説明

2眼カメラ

【課題】2眼カメラの光軸の関係を適正に設定し、画角の重なり角度の画像を3D画像として利用できるように画像処理をすることで、パノラマ画像と3D画像を同時に撮影可能とした2眼カメラを提供する。
【解決手段】水平画角αの2つのカメラa、bを具備し、カメラa,bのレンズ中心を含む平面上でカメラa,bの画角の重なり角度をδとなるように配置し、カメラから得られる2つの全体画像から2α−δの画角相当のパノラマ画像を生成し、また重なり角度δの2つの部分画像から画像処理を行うことで視差の異なる画角δ相当の3D画像を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2眼カメラに関し、特に2つのカメラの画角の重なり角度を適正に設定し、パノラマ撮影と3D撮影を同時に可能とする2眼カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3D映像を観ることができるTVやパソコンが各社から発売され、また3Dコンテンツの撮影手段である2眼の3Dカメラも発売されている。また3D用の2眼のカメラと3Dを観るディスプレイを同時に搭載したパソコンやゲーム機が発売されている。さらに携帯電話などの携帯機器向けの3D用の2眼カメラモジュールなども発表されるなど、3D関連分野の動向は極めて活発である。
【0003】
3Dのカメラの多くは2眼カメラであるため、光軸の向きを変える機構を設けることでパノラマ撮影にも応用する「複眼カメラ」(特願2010−097221)を本出願人は提案している。(以後、前出願1と呼ぶことにする。本出願時点で未公開である。)
【0004】
また既に製品化された3Dカメラに装着することで、パノラマ合成を可能にする「3Dカメラ用パノラマアタッチメント」(特願2010−239993)も本出願人は提案している。(以後前、出願2と呼ぶことにする。本出願時点で未公開である。)
【0005】
前出願1の2眼カメラは、3D撮影とパノラマ撮影を切り替えて行うことが可能な考案であり、パソコンによるTV会議やパノラマ動画撮影を可能とするなど今後有望な製品に繋がる考案と思われる。しかし3Dカメラの黎明期の現状では、新規構造のカメラの開発には、量産数が見積もれない点と少なくともコストアップの問題がある。
【0006】
また前出願2のパノラマアタッチメントは、パノラマ撮影の時に、装着を行う手間がかかり、またミラーなどの追加の光学系を通過するため光量が減ることで暗くなる問題がある。さらに前出願1と前出願2ともに、3D画像とパノラマ画像を同時に撮影できないという大きな課題を含んでいる。
【0007】
なお、この発明と関連する先行技術文献としては、特許文献1がある。この特許文献1は、2個のデジタルカメラの撮影レンズを上下に重なるように配置してパノラマ画像(非3D)を合成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許公開2002−369060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、2眼カメラの光軸の向きを適正化し、光軸の変換機構のような可動部を有しなくても、パノラマ合成向けの画像と3D向けの視差のある画像を同時に取得可能とするカメラを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、水平画角αの2つのカメラa、bを具備し、カメラa、bの光軸とレンズ中心を含む平面上で画角の重なり角度δとなるようにカメラa,bの光軸を傾けて配置し、2つのカメラから得られた画像からパノラマ合成画像を作り、重なり角度δに含まれる2つの部分画像から視差の異なる3D用の画像を生成することを可能とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の2眼カメラにおいて、さらに、パノラマ合成処理部と3D画像生成処理部を具備し、パノラマ合成画像と3D画像を同時に取得できるようにする。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、さらに光軸を前面でクロスさせることで画角の重なり角度δを実現することで、近景における3D画像の画角を大きく確保できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、2眼カメラはそれぞれ外部からコントロール可能な光学ズーム機構を有したカメラで、ズーム信号を2つのズーム機構に同時に入力することでパノラマ撮影および3D撮影に対してもズーム機能を実現できる。
【0014】
また、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、さらに光軸角度変更部を具備し、ズームに連動して適正なパノラマ画角と3D画角を実現できるようにしてもよい。
【0015】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、3D用部分画像輻輳角対応投影変換部を具備し、3D撮影において立体感を調整できるようになる。
【0016】
請求項1の発明のように、2眼のそれぞれの画角αを重なり角度δとなるように配置することで、2α−δの視野角の画像の取得が可能になり、かつ重なり角度δに含まれる2つの部分画像は、同一被写体を異なる視点から見た画像情報を含むため、3D用の画像を生成することが可能になる。
【0017】
請求項2の発明のように、パノラマ合成処理部と3D画像生成処理部を具備すれば、2眼カメラからの映像をパノラマ合成処理部で合成し、かつ3D画像生成処理部で3D画像を作ることが同時に可能になる。
【0018】
請求項3の発明のように、重なり角度を光軸が前面でクロスするように実現することで、近景に関しても一定の画角の3D画像の取得を可能にでき、またパノラマ合成においても共通領域が一定の画角が保証できるためパノラマ合成処理で共通点が少なくなる問題を回避できる。
【0019】
請求項4の発明のように、2眼カメラはそれぞれ外部からコントロール可能な光学ズーム機構を有したカメラで、ズーム信号を2つのズーム機構に同時に入力することで、パノラマおよび3Dの同時撮影の機能にズーム機能を光軸固定の配置でも実現できる。
【0020】
また、光軸角度変更機構を具備することで、パノラマおよび3Dの同時撮影において請求項4のズーム機能をさらに最適な画角として実現できる。
【0021】
請求項5の発明のように、3D用輻輳角変更処理部を具備することで、3D撮影時に立体感(飛び出した感じや奥まった感じ)を調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜請求項3の2眼カメラは、水平画角の重なり角度を適正に設定し、この重なり角度をパノラマ合成の位置合わせ処理と3D画像生成処理を行うことで、広視野角のパノラマ画像と立体映像を観ることができる3D画像を同時に取得できる。光軸の可変機構が無いため、コストの課題や信頼性において大きなメリットがある効果がある。
【0023】
また請求項4の2眼カメラにおいて、それぞれのカメラはズーム機構を有したカメラを採用することで、光軸固定であるにも関わらず、パノラマ画角や3D画角をズームできる機能が実現できる効果がある。
【0024】
また請求項5の2眼カメラではカメラaとカメラbの重なり角度に含まれる部分画像の投影変換の投影面を個別に設定する3D用輻輳角設定処理部有することで、飛び出し感や奥行き感などを随時設定が可能になる効果がある。
【0025】
この発明の上述の側面および他の側面は特許請求の範囲に記載され以下実施例を用いて詳述される。この発明は上述の課題や効果に限定されないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の請求項1に関する実施形態の2眼カメラ画角関係図である。
【図2】本発明の請求項1に関する実施形態の2眼カメラ画角構成図である。
【図3】本発明の請求項1に関する実施形態のパソコンによる実現図である。
【図4】本発明の請求項1に関する実施形態のパノラマ視野角効果説明図である。
【図5】本発明の請求項1に関する実施形態の投影・パノラマ・3D画像イメージ図である。
【図6】本発明の請求項2に関する実施形態の2眼カメラ構成図である。
【図7】本発明の請求項3に関する実施形態の2眼カメラ画角構成図である。
【図8】本発明の請求項4に関する実施形態の2眼ズームカメラ構成図である。
【図9】本発明の請求項4に関する実施形態の固定光軸ズーム時画角関係図である。
【図10】本発明の請求項4に関する実施形態の固定光軸ズーム時水平画角表を示す図である。
【図11】本発明の請求項5に関する実施形態の輻輳角設定処理部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の2眼カメラの実施の形態を説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の請求項1に関する実施形態の2眼カメラ画角関係図である。図1においてカメラaとカメラbのレンズ間距離に対してほぼ無限遠とみなせるように十分な遠景と仮定した時の図で、そのためカメラaとカメラbは同一点に記載している。カメラaおよびカメラbはともに水平画角はαとし、2つのカメラの画角の重なり角度をδになるように設定する。
【0029】
図2は、本発明の請求項1に関する実施形態の2眼カメラ画角構成図である。図2においてカメラaとカメラbのレンズ間距離Labと直交する破線矢印方向に対して、カメラaの光軸は左外側に角度εだけ傾け、カメラbの光軸は右外側に角度εだけ傾け、このことにより、δ=α―2εの重なり角度を実現する。カメラa、カメラbの視野の範囲は2α−δになる。
【0030】
図3は、本発明の請求項1に関する実施形態のパソコンによる実現図である。図3において、2眼カメラ(301)からの映像出力(302)をパソコン(303)で取り込み、ソフトウエア処理でパノラマ合成処理および3D画像生成処理を行い、パソコン(303)からパノラマ合成画像データ(304)と3D画像データ(305)を出力する。
【0031】
図4は、本発明の請求項1に関する実施形態のパノラマ視野角効果説明図である。図4においては、左図は3名がパソコンに取り付けられたカメラの前に被写体として3名が前に座った状況で、中央はα=60度の画角の場合、右図はδ=40度の重なり角度の場合に、本発明の2眼カメラで視野角が2α―δとなる場合の撮影範囲を示している。
【0032】
図5は、本発明の請求項1に関する実施形態の投影・パノラマ・3D画像イメージ図である。図5において上段は図4の右図のように撮影した場合に、カメラaとカメラbのそれぞれを大平面に投影した画像、下段の図はパノラマ合成画像と3D生成画像のイメージを示している。
【0033】
図2のように画角の重なり角度をδとなるように設定し、図1の画角関係を実現し、図3のようにパソコンソフトウエアによりパノラマ合成処理と3D画像生成処理を実行すれば、図4のような使用シーンにおいて図5の下段のようにパノラマ合成画像と3D生成画像を作成することができる。
【0034】
図6は、本発明の請求項2に関する実施形態の2眼カメラ構成図である。図6において、請求項1の2眼カメラ(601)からのカメラ画像出力(602)を、パノラマ合成処理部(603)でパノラマ合成処理が成されパノラマ合成画像データ(604)を出力する。またカメラ画像出力(602)は3D画像生成処理部(605)において、3D画像生成処理が成され3D画像データ(606)を出力する。
【0035】
図7は、本発明の請求項3に関する実施形態の2眼カメラ画角構成図である。図7において、カメラaとカメラbのレンズ間距離Labと直交する破線矢印方向に対して、カメラaの光軸は右内側に角度εだけ傾け、カメラbの光軸は左内側に角度εだけ傾け、このことにより、δ=α―2εの重なり角度を実現する。カメラa、カメラbの視野の範囲は2α−δになる。
【0036】
図8は、本発明の請求項4に関する実施形態の2眼ズームカメラ構成図である。図8において、請求項1ないし請求項3の2眼カメラであり、カメラa(802)のズーム機構(804)とカメラb(803)のズーム機構(805)に、ズームレバーなどで指定されたズーム指示信号(801)が同時に入力され、同じ焦点距離に変更され、カメラa(802)からはカメラa画像情報(806)、カメラb(803)からはカメラb画像情報(807)が出力される。
【0037】
図9は、本発明の請求項4に関する実施形態の固定光軸ズーム時画角関係図である。図9において、最大広角時の水平画角をαmaxとし、その時の2眼カメラの水平画角の重なり角度をδmaxとなるようにカメラaの光軸Xaとカメラbの光軸Xbを固定する。ズームによりカメラa,bの水平画角がαに縮小変更された時の2眼カメラの重なり角度はαの関数と考えることができるので、δ(α)と表すと、3D画像を生成できる角度はδ(α)であり、正数とすべき点と、図9から分かるように次の関係式を満たす必要がある。
δ(α)=δmax+α―αmax>0 (1)
この時のパノラマ合成で実現できるパノラマ水平画角は2α―δ(α)である。
【0038】
例えば35mm判換算の焦点距離が25mmから125mmまでの光学ズームが可能なカメラのアスペクト比4:3のカメラ2眼の場合には、最大広角時の25mmの場合の水平画角は、71.51°となり、焦点距離が大きくなるに従って水平画角は小さくなり、125mmの焦点距離では16.39°になる。δmaxを決めると最大広角時のパノラマ合成によって実現できるパノラマ水平画角2αmax−δmaxと3D水平画角δmaxが決まるが、同時にαに応じて実現できるパノラマ水平画角2α−δ(α)と3D水平画角δ(α)が決まる。
【0039】
図10は、本発明の請求項4に関する実施形態の固定光軸ズーム時水平画角表である。図10において、1行目は最大広角時の25mmから2倍ズーム時の50mm、3倍ズーム時の75mm、4倍ズーム時の100mm、5倍ズーム時の125mmまでの5つの焦点距離を表し、2行目には対応するカメラの水平画角を表している。δmaxを43.02°から5°ずつ大きくして行くと、最大広角時のパノラマ水平画角は100°、95°、90°、85°、80°となり、水平画角αをズームに応じ変えた時のそれぞれのパノラマ水平画角を上段に、3D画像の水平画角を下段に示した表である。
【0040】
斜め斜線(/)の部分は、(1)式の条件を満足しない部分である。またパノラマ合成では、画角の重なり角度の部分を共通領域として接続することから、αに対するδ(α)の比δ(δ)/αが0.2程度は必要とした場合、図10の中の□枠で囲った数値の部分のみが満足する。図10からパノラマ合成の最大水平画角を大きくするに従い可能なズーム倍率が制限されるが、固定光軸であるにも拘らずズームが可能であることが分かる。
【0041】
図11は、本発明の請求項5に関する実施形態の輻輳角設定処理部説明図である。図11においては、図1に対応する画角関係の場合、重なり角度δに含まれるカメラaとカメラbの部分画像に対して、カメラa3D投影面とカメラb3D投影面と独立の3D用投影面を設け、それぞれ独立に投影変換を行うことで視差を自由に設定できる。
【符号の説明】
【0042】
a,b 2眼カメラの記号
α カメラの水平画角
δ 2眼カメラの水平画角の重なり角度
ε 光軸の傾け角度
Lab カメラaとカメラbのレンズ間距離
αmax ズームカメラの最大広角時の水平画角
δmax ズームカメラの最大広角時の2眼カメラの水平画角の重なり角度
δ(α) ズームカメラの水平画角α時の2眼カメラの水平画角の重なり角度
Xa 固定光軸時のカメラaの光軸
Xb 固定光軸時のカメラbの光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平画角αの2つのカメラa、bを具備し、カメラa,bの光軸とレンズ中心を含む平面上で水平画角の重なり角度δとなるようにカメラa,bの光軸を傾けて配置し、2つのカメラから得られた画像から水平画角2α―δ相当のパノラマ合成画像を作り、重なり角度δに含まれる2つの部分画像から視差の異なる水平画角δ相当の3D用の2画像を生成することを特徴とする2眼カメラ。
【請求項2】
請求項1の2眼カメラにおいて、さらに、パノラマ合成処理部と3D画像生成処理部を具備し、パノラマ合成画像と3D画像を同時に取得できるようにしたことを特徴とする2眼カメラ。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2の2眼カメラにおいて、光軸を前面でクロスさせることで画角の重なり角度δを実現したことを特徴とする2眼カメラ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、2眼カメラはそれぞれ外部からコントロール可能な光学ズーム機構を有したカメラで、ズーム信号を2つのズーム機構に同時に入力することを特徴とする2眼カメラ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の2眼カメラにおいて、さらに3D用輻輳角設定処理部を具備し、3D撮影において立体感を調整できるように構成されたことを特徴とする2眼カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−227679(P2012−227679A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92710(P2011−92710)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(301073163)マセマテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】