説明

2つのトンネル間の地盤中に桁部材を設置する方法

【課題】2つのトンネル間への桁部材の設置を容易にすること。
【解決手段】地盤中の2つのトンネル間に桁部材(16)を設置する方法であって、一方のトンネルの壁面の開口(18)から他方のトンネルの開口(20)へ向けて伸びる管部材(22)を設置し、他方のトンネル内に先細の端部を有する桁部材(16)を準備し、一方のトンネル内から、管部材を経て伸びるロッド(28)を介して、桁部材に引張力を及ぼすことによりその端部(26)を管部材内に引き込み、桁部材に引張力を及ぼす間に、桁部材の端部の周囲地盤と管部材の端部の周囲地盤とを掘削し、かつ管部材に前記一方のトンネルに向けて引張力を及ぼし、その後、管部材と桁部材の端部とを一方のトンネル内に引き入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのトンネルの相互接続のために行われる両トンネル間の地盤の掘削に先立って両トンネル間に設置される上部山止め支保工(ルーフ)を構築するための桁部材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルのような2つのトンネル間に配置されかつこれらに支持される桁部材を設置するため、一方のトンネルの壁面に設けられた開口から地盤中に桁部材を圧入し、これを他方のトンネルの壁面に設けられた開口に到達させる方法が採用されている(後記非特許文献1参照)。
【0003】
この方法においては、前記桁部材の圧入に先立ち前記他方のトンネルの開口の設置場所を定めるについて行われる測量における誤差、前記桁部材の圧入作業における誤差等のため、前記桁部材の端部が前記他方のトンネルの開口に到達せず、前記桁部材の設置が容易でないという問題があった。
【非特許文献1】刊行物「トンネルと地下」((株)土木工学社 平成7年5月1日発行)第388〜390頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、2つのトンネル間への桁部材の設置を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、地盤中の2つのトンネル間に配置されかつこれらに支持される桁部材を設置する方法に係り、一方のトンネルの壁面に設けられた開口から他方のトンネルの壁面に設けられた開口へ向けて伸びる管部材を前記地盤中に設置すること、前記管部材の設置に先立ち又はその後に、前記他方のトンネル内に先細の端部を有する桁部材を準備すること、前記一方のトンネル内から、前記管部材を経て伸びるロッドを介して、前記桁部材に引張力を及ぼすことにより前記桁部材の端部の少なくとも一部分を前記管部材の端部内に引き込むこと、前記桁部材に引張力を及ぼす間に、前記桁部材の端部の周囲地盤と前記管部材の端部の周囲地盤とを掘削し、かつ前記管部材に前記一方のトンネルに向けて引張力を及ぼすこと、その後、前記管部材と前記桁部材の端部とを前記一方のトンネル内に引き入れることを含む。
【0006】
前記地盤中への管部材の設置は、例えば前記一方のトンネルから前記他方のトンネルに向けて地盤を掘削した孔に前記管部材を圧入することにより行う。前記桁部材の端部の表面は、偏心した円錐面上にあるものとすることができる。
【0007】
前記桁の端部の周囲地盤の掘削及び前記管部材の端部の周囲地盤の掘削は、例えばこれらにそれぞれ設けられたノズルからのウオータジェットの噴射により行う。前記桁部材、管部材及び前記ロッドは、これらが直線状に伸びるもののほか、上に凸状に湾曲して伸びるものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地盤中に設置され一方のトンネルの壁面開口から他方のトンネルの壁面開口へ伸びる管部材の端面と前記他方のトンネルの壁面開口とが少なくとも部分的に重複していれば、桁部材の端部が先細とされていることから、前記桁部材の端部の尖端を前記他方のトンネル内からその開口を通して前記管部材の端部内に挿入することができる。この挿入をより広範囲で行うことができるようにするため、前記桁部材の端部の表面が偏心した錐面、特に円錐面上にあるようにすることが有利である。
【0009】
前記管部材の端部内への前記桁部材の端部の挿入は、前記一方のトンネル内からロッドを介して前記桁部材に引張力を及ぼしその端部を前記管部材内に引き込むことにより行う。
【0010】
前記桁部材の端部の周囲地盤及び前記管部材の端部の周囲地盤を掘削し、かつ前記管部材に前記一方のトンネルに向けて引張力を及ぼすと、掘削により生じた空間内での前記桁部材の変位が可能となる。これを前記桁部材に前記引張力を及ぼすと共に前記管部材を前記一方のトンネルに向けて引っ張ると、前記管部材の端部に対する前記桁部材の先細の端部の係合による調芯作用により、前記桁部材が前記管部材の軸線の延長上又はほぼ該延長上に位置するように徐々に修正される。前記桁部材の位置の修正はその端部が前記一方のトンネルに近接するときまでにほぼ完了し、このため、前記桁部材の端部を前記一方のトンネルの開口を通して引き入れることができ、これにより、前記桁部材を両トンネルに容易に支持することができる。
【0011】
前記地盤中への管部材の設置は、先に地盤を掘削して生じた孔に圧入することにより行うことができる。また、前記桁部材の端部の周囲地盤及び前記管部材の端部の周囲地盤のそれぞれの掘削は、前記管部材の端部及び前記桁部材のそれぞれに取り付けられたノズルからのウオータジェットの噴射により行うことができる。本発明は、直線状に伸びる桁部材又は上に凸状に湾曲して伸びる桁部材のいずれについてもその設置のために適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図4を参照すると、本発明に係る方法、すなわち地盤10中のシールドトンネルのような2つのトンネル12,14間に配置されかつこれらに支持される桁部材16を設置する方法が順を追って概略的に示されている。
【0013】
両トンネル12,14の側壁にはそれぞれ2つの開口18,20が設けられており、桁部材16の両端部がそれぞれこれらの開口18,20に通されるとき、桁部材16の設置が完了する(図4)。
【0014】
桁部材16の設置のため、先ず、一方のトンネルの開口18から他方のトンネルの開口20へ向けて伸びる円筒管のような管部材22を地盤10中に設置する(図2)。
【0015】
管部材22の設置は、例えば一方のトンネル12から他方のトンネル14に向けて地盤10を掘削し、これにより形成された孔(図示せず)に一方のトンネル12から管部材22を圧入することにより行う(図1及び図2)。
【0016】
この例にあっては、地盤10を掘削するためのボーリングマシン(図示せず)が管部材22の内部に配置され、前記ボーリングマシンのカッタが推進されかつ回転駆動され削孔を行う。前記ボーリングマシンはその駆動装置として一方のトンネル12内に設置された推進回転装置(図示せず)に接続されている。削孔により生じた土砂は管部材22を通して一方のトンネル12内に搬送される。
【0017】
管部材22は、前記ボーリングマシンによる削孔の間、例えば一方のトンネル12内に配置された液圧ジャッキ(図示せず)により、前記ボーリングマシンに追随して他方のトンネル14に向けて推進される。
【0018】
地盤10の硬軟の程度によっては、前記ボーリングマシンによる削孔を先行させることなしに、管部材22を単に地中に推進すること、すなわち地盤に圧入することとすることも可能である。
【0019】
管部材22は、その端面(先端面)が他方のトンネル14の側壁に到達するとき(当たったとき)、その推進を停止される。このとき、管部材22の他の端部は一方のトンネル12の開口18を通して該トンネル内にある。
【0020】
その後、到達側のトンネルである他方のトンネル14の開口20に対する管部材22の端面(先端面)の位置を確認するため、それまで閉じられていた開口20が開けられる。開口20は、トンネル14の覆工を構成する特定のセグメントを他のセグメントから取り外すことにより行われる。管部材22の端面は、通常、トンネルの開口20と正対することは少なく、図5に示すように、部分的に重複して対面することが多い。
【0021】
このようにして、管部材22の設置を完了した後、管部材22の端部24内に、他方のトンネル14内に準備した桁部材16の端部26の少なくとも一部分を、開口20を通して、引き込む。桁部材16の準備は管部材22の地盤10中への設置前又は設置後に行う。なお、桁部材16は管部材22内を挿通不能である断面形状又は大きさを有する。
【0022】
桁部材16は円筒管のような管や形鋼からなり、桁部材16には、その端部26が先細を呈するように、端部材(図示せず)が取り付けられ(前記管の場合)又は切削加工が施されている(前記形鋼の場合)。図示の桁部材16はH形鋼からなる。
【0023】
図示の例では、桁部材の端部26の表面すなわち切削加工面が、偏心した円錐面上にある。先細の端部26は、その先端が尖っているため、トンネル14の開口20に対して管部材22の端面が部分的に重複している場合にあっても、開口20を通して、端部26を管部材の端部24内に挿入することができる。
【0024】
図示の例では桁部材の端部26を、特に、偏心した円錐面すなわち該円錐面の軸線が桁部材16の軸線上になくこれと平行である円錐面としたことから、通常の円錐面(その軸線が桁部材の軸線に一致する円錐面)とする場合に異なり、錐面の傾斜角度がその周囲の各位置で変化する。このため、トンネルの開口20と管部材22の端面との重複部分がより小さい場合においても桁部材16の端部26が管部材22の端部24内に挿入し得る機会が多い。
【0025】
前記円錐面とする図示の例に代えて、これを角錐面(正角錐面、非正角錐面又は偏心した角錐面)とすることができる。
【0026】
管部材の端部24への桁部材の端部26の引き込みは、例えば鋼製のロッド28を介して、桁部材16に引張力を及ぼすことにより行う。
【0027】
ロッド28は、一方のトンネル12から管部材22を経て伸び、その先端が桁部材16の端部26の最先端に連結、固定されている。ロッド28は、例えば高張力のねじ節鋼からなるものとすることができる。前記ねじ節鋼は、一方のトンネル12内に設置されたセンターホールジャッキ(図示せず)を作動させそのナットの盛り替えを行うことにより引っ張ることができる。
【0028】
桁部材16への前記引張力の付与の間、管部材22に一方のトンネル12に向けて引張力を及ぼし、これにより移動させる。管部材22は一方のトンネル内に配置された例えばチェーンブロック(図示せず)を用いて引っ張ることができる。
【0029】
また、この間、管部材22の端部24の周囲地盤と桁部材16の端部26の周囲地盤とをそれぞれ掘削する(図6参照)。
【0030】
この掘削により前記周囲地盤に緩み又は隙間が生じ、このために管部材22と、これと共に一方のトンネル12へ向けて移動中の桁部材16とはそれぞれ前記隙間を変位することができる。桁部材16及び管部材22の変位に伴い、ロッド28による引張力を受けている桁部材16の端部26はさらに管部材22の端部24内に引き込まれる。このとき、桁部材16の端部26は、管部材22の端面の内周縁に擦り付けられているため、管部材22の端部24において調芯作用を受ける。
【0031】
その結果、管部材22の一方のトンネル12への移動に従って、桁部材16の位置又は姿勢は徐々に管部材22と直列の関係、すなわち真直ぐな関係となるように修正される。このとき、桁部材16の端部26のほぼ全部が、管部材22の端部24内に受け入れられる(図4及び図7参照)。
【0032】
前記周囲地盤の掘削は、例えば、図6に示すように、桁部材16の端部26に設けられたノズル30と、管部材22の端部24に設けられたノズル32とから互いに相対する方向に向けてウオータジェットを同時に噴出させることにより行うことができる。前記ウオータジェットの噴出は、桁部材16及び管部材22の地盤10中にこれらの変位が可能な領域が形成されるように、該領域の形成予定域に向けて行われる。
【0033】
ノズル30,32はそれぞれ配管(図示せず)を介して他方のトンネル14内及び一方のトンネル12内に設置された水供給装置に接続されている。また、ノズル30,32はそれぞれ桁部材16の端部26以外の部分の周囲及び管部材2の端部の周囲に1又は複数個を設けることができる。
【0034】
その後、一方のトンネル12に接近し、管部材22に対してほぼ直列状態とされた桁部材16の端部26と管部材22とを開口18を通して一方のトンネル12内に引き込む。このとき、桁部材16の他の端部は他方のトンネル14の開口20を通して該トンネル内にある。管部材22はその後桁部材16から分離される。
【0035】
このようにして、一方のトンネル12内に到達した桁部材16はその両端部において両トンネルの開口18,20に通され、両トンネル12,14に掛け渡された状態でこれらに支持される。多数の桁部材16が前記したようにして設置されると、これらの桁部材によってルーフ状の支保工が形成される。
【0036】
前記したところでは、直線状に伸びる管部材22及びロッド28を用いて行う真っ直ぐな桁部材16の設置について説明したが、本発明によれば、この例に代えて、図4でみて上に凸状に湾曲する例えば円弧状に伸びる(一例として6〜10メートルの半径を有する)管部材及びロッドを用いて、これらとほぼ同径の桁部材の設置を行うことができる。前記上に凸状に湾曲する桁部材の設置は、前記した真っ直ぐな桁部材16の設置におけると同一の方法を以て行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一方のトンネルから他方のトンネルに向けて地中に管部材を推進している状態を示す、概略的な工程図である。
【図2】他方のトンネルに到達した管部材の端部内に、他方のトンネルから桁部材の端部を挿入する直前の状態を示す、概略的な工程図である。
【図3】管部材及び桁部材の双方を一方のトンネルに向けて引っ張っている状態を示す、概略的な工程図である。
【図4】桁部材が一方のトンネル内に到達した状態を示す、概略的な工程図である。
【図5】図2の部分拡大図である。
【図6】図3の部分拡大図である。
【図7】図4の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
10 地盤
12,14 一方のトンネル及び他方のトンネル
16 桁部材
18,20 トンネルの側面に設けられた開口
22 管部材
24,26 管部材及び桁部材の端部
28 ロッド
30,32 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の2つのトンネル間に配置されかつこれらに支持される桁部材を設置する方法であって、
一方のトンネルの壁面に設けられた開口から他方のトンネルの壁面に設けられた開口へ向けて伸びる管部材を前記地盤中に設置すること、
前記管部材の設置に先立ち又はその後に、前記他方のトンネル内に先細の端部を有する桁部材を準備すること、
前記一方のトンネル内から、前記管部材を経て伸びるロッドを介して、前記桁部材に引張力を及ぼすことにより前記桁部材の端部の少なくとも一部分を前記管部材の端部内に引き込むこと、
前記桁部材に引張力を及ぼす間に、前記桁部材の端部の周囲地盤と前記管部材の端部の周囲地盤とを掘削し、かつ前記管部材に前記一方のトンネルに向けて引張力を及ぼすこと、
その後、前記管部材と前記桁部材の端部とを前記一方のトンネル内に引き入れることを含む、桁部材の設置方法。
【請求項2】
前記一方のトンネルから前記他方のトンネルに向けて地盤を掘削した孔に前記管部材を圧入することにより、前記地盤中に管部材を設置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記桁部材の端部の表面は、偏心した円錐面上にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記桁部材の端部に設けられたノズルからウオータジェットを噴出させることにより前記管部材の周囲地盤を掘削し、また前記管部材の端部に設けられたノズルからウオータジェットを噴出させることにより前記桁部材の端部の周囲地盤を掘削する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記桁部材、管部材及び前記ロッドは上に凸状に湾曲している、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−233587(P2006−233587A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49960(P2005−49960)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】