さを測定するために、測定結果として時間が長くなると、通気性が低いことを示している。500ガーリー秒又はそれよりも大きい「ガーリー通気性」を有するセパレータは、上述の電気化学電池での使用に適すると同時に、困難1、2、3を克服することが見出されている。ガーリー測定は、ニューヨーク州トロイ所在の「Gurley Precision Instruments」から市販されている「型番4150N」を使用して、10ccの空気を1平方インチの区域を通すために水の12.2インチの圧力降下で行った。ガーリー数が高いほどより良いことになる。当業者は、ここで、比較的高いガーリー通気性を有するフィルムセパレータは、通気孔が仮にあったとしても非常に少ないことになることを認識するであろう。
【0173】
通気性は、可溶性アノード汚染種を含有する電解質によって湿潤状態である時には必ずしもセパレータ通気性の正確な指標というわけではないことは認められるものとする。従って、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するセパレータの適性のより直接的な尺度は、以下で説明する「排除試験」のような直接測定分析の結果を用いることである。
【0174】
また、セパレータは、カソード、アノード、電解質構造、及び化学的性質における公知の変形及び改善と適合するが、金属の一元酸化物又は硫化物、金属の二元酸化物又は硫化物、金属の三元酸化物又は硫化物、金属の四元酸化物又は硫化物を含む1つ又はそれよりも多くのカソード活物質を含むカソードを有する電池に対して特定の利点を有し、金属は、分解して1つ又はそれよりも多くの可溶性アノード汚染種を形成することができるマンガン、銅、ニッケル、鉄、銀から選択され、1つ又はそれよりも多くの可溶性アノード汚染種には、以下に限定されるものではないが、カソードとアノードの両方に流体連通してバルク電解質流体中でカソードからアノードに不利に移動する可能性があるイオン金属種及び硫黄種が含まれる。本明細書で使用される時、「2元」、「3元」、「4元」は、特定の種のうちの2つ、3つ、又は4つを含むことを意味する。カソード活物質として利用される材料には、以下に限定されるものではないが、二酸化マンガン、硫化銅、酸化銅、水酸化銅、オキシ水酸化ニッケル、酸化銀、ヨウ素酸銅、ヨウ化ニッケル、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、銅酸化銀、及び銅酸化マンガン、及びその組合せが含まれる。カソード活物質の組合せは、カソード中で混合物又は別々のエンティティとして提供することができる。
【0175】
本発明の様々な態様では、セパレータシームを含むカソードとアノードの間の流体連通経路を密封して、少なくとも1つの層が設けられているセパレータ材料を通じるものを除き、流体連通(例えば、バルク電解質の)を最小限に抑えるか又は排除する。更に、バルク電解質中の実質的に全てのアノード汚染種は、セパレータカソード側に保持されてアノードに移動しないことが望ましい。従って、セパレータは、カソードからセパレータを通じてアノードに移動するのを妨げられる可溶性種の百分率を示す「排除値」と関連付けられる。「実質的に全て」とは、開発されて本明細書で説明する試験法に従って、セパレータが、少なくとも約50%、代替的に少なくとも約60%、代替的に少なくとも約70%、代替的に少なくとも約80%、代替的に少なくとも約85%、代替的に少なくとも約90%、代替的に少なくとも約95%、代替的に少なくとも約97%、最後に、代替的に少なくとも約99%の「排除値」を有することを示すものとする。
【0176】
しかし、電池のアノード活物質が可溶性種に耐える範囲で、電池は、可溶性アノード汚染種のセパレータを通じたある程度の移動に耐えることができることが認められるであろう。一般的に、従って、適切なセパレータは、セパレータが可溶性種を通過させる量が、アノード活物質が汚れることになく耐えることができる量よりも少ない場合は、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する。しかし、可溶性種の量の実質的な低下は望ましい。
【0177】
また、セパレータ中に保持される電解質の実質的に部分、例えば、少なくとも約50%は、ポリマーバックボーン又はその側基と関連付けられる(一般的に非共有結合的に関連付けられる)。このような関連付けの適切な尺度は、セパレータ材料を分析してセパレータ中に保持された水が凍結後に解ける温度を判断することによって得られる。ポリマー中であるがポリマーとは物理的に関連がない自由な水は約0℃で解けるが、融解温度の低下は、ポリマー、従って、望ましいセパレータとの関連があることを示している。セパレータ内保持水が液相に遷移する温度を判断する適切な方法では、単純な示差走査熱量測定(DSC)試験を採用する。セパレータ材料の適切な大きさのサンプルを水中で1時間膨らませ、次に、凍結するまで液体窒素に浸す。凍結したサンプルを低温DSC機器(「TA Instruments」(デラウエア州ニューアーク)から市販)で2℃/分の割合で解かし、少なくとも低い方は約−30℃から約20℃の範囲の温度で観察する(図23を参照されたい)。
【0178】
また、電気化学電池中の適切なセパレータ材料は、水酸化物イオンを覆うように優先的に水を、かつ可溶性種を覆うように水酸化物イオンを移動させる。図23は、様々な候補のフィルムを通じて移動する水とKOHの相対量を示し、かつ水とKOHがフィルムにわたって移動する相対的機能を示している。これは、「浸透」移動を示すものである。このような材料が電気化学電池中でセパレータと使用される時、フィルムのこの特性を有利に利用して、電池放電時に電解質のOH-とH2Oの濃度の再均衡化を加速することにより、電池の放電挙動に有利になるようにすることができる。これを図27を参照して後述する。
【0179】
浸透移動試験
「排除試験」でフィルムを通じた銅種と硫黄種の移動を測定するために説明したものと構造的には類似のものであるガラス固定具を使用してフィルム及び膜を通じた水とKOHの移動を実行する。問題のフィルムを側面A及び側面Bの間に置き、2つの側面間の流体連通がフィルムを通じてのみ発生するように「Oリング」で密封する。チューブは、この場合、各側面での容積変化をモニタすることができるように0.1ml間隔でメモリが付してある。固定具を組み付け後に、14mlの45%KOHを側面Aに入れ、14mlの4.5%KOH溶液を側面Bに入れる。組付け前に、「湿潤」時間を最小限に抑えるために12時間にわたってセパレータを29%KOHと釣り合わせる。
【0180】
45%KOHを含む側の液面は上昇し、一方、反対側の液面は下がる。これは、浸透移動のために水がOHイオンよりも速くフィルムを通じて移動するためである。優先的に水が45%KOHを含む側に移動するために液面が上がる。容積変化の割合をモニタし、4時間後に、両側の溶液をサンプリングしてKOH濃度を判断した。45%KOH側の容積変化は、評価した様々なフィルムの時間の関数として測定することができる。次に、水の移動の割合を計算することができる。この試験におけるセパレータの露出断面表面積は、1.4cm2である。各側の液体濃度を求めるとフィルムを通じた移動の平均モル速度の推定値が得られる。計算は、図23に示すように、「浸透移動試験」において4時間で移動した水の総モルに基づくものである。この計算法に基づいて以下のことがわかる。
【0181】
図27を参照して説明するように、優先的な水の移動により、ある一定の電気化学システムにおいてアノードとカソードの間の濃度勾配が最小限に抑えられることにより、濃度分極が低減され、かつより高い電池作動電圧が維持されると考えられる。特定の放電速度に限定されるものではないが、この特性は、濃度分極の方が果たす役割が大きい傾向がある高い割合での放電時に特に有利である。
【0182】
本発明の1つの態様によれば、電気化学電池は、本明細書で説明する「浸透移動試験」を用いて判断される少なくとも約1×10-6モル/cm/hrよりも大きい水浸透速度を有するフィルムセパレータを含む。更に、フィルムセパレータは、少なくとも約1×10-5モル/cm/hr及び少なくとも約5×10-5モル/cm/hrよりも大きい割合で水を移動させる機能を有する。
【0183】
セパレータ構成及びシーム及び底部密封
上述の困難第4(セパレータ側面及び/又は端部シームを通じたイオン透過性に関わる)には、以下の方法及び対応する機器で対処する。
【0184】
密封セパレータは、全てのバッテリシステムに適用可能であるが、特に、一方の電極からの可溶性種が反対側の電極に移動し、その結果、性能又は保管寿命が劣化する可能性がある本明細書で説明するもののようなシステムに適用可能である。これらの種は、一般的に可溶性アノード汚染種と呼ばれる。このような場合、実質的に不浸透性のシームが施されていない限り、可溶性種はシーム又はセパレータ端部周りに移動することができるために、セパレータ材料だけでは不十分である可能性がある。
【0185】
上述のように、セパレータを通る経路を通じたものを除き、アノードが実質的にカソードから流体的に孤立されるようにセパレータを密封することによってセパレータ周りの経路を通じたカソードとアノードの間の流体連通を最小限に抑えるか又は排除することが望ましい。セパレータ材料を密封する方法は、接着密封、熱密封、超音波密封などを含む公知の方法によって達成することができる。このように形成されたセパレータは、閉鎖端を有するチューブの形を取ることができる。ポリビニルアルコールを含む水溶性セパレータ材料の場合、限られた量の水で材料を柔らかくし、次に、熱又は圧力又はその両方で密封すると、シールを形成することができる。この配置は、融解セパレータシールによって一般的にカソードとアノードの間の直接的な流体連通に望ましくない経路の可能性が限定されるために望ましい。
【0186】
ボタン電池又はプリズム平坦電池においては、可溶性アノード汚染種がセパレータ周りで漏出するのを実質的に制限することを目的として良好なシールが一般的に達成可能であり、これは、セパレータが絶縁用グロメットのような対向する部材によって平坦な表面(例えば、ディスク又はプリズム状電極)に対して緊密に加圧されるからである。しかし、円筒形電池においては、良好なシールは容易には達成可能ではない。これは、製造の容易さ、速度、及び経費のために、セパレータは、通常、回旋状螺旋巻きチューブとして挿入されるか又は空隙に横置きされてシームが密封し難いからである。
【0187】
外周部と第1及び第2の端部とを有する円筒形セパレータを設置することができる。電池正端子近くに配置されたセパレータの端部は、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するために、セパレータ製造時(すなわち、押出し、メルトブロー法などを通じて)にシームレスとすることができ、又は物理的又は化学的手段によって密封することができる。化学的密封法には、化学結合の介入の有無を問わず、接着剤の使用が含まれる。物理的密封法には、熱(溶接)、振動(例えば、超音波接合)、圧力印加、又はその組合せが含まれる。化学的及び/又は物理的密封法の様々な組合せも、選択した材料に応じて適用することができ、例えば、PVAフィルムをそれ自体に接合するために、熱、水、及び/又は圧力の使用を用いて有効なシール/継手を生成することができる。
【0188】
化学的密封法の中で、このようなシールを形成する1つの方法では、架橋可能ポリマー及び架橋剤を使用して少なくともシームシールと底部シール、及び望ましくは上部シールも付加される(セパレータ空隙へのゲル化アノードの導入後)。
【0189】
シームシール及び底部シールセパレータ構成は、外部に作り、次に電池内に挿入することができ、又は電池空隙に螺旋巻き、回旋状、又は横置きのセパレータチューブを挿入した後に原位置で作ることができる。
【0190】
架橋によってポリマーが所定の位置に固定され、バッテリ寿命を通して無傷なシールが作られる。ポリマーの単純な凝固又は高pH環境での沈殿により、作動時の膨張又は収縮、又は通常の取り扱い又は輸送時の物理的又は機械的振動によって移動するか又は変位する可能性があるゼラチン状の塊が一般的に生成され、その結果、シールが損なわれる。架橋がない接着ポリマーを使用することもでき、言うまでもなく、生成されたシールは、バッテリの使用寿命にわたってバッテリ電解質中で安定しており、かつセパレータ材料自体ほどはシーム又は底部シールでのアノード汚染種の移動を許容しないことが望ましい。
【0191】
適切な材料の選択で、架橋及び凝固の両方が有効なものになる可能性がある。2つの適切なセパレータ材料を原位置外のシールの例として示している。一方の材料はセロファンであり、他方の材料は混成セパレータであり、混成セパレータは、架橋剤で架橋状態であるPVAで被覆した不織繊維を含む。ガーリー通気性が>500秒で不織紙を実質的に空気を通さないものにするためには、PVAの十分な充填が必要である(>5g/m2)。通気性が低いために、バッテリ中では、ポリマーが電解質吸収時に膨れた時、材料を通じて可溶性アノード汚染種が移動するための経路が確実に実質的になくなることになる。シームシールを作るために、様々なPVA溶液の層(例えば、水中で2重量%から10重量%)をシーム近くに付加し、2つの表面を互いに合わせて、次に、硼酸ナトリウム又は当業技術で公知の他のもののような架橋剤の薄い層を付加する。シール区域は直ちに架橋すると同時に、2つの面を互いに結合する。濃縮KOH電解質中での5日間の浸漬による単純な試験の結果、シームは無傷であり、かつ物理的に裂いてしまうことはできず、バッテリ中での良好な作動特性を示唆することが公知である。可溶性アノード汚染種を実質的に制限する際のシールの有効性は、本明細書で説明する「排除試験」を用いて試験することができる。接着剤として適切か又はそれとして使用される他の適切な架橋可能なポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、ポリエチルグリコール、ポリビニルブチラール、及びポリビニルピロリドンがある。
【0192】
底部シールを生成するために、少なくともある程度の重なりが層間にある(及び内側にマンドレルのある)巻き状態のセパレータチューブの一端を折り畳んで、マンドレル端面に置かれた同じか又は他のセパレータのディスク状の部分を覆うようにカップを形成し、次に、架橋可能なポリマー(例えば、PVA)の一滴を落とす。十分な架橋剤添加時に、架橋状態の接着複合折り畳み底部ができ、それによって可溶性アノード汚染種の移動が実質的に制限される。次に、チューブ状のセパレータを利用して従来の方法でバッテリを製造することができる。
【0193】
上述のような原位置外のシールは非常に有効であるが、密封チューブとカソード空隙の間に存在する間隙があることが多いために、バッテリ設計及び性能の観点から言えば最も望ましいものではない。この空間のために、アノードとカソードの間に不良な湿潤状態の境界面ができる可能性があり、特に長期間の棚保管後にバッテリ性能不良になる。この問題の1つの解決策は、電解質吸収時に大幅に膨れることによって乾燥チューブとカソードの間に存在する空間を埋めるセパレータを使用することである。挿入後に膨張することができるひだ付きのチューブ状セパレータを使用することもできる。この問題の別の解決策は、架橋可能なポリマー被覆不織セパレータの場合について以下で説明するようなシールを螺旋巻きチューブ(例えば)の挿入後に原位置に生成することである。原位置態様の特定の利点は、未密封螺旋巻きチューブ又は横置きセパレータが空隙に挿入された時、有効な容積に膨張してそれ自体とカソード材料の間の間隙を低減して良好な境界面を生成することである。これは、更に、挿入マンドレルを除去する方法における巻きチューブの場合には、シームがまだ密封されていないことからセパレータが空隙内に膨張することを可能にするか又は引き起こすいくらかの反対方向への捩り又は制御されたガス噴射により助けるができる。
【0194】
従って、望ましい環境では、原位置のシールを得るために、不織セパレータを架橋可能なポリマー(例えば、PVA)と架橋剤(例えば、硼酸塩誘導体)の混合物の十分な充填で被覆して実質的に不浸透性(ガーリー通気性>500秒)にすることができる。架橋剤の選択は、PVAを直ちに架橋しない(すなわち、適切に活性状態になるまで休止状態のままである)ように実行される。このような硼酸塩誘導体架橋剤の一例は、硼酸である。この特定の例においては、架橋は、(KOH)電解質がセパレータに接触した後にpHがバッテリ中で大きくなって7を超えた時に発生することになり、その結果、架橋剤が活性化される。少なくともある程度の重なりが層間にある条件の下で、著しく乾燥したPVA/硼酸被覆セパレータをマンドレルの周りに巻く(現在のアルカリ電池製造におけるように)。一端を折ってカップ状の底部を形成し、チューブをカソード空隙に挿入する。次に、上述のように、架橋ポリマー及び架橋剤で被覆した同じか又は他のセパレータ材料を含む底部ディスクをチューブに挿入して、巻きセパレータチューブの折り畳み底部の内側に納まるようにする。電解質の事前注入がセパレータチューブ内に導入されるか又は亜鉛ゲルを含む電解質が添加された時、硼酸が存在する場合にPVAの架橋を引き起こし、同時にセパレータの隣接層の間、底部ディスクとチューブの間、並びに重なり領域のシーム間にシール又は結合も形成される。
【0195】
同じ目的を達成する別の方法は、実質的に非浸透性(ガーリー通気性>500秒)にするために十分な量の架橋ポリマー、例えば、PVA(但し架橋剤なし)が被覆された不織紙で始めることである。折り畳み底部を作り、上述のようにカソード空隙に挿入して、次に、PVAを被覆又は含浸した底部カップを挿入する。次に、架橋剤(例えば、硼酸ナトリウム)を挿入セパレータチューブに付加し、その結果、同時にセパレータチューブの隣接層、重なり部の底部と底部カップとシール領域が架橋及び密封される。この架橋法は、セパレータが予め湿潤状態である、すなわち、架橋剤付加前に水で噴霧した場合の方が効率的になることが見出されている。架橋可能なポリマー及び架橋剤の性質に基づいて正しい処理段階及び条件を最適化すべきであることを認めるべきである。
【0196】
他のポリマー及び/又は架橋剤を使用して同じ最終結果を達成することができる。非限定的な例として、PVA及び改質PVA上に被覆又は積層した再生セルロースがそのようにできるように、カルボキシル基をPVAに導入してグルタルアルデヒドで架橋させてフィルム特性を改善させることができる。また、PVAをアクリル酸と重合してイオン抵抗を大幅に低減することができる。また、アセチル化PVAフィルムをポリアクリル酸で改質することができる。アクリル酸又はメタクリル酸グラフトPVAを使用することもできる。同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン膜上のグラフトメタクリル酸もセパレータとして適切である。
【0197】
別の態様では、原位置外の処理と原位置の処理の組合せを使用することもできる。例えば、PVAをまず適切なセパレータ材料の巻きセパレータシームと底部に付加し、次に、カソード空隙に挿入することができる。次に、所要量の硼酸ナトリウム(又は他の)架橋剤をチューブに付加してアセンブリを所定の位置に架橋及びシールさせることができる。
【0198】
本発明の更に別の態様は、ポリマーコーティング処理時に「Laponite」、ヒュームドシリカ、ベントナイトのような導電率及び構造改善充填剤を任意的にセパレータに組み込むことである。不織層を不浸透性とするためには従来の電池よりも多いPVA充填が必要であるから、それによってセパレータの電気抵抗を増大することができる。適切な充填剤を組み込めば、より問題のないレベルまで導電率が高まり、かつバッテリ放電特性が改善する傾向がある。
【0199】
密封セパレータを製造する第2の一般的な方法は、PVA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンのような熱密封可能なポリマー材料を用いた物理的なものである。シールの形成は、連続的なフィルム又は有孔繊維フィルムの形でポリマー材料層を付加して密封対象区域(例えば、サイズAAの電池に設置すべきセパレータ外周部)に層を挿入することによって行う。次に、セパレータは、圧力印加の有無を問わず、制御された加熱でシールを形成することができる。熱密封可能なポリマー層も、セパレータ層(熱密封可能である場合もあれば、そうでない場合もある)の1つの表面に付加し、次に、重なり領域が別のセパレータ層と境界を成す密封可能なポリマー材料の層を含むように円筒形に巻くことができる。従って、熱密封可能なポリマー材料は、制御された加熱状態で他方のセパレータ層に対して密封されることになる。更に、セパレータを円筒形に成形する前に、外周又は内周円筒形セパレータの近くにポリマー材料を位置決めすることができる。代替的に、円筒形セパレータの2つの重なり合う端部(他の場合では互いに結合しない)の境界部にポリマー材料を付加することができる。従って、このポリマーシールであれば、制御された加熱状態で2つの端部を互いに結合し、シールを形成することになる。また、制御された加熱状態時にポリマー材料がセパレータ外周部を密封するように、適切な形状のポリマー層をボタン電池に設けられることになるセパレータのいずれかの側に積層又は被覆することができる。
【0200】
材料をそれ自体に対して溶融するか又は別の材料に溶融するために超音波振動の使用は、(例えば)PVAフィルム内での良好なシールの生成に有効であることが見出されている。
【0201】
シールを形成する第3の方法は、ホットワックス、エポキシ樹脂、又は他の接着剤タイプの密封剤をシームに付加することである。重要なことは、ここで使用する材料(ワックス又はエポキシ)は、バッテリのアリカリ度が高い環境に強くかつ密封特性を維持することである。
【0202】
代替的に、押出し、射出成形、又はブロー成形/ブローンフィルムのような様々なポリマー処理法が使用されるシームレスセパレータチューブを採用することができる。同様に、例えば、シームがセパレータ内に存在するのではなく下層材料内に存在するように、繊維材料のようなシーム材料に再生セルロースのような適切なセパレータ形成ポリマーを完全に被覆することにより、シームレスチューブを準備することができる。本明細書で説明するセパレータ構造は、あらゆる数の上述の材料の層を含んで可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができることを認めるべきである。
【0203】
更に別の代案は、セロファンのようなセパレータ上で架橋可能なポリマーに架橋剤を被覆又は積層することによって熱密封とポリマー架橋を組み合わせることである。従来の配置法を用いてセパレータを所定の位置に配置することができる。電解質を単独で又はアノード中に導入すれば、ポリマーが架橋して密封セパレータを形成することになる。
【0204】
更に、セパレータの正及び負の端部も望ましくはアノードへの可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するのに十分な方法で密封すべきであることを認めるべきである。円筒形電池は、一般的に、電池負端子端部近くに配置された環状グロメットを含み、電池負端子端部は、カソード及びセパレータに当たるように軸線方向又は半径方向に圧縮されてアノードの溢れを防止する。セパレータの負端部は、負端部でセパレータ周辺部にポリマーを供給して制御された加熱状態でグロメットに当たるようにポリマーを密封することにより、グロメットに当接し、かつそれに対して密封することができる。架橋を含む化学結合を用いてシールを作ることもできる。また、適切に設計されたセパレータロックを伴うグロメットなどを使用してセパレータ負端部を機械的に密封することができる。代替的に、物理的シールを亜鉛アノード上端に付加してアノードへの可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができる。また、負端部の密封は、ポリマーが架橋された時にシーム及び底部密封した円筒形セパレータチューブに対して密封することになる架橋可能なポリマーを被覆したディスク上のキャップを使用して行うことができる。また、カソードの上面及び縁部を適切な架橋可能なポリマー又はポリマーゲルで覆って可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができる。代替的に、アノードの上面を適切な架橋可能なポリマー又はポリマーゲルで覆ってカソードからの可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限することができる。
【0205】
第4の方法においては、マンドレルとシューの構成を用いてかつ材料を超音波で溶融して側面(シーム)シールを形成することによって側面シールを作ることができる。PVAフィルムの切片をマンドレルの周りに巻き、シューによって捕捉状態に保持する。処理を目的として十分なフィルムのオーバーラップを維持し、約3mmのシールの重なりを目標とする。マンドレルとシューの構成を速度プログラム可能スライド上に置き、スライドをバネ付勢式プレートに取り付ける。次に、スライドとプレートを望ましくは20kHzと40kHzの間で作動する超音波溶接ホーンの下に置く。プレートがホーンとマンドレル上のPVAフィルムの間に掛ける力(望ましくは、3から10lbf、代替的に4から7lbf、又は代替的に5から6lbf)は、異なるバネ係数を有するバネを使用すれば調整可能である。溶接シームの品質は、溶接時のスライド速度、ホーンに対するフィルムの圧力、溶接機の振幅、フィルムの水分/温度に依存する。21℃の水分は、1%から25%、代替的に3%から10%、及び代替的に更に5%から7%であることが望ましい。溶接完了時に、最終チューブは、超音波溶接から供給される加熱不十分又は過剰によって引き起こされた空隙率が実質的に欠如した(フィルム基体材料のものを超えて)連続密封円筒形であるべきである(図24)。過剰な重なりは、円筒チューブから取り除いてもよい。
【0206】
密封セパレータチューブ又はバッグを作るために、完全側面密封円筒形の端部の少なくとも一部を密封すべきである。インパルス熱密封機器(Fuji FS−315)を使用して、円筒形端部の少なくとも一部分を側面シールの線と実質的に垂直方向の線で密封する(図25)。次に、密封端部を折り込んで、内部バッグ容積を最大にし、かつチューブにチューブがその後に挿入される缶の底部の形状を与えるように複数の方法を通じて円筒形に成形することができる(図26)。可溶性アノード汚染種がアノードに移動することが実質的に制限される限り、説明するように、超音波、接着密封などを含むあらゆる他の適切な端部密封法を採用することができる。
【0207】
適正に作動可能な電池をもたらすために、漏れが実質的にない密封チューブの製造が望ましい。定量試験を行って以下の方法でシール品質を判断する。PVAバッグ内径(ID)よりも約0.005インチ小さい外径(OD)を有する中空チューブをガス供給部(好ましくはアルゴン又は窒素)に接続する。円筒形電池に必要とされる高さよりも大幅に高いPVAバッグを中空チューブに挿入して、電池内に設置するバッグの全高が依然として中空チューブの底部よりも下にあるようにする。次に、中空チューブに対してバッグを密封するようにエラストマーOリングをPVAバッグの上に置く。2psigから3psigの圧力をチューブに供給し、バッグにガスが充満して2psigから3psigの到達圧力になるように十分な時間を取る。バッグが膨れると(PVAバッグにあらゆる寸法上の変形なく)、エタノール(95.2%、「Fisher Scientific」、ペンシルベニア州ピッツバーグ所在)浴に挿入し、エタノールを通じて気泡が存在すると、密封バッグの漏れ発生を示し、バッグを使用不能にすることになる。
【0208】
最後に、適切なセパレータが本明細書で説明するように構成された時に可溶性アノード汚染種の拡散を実質的に制限することができる。単純な実験を行ってボタン電池又は他の試験媒体内で直接に様々なサンプル材料を選別し、時間と共に開回路電圧(OCV)をモニタすることができる。OCVの減衰は、電池内の全ての他の構成要素がOCV減衰を一般的に引き起こさないとして公知であるから、電極の1つの表面の変化、恐らく可溶性アノード汚染種の移動の結果を示すものである。特定の材料に行われた改善及び修正を評価するためにセパレータ材料選別及び選択が定量的であるほど、特別設計された固定具における「電池外」試験(本明細書で説明する「排除試験」など)が望ましい。セパレータ材料の適性を判断し、又はシールの有効性を判断するために以下のように「排除試験」が行われた。
【0209】
−112のOリングサイズを有する2つのL字形Oリングシール継手(「Ace Glass」、ニュージャージ州バインランド所在)によって分けられた第1の端部(側面A)及び第2の端部(側面B)を有するガラスチューブを設置した。セパレータサンプルのセパレータ又は密封シームをガラスチューブの中央のOリングシール継手の間に置いた。ガラスチューブの側面Aを0.25gCuOと0.25gCuSの混合物を含む10mLの25重量%KOHで満たした。これは、実験の持続時間にわたってこれらの状態で平衡濃度に実質的に近いバルク溶液中に可溶性銅種と硫黄種の一定の供給があることを保証した。側面BをCuO、CuS、又はCuOとCuSの混合物が実質的にない10mLの34重量%KOHで満たした。また、電解質中に固形カソード材料を含むバッテリで一般的である状態により密接に似たものであるために、側面Aの可溶性銅種と硫黄種の公知の濃度よりもCuO粒子とCuS粒子の使用を選択した。銀排除実験については、0.25gのAgOを側面Aで利用した。側面Aと側面Bでの種の濃度の差により、セパレータを通じた可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するセパレータの機能の尺度である「排除値」が得られた。ガラスチューブの側面AでKOH中に置かれたCuO又はCuSの粉体のような分解していない材料で始めた時、この実験は、分解していない材料からの硫黄種の可溶性を示すことになる。可溶性アノード汚染種の急激及び優位な可溶性を保証するために高いKOH濃度(例えば、34重量%)が望ましい。上述の実験を60℃で5日間行った。
【0210】
アルカリバッテリが放電した時、カソード反応では、水が消費されてOH-イオンが発生し、一方、アノードではOH-が消費され、水が発生する。従って、カソードでの反応が直ちに必要になる場合のために十分な水がカソード間隙にあることが必要である。新しいアノードは、亜鉛粒子がゲル中に浮遊するので、一般的に、アノードとカソードでの放電反応を支えるために適切な電解質を有する。反応が特に連続的な高いドレイン状態で進む時、アノードとカソードの濃度勾配が電池分極の一因になり、その結果、電圧が下がる。カソード中のOH-イオン及びアノード中の水の蓄積を補うために、電池分極を低減することによって急激過ぎる作動電圧の劣化を防止する上で、2つの電極間の急激な質量輸送が極めて重要である。湿潤セパレータは、2つの電極間の境界部になるので、過大な濃度勾配とならないように、水又はOH-イオンを急激かつ優先的に移動させる機能を有するセパレータ材料を使用することは、このような状況では有利である。比較的乾燥質量であるので、水は、カソードに移動してOH濃度が高すぎないようにし、すなわち、非常に望ましいものである。この反対のことがアノードに当て嵌まり、アノードでは、急激過ぎる電解質枯渇は、亜鉛アノードの不動態化を引き起こし、時期尚早の故障になる可能性があることから望ましくない。
【0211】
膜を通じた塩の低濃度領域から高濃度領域への溶剤の移動を浸透作用と呼ぶ。セロファン、ポリビニルアルコール、エチルビニルアルコールのようなフィルムセパレータは、強い浸透挙動を示している。これらのフィルムは、フィルムにわたって濃度勾配がある時にOH-よりも水を優先的に移動させる。このようなフィルムのこの特性は、このようなフィルムをセパレータとして使用することによってバッテリでは既に利用されており、高い割合での一定電流放電中に、セパレータフィルムは、水を選択的かつ急速にアノード区画からカソード区画に移動させて通常発生する分極を低減することができる。それによって通常よりも高い作動電圧をもたらすのにアノード電解質濃度が十分に高く、カソード電解質濃度が十分に低く保たれる。その結果、このようなセパレータを使用するバッテリでは、高速装置の方が長く稼動すると考えられる。
【0212】
図27は、1Amp連続試験でPVAフィルムセパレータを有するAAアルカリバッテリと不織セパレータを使用する従来のAAアルカリバッテリとを比較したものである。PVAフィルムセパレータを有するバッテリの電圧は、対応する従来のカソードよりも大幅に高いままであり、1V限界値までの放電時間は、僅か約32分であったのに対して、45分を超えるか、代替的に50分であることが分る。これは、>80%の性能改善であることを示している。市販のAA1次アルカリバッテリでは、1アンペア連続放電試験で約40分であることに注意されたい。
【0213】
このようなフィルムセパレータの使用の別の利点は、セパレータによって占められる容積が、いくつかの不織材層を使用することで従来のセパレータよりも大幅に小さくなるということである。この内部容積の増加は、活物質及び電解質に利用可能であり、特に活物質の量でバッテリ使用寿命が決まる低及び中程度の放電ドレインではバッテリ使用寿命が延びる。ここで開示するタイプのフィルムセパレータの使用には特定の利点があるが、これらの材料は、例えば、高速製造時の急速電解質吸収のようなシステムに他の望ましい特性を与えると考えられる不織又は微孔性材料の1つ又はそれよりも多くの層と組み合わせて使用することもできる。
【0214】
更に別の潜在的利点は、PVAのようなフィルムは、電解質吸収時に軟化して膨れることによってカソードの表面に適合するので、高速性能に有用な密着したアノード/カソード境界部になるということである。
【0215】
望ましい水移動特性を有するこのようなフィルムの使用は、可溶性アノード汚染種がカソードに発生する電気化学電池に限定されたものではないことに注意されたい。優先的水移動特性は、燃料電池及び従来のアルカリZn/MnO2バッテリのような広範囲にわたる電気化学システムに有用である。このようなフィルムをZn/MnO2のような従来のアルカリバッテリで利用した時、シーム及び底部を完全に密封することは、可溶性アノード汚染種が存在する状況では必要であるのに対してここでは不要である。従って、これらの例では、全ての流体連通がセパレータ材料を通じてのみ発生するようにセパレータを形成することは不要である。アノードとカソードの間の内部短絡をバッテリの慎重な設計を伴う他の手段によって防止できる限り、シームシールなしでフィルム材料を使用し、依然として優先的水移動特性を利用することができる。
【0216】
ここで説明するフィルムの厚みは、一般的に約25ミクロン(マイクロメートル)から約40ミクロンの範囲であった。しかし、望ましい特性及びフィルムの特性に応じて更に広範囲にわたる厚みを使用することができる。例えば、PVAは、セロファンよりも抵抗力があるので、MnO2カソードを有する従来のアルカリバッテリでは、フィルム並びにバッテリの高速製造には実際的に可能な限り薄いPVA層を使用することが望ましいと考えられる。状況によっては、フィルムを別の材料(例えば、不織層)と組み合わせて取り扱い、電池組付けなどを容易にすることが必要であろう。別の任意選択肢は、フィルムの抵抗性を低減することによってより厚いフィルムを利用することを可能にする一助にすることができる「Laponite(登録商標)」のような介在物をフィルム内又はフィルム上に組み込むことであろう。ポリアクリル酸又はアクリレートのような介在物を組み込んで水又は電解質吸収のような特性を修正することもできる。従って、厚みが約10ミクロンから約150ミクロンの範囲であるフィルムを使用することができる。
【0217】
A:ボタン電池試験
試験対象のセパレータを含む357サイズボタン電池を設置する。カソードは、92%の活物質、5%のグラファイト、2.5%の電解質、0.5%のポリエチレン結合剤を含む。アノードは、31.25%の34−2電解質及びゲル化剤と防錆剤との0.75%の組合せを有する68%の篩処理亜鉛を含む。カソードを炉内に60℃の温度で保管した。カソード開回路電圧(OCV)、インピーダンス、カソード膨張をモニタした。周波数応答分析器(例えば、「Schlumberger Inc.」製「モデル12」)を使用してカソードインピーダンスを測定した。OCVの減少は、一方又は両方の電極の電位が熱力学値から劣化していることを示唆し、かつ可溶性アノード汚染種がセパレータを通じて移動中であることを示している。カソードインピーダンスの増加は、2つの電極間の抵抗の増加を示唆しており、この増加は、アノード汚染種の拡散又は移動によるセパレータの妨害又は亜鉛アノード表面の不動態化によって引き起こされる場合もある。カソード膨張は、ガス発生による内部圧力上昇の兆候であり、このガス発生は、銅イオンがセパレータを通じて移動して亜鉛アノードと接触した場合の予測される結果でもある。膨張は、組み立てた電池の経時的な外部高さの増加をモニタすることによって測定することができる。従って、これらの特性のモニタは、特定のセパレータ材料の有効性又はシール品質を理解しかつ評価する際に、又はいくつかの候補材料又は組合せを選別する上で非常に教示的なものである。
【0218】
B.排除試験
より定量的方法では、問題のセパレータのいずれかの側でのアノード汚染種の濃度の直接測定が必要である。この構成は、電解質蒸発を制限するためにガラスチューブ上部を密封した状態で60℃の炉内に5日間入れられる。次に、本明細書で説明する要領で、特定のイオン濃度について両側の電解質を分析する。
【0219】
側面Bの特定のイオン濃度が側面Bの濃度を下回った時、セパレータ又はシールは、可溶性アノード汚染種の移動を制限するのに有効であると見なされる。表5の結果は、より詳細に説明するために「排除試験」の結果を示している。
【0220】
「Thermo Electron Corporation」(マサチューセッツ州ウオルサム)によって供給される「Thermo Iris Intrepid II(ラジアルユニット)」を利用した標準的な誘導結合プラズマ(ICP)を用いてKOH中の可溶性銅種を分析した。一般的に、分析前に10%硝酸溶液で50mlまで希釈した1gの電解質サンプルを用いてサンプルを準備した。較正曲線は、3種類の溶液か成っており、すなわち、ブランク、0.5ppm、1ppm溶液であり、溶液は、全て10%硝酸であった。銅の較正は、1000ppmのSpex標準を用いて行われる。銅に関する測定は、4種類の周波数(223.0、224.7、324.7、327.3)の平均値を用いて行った。測定した各サンプル及び標準(20ppm)においては、スカンジウム内部標準を用いた。
【0221】
「Thermo Electron Corporation」(マサチューセッツ州ウオルサム)によって供給される「Thermo Iris Intrepid II(ラジアルユニット)」を利用した標準的な誘導結合プラズマ(ICP)を用いてKOH中の可溶性硫黄種を分析した。一般的に、分析前に10%硝酸溶液で50mlまで希釈した1gの電解質サンプルを用いてサンプルを準備した。通常、更に別の5:50又は10:50希釈を行い、この測定は、本方法で適切な結果が得られるように容積比で行った。較正曲線は、3種類の溶液か成っており、すなわち、ブランク、0.5ppm、1ppm溶液であり、溶液は、全て10%硝酸であった。硫黄の較正は、SpexのSO4(K2SO4開始ソース)標準から準備した標準を用いて行った。硫黄に関する測定は、2つの波長(180.7と182.0)の平均値を用いて行った。測定した各サンプル及び標準(20ppm)においては、スカンジウム内部標準を用いた。
【0222】
また、ポリビニルアルコールのようなフィルムの製造で使用される可塑剤又は処理助剤は、電池のセパレータとして使用された時に可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するフィルムの機能に悪影響を与える可能性があり、従って、かなりの量の1つ又はそれよりも多くの可塑剤で準備したフィルムは好ましくないことに注意されたい。本発明により使用されるフィルムセパレータは、約15重量%未満の可塑剤を含むか、又は約10重量%未満又は約5重量%未満の可塑剤を含むことが望ましい。特に適切なフィルムセパレータが含む可塑剤は、約3重量%又はそれ未満である。
【0223】
1つの可能なセパレータは、約3重量%未満の可塑剤を含む非冷水可溶性で非架橋ポリビニルアルコールフィルムセパレータである。2つのこのような適切なポリビニルアルコールフィルムは、「M−1000」及び「M−2000」(Monosol)である。当業者によって理解されるように、フィルムセパレータを原位置外フィルムとして形成し、次に、本発明の1つの態様に従って電池内に設置することができる。
【0224】
説明する要領で本発明のセパレータを提供することができるが、セパレータは、任意的に、他は従来の方法で、従来の不織繊維層と結合させる(例えば、積層する又は留める)ことができる。
【0225】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明するものである。本明細書で説明する要領による本発明の仕様又は実施法を考察すれば、特許請求の範囲の他の実施形態が当業者には明らかであろう。実施例と共に仕様は、例示的なものにすぎず、本発明の範囲及び精神は、実施例以外に添付した特許請求の範囲によって示めされるものとする。
【実施例1】
【0226】
これは、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する様々なセパレータの機能の有効性を示す実施例である。初期に及び1日の室温で保管後の両方で様々なセパレータで作られた複数の357電池についてOCVを比較した。カソードは、CuO(「Aldrich」より市販)であり、電池アノードは、従来の亜鉛と電解質の濃度を有する従来のアルカリ亜鉛ゲルであった。
【0227】
殆どの場合、2つの層のセパレータが電池において使用され、一方はカソードに対向し(カソード側セパレータ)、他方はアノードに対向するもの(アノード側セパレータ)であった。表4で以下に示すOCVデータは、所定の電池タイプの2つの電池の平均値を含む。OCVの減少は、アノードへの可溶性アノード汚染銅種の移動の増加を示すことを認めるべきである。


【0228】
(表4)

【0229】
表4に示すように、OCVの劣化に基づいて、セロファン及びTiO2充填HMWPE(高分子量ポリエチレン)膜は、微孔性タイプの膜(例えば、「Celgard 3407」PE、B10abナイロン、及び「Excellerator Alkaline PTFE」など)よりも性能が優り、セロファン及びTiO2充填HMWPEの方が、アノード汚染銅種の移動の制限において有効であることを示していることが分る。
【実施例2】
【0230】
これは、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する様々なセパレータの機能を示す実施例である。他の場所で説明するように、ガラスチューブ固定具の側面Aには、銅イオンの既知の濃度を有する34%KOHを充填し、銅イオンのない電解質を区画Bに添加した。側面Bの複合銅イオンの濃度を室温で1週間後に測定した。
【0231】
ここで表5について説明する。「排除試験」を様々なセパレータに行い、60℃の温度で保管した後に可溶性銅種、銀種、硫黄種の「排除値」を判断した。ガラス固定具の側面Aには、欄2及び欄4に示す可溶性銅種及び硫黄種の濃度を生成する0.25gのCuO(酸化銅)及び0.25gのCuS粉体を有する34%KOH溶液を充填した。銀排除の判断に関しては、0.25gのAgOを固定具の側面Aで使用して欄6に示す銀濃度を生成した。結果要約を表5で以下に示している。
【0232】
(表5)

【0233】
上述の表5の結果から、60℃で可溶性銅種及び硫黄種の移動を制御する際には、同じセパレータ材料の単一の層よりもセパレータの複数の層の方が有効であることが分る。また、これらの結果から、可溶性銅種、銀種、及び硫黄種を除外するにはPVAフィルムが適することが分る。
【実施例3】
【0234】
これは、保管時の357サイズボタン電池において可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する有用性を示す例である。ここで、図28について説明する。CuOカソードを有する4つの電池を室温で4日間、次に、電池が故障するまで60℃で保管した(上述のように、OCV、インピーダンス、及び膨張による判断に従って)。各電池について保管初日からOCVを連続的に測定した。図28は、CuOカソードを含む電池については、セロファンセパレータの方が「FAS 350Z」よりも有効であることを示している。セロファンセパレータ(SF−586、3ミル厚)が肉厚であるほど薄いセパレータ(350P00及びSC216の両方は1ミル厚)よりも性能が優り、「排除試験」の実験の結果が確認された。
【実施例4】
【0235】
これは、本明細書で説明する発明の材料で作られた電池の有用性を示す実施例である。ここで図29について説明する。2対の電池を準備した。各対の電池は、1)セパレータがF3T23不織繊維上に架橋PVAを含む混成セパレータの層と組み合わせた「Viskaseセロファン(CS−216)」を含む1つの電池と、2)セパレータが2つの「Viskaseセロファン」層を含む第2の電池とを含むものであった。第1の対の電池(電池541及び電池543)を電池製造直後に5mAで放電させた。第2の対の電池(電池540及び電池542)を17時間後に5mAで放電させた。
【0236】
図29は、2層の「Viskaseセロファン」セパレータ(SC−216)で作られた電池が、直ちに放電させた場合は放電容量が100%であるが、17時間経過した後に放電させた場合は放電容量が非常に小さかったことを示している。1層の「Viskaseセロファン」セパレータと1層の混成(F3T23上の架橋PVAコーティング)セパレータとで作られた電池は、放電容量が17時間経過後でさえも100%であった。当業者は、セパレータ材料は適度な「排除値」を示す場合があるが、ボタン電池のようなバッテリにおけるシールは、可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限する機能に影響を与える場合があることを容易に認めるであろう。
【0237】
従って、実施例4から、セロファンと混成セパレータの組合せの方が、可溶性銅種と硫黄種の移動の制限では2層のCS216セロファンよりも有効であることが分る。
【0238】
上記で使用した混成セパレータ層は、F3T23不織セパレータ表面に5%硼酸ナトリウム溶液を有する水溶液中で2%PVAを架橋することによって作られたことを認めるべきである。混成セパレータ中のPVA充填量は、約10g/m2であり、混成セパレータが通気性を有したのは、1800ガーリー秒の乾燥状態でのものであった。混成層をセパレータ構造体のアノードゲル側に載置した。この通気性は、上述の「Gurley Precision Instrument試験機」を使用して判断した。
【実施例5】
【0239】
これは、本発明の様々な態様のセパレータとカソード材料を使用して作られた電池の有用性を示す実施例である。ここで、図30について説明する。CuOとCuSを含むカソードを有する1対の電気化学電池を準備した。17時間経過後に電池を放電させた。第1の電池は、2層の混成セパレータの間に配置された1層の「Viskaseセロファン」を含むセパレータを有するものであった。従って、混成層は、外方に面しており、すなわち、アノードに向けてかつカソードに向いたものであった。図30から、図29と同様に、CuOとCuSの混合物の場合には、セロファンセパレータと混成セパレータの組合せ(F3T23上の架橋PVAコーティング)の方が2層のセロファンだけよりも有効であることが分る。
【実施例6】
【0240】
これは、本発明の態様を表すために作られた電池の有用性を示す実施例である。図31について説明する。1対の電池を5日後に5mAで放電させた。各電池は、2層の混成セパレータ(F3T23上の架橋PVA)と共にCuO及びCuSを含むカソードを含むものであった。電池の一方は、カソード中にPVA結合剤を含み、同時に他方のカソードは、カソード中にPVA結合剤を含まないものであった。図31から、CuOとCuSの混合物を含むカソードについては、2層の混成セパレータは、5日後でさえもアノード汚染可溶性銅種と硫黄種の移動の制御に有効であり、その結果、カソードが放電することができる容量は100%であることが分る。更に、0.2重量%PVAをカソードに添加すると、カソード容量の利用度の改善を可能にすることによって電池放電容量が延びることが分る。
【実施例7】
【0241】
これは、本明細書で説明するセパレータとカソード材料の有用性を示す実施例である。ここで図32について説明する。1対の357サイズボタン電池を準備した。CuOとCuSの混合物の1:1のモル比でカソードが作られた。第1の電池は、1対の混成層(F3T23上の架橋PVAコーティング)を含むセパレータを有するものであった。他方の電池は、F3T23上に被覆した1層のEVAエマルジョンを有するものであった(クラレから市販)。第1の電池を5日後に5mAで放電させた。第2の電池を4日後に5mAで放電させた。図32から、F3T23上に被覆した架橋PVAは、試験の前に更に1日追加した後でさえも、EVA被覆F3R23よりも性能が優ることが分る。また、EVA被覆F3R23には、2層のSC216セロファン(実施例6)について上述の性能不足はないことも分る。
【実施例8】
【0242】
これは、本発明の様々な態様に従って構成された電池中のアノード汚染種の移動を制御する有効性を示す例である。ここで図33について説明する。各々が1対1のモル比のCuOとCuSの混合物を含有するカソードを有する1対の電池を準備した。第1の電池は、「Laponite」を含浸した1層の混成セパレータを有するものであった。第2の電池は、2層の混成(F3T23上に被覆した架橋PVA)の間に挟んだ「Viskaseセロファン」の層を有するものであった。第1の電池を4日後に5mAで放電させた。第2の電池を1日後に5mAに放電させた。図33から、両方のセパレータは、アノードへの可溶性アノード汚染種の移動の制御に有効であったことが分る。
【実施例9】
【0243】
この実施例は、アノードを汚染する銅種と硫黄種の機能を低減するためにカソード中でZnOのような添加物を使用する効果を示している。一方のボタン電池のカソードがカソードと混合させた2%ZnOを含むことを除き、2つの357サイズのボタン電池が同様の方法で作られた。カソード混合物は、1:1モル比のジェットミル処理CuOと、カソード組成が95%活性剤、3%グラファイト、及び2%ZnOになるようにKS4グラファイト及びZnO添加物と乾燥配合させた受領時CuSとから生成された。ZnO添加物がない電池のカソード組成は、95%活性剤と5%KS4グラファイトであった。アノードは、68%篩処理BIPアノードから成るものであり、セパレータは、単層の「M 2000」PVAフィルムであった。7日間の大気中保管の後に両方の電池を放電させた。12.5mA電流を伴う間欠試験領域に両方の電池を1時間露出し、次に開回路で休ませ、4回/日で繰返した。表6に示す結果から、2%ZnOを有する電池は、ZnOなしの対照電池が僅か100mAh/gmであったのに対して、放電容量が240mA/gであったことが分る。この結果は、バッテリ保管寿命に関するZnO添加の有用な態様を明らかにするものである。







【0244】
(表6)

【実施例10】
【0245】
ここで図34について説明する。この例は、セパレータサンプル中の自由水と結合水の相対量を特定するのに使用した方法を示している。0.11インチの直径を有するセパレータ材料のサンプルを準備して乾燥大気条件(<1%の相対湿度)で24時間を掛けて予め調整した。次に、サンプルを脱イオン水に1時間浸漬し、<1%の相対湿度の雰囲気で取り出して「Kimwipe」で拭いた。また、<1%の相対湿度の雰囲気でサンプル鍋を計量し、次に、準備したサンプルをサンプル鍋に入れた。次に、準備したサンプルの重量を測り、その重量を記録した。サンプル蓋を鍋に取り付けた。直ちにサンプル容器を液体窒素中に浸漬させてサンプル中に存在する水を凍結させた。示差走査熱量測定器(デラウエア州ニューキャッスル所在の「TA Instruments」から市販の「モデルQ100」)を使用してサンプルを評価した。システムは、2℃/分で立ち上がり、−80℃から50℃までの温度範囲を走査するようにプログラムされたものであった。結合水量の判断は、生成された熱流曲線を評価し、かつ−1℃よりも下にある曲線の割合と−1℃よりも上にある曲線の割合を判断して行った。材料の融解曲線が、融解エネルギの50%よりも多くが−1℃よりも小さいことを示す時、材料は、セパレータ内では自由水よりも結合水の方が多いと判断した。自由水よりも結合水が多いのは、セパレータが可溶性アノード汚染種の移動を実質的に制限するのに必要とされる属性をもたらすのに適することを示している。
【実施例11】
【0246】
これは、PVAセパレータサンプルの相対融点の特定に使用した方法を示す実施例である。0.11インチの直径を有するセパレータ材料のサンプルを準備し、24時間を掛けて50%相対湿度大気状態で調整した。また、50%相対湿度の雰囲気でサンプル鍋を計量し、次に、準備したサンプルをサンプル鍋に入れた。次に、準備したサンプルの重量を測り、その重量を記録した。サンプル蓋を鍋に取り付けた。サンプルを評価するのに使用する示差走査熱量測定器(デラウエア州ニューキャッスル所在の「TA Instruments」から市販の「モデルQ100」)にサンプル容器を挿入した。システムは、5℃/分で立ち上がり、30℃から300℃までの温度範囲を走査するようにプログラムされたものであった。当業者によって理解されるように、熱流曲線(W/g)の第1の著しいピークで材料の融点を判断した(図35を参照されたい)。材料の融解曲線が215℃を超える融点を示す時、PVA材料は、本明細書で説明するように、可溶性アノード汚染種の移動の有効制御での使用に適する材料であると判断した。
【実施例12】
【0247】
これは、セパレータ中に保持された電解質の相対pH値の特定に使用した方法を示す実施例である。少なくとも24時間掛けて乾燥大気条件(<1%RH)でセパレータ材料のサンプルを予め調整した。サンプルを0.0001g直近まで重量測定した。「Monosol」製「M2000」、「M1000」、及び「M1030」PVAフィルムを10mlの34−0KOH中に23℃で24時間浸漬した。浸漬後、フィルムをメタノールに漬けて表面のKOH及び水を取り除き、塩化メチレンで濯いで残留溶剤を取り除いた。次に、吸収されたKOHを有するサンプルは、23℃で5分間放置して残留塩化メチレンを自然蒸発させ、重量を0.0001gまで記録した。次に、溶融するまでフィルムを25mLの脱イオン水中で消化させた。測定中に溶液温度と共にpHを記録した。標準的な化学的計算法を用いて、溶液pHと温度データを使用して各フィルム内に保持された電解質の23℃のpHを計算した。対照サンプルは、試験中の材料の複製を使用するがそれらをpH7の脱イオン水溶液だけに露出することによって実行した。pH7からの変動は、セパレータサンプル内に保持された電解質の正規化pHが得られるように、対応するサンプルから補正された(加算又は減算された)。表7から、適度な「排除値」を示すセパレータでは、これらのセパレータ中に保持された電解質のpH値がバルク電解質中のpH値よりも低いことが分る。
【0248】
(表7)

【0249】
以上を鑑みて、本発明のいくつかの利点が達成され、他の有利な結果が達成されたことが分るであろう。上述の処理及び合成物には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができるので、上述の説明に含まれて添付図面に示された全ての事柄は、制限的な意味ではなく例示的に解釈されるべきものとする。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】円筒形電気化学電池の断面側面図である。
【図2A】本発明の原理に従って構成されたカソードの放電容量の判断に使用される半割電池固定具の概略図である。
【図2B】図2Aに示すブロック及びプレートの概略図である。
【図2C】図2Bに示すブロックのより詳細な概略図である。
【図3】ジェットミル処理CuO、34−2電解質、及び5mA放電を用いる条件の下での357個のボタン電池における亜鉛に対するEMD/CuO及びCuO単独の物理的/機械的混合挙動を示すグラフである。
【図4】Hg/HgO基準電極に対する半割電池の純粋CuO及び様々なCuO/CuS混合物の放電挙動をプロットしたグラフである。
【図5】放電電圧に及ぼす表面積が高い方のCuOの使用の影響を示すグラフである。
【図6】電流が5mAと35mAの間で漸次段階式である浸水半割電池内のジェットミル処理CuO/CuSカソードの速度能力に及ぼすCuS粒径の影響を示すグラフである。
【図7】34−2電解質と25−0事前湿潤電解質、及び5mA放電でジェットミル処理CuO、66%BIP篩過アノードを使用する条件の下で(EMD)MnO2+CuOを含有する層状カソードの放電挙動を示すグラフである。
【図8】ボタン電池の平坦カソードに対する電極構成の3つの例を示す図である。
【図9】円筒形電極構成の2つの例を示す図である。
【図10】浸水半割電池において5mA連続放電、28−2電解質を使用する条件の下での純粋CuOに対するカソード材料内の化学合成Cu/Mn混合酸化物における銅の増大する割合の影響を示すグラフである。
【図11】浸水半割電池での5mA放電を用いる条件の下での化学合成CuO+MnO2カソードの性能を示すグラフである。
【図12】本発明の1つの態様による混合金属酸化物を合成する処理を示す流れ図である。
【図13】混合金属酸化物を含むカソード混合物の半割電池放電を示すグラフである。
【図14】代替的な実施形態による混合金属酸化物を合成する処理を示す流れ図である。
【図15】別の代替的な実施形態による混合金属酸化物を合成する処理を示す流れ図である。
【図16】更に別の代替的な実施形態による混合金属酸化物を合成する処理を示す流れ図である。
【図17】更に別の代替的な実施形態による混合金属酸化物を合成する処理を示す流れ図である。
【図18】5mA放電条件の下での市販MnO2(EMD)上へのCuOの機械的混合と化学合成/沈殿の組合せによるEMD/CuO遷移の平滑化挙動を示すグラフである。
【図19】篩過亜鉛合金アノード粒子の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図20】第1の電池が、低い電解質濃度で篩過亜鉛を含有し、第2の電池が、従来の分布による亜鉛と高い濃度の電解質を含有する、CuOを含有する電気化学電池の電池性能をプロットしたグラフである。
【図21】電解質濃度と貯蔵時間の関数としてのKOH電解質におけるCuOの可溶性をプロットしたグラフである。
【図22】電解質濃度の関数としてEMDと比較したCuOの濡れ性をプロットしたグラフである。
【図23】様々なセパレータ材料を通じた4時間でのKHOと水の移動をプロットしたグラフである。
【図24】超音波溶接技術を用いたPVAフィルムの完全溶接側面シームの図である。
【図25】インパルスヒートシール機器を用いた密封端部を有するシーム密封円筒形セパレータ部材を示す図である。
【図26】挿入されることになる電池缶の底部の形状に形成されたシーム密封及び底部密封PVAセパレータチューブの底部を示す図である。
【図27】従来の不織繊維セパレータを含むサイズAA電池と比較した本発明の1つの態様に従って構成されたセパレータを使用したサイズAA電池の電圧プロファイルをプロットしたグラフである。
【図28】CuOカソードと様々なセパレータとを有する複数の電池の開回路電圧をプロットしたグラフである。
【図29】CuO/CuSカソードと様々なセパレータと組合せを有する電池の放電プロファイルをプロットしたグラフである。
【図30】CuO/CuSカソードと様々なセパレータとを有する1対の電池の放電プロファイルをプロットしたグラフである。
【図31】PVAをカソードに含む効果を示すためにCuO/CuSカソードを有する1対の電池の放電プロファイルをプロットしたグラフである。
【図32】CuO/CuSカソードと様々なセパレータとを有する1対の電池の放電プロファイルをプロットしたグラフである。
【図33】CuO/CuSカソードと様々なセパレータとを有する1対の電池の放電プロファイルをプロットしたグラフである。
【図34】様々なセパレータ材料の初期取水を比較するグラフである。
【図35】様々なセパレータ材料の溶融曲線と対応する融点とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0251】
18 円筒形電池
21 正端子
23 負端子
24 カソード
26 アノード
32 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
第1の元素を含む第1の成分と、第2の元素を含む第2の成分と、該第1の元素と該第2の元素とを含む第3の成分とを含む混合物を含むカソード活物質を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードの間に配置されたセパレータと、
を含むことを特徴とする電気化学電池。
【請求項2】
前記第1の成分及び前記第2の成分は、第3の元素を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記第1の元素は、マンガンであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記第2の元素は、銅であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記銅の含有量は、前記混合物の約0.5重量%よりも多いことを特徴とする請求項4に記載の電気化学電池。
【請求項6】
前記第3の成分は、前記第3の元素を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の電気化学電池。
【請求項7】
前記第3の元素は、酸素であることを特徴とする請求項6に記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記カソード活物質は、半電池試験で30mAの放電速度で放電した時に電池放電の最初の20%に対して実質的に少なくとも1.0%である連続放電プロファイルを示すことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項9】
前記第3の成分は、MxCuyzで特定され、
Mは、混合酸化物複合体又は錯体を生成することができる元素であり、x≦20、y≦20、及びz≦100である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項10】
Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Sn、V、Mo、Pb、及びAgから成る群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記第1の成分対前記第2の成分の比率は、約1:100よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項12】
前記第1の成分対前記第2の成分の前記比率は、約1:20よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項13】
xCuyzは、xが実質的に3−yに等しく、かつz=4である化学式を有することを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項14】
xCuyzは、xが実質的に2−yに等しく、かつz=2である化学式を有することを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項15】
xCuyzは、スピネルタイプの結晶構造を有することを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項16】
xCuyzは、黒銅鉱タイプの結晶構造を有することを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項17】
前記第3の成分は、AwxCuyzによって更に定義され、Aは、付加的な金属を更に含み、かつw≦20であることを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項18】
前記付加的な金属は、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ni、及びBaから成る群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の電気化学電池。
【請求項19】
前記第3の成分は、アモルファスであることを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項20】
前記第3の成分は、少なくとも部分的に結晶質であることを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項21】
前記第1の成分は、酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項22】
前記酸化マンガンは、二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項21に記載の電気化学電池。
【請求項23】
前記第2の成分は、銅の酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項24】
前記銅の酸化物は、酸化第二銅を含むことを特徴とする請求項23に記載の電気化学電池。
【請求項25】
前カソードは、半電池試験において、1.0V終点に対して5mAの定電流で少なくとも220mAh/gの放電容量を達成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項26】
前記カソードは、半電池試験において、1.0V終点に対して30mAの定電流で少なくとも180mAh/gの放電容量を達成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項27】
前記セパレータは、フィルムを含み、アノード汚染可溶性種の移動を実質的に制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項28】
前記アノードと前記カソードの間の実質的に全ての流体連通は、前記セパレータを通して起こることを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池。
【請求項29】
前記カソード活物質を含む前記混合物は、1m2/gと200m2/gの間のBET表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項30】
前記カソードは、該カソードの重量で3%と8.5%の間の量で存在する導電添加物を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項31】
前記導電添加物は、黒鉛状炭素とカーボンブラックから成る群から選択されることを特徴とする請求項30に記載の電気化学電池。
【請求項32】
前記黒鉛状炭素は、天然、合成、又は膨張グラファイトのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項31に記載の電気化学電池。
【請求項33】
前記カーボンブラックは、全カソードに対して重量で0.2%の下端と2%の上端を有する範囲内の量で存在するアセチレンブラックを含むことを特徴とする請求項31に記載の電気化学電池。
【請求項34】
前記混合物は、0.1ミクロンと200ミクロンの間の粒径分布を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項35】
前記混合物は、酸化銅、酸化マンガン、酸化銀、及び酸化ニッケルのうちの少なくとも1つと更に結合して活物質の組合せを生成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項36】
前記酸化マンガンは、EMD、NMD、及びCMDから成る群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の電気化学電池。
【請求項37】
前記酸化銅は、酸化第二銅であることを特徴とする請求項35に記載の電気化学電池。
【請求項38】
前記混合物は、前記組合せ中に該組合せの重量で1%の下端と99%の上端を有する範囲で存在することを特徴とする請求項35に記載の電気化学電池。
【請求項39】
前記下端は、1%であり、前記上端は、70%であることを特徴とする請求項38に記載の電気化学電池。
【請求項40】
前記添加物は、前記混合物の粒径と実質的に類似の粒径を有することを特徴とする請求項30に記載の電気化学電池。
【請求項41】
アルカリ電解質を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の電気化学電池。
【請求項42】
前記アルカリ電解質は、電池が約1.3よりも大きい水/MnO2モル比を含むような量で存在することを特徴とする請求項41に記載の電気化学電池。
【請求項43】
前記カソードは、下端が3.0gm/ccで上端が4.2gm/ccで定められた範囲の密度を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項44】
電池内部容積に対する前記アノードの容量の比率は、0.55Ah/ccと0.9Ah/ccの間であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項45】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードの間に配置されたセパレータと、
を含み、
前記カソードは、MxCuyzで特定される銅の酸化物を含むカソード活物質を含み、
Mは、混合酸化物複合体又は錯体を生成することができるあらゆる元素であり、x≦20、y≦20、及びz≦100である、
ことを特徴とする電気化学電池。
【請求項46】
Mは、マンガンとニッケルから成る群から選択されることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項47】
前記銅の酸化物は、アモルファスであることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項48】
アルカリ電解質を更に含むことを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項49】
前記カソード活物質は、酸化マンガンを含む混合物であることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項50】
前記酸化マンガンは、二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項49に記載の電気化学電池。
【請求項51】
前記カソード活物質は、酸化マンガン、酸化銀、及び酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを更に含む混合物であることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項52】
前記酸化マンガンは、EMD、NMD、及びCMDから成る群から選択されることを特徴とする請求項51に記載の電気化学電池。
【請求項53】
アルカリ電解質を更に含むことを特徴とする請求項52に記載の電気化学電池。
【請求項54】
前記アルカリ電解質は、電池が少なくとも1.3の水/MnO2モル比を含むような量で存在することを特徴とする請求項52に記載の電気化学電池。
【請求項55】
前記水/MnO2モル比は、少なくとも1.4であることを特徴とする請求項52に記載の電気化学電池。
【請求項56】
前記水/MnO2モル比は、少なくとも1.6であることを特徴とする請求項52に記載の電気化学電池。
【請求項57】
アノードと、
酸化マンガン、銅の酸化物、及びMnxCuyzで特定される成分の混合物を含むカソード活物質を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードの間に配置されたセパレータと、
を含むことを特徴とする電気化学電池。
【請求項58】
前記混合物は、酸化マンガン、酸化銀、酸化銅、及び酸化ニッケルのうちの少なくとも1つと結合して活物質の組合せを生成することを特徴とする請求項57に記載の電気化学電池。
【請求項59】
前記酸化マンガンは、EMD、NMD、及びCMDから成る群から選択されることを特徴とする請求項58に記載の電気化学電池。
【請求項60】
前記混合物は、前記活物質組合せ中に該活物質組合せの重量で1%と99%の間の範囲の量で存在することを特徴とする請求項59に記載の電気化学電池。
【請求項61】
前記混合物は、前記活物質組合せ中に1%と70%の間の範囲の量で存在することを特徴とする請求項59に記載の電気化学電池。
【請求項62】
アルカリ電解質を更に含むことを特徴とする請求項59に記載の電気化学電池。
【請求項63】
前記アルカリ電解質は、電池が少なくとも1.4の水/MnO2モル比を含むような量で存在することを特徴とする請求項62に記載の電気化学電池。
【請求項64】
アノードと、
カソードと、
少なくとも1×10-6モル/センチメートル/時の水浸透率を有して前記アノードと前記カソードの間に配置されたセパレータと、
を含むことを特徴とするアルカリ電気化学電池。
【請求項65】
前記水浸透率は、少なくとも5×10-5モル/センチメートル/時であることを特徴とする請求項64に記載の電気化学電池。
【請求項66】
前記水浸透率は、少なくとも1×10-5モル/センチメートル/時であることを特徴とする請求項64に記載の電気化学電池。
【請求項67】
前記セパレータの材料は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項64に記載の電気化学電池。
【請求項68】
単一の実質的に円筒形のアノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードの間に配置されたセパレータと、
を含み、
1Aの一定電流放電速度で少なくとも45分にわたって少なくとも1.0Vの放電電圧を有する、
ことを特徴とするサイズAAアルカリ電気化学電池。
【請求項69】
1Aの一定電流放電速度で少なくとも50分にわたって少なくとも1.0Vの放電電圧を有することを特徴とする請求項68に記載の電気化学電池。
【請求項70】
前記アノードは、亜鉛を含むことを特徴とする請求項68に記載の電気化学電池。
【請求項71】
前記セパレータは、元位置外で形成されることを特徴とする請求項68に記載の電気化学電池。
【請求項72】
前記セパレータは、PVAを含むことを特徴とする請求項71に記載の電気化学電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2008−502107(P2008−502107A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515050(P2007−515050)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/004488
【国際公開番号】WO2005/122301
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506044720)ロヴカル インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】