説明

3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンの塩

本発明は3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンの塩、それらを含有する製薬学的組成物、およびそれらのNOPによりモジュレートされる障害および状態、例えば鬱、不安、アルコール乱用等の処置における使用を対象とする。本発明はさらに3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンおよびそれに対応する塩の調製法(1もしくは複数)を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は引用により本明細書に全部編入する2006年11月28日に出願された米国特許仮出願第60/861,378号明細書の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンの塩、それらを含有する製薬学的組成物、およびそれらのNOPによりモジュレートされる障害および状態の処置における使用を対象とする。本発明はさらに3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンおよび3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンの塩の調製法(1もしくは複数)を対象とする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ノシセプチン受容体としても知られているORL−1(オーファンオピオイド受容体)G−タンパク質共役受容体は1994年に初めて報告され、そして古典的なデルタ−(OP−1)、ミュ−(OP−3)およびカッパ−(OP−2)オピオイド受容体とその相同性に基づき見いだされた。ORL−1Gタンパク質共役受容体はオピオイドリガンドには高親和性で結合しない。ORL−1のアミノ酸配列は、オピオイド受容体全体に対しては47%同一であり、そして膜貫通ドメインでは64%同一である(非特許文献1)。
【0004】
高度に塩基性の17アミノ酸ペプチドであるノシセプチンまたはノシセプチン/オルファニンFQペプチド、すなわちNOPとして知られているORL−1の内因性リガンドは、1995年に組織抽出物から単離された。これは、マウスの脳に注射した時に痛みに対する感度を上げるので両方ともノシセプチンと、そしてN−およびC−末端でそれぞれペプチドを挟む末端のフェニルアラニン(F)およびグルタミン(Q)末端によりオルファニンFQ(OFQ)と名付けられた(特許文献1)。
【0005】
ORL−1受容体へのNOP結合はcAMP合成の阻害、電位型(voltage−gated)カルシウムチャンネルの阻害、およびカリウムコンダクタンスの活性化を生じる。インビボで、ノシセプチンは時折、痛覚過敏およびモルヒネが誘導する痛覚脱失の阻害を含め、このようなオピオイドに対抗する様々な薬理学的効果を生じる。ノシセプチン受容体を欠く変異体マウスは、学習および記憶試験でより良い成果を示す。またこれらの変異体マウスは痛い刺激に対して正常な応答を有する。
【0006】
ORL−1受容体は、脳および脊髄を含むヒト体内全域に広く分布し/発現する。脊髄では、ORL−1受容体は後角および前角の両方に存在し、そして前駆体mRNAが後角の浅層に見いだされ、ここで侵害受容器の主要な求心性線維が終結する。故にORL−1は脊髄での侵害受容(nociception)の伝達に重要な役割を有する。これはノシセプチンがマウスにi.c.v.注射により与えられた時、痛覚過敏を誘導し、そして
運動活性を下げた最近の実験で確認された(非特許文献2)。
【0007】
2004年7月22日に公開された特許文献2でBattista et al.は、ORL−1Gタンパク質共役受容体により媒介される障害および状態の処置に有用であるヒドロキシアルキル置換1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−4−オン誘導体、そしてより詳細には式(Is)
【0008】
【化1】

【0009】
の化合物、およびその製薬学的に許容され得る塩を開示する。式(Is)の化合物は、3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンとしても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第WO97/07212号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願第2004/014955A1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nature,1995,377,532
【非特許文献2】Brit.J.Pharmacol.2000,129,1261
【発明の概要】
【0012】
発明の要約
本発明は式(Is)
【0013】
【化2】

【0014】
の化合物の酸付加塩を対象とし、ここで塩は式(Is)の化合物の末端アミンで形成され、そして酸アニオンは硫酸アニオン、フマル酸アニオン、塩酸アニオンおよび2−ケト−L−グロン酸アニオンからなる群から選択される。
【0015】
本発明の1つの態様では、式(Is)の化合物の塩が一硫酸塩、一フマル酸塩、一塩酸塩、二塩酸塩およびビス−(2−ケト−L−グロン酸)塩からなる群から選択される。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の塩は式(Is)の化合物の一硫酸塩である。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の塩は製薬学的に許容され得る塩である。
【0016】
本発明はさらに式(Is)
【0017】
【化3】

【0018】
の化合物の調製法を対象とし、この方法は
【0019】
【化4】

【0020】
イソインドール−1,3−ジオンと反応させ;次いで無機塩基の存在下で酸と反応させ;対応する式(Is)の化合物を得ることを含んでなる。
【0021】
本発明はさらに式(Is)
【0022】
【化5】

【0023】
の化合物の酸付加塩の調製法を対象とし、この方法は式(Is)の化合物を酸と反応させて対応する酸付加塩を得ることを含んでなる。
【0024】
本発明の1つの態様では、酸は硫酸、フマル酸、塩酸および2−ケト−L−グロン酸からなる群から選択される。本発明の別の態様では、酸は硫酸である。
【0025】
本発明はさらに式(Is)
【0026】
【化6】

【0027】
の化合物の結晶性一硫酸塩の調製法を対象とし、この方法は
(a)式(Is)の化合物を2−ケト−L−グロン酸と反応させ;式(Is)の対応するビス−2−ケト−L−グロン酸塩を得;そして
(b)式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩を水の存在下、アルコール中で硫酸と反応させて、式(Is)の対応する結晶性一硫酸塩を得る、
ことを含んでなる。
【0028】
本発明はさらに式(Is)
【0029】
【化7】

【0030】
の化合物の結晶性一硫酸塩の精製法を対象とし、この方法は式(Is)の化合物の一硫酸塩をアルコール/水混合物から再結晶化することを含んでなる。
【0031】
本発明はさらに本明細書に記載する方法に従い調製された生成物を対象とする。
【0032】
本発明の具体例は、製薬学的に許容され得る担体および本明細書に記載する式(I)の化合物の任意の塩を含んでなる製薬学的組成物である。本発明の具体例は、本明細書に記載する式(I)の化合物の任意の塩および製薬学的に許容され得る担体を混合することにより作られる製薬学的組成物である。本発明の具体的説明は本明細書に記載する式(I)の化合物の任意の塩および製薬学的に許容され得る担体を混合することを含んでなる製薬学的組成物の作成法である。
【0033】
本発明の例示は、処置が必要な個体に治療に有効な量の上記塩または製薬学的組成物を投与することを含んでなるORL−1受容体により媒介される障害または状態(不安、鬱、パニック、躁病、痴呆、双極性障害、物質乱用(例えばアルコール乱用)、神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛片頭痛、喘息、咳、精神病、統合失調症、癲癇、高血圧、肥満、摂食障害、渇望(cravings)、糖尿病、不整脈、過敏性腸症候群、クローン病、尿失禁、副腎障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、認知障害、記憶障害および精神安定化(mood stabilization)からなる群から選択される)を処置する方法である。
【0034】
本発明の別の例は:処置が必要な個体において(a)不安、(b)鬱、(c)パニック、(d)躁病、(e)痴呆、(f)双極性障害、(g)物質乱用、(h)神経障害性疼痛、(i)急性疼痛、(j)慢性疼痛、(k)片頭痛、(l)喘息、(m)咳、(n)精神病、(o)統合失調症、(p)癲癇、(q)高血圧、(r)肥満、(s)摂食障害、(t)渇望、(u)糖尿病、(v)不整脈、(w)過敏性腸症候群、(x)クローン病、(uy)尿失禁、(z)副腎障害、(aa)注意欠陥障害(ADD)、(bb)注意欠陥過活動性障害(ADHD)、(cc)アルツハイマー病、(dd)認知障害、(ee)記憶障害および(ff)精神安定化を処置する薬剤の調製における本発明に記載の塩の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は式(Is)
【0036】
【化8】

【0037】
の化合物の酸付加塩を対象とし、ここで塩は式(Is)の化合物の末端アミンで形成され、そして酸アニオンは硫酸アニオン、フマル酸アニオン、塩酸アニオンおよび2−ケト−L−グロン酸アニオンからなる群から選択される。本発明の1つの態様では、式(Is)の化合物の塩が一硫酸塩、一フマル酸塩、一塩酸塩、二塩酸塩およびジ−(2−ケト−L−グロン酸)塩からなる群から選択される。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の塩は式(Is)の化合物の一硫酸塩である。
【0038】
本発明の1つの態様では、式(Is)の化合物の酸付加塩、好ましくは式(Is)の化合物の結晶性一硫酸塩は実質的に純粋である。
【0039】
1つの態様では、本発明は式(Is)の化合物の硫酸塩を対象とする。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の硫酸塩は結晶性である。本発明の別の態様では、式(Is
)の化合物の硫酸塩は非吸湿性である。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の硫酸塩は一硫酸塩である。本発明の別の態様では硫酸塩は無水である。好ましくは式(Is)の化合物の硫酸塩は、式(Is)の化合物の結晶性、非吸湿性の無水一硫酸塩である。
【0040】
1つの態様では、本発明は式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩を対象とする。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩は結晶性である。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩は非吸湿性である。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩はビス2−ケト−L−グロン酸塩である。好ましくは式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩は、結晶性、非吸湿性のビス2−ケト−L−グロン酸塩である。
【0041】
1つの態様では、本発明は式(Is)の化合物のフマル酸塩を対象とする。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物のフマル酸塩は無水である。
【0042】
1つの態様では、本発明は式(Is)の化合物の塩酸塩を対象とする。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の塩酸塩は式(Is)の化合物の一塩酸塩または二塩酸塩である。本発明の別の態様では、式(Is)の化合物の一塩酸塩および二塩酸塩は結晶性である。式(Is)の化合物の一塩酸塩および二塩酸塩について行ったDVS測定は、これら両方の塩形が吸湿性であることを示す。
【0043】
本明細書、特にスキームおよび実施例で使用する略号は以下の通りである:
DMAC = N,N−ジメチルアセトアミド
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルフォキシド
DVS = 示差蒸気吸着(Differential Vapor
Sorption)
IPA = イソプロピルアルコール
LiHMDS = リチウム ビス(トリメチルシリル)アミド
MTBE = メチル t−ブチルエーテル
NaBH(OAc) = トリアセトキシ硼水素化ナトリウム
THF = テトラヒドロフラン
【0044】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「実質的に純粋な塩」とは、単離された塩の中の不純物のモルパーセントが約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味する。
【0045】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「ORL−1受容体により媒介される障害または状態」とは、障害、疾患、症候群または状態の少なくとも1つの症状および/または発現が、少なくとも部分的にORL−1受容体を介して媒介される任意の障害、疾患、症候群または状態を含む。
【0046】
適切な例には、限定するわけではないが不安、鬱、パニック、躁病、痴呆、双極性障害、物質乱用(例えばアルコール乱用)、神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛片頭痛、喘息、咳、精神病、統合失調症、癲癇、高血圧、肥満、摂食障害、渇望、糖尿病、不整脈、過敏性腸症候群、クローン病、尿失禁、副腎障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、認知障害、記憶障害および精神安定化(ここで本発明の塩は情緒の安定化に使用される)を含む。好ましくはORL−1受容体により媒介される障害または状態は、鬱、不安、物質乱用(より好ましくはアルコール乱用、嗜癖または依存性)および摂食障害からなる群から選択される。
【0047】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「摂食障害」とは摂食に関連する任意の障害を意味する。適切な例には、限定するわけではないが神経性食欲不振、過食症、大食い、食べ物への執着(food cravings)等を含む。
【0048】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「副腎障害」は、副腎により媒介される障害を意味する。適切な例には、限定するわけではないがクッシング症候群、アディソン病等がある。
【0049】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「物質乱用」には物質乱用、嗜癖および/または依存を含み、ここで乱用する物質は個体(subject)もしくは患者が乱用する可能性があり、かつ/または個体もしくは患者が嗜癖もくしは依存を生じる可能性がある任意の合法的もしくは違法な物質である。適切な例には、限定するわけではないがアルコール、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミン、ケタミン、3,4メチレンジオキシメチルアンフェタミン(エクスタシー(Ecstasy)としても知られている)、ニコチン、オキシコンチン(oxycontin)/オキシコドン、コデイン、モルヒネ等がある。好ましくは乱用する物質はアルコール、コカイン、ヘロインおよびニコチンからなる群から選択される。より好ましくは乱用する物質はアルコールである。
【0050】
本明細書で使用するように、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含んでなる生成物、ならびに特定の成分を特定の量で組み合わせたものから直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。
【0051】
本明細書で使用するように、用語「治療に有効な量」とは、研究者、獣医師、医師または他の臨床医により求められる、処置する疾患もしくは障害の症状の緩和を含む組織系、動物またはヒトにおける生物学的または医学的応答を誘導する活性化合物もしくは製薬学的薬剤の量を意味する。
【0052】
本明細書で使用するように、用語「個体」は、処置、観察または実験の対象となった動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは個体は、処置および/または防止される疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状を経験した、かつ/または発現した。
【0053】
より具体的な記載を提供するために、本明細書で与える定量的表現の幾つかは用語「約」で限定されない。用語「約」を明白に使用してもしなくても、本明細書で与える各々の量は、実際に与える量を称することを意味し、そしてそのように与えた値について実験的および/または測定条件による近似を含め、当該技術分野での通常の技術に基づき合理的に推論される上記値に対する近似を指すことも意味する。
【0054】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「非プロトン性溶媒」とは、プロトンを生じない任意の溶媒を意味する。適切な例には限定するわけではないが、DMF、ジオキサン、THF、アセトニトリル、ピリジン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、MTBE、トルエン等を含む。
【0055】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「脱離基」は、置換または置き換え(displacement)反応中にはずれる荷電した、または荷電していない原子または基を意味する。適切な例には、限定するわけではないがBr、Cl、I、メシレート、トシレート等がある。
【0056】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り用語「窒素保護基」は、窒素原子が反
応に参加することを防ぐために窒素原子に結合させることができ、そして反応後に直ちに除去することができる基を意味する。適切な窒素保護基には限定するわけではないがカルバメート(式−C(O)O−Rの基、式中、Rは例えばメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、フェニルエチル、CH=CH−CH−等である);アミド(式−C(O)−R’の基、式中、R’は例えばメチル、フェニル、トリフルオロメチル等である);N−スルホニル誘導体(式−SO−R”の基、式中、R”は例えばトリル、フェニル、トリフルオロメチル、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−イル、2,3,6−トリメチル−4−メトキシベンゼン等である)を含む。他の適切な窒素保護基はT.W.Greene & P.G.M.Wuts,有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、ジョン ウィリー&サンズ、1991のようなテキストに見いだすことができる。
【0057】
本発明の化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、それらはエナンチオマーとしてしかるべく存在することができる。化合物が2以上のキラル中心を有する場合、それらはさらにジアステレオマーとして存在することができる。そのようなすべての異性体およびその混合物は、本発明の範囲に包含されると理解される。好ましくはここで化合物はエナンチオマーとして存在し、エナンチオマーは約80%以上のエナンチオマー過剰で、より好ましくは約90%以上のエナンチオマー過剰で、さらにより好ましくは約95%以上のエナンチオマー過剰で、さらに一層好ましくは約98%以上のエナンチオマー過剰で、最も好ましくは約99%以上のエナンチオマー過剰で存在する。同様にここで化合物はジアステレオマーとして存在し、ジアステレオマーは約80%以上のジアステレオマー過剰で、より好ましくは約90%以上のジアステレオマー過剰で、さらにより好ましくは約95%以上のジアステレオマー過剰で、さらに一層好ましくは約98%以上のジアステレオマー過剰で、最も好ましくは約99%以上のジアステレオマー過剰で存在する。
【0058】
さらに本発明の化合物の結晶形の幾つかは多形として存在することができ、そしてそのままで本発明に含まれることを意図している。加えて本発明の化合物の幾つかは水との(水和物)または一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成することができ、そのような溶媒和物は本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0059】
当業者は本発明の反応工程が様々な溶媒もしくは溶媒系中で行こことができ、該反応工程は適切な溶媒または溶媒系の混合物中でも行うことができると認識している。
【0060】
本発明の化合物の調製法が立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体は分取クロマトグラフィーのような通例の技術により分離することができる。化合物はラセミ体で調製してもよく、あるいは個々のエナンチオマーをエナンチオ特異的合成により、または分割により調製することもできる。例えば化合物はそれらの成分となるエナンチオマーに標準的な技法、例えば(−)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸および/または(+)−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸のような光学的に活性な酸との造塩によるジアステレオマー対の形成、続いて分別晶出および遊離塩基の再生により分割することができる。また化合物はジアステレオマーエステルまたはアミドの形成、続いてクロマトグラフィーによる分離そしてキラル助剤の除去により分割することもできる。あるいは化合物はキラルHPLCカラムを使用して分割することができる。
【0061】
本発明の化合物の任意の調製工程中、問題の任意の分子上の感受性または反応性基を保護することが必要かつ/または望ましいかもしれない。これは、有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)、J.F.W.McOmie編集、プレナム出版、1973;およびT.W.Greene & P.G.M.Wuts、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、ジョン ウィリー&サンズ、
1991に記載されているような通例の保護基により達成することができる。保護基は当該技術分野で知られている方法を使用して、続く段階で都合よく除去することができる。
【0062】
本発明は3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンとしても知られている式(Is)の化合物の調製法を対象とする。さらに本発明は式(Is)の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩の調製法を対象とする。さらに本発明は式(Is)の化合物の硫酸塩の調製法を対象とする。
【0063】
さらに詳細には、本発明は式(Is)の化合物、式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩および式(Is)の化合物の一硫酸塩の調製法を対象とし、ここで該方法は以下のスキーム1にさらに詳細に概略するように式(Is)の化合物の大規模製造に適する。
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
したがって、既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である適切に置換された式(Vs)の化合物(4−フルオロ−フェニルアミンとしても知られている)を、既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である式(VIs)の化合物(4−オキソ−ピペリジン−1−カルボン酸エチルエステルとしても知られている)と、HCNまたは水性シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のようなその塩の存在下で、酢酸、プロピオン酸、蓚酸等のカルボン酸の存在下で、IPA、アセトニトリル等のような有機溶媒中で反応させて、対応する式(VIIs)の化合物を得る。
【0067】
式(VIIs)の化合物は過酸化水素等のような酸化剤と、炭酸カリウム等のような塩基の存在下、有機溶媒または有機溶媒と水との混合物、例えば水とDMSOの混合物中で反応させて、対応する(VIIIs)の化合物を得、この化合物は単離しないことが好ましい。
【0068】
式(VIIIs)の化合物は、酢酸、プロピオン酸等のような酸(好ましくは弱酸)と
、DMSO、IPA等のような有機溶媒中、好ましくは前反応工程と同じ溶媒中で反応させて、対応する式(IXs)の化合物を得る。
【0069】
式(IXs)の化合物は水中で水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、コリン(choline)等のような無機塩基(好ましくは強無機塩基)と反応させて、対応する式(Xs)の化合物を得る。
【0070】
式(Xs)の化合物は、既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である式(XIs)の化合物(8−メチル−ナフタレン−1−カルボアルデヒドとしても知られている)と、還元剤/水素化物源、例えばNaBH(OAc)、NaCNBH等の存在下、有機溶媒または水と有機溶媒との混合物、例えばTHFと水の混合物、IPA、DMF等中で反応させて、対応する式(XIIs)の化合物を得る。
【0071】
式(XIIs)の化合物は、既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である式(XIIIs)の化合物(3−ニトロ−ベンゼンスルホン酸オキシラニルエステルとしても知られている)と、カリウムt−ブシキシド、NaH、LiHMDS等のような塩基(好ましくは強塩基)の存在下、有機溶媒または有機溶媒の混合物、例えばTHFと酢酸エチルの混合物、MTBE等中で反応させて、対応する式(XIVs)の化合物を得る。
【0072】
式(XIVs)の化合物は、既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である式(XVs)の化合物(イソインドール−1,3−ジオンとしても知られている)と、DMF、DMSO、DMAC等のような有機溶媒中で反応させ、次いで硫酸のような酸と水中で、水酸化カルシウム等のような無機塩基の存在下で反応させて、対応する式(Is)の化合物を得る。
【0073】
好ましくは式(Is)の化合物は既知の方法に従い単離かつ/または精製される。式(Is)の化合物は例えば濾過により、溶媒の蒸発または他の適切な方法により単離することができる。式(Is)の化合物は例えば、再結晶化により、カラムクロマトグラフィーにより、または他の適切な方法により精製することができる。
【0074】
例えば式(Is)の化合物は以下のように単離することができる:上記のように調製した式(Is)の化合物のカルシウム塩を濾過により単離し、次いで適切に選択した酸で処理することにより酸性化して式(Is)の化合物を得、これをさらに抽出により単離し、次いで既知の方法に従い結晶化する。
【0075】
好ましくは式(Is)の化合物は結晶化により単離される。好ましくは式(Is)の化合物はMTBE/水、IPA/水等のような適切な有機溶媒、より好ましくはMTBE/水の混合物から再結晶化により精製される。
【0076】
次いで式(Is)の化合物は場合により、IPA等のような有機溶媒中で既知の化合物または既知の方法により調製される化合物である2−ケト−L−グロン酸と反応させて、対応する式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩を得る。
【0077】
好ましくは式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩はIPAから結晶化により単離される。好ましくは式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩は、IPA等のような適切な有機溶媒、より好ましくはIPAから再結晶化により精製される。
【0078】
次いで式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩は場合により硫酸と、水
の存在下で、エタノール、メタノール、IPA等のようなアルコール中で反応させることにより式(Is)の化合物の対応する一硫酸塩に転換される。
【0079】
式(Is)の化合物の一硫酸塩は好ましくは既知の方法に従い例えば濾過により単離される。式(Is)の化合物の一硫酸塩は、さらに好ましくは既知の方法に従い例えば適切に選択された溶媒または溶媒混合物、例えばエタノールと水、IPA/水等、より好ましくはエタノールと水の混合物から再結晶化により精製される。
【0080】
あるいは式(Is)の化合物の一硫酸塩は、式(Is)の化合物を硫酸と、アルコールのような有機溶媒、例えばエタノール中で反応させることにより調製して、対応する式(Is)の化合物の一硫酸塩を得ることができる。式(Is)の化合物の一硫酸塩は好ましくは既知の方法、例えば濾過により単離され、そしてさらに場合によっては既知の方法に従い例えば再結晶化により精製される。
【0081】
式(Is)の化合物のフマル酸塩は、式(Is)の化合物を、メタノール等のような有機溶媒中でフマル酸と反応させることにより調製することができる。式(Is)の化合物の一塩酸塩は、式(Is)の化合物を水性塩酸と、メタノール、3−メチル−1−ブタノール等のような有機溶媒中で反応させることにより調製することができる。式(Is)の化合物の二塩酸塩は、式(Is)の化合物を水性塩酸と、メタノール、n−ブタノール等のような有機溶媒中で反応させることにより調製することができる。
【0082】
式(Is)の化合物のフマル酸塩、一塩酸塩または二塩酸塩は、場合によりさらに既知の方法に従い、例えば再結晶化等により精製することができる。
【0083】
式(Is)の化合物の結晶性ビス−2−ケト−L−グロン酸塩および結晶性一硫酸塩は、それらの各X−線粉末回折パターンにより特徴付けることができる。X−線粉末回折パターンは粉末X−線回折計を使用して、以下に列挙するようなCuKα放射および適切に選択した系の条件を使用して測定された:
a)CuKα放射、30mA、40KV
b)1/12゜発散スリット、0.2受信スリット
c)0.017゜2θ/秒の走査速度で4から30゜2θへの走査
d)アルミニウム サンプルホルダー
【0084】
式(Is)の化合物の結晶性ビス−2−ケト−L−グロン酸塩および結晶性一硫酸塩は、それらのXRDスペクトルにより特徴付けることができ、これはそれらの2θ、d−間隔および場合によりそれらの相対的強度値により同定することができる。1つの態様では、式(Is)の化合物の結晶性ビス−2−ケト−L−グロン酸塩および結晶性一硫酸塩は、約10%以上、好ましくは約25%の相対的強度のピークを含んでなるそれらの各XRDスペクトルにより特徴付けることができる。
【0085】
式(Is)の化合物の結晶性ビス−2−ケト−L−グロン酸塩は、以下のピークを含んでなるそのXRDスペクトルを特徴とすることができる:
【0086】
【表1】

【0087】
式(Is)の化合物の結晶一硫酸塩は、以下のピークを含んでなるそのXRDスペクトルにより特徴付けることができる:
【0088】
【表2】

【0089】
さらに本発明は、製薬学的に許容できる担体とともに本明細書に記載する1もしくは複数の式(Is)の化合物の塩を含有する製薬学的組成物を含んでなる。有効成分として、本明細書に記載される1もしくは複数の本発明の化合物を含有する製薬学的組成物は、従来の製薬学的配合法に従って、製薬学的担体と1もしくは複数の化合物を密接に混合することにより調製することができる。担体は所望の投与経路(例えば、経口、非経口)に応じて広範な形態を取ることができる。従って、懸濁剤、エリキシルおよび溶液剤のような液体経口調製物に適する担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、安定剤、着色剤等を包含し、散剤、カプセルおよび錠剤のような固形経口調製物に適する担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を包含する。固形経口調製物はまた、糖のような物質でコートするか、または吸収の主要部位を改変するように腸溶コートすることができる。非経口投与のための担体は通常、滅菌水よりなり、そして溶解度または保存性を増加するための他の成分を添加することができる。注射用懸濁剤または溶液剤はまた、適当な添加剤と一緒に水性担体を利用して調製することができる。
【0090】
本発明の製薬学的組成物を調製するためには、有効成分として本発明の1もしくは複数の化合物を従来の製薬学的配合法に従って、製薬学的担体と完全に混合され、その担体は、投与に所望される調製形態、例えば経口または、筋肉内のような非経口に応じて、広範な形態を取ることができる。経口剤形の組成物を調製する時は、いずれかの通常の製薬学的媒質を使用することができる。従って、例えば懸濁剤、エリキシルおよび溶液剤のような液体経口調製物に適する担体および添加剤は水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤等を包含し、例えば散剤、カプセル、カプレット、ゲルカプ(gelcaps)および錠剤のような固形経口調製物に適する担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を包含する。それらの投与の容易性のため
に、錠剤およびカプセルが最も有利な経口投与単位剤形を表し、その場合は固形の製薬学的担体が明らかに使用される。所望される場合は錠剤は標準的方法により糖衣または腸溶性コートを施すことができる。非経口のための担体は、例えば溶解度を補助するか、または保存のため目的で他の成分を包含することができるが、通常は滅菌水を含んでなる。また注射用懸濁液も調製することができ、その場合は、適当な液体担体、懸濁剤等を使用することができる。本明細書における製薬学的組成物は投与単位、例えば錠剤、カプセル、散剤、注射、茶サジ等につき、前記の有効用量をデリバーするために必要な有効成分量を含有するであろう。本明細書の製薬学的組成物は、単位投与単位、例えば錠剤、カプセル、散剤、注射、座薬、茶サジ等当たり約0.01〜1000mgまたはその中の範囲を含有し、そして約0.01〜300mg/kg/日またはその中の範囲、好ましくは約0.5〜50mg/kg/日またはその中の範囲で与えることができる。しかし投薬用量は患者の必要性、処置されている状態の重篤度および使用されている化合物に応じて異なる可能性がある。毎日の投与または周期後投与のいずれかの使用を利用することができる。
【0091】
これらの組成物は好ましくは、経口、非経口、鼻孔内、舌下または直腸内投与のため、または吸入または吹き込みによる投与のための、錠剤、ピル、カプセル、散剤、顆粒、滅菌非経口液剤または懸濁液、計量エアゾールまたは液体スプレー、滴剤、アンプル、自動注入装置または座薬のような単位剤形である。あるいは組成物は毎週1回または毎月1回の投与に適した形態で提供することができ、例えばデカノエート塩のような有効化合物の不溶性塩は筋肉内注射のためのデポー調製物を提供するよう作り変えることができる。錠剤のような固形組成物を調製するためには、主要な有効成分を製薬学的担体、例えばコーンスターチ、ラクトース、蔗糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガムのような従来の打錠成分、および他の製薬学的希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物または製薬学的に許容できるその塩の均一な混合物を含有する固形の調合前組成物を形成する。これらの調合前組成物が均一であると言う場合、それは組成物が錠剤、ピルおよびカプセルのように等分に有効な剤形に容易に副分割することができるように、有効成分が組成物全体に均一に分散されていることを意味する。次に、この固形の調合前組成物を、0.1〜約500mgの本発明の有効成分を含有する前記のタイプの単位剤形に副分割する。新規組成物の錠剤またはピルはコートするかあるいは、長期作用の利点を与える剤形を提供するように配合することができる。例えば、錠剤またはピルは内部投与成分および外部投与成分を含んでなることができ、ここで後者は前者を包む形態である。2成分は胃内部での崩壊に抵抗する役割をもつ腸溶層により分離することができ、内部成分を十二指腸内にそのまま通過させるかまたは放出を遅らせる。種々の物質をこのような腸溶層またはコーティングのために使用することができ、このような物質はセラック(shellac)、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質を含む多数のポリマー酸を包含する。
【0092】
本発明の新規組成物が経口または注射による投与のために取り入れることができる液体形態は、水溶液、適当に風味を付けたシロップ、水性または油性懸濁物および、綿実油、ゴマ油、ココナツ油または落花生油のような食用油を含む風味を付けたエマルションならびにエリキシルおよび同様な製薬学的ベヒクルを包含する。水性懸濁液に適当な分散または懸濁剤はトラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンまたはゼラチンのような合成および天然ガムを包含する。
【0093】
本発明に記載されたORL−1受容体により媒介される障害および状態を処置する方法はまた、本明細書に定義されたいずれかの化合物および製薬学的に許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物を使用して実施することができる。製薬学的組成物は約0.01mg〜1000mgの間またはその中の範囲の化合物、好ましくは約10mg〜500mgの間またはその中の範囲の化合物を含有することができ、そして選択される投与法に適し
たいずれかの形態に構成することができる。担体は、限定はされないが、結合剤、懸濁剤、滑沢剤、香料、甘味剤、保存剤、染料およびコーティングを包含する、必要かつ不活性な製薬学的賦形剤を包含する。経口投与に適した組成物はピル、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ即時放出、時限放出および徐放性製剤を包含する)、顆粒および散剤のような固形形態、並びに溶液剤、シロップ、エリキシル、エマルションおよび懸濁物のような液体形態を包含する。非経口投与に有用な形態は滅菌溶液、エマルションおよび懸濁物を包含する。
【0094】
本発明の化合物は有利には1日量を1回で投与することができ、あるいは1日の総量を1日に2、3または4回の分割用量で投与することができる。さらに本発明の化合物は適当な鼻腔内賦形剤の局所使用により鼻腔内形態で、または当業者に周知の経皮的皮膚パッチにより投与することができる。経皮送達系の形態で投与するための用量投与はもちろん、投与計画中、間欠的でなく連続的であろう。
【0095】
例えば、錠剤またはカプセルの形態の経口投与のための有効薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水等のような経口の、無毒の、製薬学的に許容できる不活性担体と組み合わせることができる。さらに所望される時または必要な時は、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤も混合物中に取り入れることができる。適当な結合剤は限定されずに、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ−ラクトースのような天然糖、コーン甘味剤、アカシア、トラガカントのような天然および合成ガム、またはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を包含する。崩壊剤は、限定せずに、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等を包含する。
【0096】
液体形態は、適当にフレーバーを付けた、合成および天然ガム、例えばトラガカント、アカシア、メチルセルロース等のような懸濁剤または分散剤を包含する。非経口投与のためには、滅菌懸濁物および液剤が望ましい。静脈内投与が望まれる時は、一般に適当な保存剤を含有する等張性調製物が使用される。
【0097】
本発明の製薬学的組成物を調製するために、有効成分として本明細書に記載する式(Is)の化合物の1もしくは複数の塩を、投与(例えば経口もしくは非経口)に望ましい調製物の形態に依存して広範な様々な形態を取ることができる製薬学的担体と、従来の製薬学的配合技術に従い完全に混合する。適切な製薬学的に許容され得る担体は当該技術分野で周知である。これら幾つかの製薬学的に許容され得る担体の記載は、米国製薬学協会(American Pharmaceutical Association)および英国製薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)により公開されている製薬学的賦形剤のハンドブック(The Handbook of Pharmaceutical Excipients)により見いだすことができる。
【0098】
製薬学的組成物を配合する方法は、マルセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc)により出版されているLieberman et al.により編集された「製薬学的剤形:錠剤」、第2版、改訂および増補(Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Second Edition,Revised and Expanded)第1〜3巻;Avis et al.により編集された「製薬学的剤形:非経口薬剤」、(Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications)第1〜2巻;およびLieberman et al.により編集された「製薬学的剤形:分散系」(Pharmaceutical Dosage Forms:Dispers Systems)第1〜2巻のような数々の出版物に記載されてきた。
【0099】
本発明の塩は、ORL−1受容体により媒介される障害または状態の処置が必要とされる場合はいつでも、前記の任意の組成物中で当該技術分野で確立された投薬処方に従い投与されることができる。
【0100】
製品の1日の投薬用量は1日に成人一人当たり0.01mg/kg〜300mg/kgまたはその中の範囲で広く変動し得る。処置される患者に対する投薬用量の、症状の調整のための経口投与用に組成物は、好ましくは0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250および500ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で提供される。薬剤の有効量は通常、1日に体重1kg当たり約0.01mg/kg〜約300mg/kgまたはその中の範囲の投与用量レベルで供給される。好ましくはその範囲は約0.5〜約100.0mg/kg体重/日またはその中の範囲である。より好ましくは約1.0〜約50.0mg/kg体重/日またはその中の範囲である。より好ましくは約1.0〜約25.0mg/kg体重/日またはその中の範囲である。より好ましくは約1.0〜約5.0mg/kg体重/日またはその中の範囲である。化合物は1日1〜4回の処方で投与することができる。
【0101】
投与される最適用量は当業者により容易に決定することができ、使用される特定の化合物、投与法、調製物の強度、投与様式および疾患状態の進行とともに異なるであろう。さらに患者の年齢、体重、食事および投与時間を含め、処置されている特定の患者に関わる因子が用量調節の必要をもたらすであろう。
【0102】
当業者は適切な既知の、そして一般的に許容され得る細胞および/または動物モデルを使用したインビボおよびインビトロ試験の両方で、上記障害を処置または防止する試験化合物の能力が予測されると認識するだろう。
【0103】
さらに当業者は健康な受診者および/または上記障害に罹患している人を対象としたヒトで初めての投薬用量範囲および効力試験を含むヒトの臨床試験を、臨床および医学的分野で周知な方法に従い完了できると認識するだろう。
【0104】
以下の実施例は本発明の理解を補助するために示され、以後に続く特許請求の範囲に示される本発明をどのようにも限定することは意図せず、またそう考えてはならない。
【0105】
以下の実施例では、幾つかの合成生成物が残渣として単離されたと列挙されている。当業者はこの「残渣」が生成物が単離された物理的状態に限定されず、そして例えば固体、油状、泡沫状、ガム、シロップ等を含むことができると理解している。
【0106】
以下の実施例1、2および3は表題化合物の合成のための方法/手順および/または精製および/または結晶化である。表題化合物の幾つかのバッチは以下に記載する方法を使用して調製された。
【実施例1】
【0107】
式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩の結晶化
3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン(30g)を、加熱してIPA(100mL)中に溶解し、そして生じた混合物を70〜80℃に維持し、IPA(250g)中の2−ケト−L−グロン酸(68.7g、0.235モル)の温かい溶液で処理した。反応混合物をこの温度に約15〜30分間維持し、次いで25℃に約1〜2時間にわたり冷却した。生じた
固体を真空濾過により集め、IPA(70g)で洗浄し、次いで真空オーブン中、60℃で乾燥させて表題化合物を固体として得た。
【実施例2】
【0108】
式(Is)の化合物のビス−2−ケト−Lグロン酸塩から式(Is)の化合物の一硫酸塩の直接的調製
水中(11mL)、3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン、ビス−2−ケト−L−グロン酸塩(10g、10ミリモル)および硫酸(1.1g,11モル)を、約75〜80℃に加熱し、次いで生じた溶液をエタノール(60g)で処理した。50℃に冷却すると沈殿が形成した。反応混合物を20〜25℃に約1.5〜2時間にわたり冷却し、次いで約10〜12時間撹拌した。固体を濾過し、エタノール(30g)で洗浄し、そして真空オーブン中、60℃で乾燥させて表題化合物を固体として得た。
【実施例3】
【0109】
式(Is)の化合物の一硫酸塩の再結晶化
水中(95mL)、3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン、ビス−2−ケト−L−グロン酸塩(3.3g,5.74ミリモル)を100℃に加熱した。生じた溶液を熱いまま濾過し、そして濾液を減圧下および温度(50mbar,60℃)で濃縮して、約80gの水を除去した。反応温度を60〜70℃に維持しながら、エタノール(34mL)を加えた。沈殿が始まった後、反応物を25℃に約1.5〜2時間にわたり冷却し、そして撹拌を約12〜14時間続行した。固体は真空濾過により単離し、そして水(2x7mL)およびエタノール(9mL)で洗浄した。固体は真空オーブン中、60℃で乾燥させて表題化合物を固体として得た。
【実施例4】
【0110】
化合物(Is)の結晶一硫酸塩の調製
エタノール(1mL)中、3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン(50mg)を、1当量の18M HSOおよび水(0.2mL)で処理し、次いで加熱して固体を溶解した。次いで生じた溶液を一晩かけてゆっくりと室温に冷却した。生じた固体を集め、そしてフィルターパッドを乾燥して表題化合物を固体として得た。
【0111】
最初に196℃で融解が始まり、210℃および224℃にピークがあった。
【実施例5】
【0112】
化合物(Is)の一塩酸塩の調製
メタノール(10mL)中の3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン(0.5g,1.0ミリモル)および3−メチル−1−ブタノール(5mL)を、塩化水素(ジエチルエーテル中、1.05ミリモル;1.05mL)で処理した。生じた混合物を80℃に温め、次いでメタノール(1mL)で希釈した。冷却で沈殿が観察された。固体を濾過し、IPAで洗浄し、そして乾燥して表題化合物を白色固体として得た。
【実施例6】
【0113】
化合物(Is)の二塩酸塩の調製
表題化合物はウェルプレート中、3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンを1当量のHCl(aq)と、1:1のメタノール/1−ブタノール混合物(各450mg)中で反応させることにより調製した。溶媒をゆっくりと蒸発させて、表題化合物を残渣として得た。
【実施例7】
【0114】
3−(3−アミノ−2−(R)−ヒドロキシ−プロピル)−1−(4−フルオロ−フェニル)−8−(8−メチル−ナフタレン−1−イルメチル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンの結晶一硫酸塩を含んでなる固体剤形
式(Is)の化合物の結晶一硫酸塩を含んでなる固体の錠剤剤形は、表3に列挙する組成で調製した。成分を既知の方法に従い混合し、そして打錠した。以下の表では、BHAの略号はブチル化ヒドロキシトルエンを表し、そしてBTAの略号はブチル化ヒドロキシアニソールを表す。PROSOLV HD90(商標)は、98%の微晶質セルロースおよび2%のコロイド状二酸化シリコンからなる珪化された高密度微晶質セルロースである。CROSPOVIDONEは架橋結合したN−ビニル−2−ピロリドンの合成ホモポリマーである。
【0115】
【表3】

【0116】
前記明細書では、具体的説明の目的の実施例を含め本発明の原理を教示したが、本発明の実施は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあるように、すべての通常の変更、適応および/または修飾を包含すると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Is)
【化1】

の化合物の硫酸塩。
【請求項2】
塩が一硫酸塩である請求項1に記載の硫酸塩。
【請求項3】
塩が結晶性である請求項1に記載の硫酸塩。
【請求項4】
塩が非吸湿性である請求項1に記載の硫酸塩。
【請求項5】
塩が無水である請求項1に記載の硫酸塩。
【請求項6】
塩が一硫酸塩、結晶性、非吸湿性および無水である請求項1に記載の式(Is)
【化2】

の化合物の硫酸塩。
【請求項7】
以下のX−線粉末回折パターンピーク
【表1】

を含んでなる式(Is)
【化3】

の化合物の結晶性一硫酸塩。
【請求項8】
製薬学的に許容され得る担体および請求項1に記載の化合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物および製薬学的に許容され得る担体を混合することにより作られる製薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物および製薬学的に許容され得る担体を混合することを含んでなる製薬学的組成物の作成法。
【請求項11】
処置が必要な個体に治療に有効な量の請求項1に記載の塩を投与することを含んでなる、ORL−1受容体により媒介される障害または状態の処置方法。
【請求項12】
ORL−1受容体により媒介される障害または状態が、不安、鬱、パニック、躁病、痴呆、双極性障害、物質乱用、神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛片頭痛、喘息、咳、精神病、統合失調症、癲癇、高血圧、肥満、摂食障害、渇望、糖尿病、不整脈、過敏性腸症候群、クローン病、尿失禁、副腎障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、認知障害、記憶障害および精神不安定からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処置が必要な個体に治療に有効な量の請求項8に記載の組成物を投与することを含んでなる、不安、鬱、パニック、躁病、痴呆、双極性障害、物質乱用、神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛片頭痛、喘息、咳、精神病、統合失調症、癲癇、高血圧、肥満、摂食障害、渇望、糖尿病、不整脈、過敏性腸症候群、クローン病、尿失禁、副腎障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、認知障害、記憶障害および精神不安定からなる群から選択される障害の処置方法。
【請求項14】
障害が鬱、不安、アルコール乱用および摂食障害からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(Is)
【化4】

の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩。
【請求項16】
塩が結晶性、非吸湿性の一フマル酸塩である請求項15に記載の2−ケト−L−グロン酸塩。
【請求項17】
塩がビス−2−ケト−L−グロン酸の結晶性、非吸湿性塩である請求項15に記載の式(Is)
【化5】

の化合物の2−ケト−L−グロン酸塩。
【請求項18】
以下のX−線粉末回折パターンピーク
【表2】

を含んでなる請求項17に記載の式(Is)
【化6】

の化合物の結晶性ビス−2−ケト−L−グロン酸塩。
【請求項19】
式(Is)
【化7】

の化合物の調製法であって、
【化8】

イソインドール−1,3−ジオンと反応させ;次いで酸と無機塩基の存在下で反応させ;対応する式(Is)の化合物を得る、
ことを含んでなる上記調製法。
【請求項20】
酸が硫酸である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
無機塩基が水酸化カルシウムである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに式(Is)の化合物を、硫酸およびビス−2−ケト−L−グロン酸からなる群から選択される酸と反応させて、対応する酸付加塩を得ることを含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
さらに
(a)式(Is)の化合物を2−ケト−L−グロン酸と反応させ;式(Is)の対応するビス−2−ケト−L−グロン酸塩を得;そして
(b)式(Is)の化合物のビス−2−ケト−L−グロン酸塩を水の存在下、アルコール中で硫酸と反応させて、式(Is)の対応する結晶性一硫酸塩を得る、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
式(Is)
【化9】

の化合物の結晶性一硫酸塩の精製法であって、式(Is)の化合物の一硫酸塩をアルコール/水混合物から再結晶化することを含んでなる上記精製法。
【請求項25】
アルコール/水混合物がエタノール/水およびIPA/水からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511054(P2010−511054A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539404(P2009−539404)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084642
【国際公開番号】WO2008/067167
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】