説明

高密度焦点式超音波を使用して心房細動を非侵襲的に処置するための方法および装置

医師が、超音波画像化システムと整列した高密度焦点式超音波システムとを有するデバイスを使用して、焼灼されるべき身体内の組織を画像化し、次いで、その組織を焼灼することを可能にする、方法および装置が提供される。本発明による、心房細動を非侵襲的に処置するための装置は、ハウジング;該ハウジング内に配置された超音波画像化システム;該ハウジング内に、該超音波画像化システムと整列して配置された、高密度焦点式超音波システム;ならびに該超音波画像化システムおよび高密度焦点式超音波システムに作動可能に接続された、制御器を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、心房細動の処置のための方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、非侵襲的に高密度焦点式超音波を使用して、心房細動の一因となる異常な心臓の電気経路を中断することに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
1980年代まで、以前には処置されなかった広汎な種々の状態を処置するための新規な外科的方法の開発が、劇的に増加した。過去20年間にわたり、侵襲性手術から移って、そのような疾患の低侵襲性処置を可能にするデバイスおよび方法の発明へ、その後、低侵襲性手術へ、そして介入技術へと向かう明らかな傾向があった。最終的には、全く非侵襲性の治療へと移ることが、望ましい。
【0003】
心房細動の処置の歴史は、この進行に従った。最初に、James Cox博士が、心房壁における外科的切開を使用して脱分極波を中断する、新規な開胸心臓外科手順を発明した。より最近には、拍動している心臓に対する手術の間にそのような損傷部を外科医が作製しても心房壁には切開を作製しないことを可能にする、多数のデバイスが開発された。より最近には、介入電気生理学者は、複数の会社と共同研究して、同様の損傷部を作製するためのカテーテルベースのシステムを開発した。今日までに部分的な成功しか達成されていないが、今後数年間以内にさらに進歩するという楽観論が存在する。
【0004】
なお低侵襲性であった心房細動を処置するための方法を開発して、カテーテルの必要性さえも排除することが、なおさらに望ましい。
【0005】
心外膜プローブまたは心臓内プローブを使用して損傷部を作製するために、広汎な種類のエネルギー様式が使用されている。高周波電気エネルギー、マイクロ波、低温(cryothermia)プローブ、アルコール注射、レーザー光、および超音波エネルギーは、追求されてきた技術のうちのほんの少数である。
【0006】
別に、いくつかのグループが、画像化能力および治療能力の両方を有する焦点式超音波デバイスを開発した。これらの努力は、おそらく、砕石術から始まった。この砕石術において、Dornier Medizintechnik(Germany)により開発された高出力焦点式超音波システムが、身体の腎臓結石を破壊するために使用される。腎臓結石は、身体中で、皮膚からかなりの深さに位置する。1つの超音波画像化システムが、腎臓結石にそのシステムを向けるために使用され、その後、2番目の高エネルギー超音波システムが、その結石を破壊するエネルギーを送達し、それにより、その結石は通過し得る。
【0007】
より最近には、Therus Corp(Seattle)が、血管に穿刺してシースおよびカテーテルを挿入した後にその血管をシールするシステムを開発した。そのTherusのシステムは、約5cmの深さにある大腿動脈穿刺を収縮させてシールする。
【0008】
さらに、Timi−3 Systems,Inc.は、急性心筋梗塞に罹患する患者のための、血栓溶解プロセスを加速するための、経胸超音波エネルギー送達システムを開発し、そして試験している。このシステムは、心臓の心筋または脈管構造を損傷することなく、血栓溶解を加速することを意図された周波数で、エネルギーを送達する。
【0009】
Sunnyvale,CAのEpicor Medical,Inc.は、動脈壁に損傷部を作製するための、局在高密度焦点式超音波(「HIFU」)デバイスを開発した。このEpicorのデバイスは、可搬型の手術間の外科用デバイスであり、そして心外膜または心臓の外側の壁に対して直接保持するように構成される。エネルギー付与される場合、このデバイスは、心臓の心房壁を通る、全厚にわたる損傷部を作製し、そして超音波エネルギーは、心房の内壁を通る血流の存在にもかかわらず、心房の損傷部を作製するために安全かつ効果的に使用され得ることが、実証された。
【0010】
さらに、Transurgical,Inc.,Setauket,NYは、HIFUデバイスを活発に開発した。しかし、Epicor Medicalのデバイスは、心臓の外側に対して近く近接して配置されるのに対し、Transurgicalのデバイスは、カテーテルを標的組織の近くに近接させることによって、心臓内の組織を焼灼するための、脈管内カテーテルに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の制限を考慮して、心房性細動および他の伝導欠陥を、その組織から離れた組織を焼灼すること(これにより、その手順は、非侵襲性に実施され得る)によって処置するための、方法および装置を提供することが望ましい。
【0012】
心房性細動を、エネルギーを身体の外側から、または自然な身体の開口部を介して容易に接近可能な器官(例えば、食道)から付与することによって処置するための、方法および装置を提供することもまた、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
上記のことを考慮して、本発明の目的は、心房性細動および他の伝導欠陥を、その組織から離れた組織を焼灼すること(これにより、その手順は、非侵襲性に実施され得る)によって処置するための、方法および装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、心機能不全を、エネルギーを身体の外側から、または容易に接近可能な隣接する器官(例えば、食道)から付与することによって処置するための、方法および装置を提供することである。
【0015】
本発明のこれらおよび他の目的は、医師が、焼灼されるべき身体内の組織を画像化すること、次いで、その組織を、完全に非侵襲性であるかまたは比較的非侵襲性である手順を使用し、そして麻酔法をほとんどまたはまったく用いずに焼灼することを可能にする、方法および装置を提供することによって、達成される。有利には、本発明の方法および装置は、以前から公知である外科的手順および介入的手順と比較して、実施することが費用効果的であり、そして時間効率的であると予測される。
【0016】
本発明の上記および他の目的および利点は、添付の図面と組み合わせての、以下の詳細な説明の考慮の際に、明らかになる。これらの図において、類似の参照文字は、全体にわたって、類似の部品を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、高密度焦点式超音波(HIFU)を使用して、完全に非侵襲性の様式で、心臓の壁に損傷部を作製するための方法および装置に関する。以前から公知であるHIFUシステム(例えば、Epicor MedicalまたはTransurgicalによって開発されたシステム)は、HIFUデバイスを、標的組織に近く近接させる必要がある。本発明の方法および装置は、より離れた距離から心臓の壁に損傷部を作製することを可能にするシステムを提供することによって、この欠点を克服する。
【0018】
図1を参照して、本発明の原理に従って構築される装置が記載される。システム10は、ヘッド11を備え、このヘッドは、超音波画像化システム12および高密度焦点式超音波エネルギー(「HIFU」)システム14を収容する。超音波画像化システム12およびHIFUシステム14は、変換器および関連する構成要素(画像化または焼灼のために、異なる様式で作動する)の全てまたはほんのサブセットを、共通して有し得る。ヘッド11は、アーム13に設置され、このアームは、このヘッドが、テーブル15上に横たわる患者(図示せず)と接触して配置されることを可能にする。ヘッド11はまた、可搬型ユニットであり得、このヘッドを支持または配置するために、アーム13を必要としない。システム10は、画像化システム12およびHIFUシステム14の作動を制御する、制御器16を備える。モニタ18は、画像化システム12によって出力される画像を表示し、このことは、医師が、処置されるべき心臓の壁上の所望の位置を同定することを可能にする。
【0019】
本発明の方法に従って、制御器16およびモニタ18はまた、組織の断面の画像に対するHIFUエネルギーの焦点を示すように、プログラムされる。図2は、画像化システム12によって画像化される場合の組織の輪郭T、およびHIFUシステム14の焦点Fの位置に対応するマーカーを示す、モニタ18の例示的なスクリーンディスプレイ19である。
【0020】
作動される場合、HIFUシステムは、焼灼エネルギーを、モニタ18上に示される特定の位置(図2における焦点F)に送達し、これによって、壁を通る損傷部の安全な作製を可能にする。HIFUシステムは、標的組織領域の方へと集束される、多数の源からエネルギーを送達するように構成されるので、介在する組織は、標的組織が受けるように位置付けられるエネルギーの一部分のみに曝露され、従って、介在する組織は、有意に加熱も焼灼もされない。
【0021】
図1をなお参照して、超音波画像化システム12は、以前から公知である経胸郭超音波画像化システムと設計が類似であり得、そしてそれ自体が公知である。高密度焦点式超音波システム14は、米国特許出願番号US20010031922A1に記載されるように構築された、1つ以上のHIFU発生器20を備え得る。先に述べられたように、画像化システム12およびHIFUシステム14はまた、同じ要素を使用し得る。好ましくは、各HIFU発生器20は、超音波画像化システム12の画像化要素と同じであるか、または同じ面内で近接して配置され、その結果、HIFUシステム14の焦点は、超音波画像化システム12によって画像化される標的組織の面内に生じる。さらに、この配置は、有利なことに、HIFUエネルギーが標的に達することを確実にする。
【0022】
好ましい実施形態において、HIFU発生器20は、心筋に損傷部を作製するために最適化された周波数で、エネルギーを送達し、これによって、組織の強度を低下させることなく、この組織を通る伝導経路を遮断する。一旦、この損傷部が作製されると、次第に加熱するプロセスが開始され、このプロセスにおいて、この損傷部は、線維を形成するが、分解もせず、電気刺激を伝道する能力を回復もしない。
【0023】
画像化と焼灼とを同時に行うことが可能であり得るが、HIFUシステム14の出力が、超音波画像化システム12を使用して組織を画像化する能力をブロックし得ることが、可能である。従って、制御器16は、画像化システム12およびHIFUシステム14の作動を、時間差をつけてゲート制御(time−gate)するようにプログラムされ得、その結果、組織は、1秒間あたり数回の頻度で、交互に画像化および焼灼される。
【0024】
線状の損傷部を心房の壁に作製する目的で、HIFUシステムの焦点を、焼灼プロセスの間、この心房壁に沿ってゆっくりと移動させることが、望ましくあり得る。このことは、HIFUシステムを手動で移動させることによって達成され得るが、例えば、比較的短い損傷部を処置するためには、この損傷部は、肺静脈の各々または全てを囲む。制御器16は、HIFUシステム14の焦点を所望の軌道に沿って再度集束させるために、適切なプログラミングおよびジョイスティック22、または他の入力デバイスを備え得る。
【0025】
ここで図3を参照して、線状の損傷部を作製するためにHIFUシステムを使用するための、さらなる代替が記載される。図3に示されるシステムにおいて、HIFUシステムの焦点は、超音波画像の視野内の特定の点に固定される。例えば、超音波画像は、約80mm幅および160mm深さの組織の矩形の平坦な断面の写真を示し得、HIFUエネルギーの固定された焦点は、この視野の中心の130mmの深さにある。
【0026】
操作の際に、医師は、所望の組織が標的領域に入るまで、そのプローブを手で移動させ、次いで、HIFUシステムを起動させて、組織を焼灼する。このようなシステムを用いると、最大焼灼深さは、皮膚の下130mmである。皮膚の下130mmより浅く位置する組織を焼灼し、なおプローブから標的までの連続的な流体経路を保持する目的で、HIFUシステムは、このプローブの面を覆う、流体を満たされたバルーン24を備える。
【0027】
バルーン24は、好ましくは、水で満たされ、そして医師が、このプローブを、皮膚から変更可能な距離で再度配置することを可能にする。バルーン24はまた、医師が、プローブを、HIFUシステム14の焦点の真下に整列させずに、標的組織に対して任意の所望の角度で配置することを可能にする。あるいは、患者は、この患者の胸部とプローブとの両方が水面下に来るように水槽内に座り得、また、連続的な流体経路を確実にする。
【0028】
さらなる代替として、制御器16は、HIFUシステムの焦点の深さが、画像化される組織に対して深さ調節可能であるように、プログラムされ得る。有利には、標的組織の深さが、次いで、画像化される視野に対して調節され得、これによって、画像化されるセクションの角度を調節しながら流体接触を維持するため、または標的組織の深さの小さい変化を行うために、より小さい流体を満たされたバルーンが使用されるか、またはバルーンが使用されない。Therusに対するWIPO特許出願公開番号WO/0145550A2は、超音波発生器のうちの1つ以上の曲率半径を変化させることによって、集束されるエネルギーの深さを調節するために、いくつかの方法を記載する。あるいは、比較的固定された焦点距離の、いくつかの焦点式エネルギー発生器の方向は、この焦点を移動させるために、互いに対して移動され得る。
【0029】
本発明の原理に従って、集束されたエネルギーは、患者の身体の外側から適用される。超音波エネルギーは、流体で満たされていない組織(例えば、肺)を通ってコヒーレントには進まないので、超音波画像化システムおよびHIFUシステムの、特定の角度での配置は、心臓の特定の領域の処置のために、より有利であり得る。例えば、左心房の後壁は、心房細動を処置するための、特に重要な処置領域である;この壁はまた、経胸郭超音波を用いて画像化するためには、特に困難な領域である。
【0030】
従って、この画像化システムおよびHIFUシステムを可動式アーム上で位置決定するか、または他の外部からの接近(絞りの下から身体の左前側に)を可能にするように手動でこれらのシステムを位置づけ、超音波が、しぼりならびに心尖および心室を通って心房へのコヒーレントな経路を有するようにすることは望ましいことであり得る。患者の背中にプローブを当てることはまた、患者の左心房の後壁へのコヒーレントな経路を提供し得る。
【0031】
本発明のシステムおよび方法はまた、多くの心機能不全を処置するために有用であり得ることが予測される。心房細動の処置とは別に、本発明の方法および装置はまた、心臓の他の電気生理学的欠陥を処置するため、または他の目的で損傷部を作り出すために使用され得る。例えば、経心筋的血管再生術(TMR)が、損傷および治癒の集中した領域をもたらすことによって、損傷した心室に対してポジティブな効果を有すると考えられている場合、このような損傷部は、本発明を用いて、非侵襲的に作り出され得る。
【0032】
別の例として、局部化された組織損傷および結果としての治癒プロセスは、開存性の卵円孔(PFO)の一次中隔および二次中隔が一緒に治癒して、PFOを閉じ得る。本発明のシステムおよび方法が、その時間の割合が小さくても、PFOを閉じるに有効である場合、この手順の非侵襲性の性質により、大部分の症例において初期治療において用いるための第1の選択肢になり得る。
【0033】
さらに、本明細書中上記のHIFUシステムはまた、特定の領域において組織を収縮させることによって、病的な心臓弁を修復するために使用され得る。例えば、僧帽弁リーフレット(leaflet)の細長い索の特定の領域は、本発明の外部HIFUを使用して加熱することにより短くされ得る。
【0034】
本明細書の上記の好ましい実施形態において、エネルギーは、身体の外側から送達されるが、身体内の深部にある位置に、または肺もしくは他の超音波が伝わらない組織に隣接した位置にエネルギーを送達することが困難な状況が生じ得る。
【0035】
ここで図4を参照し、本発明の別の局面によると、身体内部に、かつ標的とされた組織のより近くにプローブを位置づけるための方法および装置が提供されるが、それでもなお、標的とされた組織に必ずしも隣り合う必要はない。管内プローブ(intraluminal probe)30は、HIFUエネルギーを、食道から、大動脈から、または心臓の大静脈(例えば、下大静脈、上大静脈、または右心房自体)から、心臓へと送達するように構成される。
【0036】
このアプローチは、心外膜プローブを用いる外科手術処置の間または心臓焼灼カテーテルを用いる介入手順の間に焼灼を行うという以前に知られていた方法とは根本的に異なる。これらの以前に知られていたデバイスは、標的組織と直接接触するように、または標的組織の少なくともすぐ近く(例えば、5mm以内)にあるように設計されており、プローブと標的組織との間にある組織の焼灼を避けるようには設計されていない。
【0037】
さらに、以前に知られていたデバイスは、単一の位置から、デバイスからある距離だけ離れた位置に多くの損傷部を形成するよりも、むしろ、所定の位置から1つの損傷部のみを作製することが可能である。単一のカテーテル位置から複数の損傷部を作製することは、有利には、時間を節約し、その手順にかかる費用を軽減する。例えば、以前に知られていた心内カテーテルを使用する外科手術的なmaze処置の時間を概算すると、代表的には、4時間から8時間かかり、被験体および医師は、透視装置からの高レベルの照射に曝される。対照的に、本発明の原理に従って構築されたデバイスは、超音波画像化案内の下で、食道、大動脈もしくは大静脈、または右心房における単一の位置において配置されるが、複数の損傷部を作り出し得る。
【0038】
さらに図4を参照すると、管腔内カテーテル30は、身体内腔(例えば、食道、大動脈および大静脈)を画像化し、そしてHIFUエネルギーをそこから送達するように設計される。カテーテル30は、好ましくは、血管デバイスに関しては5〜10mmの範囲の直径を有し、食道デバイスに関しては、5〜20mmの範囲の直径を有する。画像化要素32およびHIFU要素34は、このカテーテルの長手軸に沿って直線状に配置される。
【0039】
この画像化要素およびHIFU要素のアレイ(array)の直線的な性質は、このデバイスを再配置する能力に制限を課し得る。カテーテルの平行移動および回転は、比較的容易であり得るが、このデバイスを、比較的小さな直径の身体内腔内の一方の側または他方の側から非常に離して動かすことは困難であり得ることは予測される。
【0040】
従って、管腔内カテーテル30は、好ましくは、長手軸の位置および深さに関してHIFUシステムの焦点を調節するために構成される。このことは、管腔内カテーテル30とともに使用される制御器をプログラムして、上記のように、HIFUシステムの焦点位置を調節することによって、達成され得る。あるいは、HIFU要素のアレイの焦点を再度定めることは、個々のHIFU要素を、独立して操縦可能なアクチュエータ36に位置決めすることによって達成され得る。アクチュエータ36は、システム制御器によって制御され、臨床医がHIFUアレイの焦点を画像化システムの視野中の任意の望ましい位置に動かすことを可能にする。
【0041】
本発明の別の局面に従って、管腔内カテーテル30を使用して、食道から焼灼を行って心房細動を処置する方法が記載される。食道は、心膜斜洞によってのみ、左後方の心房壁の中心から隔てられrているので、直線状の垂直の損傷部は、約5〜10mmの距離でエネルギーを送達し得るプローブを用いて、左後方の心房壁の中心に容易に作製され得る。
【0042】
このような方法は、使用しやすさに関して実質的な利点を提供すると考えられ、心房細動患者の高い割合を処置するにおいて有用であり得る。これらの方法はまた、代表的には、広い全周性損傷部が肺静脈の周りに作製される場合に生じるのと同様に、左心房の後壁のかなりの領域を縮小させる必要を回避し得る。
【0043】
本発明のこの局面に従って、1つ以上の垂直焼灼線が、食道内に配置された管腔内カテーテル30を使用して、左心房の後壁に形成される。食道からの超音波画像化案内の下で、心房の後壁において垂直にまっすぐな焼灼線を形成することはまた、肺静脈の周りに全周性の焼灼線を作製するより容易であり得ることが予測される。
【0044】
損傷部を作り出す前述の方法は、James Cox博士により1990代初期に発明されたmaze手順の根底にある概念と一致する。心房細動を有する患者における脱分極波をマッピングすることにおける彼の研究は、機能不全が、心房の周りを再循環する波から生じることを示した。この再循環は、わずかに損傷した組織(この損傷した組織は、脱分極波の伝播を遅くする)、損傷に起因する心房の拡大、弁の機能不全、または欝血性心不全によって与えられる。
【0045】
このmaze概念は、心房において多くの行き止まりの経路を作り出すことに依り、よって脱分極波は、心房壁の全てに達するが、再循環させることはできない。左心房の後壁における一連の垂直な焼灼線(冠状溝から上肺静脈の上まで延びる)は、正確にこの目的を達成する。
【0046】
好ましくは、この焼灼線は、冠状溝にいたるまでの経路全体に延びる。このことにより、脱分極波が左心房の頂部(dome)(より頭側の前方表面)からその組織に到達することになるが、冠状溝に沿って心房壁の残りに戻って伝わらないようにされる。
【0047】
上記のように、管腔内カテーテル30は、好ましくは、機械的にまたは適切なソフトウェアアルゴリズムによって、その焦点を長手軸方向に動かして、このデバイスを動かさずに、連続的な直線状焼灼を可能にするように構成される。あるいは、このカテーテルのHIFUアレイは、直線状焼灼を作りだすか、または食道内でHIFUアレイを平行移動することによって、直線状焼灼が作り出され得るように固定した焦点を有するように、構成され得る。
【0048】
さらに本発明によれば、さらなる損傷部が、左肺静脈および右肺静脈の近くに作製され得る。より好ましくは、損傷部は、左肺静脈および右肺静脈の反対側に(すなわち、左肺静脈の左側におよび右肺静脈の右側に)作製され得る。あるいは、およびHIFUプローブの外形に依存して、同じ垂直動作を使用して、左肺静脈および右肺静脈に全周性の損傷部を作製することがより望ましいこともあり得る。
【0049】
さらに、管腔内カテーテル30のHIFUアレイを取り囲む組織を冷却して、食道に対する損傷の危険性をさらに減少させることが有益であり得る。管腔内カテーテル30は、従って、そのアレイによって生成されるいかなる熱も、食道により吸収される超音波エネルギーも、組織損傷を何ら引き起こさないように、HIFUアレイの周りに流体を循環させた水ジャケットを備え得る。
【0050】
本発明の方法および装置はまた、有益にも、心機能不全以外に、他の適用に適用され得る。例えば、本発明の装置は、組織を焼灼または縮小するために高周波焼灼プローブが現在使用されているほぼどの場所でも、小さな身体内腔に配置されて使用され得る。このような処置としては、尿道から前立腺を処置すること、膣内部から膀胱頸部を締めること、子宮内部から類線維腫(fibroid mass)を焼灼すること、胃食道接合部の領域における組織を締めることなどが挙げられる。同様に、図1に関して記載される外部デバイスは、有益なことには、焦点式超音波に影響を受け得る身体のほとんどどの場所でも、腫瘍を焼灼するために使用され得る。
【0051】
本発明の好ましい例示的な実施形態が上記に記載されてきたものの、種々の変更および改変が、本発明から逸脱することなく行われ得ることは当業者に明らかである。添付の特許請求の範囲において、このような変更および改変全てを網羅し、これらが、本発明の真の趣旨および範囲内に入ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の例示的な画像化および処置超音波サウンドシステムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の画像化および処置超音波サウンドシステムの例示的なディスプレイの概略図である。
【図3】図3は、患者の胸郭の断面に近接して配置された、図1の画像化および処置超音波サウンドシステムを示す概略図である。
【図4】図4は、カテーテルベースの高密度焦点式超音波アレイの遠位領域の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動を非侵襲的に処置するための装置であって:
ハウジング;
該ハウジング内に配置された超音波画像化システム;
該ハウジング内に、該超音波画像化システムと整列して配置された、高密度焦点式超音波システム;ならびに
該超音波画像化システムおよび高密度焦点式超音波システムに作動可能に接続された、制御器、
を備える、装置。
【請求項2】
前記制御器、前記超音波画像化システムおよび前記高密度焦点式超音波システムが、共通の変換器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点に対応するマーカーを表示するようにプログラムされている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を、該高密度焦点式超音波システムの軸に対して垂直な二次元の面内で調節するようにプログラムされている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の深さの位置を調節するようにプログラムされている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングに連結された、流体を満たされたバルーンをさらに備え、該バルーンは、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を調節するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
心房細動を非侵襲的に処置する方法であって:
ハウジングを提供する工程であって、該ハウジングは、超音波画像化システム、および該超音波画像化システムと整列して配置された高密度焦点式超音波システムを有する、工程;
患者の身体に対して該ハウジングを接触させる工程;
該超音波画像化システムを作動させて、心臓組織の一部分の画像を作成する工程;ならびに
該高密度焦点式超音波システムを、該画像によって案内させて作動させて、標的部位における心臓組織を焼灼する工程、
を包含する、方法。
【請求項8】
前記高密度焦点式超音波システムの焦点に対応するマーカーを作成し、そして該マーカーを、前記画像上に表示する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を調節することによって、前記標的部位の位置を改変する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の左心房の壁上の一連の垂直焼灼線に沿って、心臓組織を焼灼する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
流体を満たされたバルーンを、前記患者の身体と前記ハウジングとの間で配置して、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を調節する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
心房細動を管腔内処置するための装置であって:
カテーテル;
該カテーテル内に配置された超音波画像化システム;
該カテーテル内で、該超音波画像化システムと整列して配置された、高密度焦点式超音波システム;ならびに
該超音波画像化システムおよび高密度焦点式超音波システムに作動可能に接続された、制御器、
を備える、装置。
【請求項13】
前記制御器、前記超音波画像化システムおよび前記高密度焦点式超音波システムが、共通の構成要素を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点に対応するマーカーを表示するようにプログラムされている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を、該高密度焦点式超音波システムの軸に対して垂直な二次元の面内で調節するようにプログラムされている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記制御器が、前記高密度焦点式超音波システムの焦点の深さの位置を調節するようにプログラムされている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記高密度焦点式超音波システムが、線状の焼灼標的に沿って集束させるように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
心房細動を管腔内処置する方法であって:
遠位部分を有するカテーテルを提供する工程であって、該カテーテルは、超音波画像化システム、および該超音波画像化システムと整列して配置された高密度焦点式超音波システムを収容している、工程;
該カテーテルの遠位部分を、患者の身体の食道内に配置する工程;
該超音波画像化システムを作動させて、心臓組織の一部分の画像を作成する工程;ならびに
該高密度装填式超音波システムを、該画像によって案内させて作動させて、標的部位における心臓組織を焼灼する工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
前記高密度焦点式超音波システムの焦点に対応するマーカーを作成し、そして該マーカーを、前記画像上に表示する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記高密度焦点式超音波システムの焦点の位置を調節することによって、前記標的部位の位置を改変する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の左心房の後壁上の一連の垂直焼灼線に沿って、心臓組織を焼灼する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記高密度焦点式超音波システムを用いて、線状の焼灼標的に沿って、焼灼する心臓組織を配置する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503290(P2007−503290A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533680(P2006−533680)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018452
【国際公開番号】WO2005/000097
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】