説明

2官能性ヒドロキシ化合物、エポキシ樹脂、それらの製造方法、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料

【課題】 優れたハンダ耐熱性、難燃性を硬化物に付与できるエポキシ樹脂組成物、その硬化物、多官能ヒドロキシ化合物、エポキシ樹脂を提供することにある。
【解決手段】下記構造式(1)
【化1】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有する2官能性ヒドロキシ化合物又はそのエポキシ化物を主剤又は硬化剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高いガラス転移温度、低い吸湿率および低い熱時弾性率を兼備するためハンダ耐熱性に優れる硬化物を与え、さらに臭素系難燃剤に代表される難燃剤を用いずとも難燃性に優れる硬化物を与える多価ヒドロキシ化合物とエポキシ樹脂およびこれらの製造方法、これらを含むエポキシ樹脂組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂又はフェノール樹脂は、硬化時の低収縮性(寸法安定性)、電気絶縁性、耐薬品性などに優れた硬化物を与える為、エレクトロニクス分野や高機能塗料分野に広く用いられている。これらの技術分野では、近年技術革新が目覚しく、鉛入りハンダやダイオキシン問題を代表とする環境問題に対応するために、従来よりも優れたハンダ耐熱性、難燃性などの特性が強く求められている。
【0003】
それらの要求に対応するための手段として、3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールをパラキシレンハライド等の結接剤と反応させて得られる多官能性ヒドロキシ化合物およびこれから誘導されるエポキシ樹脂が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる多官能ヒドロキシ化合物又はエポキシ樹脂は、得られる硬化物の架橋密度が高くなり、熱時弾性率が上昇するため、近年要求されるハンダ耐熱性が確保できない状況であった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−248912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、優れたハンダ耐熱性、難燃性を硬化物に付与できるエポキシ樹脂組成物、その硬化物、多官能ヒドロキシ化合物、エポキシ樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の多核体構造を有する2官能性ヒドロキシ化合物をエポキシ樹脂用硬化剤に用いた場合、或いは、該2官能性ヒドロキシ化合物を更にエピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂を主剤として用いた場合に、その硬化物が従来になく優れたハンダ耐熱性、難燃性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記構造式(1)
【0009】
【化1】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有することを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物に関する。
【0010】
本発明は、更に、下記構造式(2)
【0011】
【化2】


(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物(a1)と、
下記構造式(3)
【0012】
【化3】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)
とを反応させることを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物の製造法に関する。
【0013】
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂用硬化剤(B)として、下記構造式(1)
【0014】
【化4】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有することを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(以下、これを「エポキシ樹脂組成物(I)」と略記する。)に関する。
【0015】
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【0016】
本発明は、更に、エポキシ樹脂組成物(I)に、更に無機質充填材(C)を該組成物中70〜95質量%となる割合で含有することを特徴とする半導体封止材料に関する。
【0017】
本発明は、更に、下記構造式(4)
【0018】
【化5】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R及びR10は水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【0019】
本発明は、更に、下記構造式(2)
【0020】
【化6】


(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物(a1)と、
下記構造式(3)
【0021】
【化7】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)
とを反応させて下記構造式(1)
【0022】
【化8】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有する2官能性ヒドロキシ化合物(A)を得、
次いで、該化合物(A)とエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造法に関する。
【0023】
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)として、下記構造式(4)
【0024】
【化9】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R及びR10は水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(以下、これを「エポキシ樹脂組成物(II)」と略記する。)に関する。
【0025】
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【0026】
本発明は、更に、エポキシ樹脂組成物(II)に、更に無機質充填材(C)を該組成物中70〜95質量%となる割合で含有することを特徴とする半導体封止材料に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、優れたハンダ耐熱性、難燃性を硬化物に付与できるエポキシ樹脂組成物、その硬化物、多官能ヒドロキシ化合物、エポキシ樹脂を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の2官能性ヒドロキシ化合物は、下記構造式(1)
【0029】
【化10】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有することを特徴とするものである。
ここで、R、R、R、及びRを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−プロピル基を表し、R、R、R、Rを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−プロピル基を表す。
【0030】
かかる2官能性ヒドロキシ化合物は、具体的には、下記構造式x−1乃至x−7で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化11】

【0032】
これらの中でも特に製造が容易であり、また、硬化物のハンダ耐熱性が良好である点からx−1、x−2、x−3、x−4に代表される構造式(1)においてR、R、R、Rの全てが水素原子である化合物が好ましい。
【0033】
また、上記化合物は、エポキシ樹脂用硬化剤或いはエポキシ樹脂原料として使用する場合には、複数種併用してもよく、その場合、水酸基当量が140〜300g/eqとなる範囲であることが、硬化物のハンダ耐熱性に優れる点から好ましい。
【0034】
2官能性ヒドロキシ化合物を製造するには、例えば、
下記構造式(2)
【0035】
【化12】


(式中、Xはハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物(a1)と、
下記構造式(3)
【0036】
【化13】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)
とを反応させるか、或いは、この反応によって得られた下記構造式(1’)
【0037】
【化14】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される2官能性ヒドロキシ化合物に、アルキル化剤を反応させることによって製造することができる。
ここで下記構造式(2)
【0038】
【化15】


(式中、Xはハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物(a1)としては、具体的には、オルソキシレンジクロライド、オルソキシレンジブロマイド、オルソキシレンジヒドロキサイド、オルソキシレンジメトキサイド、オルソキシレンジエトキサイド、オルソキシレンジイソプロポキサイド等が挙げられる。これらのなかでもオルソキシレンジクロライドやオルソキシレンジヒドロキサイド、オルソキシレンジメトキサイドが、反応性が良い点から好ましい。また、上記化合物(a1)は、反応に供する際、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
次に、下記構造式(3)
【0040】
【化16】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)としては、具体的には、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラプロピル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラターシャリーブチル−4,4’−ビフェノール等が挙げられる。
これらのなかでも3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールを用いた場合、難燃性と耐熱性および硬化性のバランスが良好となるため好ましい。また、上記化合物(a2)は、反応に供する際、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記反応を行う場合、前記化合物(a1)と前記化合物(a2)との反応割合が、前者/後者のモル比で、1/1〜0.5/1の割合であることが、目的物の純度が高くなる点から好ましい。
【0042】
上記反応は酸性触媒、塩基性触媒の存在下に行うことができる。ここで使用し得る酸性触媒としては塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸が挙げられる。また、塩基性触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
【0043】
これらのなかでもメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸が好ましい。これら触媒の使用量は特に限定されるものではないが、原料成分との合計質量に対して0.1〜30重量%となる範囲であることが好ましい。これら触媒の形態も特に限定されず、水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0044】
上記反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。ここで使用し得る有機溶剤は、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。有機溶剤の使用量は仕込んだ原料の総質量に対して通常50〜300質量%、好ましくは100〜250質量%である。
【0045】
反応温度は通常40〜180℃、なかでも60〜80℃の範囲であることが好ましい。また、反応時間は通常1〜10時間である。これらの有機溶剤は単独で、あるいは数種類を混合して用いることが出来る。また、反応中に生成する水或はアルコール類などを系外に分留管などを用いて留去することが反応を速やかに行う上で好ましい。
【0046】
また、得られる2官能性ヒドロキシ化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、反応系に酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、例えば2、6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。還元剤としては、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0047】
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは5〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理する際に用いる中和剤は、例えば反応触媒として酸性触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質が挙げられ、他方、反応触媒として塩基性触媒を用いた場合は塩酸、第一リン酸水素ナトリウム、蓚酸等の酸性物質が挙げられる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で溶剤及び未反応物を留去し生成物の濃縮を行い、目的とする2官能性ヒドロキシ化合物が得られる。
なお、この様にして得られる反応生成物中には、目的とする前記構造式(1’)の他、副生成物として下記構造式(b1)
【0048】
【化17】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物が反応生成物中に混入する。本発明では、該反応生成物中に構造式(b1)で表される化合物の含有率が30質量%以下、特に20質量%以下であることが本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0049】
また、上記構造式(1)においてR、R、R、Rの何れかに炭素原子数1〜4のアルキル基を有する化合物は、上記反応によって得られた下記構造式(1’)
【0050】
【化18】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される2官能性ヒドロキシ化合物に、塩化アルミニウムのごときルイス酸触媒の存在下にアルキル化剤を反応させることによって得ることができる。
【0051】
ここで用いるアルキル化剤は、通常、フリーデルクラフツアルキル化反応におけるアルキル化剤として用いられるものを挙げることができ、その具体例としては、エチレン、アセチレン、プロピレン、ブテン等の不飽和脂肪族炭化水素、クロロメタン、ブロモメタン、ヨードメタン、フルオロメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、フルオロエタン、t−ブチルクロライド等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0052】
なお、前記化合物(1’)で表される化合物とアルキル化剤との反応において、該化合物(1’)製造時の反応生成物を精製することなく、アルキル化剤との反応に供した場合には、得られる反応生成物中に前記構造式(1’)で表される化合物のアルキル化物、具体的には、下記構造式(b2)
【0053】
【化19】


で表され、かつ、R、R、R、Rの少なくとも1つが炭素原子数1〜4のアルキル基であって、その他が水素原子である化合物も副生成物として混入し得る。本発明では、該反応生成物中に構造式(b2)で表される化合物の含有率は30質量%以下、特に20質量%以下であることが好ましい。
【0054】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)はエポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂用硬化剤(B)として、前記2官能性ヒドロキシ化合物(以下、これを「2官能性ヒドロキシ化合物(b)」と略記する。)、即ち、下記構造式(1)
【0055】
【化20】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有することを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物を用いることを特徴とするものである。かかるエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は、前記したとおり、従来になく優れたハンダ耐熱性及び難燃性を発現するものである。
【0056】
ここで用いるエポキシ樹脂(A)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、
ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、及び、前記構造式(4)で表される本発明のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0057】
また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に低粘度である点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性に優れる点では、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、前記構造式(4)で表される本発明のエポキシ樹脂が好ましい。
【0058】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)においては、エポキシ樹脂用硬化剤(B)として前記2官能性ヒドロキシ化合物(b)のみならず、本発明の特性を損なわない範囲で他の硬化剤と併用することが出来る。この場合、併用する場合、前記2官能性ヒドロキシ化合物の全エポキシ樹脂用硬化剤(B)中に占める割合が30重量%以上となる範囲であることが好ましく、特に40重量%以上の範囲であることが好ましい。
【0059】
ここで使用し得る他の硬化剤は、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの種々の硬化剤を用いることができる。
【0060】
ここで、アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0061】
アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0062】
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0063】
フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物、及びこれらの変性物等が挙げられる。
これらの他の硬化剤は単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0064】
これらの中でも、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましく、特に芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が特に難燃性に優れる点から好ましい。
【0065】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)におけるエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂用硬化剤(B)との配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0066】
次に、本発明のエポキシ樹脂は、下記構造式(4)
【0067】
【化21】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、
及びR10は水素原子又はメチル基を表し、
nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有することを特徴とするものである。
【0068】
ここで、構造式(4)中、R、R、R、及びRを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−プロピル基を表し、R、R、R、Rを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−プロピル基を表す。
【0069】
かかる前記構造式(4)を構成する繰り返し単位としては、下記構造式e−1〜e−7で表されるものが挙げられる。
【0070】
【化22】

【0071】
これらの中でも特に製造が容易であり、また、硬化物のハンダ耐熱性が良好である点からe−1、e−2、e−3、e−4に代表される構造式(4)においてR、R、R、Rの全てが水素原子である化合物が好ましい。
【0072】
前記構造式(4)でエポキシ樹脂は、前記2官能性ヒドロキシ化合物(b)とエピハロヒドリンとを反応させて製造することができる。
【0073】
前記2官能性ヒドロキシ化合物(b)とエピハロヒドリンとを反応させる具体的方法は、例えば2官能性ヒドロキシ化合物(b)のフェノール性水酸基1モルに対し、エピハロヒドリン2〜10モルを添加し、この混合物に、2官能性ヒドロキシ化合物(b)のフェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。
ここで、塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合、塩基性触媒の水溶液を連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン類は反応混合物中に連続的に戻し乍ら反応を行う方法が生産性に優れ、かつ、目的物が高純度で得られる点から好ましい。
【0074】
なお、工業生産を行う際は、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みエピハロヒドリンの全てを新しいものを使用するが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分及で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。なかでも入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0075】
また、塩基性触媒は、例えば、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物は、前記したとおり、固形の形態で使用しても構わないが水溶液で用いることが望ましく、その場合、アルカリ金属水酸化物を10〜55質量%程度の水溶液で用いることが作業性に優れる点から好ましい。
【0076】
また、上記反応は、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
【0077】
上記反応を行った後、反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0078】
このようにして得られる反応生成物中には、原料の2官能性ヒドロキシ化合物中に含まれる副生成物に起因して下記構造式(b3)
【0079】
【化23】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R及びR10は水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有するエポキシ樹脂が副生成物として反応生成物中に混入する。本発明では、該反応生成物中に構造式(b3)で表されるエポキシ樹脂の含有率が30質量%以下、特に20質量%以下であることが本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)はエポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)として、詳述した下記構造式(4)
【0081】
【化24】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R及びR10は水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有するエポキシ樹脂(以下、これを「エポキシ樹脂(A’)」と略記する。)を用いることを特徴とするものである。
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)において用いられるエポキシ樹脂用硬化剤(B)は、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。
【0083】
ここで、アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0084】
アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0085】
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0086】
フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物及びこれらの変性物、並びに、前記した本発明の2官能性ヒドロキシ化合物等が挙げられる。
これらの他の硬化剤は単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0087】
これらの中でも、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましく、特に芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び、前記した本発明の2官能性ヒドロキシ化合物等が特に難燃性に優れる点から好ましい。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)において用いられるエポキシ樹脂(A)は、前記構造式(4)で表されるエポキシ樹脂の他、本発明の効果を損なわない範囲でその他のエポキシ樹脂を併用することができる。
【0089】
ここで使用し得るその他のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂
ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型用ポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0090】
またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に低粘度である点では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性に優れる点では、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)におけるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7〜1.5当量になる範囲の量であることが好ましい。
【0092】
以上詳述したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)に加え、更に、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0093】
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、エポキシ樹脂又はその硬化剤について、従来用いられている難燃剤を配合しなくても、硬化物の難燃性が良好なものとなる。しかしながら、より高度な難燃性を発揮させるために、例えば半導体封止材料の分野においては、封止工程での成形性や半導体装置の信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0094】
かかる非ハロゲン系難燃剤を配合したエポキシ樹脂組成物は、実質的にハロゲン原子を含有しないものであるが、例えばエポキシ樹脂に含まれるエピハロヒドリン由来の5000ppm以下程度の微量の不純物によるハロゲン原子は含まれていても良い。
【0095】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0096】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0097】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0098】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0099】
それらの配合量は、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0100】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0101】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、中でもトリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0102】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)又は(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0103】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0104】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0105】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0106】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0107】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0108】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0109】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0110】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0111】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0112】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0113】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0114】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0115】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0116】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0117】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0118】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)には、必要に応じて無機質充填材(C)を配合することができる。前記無機質充填材(C)としては、例えば、半導体封止材料用途では溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられ、また、導電ペースト用途では、銀粉や銅粉等の導電性充填剤が挙げられる。
【0119】
本発明では、特にエポキシ樹脂組成物(I)おける前記エポキシ樹脂(A)及び前記硬化剤(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する場合、或いは、エポキシ樹脂組成物(II)における前記フェノール樹脂(B’)及び前記エポキシ樹脂(A’)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する場合、本発明の半導体封止材料となる。
【0120】
ここで、本発明の半導体封止材料において前記無機充填材(C)の配合量は、前記した通り、エポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を70〜95質量%の範囲であるが、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、80〜95質量%であることが特に好ましい。また、無機質充填材(C)を組成物中80〜95質量%となる割合で含有する場合、前記無機充填材(C)は溶融シリカであることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0121】
エポキシ樹脂組成物(I)又は(II)から本発明の半導体封止材料を製造する方法は、前記各成分、及び、更にその他の配合剤を、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して溶融混合型のエポキシ樹脂組成物とする方法が挙げられる。また、半導体パッケージ成形としては、該半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法が挙げられる。
【0122】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)は、上記した半導体封止材料用途の他、例えば、アンダーフィル材、導電ペースト、積層板や電子回路基板等に用いられる樹脂組成物、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、絶縁塗料等のコーティング材料等に用いることができる。前記した各種用途のなかでも特に電子部品用途である半導体封止材料及びアンダーフィル材、特に半導体封止材料に好適に用いることができる。
【0123】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)をプリント回路基板用組成物に加工するには、例えばプリプレグ用樹脂組成物とすることができる。該エポキシ樹脂組成物の粘度によっては無溶媒で用いることもできるが、有機溶剤を用いてワニス化することでプリプレグ用樹脂組成物とすることが好ましい。前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、単独でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。得られた該ワニスを、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種補強基材に含浸し、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。また該エポキシ樹脂組成物を用いて銅張り積層板を製造する場合は、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、銅張り積層板を得ることができる。
【0124】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0125】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0126】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記エポキシ樹脂(A)に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤(B)としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0127】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)は、上記した各種用途に応じて、適宜、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0128】
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)は、目的或いは使用する用途に応じて常法により硬化させて硬化物とすることができる。この際、硬化物を得る方法は、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)に、各種の配合成分を加え、更に適宜硬化促進剤を配合して得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱する方法が好ましい。成形方法などもエポキシ樹脂組成物の一般的な方法を採用することができる。このようにして得られる硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の各種の用途において有用である。
【実施例】
【0129】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準であり、軟化点及びGPC測定、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0130】
1)GPC:
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0131】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
2)NMR:日本電子株式会社製 「NMR GSX270」
3)MS :日本電子株式会社製 二重収束型重量分析装置 AX505H(FD505H)
【0132】
実施例1 〔2官能性ヒドロキシ化合物(A−1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、下記式[7]
【0133】
【化25】


で表される化合物166部、3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール266部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。メタンスルホン酸8部を発熱に注意しながら液温が80℃を超えないようにゆっくり添加した。その後油浴中で150℃まで加熱し、分留管を用いて生成するメタノールを抜き出した後、更に2時間反応させた。反応終了後、5%NaOHを系内が中性になるまで加え、減圧下でメタノールを留去後、下記構造式
【0134】
【化26】


で表される本発明の2官能性ヒドロキシ化合物(A−1)370部を得た。得られた2官能性ヒドロキシ化合物の水酸基当量は187g/eq(理論値172g/eq)であった。マススペクトルを測定したところ、主成分の分子量は式[8]に相当するM+=344であり、GPCよりその純度は76%であることが確認された。GPCチャートを図1に、TOF−MSスペクトルチャートを図2に示す。
【0135】
実施例2 〔エポキシ樹脂(B−1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、実施例1で得られた2官能性ヒドロキシ化合物(A−1)187部、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン510gとn−ブタノール170gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、下記構造式
【0136】
【化27】


で表される本発明のエポキシ樹脂(B−1)250部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は250g/eqであり、エポキシ当量から算出したnは0.1であった。
【0137】
実施例3 〔エポキシ樹脂(B−2)の合成〕
実施例2において、エピクロルヒドリン463gの代わりにエピクロルヒドリン93gを用いる以外は実施例2と同様にして、エポキシ樹脂(B−2)200部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は831g/eqであり、エポキシ当量から算出したnは3.0であった。
【0138】
比較例1 〔多価ヒドロキシ化合物(A’−1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、下記式[9]
【0139】
【化28】


で表される化合物166部、3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール266部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。メタンスルホン酸8部を発熱に注意しながら液温が80℃を超えないようにゆっくり添加した。その後油浴中で150℃まで加熱し、分留管を用いて生成するメタノールを抜き出した後、更に2時間反応させた。反応終了後、5%NaOHを系内が中性になるまで加え、減圧下でメタノールを留去後、下記構造式
【0140】
【化29】


(式中、nの平均値は2.7である。)で表される多価ヒドロキシ化合物(A’−1)370部を得た。得られた多価ヒドロキシ化合物の水酸基当量は162g/eq(理論値158g/eq)であった。マススペクトルを測定したところ、n=1、n=2、n=3、 n=4にそれぞれ相当するM+=587、931、1276、1620 が確認された。GPCより未反応の3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールは8%であることが確認された。GPCチャートを図3に示す。
【0141】
比較例2 〔エポキシ樹脂(B’−1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、実施例1で得られた多価ヒドロキシ化合物(A’−1)162部、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン510gとn−ブタノール170gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、下記構造式
【0142】
【化30】


で表されるエポキシ樹脂(B’−1)210部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は265g/eqであった。
【0143】
比較例3 〔多価ヒドロキシ化合物(A’−2)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、下記式[9]
【0144】
【化31】


で表される化合物166部、3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール484部、2−メトキシエタノール500部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。メタンスルホン酸14部を発熱に注意しながら液温が80℃を超えないようにゆっくり添加した。その後油浴中で150℃まで加熱し、分留管を用いて生成するメタノールおよび2−メトキシエタノールを抜き出した後、更に2時間反応させた。反応終了後、5%NaOHを系内が中性になるまで加え、減圧下で2−メトキシエタノールを留去後、下記構造式
【0145】
【化32】


(式中、nの平均値は1.1である。)で表される多価ヒドロキシ化合物(A’−2)615部を得た。得られた多価ヒドロキシ化合物の水酸基当量は151g/eq(理論値147g/eq)であった。マススペクトルを測定したところ、n=1、n=2、n=3、 n=4にそれぞれ相当するM+=587、931、1276、1620 が確認された。GPCより未反応の3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールは13%であることが確認された。GPCチャートを図4に示す。
【0146】
比較例4 〔エポキシ樹脂(B’−2)の合成〕
比較例2において、多価ヒドロキシ化合物(A’−1)の代わりに多価ヒドロキシ化合物(A’−2)151部を用いる以外は比較例2と同様にして、エポキシ樹脂(B’−2)200部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は245g/eqであった。
【0147】
合成例1 〔エポキシ樹脂(B’−3)の合成〕
比較例2において、多価ヒドロキシ化合物(A’−1)の代わりにフェノールアラスキル樹脂(三井化学株式会社製「ミレックスXLC−LL」、水酸基当量 176g/eq、軟化点79℃)176部を用いる以外は比較例2と同様にして、エポキシ樹脂(B’−3)225部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は255g/eqであった。
【0148】
実施例4〜6と比較例5〜9
表1に示す各種のエポキシ樹脂及び硬化剤、また、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)、無機充填材として球状シリカ(株式会社マイクロン製「S−COL」)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシトリエトキシキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−403」)、カルナウバワックス(株式会社セラリカ野田製「PEARL WAX No.1−P」)、カーボンブラックを用いて表1に示す配合に従い、2本ロールを用いて100℃の温度で10分間溶融混練して目的とするエポキシ樹脂組成物を得た。
【0149】
得られたエポキシ樹脂組成物を180℃で10分間プレス成形し、その後180℃で5時間さらに硬化せしめた後に、UL−94試験法に準拠した厚さ1.6mmの試験片を作成し、下記の各評価試験方法により、硬化物の物性を確認した。この結果を同じく表1に示す。
【0150】
吸湿率(%):85℃/85%RHの条件で300時間処理した後の重量増加率を求めた。
【0151】
ガラス転移温度:粘弾性測定装置(レオメトリック社製 固体粘弾性測定装置「RSAII」、二重カレンチレバー法;周波数1Hz,昇温速度3℃/min)を用いて測定した。
【0152】
難燃性:UL−94試験法に準拠し、厚さ1.6mmの試験片5本を用いて,燃焼試験を行った。
【0153】
ハンダ耐熱性:試験片を85℃・85%RHの雰囲気下中72時間放置し、吸湿処理を行った後、これを260℃のハンダ浴に10秒浸せきし、その際のクラック発生率を調べた。試験片数は50個。
【0154】
【表1】

【0155】
表中、「YX−4000H」は、ジャパンエポキシレジン株式会社製テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(「YX−4000H」、エポキシ当量195g/eq)であり、「XLC−LL」は、三井化学株式会社製フェノールアラルキル樹脂(「ミレックス XLC−LL」、水酸基当量 176g/eq、軟化点79℃)である。
上記評価結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物は、従来技術であるパラキシレンジメトキサイドを原料とした同類化合物と比較して、耐熱性、ハンダ耐熱性、難燃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は実施例1で得られた2官能性ヒドロキシ化合物のGPCチャートである。
【図2】図2は実施例1で得られた2官能性ヒドロキシ化合物のTOF−MSスペクトルである。
【図3】図3は比較例1で得られた多価ヒドロキシ化合物のGPCチャートである。
【図4】図4は比較例3で得られた多価ヒドロキシ化合物のGPCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)
【化1】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される分子構造を有することを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物。
【請求項2】
水酸基当量が140〜300g/当量の範囲にある請求項1記載の2官能性ヒドロキシ化合物。
【請求項3】

下記構造式(3)
【化2】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)
とを反応させることを特徴とする2官能性ヒドロキシ化合物の製造法。
【請求項4】
下記構造式(2)
【化3】

(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物(a1)と、
下記構造式(3)
【化4】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される化合物(a2)
とを反応させた、次いで、アルキル化剤を反応させる請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記化合物(a1)と前記化合物(a2)との反応割合が、前者/後者のモル比で、1/1〜0.5/1の割合である請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂用硬化剤(B)として、請求項1又は2記載の2官能性ヒドロキシ化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項6記載のエポキシ樹脂組成物に、更に無機質充填材(C)を該組成物中70〜95質量%となる割合で含有することを特徴とする半導体封止材料。
【請求項9】
下記構造式(4)
【化5】


(式中、R、R、R、及びRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R及びR10は水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位の平均で0〜5である。)
で表される分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項10】
エポキシ当量が240〜1500g/当量の範囲にある請求項8記載のエポキシ樹脂。
【請求項11】
請求項3又は4記載の製造方法によって得られた2官能性ヒドロキシ化合物(A)にエピハロヒドリンを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造法。
【請求項12】
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂用硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)として請求項9又は10記載のエポキシ樹脂を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項14】
請求項12記載のエポキシ樹脂組成物に、更に無機質充填材(C)を該組成物中70〜95質量%となる割合で含有することを特徴とする半導体封止材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−201714(P2008−201714A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39270(P2007−39270)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】