説明

3レベルDC/ACコンバータ

本発明は、スイッチ素子を具えるブリッジ回路と、スイッチ素子を制御するための制御回路と、を有し、それによって、接地電圧、正の電圧、接地電圧、負の電圧及び接地電圧が、続いて、第1の出力部において得られる、TLランプの電源用のDC/ACコンバータであって、TLランプが第1の出力部と第2の出力部との間に接続されるDC/ACコンバータに関する。スイッチング素子を具えるこの装置は、ランプ電圧がフローティング状態になる期間を回避するので、ランプのフリッカが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3レベル電圧をランプに供給するように適応化される、TLランプの電源用のDC/ACコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコンバータは、一般に知られている。それらのコンバータは、2つのスイッチ素子を有し、これらのスイッチ素子が、ランプの一方の接続部を正の供給電圧及び負の供給電圧にそれぞれ続いて接続する。正の電圧と負の電圧との間の短絡を回避するために、オンにされているスイッチ素子は、もう一方のスイッチ素子がオンに切り替えられる前に、オフに切り替えられる。結果的に、ある短期間、ランプは正の供給電圧にも負の供給電圧にも接続されない。この短期間に、ランプに供給される電圧はフローティング(floating,浮動)状態である。これは、電圧が、この電圧の導体と接地などとの間におけるキャパシタンスによって決定されると共に、関係しているスイッチ素子がオフに切り替わっている間に存在する電荷によって決定されることを意味する。その結果として、ランプは、目障りなフリッカ(flickering,ちらつき)を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、スイッチング周期のいかなる短い時間の間もランプに供給される電圧のフローティングを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、TLランプの電源用のDC/ACコンバータであって、
正のDC電圧に接続される第1の入力部と、
負のDC電圧に接続される第2の入力部と、
接地電圧に接続される第3の入力部と、
第1の接続部と第2の接続部との間における第1、第2、第3及び第4のスイッチ素子の直列接続と、
第1のダイオードのアノードが、第3の入力部に接続され、当該第1のダイオードのカソードが、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子との接合部に接続される、当該第1のダイオードと、
第2のダイオードのアノードが、第3のスイッチ素子と第4のスイッチ素子との間の接合部に接続され、当該第2のダイオードのカソードが、第3の入力部に接続される、当該第2のダイオードと、
第2のスイッチ素子と第3のスイッチ素子との間の接合部と、第1の出力部との間に接続されるインダクタと、
第3の入力部に接続される第2の出力部と、
接地電圧、正の電圧、接地電圧、負の電圧及び接地電圧が、続いて、第1の出力部において得られるように、第1のスイッチ素子乃至第4のスイッチ素子を制御する制御回路であり、TLランプが第1の出力部と第2の出力部との間に接続される、当該制御回路と、
を有するDC/ACコンバータによって達せられる。
【0005】
上記スイッチング素子を具えるこの装置は、ランプ電圧がフローティング状態になる期間を避けるので、ランプのフリッカが防止される。
【0006】
米国特許第5155675号明細書から、本発明のものと同じスイッチ素子の構成を有する三相DC/ACインバータが知られていることに留意されたい。この米国特許文献は、電車用の三相モータの制御、すなわち、異なる技術分野に関する。更に、この従来技術の設計の目的は、3パルスモードから、より高速で使用される1パルスモードへの移行をあまり目立たないようにすることにある。これは、ガス放電ランプの電源においては存在しない別の問題である。
【0007】
更に、本発明による構造は、この構造におけるトランジスタの各々が必要な大きさにされなければならないブレークダウン電圧が、従来技術の構造における2つのトランジスタの各々に対する同じ値の半分であり得るという利点をもち、そのため、生産するのがより容易であり、それゆえより安価である半導体が使用されることを可能にする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、第3の入力部が、第1のキャパシタを介して第1の入力部に接続されると共に、第2のキャパシタを介して第2の入力部に接続され、上記キャパシタの両方が、実質的に同じキャパシタンスをもつ。
【0009】
メインクレームによる構成は、3つの供給電圧、すなわち、正の供給電圧、接地電圧及び負の供給電圧が利用できる状況に適用可能である。ほとんどの状況では、正の電圧及び負の電圧のみが利用できる。この好ましい実施形態は、接地電圧として使用され得る中間電圧を生成するための簡単で費用効果の高い解決策を提供することを可能にする。
【0010】
本発明による構成は、特に、TLランプ用の電源ユニットとして適用できる。これらのランプは膨大な数で存在するので、大量生産のためにこれらの電源ユニットを開発することは経済的に引き合う。
【0011】
好ましい実施形態は、スイッチ素子の各々が、半導体スイッチ素子によって形成され、更に、スイッチ素子の各々が、半導体素子と逆並列に接続されるバイパスダイオードを有することを教示する。
【0012】
これは、スイッチ素子、フリーホイールダイオード、他のダイオード及び制御ユニットが、単一の集積回路において実現されることを可能にし、費用の引き下げに寄与する。
【0013】
この点において、2つのスイッチ素子のみを有する従来技術の回路においてスイッチ素子のスイッチングによって生じる電圧サージを吸収することを可能にするために、フリーホイールダイオードは特別な構造でなければならず、これは、スイッチ素子の実現のために使用される技術による集積された形態での実現を妨げることに留意されたい。本発明はより低く抑えられた電圧サージをもたらし、このような電圧サージは、より通常の構造のフリーホイールダイオードによって吸収されることができ、そのため、フリーホイールダイオードがスイッチ素子と同じ技術によって集積されることを可能にする。
【0014】
スイッチ素子だけでなく制御回路もまた、単一の半導体チップに組み込まれる場合、集積化の利点が更に一層広がる。
【0015】
引き続いて、本発明は添付図面を用いて明瞭に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示される従来技術の回路は、DC供給源に接続される2つの入力部1,2を有し、これらの入力部間に2つのスイッチ素子11及び14の直列接続が接続されている。2つのスイッチ素子11とスイッチ素子14との間の接合部がTLランプ15に接続され、このTLランプ15と直列にインダクタ16が設けられている。TLランプ15のもう一方の接続部は、実質的に等しいキャパシタンスをもつ2つのキャパシタ3,4の直列接続と接続され、そのキャパシタ間の接合部がTLランプに接続される。
【0017】
更に、制御回路5が、スイッチ素子11及び14を制御するために設けられている。これらのスイッチ素子11,14は、通常、半導体素子によって形成され、フリーホイールダイオードが、スイッチ素子と逆並列に接続されなければならないことに留意されたい。
【0018】
入力部1と入力部2との間の短絡を避けるために、制御回路は、スイッチ素子11又はスイッチ素子12の片方だけを閉じる。スイッチ素子の一方を開き、それと同時に他方のスイッチ素子を閉じることは不可能であるので、短期間の間、両方のスイッチ素子が閉じられてしまうことは避けられない。この短期間中、上記のスイッチ素子間の接合部における電圧は、寄生キャパシタンス及びインダクタンスによって専ら決定され、これは、変動する電圧を引き起こし、それゆえランプのフリッカの原因となる。
【0019】
図2に示される本発明による回路は、2つの追加のスイッチング素子11〜14があることによって、これらの問題を回避する。
【0020】
本発明によるこの回路は、従来技術と全く同じように、DC電圧を供給するために2つの入力部1,2を有している。
【0021】
これらの入力部1と入力部2との間に、実質的に等しい値をもつ2つのキャパシタ3,4の直列接続が設けられている。これらのキャパシタは十分な値をもつので、これらのキャパシタを電解キャパシタとして実現することが有利である。但し、他のタイプが除外されることはない。これらのキャパシタは、2つの供給電圧から中間電圧を得る機能を果たす。このような中間電圧が既に利用できる状況においては、キャパシタが必要でないことは明らかである。
【0022】
更に、4つのスイッチ素子11,12,13,14の直列接続が、入力部1と入力部2との間に設けられている。中間のスイッチ素子12と13との間の接合部が、TLランプ15に接続され、もう一方の接続部は、中間電圧を印加するためにキャパシタ3と4との間の接合部に接続される。外部ソースから中間電圧が利用できる状況においては、ランプが中間電圧用の上記ソースに接続されることは明らかである。更に、インダクタ16がランプと直列に接続される。
【0023】
ダイオード17のカソードは、スイッチ素子11とスイッチ素子12との間の接合部に接続され、ダイオード17のアノードは、キャパシタ3とキャパシタ4との間の接合部に接続される。ダイオード18のアノードは、スイッチ素子13及び14の接合部に接続され、ダイオード18のカソードは、キャパシタ3及び4の接合部に接続される。
【0024】
制御回路5は、スイッチ素子11〜14の開閉を制御するために設けられている。
【0025】
引き続いて、この回路の動作が、図3に示される図面を用いて説明される。
【0026】
図3のt=0において示される、全てのスイッチ素子11,12,13,14が開けられる状況から離れて、まず最初に、スイッチ素子12が閉じられるので、ランプは中間電圧に接続される。このことは、ランプのフリッカを回避する。その直後に、スイッチ素子11が閉じられるので、入力部1からの電圧はランプに印加される。一定期間後に、スイッチ11は再び開けられ、ランプへの電圧の印加を中断する。再び、ランプは中間電圧に接続される。
【0027】
より低い電圧に接続するための準備として、スイッチ素子13が閉じられ、別の接続を中間電圧に供給する。これによりスイッチ素子12は開くことができ、この接続を中間電圧に維持する。その後、スイッチ素子14は閉じられることができ、ランプを負の電圧に接続する。多数の変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく、開示された回路に適用され得ることは明らかである。
【0028】
再び、この負の電圧は、一定期間ランプに印加されることができ、その後、スイッチ素子14は開けられることができ、電圧供給源を切断し、ランプを中間電圧に接続する。この状況は、スイッチ素子12を閉じ、スイッチ素子13を開け、もう一度このサイクルを始める可能性を提供する。
【0029】
正の電圧又は負の電圧がランプに印加される期間のデューティサイクルを制御することによって、ランプ15に供給される電力が制御されることができ、調光(dimming,ディミング)機能を実行する。これは、図3の後半に示されており、この間、正の電圧又は負の電圧がランプに供給される期間は、この図3の前半における期間と比べて著しく短い。
【0030】
これらのダイオードは、スイッチ素子11及び14が閉じられる期間中の短絡を避ける機能を果たし、その他の点では、接続部に中間電圧を供給する機能を果たす。
【0031】
スイッチ素子の制御に際して、スイッチ素子の任意の3つを開けるときは常に注意が払われるべきである。なぜならば、このことが短絡につながり得るからである。
【0032】
多数の変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく開示された回路に適用され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】TLランプに給電するための従来技術の回路の回路図である。
【図2】本発明による回路の回路図である。
【図3】スイッチ素子の位置と、もたらされる出力電圧とのタイムチャート(time diagram)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TLランプの電源用のDC/ACコンバータであって、
正のDC電圧に接続される第1の入力部と、
負のDC電圧に接続される第2の入力部と、
接地電圧に接続される第3の入力部と、
第1の接続部と第2の接続部との間における第1、第2、第3及び第4のスイッチ素子の直列接続と、
第1のダイオードのアノードが、前記第3の入力部に接続され、当該第1のダイオードのカソードが、前記第1のスイッチ素子と前記第2のスイッチ素子との接合部に接続される、当該第1のダイオードと、
第2のダイオードのアノードが、前記第3のスイッチ素子と前記第4のスイッチ素子との間の接合部に接続され、当該第2のダイオードのカソードが、前記第3の入力部に接続される、当該第2のダイオードと、
前記第2のスイッチ素子と前記第3のスイッチ素子との間の接合部と、第1の出力部との間に接続されるインダクタであり、前記TLランプが前記第1の出力部と第2の出力部との間に接続される、当該インダクタと、
前記第3の入力部に接続される前記第2の出力部と、
接地電圧、正の電圧、接地電圧、負の電圧及び接地電圧が、続いて、前記第1の出力部において得られるように、前記第1のスイッチ素子乃至前記第4のスイッチ素子を制御する制御回路であり、前記TLランプが前記第1の出力部と前記第2の出力部との間に接続される、当該制御回路と、
を有するDC/ACコンバータ。
【請求項2】
前記第3の入力部が、第1のキャパシタを介して前記第1の入力部に接続されると共に、第2のキャパシタを介して前記第2の入力部に接続され、前記キャパシタの両方が、実質的に同じキャパシタンスをもつことを特徴とする、請求項1に記載のDC/ACコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチ素子の各々が、半導体スイッチ素子によって形成され、更に、前記スイッチ素子の各々が、前記半導体素子と逆並列に接続されるバイパスダイオードを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のDC/ACコンバータ。
【請求項4】
前記スイッチ素子及び前記制御回路が、単一の半導体チップに組み込まれることを特徴とする、請求項3に記載のDC/ACコンバータ。
【請求項5】
前記制御回路が、パルス幅変調により有効出力電圧を制御することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載のDC/ACコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513538(P2006−513538A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566175(P2004−566175)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005823
【国際公開番号】WO2004/064456
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】