説明

3−置換2−アミノ−5−ハロベンズアミドの製造方法

【化1】


カルボン酸の存在下で、式2の化合物をR−NHと接触させることによって式1の化合物を製造する方法と、式4の化合物を三臭化リンと接触させることによって式2の化合物を製造する方法を開示する。(式中、Rは、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、Rは、CHまたはClであり、Rは、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよいC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルであり、Xは、ClまたはBrである)
また式1の化合物を使用することによって、式5(式中、R、R、RおよびZは開示中に定義されるとおりである)の化合物を製造する方法であって、上記方法によって式1の化合物を製造することを特徴とする方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
PCT特許公報、国際公開第2003/015518号パンフレット、国際公開第2006/055922号パンフレットおよび国際公開第2006/062978号パンフレットに開示されるように、3−置換2−アミノ−5−ハロベンズアミドは、アントラニル酸の殺節足動物性ジアミンを製造するための有用な出発物質である。国際公開第2006/062978号パンフレットには、対応する3−置換2−アミノベンズアミドのハロゲン化によって3−置換2−アミノ−5−ハロベンズアミドを製造可能であることが開示されている。ベンゼン環上でアミノ基が求電子置換反応を強力に活性化するため、3−置換2−アミノベンズアミドは求電子性ハロゲン化剤と5位において迅速に反応する。しかしながら、得られる生成物はそれ自体がアニリンであり、モノハロゲン化によって部分的にのみ不活性化されているため、さらなるハロゲン化が可能である。したがって、アニリンが直接的にハロゲン化剤と反応することなく、3−置換2−アミノ−5−ハロベンズアミドを製造するための新規方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、式1
【化1】


[式中、Rは、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
は、CHまたはClであり、
Xは、ClまたはBrである]の化合物を製造する方法であって、カルボン酸の存在下で、式2
【化2】


の化合物を式3
【化3】


の化合物と接触させることを含んでなる方法を提供する。
【0003】
また本発明は、RがCHまたはClであり、XがClまたはBrである式2の化合物を製造する方法であって、式4
【化4】


[式中、Rは、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよいC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルである]の化合物を三臭化リンと接触させることを含んでなる方法も提供する。
【0004】
本発明はさらに、RがCHまたはClであり、Rが、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよいC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルであり、XがClまたはBrであるが、ただし、RおよびXがそれぞれClである場合、RはCH以外である式4の新規化合物に関する。この化合物は、上記方法によって式1および式2の化合物を製造するための有用な中間体である。
【0005】
また本発明は、式1の化合物を使用することによって、式5
【化5】


[式中、XはClまたはBrであり、
ZはCRまたはNであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
はCHまたはClであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、
はH、F、ClまたはBrである]の化合物を製造する方法にも関する。本方法は、上記方法によって式2および式3の化合物から式1の化合物を製造することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなっている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」またはそれらの他のいずれかの変形は、非排他的包含を包括するように意図される。例えば、要素のリストを含んでなる組成物、プロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されるのではなく、明白に記載されていないか、またはかかる組成物、プロセス、方法、物品もしくは装置に固有である他の要素も含んでよい。さらに、それとは反対の記載が明白にされない限り、「あるいは、または、もしくは」は包含的論理和を指し、排他的論理和を指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在する)、Bが偽である(または存在しない)。Aが偽であり(または存在しない)、Bが真である(または存在する)。ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0007】
また本発明の要素または構成成分を先行する不定冠詞「a」および「an」は、要素または構成成分の実例の数(すなわち、発生数)に関して非限定的であるように意図される。したがって、「a」または「an」は、1または少なくとも1を含むように読解されるべきであり、その数が明らかに単数を意味しない限り、要素または構成成分の単数形は複数も含む。
【0008】
基(例えば、アルキルまたはアルケニル)の定義中の「場合により置換されていてもよい」という用語は、その基が未置換であるか、または1個以上の置換基によって、置換基のいずれかの規定の限度数まで置換されていることを意味する。「場合により置換されていてもよい」には未置換であるという選択肢も含まれるため、「1〜3個の置換基によってそれぞれ場合により置換されていてもよい」という句は、場合により0、1、2または3個の置換基が存在することを意味する。したがって、「1〜3個の置換基によってそれぞれ場合により置換されていてもよい」は、「0〜3個の置換基によってそれぞれ場合により置換されていてもよい」や「3個までの置換基によってそれぞれ場合により置換されていてもよい」と類義語である。「場合により置換されていてもよい」と記述された関連の句は同様に定義される。さらなる例として、「3個までのハロゲンによってそれぞれ場合により置換されていてもよい」は、「1〜3個のハロゲンによってそれぞれ場合により置換されていてもよい」と類義語であり、また「1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよい」は、「0〜1個のフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよい」と類義語である。「ハロゲン」が1個もしくは2個以上を含む範囲に関連して記載される場合(例えば、「3個までのハロゲン」)、単数形の「ハロゲン(halogen)」は「(複数形の)ハロゲン(halogens)」、または1個より多いハロゲン原子が存在する場合は「(複数形の)ハロゲン原子(halogen atoms)」を意味する。2個以上の置換基が存在する場合、各置換基は互いに独立している。例えば、2個以上のハロゲンが置換基として存在する場合、各ハロゲン原子は同一であっても、異なるハロゲンであってもよい。
【0009】
本明細書中で、比率は一般に数1と相対的である単数として記述され、例えば、比率4は4:1を意味する。
【0010】
本開示および請求の範囲中に記述される場合、「カルボン酸」という用語は、少なくとも1個のカルボン酸官能基(すなわち、−C(O)OH)を含んでなる有機化合物を意味する。「カルボン酸」という用語には化合物の炭酸(すなわち、HOC(O)OH)は含まれない。カルボン酸には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、マレイン酸、およびクエン酸が含まれる。「有効pK」という用語は、カルボン酸官能基のpKを示すか、またはその化合物が1個より多いカルボン酸官能基を有する場合、「有効pK」は最も酸性のカルボン酸官能基のpKを示す。本明細書に記述される場合、反応混合物のような非水系物質または混合物の「有効pH」は、物質または混合物の一定量を約5〜20体積の水と混合し、次いで得られた水性混合物のpHを(例えばpHメータで)測定することによって決定される。本明細書に記述される場合、「実質的に無水の」物質とは、約1重量%以下の水を含有する物質を意味する。化学名「イサト酸無水物」は、現行のケミカルアブストラクト名「2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン」に対応するもう1つの名前である。
【0011】
本発明の実施形態としては以下が挙げられる。
【0012】
実施形態A1.発明の概要に記載の、カルボン酸の存在下で、式2の化合物を式3の化合物と接触させることを含んでなる式1の化合物を製造する方法。
【0013】
実施形態A2.Rが、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである実施形態A1の方法。
【0014】
実施形態A3.Rが、C〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである実施形態A2の方法。
【0015】
実施形態A4.Rがメチルである実施形態A3の方法。
【0016】
実施形態A5.式3の化合物対式2の化合物のモル比が、約1.1〜約2である実施形態A1の方法。
【0017】
実施形態A5a.式3の化合物対式2の化合物のモル比が、約1.1〜約1.5である実施形態A5の方法。
【0018】
実施形態A5b.式3の化合物対式2の化合物のモル比が、約1.1〜約1.3である実施形態A5aの方法。
【0019】
実施形態A5c.式3の化合物対式2の化合物のモル比が、約1.2〜約1.3である実施形態A5bの方法。
【0020】
実施形態A6.カルボン酸の存在下、および適切な有機溶媒の存在下で、式2の化合物を式3の化合物と接触させる実施形態A1の方法。
【0021】
実施形態A7.カルボン酸の存在下、適切な有機溶媒を含んでなる反応媒体中で、式2の化合物を式3の化合物と接触させる実施形態A1の方法。
【0022】
実施形態A8.反応媒体が5重量%以下の水を含有する実施形態A7の方法。
【0023】
実施形態A9.反応媒体が1重量%以下の水を含有する実施形態A8の方法。
【0024】
実施形態A10.反応媒体が0.1重量%以下の水を含有する実施形態A9の方法。
【0025】
実施形態A11.反応媒体が実質的に無水である実施形態A7の方法。
【0026】
実施形態A12.有機溶媒が、エステル、ケトン、ニトリル、ハロアルカン、エーテル、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素から選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態A6およびA7のいずれか1つの方法。
【0027】
実施形態A13.有機溶媒が、C〜CアルカノールのC〜Cアルキルカルボン酸エステルを含んでなる実施形態A12の方法。
【0028】
実施形態A14.有機溶媒が酢酸エチルを含んでなる実施形態A13の方法。
【0029】
実施形態A15.pHが約3〜約7の範囲である反応媒体中で接触が行われる実施形態A1の方法。
【0030】
実施形態A16.上記範囲内のpHをもたらすようにカルボン酸が選択される実施形態A15の方法。
【0031】
実施形態A17.カルボン酸の有効pKが約2〜約5である実施形態A1の方法。
【0032】
実施形態A18.カルボン酸がC〜C18アルキルカルボン酸である実施形態A1の方法。
【0033】
実施形態A19.カルボン酸が酢酸である実施形態A18の方法。
【0034】
実施形態A20.式3の化合物対カルボン酸のモル比が、約0.6〜約3である実施形態A1の方法。
【0035】
実施形態A20a.式3の化合物対カルボン酸のモル比が、約0.6〜約1.2である実施形態A20の方法。
【0036】
実施形態A20b.式3の化合物対カルボン酸のモル比が、約0.8〜約3である実施形態A20の方法。
【0037】
実施形態A20c.式3の化合物対カルボン酸のモル比が、約0.8〜約1.2である実施形態A20bの方法。
【0038】
実施形態A21.約5℃〜約75℃の範囲の温度で、式2の化合物を式3の化合物およびカルボン酸と接触させる実施形態A1の方法。
【0039】
実施形態A21a.温度が約15℃〜約70℃である実施形態A21の方法。
【0040】
実施形態A21b.温度が約35℃〜約60℃である実施形態A21aの方法。
【0041】
実施形態A21c.温度が約35℃〜約55℃である実施形態A21bの方法。
【0042】
実施形態A21d.温度が約50℃〜約60℃である実施形態A21bの方法。
【0043】
実施形態A22.温度が約50℃〜約55℃である実施形態A21dの方法。
【0044】
実施形態A23.式3の化合物を、式2の化合物とカルボン酸との混合物に添加する実施形態A1の方法。
【0045】
実施形態A24.式3の化合物を無水の形態(すなわち、実質的に無水の形態)で添加する実施形態A23の方法。
【0046】
実施形態A25.式4の化合物と三臭化リンとを接触させることによって式2の化合物を製造する実施形態A1の方法。
【0047】
実施形態A26.式3の化合物を、式2の化合物とカルボン酸とを含んでなる混合物に添加する実施形態A1の方法。
【0048】
実施形態B1.発明の概要に記載の、式4の化合物を三臭化リンと接触させることを含んでなる式2の化合物を製造する方法。
【0049】
実施形態B4.RがC〜Cアルキルである実施形態B1の方法。
【0050】
実施形態B5.Rが、酸素に結合したRの炭素原子において分枝がない実施形態B4の方法。
【0051】
実施形態B6.Rがメチルまたはエチルである実施形態B5の方法。
【0052】
実施形態B7.適切な有機溶媒の存在下で、式4の化合物を三臭化リンと接触させる実施形態B1の方法。
【0053】
実施形態B8.有機溶媒が、エステル、ニトリル、炭化水素およびハロゲン化炭化水素から選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態B1の方法。
【0054】
実施形態B8a.有機溶媒が、エステル、ニトリル、ハロアルカン、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素から選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態B8の方法。
【0055】
実施形態B9.有機溶媒が、ハロアルカン、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素から選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態B8aの方法。
【0056】
実施形態B10.有機溶媒が、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびクロロベンゼンから選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態B9の方法。
【0057】
実施形態B11.有機溶媒がトルエンを含んでなる実施形態B10の方法。
【0058】
実施形態B12.三臭化リン対式3の化合物のモル比が、約0.3〜約3である実施形態B1の方法。
【0059】
実施形態B12a.三臭化リン対式3の化合物のモル比が、約0.3〜約0.5である実施形態B12の方法。
【0060】
実施形態B13.三臭化リン対式3の化合物のモル比が、約0.33〜約0.40である実施形態B12aの方法。
【0061】
実施形態B14.約50℃〜約90℃の範囲の温度で、式3の化合物を三臭化リンと接触させる実施形態B1の方法。
【0062】
実施形態B14a.温度が約50℃〜約80℃の範囲である実施形態B14の方法。
【0063】
実施形態B14b.温度が約60℃〜約75℃の範囲である実施形態B15aの方法。
【0064】
実施形態B15.温度が約60℃〜約70℃の範囲である実施形態B14bの方法。
【0065】
実施形態C1.Rがメチルである実施形態A1およびB1のいずれか1つの方法。
【0066】
実施形態C2.XがClである実施形態A1およびB1のいずれか1つの方法。
【0067】
実施形態C3.XがBrである実施形態A1およびB1のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態C4.RがCHであり、XがClである実施形態A1、A4およびB1のいずれか1つの方法。
【0069】
実施形態D1.RがCHまたはClであり、Rが、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよいC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルであり、XがClまたはBrであるが、ただし、RおよびXがそれぞれClである場合、RはCH以外である式4の化合物。
【0070】
実施形態D2.RがCHである実施形態D1の化合物。
【0071】
実施形態D3.RがC〜Cアルキルである実施形態D1の化合物。
【0072】
実施形態D4.Rが、酸素に結合したRの炭素原子において分枝がない実施形態D3の化合物。
【0073】
実施形態D5.Rがメチルまたはエチルである実施形態D4の化合物。
【0074】
実施形態D6.XがClである実施形態D1の化合物。
【0075】
実施形態D7.XがBrである実施形態D1の化合物。
【0076】
実施形態D8.RがCHであり、XがClである実施形態D1の化合物。
【0077】
実施形態D9.RがCHであり、XがBrである実施形態D1の化合物。
【0078】
実施形態D10.RがC〜Cアルキルである実施形態D1、D8およびD9のいずれか1つの化合物。
【0079】
実施形態D11.RがCHであり、RがCHであり、XがClである実施形態D10の化合物。
【0080】
実施形態D12.RがCHであり、RがCHであり、XがBrである実施形態D10の化合物。
【0081】
実施形態D13.RがCHであり、RがCHCHであり、XがClである実施
形態D10の化合物。
【0082】
実施形態D14.RがCHであり、RがCHCHであり、XがBrである実施形態D10の化合物。
【0083】
実施形態D15.XがClである場合、RがCl以外である実施形態D1の化合物。
【0084】
実施形態D16.RがCHである実施形態D1の化合物。
【0085】
実施形態E1.発明の概要に記載の、式2および式3の化合物から製造された式1の化合物を使用して、式5の化合物を製造する方法。
【0086】
実施形態E2.XがClである実施形態E1の方法。
【0087】
実施形態E3.XがBrである実施形態E1の方法。
【0088】
実施形態E4.ZがNである実施形態E1の方法。
【0089】
実施形態E5.Rが、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである実施形態E1の方法。
【0090】
実施形態E6.RがC〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである実施形態E5の方法。
【0091】
実施形態E7.Rがメチルである実施形態E6の方法。
【0092】
実施形態E8.RがCHである実施形態E1の方法。
【0093】
実施形態E9.RがBrである実施形態E1の方法。
【0094】
実施形態E10.RがClである実施形態E1の方法。
【0095】
実施形態E11.RがHである実施形態E1の方法。
【0096】
実施形態E12.RがCHであり、RがCHであり、RがBrであり、RがClであり、RがHであり、XがClであり、ZがNである実施形態E1の方法。
【0097】
本発明の実施形態をいずれの様式でも組み合わせることができる。
【0098】
本発明の方法および中間体を以下にさらに詳細に説明する。以下のスキーム中、R、R、R、R、R、R、R、XおよびZの定義は、特記されない限り、上記で定義されたとおりである。
【0099】
スキーム1に示すように、本発明の方法では、カルボン酸の存在下、式2の置換イサト酸無水物から、式3のアミンと接触させることによって、式1の置換アントラニルアミドを製造する。
【化6】

【0100】
式3の化合物のようなアミンは塩基であるため、カルボン酸がない場合、式2および式3の化合物の混合物は塩基性となる(例えば、有効pH>7)。本方法では、カルボン酸は緩衝剤として働き、反応混合物の有効pHを低下させる。唯一の必要条件は、酸性を付与する少なくとも1つのカルボン酸基であるため、多種多様のカルボン酸が本方法で有用である。他の官能基が存在してもよく、カルボン酸分子上に2個以上のカルボン酸基が存在してもよい。典型的に本方法ではカルボン酸の有効pKは約2〜約5の範囲である。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、酒石酸、およびクエン酸が挙げられる。費用的理由から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および安息香酸のような安価なカルボン酸が好ましい。無水物の形態(「氷酢酸」として知られる)で低価格で市販品として入手可能である酢酸が特に好ましい。
【0101】
カルボン酸と式3の塩基性アミンとを組み合わせることによって、カルボン酸のアミン塩が形成する。このアミン塩は、式2のイサト酸無水物化合物の添加の前に予め形成可能であるが、式2の化合物とカルボン酸との混合物中に式3のアミンを計り入れることによって、その場でこのアミン塩を発生させることもできる。いずれの添加の様式であっても、反応間の混合物の有効pHを約3〜約7に維持することによって、本方法は最良に実行される。
【0102】
混合物の有効pHは、式3のアミンと組み合わせられたカルボン酸の緩衝効果から得られるものであるため、カルボン酸対式3のアミンのモル比を調節することによって、カルボン酸の有効pKによって有効pHを調節することができる。典型的に、式3のアミン対カルボン酸のモル量は約0.6〜約3の範囲であり、より典型的には約0.8〜約3の範囲である。特に組み合わせの様式が、式2のイサト酸無水物化合物とカルボン酸との混合物中への式3のアミンの計り入れを伴う場合、式3のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.85〜約3である。組み合わせの様式が式2の化合物の添加の前のアミン塩の形成を伴う場合、式3のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.8〜約1.05である。ほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)の式3のアミン対カルボン酸が使用される限り、形成したアミン塩は、典型的に、式2の化合物に対して約1.1〜約5モル当量の比率で使用される。どのように成分が混合されるかにかかわらず、最適な転化を得るためには、式3のアミン対式2のイサト酸無水物化合物のモル比は、効率や経済的理由から約1.1〜約1.5が好ましいが、少なくとも1.0であるべきである。式3のアミン対式2の化合物のモル量は、特にほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)のアミン対酸が使用される場合、実質的に1.5より大きくてもよい。
【0103】
反応媒体が実質的に無水である場合、スキーム1の方法によって、典型的に、最も高い生産収率および純度が達成される。したがって、反応媒体は典型的に、式1および式2の実質的に無水の化合物とカルボン酸とから形成される。好ましくは、反応媒体および形性物質は、約5重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、最も好ましくは約0.1重量%以下の水を含有する。カルボン酸が酢酸である場合、氷酢酸の形態が好ましい。
【0104】
スキーム1の反応は典型的に液相で行われる。多くの場合、式1、式2および式3の化合物とカルボン酸以外の溶媒を用いずに反応を行うことができる。しかしながら、好ましい手順では、反応物を懸濁し、少なくとも部分的に溶解することができる溶媒の使用を伴う。好ましい溶媒は、反応成分と非反応性であり、誘電率が約5以上であって、アルキルニトリル、エステル、エーテルまたはケトンのような溶媒である。好ましくは、溶媒は、実質的に無水の反応媒体の達成を容易にするために、実質的に無水であるべきである。溶媒対式2の化合物の重量比は、効率や経済的理由から、典型的に約1〜約20、好ましくは約5である。
【0105】
スキーム1の方法では、副生物として二酸化炭素が生じる。この方法を典型的に実行した時、形成した二酸化炭素の大部分は反応媒体から気体として放出する。式3のアミンを含有する反応媒体中に式2の化合物を添加すること、または式2の化合物を含有する反応媒体中に式3のアミンを添加することは、好ましくは、二酸化炭素の放出の制御を容易にするような速度および温度で行われる。反応媒体の温度は、典型的に約5℃〜75℃、より典型的には約35℃〜60℃である。
【0106】
pH調節、抽出、蒸発、結晶化およびクロマトグラフィーを含む当該分野で既知の標準技術によって、式1の生成物を単離することができる。例えば、式2の出発化合物に対して約3〜15重量部の水を用いて反応媒体を希釈することができ、酸性または塩基性不純物の除去を最適化するために、場合により酸または塩基によってpHを調節することができ、場合により水相を分離することができ、また有機溶媒の大部分を減圧下で蒸留または蒸発することによって除去することができる。式1の化合物は典型的に周囲温度で結晶固体であるため、一般に、場合により水を用いた洗浄とその後の乾燥が続けられる濾過によって最も容易に単離される。典型的に、後処理の間にpH調節は不必要であり、水は式1の生成物の有用な結晶化媒体である。したがって、特に都合のよい手順は、反応媒体を水で希釈し、周囲温度での蒸留によって有機溶媒の大部分を除去し、次いで水性混合物を冷却して、生成物を結晶化するというものである。この生成物は濾過によって回収可能である。以下の実施例2〜5で、スキーム1の方法について説明する。
【0107】
スキーム2に示すように、本発明のもう1つの態様では、式4の化合物と三臭化リンとを接触させることによって式2の置換イサト酸無水物を製造する。
【化7】


いずれかの特定の理論に拘束されることなく、三臭化リンは式4の化合物と反応して、臭化水素と一緒に中間体として提示1に示される式10の化合物を生じると考えられる。これはその後反応し、式2の化合物と、最終的な副生物としてRBrを形成する。
【化8】

【0108】
スキーム2の方法では、式4の化合物から式2の化合物への完全な転化を得るために必要とされる三臭化リンの化学量論量は1/3モル当量である。典型的に使用される三臭化リンの量は、約0.3モル当量〜3モル当量であり、経済的理由から約0.33当量〜約0.4当量が好ましい。
【0109】
スキーム2の方法は、式4の化合物を少なくとも部分的に溶解するために、通常、溶媒を含んでなる液相中で典型的に実行される。この溶媒は三臭化リンに対して不活性でなければならず、好ましくは、反応温度に適応するように、標準沸点が50℃より高く、好ましくは70℃より高い。この反応に適切な溶媒の例は、炭化水素(例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、1−クロロブタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン)、エステル(例えば、酢酸n−ブチル)、またはニトリル(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル)である。
【0110】
式4の化合物を溶媒で希釈し、その後、三臭化リンを添加することによって、スキーム2の方法を都合よく実行することができる。典型的に、反応混合物の温度が約50℃〜80℃の範囲に維持されるような速度で、式4の化合物を含んでなる反応混合物に三臭化リンを添加する。好ましくは、それによって発熱反応が制御され、また生成物の純度が最大化することから、反応混合物の温度が約60℃〜75℃の範囲に維持されるように三臭化リンの添加速度を選択する。
【0111】
反応完了後、スパージング、pH調節、抽出、蒸発、結晶化およびクロマトグラフィーを含む当該分野で既知の標準方法によって、式2の生成物を単離することができる。空気または窒素のような気体を用いてスパージングすることによって、反応混合物中に残っている大量のRBrおよび臭化水素を除去することができる。式2の化合物は一般に結晶固体であり、反応混合物の冷却時に生成物は通常、固体として結晶化する。これを濾過して回収し、水で洗浄して、残留リン酸および臭化水素を除去し、乾燥させることができる。実施例1でスキーム2の方法を説明する。
【0112】
例えばスキーム3に示すように、塩素または臭素を用いて式11の対応する化合物をハロゲン化することのような、当該分野で既知の一般法によって、式4の化合物を製造することができる。
【化9】

【0113】
スキーム3のハロゲン化に特に有用であるものは、独国特許出願公開第2750292−A1号明細書の一般法に従って、水性の塩酸または臭化水素酸を過酸化水素と接触させることによって生じる発生期の塩素または臭素である。この方法については、Xが塩素である場合に関して参照例1に説明する。塩酸を臭化水素と置き換えることにより、この方法を用いることによって対応する化合物を製造することができる。
【0114】
さらに詳述しなくても、当業者は、上記を使用して、本発明をその完全な範囲まで利用することができると思われる。したがって、以下の実施例は単なる説明として解釈されるべきであり、その開示をいずれかの様式に制限するものではない。クロマトグラフィー溶媒混合物を除き、または特記されない限り、百分率は重量による。特記されない限り、クロマトグラフィー溶媒混合物の部および百分率は体積による。エース(Ace)C4 カラム(アドバンスド クロマトグラフィー テクノロジーズ(Advanced Chromatography Technologies),スコットランド アバディーン(Aberdeen,Scotland))、およびHPOでpH3まで調節された0.005M NaHPO/HO緩衝液を含有するアセトニトリル/水勾配を使用して、逆相HPLCによって、2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミドを含有する生成物の純度を決定した。H NMRスペクトルはテトラメチルシランから低磁場へppmで報告され、「s」は一重項を意味し、「d」は二重項を意味し、「t」は三重項を意味し、「q」は四重項を意味し、「m」は多重項を意味し、「dd」は二重項の二重項を意味し、「dt」は三重項の二重項を意味し、「br s」は広幅一重項を意味し、「br m」は広幅多重項を意味する。
【実施例】
【0115】
参照例1
5−クロロ−2−[(エトキシカルボニル)アミノ]−3−メチル安息香酸(式4の化合物)の製造
オーバーヘッド攪拌機と熱電対を備えた2Lの反応器に、150g(0.672モル)の2−[(エトキシカルボニル)アミノ]−3−メチル安息香酸(純度約98%)と酢酸(500g)を投入した。得られたスラリーを35℃〜40℃まで加熱すると溶液が得られるので、これを30℃まで冷却し、そして塩酸(37%、150g、1.5モル、2.2当量)を添加した。この混合物を30℃に維持しながら、過酸化水素水(30%、96g、0.85モル、1.25当量)を1時間かけて添加した。その後、この混合物を35℃まで加温し、この温度で約1時間保持した。温度を30℃〜35℃に維持しながら、約600mLの水を約30分かけて計り入れた。混合物を10℃まで冷却し、濾過して生成物を回収した。湿ったケーキを水(3×100mL)で洗浄し、3回目の水をKI−デンプン紙で検査したところ、陰性であった。この湿ったケーキを真空オーブン中50℃で一定重量になるまで乾燥させた。粗製収量は約150g(98%の2−[(エトキシカルボニル)アミノ]−3−メチル安息香酸の推定純度および95%の推定生成物純度を基準として約84%)であった。粗製生成物の一部を最初にトルエンから再結晶化し、その後、水性メタノールから再結晶化し、124℃〜126℃で融解する分析試料を得た。
H NMR(DMSO−d)δ1.19(t,3H)、2.22(s,3H)、4.05(q,2H)、7.54(m,2H)、8.9(br s,1H)、13.1(br s,1H)。
【0116】
実施例1
6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(式2の化合物)の製造
添加ロート、温度計、冷却器、窒素バブラー、および苛性スクラバーを備えた1L3つ口フラスコに、5−クロロ−2−[(エトキシカルボニル)アミノ]−3−メチル安息香酸(すなわち、参照例1の生成物)(74.0g、0.288モル)およびトルエン(300mL)を投入した。この混合物を60℃〜65℃で加熱しながら、三臭化リン(39g、0.144モル)を約60分かけて添加した。この混合物を約30分間65℃で加熱すると、HPLC分析によると0.2%以下の中間体、6−クロロ−2−エトキシ−8−メチル−4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オンが残る結果となった。窒素を用いてこの混合物をスパージングして、臭化水素および臭化エチルを除去し、その後20℃まで冷却した。濾過によって生成物を回収し、濾過ケーキをトルエン(30mL)および水(2×100mL)で連続的に洗浄し、その後、吸引乾燥させた。回収した固体を真空オーブン中で一定重量まで乾燥させることにより、表題の化合物が得られた(59g、HPLC分析によると純度約97%)。乾燥させた生成物の一部を60℃でN,N−ジメチルホルムアミド(4体積)中に溶解し、そして20℃まで冷却することによって再結晶化することにより、>250℃で溶解する純度99%の試料が得られた。
H NMR(DMSO−d)δ2.33(s,3H)、7.67(dd,1H,J=2.5および0.6Hz)、7.72(d,1H,J=2.4Hz)、11.2(br s,1H)。
【0117】
実施例2
2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミド(式1の化合物)の製造
温度計と窒素バブラーを備えた300mLフラスコに、酢酸エチル(100mL)および12.6g(0.21モル)の酢酸を投入した。この液体混合物の表面下に無水メチルアミン(6.3g、0.20モル)を添加し、これを冷却して35℃未満の温度に維持した。そして、反応混合物を35℃〜40℃に維持しながら、6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(21g、0.10モル)(すなわち、実施例1の生成物)を数回に分けて添加した。6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオンの添加が完了したら、温度を40℃〜45℃に維持し、反応の経過をHPLC分析によって監視した。20分後、残留する6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオンが0.5%以下となった時、水(50mL)を添加した。蒸留ヘッドを取り付け、適度の真空を加え、そして約46℃〜60℃の内部温度および約30kPa〜50kPaの圧力で酢酸エチルを蒸留除去した。蒸留して除去した酢酸エチルと置き換えるため、水を添加し、反応器の最初の液体体積を維持した。著しい量の水が蒸留し始めたら、水性スラリーを10℃まで冷却した。濾過によって固体を回収し、60℃および13.3kPaで乾燥させ、白色結晶固体として表題の化合物を得た(19g、収率約95%、HPLC分析のピーク面積による純度>98%)。
【0118】
実施例3
2−アミノ−5−クロロ−N,3-ジメチルベンズアミドの第2の製造
温度計と窒素バブラーを備えた250mLフラスコに、6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(9.0g、43ミリモル)(すなわち、実施例1の生成物)、酢酸エチル(50mL)および酢酸(3.8g、63ミリモル)を投入した。この混合物を50℃まで加熱し、温度を48℃〜52℃に維持しながら、この混合物の表面下に無水メチルアミン(1.6g、50ミリモル)を添加した。この混合物を1時間50℃に保持し、次いで水(65mL)を添加し、蒸留して酢酸エチルを除去した。ポット温度が83℃に達したら、溶液を核化し、そして生成物のスラリーを3時間かけて10℃まで冷却した。この固体を濾過して回収し、乾燥させ、143℃〜145℃で融解する白色結晶固体として表題の化合物を得た(7.94g、HPLC分析によると純度>98.5重量%、収率93%)。
H NMR(DMSO−d)δ2.08(s,3H)、2.72(d,3H,J=4.5Hz)、6.36(s,2H)、7.13(d,1H,J=2.1Hz)、7.40(d,1H,J=2.1Hz)、8.33(q,1H,J=4.5hz)。
【0119】
実施例4
2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミドの第3の製造
温度計と窒素バブラーを備えた250mLフラスコに、6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(21.0g、0.099モル)(すなわち、実施例1の生成物)、酢酸エチル(100mL)および酢酸(12.6g、0.21モル)を投入した。この混合物を22℃で攪拌し、温度を22℃〜41℃に維持しながら、45分かけて数回に分けて、この混合物の表面下に無水メチルアミン(4.3g、0.14モル)を添加した。この混合物を2時間40℃に保持し、次いで水(150mL)を添加し、蒸留して酢酸エチルを除去した。ポット温度が83℃に達したら、溶液を核化し、そして生成物のスラリーを約2時間かけて10℃まで冷却した。この固体を濾過して回収し、水で洗浄し、乾燥させ、143℃〜145℃で融解する白色結晶固体として表題の化合物を得た(18.38g、HPLC分析によると純度>97.4重量%、収率94%)。
【0120】
実施例5
水性メチルアミンを使用して、2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミドの製造
無水メチルアミンの代わりに水性メチルアミン(40%溶液、10.75g、0.138モル)を使用することによって、実施例3の手順を修正した。固体の回収および乾燥後、18.57gの粗製生成物が得られ、これはHPLCによると表題の化合物を92.4重量%のみの純度で含有していると示され、したがって、収率87.3%に相当した。HPLCによると、粗製生成物には、5−クロロ−3−メチル−2−[[(メチルアミノ)−カルボニル]アミノ]安息香酸副生物の環化から誘導された約3.4重量%の6−クロロ−3,8−ジメチル−2,4(1H,3H)−キナゾリンジオンと、加水分解生成物である約1.7%の2−アミノ−5−クロロ−3−メチル安息香酸も含まれることが示された。本実施例は、水が生成物の収率および純度に有害な影響を及ぼすことを証明している。
【0121】
表1に、本発明の方法に従って式1の化合物を製造するための詳細な変換を説明する。これらの変換に関して、酢酸が最も都合のよいカルボン酸である。表1および以下の表中、tは第三級を意味し、sは第二級を意味し、nはノルマルを意味し、iはイソを意味し、cはシクロを意味し、Meはメチルを意味し、Etはエチルを意味し、Prはプロピルを意味し、Buはブチルを意味する。基の連鎖は同様に短縮され、例えば、「c−PrCH」はシクロプロピルメチルを意味する。
【0122】
【表1】

【0123】
表2に、本発明の方法に従って式2の化合物を製造するための詳細な変換を説明する。
【0124】
【表2】

【0125】
当該分野で既知の方法と一緒に本明細書に記載の方法および手順によって、表3に記載された式4の化合物を製造することができる。特にこれらの化合物は、スキーム3の方法で製造可能な有用な中間体であり、またスキーム2の方法に従って式2の化合物を製造するための出発材料である。
【0126】
【表3】

【0127】
スキーム1の方法で製造した式1の化合物は、式5の化合物を製造するための有用な中間体である。
【化10】


[式中、
Xは、ClまたはBrであり、
Zは、CRまたはNであり、
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
は、CHまたはClであり、
は、Cl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
は、F、ClまたはBrであり、
は、H、FまたはClであり、
は、H、F、ClまたはBrである]
【0128】
式5の化合物は、例えば、PCT特許公報、国際公開第2003/015518号パンフレットおよび国際公開第2006/055922号パンフレットに記載されるように、中間体として有用である。式1の化合物から式5の化合物を製造するための様々な方法が可能である。スキーム4に示す1つの方法では、参照として全体的に本明細書に組み入れられるPCT特許公報、国際公開第2006/062978号パンフレットに教示される一般法に従って、式1の化合物と、式6のカルボン酸化合物と、塩化スルホニルとを組み合わせることによって式5の化合物を製造する。
【化11】

【0129】
国際公開第2006/062978号パンフレットに記載されるように、本方法には様々な反応条件が可能である。典型的に、溶媒および塩基の存在下、式1の化合物と式6の化合物との混合物に塩化スルホニルを添加する。塩化スルホニルは一般に、式RS(O)Clで表され、式中、Rは炭素をベースとする基である。典型的に本方法では、Rは、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、またはハロゲン、C〜Cアルキルおよびニトロからなる群から選択される1〜3個の置換基によって場合により置換されていてもよいフェニルである。市販品として入手可能な塩化スルホニルとしては、塩化メタンスルホニル(RがCHである)、塩化プロパンスルホニル(Rが(CHCHである)、塩化ベンゼンスルホニル(Rがフェニルである)、そして塩化p−トルエンスルホニル(Rが4−メチルフェニルである)が挙げられる。費用がより低いこと、添加の容易さ、および/または廃物の少なさという理由から、注目すべきは塩化メタンスルホニルである。完全な転化を得るためには、式6の化合物1モルあたり、少なくとも1モル当量の塩化スルホニルが化学量論的に必要とされる。典型的に、塩化スルホニル対式6の化合物のモル比は約2.5以下、より典型的に約1.4以下である。
【0130】
式1および式6の出発化合物と塩化スルホニルがそれぞれ少なくとも部分的に溶解性である組み合わせられた液相中で、それぞれが互いに接触した時に式5の化合物が形成する。特に、式1および式6の出発化合物は典型的に通常の周囲温度で固体であるため、これらの出発化合物の溶解性が高い溶媒を使用することによって、本方法は最も満足に実行される。したがって、典型的に本方法は溶媒を含んでなる液相中で実行される。式6のカルボン酸の溶解性が非常に低い場合、塩基の添加によって形成したその塩が溶媒中でより高い溶解性を有することもある。本方法に適切な溶媒としては、アセトニトリルおよびプロピオニトリルのようなニトリル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルのようなエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびメチルブチルケトンのようなケトン、ジクロロメタンおよびトリクロロメタンのようなハロアルカン、エチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびp−ジオキサンのようなエーテル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンのような芳香族炭化水素、トリアルキルアミン、ジアルキルアニリンおよび場合により置換されていてもよいピリジンのような第三級アミン、ならびに上記の混合物が挙げられる。注目すべき溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、アセトン、MEK、ジクロロメタン、メチル第三級ブチルエーテル、THF、p−ジオキサン、トルエンおよびクロロベンゼンが挙げられる。優れた収率および/純度で生成物が得られることが多いため、特に注目すべき溶媒はアセトニトリルである。
【0131】
本方法の反応では副産物として塩化水素が生じ、これは式1、式5および式6の化合物の塩基中心と結合するため、少なくとも1種の添加された塩基が存在する条件で、この方法は最も満足に実行される。塩基は、カルボン酸と塩化スルホニル化合物およびアントラニルアミドとの構成的な相互作用も促進し得る。添加された塩基と式6のカルボン酸との反応によって塩が生じ、この塩は反応媒体中でカルボン酸よりも高い溶解性を有する。塩基は同時に添加されても、交互に添加されても、または塩化スルホニルの添加後に添加されてもよいが、塩基は典型的に塩化スルホニルの添加前に添加される。第三級アミンのようないくつかの溶媒も塩基として作用し、これらが溶媒として使用される場合、塩基として非常に化学量論的過剰量である。塩基が溶媒として使用されない場合、投入された塩基対投入された塩化スルホニルの公称モル比は典型的に約2.0〜2.2であり、好ましくは約2.1〜2.2である。好ましい塩基は、置換ピリジンを含む第三級アミンである。より好ましい塩基としては、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジンおよびピリジンが挙げられる。式6のカルボン酸との塩がアセトニトリルのような溶媒中で非常に溶解性であることが多いため、特に注目すべき塩基は3−ピコリンである。
【0132】
結晶化、濾過および抽出を含む当業者に既知の方法によって、生成物である式5のN−フェニルピラゾール−1−カルボキサミド化合物を反応混合物から単離することができる。国際公開第2006/062978号パンフレットにスキーム4の方法に関する明細な例が開示されている。
【0133】
PCT特許公報、国際公開第1998/57397号パンフレット、国際公開第2003/015519号パンフレット、国際公開第2006/055922号パンフレット、および国際公開第2006/062978号パンフレット、ならびに以下の一覧に見出される参照文献:ロッズ ケミストリー オブ ケミストリー オブ カーボン コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Chemistry of Carbon Compounds),第IVa巻〜第IVl巻,S.コフィ(S.Coffey)編集,エルゼビア サイエンティフィック パブリッシング(Elsevier Scientific Publishing),ニューヨーク(New York),1973;コンプリヘンシブ ヘテロサイクリック ケミストリー(Comprehensive Heterocyclic Chemistry),第1巻〜第7巻,A.R.カトリスキー(A.R.Katritzky)およびC.W.リース(C.W.Rees)編集,ペルガモン プレス(Pergamon Press),ニューヨーク(New York),1984年;コンプリヘンシブ ヘテロサイクリック ケミストリー(Comprehensive Heterocyclic Chemistry)II,第1巻〜第9巻,A.R.カトリスキー(A.R.Katritzky),C.W.リース(C.W.Rees)およびE.F.スクリビン(E.F.Scriven)集,ペルガモン プレス(Pergamon Press),ニューヨーク(New York),1996年;ならびにザ ケミストリー オブ ヘテロサイクリック コンパウンズ(The Chemistry of Heterocyclic Compounds)のシリーズ,E.C.テーラー(E.C.Taylor)編集,ワイリー(Wiley),ニューヨーク(New York)を含む文献で既知の複素環化合物合成法を使用して、式6のピラゾールカルボン酸化合物を製造することができる。
【0134】
スキーム4の方法は、式1のアミン化合物を式5の対応するカルボキサミド化合物へと転化する多くの方法の単なる一例である。カルボン酸およびアミンからカルボキサミドを製造するための多種多様な一般法が当該分野で既知である。総説として、M.ノース(M.North),コンテンポラリー オーガニック シンテシス(Contemporary Org.Synth.)1995年,2,269−287を参照のこと。特定の方法としては、PCT特許公報、国際公開第2003/15518号パンフレットに一般に開示されるように、1,3−ジクロロヘキシルカルボジイミド、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物もしくはベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートのような脱水カップリング剤、または重合体に結合したジシクロヘキシルカルボジイミドのような重合体に結合した類似の試薬の存在下で、典型的にジクロロメタンもしくはN,N−ジメチルホルムアミドのような不活性溶媒中、式1の化合物と式6の化合物とを接触させることが挙げられる。また参照文献には、触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドの存在下で塩化チオニルまたは塩化オキサリルと接触させることによって式6の化合物の塩化アシル相対物を製造し、次いで、アミン塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよび重合体に支持された類似物)、あるいは水酸化物または炭酸塩(例えば、NaOH、KOH、NaCO、KCO)のような酸捕捉剤の存在下、典型的にテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルエーテルまたはジクロロメタンのような不活性溶媒中で、得られた塩化アシルを式1の化合物と接触させる別法も開示されている。結晶化、濾過および抽出を含む当業者に既知の方法によって、反応混合物から生成物である式5の化合物を単離することができる。
【0135】
表4に、本発明の方法に従って、式2および式3の化合物から式5の化合物を製造するための詳細な変換を説明する。式1の化合物から式5の化合物への転化は、例えば、アセトニトリルのような溶媒および3−ピコリンのような塩基の存在下、塩化メタンスルホニルのような塩化スルホニルを使用して、スキーム4の方法に従って達成可能である。
【0136】
【表4】

【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
【表7】

【0140】
【表8】

【0141】
【表9】

【0142】
【表10】

【0143】
【表11】

【0144】
【表12】

【0145】
【表13】

【0146】
【表14】

【0147】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】


(式中、Rは、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
は、CHまたはClであり、そして
Xは、ClまたはBrである)
の化合物を製造する方法であって、カルボン酸の存在下で、式2
【化2】


の化合物を式3
【化3】


の化合物と接触させることを含む方法。
【請求項2】
適切な有機溶媒を含む実質的に無水の反応媒体中で接触が行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酢酸エチルを含む反応媒体中で接触が行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式2の化合物とカルボン酸とを含む混合物に式3の化合物を添加する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
pHが約3〜約7の範囲である反応媒体中で接触が行われる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式4
【化4】


(式中、Rは、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されるC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルである)
の化合物を三臭化リンと接触させることによって式2の化合物を製造する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
がCHであり、RがCHであり、XがClである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式2
【化5】


(式中、RはCHまたはClであり、XはClまたはBrである)の化合物を製造する方法であって、式4
【化6】


(式中、Rは、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されるC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルである)の化合物を三臭化リンと接触させることを含む方法。
【請求項9】
がCHであり、XがClである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式5
【化7】

(式中、XはClまたはBrであり、
ZはCRまたはNであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
はCHまたはClであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、そして
はH、F、ClまたはBrである)の化合物を、式1
【化8】


の化合物を使用して製造する方法であって、請求項1に記載の方法によって上記式1の化合物を製造することを特徴とする方法。
【請求項11】
がCHであり、RがCHであり、RがBrであり、RがClであり、RがHであり、XがClであり、ZがNである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式4
【化9】


(式中、RはCHまたはClであり、
は、3個までのハロゲンおよび1個までのフェニルによってそれぞれ場合により置換されていてもよいC〜CアルキルまたはC〜Cアルケニルであり、
XがClまたはBrであるが、
ただし、RおよびXがそれぞれClである場合、RはCH以外である)
の化合物。
【請求項13】
がCHであり、XがClである請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
がC〜Cアルキルである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
がCHであり、XがBrである請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
がC〜Cアルキルである請求項15に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−543861(P2009−543861A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520746(P2009−520746)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014972
【国際公開番号】WO2008/010897
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】