説明

鳥類侵入防止具、及びその取り付け構造

【課題】鋼管鉄塔を構成する鋼管部材20の端部に対して後付け可能な鳥類侵入防止具1であって、鋼管部材の端部適所に対して接着固定されるベース部2と、該ベース部に一体化されて鋼管部材の端部開口21内に部分的に突出する突出片10と、を備えた。
【解決手段】鋼管鉄塔を構成する鋼管部材20の端部に対して後付け可能な鳥類侵入防止具1であって、鋼管部材の端部適所に対して接着固定されるベース部2と、該ベース部に一体化されて鋼管部材の端部開口内に部分的に突出する突出片10と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種鉄塔を構成する鋼管部材の端部開口を完全に封止することなく、椋鳥等の鳥類が営巣することを防止することができる鳥類侵入防止具、及びその取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用、或いは通信用等の各種用途に供される鉄塔は、鉄塔主柱鋼管部材に対して斜材や水平材等の鋼管部材の端部継手を固定することによって構築される。これらの鋼管部材は端部が開口しているため、端部開口から雨水や塩分等が浸入して鋼管部材内面を腐食させたり、或いは椋鳥等の鳥類が端部開口から侵入して管体内部に営巣することにより、糞や卵の中身の酸性成分が鋼管部材内面を腐食させ易くなる。
これらの不具合を解決するために従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1〜3には、鋼管部材の端部開口を弾性材料等から成る蓋によって封止する構成が開示されている。蓋の固定方法としてはボルトによる締結、脱落防止金具による固定、シーリング材の充填による固定等が採られている。
これらの従来技術によれば、鋼管部材の端部開口を閉止するため、鳥類の侵入を完全に防止することができ、雨水の浸入もある程度防止することができる。
しかし、鋼管部材内には、その端部開口と蓋との接触面における毛細管現象によって雨水が徐々に浸入する。また、日中の太陽熱による過熱と夜間の冷却の繰り返しによって蓋やシーリング材が経時的に劣化して密封能力が低下し、更に雨水の浸入量が増大する。一旦管体内に侵入した水は管体外へ排出されずに長期に渡って溜まり続けるため、管体内が乾燥しにくい状態となり、腐食(発錆)を促進する。このため、鉄塔自体の強度、寿命に悪影響を与える結果を招来している。
また、鉄塔に登った作業者が足場の悪い高所において身体を支えながら鋼管部材の端部開口に蓋を固定する作業は極めて煩雑であるため、疲労度が高くなると共に、危険性が増大する。特に、ボルトによる締結作業、脱落防止金具の取付け作業、更にはシーリング材の充填作業は、極めて煩雑、且つ時間のかかる作業である。また、蓋は形状が大きいため、安全帯の腰袋には収納できず携帯に不便であり、作業者は多数の蓋を収容することにより重く且つ嵩の大きくなったバッグを保持して鉄塔上で作業を行う必要があるため、更に作業は困難化し疲労度が高まる。
また、鋼管部材の径は通常10〜16cm程度であるため、このような鋼管の端部開口を閉止する蓋の重量は比較的重くなる一方で、蓋と鋼管端部開口との締結力は、蓋自体の劣化や、鋼管との熱膨張差によって弛み易く、弛んだ蓋は風雨や氷結による応力等の外力によって鋼管の端部開口から離脱して落下し易いため危険である。
【特許文献1】特開2002−106074公報
【特許文献2】特開2004−143673公報
【特許文献3】特開2005−113370公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、各種鉄塔を構成する鋼管部材の端部開口を常時開放しておくことにより管体内を乾燥しやすくして腐食を防止する一方で、椋鳥等の鳥類が端部開口から管体内に侵入して営巣することを防止することができる鳥類侵入防止具、及びその取り付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、鋼管鉄塔を構成する鋼管部材の端部に対して後付け可能な鳥類侵入防止具であって、前記鋼管部材の端部適所に対して接着固定されるベース部と、該ベース部に一体化されて前記鋼管部材の端部開口内に部分的に突出する突出片と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記ベース部は、平板状の状態から、前記鋼管部材周面のR形状に倣ったR状に湾曲変形可能に構成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記ベース部には予め接着剤層が形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記突出片は、前記ベース部に対して略平坦面状に連設された状態から、屈曲した状態に折り曲げ自在に構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1、2又は3において、前記突出片は、前記ベース部に対して予め屈曲した状態で一体化されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5において、前記ベース部及び前記突出片は、金属、又は樹脂により構成されていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6において、前記ベース部は、平行な2枚の板状ベース片を一端縁にて連結した略コ字状体、或いは略U字状体であることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具のベース部を、前記鋼管部材の端部開口の外周面、又は/及び、内周面に接着固定したことを特徴とする。
請求項9の発明は、前記鋼管部材は、その端部開口の端縁に形成した軸方向切欠き内に軸方向へ延びる継手プレートを嵌合固定した構成を有し、請求項1乃至6の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具のベース部は前記継手プレートに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、鋼管鉄塔を構成する鋼管部材の端部に対して後付け可能な鳥類侵入防止具において、鋼管部材の端部適所に対して接着固定されるベース部と、該ベース部に一体化されて鋼管部材の端部開口内に部分的に突出する突出片と、を備えたので、各種鉄塔を構成する鋼管部材の端部開口を常時開放しておくことにより管体内を乾燥しやすくして腐食を防止する一方で、椋鳥等の鳥類が端部開口から管体内に侵入して営巣することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る鳥類侵入防止具(以下、防止具、という)の構成説明図であり、図2(a)及び(b)は防止具を鋼管部材の端部開口に取り付ける手順(取り付け構造)を示す図である。
この防止具1は、鋼管鉄塔(パイプ鉄塔)を構成する鋼管部材の端部開口に対して後付け可能な構成を備えており、鋼管部材20の端部開口21の適所に対して接着固定されるベース部2と、ベース部2に一体化されて鋼管部材の端部開口内に部分的に突出する突出片10と、を備えている。
防止具1はステンレス等の金属、或いは樹脂等から一体的に構成する。
ベース部2を金属材料によって構成した場合には、図1(a)に示した平板状の状態から、(b)に示したように鋼管部材の周面のR形状に倣ったR状に湾曲変形可能に構成されている。具体的には、ベース部2の面内に所定のピッチにて少なくとも一つ、又は複数のスリット2Sを平行に形成することにより全体として湾曲(屈曲)し易いように構成する。なお、スリット2Sの一端は、ベースの一端縁を貫通するように構成してもよい。
また、ベース部2の内側面には予め接着剤層(粘着ゴムシート等)3が形成されている。接着剤により鋼管部材に対して固定するので固定作業性が高まる。また、接着剤としては、接着力の強いものを用いることにより、経時的も防止具の落下の懸念が少なくなる。接着剤層3には離型紙を貼着しておくことにより、防止具相互の接着を防止しつつ多数の防止具を重ねた状態で安全帯の腰袋に収納することが可能となる。
【0007】
突出片10は、図2(a)の取付け状態説明図に示すようにベース部2に対して略平坦面状に連設された状態から、図2(b)に示したように90度屈曲した状態に折り曲げ自在に構成されている。
具体的には、突出片10は、ベース部2の一端縁の適所から突出しており、この例ではベース部に対して幅の細い折り曲げ部11を介して一体化されている。折り曲げ部11は人手により任意の角度に屈曲させることができる一方で、一旦屈曲させた場合には風雨や鳥類からの外力によっては変形しない程度の強度に設定する。突出片10の形状、サイズは、図示の形状、サイズに限定される訳ではない。
防止具1は例えば図1(a)に示した如き寸法を有し、軽量であるため、作業者が安全帯の腰袋に多数の防止具1を収納して携行するのに適している。
但し、防止具1の形状、寸法は図示のものに限定される訳ではない。従って、例えば鋼管部材の径サイズの違いに応じて異なったサイズの防止具1を用意し、一つの防止具を装着するだけで鳥類の侵入を阻止できる程度に端部開口を部分的に塞ぐことができるように構成してもよい。
但し、図1(a)に寸法表示した如き小さいサイズ(14g)に設定しておけば、一種類の防止具を用いて多様なサイズの鋼管部材に対して適用して鳥類の侵入を防止しつつ、管体内外の通気性を確保することが可能となる。
【0008】
次に、図2に示した鋼管部材20は、軸方向両端部に端部開口21を備え、端部開口21を構成する鋼管部分に設けた2つの軸方向への切欠き22内に端部継手となる継手プレート23が差込み固定(溶着)されている。符号30は鉄塔の主柱鋼管部材であり、主柱鋼管部材30の外面から突設された継手板31に対して継手プレート23をボルト35、ナット36によって締結固定することにより、鋼管部材20を主柱鋼管部材30に固定する。継手プレート23により2つに分割された半円形状の端部開口21からは雨水が浸入するが、排水も確実に行われるため、通気性が確保でき、管体内に水が長期間溜まり続けることによる金属腐食は防止される。特に、鋼管部材20は、主柱鋼管部材30に対して斜めに固定される斜材、或いは水平に固定される水平材であるため、浸入した雨水の排出は端部開口から確実になされる。
一方、この端部開口21から椋鳥等が侵入して営巣した場合には、酸性成分を含む卵の中身や糞が管体内を腐食させる原因となることが確認されている。そこで、本発明では上記防止具1のベース部2を鋼管部材20の開口端部外周に接着してから、突出片10を約90度内径方向へ屈曲させて開口端部側に部分的に突出させることによって、椋鳥等の鳥類が侵入するスペースをなくしている。
【0009】
防止具1の取付けに際しては、まずベース部2を人手、或いはペンチ等を用いて取付け対象となる鋼管部材20の外面形状に合わせたR状に湾曲(屈曲)させる。次いで接着剤層3を覆う剥離紙を剥がしてから、ベース部2を鋼管部材20の外面に接着する。この際、図2(a)に示すように折り曲げ部11から先端部分が鋼管部材端部から外側へ突出するように位置決めする。
次いで、(b)に示すように人手、或いは工具により折り曲げ部11を90度折り曲げて突出片10により端部開口21の一部を塞ぐようにする。必要に応じて複数の防止具1を端部開口21の外周面の異なった位置に取り付ける。椋鳥は、例えば5cm程度の間隔のスペースしかない場合には、管体内に侵入できないため、その程度の狭いスペースが形成されるように防止具を取り付ける。
図1(a)に示したサイズの防止具であれば、最大径の鋼管部材(10〜16cm)は勿論、それよりも小径の鋼管部材に対しても適用することが可能となる。
防止具1の突出片10を予めベース部2に対して90度屈曲させた状態としておき、現場では鋼管部材の端部に貼り付けるだけとするようにしてもよいが、作業者が装着する安全帯の腰袋に多数の防止具1を収納する場合の利便を考えれば屈曲させない状態で収納するようにした方がよい。
防止具1を樹脂にて構成する場合には、図3に示すように予め突出片10をベース部2に対して90度屈曲させた状態で成形することとなる。従って、幅の細い折り曲げ部は不要となる。樹脂製の場合もベース部2にスリット2Sを形成して湾曲し易くする。防止具1を金属板にて構成する場合も、予め突出片10を屈曲させておいてもよい。
【0010】
次に、図4は変形例であり、この防止具1は突出片10を突出させたベース部2の同一の端縁であって、突出片10の両側方に相当する箇所に張出し片12を突設した構成が特徴的である。この張出し片12は、防止具1のベース部2を鋼管部材20の端部外周に接着した際に、鋼管部材の端部開口21の内面側に向けて折り返すことにより、ベース部2と各張出し片12との間で鋼管端部を挟み込むように保持する。このように張出し片12を設けることにより経年的に接着剤層が劣化して接着力が低下した場合においても防止具1が鋼管部材の端部から落下しにくくなるように構成することができる。
なお、上記実施形態に係る取り付け構造では、いずれも防止具1のベース部2を鋼管部材の端部外周面に接着固定する例を示したが、鋼管部材の端部内周面に接着固定した上で、突出片10を内径側に屈曲させてもよい。或いは、防止具1のベース部2を継手プレート23の面上に接着してから突出片10を外径方向へ90度屈曲させて端部開口21を一部塞ぐように構成してもよい。
【0011】
次に、図5(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る防止具の構成を示す斜視図、及び正面図であり、この防止具1は金属、或いはプラスチックから成るベース部2と突出片10、及び折り曲げ部11を有している点では図1の実施形態と同様であるが、ベース部2が2枚の板状ベース片2A、2Bをコ字状(或いは、U字状)に一体化した構成を有している点が異なっている。各板状ベース片2A、2Bは、互いにバネ性を有した状態で連結されている。
各板状ベース片2A、2Bの間隔は、鋼管部材20の端部を挟み込んだ状態で弾性的に固定されるように構成し、何れか一方の板状ベース片の内面には接着剤層3を形成し、取付け前においては接着剤層3を離型紙4により被覆しておく。
この防止具1を鋼管部材の端部に取り付ける場合には、離型紙4を剥離して接着剤層3を露出させてから、両板状ベース片間に鋼管部材の端部を差し込んでから接着固定する。
このように鋼管部剤端部を2枚の板状ベース片2A、2Bによって弾性的に挟み込むと共に接着剤により接着することにより、固定力が高まり、接着剤の接着力が経時的に低下したとしても板状ベース片による圧着力によって落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る鳥類侵入防止具の構成説明図。
【図2】(a)及び(b)は防止具を鋼管部材の端部開口に取り付ける手順(取り付け構造)を示す図。
【図3】鳥類侵入防止具を樹脂にて構成した場合の構成例を示す図。
【図4】本発明の鳥類侵入防止具の変形例の構成説明図。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る防止具の構成を示す斜視図、及び正面図。
【符号の説明】
【0013】
1…防止具、2…ベース部、2A、2B…板状ベース片、2S…スリット、3…接着剤層、4…離型紙、10…突出片、11…折り曲げ部、12…張出し片、20…鋼管部材、21…端部開口、23…継手プレート、30…主柱鋼管部材、31…継手板、35…ボルト、36…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管鉄塔を構成する鋼管部材の端部に対して後付け可能な鳥類侵入防止具であって、
前記鋼管部材の端部適所に対して接着固定されるベース部と、該ベース部に一体化されて前記鋼管部材の端部開口内に部分的に突出する突出片と、を備えたことを特徴とする鳥類侵入防止具。
【請求項2】
前記ベース部は、平板状の状態から、前記鋼管部材周面のR形状に倣ったR状に湾曲変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項3】
前記ベース部には予め接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項4】
前記突出片は、前記ベース部に対して略平坦面状に連設された状態から、屈曲した状態に折り曲げ自在に構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項5】
前記突出片は、前記ベース部に対して予め屈曲した状態で一体化されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項6】
前記ベース部及び前記突出片は、金属、又は樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項7】
前記ベース部は、平行な2枚の板状ベース片を一端縁にて連結した略コ字状体、或いは略U字状体であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具のベース部を、前記鋼管部材の端部開口の外周面、又は/及び、内周面に接着固定したことを特徴とする鳥類侵入防止具の取り付け構造。
【請求項9】
前記鋼管部材は、その端部開口の端縁に形成した軸方向切欠き内に軸方向へ延びる継手プレートを嵌合固定した構成を有し、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の鳥類侵入防止具のベース部は前記継手プレートに固定されることを特徴とする鳥類侵入防止具の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138588(P2007−138588A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334791(P2005−334791)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】