説明

高温フィルム・コンデンサ

【課題】高温フィルム・コンデンサ を提供する。
【解決手段】コンデンサは、基板層と、該基板層の上に配置された第1の電極層と、該電極層の上に配置された第1の誘電体層とを有する。誘電体層は、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有する。別の実施形態では、コンデンサは、三酢酸セルロースを有する基板層を含み、該基板層は、約300psi以上の引張強さを持つ。第1の電極層が前記基板層の上に配置され、また第1の誘電体層が前記電極層の上に配置されている。該誘電体層は、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関する様々な実施形態を含む。より具体的に述べると、本発明は、フィルム・コンデンサに関する様々な実施形態を含む。
【背景技術】
【0002】
フィルム・コンデンサは、典型的には、変位させた金属化ポリマー・フィルムを共巻装することによって構成される。ポリマー・フィルムは、フィルムの適切な巻装を保証するために充分に延性でなければならず、弱い又は脆いフィルム材料は使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6762237号
【特許文献2】米国特許第5638251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電子機器産業において、並びに自動車産業、航空機産業、石油及びガス井戸探査においても、弱い又は脆いポリマーを有することができ、しかも高い誘電率、高い破壊強度及び良好な機械的強度を示すコンデンサが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、コンデンサは、基板層と、該基板層の上に配置された第1の電極層と、該電極層の上に配置された第1の誘電体層とを有する。誘電体層は、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有する。
【0006】
別の実施形態では、コンデンサは、三酢酸セルロースを有する基板層を含み、該基板層は、約300psi以上の引張強さを持つ。第1の電極層が前記基板層の上に配置され、また第1の誘電体層が前記電極層の上に配置されている。該誘電体層は、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従ったフィルム・コンデンサの断面図である。
【図2】図2は、本発明の代替実施形態に従ったフィルム・コンデンサの断面図である。
【図3】図3は、本発明の代替実施形態に従った多層フィルム・コンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本書では、誘電特性及び機械的特性を改善したフィルム・コンデンサを開示する。本書で考慮する誘電特性の幾つかは、誘電率、破壊電圧及び損失係数である。誘電体の「誘電率」は、電極の間及び周囲の空間が誘電体で充填されているコンデンサの静電容量と、真空内での同じ電極構成の静電容量との比である。本書で用いる「絶縁破壊電圧」とは、印加された交流又は直流電圧の下での材料の絶縁破壊抵抗の測度を表す。破壊直前の印加電圧を誘電体の厚さで除算することにより破壊電圧が求められる。それは、kV/mmで測定される。理想的な誘電体では、電圧波と電流波とは位相が90度ずれる。誘電体の効率が100%よりも低くなる実際の誘電体では、電流波は進行方向に電圧よりも遅れ始める。この結果、誘電体内において比例的に電力損が生じる。電流波が電圧との90度の位相ずれから偏移する範囲は、誘電損角として定義される。この損失角の正接は、損失係数又は散逸率として知られている。
【0009】
図1について説明すると、基板層14の上に配置され且つ該基板層14によって支持された第1の電極層12を有するフィルム・コンデンサ10が示されている。一実施形態では、基板層14はポリマー・フィルムであり、該基板層上に配置された第1の電極層12は金属化ポリマー・フィルムを形成する。基板層14及び第1の電極層12で構成された金属化ポリマー・フィルムは、堆積すべき1つ以上の誘電体層のために充分な機械的強度及び可撓性を与えるための基板として使用される。金属化ポリマー・フィルム基板はまた、コンデンサを形成する様々な処理段階中に誘電体層(1つ又は複数)に対して機械的支持を提供する。基板層14を構成することのできる適当な材料としては、限定するものではないが、ポリエーテルイミド、三酢酸セルロース、ポリフェニル・スルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、或いはそれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、基板層14は三酢酸セルロースで構成される。
【0010】
基板層14の引張強さは、基板層の可撓性及び延性についての1つの尺度である。基板層14は約3000psi以上の引張強さを持つことが望ましい。別の実施形態では、基板層14は約5000psi以上の引張強さを持つ。別の実施形態では、基板層14は約7000psi以上の引張強さを持つ。更に別の実施形態では、基板層14は約9000psi以上の引張強さを持つ。
【0011】
基板層14の伸びは、好ましくは、約2パーセント以上である。一実施形態では、基板層14の伸びは約5パーセント以上である。別の実施形態では、基板層14の伸びは約10パーセント以上である。更に別の実施形態では、基板層14の伸びは約50パーセント以上である。
【0012】
第1の誘電体層16が第1の電極層12の上に配置される。誘電体層16は、限定するものではないが、溶液流延法、回転被覆法、浸漬被覆法、又はグラビア印刷被覆法を含む任意の公知の方法によって、電極層12上に堆積することができる。グラビア印刷被覆処理は、彫刻ロールを被覆用浴の中に走らせることによるものであり、これによりロールの彫り込み点又は線が被覆材料で充たされる。ロール上の過剰な被覆材料はドクター・ブレードによって拭い去り、次いで本書で述べる金属化ポリマー坦体フィルムのような基板上に被覆材料を堆積させる。被覆材料は、適切な溶媒の中で溶解する誘電体材料で構成することができる。
【0013】
電極層12は、熱的蒸着、物理的蒸着又はスパッタリング、或いは化学的蒸着によって、基板層14上に堆積させることができる。希望により、第1の電極層12は基板層14の第1の面18上に堆積させることができ、また第2の電極層22を基板層の第2の反対側の面24上に堆積させることができる。基板層14の側面26もまた金属化して、図1に示されるように基板層14が基本的に単一の金属化層によって取り囲まれるようにすることができる。基板層14の側面26に堆積される金属化層は、電極層12及び22を形成するのと同じ材料で構成される。基板層14上に電極層(1つ又は複数)12及び22を堆積した後、第1の誘電体層16を前に述べたように第1の電極層上に堆積することができる。
【0014】
図2は、一実施形態のフィルム・コンデンサ20を例示する。この場合、第1の電極層12が基板層14の第1の面18上に堆積されている。基板層14及び第1の電極層12で構成された金属化ポリマー・フィルムは、堆積すべき1つ以上の誘電体層のために充分な機械的強度及び可撓性を与えるための基板として使用される。金属化ポリマー・フィルム基板はまた、コンデンサを形成する様々な処理段階中に誘電体層(1つ又は複数)に対して機械的支持を提供する。次いで、第1の誘電体層16が第1の電極層12の上に堆積され、この場合、第1の電極層は基板層14と第1の誘電体層との間に配置される。第2の電極層22が第1の誘電体層16の上に堆積され、この場合、第1の誘電体層は第1の電極層12と第2の電極層22との間に配置される。
【0015】
希望により、図3に例示されているように、追加の電極及び誘電体層を付け加えて、多層コンデンサ・フィルム30を形成することができる。例えば、第2の誘電体層32が第2の電極層22上に堆積され、この場合、第2の電極層は第1の誘電体層16と第2の誘電体層32との間に配置される。第3の電極層34が第2の誘電体層32上に堆積され、これにより第2の誘電体層は第2の電極層22と第3の電極層34との間に配置される。また、追加の誘電体層36、38及び42並びに電極層44、46及び48がこの代替態様で形成され、この場合、各々の誘電体層は2つの電極層の間に配置される。これらの誘電体層及び電極層は前に述べたようにして堆積される。
【0016】
コンデンサ接続のためのリード電極として、図3に示されているように、終端金属化層52をコンデンサ・フィルム30の側面に堆積すべきである。金属化層52を堆積するための適当な方法には、プラズマ溶射技術、及び電極を堆積するのに適した本書に述べる方法が含まれる。
【0017】
誘電体層は、典型的には、約0.1ミクロン〜約20ミクロンの厚さを持つ。一実施形態では、誘電体層は約5ミクロン〜約15ミクロンの厚さを持つ。本発明の更に別の実施形態では、誘電体層は約10ミクロン〜約15ミクロンの厚さを持つ。
【0018】
電極層は、典型的には、約20オングストローム〜約300オングストロームの厚さを持つ。一実施形態では、電極層は約30オングストローム〜約150オングストロームの厚さを持つ。本発明の更に別の実施形態では、電極層は約50オングストローム〜約100オングストロームの厚さを持つ。
【0019】
基板層14は約0.1ミクロン〜約15ミクロンの厚さを持つ。一実施形態では、基板層は約1ミクロン〜約10ミクロンの厚さを持つ。本発明の更に別の実施形態では、基板層は約3ミクロン〜約5ミクロンの厚さを持つ。
【0020】
本発明の実施形態では、電極層又は金属化層は、アルミニウム、銅、亜鉛、又はそれらの組合せで構成することができる。好ましい実施形態では、電極層は、アルミニウム、銅又は亜鉛箔の内の少なくとも1種を有する。より好ましくは、電極層は、アルミニウム、又はアルミニウム亜鉛合金を有する。別の好ましい実施形態では、金属化層はアルミニウムで構成される。
【0021】
一実施形態では、誘電体層は、高い誘電率及び破壊強度を持つ弱く且つ脆いポリマー材料を含む。本書で用いられる「ポリマー材料」とは、別段の指示がなければ、誘電体層中に存在するポリマー材料を表すだけである。ポリマー材料及び誘電体層は、典型的には、少なくとも100キロボルト/ミリメートルである破壊電圧を持つ。一実施形態では、ポリマー材料及び誘電体層は、少なくとも300キロボルト/ミリメートルである破壊電圧を持つ。別の実施形態では、ポリマー材料及び誘電体層は、少なくとも450キロボルト/ミリメートルである破壊電圧を持つ。別の実施形態では、ポリマー材料及び誘電体層は、少なくとも600キロボルト/ミリメートルである破壊電圧を持つ。
【0022】
ポリマー材料は、多種多様な熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーの配合物、熱硬化性ポリマーの配合物、或いは熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとの配合物から選択されたポリマーを有することができる。ポリマー材料は、ホモポリマー、(スター・ブロック・コポリマー、グラフト・コポリマー、交互ブロック・コポリマー又はランダム・コポリマーのような)コポリマー、イオノマー、デンドリマー、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(a homopolymer, a copolymer such as a star block copolymer, a graft copolymer, an alternating block copolymer or a random copolymer, ionomer, dendrimer, or a combination comprising at least one of the foregoing)を有することができる。ポリマー材料はまた、ポリマー、コポリマー又は同様なものの配合物、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(a blend of polymers, copolymers, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)とすることができる。
【0023】
ポリマー材料中に用いることができる熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアセタール、ポリアクリル酸樹脂、ポリカーボネート、ポリアルキド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアラミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、エポキシ、フェノール樹脂、シリコーン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン・サルファイド樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテル・ケトン・ケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジンオフェノサイアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリットイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニル・エーテル、ポリビニル・チオエーテル、ポリビニル・ケトン、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニル・ニトリル、ポリビニル・エステル、ポリスルホン酸塩、多硫化物、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリ弗化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリフェニレン・エーテル、シアノエチル・セルロース、三酢酸セルロース又は同様なもの、或いは上記の熱可塑性ポリマーの内の少なくとも1種を含む組合せ(polyacetals, polyacrylics, polycarbonates, polyalkyds, polystyrenes, polyolefins, polyesters, polyamides, polyaramides, polyamideimides, polyarylates, polyurethanes, epoxies, phenolics, silicones, polyarylsulfones, polyethersulfones, polyphenylene sulfides, polysulfones, polyimides, polyetherimides, polytetrafluoroethylenes, polyetherketones, polyether etherketones, polyether ketone ketones, polybenzoxazoles, polyoxadiazoles, polybenzothiazinophenothiazines, polybenzothiazoles, polypyrazinoquinoxalines, polypyromellitimides, polyquinoxalines, polybenzimidazoles, polyoxindoles, polyoxoisoindolines, polydioxoisoindolines, polytriazines, polypyridazines, polypiperazines, polypyridines, polypiperidines, polytriazoles, polypyrazoles, polycarboranes, polyoxabicyclononanes, polydibenzofurans, polyphthalides, polyacetals, polyanhydrides, polyvinyl ethers, polyvinyl thioethers, polyvinyl ketones, polyvinyl halides, polyvinyl nitriles, polyvinyl esters, polysulfonates, polysulfides, polythioesters, polysulfones, polysulfonamides, polyureas, polyphosphazenes, polysilazanes, polypropylenes, polyethylene terephthalates, polyvinylidene fluorides, polysiloxanes, polyphenylene ether, cyanoethyl cellulose, cellulose triacetate, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing thermoplastic polymers)が挙げられる。
【0024】
模範的な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエーテルイミド、ポリ弗化ビニリデン、ポリ弗化ビニリジン−三弗化エチレンP(VDF−TrFE)、ポリビニリデン−テトラフルオロエチレン・コポリマーP(VDF−TFE)、及びポリビニリジン・ヘキサフルオロプロピレン・コポリマーP(VDF−HFP)、エポキシ、ポリエステル、ポリイミド、ポリアリレート、ポリフェニルスルホン、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアラミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン・エーテル、シアノエチル・セルロース、シアノエチル・プルラン、三酢酸セルロース又は同様なもの、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(polyetherimide, polyvinylidene fluoride, polyvinylidine fluoride-trifluoroethylene P(VDF-TrFE), polyvinylidene-tetrafluoroethylene copolymers P(VDF-TFE), and polyvinylidine hexafluoropropylene copolymers P(VDF-HFP), epoxy, polyester, polyimide, polyarylate, polyphenylsulfone, polystyrene, polyethersulfone, polyamideimide, polyurethane, polycarbonate, polyetheretherketone, polyphenylene ether, cyanoethyl cellulose, cyanoethyl pullulan, cellulose triacetate, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。
【0025】
熱可塑性ポリマーの配合物の例としては、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン、ポリフェニレン・エーテル/ポリスチレン、ポリフェニレン・エーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレン・エーテル/ポリオレフィン、セルロース系シアノ樹脂/三酢酸セルロース、シアノエチル・プルラン/ポリ弗化ビニリジン又は同様なもの、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(acrylonitrile-butadiene-styrene/nylon, polycarbonate/acrylonitrile-butadiene-styrene, polyphenylene ether/polystyrene, polyphenylene ether/polyamide, polycarbonate/polyester, polyphenylene ether/polyolefin, cellulosic cyanoresin/cellulose triacetate, cyanoethyl pullulan/ polyvinylidine fluoride or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。好ましい実施形態では、ポリマー材料はセルロース系シアノ樹脂である。
【0026】
ポリマー材料中に用いることができる熱硬化性ポリマーの例としては、次の樹脂、すなわち、エポキシ/アミン、エポキシ/無水物、イソシアネート/アミン、イソシアネート/アルコール、不飽和ポリエステル、ビニル・エステル、不飽和ポリエステル及びビニル・エステル配合物、不飽和ポリエステル/ウレタン混成樹脂、ポリウレタン−ウレア、熱硬化性ポリフェニレン・エーテル、シリコーン、フルオロシリコーン、ベンゾイミダゾール、シアン酸エステル、ビスマレイミド、反応性ジシクロペンタジェン樹脂、反応性ポリアミド又は同様なもの、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(epoxy/amine, epoxy/anhydride, isocyanate/amine, isocyanate/alcohol, unsaturated polyesters, vinyl esters, unsaturated polyester and vinyl ester blends, unsaturated polyester/urethane hybrid resins, polyurethane-ureas, thermosetting polyphenylene ether, silicone, fluorosilicone, benzimidazoles, cyanate esters, bismaleimides, reactive dicyclopentadiene resin, reactive polyamides, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。
【0027】
一実施形態では、適当な熱硬化性ポリマーには、エネルギ活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物から作ることのできる熱硬化性ポリマーが含まれる。例として、ウレタン・ポリエステルのようなポリウレタン、シリコーン・ポリマー、フェノール性ポリマー、アミノ・ポリマー、エポキシ・ポリマー、ビスマレイミド、ポリイミド、及びフラン・ポリマー(urethane polyesters, silicone polymers, phenolic polymers, amino polymers, epoxy polymers, bismaleimides, polyimides, and furan polymers)が挙げられる。エネルギ活性化可能な熱硬化性プレポリマーは、ポリマー前駆物質及び硬化剤を有することができる。ポリマー前駆物質は熱で活性化することができ、触媒の必要性を無くす。選択される硬化剤は、熱硬化性ポリマーを形成するために必要とされるエネルギ源の種類を決定するだけでなく、熱硬化性ポリマーの得られる特性に影響を及ぼすことがある。硬化剤の例としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、過酸化物、リュイス酸又は同様なもの、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せ(aliphatic amines, aromatic amines, acid anhydrides, peroxides, lewis acids or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。エネルギ活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物は、スループットを高くし且つ温度を低くすることを含めて、押出し成形を容易にするために該組成物の粘性を低くするための溶媒又は処理助剤を含むことができる。溶媒は、架橋結合反応を遅らせるのに役立てることができ、また重合中に又は重合後に部分的に又は完全に蒸発させることができる。溶媒はまた、反応性希釈剤として作用して、硬化前は粘性助剤として作用し且つ硬化処理中は反応して最終的なポリマーを生じさせることができる。
【0028】
ポリマー材料は約120℃以上のガラス転移又は軟化温度を持つことが望ましい。一実施形態では、ポリマー材料は約150℃以上のガラス転移又は軟化温度を持つことが望ましい。別の実施形態では、ポリマー材料は約200℃以上のガラス転移又は軟化温度を持つことが望ましい。更に別の実施形態では、ポリマー材料は約260℃以上のガラス転移又は軟化温度を持つことが望ましい。
【0029】
一実施形態では、ポリマー材料は誘電体層の全重量の内の約5〜約99.999重量%の割合で存在する。別の実施形態では、ポリマー材料は全重量の内の約10重量%〜約99.99重量%の割合で存在する。別の実施形態では、ポリマー材料は全重量の内の約30重量%〜約99.5重量%の割合で存在する。別の実施形態では、ポリマー材料は全重量の内の約50重量%〜約99.3重量%の割合で存在する。
【0030】
一実施形態では、ポリマー材料の伸びは約2パーセント以下である。一実施形態では、ポリマー材料の伸びは約5パーセント以下である。別の実施形態では、ポリマー材料の伸びは約10パーセント以下である。別の実施形態では、ポリマー材料の伸びは約50パーセント以下である。更に別の実施形態では、ポリマー材料の伸びは約100パーセント以下である。
【0031】
ポリマー材料は、随意選択による任意の所望の有機充填材と、一般に幾つかの異なる方法で、例えば、これに限定されないが、配合、融解混合、溶液混合又は同様な方法で、或いは上記方法の内の少なくとも1つを含む組合せで組み合わされる。これらの構成成分の融解混合は、剪断力、伸張力、圧縮力、超音波エネルギ、電磁エネルギ、熱エネルギ、或いはこれらの力又はエネルギの内の少なくとも1つを有する組合せを使用することを含み、且つ処理装置内で実行される。処理装置では、上記の力は、単一のネジ、複数のネジ、相互噛み合い共回転又は逆回転ネジ、往復ネジ、ピン付きネジ、ピン付きバレル、ロール、ラム、螺旋ロータ、或いは上記の内の少なくとも1種を含む組合せによって加えられる。
【0032】
ポリマー材料及び随意選択の任意の有機充填剤は、誘電体層を形成するために希望により複数の混合及び形成段階を施すことができる。例えば、ポリマー材料及び随意選択の充填剤は、先ず、押し出し成形して複数のペレットを形成することができる。次いで、これらのペレットはモールド成形機に供給することができ、そこで他の所望の形状に形成することができる。この代わりに、単一の融解混合機から流出する組成物をシート又はより糸に成形し、次いで焼鈍、一軸又は二軸延伸のような押出し後処理を施すことができる。
【0033】
ポリマー材料及び充填剤を溶液混合した場合、それにより形成された組成物は、電極層のような所望の基板上に、流し込み成形、回転成形、浸漬被覆、吹付け塗装、刷毛塗り、及び/又は静電塗装することができる。次いで、溶液を乾燥することにより基板表面上に誘電体層が残る。別の実施形態では、所望の組成物を有する溶液を、回転成形、圧縮成形、射出成形又は吹込み成形することにより、誘電体層を形成することができる。混合を促進させるために、分散剤、結合剤、改質剤、界面活性剤、及び添加剤のような、二次化学種を用いることができる。
【0034】
一実施形態では、誘電体層は、約200時間〜約2000時間にわたって印加される約1000ボルト〜5000ボルトの電流に耐えるコロナ抵抗性を持つ。別の実施形態では、誘電体層は、約250時間〜約1000時間にわたって印加される約1000ボルト〜5000ボルトの電流に耐えるコロナ抵抗性を持つ。更に別の実施形態では、誘電体層は、約500時間〜約900時間にわたって印加される約1000ボルト〜5000ボルトの電流に耐えるコロナ抵抗性を持つ。
【0035】
誘電体層は、約1〜約106 ヘルツ(Hz)の周波数で測定したときに約3以上の誘電率を持つ。一実施形態では、誘電体層は、約1〜約106 ヘルツ(Hz)の周波数で測定したときに約5以上の誘電率を持つ。別の実施形態では、誘電体層は、約1〜約106 ヘルツ(Hz)の周波数で測定したときに約10以上の誘電率を持つ。別の実施形態では、誘電体層は、約1〜約106 ヘルツ(Hz)の周波数で測定したときに約20以上の誘電率を持つ。更に別の実施形態では、誘電体層は、約1〜約106 ヘルツ(Hz)の周波数で測定したときに約50以上の誘電率を持つ。
【0036】
誘電体層は、約100℃以上のガラス転移又は軟化点温度を持つことが望ましい。一実施形態では、誘電体層は約120℃以上のガラス転移又は軟化点温度を持つ。別の実施形態では、誘電体層は約150℃以上のガラス転移又は軟化点温度を持つ。別の実施形態では、誘電体層は約180℃以上のガラス転移又は軟化点温度を持つ。更に別の実施形態では、誘電体層は約200℃以上のガラス転移又は軟化点温度を持つ。
【0037】
また更に、誘電体層は0.02より小さい損失係数を持つことができる。好ましい実施形態では、誘電体層は0.005より小さい損失係数を持つ。
【0038】
本書で述べたコンデンサは、電力変換、電力調整及びパルス状電力用途のような広範な用途に有用である。フィルム・コンデンサは高温環境において特に有用である。本書で述べたコンデンサは、典型的には、約−40℃〜約200℃の動作温度を持つ。別の実施形態では、コンデンサは約0℃〜約150℃の動作温度を持つ。本発明の更に別の実施形態では、コンデンサは約20℃〜約120℃の動作温度を持つ。
【0039】
本書で開示した全ての数値範囲は端点を含んでおり、それらの端点は互いと組み合わせ可能である。本書で用いられている「第1」、「第2」などの用語は順序や品質や重要性を表しているものではなく、むしろ一要素を別の要素から区別するために用いている。また量に関連して用いられている「約」及び「ほぼ」という修飾語は、記した値を含むと共に、前後関係によって判断される意味を持つ(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を含む)。本発明を説明する記載(特に特許請求の範囲の記載)における数を特記していない用語は、別段の指示が無い場合又は文脈によって明らかに否定されていないなら、単数及び複数の両方を含んでいると解釈されたい。
【0040】
本発明を多数の実施態様に関して説明したが、本発明はこのような開示した実施形態に制限されない。むしろ、本発明は、これまで説明していないが、本発明の精神及び範囲に合致する任意の数の変形、変更、置換又は等価な構成を取り入れるように修正することができる。更に、本発明を様々な実施態様について説明したが、本発明の様々な面が、記載した実施形態の内の幾つかのみを含むことがあることを理解されたい。従って、本発明は本明細書の記載によって限定されるものと見なすべきでなく、特許請求の範囲によって限定されるものである。
【符号の説明】
【0041】
10 フィルム・コンデンサ
12 第1の電極層
14 基板層
16 誘電体層
18 基板層の第1の面
22 第2の電極層
24 基板層の第2の反対側の面
26 基板層の側面
30 多層コンデンサ・フィルム
32 第2の誘電体層
34 第3の電極層
36、38、42 追加の誘電体層
44、46、48 追加の電極層
52 終端金属化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層と、
前記基板層の上に配置された第1の電極層と、
前記電極層の上に配置された第1の誘電体層であって、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有している第1の誘電体層と、
とを有するコンデンサ。
【請求項2】
前記ポリマー材料はセルロース系シアノ樹脂を有している、請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記基板層は、ポリエーテルイミド、三酢酸セルロース、ポリフェニル・スルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組合せを有している、請求項1記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサは更に第2の電極層を有し、前記第1の誘電体層が前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に配置されている、請求項1記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記コンデンサは更に第2の誘電体層及び第3の電極層を有し、前記第2の誘電体層が前記第2の電極層と前記第3の電極層との間に配置されている、請求項4記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記コンデンサは更に、頂面と、前記基板層がそれに接近して配置されている底面と、少なくとも2つの側面と、前記側面の少なくとも一部分上に配置された終端金属化層とを有している、請求項5記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記金属化層は、アルミニウム、銅、亜鉛、又はそれらの組合せを有している、請求項6記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記基板層は第1の面及び第2の面を有し、前記第1の電極層が前記基板層の前記第1の面上に配置されており、前記コンデンサは更に、前記基板層の前記第2の面上に配置された第2の電極層を有している、請求項1記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記基板層は、前記第1の面及び第2の面に隣接して少なくとも2つの側面を有し、前記コンデンサは更に、前記側面の少なくとも一部分上に配置された金属化層を有している、請求項8記載のコンデンサ。
【請求項10】
三酢酸セルロースを有する基板層であって、引張強さが約300psi以上である基板層と、
前記基板層の上に配置された第1の電極層と、
前記電極層の上に配置された第1の誘電体層であって、伸びが約5パーセント以下であるポリマー材料を有している第1の誘電体層と、
を有するコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−34556(P2010−34556A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168360(P2009−168360)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】