説明

2バルブエンジン

【課題】ノッキングの発生を十分に防止することができる2バルブエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン10は、シリンダヘッド12、シリンダボディ14およびクランクケース16を含む。クランクケース16には、オイルポンプ156が設けられる。シリンダヘッド12には、前後方向に配置される排気ポート30および吸気ポート32を有する燃焼室26が設けられる。シリンダヘッド12において排気ポート30および吸気ポート32よりも右側には、貫通孔37が形成される。貫通孔37には、点火プラグ38が取り付けられる。オイルポンプ156から送出された潤滑油は、油路134,136,138,142、空間140c,104a,86a、油路98、空間88aおよび貫通孔94を介して空洞部42に供給される。油路98は、燃焼室26よりも前方、燃焼室26よりも左側、および燃焼室26よりも後方を通るように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエンジンに関し、より特定的には、潤滑油を用いてシリンダヘッドを冷却する2バルブエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空冷エンジンにおいては、水冷エンジンに比べてシリンダヘッド(燃焼室)の温度管理が困難であるのでノッキングが発生しやすい。特に、2バルブエンジンでは、燃焼室においてその中心線上に点火プラグを設けることができないので、燃焼室内において混合気の火炎伝播距離に差が生じ、ノッキングがより発生しやすくなる。
【0003】
ノッキングの発生は、混合気の圧縮比を低下させたり、混合気の点火時期を遅角させたりすることによって防止できることが知られている。しかしながら、この場合、エンジンの出力および燃費が低下してしまう。エンジンンの出力低下および燃費の低下を防止しつつノッキングの発生を防止するためには、シリンダヘッドを効率よく冷却する必要がある。
【0004】
空冷エンジンにおいてシリンダヘッドを冷却する技術としては、従来、クランクケース内の潤滑油を用いてシリンダヘッドを冷却する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示されている内燃機関の冷却構造では、シリンダヘッドとシリンダボディとの合せ面に冷却用油路溝が形成されている。そして、その油路溝にクランクケース内のオイルポンプから潤滑油を供給することによって、シリンダヘッドを冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−321692号公報
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、本発明者による種々の検討の結果、2バルブエンジンにおいて特許文献1の冷却構造を採用しても、ノッキングの発生を十分に防止することができないことが分かった。具体的には、特許文献1の構造では、燃焼室内において点火プラグから大きく離れた領域(点火プラグの反対側の領域)の混合気および吸気ポートの近傍の混合気が高温になることを十分に防止できないので、ノッキングの発生を十分に防止できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ノッキングの発生を十分に防止することができる2バルブエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の2バルブエンジンは、前後方向における一方側に排気ポートを有しかつ前後方向における他方側に吸気ポートを有する燃焼室と、排気ポートに接続される排気通路と、吸気ポートに接続される吸気通路とを含むシリンダヘッドと、燃焼室において燃焼室の中心よりも左右方向における一方側に設けられる点火部と、その上面がシリンダヘッドの底面に接するようにシリンダヘッドの底面に接続されるシリンダボディと、シリンダボディの下端部に接続されるクランクケースと、クランクケース内に設けられ、クランクケース内の潤滑油を吸引および送出するオイルポンプとを備えた2バルブエンジンであって、クランクケースに設けられかつオイルポンプから送出される潤滑油をシリンダボディに導く第1通路と、第1通路に接続されるようにシリンダボディに設けられかつシリンダボディの上面まで延びる第2通路と、第2通路に接続されるようにシリンダボディの上面および/またはシリンダヘッドに設けられる第3通路とを有し、第3通路は、燃焼室よりも外側に設けられかつ少なくとも吸気通路の下方を通り、少なくとも燃焼室の中心よりも前後方向における一方側から燃焼室よりも左右方向における他方側および燃焼室よりも前後方向における他方側を通って燃焼室の中心よりも左右方向における一方側まで延びることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の2バルブエンジンは、請求項1に記載の2バルブエンジンにおいて、第3通路は、低速流通部および低速流通部よりも小さい断面積を有する高速流通部を含み、高速流通部は、燃焼室よりも左右方向における他方側および/または燃焼室よりも前後方向における他方側を通ることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の2バルブエンジンは、請求項2に記載の2バルブエンジンにおいて、高速流通部の幅は低速流通部の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の2バルブエンジンは、請求項2または3に記載の2バルブエンジンにおいて、高速流通部の高さは低速流通部の高さよりも低いことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の2バルブエンジンは、請求項1から4のいずれかに記載の2バルブエンジンにおいて、シリンダヘッドは、燃焼室よりも上方に設けられかつカム軸が配置されるカム室と、第3通路とカム室とを接続する第4通路とをさらに含み、第4通路は、第1通路、第2通路および第3通路の断面積よりも小さい面積を有する圧力調整部を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の2バルブエンジンでは、燃焼室は、前後方向における一方側に排気ポートを有しかつ前後方向における他方側に吸気ポートを有し、点火部は、燃焼室の中心よりも左右方向における一方側に設けられている。また、シリンダボディの上面および/またはシリンダヘッドには、燃焼室よりも外側を通りかつ少なくとも吸気通路の下方を通る第3通路が設けられている。より具体的には、第3通路は、燃焼室の中心よりも前後方向における一方側から燃焼室よりも左右方向における他方側および燃焼室よりも前後方向における他方側を通って燃焼室の中心よりも左右方向における一方側まで延びている。第3通路には、オイルポンプから送出される潤滑油が第1通路および第2通路を介して供給される。この場合、第3通路内を流通する潤滑油によって、シリンダヘッドにおいて燃焼室よりも左右方向における他方側の領域および燃焼室よりも前後方向における他方側の領域の熱を十分に吸収することができる。それにより、燃焼室内において点火部から大きく離れた領域(点火部の反対側の領域)の混合気および吸気ポートの近傍の混合気が高温になることを十分に防止できる。その結果、ノッキングの発生を十分に防止できる。
【0015】
請求項2に記載の2バルブエンジンでは、高速流通部内の潤滑油の流速を低速流通部内の潤滑油の流速よりも速くすることができるので、高速流通部内の潤滑油によってシリンダヘッドの熱を効率よく吸収することができる。ここで、高速流通部は燃焼室よりも左右方向における他方側および/または燃焼室よりも前後方向における他方側を通っているので、シリンダヘッドにおいて燃焼室よりも左右方向における他方側の領域および/または燃焼室よりも前後方向における他方側の領域の熱は、高速流通部を流通する潤滑油によって効率よく吸収される。それにより、燃焼室において点火部から大きく離れた領域(点火部の反対側の領域)の混合気および/または吸気ポートの近傍の混合気が高温になることをより十分に防止できる。その結果、ノッキングの発生をより十分に防止できる。
【0016】
請求項3に記載の2バルブエンジンでは、高速流通部の幅が低速流通部の幅よりも小さいので、高速流通部と低速流通部とで高さを変えることなく、高速流通部の断面積を低速流通部の断面積よりも小さくすることができる。したがって、高速流通部および低速流通部を容易に形成することができる。
【0017】
請求項4に記載の2バルブエンジンでは、高速流通部の高さが低速流通部の高さよりも低いので、高速流通部と低速流通部とで幅を変えることなく、高速流通部の断面積を低速流通部の断面積よりも小さくすることができる。したがって、高速流通部および低速流通部を容易に形成することができる。
【0018】
請求項5に記載の2バルブエンジンでは、第3通路を通過した潤滑油を第4通路を介してカム室に供給することができるので、シリンダヘッドの冷却に用いた潤滑油をカム軸の潤滑油として用いることができる。ここで、シリンダヘッドにおいて熱を吸収することによって潤滑油の温度が上昇するので、カム室に供給される潤滑油の粘度は低下している。それにより、カム軸において発生する摩擦抵抗を低減することができるので、カム軸を円滑に作動させることができる。また、第4通路は、第1通路、第2通路および第3通路の断面積よりも小さい面積を有する圧力調整部を含むので、第1通路から圧力調整部まで潤滑油を圧送することができる。この場合、第1通路と第4通路との間において潤滑油を円滑に流通させることができるので、シリンダヘッドおよび燃焼室内の混合気をさらに効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ノッキングの発生を十分に防止することができる2バルブエンジンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態のエンジンを示す図解図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】シリンダヘッドを示す底面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図1のD−D線端面図である。
【図6】シリンダヘッドの他の例を示す底面図である。
【図7】シリンダヘッドの他の例およびシリンダボディを示す断面図である。
【図8】シリンダヘッドのその他の例を示す底面図である。
【図9】シリンダヘッドのさらにその他の例を示す底面図である。
【図10】シリンダヘッドのさらにその他の例およびシリンダボディを示す断面図である。
【図11】シリンダボディの他の例およびシリンダヘッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、図1〜図11においては、矢印X,Y,Zで示すように、互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。X方向の矢印が向く方向を前方とし、その逆を後方とする。Y方向の矢印が向く方向を上方とし、その逆を下方とする。Z方向の矢印が向く方向を左方向とし、その逆を右方向とする。
【0022】
図1は、この発明の実施の形態のエンジン10を示す図解図である。エンジン10は、たとえば、空冷4サイクルの単気筒エンジンである。図1を参照して、エンジン10は、シリンダヘッド12、シリンダヘッド12の下端部に接続されるシリンダボディ14、およびシリンダボディ14の下端部に接続されるクランクケース16を含む。クランクケース16は、ケース本体18およびケース本体18の右側(図1において手前側)の端部に取り付けられるカバー部材20を含む。シリンダボディ14は、たとえば、アルミニウムからなる。エンジン10は、たとえば、自動二輪車(図示せず)に搭載される。
【0023】
図2は、図1のA−A線断面図であり、図3はシリンダヘッド12を示す底面図であり、図4は図2のB−B線断面図である。なお、図1においてハッチングが付されている部分は、図2のC−C線に対応する部分の断面である。また、図面が煩雑になることを避けるため、図2においてはクランクケース16の一部およびクランクケース16内の構成要素の一部を省略し、図4においてはクランクケース16およびクランクケース16内の構成要素を省略している。
【0024】
図2に示すように、シリンダヘッド12は、本体部22および本体部22の左側の端部に取り付けられるカバー部材24を含む。図2および図3を参照して、本体部22は、その下端部22aに燃焼室26を有する。燃焼室26は、本体部22の略中央部において、底面28から上方に向かって略半球状に凹むように形成されている。
【0025】
図3を参照して、燃焼室26は、排気ポート30および排気ポート30よりも後方に設けられる吸気ポート32を有する。図3および図4を参照して、本体部22において、排気ポート30から右前方かつ斜め上方に延びるように排気通路34が形成され、吸気ポート32から後方かつ斜め上方に延びるように吸気通路36が形成されている。
【0026】
図2および図3を参照して、本体部22において排気ポート30(図3参照)および吸気ポート32(図3参照)よりも右側には、燃焼室26から右斜め上方に延びる貫通孔37が形成されている。図2を参照して、貫通孔37には、点火プラグ38が差し込まれている。なお、点火プラグ38は、その先端部(点火部)38aが燃焼室26の中心線26aよりも右側に位置するように設けられている。
【0027】
図2および図4を参照して、本体部22において燃焼室26の上方には、前後方向に延びるように空洞部40が形成されている。図2を参照して、本体部22において空洞部40から右方向に延びるように空洞部42が形成されている。空洞部42は、XY平面において円形の断面を有する。シリンダヘッド12において空洞部40よりも左側には、本体部22とカバー部材24とによって空洞部44が形成されている。図2および図3を参照して、燃焼室26よりも左側には、上下方向に貫通しかつ空洞部44(図2参照)に連通する空洞部46が形成されている。
【0028】
図2を参照して、空洞部40と空洞部42とを区画するようにベアリング48が設けられ、空洞部40と空洞部44とを区画するようにベアリング50が設けられている。ベアリング48とベアリング50とによって回転可能に支持されるように、左右方向に延びる中空状のカム軸52が設けられている。図2および図4を参照して、カム軸52は、カム54,56を有する。図2を参照して、カム軸52は、その軸心に沿って延びる貫通孔52aおよび貫通孔52aから径方向に延びる貫通孔52b,52cを有する。貫通孔52b,52cは、それぞれカム54,56の外周面において開口している。カム軸52の一端部52dは、ベアリング48から空洞部42内に突出し、他端部52eは、ベアリング50から空洞部44内に突出している。カム軸52の他端部52eには、ドリブンスプロケット58が嵌められている。ドリブンスプロケット58は、ボルト60によってカム軸52に固定されている。ボルト60は、カム軸52の他端部52eにおいて貫通孔52aを塞いでいる。
【0029】
図4を参照して、本体部22においてカム軸52の前方斜め上方には、左右方向に延びるロッカーシャフト62が設けられ、カム軸52の後方斜め上方には、左右方向に延びるロッカーシャフト64が設けられている。ロッカーシャフト62にはロッカーアーム66が揺動可能に取り付けられ、ロッカーシャフト64にはロッカーアーム68が揺動可能に取り付けられている。
【0030】
ロッカーアーム66の後端部66aの下面はカム54の外周面に接触し、ロッカーアーム66の前端部66bには、後方斜め下方に延びる排気バルブ70の上端部がバルブクリアランス調整ネジ71を介して取り付けられている。ロッカーアーム68の前端部68aの下面はカム56の外周面に接触し、ロッカーアーム68の後端部68bには、前方斜め下方に延びる吸気バルブ72の上端部がバルブクリアランス調整ネジ73を介して取り付けられている。なお、図面が煩雑になることを避けるために、図2にはロッカーアーム66,68および吸気バルブ72は図示していない。
【0031】
図4を参照して、排気バルブ70と同軸状にコイルばね74が設けられ、吸気バルブ72と同軸状にコイルばね76が設けられている。コイルばね74は、排気バルブ70を前方斜め上方に向かって付勢し、コイルばね76は、吸気バルブ72を後方斜め上方に向かって付勢している。
【0032】
本体部22において排気バルブ70の前方斜め上方には開口78が形成され、吸気バルブ72の後方斜め上方には開口80が形成されている。開口78を塞ぐようにキャップ82が取り付けられ、開口80を塞ぐようにキャップ84が取り付けられている。キャップ82,84は、作業者が排気バルブ70および吸気バルブ72のバルブクリアランス調整をする際に取り外される。
【0033】
図5は、図1のD−D線端面図である。なお、図面が煩雑になることを避けるために、図5においてはシリンダヘッド12の本体部22のみを図示している。図1、図3および図5を参照して、本体部22において燃焼室26(図3参照)の右斜め前方には、上下方向に貫通する貫通孔86が形成され、燃焼室26(図3参照)の右斜め後方には、上下方向に貫通する貫通孔88が形成されている。同様に、図3および図5を参照して、本体部22において燃焼室26(図3参照)の左斜め前方には、上下方向に貫通する貫通孔90が形成され、燃焼室26(図3参照)の左斜め後方には、上下方向に貫通する貫通孔92が形成されている。
【0034】
図1および図5を参照して、本体部22は、空洞部42から後方に向かって延びかつ貫通孔88と交差する貫通孔94を有する。これにより、空洞部42と貫通孔94とが接続されている。図1を参照して、貫通孔94の後端部は、ボルト96によって塞がれている。
【0035】
図3および図4を参照して、本体部22は、その下端部22aにおいて、底面28から上方に向かって凹みかつ貫通孔86(図3参照)と貫通孔88(図3参照)とを接続する油路98を有する。図3を参照して、油路98は、下方から見た場合に略U字形状を有する。具体的には、油路98は、貫通孔86の下端部から燃焼室26よりも前方、燃焼室26よりも左側(燃焼室26と空洞部46との間)、および燃焼室26よりも後方を通って貫通孔88の下端部まで延びるように形成されている。油路98は、たとえば、鋳造によって成型されている。
【0036】
図2および図4を参照して、シリンダヘッド12の底面28とシリンダボディ14の上面99とは互いにガスケット(図示せず)を介して密着するように接続されている。シリンダボディ14は、燃焼室26に接続されかつ上下方向に貫通する略円柱形状の空洞部100を有する。図2を参照して、シリンダボディ14において空洞部100よりも左側には、空洞部46に接続されかつ上下方向に貫通する空洞部102が形成されている。図1を参照して、シリンダボディ14において空洞部100(図2参照)の右斜め前方には、貫通孔86に接続されかつ上下方向に貫通する貫通孔104が形成され、空洞部100(図2参照)の右斜め後方には、貫通孔88に接続されかつ上下方向に貫通する貫通孔106が形成されている。
【0037】
図2および図4を参照して、シリンダボディ14の空洞部100には、ピストン108が上下方向に摺動可能に設けられている。ピストン108は、円筒状のピストンピン110を介してコンロッド112の上端部に連結されている。
【0038】
図2を参照して、コンロッド112の下端部は、円柱状のクランクピン114を介して左右方向に延びるクランクシャフト116に連結されている。クランクシャフト116は、クランクケース16内において一対のベアリング118a,118bによって回転可能に支持されている。クランクシャフト116においてベアリング118aよりも左側には、ドライブスプロケット120が固定されている。クランクケース16のケース本体18においてドライブスプロケット120の上方には、開口122が形成されている。シリンダヘッド12の空洞部44および空洞部46、シリンダボディ14の空洞部102、ならびにケース本体18の開口122を通るように、ドライブスプロケット120およびドリブンスプロケット58にタイミングチェーン124が架け渡されている。これにより、クランクシャフト116の回転力が、ドライブスプロケット120、タイミングチェーン124およびドリブンスプロケット58を介してカム軸52に伝達され、排気バルブ70(図4参照)および吸気バルブ72(図4参照)が作動される。
【0039】
図1を参照して、クランクケース16内においてクランクシャフト116の後方斜め下方には、変速機126が設けられている。変速機126は、メインシャフト128およびメインシャフト128の後方斜め下方に設けられるドライブシャフト130を有する。メインシャフト128は、図示しないクラッチを介してクランクシャフト116に接続されている。
【0040】
ケース本体18の底部18aの前端部には、内部空間132aを有するストレーナ部132が設けられている。ストレーナ部132の後端部には、後方斜め下方に向かって開口するオイル流入口132bが形成されている。ストレーナ部132の天井部132cは、後方斜め上方に向かって突出する円筒状の突出部132dを有する。突出部132dは、ストレーナ部132の内部空間132aに連通する貫通孔132eを有する。ストレーナ部132内には、潤滑油を濾過するための濾過シート132fが設けられている。
【0041】
ケース本体18の内周縁において、右側(図1において手前側)の端部には油路134が形成されている。具体的には、油路134は、クランクシャフト116の前方斜め下方からクランクシャフト116の前方および上方を通って変速機126の上方まで延びるように形成されている。油路134は、その前端部(下端部)において左方向(図1において奥方向)に向かって開口する円形のオイル流入口134aを有する。
【0042】
ケース本体18においてクランクシャフト116の上方には、油路134に接続されかつ左方向(図1において奥方向)に延びる断面円形の油路136が形成されている。ケース本体18において油路136の左側(図1において奥側)の端部に接続されかつ上方に延びるように、断面円形の油路138が形成されている。
【0043】
ケース本体18において油路138よりも前方には、貫通孔104に接続されかつケース本体18の上端から下方に延びる断面略円形の空洞部140が形成されている。空洞部140は、その上端部に設けられる大径部140aおよび大径部140aよりも小さい直径を有しかつ大径部140aから下方に延びるねじ穴部140bを含む。ケース本体18において、油路138と大径部140aとを接続するように油路142が形成されている。ケース本体18において油路138よりも後方には、貫通孔106に接続されかつケース本体18の上端から下方に延びるねじ穴143が形成されている。
【0044】
ケース本体18においてメインシャフト128よりも左側(図1において奥側)には、後方斜め上方に向かって延びる略円柱状の空洞部144が形成されている。空洞部144には、クラッチロッド146が回転可能に設けられている。クラッチロッド146の上端部は、ケース本体18から後方斜め上方に向かって突出している。クラッチロッド146の上端部には、連結部材148を介して図示しないクラッチワイヤが接続されている。
【0045】
ケース本体18において空洞部144の後方斜め下方には、空洞部144に対して略平行に延びる略円柱状の空洞部150が形成されている。空洞部150の下端部は、ドライブシャフト130の上方まで延び、ドライブシャフト130の上方において開口している。
【0046】
ケース本体18において、油路134の後端部と空洞部144の上端部とを接続するように左右方向に延びる油路152が形成されている。また、ケース本体18において、油路152と空洞部150の上端部とを接続するように油路154が形成されている。
【0047】
ケース本体18内においてクランクシャフト116よりも下方には、オイルポンプ156が設けられている。オイルポンプ156は、ポンプ本体158、ドリブンギア160およびポンプ本体158とドリブンギア160とを接続する軸部162を有する。ドリブンギア160は、クランクシャフト116に取り付けられたドライブギア164と噛み合っている。なお、図面が煩雑になることを避けるために、図2においてはドライブギア164を図示していない。軸部162は、ケース本体18に回転可能に支持されている。エンジン10においては、クランクシャフト116の回転力が、ドライブギア164、ドリブンギア160および軸部162を介してポンプ本体158に伝達される。それにより、ポンプ本体158が駆動される。
【0048】
ポンプ本体158は、オイル吸入口158aおよびオイル吐出口158bを有する。オイル吸入口158aは、チューブ166を介してストレーナ部132の突出部132d(貫通孔132e)に接続され、オイル吐出口158bは、チューブ168を介して油路134のオイル流入口134aに接続されている。
【0049】
シリンダヘッド12の貫通孔86、シリンダボディ14の貫通孔104およびクランクケース16の空洞部140には、シリンダヘッド12、シリンダボディ14およびクランクケース16を互いに固定するためのボルト170が差し込まれている。ボルト170は、頭部170a、頭部170aから下方に延びる第1軸部170b、および第1軸部170bから下方に延びかつ第1軸部170bよりも小さい直径を有する第2軸部170cを有する。貫通孔86の上端部は、ボルト170の頭部170aおよび第1軸部170bによって塞がれている。第2軸部170cの下端部は、ねじ穴部140bに螺合されている。第2軸部170cの直径は、貫通孔86、貫通孔104および大径部140aの直径よりも小さい。
【0050】
同様に、シリンダヘッド12の貫通孔88、シリンダボディ14の貫通孔106およびクランクケース16のねじ穴143には、シリンダヘッド12、シリンダボディ14およびクランクケース16を互いに固定するためのボルト172が差し込まれている。ボルト172は、頭部172a、頭部172aから下方に延びる第1軸部172b、および第1軸部172bから下方に延びかつ第1軸部172bよりも小さい直径を有する第2軸部172cを有する。貫通孔88の上端部は、ボルト172の頭部172aおよび第1軸部172bによって塞がれている。第2軸部172cの下端部は、ねじ穴143に螺合されている。第2軸部172cの直径は、貫通孔88および貫通孔106の直径よりも小さい。
【0051】
貫通孔86の内壁面と第2軸部170cの外周面との間には筒状の空間86aが形成され、貫通孔104の内壁面と第2軸部170cの外周面との間には筒状の空間104aが形成され、大径部140aの内壁面と第2軸部170cの外周面との間には筒状の空間140cが形成されている。同様に、貫通孔88の内壁面と第2軸部172cの外周面との間には筒状の空間88aが形成され、貫通孔106の内壁面と第2軸部172cの外周面との間には筒状の空間106aが形成されている。
【0052】
なお、図示していないが、シリンダボディ14において空洞部100(図2参照)の左側(図1において奥側)には、貫通孔104,106と同様に、貫通孔90,92(図3参照)に対応する2つの貫通孔が形成されている。また、図示していないが、クランクケース16のケース本体18には、貫通孔90,92(図3参照)に対応する2つのねじ穴が形成されている。そして、シリンダヘッド12の貫通孔90(図3参照)、貫通孔90(図3参照)に対応するシリンダボディ14の貫通孔(図示せず)、および貫通孔90(図3参照)に対応するケース本体18のねじ穴(図示せず)には、シリンダヘッド12、シリンダボディ14およびクランクケース16を互いに固定するためのボルト(図示せず)が差し込まれている。同様に、シリンダヘッド12の貫通孔92(図3参照)、貫通孔92(図3参照)に対応するシリンダボディ14の貫通孔(図示せず)、および貫通孔92(図3参照)に対応するケース本体18のねじ穴(図示せず)には、シリンダヘッド12、シリンダボディ14およびクランクケース16を互いに固定するためのボルト(図示せず)が差し込まれている。
【0053】
図2を参照して、エンジン10においては、図示しない燃料供給装置によって燃焼室26に燃料が供給され、混合気が生成される。燃焼室26内の混合気は、点火プラグ38によって着火され、燃焼する。それにより、コンロッド112(ピストン108)が上下動し、クランクシャフト116が回転する。上述したように、クランクシャフト116の回転力は、タイミングチェーン124を介してカム軸52に伝達される。それにより、排気バルブ70(図4参照)および吸気バルブ72(図4参照)が作動され、燃焼室26の排気および吸気が行われる。
【0054】
また、図1を参照して、クランクシャフト116が回転することによってオイルポンプ156が駆動される。それにより、ケース本体18の底部18aに貯留されている潤滑油が、ポンプ本体158によってストレーナ部132およびチューブ166を介して吸引されるとともに、チューブ168およびオイル流入口134aを介して油路134へ送出される。油路134に送出された潤滑油は、油路136および油路152に流入する。
【0055】
油路152に流入した潤滑油の一部は空洞部144に流入し、他の潤滑油は油路154を介して空洞部150に流入する。空洞部144に流入した潤滑油はメインシャフト128に供給され、その後、底部18aに落下する。同様に、空洞部150に流入した潤滑油はドライブシャフト130に供給され、その後、底部18aに落下する。メインシャフト128およびドライブシャフト130から底部18aに落下した潤滑油は、オイルポンプ156によって再び油路134へ送出される。
【0056】
油路134から油路136に流入した潤滑油は、油路138,142を介して空間140cに流入する。空間140cに流入した潤滑油は、空間104a、油路98(図3参照)、空間88aおよび貫通孔94を介して空洞部42に流入する。このとき、空間104a、油路98(図3参照)、空間88aおよび貫通孔94を流通する潤滑油によってシリンダヘッド12の熱が吸収され、シリンダヘッド12が冷却される。
【0057】
図2を参照して、空洞部42に流入した潤滑油は、カム軸52の一端部52dから貫通孔52aに流入する。貫通孔52aに流入した潤滑油は、貫通孔52b,52cを介してカム54,56の外周面に流出し、その後、空洞部40内に落下する。空洞部40内に落下した潤滑油は、ベアリング50を通過してドリブンスプロケット58およびタイミングチェーン124に供給される。これにより、潤滑油が再びクランクケース16に戻される。
【0058】
なお、図1を参照して、貫通孔94の空洞部42側の開口端94a(図5参照)の面積および貫通孔94の断面積は、オイル流入口134aの面積、油路134の断面積、油路136の断面積、油路138の断面積、油路142の断面積、空間140cの断面積、空間104aの断面積、空間86aの断面積、油路98の断面積および空間88aの断面積よりも小さい。これにより、油路134のオイル流入口134aから貫通孔94の開口端94aまで潤滑油を圧送することができる。
【0059】
エンジン10においては、油路134,136,138,142および空間140cが第1通路に含まれ、空間104aが第2通路に含まれ、油路98が第3通路に含まれ、空洞部40,42がカム室に含まれ、空間88aおよび貫通孔94が第4通路に含まれ、貫通孔94および/または開口端94aが圧力調整部として機能する。
【0060】
以下、エンジン10の作用効果を説明する。
図2を参照して、エンジン10においては、点火プラグ38(点火部38a)が燃焼室26の中心線26aよりも右側に位置するように設けられている。また、図3を参照して、シリンダヘッド12は、その底面28において燃焼室26よりも外側を通る油路98を有する。より具体的には、油路98は、貫通孔86から燃焼室26よりも前方、燃焼室26よりも左側、および燃焼室26よりも後方を通って貫通孔88まで延びるように形成されている。この場合、油路98内を流通する潤滑油によって、シリンダヘッド12において燃焼室26よりも左側の領域A1(図3参照)および燃焼室26よりも後方の領域A2(図3参照)の熱を十分に吸収することができる。それにより、燃焼室26内において点火プラグ38(図2参照)の点火部38a(図2参照)から大きく離れた領域26b(点火部38aの反対側の領域)の混合気および吸気ポート32の近傍の混合気が高温になることを十分に防止できる。その結果、ノッキングの発生を十分に防止できる。
【0061】
また、図1を参照して、エンジン10においては、油路134のオイル流入口134aから貫通孔94の開口端94aまで潤滑油が圧送されている。この場合、油路98内において潤滑油を円滑に流通させることができるので、シリンダヘッド12および燃焼室26内の混合気をさらに効率よく冷却することができる。
【0062】
また、エンジン10においては、油路98を通過した潤滑油を空間88a、貫通孔94および空洞部42を介してカム軸52に供給することができるので、シリンダヘッド12の冷却に用いた潤滑油をカム軸52の潤滑油として用いることができる。ここで、シリンダヘッド12において熱を吸収することによって潤滑油の温度が上昇するので、カム軸52に供給される潤滑油の粘度は低下している。それにより、カム軸52とロッカーアーム66,68(図4参照)との摩擦抵抗を十分に低減することができるので、カム軸52およびロッカーアーム66,68(図4参照)を円滑に作動させることができる。
【0063】
なお、オイルポンプ156によって送出された潤滑油を図示しない油路を介してシリンダボディ14の空洞部100(図2参照)およびピストン108(図2参照)に供給してもよい。エンジン10においては、潤滑油は、上述したようにシリンダヘッド12において熱を吸収するとともに、カム軸52においても熱を吸収する。そのため、カム軸52からクランクケース16内に戻った潤滑油の粘度は十分に低下している。したがって、その粘度が低下した潤滑油を、シリンダボディ14の空洞部100およびピストン108に供給することによって、シリンダボディ14とピストン108との間の摩擦抵抗を低減することができる。その結果、エンジン100の出力を向上させることができる。
【0064】
上述の実施形態では、シリンダヘッド12の底面28(図2参照)において貫通孔86から貫通孔88に向かって潤滑油が流通しているが、貫通孔88から貫通孔86に向かって潤滑油を流通させてもよい。この場合、油路136,138,142の代わりに、貫通孔106と油路134とを接続する油路(図示せず)をクランクケースに設け、貫通孔94の代わりに、貫通孔86と空洞部42とを接続する貫通孔(図示せず)をシリンダヘッドに設ければよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、シリンダヘッド12の底面28において貫通孔86から貫通孔88まで延びるように略U字形状の油路98が形成されているが、シリンダヘッドの底面に形成される油路は上述の例に限定されない。具体的には、燃焼室26の中心線26aよりも前方から燃焼室26よりも左側および燃焼室26よりも後方を通って中心線26aよりも右側まで延びていれば、油路が他の形状を有していてもよい。
【0066】
たとえば、図6および図7に示すように、シリンダヘッド12aの底面28aに、低速流通部174および高速流通部176を含む油路98aが形成されてもよい。低速流通部174の幅W1(図6参照)は高速流通部176の幅W2(図6参照)よりも大きく、低速流通部174の高さH1(図7参照)は高速流通部176の高さH2(図7参照)よりも高い。したがって、高速流通部176の断面積は、低速流通部174の断面積よりも小さい。この場合、高速流通部176内の潤滑油の流速を低速流通部174内の潤滑油の流速よりも速くすることができるので、高速流通部176内の潤滑油によってシリンダヘッド12aの熱を効率よく吸収することができる。ここで、高速流通部176は燃焼室26よりも左側および燃焼室26よりも後方を通っているので、シリンダヘッド12aにおいて燃焼室26よりも左側の領域A3(図6参照)および燃焼室26よりも後方の領域A4(図6参照)の熱は、高速流通部176を流通する潤滑油によって効率よく吸収される。それにより、燃焼室26において点火プラグ38から大きく離れた領域26bの混合気および吸気ポート32の近傍の混合気が高温になることをより十分に防止できる。その結果、ノッキングの発生をより十分に防止できる。この実施形態では、油路98aが第3通路に含まれる。なお、低速流通部および高速流通部の形状は図6および図7に示した形状に限定されず、高速流通部の断面積が低速流通部の断面積よりも小さくなればよい。たとえば、低速流通部の幅が高速流通部の幅よりも広い場合には、低速流通部の高さと高速流通部の高さとが等しくてもよい。また、低速流通部の高さが高速流通部の高さよりも高い場合には、低速流通部の幅と高速流通部の幅とが等しくてもよい。なお、燃焼室26よりも左側の高速流通部と燃焼室26よりも後方の高速流通部との間に低速流通部が形成されてもよく、燃焼室26よりも左側および燃焼室26よりも後方のうちのいずれか一方のみに高速流通部が形成されてもよい。
【0067】
また、たとえば、図8に示すように、下方から見た場合に略L字形状を有し、貫通孔90から貫通孔88に向かって延びる油路98bがシリンダヘッド12bの底面28bに形成されてもよい。なお、この場合、クランクケースには、油路134(図1参照)と貫通孔90とを接続する油路(図示せず)が設けられる。この実施形態では、油路98bが第3通路に含まれる。
【0068】
また、上述の実施形態では、シリンダヘッドの底面に油路が形成されているが、シリンダヘッドの底面以外の部分に油路が形成されてもよい。
【0069】
たとえば、図9および図10に示すように、シリンダヘッド12cにおいて、底面28cよりも上方でかつ排気通路34および吸気通路36の下方を通るように油路98cが形成されてもよい。なお、図9に示すように、油路98cは、貫通孔90から右方向に延びるように貫通しかつ貫通孔86と交差する貫通路178、貫通孔90から後方に延びるように貫通しかつ貫通孔92と交差する貫通路180、および貫通孔92から右方向に延びるように貫通しかつ貫通孔88と交差する貫通路182を含む。貫通路178、貫通路180および貫通路182は、たとえば機械加工によって形成される。貫通路178の右端部、貫通路180の後端部および貫通路182の右端部には、オイル漏れを防止するためのボルト(図示せず)が取り付けられている。
【0070】
シリンダヘッド12cでは、油路98cを底面28cよりも上方でかつ排気通路34および吸気通路36の下方を通るように形成することによって、燃焼室26と油路98cとを空間的に完全に分離させている。この場合、油路98c内の潤滑油が底面28cとシリンダボディ14の上面99との間を通って燃焼室26または空洞部100へ流出することがないので、油路98cを燃焼室26により近い位置に形成することができる。それにより、燃焼室26内の混合気の熱を潤滑油によってより効率よく吸収することができる。この実施形態では、油路98cが第3通路に含まれる。
【0071】
また、たとえば、図11に示すように、シリンダボディ14aが、その上面99aに油路98dを有していてもよい。油路98dは、油路98に対向しかつ貫通孔104(図1参照)と貫通孔106(図1参照)とを接続するように形成されている。この実施形態では、油路98,98dが第3通路に含まれる。なお、シリンダボディの上面に、油路98a、油路98bまたは油路98cと同様の形状の油路が形成されてもよい。また、シリンダボディの上面に油路が形成される場合には、シリンダヘッドの底面に油路が形成されてなくてもよい。この場合、シリンダボディの上面に形成された油路内の潤滑油は、シリンダヘッドの底面に接触しつつ流通する。それにより、シリンダヘッドの熱が潤滑油によって吸収されるので、シリンダヘッドを十分に冷却することができる。その結果、ノッキングの発生を十分に防止できる。
【0072】
また、上述の実施形態では、点火プラグ38(図2参照)が燃焼室26(図2参照)の中心線26a(図2参照)よりも右側に配置されかつタイミングチェーン124(図2参照)が中心線26a(図2参照)よりも左側に配置されるようにエンジンの各部が構成されているが、点火プラグが燃焼室の中心線よりも左側に配置されかつタイミングチェーンが燃焼室の中心線よりも右側に配置されるようにエンジンの各部が構成されてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、吸気ポート32および吸気通路36が排気ポート30および排気通路34よりも後方に設けられているが、吸気ポートおよび吸気通路が排気ポートおよび排気通路よりも前方に設けられてもよい。たとえば、吸気ポートおよび吸気通路が燃焼室の中心線よりも前方に設けられ、排気ポートおよび排気通路が燃焼室の中心線よりも後方に設けられてもよい。
【0074】
なお、潤滑油を送出するためのオイルポンプは上述のオイルポンプ156に限定されず、ギア式またはトロコイド式等の種々のオイルポンプを用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 エンジン
12,12a,12b,12c シリンダヘッド
14,14a シリンダボディ
16 クランクケース
18 ケース本体
20 カバー部材
22 本体部
24 カバー部材
26 燃焼室
28,28a,28b,28c 底面
30 排気ポート
32 吸気ポート
34 排気通路
36 吸気通路
38 点火プラグ
40,42,44,46 空洞部
52 カム軸
70 排気バルブ
72 吸気バルブ
98a〜98d,134,136,138,142 油路
99,99a 上面
116 クランクシャフト
126 変速機
156 オイルポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向における一方側に排気ポートを有しかつ前記前後方向における他方側に吸気ポートを有する燃焼室と、前記排気ポートに接続される排気通路と、前記吸気ポートに接続される吸気通路とを含むシリンダヘッドと、
前記燃焼室において前記燃焼室の中心よりも左右方向における一方側に設けられる点火部と、
その上面が前記シリンダヘッドの底面に接するように前記シリンダヘッドの前記底面に接続されるシリンダボディと、
前記シリンダボディの下端部に接続されるクランクケースと、
前記クランクケース内に設けられ、前記クランクケース内の潤滑油を吸引および送出するオイルポンプとを備えた2バルブエンジンであって、
前記クランクケースに設けられかつ前記オイルポンプから送出される潤滑油を前記シリンダボディに導く第1通路と、
前記第1通路に接続されるように前記シリンダボディに設けられかつ前記シリンダボディの前記上面まで延びる第2通路と、
前記第2通路に接続されるように前記シリンダボディの前記上面および/または前記シリンダヘッドに設けられる第3通路とを有し、
前記第3通路は、前記燃焼室よりも外側に設けられかつ少なくとも前記吸気通路の下方を通り、少なくとも前記燃焼室の前記中心よりも前記前後方向における一方側から前記燃焼室よりも前記左右方向における他方側および前記燃焼室よりも前記前後方向における他方側を通って前記燃焼室の前記中心よりも前記左右方向における一方側まで延びる、2バルブエンジン。
【請求項2】
前記第3通路は、低速流通部および前記低速流通部よりも小さい断面積を有する高速流通部を含み、前記高速流通部は、前記燃焼室よりも前記左右方向における他方側および/または前記燃焼室よりも前記前後方向における他方側を通る、請求項1に記載の2バルブエンジン。
【請求項3】
前記高速流通部の幅は前記低速流通部の幅よりも小さい、請求項2に記載の2バルブエンジン。
【請求項4】
前記高速流通部の高さは前記低速流通部の高さよりも低い、請求項2または3に記載の2バルブエンジン。
【請求項5】
前記シリンダヘッドは、前記燃焼室よりも上方に設けられかつカム軸が配置されるカム室と、前記第3通路と前記カム室とを接続する第4通路とをさらに含み、
前記第4通路は、前記第1通路、前記第2通路および前記第3通路の断面積よりも小さい面積を有する圧力調整部を含む、請求項1から4のいずれかに記載の2バルブエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−236820(P2011−236820A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109198(P2010−109198)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】