説明

高炉鋳床遠隔操作装置

【課題】遠隔操作装置の予備機を共通化するにあたり、ヒューマンエラーによって予備機の操作対象の選択間違いが起こることを防止する。
【解決手段】遠隔操作装置としての複数の操作用リモコンは、複数の開口機及びマッドガンに対して個別に設けられ、互いに異なる周波数の無線信号を送信する。各操作用リモコンにはキースイッチが設けられ、当該にキースイッチにキーを挿入することで操作用リモコンを使用可能とする、各操作用リモコンに固有に設けられた複数のキーを有している。操作用リモコンのすべての無線周波数に設定可能な予備リモコン11は、いずれのキーも挿入可能に構成され、予備リモコン11の無線周波数は、複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで、当該挿入されたキーに対応する操作用リモコンの無線周波数と同一の周波数に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉鋳床に設けられた複数の機器の組を操作する遠隔操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉の炉底部から溶銑を取り出すにあたっては、炉底部に開口機を用いて出銑口を形成し、当該出銑口から溶銑が溶銑樋に流下させる。また、出銑を停止する際には、マッドガンを用いて出銑口内に耐火物を充填することで出銑の停止を行っている。
【0003】
この出銑にかかる作業においては高温の溶銑を扱うため、特に出銑口近傍での作業には危険が伴う。そのため近年では、作業員の安全を図るため、開口機やマッドガンといった鋳床機械の操作の遠隔化が進められている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、一般に上述の鋳床機械は高炉炉底部に複数組(セット)設けられているため、高炉鋳床からの出銑作業は、この複数組の鋳床機械それぞれが配設された複数箇所において並行して行われる。そのため、鋳床機械の組それぞれの遠隔操作を行う遠隔操作装置であるリモコンそれぞれも、他の箇所の鋳床機械との無線信号の混信を避けるために、それぞれ固有の周波数に設定されたものが設けられるのが通常である。なお、ここで各組は1台または複数の機器で構成される。
【0005】
鋳床機械の操作を遠隔化した場合、遠隔操作用のリモコンが故障すると鋳床機械の操作ができなくなることが考えられる。したがって、リモコンの故障により高炉の操業に支障が出るのを避けるため、各リモコンには予備機が設けられているのが通常である。この場合、上述のように無線の混信を避けるために、予備のリモコンは、常用として用いられるリモコンと同一の無線周波数に予め設定されたものが、常用として用いられる各リモコンに対して一台ずつ設けられるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−187200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の予備のリモコンは使用頻度が極めて低いにも関わらず、常用として用いられるリモコンと同じ台数分準備しておく必要があり、設備投資の観点から非常に効率が悪いため、予備のリモコンを共通化して台数を削減することが望まれている。
【0008】
この点、近年の信号処理がデジタル化されたリモコンにおいては、当該リモコンに設けられた設定用のスイッチを操作することで、遠隔操作に用いられる無線信号の周波数を変更することが容易であるため、上述のように常用のリモコンと同じ台数分の予備のリモコンを設けるのではなく、複数の常用のリモコンに対して、例えば共通の予備機を一台設けることで、予備のリモコンの台数を削減することが考えられる。
【0009】
しかしながら、無線信号の周波数の変更には、複数のスイッチの操作が伴い、特に、操業上の要請から予備機への切り替えを急ぐ場合などは、ヒューマンエラーにより周波数の設定間違いなどが起こりうる。また、デジタル化されたリモコンにおいては、無線信号を時分割して、操作用の無線信号にノイズが重畳した場合にノイズの影響を除去するための、リモコンの識別信号も併せて送信されるが、無線周波数の変更に伴いこの識別信号の設定も併せて変更する必要があるので、さらにヒューマンエラーが起こりうる可能性が高い。そして、設定の間違いにより無線信号の混信が生じた場合、重大な災害につながりかねない。このため、現状では安全上の理由から、常用のリモコンと同じ台数の予備のリモコンを予め準備しておくことが一般的である。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、上記のリモコンのような高炉鋳床で用いる遠隔操作装置の予備機を共通化するにあたり、ヒューマンエラー等による予備機の操作対象の選択間違い等を防止する、安全性の高い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明は、高炉鋳床に設けられた複数の機器の組を操作する遠隔操作装置であって、前記複数の機器の組に対して操作用の無線信号を送信する複数の操作用リモコンと、前記複数の操作用リモコンそれぞれのキースイッチに挿入することで前記操作用リモコンを使用可能にする、前記複数の機器の組にそれぞれ対応して設けられた、互いに形状が異なる複数のキーと、を有し、前記複数の操作用リモコンは、前記複数の機器の組の数より少なくとも一つ以上多く設けられ、前記各操作用リモコンのキースイッチは、前記いずれのキーも挿入可能に構成され、前記各操作用リモコンは、前記複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで当該挿入されたキーに対応する無線周波数に設定されて、当該挿入されたキーに対応する機器の組を操作することを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、操作用リモコンがいずれのキーも挿入可能に構成され、複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで当該挿入されたキーに対応する無線周波数に設定されて当該挿入されたキーと紐付けられた機器の組を操作することができるので、例えばいずれかの操作用リモコンが故障した際に、複数の機器の数より一つ以上多く設けられた操作用リモコンを予備として用いる場合に、当該予備として用いる操作用リモコンの無線周波数の設定を作業員が変更する必要がない。したがって、これにより、予備リモコンの台数を減らし、予備リモコンを共通化した場合であっても、ヒューマンエラーによる操作対象の選択間違いを防止できる。また、予備として用いる操作用リモコンにキースイッチを挿入したということは、元々キーが挿入されていた操作用リモコンからは当該キーが外された状態となり、この場合、元の操作用リモコンは停止するので、操作用リモコンと予備として用いる操作用リモコンからの信号が混信することもなく、操業の安全性も確保される。
【0013】
また、前記各操作用リモコンの無線周波数は、互いに異なる周波数に設定されていてもよい。
【0014】
前記各操作用リモコン及び予備リモコンから送信される無線信号には、当該各リモコン固有の識別信号が含まれており、前記予備リモコンに前記キーを挿入することで、当該予備リモコンの識別信号が、前記挿入されたキーに対応する前記操作用リモコンの識別信号と同一の識別信号に変更されてもよい。
【0015】
前記に記載の遠隔操作装置において、前記複数の操作用リモコンのうち、前記複数の機器の組の数と同じ数の操作用リモコンは、無線信号の周波数が前記複数の機器の組それぞれに対応して互いに異なる個別の周波数に設定され、且つ当該複数の機器の組に対応して設けられたキーのみが夫々挿入可能に構成され、前記複数の操作用リモコンのうち、前記複数の機器の組の数と同じ数の操作用リモコン以外の操作用リモコンは、前記複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで、当該挿入されたキーに対応する操作用リモコンの無線周波数と同一の周波数に設定される予備リモコンとして機能してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遠隔操作装置の予備機を共通化するにあたり操作用リモコンに複数のキースイッチを有するようにしたので、ヒューマンエラーによって予備用のリモコンの操作対象の選択間違いが起こることを防止することができる。その結果、操作用リモコンが故障しても予備用のリモコンへの切り替えが安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態にかかる遠隔操作装置が用いられる高炉近傍の機器配置の概略を示す説明図である。
【図2】操作用リモコンの構成の概略を示す説明図である。
【図3】操作用リモコンの機能ブロック図である。
【図4】予備リモコンの機能ブロック図である。
【図5】予備リモコンの構成の概略を示す説明図である。
【図6】予備リモコンの制御部にかかる制御フロー図である。
【図7】他の実施の形態にかかる操作用リモコンの機能ブロック図である。
【図8】他の実施の形態にかかる予備リモコンの機能ブロック図である。
【図9】他の実施の形態にかかる予備リモコンの制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる遠隔操作装置が用いられる、高炉1の鉛直上方から見た、高炉1近傍の機器配置の概略の一例を示す説明図である。
【0019】
図1に示すように、高炉1の炉底部周囲の例えば4箇所に、溶銑の取り出しのため出銑口を形成する開口機2a〜2dと、溶銑の取り出しを停止する際に開口機2a〜2dにより形成された出銑口に耐火物を充填するマッドガン3a〜3dとからなる機器の組が、それぞれ所定の間隔をおいて配置されている。
【0020】
開口機2a〜2d及びマッドガン3a〜3dとからなる機器の組の操作を行う遠隔操作装置としては、開口機2a〜2d及びマッドガン3a〜3dとからなる機器の組の台数に対応する4台の操作用リモコン10a〜10dが設けられている。各操作用リモコン10a〜10dは、後述する無線部42a〜42dから送信される無線信号の周波数がそれぞれ異なる値に設定されており、例えば、操作用リモコン10aは開口機2a及びマッドガン3aの操作を、操作用リモコン10dは開口機2d及びマッドガン3dの操作を、無線信号の混信無く行えるように構成されている。
【0021】
また、遠隔操作装置としては、操作用リモコン10a〜10dのいずれかが故障して使用できなくなった際に、予備機として使用するための、例えば1台の予備リモコン11が設けられている。即ち、操作用リモコン10a〜10dと予備リモコン11とを合わせた操作用のリモコンの台数は、上述の機器の組の数より少なくとも一つ以上多く設けられている。
【0022】
開口機2a〜2d及びマッドガン3a〜3dの近傍には、操作用リモコン10a〜10dからの無線信号を受信する受信装置20a〜20dがそれぞれ設けられている。受信装置20a〜20dには、開口機2a〜2d及びマッドガン3a〜3dの駆動装置(図示せず)の制御を行う制御装置21a〜21dがそれぞれ電気的に接続されている。
【0023】
次に、操作用リモコン10a〜10d及び予備リモコン11について詳述する。
【0024】
例えば操作用リモコン10aには、図2に示すように、操作用リモコン10aの電源を入り切りする電源スイッチ30と、開口機2a及びマッドガン3aの操作に用いられる複数の操作スイッチ31と、キースイッチ32aが設けられている。キースイッチ32aは、当該キースイッチ32aの鍵穴33aに対応するキー34aを挿入することで、後述するように操作用リモコン10aを操作可能とするスイッチである。
【0025】
次に、操作用リモコン10a内部の機能ブロック構成について、図3に基づき説明する。操作用リモコン10aの内部には、電源部40と、制御部41と、無線部42aが設けられている。電源部40には、電源スイッチ30と、キー34aを鍵穴33aに挿入することでONするキースイッチ32aの接点が直列に接続されている。この場合、キースイッチ32aは操作用リモコン10aに電源を投入するための許可用スイッチとして機能するため、操作用リモコン10aは、キー34aを用いてキースイッチ32aの操作を行わなければ電源が投入できない、即ち操作用リモコン10aを使用可能な状態とすることができないように構成されている。なお、キースイッチ32aを操作する方法としては、キー34aを単純に鍵穴33aに挿入する以外に、キー34aを挿入後に右、あるいは左にねん回させる等の方法が考えられるが、本実施の形態においては、それらねん回等を含む方法を総称して、単純に「挿入」として記述するものとする。
【0026】
制御部41には複数の操作スイッチ31の接点がそれぞれ接続されており、制御部41は各操作スイッチ31の操作状況に応じて無線部42aへの指令信号を出力する。無線部42aは、制御部41からの指令信号に応じて必要な無線信号の送信を受信装置20aへ向けて行う。
【0027】
なお、他の操作用リモコン10b〜10dの構成は、操作用リモコン10aと同様のため説明は省略するが、各操作用リモコン10a〜10dの鍵穴33a〜33d及びキー34a〜34dについては、それぞれ異なったものが用いられている。すなわち、例えば操作用リモコン10aの鍵穴33aに対応するキー34aでは、他の操作用リモコン10b〜10dの鍵穴33b〜33dに挿入、あるいはキースイッチ32b〜32dの操作を行うことはできず、操作用リモコン10b〜10dの電源を投入することができないように構成されている。また、無線部42a〜42dについても、上述の通り互いの無線信号の周波数が重複しないように、それぞれ異なる周波数の信号を送信するように設定されている。
【0028】
次に予備リモコン11、即ち機器の組の数と同じ数だけ設けられた操作用リモコン10a〜10d以外のリモコンについて説明する。予備リモコン11の内部には、図4に示すように、電源部50と、制御部51と、操作用リモコン10a〜10dの無線部42a〜42dに設定されている全ての無線周波数に設定可能な無線部52を有している。予備リモコン11には、例えば図5に示すように、操作用リモコン10a〜10dに対してそれぞれ1つずつ個別に設けられていたキースイッチ32a〜32dが全て設けられている。即ち、予備リモコン11は、キー34a〜34dのいずれも挿入可能に構成されている。また、予備リモコン11には、操作用リモコン10a〜10dと同様に、開口機2a〜2dやマッドガン3a〜3dなどの遠隔操作を行う操作スイッチ53が複数設けられている。
【0029】
予備リモコン11に設けられた複数のキースイッチ32a〜32dは、例えば図4に示すように、予備リモコン11の電源部50に並列に接続されている。このため、キー34b〜34dのうちいずれかのキーを対応するキースイッチ32a〜32dに挿入することで、予備リモコン11の電源を投入することができるように構成されている。また、キースイッチ32a〜32dの接点は、制御部51に対しても並列に接続されており、キー34a〜34dのうちのどのキーが挿入されているかが制御部51に入力されるようになっている。
【0030】
予備リモコン11の制御部51には、入力される信号に基づき、キースイッチ32a〜32dの操作状態を監視し、挿入されたキーに応じて無線部52から送信される無線信号の周波数を自動的に設定するプログラムが内蔵されている。当該プログラムのフロー図を図6に示す。図6に示すように、制御部51では、例えばキースイッチ32aからキースイッチ32dの順にキー34a〜34dの挿入状態を監視する。そして、例えばキースイッチ32aにキー34aが挿入された状態であれば、無線部52から送信する無線信号の周波数がキー34aに対応する操作用リモコン10aと同一の周波数に設定される。また、例えばキースイッチ32aが操作された状態になければ、キースイッチ32b、キースイッチ32c、次いでキースイッチ32dの順で順次キースイッチ32b〜32dの状態を監視し、いずれのキーが挿入された状態にあるのかを判定する。その上で、制御部51は、無線部52から発信する無線信号の周波数を、操作されたキースイッチに対応する操作用リモコンの無線周波数に設定する。これにより、予備リモコン11は、例えばキー34bによりキースイッチ32bが操作された場合であれば操作用リモコン10bとして、キー34dによりキースイッチ32dが操作された場合であれば操作用リモコン10dとして用いることができるようになる。
【0031】
なお、図6では、例えばキー34aがキースイッチ32aに挿入された場合、キースイッチ32b以降のキースイッチを監視しないフローとなっているが、例えばキースイッチ32a〜32dの状態監視の順序や、キー34a〜34dのうち複数のキーが挿入されている場合に、どのキーを優先的に有効として無線周波数の設定を行うかなどについては、任意に変更が可能である。
【0032】
なお、上記の予備リモコン11は複数のキー穴からなるキースイッチ32a〜32dを有する例であるが、キー穴が1つまたは少数で共通にし、挿入されたキー34a〜34dが識別可能な内部構造にしてもよい。
【0033】
本実施の形態にかかる遠隔操作装置は以上のように構成されており、次にこれら操作用リモコン10a〜10d及び予備リモコンといった遠隔操作装置の運用について、高炉1の鋳床近傍に設けられた開口機2a〜2dやマッドガン3a〜3dを操作する場合を一例にして説明する。
【0034】
操作用リモコン10a〜10dの使用に先立ち、キー34a〜34dを各操作用リモコン10a〜10dのキースイッチ32a〜32dに挿入し、操作用リモコン10a〜10dの電源をそれぞれ投入する。
【0035】
次いで、電源が投入された操作用リモコン10a〜10dを携帯した、例えば4人の作業員が開口機2a〜2dや各マッドガン3a〜3d近傍の所定の配置につくと、例えば、操作用リモコン10aを携帯する作業員により、操作用リモコン10aを用いて開口機2aの遠隔操作が行われ、高炉1からの出銑が開始される。
【0036】
その後、操作用リモコン10aによりマッドガン3aの遠隔操作が行われ、出銑が停止されると、次に操作用リモコン10bを携帯する作業員により開口機3b及びマッドガン3bの操作が行われ、この作業が操作用リモコン10c及び操作用リモコン10dについても順次繰り返し行われる。
【0037】
そして、この出銑作業中に、操作用リモコン10a〜10dのいずれか、例えば操作用リモコン10aに何らかの原因により故障が発生し、当該操作用リモコン10aが操作不能になったとする。その場合は、先ず操作用リモコン10aの電源を停止し、操作用リモコン10aのキースイッチ32aからキー34aの抜き取りを行う。
【0038】
そして、抜き取ったキー34aを予備リモコン11のキースイッチ32aに挿入する。これにより、予備リモコン11の電源が投入される共に、予備リモコン11の無線周波数が自動的に操作用リモコン10aの無線部42aに設定されていた周波数と同一の周波数に設定される。これにより、予備リモコン11による開口機2a及びマッドガン3aの遠隔操作が可能となり、出銑作業を継続して行うことができる。
【0039】
以上の実施の形態によれば、各操作用リモコン10a〜10dに固有に設けられたキー34a〜34dのいずれかを予備リモコン11のキースイッチ32a〜32dに挿入することで、予備リモコン11の無線周波数が挿入されたキーに対応する周波数に自動的に設定されるので、予備リモコン11の使用にあたり、作業員が手作業で無線周波数の設定変更を行う必要がなく、ヒューマンエラーによる操作対象の選択間違いを防止できる。したがって、遠隔操作に用いるリモコンの予備機の台数を削減し、予備リモコン11を各操作用リモコン10a〜10dに対する共通の予備機とした場合であっても、安全性を確保することができる。
【0040】
また、予備リモコン11及び各操作用リモコン10a〜10dは、対応するキー34a〜34dを挿入しなければ操作することができないように構成されているので、例えば予備リモコン11と操作用リモコン10a〜10dとの間でキー34a〜34dをそれぞれ1つずつのみ設けた場合、キー34a〜34dは、予備リモコン11のキースイッチ32a〜32dか、あるいは操作用リモコン10a〜10dにそれぞれ設けられたキースイッチ32a〜32dのいずれにかしか挿入することができない。係る場合、例えばキー34aを例にすると、予備リモコン11か操作用リモコン10aの少なくともいずれか一方のリモコンは停止した状態となっているので、操作用リモコン10aと予備リモコン11との間で信号が混信することもない。この点からも、操業上の安全性が確保される。
【0041】
なお、以上の実施の形態では、キースイッチ32a〜32dにより予備リモコン11の無線周波数の設定の変更を行う場合について説明したが、リモコンの無線信号には、ノイズが重畳した場合に無線信号が混信することを防止するための識別信号が時分割して設定されていてもよい。かかる場合、当該識別信号は、操作リモコン10a〜10dの各無線部42a〜42d毎にそれぞれ固有の設定となっており、予備リモコン11のキースイッチ32a〜32dの操作状態に応じ、無線周波数の設定変更に加えて、識別信号の設定も各キー34a〜34dに対応する操作用リモコン10a〜10dと同一のものに変更するようにしてもよい。このように、識別信号の設定変更を自動で行うことにより、識別信号の設定変更にかかるヒューマンエラーの発生も防止することができる。
【0042】
以上の実施の形態においては、予備リモコン11は4台の操作用リモコン10a〜10dに対して1台のみ設けられていたが、予備リモコン11の設置台数についても任意に設定が可能である。なお、設備費削減の観点からは、操作用リモコンの設置台数がN台であるとすると、予備リモコン11の設置台数は本発明により作業者の安全性を確保した上でN台より少なくすることが可能となる。また、4台の操作用リモコン10a〜10dと1台の予備リモコンに代えて、例えば予備リモコン11と同一の仕様のリモコンを、操作用リモコン10a〜10eとして5台設けてもよい。4台の操作用リモコン10a〜10dと一台の予備リモコン11を設けた場合では、各操作用リモコン10a〜10dと各機器の組とを対応付けていたが、予備リモコン11と同一の仕様の5台の操作用リモコン10a〜10eを設ける場合は、各機器の組と各キー33a〜33dとを予め対応付け、キー33a〜33dのうちいずれか一つをいずれかの操作用リモコン10a〜10e、即ち予備として用いる操作用リモコンのキースイッチ32a〜32dのいずれかに挿入することで、当該挿入されたキーに対応する無線周波数と同一の周波数及び識別信号に設定される。このように、予備リモコン11と同一の仕様の操作用リモコンを機器の組の数よりも少なくとも一つ以上多く設けることで、操作上の安全性を確保しつつ、予備のリモコンの台数を削減することができる。
【0043】
なお、以上の実施の形態においては、キースイッチ32a〜32dの接点は、各操作用リモコン10a〜10d及び予備リモコン11の電源部40、50の電源を入り切りする目的で設けていたが、例えば図7に示すように、操作用リモコン10a〜10dにおいては、操作スイッチ31と制御部41との間の電源線の部分に当該キースイッチ32a〜32dの接点を設け、キー33a〜33dが挿入されていない状態では、操作スイッチ31の操作が無効となるようにしてもよく、予備リモコン11においては、例えば図8に示すようにキースイッチ32a〜32dに代えて、電源部50に直列に電源スイッチ60を設けてもよい。かかる場合、予備リモコンの制御部51による無線信号の周波数及び識別信号を自動設定するプログラムのフロー図は、例えば図9に示すように、キー34aからキー34dの順に挿入状態を監視し、いずれのキーも挿入されていない状態で電源が投入された場合は、当該予備リモコン11は使用不能な状態にあるため、異常停止動作を行ったり、あるいは異常警報を発報したりするようにしてもよい。上記のように、各リモコンを使用可能にするための機能ブロック構成は、任意に決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、高炉鋳床の機器を遠隔操作する際に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 高炉
2 開口機
3 マッドガン
10a〜10d 操作用リモコン
11 予備リモコン
20a〜20d 受信装置
21a〜21d 制御装置
30 電源スイッチ
31 操作スイッチ
32a〜32d キースイッチ
33a〜33d 鍵穴
34a〜34d キー
40 電源部
41 制御部
42a〜42d 無線部
50 電源部
51 制御部
52 無線部
53 操作スイッチ
60 電源スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉鋳床に設けられた複数の機器の組を操作する遠隔操作装置であって、
前記複数の機器の組に対して操作用の無線信号を送信する複数の操作用リモコンと、
前記複数の操作用リモコンそれぞれのキースイッチに挿入することで前記操作用リモコンを使用可能にする、前記複数の機器の組にそれぞれ対応して設けられた、互いに形状が異なる複数のキーと、を有し、
前記複数の操作用リモコンは、前記複数の機器の組の数より少なくとも一つ以上多く設けられ、
前記各操作用リモコンのキースイッチは、前記いずれのキーも挿入可能に構成され、
前記各操作用リモコンは、前記複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで当該挿入されたキーに対応する無線周波数に設定されて、当該挿入されたキーに対応する機器の組を操作することを特徴とする、高炉鋳床遠隔操作装置。
【請求項2】
前記各操作用リモコンの無線周波数は、互いに異なる周波数に設定されることを特徴とする、請求項1に記載の高炉鋳床遠隔操作装置。
【請求項3】
前記各操作用リモコンから送信される無線信号には、当該各リモコン固有の識別信号が含まれており、
前記操作用リモコンに前記キーを挿入することで、当該操作用リモコンの識別信号が、前記挿入されたキーに対応する識別信号と同一の識別信号に変更されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の高炉鋳床遠隔操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の遠隔操作装置であって、
前記複数の操作用リモコンのうち、前記複数の機器の組の数と同じ数の操作用リモコンは、無線信号の周波数が前記複数の機器の組それぞれに対応して互いに異なる個別の周波数に設定され、且つ当該複数の機器の組に対応して設けられたキーのみが夫々挿入可能に構成され、
前記複数の操作用リモコンのうち、前記複数の機器の組の数と同じ数の操作用リモコン以外の操作用リモコンは、前記複数のキーのうちいずれか一つを挿入することで、当該挿入されたキーに対応する操作用リモコンの無線周波数と同一の周波数に設定される予備リモコンとして機能する
ことを特徴とする高炉鋳床遠隔操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−259346(P2011−259346A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133658(P2010−133658)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】