説明

高磁場磁気共鳴撮像のための適応的画像均一性補正

磁気共鳴撮像スキャナ(10)によって収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成する装置が、収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を再構成する再構成プロセッサ(44)を含む。パラメータ計算プロセッサ(52)が撮像対象の少なくとも一つの特性を決定する。補正パターン調整プロセッサ(54)が保存補正パターンの族から前記少なくとも一つの特性に基づいて補正パターンを選択する。画像補整プロセッサ(56)が前記未補正再構成画像を、前記選択された補正パターンを使って補正し、補正済み再構成画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は診断撮像技術に関する。高磁場(特に3T程度より高い磁場)での磁気共鳴撮像に格別の用途があり、特にその関連で説明するが、より低い磁場での磁気共鳴撮像、磁気共鳴分光などにも用途を見出すものである。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像では、組織の誘電的・伝導的性質が位相外れ(dephasing)、位相復元(rephasing)などのために磁気共鳴励起の、そして磁気共鳴信号の空間的ゆがみを引き起こす。これらのゆがみは磁場が高くなると磁気共鳴波長が短くなるためより顕著になる。撮像対象内での磁気共鳴波長λresは:
λres=c/((√ε)・γ・B) (1)
で与えられる。ここで、cは光速でほぼc=3×108m/sの値をもち、γは磁気回転比でほぼγ=42MHz/Tの値をもち、Bはテスラ単位での磁場の大きさであり、εは撮像対象を構成する物質の誘電定数である。
【0003】
√ε〜9(人体の組織についての典型的な値)でB=1.5Tという中程度の磁場の場合、被験体の共鳴波長は約53cmであり、これは関心のある典型的な撮像領域の大きさよりやや大きい。現世代の臨床磁気共鳴スキャナに典型的なB=3.0Tというより高磁場では、被験体の共鳴波長は約26cmにまで減少する。これは関心のある典型的な撮像領域の大きさと同程度かそれよりも小さい。よって、3.0T程度以上の磁場では、撮像対象の誘電的・伝導的性質による空間的ゆがみが特に問題になる。ただし、B=1.5Tといったそれより低い磁場でもこれらのゆがみが臨床撮像用途のためには問題となることがある。
【0004】
誘電的・伝導度の効果は磁気共鳴励起のゆがみを引き起こす。例として3.0Tの場合、こうした効果のため名目上90°の無線周波励起パルスは被験体内に空間的に変動のあるフリップ角を生成し、フリップ角の空間的変動は約2倍の差にまでなる。すなわち、名目上90°のフリップ角が意図されているにもかかわらず、局所的なフリップ角は約70°から約140°の範囲にわたって変動しうるのである。同様のゆがみは磁気共鳴受信の際にも起こる。こうしたゆがみは再構成画像上での人工的な変動のある強度につながり、またコントラストの問題も生じるものとされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過去には誘電的・伝導度の効果によるゆがみは個別の画像に適用されるその場限りの強度補正によって対処されてきた。たとえば、画像の半分が他の半分よりも平均して明るいことが波長が撮像体積の大きさと同程度の場合には生じうるが、その場合、明るいほうの画像の半分に減光因子が乗じられて全体的に良好な強度一様性をもつ視覚的に好ましい画像が生成される。そのようなその場限りの手法は、一般に複数の撮像対象の統計的解析によっても第一原理からの電磁モデル化によっても裏付けされていない。結果として、そのようなその場限りの補正は、撮像対象の物理的特性に対応する再構成画像の強度変動を誤って「補正」する可能性がある。さらに、そのようなその場限りの補正は一般に空間解像度が粗い(たとえば画像を4つに分けた部分の強度を均等化するなど)。
【0006】
本発明は上述した限界その他を克服する改良された装置および方法を考察する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面によれば、収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成する方法が提供される。保存されている補正パターンが与えられる。収集された磁気共鳴撮像データは再構成されて撮像対象の未補正再構成画像にされる。撮像対象の少なくとも一つの特性が決定される。保存されている補正パターンの族から前記少なくとも一つの特性に基づいて補正パターンが選択される。前記未補正再構成画像は前記選択された補正パターンを使って補正され、補正済み再構成画像が生成される。
【0008】
別の側面によれば、収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成するための装置が開示される。収集された磁気共鳴撮像データを再構成して撮像対象の未補正再構成画像にする手段が提供される。撮像対象の少なくとも一つの特性を決定する手段が提供される。保存されている補正パターンから前記少なくとも一つの特性に基づいて補正パターンを選択する手段が提供される。前記未補正再構成画像を前記選択された補正パターンを使って補正し、補正済み再構成画像を生成する手段が提供される。
【発明の効果】
【0009】
一つの利点は、撮像対象の誘電的・伝導的性質についての強度補正を、当該磁気共鳴撮像スキャナおよび当該撮像対象の経験的なまたは第一原理からの解析に基づいて提供することにある。
【0010】
もう一つの利点は、撮像対象の誘電的・伝導的性質によって引き起こされるゆがみについての補正を、個別の撮像対象からは独立して生成されるが、補正している個別の再構成画像における該撮像対象の位置、大きさ、横縦比、その他の特性を補償するよう調整される空間的補正パターンを使って提供することにある。
【0011】
さらにもう一つの利点は、磁気共鳴励起の間に導入されるゆがみについての第一の補正および磁気共鳴受信の間に導入されるゆがみについての第二の補正を提供することにある。
【0012】
以下の好ましい実施形態についての詳細な説明を読めば、通常の当業者には数多くの追加的な利点および恩恵が明らかとなることであろう。
【0013】
本発明はさまざまな構成要素や構成要素の配列において、またさまざまな工程処理や工程処理の配列において具体化することができる。図面は好ましい実施形態を説明するためだけのものであって、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、磁気共鳴撮像スキャナ10は主磁石コイル12を含んでいる。該主磁石コイル12は好ましくは超伝導コイルであるが、抵抗のある主磁石コイルまたは永久磁石を用いることもできる。主磁石コイル12は賦活されて実質一様な主磁場を検査領域14内に生成する。無線周波コイル18を賦活することで生成される磁気共鳴を空間的にエンコードするため、傾斜磁場コイル16が選択された空間方向に磁場勾配を生成する。図1では、全身無線周波コイル18が示されているが、ヘッドコイル、フェーズドアレイ無線周波コイル、SENSE(登録商標)コイルなどといった局所コイルを前記全身無線周波コイル18の代わりに、あるいはそれとともに、磁気共鳴を励起したり、および/または磁気共鳴エコーを検出したりするのに使うこともできる。
【0015】
磁気共鳴シーケンスコントローラ30は、磁気共鳴エコーを励起するための前記全身無線周波コイル18または別の無線周波コイルに結合されている無線周波送信機34を協調させ、制御し、励起された磁気共鳴エコーを空間的にエンコードするための傾斜磁場コイル16に結合された傾斜磁場コントローラ32を制御する。前記全身無線周波コイル18または別の無線周波コイルに結合された一つまたは複数の無線周波受信機36は、磁気共鳴エコーを検出し、復調し、好ましくはデジタル化して、好ましくはデジタルの磁気共鳴標本値をk空間メモリ40に保存する。再構成プロセッサ44はフーリエ変換に基づく画像再構成またはその他の種類の画像再構成を実行して、前記の保存されたk空間磁気共鳴標本値から未補正再構成画像を生成する。未補正再構成画像は未補正画像メモリ46内に保存される。
【0016】
典型的には前記未補正再構成画像には、撮像対象の誘電的・伝導的性質に起因するゆがみがある。こうしたゆがみを補正するため、補正パターンデータベース50から取得される保存補正パターンが用いられる。保存補正パターンは磁場の強さ、撮像対象の種類および配向、撮像スキャンの種類などに基づいて選択される。ある好ましい実施形態では、保存補正パターンを選択するための一つの基準は被験体の等方性である。等方性はたとえば、撮像対象の短軸の長さと長軸の長さの比として好適に定義される。保存補正パターンは、撮像対象の誘電的・伝導的性質によって導入される強度ゆがみについて補償するために未補正再構成画像の画像要素の強度を調整するために使われる。
【0017】
撮像対象の位置、大きさ、横縦比、解像度またはその他の特性の相違を前記の取得された保存補正パターンと比較して補償するため、パラメータ計算プロセッサ52が未補正再構成画像またはプレスキャンパイロット画像を解析して、未補正再構成画像における撮像対象の位置、大きさ、横縦比、解像度またはその他の特性を決定する。補正パターン調整プロセッサ54が保存補正パターンを調整して、未補正再構成画像における撮像対象と位置、大きさ、横縦比、解像度などの点で実質一致する調整済み補正パターンを生成する。
【0018】
画像補正プロセッサ56が調整済み補正画像を未補正再構成画像に適用して、撮像対象の誘電的・伝導的性質に起因するゆがみが実質削減された補正済み再構成画像を生成する。該補正済み再構成画像は補正済み画像メモリ60に保存され、ビデオプロセッサ62によって処理され、ユーザーインターフェース64上に表示され、ローカルなコンピュータネットワークもしくはインターネットを通じて送信され、またはその他の処理を受ける。好ましくは、ユーザーインターフェース64はディスプレイ、プリンタまたはその他の出力装置を含んでおり、放射線技師その他の操作者が再構成された画像を閲覧し、表示させ、あるいはその他の操作を行うことができるようになっている。さらに、ユーザーインターフェース64によって、好ましくは放射線技師その他の操作者は、磁気共鳴シーケンスコントローラ30と対話して、磁気共鳴撮像シーケンスを生成し、撮像シーケンスを修正し、撮像シーケンスを実行し、またはその他当該磁気共鳴撮像スキャナ10を制御することができる。
【0019】
引き続き図1を参照しつつさらに図2〜図4も参照すると、前記の構成要素50、52、54、56によって実装される好ましい画像補正工程が記載されている。図2は、補正パターンデータベース50から取得された保存補正パターン70を図式的に示している。補正パターン70は、撮像面内で位置(0,0)を中心として配置され、x方向に沿った長さL、y方向に沿った幅Wおよび横縦比W/Lをもつ撮像対象に適切なものである。図の保存補正パターン70は、たとえば、胸部を通って撮られた人間の撮像対象の二次元のアキシャル平面画像スライスに対応する。図示した例では、フリップ角が減少している中央の卵形領域ではより大きな補正が求められる。強度は共鳴波長とともに変動しうるので、非常に高磁場のスキャナだと、高強度、低強度の補正領域が複数ある、より複雑なパターンとなることがある。典型的には、前記補正パターンデータベース50にはある範囲の大きさおよび横縦比W/Lをもつ補正パターンの族が保存されている。
【0020】
図3は、胸部を通って撮られた人間の撮像対象の二次元のアキシャル画像スライス72の図式的な表現である。撮像対象は撮像面内で位置(x0,y0)を中心として配置され、x方向に沿った長さL0は保存補正パターン70の対応する長さLよりも短く、y方向に沿った幅W0は保存補正パターン70の対応する幅Wよりも長く、横縦比W/Lは保存補正パターン70の横縦比W/Lよりも大きいものである。
【0021】
特性となる位置(x0,y0)および寸法値L0,W0の決定は前記パラメータ計算プロセッサ52によって実行される。測定は、撮像対象のエッジを同定するためのエッジ検出アルゴリズムおよび同定されたエッジから中心位置(x0,y0)を同定するための中心検出アルゴリズムを使って自動的に実行される。エッジ検出アルゴリズムは、空間微分、畳み込みなどを好適に用いてエッジを強調する。あるいはエッジを同定するためのx方向およびy方向のプレスキャン投影画像といったその他の既知の画像処理技術を用いることもできる。中心検出アルゴリズムは簡単な中点計算(つまり、x方向の長さL0に沿った中点をx0、y方向の幅W0に沿った中点をy0として選択する)でもよいし、中心検出アルゴリズムは逐次侵食(iterative erosion)のような当技術分野に既知のより複雑なアルゴリズムであってもよい。
【0022】
画像スライス72と保存補正パターン70との間の位置のずれ(x0,y0)および大きさの相違のため、画像スライス72に補正パターン70をそのまま適用すると典型的には不満足な結果を生じることになる。よって、画像補正を実行するのに先立ち、前記補正パターン調整プロセッサ54が保存補正パターンに調整を施し、ずらすなどして該パターンを未補正再構成画像における撮像対象と一致させる。
【0023】
図4は補正パターン調整プロセッサ54によって出力される調整済み補正パターン74を示している。好適なアプローチでは、補正パターン調整プロセッサ54は保存補正パターン70の解像度を調整して画像スライス72の解像度に一致させる。先の式(1)を見ると、磁場がB=8T程度以下の撮像対象における共鳴波長は10cm程度以上になる。補正パターンは、撮像対象における共鳴波長と同程度のスケールで比較的ゆるやかに変動すると期待される。よって、保存補正パターン70は約1〜2cmのオーダーでは粗い解像度をもちうる。それに対し、画像スライス72は典型的には0.1〜0.2cmまたはそれ以上のより高い解像度をもつ。よって、補正パターン調整プロセッサ54は好ましくは補間を行うか、スプライン曲線のあてはめを用いるか、あるいはその他の方法で保存補正パターン70の要素数を増加させ、画像スライス72の解像度に合ったより高解像度の補正パターンを生成する。
【0024】
保存補正パターンの解像度を画像スライスの解像度に一致するよう調整したのち、補正パターン調整プロセッサ54は保存補正パターンの位置、大きさおよび横縦比を画像スライス72における撮像対象と一致するよう調整する。補正パターンの好適な調整は:
【数2】

によって与えられる。ここで、F(x,y)は、画像スライス72と解像度を一致させたあとの図2に示される保存補正パターン70であり、Fadj(x,y)は図4に示される調整済み(adjusted)補正パターン74であり、Ascaleは全体的な画像の明るさを調整するための任意的なスケーリング因子である。差の項(x−x0)および(y−y0)はそれぞれx方向、y方向に沿った位置のずれを補正する。他方、比L/L0およびW/W0はそれぞれx方向、y方向に沿った大きさの違いを補正する。
【0025】
補正パターン調整プロセッサ54の記載されている動作は単に例示的なものである。追加的に撮像対象固有のパラメータを同様に調整することもできる。たとえば、撮像対象の保存補正パターン70に対する回転は普通の回転変換
【数3】

を使って対処できる。ここで、αは(x′,y′)座標系と(x,y)座標系との間の回転角である。もう一つの考えられる変形では、図3で示されている心臓76またはその他の器官に対応する部分のような保存補正パターンの一部分が局所的に平行移動され、伸張もしくは短縮されて、その部分における拡大された心臓またはその他個別の変異に対処する。
【0026】
さらに、単一の基本補正パターンを用い、該基本補正パターンの大きさの相違について補正因子比L/L0およびW/W0を用いて式(2)に従って調整するのではなく、Fadj(x,y)を補正パターンデータベース50から取得された、撮像対象に大きさおよび横縦比が最も近い二つ以上の補正パターンの線形補間を使って計算することもできる。こうした最も近い補正パターンは(x−x0)および(y−y0)のずれの項を使って中心(x0,y0)に揃うように平行移動され、画像スライス72と解像度が一致するよう解像度の調整がされる。該二つ以上の最も近い補正パターンは補間されて長さL0で幅W0の補間済み補正パターンが生成される。任意的に、補間と比の補正との組み合わせを用いてもよい。たとえば、補間を大きさの相違を実質取り込むために用いることができ、補正因子比L/L0およびW/W0を横縦比の相違を調整するために使うことができる。
【0027】
調整済み補正パターン74が画像補正プロセッサ56によって適用されて、誘電的または伝導的効果によって引き起こされたゆがみが補正される。ある好適な実施形態では、調整済み補正パターン74の空間的要素は、撮像対象の誘電的または伝導的効果によって画像に導入される強度変動に対処する乗算的なスケーリング因子を含んでいる。この実施形態では、補正を実施するために未補正再構成画像の画像要素は調整済み補正パターン74の対応する空間的要素を乗じられる。この実施形態での補正は励起および受信の撮像段階の両方の間に導入されたゆがみを補償する。
【0028】
被験体にわたる誘電的・伝導的特性の変動は、さまざまな機構を通じて強度変動を生じる。フリップ角変動は強度およびコントラスト両方の変動を生じる。磁気共鳴受信感度も撮像対象にわたって空間的に変動する。補正パターンデータベース50は任意的に、強度補正パターンの族だけではなく、コントラスト補正パターンの族も保存する。コントラストパターンは、コントラスト増強アルゴリズムの空間的に選択的な適用を案内するのと類似の形で使われる。たとえば、フリップ角の変動に応じて(線形、指数関数、冪乗など)グレースケールを引き延ばすことができる。
【0029】
強度パターンおよびコントラストパターンは、人間その他の撮像対象と伝導度、誘電率その他の特性が同じファントムの族から測定することができる。ファントムの族は体のさまざまな領域についてのファントムを含む。あるいはまた、前記パターンは器官の名目的な誘電率およびその名目的な位置および大きさに基づいて計算することができる。補正パターンを計算するとき、好ましくは、被験体にわたるフリップ角変動を補償して強度およびコントラストを補正する送信パターンが、感度変動について補正して強度を補正する受信パターンとは別個に計算される。撮像シーケンスによってフリップ角変動によって影響される度合いは異なるので、異なるシーケンスに対する送信パターンの族が計算される。
【0030】
図5を参照すると、ある好ましい実施形態において、補正パターンデータベース50は別個に適用される二つの族の補正パターンを保存している:保存送信補正パターン80、82および保存受信補正パターン84である。選択された保存送信補正パターンおよび選択された保存受信補正パターンのそれぞれは、補間プロセッサ86、88、90によって補間されて撮像対象と一致させられる。調整済み送信補正パターンの空間的要素は、撮像対象の誘電的または伝導的効果から生じるフリップ角の空間的変動の指標であるフリップ角因子を含む。補正は二つの部分で実行される。第一の部分では、フリップ角が共鳴緩和時定数(どの共鳴緩和機構が支配的であるかに応じてT1、T2またはT2*のような)と組み合わされて、画像要素ごとに好適な送信補正が決定される。第二の部分では、調整済み受信補正パターンが乗算的補正として画像要素ごとに適用される。
【0031】
この実施形態では、パターンデータベース50は多数のプロファイルを保持している。フリップ角変動について補正するための送信コントラスト調整パターン80の族があり、送信強度調整パターン82の族がある。パターンデータベース50は、スキャンの種類(感度からフリップ角変動)、被験体の大きさの特性および最も近い送信パターンを選択するための撮像対象の領域によってアドレッシングされる。最も近い送信パターンは補間プロセッサ86、88によって調整および/または補間され、選択されたコントラストパターンおよび選択された送信強度パターンが形成される。パターンデータベース50はまた、受信すなわち感度パターンの族も保存しており、これらのパターンは患者の大きさの特性および撮像領域によってアドレッシングされる。取得された単数または複数の受信パターンは補間プロセッサ90によって調整および/または補間されて受信強度パターンが生成される。
【0032】
送信および受信強度補正パターンは好ましくは組み合わせプロセッサ92によって組み合わされて選択された強度補正パターンが生成される。未補正画像はこの強度補正パターンに基づいて補正されて強度変動が補正される。補正は乗算的またはその他の重み付け因子として適用することができる。同様に、コントラストパターンは画像のコントラストを調整するために使われる。コントラスト補正によるグレースケール変動の伸張または増大は、線形、指数関数的、複雑な多項式の公式によるなどの仕方がある。コントラスト補正は一般に選択されたスキャンシーケンスとともに変動する。
【0033】
もちろんのこと、これまでに記載してきたパターンデータベース50中のパターンは単に例示的なものである。パターンをさまざまな方法で組み合わせることで、検索を簡単にしたり、記憶スペースを削減したり、パターン組み合わせ処理をなしにしたりすることもできる。
【0034】
例示的な二次元アキシャル・スライス72の補正について説明してきたが、補正プロセスは三次元画像の補正にも、三次元の保存補正パターンを使うことによって容易に拡張できる。三次元画像の補正は、保存補正パターンの三次元空間内での平行移動による調整を行い(すなわち、三次元補正パターンを平行移動して撮像対象中心(x0,y0,z0)に合わせる)、第三のz方向の長さ補正も含む。前記の別法、三次元空間における補正が用いる三次元の保存補正パターンは、画像体積の解像度に合うよう解像度調整をしたあとで:
【数4】

に従って調整される。ここで、F(x,y,z)は、画像体積の解像度と解像度を一致させる解像度調整のあとの三次元の保存補正パターンであり、Fadj(x,y,z)は調整済み体積補正パターンであり、Lx、Ly、Lzは三次元保存補正パターンのためのそれぞれx方向、y方向、z方向のデフォルトの長さであり、Lx,0、Ly,0、Lz,0は画像体積中の撮像対象のそれぞれx方向、y方向、z方向の長さである。式(4)では、式(2)の全体的な強度スケーリング因子は式を短くするために省略されているが、式(4)にも任意的に含めてもよい。
【0035】
あるいはまた、Fadj(x,y,z)を補正パターンデータベース50から取得された、撮像対象に大きさおよび横縦比が最も近い二つ以上の補正パターンの線形補間を使って計算することもできる。こうした最も近い補正パターンは(x−x0)、
(y−y0)および(z−z0)のずれの項を使って中心(x0,y0,z0)に揃うように平行移動され、画像体積と解像度が一致するよう解像度の調整がされる。該二つ以上の最も近い補正パターンは補間されて長さLx,0、Ly,0、Lz,0をもつ補間済み補正パターンが生成される。任意的に、補間と比の補正との組み合わせを用いてもよい。
【0036】
補正パターンデータベース50に保存されている補正パターンは好ましくはさまざまな種類の磁気共鳴撮像シーケンスおよび撮像領域に対応するものである。補正パターンは好ましくは再構成画像の各分類について、たとえばアキシャル胸部画像、サジタル胸部画像、コロナル胸部画像、アキシャル脳スキャン、コロナル脳スキャン、コロナル膝スキャンなどについて、およびスキャナ10とともに典型的に用いられる各磁場について用意される。
【0037】
保存補正パターンの生成にはさまざまな方法がある。一つのアプローチでは、潜在的な撮像対象を表す、好適な誘電的および伝導的性質をもつファントムについて磁気共鳴撮像データが収集される。たとえば、水、アルコール、酢、硫酸銅その他、人体の組織をよく模倣する物質を使って構築されたファントムを用いることができる。ファントムは潜在的撮像対象の特定の領域を模倣するためにさまざまな性質をもった領域をもつことができる。別のアプローチでは、撮像対象を構成する物質についての既知の誘電的・伝導的データと既知の無線周波コイル感度特性とを使って第一原理からの無線周波モデル化によって計算することもできる。さらに別のアプローチでは、未補正再構成画像がいくつかのサンプル被験体について収集され、そのサンプル未補正再構成画像の統計的解析から保存補正パターンが導かれる。
【0038】
本発明は好ましい実施形態との関連で説明してきた。明らかに、以上の詳細な説明を読み、理解すれば他の者にも修正および変更が思いつくであろう。本発明は、付属の特許請求またはその等価物の範囲にはいるそのようなすべての修正および変更を含んでいるものと解釈されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】磁気共鳴撮像スキャナと収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成するための装置とを含んでいる磁気共鳴撮像システムを図式的に示す図である。
【図2】保存補正パターンを図式的に示す図である。
【図3】未補正再構成画像における撮像対象の選択された特性の決定を図式的に示す図である。
【図4】図2の保存補正パターンを図3のように未補正再構成画像における撮像対象の特性に基づいて調整することによって生成される調整済み補正パターンを図式的に示す図である。
【図5】補正パターンデータベースおよび補正パターン調整プロセッサの好ましい実施形態を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成する方法であって:
前記収集された磁気共鳴撮像データを再構成して撮像対象の未補正再構成画像にし、
前記撮像対象の少なくとも一つの特性を決定し、
保存されている補正パターンの族から前記少なくとも一つの特性に基づいて補正パターンを選択し、
前記未補正再構成画像を前記選択された補正パターンを使って補正し、前記補正済み再構成画像を生成する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記の少なくとも一つの特性の決定が当該撮像対象の等方性を決定することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも一つの特性の決定が未補正再構成画像において第一の広がり方向に沿って当該撮像対象の長さを決定することを含み、当該方法がさらに:
前記第一の広がり方向に沿った前記選択された補正パターンの長さを調整して前記第一の広がり方向に沿った当該撮像対象の前記の決定された長さに合うようにする、
ことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも一つの特性の決定がさらに未補正再構成画像において第二の広がり方向に沿って当該撮像対象の長さを決定することを含み、該第二の広がり方向が前記第一の広がり方向を横切る向きであり、当該方法がさらに:
前記第二の広がり方向に沿った前記選択された補正パターンの長さを調整して前記第二の広がり方向に沿った当該撮像対象の前記の決定された長さに合うようにする、
ことを含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも一つの特性の決定がさらに未補正再構成画像において第三の広がり方向に沿って当該撮像対象の長さを決定することを含み、該第三の広がり方向が前記第一および第二の広がり方向を横切る向きであり、当該方法がさらに:
前記第三の広がり方向に沿った前記選択された補正パターンの長さを調整して前記第三の広がり方向に沿った当該撮像対象の前記の決定された長さに合うようにする、
ことを含むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記の少なくとも一つの特性の決定が未補正再構成画像においてある広がり方向に沿って当該撮像対象の長さを決定することを含み、当該方法がさらに:
前記広がり方向に沿って異なる複数の長さに対応する複数の保存補正パターンを補間して補正パターンが当該撮像対象の領域に一致するようにする、
ことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも一つの特性の決定が未補正再構成画像において当該撮像対象の中心を決定することを含み、当該方法がさらに:
前記選択された補正パターンを平行移動させて該補正パターンの中心が未補正再構成画像における当該撮像対象の前記の決定された中心に揃うようにする、
ことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
当該未補正再構成画像が二次元であり:
前記の少なくとも一つの特性の決定が、当該未補正再構成画像において、中心座標(x0,y0)、当該撮像対象のx方向の長さL0および当該撮像対象のy方向の幅W0を決定することを含み、
前記の補正パターンの選択が、前記補正パターンF(x,y)を調整して
【数1】

に従って調整済み補正パターンFadj(x,y)を生成することを含み、ここで、LおよびWは当該未補正再構成画像における当該撮像対象の前記長さL0およびW0に対応する、前記補正パターンF(x,y)の長さおよび幅である、
ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
当該未補正再構成画像の解像度を決定し、
前記選択された補正パターンの画像要素を補間して、当該未補正再構成画像の前記決定された解像度をもつ調整済み補正パターンを生成する、
ことをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記の未補正再構成画像の補正が:
当該未補正再構成画像の画像要素の値に前記補正パターンの対応する要素の値を乗じる、
ことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
送信補正パターンおよび受信補正パターンを提供し、
前記送信補正パターンおよび前記受信補正パターンに従って当該未補正再構成画像における強度を補正し、前記送信補正パターンに従って当該未補正再構成画像におけるコントラストを補正する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記補正パターンが当該撮像対象におけるフリップ角変動のマップを提供し、当該方法がさらに:
当該未補正再構成画像の画像要素の値を、前記補正パターンの対応する要素によって示されるフリップ角変動に基づいて計算される補正値を用いて補正する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
撮像対象の選択された領域を撮像するのに先立ち、前記選択された領域を表すファントムの磁気共鳴撮像データを収集し、
前記ファントムの磁気共鳴撮像データを再構成して再構成されたファントム画像とし、
前記ファントムおよび前記再構成されたファントム画像の特性の相違から前記補正パターンを決定する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記収集された磁気共鳴撮像データを収集するのに使われた磁気共鳴撮像スキャナの特性、磁場の強さならびに当該撮像対象の誘電的および伝導的特性に基づいて前記補正パターンを計算する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
当該撮像対象に対応する複数のサンプル被験体の磁気共鳴撮像データを収集し、
前記サンプル被験体の磁気共鳴撮像データを再構成してサンプル再構成画像とし、
前記サンプル再構成画像の統計的解析に基づいて前記補正パターンを計算する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
当該撮像領域における磁場の強さでの磁気共鳴波長に基づいて前記補正パターンを生成する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成する装置であって:
前記収集された磁気共鳴撮像データを再構成して撮像対象の未補正再構成画像にする手段と、
前記撮像対象の少なくとも一つの特性を決定する手段と、
保存されている補正パターンの族から前記少なくとも一つの特性に基づいて補正パターンを選択する手段と、
前記未補正再構成画像を前記選択された補正パターンを使って補正し、前記補正済み再構成画像を生成する手段、
とを含むことを特徴とする装置。
【請求項18】
少なくとも磁場の強さおよび画像分類によって指示される保存補正パターンのデータベースをさらに含んでおり、前記選択する手段が該データベースにアクセスして前記選択された補正パターンを取得する、
ことを特徴とする、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記データベースが送信補正パターンおよび受信補正パターンを保存していることを特徴とする、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記データベースが送信コントラスト補正パターン、送信強度補正パターンおよび受信強度補正パターンを保存していることを特徴とする、請求項18記載の装置。
【請求項21】
前記選択する手段が:
前記データベースからの前記保存補正パターンの一つを変換して、当該撮像対象の前記少なくとも一つの特性に一致する前記選択された補正パターンを生成する手段、および、
前記データベースからの前記保存補正パターンの複数を補間して、当該撮像対象の前記少なくとも一つの特性に一致する前記選択された補正パターンを生成する手段、
のうちの一つを含むことを特徴とする、請求項18記載の装置。
【請求項22】
撮像対象の磁気共鳴撮像データを収集するための磁気共鳴撮像スキャナと、
前記磁気共鳴撮像スキャナによって収集された磁気共鳴撮像データから補正済み再構成画像を生成するための請求項17記載の装置、
とを含むことを特徴とする、磁気共鳴撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−503904(P2007−503904A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525209(P2006−525209)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002840
【国際公開番号】WO2005/024725
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】