説明

鼻涙系用の薬物送達方法、構造および組成物

患者の涙点に挿入するためのインプラントは本体を含む。本体は遠位末端、近位末端、およびその間の軸を有する。本体の遠位末端は涙点を通って遠位に、涙小管内腔に挿入可能である。本体は薬剤マトリクス薬物芯内に含まれる治療薬を含む。薬剤マトリクスを涙液に暴露することで、持続期間にわたって涙液中に治療薬が効果的に放出される。本体は、近位末端から離れて薬剤が放出されるのを防ぐために薬剤マトリクスを覆って配置される鞘を持つ。本体は、中に配置される際に排除されるのを防ぐために内腔壁組織と係合するように構成される外面も持つ。特定の実施形態では、薬剤マトリクスは薬剤との不均質混合物中に例えばシリコンなどの非生体吸収性ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]本出願は35 USC 119(e)の下に2006年3月31日出願の米国仮出願No. 60/787,775および2006年12月26日出願の米国仮出願No. 60/871,864の利益を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は鼻涙排液系もしくはその付近で使用するためのインプラントに関し、実施形態は涙小管インプラント、涙嚢インプラント、涙点プラグ、薬物送達機能を持つ涙点プラグを提供する。
【0003】
眼薬送達の分野において、患者と医師は様々な課題に直面している。特に、治療の反復性(1日当たり複数の点眼薬群を複数回注入、点眼すること)、関連費用、ならびに患者のコンプライアンス(服薬順守)の欠如は、得られる治療効果に著しく影響することがあり、視力の低下や、多くの場合失明につながる。
【0004】
例えば点眼薬の点眼などの薬剤服用における患者のコンプライアンスは不規則になる可能性があり、ある場合においては、患者が指示された治療計画に従わないこともある。コンプライアンスの欠如とは、点眼薬の点眼の失敗、無効な方法(必要量未満の点眼)、点眼薬の過剰使用(全身性副作用につながる)、非処方点眼薬の使用、もしくは複数種の点眼薬を必要とする治療計画に従わないこと、を含み得る。薬物の多くは、患者が1日に4回まで点眼することを必要とし得る。
【0005】
コンプライアンスに加えて、少なくともいくつかの点眼薬の費用は増大しており、限られた所得の患者は、必要最小限の必需品を買うか、もしくはその代わりに処方薬を調合してもらうかという選択に直面している。多くの場合、保険は処方される点眼薬の総費用を補償せず、もしくは時として、点眼薬は複数の異なる薬物を含む。
【0006】
さらに、多くの場合、局所投与薬物は約2時間以内に眼の効果がピークに達し、その後治療効果を維持するために追加の薬物投与が実施されなくてはならない。加えて、自己投与もしくは自己摂取の投薬計画における一貫性の無さは、次善の治療に終わる可能性がある。参照により全容が本明細書に組み込まれるPCT Publication WO 06/014434(Lazar)は、点眼薬に関連するこれらのおよび/または他の問題に関連し得る。
【0007】
眼薬送達の有望な方法の一つは、眼の付近の組織に薬物を放出するインプラントを配置することである。この方法は点眼薬にいくらかの改良をもたらすことができるが、この方法の考えられるいくつかの問題点は、所望の組織位置にインプラントを埋め込むこと、所望の組織位置にインプラントを保持すること、持続期間にわたって所望の治療レベルで薬物を徐放することを含み得る。例えば緑内障治療の場合、インプラントが気付かれずに早く紛失してしまった場合、薬物が全く送達されない可能性があり、患者は視力低下、ことによると失明にさえ陥る可能性がある。
【0008】
上記をふまえて、上述の欠点の少なくともいくつかを克服する改良された薬物送達インプラントを提供することが好ましい。
【発明の開示】
【0009】
本発明は患者の眼組織の涙点から治療薬を送達するためのインプラント装置、システムおよび方法を提供する。
【0010】
第一の態様では、本発明の実施形態は患者の涙点に挿入するためのインプラントを提供する。涙点は眼から涙小管内腔へ涙液用の流路を提供する。インプラントは本体を含む。本体は遠位末端、近位末端、およびその間の軸を持つ。本体の遠位末端は涙点を通って涙小管内腔の中に遠位に挿入可能である。本体は薬剤マトリクス薬物芯(agent matrix drug core)内に含まれる治療薬を含む。薬剤マトリクスを涙液に暴露することで、持続期間にわたって治療薬が涙液に効果的に放出される。本体は薬剤マトリクスを覆って配置される鞘を持ち、近位末端から離れて薬剤が放出されるのを防ぐ。本体は、中に配置される際に排除されるのを防ぐために、内腔壁組織と係合するように構成される外面も有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、薬剤マトリクスは薬剤との不均質混合物中に、例えばシリコンなどの非生体吸収性ポリマーを含む。不均質混合物は治療薬と治療薬の含有物で飽和されたシリコンマトリクスを含んでもよい。
【0012】
多くの実施形態では、本体の外面は鞘に接して配置することができ、外面は涙点から本体が排除されるのを防ぐような本体の形状を画定し得る。本体は薬剤マトリクスを覆う支持構造をさらに含んでもよい。支持構造は外面を画定し、涙点から本体が排除されるのを防ぐように構成されてもよい。特定の実施形態では、支持構造はその中に鞘と薬剤マトリクス薬物芯を受容し、使用中の薬剤マトリクスの不慮の排出を防ぐ。支持構造はらせんコイルを含むことができる。支持構造はその中に容器を有してもよく、使用中に近位末端と涙液膜との間で自由な流体連通(fluid communication)を可能にするために、容器はその中に鞘と薬剤マトリクスを適切に(fittingly)受容してもよい。外面は涙点内に放出されると半径方向に拡張し得、この半径方向の拡張によって涙点からの排除を阻止し得る。
【0013】
特定の実施形態では、薬剤はプロスタグランジンアナログを含み、持続期間とは少なくとも3ヶ月を含む。
【0014】
多くの実施形態では、患者へ挿入するためのインプラントが提供される。患者は眼に付随する涙液の流路を持ち、インプラントは本体を含む。本体は治療薬と支持構造を含むことができる。本体は、涙液の流路に沿った標的位置に埋め込まれると、数日間の徐放期間にわたって毎日、ある量の治療薬を涙液に放出するように構成できる。その量は、治療薬の推奨される一日の点眼量よりも著しく少なくなってもよい。例えば、その量は推奨される点眼量の10%未満であってもよい。特定の実施形態では、その量は推奨される点眼量の5%未満であってもよい。
【0015】
多くの実施形態では、期間は少なくとも3週間を含み、少なくとも3ヶ月を含んでもよい。治療薬はマレイン酸チモロールを含んでもよい。本体は約270μgから約1350μgの範囲の治療薬を含んでもよい。一日あたりの放出量は約20μgから約135μgの範囲となり得る。
【0016】
多くの実施形態では、治療薬は例えばラタノプロストおよび/またはビマトプロストなどのプロスタグランジンアナログを含んでもよく、本体は約3μgから約135μgの範囲の治療薬を含むことができる。量は約5 ngから約500 ngの範囲となり得る。特定の実施形態では、本体は約5μgから約30μgの範囲で治療薬を含んでもよく、量は約10 ngから150 ngの範囲となり得る。
【0017】
別の態様では、本発明の実施形態は、付随する涙液を持つ眼に治療薬を送達する方法を提供する。この方法は眼の涙小管に薬物芯を配置するステップを含む。薬物芯は、マトリクスと、マトリクス内の治療薬の含有物を含む。薬物芯の一部分は涙液に暴露される。治
療薬は眼の涙液に放出される。治療薬が持続期間にわたって暴露部分を通して治療レベルで放出される間、マトリクスが治療薬で実質的に飽和されたままになるように、治療薬がマトリクスに溶解する。
【0018】
多くの実施形態では、放出速度は芯への薬剤の溶解度、涙液への薬剤の溶解度、および暴露部分の面積によって実質的に決定される。薬物は約90日間、治療レベルで暴露部分を通して放出され得る。治療薬剤はプロスタグランジンアナログを含んでもよく、治療薬の含有物は油を含む。治療薬はマトリクス内に封入することができ、マトリクスは非生体吸収性ポリマーを含んでもよい。
【0019】
多くの実施形態では、治療薬の水への溶解度は重量%で約0.03%未満である。治療薬は涙液の界面活性剤に応じて治療レベルで放出され得る。鞘は暴露部分を画定するように芯を覆って配置されてもよく、暴露部分は芯の近位末端で眼の方を向いている。
【0020】
多くの実施形態では、緑内障を処置する涙点プラグが提供される。プラグは直径約2.0 mm以下の本体を含む。涙点に35日間挿入される際、本体は35日間毎日、少なくとも治療量の治療薬を送達する。いくつかの実施形態では、直径約2.0 mm以下の本体は、患者に挿入される間、直径約1.0 mm以下の断面サイズを含む。特定の実施形態では、本体は薬物芯を含み、治療薬は薬物芯から送達される。薬物芯は直径約1 mm以下となり得、本体は長さ約2 mm以下となり得る。
【0021】
多くの実施形態では、涙点プラグを用いて緑内障を処置する方法が提供される。方法は、少なくとも90日間、涙点プラグから一日あたり少なくとも10 ngの治療薬を溶出するステップを含む。特定の実施形態では、治療薬はビマトプロストもしくはラタノプロストの内の少なくとも一つを含む。治療薬の水への溶解度は重量で約0.03%以下 となり得る。
【0022】
多くの実施形態では、緑内障を処置する涙点プラグが提供され、プラグは本体を含む。本体は治療薬を含み、本体は眼の界面活性剤に応じて治療レベルで治療薬を放出するように構成される。特定の実施形態では、治療薬の水への溶解度は重量で約0.03%以下である。治療薬はシクロスポリンを含んでもよい。
【0023】
多くの実施形態では、緑内障を処置する涙点プラグが提供される。プラグはプラグ本体を含む。本体は治療薬を含む。本体は少なくとも約20日間にわたって眼の涙液に約80から120 ngの治療薬を放出するように構成される。特定の実施形態では、治療薬はビマトプロストもしくはラタノプロストの内の少なくとも一つを含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、緑内障を処置する涙点プラグが提供される。涙点プラグは本体を含む。本体は約0.02 cm3以下の体積以内で保存される治療薬を含む。本体は少なくとも約1ヶ月間、治療レベルで治療薬を送達するように構成される。特定の実施形態では、本体は少なくとも約3ヶ月間、治療レベルで治療薬を送達するように構成される。本体は少なくとも約1ヶ月間、実質的に0次放出速度で治療薬を送達するように構成され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、付随する涙液を持つ眼の緑内障を処置する物質の組成物が提供される。組成物は含有物を含む。含有物は濃縮した形の治療薬を含む。治療薬の水への溶解度は重量で約0.03%以下である。シリコンマトリクスが含有物を封入する。治療薬はシリコンマトリクスに可溶性で、治療レベルでシリコンマトリクスから涙液へ治療薬を放出する。特定の実施形態では、治療薬含有物はシリコンマトリクス内に封入され、シリコンマトリクス内に封入された含有物の不均質混合物を含む。含有物はラタノプロストオイルを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1−1と1−2は、本発明の実施形態に従うインプラントでの処置に適した眼2の解剖学的組織構造を示す。眼2は角膜4と虹彩6を含む。強膜8は角膜4と虹彩6を囲み、白く見える。結膜9はほぼ透明で強膜8を覆って配置される。水晶体5は眼の内部に位置する。網膜7は眼2の眼底付近に位置し、通常は感光性である。網膜7は高視力と色覚をもたらす中心窩7Fを含む。角膜4と水晶体5は光を屈折させて中心窩7Fと網膜7上に像を形成する。角膜4と水晶体5の屈折力が中心窩7Fと網膜7上の像の形成に寄与する。角膜4、水晶体5、および中心窩7Fの相対位置も像の質にとって重要である。例えば、眼2の角膜4から網膜7Fまでの眼軸長が大きい場合、眼2は近視となり得る。また、調節中、水晶体5が角膜4の方へ動いて、眼の近位にある対象物の良好な近見視力をもたらす。
【0027】
図1−1に示される解剖学的組織構造は涙器系も含み、これは上涙小管10および下涙小管12(合わせて涙小管(canaliculae))と、鼻涙管もしくは鼻涙嚢14を含む。上涙小管および下涙小管は上涙点11および下涙点13(涙点開口部(punctal apertures)とも称する)に終結する。涙点開口部は内眼角17付近の涙嚢部および毛様体の接合部15にある眼瞼縁の内側端の小隆起上にある。涙点開口部は組織の結合リングによって囲まれた円形もしくはわずかに卵形の開口部である。涙点開口部11、13の各々は、水平に曲がって涙嚢14の入口にある他の涙小管とつながる前に、それぞれの涙小管の垂直部分10a、12aに入る。涙小管は管状で、涙小管の拡張を可能にする弾性組織によって囲まれた重層扁平上皮によって内側が覆われている。
【0028】
図1Aは、本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置する徐放インプラント100の上面断面図を示す。インプラント100は薬物芯110を含む。薬物芯110は治療薬を保持する埋め込み型構造である。薬物芯110は治療薬の含有物160を含むマトリクス170を含む。含有物160は濃縮された形の治療薬(例えば治療薬の結晶形)をしばしば含み、治療薬は時間と共に薬物芯110のマトリクス170に溶解し得る。マトリクス170はシリコンマトリクスなどを含むことができ、マトリクス170内の治療薬の混合物は不均質であってもよい。多くの実施形態では、不均質な混合物は、治療薬で飽和されたシリコンマトリクス部分と、治療薬の含有物を含む含有物部分とを含み、不均質な混合物が不均質な多相混合物を含むようになっている。いくつかの実施形態では、含有物160は例えばラタノプロストオイルなどの治療薬の油滴を含む。いくつかの実施形態では、含有物160は例えば結晶形の固形ビマトプロスト粒子などの治療薬の粒子を含んでもよい。多くの実施形態では、マトリクス170は含有物160を封入し、含有物160は約1μmから約100μmの寸法の微粒子を含んでもよい。封入された含有物は、微粒子を封入する例えばシリコンなどの周囲の固形マトリクスに溶解し、治療薬が芯から放出される間、マトリクス170が治療薬で実質的に飽和されるようになっている。
【0029】
薬物芯110は鞘体120に囲まれている。鞘体120は治療薬に対して実質的に不浸透性となり得、鞘体120で覆われていない薬物芯110の末端の暴露面からしばしば治療薬が放出されるようになっている。保持構造130が薬物芯110と鞘体120に結合している。保持構造130は、例えば上述の涙小管の涙点などの中空組織構造にインプラントを保持するような形になっている。
【0030】
閉塞部材140は保持構造130の周囲に接して配置される。閉塞部材140は涙液に対し不浸透性で、中空組織構造を閉塞し、より良性な組織の係合面を提供することによって保持構造130から組織構造の組織を保護する働きもする。鞘体120は、鞘体120と薬物芯110を保持するように保持構造130に接続する鞘体部分150を含む。鞘体部分150は、鞘体120と薬物芯110の運動を制限する止め具を含むことができる。多くの実施形態では、鞘体部分150は球状先端150Bを伴って形成できる。球状先端150Bは、涙小管への挿入の際に組織を傷つけずに入るようにする、凸面の丸い外側部分を含むことができる。多くの実施形態では、鞘体
部分150Bは閉塞部材140と一体となり得る。
【0031】
図1Bは図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。薬物芯110は円筒形で、円形の断面で示される。鞘体120は薬物芯110に接して配置される環状部分を含む。保持構造130は複数の縦支柱131を含む。縦支柱131は保持構造の末端付近でつながれる。縦支柱を示すが、円周支柱も使用できる。閉塞部材140は保持構造130の縦支柱131によって支持され、且つそれを覆って配置され、半径方向に拡張可能な膜などを含んでもよい。
【0032】
図1Cは、本発明の実施形態に従う、コイル保持構造132を持つ徐放インプラント102の透視図を示す。保持構造132はコイルを含み、薬物芯112を保持する。例えばチャネル112Cなどの内腔は、治療薬の鼻および全身の使用のために、内腔を通る涙液の流れが治療薬を送達できるように、薬物芯112を貫通してもよい。チャネル112Cに加えて、もしくはチャネル112Cと併用して、保持構造132と芯112は、保持部材が涙小管の組織を薬物芯から離しながら、薬物芯と鞘体の周囲に涙液が流れるようにするようなサイズとなり得る。薬物芯112は部分的に覆われてもよい。鞘体は薬物芯112の第一末端を覆う第一部材122Aと、薬物芯の第二末端を覆う第二部材122Bを含む。閉塞部材は保持構造を覆って配置でき、および/または保持構造は上述の通り浸漬被覆することができる。
【0033】
図1Dは、本発明の実施形態に従う、支柱を含む保持構造134を持つ徐放インプラント104の透視図を示す。保持構造134は縦支柱を含み、薬物芯114を保持する。薬物芯114はその大部分を鞘体124で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体124は上述の通り薬物芯の大部分にわたって環状になっている。閉塞部材は保持構造を覆って配置でき、保持構造は上述の通り浸漬被覆することができる。例えばフック、ループ、縫合材、もしくはリングなどの、器具と係合できる突起124Rを鞘体124から拡張することができ、保持構造を涙小管に埋め込んだままで鞘体と薬物芯の交換を容易にできるように、薬物芯と鞘体を一緒に取り外すことを可能にする。いくつかの実施形態では、フック、ループ、縫合材、もしくはリングを含む、器具と係合できる突起を保持構造134から拡張することができ、突起、薬物芯、鞘体を持つ保持構造を取り外すことによって徐放インプラントの取り外しを可能にする。
【0034】
図1Eは、本発明の実施形態に従う、ケージ保持構造136を持つ徐放インプラント106の透視図を示す。保持構造136は複数の連結した金属鎖を含み、薬物芯116を保持する。薬物芯116はその大部分を鞘体126で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体126は上述の通り薬物芯の大部分にわたって環状になっている。閉塞部材は保持構造を覆って配置でき、もしくは保持構造は上述の通り浸漬被覆できる。
【0035】
図1Fは、本発明の実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの透視図を示す。薬物芯118はその大部分を鞘体128で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体128は上述の通り薬物芯の大部分にわたって環状になっている。治療薬の放出速度は、暴露される薬物芯の表面積と、薬物芯118内に含まれる材料によって制御される。多くの実施形態では、治療薬の溶出速度は薬物芯の暴露表面積に実質的に強く関連し、薬物芯中の含有物中に置かれる薬物の濃度には弱く依存する。円形の暴露面では、溶出速度は暴露面の直径(例えば円筒形の薬物芯の末端付近の暴露される薬物芯表面の直径)に強く依存する。こうしたインプラントは眼組織の中に埋め込むことができ、例えば図1Fに示すように眼の結膜組織層9の下か強膜組織層8の上のいずれか、あるいは強膜組織を貫通しないように強膜組織層内に部分的にのみ埋め込むことができる。薬物芯118は本明細書に記載の保持構造と閉塞部材のいずれとも併用可能であることに注目すべきである。
【0036】
一実施形態では、薬物芯は強膜8と結膜9の間に鞘体128無しで埋め込まれる。鞘体無しのこの実施形態では、例えば本明細書に記載の薬物芯マトリクス中に溶解した治療薬の濃
度を減少させることにより、薬物芯の増加した暴露面を補うように薬物芯の物理的特性を調整することができる。
【0037】
図1Gは、本発明の実施形態に従う、流れ制御保持構造186、芯182、鞘184を含む徐放インプラント180を概略的に図解する。鞘体184は少なくとも部分的に薬物芯182を覆うことができる。薬物芯182はその中に治療薬の含有物を含んでもよく、治療薬の徐放をもたらす。薬物芯182は暴露される凸面の表面領域182Aを含むことができる。暴露される凸面の表面領域182Aは治療薬を放出するために増加した表面積をもたらし得る。閉塞部材188は涙小管を通る涙液の流れを遮断するために保持構造186を覆って配置され得る。多くの実施形態では、保持構造と一体化した閉塞部材を提供するために、保持構造186は閉塞構造188内に配置され得る。流れ制御保持構造186と閉塞部材188は、涙小管を通る涙液の流れを遮断するようなサイズにすることができる。
【0038】
本明細書に記載の芯と鞘体は、いくつかの方法で様々な組織に埋め込むことができる。本明細書に記載の芯と鞘の多く、特に図2Aから2Jを参照して記載される構造は、涙点プラグとして単独で埋め込むことができる。あるいは、本明細書に記載の芯と鞘の多くは、本明細書に記載の保持構造と閉塞部材と共に埋め込まれるように、薬物芯、鞘体、および/または同類のものを含むことができる。
【0039】
図2Aは、本発明の実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラント200の断面図 を示す。薬物芯210は鞘体220で覆われる。鞘体220は開口部220Aを含む。開口部220は薬物芯210の最大断面直径に近い直径を持つ。薬物芯210は、活性表面とも称する暴露面210Eを含む。暴露面210Eは、環状面210A、柱面210B、端面210Cという三つの表面を含む。環状面210Aは芯210の最大断面直径に近い外径と、柱面210Bの外径に近い内径を持つ。端面210Cは柱面210Bの直径に一致する直径を持つ。暴露面210Eの表面積は、環状面210A、柱面210B、端面210Cの面積の合計である。表面積は芯210の軸に沿って縦方向にのびる柱面210Bの表面積の大きさによって増加し得る。
【0040】
図2Bは、本発明の実施形態に従う拡大暴露表面領域212Aを含む芯212を持つ徐放インプラント202の断面図 を示す。鞘体222は芯212に広がる。治療薬は上述の通り芯から放出され得る。暴露表面領域212Aはほぼ円錐形で、楕円形もしくは球形であってもよく、薬物芯212の暴露表面積を増加させるように鞘体から外側に広がる。
【0041】
図2Cと2Dは、本発明の実施形態に従う、縮小暴露表面領域214Aを含む薬物芯214を持つ徐放インプラント204の透視図と断面図をそれぞれ示す。薬物芯214は鞘体224内に封入される。鞘体22は、薬物芯214が貫通する開口部を画定する環状端部224Aを含む。薬物芯214は治療薬を放出する暴露面214Aを含む。暴露面214Aは、例えば薬物芯214を横切る最大直径などの最大寸法未満の直径214Dを有する。
【0042】
図2Eは、本発明の実施形態に従う、拡大暴露表面領域216Aとそこからのびるキャスタレーション(castellation)を含む薬物芯216を持つ徐放インプラント206の断面図を示す。キャスタレーションは複数の間隔の空いた指部(finger)216Fを含み、暴露面216Aの表面積を増加させる。キャスタレーションによってもたらされる増加した表面積に加えて、薬物芯216はくぼみ216Iも含み得る。くぼみ216Iは逆円錐型の形状をとり得る。芯216は鞘体226で覆われる。鞘体226は一端で開いており、薬物芯216上に暴露面216Aをもたらす。鞘体226は指部も含み、芯216に一致するキャスタレーションパターンを有する。
【0043】
図2Fは、本発明の実施形態に従う、襞を持つ芯を含む徐放インプラント250の透視図を示す。インプラント250は芯260と鞘体270を含む。芯260は、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面260Aを芯の末端に持つ。芯260は襞260Fも含む。襞260F
は周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積を増加させる。この暴露表面積の増加により、襞260Fは芯260から涙液もしくは涙液膜および標的治療部位への治療薬の移行を増加させる。襞260Fはチャネル260Cが芯260内に形成されるように形成される。チャネル260Cは芯の末端と暴露面260A中の開口部とに接続し、治療薬の移行をもたらす。従って、芯260の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面260Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル260Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される襞260Fの表面を含む。
【0044】
図2Gは、本発明の実施形態に従う、内部多孔質表面を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの透視図を示す。インプラント252は芯262と鞘体272を含む。芯262は、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面262Aを芯の末端に持つ。芯262はチャネル262Cも含む。チャネル262Cは、芯に対してチャネルの内側に形成される多孔質内面262Pでチャネルの表面積を増加させる。チャネル262Cは芯の暴露面262A付近の芯の末端にまで及ぶ。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル262Cに暴露される芯262の内側を含み得る。この暴露表面積の増加により、芯262から涙液もしくは涙液膜および標的治療部位への治療薬の移行を増加できる。従って、芯262の総表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面262Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される多孔質内面262Pを含み得る。
【0045】
図2Hは、本発明の実施形態に従う、薬物移行を増すためのチャネルを含む芯264を持つ徐放インプラント254の透視図を示す。インプラント254は芯264と鞘体274を含む。暴露面は他の位置に位置付けることができるが、暴露面264Aは芯264の末端に位置する。暴露面264Aは周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする。芯264はチャネル264Cも含む。チャネル264Cは暴露面264にまで及ぶ。チャネル264Cは十分に大きいので、涙液もしくは涙液膜がチャネルに入ることができ、それによって涙液もしくは涙液膜に接触する芯264の表面積を増加させる。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル264Cを画定する芯262の内面264Pを含む。この暴露表面積の増加により、チャネル264Cは芯264から涙液もしくは涙液膜および標的治療部位への治療薬の移行を増加させる。従って、芯264の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面264A、ならびに、暴露面264Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される内面264Pを含む。
【0046】
図2Iは、本発明の実施形態に従う、凸面暴露面266Aを含む薬物芯266を持つ徐放インプラント256の透視図を示す。薬物芯266は、凸面暴露面266Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯266に及ぶ鞘体276で部分的に覆われる。鞘体276は軸部分276Sを含む。凸面暴露面266Aは鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸面暴露面266Aの断面積は、鞘体276の軸部分276Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸面暴露面266Aは芯から外側に広がる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。鞘体276は、鞘体中で薬物芯266を支持し、鞘体276中で薬物芯266を適所に保つように薬物芯を支える、複数の指部276Fを含む。指部276Fは、指部の間で芯から涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にするように間隔があいている。突起276Pが鞘体276において外側に広がる。突起276Pは鞘体276から薬物芯266を押し出すように内側へ押すことができる。薬物芯266は適当な時間の後、例えば薬物芯266が治療薬のほとんどを放出した後、別の薬物芯と交換できる。
【0047】
図2Jは、本発明の実施形態に従う、複数の柔らかいブラシ状部材268Fを持つ暴露表面積を含む芯268を持つ徐放インプラント258の側面図を示す。薬物芯268は、暴露面268Aを画定するように薬物芯268に少なくとも部分的に及ぶ鞘体278で部分的に覆われる。鞘体278は軸部分278Sを含む。柔らかいブラシ状部材268Fは薬物芯268から外側に広がり、薬物芯268に増加した暴露表面積をもたらす。柔らかいブラシ状部材268Fはまた、しなやかで
弾力性があり、これらの部材が周辺組織に刺激をもたらさないように容易に偏向させられる。薬物芯268は上述の多くの材料で作ることができるが、柔らかいブラシ状部材268Fを含む薬物芯268の製造に適切な材料はシリコンである。薬物芯268の暴露面268Aは、暴露面268Aの少なくとも一部分が凹面になるようにくぼみ268Iも含む。
【0048】
図2Kは、本発明の実施形態に従う、凸面暴露面269Aを含む薬物芯269を持つ徐放インプラント259の側面図を示す。薬物芯269は、凸面暴露面269Aを画定するように薬物芯269に少なくとも部分的に及ぶ鞘体279で部分的に覆われる。鞘体279は軸部分279Sを含む。凸面暴露面269は鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸面暴露面269Aの断面積は、鞘体279の軸部分279Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸面暴露面269Aは、芯において外側へ広がる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。保持構造289を鞘体279に取り付けることができる。保持構造289は本明細書に記載の保持構造のいずれも含むことができる(例えばNitinolTMなどの超弾性形状記憶合金からなるコイル)。保持構造289を生体適合性にするために、保持構造289を浸漬被覆することができる。
【0049】
図2Lは、本発明の実施形態に従う、芯の暴露表面積を増加させるために凹面のへこんだ表面232Aを含む薬物芯232を持つ徐放インプラント230の側面図を示す。鞘体234は少なくとも部分的に薬物芯232に及ぶ。凹面のへこんだ表面232Aは、薬物芯の暴露表面積を増加させるように薬物芯232の暴露末端に形成される。
【0050】
図2Mは、本発明の実施形態に従う、芯の暴露表面積を増すためにチャネル242Cをその中に形成した凹状表面242Aを含む薬物芯242を持つ徐放インプラント240の側面図を示す。鞘体244は少なくとも部分的に薬物芯242に及ぶ。凹面のへこんだ表面242Aは、薬物芯の暴露表面積を増加させるために薬物芯232の暴露末端に形成される。薬物芯の暴露表面積を増加させるためにチャネル242Cが薬物芯242中に形成される。チャネル242Cが涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積を増加させるように、チャネル242Cは凹面のへこんだ表面242Aにまで及び得る。
【0051】
図3Aは、本発明の実施形態に従う、延長部322を持つ鞘体320を含むインプラント310を示す。延長部322は、芯を涙点付近に保持するために保持部材に鞘体320を取り付ける。鞘体320は芯330の暴露面332を画定するように芯330に広がる。延長部322は弾性的であってもよく、芯を涙点付近に保持するために保持部材に鞘体芯を取り付けるように、保持部材および/または閉塞部材と係合し得る。
【0052】
図3Bは、本発明の実施形態に従う、延長部382を持つ保持部材380を含むインプラント350を示す。延長部382は鞘体360と芯370を保持する。鞘体360は芯370の暴露面372を画定するように芯370に広がる。暴露面372は芯370の近位末端付近に配置される。延長部382は芯370と鞘体370を保持するように下方へのびる。
【0053】
図4Aと図4Bは、本発明の実施形態に従う、小さな断面寸法の形状よりも大きな断面寸法の形状において、長さが短い保持構造430を持つインプラント400の断面図を示す。インプラント400は遠位末端402と近位末端404を含む。インプラント400は薬物芯410と鞘体420を含む。鞘体420は少なくとも部分的に薬物芯410を覆い、薬物芯410の暴露面412を画定する。閉塞部材440は保持構造430に取り付けることができ、保持構造430によって支持され得る。閉塞部材440は、例えば保持部材430が小さな寸法の形状から大きな寸法の形状に拡張する際に、保持構造430と共に動くことができる。多くの実施形態では、保持構造と閉塞部材は涙小管の直径に対応するようなサイズであり、例えば涙小管の直径に一致するようなサイズ、もしくは涙小管直径よりもわずかに大きいサイズであり、前記涙小管を通る流体の流れを妨げる、かつ/あるいは前記涙小管内に固定するようになっている。
【0054】
図4Aに示すように、保持構造430と閉塞部材440は小さな寸法の形状である。そのような小さな寸法の形状は、閉塞部材と保持構造が挿入ツールの先端に置かれ、配置用に覆われている間に生じ得る。保持構造430と閉塞部材440は鞘体420と薬物芯410の長さ全長に沿って及ぶ。保持部材430は遠位末端402付近で鞘体420に取り付けられる。多くの実施形態では、保持構造430と閉塞部材440は、小さな寸法の形状の間に涙小管内でスライドし内側に適合するようなサイズの直径を持ち、また保持構造と閉塞部材は、第二の大きな寸法の形状の間は涙小管内で固定するようなサイズとなり得る。
【0055】
図4Bに示すように、保持構造430と閉塞部材440は大きな寸法の形状である。そのような大きな寸法の形状は、閉塞部材と保持構造が涙小管内にある際に生じ得る。大きな寸法の形状では、閉塞部材440と保持構造430の長さは、小さな寸法の形状における長さよりも距離450だけ短い。保持構造430と閉塞部材440の近位末端は、鞘体と保持構造が大きな寸法の形状をとる際、鞘体420にわたってスライドでき、薬物芯410と鞘体420の近位末端が保持構造と閉塞部材からのびるようになっている。いくつかの実施形態では、鞘体は薬物芯410よりも距離450だけ短く、保持構造と閉塞部材が小さな寸法の形状にある間に暴露されるよりも、保持構造と閉塞部材が大きな寸法の形状にある間の方が、薬物芯のより多くが暴露されるようになっている。そのような実施形態では、保持構造と閉塞部材は薬物芯を暴露するように収縮する。
【0056】
図5Aから6は本明細書に記載のインプラントの多くを挿入するために使用できるツールの実施形態を示す。
【0057】
図5Aは、本発明の実施形態に従う、押圧可能なプランジャー530を持つ、涙点にインプラントを挿入するための挿入ツール500を示す。挿入ツール500は、インプラントの挿入前に涙点を予め拡張(pre-dilate)するために涙点に挿入できる拡張器510を含む。インプラント520は涙点の拡張の前にツール500に予め組み込む(pre-load)ことができる。内部ワイヤ540はインプラントを保持するためにインプラント520に接続できる。拡張器510で涙点を予め拡張した後、インプラント520を涙点に挿入するためにツール500を使用できる。インプラント520が涙点に位置する間に、プランジャー530を押圧してワイヤ540を係合し、ツール500からインプラント520を放出することができる。
【0058】
図5Bは、本発明の実施形態に従う、スライド可能なプランジャーを持つ、インプラント570を涙点に挿入するための挿入ツール550を示す。挿入ツール550は涙点を拡張するための円錐部分を持つ拡張器560を含む。インプラント550はインプラント570を内腔中に進ませるように遠位にスライド可能なプランジャー580を含む。プランジャー580が遠位に進められる際にインプラント570を遠位に進ませるように、軸590がプランジャー580に接続される。涙点が拡張器560で拡張されている間に、プランジャー580は遠位に進むことができ、インプラント570は涙点付近の涙小管内腔中に配置される。多くの実施形態では、ボタンを押してインプラントを内腔中に遠位に進ませることができ、例えばボタンは介在装置で軸590に接続される。
【0059】
図6は、本発明の実施形態に従う、涙小管内腔にインプラントを位置付けるように引っ込められる鞘610を持つ、涙点にインプラントを挿入するための挿入ツール600を示す。鞘610の少なくとも一部分は、涙点を拡張するような形状をとる。鞘610はインプラント620を小さな寸法の形状に保つような形状をとる。挿入ツール600は挿入ツール600の本体605の一部分から成り得る環状構造615を含む。鞘610と環状構造615は涙点を拡張するような形状をとり、しばしば涙点を拡張するために近位方向に傾斜した(proximally inclined)面を含む。インプラント620、鞘610、環状構造615は、インプラントを涙小管内腔に位置付けるために、少なくとも部分的に涙点に挿入され得る。鞘610が環状構造615の下で引き込まれてスライドできるように、管状構造615は鞘610を覆って配置される。鞘610がインプラント620を暴露するように近位に引き込まれる間、涙小管内腔内で所望の深さにインプラント620を保持するために、止め具625を本体605に接続することができる。
【0060】
インプラント620が涙点に関して所望の深さで涙小管内腔に置かれると、鞘610が引き込まれてインプラント620を涙小管内腔で所望の位置に暴露する。プランジャー630は鞘610を引き込むのに使用できる。軸640は鞘610をプランジャー630に機械的に連結する。従って、プランジャー630の近位方向の引き込みにより、鞘610を近位方向に引き込むことができ、インプラント620を涙小管内腔において所望の位置に暴露させることができる。インプラント620は本明細書に記載のインプラントのいずれであってもよい。しばしば、インプラント620は、鞘610が引き込まれる際に大きな寸法の形状に拡張する弾性部材を含む。多くの実施形態では、挿入ツール600はインプラントの挿入前に涙点を拡張する拡張器を含むことができ、拡張器は、本明細書で上述したように、インプラントを装填する末端と反対の、挿入ツールの末端に配置できる。
【0061】
図5Aから5Cは、本発明の実施形態に従う、薬物芯510と鞘体520の交換を概略的に図解する。インプラント700は薬物芯510、鞘体520、保持構造530を含む。インプラント500は、保持構造530によって支持され、保持構造530と共に移動可能な閉塞部材を含むことができる。しばしば保持構造530は、埋め込み前に第一の小さな寸法の形状をとることができ、埋め込まれている間は第二の大きな寸法の形状をとることができる。保持構造530は大きな寸法の形状で示され、涙小管内腔に埋め込まれる。鞘体520は、鞘体と薬物芯を保持構造530に取り付けるための拡張部525Aと拡張部525Bを含み、鞘体と薬物芯が保持構造530によって保持されるようになっている。薬物芯510と鞘体520は、矢印530 によって示されるように薬物芯510を近位に引くことによって一緒に取り外せる。図5Bに示すように、薬物芯510と鞘体520が取り外された後、保持構造530は涙小管組織に埋め込まれたままとなり得る。交換芯560と交換鞘体570を図5Cに示すように一緒に挿入できる。こうした交換は、薬物芯510が有効量の治療薬を放出し、薬物芯中の治療薬の供給が弱まり、放出される治療薬の速度が最小有効レベル近くになった後が好ましい。交換鞘体570は延長部575Aと延長部575Bを含む。交換薬物芯560と交換鞘体570は、矢印590で示すように遠位に進められ、交換薬物芯560と交換鞘体570を保持構造530に挿入できる。保持構造530は、交換薬物芯560と交換鞘体570が弾性部材530に挿入される間、ほぼ同じ位置にとどまる。
【0062】
図6Aから6Cは、本発明の実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。図6Aに示すように、配置器具610が涙点600Aを通って涙小管600に挿入される。徐放インプラント620は配置器具610の先端に組み込まれ、鞘体612が徐放インプラントを覆う。保持構造630は、鞘612が保持構造630の上に位置する間、小さな寸法の形状をとる。図6Bに示すように、配置器具610の外側の鞘612が引き抜かれて、徐放インプラント620の保持構造630を暴露する。保持部材630の暴露部分は、大きな寸法の形状をとる。図6Cに示すように、配置器具610は除去され、徐放インプラント620が涙小管600に埋め込まれる。薬物芯640は保持構造630に付属し、涙小管内に保持される。外側の鞘体650は薬物芯640の少なくとも一部分を覆い、薬物芯640は治療薬を涙小管600の涙点600A付近で涙液もしくは涙液膜660に放出する。
【0063】
[鞘体]
鞘体は薬物芯からの治療薬の移行を制御するために適切な形状と材料からなる。鞘体は芯を格納し、芯に対してぴったりと適合し得る。治療薬の移行速度が、鞘体によって覆われない薬物芯の暴露表面積によって十分に制御され得るように、鞘体は治療薬に対してほぼ不浸透性の材料で作られる。多くの実施形態では、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行の約1/10以下となり得、しばしば1/100以下となることがある。言い換えれば、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行よりも、少なくとも約一桁小さい。適切な鞘体材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレ
ート(以下“PET”)を含む。鞘体は、芯付近の鞘表面から、芯から離れた反対の鞘表面までと規定される、約0.00025"から約0.0015"の厚みを持つ。芯に及ぶ鞘の総直径は、約0.2 mmから約1.2 mmの範囲である。芯は鞘材料内に芯を浸漬被覆することによって形成され得る。別の方法として、もしくは組み合わせて、鞘体は、例えば鞘体管にスライド、挿入、および/または押出することができる液体もしくは固体として、鞘に導入される管および芯を含むことができる。鞘体は芯の周囲に浸漬被覆させることもできる(例えば前もって作られた芯の周囲に浸漬被覆する)。
【0064】
鞘体はインプラントの臨床的な使用を容易にする追加の特徴を備えることができる。例えば鞘体は、保持構造と鞘体が患者に埋め込まれたままで交換可能な薬物芯を受容してもよい。鞘体はしばしば上述のように保持構造に堅く取り付けられ、保持構造が鞘体を保持しながら芯を交換することができる。特定の実施形態では、鞘体は、圧迫される際に鞘体に力を加え、鞘体から芯を押し出す外部の突起を備えることができる。その後別の薬物芯を鞘体に配置することができる。多くの実施形態では、鞘体および/または保持構造の涙小管もしくは他の体組織構造における位置を患者が容易に検出できるように、鞘体および/または保持構造は、位置を示す際立った特徴(例えば特徴的な色)を持ってもよい。保持部材および/または鞘体を少なくとも一つのマークに基づいて涙小管内の所望の深さに位置付けることができるように、保持部材および/または鞘体は涙小管内の位置の深さを示す少なくとも一つのマークを含んでもよい。
【0065】
[保持構造]
保持構造は、インプラントを所望の組織位置(例えば涙小管)に容易に位置付けることができるようなサイズと形状の適切な材料からなる。保持構造は機械的に配置可能で、通常は所望の断面形状に拡張し、例えば保持構造はNitinolTMなどの超弾性形状記憶合金からなる。所望の拡張をもたらすために、NitinolTMに加え他の材料、例えば弾性金属もしくはポリマー、塑性的に変形可能な金属もしくはポリマー、形状記憶ポリマーなどが使用できる。いくつかの実施形態では、Biogeneral, Inc. of San Diego, Californiaから購入できるポリマーおよび被覆繊維を用いてもよい。ステンレス鋼などの多くの金属および非形状記憶合金を使用でき、所望の拡張を与える。この拡張能力は、例えば0.3 mmから1.2 mmの範囲の涙小管など、様々なサイズの中空組織構造にインプラントが適合することを可能にする(すなわちフリーサイズ)。直径0.3から1.2 mmの涙小管に適合するようにただ一つの保持構造を作ることができるが、必要に応じてこの範囲に適合するように、複数のその代わりに選択可能な保持構造(例えば0.3から約0.9 mmの涙小管用の第一の保持構造と、約0.9から1.2 mmの涙小管用の第二の保持構造)を使用することができる。保持構造は、保持構造が結合する解剖学的構造に適切な長さを持ち、例えば涙小管の涙点付近に配置される保持構造は約3 mmの長さである。別の解剖学的構造では、長さは適当な保持力を提供するのに適切なもの(例えば必要に応じて1 mmから15 mm)となり得る。
【0066】
鞘体と薬物芯は上述のように保持構造の一端に取り付けられるが、多くの実施形態では保持構造の他方の末端は薬物芯と鞘体に取り付けられず、保持構造が拡張する間、鞘体と薬物芯にわたってスライドできるようになっている。この一端でのスライド能力は、保持構造が所望の断面幅をとるように幅を拡張させるにつれ、保持構造が長さを収縮させ得る場合に好ましい。しかしながら、多くの実施形態は芯に対してスライドしない鞘体を採用し得ることに注意すべきである。
【0067】
多くの実施形態では、保持構造は組織から回収できる。例えばフック、ループ、もしくはリングなどの突起が、保持構造の取り外しを容易にするように保持構造からのびることができる。
【0068】
[閉塞部材]
閉塞部材は、インプラントが中空組織構造を通る流体の流れ(例えば涙小管を通る涙液)を少なくとも部分的に阻止、さらに遮断することができるようなサイズと形状の適切な材料からなる。示される閉塞材料は、保持構造と共に拡張、収縮が可能な、例えばシリコンなどの生体適合性材料の薄壁膜である。閉塞部材は、保持構造の末端にわたってスライドされ、上述のように保持構造の一端に固定される材料の独立した薄管として形成される。別の方法として、閉塞部材は、例えばシリコンポリマーなどの生体適合性ポリマーに保持構造を浸漬被覆することによって形成することができる。閉塞部材の厚みは約0.01 mmから約0.15 mmの範囲となり得、しばしば約0.5 mmから0.1 mmとなる。
【0069】
[治療薬]
“治療薬”とは、以下のいずれかもしくはその均等物、誘導体もしくはアナログとなり得る薬物を含むことができ、抗緑内障薬(例えばアドレナリン作動薬、アドレナリン拮抗薬(βブロッカー)、炭酸脱水素酵素阻害薬(CAI、全身および局所)、副交感神経作用薬、プロスタグランジン、降圧性脂質(hypotensive lipids)、およびそれらの組み合わせ)、抗微生物薬(例えば、抗生物質、抗ウィルス薬、駆虫(antiparacytic )薬、抗真菌薬など)、コルチコステロイドもしくは他の抗炎症薬(例えばNSAID)、充血除去剤(例えば血管収縮剤)、アレルギー性反応の修正を防ぐ薬(例えば抗ヒスタミン、サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、IgE阻害剤、免疫調節剤)、マスト細胞安定剤、毛様筋調節薬などを含む。治療薬(群)で処置され得る症状の例としては、緑内障、術前および術後の処置、ドライアイおよびアレルギーを含むが限定はされない。いくつかの実施形態では、治療薬は潤滑剤もしくは界面活性剤(例えばドライアイを処置する潤滑剤)であってもよい。
【0070】
例示的な治療薬は、トロンビン阻害剤;抗血栓薬;血栓溶解剤;線維素溶解薬;血管痙攣阻害剤;血管拡張剤;血圧降下薬;抗生物質(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌剤(アンフォテリシンBおよびミコナゾールなど)、および抗ウィルス剤(イドクスウリジン、 トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンなど)といった抗微生物剤;表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板薬;抗有糸分裂薬;微小管阻害剤;抗分泌薬;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗剤;抗増殖剤(抗血管新生薬を含む);抗癌化学療法剤;抗炎症薬(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21-リン酸、フルオシノロン、メドリソン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカムインドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン(naxopren)、ピロキシカムおよびナブメトンなど)を含むが限定はされない。本発明の方法で使用するために意図されたこうした抗炎症ステロイドは、トリアムシノロンアセトニド(一般名)、およびコルチコステロイド(例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロン、およびそれらの誘導体を含む);抗アレルギー薬(クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン(methapyriline)、クロルフェニラミン、セトリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど);抗増殖剤(1,3-シスレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチンなど);充血除去剤(フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン(tetrahydrazoline)など);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、ジイソプロピルフルオロリン酸、ホスホリンヨウ素(phospholine iodine)、臭化デメカリウムなど);抗新生物薬(カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシル3など);免疫薬(ワクチンおよび免疫刺激剤など);ホルモン薬(エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン、プロゲステロン、インシュリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレッシン視床下部放出因子など);免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗薬、増殖因子(上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子β、ソマトトラピン(somatotrapin)、フィブロネクチンなど);血管新生阻害剤(アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体など):ドーパミン作動薬;放射線治療薬;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリクス;成分(components);ACE阻害剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;抗酸化物質;抗ポリメラーゼ;光線力学療法薬;遺伝子治療薬;ならびに、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体などのその他の治療薬(チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβブロッカーと、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロストなどのプロスタグランジンアナログとを含む抗緑内障薬を含む);アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ダイアモックスなどの炭酸脱水素酵素阻害剤;ルベゾール(lubezole)、ニモジピン、および関連化合物などの神経保護剤;ならびに、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミンなどの副交感神経作用薬を含む。
【0071】
薬物送達装置に関連する薬物の量は、特定の薬剤、所望の治療効果、および装置が治療をもたらすことが意図される時間に応じて異なってもよい。本発明の装置は様々な形状、サイズ、および送達メカニズムを提示するので、装置に関連する薬物の量は、処置される特定の疾患もしくは症状、ならびに治療効果を得るために望まれる投与量と投与期間に依存することになる。一般に薬物の量とは、少なくとも、装置から放出される際に、所望の生理学的もしくは薬理学的な、局所性もしくは全身性の効果を得るのに効果的な薬物の量である。
【0072】
本発明の薬物送達装置の実施形態は、広い安全幅で広い治療域を提供するために、治療効果のある滴剤治療を実質的に下回る、1日あたりの速度で薬物を送達するように構成できる。例えば、多くの実施形態は毎日の滴下量の5もしくは10%未満である治療レベルで持続期間にわたって眼を処置する。従って、約1〜3日間の初期のボーラスもしくは洗浄期間の間、インプラントは徐放レベルよりも実質的に高い、かつ毎日の滴剤投与量をはるかに下回る速度で治療薬を溶出できる。例えば、1日あたり100 ngの平均徐放レベルで、1日あたり1000から1500 ngの初期放出速度では、初期放出される薬物の量は、眼に送達される薬物の一滴に存在し得る薬物の2500 ngに満たない。こうして、毎日投与される一滴および/または複数滴の薬物の量を実質的に下回る徐放レベルを使用することで、目的の場所もしくは領域に不適当な量もしくは過剰量の薬物をもたらすことを避けながら、広い安全幅で所望の治療効果を得るように、装置が治療効果のある量の薬物を放出することが可能になる。
【0073】
持続期間とは、例えば数分もしくは数時間(麻酔薬を使用する場合など)、数日もしくは数週にわたる(術前もしくは術後の抗生物質、ステロイド、もしくはNSAIDなどを使用する場合など)、比較的短い時間か、あるいはもっと長い期間(緑内障治療の場合など)、例えば数ヶ月もしくは数年(装置の繰り返し使用を原則として)、を意味し得る。
【0074】
例えば、マレイン酸チモロール、β1およびβ2(非選択性)アドレナリン受容体遮断薬などの薬物は、3ヶ月などの持続期間にわたって放出する装置に使用できる。3ヶ月は、緑内障薬で局所滴下治療を受けている緑内障患者への医師の診察の間の比較的典型的な経過時間であるが、装置はもっと長い期間もしくはもっと短い期間にわたって治療をもたらすことができる。3ヶ月の例では、0.25%濃度のチモロールは、2.5から5 mg/1000μLと言い
換えられ、通常は2.5 mg/1000μLである。局所使用のためのチモロールの一滴は、通常40-60μLの範囲であり、典型的には50μLである。従って、一滴には0.08-0.15 mg、典型的には0.125 mgのチモロールが含まれ得る。5分後でも、眼の中にはその一滴のおよそ8%(随意に6-10%)が残り得るので、約10μgの薬物がその時利用可能である。チモロールは30-50%の生体利用効率を持ち得る。これは、1.5から7.5μg、例えば4μgの薬物を眼に利用できるということを意味する。チモロールは一般的に1日2回投与されるので、毎日8(もしくは3-15)μgが眼に利用可能である。従って、送達装置は270から1350μg、例えば720μgの薬物を90日間、もしくは3ヶ月の徐放にわたって含み得る。薬物は装置内に包含され、ポリマーもしくは薬物/ヒドロゲル濃度に基づいて溶出される。塩酸オロパタジン(PatanolR)およびその他の薬物では、薬物は、チモロールと同様のやり方で、同様に装置に包含され、溶出され得る。
【0075】
マレイン酸チモロールの市販溶液は、0.25%および0.5%の製剤で入手でき、初期投与量は0.25%溶液一滴を1日あたり2回となり得る。0.25%濃度のチモロールは1000μlあたり2.5
mgに相当する。薬物芯から毎日放出されるチモロールの徐放量は、毎日約3から15μgとなり得る。装置から毎日送達される徐放量は様々であってよいが、1日あたり約8μgの徐放送達は、0.25%溶液二滴で投与される0.250 mgのチモロールの約3.2%に相当する。
【0076】
例えば、プロスタグランジンF2αアナログであるラタノプロスト(Xalatan)の場合、この緑内障薬はチモロールの約1/10の濃度を有する。従って、埋め込み可能装置における薬物の量は、生体利用効率に応じて、ラタノプロストおよび他のプロスタグランジンアナログの場合、著しく少なくなる(およそ20-135μgおよび典型的には50-100μg)。これはまた、βブロッカー送達に必要な装置よりも小さくなり得るか、もしくはより長い放出期間にわたってより多くの薬物を格納できるかのいずれかである装置とも言い換えられる。
【0077】
一滴のXalatanは、一滴の体積を50μLと仮定すると、約2.5μgのラタノプロストを含む。従って、2.5μgの約8%が滴下5分後に存在すると仮定すると、たった約200 ngの薬物しか眼には残らない。ラタノプロストの臨床試験に基づき、この量は少なくとも24時間IOP(眼圧)を下げるのに効果的である。Pfizer/PharmaciaはXalatanのNDA(新薬申請)の支援として、いくつかの用量反応実験を行った。用量は12.5μg/mLから115μg/mLのラタノプロストに及んだ。ラタノプロストの現行の用量である、1日あたり1回投与の50μg/mLが最適であると示された。しかしながら、最低用量の12.5μg/mL QDもしくは15μg/mL BIDでも、50μg/mL QD用量のIOP低下の約60-75%を常にもたらした。上述の仮定に基づくと、12.5μg/mLの濃度は50μLの一滴中に0.625μgのラタノプロストを供給し、これは5分後に約50 ng(8%)の薬物しか眼に残らないことになる。
【0078】
多くの実施形態では、ラタノプロストの濃度はチモロールの約1/100、すなわち1%であり、特定の実施形態では、ラタノプロストの濃度はチモロールの約1/50、すなわち2%となり得る。例えば、ラタノプロストの市販の溶液製剤は、0.005%の濃度で入手でき、1日あたり一滴で送達されることが多い。多くの実施形態では、1日あたりに装置から放出される薬物の治療効果のある濃度は、チモロールと同様の涙洗浄と生体利用効率を仮定すると、チモロールの約1/100、1日あたり約30から150 ng、例えば約80 ngとなり得る。例えば、埋め込み可能装置における薬物の量は、ラタノプロストおよび他のプロスタグランジンアナログでは著しく少なくなり得る(チモロールのおよそ1%から2%、例えば2.7から13.5μg、また約3から20μgともなり得る)。毎日放出されるラタノプロストの徐放量は様々となり得るが、1日あたり80 ngの徐放は0.005%溶液一滴で投与される2.5μgのラタノプロストの約3.2%に相当する。
【0079】
例えば、合成プロスタマイド(prostamide)プロスタグランジンアナログであるビマトプロスト(Lumigan)の場合、緑内障薬はチモロールの1/20以下の濃度をとり得る。従っ
て、3から6ヶ月の徐放用の徐放装置に装填される薬物の量は、生体利用効率に応じて、ビマトプロストおよびそのアナログおよび誘導体では著しく少なくなり得る(およそ5-30μg、典型的には10-20μg)。多くの実施形態では、インプラントはより長い徐放期間にわたってより多くの薬物を格納でき、例えばビマトプロストとその誘導体では、6から12ヶ月の徐放期間にわたって20-40μgである。この薬物濃度の減少は、βブロッカー送達に必要な装置よりも小さくなり得る装置とも言い換えることができる。
【0080】
ビマトプロストの市販溶液濃度は重量で0.03%であり、1日あたり1回送達されることが多い。毎日放出されるビマトプロストの徐放量は様々となり得るが、1日あたり300 ngの徐放は、0.03%溶液一滴で投与される15μgのビマトプロストの約2%に相当する。本発明に関連する研究は、より少ないビマトプロストの徐放用量でも眼圧の少なくともいくらかの減少をもたらすことができることを示唆している(例えば20から200 ngのビマトプロスト、および毎日の滴下量の0.2から2%の毎日の徐放用量)。
【0081】
例えば、プロスタグランジンF2αアナログであるトラボプロスト(Travatan)の場合、この緑内障薬はチモロールの2%以下の濃度をとり得る。例えば、市販溶液濃度は0.004%であり、1日あたり1回送達されることが多い。多くの実施形態では、1日あたりに装置から放出される薬物の治療効果のある濃度は、チモロールと同様の涙液洗浄と生体利用効率を仮定すると、約65 ngとなり得る。従って、埋め込み可能装置における薬物の量は、生体利用効率に応じて著しく少なくなる。これは、βブロッカー送達に必要な装置よりも小さくなり得るか、もしくはより長い放出期間により多くの薬物を格納できるかのいずれかの装置とも言い換えられる。例えば、埋め込み可能装置における薬物の量は、トラボプロスト、ラタノプロスト、およびその他のプロスタグランジンF2αアナログでは、著しく少なくなり得る(チモロールのおよそ1/100、例えば2.7から13.5μg、典型的には約3から20μg)。毎日放出されるラタノプロストの徐放量は様々となり得るが、1日あたり65 ngの徐放は、0.004%溶液一滴で投与される2.0μgのトラボプロストの約3.2%に相当する。
【0082】
いくつかの実施形態では、治療薬は、例えばフルオシノロンアセトニドなどの、標的眼組織を処置するコルチコステロイドを含んでもよい。特定の実施形態では、フルオシノロンアセトニドは糖尿病性黄斑浮腫(DME)の治療剤として、涙小管から放出されて網膜に送達され得る。
【0083】
高い放出速度、低い放出速度、ボーラス放出、バースト放出、もしくはそれらの組み合わせを実現するように装置を修正もしくは調整することも、本発明の範囲内にある。薬物のボーラスは、涙液もしくは涙液膜に素早く溶解される浸食性(erodable)ポリマーキャップの形成によって放出されてもよい。ポリマーキャップが涙液もしくは涙液膜と接触すると、ポリマーの溶解特性によってキャップが浸食され、薬物を一度に全て放出できる。薬物のバースト放出は、ポリマーの溶解度に基づいて涙液もしくは涙液膜にも浸食するポリマーを用いて実施できる。この実施例では、外側のポリマー層が溶解すると薬物が直ちに放出されるように、薬物とポリマーが装置の長さに沿って層になってもよい。薬物の高いもしくは低い放出速度は、薬物層が素早くもしくはゆっくりと放出されるように、浸食性ポリマー層の溶解度を変えることによって実現できる。薬物を放出するその他の方法は、薬物分子のサイズに応じて、多孔質膜、溶解性ゲル(典型的な点眼薬のものなど)、薬物の微粒子カプセル化、もしくはナノ粒子カプセル化を通して実現できる。
【0084】
[薬物芯]
薬物芯は治療薬の徐放をもたらす材料と治療薬を含む。治療薬は薬物芯から標的組織(例えば眼の毛様筋)に移行する。少量の治療薬がマトリクスに溶解し、薬物芯110の表面からの放出に利用可能であるように、治療薬は随意にマトリクスにわずかしか溶けないものとなり得る。治療薬は芯の暴露面から涙液もしくは涙液膜に拡散するので、芯から涙液もしくは涙液膜への移行速度は、マトリクスに溶解する治療薬の濃度に関係し得る。加えて、もしくは相まって、芯から涙液もしくは涙液膜への治療薬の移行速度は、治療薬が溶解するマトリクスの性質に関連し得る。特定の実施形態では、薬物芯から涙液もしくは涙液膜への移行速度は、シリコン製剤に基づき得る。いくつかの実施形態では、薬物に溶解する治療薬の濃度は、治療薬の所望の放出速度をもたらすように制御され得る。芯に含まれる治療薬は、液体、固体、固体ゲル、固体単結晶、固体非晶質、固体粒子、および/または治療薬の溶解した形を含むことができる。好ましい実施形態では、薬物芯は治療薬を含むシリコンマトリクスを含む。治療薬は、液体もしくは固体の含有物を含んでもよく、例えばそれぞれシリコンマトリクスに分散される、液体ラタノプロスト液滴もしくは固体ビマトプロスト粒子を含んでもよい。
【0085】
薬物芯は治療薬の徐放をもたらすことができる一つ以上の生体適合性材料を含むことができる。薬物芯については、シリコンマトリクスが実質的に非生分解性で、溶解する薬物の含有物がその中に存在するマトリクスを含む実施形態に関して上述されるが、薬物芯は治療薬の徐放をもたらす構造を含むことができ、例えば生分解性マトリクス、多孔質薬物芯、液体薬物芯、および固体薬物芯を含むことができる。治療薬を含むマトリクスは、生分解性ポリマーもしくは非生分解性ポリマーのいずれからも形成できる。非生分解性薬物芯は、シリコン、アクリル酸塩、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリウレタン、ヒドロゲル、ポリエステル(例えばE. I. Du Pont de Nemours and Company, Wilmington, DEのDACRONR)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押出コラーゲン(extruded collagen)、ポリマー発泡体、シリコンゴム、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金(例えばNitinol)、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム合金(例えばElgin Specialty Metals, Elgin, ILのELGILOYR、Carpenter Metals Corp., Wyomissing, PAのCONICHROMER)を含むことができる。生分解性の薬物芯は、タンパク質、ヒドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(L-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリL-ラクチド、ポリD-ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸-ポリエチレンオキサイド共重合体、改質セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリアンヒドライド(polyanhydride)、ポリリン酸エステル、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、およびそれらの組み合わせなどの、一つ以上の生分解性ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬物芯はヒドロゲルポリマーの少なくとも一つを含むことができる。
【0086】
[有効レベルでの治療薬の放出]
治療薬の放出速度は、薬物芯に溶解する治療薬の濃度に関係し得る。多くの実施形態では、薬物芯は、薬物芯中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択される、非治療薬を含む。薬物芯の非治療薬は上述のポリマーと添加剤を含むことができる。芯のポリマーは、マトリクス中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択できる。例えば、芯は親水性の治療薬の溶解度を促進し得るヒドロゲルを含むことができる。いくつかの実施形態では、マトリクス中で治療薬の所望の溶解度をもたらすために、官能基をポリマーに加えることができる。例えば、官能基をシリコンポリマーに結合させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、治療薬の放出動態(release kinetics)を制御するために添加物が使用されてもよい。例えば添加剤は、治療薬の放出動態を制御するために、薬物芯中での治療薬の溶解度を増加もしくは減少させることによって治療薬の濃度を制御するために使用されてもよい。溶解度は、マトリクスに溶解した形の 治療薬の溶解度を増加および/または減少させる適切な分子および/または物質を提供することによって制御され得る。治療薬から溶解した溶解度は、マトリクスと治療薬の疎水性および/または親水性
の性質に関連し得る。例えば、界面活性剤、tinuvin、塩および水をマトリクスに加えることができ、マトリクス中の親水性治療薬の溶解度を増加し得る。加えて、油および疎水性の分子をマトリクスに加えることができ、マトリクス中の疎水性治療薬の溶解度を増加し得る。
【0088】
マトリクスに溶解する治療薬の濃度に基づいて移行速度を制御する代わりに、もしくはそれに加えて、薬物芯の表面積も、芯から標的部位への所望の薬物移行速度を得るために制御できる。例えば、芯の大きな暴露表面積は、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度を増加させ、薬物芯の小さな暴露表面積は、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度を減少させる。薬物芯の暴露表面積はあらゆる方法で増加させることができ、例えば、暴露面のキャスタレーション、涙液もしくは涙液膜に接続された暴露チャネルを持つ多孔質面、暴露面のくぼみ、暴露面の突起のいずれかによって増加させることができる。暴露面は、溶解する塩の添加によって多孔質にすることができ、塩が一旦溶解すると、多孔性の空洞を残す。ヒドロゲルも使用されてもよく、より大きな暴露表面積をもたらすようにサイズを膨張させることができる。そのようなヒドロゲルは、治療薬の移行速度をさらに増加させるために多孔質にすることもできる。
【0089】
さらに、US Patent No. 4281654 (Shell)に開示される構造のような、二つ以上の薬物を一緒に放出する能力を含むインプラントが使用されてもよい。例えば、緑内障治療の場合、複数のプロスタグランジン、もしくは一つのプロスタグランジン、およびコリン作動薬、もしくはAlphaganRなどのアドレナリン拮抗薬(βブロッカー)、もしくはプロスタグランジン、および炭酸脱水素酵素阻害剤で患者を処置することが好ましいことがある。
【0090】
加えて、US Patent Publication No. 2002/0055701に開示されているものや、もしくはUS Patent Publication No. 2005/0129731に記載されている生体安定性(biostable)ポリマーの層などの薬物含浸メッシュが使用されてもよい。本発明の装置内に薬物を組み込むために特定のポリマー処理法が使用されてもよく、例えば、いわゆる“自己送達薬(self-delivering drugs)”もしくはPolymerDrugs(Polymerix Corporation, Piscataway, NJ)が、治療上役立つ化合物と生理学的に不活性なリンカー分子にのみ分解するように構成される。これはUS Patent Publication No. 2005/0048121 (East)に、より詳細に記載され、引用により全容が本明細書に組み込まれる。そのような送達ポリマーは、ポリマーの溶出と分解の速度に等しくかつ治療過程を通して一定の放出速度をもたらすために、本発明の装置で利用されてもよい。そのような送達ポリマーは、デポ注射剤(drug depot injectable、本発明の容器など)のための、装置の皮膜として、もしくは微小球の形で使用されてもよい。USPatent Publication No. 2004/0170685 (Carpenter) に記載のものや、Medivas (San Diego, CA) から利用可能な技術などの、さらなるポリマー送達技術も本発明の装置に適用されてもよい。
【0091】
特定の実施形態では、薬物芯マトリクスは、薬物の含有物を封入する例えばシリコンなどの固体材料を含む。薬物は水に非常に溶けにくく、かつ封入薬物芯マトリクスにわずかに溶解する分子を含む。薬物芯に封入される含有物は、直径約1μmから約100μmの寸法を持つ微小粒子であってもよい。薬物含有物は、例えばビマトプロスト結晶などの結晶、および/またはラタノプロストオイルなどの油滴を含むことができる。薬物含有物は、固体薬物芯マトリクスに溶解することができ、薬物芯マトリクスを薬物で実質的に飽和させる(例えば固体薬物芯マトリクスへのラタノプロストオイルの溶解)。薬物芯マトリクスに溶解した薬物は、しばしば拡散によって、薬物芯の暴露面から涙液膜中に輸送される。薬物芯は実質的に薬物で飽和するので、多くの実施形態では、薬物送達の律速段階は、涙液膜に暴露される薬物芯マトリクスの表面からの薬物の輸送である。薬物芯マトリクスは実質的に薬物で飽和するので、マトリクス内の薬物濃度の勾配はわずかであり、薬物送達の速度に有意に寄与しない。涙液膜に暴露される薬物芯の表面積はほぼ一定なので、薬物芯
から涙液膜への薬物の輸送速度はほぼ一定となり得る。本発明に関連する研究は、治療薬の水への溶解度と薬物の分子量が固体マトリクスから涙液への薬物の輸送をもたらし得ることを示唆する。多くの実施形態では、治療薬は水にほとんど不溶で、重量で約0.03%から0.002%の水への溶解度を持ち、約400 g/molから約1200 g/molの分子量を持つ。
【0092】
多くの実施形態では、治療薬は非常に低い水への溶解度(例えば重量で約0.03%から重量で約0.002%)と、約400 g/molから約1200 g/molの分子量を持ち、有機溶媒に容易に溶解する。シクロスポリンA(CsA)は、25℃で27.67μg/mLもしくは重量で約0.0027%の水溶解度と、1202.6 g/molの分子量(M.W.)を持つ固体である。ラタノプロスト(Xalatan)はプロスタグランジンF2αアナログであり、室温で液体油で、25℃の水で50μg/mLもしくは重量で約0.005%の水溶解度と、432.6 g/molのM.W.を持つ。ビマトプロスト(Lumigan)は合成プロスタマイドアナログであり、室温で固体で、25℃の水で300μg/mLもしくは重量で0.03%の水溶解度を持ち、415.6 g/mol.のM.W.を持つ。
【0093】
本発明に関連する研究は、涙液膜中に自然に分泌される界面活性剤(例えばサーファクタントDおよびリン脂質)が、固体マトリクスに溶解した薬物の芯から涙液膜への輸送をもたらし得ることを示唆する。薬物芯は、治療レベルで涙液膜中に薬物の徐放をもたらすために、涙液膜中の界面活性剤に応じて適合させることができる。例えば、実験データを患者集団から作成することができ、例えば10患者の涙液を回収して、界面活性剤含有量を分析する。水に難溶性の薬物(例えばシクロスポリン)に対する、回収した涙液の溶出特性も測定でき、バッファーおよび界面活性剤中での溶出特性と比較し、涙液の界面活性剤のin vitroモデルが作られる。この実験データに基づく界面活性剤を含むin vitro溶液は、涙液膜の界面活性剤に応じて薬物芯を調整するために使用できる。
【0094】
薬物芯は、送達される分子のサイズに応じて、ナノ粒子もしくは微小粒子などの担体媒体(carrier vehicles)を利用するように修正されてもよく、それらの媒体は、例えば複合材料用の潜在反応性(latent-reactive)のナノ繊維組成物およびナノ加工(nanotextured)表面(Innovative Surface Technologies, LLC, St. Paul, MN)、BioSiliconRとして知られるナノ構造(nanostructured)多孔質シリコンなどであって、ミクロンサイズの粒子、膜、織り繊維、もしくは微小インプラント装置(pSividia, Limited, UK)および薬物を送達するのに選択的細胞を標的とするタンパク質ナノケージシステム(Chimeracore)を含む。
【0095】
多くの実施形態では、薬物挿入部は、Nusil 6385 (MAF 970)に分散したラタノプロストを含む薬物芯と、薬物送達のためのマトリクスとして機能する医療グレードの固体シリコンを有する薄壁ポリイミド管の鞘で構成される。薬物挿入部の遠位末端は、固体Loctite 4305医療グレード接着剤の硬化塗膜で密封される。薬物挿入部は涙点プラグの穴内に配置されてもよく、Loctite 4305接着剤は組織もしくは涙液膜のいずれにも接触しない。薬物挿入部の内径は0.32 mmとなり得、長さは0.95 mmとなり得る。薬物の最終製品において三通りのラタノプロスト濃度が臨床試験され得る。すなわち、薬物芯はそれぞれ5、10、および20%の重量%濃度で、3.5、7、もしくは14μgのラタノプロストを含み得る。およそ100
ng/dayの総溶出速度と仮定すると、14μgのラタノプロストを含む薬物芯は、少なくともおよそ100日間、例えば120日間、薬物を送達するように構成される。ラタノプロストを含む薬物芯の総重量は〜70μgとなり得る。ポリイミドスリーブを含む薬物挿入部の重量は、およそ100μgとなり得る。
【0096】
多くの実施形態では、薬物芯は初期に高いレベルの治療薬を溶出し、その後ほぼ一定の治療薬を溶出し得る。多くの例では、芯から毎日放出される治療薬の量は、治療レベルを下回ってもよく、それでもやはり患者に利益をもたらす。高レベルの治療薬の溶出は、余剰量の治療薬をもたらし、および/または、患者に症状の緩和をもたらす治療域以下(su
b-therapeutic)の量の治療薬に伴う、治療薬の残留効果をもたらす可能性がある。治療レベルが約80 ng/dayである実施形態では、装置は初期送達期間に約100 ng/dayを送達し得る。1日あたりに送達される余分な20 ngは、治療薬が治療レベルを下回るレベル(例えば60 ng/day)で放出される際に有益な効果を有する可能性がある。送達される薬物の量は精密に制御できるので、高い初期投与量は合併症および/または有害事象を患者にもたらさないかもしれない。
【0097】
[実施例1.ラタノプロスト薬物芯溶出データ]
上述の薬物芯を、0.006インチ、0.012インチ、0.025インチの異なる断面サイズと、シリコンマトリクス中で5%、10%、20%の薬物濃度で製造した。これらの薬物芯は、注射器とカートリッジの組立、ラタノプロストとシリコンの混合、および所望の長さに切断して密封したポリイミド管への混合物の注入で作ることができる。薬物芯の長さはおよそ0.80から0.95 mmとし、これは0.012インチ(0.32 mm)の直径で、それぞれ5%、10%、20%の濃度で、薬物芯においておよそ3.5μg、7μg、14μgの総ラタノプロスト含有量に相当する。
【0098】
<注射器とカートリッジの組立> 1.0.006インチ、0.0125インチ、0.025インチの三通りの異なる直径のポリイミド管を用いる。 2.異なる直径のポリイミド管を〜15 cmの長さに切断する。 3.ポリイミド管を注射器アダプタに挿入する。 4.ルアーアダプタ(luer adapter)にポリイミド管を接着剤で接着する(低粘着性UV硬化Loctite)。
5.組立品の末端を整形する。 6.蒸留水を用いてカートリッジ組立品を洗浄し、その後メタノールで洗浄し、60℃ で乾熱させる。
【0099】
<ラタノプロストとシリコンの混合> ラタノプロストを用意する。ラタノプロストは酢酸メチルの1%溶液として用意する。皿に適当な量の溶液を入れ、窒素気流を用いて、ラタノプロストのみが残るまで溶液を蒸発させる。ラタノプロストオイルの入った皿を30分間真空下に置く。ラタノプロストをシリコンと混合する。シリコンNusil 6385に三通りの異なる濃度(5%、10%、20%)のラタノプロストを用意し、異なる直径(0.006インチ、0.012インチ、0.025 インチ)の管に注入し、3 X 3のマトリクスを作製する。シリコンに対するラタノプロストの%は、薬物マトリクスの総重量によって決まる。計算式:ラタノプロストの重量/(ラタノプロストの重量+シリコンの重量)×100=%薬物
【0100】
<管の注入> 1.カートリッジとポリイミド管の組立品を1 mlの注射器に挿入する。
2.一滴の触媒(MED-6385硬化剤)を注射器に加える。 3.清浄空気で余分な触媒をポリイミド管から追い出す。 4.注射器をシリコン薬物マトリクスで充填する。 5.管が充填されるまで、もしくは注射器のプランジャーが押しにくくなるまで、薬物マトリクスを管に注入する。 6.ポリイミド管の遠位末端を閉鎖し、シリコンが固化し始めるまで圧力を維持する。 7.12時間室温で硬化させる。 8.30分間真空下に置く。 9.管を正しいサイズの整形器具(異なるサイズの管を保持するために社内で用意したもの)に設置し、薬物挿入部を一定の長さ(0.80-0.95 mm)に切断する。
【0101】
<試験・溶出実験(in vitro)> 1.遠心分離管毎に同じサイズで同じ濃度のプラグ10個を設置し、1.5 mlのpH 7.4バッファー溶液を加える。 2.適切な時間後、新しいpH
7.4バッファーで溶媒を交換する。 3.Sunfire C18, 3mm x 10mmカラム(Waters Corporation, Milford, MA)を用いて、PDA detector 2996で210 nmでの溶出物のHPLCをとる。勾配溶離にアセトニトリルと水の混合物を用いる。ラタノプロスト濃度を正確に計測した社内標準を用いて、各分析の前後に社内で較正を行った。 4.異なるラタノプロスト濃度を持つ異なるサイズの管に対し、装置あたり一日あたりの薬物の放出量を計測する。5.1日目と14日目の、溶出速度vs面積および濃度をプロットする。
【0102】
図7Aと7Bは、およそ5%、11%、18%の三通りのラタノプロスト濃度で、0.006、0.012
、0.025インチの三通りの芯直径に対する、それぞれ1日目と14日目のラタノプロストの溶出データを示す。ng/dayで示したラタノプロストの溶出速度を%濃度に対してプロットする。これらのデータは、両方の期間において、溶出速度が濃度に弱く依存し、暴露表面積に強く依存することを示す。1日目では、0.006インチ、0.012インチ、0.025インチの直径の芯は、それぞれ約200 ng、400 ng、1200 ngのラタノプロストを放出した。これは、放出されるラタノプロストの量が、薬物芯の暴露表面積のサイズが増加するにつれて増加することを示す。各管直径に対し、最小二乗回帰直線で、放出されるラタノプロストの量を薬物芯中の薬物の濃度と比較する。0.006、0.012、0.025インチの薬物芯に対し、回帰直線の傾きはそれぞれ11.8、7.4、23.4である。これらの値は、芯中のラタノプロスト薬物の濃度が二倍になっても、芯からのラタノプロストの溶出速度は二倍にならないことを示唆し、前述の通り、ラタノプロストの液滴が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したラタノプロストで薬物芯が実質的に飽和していることに矛盾しない。
【0103】
14日目では、0.006インチ、0.012インチ(0.32 mm)、0.025インチの直径の芯は、それぞれ25 ng、100 ng、300 ngのラタノプロストを放出した。これは、持続期間において、放出されるラタノプロストの量は薬物芯の暴露表面積のサイズが増加するにつれて増加することを示し、放出されるラタノプロストの量が芯中の治療薬の濃度に弱く依存することを示す。各管直径に対し、最小二乗回帰直線で、放出されるラタノプロストの量を薬物芯中の薬物の濃度と比較する。0.006、0.012、0.025インチの薬物芯に対し、回帰直線の傾きはそれぞれ3.0、4.3、2.2である。0.012および0.025インチの芯では、これらの値は、芯中のラタノプロスト薬物の濃度が二倍になっても、芯からのラタノプロストの溶出速度は二倍にならないことを示唆し、前述の通り、ラタノプロストの液滴が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したラタノプロストで薬物芯マトリクスが実質的に飽和していることに矛盾しない。しかしながら0.006インチの直径の芯では、初期の芯中の量と、14日目に放出された薬物の量との間に、近似的に一次の相関関係があり、これは芯中のラタノプロスト薬物の液滴の減少によって生じると思われる。
【0104】
図7Dと7Eは、本発明の実施形態に従って、それぞれ1日目と14日目における、図7Aと7Bの三通りの芯の直径と三通りの濃度での、薬物芯の暴露表面積に対する溶出速度の依存度を示す。ng/dayで示したラタノプロストの溶出速度を、薬物芯の直径から計算される、mm2で示した薬物芯の暴露表面積に対してプロットする。これらのデータは、1日と14日の両方において、溶出速度が芯中の薬物濃度に弱く依存し、暴露表面積に強く依存することを示す。0.006インチ、0.012インチ、0.025インチの直径の芯の暴露表面積は、それぞれおよそ0.02、0.07、0.32 mm2である。1日目では、0.02、0.07、0.32 mm2の芯はそれぞれ約200 ng、400 ng、1200 ngのラタノプロストを放出した。これは、放出されるラタノプロストの量が、薬物芯の暴露表面積のサイズが増加するにつれて増加することを示す。薬物芯中の治療薬の各濃度に対して、最小二乗回帰直線で、放出されるラタノプロストの量を薬物芯の暴露表面積と比較する。5.1%、11.2%、17.9%の薬物芯に対し、回帰直線の傾きはそれぞれ2837.8、3286.1、3411.6であり、R2係数はそれぞれ0.9925、0.9701、1である。14日目では、0.02、0.07.0.32 mm2の芯は、それぞれ約25 ng、100 ng、300 ngのラタノプロストを放出した。これは、放出されるラタノプロストの量が、薬物芯の暴露表面積のサイズが増加するにつれて増加することを示す。5.1%、11.2%、17.9%の薬物芯に対し、回帰直線の傾きはそれぞれ812.19、1060.1、764.35であり、R2係数はそれぞれ0.9904、0.9924、0.9663である。これらの値は、芯からのラタノプロストの溶出速度が薬物芯の表面積と共に直線的に増加することを示唆し、上述の通り、薬物鞘が暴露表面積を制御できることに矛盾しない。薬物芯中の濃度に対するラタノプロストの溶出の弱い依存度は、上述の通り、ラタノプロストの液滴が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したラタノプロストで薬物芯マトリクスが実質的に飽和していることに矛盾しない。
【0105】
図7Cは、本発明の実施形態に従う、それぞれ3.5、7、14μgの薬物重量と、5、10、20
%の濃度で、直径0.32 mmで長さ0.95 mmの薬物芯からのラタノプロストの溶出データを示す。薬物芯は上述の通り製造された。溶出速度はng/dayで0から40日までプロットされる。14μgの芯は、大体10から40日までおよそ100 ng/dayの速度を示す。7μgの芯は、10から20日まで同程度の速度を示す。これらのデータは、上述の通り、ラタノプロストの液滴が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したラタノプロストで薬物芯マトリクスが実質的に飽和していることに矛盾しない。
【0106】
表2は、各薬物濃度に対する予想パラメータを示す。図1C に示すように、緩衝生理食塩水溶出システムでのin vitroの結果は、プラグが最初は一日あたりおよそ500 ngのラタノプロストを溶出し、初期の薬物濃度に応じて、7-14日以内に急速におよそ100 ng/dayに減少することを示す。
【0107】
【表1】

【0108】
多くの実施形態では、薬物芯の持続期間は計算された時間に基づいて決定でき、薬物の元の量の〜10%が薬物挿入部に残る際、例えば溶出速度は横ばい状態になり、およそ100 ng/dayでほぼ一定のままになる。
【0109】
[実施例2.シクロスポリン薬物芯溶出データ]
実施例1に記載の薬物芯を、21.2%の濃度を持つシクロスポリンで作製した。図8Aは、本発明の実施形態に従って、薬物芯からの、界面活性剤を含まないバッファー溶液へのシクロスポリンの溶出特性と、界面活性剤を含むバッファー溶液へのシクロスポリンの溶出特性を示す。バッファー溶液は上述の通り作製した。界面活性剤を含む溶液は、95%のバッファーと5%の界面活性剤(Dow Corning, Midland MIのUP-1005 Ultra Pure Fluid)を含む。本発明の実施形態に関連する研究は、眼が天然の界面活性剤(例えば涙液膜中のサーファクタントタンパク質D)を含み得るので、眼からのin situ溶出をモデル化するために、少なくともいくつかの例では、界面活性剤がin vitroで使用され得ることを示唆する。界面活性剤へのシクロスポリンの溶出特性は、30から60日まででおよそ50から100 ng/dayである。例えば10人の患者の、患者集団の涙から実験データを計測でき、適切な量の界面活性剤を用いてin vitroモデルを改良するために使用できる。薬物芯マトリクスは、改良in vitroモデルで決定されるヒトの涙液の界面活性剤に応じて調整され得る。薬物芯はヒトの涙液膜の界面活性剤に応じて多くの方法で調整でき、例えば増加した暴露表面積および/または添加物を用いて、上述の通り芯中に溶解するシクロスポリン薬物の量を増加させ、必要であれば芯からの溶出を治療レベルにまで増加させることで調整できる。
【0110】
[実施例3.ビマトプロストバルク溶出データ]
0.076 cm(0.76 mm)の既知の直径を持つ、1%ビマトプロストのバルクサンプルを用意した。各サンプルの高さはサンプルの重量と既知の直径から計算した。
【0111】
【表2】

【0112】
計算した高さは0.33 cmから0.42 cmの範囲であった。各バルクサンプルの各末端における暴露表面積はおよそ0.045 cm2で、0.42および0.33 cmのサンプルに対し、それぞれ0.019 cm3および0.015 cm3の体積を与える。薬物鞘を含まない高さと直径から計算されるサンプルの暴露表面積はおよそ0.1 cm2であった。三通りの処方を評価した。1)シリコン4011、1%ビマトプロスト、0%界面活性剤;2)シリコン4011、1%ビマトプロスト、約11%の界面活性剤;3)シリコン4011、1%ビマトプロスト、約33%の界面活性剤。1、2、3の処方のバルクサンプルから計測した溶出データは、バルク装置の表面積を0.1 cm2、医療装置の表面積を0.00078 cm2(0.3 mm直径)と仮定し、一日あたり装置あたりng(ng/device/day)に正規化した。図9Aは、本発明の実施形態に従って、装置の末端において0.3 mmの暴露面直径を仮定した、1%ビマトプロストを含むシリコンのバルクサンプルに対する、100日間にわたる正規化溶出特性をng/device/dayで示す。正規化溶出特性は約10 ng/dayである。データは処方の各々に対し、約10日から約90日までほぼ0次放出動態を示す。これらのデータは、上述の通り、ビマトプロストの粒子が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したビマトプロストで薬物芯マトリクスが実質的に飽和していることに矛盾しない。同様の処方は、上述の通り暴露表面積を増加させるために、かつ持続期間にわたって治療量で薬物を送達するために、薬物芯鞘および涙液に暴露される芯の成形暴露面と共に使用することができる
【0113】
いくつかの実施形態では、芯は、0.0045 cm2の暴露表面積に相当する、0.76 mmの暴露面直径を持つ、直径0.76 mmの芯を含み得る。芯は上述の通り芯の暴露面を画定するように鞘で覆われ得る。そのような装置の正規化溶出特性は、上記のバルクサンプルデータに基づき、直径0.3 mmの暴露表面積を持つ装置の溶出特性のおよそ6倍(0.0045 cm2/0.00078 cm2)である。従って、約60 ng/dayの溶出速度の0次溶出特性を、約90日間にわたって得ることができる。暴露表面積が約0.0078 cm2に増加する場合(例えば暴露表面の多くが上述のような形状の場合)、0次溶出速度は約90日間にわたって約100 ng/dayとなる。濃度も1%から増加し得る。同様の溶出特性はラタノプロストで得られる。
【0114】
[実施例4.ラタノプロスト溶出データ]
薬物芯は、上述の通り、ラタノプロストと、シリコン4011、6385、および/またはNaClで製造された。四通りの処方を次のように製造した。A)シリコン4011、約20%のラタノプロスト、約20%のNaCl;B)シリコン4011、約20%のラタノプロスト、約10%のNaCl;C)シリコン4011、約10%のラタノプロスト、約10%のNaCl;D)シリコン6385、約20%のラタノプロスト。図10Aは、本発明の実施形態に従う、ラタノプロストの四通りの処方に対する、芯からのラタノプロストの溶出特性を示す。結果は、約300 ng/device/dayの初期速度が3週間(21日)で約100 ng/device/dayに減少したことを示す。示された結果は非滅菌薬物芯のものである。同様の結果はラタノプロストの滅菌薬物芯で得られている。これらのデータは、上述の通り、ラタノプロストの液滴が薬物芯マトリクスに懸濁しており、中に溶解したラタノプロストで薬物芯マトリクスが実質的に飽和していることに矛盾しない。
【0115】
一例として、また理解を明確にするために、例示的な実施形態が多少詳細に記載されて
いるが、当業者は様々な修正、調整、変更が利用されてもよいことがわかるだろう。例えば、複数の送達メカニズムが利用されてもよく、また各装置の実施形態はその他の実施形態の特徴もしくは材料を含むように構成されてもよく、さらに複数の特徴もしくは複数の材料が一つの装置に利用されてもよい。従って、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1−1】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1−2】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1A】本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための徐放インプラントの上面断面図を示す。
【図1B】図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。
【図1C】本発明の実施形態に従う、コイル保持構造を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図1D】本発明の実施形態に従う、支柱を含む保持構造を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図1E】本発明の実施形態に従う、ケージ保持構造を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図1F】本発明の実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの透視図を示す。
【図1G】本発明の実施形態に従う、流れ制御保持部材、芯と鞘を含む、徐放インプラントを概略的に示す。
【図2A】本発明の実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2B】本発明の実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2C】本発明の実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図2D】本発明の実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2E】本発明の実施形態に従う、くぼみおよびキャスタレーションを持つ拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2F】本発明の実施形態に従う、ひだを持つ芯を含む徐放インプラントの透視図を示す。
【図2G】本発明の実施形態に従う、内部多孔質表面を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図2H】本発明の実施形態に従う、薬物移行を増加させる多孔質チャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図2I】本発明の実施形態に従う、凸面の暴露薬物芯表面を持つ徐放インプラントの透視図を示す。
【図2J】本発明の実施形態に従う、複数の柔らかいブラシ状部材がそこからのびている暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図2K】本発明の実施形態に従う、凸面暴露面と保持構造を含む薬物芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図2L】本発明の実施形態に従う、芯の暴露表面積を増加させるように凹面にへこんだ表面を含む薬物芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図2M】本発明の実施形態に従う、芯の暴露表面積を増加させるようにチャネルを中に形成した凹面を含む薬物芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図3A】本発明の実施形態に従う、鞘体と芯を保持部材に取り付ける延長部を持つ鞘体を持つインプラントを示す。
【図3B】本発明の実施形態に従う、鞘体と芯を保持する延長部を持つ保持部材を持つインプラントを示す。
【図4A】本発明の実施形態に従う、小さな断面寸法の形状よりも大きな断面寸法の形状において長さが短い保持構造を持つインプラントの断面図を示す。
【図4B】本発明の実施形態に従う、小さな断面寸法の形状よりも大きな断面寸法の形状において長さが短い保持構造を持つインプラントの断面図を示す。
【図5A】本発明の実施形態に従う、薬物芯と鞘体の交換を概略的に図解する。
【図5B】本発明の実施形態に従う、薬物芯と鞘体の交換を概略的に図解する。
【図5C】本発明の実施形態に従う、薬物芯と鞘体の交換を概略的に図解する。
【図6A】本発明の実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図6B】本発明の実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図6C】本発明の実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図7A】本発明の実施形態に従う、それぞれ0.006、0.012、0.025インチの三通りの芯直径と、およそ5%、11%、18%の三通りのラタノプロスト濃度での1日目のラタノプロストの溶出データを示す。
【図7B】本発明の実施形態に従う、それぞれ0.006、0.012、0.025インチの三通りの芯直径と、およそ5%、11%、18%の三通りのラタノプロスト濃度での14日目のラタノプロストの溶出データを示す。
【図7C】本発明の実施形態に従う、それぞれ5、10、20%の濃度と、3.5、7、14μgの薬物重量で、直径0.32 mmで長さ0.95 mmの薬物芯からのラタノプロストの溶出データを示す。
【図7D】本発明の実施形態に従う、図7Aの1日目のラタノプロストの三通りの芯直径と三通りの濃度における、薬物芯の暴露表面積に対する溶出速度の依存度を示す。
【図7E】本発明の実施形態に従う、図7Bの14日目のラタノプロストの三通りの芯直径と三通りの濃度における、薬物芯の暴露表面積に対する溶出速度の依存度を示す。
【図8A】本発明の実施形態に従う、界面活性剤を含むバッファー溶液および界面活性剤を含むバッファー溶液への薬物芯からのシクロスポリンの溶出特性を示す。
【図9A】本発明の実施形態に従う、1%ビマトプロストを含むシリコンのバルクサンプルの、100日間にわたる、一日あたり装置あたりのナノグラムでの正規化溶出特性を示す。
【図10A】本発明の実施形態に従う、ラタノプロストの四通りの処方に対する芯からのラタノプロストの溶出特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の涙点に挿入するためのインプラントであって、前記涙点は眼から涙小管内腔への涙液の流路を提供し、前記インプラントは、
遠位末端、近位末端、およびその間の軸を持つ本体であって、前記本体の前記遠位末端は前記涙点を通して前記涙小管内腔内に挿入可能で、前記本体は薬剤マトリクス薬物芯内に含まれる治療薬を含み、前記薬剤マトリクスを前記涙液に暴露することで持続期間にわたって前記涙液に治療薬が効果的に放出され、また前記本体は、前記薬剤が前記近位末端から離れて放出されるのを防ぐために前記薬剤マトリクスを覆って配置される鞘と、中に配置される際に排除されるのを防ぐために内腔壁組織と係合するように構成された外面も有する、本体
を含むインプラント。
【請求項2】
前記薬剤マトリクスは非生体吸収性ポリマーを含む、請求項1のインプラント。
【請求項3】
前記薬剤マトリクスが前記薬剤との不均質混合物中にシリコンを含む、請求項2のインプラント。
【請求項4】
前記不均質混合物が、前記治療薬で飽和されたシリコンマトリクス部分と、前記治療薬の含有物を含む含有物部分とを含む、請求項3のインプラント。
【請求項5】
前記外面が前記鞘に接して配置され、前記外面は、前記涙点から前記本体が排除されるのを防ぐ本体形状を画定する、請求項1のインプラント。
【請求項6】
前記本体が前記薬剤マトリクスを覆う支持構造をさらに含み、前記支持構造は前記外面を画定し、前記涙点から前記本体が排除されるのを防ぐように構成される、請求項1のインプラント。
【請求項7】
前記支持構造が前記鞘と前記薬剤マトリクス薬物芯とをその中に受容し、使用中に前記薬剤マトリクスの不慮の排除を防ぐ、請求項6のインプラント。
【請求項8】
前記支持構造がらせんコイルを含む、請求項6のインプラント。
【請求項9】
前記支持構造がその中に容器を持ち、使用中に前記近位末端と前記涙液膜との間で自由な流体連通を可能にするために、前記容器は前記鞘と前記薬剤マトリクスをその中に適切に受容する、請求項6のインプラント。
【請求項10】
前記外面が前記涙点内に放出される際に半径方向に拡張し、前記半径方向の拡張が前記涙点からの前記排除を防ぐ、請求項1のインプラント。
【請求項11】
前記薬剤がプロスタグランジンアナログを含み、前記持続期間が少なくとも3ヶ月を含む、請求項1のインプラント。
【請求項12】
患者に挿入するためのインプラントであって、前記患者は眼に付随する涙液の経路を持ち、前記インプラントは、
治療薬と支持構造を含む本体であって、前記本体は前記涙液の経路に沿って標的位置に埋め込まれる際、数日間の徐放期間にわたって、前記涙液中にある量の治療薬を毎日放出するように構成され、前記量は前記治療薬の推奨される毎日の点眼量の10%に著しく満たない、本体
を含むインプラント。
【請求項13】
前記量が前記推奨される点眼量の5%未満である、請求項12のインプラント。
【請求項14】
前記期間が少なくとも3週間を含む、請求項12のインプラント。
【請求項15】
前記期間が少なくとも3ヶ月を含む、請求項12のインプラント。
【請求項16】
前記治療薬がマレイン酸チモロールを含む、請求項12のインプラント。
【請求項17】
前記治療薬がラタノプロストもしくは別のプロスタグランジンアナログを含む、請求項12のインプラント。
【請求項18】
前記本体が約270μgから約1350μgの範囲の治療薬を含む、請求項12のインプラント。
【請求項19】
前記量が約20μgから約135μgの範囲である、請求項12のインプラント。
【請求項20】
前記本体が約3μgから約135μgの範囲の治療薬を含む、請求項12のインプラント。
【請求項21】
前記治療薬がプラスタグランジンアナログを含む、請求項20のインプラント。
【請求項22】
前記治療薬がラタノプロストを含む、請求項20のインプラント。
【請求項23】
前記治療薬がビマトプロストを含む、請求項20のインプラント。
【請求項24】
前記量が約5 ngから約500 ngの範囲である、請求項12のインプラント。
【請求項25】
前記本体が約5μgから約30μgの範囲の治療薬を含む、請求項12のインプラント。
【請求項26】
前記量が約10 ngから約150 ngの範囲である、請求項12のインプラント。
【請求項27】
付随する涙液を持つ眼に治療薬を送達する方法であって、
前記眼の涙小管に薬物芯を配置するステップであって、前記薬物芯は、マトリクスと、前記マトリクス内に前記治療薬の含有物を含み、前記薬物芯の一部分が前記涙液に暴露される、ステップ、
前記治療薬を前記眼の前記涙液に放出するステップであって、前記治療薬が前記持続期間にわたって治療レベルで前記暴露される部分を通して放出される間、前記マトリクスが前記治療薬で実質的に飽和されたままになるように、前記治療薬が前記マトリクスに溶解する、ステップ、
を含む方法。
【請求項28】
放出速度が、前記芯への前記薬剤の溶解度、前記涙液への前記薬剤の溶解度、および前記暴露部分の面積、によって実質的に決定される、請求項27の方法。
【請求項29】
前記薬物が前記暴露部分を通して約90日間治療レベルで放出される、請求項27の方法。
【請求項30】
前記治療薬がプロスタグランジンアナログを含む、請求項27の方法。
【請求項31】
前記治療薬の前記含有物が油を含む、請求項27の方法。
【請求項32】
前記治療薬が前記マトリクス内に封入され、前記マトリクスは非生体吸収性ポリマーを含む、請求項27の方法。
【請求項33】
前記治療薬が重量%で約0.03%未満の、水への溶解度を持つ、請求項27の方法。
【請求項34】
前記治療薬が前記涙液の界面活性剤に応じて治療レベルで放出される、請求項27の方法。
【請求項35】
前記暴露される部分を画定するために前記芯を覆って鞘が配置され、前記暴露部分は前記芯の近位末端で前記眼の方を向いている、請求項27の方法。
【請求項36】
緑内障を処置する涙点プラグであって、直径約2.0 mm未満の本体を含み、前記涙点に35日間挿入されると、前記35日間の毎日、少なくとも治療量の治療薬を送達する、涙点プラグ。
【請求項37】
直径約2.0 mm未満の前記本体が、患者に挿入される間、直径約1.0 mm未満の断面サイズからなる、請求項36の涙点プラグ。
【請求項38】
前記本体が薬物芯を含み、前記治療薬が前記薬物芯から送達され、前記薬物芯は直径約1 mm未満である、請求項36の涙点プラグ。
【請求項39】
前記本体が長さ約2 mm未満である、請求項36の涙点プラグ。
【請求項40】
涙点プラグを用いて緑内障を処置する方法であって、
少なくとも90日間、前記涙点プラグから少なくとも10 ng/dayの治療薬を溶出するステップを含む方法。
【請求項41】
前記治療薬がビマトプロストもしくはラタノプロストの内の少なくとも一つを含む、請求項40の方法。
【請求項42】
前記治療薬が重量で約0.03%未満の、水への溶解度を持つ、請求項40の方法。
【請求項43】
緑内障を処置する涙点プラグであって、
治療薬を含み、眼の界面活性剤に応じて治療レベルで前記治療薬を放出するように構成される、プラグ本体、
を含む涙点プラグ。
【請求項44】
前記治療薬が重量で約0.03%未満の、水への溶解度を持つ、請求項43のプラグ。
【請求項45】
前記治療薬がシクロスポリンを含む、請求項43のプラグ。
【請求項46】
緑内障を処置する涙点プラグであって、
治療薬を含み、少なくとも約20日間、眼の涙液に約80から120 ngの前記治療薬を放出するように構成される、プラグ本体、
を含む涙点プラグ。
【請求項47】
前記治療薬がビマトプロストもしくはラタノプロストの内の少なくとも一つを含む、請求項46の涙点プラグ。
【請求項48】
緑内障を処置する涙点プラグであって、
約0.02 cm3未満の体積以内に保存される治療薬を含み、少なくとも約1ヶ月間、治療レベルの前記治療薬を送達するように構成される、本体、
を含む涙点プラグ。
【請求項49】
前記本体が少なくとも約3ヶ月間、治療レベルで前記治療薬を送達するように構成される、請求項48の涙点プラグ。
【請求項50】
前記本体が前記少なくとも1ヶ月間、実質的に0次放出速度で前記治療薬を送達するように構成される、請求項48の涙点プラグ。
【請求項51】
付随する涙液を持つ眼の緑内障を処置する物質の組成物であって、
濃縮された形の治療薬を含み、前記治療薬が、重量で約0.03%未満の水への溶解度を含む、含有物、
前記含有物を封入するシリコンマトリクスであって、前記シリコンマトリクスから前記涙液に治療レベルで前記治療薬を放出するように、前記治療薬が前記シリコンマトリクスに溶解する、シリコンマトリクス、
を含む組成物。
【請求項52】
前記シリコンマトリクス内に封入される前記治療薬含有物が、前記シリコンマトリクス内に封入される前記含有物の不均質混合物を含む、請求項51の組成物。
【請求項53】
前記含有物がラタノプロストオイルを含む、請求項51の組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【図2M】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図9A】
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【図10A】
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【公表番号】特表2009−532133(P2009−532133A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503335(P2009−503335)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/065792
【国際公開番号】WO2007/115261
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508291478)キューエルティー プラグ デリバリー,インク. (11)
【氏名又は名称原語表記】QLT PLUG DELIVERY,INC.
【Fターム(参考)】