説明

高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法

【課題】
銅又はアルミニウムからなる高導電性被溶接物同士でも簡単にプロジェクション溶接が可能な溶接方法を提供すること。
【解決手段】
第1のプロジェクション及び第2のプロジェクションとの間に、第1の高導電性被溶接物又は第2の高導電性被溶接物の金属材料と同一の金属材料からなる第3の高導電性被溶接物として作用する高導電性金属薄板を介在させ、第1のプロジェクションを高導電性金属薄板の一方の面に、第2のプロジェクションを高導電性金属薄板の他方の面にそれぞれ当って接触させ、第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物との間に、弾性的加圧力を加えた状態でパルス状溶接電流を通電し、第1のプロジェクション、第2のプロジェクション及び高導電性金属薄板とを拡散接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性が非常に高い銅部材又はアルミニウム部材などの高導電性被溶接物部材を簡単に接合するのに適したプロジェクション溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同種の金属材料同士や、鉄系材料とステンレス材料、あるいは鉄系材料と銅部材、又は鉄系材料とアルミニウム部材料など、融点や導電率など特性の異なる異種金属材料を接合する方法が種々提案されているが、異種金属材料の接合は硬ロウによる接合、あるいは超音波接合、又はかしめ、ボルト締めなど機械的な結合などによって、接合される場合が多かった。また、同種の金属材料同士の抵抗溶接でも、導電率が非常に良好な銅部材と銅部材同士の接合、又はアルミニウム部材とアルミニウム部材同士、あるいは銅部材とアルミニウム部材との接合なども同様の手段で行われていることが多いが、このような接合方法では、導電率が非常に良好な銅部材、アルミニウム部材を用いるという用途から見て、それらの接合部の抵抗を無視できるほどには小さくできない。このような理由もあって、導電率が非常に良好な銅部材同士、アルミニウム部材同士、又は銅部材とアルミニウム部材との抵抗溶接は特に難しいとされている中、界面抵抗を小さくできる抵抗溶接を行う努力が既に行われており、下記のような処理工程を予め行うことによって銅部材とアルミニウム部材との抵抗溶接を可能にする改良技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この方法は、銅部材とアルミニウム部材とを直接抵抗溶接することはできないので、抵抗溶接前に予め銅部材の接合表面にスズ膜を形成し、更に処理を行ってその銅部材とスズとの界面に銅とスズとの固溶を生成させたスズ被覆層を形成した後に、そのスズ被覆層とアルミニウム部材とを接触させ、その固溶生成させたスズ被覆層を銅部材とアルミニウム部材との間に介在させた状態で加圧し、溶接電流を流して抵抗溶接を行うものである。この溶接方法を実現するのは、コンデンサ式溶接機ではなくインバータ式溶接機を用いて、高周波の溶接電流を銅部材とアルミニウム部材とに流し、銅部材とアルミニウム部材との接合部を溶融させ、溶融した銅とアルミニウムとを互いに混じり合わせたナゲットを形成して溶接を行うものである。また、異種金属の抵抗溶接に当たっては、予め異種金属の接合部を最適な特殊形状に加工することによって良好な溶接結果が得られる抵抗溶接方法、及び抵抗溶接装置が既に報告されている(例えば、特許文献2〜5参照)。また、拡散接合時にアルミニウム又はマグネシウムなどの接合面の酸化膜や汚れを除去する酸洗いなどの前処理を不要にするために、被溶接物双方にプロジェクションを形成し、それらプロジェクションの頂部同士を当接させて溶接する方法も開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2001−087866公報
【特許文献2】特開平08−118040号公報
【特許文献3】特開平10−128550号公報
【特許文献4】特開平10−156548号公報
【特許文献5】特開平11−033737号公報
【特許文献6】特開2002−103056公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前掲特許文献1で開示された抵抗溶接方法にあっては、銅部材の接合表面にスズを形成し、銅部材とアルミニウム部材との接合部にナゲットを形成する溶接方法であるので、溶接前に銅又はアルミニウムよりも抵抗の大きな低融点金属膜であるスズ膜を形成しなければならない。このことはスズ膜をメッキなどで形成する工程が必要であること、及び銅部材とアルミニウム部材との接合部にスズが混入するために、接合部での抵抗が大きくなるという欠点がある。また、相互の金属が溶融することによって形成されるナゲットの熱によって接合部の周囲のスズがチリとなって飛散するという問題点がある。また、溶接電流の通電時間が長いので、溶接部での発熱が大きく、溶接部だけでなくその周囲が変色したり、変形が大きくなるなどの問題もある。
【0005】
前掲の特許文献2〜5に記載されている接合部の構造は特定の構造の異種金属材料からなる被溶接物に適しているが、特に銅部材と銅部材、又はアルミニウム部材とアルミニウム部材、あるいは銅部材とアルミニウム部材との抵抗溶接にはそのまま適用することは難しく、前掲特許文献に開示されている抵抗溶接装置をもってしても安定な接合強度が得られない。また、前掲の特許文献6に記載されているように、銅部材とアルミニウム部材との双方にプロジェクションを設けて互いに突合せて溶接しても、アルミニウム部材に比べて銅部材の塑性流動化が遅いために安定な接合結果は得られず、また、プロジェクション同士を合致させるのは技術的に面倒な問題があり、特許文献6に記載されている抵抗溶接方法を実際の製造ラインに採用することは、今のところコスト的な面などで難しい場合が多い。
【0006】
本発明は前述の問題点を解決し、拡散接合面にスズ膜のような低融点金属膜を形成することなく、銅部材又はアルミニウム部材のように導電率が非常に高い高導電性被溶接物同士を接合部の抵抗を増やすことなく従来の抵抗溶接装置でもって容易に接合でき、安価に接合強度及び外観など溶接品質の高い接合結果が得られる実際的な拡散接合を提供することを主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物との間に溶接電流を流して抵抗溶接を行う高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法において、前記第1の高導電性被溶接物及び前記第2の高導電性被溶接物はそれぞれ第1のプロジェクション及び第2のプロジェクションを有し、前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションとが向かい合って対向するように前記第1の高導電性被溶接物と前記第2の高導電性被溶接物とを向かい合わせ、前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションとの間に、前記第1の高導電性被溶接物又は前記第2の高導電性被溶接物の金属材料と同一の金属材料からなる前記第3の高導電性被溶接物として作用する高導電性金属薄板を介在させ、前記第1のプロジェクションを前記高導電性金属薄板の一方の面に、前記第2のプロジェクションを前記高導電性金属薄板の他方の面にそれぞれ当って接触させ、前記第1の高導電性被溶接物と前記第2の高導電性被溶接物との間に、弾性的加圧力を加えた状態でパルス状溶接電流を通電し、前記第1のプロジェクション、前記第2のプロジェクション及び前記高導電性金属薄板とを拡散接合することを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法を提供する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記高導電性金属薄板は、第1の高導電性被溶接物又は第2の高導電性被溶接物の厚み以下の厚みであることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法を提供する。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記高導電性金属薄板は、複数枚重ねられたものからなることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法を提供する。
【0010】
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかにおいて、前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションは、リング状のプロジェクションであることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、第1の高導電性被溶接物のプロジェクションと高導電性金属薄板の一方の面で良好に拡散接合が行われ、第2の高導電性被溶接物のプロジェクションと高導電性金属薄板の他方の面で良好に拡散接合が行われるために、従来のプロジェクション溶接装置であっても第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物とを簡便にかつ良好にプロジェクション溶接することができ、接合強度が高く、溶接部の外観に優れ、溶接部の抵抗が大きくならないなど溶接品質の高い接合結果を得ることができる。特に、このような構成を有するため、第1のプロジェクションと第2のプロジェクションとに電流が集中し、それらの間に第3の高導電性被溶接物として作用する高導電性金属薄板を介在させて拡散接合することができる。
【0012】
第2の発明によれば、第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物と第3の高導電性被溶接物として作用する高導電性金属薄板の三者を拡散接合することができる。
【0013】
第3の発明によれば、高導電性金属薄板を複数の銅箔又はアルミニウムの箔から構成することができるので、接合部となる面域の接触抵抗が大きくなり、銅部材同士又はアルミニウム部材同士、あるいは銅部材とアルミニウム部材とをプロジェクション溶接することができるのは勿論のこと、複数の第3の高導電性被溶接物とすることができる。
【0014】
第4の発明によれば、第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物とが円環状のパイプからなる場合など、第1のプロジェクション及び第2のプロジェクションをリング状のプロジェクションにした場合でも第1の発明と同様な効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
図1によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態1について説明する。先ず、本発明が適用できる範囲は極めて難しいとされている銅又は銅合金同士のプロジェクション溶接(本発明では、プロジェクション溶接又は抵抗溶接は拡散接合と同意義である。)を例として以下に説明する。本明細書においては、「銅部材」とは「銅又は銅合金」を意味し、「アルミニウム部材」とは「アルミニウム又はアルミニウム合金」を意味する。銅部材又はアルミニウム部材は、一般に鋼板やステンレス材料に比べて導電率が高いので、銅部材同士又はアルミニウム部材同士、あるいは銅部材とアルミニウム部材とのプロジェクション溶接は特に難しいとされており、実施形態1を説明する前にこの点について説明する。以下では銅部材について述べる。
【0016】
金属材料の抵抗溶接は、溶接電流が流れるときに金属材料の有する抵抗及び双方の金属材料の当接面での接触抵抗が生じる発熱によって双方の金属材料の当接面で塑性流動、つまり軟化が起こり、接合が行われる。しかしながら、銅部材の抵抗及び銅部材同士の接触抵抗は極めて小さいためにその抵抗により発熱する発熱量が不足し、要求される接合強度が極めて小さい場合を除いて、満足の行く抵抗溶接結果を得るのは難しいというのが大きな理由である。要求される接合強度が極めて小さい拡散接合は可能であっても、現実に要求される接合強度を満足するには、高導電性被溶接物である銅部材の接合部の形状や表面状態(接触抵抗)、溶接電流の条件、溶接装置の諸々の特性など種々の制約が厳しい上に、予めスズ膜のような低融点金属膜を形成しておかなければならないために実際の製造ラインに適用することは難しかった。
【0017】
例えば、銅部材が純銅であるとすれば、広く使用されている銅合金からなる溶接電極の抵抗率は銅部材よりも高くなるので、銅部材における発熱よりも溶接電極での発熱の方が当然に大きくなり、銅部材間の接触抵抗と溶接電極と銅部材との接触抵抗とがほぼ同じであるとすれば、銅部材間の接合よりも溶接電極と銅部材との間で接合が起こり易いという不都合が生じる。実際の連続する溶接工程では、溶接電極の表面は僅かながらに汚れが進むので、この傾向はますます起こりやすい状況になる。このことは、銅部材が数mm以下の厚みの薄板、特に2mm程度以下の薄板の場合、銅部材の厚み方向の抵抗が極めて小さくなるために顕著であり、銅部材のプロジェクション、溶接電流波形、抵抗溶接装置などの諸条件を選定しても、銅部材同士の接合面にスズ膜のような比較的抵抗の大きな低融点金属膜が介在しなければ、安定性も含めて満足の行く溶接結果は得られなかった。実施形態1では、従来のように銅部材同士の接合面にスズ膜のような抵抗値の大きな低融点金属膜を形成せずに、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との間に高導電性金属薄板W3を介在させ、その間の接触抵抗を増大させることに特徴がある。この接触抵抗は、接合後には当然にゼロとなるので、接合部の抵抗を増やすことはない。
【0018】
図1において、銅部材である第1の被溶接物W1の片面にはプロジェクションP1が形成されている。プロジェクションP1は通常のプロジェクションでよいが、その高さは後述の中間部材となる高導電性金属薄板の厚みによって異なる。通常、プロジェクションの高さの上限はプロジェクションの造り易さから決まり、1mm強程度である。銅部材である第2の被溶接物W2の片面にも、プロジェクションP1と同様なプロジェクションP2が形成されている。プロジェクションP1、P2は一般的な構造のリングプロジェクションでも勿論よい。プロジェクションの面積は要求される接合強度などの条件によって決まり、要求される接合強度が得られる大きさであるので様々である。
【0019】
第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と第2の被溶接物W2のプロジェクションP2との間には、銅部材からなる高導電性金属薄板W3が介在している。実施形態1の高導電性金属薄板W3の幅、長さは特に制限されず、溶接工程で取り扱い易いものであればよい。この実施形態1のプロジェクション溶接方法では、銅部材からなる第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と第2の被溶接物W2のプロジェクションP2との間に銅部材からなる高導電性金属薄板W3を挟み、所定の加圧力を加えた状態で、その加圧力の応答性が高速のプロジェクション溶接装置、例えば後で説明する図8に示すような抵抗溶接装置によって、短時間に大電流を通電し、高導電性金属薄板W3を介して第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2とを接合する。
【0020】
溶接電極1と2との間に挟まれている初期の状態では、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1の先端が高導電性金属薄板W3の一方の面に当接し、第2の被溶接物W2のプロジェクションP2の先端が高導電性金属薄板W3の他方の面に当接している。この状態で、図示していない加圧機構が溶接電極1と2との間に加圧力をかけ、加圧力が上昇している過程で溶接トランスの2次巻線N2から、例えばピーク値が数万Aから数十万Aのパルス状の大電流が第1の被溶接物W1と高導電性金属薄板W3と第2の被溶接物W2とを通して通電される。抵抗溶接にあっては、拡散接合に寄与する溶接電流のほとんどは立ち上がりからピーク値近傍までの電流であるので、実施形態1の抵抗溶接では溶接電流がピーク値近傍まで立ち上がる時間が10ms程度以下であり、7ms以下であることが好ましい。このようなパルス幅の狭い急峻なパルス状の大電流が銅部材からなる第1、第2の被溶接物W1、W2及び高導電性金属薄板W3を通して流れるが、通電初期には、プロジェクションP1とP2とに電流が集中する。
【0021】
この点について詳しく説明すると、溶接電極1を流れるパルス状溶接電流は、先ず溶接電極1と第1の被溶接物W1との当接面から第1の被溶接物W1を通してそのプロジェクションP1に集中し、プロジェクションP1に当接している高導電性金属薄板W3の一方の微小な当接面域の第1の接触抵抗を通して高導電性金属薄板W3内に流れる。更に、パルス状溶接電流は第2の被溶接物W2のプロジェクションP2に当接している高導電性金属薄板W3の他方の微小な当接面域の第2の接触抵抗に集中して流れる。ここで、溶接電極1と第1の被溶接物W1との当接面及び第2の被溶接物W2と溶接電極2との当接面の面積は、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接面域及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接面域の面積に比べてはるかに小さい。したがって、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との微小な当接面域の第1の接触抵抗及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との微小な当接面域の第2の接触抵抗を流れる電流密度は、非常に大きな値になる。
【0022】
このことからプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との微小な当接面域及びプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との微小な当接面域での発熱は、溶接電極1と第1の被溶接物W1との当接面及び第2の被溶接物W2と溶接電極2との当接面での発熱に比べてはるかに大きくなり、このように高導電性金属薄板W3が第1、第2の被溶接物W1、W2の間に存在すると、存在しない場合に比べて接触抵抗がほぼ2倍になるから、発熱量はその分だけ大きくなる。したがって、溶接電極1、2の発熱が第1の被溶接物W1及び第2の被溶接物W2よりも大きくても、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接部分及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接部分が塑性流動化し、プロジェクションP1とプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との接合面域で拡散接合が行われる。拡散接合後は当然に前記接触抵抗はゼロになるので、その接触抵抗が接合部の抵抗値を増やすことはない。
【0023】
ここで言う接合面域とは、プロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接部分及びプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接部分がそれぞれ塑性流動化する過程で、溶接電極1と2との間にかけられている加圧力によって、当接部分でそれぞれの被溶接物のプロジェクションP1、P2及びその近傍の銅材料が高導電性金属薄板W3の銅材料と互いになじみあって接合が行われたときの面域をいう。したがって、実施形態1の溶接方法では、接合面域はプロジェクションP1、P2の根元面域とプロジェクションP1、P2が僅かに拡がった面域であり、パルス状溶接電流の通電前におけるプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との初期の当接面域及びプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との初期の当接面域よりも大きい。
【0024】
このプロジェクション溶接方法では、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との厚みは関係なく、前述した2mm以下の厚みであっても良好な拡散接合を行うことができる。しかしながら、高導電性金属薄板W3が第1の被溶接物W1及び第2の被溶接物W2に比べて、厚過ぎる場合には下記のような問題が生じる。例えば、高導電性金属薄板W3が第1の被溶接物W1又は第2の被溶接物W2の厚みよりも大きい厚みを有する場合には、パルス状溶接電流の通電に伴うプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接部分の第1の接触抵抗による発熱及びプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接部分の第2の接触抵抗による発熱は、パルス状溶接電流の通電時間に比べて熱伝導速度が遅いために、パルス状溶接電流の通電中では前記双方の発熱が高導電性金属薄板W3の厚み内方向に熱伝導、つまり内方向に未だ逃げている状態であるので、プロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接部分での温度上昇が不十分になり、したがって、その当接部分の塑性流動化が不完全な状態になる。同様に、プロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接部分での塑性流動化も不完全な状態になるので、溶接強度が低下する。この問題を解決するには、パルス状溶接電流のピーク値を更に大きくしなければならない。
【0025】
しかし、パルス状溶接電流のピーク値を大きくすれば大きくするほど、溶接電極1と第1の被溶接物W1との当接面及び第2の被溶接物W2と溶接電極2との当接面での発熱が大きくなり、溶接電極1に第1の被溶接物W1が付着し易くなり、また溶接電極2に第2の被溶接物W2が付着し易くなるために溶接電極1、2が汚れるという問題が生じる。つまり、大きな溶接電力を使用した上で、頻繁に溶接電極のクリーニングなどを行わなければならなくなる問題を生ずる。したがって、パルス状溶接電流の通電時間と高導電性金属薄板W3の熱伝導などの関係から、高導電性金属薄板W3は第1の被溶接物W1又は第2の被溶接物W2の厚み以下の厚みであることが好ましい。例えば、第1の被溶接物W1及び第2の被溶接物W2の厚みが数mmであれば、高導電性金属薄板W3が1mm程度以下の厚みのときには、第1の被溶接物W1と高導電性金属薄板W3と第2の被溶接物W2の三者を十分に満足に行く拡散接合を行えるので、高導電性金属薄板W3の厚みは、1mm程度以下の厚みの薄板であることが好ましい。
【0026】
すなわち、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との間の接触抵抗、及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との間の接触抵抗を利用することによって、高導電性被溶接物同士の接合では不足する発熱量を補うことができればよい。したがって、高導電性金属薄板W3は1μm程度以上あればよい。また、高導電性金属薄板W3の幅と長さを使用目的に応じて設定することによって、第3の被溶接物として利用することができる。
【0027】
この実施形態1では、第1、第2の被溶接物W1、W2及び高導電性金属薄板W3が銅部材からなるものとして説明したが、高導電性金属薄板W3がアルミニウム材からなってもプロジェクション溶接ができるが、溶接強度が幾分低下する場合もあるので、高導電性金属薄板W3は銅部材からなるのが好ましい。第1、第2の被溶接物W1、W2はアルミニウム材からなっても勿論よい。この場合には、高導電性金属薄板W3はアルミニウム材又は銅部材のどちらからなってもよいが、プロジェクション溶接の簡便性からはアルミニウム材からなる高導電性金属薄板W3を用いた方が望ましい。また、第1、第2の被溶接物W1、W2の一方が銅部材、他方がアルミニウム部材からなっても同様にしてプロジェクション溶接を行うことができ、この場合、高導電性金属薄板W3は銅部材からなるのが好ましいが、アルミニウム部材からなってもよい。なお、本発明のプロジェクション溶接方法を実現する抵抗溶接装置については、各実施形態を説明した後で図8によって簡単に説明する。なお、プロジェクションP1、P2は、1点又は多点のプロジェクション、あるいは、一般的な形状のリングプロジェクションであってもよく、プロジェクションの形状には制限されない。
【0028】
[実施形態2]
図2によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態2について説明する。図2において、図1で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。第1の被溶接物W1は銅部材からなり、その一方の面側にプロジェクションP1が形成されている。同様に、第2の被溶接物W2も銅部材からなり、その一方の面側にプロジェクションP2が形成されている。高導電性金属薄板W3は4枚の銅箔wを重ねたものからなる。例えば、それぞれの銅箔wは100μm程度の厚みを有し、したがって、高導電性金属薄板W3は400μm程度の厚みを有する。実施形態2における高導電性金属薄板W3は、使用目的に適した所定の幅と長さを有する第3の被溶接物となる。実施形態2においても、溶接電極1を流れるパルス状溶接電流は、先ず溶接電極1と第1の被溶接物W1との当接面から第1の被溶接物W1を通してプロジェクションP1に集中し、プロジェクションP1に当接している高導電性金属薄板W3の一方の当接面域の第1の接触抵抗を通して高導電性金属薄板W3内に流れる。更に、パルス状溶接電流はプロジェクションP2に当接している高導電性金属薄板W3の他方の当接面域の第2の接触抵抗に集中し、第2の被溶接物W2、及び第2の被溶接物W2と溶接電極2との当接面から溶接電極2へと流れる。
【0029】
プロジェクションP1に当接している最上位の高導電性金属薄板W3の銅箔wと第1の被溶接物W1とは前述したようにプロジェクション溶接が行われ、また、プロジェクションP2に当接している最下位の高導電性金属薄板W3の銅箔wと第2の被溶接物W2とは前述したようにプロジェクション溶接が行われる。しかし、隣り合う銅箔w同士はほぼ全面で当接しているから当接面が広く、厚みが大きいと溶接電流は横方向に広がり易くなるので、隣り合う銅箔w同士の当接面を流れる溶接電流は、プロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶ4枚の銅箔wの電流路における電流密度が最も大きく、それを離れるに従って小さくなる。
【0030】
しかしながら、隣り合う銅箔w同士の当接面にそれぞれ接触抵抗が生じるので、発熱が大きくなり、1枚の銅箔wの厚みが例えばほぼ500μm以下ならば、横方向に流れる電流を小さく抑えることができると同時に、前述したようにそれぞれの当接面の接触抵抗によって生じる発熱がパルス状溶接電流の通電期間に互いに隣り合う当接面まで熱伝導されるので、少なくともプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶ4枚の銅箔wの電流路及びその近傍部分では塑性流動化が生じ、隣り合う銅箔w同士の当接面それぞれにおいても望ましい拡散接合が行われる。したがって、第1、第2の被溶接物1、2は銅箔wを重ねた高導電性金属薄板W3を介してもプロジェクション溶接することができる。
【0031】
実施形態2では、高導電性金属薄板W3としての4枚の銅箔wを重ねた薄板を用いたが、これに制限されるものではない。ただし、銅箔wを重ねる枚数が増えると、その分だけ当接面が増え、接触抵抗も増えるが、接触抵抗が増える分、銅箔wを横方向に流れる電流も増えるので、重ねられた銅箔wの内、中央部に位置する銅箔wほど電流密度が低下する傾向がある。したがって、パルス状溶接電流のピーク値などの条件によっても異なるが、一例としては得られる溶接強度の面から銅箔wを重ねた厚みをほぼ1mm程度以内に制限するのが好ましい。この場合、例えば、100μmの銅箔wを重ねる場合には、10枚以下に制限するのが望ましい。
【0032】
この実施形態2において、ある厚みの銅箔w、例えば10μm程度以下の厚みの銅箔wを複数枚重ねた高導電性金属薄板W3を用いる場合には、銅箔w間を流れる電流密度の減少に比べて接触抵抗の増大による発熱効果が大きくなるので、高導電性金属薄板W3による発熱が増大し、より拡散接合を容易に行える。このことは高導電性金属薄板W3の存在による効果をより大きなものにし、パルス状溶接電流のピーク値を小さくすることが可能であり、被溶接物の付着による溶接電極の汚れを少なくできる。なお、第1、第2の被溶接物W1、W2はアルミニウム材からなっても勿論よい。この場合には、高導電性金属薄板W3はアルミニウム材又は銅部材のどちらからなってもよく、ほぼ同じ溶接強度を得ることができる。プロジェクションP1、P2は、1点又は多点のプロジェクション、あるいは、一般的な形状のリングプロジェクションであってもよく、プロジェクションの形状には制限されない。
【0033】
[実施形態3]
図2によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態3について説明する。この実施形態3では、第1の被溶接物W1が銅部材からなり、第2の被溶接物W2がアルミニウム部材からなる。この場合には、図2において、高導電性金属薄板W3を構成する上側2枚の箔wは銅材からなり、下側の2枚の箔wはアルミニウム材からなる。この場合にもほぼ前述と同様に抵抗溶接できるが、銅に比べてアルミニウムの融点は低い、つまり塑性流動化する温度が低いので、それらの融点の比率に反比例するよう、第1の被溶接物WIの頂部の面積、つまり第1の被溶接物WIの頂部と高導電性金属薄板W3との当接面積に比べて、第2の被溶接物W2の頂部と高導電性金属薄板W3との当接面積を大きくすれば、前者の電流密度が後者の電流密度よりも大きくなるから、より良好な接合結果を得ることができる。
【0034】
上側2枚の銅箔wと下側の2枚のアルミニウム箔wとの接合についても、塑性流動化の始まりに微少の時間的ずれが生じるが、銅箔w、アルミニウム箔wの双方が塑性流動化して満足できる拡散接合が行われる。また、銅箔w、アルミニウム箔wの枚数は異なってもよく、例えば、銅箔wが3枚でアルミニウム箔wが1枚であってもよい。高導電性金属薄板W3の厚みの条件は実施形態1、2と同じである。この実施形態3においても、実施形態2と同様に、ある厚みの銅箔wとアルミニウム箔w、例えば10μm程度以下の厚みの銅箔wとアルミニウム箔wを複数枚重ねた高導電性金属薄板W3を用いる場合には、銅箔w、アルミニウム箔w間を流れる電流密度の減少に比べて接触抵抗の増大による発熱効果が大きくなるので、高導電性金属薄板W3による発熱が増大し、より拡散接合を容易に行える。このことは高導電性金属薄板W3の存在による効果をより大きなものにし、パルス状溶接電流のピーク値を小さくすることが可能であり、被溶接物の付着による溶接電極の汚れを少なくできる。
【0035】
[実施形態4]
図3によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態4について説明する。図3において、図1、図2で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。第1の被溶接物W1、第2の被溶接物W2は銅部材からなり、高導電性金属薄板W3も銅部材からなる。この実施形態3は、第1、第2の被溶接物W1、W2の厚みなどの関係から被溶接物W1、W2にプロジェクションを形成してもプロジェクションの役割を十分に果たし難い場合、あるいは被溶接物W1、W2にプロジェクションを形成したくない場合などに特に有用である。したがって、第1の被溶接物W1、第2の被溶接物W2にはプロジェクションが形成されておらず、高導電性金属薄板W3の両面にプロジェクションP3、P4がそれぞれ形成されている。高導電性金属薄板W3の厚みは、前述のように、第1の被溶接物W1又は第2の被溶接物W2の厚み以下の厚みが好ましい。また、プロジェクションP3、P4は前述したプロジェクションP1、P2と同様なものである。高導電性金属薄板W3は使用目的の用途に適う形状、幅、長さなどを有する。
【0036】
前述したようなパルス状の溶接電流は、図3において、第1の被溶接物W1の下面と高導電性金属薄板W3のプロジェクションP3との微小な当接面の第1の接触抵抗、及び高導電性金属薄板W3のプロジェクションP4と第2の被溶接物W2の上面との微小な当接面の第2の接触抵抗を集中して流れ、これら接触抵抗による発熱でそれら当接部分が塑性流動化することにより良好な拡散接合が行われる。したがって、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2と高導電性金属薄板W3の3者は所期の溶接強度で互いにプロジェクション溶接される。高導電性金属薄板W3はプロジェクションP3、P4に相当するプロジェクションをそれぞれ有する銅板を2枚重ね合わせたものであってもよい。それら銅板は加圧力によってプロジェクションが圧潰されない程度以上の厚みをもっていればよく、それら銅板の間に銅箔が挟まれていても勿論よい。なお、実施形態3においても、第1の被溶接物W1、第2の被溶接物W2がアルミニウムからなる場合には、高導電性金属薄板W3はアルミニウム材からなるのが好ましいが、銅材からなってもよい。第1の被溶接物W1、第2の被溶接物W2の一方が銅材、他方がアルミニウム材からなる場合には高導電性金属薄板W3は銅材からなるのが好ましいが、アルミニウム材からなってもよい。
【0037】
[実施形態5]
図4によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態5について説明する。図4において、図1〜図3で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。実施形態5は、銅製の円環状パイプである第1の被溶接物W1と銅製の円環状パイプである第2の被溶接物W2とを、円環状の高導電性金属薄板W3を介して突合せ溶接する実施例である。第1の被溶接物W1の端部は先細りとなるように切削されてリング状のプロジェクションP1が形成されている。また、第2の被溶接物W2の端部も同様に先細りとなるように切削されてリング状のプロジェクションP2が形成されている。これら円環状パイプはほぼ等しい外径、内径を有する。リング状のプロジェクションP1とリング状のプロジェクションP2との間に位置する円環状の高導電性金属薄板W3は、前記環状のパイプの外径と内径とにほぼ等しい外径、内径であって、前述したように高導電性金属薄板W3の厚みは、前述のように、第1の被溶接物W1又は第2の被溶接物W2の厚み以下の厚みが好ましい。
【0038】
溶接電極1、2は一般の鋼管を抵抗溶接するときに用いられる一般的なコレットチャック構造のものであるので詳しく説明しないが、溶接電極1、2は縦方向に複数に分割、例えば3個の電極部に分割されており、これら3個の電極部が前記銅製の円環状パイプの中心軸線Xに対して放射内方向、放射外方向に動くことによって、前記銅製の円環状パイプを把持、開放するものである。実施形態5では、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との間に円環状の高導電性金属薄板W3を正確に位置させ、保持するために保持機構HMを備える。保持機構HMは等間隔、例えば120度間隔で設けられた支持部材M1、M2(他の1個の支持部材は陰になっているので示されていない。)とこれらを駆動する不図示の駆動機構などからなる。支持部材M1、M2などは、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との間に円環状の高導電性金属薄板W3が配置される前には、前記中心軸線Xに対して放射外方向に後退しており、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との間に円環状の高導電性金属薄板W3が配置されると、前記中心軸線Xに対して放射内方向に前進して、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2のごく先端部分と円環状の高導電性金属薄板W3の外周面に当接し、その状態を保持するものである。
【0039】
次に、プロジェクション溶接方法の一例について説明する。従来と同様に、溶接電極1に第1の被溶接物W1を、また、溶接電極2に第2の被溶接物W2をそれぞれ把持させる。第2の被溶接物W2である円環状パイプのリング状のプロジェクションP2上に、円環状の高導電性金属薄板W3を供給する。次に、溶接電極1を下降、又は溶接電極2を上昇させて、第1の被溶接物W1である円環状パイプのリング状のプロジェクションP1を円環状の高導電性金属薄板W3の上面に軽く接触させる。次に、保持機構HMが動作し、支持部材M1、M2などを前記中心軸線Xに対して放射内方向に前進させ、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2のごく先端部分と円環状の高導電性金属薄板W3の外周面に当接して、位置ずれなどを修正し、その状態を保持する。
【0040】
次に、溶接電極1と2との間に加圧力がかけられると、支持部材M1、M2などが後退し始め、しかる後にパルス状溶接電流が通電される。前述と同様に、プロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接面の第1の接触抵抗による発熱でプロジェクション溶接が行われ、かつプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接面での第2の接触抵抗による発熱でプロジェクション溶接が行われることによって、高導電性金属薄板W3を介して第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2とのプロジェクション溶接が行われる。この溶接方法によれば、高導電性金属薄板W3の位置の修正もできると共に、位置を修正した状態を保持でき、しかも溶接電流の通電前に支持部材M1、M2などが後退するので、支持部材M1、M2などが汚損する危険性もない。
【0041】
なお、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2との端部にリング状のプロジェクションP1、P2を設けずに、高導電性金属薄板W3の両面にリングプロジェクションを設けてあっても勿論よい。この場合には、被溶接物にプロジェクションを形成する工程を省くことができ、有利である。また、円環状の高導電性金属薄板W3の外径は第1、第2の被溶接物W1、W2である円環状パイプの外径、内径と条件によっては同じである必要はなく、また、高導電性金属薄板W3は円環状の銅箔を必要枚数重ねたもの、あるいは網状のものであってもよい。第1、第2の被溶接物W1、W2はアルミニウム製のパイプであってもよく、この場合には環状の高導電性金属薄板W3は好ましくはアルミニウム材からなり、銅材からなっても良い。また、第1、第2の被溶接物W1、W2の一方が銅製のパイプで、他方がアルミニウム製のパイプであってもよく、この場合には高導電性金属薄板W3が両面にリングプロジェクションを有する銅製のもの、あるいは円環状の銅箔と円環状のアルミニウムの箔とを重ねたものであってもよい。
【0042】
なお、実施形態5では第1、第2の被溶接物W1、W2が銅製又はアルミニウム製のパイプとして説明したが、銅製又はアルミニウム製の円柱などであっても同様に良好なプロジェクション溶接結果が得られる。第1、第2の被溶接物W1、W2が銅製又はアルミニウム製の円柱の場合には、高導電性金属薄板W3は銅製又はアルミニウム製の円板でよい。更にまた、以上の実施形態では高導電性金属薄板W3が存在することの作用、効果について述べたが、高導電性金属薄板W3が溶接時の加圧力で曲がり難い程度の厚みである100μm程度以上の厚みを有していれば、第1、第2の被溶接物W1、W2のプロジェクションP1、P2の頂部の位置合わせが多少ずれていたとしても、何らの支障を起こすことなく簡便に拡散接合を行うことができるという効果を奏する。このことは実際の製造ラインではプロジェクションP1、P2の頂部同士の厳密な位置合わせとその状態を厳密に保持しながら溶接を行わなくてもよいという面で非常に有利である。
【0043】
[実施形態6]
図5〜図6によって本発明に係るプロジェクション溶接方法の実施形態6について説明する。図5〜図6において、図1〜図4で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。図5は通電前における第1の高導電性被溶接物W1と第2の高導電性被溶接W2の一部分の断面とそれらに挟まれた高導電性金属薄板W3の拡散接合時における変形などを説明するために拡大して示す図である。実施形態6は、実施形態2における第1の高導電性被溶接物W1と第2の高導電性被溶接W2にそれぞれ形成されたプロジェクションP1、P2は円環状、つまりリング状のプロジェクションであって、高導電性金属薄板W3が曲がり易い厚み、例えば数μmないし10μm程度の肉厚の銅箔wを4、5枚ないしは数十枚重ねたものからなる場合について説明する。ここでは高導電性金属箔wを銅箔として説明するが、アルミニウムなど他の高導電性金属箔であっても勿論よい。前述したように、プロジェクションP1、P2は通常のリングプロジェクションでよい。
【0044】
図5及び図6に示す第1の高導電性被溶接物W1は、リング状のプロジェクションP1に囲まれた部分に凹所V1を有するとともに、リング状のプロジェクションP1の外側近傍に円環状の凹所V2を有する。凹所V1は、リング状のプロジェクションP1の直径が小さい場合には小円筒状の凹所であり、リング状のプロジェクションP1の直径が大きい場合にはプロジェクションP1の内側に沿った円環状の凹所であってもよい。第2の高導電性被溶接物W2も、リング状のプロジェクションP2に囲まれた部分に凹所V1と同様な凹所V3を有するとともに、リング状のプロジェクションP2の周囲に沿って凹所V2と同様な円環状の凹所V4を有する。
【0045】
拡散接合に当たって、高導電性金属薄板W3の最上位に位置する銅箔wの上面に第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1の頂面が当接され、高導電性金属薄板W3の最下位に位置する銅箔wの下面に第2の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP2の頂面が当接される。その状態で図示しない加圧機構によって溶接電極1、2の間に加圧力がかけられ、通常は加圧力が増大する過程で所定の値を通過するとき、急峻に立上る接合電流が溶接電極1、2間を流れる。
【0046】
この接合電流が通電するときには、高導電性金属薄板W3の最上位に位置する銅箔wの上面と第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1の頂面との間には前記加圧力が印加されると共に、高導電性金属薄板W3の最下位に位置する銅箔wの下面と第2の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP2の頂面との間には前記加圧力が印加されている。このときリング状のプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶそれぞれ銅箔w間にもほぼ所定の前記加圧力が加えられるので、リング状のプロジェクションP1、P2を流れる接合電流の多くはリング状のプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶそれぞれの銅箔wの部分に集中して流れる。したがって、リング状のプロジェクションP1とP2の頂面は、通電前の加圧力をかけているときに圧潰せず、かつ所望の接合強度が得られる最低限の電流密度の接合電流を流すことのできる幅の狭い円環状であることが望ましい。
【0047】
前述したように、リング状のプロジェクションP1、P2を流れる接合電流の多くがリング状のプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶそれぞれの銅箔wの部分に集中して流れるとき、第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1の頂面と最上位に位置する銅箔wの上面との間の接触抵抗など、隣り合う銅箔w同士の当接面にそれぞれの接触抵抗など、及び最下位に位置する銅箔wの下面と第2の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP2の頂面との接触抵抗などによって発熱する。そしてこれら各部分の発熱によって、拡散接合が行われる現象については前記実施形態と同様であるので詳しく説明しないが、高導電性金属薄板W3が複数枚銅箔wを重ねたものからなるときには、拡散接合時の発熱によって、図5において破線で示すように、リング状のプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶそれぞれの銅箔wの部分に近い箇所で盛り上がり、この盛り上がりが接合強度に悪影響を与え、接合強度を低下させることを本発明者はつきとめた。
【0048】
この点について詳述すると共に、その対策として銅箔wに設けた凹所V1〜V4について説明する。この拡散接合は、第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1の塑性流動化とプロジェクションP1に当接する最上位に位置する銅箔wの部分の塑性流動化、リング状のプロジェクションP1とP2とを最短距離で結ぶそれぞれの銅箔wの部分の塑性流動化、及び第2の高導電性被溶接物W2のリング状のプロジェクションP2の塑性流動化とプロジェクションP2に当接する最下位に位置する銅箔wの部分の塑性流動化によって行われる。塑性流動化した接合部分は上下からの加圧力によって、銅箔wの幅方向(図5の左右方向)に拡がろうとする。この拡がろうとする左右方向の力によって接合部分近傍の塑性流動化していない部分が変形して盛り上がる。そして、接合部分近傍の塑性流動化していない部分が変形して盛り上がった分だけ接合部分の銅箔wが沈み込むことになる。
【0049】
特に、リング状のプロジェクションP1とP2に囲まれた銅箔wの部分では、リング状のプロジェクションP1とP2にかけられている加圧力によって、塑性流動化した銅箔wの接合部分は放射内方向に伸びるので、リング状のプロジェクションP1とP2に囲まれた塑性流動化しない部分は盛り上がる。リング状のプロジェクションP1とP2の径が小さいときには、リング状のプロジェクションP1とP2に囲まれた塑性流動化しない部分は小さな紡錘状に盛り上がる。曲がり易い薄い肉厚の銅箔wは接合前のプロジェクションの高さ程度又はそれよりも盛り上がる場合もあり、放射外方向に比べて高く盛り上がる傾向がある。この小紡錘状の盛り上がりは、重ねられた銅箔wのうち、内側に位置する銅箔wよりも外側に位置する銅箔wほど盛り上がりが大きくなることが確認されているが、図5の破線で示すように、積み重ねられた銅箔wの内、中ほどから上側に位置する銅箔wは上側に盛り上がり、中ほどから下側に位置する銅箔wは下側に盛り上がる。図5に示すリング状のプロジェクションP1とP2は拡散接合前のものであり、重ねられた銅箔wの前記盛り上がりが生じなければ、接合電流の通電によってリング状のプロジェクションP1とP2が塑性流動化するのに伴い、加圧力によってリング状のプロジェクションP1とP2は横方向に拡がって当然に低くなり、拡散接合の完了時にはほとんど平面近くまで低くなる。
【0050】
しかし、図5の破線で示すように、拡散接合が進むにつれて上側に位置する銅箔wが上側に盛り上がると共に、下側に位置する銅箔wが下側に盛り上がり、また、接合部分が沈み込むと、前記盛り上がりが邪魔をして拡散接合の途中から塑性流動化を始めたリング状のプロジェクションP1とP2にかかる加圧力が不十分になり、所望の接合強度を得ることができない。したがって、第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1に囲まれた内側に形成れている凹所V1は、最上位に位置する銅箔wにおけるリング状のプロジェクションP1に囲まれた部分の紡錘状の小さな盛り上がりの高さ程度の深さを有する。その深さは銅箔wの肉厚と積み重ねる枚数、及びリング状のプロジェクションP1の直径などによって異なる。従来の抵抗溶接や拡散接合にあっても、リング状のプロジェクションP1とP2の溶融又は塑性流動化した金属を収容する溝などを設ける場合があったが、実施形態6の凹所V1は従来の溝に比べて容積(容量)が大きい。なお、リング状のプロジェクションP1とP2の径が大きいときには、銅箔wにおけるリング状のプロジェクションP1とP2の内周に沿った部分がリング状に盛り上がることが確認されている。このリング状の盛り上がりも同様に接合強度を低下させる一因となる。したがって、この場合には凹所V1は銅箔wにおけるリング状のプロジェクションP1とP2の内周に沿って形成されたリング状の凹所でよい。
【0051】
凹所V2は第1の高導電性被溶接物W1のリング状のプロジェクションP1の外側周囲に沿って形成されたリング状の凹所であり、最上位に位置する銅箔wにおけるリング状のプロジェクションP1の外側近傍部分の盛り上がりの高さ程度の深さを有する。リング状のプロジェクションP1の外側近傍部分の盛り上がりの高さは、塑性流動化した拡散接合部が放射外方向に伸びるときに、その拡散接合部以外は塑性流動化しなので当然に伸びることは無く、したがって、塑性流動化した拡散接合部が放射外方向に伸びる力によって接合部分の周辺、つまりリング状のプロジェクションP1の外側近傍部分が盛り上がる。この盛り上がりも、接合強度に悪影響を及ぼすほどの盛り上がりを生じる場合が多い。この場合には、凹所V1ほど深くなくても良いが、やはりその盛り上がりを受け入れることができる凹所V2を備えている方が望ましい。第2の高導電性被溶接物W2におけるリング状のプロジェクションP2に囲まれた部分に形成れた凹所V3は凹所V1と同様であるので説明を省略する。第2の高導電性被溶接物W2のリング状におけるプロジェクションP2の外側周囲に沿って形成されたリング状の凹所V4は凹所V2と同様でよいので説明を省略する。
【0052】
この実施形態6では、拡散接合時に塑性流動化したリング状のプロジェクションP1、P2の金属材料も、加圧力によって銅箔wの前記盛り上がりと一緒に凹所V1〜V4に収容されるので、拡散接合面はリング状のプロジェクションP1、P2の根元面域、つまり第1の高導電性被溶接物W1の下側平面、第2の高導電性被溶接物W2の上側平面にほぼあるので、拡散接合面積は凹所V1〜V4が存在しない場合に比べて大きな接合面積なり、接合強度をより向上させることができる。したがって、実施形態6では拡散接合工程の最終段階においても、銅箔wの変形による盛り上がりが凹所V1〜V4に収容されるので、その盛り上がりに邪魔されること無く所定の加圧力が拡散接合工程の最終まで塑性流動化したプロジェクションP1、P2部分と積み重ねられた銅箔wの拡散接合部とに印加されるので、接合強度が低下することも無い。なお、当然のことであるが、凹所V1〜V4部分においては接合強度に寄与していない。
【0053】
実施形態6における以上の説明では、プロジェクションP1、P2をリングプロジェクションとして説明したが、プロジェクションP1、P2が一点状又は多点状のものであってもプロジェクションP1、P2の近傍の周囲の銅箔wが前述の理由から円環状に盛り上がることがあるので、その盛り上がりを受け入れる円環状の凹所を第1、第2の高導電性被溶接物W1、W2におけるプロジェクションP1、P2の近傍の周囲に沿って設けるのが望ましい。また、曲がり易い厚みの金属箔に比べて肉厚の厚い高導電性金属薄板W3を1枚又は数枚挟んで拡散接合する場合にも、プロジェクションP1、P2がリングプロジェクションであって、接合電流が10ミリ秒程度以下でピーク値近傍まで急峻に立上る電流の場合には、リングプロジェクションに囲まれた内側部分の高導電性金属薄板W3が急激に変形して盛り上がる場合があるので、やはり前記凹所V1、V3に相当する凹所を第1、第2の高導電性被溶接物W1、W2に備えるのが望ましい。
【0054】
このように、プロジェクションP1、P2がリングプロジェクションの場合にはそれらの内側、外側の双方に凹所を備えるのが好ましいが、図7(A)に示すようにリング状のプロジェクションP1、P2の内側だけに凹所V1、V3をそれぞれ備えるか、あるいは図7(B)に示すようにリング状のプロジェクションP1、P2の外側だけに凹所V2、V4をそれぞれ備えるだけでもよい。なお、以上の実施形態ではいずれも拡散接合面にスズ膜のような低融点金属膜を形成しなかったが、所望の接合強度を得やすいといった面からは、プロジェクションP1、P2の先端面及びそれらプロジェクションP1、P2に当接する高導電性金属薄板W3の面域のいずれか一方又は双方に低融点金属膜をあらかじめ形成しておいても構わない。
【0055】
[プロジェクション溶接装置の好ましい一例]
次に、プロジェクションPが形成された銅部材などの高導電性被溶接物である第1の被溶接物W1と銅部材などの高導電性被溶接物である第2の被溶接物W2とのプロジェクション溶接(拡散接合)を実現するのに好適なコンデンサ式の抵抗溶接装置の一例を図5によって簡潔に説明する。図8において、図1〜図7で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。床などに固定されている支持機構3には、シリンダ装置などからなる加圧機構4が取り付けられ、加圧機構4の先端部には可動ブロック5が取り付けられている。スプリング又は電磁加圧装置のような加圧補助部材6が可動ブロック5と支持部材7との間に備えられ、溶接電極1の加圧応答を向上させる補助的な役割を行っている。
【0056】
高導電性部材同士、特に銅部材又はアルミニウム部材の抵抗溶接ではこの加圧補助部材6の働きは大きい。ここで、支持部材7は直接又は間接的に加圧補助部材6の下端部に結合され、給電部としても作用する銅のような導電性の良好な金属材料からなる。上部側の溶接電極1は支持部材7に支承されており、溶接電極1と向かい合った位置には下部側の溶接電極2が配置されている。加圧補助部材6の伸縮の影響を受けない高さに位置する可動ブロック5にはL字形の中間接続部材8が固定されている。支持部材7とL字形中間接続部材8との間を接続する撓み易い第1のフレキシブル導電部材9が備えられ、L字形の中間接続部材8と一方の給電導体10との間は第2のフレキシブル導電部材11によって接続されている。溶接電極1と溶接電極2とは、例えば銅合金からなる。
【0057】
給電導体10と、溶接電極2に接続された他方の給電導体12との間に溶接トランス13の2次巻線N2が接続され、これに磁気的に結合された1次巻線N1にはインバータ回路又は半導体スイッチ回路のような放電回路14が接続される。放電回路14にはエネルギー蓄積用コンデンサ15とそのコンデンサを充電する充電回路16とが接続されている。抵抗溶接にあっては、溶接に寄与する溶接電流のほとんどは立ち上がりからピーク値近傍までの電流であるので、実施形態5の抵抗溶接では溶接電流がピーク値近傍まで立ち上がる時間が10ms程度以下であり、7ms以下であることが好ましいことについては既に述べたが、このプロジェクション溶接装置はこのようなパルス幅の狭い急峻なパルス状電流が銅部材と銅部材との間に流れることができるような構成になっている。そして、この構造では溶接電極1は僅かな外力で上下方向に上下動できる支持部材7に支えられていると同時に、即応性の高い弾性力を与えることができる加圧補助部材6に結合されているので、第1、第2の被溶接物W1、W2又は高導電性金属薄板W3に形成されたプロジェクションとそれらの当接部分が塑性流動したときに生じる溶接電極1と溶接電極2との間の微妙な加圧力の変化に対して、溶接電極1が即応することができる。なお、記号17〜19は3相交流入力端子を示す。
【0058】
次に、このプロジェクション溶接装置の動作について簡単に説明する。例えば、図1に示したように溶接電極1と2との間に第1、第2の被溶接物W1、W2及び高導電性金属薄板W3が配置されると、加圧機構4が下方向に動作し、これに伴い、可動ブロック5、加圧補助部材6、支持部材7及び溶接電極1からなる上部溶接ヘッド全体が下降し、溶接電極1が第1、第2の被溶接物W1、W2及び高導電性金属薄板W3に所定の加圧力を加える。この所定の加圧力を加えている途中、あるいは加圧力がほぼ一定になった段階で、放電回路14がオンして、充電回路16により既にエネルギー蓄積用コンデンサ15に充電されている電荷を、溶接トランス13の1次巻線N1に放出する。これに伴い、1次巻線N1に比べて巻数が大幅に少ない1ターン又2ターン程度の2次巻線N2に大きな電流が発生し、溶接電極1と溶接電極2とその間に挟まれている第1、第2の被溶接物W1、W2及び高導電性金属薄板W3を介して急峻で大きなパルス状溶接電流が流れる。
【0059】
溶接時に印加される前記加圧力によって第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と第2の被溶接物W2のプロジェクションP2は変形しても圧潰することはないから、前述のようなパルス状溶接電流は、前述したように第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板W3との当接部、及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板W3との当接部に集中して短時間流れ、それら当接部が塑性流動化する。この塑性流動の過程で、加圧補助部材6は加圧機構4の下方向の加圧力を常に弾性的に受けているので、第1の被溶接物W1のプロジェクションP1と高導電性金属薄板Wとの当接部、及び第2の被溶接物W2のプロジェクションP2と高導電性金属薄板Wとの当接部が塑性流動化する過程で、それら当接部が軟化するのに伴い常に当接部の塑性流動化した銅材料を互いに押し込む。
【0060】
ここでは、スプリング又は電磁加圧装置のような加圧補助部材6による弾力性のある加圧力を弾性的加圧力という。つまり、この溶接装置ではその弾性的加圧力を加圧機構4による加圧力に重畳してなる加圧力を溶接電極間に加え、即応できる機構を備えることによって、第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2と高導電性金属薄板W3との塑性流動による沈み込みに対しても極めて応答の速い加圧を与えることができ、この加圧補助部材6の弾性的加圧力によって溶接電極1の応答速度が速ければ速いほど、パルス幅の短いパルス状溶接電流を、つまり短時間に電流エネルギーを集中して第1の被溶接物W1と第2の被溶接物W2と高導電性金属薄板W3との間に流すことがでる。したがって、銅部材又はアルミニウム部材のような熱伝導の極めて良好な高導電性金属材料でも、好ましい状態に塑性流動化させることができ、このことが高導電性金属材料でも簡単に満足のいくプロジェクション溶接を行える一つの大きな要因になっている。
【0061】
なお、図8に示したプロジェクション溶接装置では、図1を用いて説明した実施形態1の溶接方法を行った例について述べたが、図2〜図7を用いて説明した実施形態2〜実施形態6に係るプロジェクション溶接も、溶接電極など一部分を変更することによって同様に行うことができる。図8に示した抵抗溶接装置は一例であって、短時間で大電流のパルス状電流を通電でき、被溶接物の塑性流動化に伴う溶接電極間の圧力変化に即応できる、つまり弾性的加圧力を加えることができるものであるならば、他の構成のものであっても勿論よい。また、上記実施形態3〜5において、プロジェクションP1、P2は、1点又は多点のプロジェクション、あるいは、一般的な形状のリングプロジェクションであってもよく、プロジェクションの形状には制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態1に係るプロジェクション溶接方法を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態2、実施形態3に係るプロジェクション溶接方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態4に係るプロジェクション溶接方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態5に係るプロジェクション溶接方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態6に係るプロジェクション溶接方法に用いられる被溶接物の一例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態6に係るプロジェクション溶接方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態6に係るプロジェクション溶接方法で溶接される被溶接物の一例を示している。
【図8】本発明のプロジェクション溶接方法を実現するためのプロジェクション溶接装置の好ましい一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
W1・・・第1の被溶接物(高導電性被溶接物)
W2・・・第2の被溶接物(高導電性被溶接物)
W3・・・高導電性金属薄板
P1〜P4・・・プロジェクション
V1〜V4・・・凹所
1、2・・・溶接電極
3・・・支持機構
4・・・加圧機構
5・・・可動ブロック
6・・・加圧補助部材
7・・・支持部材
8・・・L字形の中間接続部材
9・・・第1のフレキシブル導電部材
10・・・給電導体
11・・・第2のフレキシブル導電部材
12・・・給電導体
13・・・溶接トランス
14・・・放電回路
15・・・エネルギー蓄積用コンデンサ
16・・・充電回路
17〜19・・・3相交流入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高導電性被溶接物と第2の高導電性被溶接物との間に溶接電流を流して抵抗溶接を行う高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法において、
前記第1の高導電性被溶接物及び前記第2の高導電性被溶接物はそれぞれ第1のプロジェクション及び第2のプロジェクションを有し、
前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションとが向かい合って対向するように前記第1の高導電性被溶接物と前記第2の高導電性被溶接物とを向かい合わせ、前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションとの間に、前記第1の高導電性被溶接物又は前記第2の高導電性被溶接物の金属材料と同一の金属材料からなる前記第3の高導電性被溶接物として作用する高導電性金属薄板を介在させ、
前記第1のプロジェクションを前記高導電性金属薄板の一方の面に、前記第2のプロジェクションを前記高導電性金属薄板の他方の面にそれぞれ当って接触させ、
前記第1の高導電性被溶接物と前記第2の高導電性被溶接物との間に、弾性的加圧力を加えた状態でパルス状溶接電流を通電し、前記第1のプロジェクション、前記第2のプロジェクション及び前記高導電性金属薄板とを拡散接合することを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記高導電性金属薄板は、第1の高導電性被溶接物又は第2の高導電性被溶接物の厚み以下の厚みであることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記高導電性金属薄板は、複数枚重ねられたものからなることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記第1のプロジェクション及び前記第2のプロジェクションは、リング状のプロジェクションであることを特徴とする高導電性被溶接物のプロジェクション溶接方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−137287(P2010−137287A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57659(P2010−57659)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2007−166765(P2007−166765)の分割
【原出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】