説明

3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体

【課題】3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体
【解決手段】式


(式中、R1は水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20の
アルコキシ基、CF3、炭素原子数6乃至10のアリール基を表すか、又は式


で表される基を表し、
2は水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
で表される3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体が開示されている。
該化合物は表面処理用の抗菌活性物質として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択された3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体、これら化合物の製造法、並びに、グラム陽性菌及びグラム陰性菌、酵母並びに菌類に対する抗菌活性剤として表面抗菌処理目的で、また化粧品、家庭用品、織物製品及びプラスチックの保存目的で、並びに殺菌剤用途としての前記化合物の使用法に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、式
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20の
アルコキシ基、CF3、炭素原子数6乃至10のアリール基を表すか、又は式
【化2】

で表される基を表し、
2は水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
で表される3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体に関する。
【0003】
炭素原子数1乃至20のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基又は第三アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基又はエイコシル基などの、直鎖又は分岐アルキル基である。
【0004】
炭素原子数1乃至20のアルコキシ基は、たとえばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基又は第三アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基又はオクタデシルオキシ基などがある。
【0005】
炭素原子数6乃至10のアリール基は、たとえばナフチル基であり、好ましくはフェニル
基である。
【0006】
本発明によると、好ましいのは、式中、R1は炭素原子数6乃至10のアリール基であり
、最も好ましくはフェニル基である式(1a)で表される化合物である。
【0007】
好ましいのは、式中、R2は炭素原子数1乃至20のアルキル基である式(1a)、(1
b)又は(1c)で表される化合物である。
【0008】
最も特に好ましいのは式
【化3】

(式(2)乃至(5)中、R2は炭素原子数1乃至20のアルキル基である。)
で表される化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体の製造は既知の方法によって行われ得る。
【0010】
以下の反応スキームに従って、式(1d)で表される対応するシアノアセテートの一般式(1a)、(1b)又は(1c)で表されるアクリル酸誘導体の製造のために、−100℃乃至+100℃で、好ましくは−80℃にて、例えばジエチルエーテル又はテトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で、金属アルコラート、金属シラサイド(silacides)又は金属アミド、好ましくはリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基の存在下にて、式(1c)の炭素酸クロリドと濃縮される。
【化4】

1及びR2は式(1a)、(1b)又は(1c)で規定されたように定義される。
【0011】
3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体の製造方法は本発明の更なる目的である。
【0012】
本発明の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体は、特に病原性グラム陽性およびグラム陰性バクテリアに対して、皮膚細菌バクテリアに対して、そして酵母やカビに対しても顕著な抗菌作用を示す。そのためこれらは、特に殺菌、脱臭に、並びに皮膚及び粘膜、及び、外皮付属物(毛髪)の一般及び抗菌処理のために、より特には手及び傷の殺菌のために好適である。
【0013】
そのためこれらは、シャンプー、入浴剤、ヘアケア製剤、液体及び固形石鹸(合成界面活性剤及び飽和及び/又は不飽和脂肪酸塩由来)、ローション及びクリーム、デオドラント、たとえば皮膚用クレンジング溶液などの他の水性又はアルコール性溶液、湿った清浄用巾、オイル又はパウダーなどのパーソナルケア製剤における抗菌作用物質及び防腐剤として好適である。
【0014】
そのため本発明はまた、式(1a)、(1b)又は(1c)の少なくとも1つの化合物、及び、美容上許容される担体又は補助剤を含むパーソナルケア製剤にも関する。
【0015】
本発明によるパーソナルケア製剤は組成物の全質量に基づいて、0.01乃至15質量%、好ましくは0.1乃至10質量%の式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物、並びに美容上許容される補助剤を含む。
【0016】
パーソナルケア製剤の形態に応じて、式(1a)、(1b)又は(1c)の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体に加えて、たとえば金属イオン封鎖剤、着色剤、香油、増粘剤又は凝固剤(稠度調整剤)、軟化剤、紫外線吸収剤、皮膚保護剤、抗酸化剤、ジカルボン酸及び/又は炭素原子数14乃至22の脂肪酸のアルミニウム、亜鉛又はマグネシウム塩などの機械特性改善剤、そして、所望により防腐剤などの、更なる成分を含む。
【0017】
本発明によるパーソナルケア製剤は油中水型又は水中油型エマルジョン、アルコール性又はアルコール含有配合物、イオン性又は非イオン性両親媒性脂質の小胞性分散液、ゲル、固形スティック又はエアロゾル配合物の形態であり得る。
【0018】
油中水型又は水中油型エマルジョンとして、美容上許容できる補助剤は、好ましくは油相5乃至50%、乳化剤5乃至20%、水30乃至90%を含む。油相は、例えば1つ以上の炭化水素油、ワックス、天然オイル、シリコンオイル、脂肪酸エステル又は脂肪アルコールなどの、化粧品処方に好適ないずれのオイルをも含み得る。好ましいモノオール又はポリオールはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール及びソルビトールである。
【0019】
本発明による化粧品配合物は、様々な分野で、特に以下の製剤において使用される。
−スキンケア製剤、例えばタブレット又は液体石鹸型での皮膚洗浄及びクレンジング製剤、合成洗剤又は洗浄ペースト、スキンエマルジョン、マルチエマルジョン又はスキンオイルなど。
−入浴剤、例えば液体(フォームバス、ミルク、シャワー製剤)又は固形入浴製剤、例えばバスキューブ及びバスソルトなど。
−化粧品リーブオン(洗い流さない)パーソナルケア製剤、たとえばデイクリーム又はパウダークリーム型のフェイシャルメークアップ、フェイスパウダー(ルース又はプレス)、口紅又はクリームメークアップ、アイケア製剤(例えばアイシャドウ製剤、マスカラ、アイライナー、アイクリームまたはアイ−フィクスクリーム)、リップケア製剤(例えばリップスティク、リップグロス、リップ輪郭用ペンシル)、ネイルケア製剤(マニキュア液、マニキュア除去剤、ネイル硬化剤又はキューティクル除去剤)など。
−局部衛生製剤、例えば局部洗浄ローション又は局部スプレーなど。
−フットケア製剤、例えばフットバス、フットパウダー、フットクリーム又はフットバルサム、スペシャルデオドラント及び制汗剤又はたこ除去用製剤など。
−光保護製剤、例えばサンミルク、ローション、クリーム又はオイル、サンブロック又はトロピカル、プレ日焼け製剤又は日焼け後製剤など。
−スキン・タンニング製剤、例えばセルフ・タンニングクリームなど。
−脱色用製剤、例えば皮膚脱色用製剤又は皮膚美白製剤など。
−防虫剤、例えば虫除けオイル、ローション、スプレー、又はスティックなど。
−デオドラント、例えばデオドラントスプレー、ポンプアクションスプレー、デオドラントジェル、スティック又はロールオンなど。
−制汗剤、例えば制汗剤スティック、クリームまたはロールオンなど。
−荒れた肌用のクレンジング及びケア製剤、例えば合成洗剤(固形又は液体)、ピーリング又はスクラブ製剤又はピーリングマスクなど。
−化学型の脱毛製剤(脱毛)、例えば脱毛パウダー、リキッド脱毛製剤、クリーム又はペースト型脱毛製剤、ジェル型又はエアロゾル型脱毛製剤など。
−シェービング製剤、例えばシェービングソープ、泡状シェービングクリーム、非泡状シェービングクリーム、フォーム及びジェル、ドライシェービング用プレシェーブ製剤、アフターシェーブ又はアフターシェーブローションなど。
−フレグランス製剤、例えば香水(オーデコロン、オーデトワレ、オーデパフューム、パフュームデトワレ、パフューム)、香油、又はパフュームクリームなど。
−デンタルケア、入れ歯用及びマウスケア製剤、例えば、歯磨きペースト、ジェル歯磨きペースト、歯磨き粉、マウスウォッシュ濃縮液、歯石防止用マウスウォッシュ、入れ歯洗浄剤又は入れ歯安定剤など。
−化粧品毛髪トリートメント製剤、例えばシャンプー及びコンデショナー型の毛髪洗浄製剤、ヘアケア製剤(例えばプレトリートメント製剤、ヘアトニック、スタイリングクリーム、スタイリングジェル、ポマード、ヘアリンス、トリートメントパック、集中ヘアトリートメント)、毛髪構築製剤(例えばパーマネントウェーブ用(ホットウェーブ、マイルドウェーブ、コールドウェーブ)ヘアウェービング製剤、ストレートヘア製剤、リキッドヘアセッティング製剤、ヘアフォーム、ヘアスプレー)、脱色剤(例えば過酸化水素溶液、色抜きシャンプー、脱色クリーム、脱色パウダー、脱色ペースト及びオイル)、一時的、半永久的又は永久ヘアカラー、自己酸化染料、又は天然ヘアカラー(ヘナ又はカモミール)など。
【0020】
抗菌石鹸は例えば以下の組成を有する。
式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物 0.01乃至5質量%
二酸化チタン 0.3乃至1質量%
ステアリン酸 1乃至10質量%
たとえば獣脂脂肪酸又はココナッツ脂肪酸のナトリウム塩、又はグリセロールなどの石鹸ベースを加えて100%
【0021】
シャンプーは例えば以下の組成を有する。
式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物 0.01乃至5質量%
ラウレス−2−硫酸ナトリウム 12.0質量%
コカミドプロピルベタイン 4.0質量%
NaCl 3.0質量%
水を加えて100%
【0022】
デオドラントは例えば以下の組成を有する。
式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物 0.01乃至5質量%
エタノール 60質量%
香油 0.3質量%
水を加えて100%
【0023】
本発明はまた、組成物の全質量に基づいて、0.01乃至15質量%の式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物、並びに口腔上許容される補助剤を含む口腔用組成物に関する。
【0024】
口腔用組成物の例:
ソルビトール 10質量%
グリセロール 10質量%
エタノール 15質量%
プロピレングリコール 15質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5質量%
メチルコシルタウレートナトリウム 0.25質量%
ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー 0.25質量%
ペパーミント香料 0.10質量%
式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物 0.1乃至5質量%
水 48.6質量%
【0025】
本発明による口腔用組成物は、例えばジェル、ペースト、クリーム又は水性製剤(マウスウォッシュ)形態であり得る。
【0026】
本発明の口腔用組成物はまた、例えばフッ化ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はカルシウムなどの無機フッ化塩、又は例えば商品名オラフルオール(Olafluor)として知られるフッ化アミンなどの有機フッ化塩などの、虫歯形成に対して効果的なフッ化イオンを放出する化合物をも含み得る。
【0027】
本発明による式(1a)、(1b)又は(1c)の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体はまた織物用繊維材料の処理、特に保存に好適である。該材料は、未染色及び染色又は印刷された、たとえば絹、羊毛、ポリアミド又はポリウレタンからできた繊維材料、及び、特にあらゆる種類のセルロース繊維材料である。前記繊維材料は、例えば綿、麻、ジュート及びヘンプなどの天然セルロース繊維のほか、セルロール及び再生セルロースである。好ましい好適な織物用繊維物質は綿製のものである。
【0028】
本発明による3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体はまた、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ラテックスなどのプラスチックの処理、特に、抗菌性の付与や保存性に好適である。したがって、これらの使用分野は、例えば、床被覆材、プラスチックコーティング、プラスチックコンテナ及び包装材料、キッチン及びバスルーム用品(例えばブラシ、シャワーカーテン、スポンジ、バスマットなど)、ラテックス、フィルター材料(エアフィルター及びウォーターフィルター)、例えばドレッシング材、シリンジ、カテーテルなど、所謂「メディカルデバイス」、手袋及びマットレスなど、医療分野で使用されるプラスチック用具などである。
【0029】
紙、例えば衛生目的で使用される紙もまた、本発明による式(1a)、(1b)又は(1c)の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体を用いて抗菌性が与えられ得る。
【0030】
たとえばナプキン/おむつ、生理用ナプキン、パンティライナー並びに衛生用及び家庭用布類などの不織布に対しても、本発明によって抗菌性を付与することが可能である。
【0031】
本発明による3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体はまた、例えば液体又はパウダー洗浄剤又は柔軟剤などの洗浄及びクリーニング配合物にも使用される。
【0032】
式(1a)、(1b)又は(1c)の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体はまた、特に、塗装面のクリーニング及び殺菌用の家庭用及び一般用クリーナーに使用することができる。
【0033】
クリーニング製剤は例えば以下の組成を有する。
式(1a)、(1b)又は(1c)の化合物 0.01乃至5%
オクチルアルコール4EO 3.0%
脂肪アルコール炭素原子数8乃至10のポリグルコシド 1.3%
イソプロパノール 3.0%
水を加えて100%
【0034】
化粧品及び家庭用品の保存に加えて、工業製品の保存、工業製品への抗菌性の賦与、及び、例えば紙処理、特に紙処理液、スターチ又はセルロール誘導体の印刷用濃縮剤、表面コーティング及び塗料などにおける工業プロセスにおける殺生剤としての使用もまた可能である。
【0035】
式(1a)、(1b)又は(1c)の3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体はまた、木材の抗菌処理、皮革の抗菌処理、皮革の保存及び皮革への抗菌性賦与に好適である。
【0036】
本発明による化合物はまた、微生物被害からの化粧品及び家庭用品の保護に好適である。
【0037】
さらに、本発明の化合物はまた、活性な表面及び非活性な表面に形成されたバイオフィルムへ浸透することができる。それらはまた、必要に応じて、表面へのバクテリアの付着を防ぎ、さらなるバイオフィルムの形成を防ぐことができる。それらは、バイオフィルムを分離すること、及び/又は、生体マトリクスにおけるバイオフィルムを形成する微生物の成長を妨げること、又はそれらを死滅させることができる。
【0038】
一般に、バイオフィルムは、活性又は非活性な微生物(好ましくはバクテリア)と、多糖類などの細胞外ポリマー物質(EPS−マトリクス)の形態の中間分解生成物と一緒になった集合体である。一般にプランクトン細胞に対して明らかな成長阻害活性又は殺活性を示す抗菌活性物質の有効性は、すなわちバイオマトリクスへの前記活性物質の不十分な侵入により、バイオフィルム中に組織された微生物を強力に減少させ得る。
【0039】
本発明の化合物はしたがって、歯及び口腔粘膜の表面に形成され、虫歯や歯周症などの口腔領域における変性疾患の形成に関与するバイオフィルムに対して、効果的な活性物質である。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は本発明を説明するが、これに限定するものではない。
【0041】
実施例1:アリール−モノ−(2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸)−エステル(101)の製造
【化5】

【0042】
ヘキサン中のn−Buli1mmol溶液1.6mをTHFabs中のジイソプロピルアミ
ン1mmol溶液(ジイソプロピルアミン1ml当たりTHFabs6ml)に−10℃で
加えた。混合物を15分間攪拌し、そして−78℃に冷却した。
その後、対応するシアノアセテート0.5mmol溶液をまず前記温度でTHF(シアノアセテート1g当たりTHF1ml)に加え、さらに15分間攪拌し、それから酸クロリド0.5mmol溶液をTHF(酸クロリド1g当たりTHF2ml)に加えた。
−78℃で45分間攪拌後、反応混合物を前記温度でHCl15%溶液でクエンチし、一晩かけて室温まで温めた。
仕上げに、反応塊を酢酸エステルで抽出し、有機相を水で何回か洗浄し、乾燥、精製及び濃縮した。
生成物をシリカゲル上でクロマトグラフ法を用いて単離し精製した(酸性酸エステル/ヘキサン 10/1)。
【0043】
以下の誘導体をこの方法で得た。
【表1】

【0044】
実施例2:アリール−ビス−(2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸)エステル(102)の製造
【化6】

【0045】
ヘキサン中のn−Buli1mmol溶液1.6mをTHFabs中のジイソプロピルアミ
ン1mmol溶液(ジイソプロピルアミン1ml当たりTHFabs6ml)に−10℃で
加えた。混合物を15分間攪拌し、そして−78℃に冷却した。
その後、対応するシアノアセテート0.5mmol溶液をまず前記温度でTHF(シアノアセテート1g当たりTHF1ml)に加え、さらに15分間攪拌し、それから酸クロリド0.5mmol溶液をTHF(酸クロリド1g当たりTHF2ml)に加えた。
−78℃で45分間攪拌後、反応混合物を前記温度でHCl15%溶液でクエンチし、一晩かけて室温まで温めた。
実施例1に準じて再生、単離及び精製のための仕上作業が行われた。
【0046】
以下の誘導体をこの方法で得た。
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
実施例3:β−アリル−α−シアノ−β−ケトエステルの合成
0℃に保ったα−シアノエステル(1mmol)、MgCl2(1mmol)含有乾燥C
3CN(アロイルクロリド1g当たり5mL)溶液にNEt3(2mmol)を加え、混合物を5分間攪拌した。
DMAP(0.5mmol)を加え、混合物を15分間さらに攪拌した。
この混合物に酸クロリド(1mmol)を加え、反応塊を0℃で45分間、さらに室温にて1時間攪拌した。
反応混合物をHCl15%溶液で0℃にてクエンチし、酢酸エチルにて抽出した。
有機相を水、塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥した。
減圧下で濃縮し、粗製物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにかけた。
再カラムによってさらなる精製を実現した。
【0050】
様々なβ−アリル−α−シアノ−β−ケトエステルの収率を表2に示す。これら誘導体の1H−NMR及び13C−NMRデータを表3及び表4にそれぞれ示す。
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
実施例4:最小抑制濃度の決定(MIC値)
a)液体希釈法による自動MICスクリーニング
培地:カゼイン/ソイミール ペプトン寒天(メルク)
希釈液:DMSO
使用微生物:黄色ブドウ球菌 ATCC6538
大腸菌 ATCC10536
アクチノミセス・ビスコーサス ATCC43146
コリネバクテリウム・セロシス ATCC373 又は
コリネバクテリウム・ミヌティシマム ATCC23348
培養:37℃で24〜48時間
試験溶液:全ての試験物質の0.3%原液を適当な溶媒で調製し、ディープウェルプレー
ト中でDSMO(ジメチルスルホキシド)にて最終濃度120μg/mlから3.75μg/mlに段階希釈にて希釈した
【0054】
試験方式
各希釈段階8μlをマイクロタイタープレート中で栄養培地192μlと混合した。プレートを37℃で24時間培養し、その後もはや成長が識別できない試験物質の最大希釈(最低濃度)を測定した(MICに相当する)。
【0055】
【表8】

【0056】
b)液体希釈法におけるMIC対各種口腔細菌の測定
培地:へミン及びメナジオン含有チオグリコレートブイヨン
ヘミン及びメナジオン含有コロンビアブイヨン(P.ジンジバリス及びP.ニグレスセンス用)
希釈液:前記物質の対応量を直接ピペットした
供試生物の例:アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス ATCC43718
ストレプトコッカス・ゴルドニー ATCC10558
ストレプトコッカス・ミュータンス ATCC33402
アクチノミセス・ビスコーサス ATCC43146
フソバクテリウム・ヌクレアトム亜種ポリモルファム ATCC1095
ポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC3277
プレボテラ・ニグレスセンス ATCC33563
培養:嫌気状態下で37℃で7〜10日間
10%CO2含有の好気的下でそれぞれ24時間(ストレプトコッカス類及びA.
アクチノミセタムコミタンスの場合)
試験溶液:全ての試験物質の1500ppm(w/w)エタノール溶液の原液を用いた
【0057】
試験方式
バクテリアを綿棒を用いて血液寒天プレートから採取し、適当なO.D.を対応する培地(マクファーランド 0,5)において適応させた。この溶液をF.ヌクレアトム及びP.ニグレスセンスには不希釈状態で、他の菌には1:20希釈液で用いた。有効成分を含む溶液各2mlに菌培養物0.1mlを加え、上記の通りに培養した。
結果を表5に示す。
【0058】
【表9】

【0059】
c)寒天取りこみ試験におけるMICの広域細菌スペクトルの測定
培地:カゼイン/ソイミール ペプトン寒天(メルク)
※サブロウ4%グルコース寒天(メルク)
希釈液:無菌0.85%NaCl溶液
使用微生物(例):黄色ブドウ球菌 ATCC6538
表皮ブドウ球菌 ATCC12228
コリネバクテリウム・セロシス ATCC373
プロピオニバクテリウム・アクネ ATCC6919
大腸菌 ATCC10536
シェードモナス・アエルギノーザ(緑膿菌) ATCC15442
カンジダ・アルビカンス ATCC10231※
培養:37℃で24時間
は28℃で3日間
試験溶液:全ての試験物質の1%原液を適当な溶媒で調製し、最終濃度1000ppmから10ppmに段階希釈にて希釈した
【0060】
試験方式
各希釈段階0.3mlをまだ液体である栄養培地15mlと混合した。栄養培地を固体化させた後、0.85%NaCl溶液中の以下の試験菌株の微生物希釈液各10μlを寒天培地上に滴下した。
プレートを37℃で24時間の間培養し、その後もはや成長が識別できない試験物質の最大希釈(最低濃度)を測定した(MICに相当する)。
【0061】
【表10】








【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20の
アルコキシ基、CF3、炭素原子数6乃至10のアリール基を表すか、又は式
【化2】

で表される基を表し、
2は水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
で表される3−アリール−2−シアノ−3−ヒドロキシ−アクリル酸誘導体。
【請求項2】
1が炭素原子数6乃至10のアリール基であることを特徴とする、請求項1記載の式(
1a)で表される化合物。
【請求項3】
1がフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2が炭素原子数1乃至20のアルキル基であることを特徴とする、請求項1乃至請求項
3のうち何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】

【化3】

(式中、R2は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
に相当することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の化合物。
【請求項6】

【化4】

(式中、R2は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
に相当することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の化合物。
【請求項7】

【化5】

(式中、R2は炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
に相当することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1記載の式(1)で表される化合物の製造方法であって、
以下の反応スキーム
【化6】

(式中、R1およびR2は請求項1に定義された通りである。)
に従って、式(1b)で表されるシアノアセテートを式(1a)で表されるカルボン酸クロリドと縮合させて式(1)で表される化合物にすることからなる方法。
【請求項9】
表面の抗菌処理のための請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物の使用。
【請求項10】
皮膚、粘膜及び毛髪の抗菌処理、脱臭及び殺菌のための、請求項9に記載の式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物の使用。
【請求項11】
式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物を、表面上へのバクテリアの付着防止及びさらなるバイオフィルムの形成のため、並びに、バイオフィルムの分離及び/又は生体マトリックス中のバイオフィルムを形成する微生物の増殖の抑制のため、又はそれらを死滅させるために用いる、請求項10記載の使用。
【請求項12】
織物繊維材料の処理のための式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物の使用。
【請求項13】
式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物が保存に用いられることを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項14】
式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物が洗浄及びクリーニング配合物に用いられることを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項15】
式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物がプラスチック、紙、不織布、木材又は皮革に抗菌性を与えかつ保存することに用いられることを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項16】
工業製品に抗菌性を与え並びに保存するための、式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物の使用。
【請求項17】
工業プロセスにおける殺生剤としての式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物の使用。
【請求項18】
組成物の全質量に基づいて0.01乃至15質量%の式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物、及び、美容上許容される補助剤を含むパーソナルケア製剤。
【請求項19】
組成物の全質量に基づいて0.01乃至15質量%の式(1a)、(1b)又は(1c)で表される化合物、及び、経口上許容される補助剤を含む口腔用組成物。


【公表番号】特表2007−500170(P2007−500170A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521570(P2006−521570)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051533
【国際公開番号】WO2005/012235
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】