説明

高温用加熱炉

【課題】従来の加熱炉においては、蛇行状ヒータエレメントの湾曲部を炉壁用断熱材に固定しているため、加熱中のヒータエレメントの膨脹及び冷却中の収縮による歪みがヒータエレメントに蓄積し、そのため長期亘って使用しているとヒータエレメントがこれを配置した溝内から飛び出したり、ヒータエレメント同士が接触したり、ヒータエレメントが炉内の被加熱物に接触したり、熱疲労によりヒータエレメントが破断してしまうという欠点があった。
【解決手段】本発明の高温用加熱炉は、炉壁用断熱材と、この断熱材の炉芯側面に上下方向に互いに離間して多段に配置した、夫々上下端で蛇行状に折れ曲がるヒータエレメントと、上下に隣接する上記ヒータエレメントの互いに対向する蛇行部分を連結する、上記断熱材に固定されていない耐熱・絶縁性フックと、上記ヒータエレメントの最上段のものを吊下する手段とより成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛇行状ヒータエレメントを有する高温用加熱炉、特に1000℃以上の高温用加熱炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛇行状ヒータエレメントを有するセラミックファイバー加熱炉は特許文献1に示されている。また、従来の蛇行状ヒータエレメントを有するセラミックファイバー加熱炉においては、ヒータエレメントをセラミックファイバーに固定するため、ヒータエレメントの湾曲部をセラミックファイバー内に埋め込んで固定していた。このような加熱炉は例えば特許文献2及び3に記載されている。
【特許文献1】米国特許第4575619号明細書
【特許文献2】特開平10−12361号公報
【特許文献3】特開平7−130458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の加熱炉においては、蛇行状ヒータエレメントの湾曲部を炉壁用断熱材に固定しているため、加熱中のヒータエレメントの膨脹及び冷却中の収縮による歪みがヒータエレメントに蓄積し、そのため長期に亘って使用しているとヒータエレメントがこれを配置した溝内から飛び出したり、ヒータエレメント同士が接触したり、ヒータエレメントが炉内の被加熱物に接触したり、熱疲労によりヒータエレメントが破断してしまうという欠点があった。
【0004】
本発明は上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の高温用加熱炉は、炉壁用断熱材と、この断熱材の炉芯側面に上下方向に互いに離間して多段に配置した、夫々上下端で蛇行状に折れ曲がるヒータエレメントと、上下に隣接する上記ヒータエレメントの互いに対向する蛇行部分を連結する、上記断熱材に固定されていない耐熱・絶縁性フックと、上記ヒータエレメントの最上段のものを吊下する手段とより成ることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の高温用加熱炉においては、上記耐熱・絶縁性フックには上記断熱材を貫通する長さの支持棒が取付けられており、上記断熱材には上記支持棒が自由に前後動並びに上下動できる空隙を設けていることを特徴とする。
【0007】
また、上記支持棒の移動変化量を監視する手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記支持棒の移動を抑制する手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記空隙を介して炉内に冷却媒体を流入せしめる手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高温用加熱炉によれば、炉壁用断熱材の炉芯側に設けられた多段のヒータエレメント中、一番上のヒータエレメントだけが断熱材に固定され、2段目以降のヒータエレメントは耐熱・絶縁性フックで互いに連結・吊下されている。このフック自体は断熱材に固定されておらず、自由に前後動並びに上下動できるようになっている。また、ヒータエレメントには常に下方へと重力が作用する。従って、加熱炉を使用中、ヒータエレメントが熱で軟化し、膨脹すると、重力によってヒータエレメントは、外側、下方へと移動し、膨張による伸びが吸収されるようになる。このため従来のような加熱によるヒータエレメントの伸びが原因で生ずる炉の内側への伸び出しや被加熱物との接触、または隣接するヒータエレメント同士の接触によるトラブルは全くない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明高温用加熱炉を示し、1は炉壁用の円筒状断熱材、2はこの断熱材1の炉芯側の面に上下方向に互いに離間して多段に配置した、夫々上下端で蛇行状に折れ曲がる蛇行状ヒータエレメントである。一番上のヒータエレメント2は断熱材1に固定した碍管3によって吊下する。2段目以降のヒータエレメント2については、上下に隣接するヒータエレメント1の互いに対向する湾曲蛇行部分4をフック5を介して互いに連結せしめる。このフック5は耐熱性で絶縁性のあるセラミックを適用することが好ましい。このフック5には上記断熱材1を貫通して伸びる長さのセラミック製または金属製の支持棒6を取付け、この支持棒6を自由に前後並びに上下移動をせしめる大きさの空隙7を上記断熱材1に設ける。
【0013】
更に、上記断熱材1の外部には上記支持棒6の移動量変化を計測・監視・記録する手段(図示せず)を設け、各段のヒータエレメント2の保守管理・寿命を評価することができるようにする。
【0014】
本発明の高温用加熱炉は上記のような構成であるから断熱材1の炉芯側の面に設けられた多段のヒータエレメント中、一番上のヒータエレメント2は断熱材1に固定されているが、2段目以降のヒータエレメント2は断熱材1に固定されておらず、自由に前後動並びに上下動でき、加熱炉を使用中、ヒータエレメント2が熱で軟化し、膨脹すると、重力によってヒータエレメント2は、外側、下方へと移動し、膨脹による伸びを吸収するようになる。反対に冷却でヒータエレメント2が収縮する場合は、上方、内側へ移動する。このため従来のような加熱によるヒータエレメント2の伸びが原因で生ずる炉の内側への伸び出しや被加熱物との接触、または隣接するヒータエレメント同士の接触によるトラブルは全くない。また、フック5に取り付けた支持棒6の移動変化量が断熱材1の外側から観察・計測・監視できるようになるため、この支持棒6の移動変化量から、加熱中のヒータエレメント2の状態を把握しやすくなるため保守点検・寿命評価が楽になる。また必要に応じて断熱材1の外側からこの支持棒6を拘束し、ヒータエレメント2の前後・上下の自由移動を抑制することもできるようになる。
【0015】
また、多段のヒータエレメント2は、フック5で互いに吊り下げられている構造であるため、不具合があった場合等において、所望の段のヒータエレメント2のみの交換を容易にかつ迅速に実施することができる。
【0016】
また、加熱炉内温度を急速に冷却する必要が生じた場合には、この加熱炉の炉壁の断熱材1に設けた空隙7から冷却媒体を炉内に流入させることで、炉内温度を急速に下げることが可能になる。
【0017】
隣接段のヒータエレメント2を連結する耐熱・絶縁フック5の形状については特に規定するものではないが、熱効率の観点からフック5の炉芯側の面は開口していることが望ましく、ヒータエレメント2の湾曲蛇行部分4にまたがるフック5部分の湾曲形状をヒータエレメント2の湾曲蛇行部分4の形状に合せておけば、ヒータエレメント2は加熱中も安定に保持され、炉内の温度分布も安定的に保持することができる。使用する耐熱・絶縁性フック5の数は必要に応じて増やしたり、減らすことができる。以上のように、本発明の高温用加熱炉は多くの長所を有しており、実用上極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の高温用加熱炉における円筒状加熱炉の一部を除去した斜視図である。
【図2】図1に示す円筒状加熱炉の要部の縦断正面図である。
【図3】図2に示す加熱炉部分の側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 断熱材
2 蛇行状ヒータエレメント
3 碍管
4 湾曲蛇行部分
5 フック
6 支持棒
7 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁用断熱材と、この断熱材の炉芯側面に上下方向に互いに離間して多段に配置した、夫々上下端で蛇行状に折れ曲がるヒータエレメントと、上下に隣接する上記ヒータエレメントの互いに対向する蛇行部分を連結する、上記断熱材に固定されていない耐熱・絶縁性フックと、上記ヒータエレメントの最上段のものを吊下する手段とより成ることを特徴とする高温用加熱炉。
【請求項2】
上記耐熱・絶縁性フックには上記断熱材を貫通する長さの支持棒が取付けられており、上記断熱材には上記支持棒が自由に前後動並びに上下動できる空隙を設けていることを特徴とする請求項1記載の高温用加熱炉。
【請求項3】
上記支持棒の移動変化量を監視する手段を有することを特徴とする請求項2記載の高温用加熱炉。
【請求項4】
上記支持棒の移動を抑制する手段を有することを特徴とする請求項2または3記載の高温用加熱炉。
【請求項5】
上記空隙を介して炉内に冷却媒体を流入せしめる手段を有することを特徴とする請求項2、3または4記載の高温用加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−250506(P2009−250506A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98063(P2008−98063)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(500070097)株式会社アルファ・オイコス (21)
【Fターム(参考)】