説明

高選択性、低損傷の電子ビーム・デリニエーション・エッチング

【課題】集束ビームを使用して基板を選択的にエッチングする方法および装置を提供する。
【解決手段】ステップ102では、少なくとも2種類の材料を有する基板を用意する。この基板は、その上に集積回路が製造されたシリコン・ウェーハとし、この基板はさらに、集積回路の一部分の断面を露出させるために集束イオン・ビームによって切削されたトレンチを含む。ステップ104では、エッチングする基板表面の一部分に、エッチング剤前駆体ガスの流束を供給する。ステップ106では、基板表面に、エッチング抑制前駆体ガスの流束を供給する。ステップ108では、電子ビームなどの集束ビームを基板に向かって、少なくとも2種類の材料を含む領域上に誘導する。このエッチング前駆体ガス、エッチング抑制ガスおよび集束ビームの組合せは、第1の材料を第2の材料に比べて選択的にエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束ビームを使用した選択エッチングに関し、特に、多層構造の断面の電子ビーム画像化に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
最新の集積回路は一般に、半導体基板上に形成された金属、半導体、絶縁体などの材料の複数の層からなる。半導体製造における製造プロセスの特性を評価し、または製造プロセスの問題を調査するため、プロセス技術者はしばしば、集束イオン・ビームを使用して集積回路の断面を切削し、次いで走査型電子顕微鏡を使用してその断面の層の縁を調べる。例えば、プロセス技術者は、ポリシリコン・ゲート、アモルファス・シリコンならびにさまざまな誘電体および障壁材料などの集積回路フィーチャを観察し、層の厚さおよび均一性を測定するために断面を切削することがある。
【0003】
走査型電子顕微鏡は、表面にわたってビームを走査したときにその表面から放出される2次電子を集めることによって画像を形成する。その画像のそれぞれの点の明るさは、その表面の対応する点から集められた2次電子の数(または他の電子信号)に比例する。それぞれの点で放出される2次電子の数は、材料のタイプおよびトポグラフィに依存する。多くの異なるタイプの材料が入射電子1つあたり異なる数の2次電子を放出するため、例えば金属層と酸化物層の間の境界を観察することは容易である。酸化物と窒化物などいくつかの類似の材料は、1次電子1つに対してほぼ同じ数の2次電子を放出し、そのため、電子ビーム画像中のそれらの材料間の境界はしばしば明白でない。
【0004】
界面を可視化する1つの方法は、界面の領域を選択的にエッチングすることである。一方の材料がもう一方の材料よりも速くエッチングされる場合、その界面ではトポグラフィが変化し、画像中でその界面を見ることができる。フィーチャをより見やすくするために工作物を処理することは「デコレーション(decoration)」と呼ばれている。本発明の譲受人による1つのデコレーション・プロセスは、delineation etch(商標)プロセスと呼ばれ、フッ素化炭化水素2,2,2−トリフルオロアセトアミドの蒸気を使用した化学支援型集束イオン・ビーム・エッチングを含む。界面を可視化するときには、プロセス技術者が工作物の正確な写真を得るように、構造をできるだけ変化させないことが望ましい。したがって、プロセス技術者がデコレーション・プロセスを精密に制御することを可能にするため、非常に低いエッチング速度が望ましい。
【0005】
集積回路のフィーチャ・サイズが小さくなるにつれ、イオン・スパッタリングによって生じる試料に対する固有の損傷が、許容できない測定誤差を導入することがある。イオン・ビームの代わりに電子ビームを使用してデコレーションが実行されるときには、スパッタリングによる物理的な損傷は排除される。電子ビーム誘起反応では運動量の移動がごくわずかであるため、電子ビームは一般に、エッチング剤前駆体ガスが存在する場合にしかエッチングしない。
【0006】
真空室内のバックグラウンド・ガスはしばしば炭素を含み、電子ビーム処理中に炭素を付着させる。電子ビーム誘起エッチングはバックグラウンド・ガスによる電子ビーム誘起付着を凌駕しなければならず、そうでない場合にはエッチングは起こらない。その攻撃的なフッ素化特性のため、シリコン含有材料および高融点金属をエッチングする目的に、しばしば二フッ化キセノン(XeF2)が電子ビームとともに使用される。残念なことに、XeF2は、二酸化ケイ素(SiO2)の電子ビーム誘起エッチングよりも速い速度でシリコンを自発的にエッチングする。したがって、露出したシリコンの存在下でSiO2をエッチングしようとすると、このガスは、所望のエッチングよりも多くの意図しない損傷を生み出す。さらに、異なるタイプの誘電体層間の電子ビーム・エッチングによって生み出されるデコレーションは、大部分の用途に対して不十分である。例えば、XeF2を用いた電子ビーム・エッチングは、窒化物層と酸化物層を同様の速度でエッチングし、そのため、観察者は、それらの層間の境界を容易には観察できない。さらに、ビーム誘起選択性が認められる場合であっても、全体の速度が速すぎて、エッチングの深さを適切に制御することができないことがある。この点をさらに例示するため、デコレーションを実施する試料として、酸化物中に埋め込まれた非常に微細な窒化物フィーチャを考える。この場合には、(フィーチャ・サイズが小さいため)窒化物を非常に穏やかにエッチングし、一方で周囲の酸化物をより迅速に除去することが好ましいであろう。反対に、この状況が逆になり、より高い窒化物エッチング速度が好ましいこともある。これらのタイプのケースでは、所望の材料に対する選択性を提供することができる特定の化学的性質を有することが非常に望ましい。他のタイプの使用例は、デコレーションを実施する関心領域において保存すべき露出した(ポリ、非晶質または単結晶)シリコンがある場合である。この場合、シリコン・エッチングはほぼ単独で自発的に生じ、したがって、このケースでは、修正されたビーム誘起エッチング速度とは対照的に、自発的なエッチングをより抑制する必要がある。この場合も、上記の全てが可能な化学的性質が非常に望ましい。
【0007】
半導体製造において使用される他のプロセスが反応性イオン・エッチングである。反応性イオン・エッチングでは、ウェーハがプラズマ室内に置かれ、プラズマは、ガスの反応性を増大させることを狙いとするイオン、遊離基(radicals)および中性粒子(neutrals)からなる。反応性イオンは、ウェーハ表面に向かって加速され、化学的過程と運動量移動過程の両方によって反応する。反応性イオン・エッチングはウェーハの表面全体で起こる。反応性イオンは集束しないが、プラズマ内の至るところで生み出され、試料に向かって加速される。この反応は、ガス種を制御することによって制御することができ、その一部は基板上に付着し、一部は基板をエッチングする。
【0008】
ビームの操作および基板上の材料のタイプによって制御され、イオン誘起スパッタリングなどの物理的なプロセスによってあまり変化しないようなエッチングを、集束ビームを使用することによって、基板の小領域において選択的に誘起させる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,241,361号
【特許文献2】米国特許第5,851,413号
【特許文献3】米国特許第5,435,850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基板上の材料を集束ビームを使用して選択的にエッチングする改良型の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電子ビーム、イオン・ビーム、中性粒子ビーム、レーザ・ビームなどの集束ビームを使用して基板上の材料を選択的にエッチングする方法および装置を提供する。好ましくは、ビーム誘起反応と自発反応の両方の競争反応が、第1の材料のエッチングを、基板上に存在する1種または数種の他の材料のエッチングよりも優先し、それによって第1の材料をエッチングし、一方で前記1種または数種の他の材料を保持することを可能にする。いくつかの実施形態では、これらの競争反応が、他の材料のうちの1種または数種の材料上での付着をわずかに優先する。本発明は、異なる材料の層の断面に対して電子ビーム誘起デリニエーションを実施し、同時に工作物の他のフィーチャを維持するのに特に有用である。
【0012】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成する他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解されたい。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解されたい。
【0013】
次に、本発明および本発明の利点のより徹底的な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の好ましいステップを示す流れ図である。
【図2A】2つの材料からなる組織の相対的なエッチング速度を定性的に(目盛なしで)示す図であり、エッチング剤前駆体ガスの存在下での2種類の材料の相対的な自発エッチング速度を示す図である。
【図2B】2つの材料からなる組織の相対的なエッチング速度を定性的に(目盛なしで)示す図であり、エッチング剤前駆体ガスの存在下での2種類の材料の相対的な電子ビーム誘起エッチング速度を示す図である。
【図2C】2つの材料からなる組織の相対的なエッチング速度を定性的に(目盛なしで)示す図であり、エッチング剤前駆体ガスの存在下での2種類の材料の相対的な電子ビーム誘起エッチング速度を示す図である。
【図2D】2つの材料からなる組織の相対的なエッチング速度を定性的に(目盛なしで)示す図であり、エッチング剤前駆体ガスおよび補助ガスの存在下での2種類の材料の相対的な電子ビーム誘起エッチング速度を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に従って試料を処理する前の集積回路の断面を示す顕微鏡写真である。
【図4】本発明の一実施形態に従って試料を処理した結果を示す顕微鏡写真である。
【図5】イオン・ビーム・カラムおよび電子ビーム・カラムを含む、本発明の実施に有用なデュアル・ビーム・システムを概略的に示す図である。
【図6A】一組の所与のビーム条件/フロー・ジオメトリでのエッチング速度および選択性を、CF3I(図6A)補助ガスに関して示すグラフである。
【図6B】一組の所与のビーム条件/フロー・ジオメトリでのエッチング速度および選択性を、CF4(図6B)補助ガスに関して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、電子ビーム、イオン・ビーム、中性粒子ビーム、レーザ・ビームなどの集束ビームを使用して基板上の材料を選択的に処理する方法および装置を提供する。微細集束ビームの使用は、ユーザが、処理する領域を精密に制御することを可能にする。例えば、最新の電子ビームは、数ナノメートルのスポット・サイズに集束させることができ、ナノメートルからミリメートル程度の領域全体を走査することができる。基板は一般に、電子ビーム処理の間、前駆体ガスまたはビームに対して露出する複数の材料を有する。好ましい一実施形態では、自発反応とビーム誘起反応の両方の競争反応が、第1の材料のエッチングを、1種または数種の露出した他の材料のエッチングよりも優先する。したがって、それらの実施形態は、第1の材料を優先的にエッチングし、同時に、露出した他の材料を維持し、またはそれらの材料に対する損傷を最小化する。
【0016】
いくつかの実施形態では、工作物の領域内に2種類の前駆体ガスが導入される。これらのガス種および工作物におけるこれらのガスの流束は、競争反応が例えば第1の材料のエッチングを優先し、保存すべき他の材料のエッチングを優先しないように選択される。いくつかの実施形態では、これらの競争反応が、保持すべき材料上への付着を優先する。好ましい一実施形態では、保持すべき材料がエッチングされないように、しかしながらあまりに多くの物質が付着しないように、付着プロセスがエッチング・プロセスをわずかに凌駕する。好ましいいくつかの実施形態は、高流束の付着ガスおよび低流束のエッチング剤ガスを使用する。
【0017】
図1は、好ましい一実施形態のステップを示す流れ図である。ステップ102では、少なくとも2種類の材料を有する基板を用意する。この基板は例えば、その上に集積回路が製造されたシリコン・ウェーハとすることができる。この基板はさらに、集積回路の一部分の断面を露出させるために集束イオン・ビームによって切削されたトレンチを含むことができる。ステップ104では、エッチングする基板表面の一部分に、エッチング剤前駆体ガスの流束を供給する。ステップ106では、基板表面に、エッチング抑制前駆体ガスの流束を供給する。ステップ108では、電子ビームなどの集束ビームを基板に向かって、少なくとも2種類の材料を含む領域上に誘導する。このエッチング前駆体ガス、エッチング抑制ガスおよび集束ビームの組合せは、第1の材料を第2の材料に比べて選択的にエッチングする。いくつかの実施形態では、単一のガスを、例えば電子ビームとともに使用して、1つの材料を他の材料に比べて選択的にエッチングすることができる。
【0018】
図2Aから2Dは、本発明の一実施形態における2つの材料の組織の相対的なエッチング速度を定性的に示す。基板は、ガスE(主にエッチング前駆体)およびD(主に付着前駆体)に対して露出した材料AおよびBを含む。材料Bを選択的にエッチングし、材料Aを保持することが望ましいとする。図2Aは、エッチング前駆体ガスEが存在し、集束電子ビームなどのエネルギー源が存在しない場合、材料Aのエッチング速度EAは、材料Bのエッチング速度EBよりもはるかに大きいことを示している。図2Bは、エッチング前駆体Eおよび局所エネルギー源が存在する場合、材料Bのエッチング速度は増大するが、エッチング速度EAは依然としてエッチング速度EBよりも大きいことを示している。
【0019】
材料A上での付着速度DAが材料B上での付着速度DBよりもはるかに大きくなるように補助ガスを選択する。図2Cは、競合する自発エッチング、ビーム誘起エッチングおよびビーム誘起付着の結果、材料Bが材料Aよりも速い速度でエッチングされ、材料Aが実質的に保護されることを示している。図2Dは、ビームが存在しない場合には、両方の材料のエッチング速度が非常に小さく、そのため、ビームがなければ材料Aおよび材料Bが保護されることを示している。一実施形態では、材料Aが窒化シリコンまたはシリコン、材料Bが二酸化シリコン、エッチング・ガスEがXeF2、付着ガスDがCH3Iであり、二酸化シリコンが、窒化シリコンおよびシリコンに比べて選択的にエッチングされる。
【0020】
競争反応の結果は、ガス流束およびビーム・エネルギー密度によって異なる。例えばガウス形のビームでは、ビームの中心における結果が、ビームの縁における結果とは異なることがある。優勢な反応をエッチングから付着へ切り替えるのに必要なしきい電流密度がある。当業者は、所望の材料を選択的にエッチングするガス流束とエネルギー密度の機能可能な組合せを経験的に決定することができる。さらに、当業者は、所望の材料選択性を得るガス流束比を決定することができる。バックグラウンド・ガスは一般に、集束ビーム、特に電子ビームの存在下で付着する可能性がある炭素を含むため、本発明の実施形態は、最小限のバックグラウンド・ガスを含むクリーン・システム内で実行されることが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい一用途は、半導体基板上の集積回路断面の層のデリニエーション(delineation)である。好ましい一実施形態は、選択エッチングを提供し、例えば窒化物層に比べて酸化物層を優先的にエッチングし、同時にシリコンおよびポリシリコン層を保護するガスの組合せを使用する電子ビーム誘起エッチング・プロセスを含む。電子ビームの使用は、「直接書込み(direct write)」プロセスを提供する。すなわち、反応性イオン・エッチングなどの技法におけるウェーハ規模の処理とは対照的に、ビームを誘導した領域だけが処理される。
【0022】
電子ビームは観察中の基板に対して生み出す変化がより少ないため、大部分のデコレーション用途では、イオン・ビーム処理よりも電子ビーム処理の方が好ましい。例えば、大部分のイオン・ビームは、観察中のフィーチャの縁を丸める傾向があり、またイオンを注入する可能性があり、このことが回路の電気特性に影響を及ぼすことがある。さらに、エッチングを誘起させるために電子ビームを使用すると、ユーザは、試料がエッチングされている最中に、試料の高分解能電子ビーム画像をリアル・タイムで観察することができる。この画像を観察するため、エッチングは、パターニング・モードではなく画像化モードを使用して実行されることが好ましい。次いでユーザは、層のデリニエーションが十分に達成されたことを観察したときに、プロセスを停止することができる。
【0023】
好ましい一実施形態では、電子ビーム真空室内に2種類のガスが導入される。一方のガスはエッチングし、第2の補助ガスはエッチングを減弱させる。例えば、存在するある材料の表面に材料を付着させる反応によって、またはエッチング剤と反応しない化合物を形成することで表面を不動態化する反応によって、それらの材料のエッチングを抑制することができる。これらのガスは、競争するエッチング反応および付着反応に加わることができ、異なる露出面上では異なる反応が優先される。例えばガス流束およびビームの化学的性質を制御することによって、試料表面の異なるガスおよび吸着種の濃度を制御することができる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態は、二酸化シリコンの電子ビーム誘起エッチングを可能にし、同時にシリコンのエッチングを抑制するため、ガス混合物を適切に配合することを含む。いくつかの実施形態では、XeF2がエッチング剤として噴射される。シリコン、およびXeF2の攻撃によって影響を受ける可能性がある他の材料のエッチングを抑制し、同時に二酸化シリコンのエッチングを可能にするフルオロカーボン・ガスも噴射される。フルオロカーボンの流束は、二フッ化キセノンの流束よりもはるかに大きいことが好ましい。適当なフッ素−炭素比を達成するガス流束の比を選択することによって、絶縁体上での重合が抑制され、同時にシリコン上での重合が優先され、これにより、高い選択性およびパターン・デリニエーションが可能になる。このビーム誘起選択性は、IC層の明瞭なデリニエーションを提供し、同時に測定のためにポリシリコン・フィーチャを保護する手段を提供する。
【0025】
これらの炭素含有ガスの電子ビーム誘起エッチング剤としての効率は低いため、XeF2を使用しない場合、炭素含有ガスと電子ビームの反応の結果は実質的に炭素の付着だけとなろう。同じエッチング剤を使用したイオン・ビーム誘起エッチングに対してこれと同じことを言うことはできない。XeF2だけを使用しても、層の明瞭な低損傷のデリニエーションは得られず、シリコン・フィーチャが過度に損傷する。
【0026】
好ましい一実施形態では、1次反応が、SiO2表面とSi表面の両方からの揮発性のSiF4種を形成する。1次反応経路のいくつかは次の通りであると考えられる。
1.CF3I(g)+Si(s)+e-→C(s)+Si(s)+3F(g)+I(g) [電子ビーム誘起炭素付着]
2.4CF3I(g)+3Si(s)+e-→3SiF4(g)+4C(s)+4I(g) [競争的なシリコン・エッチングおよび付着]
3.2XeF2(g)+Si(s)→2Xe(g)+SiF4(g) [自発的シリコン・エッチング]
4.2XeF2(g)+SiO2+e-→2Xe(g)+SiF4(g)+O2(g) [電子ビーム誘起SiO2エッチング]
図3は、処理前の集積回路断面の写真であり、図4は、本発明に基づく処理後の集積回路断面を示す。図4から分かるとおり、観察者は、異なる中間層、シリサイド、ポリシリコン・ゲートおよび窒化物障壁を区別することができる。補助ガス、この場合にはCF3Iはさらに、攻撃的なXeF2による損傷からポリシリコンを守る。
【0027】
エッチング現象に先立って、SiO2表面からの酸素の脱離を刺激するのに電子ビームが必要であるため、電子ビームを使用しない場合、SiO2は、XeF2による自発的エッチングを受けない。酸素の脱離はほとんどの場合、律速事象である。XeF2流束が非常に低い場合には、シリコン上への競争的炭素付着を利用することにより、シリコン表面にエッチング・ストップ炭素層を重合させることが可能である。しかしながら、フルオロカーボン・ガスは、電子ビームとともに使用するエッチング剤ガスとしての効率が、電子誘起エッチングを単独で可能にするには十分でないため、ある濃度のXeF2が存在することが好ましい。SiO2中の酸素の存在は、下記の反応により、炭素重合プロセスを最小化し、
5.SiO2(s)+CF3I(g)+e-→Si(s)+3F(g)+I(g)+CO2(g)
それにより保護炭素層の形成を妨げ、SiO2をエッチングすることを可能にする。
【0028】
炭素前駆体の追加は、SiO2のエッチングを減速させるが、Siのエッチングをよりいっそう減速させる。CF3Iからの付着は、XeF2による炭素のエッチング・プロセスをわずかに凌駕し、そのため、シリコンを保護する炭素層が残る。いくつかの実施形態ではそれでもSiがエッチングされるが、そのエッチング速度は、層のデリニエーションを達成するためにSiO2をエッチングするのに必要な時間の間の重大な損傷を防ぐには十分に低い。酸化シリコン上では、2つの過程が炭素をエッチングし、そのため炭素は迅速に除去され、その下のSiO2をエッチングすることも可能にする。シリコン・エッチングは、SiO2エッチングに比べて遅く、実質的に停止し、SiO2は、炭素付着反応を凌駕する2つのエッチング反応を受けるため、SiO2はエッチングされ続ける。断面の誘電層間の界面を可視化するためには約10または20nmだけを除去すればよい。
【0029】
エッチング速度が低下すると選択性は向上する傾向がある。エッチング速度が遅いとプロセス制御は改善するが、処理時間が増大する。一実施形態において、本出願の出願人は、エッチング中の領域を電子ビームを使用して観察し、約30分後、層を見ることができた。前述の実施形態は二酸化シリコンをエッチングし、シリコンのエッチングを抑制するが、所望の材料をエッチングし、エッチングが望ましくない領域を保護するエッチング剤および補助ガスを選択することによって、本発明を他の用途に応用することもできる。
【0030】
反応性イオン・エッチングの全体エッチングとは対照的に、電子ビームは局所的なエッチングを可能にし、制御可能な他の反応成分である電子束を導入する。
【0031】
多種多様なガスを使用して本発明を実現することができる。本出願の出願人は、SiO2とSiNの間の界面を可視化し、Siを保護する目的に、CF4とXeF2の組合せが使用可能であることを示した。他のハロカーボン・ガス、特に他のフルオロカーボンを、さまざまな炭素濃度で使用することができる。塩素ガス混合物も、シリコンの存在下で二酸化シリコンをエッチングするのに有用なことがある。より長い炭素鎖はより効率的に付着し、一般により高い速度で付着し、その結果、それぞれのガス中のより多くの炭素が、エッチングよりも炭素付着を優先するため、単一の炭素を有する分子が好ましい。同様のプロセスが硫黄フッ化物の使用を含むこともできる。
【0032】
好ましい実施形態を電子ビームに関して説明したが、液体金属イオン源からのガリウム・イオン・ビーム、プラズマ・イオン源からの不活性ガス・イオンなどの他のイオンのビームのような集束イオン・ビームを使用して、本発明を実現することもできる。このようなプラズマ源は例えば、本発明の譲受人に譲渡された「Magnetically Enhanced,Inductively Coupled,Plasma Source for a Focused Ion Beam」という名称の米国特許第7,241,361号に記載されている。イオン・ビームが使用される場合には一般に、基板に対する損傷がより多くなることを当業者は理解するであろう。さらに、イオンが表面に注入され、回路の電気特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、ガリウムは、シリコン中でp型ドーパントとして機能する。水素イオンなどの軽イオンのビームが起こす損傷はより軽度で、回路に対する電気的効果をほとんどまたは全く持たない。他の実施形態は、中性ビーム、レーザまたは反応性種のビームを使用することもできる。例えば吸着ガスとの反応を誘起させる2次電子を生成することによって、あるいはガスまたは基板中に光化学電荷を生成することによって、ガス中で反応を開始する任意のビームを使用することができる。
【0033】
ビーム中の電子のエネルギーは決定的に重要なものではなく、例えば100eVから100keVとすることができるが、反応を開始させる際の1次ビーム電子の効率はビーム・エネルギーとともに変化する。ビーム中の電子は500eV超のエネルギーを有することが好ましい。電子は、運動量移行過程(momentum transfer process)を使用してエッチングしないため、XeF2のような強力な酸化剤を電子ビームとともに使用することが好ましい。ビームは、より効率的な処理のために高い電流密度および低いエネルギーを有するべきである。一実施形態は、約3ナノアンペアのビーム電流を有する2kVビームを使用する。
【0034】
XeF2は強力な酸化剤であるため、試料の近くの濃度は比較的に低くすべきだが、表面におけるCH3Iなどの補助ガスの濃度はより高いことが好ましい。所望のガス流束を達成する1つの方法は、表面の近くに補助ガスを導入し、表面からより遠い位置にXeF2を導入する方法である。一実施形態では、2つの別個のガス噴射システム源が使用される。XeF2源は、試料から約1と1/2インチの距離に引っ込んでおり、XeF2ガスは、サイドアームを備えた挿入されたGIS上のフィードを通して外部へ供給される。第2のガス噴射システムの噴射針は、表面から約100ミクロンのところに挿入される。噴射針は表面の圧力を著しく高める結果になるが、両システムは、それぞれの周囲の室の圧力が約10-5ミリバールであるように設定され、この圧力に噴射針の存在は影響しない。その結果、補助ガス流束は一般に、エッチング・ガスよりも数桁高い。他の実施形態では、単一のXeF2 GIS上で2先端針が使用され、XeF2用に、(実質的に引っ込んだ)非常に短いノズルが用いられ、フルオロカーボン用に標準長のノズルが用いられる。他の実施形態では、外側のシース(sheath)が内側の管よりも短い同軸型の針にガスを注入することができる。エッチング・ガスは外側のシースを通して流され、付着ガスは内側の管を通して流される。より短い外側の管のエッチング・ガス流束は、より長く、より近くまで誘導された内側の付着ガス管よりも低くなる。
【0035】
前述の実施形態は、XeF2環境における自発的シリコン・エッチングを抑制しまたは減弱させる方法を提供する。このような方法は、誘電層のデリニエーション以外の用途でも有用である。例えば、本発明の他の用途は、回路または他の構造の層を除去してその下の層を露出させる「デプロセッシング(deprocessing)」である。デプロセッシングは例えば、埋没した欠陥を露出させるために使用される。最初に、ユーザは一般に、集束イオン・ビームを使用して、欠陥領域を覆っている材料の大部分を除去する。次いで、上述したような「穏やかな」電子ビーム・プロセスを使用して、酸化物層だけを選択的にエッチングし、その下の層を保持することができる。例えば、前述のとおりに、電子ビームを基板に向かって誘導することができ、同時にXeF2およびCF3Iも基板に向かって誘導する。酸化物層を除去し、その下のシリコン層を観察のために露出させる。このシリコン層は実質的に損傷を受けない。
【0036】
本発明の他の用途は、「回路編集(circuit edit)」プロセスであり、このプロセスでは、例えば、将来の回路の製造プロセスを変更する前に、提案された変更が設計上の問題点を修正するかどうかを判定するために、導体および絶縁体を切断しまたは付着させて集積回路を「配線し直す」。回路編集プロセスでは、過剰な二酸化シリコンを除去することが望ましいことが時々ある。これは現在、非選択的XeF2電子ビーム・エッチング・プロセスを使用して実施されている。エッチング剤ガスおよび補助ガスを基板に向かって誘導し、電子ビームをエッチングする領域に向かって誘導する前述の実施形態を使用して、露出したシリコンを保存し、シリコンが自発的にエッチングされることを防ぐことができる。
【0037】
本発明の他の用途では、ドーパント・プロファイル(dopant profile)に基づいて選択的にエッチングするガスまたはガスの組合せを選択することができる。例えば、一実施形態では、そのドーパントによって触媒される反応によってシリコンを自発的にエッチングするCH3Cl(塩化メチル)を使用することができる。このエッチング反応は高ドーパント濃度の領域でより強いため、それらの領域が選択的にエッチングされることになり、一方、より低ドーパント濃度の領域では、競争反応の炭素付着を優勢にすることができる。ドーパント・プロファイルに基づく選択的エッチングに使用することができる他のガスには、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチルおよびそれらのエチル類似体が含まれる。p型およびn型ドーパントは一般に異なる速度で反応を触媒し、この異なる速度を利用して、ドーパント・プロファイルに基づいて優先的にエッチングする競争反応系を設計することができる。このような一実施形態では、電子ビームが、異なるドーパント濃度の領域を有する基板に誘導される。CH3Clなどのエッチング剤ガスも基板に向かって誘導される。電子ビームは、より高ドーパント濃度の領域でCH3Clとの反応を誘起させ、一方、より低ドーパント濃度の領域ではより小さな反応が起こり、それによりドーパント濃度に基づく選択エッチングが達成される。このような実施形態では補助ガスが必要ないことがある。
【0038】
他の用途では、透過電子顕微鏡で見るための準備として、本発明を使用して試料を薄化することができる。例えば、試料は異なる材料の層からなることがある。本発明に基づくエッチング・プロセスを使用して、試料を所望の厚さに残して層が除去された時点で止める、選択的な層の除去に用いることができる。例えば、試料は、シリコン層および酸化物層を含むことができる。XeF2などのエッチング剤ガスおよびCF3Iなどの補助ガスの存在下で、電子ビームを試料に向かって誘導する。酸化物層はエッチングによって除去され、このエッチング・プロセスは、シリコン層に到達したときに実質的に停止し、シリコン層まで薄化された試料を残す。他の実施形態では、窒化物材料などの第1の材料の膜上に、物質を付着させることができる。次いでこの窒化物膜をエッチングによって選択的に除去し、透過電子顕微鏡で見るため、付着させた材料だけを残すことができる。
【0039】
ガリウム集束イオン・ビームでミリングすると、注入されたガリウムが、基板材料とガスの間の反応に影響を及ぼすことがある。ガリウム・ビームを使用してミリングされた一般的な断面では、断面のガリウムの濃度が比較的に高い。ガリウム液体金属イオン・ビームを使用するときに断面にデコレーションを実施するためには一般に、XeF2が使用される。イオン・プラズマ源が使用され、集束イオン・ビームが例えば不活性ガス・イオンからなるときには、直鎖フッ素化炭化水素または塩素化炭化水素、あるいはフッ素化された硫黄含有化合物を、XeF2などの強力なエッチング剤なしで使用すると、試料が選択的にエッチングされ、所望の結果が得られることがある。
【0040】
図6Aおよび6Bは、一組の所与のビーム条件およびフロー・ジオメトリ(flow geometry)での酸化物および窒化物のエッチング速度ならびにエッチング選択性(窒化物のエッチング速度を酸化物のエッチング速度で割ったもの)を、CF3I(図6A)およびCF4(図6B)補助ガスに関して示したグラフである。必要な選択性、すなわちエッチング速度の比は用途によって異なる。非常に少量の材料だけを除去し、両方の材料のエッチング速度が比較的に低いデコレーション用途では、比較的に低い選択性が許容される。より多くの材料を除去するときには、より高い選択性が好ましい。エッチングの選択性は1.1超、より好ましくは1.2超、さらには1.5超であることが好ましい。いくつかの用途では、2または3超のエッチング速度選択性が好ましい。競争する付着反応とエッチング反応とに関して説明したが、いくつかの実施形態は、表面に材料を付着させる代わりに表面を不動態化することができる。
【0041】
図5は、垂直に取り付けられたSEMカラムと、垂直線から約52度の角度で取り付けられた集束イオン・ビーム(FIB)カラムとを備える、本発明を実施するのに適した一般的なデュアル・ビーム・システム510を示す。適当なデュアル・ビーム・システムは、例えば本出願の譲受人であるFEI Company社(米オレゴン州Hillsboro)から市販されている。適当なハードウェアの一例を以下に示すが、本発明は、特定のタイプのハードウェアによって実現されることに限定されない。
【0042】
デュアル・ビーム・システム510は、走査型電子顕微鏡541および電源/制御ユニット545を備える。カソード552とアノード554の間に電圧を印加することによって、カソード552から電子ビーム543が放出される。電子ビーム543は、コンデンサ・レンズ556および対物レンズ558によって微細なスポットに集束する。電子ビーム543は、偏向コイル560によって、試料を2次元走査する。コンデンサ・レンズ556、対物レンズ558および偏向コイル560の動作は、電源/制御ユニット545によって制御される。
【0043】
電子ビーム543を、下部チャンバ526内の可動X−Yステージ525上にある基板522上に集束させることができる。電子ビーム中の電子が基板522に衝突すると、2次電子が放出される。これらの2次電子は、後に論じる2次電子検出器540によって検出される。TEM試料ホルダ524およびステージ525の下に位置するSTEM検出器562は、上述したようにTEM試料ホルダ上に装着された試料を透過した電子を集めることができる。
【0044】
デュアル・ビーム・システム510はさらに、集束イオン・ビーム(FIB)システム511を含み、FIBシステム511は、上ネック部分512を有する排気されたチャンバを備え、上ネック部分512内にはイオン源514および集束カラム516が位置し、集束カラム516は引き出し電極および静電光学系を含む。集束カラム516の軸は、電子カラムの軸から52度傾いている。イオン・カラム512は、イオン源514、引き出し電極515、集束要素517、偏向要素520および集束イオン・ビーム518を含む。イオン・ビーム518は、イオン源514から、カラム516内および概略的に520で示された静電偏向手段間を通り、基板522に向かって進む。基板522は、例えば下部チャンバ526内の可動X−Yステージ525上に配置された半導体デバイスを含む。
【0045】
ステージ525はまた、半導体デバイスから試料を抜き取り、TEM試料ホルダまで移動させることができるように1つまたは複数のTEM試料ホルダ524を支持することができる。ステージ525は、水平面(XおよびY軸)内を移動することができ、さらに垂直に(Z軸)移動できることが好ましい。ステージ525はさらに約60度傾けることができ、Z軸の周りを回転することができる。いくつかの実施形態では、別個のTEM試料ステージ(図示せず)を使用してもよい。このようなTEM試料ステージもX、YおよびZ軸に沿って可動であることが好ましい。扉561は、基板522をX−Yステージ525上に挿入するため、さらには、内部ガス供給リザーバが用いられる場合にはそれを保守するために開かれる。システムが真空下にある場合に開けることができないように、扉はインタロックされる。
【0046】
ネック部分512から排気するためにイオン・ポンプ568が使用される。チャンバ526は、真空コントローラ532の制御下にあるターボ分子・機械ポンピング・システム530によって排気される。この真空システムは、チャンバ526内において、約1×10-7トルから5×10-4トルの真空を提供する。エッチング支援ガス、エッチング遅延ガスまたは付着前駆体ガスが使用される場合、チャンバのバックグラウンド圧力は、一般に約1×10-5トルまで上昇することがある。
【0047】
イオン・ビーム518にエネルギーを付与し、イオン・ビーム518を集束させるため、高圧電源が、イオン・ビーム集束カラム516内の電極に適当な加速電圧を印加する。イオン・ビーム518が基板522に衝突すると、試料から材料がスパッタリングされる、すなわち物理的に放出される。あるいは、イオン・ビーム518は、前駆体ガスを分解して材料を付着させることができる。
【0048】
約1keVから60keVのイオン・ビーム518を形成し、それを試料に向かって誘導するため、高圧電源534は、液体金属イオン源514とイオン・ビーム集束カラム516内の適当な電極とに接続される。パターン発生器538によって提供される規定のパターンに従って動作する偏向コントローラ・増幅器536が、偏向板520に結合され、それによってイオン・ビーム518を、基板522の上面の対応するパターンをトレースするように手動または自動で制御することができる。当技術分野ではよく知られているように、いくつかのシステムでは、これらの偏向板が最後のレンズの前に置かれる。ブランキング・コントローラ(図示せず)が、イオン・ビーム集束カラム516内のビーム・ブランキング電極(図示せず)にブランキング電圧を印加すると、ブランキング電極は、イオン・ビーム518を、基板522ではなくブランキング・アパーチャ(図示せず)に衝突させる。
【0049】
液体金属イオン源514は一般にガリウムの金属イオン・ビームを提供する。この源は一般に、イオン・ミリング、強化エッチング、材料付着によって基板522を改変するために、あるいは基板522を画像化する目的で、基板522において幅1/10マイクロメートル未満のビームに集束することができる。
【0050】
2次イオンまたは2次電子の放出を検出するために使用されるEverhart Thornleyやマルチチャネル・プレートなどの荷電粒子検出器540がビデオ回路542に接続され、ビデオ回路542はビデオ・モニタ544に駆動信号を供給し、ビデオ・モニタ544はコントローラ519から偏向信号を受け取る。下部チャンバ526内の荷電粒子検出器540の位置は、実施形態によって変更することができる。例えば、荷電粒子検出器540をイオン・ビームと同軸とし、荷電粒子検出器540が、イオン・ビームを通過させる孔を含んでもよい。他の実施形態では、最後のレンズを通して2次粒子を集め、次いでそれらの2次粒子を軸から変更させて収集することができる。
【0051】
Omniprobe,Inc.社(米テキサス州Dallas)のAutoProbe 200(商標)、Kleindiek Nanotechnik社(ドイツReutlingen)のModel MM3Aなどのマイクロマニピュレータ547は、真空室内の物体を精密に移動させることができる。真空室内に位置する部分549のX、Y、Zおよびθ制御を提供するため、マイクロマニピュレータ547は、真空室の外側に置かれた精密電動機548を備えることができる。マイクロマニピュレータ547には、小さな物体を操作するさまざまなエンド・エフェクタを取り付けることができる。本明細書に記載された実施形態では、エンド・エフェクタが細いプローブ550である。
【0052】
ガス蒸気を導入し、基板522に向かって誘導するガス送達システム546が下部チャンバ526内へ延びる。本発明の譲受人に譲渡されたCasella他の「Gas Delivery Systems for Particle Beam Processing」という名称の米国特許第5,851,413号は適当なガス送達システム546を記載している。別のガス送達システムが、やはり本発明の譲受人に譲渡されたRasmussenの「Gas Injection System」のいう名称の米国特許第5,435,850号に記載されている。例えば、ヨウ素を送達してエッチングを強化することができ、または金属有機化合物を送達して金属を付着させることができる。
【0053】
システム・コントローラ519は、デュアル・ビーム・システム510のさまざまな部分の動作を制御する。システム・コントローラ519を介して、ユーザは、従来のユーザ・インタフェース(図示せず)にコマンドを入力することにより、イオン・ビーム518または電子ビーム543を、希望通りに走査することができる。あるいは、システム・コントローラ519は、プログラムされた命令に従ってデュアル・ビーム・システム510を制御することができる。いくつかの実施形態では、デュアル・ビーム・システム510が、Cognex Corporation社(米マサチューセッツ州Natick)から市販されているソフトウェアなど、関心の領域を自動的に識別する画像認識ソフトウェアを含み、本発明に従って試料を手動または自動で抽出することができる。例えば、システムは、複数のデバイスを含む半導体ウェーハ上の同様のフィーチャの位置を自動的に突き止め、異なる(または同じ)デバイス上のそれらのフィーチャの試料を抽出することができる。
【0054】
以上の説明では、用語「エッチング前駆体」および「付着前駆体」を使用したが、多くの前駆体が、そのガス流束およびビーム密度によって、エッチングし、または付着することができることを当業者は認識するであろう。
【0055】
集積回路の断面において、酸化物材料と窒化物材料の間の界面を可視化するする方法の好ましい実施形態は、
・集束イオン・ビーム・マイクロマシニングによって集積回路の断面を露出させるステップと、
・露出させた断面に向かって電子ビームを誘導するステップと、
・露出させた断面に向かって第1のガスおよび第2のガスを誘導するステップであって、第1のガスが、電子ビームの存在下で反応して、断面の第1の材料をエッチングし、第2のガスが、断面の第2の材料のエッチングを抑制するステップと
を含む。
【0056】
集束ビームを使用して、第1の材料を、第2の材料に比べて選択的にエッチングする方法の好ましい実施形態は、
・集束ビームを基板に向かって誘導するステップと、
・基板に向かって第1のガスを誘導するステップであって、第1のガスが、集束ビームの存在下で反応して、第1の材料をエッチングするステップと、
・基板に向かって第2のガスを誘導するステップであって、第2のガスが、第2の材料のエッチングを、第1の材料のエッチングに比べて抑制するステップと
を含む。
【0057】
集束ビームを使用して、基板上の第1の材料を、基板上の第2の材料に比べて選択的にエッチングする方法の好ましい実施形態は、
・基板に向かって集束ビームを誘導するステップと、
・基板に向かって第1のガスおよび第2のガスを誘導するステップであって、集束ビームが、第1および第2のガスと基板中の第1および第2の材料との間の競争反応を開始させ、これらの競争反応が、第1の材料を、第2の材料のエッチングよりも速い速度でエッチングするステップと
を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、
・第1の材料は酸素とシリコンとの化合物を含み、
・第2の材料は窒素とシリコンとの化合物を含み、
・第1のガスはハロゲン化合物を含み、
・第2のガスは炭素化合物を含む。
【0059】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のガスは二フッ化キセノンを含むことができる。本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって第1のガスを誘導するステップは、基板に向かってフッ素化合物を誘導するステップを含み、基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、基板に向かって炭素含有化合物を誘導するステップを含む。基板に向かって炭素含有化合物を誘導するステップは、CF3IまたはCF4を含む、フッ素と炭素とを含む化合物を誘導するステップを含むことができる。基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、基板に向かって炭化水素ガスを誘導するステップを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、基板に向かって炭化水素を含むガスを誘導するステップを含む。基板に向かって炭化水素を含むガスを誘導するステップは、メタンまたはヨードメタンを含むガスを誘導するステップを含むことができる。第2のガスは、CF3IまたはCF4を含む、炭素とハロゲンとを含む化合物を含むことができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって第2のガスを誘導するステップであって、第2のガスが、第2の材料のエッチングを、第1の材料のエッチングに比べて抑制するステップは、第1のガスと組み合わさって、第1の材料のエッチング速度を、第2の材料のエッチング速度よりも少なくとも10パーセント速める第2のガスを誘導するステップを含む。第1の材料は、第2の材料のエッチング速度の1.5倍よりも速い速度でエッチングされることが好ましい。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、第2の材料のエッチングを、第1の材料のエッチングに比べて低減させるために、集束ビームの存在下で反応して、第2の材料上に物質を付着させる第2のガスを誘導するステップを含むことができる。基板に向かって第2のガスを誘導するステップはさらに、付着係数および滞留時間を有する第2のガスを第2の材料上に誘導するステップであって、付着係数および滞留時間が、第1のガスの分子の第2の材料への付着を低減させ、それによって第2の材料のエッチングを抑制するのに十分であるステップを含むことができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって集束ビームを誘導するステップは、基板に向かって、レーザ・ビーム、荷電粒子ビームまたは中性原子ビームを誘導するステップを含む。基板に向かって集束ビームを誘導するステップはさらに、基板に向かって集束イオン・ビームを誘導するステップを含むことができ、基板に向かって電子ビームを誘導するステップを含むことができる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、基板に向かって第1のガスを誘導するステップは、基板に向かってフッ素化合物を誘導するステップを含み、基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、基板に向かって炭素含有化合物を誘導するステップを含む。基板に向かって炭素含有化合物を誘導するステップは、CF3IまたはCF4を含む、フッ素と炭素とを含む化合物を誘導するステップを含むことができる。基板に向かって第2のガスを誘導するステップは、基板に向かって炭化水素ガスを誘導するステップを含む。
【0065】
第1のドーパント濃度を有する第1の領域と、第2のドーパント濃度を有する第2の領域とを含む基板を選択的にエッチングする方法の好ましい実施形態は、
・基板に向かって電子ビームを誘導するステップと、
・基板にガスを供給するステップであって、電子ビームが、ガスと基板材料の間の反応を開始させ、この反応が、第1の領域のエッチング速度が第2の領域のエッチング速度よりも速くなるようなドーパント濃度に依存するステップと
を含む。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記の反応にドーパント濃度によって大きな変化を生じさせる。供給されるガスはCH3Clを含むことができる。
【0067】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換および改変を実施することができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0068】
510 デュアル・ビーム・システム
511 集束イオン・ビーム(FIB)システム
512 上ネック部分
514 イオン源
515 引き出し電極
516 集束カラム
517 集束要素
518 集束イオン・ビーム
519 システム・コントローラ
520 偏向要素
522 基板
524 TEM試料ホルダ
525 ステージ
526 下部チャンバ
530 ターボ分子/機械ポンピング・システム
532 真空コントローラ
534 高圧電源
536 偏向コントローラ/増幅器
538 パターン発生器
541 走査型電子顕微鏡
542 ビデオ回路
543 電子ビーム
544 ビデオ・モニタ
545 電源/制御ユニット
546 ガス送達システム
547 マイクロマニピュレータ
548 精密電動機
549 マイクロマニピュレータの部分
550 プローブ
552 カソード
554 アノード
556 コンデンサ・レンズ
558 対物レンズ
560 偏向コイル
561 扉
562 STEM検出器
568 イオン・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の断面において、酸化物材料と窒化物材料の間の界面を可視化する方法であって、
集束イオン・ビーム・マイクロ機械加工によって前記集積回路の断面を露出させるステップと、
前記露出させた断面に向かって電子ビームを誘導するステップと、
前記露出させた断面に向かって第1のガスおよび第2のガスを誘導するステップであって、前記第1のガスが、前記電子ビームの存在下で反応して、前記断面の第1の材料をエッチングし、前記第2のガスが、前記断面の第2の材料のエッチングを抑制するステップと
を含む方法。
【請求項2】
集束ビームを使用して、第1の材料を、第2の材料に比べて選択的にエッチングする方法であって、
前記集束ビームを基板に向かって誘導するステップと、
前記基板に向かって第1のガスを誘導するステップであって、前記第1のガスが、前記集束ビームの存在下で反応して、前記第1の材料をエッチングするステップと、
前記基板に向かって第2のガスを誘導するステップであって、前記第2のガスが、前記第2の材料のエッチングを、前記第1の材料のエッチングに比べて抑制するステップと
を含む方法。
【請求項3】
集束ビームを使用して、基板上の第1の材料を、前記基板上の第2の材料に比べて選択的にエッチングする方法であって、
前記基板に向かって集束ビームを誘導するステップと、
前記基板に向かって第1のガスおよび第2のガスを誘導するステップであって、前記集束ビームが、前記第1および第2のガスと前記基板中の前記第1および第2の材料との間の競争反応を開始させ、前記競争反応が、前記第1の材料を、前記第2の材料のエッチングよりも速い速度でエッチングするステップと
を含む方法。
【請求項4】
前記第1の材料が酸素とシリコンとの化合物を含み、
前記第2の材料が窒素とシリコンとの化合物を含み、
前記第1のガスがハロゲン化合物を含み、
前記第2のガスが炭素化合物を含む、
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のガスが二フッ化キセノンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2のガスが、炭素とハロゲンとを含む化合物を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2のガスがCF3IまたはCF4を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって炭化水素を含むガスを誘導するステップを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板に向かって炭化水素ガスを誘導する前記ステップが、メタンまたはヨードメタンを含むガスを誘導するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の材料が、前記第2の材料のエッチング速度の1.5倍よりも速い速度でエッチングされる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップであって、前記第2のガスが、前記第2の材料のエッチングを、前記第1の材料のエッチングに比べて抑制する前記ステップが、前記第1のガスと組み合わさって、前記第1の材料のエッチング速度を、前記第2の材料のエッチング速度よりも少なくとも10パーセント速める第2のガスを誘導するステップを含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップが、前記第2の材料のエッチングを、前記第1の材料のエッチングに比べて低減させるために、前記集束ビームの存在下で反応して、前記第2の材料上に物質を付着させる第2のガスを誘導するステップを含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップが、付着係数および滞留時間を有する第2のガスを前記第2の材料上に誘導するステップであって、前記付着係数および前記滞留時間が、前記第1のガスの分子の前記第2の材料への付着を低減させ、それによって前記第2の材料のエッチングを抑制するのに十分であるステップを含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記基板に向かって第1のガスを誘導する前記ステップが、前記基板に向かってフッ素化合物を誘導するステップを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって炭化水素ガスを誘導するステップを含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記基板に向かって炭化水素ガスを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって、メタンまたはヨードメタンを含むガスを誘導するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基板に向かって第2のガスを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって炭素含有化合物を誘導するステップを含む、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記基板に向かって炭素含有化合物を誘導する前記ステップが、フッ素と炭素とを含む化合物を誘導するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
フッ素と炭素とを含む化合物を誘導する前記ステップが、CF3IまたはCF4を誘導するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基板に向かって前記集束ビームを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって、レーザ・ビーム、荷電粒子ビームまたは中性原子ビームを誘導するステップを含む、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記基板に向かって前記集束ビームを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって集束イオン・ビームを誘導するステップを含む、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記基板に向かって前記集束ビームを誘導する前記ステップが、前記基板に向かって電子ビームを誘導するステップを含む、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
第1のドーパント濃度を有する第1の領域と、第2のドーパント濃度を有する第2の領域とを含む基板を選択的にエッチングする方法であって、
前記基板に向かって電子ビームを誘導するステップと、
前記基板にガスを供給するステップであって、前記電子ビームが、前記ガスと前記基板材料の間の反応を開始させ、前記反応が、前記第1の領域のエッチング速度が前記第2の領域のエッチング速度よりも速くなるような前記ドーパント濃度に依存するステップと
を含む方法。
【請求項24】
前記反応にドーパント濃度によって大きな変化を生じさせる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ガスがCH3Clを含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate


【公開番号】特開2010−192893(P2010−192893A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−18014(P2010−18014)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】