説明

高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造

【課題】 熱膨張による破壊を防止した高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造を提供する。
【解決手段】 コネクタ付きBGA型LSI300とプリント基板500とを電気的に接続させると共に、コネクタ付きBGA型LSI300をプリント基板500に押圧させながらコネクタ付きBGA型LSI300がリジットケーブル101の長手方向に微動できる押圧接続手段102、110を設けることにより、リジットケーブル101が熱膨張収縮してコネクタ付きBGA型LSI300がプリント基板500上を微動すると、導電フィルム110にずれが生じて導電フィルム110内の導電ワイヤ201がそのずれに追従するので、コネクタ付きBGA型LSI300とプリント基板500との電気的接続が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速信号をハンドリング(送信若しくは受信)する上で、従来は、伝送速度が10Gbit/s未満と低速であったため、プリント基板上に10Gbit/sの伝送速度に対応した配線パターンを形成することができた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、信号の伝送速度が10Gbit/s以上(例えば40Gbit/s)の高速になると、表皮効果による高速信号の減衰の問題からプリント基板上に10Gbit/s以上の高速信号を伝送するパターンを形成することができない。
【0004】
そこで、上記問題点に対応する手段として、10Gbit/s以上の高速信号を伝送する際は、高速信号伝送用の専用のコネクタ(例えばVコネクタ、Kコネクタ、GPOコネクタ、GPPOコネクタ等)と高速信号を低損失で伝送するため最短距離であるほぼ直線状の同軸ケーブル(リジットケーブル、セミリジッドケーブル等)とを用いることで実現している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−270747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、10Gbit/s以上の高速信号を処理する伝送装置等のシステムにおいて、プリント基板とコネクタ付きBGA型LSIとを半田リフローを用いて半田ボールとプリント基板とを固定(完全接続)すると、同軸ケーブルを用いた接続によるストレスや、温度変化(0℃〜70℃)による熱膨張収縮で応力が生じた場合に、その応力の逃げ場が無いので、コネクタ付きBGA型LSIやプリント基板が物理的破壊を起こすことがしばしば発生していたという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、熱膨張による破壊を防止した高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、筐体内に配置されたプリント基板上で高速信号用の素子と高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとを略直線状の同軸ケーブルで接続した接続構造であって、プリント基板と高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとの間に挿入され、弾性樹脂からなるフィルム内にフィルムの厚さ方向に沿った導電ワイヤがフィルムの面方向に縦横に配置された導電フィルムを備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成に加え、高速信号用コネクタ付きBGA型LSIが同軸ケーブルの長手方向に微動すべく高速信号用コネクタ付きBGA型LSIをプリント基板側に押圧する押圧手段とを備えていてもよい。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成に加え、押圧手段は、一端が筐体に固定され、他端が高速信号用コネクタ付きBGA型LSIに接触するように略L字形状に屈曲すると共に他端部の長さが高速信号用コネクタ付きBGA型LSIをプリント基板側に押圧するのに必要な長さを有するブロックとを備えていてもよい。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の構成に加え、押圧手段は、一端が筐体に固定され、他端が高速信号用コネクタ付きBGA型LSIに接触すると共に高速信号用コネクタ付きBGA型LSIをプリント基板に押圧するバネとを備えていてもよい。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の構成に加え、押圧手段は、高速信号用コネクタ付きBGA型LSIのコネクタ支持枠に微動方向に沿って形成された長穴と、プリント基板に形成された貫通孔と、長孔と貫通孔とを貫通し高速信号用コネクタ付きBGA型LSIをプリント基板に微動可能に押圧する締結手段とを備えていてもよい。
【0013】
本発明の構成によれば、高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板とを電気的に接続させながらコネクタ付きBGA型LSIをプリント基板に押圧することで、同軸ケーブルが熱膨張収縮することによりコネクタ付きBGA型LSIがプリント基板上をその同軸ケーブルの長手方向に微動する。コネクタ付きBGA型LSIが微動すると、導電フィルムにずれが生じ、そのずれに伴って導電フィルム内の導電ワイヤがコネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との間の接触状態を保持するようにそのずれに追従するので、コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との電気的接続が維持される。
【発明の効果】
【0014】
以上要するに本発明によれば、熱膨張による破壊を防止した高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造の提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は本発明の高速信号用BGA型LSIとプリント基板との接続構造を有する構造体の一実施の形態を示す概念図である。
【0017】
プリント基板500の一方の主面(図1では上面)上に導電フィルム110を介してコネクタ付きBGA型LSI300が載置されている。コネクタ付きBGA型LSI300は、コネクタ304に一端が接続された同軸型のリジットケーブル101及びコネクタ107を介してプリント基板500の一方の主面上に取り付けられた素子106に電気的に接続されている。
【0018】
押圧手段としてのブロック102は、一端(図では左端)が筐体400のスペーサ150にネジ103で固定され、他端(この場合、右下端)がコネクタ付きBGA型LSI300に接触するように略L字形状に屈曲すると共に、他端部の長さがコネクタ付きBGA型LSI300をプリント基板500側に押圧するのに必要な長さを有するように形成したものである。コネクタ付きBGA型LSI300は、このブロック102の他端が枠部材302に接触すると共に導電フィルム110を押圧しているが、固定されているわけではないので、同軸ケーブル101の長手方向(矢印105方向)に微動できるようになっている。ブロック102の材質には例えばアルミニウムが用いられるが、熱伝導率がアルミニウム程度であれば、マグネシウム合金やチタン合金等を用いてもよい。
【0019】
ブロック102の他端には、このブロック102に押されたコネクタ付きBGA型LSI300が導電フィルム110を適度な圧力で押圧できるように、熱伝導性ゴム(若しくは熱伝導性スポンジ)104が設けられている。
【0020】
ここで、熱伝導性ゴム104を用いるのは、コネクタ付きBGA型LSI300で発生した熱を熱伝導率の高いアルミニウムからなる筐体400に伝導させると共に、一応の摩擦力を得るためである。これら導電フィルム110と、ブロック102とで押圧接続手段160が構成されている。尚、ブロック102は一端が筐体400に固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリント基板500に固定してもよい。尚、ブロック102がアルミニウムのような熱伝導率が高い材質からなり、かつブロック102の他端が必要な摩擦力を有するように粗面化されている場合には、この熱伝導性ゴム104はなくても良い。
【0021】
図5に、本発明を応用した光送受信器の内部を示す。図示されるように、ブロック102は、角柱状の押圧ヘッド部1と、その押圧ヘッド部1の頂部より水平に突き出して延出された直方体状の固定用フランジ2とからなり、固定用フランジ2にはネジ用貫通穴3が設けられている。このブロックは図1で説明したように筐体400にネジ103で固定されているが、この図では筐体400は省略してある。筐体400の相手方である下部筐体4は上部が開放された箱状の部材であり、下部筐体4の底部には、図1で説明したプリント基板500、コネクタ付きBGA型LSI300、同軸ケーブル101、素子106が収容され、プリント基板500は下部筐体4に固定されている。この図では、コネクタ付きBGA型LSI300のみ示してある。下部筐体4の側壁5の上面には筐体400を取り付けるためのネジ穴6が設けてある。ブロック102が取り付けられている筐体400をこの下部筐体4に被せると、ブロック102の押圧ヘッド部1の基端部がコネクタ付きBGA型LSI300の上面に接する。そして、筐体400と下部筐体4とをネジ止めで一体化すると、コネクタ付きBGA型LSI300をプリント基板500側に押圧することができる。このとき、コネクタ付きBGA型LSI300は、上下方向には固定され、水平方向にはズレが許容される。
【0022】
図2(a)は図1に示した構造体100の常温における導電フィルム110近傍の部分拡大断面図であり、図2(b)は図1に示した構造体100の高温(例えば70℃)における導電フィルム110近傍の部分拡大断面図である。
【0023】
図2(b)に示す導電フィルム110は、図1に示した同軸ケーブル101の熱膨張によりコネクタ付きBGA型LSI300が矢印105方向に押されることにより導電フィルム110にずれが生じた状態を示している。
【0024】
導電フィルム110は、弾性樹脂(例えばゴム)からなるフィルム200内にフィルム200の厚さ方向に沿った導電ワイヤ201がフィルム200の面方向に縦横(紙面に垂直な面)に配置されたものである。
【0025】
図2(a)に示すように、コネクタ付きBGA型LSI300のボール307が導電フィルム110を押圧することにより、コネクタ付きBGA型LSI300がプリント基板500と導電ワイヤ201を介して電気的に接続されている。
【0026】
図1に示した構造体100が周囲温度が室温から上昇(例えば70℃)することにより、同軸ケーブル101が熱膨張して矢印105方向にコネクタ付きBGA型LSI300を押す応力が発生すると、導電フィルム110にずれが生じて導電フィルム110内の導電ワイヤ201がそのずれに追従するので、コネクタ付きBGA型LSI300とプリント基板500との電気的接続が維持される。これとは逆に、構造体100の周囲温度が室温から降下(例えば0℃)することにより、同軸ケーブル101が熱膨張して矢印105方向とは逆の方向にコネクタ付きBGA型LSI300を引く応力が発生しても、導電フィルム110にずれが生じて導電フィルム110内の導電ワイヤ201がそのずれに追従するので、コネクタ付きBGA型LSI300とプリント基板500との電気的接続が維持される。
【0027】
従って、上記実施の形態によれば、熱膨張による破壊を防止した高速信号用コネクタ付きBGA型LSI300とプリント基板500との接続構造を有する構造体100が得られる。
【0028】
図3は本発明の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造の他の実施の形態を示す部分拡大側面図である。
【0029】
図3に示した実施の形態と図1に示した実施の形態との相違点は、保持ブロック102を用いる代わりに板バネ600を用いる点である。
【0030】
図3において押圧接続手段650は、プリント基板500と高速信号用BGA型LSI300との間に挿入された導電フィルム110と、一端(図では左端)が筐体400のスペーサ150に固定され、他端(この場合、右端)がプリント基板500を微動可能に筐体400のプリント基板110側に押圧する押圧手段としての板バネ600とで構成されている。
【0031】
このような押圧接続手段を用いても図1に示した実施の形態と同様の効果が得られる。尚、本実施の形態においては、板バネ600の一端が筐体400に固定された場合で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、板バネ600の一端がプリント基板500に固定されていてもよい。
【0032】
図4は本発明の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造の他の実施の形態を示す部分拡大側面図である。
【0033】
図4に示した実施の形態と図1に示した実施の形態との相違点は、保持ブロック102を用いる代わりに、ネジ700及びナット703を用いる点である。
【0034】
図4において、押圧接続手段750は、プリント基板500とコネクタ付きBGA型LSI300との間に挿入された導電フィルム110と、押圧手段としてのコネクタ付きBGA型LSI300をプリント基板500の面方向に微動可能かつ、導電フィルム110を押圧するためコネクタ付きBGA型LSI300のコネクタ支持枠302に形成された長穴701と、長穴701及びプリント基板500に形成された貫通孔702を貫通するネジ700と、ネジ700に螺合するナット703とで構成されている。このネジ700及びナット703で締結手段が構成されている。このネジ700の長さは、コネクタ付きBGA型LSI300が導電フィルム110をプリント基板500に押圧するのに必要な長さを有している。
【0035】
このような押圧接続手段を用いても図1に示した実施の形態と同様の効果が得られる。尚、本実施の形態において、ネジ700とコネクタ支持枠302との間にワッシャを挿入するとと共に、プリント基板500とナット703との間にスプリングワッシャやワッシャなどを挿入し、脱落防止のためナット703を樹脂等で固定するようにしてもよい。
【0036】
以上の説明において、コネクタ付きBGA型LSI300を固定する例を述べたが、光変調モジュール、光送受信モジュール等のLSIの固定にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の高速信号用BGA型LSIとプリント基板との接続構造を有する構造体の一実施の形態を示す概念図である。
【図2】(a)は図1に示した構造体の常温における導電フィルム近傍の部分拡大断面図であり、(b)は図1に示した構造体の高温における導電フィルム近傍の部分拡大断面図である。
【図3】本発明の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造の他の実施の形態を示す部分拡大側面図である。
【図4】本発明の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造の他の実施の形態を示す部分拡大側面図である。
【図5】本発明を応用した光送受信器の内部構造斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
100 構造体
101 リジットケーブル
102 保持ブロック
103 ネジ
104 熱伝導性ゴム
110 導電フィルム
300 コネクタ付きBGA型LSI(LSI−PKG BGA)
301 LSI−Cap
302 コネクタ支持枠
303,304 Vコネクタ
307 ボール
400 筐体
500 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置されたプリント基板上で高速信号用の素子と高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとを略直線状の同軸ケーブルで接続した接続構造であって、上記プリント基板と上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとの間に挿入され、弾性樹脂からなるフィルム内に該フィルムの厚さ方向に沿った導電ワイヤが該フィルムの面方向に縦横に配置された導電フィルムを備えたことを特徴とする高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造。
【請求項2】
上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIが上記同軸ケーブルの長手方向に微動すべく上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIを上記プリント基板側に押圧する押圧手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造。
【請求項3】
上記押圧手段は、一端が上記筐体に固定され、他端が上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIに接触するように略L字形状に屈曲すると共に他端部の長さが上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIを上記プリント基板側に押圧するのに必要な長さを有するブロックとを備えた請求項1に記載の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造。
【請求項4】
上記押圧手段は、一端が上記筐体に固定され、他端が上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIに接触すると共に上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIを上記プリント基板に押圧するバネとを備えた請求項1に記載の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造。
【請求項5】
上記押圧手段は、上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIのコネクタ支持枠に微動方向に沿って形成された長穴と、上記プリント基板に形成された貫通孔と、上記長孔と該貫通孔とを貫通し上記高速信号用コネクタ付きBGA型LSIを上記プリント基板に微動可能に押圧する締結手段とを備えた請求項1に記載の高速信号用コネクタ付きBGA型LSIとプリント基板との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2005−101444(P2005−101444A)
【公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−335496(P2003−335496)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】