説明

高温超伝導電流リードと臨界電流密度増加方法

【課題】本発明は、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性があり、臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない高温超伝導電流リードと、高温超伝導電流リードの臨界電流密度増加方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基材面に高温超伝導材料の薄膜が形成され、金属皮膜が被覆された可撓性でテープ状の高温超伝導体8aと、1対の電極端子11と、電極端子11に固定され高温超伝導体8aを補強する支持部材14とを備えた高温超伝導電流リード8であって、高温超伝導材料の結晶のc軸が基材面に対して所定の角度で配向されていることを特徴とする。また、臨界電流密度増加方法は、高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を結晶のc軸に垂直または基材に垂直な角度で交差する方向に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導電流リードと、高温超伝導電流リードの臨界電流密度増加方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、極低温に冷却された超伝導コイルと室温の電源とを電気的に接続した超伝導マグネット装置がクライオスタットなどに用いられている。図11(a)に従来の高温超伝導電流リードが設けられた超伝導マグネット装置の全体概念図、図11(b)は(a)の超伝導マグネット装置の超伝導コイル付近の拡大概念図を示す。
【0003】
この従来の超伝導マグネット装置は、臨界温度以下で電気抵抗がゼロになる超伝導線材を巻回して構成された超伝導コイル101を収容した熱遮蔽シールド102と、この熱遮蔽シールド102を収容すると共に、断熱状態を保つため真空ポンプで内部を高真空にされる真空容器103、さらにはGM冷凍機等の冷凍機104から構成されている。
【0004】
超伝導コイル101は、例えば2段のステージを有する冷凍機104のセカンドステージ106(4K)によって、フレキシブル熱伝導体106aおよび熱伝導体110を介して冷却される。超伝導コイル101に電流を供給する電流リード107は、外部の室温側電流リード107cが外部から真空空間に導入され、真空容器103内に導入された電流リード107は、中間電流リード107bと低温側電流リード107aに区分され、その間にセカンドステージ熱アンカー109とファーストステージ熱アンカー110aが設置される。
【0005】
セカンドステージ熱アンカー109は、熱伝導体110から電気的には絶縁されているが熱的には接続されていて、中間電流リード107bで発生したジュール発熱および低温側リード107aを通して侵入する伝導熱を吸収し、熱伝導体110に放熱する役割を果たしている。熱伝導体110は、フレキシブル熱伝導体106aを通してセカンドステージ106に熱接触しているため、侵入熱をセカンドステージ106に排熱して約4Kに保たれる。
【0006】
同様に、ファーストステージ熱アンカー110aも熱伝導体105aから電気的には絶縁されているが熱的には接続されていて、中間電流リード107bによって熱伝導で侵入する真空容器103の外部からの熱と、中間電流リード107bや室温側電流リード107cで発生したジュール熱などを、熱伝導体105a(40K)に放熱する役目を果たしている。熱伝導体105aは、ファーストステージ105に熱接触しているため、侵入熱をファーストステージ105に排熱して約40Kに保たれる。
【0007】
ところで、一般的な金属を使用した場合中間電流リード107bには上述したようにジュール熱が発生し、また外部の熱を低温側電流リード107a側へ良好に熱伝導する。しかし、この装置では高温超伝導体108aを備えた高温超伝導電流リード108が使用されるため80K程度以下の温度環境で通電すればジュール熱が発生せず、しかも外部の熱をほとんど熱伝導しない。
【0008】
この高温超伝導体108aとしては希土類系高温超伝導体などが使用され、従来、バルク材を薄く切り出したものや、銀シース線材などが使われてきたが、今後は薄膜状高温超伝導体が最も優れた材料として有力視されている。なお、この希土類系高温超伝導体は、Y,Dy,Gdなど多数の希土類元素をRで表わすと、RBaCu7−δ(δは微少量)と表わされる物質(以下、RBCOという)である。銀シース線材はRBCOの粉やBi系超伝導体を銀合金のチューブに容れて扁平化したものである。また、薄膜状高温超伝導体はRBCOを真空蒸着法を用いて薄膜状に製作したものであり、コーテッドコンダクタ(Coated Conductor)と呼ばれることがある。
【0009】
さて、高温超伝導体108aは、磁場環境におかれたとき臨界電流密度Jcが低下することが知られている。従来の超伝導マグネット装置においては、中間電流リード107bに問題視しなければならないほどの漏洩磁場がかかるようなことはなかった。しかし、磁場の強さが増すと、中間電流リード107bの高温側の条件は厳しくなる。
【0010】
このため、強磁場化に伴い、電流リードに作用する大きな漏洩磁場下において、この電流リードの臨界電流密度低下を防止する臨界電流密度低下防止方法と、これに使用する磁気シールド体が提案された(特許文献1参照)。
【0011】
特許文献1の超伝導マグネット装置では、酸化物超伝導電流リードを酸化物高温超伝導体材料からなる磁気シールド体でシールドし、該シールド体を極低温に冷却することにより酸化物超伝導電流リードの臨界電流密度の低下を防止する。また、磁気シールド筒体の内外両表面に銀を溶射し、銀の薄膜層を形成させることによりシールド体の冷却効率を向上させるものである。
【0012】
しかし、この特許文献1の臨界電流は200A程度にすぎない。例えば超伝導コイルが作る磁場でプラズマを閉じ込めて核融合させるトカマク型核融合炉のような場合には、45000A〜68000Aの電流を流さなければならない。電流リードも42本必要になると予想されている(非特許文献1参照)。しかも、このような大電流を流す超伝導マグネット装置は核融合炉の磁気閉じ込め装置に限られない。磁気浮上装置、物性研究用、その他の用途でも同様である。
【0013】
また、超伝導電流リード自体の構造の改善も試みられている。超伝導機器の運転時に発生する熱収縮や電磁力などによる負荷に対して、十分な機械強度を持たせられるように、また低抵抗金属導体と酸化物超伝導体との接続部分で発生する発熱を抑えるために、改良技術が提案された(特許文献2参照)。図12は従来の超伝導電流リードの断面図である。
【0014】
特許文献2の超伝導電流リードは、図12に示すように複数枚の板状の酸化物超伝導体111を間隙を隔てて平行状態に配置し、且つ各酸化物超伝導体の両端を低抵抗金属製の電極端子112に接続する。さらに隙間及び酸化物超伝導体の周囲をエポキシ樹脂等の絶縁材113で充填するものである。
【0015】
なお、このほかの技術情報として、従来臨界電流密度がコーテッドコンダクタと磁束の方向に対して角度依存性を有することも報告されている(非特許文献2参照)。
【0016】
【特許文献1】特開2001−274468号公報
【特許文献2】特開2006−269184号公報
【非特許文献1】日本原子力研究所、「“高温超伝導体を用いた6万アンペア電流リードの開発に成功−世界最高の電流値を達成しITERでの使用に目処−”2003年8月28日公開情報」添付資料−1、[オンライン]、平成19年3月7日検索、インターネット<URL:http://www.jaeri.go.jp/jpn/open/press/2003/030828/fig01.html>
【非特許文献2】W. Prusseit, et al.、“Reel to Reel Coated Conductor Fabrication by Evaporation” 、THEVA-Literature database2005[オンライン]、平成19年3月13日検索、インターネット<URL:http://www.theva.com/downloads/ldb/MT19.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上説明したように、高温超伝導体は、磁場環境におかれたとき臨界電流密度が低下する。中間電流リードに問題となるほどの漏洩磁場が印加されるようなことは従来あまり例がなかった。しかし、装置からの漏洩磁場が大きくなると、この磁場に無関心では中間電流リードの臨界電流密度が低下してしまう。
【0018】
この点、特許文献1の超伝導マグネット装置は、酸化物超伝導電流リードを酸化物高温超伝導体材料からなる磁気シールド体でシールドし、このシールド体を極低温に冷却することによって酸化物超伝導電流リードの臨界電流密度の低下を防止する。また、磁気シールド筒体の内外両表面に銀の薄膜層を形成させることによりシールド体の冷却効率を向上させる。
【0019】
しかし、非特許文献1のような大電流が必要となる超伝導マグネット装置においては、高温超伝導体の電流リードを流れる電流自身の作る磁場によって超伝導状態が崩れてクエンチしてしまう。従って、高温超伝導電流リードでの臨界電流密度の低下防止はシールド体だけでは達成が難しく、逆に増加させたり、最大化させたりすることはできない。シールド体だけを備えた電流リードでは、発熱によって異常な温度上昇をきたし、場合によっては焼き切れてしまう。しかもシールド体を存在させるために真空容器のコンパクトさが損なわれ、部品点数が増え、断熱すべき表面積を増大させることも無視できない。
【0020】
また、従来一般的にセラミックの高温超伝導体は、脆くてひび割れし易く、扱い辛いものである。この点特許文献2の酸化物超伝導電流リードは、酸化物超伝導体全体が板バネ構成になり、並列設置方向の弾性率が高くなって剛性を向上させることができる。しかし、エポキシ樹脂等の絶縁体で覆うため、熱サイクルを繰り返した場合、超伝導体とエポキシ樹脂との熱膨張率の違いによって界面での劣化の問題が発生しやすく、扱い易さにも越えることのできない限界がある。
【0021】
そこで、本発明は、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性があり、臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない高温超伝導電流リードと、高温超伝導電流リードの臨界電流密度増加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、基材を有し該基材面に高温超伝導材料の薄膜が形成され、且つ該薄膜に金属皮膜が被覆された可撓性でテープ状の高温超伝導体と、金属皮膜によって高温超伝導体に接合された1対の電極端子と、電極端子のそれぞれに固定され高温超伝導体を補強する支持部材とを備えた高温超伝導電流リードであって、高温超伝導材料の結晶のc軸が基材の法線に対して所定の配向角度で配向されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の高温超伝導リードの臨界電流密度増加方法は、高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を結晶のc軸に垂直または基材に垂直な角度で交差する方向に印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の高温超伝導電流リードは、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性があり、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するときに外部応力によって高温超伝導体を損傷することが少ない。さらに超伝導コイル装置をコンパクトにすることができる。
【0025】
また、本発明の高温超伝導電流リードの臨界電流密度増加方法は、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を容易に最大化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の第1の形態は、基材を有し該基材面に高温超伝導材料の薄膜が形成され、且つ該薄膜に金属皮膜が被覆された可撓性でテープ状の高温超伝導体と、金属皮膜によって高温超伝導体に接合された1対の電極端子と、電極端子のそれぞれに固定され高温超伝導体を補強する支持部材とを備えた高温超伝導電流リードであって、高温超伝導材料の結晶のc軸が基材面に対して所定の角度で配向されていることを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない。さらに超伝導コイル装置をコンパクトにすることができる。
【0027】
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、支持部材の熱膨張率が高温超伝導体の熱膨張率より大きいことを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、室温時すなわち最大膨張時に支持部材の長さを高温超伝導体の長さにしておけば、極低温にしたとき支持部の方が高温超電導体よりも多く収縮するため、高温超伝導体はフレキシブルに変形して応力を分散でき、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性を与えることができる。
【0028】
本発明の第3の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、磁場中に置かれたとき、該磁場の磁束がc軸に対して垂直となる向きに高温超伝導体の基材を設置する角度設定熱アンカーを備えたことを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を最大化することができる。
【0029】
本発明の第4の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、磁場中に置かれたとき、該磁場の磁束が高温超電導体の基材に垂直となる向きに高温超伝導体の基材を設置する角度設定熱アンカーを備えたことを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を極大化することができる。
【0030】
本発明の第5の形態は、第1乃至第3の何れかの形態に従属する形態であって、高温超伝導材料がRBaCu7−δ(δは微少量であり、Rは希土類元素)で表わされる希土類系高温超伝導体であることを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、c軸を所定の角度だけ配向させた高温超伝導材料の薄膜を容易に形成することができる。
【0031】
本発明の第6の形態は、第1乃至第4の何れかの形態に従属する形態であって、c軸の配向角度が5°〜30°の範囲であることを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、この配向角度の範囲にあれば、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を容易に増すことができる。
【0032】
本発明の第7の形態は、第3または第4の形態に従属する形態であって、角度設定熱アンカーがラチェットギヤ状の外周形状を備え、該外周形状の傾斜面に沿って高温超伝導体が配置されることを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、複数の高温超伝導体を配設しなければならない超伝導マグネット装置の構成をコンパクトにすることができ、全体の臨界電流密度を簡単に最大化することができる。
【0033】
本発明の第8の形態は、第1乃至第7の何れかの形態に従属する形態であって、電極端子の表裏に配置する1対を1組として高温超伝導体が複数組設けられたことを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、高温超伝導電流リードの構成をコンパクトにすることができ、大電流を流すことができる。
【0034】
本発明の第9の形態は、第1乃至第8の何れかの形態に従属する形態であって、高温超伝導体の端部の金属皮膜と電極端子とがフラックスを含まないハンダで接合されたことを特徴とする高温超伝導電流リードである。この構成によって、高温超伝導材料を腐食することがなく、長期間劣化しない接合ができる。
【0035】
本発明の第10の形態は、高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を結晶のc軸に垂直な方向方向に印加することを特徴とする高温超伝導リードの臨界電流密度増加方法である。この構成によって、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を容易に最大化することができる。
【0036】
本発明の第11の形態は、高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を基材面に垂直な方向に印加することを特徴とする高温超伝導リードの臨界電流密度増加方法である。この構成によって、高温超伝導電流リードの臨界電流密度を容易に極大化することができる。
【0037】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードと臨界電流密度増加方法について説明する。図1(a)は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードが設けられた超伝導マグネット装置の全体概念図、図1(b)は(a)の超伝導マグネット装置の超伝導コイル付近の拡大概念図、図2は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードを1組配列したときの第1の断面図、図3は図2の高温超伝導電流リードの要部斜視図、図4は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの高温超伝導体の断面図、図5(a)は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの結晶軸と印加される磁場の関係図、図5(b)は温度70K、磁束密度1Tの条件下で(a)の高温超伝導電流リードに対して傾斜角φで磁場を印加したときの臨界電流密度Jcのグラフ、図6は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの角度設定熱アンカーの機能説明図、図7は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードを2組配列したときの第2の断面図である。
【0038】
まず、図1(a)(b)に基づいて、実施の形態1における高温超伝導電流リードが設けられた超伝導マグネット装置について説明する。従来の超伝導マグネット装置の構成と基本的には変わらない。図1(a)(b)において、1は臨界温度以下で電気抵抗が激減する超伝導線材を巻回して構成された超伝導コイル、2は超伝導コイル1を収容した熱遮蔽シールド、3は熱遮蔽シールド2を収容して断熱状態を保つため高真空にされる真空容器、4は例えばGM冷凍機等の40Kと4Kの2段のステージを有する冷凍機である。なお、図1(b)中に示すBは超伝導マグネットが作る磁束である。
【0039】
次に、5は例えば40Kとなる冷凍機4のファーストステージ、6は例えば4Kとなる冷凍機4のセカンドステージであり、7は電流リードであって、7aは低温側電流リード、7bは中間電流リード、7cは室温側電流リードである。
【0040】
さらに、8は中間電流リード7bに用いられるフレキシブル(可撓性)でテープ状の高温超伝導電流リード、8aは少なくとも40K以上で100K程度(できれば高い材質のものがよい)の温度環境で通電したとしてもジュール熱が発生せず、熱伝導率の小さな第II種の超伝導体であるテープ状の高温超伝導体、9は磁場中に置かれたとき、この磁場の磁束が後述する高温超伝導電流リード8と所定の向きになるように設置できる角度を自在に変更することができる実施の形態1の角度設定熱アンカー、10は熱伝導体、10aはファーストステージ熱アンカーである。
【0041】
ここで、第II種の超伝導体は第I種の超伝導体と異なって、外部の磁束が高温超伝導電流リード8の超伝導体内部から排除されることなく、内部へ進入する。また、角度設定熱アンカー9は回動自在の2つのL型金具6a,6b(後述する)の組合せによって三軸周りに回転でき、高温超伝導体8aを任意の角度に固定することができる。
【0042】
さて、実施の形態1の超伝導マグネット装置では、超伝導コイル1は冷凍機4のセカンドステージ6(4K)によって冷却され、ファーストステージ熱アンカー10aは、中間電流リード7bによって熱伝導で伝えられた真空容器3の外部からの熱と、中間電流リード7bや室温側電流リード7cで発生したジュール熱などを、熱伝導体5aを通して冷凍機4のファーストステージ5(40K)に放熱させる。
【0043】
この高温超伝導体8aを構成する材料としては、Y,Dy,Gdなど多数の希土類元素をRで表わしたとき、RBaCu7−δ(δは微少量)と表わされる単結晶の希土類系高温超伝導体(本発明の高温超伝導材料、以下RBCOという)が適当であり、薄膜状に基材に蒸着されて形成される。この高温超伝導体8の構成について、図2,3,4,5に基づいて説明する。
【0044】
そこで、角度設定熱アンカー10について説明する。図2、図6において、6a,6bは磁場の方向から決定される所定の方向に高温超伝導体8aを熱伝導体10に固定するための例えば銅等の高電導率のL型金具であり、11は低抵抗の銅等の金属から構成された電極端子、11a,11bは電極端子11と低温側電流リード7aとを電気的に接続するボルト・ナット等の締結具、16aはL型金具6bを熱伝導体10から電気的に絶縁し熱的に接触させるための薄い絶縁体、16bは締付具11dを熱伝導体10から電気的に絶縁するための絶縁体ワッシャ、12は高温超伝導体8aと電極端子11をフラックスを含まないハンダで接合した接合部である。接合部12は実施の形態1においては金属皮膜20(後述する)にフラックスを含まないハンダを超音波ハンダゴテで過熱しながら超音波振動を加えて溶着することにより接続される。さらに、11c,11dはL型金具6a,6bをそれぞれ回動自在に取付け角度を変更して固定できるボルト・ナット等の締結具である。
【0045】
さらにこの構成を詳細に説明すると、L型金具6aの一片は、高温超伝導電流リード8の電極端子11と締結具11bによって回動可能に軸支固定され、残りの一片がL型金具6bの一片に締結具11cによって回動自在に固定される。さらに、L型金具6bの残りの一片は締結具11dによってセカンドステージ6に回動可能に軸支固定される。従って、実施の形態1の角度設定熱アンカー10はL型金具6a,6bという簡単な構成の組合せによって、3軸周りに回動できるため、図6の機能説明図に示すように、3次元的に任意の方向に高温超伝導体8aを向けて固定することができる。なお、角度設定熱アンカー10の構成が実施の形態1の構成に限られないのはいうまでもないし、実施の形態1においては角度設定熱アンカー10は高温超伝導電流リード8の低温端を熱伝導体10に固定しているが、高温超伝導電流リード8の高温端を熱伝導体5aに固定する構成でもよいことはいうまでもない。
【0046】
次に、図2において、13はネジ止めのための挿通孔であり、14は冷却時の熱応力やその他の物理力の作用で高温超伝導体8が破壊するのを補強するFRP等の支持部材、15は挿通孔13に挿通させて電極端子11をその端部で支持部材14と固定するボルト・ナット等の締結具、16は電極端子11と支持部材14との間に介在される絶縁体のスペーサである。支持部材14は室温時すなわち最大熱膨張したときに対応して高温超伝導体8の長さを決定する。このとき高温超伝導体8はフレキシブルなテープ状の構造であるため、図3に示すように熱収縮時に自在に変形して応力を分散でき、外部応力や熱サイクルによる熱膨張、収縮を支持部材14が負担し、これらに対する高温超伝導電流リード8の耐性を増すことができる。なお、図3においては、分かり易くするため高温超電導体8aの撓みを強調して大きく描いているが、実際には目に見えないくらいに小さい。
【0047】
次に、図4に基づいて実施の形態1の高温超伝導体8aの構造について説明する。17はハステロイ(HASTELLOY:登録商標)等のニッケル基の耐熱・耐食合金やステンレス鋼等からなる弾力性を有するテープ状の基材である。これにより高温超伝導体8aの可撓性が得られる。そして、18はRBCOを基材17上で均一にエピタキシャル成長させるために予め基材17の法線から25°〜30°程度傾けた方向から斜方向蒸着される酸化マグネシウム(MgO)などの中間層、18aは中間層18の上に基材17の面に垂直な方向から蒸着された酸化マグネシウム(MgO)などの薄い中間層上皮、19は中間層上皮18a上に蒸着された高温超伝導薄膜層(本発明の薄膜)、20は高温超伝導薄膜層19を電極端子11に接合させるための銀(Ag)若しくは銅(Cu)の金属皮膜である。金属皮膜20は高温超伝導薄膜層19を安定化し保護するためのものでもある。
【0048】
実施の形態1の場合、基材17の厚さは100μm程度、また、中間層18の厚さは3μm、中間層上皮18aは0.2μm、高温超伝導薄膜層19の厚さも3μm、金属皮膜20の厚さは1μm程度に形成される。なお、中間層18の配向性の良し悪しは、その上に形成される高温超伝導薄膜19の結晶の均一性に影響を与える。そのため、中間層18の配向性を高め結晶の質を良くする目的で、中間層18を形成する際に斜方向蒸着が採用される。
【0049】
ところで、高温超伝導電流リード8に上記膨張、収縮に対する耐性を付与するために、実施の形態1の高温超伝導体8aと支持部材14の熱膨張率の関係は、支持部材14の熱膨張率の方が高温超伝導体8aの熱膨張率よりも大きくなるように形成している。このとき、高温超伝導体8aは熱収縮したとき自由に撓むことが可能になり、繰り返し熱収縮の作用が加わってもフレキシブルな高温超伝導体8aがこれを吸収して破壊することはない。また、両側に引張力が作用しても基材17が引張力を負担し、高温超伝導薄膜層19に亀裂が生じたりすることはない。
【0050】
そして、実施の形態1の高温超伝導薄膜層19と電極端子11との接合は次のようにして行う。まず、あらかじめ金属皮膜20と電極端子11の表面を超音波ハンダゴテを用いてフラックスを含まないハンダで被覆しておく。超音波を加える理由は、金属表面に存在する酸化物を振動により剥ぎ取り、フラックスを用いなくてもハンダを容易に溶着させるためである。次に、電極端子11と金属皮膜20のハンダで被覆された面どうしを当接させて加圧しながら熱を加えることで、予め被覆しておいたハンダを溶かし接合する。加圧して過熱するため余分のハンダが押し出され、電極端子11と金属皮膜20の間に介在する電気抵抗の大きなハンダが最少になり、電気抵抗の小さな接合ができる。高温超伝導薄膜層19と電極端子11をフラックスを含むハンダで接合した場合には、フラックスがRBCOの内部に拡散して腐食が進むため時間が経過すると接合が剥れてしまう。銀等の金属皮膜20と電極端子11を前記方法で接合した場合、高温超伝導薄膜層19が腐食されることはなく、接合部12の抵抗値を低レベル、少なくとも0.1μΩ以下に保つことができる。
【0051】
このように実施の形態1の高温超伝導電流リード8は、セラミックの一般的な特性としての脆さを有すものではなく、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性を有し、繰り返して応力が加わっても、撓むことで力を分散し、長期間にわたって使用することができる。また、通電したとき接合部12でジュール熱を発生することがないし、劣化した高温超伝導薄膜層19からジュール熱を発生することはなく、クエンチの可能性を減らすことができる。
【0052】
また、高温超伝導体の破壊を免れさせるために、従来のようにエポキシ樹脂等で周囲を固めるのではなく、フレキシブルなテープ状の構造を採用して周囲に露出されているために、破壊するようなことはなく、簡単な構成で臨界電流を増大させることができる。
【0053】
続いて、本発明の実施の形態1における高温超伝導体8aの高温超伝導薄膜層19の配向性と臨界電流密度Jcの関係、さらにはこの臨界電流密度を増加し、最大にする方法について説明する。
【0054】
図5(a)は流す電流に垂直な面で切ったときの超伝導リードの断面を示す。すなわち、電流は紙面を貫く方向に流れる。さて、実施の形態1では、図5(a)に示すように高温超伝導体8aの基材17に対して傾斜角φの方向に磁場を印加するものとする。温度は一例であるが70K、磁束密度は1T程度である。このとき、高温超伝導薄膜層19の結晶構造はc軸が基材17の法線n(基材17表面と垂直な方向)に対して角度αだけ傾いて配向された構造となっている。すなわち、RBCOの結晶のa−b平面とこれと等価なミラー指数{001}面は基材17に対して角度αだけ傾斜している。この理由は、中間層18の結晶軸が斜方向蒸着によって傾いて形成されるので、その影響を受けるためである。
【0055】
臨界電流密度Jcは温度、磁束密度、磁場の印加角度の関数であるが、いま、温度を70K、磁束密度を1Tに設定し、印加する磁場の方向、すなわち傾斜角φを変化させたときの臨界電流密度Jcの変化を図5(b)に示す。
【0056】
図5(b)は、c軸が法線から角度α、言い換えればa−b平面が基材17の表面から角度αだけ傾いて配向した結晶からなるRBCOに対する臨界電流密度のグラフで、このαと同一角度(傾斜角φ=α)で磁場が高温超伝導電流リード8に印加されたときに、臨界電流密度が最大となることを示している。このような配向角度αは経験的に5°〜30°のときに良好な結晶になることが知られており、おおむね15°近傍で最も良好な結晶が得られている。磁場の印加角度を配向角度に一致させることで、高温超伝導電流リード8の臨界電流密度を容易に最大化させることができる。最適磁場印加角度は、サンプルによって多少の違いがあるが、おおむね15°となる。
【0057】
図5(b)は、磁場の方向が基材17に対して+90°または−90°のとき、すなわち基材17に対して垂直に磁束が透過するときにも臨界電流密度がピークになることを示している。しかも、このピークはブロードであるため、多少の角度設定誤差があってもあまり問題とはならない。従って、最も適した設定角度条件は磁束がc軸に垂直になるように高温超伝導リードを配置することであるが、2番目に適した設定角度条件は磁束が基材面に対して垂直になるように高温超伝導リードを配置することである。
【0058】
なお、このようにRBCOを基材17上で角度αの配向性を与えるには、図示はしないが、まず中間層18をレーザー蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタなどの蒸着によって形成し、更にこの中間層18上で同じレーザー蒸着、電子ビーム蒸着、抵抗体加熱蒸着、スパッタなどの蒸着によってRBCOを角度αの方向にエピタキシャル成長させればよい。なお、この上に金属皮膜20を更に蒸着する。
【0059】
具体的に説明すると、蒸着源となるターゲットと、このターゲットから所定の方向に基材17を傾斜配置する。このターゲットに対してレーザーや電子・イオン等のビームを照射し、この照射でMgO等を放出し基材17上に斜方向蒸着する。このときMgO等は傾斜した方向に成長する。その後、このMgO等の上に基材面に対して垂直方向からMgO等の上皮層(中間層上皮18a)を形成する。さらに、R,Ba,Cuの元素を加熱蒸着し、酸素雰囲気中で加熱して酸化させRBCO膜が形成される。最後に、金属皮膜を加熱蒸着する。この際、下地の中間層18の配向角によって最終的にRBCOの配向性が決定される。
【0060】
従って、臨界電流密度を最大とするためには、RBCOとMgOなどに対して、この組合せで形成される薄膜が高い均一性を示す構造となる配向角度αを予め求めておき、この方向に配向すべくRBCOの薄膜を形成し、この薄膜が形成された基材17に対して傾斜角αで磁場を印加、言い換えればRBCOのc軸に垂直に磁場を印加すればよいことが分かる。
【0061】
続いて、図7に基づいて高温超伝導体8aを2組配列したときの構造の説明を行う。図6の高温超伝導電流リード8の断面は図2に示したとおりである。図7の高温超伝導電流リード8の場合、電極端子11の表裏に高温超伝導体8aが合計4本ハンダ接合されている。電極端子11の表と裏の2本が対応して配置されており、これが1対の高温超伝導体8aとなる。この高温超伝導電流リード8を2組配列することで臨界電流を1本の場合の4倍まで増加ことができる。組数は3組以上自在に増すことが可能である。なお、スペーサ16を配置して支持部材14を固定するため、電極端子11全体を薄くすることができ、平板であるため加工が容易になる。詳細は図2〜図6で説明したとおりである。なお、リード配設装置6aは図示していない。
【0062】
このように実施の形態1の高温超伝導電流リードは、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性があり、臨界電流密度を向上することができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない。また、きわめて容易に高温超伝導電流リードの臨界電流密度を向上させることができる。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における高温超伝導電流リードについて図8、図9に基づいて説明する。図8は本発明の実施の形態2における高温超伝導電流リードを3組配列したときの一部破砕斜視図、図9は図8の高温超伝導電流リードの要部のX−X断面図である。臨界電流密度を向上させる方法の詳細は実施の形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。また、実施の形態1と実施の形態2とは基本的構成が同一であり、同一符号は同一の構成を意味するから、詳細は実施の形態1に譲って省略する。
【0064】
実施の形態2の高温超伝導電流リード8は、実施の形態1のスペーサ16を省き、電極端子11の表裏に高温超伝導体8aを合計6本ハンダ接合したものである。図8、図9において、Sは電極端子11の一端側に形成された薄板部である。電極端子11はそれぞれの薄板部Sを対向させて、1対配置され、この薄板部Sに高温超伝導体8aが表裏1対ずつ、合計3組並行に並べて配置される。
【0065】
このように高温超伝導電流リード8を3組配列することで臨界電流を1本の場合の6倍の大電流を流すことができる。また、スペーサ16を除いたため部品点数が少なくなり、組立が容易になる。詳細は実施の形態1で説明したとおりである。組数は自在に増すことが可能である。
【0066】
このように実施の形態2の高温超伝導電流リードは、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性があり、臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない。また、きわめて容易に高温超伝導電流リードの臨界電流密度を最大化することができる。
【0067】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における高温超伝導電流リードと臨界電流密度増加方法について図10に基づいて説明する。超伝導マグネット装置が核融合炉のような大電流を必要とする場合の高温超伝導リードである。図10(a)は本発明の実施の形態3における高温超伝導電流リードの角度設定熱アンカーの斜視図、図10(b)は(a)の高温超伝導電流リードと高温超伝導リードに流れる電流が作る磁束Bの関係図である。なお、図10(b)は核融合炉の平面図上での磁束Bと高温超伝導電流リードの関係を示す。臨界電流密度を向上させる方法の詳細は実施の形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。また、実施の形態1,2と実施の形態3とは基本的構成が同一であり、同一符号は同一の構成を意味するから、詳細は実施の形態1,2に譲って省略する。
【0068】
超伝導マグネット装置がトカマク型核融合炉のような場合には、45000A〜68000Aの電流を流さなければならない。高温超伝導電流リードも、テープ状Bi系超伝導体6枚をスタックしたものが並列に48本必要になると予想されている。このように大電流が必要とされ、超伝導マグネット装置に多数の高温超伝導電流リードが必要になるのは、核融合炉に限らず、磁気浮上装置、物性研究用、その他でも同様である。
【0069】
さて、このような大電流を流す場合、電流リードに流れる電流自体が作る大きな磁場が高温超伝導電流リード8に多大な影響を与えるようになる。この場合、電流が作る磁束線は、図10のBで表されるような閉じた円になる。この円と基材17のなす角がαとなるように超伝導電流リードを配置すれば、磁束線がc軸と直行する方向に高温超電導体8aを透過するため、臨界電流密度は最大になる。
【0070】
以下、実施の形態3の構成を説明する。図10(a)(b)において、10bは核融合炉に設置する高温超伝導電流リード8を所定の方向に設定してヘリウムガスで50K程度に冷却された銅製の室温側電流リードに接続するための角度設定熱アンカーである。
【0071】
磁界の方向が各高温超伝導電流リード8ごとに異なるため、角度設定熱アンカー10bはラチェットギヤ状の多数の突部をもつ歯形形状をしており、所定ピッチで設けられた突部の傾斜面に高温超伝導電流リード8を取り付ける。この高温超伝導電流リード8が取り付けられる傾斜面の設置角度は、磁束Bの方向と交角φ=配向角度αで交わるように設定される。なお、交角φ=配向角度αで交われば必ずしも各高温超伝導電流リード8の配置は等ピッチである必要はない。また、図10(b)では高温超伝導リード8を9本用いているが、本数を自在に増減してもよいし、高温超伝導リード8は図8のように高温超伝導体8aを複数組配列したものでもよいことはいうまでもない。
【0072】
このように実施の形態3の高温超伝導電流リードは、大電流を流す必要がある核融合炉のような超電流マグネット装置に対しても、外部応力や熱サイクルによる膨張、収縮に対して耐性を付与し、臨界電流密度を増すことができ、端子を接続するとき高温超伝導体を損傷することが少ない。また、きわめて容易に臨界電流密度を最大化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、超電流マグネット装置の高温超伝導電流リードに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードが設けられた超伝導マグネット装置の全体概念図、(b)(a)の超伝導マグネット装置の超伝導コイル付近の拡大概念図
【図2】図2は本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードを1組配列したときの第1の断面図
【図3】図2の高温超伝導電流リードの要部斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの高温超伝導体の断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの結晶軸と印加される磁束Bの関係図、(b)温度70K、磁束密度1Tの条件下で(a)の高温超伝導電流リードに対して傾斜角φで磁場を印加したときの臨界電流密度Jcのグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードの角度設定熱アンカーの機能説明図
【図7】本発明の実施の形態1における高温超伝導電流リードを2組配列したときの第2の断面図
【図8】本発明の実施の形態2における高温超伝導電流リードを3組配列したときの一部破砕斜視図
【図9】図8の高温超伝導電流リードの要部のX−X断面図
【図10】(a)本発明の実施の形態3における高温超伝導電流リードの角度設定熱アンカーの斜視図、(b)(a)の高温超伝導電流リードと高温超伝導リードに流れる電流が作る磁束Bの関係図
【図11】(a)従来の高温超伝導電流リードが設けられた超伝導マグネット装置の全体概念図、(b)(a)の超伝導マグネット装置の超伝導コイル付近の拡大概念図
【図12】従来の超伝導電流リードの断面図
【符号の説明】
【0075】
1,101 超伝導コイル
1a,101a 超伝導コイル巻回端
2,102 熱遮蔽シールド
3,103 真空容器
4,104 冷凍機
5,105 ファーストステージ
6,106 セカンドステージ
6a,106a フレキシブル熱伝導体
6a,6b L型金具
7,107 電流リード
7a,107a 低温側電流リード
7b,107b 中間電流リード
7c,107c 室温側電流リード
8,108 高温超伝導電流リード
8a,108a 高温超伝導体
9,10b 角度設定熱アンカー
10,110 熱伝導体
10a,110a ファーストステージ熱アンカー
11 電極端子
11a,11b,11c,11d,15 締結具
12 接合部
13 挿通孔
14 支持部材
16 スペーサ
16a 薄い絶縁体
16b 絶縁体ワッシャ
17 基材
18 中間層
18a 中間層上皮
19 高温超伝導薄膜層
20 金属皮膜
105a 熱伝導体
109 セカンドステージ熱アンカー
111 酸化物超伝導体
112 電極端子
113 絶縁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を有し該基材面に高温超伝導材料の薄膜が形成され、且つ該薄膜に金属皮膜が被覆された可撓性でテープ状の高温超伝導体と、前記金属皮膜によって前記高温超伝導体に接合された1対の電極端子と、前記電極端子のそれぞれに固定され前記高温超伝導体を補強する支持部材とを備えた高温超伝導電流リードであって、前記高温超伝導材料の結晶のc軸が前記基材の法線に対して所定の配向角度で配向されていることを特徴とする高温超伝導電流リード。
【請求項2】
前記支持部材の熱膨張率が前記高温超伝導体の熱膨張率より大きいことを特徴とする請求項1記載の高温超伝導電流リード。
【請求項3】
磁場中に置かれたとき、該磁場の磁束が前記c軸に対して垂直となる向きに前記高温超伝導体の基材を設置する角度設定熱アンカーを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の高温超伝導電流リード。
【請求項4】
磁場中に置かれたとき、該磁場の磁束が前記高温超電導体の基材面に垂直となる向きに前記高温超伝導体の基材を設置する角度設定熱アンカーを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の高温超伝導電流リード。
【請求項5】
前記高温超伝導材料がRBaCu7−δ(δは微少量であり、Rは希土類元素)で表わされる希土類系高温超伝導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された高温超伝導電流リード。
【請求項6】
前記c軸の配向角度が5°〜30°の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された高温超伝導電流リード。
【請求項7】
前記角度設定熱アンカーがラチェットギヤ状の外周形状を備え、該外周形状の傾斜面に沿って前記高温超伝導体が配置されることを特徴とする請求項3または4記載の高温超伝導電流リード。
【請求項8】
前記電極端子の表裏に配置する1対を1組として前記高温超伝導体が複数組設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された高温超伝導電流リード。
【請求項9】
前記高温超伝導体の端部の前記金属皮膜と前記電極端子とがフラックスを含まないハンダで接合されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載された高温超伝導電流リード。
【請求項10】
高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を前記c軸に垂直な方向に印加することを特徴とする高温超伝導リードの臨界電流密度増加方法。
【請求項11】
高温超伝導材料の結晶のc軸を基材表面の法線に対して所定の角度だけ配向させた薄膜を有する高温超伝導リードを形成し、磁場の磁束を前記基材面に垂直な方向に印加することを特徴とする高温超伝導リードの臨界電流密度増加方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−251564(P2008−251564A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87013(P2007−87013)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】