説明

2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンの製造方法

【課題】
本発明の目的は式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを高純度及び高収率で製造する方法を提供するところにある。
【解決手段】
本発明は、光学活性を有するキラルアミンを用いて式IXの光学活性エステル化合物から式VIIIの光学的に純粋な3R−ヒドロキシプロパンアミド化合物を製造すること、式VIIIの化合物から式Vの光学的に純粋なD−エリスロ−2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボース化合物を製造すること、式Vの化合物をヌクレオ塩基とグリコシル化してβ−ヌクレオシドとして式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造することを包含する、式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造する方法を開示する。本発明により光学的に純粋な式Iの化合物を高純度及び高収率で製造することができる。化学式においてRとRは保護基であって、それぞれ独立してベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイル、4−t−ブチルベンゾイル、1−ナフトイルまたは2−ナフトイルであり、R、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキルであり、Rはメチルまたはエチルであり、Rは水素、メチルまたはメトキシである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記式Iで表される2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造する方法に関する。
【0002】
【化001】

【0003】
ゲムシタビン(gemcitabine)としても知られている、前記式Iの化合物は構造的にリボフラノース骨格を有するヌクレオシドであり、立体化学的にはリボフラノース骨格のC−1にβ方向に立体化学的に配向されたシトシン核酸塩基を有する2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロヌクレオシド化合物である。ゲムシタビンは非小細胞肺癌(Non Small Cell Lung Cancer: NSCLC)、膵臟癌、膀胱癌、乳癌及び卵巣癌を包含する多種の癌を治療するための抗癌剤として広く使用されている。
【0004】
ゲムシタビンを製造するためには、C−3位のヒドロキシル基または保護基が導入されたヒドロキシ基が下に配向されたD-エリスロ構造を有する下記式Vで表されるD−エリスロ−1−オキソリボースを効果的に合成できる方法の開発が極めて大事である。
【0005】
【化002】

【0006】
上記式において、RとRは保護基であって、それぞれ独立してベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイル、4−t−ブチルベンゾイル、1−ナフトイルまたは2−ナフトイルである。
【背景技術】
【0007】
D-エリスロ−1−オキソリボースを製造する多種の従来方法がある。例えば、アメリカ特許第4,526,988号に下記構造式1及び2で表される3R−ヒドロキシエナンチオマー及び3S-ヒドロキシエナンチオマーの3対1混合物からなる、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(2,2-ジアルキルジオキソラン−4−イル)プロピオン酸アルキルエステルをカラムクロマトグラフィー方法で分離する方法が開示されている。
【0008】
【化003】

【0009】
上記式において、R及びRはそれぞれ独立して、C−Cアルキルである。
【0010】
下記反応式1に示すように、3R-ヒドロキシエナンチオマー(1)を強酸と反応させてジオキソラン基を加水分解して、ラクトン化反応を進行させると、3-ヒドロキシル基が下に配向されたエリスロ構造を有する、2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−D−エリスロ−1−オキソリボース(3)が得られる。
【0011】
【化004】

【0012】
前述した方法で利用されたカラムクロマトグラフィーは、カラムのサイズとローディングする物質の量が制限的であることから、大量生産に適した方法ではない。特に、カラムクロマトグラフィーは、カラム充填剤である高価なシリカゲル及び過剰量の展開溶媒を必要とするので、不都合なほど高コストを要する。
【0013】
一方、アメリカ特許第4,965,374号、同第5,223,608号及び同第5,434,254号は下記の反応式2に示されるように、エリスロ及びスレオラクトンの混合物から所望のエリスロエナンチオマー(7)を沈殿物として分離する方法を開示していて、これは3−ベンゾイルオキシプロピオン酸エステル(4)(3R−と3S−エナンチオマーの3対1エナンチオマー混合物として)を酸と反応させ加水分解させてから、水と共沸蒸留させることによって前駆体への逆反応を最小化して、エリスロとスレオラクトンの混合物としてラクトン環(5)を製造し、5−ヒドロキシル基をベンゾイル基で保護して3,5−ジベンゾイルオキシ化合物(6)を製造した後、化合物をジクロロメタン中で−5℃〜10℃の低温に冷却することによって、エリスロとスレオラクトンの混合物から所望のエリスロエナンチオマー(7)を沈殿物として分離することを含んでいる。
【0014】
【化005】

【0015】
式において、Bzはベンゾイル基を意味する。
【0016】
この方法は、3R−と3S−エナンチオマーの混合物である、3-ベンゾイルオキシプロピオン酸エステル(4)を分離せずに、ラクトン環反応に使用するという特徴がある。特に、この方法によると、エリスロとスレオの混合物である3,5−ジベンジル−1−オキソリボース(6)を水に溶解して、混合物を低温に冷却することによって、3,5−ジベンゾイルエナンチオマー(7)を容易に選択的に分離して、収得する。しかし、この方法はラクトン環反応のために、腐食性が高く、毒性があり、そして高価なトリフルオロアセトン酸を3当量又はそれ以上の過剰量使用すること、及び出発物質として3−ベンゾイルオキシプロピオン酸エステル(4)から3,5−ジベンゾイルエナンチオマー(7)を収得するための低い全体反応収率(すなわち、約25%)によって非経済的であるということ、を含む幾つかの短所がある。
【0017】
また、韓国特許出願第10−2004−0057711号は、立体化学的に大きい保護基を化合物(8)のヒドロキシル基に導入して化合物(9)を得、化合物(9)を塩基で処理して光学的に純粋な塩として3R−エナンチオマー(10)を得て、3R−エナンチオマー(10)に強酸条件下でラクトン環反応を施して、目的のD−エリスロエナンチオマー(11)を得ることを含む、下記の反応式3に示すような、D−エリスロエナンチオマー(11)を製造する方法を提示している。
【0018】
【化006】

【0019】
式において、R10、R11とR12はC−Cアルキルであり、R13はフェニルまたは置換されているフェニルであり、そしてMはNH、NaまたはKである。
【0020】
この方法には、保護基として使用する化合物であるビフェニル−4−カルボニルクロリドは、一般に保護基として使用されるベンゾイル及びナフトイル化合物に比べてコストが高いということ、及び3R-カルボン酸エステルエナンチオマーは分離できるが、3S-カルボン酸エステルエナンチオマーは分離できないという短所を抱えている。
【0021】
以上述べたように、従来公知の方法は以下の不利な点を有している。3R−ヒドロキシル基エナンチオマーを加水分解して、エリスロ1-オキソリボース化合物を合成するために、前駆体として3R-ヒドロキシエナンチオマーをカラムクロマトグラフィーを用いて分離したり、高価な保護基を導入するので、この方法は大量生産に適していない。これらの方法を用いて選択的に3R-及び3S-ヒドロキシ化合物を得ることは難しい。また、たとえ3R−及び3S−ヒドロキシル化合物の混合物の状態でラクトン化反応を完結させたとしても、エリスロ及びスレオ1-オキソリボース化合物のエナンチオマー混合物からエリスロエナンチオマーだけを選択的に分離するために、収率が極めて低くて非経済的である。
【0022】
式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンは下記の反応式4に示すように、従来の方法で製造される。より詳細には、ラクトン化合物(12)のラクトンにおけるケト部分をアルコールに変換してラクトール化合物(13)を得て、ラクトール化合物の1-ヒドロキシル基は核酸塩基との直接的なグリコシル化反応は困難なので、ラクトール化合物を反応性の高い脱離基を導入したリボフラノース中間体(14)に変換して、活性化されたリボフラノース中間体を核酸塩基と反応させてヌクレオシドを得た後脱保護して、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造することができる。
【0023】
【化007】

【0024】
式において、P及びPはそれぞれ独立してヒドロキシル保護基であり、Lは脱離基である。
【0025】
化合物(12)のヒドロキシル保護基であるPとPは、韓国特許出願第10−2004−0057711号に開示されているもの以外の、殆どの全ての従来の方法においてベンゾイル基である。韓国特許出願第10−2004−0057711号も3位の保護基を4-フェニル-ベンゾイル基に限定するような制限を有する。
【0026】
脱離基としてスルホニルオキシ及びハロ基を用いることが公知であり、特に最も好ましいスルホニルオキシ基はα-メタンスルホニルオキシリボフラノースである。
【0027】
反応式5のグリコシル化は、核酸塩基がD-エリスロ−リボフラノースの1位の炭素の脱離基を攻撃して次いで置換する、SN2反応メカニズムによって進行する。ゲムシタビンのシトシン塩基がβ-位に配向しているヌクレオシドを高収率で製造するためには、脱離基がα-位に配向しているα-アノマー(anomer)を高収率で得ることが重要である。
【0028】
一般に、核酸塩基がD−エリスロ−リボフラノースの1位炭素の脱離基を攻撃して次いで置換される反応において、反応後放出された脱離基が核酸塩基と競争的にC−1位を攻撃することによって、C−1位のアノマー化(anomerization)を誘発して、それによってβ−アノマーに対するα−アノマーの比率が反応初期とは変化する。すなわち、α−アノマーだけを使用してグリコシル化反応させても経時的にβ−アノマーの量が増加する。その結果、反応が非立体選択的に進んで、β−位に配向している所望のβ-ヌクレオシドだけではなく、α−ヌクレオシドも不純物として生成される。
【0029】
脱離基がスルホニルオキシの場合は、このようなアノマー化が減少する。従って、純粋なα−スルホニルオキシアノマー、例えばα−メタンスルホニルオキシ化合物を使用すれば、所望のβ−ヌクレオシドを過剰量得ることができる。
【0030】
一方、脱離基がハロRPSの場合は、グリコシル化反応に純粋なα−ハロアノマーだけを使用しても、反応後に放出されたハライドによるアノマー化のレベルが相対的に高くて、反応の進行に伴ってβ−ハロアノマーが次第に増加するようになる。特に、β−ハロアノマーはα−ハロアノマーよりグリコシル化反応が早く行われ、またハロ脱離基はスルホニルオキシ脱離基に比べて反応性が低くて、より長い反応時間とより高い反応温度を要するので、反応の進行に伴ってα−ヌクレオシドが増加して、より低い立体選択性を示す。
【0031】
従って、グリコシル化反応を利用する2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロヌクレオシドの製造において、1−ハロ−リボフラノースを用いる方法は必然的に限られた立体選択性を伴う。このことからα-メタンスルホニルオキシリボフラノースを用いるヌクレオシドを製造する方法が既存の開発されたグリコシル化方法の中で最も優れた方法として知られている。
【0032】
この方法をさらに具体的に説明すれば、まず、α-スルホニルオキシリボフラノースを核酸塩基とグリコシル化する方法は、アメリカ特許第5,371,210号、同第5,401,838号、同第5,426,183号、同第5,594,124号、及び第5,606,048号及びヨーロッパ特許第577,303号に開示されている。下記の反応式5に示すように、これらの方法は十分な量のアノマーを含有する1−スルホニルオキシリボフラノース誘導体(15)を核酸塩基と反応させることによって、β−ヌクレオシド(16)を高比率で生成する立体選択的なグリコシル化を包含している。
【0033】
【化008】

【0034】
式において、P及びPはヒドロキシル保護基であり、Wはアミノ保護基または水素であり、Lはニトリル、ハロ、カルボアルコキシまたはニトロで置換されたスルホニルオキシ、置換されたスルホニルオキシ、又は置換されたアリールスルホニルオキシを包含する、脱離基である。
【0035】
この方法によれば、1−スルホニルオキシ脱離基の良好な反応性と低レベルのアノマー化によって、核酸塩基が主にβ-位に配向しているβ−ヌクレオシド(16)が、α−ヌクレオシド(17)に比べて約5〜7倍多く得られる。結局、ゲムシタビンを30〜75%の高収率で得ることができる。
【0036】
一方、アメリカ特許第4,526,988号及び同第5,453,499号、及び韓国特許出願第10−2005−0041278号はハロ脱離基が導入された1−α−ハロ−リボフラノース誘導体を開示している。
【0037】
【化009】

【0038】
式において、P及びPはヒドロキシル保護基であり、Acはアセチル基であり、そしてXはブロモまたはクロロである。
【0039】
アメリカ特許第4,526,988号は、反応式6に示したように1当量またはそれ以上の酸除去剤の存在下で、ラクトール化合物(13)の1−ヒドロキシル基を無水酢酸または他のアセチル塩基の供給源と反応させて、1−アセテート誘導体(18)を製造した後、約−50〜0℃の低温で臭化水素または塩化水素ガスを反応混合物に加えて1−ハロアノマー(19)を得ることを含む、1−ハロアノマー(19)を製造する方法を開示している。しかし、この方法は立体選択性が低くてα−ハロアノマーの収率が低いという不都合がある。
【0040】
【化010】

【0041】
式において、P及びPはベンゾイルのようなヒドロキシル保護基であり、Pはスルホニルであり、そしてXはハライドである。
【0042】
アメリカ特許第5,453,499号は、反応式7に示すような、β−スルホニルオキシ化合物(20)を不活性溶媒中でハライド供給源と反応させてα−ハロアノマー(21)をβ−ハロアノマーに対して9:1〜10:1の高比率で製造する方法を開示している。
【0043】
出発物質であるβ−スルホニルオキシ化合物(20)は、例えばアメリカ特許第5,401,861号に開示されている対応する1−ヒドロキシ化合物から製造される。β−スルホニルオキシ化合物(20)の製造においては、α−スルホニルオキシアノマー及びβ−スルホニルオキシアノマーが1:4の比率で製造される。しかしながら、α−及びβ−アノマーの混合物からβ−スルホニルオキシアノマーを分離する工程を考慮すれば、たとえ前記反応式7においてα−ハロアノマーが9:1〜10:1(α−アノマー:β−アノマー)の高比率で得られるとしても、1−ヒドロキシ化合物から得られるβ−ハロアノマーに対する最終α−ハロアノマー(21)の立体選択的な比率はせいぜい3:1に過ぎない。また、3−及び5−ヒドロキシル基の保護基としてベンゾイル基が導入されたα−ハロアノマー(21)は油相中に収得されるので、分離効率が低く非経済的であるために大量生産に不向きなカラムクロマトグラフィーの利用を必要とするという不都合がある。特に、収得した油相は一般に固体と同様に、取扱や保管が困難である。
【0044】
【化011】

【0045】
韓国特許出願第10−2005−0041278号は、反応式8に示すように、ラクトール化合物(13)を塩基の存在下でホスフェニルハライド化合物と反応させて1−ホスフェニルオキシフラノース誘導体(22)を製造して、化合物(22)をハライド供給源と反応させた後、得られた生成物を再結晶することを含む、α−ハロアノマー(21)を製造する方法を開示している。
【0046】
しかし、この方法は、反応手順が複雑であり、そして副産物として得られるホスフェニル酸の除去の困難性によって高純度の化合物の収得が難しいという短所を有している。
【0047】
また、1−ハロリボフラノースを使用する従来のグリコシル化方法が幾つかある。例えば、アメリカ特許第5,744,597号及びヨーロッパ特許第577,304号は、下記の反応式9に示すように、α−ハロアノマーに富むリボフラノース誘導体(15)を陰イオン性核酸塩基と反応させてβ-位に導入された核酸塩基を有するβ-ヌクレオシド(16)を製造することを含む、立体選択的な陰イオングリコシル化方法を開示している。
【0048】
【化012】

【0049】
式において、P及びPはヒドロキシル保護基であり、Wはアミノ保護基であり、Mは陽イオンであり、そしてLはヨードまたはスルホニルオキシである。
【0050】
この方法によれば、核酸塩基をカリウムt-ブトキサイド、水素化ナトリウムのような強塩基と反応させて陰イオン性核酸塩基を製造して、この陰イオン性核酸塩基をα−ハロアノマーに富むリボフラノース誘導体(15)とグリコシル化すると、α−ヌクレオシド(17)が、更にβ−ヌクレオシド(16)も得られる。この方法は、陰イオン核酸塩基を製造するための付加的な煩わしい工程を必要として、特に前述するようにグリコシル化が非立体選択的に進行されるので、所望のβ-ヌクレオシドがα-ヌクレオシドと同等な比率で得られるのみならず、極めて低い分離収率に起因する非効率的かつ非経済的であるという短所がある。
【0051】
このように、脱離基としてハライドを含んでいる1−ハロリボフラノースをグリコシル化に用いる場合は、α−位にだけ配向している純粋なα−アノマーを使用しても、α−スルホネート脱離基を使用する場合とは違って、反応が非立体選択的に進行して、劣った結果、すなわち所望のα−ヌクレオシドが極めて低い収率で製造されるという結果を示す。
【0052】
また、上記反応式9で示した、3位と5位に導入されるヒドロキシル保護基である異なったPとPを得ることは難しく、よってPとPを同一にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】アメリカ特許第4,526,988号
【特許文献2】アメリカ特許第4,965,374号
【特許文献3】アメリカ特許第5,223,608号
【特許文献4】アメリカ特許第5,371,210号
【特許文献5】アメリカ特許第5,401,838号
【特許文献6】アメリカ特許第5,401,861号
【特許文献7】アメリカ特許第5,426,183号
【特許文献8】アメリカ特許第5,434,254号
【特許文献9】アメリカ特許第5,453,499号
【特許文献10】アメリカ特許第5,594,124号
【特許文献11】アメリカ特許第5,606,048号
【特許文献12】アメリカ特許第5,744,597号
【特許文献13】韓国特許出願第10-2004-57711号
【特許文献14】韓国特許出願第10-2005-41278号
【特許文献15】ヨーロッパ特許第577,304号
【特許文献16】ヨーロッパ特許第577,303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0054】
従って、本発明の1つの目的は、式IXで表される光学活性エステル化合物から、光学的に純粋なアミンを用いて下記式VIIIで表される光学的に純粋な3R-ヒドロキシプロパンアミド化合物を製造し;この式VIIIの光学的に純粋な3R-ヒドロキシプロパンアミド化合物から、多様な3-及び5-ヒドロキシル保護基が導入された、式Vで表される光学的に純粋なD−エリスロ−2,2−ジフルオロ−2-デオキシ−1−オキソリボース化合物を製造し;そして式Vの化合物から式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造することを含む、式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンを製造する方法を提供することである。
【0055】
【化013】

【0056】
式において、RとRは保護基であって、Rが1−ナフトイルまたは2−ナフトイルであるときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイルまたは4-t-ブチルベンゾイルであり、そしてRが1−ナフトイルまたは2−ナフトイルであるときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイル、または4−t−ブチルベンゾイルであり;R、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキルであり;Rはメチルまたはエチルであり;そしてR6は水素、メチルまたはメトキシである。
【0057】
本発明の他の目的は、化合物を高純度及び高収率で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0058】
前述した課題を解決するための本発明の一態様では、
(1) 式IXの3−ヒドロキシプロピオン酸エチルエステルを光学的に純粋な(S)−フェニルエタンアミン、(S)−1−(4−メチルフェニル)エタンアミン、(S)−1−フェニル−1−プロパンアミン、(S)−1−(4−メトキシフェニル)エタンアミン、及び(S)−1−(4−クロロフェニル)エタンアミンから選ばれるアミンと反応させて光学的に純粋な式VIIIの3R−ヒドロキシプロパンアミドを製造すること;
(2) 式VIIIの化合物のヒドロキシル基を保護して式VIIの化合物を製造すること;
(3) 式VIIの化合物を加水分解して式VIのD−エリスロ−1−オキソリボースを製造する こと;
(4) 式VIのD−エリスロ−1−オキソリボースの5−ヒドロキシル基を保護して式VのD−エリスロ−1−オキソリボースを製造すること;
(5) 式VのD−エリスロ−1−オキソリボースを還元して式IVのラクトールを製造すること;
(6) 式IVのラクトールをトリエチルアミン、ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下で塩化メタンスルホン酸と反応させて、式IIIのD−エリスロ−1−メタンスルホニルオキシリボフラノースを製造すること;
(7) 式IIIのD−エリスロ−1−メタンスルホニルオキシリボフラノースと核酸塩基を、トルエン、1,2−ジクロロエタン、アニソールまたはキシレンのような有機溶媒に混合して、グリコシル化して、式IIのヌクレオシドを得ること;そして
(8) 式IIのヌクレオシドを強塩基または強酸で脱保護すること;
を含む、下記式Iで表される2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン及びその塩の製造方法が提供される。
【0059】
【化014】

【0060】
【化015】

【0061】
式において、RとRは保護基であって、Rが1−ナフトイルまたは2-ナフトイルであるときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイルまたは4−t−ブチルベンゾイルであり、そしてRが1−ナフトイルまたは2−ナフトイルであるときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイル、または4−t−ブチルベンゾイルであり;R、R及びRはそれぞれ独立して、C−Cアルキルであり;Rはメチルまたはエチルであり;Rは水素、メチルまたはメトキシであり;Rはエチルであり;そしてP’はアセチルまたは水素である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明による、式Iの2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン及びその塩を製造する方法を概略的に説明すれば、下記の反応式10に示した通りである。
【0063】
【化016】

【0064】
式中の、R、R、R、R、R、R及びP’は上で定義した通りであり、式IXの化合物は3R−及び3S−エナンチオマーを一定比率で含有している異性体混合物である。
【0065】
全製造工程の各工程のより詳細な説明を以下に挙げる。式IXのエステル化合物を、溶媒としてのトルエン及びシアン化ナトリウム触媒の存在下で、光学的に純粋なアミンと加熱還流して反応させると、光学的に純粋な3R−ヒドロキシアミドである式VIIIの化合物を選択的に製造できる。この式VIIIの化合物は固相として再結晶方法により高純度で容易に得ることができる。この式VIIIのアミド化合物の3−ヒドロキシル基は反応性の官能基であるので、最初に保護されて、式VIIのアミン化合物が得られる。式VIIの保護されたアミン化合物を酸と反応させると優先的にジオキソラン基が脱保護される。次いで、得られる化合物を高温下で脱水してラクトン化すると、式VIのエリスロ5−ヒドロキシ−1−オキソリボース化合物が生成される。この式VIの化合物の5−ヒドロキシル基を従来の方法で保護することによって、エリスロ−2,2−ジフルオロ−2-デオキシ−1−オキソリボース化合物を立体選択的かつ効率的に製造することができる。
【0066】
反応式10に示したように、本発明は式IXのエナンチオマー混合物を光学的に純粋なアミンと反応させて光学的に純粋な式VIIIの3−(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ)プロパンアミドを選択的に分離できるという長所を有している。こうして得られたエナンチオ選択的に純粋な式VIIIの3R−3−(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ)プロパンアミドを前駆体として使用すると、式VIのエリスロ 1−オキソリボース化合物を極めて簡単なメカニズムによって選択的に製造できる。
【0067】
式VIIIの化合物は新規な化合物、3R-(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ)プロパンアミドであって、液相ではなく固相で得られ、簡単な再結晶により高純度で得ることができ、そして以後の工程で得られる化合物も固相で得ることができるので、カラムクロマトグラフィーを避けることができて大量生産を実現できる。そして、式VIIIの化合物は医薬品中間体として有用であるので、その適用範囲を拡張することができる。
【0068】
本発明の方法において出発物質として使用される式IXの(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパンエステル化合物はアメリカ特許第4,965,374号、同第5,223,608号及び同第5,434,254号に開示された方法に従って製造することができる。具体的には、下記反応式11に示すように、アルデヒドケトニド(ketonide)(18)とジフルオロ化合物(19)を反応させて、混合物を亜鉛を使用してレフォルマトスキー反応(Reformatsky reaction)させると、式IXの(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパンエステル化合物(3R−エナンチオマー:3S−エナンチオマー=約3:1)が製造される。
【0069】
【化017】

【0070】
式中の、R、及びRは上で定義した通りである。
【0071】
一方、下記反応式12に示すように、式IXの(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパンエステル化合物(3R−エナンチオマー:3S−エナンチオマー=約3:1)を光学的に純粋なアミンと反応させるとアミドが得られる。すなわち、式VIIIの3R−(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパンアミド化合物を固体として純粋な状態で分離できる。
【0072】
【化018】

【0073】
式中の、R、R、R及びR6は上で定義した通りである。
【0074】
3R−及び3S−エナンチオマーの混合物である式IXの(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパンエステル化合物を光学的に純粋なアミンと反応させて、アミドを光学的に純粋に分離することができる。こうして製造されるアミドの立体選択性はアミドを構成するアミンを適切に選択することによって調節できるという長所を有している。本発明で使用できる光学活性なアミンは、ある構造サイズを有するフェニル含有アミンを含み、その例としては、 (R)または(S)−フェニルエタンアミン、(R)または(S)−1−(4−メチルフェニル)エタンアミン、(R)または(S)−1−フェニル−1−プロパンアミン、(R)または(S)−1−(4−メトキシフェニル)エタンアミン、(R)または(S)−1−(4−クロロフェニル)エタンアミンが挙げられる。その中でも、(R)または(S)−フェニルエタンアミン、(R)または(S)−1−(4−メチルフェニル)エタンアミン、(R)または(S)−1−フェニル−1−プロパンアミンが望ましい。
【0075】
反応式12の反応に有用な反応溶媒は、式IXの化合物が高度に溶解する、トルエン、ジクロロメタンまたは酢酸エチルのような単一溶媒を包含する。好ましくは、トルエンまたはジクロロメタンのような溶媒を用いると、式VIIIの化合物が高い収率で立体選択的に製造される。
【0076】
(R)または(S)キラルアミンを、エナンチオ選択性エナンチオマー混合物である式IXの化合物と反応させることにより製造されたアミドは、立体選択的に分離でき、固相で得られて精製が容易である。この式VIIIの化合物の3位の官能性ヒドロキシル基に多様な保護基を導入して、化合物を安定化することができる。
【0077】
【化019】

【0078】
式中の、R、R、R、R及びRは上で定義した通りである。
【0079】
本発明では、式VIIIの化合物の3-ヒドロキシル基に多様な保護基を導入できる。保護する工程において酸が生成される場合は、塩基を使用して酸を中和する。有用な塩基の例としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びメチルピペリジンが挙げられ、このうちトリエチルアミンが最も望ましい。
【0080】
本発明の方法によれば、式VIIIのアミド化合物は80%またはそれ以上の高い収率で得ることができ、そしてfNMR分光法では、アミン化合物が99%またはそれ以上の立体選択性を有することを示唆する、一つのフッ素ピークを示す結果をもたらす。より明確な結果を得るため、保護基を導入した式Vの化合物をHPLCを使って分析した。HPLC分析から、化合物Vは、逆異性体を0.2%またはそれ以下を含有している、99.8%またはそれ以上の極めて高い純度(結局、99.6%以上の d.e値)を有していることが確認された。これらの結果は、本発明の方法を用いて優れた立体選択性を有する式VIIIの化合物の製造が可能であることを示している。
【0081】
一方、下記反応式14に示すように、式VIIの化合物を酸性条件下で脱水を可能にするラクトン化させると、医学的-薬学的に重要な中間体である式VIのエリスロ−2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボースが製造される。式VIの化合物の5−ヒドロキシル基に保護基を導入すると、一層安定な式Vの化合物を製造できる。
【0082】
【化020】

【0083】
式中の、R、R、R、R、R及びRは上で定義した通りである。
【0084】
ラクトン化に使用される酸として、約−10.0〜約2.0のpKaを有する強酸を用いることがが好ましい。有用な酸の例は、1N〜12Nの塩酸、1N〜9Nの硫酸のような無機酸、及びメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸及びトリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸を包含する。このうち12Nの塩酸及びトリフルオロ酢酸が好ましく、12Nの塩酸が最も好ましい。
【0085】
酸を、式VIIの化合物に対して2〜3モル当量の量で、好ましくは2.1〜2.5モル当量の量で用いることができる。
【0086】
本発明に従って式VIのD−エリスロ−5−ヒドロキシ−1−オキソリボース化合物から式VのD−エリスロ−2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボースを製造する工程において、5-ヒドロキシル基は従来の方法を用いて保護することができ、適切な保護基は疎水性ベンゼン環またはナフタレン環を有する保護基を包含する。有用な保護基の例は、ベンゾイル、フェニルベンゾイル、置換されたベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、置換された1−ナフトイル、 及び置換された2-ナフトイルなどを包含する。ベンゾイル、1−ナフトイル及び2−ナフトイルが好ましい。
【0087】
式VIIの化合物から式VIの5−ヒドロキシル−1-オキソリボース化合物を製造して、式VIの化合物から式Vの2,2−ジフルオロ−2-デオキシ−1−オキソリボースを製造する方法において、目的の式Vの化合物を、式VIの5−ヒドロキシ−1−オキソリボース化合物を分離した後保護反応を行う2段階方法、または式VIの5−ヒドロキシ−1−オキソリボース化合物を付加的な分離をせず、一つの反応容器内で保護反応を行う1段階方法(in situ preparation)で製造できる。2段階方法に比べて、同一反応容器内で5−ヒドロキシ保護反応を行う1段階方法は、2段階方法における式VIの5−ヒドロキシ−1−オキソリボース化合物の分離工程で発生する収率の損失を避けられるので、総収率において一層有利であり、式Vの2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボースを結晶相で容易に分離することができ、2段階方法の純度と同程度の最終目的物の純度を実現できる。従って、実際の製造において、1段階方法は2段階方法より一層好ましい。
【0088】
一方、本発明の方法によって製造される式Vのエリスロ 2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボースを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析すると、異性体のスレオ化合物は検出されず、所望のエリスロ 1−オキソリボース化合物が約99%の極めて高い純度で検出される。
【0089】
このように、本発明の方法は、従来の方法に比べて遥かに優れた立体選択性によって、式VのD−エリスロ化合物を高い収率で立体選択的に製造することができる。それぞれのヒドロキシル基を保護するために固有の保護基を使用できるので、選択的な保護基の導入を通して式Vの化合物の物理的特性を調節することができる。本発明の方法は、式Vの化合物を固相で得ることができるので、精製及び計量に関して有利であること、及び改善された収率をもたらすので、経済効率の点で有利であるといった他の利点を有している。
【0090】
式Vの化合物は新規なキラルプールのみならず、当該技術分野で重要な抗癌剤として公知のゲムシタビンの中間体の製造を可能にする。
【0091】
本発明で用いられる用語「アノマーに富む」とは、特定のアノマーが逆のアノマーに対して1倍又はそれ以上過剰に存在することを意味し、実質的に純粋なアノマーを98%またはそれ以上含有しているアノマー混合物を意味する。また、「アノマー化(anomerization)」は純粋なアノマーが単独の状態またはα−及びβ−アノマー混合状態でリボフラノースのC−1位でエピメリ化(epimerization)することを意味する。
【0092】
式VのD−エリスロ−1−オキソリボース化合物を通常の方法で還元すると、式IVのラクトール化合物を製造することができる。還元に有用な溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及びジオキサンのような非水素化溶媒を包含する。有用な還元剤は、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、 Red−Al(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)、水素化リチウムトリ−tert−ブトキシアルミニウムを包含する。Red−Alが好ましい。−5〜0℃の温度で還元剤を添加した後、室温で1〜2時間反応を促進させることで、還元を実施する。還元反応を穏やかな条件下で実施することができて、それが好ましい。
【0093】
【化021】

【0094】
式中の、R及びRは上で定義した通りである。
【0095】
式IVのラクトール化合物を、トリエチルアミン、ピリジン又はジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下で、塩化メタンスルホニルと反応させると、α−アノマーに富む式IIIの1−メタンスルホニルオキシリボフラノース化合物を製造できる。このα−アノマーに富む式IIIのメタンスルホニルオキシリボフラノース化合物を核酸塩基であるアセチルシトシンとグリコシル化すると、式IIのβ−アノマーヌクレオシドを製造できる。最終的に、ヌクレオシドの保護基をアンモニア/メタノール溶液で脱保護化すると、目的の式Iの2’−デオキシ−2’、2’−ジフルオロシチジンを製造できる。
【0096】
【化022】

【0097】
式中の、R、R及びP'は上で定義した通りである。
【0098】
以下、本発明を下記の実施例に基づきさらに詳細に説明する。これらの実施例は説明を目的にしているだけで、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0099】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)プロピオン酸エチルの合成
テトラヒドロフラン26mLに亜鉛13g(200mmol)を加え、そこにジブロモエタン0.1mLを加えた後、得られる混合物を60℃で1分間加熱する。反応混合物に40℃でクロロメチルシラン0.8mL(6mmol)を加える。10分後に、内部温度を60℃に昇温し、得られる混合物にブロモジフルオロ酢酸エチル25.5mL(200mmol)を加え、2,2−ジメチル−[1,3]−ジオキソラン−4−カルボアルデヒド30.8g(237mmol)のテトラヒドロフラン(39mL)溶液を滴下して、還流下で反応させる。滴下完了後、さらに30分間還流を続ける。反応液にジエチルエーテル65mLを加え、氷260gの上に得られる混合物を注下する。これに1Nの塩酸260mLを加えて、氷が完全に溶けるまで攪拌する。水層をジエチルエーテル90mLで3回抽出する。有機層を集めて、食塩水65mL及び飽和重曹溶液65mLで順に洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して、ろ過する。得られる残渣を10トールの真空下で蒸留して、130〜134℃で分離された有機層を得て、無色の液体として表題化合物1 8.9g(収率:57%)(R:S=3:1)を収得した。
H NMR(CDCl300MHz):3.7−4.4(m、6H)、2.90(d、1H、(S)−OH)、2.67(s、1H、(R)−OH)、1.31−1.52(m、9H)。
【実施例2】
【0100】
3R−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−N−[(S)−1−フェニルエチル]プロパンアミドの合成
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)プロピオン酸エチル(R:S=3:1)150g(590mmol)をトルエン750mLに溶解し、そこに触媒量のシアン化ナトリウムを加えて、(S)−(−)−α−メチルベンジルアミン75mL(590mmol)をゆっくり滴下する。反応溶液を24時間還流する。反応溶液に酢酸エチルを加えて、得られる混合物を水2,000mLで3回洗浄する。反応溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下で蒸留すると、固体の化合物が得られる。この化合物をヘキサンまたはヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒中で再結晶すると、淡黄色の固体105g(収率54%)が得られる。
H NMR(CDCl、400MHz):7.39−7.28(m、5H)、6.66(m、NH)、5.13(m、1H)、4.33−4.24(m、2H)、4.05−4.03(m、2H)、1.56(d、3H、J=6.9)、1.31(s、3H)、1.29(s、3H)。
【実施例3】
【0101】
安息香酸(R)−1−((R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3−((S)−1−フェニルエチルアミン)プロピルの合成
実施例2で得られる3R−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−N−[(S)−1−フェニルエチル]プロパンアミド50g(152mmol)を塩化メチレン200mLに溶解して、トリエチルアミン32mL(228mmol)及び塩化ベンゾイル19mL(167mmol)を反応溶液に順に加える。得られる混合物を室温で2時間攪拌し、1N塩酸600mL、5%飽和の重曹溶液600mL及び水600mLで順に洗浄する。反応溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下で蒸留すると白色の固体化合物が得られる。この固体をヘキサン−酢酸エチル溶液で再結晶すると、白色の固体化合物58.0g(収率:88%)が得られる。
H NMR(CDCl、400MHz):8.02 (d、2H、J=7.2)、7.62−7.59(m、1H)、7.47−7.43(m、2H)、7.37−7.29(m、5H)、6.54(m、NH)、5.95(m、1H)、5.12(m、1H)、4.54(m、1H)、4.12−4.00(m、2H)、1.47(d、3H、J=6.9)、1.28(s、3H)、1.19(s、3H)。
【実施例4】
【0102】
2−ナフトエ酸(R)−1−((R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3−((S)−1−フェニルエチルアミン)プロピルの合成
塩化ベンゾイルの代わりに、2−ナフトイルクロリドを使用する以外は、実施例3と同様の方法で白色の固体化合物63.9g(収率:87%)が得られる。
H NMR(CDCl、400MHz):8.62(s、1H)、8.03(dd、1H、J=1.6、8.6)、7.95(d、1H、J=8.0)、7.91−7.88(m、2H)、7.65−7.55(m、2H)、7.34−7.26(m、5H)、6.58(m、NH)、6.06−5.98(m、1H)、5.15−5.08(m、1H)、4.62−4.57(m、1H)、4.16−4.08(m、2H)、1.46(d、3H、J=6.9)、1.29(s、3H)、1.19(s、3H)。
【実施例5】
【0103】
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−エリスロペントフラノース−1−ウロースの合成
実施例3で得られる安息香酸(R)−1−((R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3−((S)−1−フェニルエチルアミン)プロピル30g(68mmol)をアセトニトリル150mLに溶解し、そこに濃塩酸14mL(170mmol)を加えて、得られる混合物を4時間還流する。反応が完了した後、反応混合物にトルエン加えて、溶媒と水を蒸留して除去する。反応混合物に再びトルエンを加え、次いで再蒸留して、混合物を完全に濃縮すると3−安息香酸2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−D−エリスロペントフラノース−1−ウロースが得られる。得られる反応混合物を塩化メチレン100mLに溶解して、ピリジン8.2mL(102mmol)をそこに加える。2−ナフトイルクロリド13g(68mmol)の塩化メチレン(40mL)溶液を反応液に加える。得られる溶液を室温で12時間攪拌して、1Nの塩酸200mL、5%飽和の重曹溶液200mL及び水200mLで順に洗浄する。得られる溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下で蒸留する。得られる固体をヘキサン−酢酸エチル溶液で再結晶すると、白色の固体化合物20g(収率:70%)が得られる。
H NMR(DMSO−d、400MHz):8.64(s、1H)、8.07(d、2H、J=7.2)、8.05(dd、1H、J=1.6、8.6)、7.97(d、1H、J= 8.0)、7.91−7.89(m、2H)、7.66− 7.56(m、3H)、7.50−7.47(m、2H)、5.89−5.78(m、1H)、4.60−4.57(m、1H)、4.50−4.43(m、2H)。
【実施例6】
【0104】
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−5−ベンゾイル−3−(2−ナフトイル)−D−エリスロペントフラノース−1−ウロースの合成
塩化ベンゾイルの代わりに2−ナフトイルクロリドを使用する以外は実施例5と同様の方法で白色の固体化合物20.6g(収率:67%)が得られる。
H NMR(DMSO−d,400MHz):8.62(s, 1H),8.05(d,2H,J=7.2),8.03(dd,1H,J=1.6,8.6),7.95(d,1H,J=8.0),7.89−7.87(m,2H),7.65−7.53(m,3H),7.48−7.45(m,2H),6.05−5.95(m,1H),4.62−4.58(m,1H),4.51−4.43(m,2H)
【実施例7】
【0105】
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−1−メタンスルホニルオキシ−D−リボフラノースの合成
実施例5で得られる2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−エリスロペントフラノース−1−ウロース17.9g(42mmol)をテトラヒドロフラン400mLに溶解させた後、−5〜0℃に冷却する。反応溶液にRed−Al(65wt%のトルエン溶液)15.1mL(50mmol)をゆっくり滴下し、−5〜0℃を維持して5時間攪拌する。反応溶液に1Nの塩酸溶液100mLをゆっくり滴下して反応を終結する。次いで、酢酸エチル400mLを反応溶液に加える。有機層を5%飽和の重曹溶液1,000mL及び食塩水1,000mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下で蒸留すると、粗2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−リボフラノースが得られる。粗製の化合物を塩化メチレン100mLに溶解して、そこにトリエチルアミン11.97mL(88mmol)を加える。反応溶液に塩化メタンスルホニル3.99mL(51mmol)を加え、得られる混合物を室温で4時間攪拌し、溶媒を減圧蒸留で除去して、そこに酢酸エチル150mLを加える。有機層を1Nの塩酸400mL、5%飽和の重曹溶液400mL及び食塩水400mLで順に洗浄する。得られる溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮すると、白色の固体化合物13.6g(収率:66%)が得られる。
H NMR(CDCl、400MHz):8.63(s、1H)、8.07−8.05(m、2H)、7.97−7.89(m、3H)、7.66−7.55(m、3H)、7.49−7.47(m、2H)、5.89−5.76(m、1H)、4.60−4.57(m、1H)、4.50−4.43(m、2H)、4.00(s、1H)、3.39(s、3H)。
【実施例8】
【0106】
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−5−ベンゾイル−3−(2−ナフトイル)−1−メタンスルホニルオキシ−D−リボフラノースの合成
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−エリスロペントフラノース−1−ウロースの代わりに、実施例6で得られる2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−5−ベンゾイル−3−(2−ナフトイル)−D−エリスロペントフラノース−1−ウロースを使用する以外は、実施例7と同様の方法で白色の固体化合物13.2g(収率:64%)が得られる。
H NMR(CDCl、400MHz):8.64(s、1H)、8.07−8.05(m、2H)、7.97(m、1H)、7.91−7.89(m、2H)、7.67−7.49(m、5H)、6.06−5.97(m、1H)、4.64−4.59(m、1H)、4.54−4.43(m、2H)、3.99(s、1H)、3.38(s、3H)。
【実施例9】
【0107】
1−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−リボフラノシル−4−(1−アセチル)アミノピリミジン−2−オンの合成
アセチルシトシン8.3g(54mmol)、ヘキサメチルシラザン26mL(126mmol)、トリメチルシリルクロリド1.1mL(9mmol)、及びトルエン20mLを混合して、還流する。完全に溶解した後、混合物を3時間さらに還流する。反応溶液を室温まで冷却し、次いで蒸留して過剰のヘキサメチルシラザンとトリメチルシリルクロリドを除去する。トルエンを加えた後、反応溶液を再蒸留する。窒素雰囲気下で、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸20mL(108mmol)を滴下し、実施例7で得られる2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−1−メタンスルホニルオキシ−D−リボフラノース9g(18mmol)をトルエン50mLに溶解して、この溶液を反応液に滴下し、次いで15時間還流する。反応溶液を室温まで冷却して、酢酸エチル100mLをそこに加える。有機層を1Nの塩酸300mL、5%飽和の重曹溶液300mL、及び食塩水300mLで洗浄する。得られる溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下で濃縮すると、白色の固体化合物8.9g(収率:88%)が得られる。
H NMR(DMSO−d、400MHz):8.63(s、1H)、8.19−8.15(m、1H)、8.07−8.05(m、2H)、7.97−7.89(m、3H)、7.66−7.55(m、3H)、7.49−7.47(m、2H)、6.29−6.26(m、1H)、5.89−5.76(m、1H)、4.60−4.57(m、1H)、4.50−4.43(m、2H)、4.00(s、1H)、2.14(s、3H)。
【実施例10】
【0108】
1−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−3−(2−ナフトイル)−5−ベンゾイル−D−リボフラノシル−4−(1−アセチル)アミノピリミジン−2−オンの合成
2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−1−メタンスルホニルオキシ−D−リボフラノースの代わりに、実施例8で得られる2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−5−ベンゾイル−3−(2−ナフトイル)−1−メタンスルホニルオキシ−D−リボフラノースを使用する以外は、実施例9と同様の方法で白色の固体化合物8.5g(収率:84%)が得られる。
H NMR(DMSO−d、400MHz):8.64(s、1H)、8.20−8.16(m、1H)、8.07−8.05(m、2H)、7.97(m、1H)、7.91−7.89(m、2H)、7.67−7.49(m、5H)、6.30− 6.26(m、1H)、6.06−5.97(m、1H)、4.64−4.59(m、1H)、4.54−4.43(m、2H)、3.99(s、1H)、2.12(s、3H)。
【実施例11】
【0109】
2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン塩酸塩の合成
実施例9で得られる1−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−リボフラノシル−4−(1−アセチル)アミノピリミジン−2−オン8.5g(15mmol)を7N−アンモニア/メタノール溶液(Sigma-Aldrich, Inc)85mLに加え、これにメタノール170mLをさらに加える。混合物を一晩室温で攪拌し、減圧下で蒸留して溶媒を除去し、水100mLと酢酸エチル70mLをそこに加え、混合物から水層を分離して、酢酸エチル層を水30mLでもう一度抽出する。水層を集めて、石油エーテル40mLで洗浄する。水層にIPA130mLを加え、加熱して溶解する。得られる残渣にIPA30mLを加えて加熱して溶解する。反応溶液に濃塩酸0.92mLを加えて、室温まで冷却する。反応溶液を室温で2時間攪拌して、結晶を成長させる。析出した結晶をろ過し、水とアセトン混合溶媒で洗浄して、乾燥すると、白色の固体化合物2.9g(64%)が得られる。
H NMR(DMSO−d、400MHz):10.21(s、1H)、9.00(s、1H)、8.22(d、1H)、6.31(d、1H)、6.08(t、1H)、4.26−4.17(m、1H)、3.95−3.91(m、1H)、3.81(d、1H)、3.66(dd、1H)。
【実施例12】
【0110】
2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン塩酸塩の合成
1−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−3−ベンゾイル−5−(2−ナフトイル)−D−リボフラノシル−4−(1−アセチル)アミノピリミジン−2−オンの代わりに、実施例8で得られる1−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−3−(2−ナフトイル)−5−ベンゾイル−D−リボフラノシル−4−(1−アセチル)アミノピリミジン−2−オンを使用する以外は実施例11と同様の方法で、白色の固体化合物3.0g(66%)が得られる。
H NMR(DMSO−d、400MHz):10.08(s、1H)、8.93(s、1H)、8.17(d、1H)、6.39(d、1H)、6.08(t、1H)、4.24−4.18(m、1H)、3.93−3.90(m、1H)、3.81(d、1H)、3.65(dd、1H)。
【産業上の利用可能性】
【0111】
上記より明らかなように、本発明は非小細胞肺癌、膵臟癌、膀胱癌、乳癌及び卵巣癌を含む多種の癌腫を治療するための抗癌剤として広く使用される、ゲムシタビンを製造する方法を提供する。この方法によれば、光学的に純粋なアミンとの反応によって、光学的に純粋なD−エリスロ−2,2−ジフルオロ−2−デオキシ−1−オキソリボース化合物を製造できる。更に、3位と5位のヒドロキシル基にそれぞれ独立して保護基を導入した中間体の開発を経た本願発明の製造方法を用いて、ゲムシタビンを高純度及び高収率で製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 式IXの3-ヒドロキシプロピオン酸エチルエステルを光学的に純粋な (S)−フェニルエタンアミン、(S)−1−(4−メチルフェニル)エタンアミン、(S)−1−フェニル−1−プロパンアミン、(S)−1−(4−メトキシフェニル)エタンアミン及び(S)−1−(4−クロロフェニル)エタンアミンより選ばれるアミンと反応させて、光学的に純粋な式VIIIの3R−ヒドロキシプロパンアミドを製造すること;
(2) 式VIIIの化合物のヒドロキシル基を保護して式VIIの化合物を製造すること;
(3) 式VIIの化合物を加水分解して式VIのD−エリスロ−1−オキソリボースを製造すること;
(4) 式VIのD−エリスロ−1−オキソリボースの5−ヒドロキシル基を保護して式VのD−エリスロ−1−オキソリボースを製造すること;
(5) 式VのD−エリスロ−1−オキソリボースを還元して式IVのラクトールを製造すること;
(6) 式IVのラクトールをトリエチルアミン、ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させて式IIIのD−エリスロ−1−メタンスルホニルオキシリボフラノースを製造すること;
(7) 式IIIのD−エリスロ−1−メタンスルホニルオキシリボフラノースと核酸塩基を、トルエン、1,2−ジクロロエタン、アニソールまたはキシレンのような有機溶媒と混合しつつ、グリコシル化して式IIのヌクレオシドを得ること;及び
(8) 式IIのヌクレオシドを強塩基または強酸で脱保護すること:
を含む、R−及びS−エナンチオマーの混合物である3−ヒドロキシプロピオン酸エチルエステル化合物を光学活性なアミンで光学分割して製造した、光学的に純粋な中間体から式Iで表される2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン及びその塩を製造する方法。
【化023】

【化024】

式中の、RとRは保護基であって、Rが1−ナフトイルまたは2−ナフトイルのときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイルまたは4−t−ブチルベンゾイルであり、そしてRが1−ナフトイルまたは2−ナフトイルのときは、Rはベンゾイル、4−メチルベンゾイル、3−メチルベンゾイル、4−シアノベンゾイル、3−シアノベンゾイル、4−プロピルベンゾイル、2−エトキシベンゾイル、または4−t−ブチルベンゾイルであり、R、R及びRはそれぞれ独立して、C−Cアルキルであり、Rはメチルまたはエチルであり、Rは水素、メチルまたはメトキシであり、Rはエチルであり、そしてP'はアセチルまたは水素である。
【請求項2】
工程(1)のアミンが、(S)−フェニルエタンアミン、(S)−1−(4−メチルフェニル)エタンアミン及び(S)−1−フェニル−1−プロパンアミンから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式V:
【化025】

(式中の、Rはベンゾイルであり、Rは2−ナフトイルであり;そしてRが2−ナフトイルであるときは、Rはベンゾイルである):
で表される化合物。
【請求項4】
下記式II :
【化026】

(式中の、Rはベンゾイルであり、Rは2−ナフトイルであり;そしてRが2-ナフトイルであるときは、Rはベンゾイルであり;そしてP'はアセチル基または水素である):
で表される化合物。
【請求項5】
下記式VIII:
【化027】

(式中の、R及びRはそれぞれ独立して、C〜Cアルキルであり、Rはメチルまたはエチルであり、そしてRは水素、メチルまたはメトキシである):
で表される化合物。

【公表番号】特表2010−522158(P2010−522158A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554448(P2009−554448)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001566
【国際公開番号】WO2008/117955
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508273120)ドンウ シンテック カンパニー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】