説明

麺裁断具

【課題】 蕎麦やうどんを製麺する時に、薄く伸ばして折り畳んだ蕎麦及びうどんの生地を、未経験者でも均一に裁断することが出来る麺裁断具を提供する。
【解決手段】 俎板と、該俎板の平面に平行に且つ一直線上に案内されるガイド体4と、そのガイド体4に上下動自在に案内される麺押さえ板と、その麺押さえ板の少なくとも一側面に設けた包丁案内面と、該包丁案内面の延長面上に対向し且つ、俎板上面でガイド体4に設けたストッパとを有する。
そして麺裁断後に、包丁の刃先先端を俎板に接触状態で、その包丁の上縁を傾けることで、麺押さえ板およびガイド体を僅かに移動させ、それに伴い刃先がストッパの先端に当接して、その移動が停止する。そのときの移動幅は、包丁案内面とストッパとの離間距離により定められ、麺生地をその移動幅で正確に裁断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦やうどんを製麺する場合に使用するものであって、折り畳んだ蕎麦及びうどんの生地を、未経験者でも均一に裁断することが出来る麺裁断具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蕎麦やうどんを均等に裁断するとき、図2に示すように俎板60上に、薄く伸ばして折り畳んだ麺生地W´(以下麺帯Wという)を小麦粉を介して置き、その麺帯W上に小麦粉を介して麺押さえ板62(一般に駒板と呼ばれている)を載せる。この小麦粉は板との粘着を防ぎ円滑に分離するためである。麺押さえ板62の側面には当て板63が立設され、その端面65が包丁案内面を形成する。また当て板63に直交して、麺押さえ板62上につまみ板64が立設している。そこで、作業者は一例として左手でつまみ板を保持しつつ、麺押さえ板の下面で麺帯Wを押さえ、当て板63の端面65に沿わせて包丁66を下ろし、麺帯Wの側端を少しづつ裁断する。そして裁断するたびに麺押さえ板を左方に僅かに移動する。また、図2の麺裁断具に加えて、俎板の一端の上面に目盛りが設けられたものもあった。(特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2001−128634
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の麺裁断具は、麺押さえ板62を、裁断のたびに厳密に俎板側面に沿って平行移動することが難しいと共に、麺を均等幅で裁断することも難しかった。また、蕎麦やうどんを均等に裁断する目的の俎板として、俎板の一端の上面に目盛りが設けられたものがあるが、麺押さえ板を目視で目盛りに合わせて均等に移動することは困難であり、且つ俎板に対して確実に麺押さえ板を平行移動出来ない欠点があった。さらには、麺帯Wの厚さは全幅に渡り均等ではなく、端部程、薄くなる。すると麺帯の端部では麺押さえ板の平面が傾斜し、麺切りをさらに困難にしていた。
そこで、本発明は上記の欠点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の麺裁断具は、俎板(1)と、ガイド体(4)と、麺押さえ板(41)と、包丁案内面(45)と、包丁刃先部ストッパ(17)とを有する。
そのガイド体(4)は、俎板(1)上に配置されて、その俎板(1)に案内されて摺接し、その俎板平面に沿って一直線上に移動自在に取り付けられる。
麺押さえ板(41)は、そのガイド体(4)に、前記俎板平面に直交する方向に移動自在に案内されると共に、前記一直線の方向にはガイド体(4)に対して相対移動しないように、取付られたものである。
そして、その麺押さえ板(41)の側端に垂直に包丁案内面(45)が設けられている。
さらに、俎板(1)の表面またはその僅か上方位置で、前記包丁案内面(45)または、その延長面に僅かの間隔(T)で先端が対向して前記ガイド体(4)に包丁刃先部ストッパ(17)が設けられている。
そして、包丁(35)を前記包丁案内面(45)に接すると共に、その刃先(38)を俎板(1)に接触させた状態で、その包丁(35)の上縁を前記包丁案内面(45)側に傾斜させると、その包丁により前記麺押さえ板(41)およびガイド体(4)が押され移動し、その刃先(38)に前記ストッパ(17)の先端が当接して、その移動が停止するように構成されたものである。
【0006】
上記構成において、
前記ストッパ(17)の先端と前記包丁案内面(45)または、その延長面との間隔を可変にすることができる(請求項2)。
また、上記構成において、
夫々前記ガイド体(4)が案内される方向に平行な軸線の回りに軸支されるように、第1リンク(27)と第2リンク(26)との一端どうしが互いに軸支すると共に、両リンク(27)(26)の各他端と、前記ガイド体(4)および前記麺押さえ板(41)を軸支して、その第1リンク(27)と第2リンク(26)とを、断面くの字状に配置し、
前記ガイド体(4)と麺押さえ板(41)との間にスプリング(22)またはゴム輪(22a) あるいはゴム紐を介装して、両者を接するように付勢し、前記ガイド体(4)と第1リンク(27)と第2リンク(26)と麺押さえ板(41)とで断面四辺形のリンク機構(30)を構成することができる(請求項3)。
【0007】
さらに上記構成において、
夫々の前記軸支の回りに回動して、第1リンク(27)と第2リンク(26)とを、その第1リンク(27)と第2リンク(26)とでつくる交角の外角側に重ねると共に、その第1リンク(27)と前記ガイド体(4)とを重ね、前記第2リンク(26)と前記麺押さえ板(41)とを重ねるようにして、互いにつづら折状に折り畳み可能とすることができる(請求項4)。
また、上記構成において、
前記ガイド体(4)の下端に設けた突条(5)を、前記俎板(1)の一側部に設けた溝(2)に嵌着して案内させ、その溝(2)の一方の側壁と突条(5)とが接するように、弾性材(21)をガイド体(4)と俎板(1)との間に介装して付勢することができる(請求項5)。
【0008】
上記構成において、ガイド体(4)をそれぞれ細長い主ガイド体(4a)と副ガイド体(4b)とから構成し、主ガイド体(4a)の長手方向の下面中心部にのみ前記突条(5)を配置して、それを前記俎板(1)の前記溝(2)に嵌着して案内することができる(請求項6)。
上記構成において、副ガイド体(4b)を主ガイド体(4a)の裏面に締結具を介して、その長手方向の中心に対して180度反転可能に且つ、着脱自在に設け、その長手方向の一端に前記ストッパ(17)を設け、副ガイド体(4b)の両端部の側面を俎板(1)の側面に摺接するようにすることができる(請求項7)。
【0009】
上記いずれかの構成において、前記麺押さえ板(41)の下面に、麺生地との接触抵抗を増す1以上の溝(55)を設けることができる(請求項8)。
上記いずれかの構成において、前記俎板(1)の幅方向の他側部に第2溝(2a)を設け、その俎板(1)上に麺端支持板(56)を独立して載置すると共に、その麺端支持板(56)の下面に突設された凸条(5a)を前記第2溝(2a)に嵌着することができる(請求項9)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来、製麺で最も困難であった蕎麦やうどんの裁断を、一般的な麺押さえ板(駒板)の使用感覚で素人でも蕎麦職人並の均一幅に裁断できる。これは、本発明が俎板の上面に対して一直線上に平行に移動するようにガイド体4を案内させると共に、そのガイド体4に麺押さえ板41を上下動自在に案内し、ガイド体4にストッパ17を設け、包丁の刃先を俎板に位置して、それを傾けたとき、麺押さえ板41およびガイド体4が移動し、その刃先38に前記ストッパ17の先端が当接して、その移動が停止するからである。そして、その移動幅はストッパ17と麺押さえ板の包丁案内面45との離間する距離に比例する。それにより、麺押さえ板を常に俎板1の側面等に平行に移動させると共に、麺の幅を常に一定に裁断できるものとなる。
【0011】
また、請求項2に記載の如く、ストッパ17の先端と前記包丁案内面45または、その延長面との間隔を可変にした場合には、麺裁断後の包丁傾け角度の調整が可能で、所望の幅に麺の裁断が出来る。
さらに、請求項3に記載の如く、麺押さえ板41(駒板)と、ガイド体4と、第1リンク27および第2リンク26とにより断面四辺形のリンク機構を構成し、麺押さえ板41とガイド体4とが接するようにスプリング22またはゴム輪22aあるいはゴム紐により付勢した場合には、麺押さえ板41をガイド体4に対して上下方向に確実に平行移動させることができる。それにより麺帯厚さに対応する高さに麺押さえ板41を常に保持し、任意の厚さの麺帯の裁断に対応できる。特に、麺帯Wの切り始め側の端部と、切り終わり側の端部では麺帯Wの厚みが次第に薄くなり、傾斜部となっていることが多いが、その傾斜部においても、麺押さえ板41は常に、俎板1に平行に位置し、傾斜することがない。それにより、麺帯の端部においても、容易に一定幅で麺を裁断することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の如く、麺押さえ板に折りたたみ手段を設けた場合には、非使用時にはコンパクトに折りたたみ収納することができる。
そして、請求項5に記載の如く、麺の裁断時におけるガイド体4の移動を抑止する手段を設けた場合には、乱暴な高速裁断行為でも、安定したガイド部材の直線平行移動が保たれ、且つ裁断中に麺押さえ板が不用意に移動するオーバーランも防止でき、麺を確実に均一幅に裁断できる。
【0013】
上記構成において、請求項6に記載の如く、主ガイド体4aの長手方向の下面中心部にのみ前記突条5を設け、それを俎板1の溝2に嵌着して案内した場合には、突条5と溝2との接触抵抗を少なくし、麺裁断具の移動を円滑に行い得る。
上記構成において、請求項7に記載のように、副ガイド体4bを主ガイド体4aの裏面に締結具を介して着脱自在に且つ、その長手方向の中心に対して180度反転可能に設け、その長手方向の一端にストッパ17が設けられたものにおいては、面切り作業を右手で行う人以外に、左手で行う人にも使い勝手の良い麺裁断具を提供できる。
【0014】
上記いずれかの構成において、請求項8の記載の如く、麺押さえ板41の下面に、麺生地との接触抵抗を増す1以上の溝55を設けたものにおいては、麺切断中に麺生地が周方向に回転することを防止し、均一な麺切断を容易に行い得る。
上記いずれかの構成において、請求項9に記載の如く、俎板1の幅方向の他側部に第2溝2aを設け、その溝2aに麺端支持板56の下面に突設された凸条5a嵌着した場合には、麺生地の端部を麺端支持板56によって固定し、円滑な麺切り作業を行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の麺裁断具の要部斜視図であり、図3はその分解斜視図、図4はその平面図、図5はその正面図である。また、図6,図7は麺押さえ板41を含む四節リンク機構の動作説明であり、図8〜図10は、麺帯Wを定幅で裁断する説明図である。
この実施例の麺裁断具は、図1,図3に示すように、俎板1と、ガイド体4と、麺押さえ板41と、包丁刃先部ストッパ17とを有する。
【0016】
麺帯Wを載置する俎板1の長尺側のエッジ近傍の側辺に平行に溝2が全長に渡り設けられている。
ガイド体4は図3に示す如く、バー状の主ガイド部4aと副ガイド部4bとの組合せからなる。なお、主ガイド部4aと副ガイド部4bは後述するように一体に形成してもよい。
この細長い主ガイド部4aの下面には、俎板1の溝2に嵌合する突条5を突設形成している。この突条の幅は溝2のそれより僅かに小に形成されている。主ガイド部4aの外側の下面で、突条5に対して平行となる位置に、副ガイド部4bが固定される。そのため主ガイド部4aの下面にはその当接用の切り欠き部7が段差状に形成されている。
【0017】
取付状態で副ガイド部4bの下端面は主ガイド体4aのそれより下方に位置する。即ち、副ガイド部4bの下端面が下方へ突出し、そこに垂下部6を形成する。また、副ガイド部4bの長手方向の前端は、主ガイド部4aの前端より前方に突出し、その突出部の根元にそれを横断する溝状のスリット13が、その上面側に切欠き形成されている。スリット13の前方側の凸部15には埋め込みナット16が埋設され、それにボルトよりなる包丁刃先部ストパ17(以下単にストッパ)が凸部15の前端側から螺着し、その先端がスリット13内に出入自在に突出する。
【0018】
この副ガイド部4bは、主ガイド部4aと組み合わされた状態で、図4に示す如く、俎板1の側面3の外側に位置する。そして、ガイド体4の突条5を図1に示す如く、俎板1の溝2に嵌着する。このとき、ストッパ17は俎板上面34とほぼ一致する高さ位置にくることが好ましい。なお、その俎板上面34より僅かであれば、その上方位置でもよい。このストッパー17は、その螺着回転によりその先端を移動し、その先端とスリット13の後端の壁面14との間隔調整を行える。なお、その壁面14は主ガイド部4aの端面である補助包丁案内面8および麺押さえ板41の後述する包丁案内面45と面一である。
このような主ガイド部4aの補助包丁案内面8と副ガイド部4bのスリット13の壁面14を一致させて、木ネジ25で両者を一体にしてガイド体4とする。
なお、前述のように、主ガイド体4aと副ガイド体4bとは一体的に製作しても良い。
【0019】
俎板1の俎板側面3とガイド体4の副ガイド体4b の垂下部6の内側面19とは平行しその間に隙間が形成されている。そして、副ガイド体4bの垂下部6の内側面19には弾性材である起毛テープ21が両面接着テープ等で貼り付けられ、起毛テープ(弾性材)21の穂先を俎板側面3に弾圧作用させて、それによりガイド体4に摩擦機能を持たせ、俎板1の溝2とガイド体の突条5間のガタつき防止機能を持たせる。即ち、その弾性材21の付勢力により、ガイド体4の突条5が溝2の一方側(外側)に接するようにする。
次に、麺押さえ板41は方形状で、麺帯Wを押え付けるに十分な大きさの幅および長さに形成され、その長手方向の一端に、当て板42が立設され、その側端に指掛板43と、中央につまみ板44が固着されている。その当て板42の端面が包丁案内面45を構成する。
【0020】
次に、麺押さえ板41とガイド体4とは、第1リンク27と第2リンク26とスプリング22とにより四節リンク機構30を構成する。即ち、この例では板状の第2リンク26の一端と板状の第1リンク27の一端とを蝶番29で連結すると共に、それら各リンク27,26の他端とガイド体4および麺押さえ板41とが、蝶番32,31で軸支されている。それぞれの蝶番の軸はガイド体4の長手方向に平行に位置する。そして、ガイド体4の補助包丁案内面8と麺押さえ板41の包丁案内面45とが一致するように組立てられている。このとき、第1リンク27と第2リンク26とは断面くの字状に形成される。
【0021】
そして、図4に示す如く、ガイド体4の後端面と麺押さえ板41の後端面とに夫々フック11,28を設け、それらにスプリング22の両端を係止し、常時スプリング力でガイド体4の側面10と麺押さえ板41の指掛板43の側面23とを適度な圧力で密着状態を保たせる。そして、これらの組立体により本発明の麺裁断具100を構成する。
【0022】
そして、この麺裁断具100は、麺帯Wの厚さに応じて、図6,図7で示す如く、麺押さえ板41が、スプリング22の付勢を含むリンク機構30によって、その指掛板43の側面23とガイド体4の側面10が密着した状態で、それが俎板上面34に対し上下方向に平行に移動する。それにより麺押さえ板41は常に、麺帯Wの上面を押さえることができる。
【0023】
(作用)
以下、本発明の使用方法につき説明する。
図1,図6に示す如く、俎板1上に薄く小麦粉を介し麺帯Wを載置し、その側端部を溝2の近傍に位置する。そして、麺裁断具100のガイド体4の突条5と俎板1の溝2を嵌合させて、麺押さえ板41を小麦粉を介して麺帯W上に載せ、当て板42の包丁案内面45を面帯Wの端に合わせる。そして、麺押さえ板41の指掛板43または、つまみ板44とガイド体4とを親指と人指し指とで軽く把持し、図8に示すように包丁35を当て板42の包丁案内面45と、ガイド体4の補助包丁案内面8に添わせながら裁断する。
その裁断により刃先38が俎板上面34に当接する。次に、図9に示すように刃先38を俎板1の上面に接触させた状態で、その上縁を矢印A方向(包丁案内面45側)へ、手首の回転スナップ動作で包丁35傾け、それを右の位置から、包丁35´の如く左傾斜させる。
【0024】
このときの動作で、包丁の上部の包丁側面39がガイド体4の頂点9を左方に押し、それとリンクで連結された麺裁断具100全体が左方向へ移動する。すると、その移動に伴い、ガイド体4のストッパ17のストッパ先端18が、包丁35の刃先38に当接して停止する。これは、包丁35の傾きを特定角度に保持してロックすることになる。このとき、正確には麺帯Wも僅かに俎板1上を左方に移動する。その移動距離は、麺裁断具100の移動距離より短い。
【0025】
包丁35の傾きをθとし、麺帯Wの高さをH1,ガイド体4の高さをH2とすると、麺帯Wの移動距離はH1tanθ,麺裁断具100の移動距離はH2tanθである。H1<H2であり、両者の差は(H2−H1)tanθである。この差分が麺の切り幅となる。そこで包丁35を持ち上げ、再びそれを包丁案内面45に案内して垂直に下ろし、麺帯Wを定幅に裁断する。その幅は包丁案内面45の延長面とストッパ17のストッパ先端18との間隔に比例する。
以降、同様の作業を繰り返すことにより、幅が均等に裁断された麺48(図4)を得る。これらの作用を図8,図9,図10が現している。
【0026】
ガイド体4の補助包丁案内面8(包丁案内面45の延長面上にあって、それと面一)とストッパ17のストッパ先端18の間隔を調整することにより、任意の麺幅に裁断することが出来る。
即ち、ストッパ17をねじ込み、補助包丁案内面8とストッパ17のストッパ先端18の間隔を狭めると細い麺に裁断でき、緩めて間隔を広げると太い麺に裁断できる。
【0027】
なお、このとき麺押さえ板41は、図7に示す如く、リンク機構30により、麺帯Wの任意の厚さに対応して、それが俎板1の俎板上面34に平行に上下に移動し、常に麺帯Wの上面に位置する。特に、麺帯Wの切り始め側の端部と、切り終わり側の端部では麺帯Wの厚みが次第に低くなると共に傾斜しているが、その傾斜部においても、麺押さえ板41は常に、俎板1に平行に位置し、傾斜することがない。それにより、麺帯の端部においても、容易に一定幅で麺を裁断することができる。
【0028】
次に、この麺裁断具100は、図11で示す如く、非使用時には、つづら折に屏風を折り畳むが如く蝶番29,31,32の順勝手に従って折り畳むことができる。即ち、図7の状態から、ガイド体4を俎板1より分離し、スプリングの付勢力に抗して、リンク機構30の第1リンク27と第2リンク26との交角の外角側に回動させ、夫々の前記軸支の回りに回動して、第1リンク27と第2リンク26とを重ねると共に、その第1リンク27と前記ガイド体4とを重ね、前記第2リンク26と前記麺押さえ板41とを重ねるようにして、互いにつづら折状に折り畳み可能とすることができる。このとき、スプリング22が折り畳み状態を保持する。
【0029】
また、麺の裁断の際には、図6及び7に示す如く、副ガイド部4bの垂下部6の内側面19に設けた起毛テープ(弾性材)21の穂先が俎板側面3に弾発して、その適度な摩擦抵抗により、俎板1に対してガイド体4の安定した平行移動と、その停止状態の保持ができる。そして、高速裁断時の麺裁断具100のオーバーラン、及び裁断中の誤移動が防止でき均一幅に裁断できる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図12は、本発明の他の実施の形態を示す要部斜視図であり、これが、図3のそれと異なる点は、図3において俎板1に溝2を設け、ガイド体4に突条5を設けた代わりに、俎板側面54へ鉄板52を接合し、副ガイド体4bの側面にマグネット51を貼り付け、俎板53と麺裁断具100´の平行移動を確保したものである。なお、ガイド体4と俎板53との相対移動を円滑に行うため、マグネット51と鉄板52との間に極めて薄い、図示しないスペーサを置くことができる。
【0031】
次に、図13(A)は本発明の他の実施例の平面図であり、図13(B)はその横断面図である。
この例が、図1の実施の形態と異なる点は、図1では第2リンク26,第1リンク27が麺押さえ板41の幅方向中心線に対して左側に位置していたのに対し、図13(A)の実施例では第2リンク26,第1リンク27その他が麺押さえ板41の中心線に対して左右対称位置に配置されたものである。このようにすることにより、左利きの者にも麺切断作業を容易に行うことができるものである。
【0032】
即ち、図13(B)に示す如く、副ガイド体4bを主ガイド体4aに対して木ネジ25を介し着脱自在に且つ、図14の如く、その長手方向の中心に対して180度回転自在に取り付けられるようしたものである。そのことにより、副ガイド体4bの長手方向一端に設けたストッパ17を図13の右端の位置から図14の左端の位置にし、左利きの利き手で麺の切断が可能となるものである。
さらにこの例では、麺押さえ板41の下面に図13(B)及び図17に示す如く、複数の溝55を主ガイド体4aに平行に形成している。この溝55は、図17(B)の拡大図に示す如く、麺帯Wの上面に載置したとき、溝55内の麺帯W上面が僅かに溝55内に進入する。それによって、麺帯Wと麺押さえ板41との接触抵抗が増大し、麺切断中、麺帯Wが俎板1上で回転することを防止し、作業性の良い麺切断具を提供できる。
【0033】
さらにこの例では、図13(A)の如く、麺帯Wの後端部を麺端支持板56によって支持している。この麺端支持板56は、麺押さえ板41から独立したものであり、麺端支持板56の下面に、図18の如く、ガイド56aと凸条5aとが並列されている。このガイド56aの内面には、起毛テープ(弾性材)21が設けられている。そして凸条5aは、俎板1の他端に設けた溝2aに嵌着する。
また、図13(A),図15に示す如く、この例では突条5が主ガイド体4aの幅方向中心部のみに設けられ、突条5と溝2との接触抵抗を少なくし、麺押さえ板41の移動を円滑に行っている。即ち、切断作業において図9の包丁35のA方向への回動によって円滑に麺押さえ板41を移動できるようにしている。
【0034】
さらにこの例では、図15の如く、副ガイド体4bの一方の他端両面に起毛テープ(弾性材)21を設け、他方の他端両面に滑り片21aを取り付けている。このように副ガイド体4bの両面にそれらを設けることにより、副ガイド体4bを180度回転した後でも、その滑り効果を保持できる。
さらにこの例では、図1の一本のスプリング22に変えて、一対のゴム輪22aを配置している。このゴム輪22aの一端は、麺押さえ板41の両端に立ち上げた当て板42の中間部に止めピン28aで止着され、それが主ガイド体4aの孔11aを貫通して、他端が主ガイド体4aの背面の止めピン28aに止着されている。
【0035】
次に、図19〜図22は本発明のさらに他の実施の形態を示し、図19はその横断面図、図20は同平面図、図21は正面図である。
この例が図13及び図14のそれと異なる点は、主ガイド体4aと副ガイド体4bとを固定する木ネジ25の位置が異なること、即ち、副ガイド体4bの背面側から木ネジ25を水平に挿通し、その先端を主ガイド体4aに螺着して、主ガイド体4aと副ガイド体4bとの間を一体に締結した点、図20に示す如く、第2リンク26と第1リンク27との幅を広く取ると共に、夫々に開口26a,開口27aを形成したものである。
また、図22は麺裁断具を使用しないときの折り畳み状態を示す。
【0036】
(変形例)
図1〜図11に示す第1の実施例において、俎板1の縁部に設けた溝2を取り除くと共に、ガイド体4の下端面に突出した突条5を取り除いてもよい。これは、図12の実施例において、俎板側面3の鉄板を取り除くと共に、ガイド体4のマグネットを取り除いたものに相当する。この場合には、ガイド体4を軽く俎板側面3に押し当てるようにして、その俎板側面3が水平方向の案内面となり、麺裁断作業を行える。かかる麺裁断具は第1の実施例のものに比べて、確実性は少し劣るものの、麺裁断作業に少し慣れると、十分使用できる。このような構造の麺裁断具も前記請求項1の発明の構成要素を全て有し、本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一部を切り欠いた斜視図。
【図2】従来の一般的麺押さえ板使用時の斜視図。
【図3】本発明の分解斜視図。
【図4】本発明の平面図。
【0038】
【図5】本発明の正面図。
【図6】使用状態を示す側面図。
【図7】図4のX−X断面図でリンクモーションを示す図。
【図8】図4のY―Y断面図で麺帯を裁断した図。
【0039】
【図9】図4のY−Y断面図で本発明の麺押さえ板送り装置で駒送り(麺押さえ板の送り)が完了した時の図。
【図10】図4のY−Y断面図で本発明の麺押さえ板送り装置で裁断開始時の図。
【図11】本発明の麺押さえ板送り装置を折り畳んだ図。
【図12】本発明の別の実施例を示す図。
【0040】
【図13】本発明の他の例を示す平面図及び横断面図。
【図14】同発明において左手仕様にした平面図であって、副ガイド体4bを図13の(A)の状態から180度反転したもの。
【図15】図13(B)のXV−XV矢視断面略図。
【図16】図13(B)のXVI−XVI矢視断面略図。
【図17】同実施例の側面図及びそのB部拡大図。
【図18】図13(A)のXVIII−XVIII矢視断面図。
【0041】
【図19】本発明のさらに他の実施の形態を示す横断面図。
【図20】同平面図。
【図21】同正面図。
【図22】同実施例の麺裁断具を折り畳んだ状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 俎板
2 溝
2a 溝
3 俎板側面
4 ガイド体
4a 主ガイド体
4b 副ガイド体
5 突条
5a 凸条
6 垂下部
7 切り欠き部
8 補助包丁案内面
9 頂点
10 側面
【0043】
11 フック
11a 孔
13 スリット
14 壁面
15 凸部
16 埋め込みナット
17 ストッパ
18 ストッパ先端
19 内側面
21 起毛テープ(弾性材)
21a 滑り片
22 スプリング
22a ゴム輪
23 側面
【0044】
25 木ネジ
26 第2リンク
26a 開口
26´ 第2リンク
27 第1リンク
27a 開口
27´ 第1リンク
28 フック
28a 止めピン
29 蝶番
30 リンク機構
31 蝶番
32 蝶番
34 俎板上面
35 包丁
35´ 包丁
36 包丁グリップ
38 刃先
39 包丁側面
【0045】
41 麺押さえ板
42 当て板
43 指掛板
44 つまみ板
45 包丁案内面
47 後端稜部
48 麺
49 麺頂点
51 マグネット
52 鉄板
53 俎板
54 俎板側面
【0046】
55 溝
56 麺端支持板
56a ガイド
60 俎板
62 麺押さえ板
63 当て板
64 つまみ板
65 包丁案内面
66 包丁
66´ 包丁
67 麺
68 刃先
69 俎板上面
100 麺裁断具
100´ 麺裁断具
T 間隔
W 麺帯
W´ 麺帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
俎板(1) と、
その俎板(1)上に配置されると共に、その俎板(1)に案内されて摺接し且つ、その俎板平面に沿って一直線上に移動自在に取付られるガイド体(4)と、
そのガイド体(4) に、前記俎板平面に直交する方向に移動自在に案内されると共に、前記一直線の方向にはガイド体(4)に対して相対移動しないように、取付られた麺押さえ板(41)と、
少なくとも、その麺押さえ板(41)の側端に設けた垂直な包丁案内面(45)と、
俎板(1)の表面またはその僅か上方位置で、前記包丁案内面(45)または、その延長面に僅かの間隔(T)で先端が対向して前記ガイド体(4)に設けた包丁刃先部ストッパ(17)と、を具備し、
包丁(35)を前記包丁案内面(45)に接すると共に、その刃先(38)を俎板(1)に接触させた状態で、その包丁(35)の上縁を前記案内面(45)側に傾斜させると、その包丁により前記麺押さえ板(41)およびガイド体(4)が押されて移動し、その刃先(38)に前記ストッパ(17)の先端が当接して、その移動が停止するように構成された麺裁断具。
【請求項2】
請求項1において、
前記ストッパ(17)の先端と前記包丁案内面(45)または、その延長面との間隔が可変に構成された麺裁断具。
【請求項3】
請求項1において、
夫々前記ガイド体(4)が案内される方向に平行な軸線の回りに軸支されるように、第1リンク(27)と第2リンク(26)との一端どうしが互いに軸支されると共に、両リンク(27)(26)の各他端と、前記ガイド体(4)および前記麺押さえ板(41)が軸支されて、その第1リンク(27)と第2リンク(26)とが、断面くの字状に配置され、
前記ガイド体(4)と麺押さえ板(41)との間にスプリング(22)またはゴム輪(22a)あるいはゴム紐が介装されて、両者が接するように付勢され、前記ガイド体(4)と第1リンク(27)と第2リンク(26)と麺押さえ板(41)とで断面四辺形のリンク機構(30)を構成した麺裁断具。
【請求項4】
請求項3において、
夫々の前記軸支の回りに回動して、第1リンク(27)と第2リンク(26)とが、その第1リンク(27)と第2リンク(26)とでつくる交角の外角側に重なると共に、その第1リンク(27)と前記ガイド体(4)とが重なり、前記第2リンク(26)と前記麺押さえ板(41)とが重なるようにして、互いにつづら折状に折り畳み可能とした麺裁断具。
【請求項5】
請求項1において、
前記ガイド体(4)の下端に設けた突条(5)が、前記俎板(1)の一側部に設けた溝(2)に嵌着して案内され、その溝(2)の一方の側壁と突条(5)とが接するように、弾性材(21)をガイド体(4)と俎板(1)との間に介装して付勢した麺裁断具。
【請求項6】
請求項5において、
ガイド体(4)がそれぞれ細長い主ガイド体(4a)と副ガイド体(4b)とからなり、主ガイド体(4a)の長手方向の下面中心部にのみ前記突条(5)が設けられて、それが前記俎板(1)の前記溝(2)に嵌着して案内された麺裁断具。
【請求項7】
請求項6において、
副ガイド体(4b)が主ガイド体(4a)の裏面に締結具を介して、その長手方向の中心に対して180度反転可能に且つ、着脱自在に設けられ、その長手方向の一端に前記ストッパ(17)が設けられ、副ガイド体(4b)の両端部の側面が俎板(1)の側面に摺接するように構成された麺裁断具。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかにおいて、
前記麺押さえ板(41)の下面に、麺生地との接触抵抗を増す1以上の溝(55)が設けられた麺裁断具。
【請求項9】
請求項5〜請求項8のいずれかにおいて、
前記俎板(1)の幅方向の他側部に第2溝(2a)が設けられ、その俎板(1)上に麺端支持板(56)が独立して載置されると共に、その麺端支持板(56)の下面に突設された凸条(5a)が前記第2溝(2a)に嵌着する麺裁断具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−29328(P2008−29328A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160159(P2007−160159)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(501226055)
【Fターム(参考)】