説明

高粘度材料の塗布装置

【課題】均一厚さの高粘度材料層を形成することが可能な高粘度材料の塗布装置を提供する。
【解決手段】高粘度材料の塗布装置は、被塗布面Sに対し相対的に移動しながら吐出部21から高粘度材料を吐出して高粘度材料を被塗布面Sに塗布する。吐出部21は、塗布方向に離間した複数の連続した開口21A,21Bからなり、前記開口の形状を前記塗布方向に積み重ねた形状が、前記塗布方向に非対象、前記塗布方向と直交する方向に対象である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度材料の塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車体に、防音、防振効果を得るために高粘度材料を塗布して高粘度材料層を形成することがある。例えば、フロアパネルの表面(被塗布面)上に高粘度材料層を形成し、その後、その上からフロアマット等を載置している。
【0003】
高粘度材料が供給されるノズルをロボットなどで移動させ、高粘度材料を帯状に順次隣接させて塗布することにより、広範囲な面に亘る高粘度材料層を形成している。
【0004】
特許文献1には、ノズルの導入口から導出口(吐出部)へ一定の平行幅に延び且つ一定の間隙幅を持つノズル通路を有する平行ノズルを用いて、高粘度材料を均一厚さに塗布することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
良好な防音、防振効果を得るためには、高粘度材料層を厚くする必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されたノズルを用いても、十分な厚さを有する均一な高粘度材料層を得ることができない。高粘度材料層の厚さが不均一である場合、最小厚さ部分の高粘度材料層によって得られる程度の防音、防振効果しか得られない。そのため、余剰な厚さとなる部分が広範囲に亘り、高粘度材料を余分に消費するため、コスト高になるという問題がある。
【0007】
また、隣接させて形成する高粘度材料層の間に隙間があると、著しく防音、防振効果が低下するので、高粘度材料層の端部同士を重ね合わせている。しかしながら、この重ね合わせによる盛り上がりが、高粘度材料層の上に載置されるフロアマットなどの周囲部材と干渉して、組み付け性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、均一厚さの高粘度材料層を形成することが可能な高粘度材料の塗布装置を提供することを目的とする。また、本発明は、隣接する重ね合わせ部の盛り上がりを解消することが可能な高粘度材料の塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高粘度材料の塗布装置は、被塗布面に対し相対的に移動しながら吐出部から高粘度材料を吐出して前記高粘度材料を被塗布面に塗布する高粘度材料の塗布装置であって、前記吐出部は、塗布方向に離間した複数の連続した開口からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の高粘度材料の塗布装置によれば、塗布方向に離間した複数の連続した開口から吐出した高粘度材料が被塗布表面上に塗布されて高粘度材料層が形成される。高粘度材料層は、ある程度の厚さを超えると、塗布によって均一な厚さに形成することが困難になる。そこで、このような厚さの均一な高粘度材料からなる層が必要な場合には、塗布によって均一な厚さに形成することが可能な程度の厚さの高粘度材料層を塗布方向の進行側に位置する開口から吐出された高粘度材料で形成し、その後、その上に塗布方向の後方側に位置する開口から吐出された高粘度材料で形成される高粘度材料層を積層させることにより、全体として均一な厚さの高粘度材料ならなる層を形成することができる。よって、その厚さを厚く且つ均一にすることができる。
【0011】
さらに、1つの開口のみからなる吐出部を備えた装置を用いた場合、高粘度材料層を積層させるためには層数に等しい数の塗布工程が必要となる。この場合と比較して、塗布方向に離間した複数の連続した開口からなる吐出部を備えるので、1回の塗布工程で開口の数に等しい層数だけ積層された高粘度材料層を形成することができる。そのため、全体の工程時間が短縮化される。
【0012】
また、本発明の高粘度材料の塗布装置において、複数の前記開口の形状を前記塗布方向に積み重ねた形状が、前記塗布方向に非対称、前記塗布方向と直交する方向に対称であることが好ましい。
【0013】
この場合、1回の塗布工程で被塗布面に積層される高粘度材料層の端部形状は垂直方向に非対称、水平方向に対称となる。そのため、積層される高粘度材料層の端部同士を重ね合わせても盛り上がり少ない。そのため、周囲部品との干渉が発生せず、組み付け性に悪影響が少なく。
【0014】
例えば、各前記開口の形状は三角形状の底部を前記塗布方向と直交する方向に連接した形状であってもよい。また、各前記開口の形状は矩形状であってもよい。
【0015】
また、本発明の高粘度材料の塗布装置において、複数の前記開口の形状を前記塗布方向に積み重ねた形状が矩形状であることが好ましい。
【0016】
この場合、1回の塗布工程で被塗布面に積層される高粘度材料層の横断面形状は矩形形状になる。そのため、高粘度材料層の厚さを厚く且つ均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】高粘度材料の塗布装置を示す概念図。
【図2】(a)はノズルの下面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図3】(a)はノズルから吐出された高粘度材料が被塗布面上に塗布される状態を示す概念図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図4】積層高粘度材料層の横断面図を概念的に示す図であり、(a)は第1の塗布工程後、(b)は第2の塗布工程後、(c)は第3の塗布工程後の状態をそれぞれ示す。
【図5】ノズルの下面図。
【図6】(a)はノズルから吐出された高粘度材料が被塗布面上に塗布される状態を示す概念図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図7】積層高粘度材料層の横断面図を概念的に示す図であり、(a)は第1の塗布工程後、(b)は第2の塗布工程後、(c)は第3の塗布工程後の状態をそれぞれ示す。
【図8】ノズルの下面図。
【図9】積層高粘度材料層の横断面図を概念的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態で用いる高粘度材料は、アクリルエマルジョン系の成分を主成分とする液状メルシートであり、所定温度、例えば28℃以上では液状であり、28℃未満になると急激に硬化する。
【0020】
高粘度材料は、冷却されて硬化した数mm程度の高粘度材料層の上にさらに数mm程度の高粘度材料層が形成されても、高粘度材料層の形状、特に端部形状が実質的に変形しない程度の強度を有している。このような高粘度材料層は、その粘度が0.8Pa・s以上であればよい。
【0021】
高粘度材料が塗布される被塗布物は、例えば、自動車等の車体のフロアパネルなどの板金パネル部品であり、SPC鋼板、亜鉛メッキ鋼板などの鋼板から形成されている。ただし、本発明における被塗布物は、板金パネル部品に限定されず、その素材も限定されない。そして、被塗布物の表面である被塗布面は、特に大きな段差や穴がなければ、凹凸形状や傾斜を有するものであってもよい。
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態に係る高粘度材料の塗布装置100について説明する。
【0023】
図1に示すように、塗布装置100は、塗布ガン10、塗布ガン10の先端に取付けられたノズル20、ノズル20に先端が接続されるホース30、塗布ガン10がハンド先端に取付けられた多関節形のロボット40、高粘度材料を貯留するタンク50、タンク50に貯留された高粘度材料をホース30の後端から吸い込みホース30内を圧送させるポンプ60、ホース30の途中に設けられたバルブ70、ホース30内を圧送される高粘度材料の流量を検出する流量計80、及び制御部90を備えている。
【0024】
ノズル20は、高粘度材料を一定温度に加熱可能なヒートノズルであり、ホース30も、高粘度材料を一定温度に加熱可能なヒートホースである。高粘度材料を一定温度にすることにより、高粘度材料の粘度が外気温の影響を受けずに一定となるとともに、低粘度となってポンプ60の負荷を低減できる。
【0025】
ノズル20内では加熱されて液状の高粘度材料は、ノズル20から吐出され外気と接すると放熱が開始されて温度が降下し、急激に高粘度になる。
【0026】
制御部90は、CPU、ROM、RAM、I/O等から構成されており、予めティーチングされている教示プログラムを実行することなどにより、予め定められた塗布が行われるように、流量計80が検出した流量に応じて、ロボット40、ポンプ60及びバルブ70を制御する。
【0027】
図2(a)に示すように、ノズル20は、塗布方向(図面上下方向)に離間した複数、ここでは2つの連続した開口21A,21Bからなる吐出部21が下面に形成されている。開口21A,21Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状は、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向(図面左右方向)に対称になっている。
【0028】
開口21A,21Bは、具体的には、それぞれ同一形状の二等辺三角形の底辺部が塗布方向に対して直交する方向に連接された形状であり、平行に配置されている。一方の開口(例えば21A)の二等辺三角形の頂部と、他方の開口(例えば21B)の二等辺三角形の底辺部の連接部とは塗布方向に一直線上に配置されている。これにより、開口21A,21Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状は、略台形形状であり、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向に対称になっている。
【0029】
図2(b)に示すように、ノズル20は、ホース30の先端が接続される導入口22、及び吐出部21と導入口22とを連通する放射状の導入通路23を備えている。これにより、開口21A,21Bから吐出されて、被塗布面S上に貼り付けるようにして形成される高粘度材料層の横断面形状は、開口21A,21Bの形状に倣ったものとなる。
【0030】
開口21A,21Bは塗布方向に離間しているので、図3(a)に示すように、開口21A,21Bから同時に吐出された高粘度材料は塗布方向(図中矢印方向)に離間して流下して、被塗布面S上に塗布される。
【0031】
開口21Aを塗布方向進行側、開口21Bを塗布方向後側に位置させて塗布を行った場合、開口21Aから吐出されて形成された高粘度材料層24Aの上に、開口21Bから吐出されて形成された高粘度材料層24Bが積層されることになる。図3(b)に示すように、これら2つの高粘度材料層24A,24Bとが積層されてなる積層高粘度材料層Pの横断面形状は、開口21A,21Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状と同じ略台形形状となり、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向に対称である。
【0032】
なお、開口21A,21B間の間隔、ノズル20から吐出されるときの高粘度材料の温度や剪断速度、ノズル20の移動速度などは、2つの高粘度材料層24A,24Bが積層したときに、下方の高粘度材料層24Aの端部形状が変形しないように、ノズル20から被塗布面Sまでの距離、外気温、作業効率などを考慮して適宜定めることができる。
【0033】
一例として、開口21A,21Bの三角形状の高さは0.3mm〜数mm程度、開口21A,21B間の間隔は数mm程度、ノズル20から吐出されるときの高粘度材料の温度は28℃〜30℃、ノズル20から吐出されるときの高粘度材料の剪断速度は10000/秒〜20000/秒、ノズル20の移動速度は200mm/分〜1500mm/分である。
【0034】
以上のように構成された塗布装置100は、被塗布面Sに対し相対的に移動しながら吐出部21から加熱状態の高粘度材料を吐出する。吐出された高粘度材料は流下して被塗布面Sに達し冷却されて硬化され、帯状の積層高粘度材料層Pを形成する。
【0035】
以下、塗布装置100を用いた高粘度材料の塗布方法について説明する。以下、塗布装置100の動作制御は制御部90の制御指令に応じて行われる。
【0036】
まず、ポンプ60を運転してノズル20の吐出部21から高粘度材料を吐出させながら、ロボット40を動作させてノズル20を塗布方向に直線状に移動させることにより、第1の塗布工程を行う。これにより、図4(a)に示すように、2つの高粘度材料層24A,24Bとが積層されてなり、横断面形状が略台形形状である第1の積層高粘度材料層P1が帯状に形成される。
【0037】
次に、ロボット40を動作させて、ノズル20を第1の塗布工程の塗布開始位置から塗布方向と直交する方向に予め設定された距離だけ離間した位置まで移動させる。その後、ポンプ60を運転してノズル20の吐出部21から高粘度材料を吐出させながら、ロボット40を動作させてノズル20を第1の塗布工程の塗布方向と同一方向に直線状に移動させることにより、第2の塗布工程を行う。これにより、図4(b)に示すように、2つの高粘度材料層24A,24Bとが積層されてなり、横断面形状が略台形形状である第2の積層高粘度材料層P2が、第1の積層高粘度材料層P1と離間して帯状に形成される。
【0038】
次に、ロボット40を動作させて、ノズル20を第1の塗布工程と第2の塗布工程との塗布終了時の位置の中間まで移動させる。その後、ポンプ60を運転してノズル20の吐出部21から高粘度材料を吐出させながら、ロボット40を動作させてノズル20を第1及び第2の塗布工程における塗布方向と逆方向に直線状に移動させることにより、第3の塗布工程を行う。これにより、図4(c)に示すように、2つの高粘度材料層24A,24Bとが積層されてなり、横断面形状が略台形形状である第3の積層高粘度材料層P3が、第1の及び第2の積層高粘度材料層P1,P2と端部を接した状態で帯状に形成される。3つの帯状の積層高粘度材料層P1〜P3は、端部が互いに重なり合って並行に位置する。
【0039】
第3の積層高粘度材料層P3は、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2とは異なり、相対的に短辺の辺が底辺となる略台形形状の横断面形状を有している。これは、第3の塗布工程での塗布方向が、第1及び第2の塗布方向での塗布方向とは逆方向であるため、開口21Bから吐出された高粘度材料で形成された高粘度材料層24Bの上に開口21Aから吐出された高粘度材料で形成された高粘度材料層24Aが積層されたためである。
【0040】
第3の積層高粘度材料層P3の両端部は、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2の端部とそれぞれ嵌合するように重なり合うことが最も好ましい。これにより、第1から第3の積層高粘度材料層P1〜P3は、全体として略台形形状の横断面形状を有し、両端部の僅かな領域を除いて広範囲な面で均一な厚さとなる。
【0041】
また、誤差によって、第3の積層高粘度材料層P3の両端部が、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2の端部とそれぞれ嵌合しない場合であっても、各積層高粘度材料P1,P2,P3の端部は傾斜しているので、これらの端部が重なり合っても、然程盛り上がりが生じない。よって、並行する3つの積層高粘度材料層P1〜P3の上に載置されるフロアマットなどの周辺部材との干渉が防止され、組み付け性に悪影響を及ぼさない。
【0042】
なお、第3の塗布工程において、ノズル20の吐出口21の方向を変えるように組み替えて第1及び第2の塗布工程の塗布方向と同一方向に塗布してもよい。ただし、この場合、組み替える手間を考慮すると、好ましくない。
【0043】
また、2つの積層高粘度材料層のみを被塗布面S上に形成する場合、第2の塗布工程において、第1の塗布工程における塗布方向と逆方向に塗布して、第2の積層高粘度材料層の端部が第1の積層高粘度材料層の端部に重なり合うようにすればよい。
【0044】
塗布ガン10のティーチングを容易にするために、被塗布面Sが凹凸形状を有している場合であっても、ノズル20を水平方向に移動させて塗布することがある。特にこのような場合、ノズル20と被塗布面Sとの間の距離が広がることがあるため、開口21A,21Bの個々の三角形状が分離していると、高粘度材料層24A,24Bが連続しないおそれがある。そこで、確実に連続した帯状の高粘度材料層24A,24Bを形成するために、三角形状の底部を連結している。
【0045】
開口21A,21B間の間隔が狭過ぎすると、高粘度材料層24Aが十分に硬化する前に、その上に高粘度材料層24Bが積層されて、高粘度材料層24Aの形状、特に端部形状が変形するおそれがる。また、開口21A,21Bが一体化されていると、厚さの厚い高粘度材料層が形成されるので、厚さが均一化しない。
【0046】
以下、本発明の第2の実施形態に係る高粘度材料の塗布装置について説明する。
【0047】
この塗布装置は、前述した塗布装置100と比較して、図5に示すように、ノズル25の下面に形成された吐出部26のみが異なっている。
【0048】
吐出部26を構成する開口26A,26Bは、それぞれ塗布方向に対して直交する方向(図面左右方向)を長手方向とする矩形形状であり、平行に配置されている。そして、開口26Aは、開口26Bより長手方向の両端部が同一長さだけ長くなっている。これにより、開口26A,26Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状は、両端部に段差を備えた矩形形状であり、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向に対称になっている。
【0049】
開口26A,26Bは塗布方向に離間しているので、図6(a)に示すように、開口26A,26Bからそれぞれ同時に吐出された高粘度材料は塗布方向に離間して流下して、被塗布面S上に塗布される。
【0050】
開口26Aを塗布方向進行側、開口26Bを塗布方向後側に位置させて塗布を行った場合、開口26Aから吐出されて形成された高粘度材料層27Aの上に、開口26Bから吐出されて形成された高粘度材料層27Bが積層されることになる。図6(b)に示すように、これら2つの高粘度材料層27A,27Bとが積層されてなる積層高粘度材料層Pの横断面形状は、開口26A,26Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状と同じく両端部に段差を備えた矩形形状となり、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向に対称である。
【0051】
なお、開口26A,26B間の間隔、ノズル25から吐出されるときの高粘度材料の温度や剪断速度、ノズル25の移動速度などは、2つの高粘度材料層27A,27Bが積層したときに、下方の高粘度材料層27Aの端部形状が変形しないように、ノズル25から被塗布面Sまでの距離、外気温、作業効率などを考慮して適宜定めることができる。
【0052】
一例として、開口26A,26Bの矩形形状の短辺は0.3mm〜数mm程度以下、開口26A,26B間の間隔は数mm程度、ノズル25から吐出されるときの高粘度材料の温度は28℃〜30℃、ノズル25から吐出されるときの高粘度材料の剪断速度は10000/秒〜20000/秒、ノズル25の移動速度は200mm/分〜1500mm/分である。
【0053】
以上のように構成された塗布装置は、被塗布面Sに対し相対的に移動しながら吐出部25から加熱状態の高粘度材料を吐出する。吐出された高粘度材料は流下して被塗布面Sに達し冷却されて硬化され、帯状の積層高粘度材料層Pを形成する。
【0054】
以下、この塗布装置を用いた高粘度材料の塗布方法について説明する。本塗布方法は、第1の実施形態に係る高粘度材料の塗布方法と類似するので、簡略に説明する。
【0055】
まず、第1の塗布工程を行い、図7(a)に示すように、2つの高粘度材料層27A,27Bとが積層されてなり、横断面形状が両端部に段差を備えた矩形形状である第1の積層高粘度材料層P1が帯状に形成される。
【0056】
次に、第2の塗布工程を行い、図7(b)に示すように、2つの高粘度材料層27A,27Bとが積層されてなり、横断面形状が両端部に段差を備えた矩形形状である第2の積層高粘度材料層P2が、第1の積層高粘度材料層P1と離間して帯状に形成される。
【0057】
次に、第3の塗布工程を行い、図7(c)に示すように、2つの高粘度材料層27A,27Bとが積層されてなり、横断面形状が両端部に段差を備えた矩形形状である第3の積層高粘度材料層P3が、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2と端部を接した状態で帯状に形成される。3つの帯状の積層高粘度材料層P1〜P3は、端部が互いに重なり合って並行に位置される。
【0058】
第3の積層高粘度材料層P3は、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2とは異なり、両端の下端部が切欠かれた段差を備えた矩形形状の横断面形状を有している。これは、第3の塗布工程での塗布方向が、第1及び第2の塗布方向での塗布方向とは逆方向であるため、開口26Bから吐出された高粘度材料で形成された高粘度材料層27Bの上に開口26Aから吐出された高粘度材料で形成された高粘度材料層27Aが積層されたためである。
【0059】
第3の積層高粘度材料層P3の両端部は、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2の端部とそれぞれ嵌合するように重なり合うことが最も好ましい。これにより、第1から第3の積層高粘度材料層P1〜P3は、全体として略台形形状の横断面形状を有し、両端部の僅かな領域を除いて広範囲な面で均一な厚さとなる。
【0060】
また、誤差によって、第3の積層高粘度材料層P3の両端部が、第1及び第2の積層高粘度材料層P1,P2の端部とそれぞれ嵌合しない場合であっても、各積層高粘度材料P1,P2,P3の端部は段差を備えているので、これらの端部が重なり合っても、然程盛り上がりが生じない。よって、並行する3つの積層高粘度材料層P1〜P3の上に載置されるフロアマットなどの周辺部材との干渉が防止され、組み付け性に悪影響を及ぼさない。
【0061】
なお、第3の塗布工程において、ノズル20の吐出口21の方向を変えるように組み替えて第1及び第2の塗布工程の塗布方向と同一方向に塗布してもよい。ただし、この場合、組み替える手間を考慮すると、好ましくない。
【0062】
また、2つの積層高粘度材料層のみを被塗布面S上に形成する場合、第2の塗布工程において、第1の塗布工程における塗布方向と逆方向に塗布して、第2の積層高粘度材料層の端部が第1の積層高粘度材料層の端部に重なり合うようにすればよい。
【0063】
以下、本発明の第3の実施形態に係る高粘度材料の塗布装置について説明する。
【0064】
この塗布装置は、前述した塗布装置100と比較して、図8に示すように、ノズル28の下面に形成された吐出部29のみが異なっている。
【0065】
吐出部29を構成する開口29A,29Bは、それぞれ塗布方向に対して直交する方向(図面左右方向)を長手方向とする矩形形状であり、平行に配置されている。そして、開口29Aと開口29Bとは長手方向に同一長さとなっている。これにより、開口29A,29Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状は、矩形形状であり、塗布方向に対称、塗布方向と直交する方向に対称になっている。
【0066】
開口29A,29Bは塗布方向に離間しているので、図9に示すように、開口29A,29Bからそれぞれ同時に吐出された高粘度材料は塗布方向に離間して流下して、被塗布面S上に塗布される。
【0067】
開口29Aを塗布方向進行側、開口29Bを塗布方向後側に位置させて塗布を行った場合、開口29Aから吐出されて形成された高粘度材料層31Aの上に、開口29Bから吐出されて形成された高粘度材料層31Bが積層されることになる。これら2つの高粘度材料層31A,31Bとが積層されてなる積層高粘度材料層Pの横断面形状は、開口29A,29Bの形状を塗布方向に積み重ねた形状と同じく、矩形形状となり、塗布方向に対称、塗布方向と直交する方向に対称である。
【0068】
なお、開口29A,29B間の間隔、ノズル28から吐出されるときの高粘度材料の温度や剪断速度、ノズル28の移動速度などは、2つの高粘度材料層29A,29Bが積層したときに、下方の高粘度材料層29Aの端部形状が変形しないように、ノズル28から被塗布面Sまでの距離、外気温、作業効率などを考慮して適宜定めることができる。
【0069】
一例として、開口29A,29Bの矩形形状の短辺は0.3mm〜数mm程度以下、開口29A,29B間の間隔は数mm程度、ノズル28から吐出されるときの高粘度材料の温度は28℃〜30℃、ノズル28から吐出されるときの高粘度材料の剪断速度は10000/秒〜20000/秒、ノズル20の移動速度は200mm/分〜1500mm/分である。
【0070】
以上のように構成された塗布装置は、被塗布面Sに対し相対的に移動しながら吐出部28から加熱状態の高粘度材料を吐出する。吐出された高粘度材料は流下して被塗布面Sに達し冷却されて硬化され、帯状の積層高粘度材料層Pを形成する。
【0071】
以下、この塗布装置を用いた高粘度材料の塗布方法について説明する。本塗布方法は、複数の帯状の積層高粘度材料層Pを並行して配置する場合には適したものではなく、1つの帯状の積層高粘度材料層Pのみを、又は隣接する積層高粘度材料層Pと離間させて積層高粘度材料層Pを形成する場合に適した方法である。
【0072】
ポンプ60を運転してノズル20の吐出部29から高粘度材料を吐出させながら、ロボット40を動作させてノズル20を塗布方向に直線状に移動させることにより、第1の塗布工程を行う。これにより、図9に示すように、2つの高粘度材料層31A,31Bとが積層されてなり、横断面形状が矩形形状である積層高粘度材料層Pが帯状に形成される。
【0073】
なお、1つの開口のみから構成される吐出口を備えたノズルを用いてもよい。この場合、下層の高粘度材料層を全て形成した後、その上に高粘度材料層を形成することになる。ただし、工程が長時間化されるので、好ましくない。
【0074】
なお、以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、吐出口は2つの開口からなるものに限定されず、3つ以上の開口から構成されるものであってもよい。この場合、積層高粘度材料層は3層以上の高粘度材料層が積層されたものとなる。
【0075】
また、第1及び第2の実施形態において、2列又は3列の積層高粘度材料層Pを隣接して形成する場合について説明した。しかし、これに限定されず、1列又は4列以上の積層高粘度材料層Pを形成してもよい。
【0076】
また、複数列の積層高粘度材料層Pを隣接して形成する場合、吐出部21,26が開口21A,21B,26A,26Bを備える場合について説明した。しかし、これに限定されず、開口の形状を塗布方向に積み重ねた形状が、塗布方向に非対称、塗布方向と直交する方向に対称であればよい。例えば、開口の形状が波状の形状であってもよい。
【0077】
また、1列の積層高粘度材料層Pを形成する場合、、吐出部29が開口29A,29Bを備える場合について説明した。しかし、これに限定されず、開口の形状を塗布方向に積み重ねた形状が矩形形状であればよく、互いに異なる形状の複数の開口から構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…溶接ガン、 20,25,28…ノズル、 21,26,29…吐出部、 21A,21B,26A,26B,29A,29B…開口、 24A,24B,27A,27B,31A,31B…高粘度材料層、 P,P1,P2,P3…積層高粘度材料層、 30…ホース、 40…ロボット、 100…塗布装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布面に対し相対的に移動しながら吐出部から高粘度材料を吐出して前記高粘度材料を被塗布面に塗布する高粘度材料の塗布装置であって、
前記吐出部は、塗布方向に離間した複数の連続した開口からなることを特徴とする高粘度材料の塗布装置。
【請求項2】
複数の前記開口の形状を前記塗布方向に積み重ねた形状が、前記塗布方向に非対称、前記塗布方向と直交する方向に対称であることを特徴とする請求項1に記載の高粘度材料の塗布装置。
【請求項3】
各前記開口の形状は三角形状の底部を前記塗布方向と直交する方向に連接した形状であることを特徴とする請求項2に記載の高粘度材の塗布装置。
【請求項4】
各前記開口の形状は矩形状であることを特徴とする請求項2に記載の高粘度材の塗布装置。
【請求項5】
複数の前記開口の形状を前記塗布方向に積み重ねた形状が矩形状であることを特徴とする請求項1に記載の高粘度材の塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−110829(P2012−110829A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261559(P2010−261559)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】