説明

3次元座標測定装置

【課題】 被測定物を異なる角度から撮影した複数の画像から被測定物の3次元座標を測定する3次元座標測定装置において、背景光,水銀灯の光,或いは被測定物で反射したストロボ光の影響を排除する手段を提供する。
【解決手段】 本発明に係る3次元座標測定装置1は、光を反射する反射材14,15が設けられ車両Sに取り付けられるターゲット板2と、車両Sの画像を撮影する複数台の撮像装置3と、車両Sに対して光を照射するストロボ装置4と、同一のターゲット板2を異なる角度から撮影した複数枚の画像に基づいて車両Sの3次元座標を算出する画像処理装置5とを備え、ターゲット板2における少なくとも反射材14,15の表面に、ストロボ装置4から発せられた光のうち特定の色の光だけを透過するカラーフィルター16,17が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の画像を撮影してその3次元座標を測定する3次元座標測定装置において、特に、背景光,水銀灯の光,或いは撮影時に被測定物に照射するストロボ光の影響を排除することが可能な3次元座標測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる車検と呼ばれる自動車検査では、被検査車両(以下、単に「車両」という)が法定基準を満足しているか等を検査すべく、車両各部の計測が行われる。そして、この計測手段としては、車両を異なる角度から撮影した複数の画像に基づいて車両の3次元座標を測定する3次元座標測定装置が用いられている。この3次元座標測定装置では、車両の周囲に複数台の撮像装置が設置され、各撮像装置がストロボを焚きながら車両をそれぞれ撮影する。この時、車両の各測定ポイントにはターゲット板と呼ばれる部材がそれぞれ取り付けられ、各ターゲット板の表面には再帰性反射材が設けられている。これにより、撮影された各画像には、再帰性反射材で反射されたストロボ光が白っぽく写し出される。そして、各画像について、ストロボ光が白っぽく写し出された領域をその画像の特徴点としてそれぞれ抽出し、同一のターゲット板を異なる角度から撮影した複数の画像について特徴点同士の対応付けを行う。これにより、各ターゲット板について再帰性反射材の3次元座標をそれぞれ特定することができ、それに基づいて車両の3次元座標を算出することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3637416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の3次元座標測定装置では、再帰性反射材の3次元座標が誤って特定され、車両の3次元座標を正しく算出できない場合がある。すなわち、撮影された各画像について、再帰性反射材で反射されたストロボ光が白っぽく写し出された領域を特徴点として抽出すべきところ、画像上に存在する他の白っぽい領域を特徴点として誤って抽出する場合がある。この場合、複数の画像について特徴点同士の対応付けを行うと、再帰性反射材の3次元座標が実際とは異なる位置に特定されることにより、ゴーストと呼ばれる点が発生する。
【0005】
ここで、各画像において特徴点として誤って抽出される白っぽい領域としては、太陽光等の背景光が写し出された領域、水銀灯の光が車体やガラス面に反射して写し出された領域、或いは画像撮影時に焚いたストロボの光が車体やガラス面に反射して写し出された領域等が挙げられる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、車両検査時に車両を異なる角度から撮影した複数の画像から車両の3次元座標を測定する3次元座標測定装置において、背景光,水銀灯の光,或いは車体やガラス面で反射したストロボ光の影響を排除する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る3次元座標測定装置は、光を反射する反射材が設けられ被測定物に取り付けられるターゲット板と、異なる角度から前記被測定物の画像を撮影する複数台の撮像装置と、前記被測定物に対して光を照射するストロボ装置と、同一の前記ターゲット板を異なる角度から前記撮像装置で撮影した複数枚の画像について、前記ストロボ装置から発せられて前記反射材で反射された光が写し出された領域を前記各画像の特徴点としてそれぞれ抽出し、前記各画像の特徴点同士を対応付けて前記被測定物の3次元座標を測定する画像処理装置と、を備える3次元座標測定装置であって、前記ターゲット板における少なくとも反射材の表面に、前記ストロボ装置から発せられた光のうち特定の色の光だけを透過するカラーフィルターが設けられたものである。
【0008】
また、本発明に係る3次元座標測定装置は、前記各撮像装置が、前記ストロボ装置から光を照射した状態と光を照射しない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、前記画像処理装置が、前記被測定物に対して光を照射した状態で撮影した画像と光を照射しない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定するものである。
【0009】
また、本発明に係る3次元座標測定装置は、前記各撮像装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態と前記ターゲット板を取り付けない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、前記画像処理装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態で撮影した画像と前記ターゲット板を取り付けない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定するものである。
【0010】
また、本発明に係る3次元座標測定装置は、前記反射材が、前記ターゲット板の表裏両面に、平面視で中心位置が一致するようにそれぞれ設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る3次元座標測定装置によれば、反射材の表面に特定の色の光だけを透過するカラーフィルターが設けられたので、反射材で反射されたストロボ装置の光は、差分画像では赤色の領域として写し出される。一方、車体やガラス面で反射されたストロボ装置の光は、差分画像では白っぽい領域として写し出される。従って、車体やガラス面で反射されたストロボ装置の光が写し出された領域が特徴点として誤って抽出されることがなく、より正確に被測定物の3次元座標を算出することができる。
【0012】
また、本発明に係る3次元座標測定装置によれば、被測定物に対して光を照射した状態で撮影した画像と光を照射しない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、この差分画像に基づいて被測定物の3次元座標を算出する。ここで、背景光や水銀灯の光のように被測定物に常時照射している光は、いずれの状態で撮影した画像にも写し出されるため、両画像から作成した差分画像には写し出されない。従って、背景光や水銀灯の光が写し出された領域が特徴点として誤って抽出されることがなく、より正確に被測定物の3次元座標を算出することができる。
【0013】
また、本発明に係る3次元座標測定装置によれば、被測定物にターゲット板を取り付けた状態で撮影した画像とターゲット板を取り付けない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、この差分画像に基づいて被測定物の3次元座標を算出する。ここで、ターゲット板の反射材で反射されたストロボ光以外の光は、いずれの状態で撮影した画像にも写し出されるため、両画像から作成した差分画像には写し出されない。従って、反射材で反射されたストロボ光以外の光が写し出された領域が特徴点として誤って抽出されることがなく、より正確に被測定物の3次元座標を算出することができる。
【0014】
また、本発明に係る3次元座標測定装置によれば、反射材が、ターゲット板の表裏両面に、平面視で中心位置が一致するようにそれぞれ設けられたので、ターゲット板の表面側及び裏面側のどちら側から撮像装置で撮影しても、その画像中には反射材で反射されたストロボ装置の光が写し出され、反射材の3次元座標を特定することができる。これにより、撮像装置をより広い範囲に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る3次元座標測定装置の全体構成を俯瞰的に示した模式図。
【図2】ターゲット板を表面側から見た概略斜視図。
【図3】ターゲット板を裏面側から見た概略斜視図。
【図4】図2におけるA−A断面を示す概略縦断面図。
【図5】ターゲット板の車両への取付状態の一例を示す概略斜視図。
【図6】撮像装置及びストロボ装置の構成を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施例に係る3次元座標測定装置の構成について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施例に係る3次元座標測定装置1の全体構成を俯瞰的に示した模式図である。3次元座標測定装置1は、自動車検査の対象となる車両Sの所定箇所に取り付けられた複数のターゲット板2と、車両Sの周囲に設置された4台の撮像装置3と、各撮像装置3に近接した位置にそれぞれ設置された4台のストロボ装置4と、各撮像装置3に接続された画像処理装置5とを備えるものである。尚、図1には、測定空間Kを一点鎖線で示している。
【0017】
前記ターゲット板2は、車両Sの3次元座標を測定する上で測定ポイントを示す目印の役割を果たすものである。ここで、図2から図4はターゲット板2の構成を示す図であり、図2は表面側から見た概略斜視図、図3は裏面側から見た概略斜視図、図4は図2におけるA−A断面を示す概略縦断面図である。ターゲット板2は、平面視略円弧形状の本体部6と、この本体部6の略中央位置に設けられた反射部7,8と、本体部6の側端に設けられた車両取付部9とを有している。
【0018】
本体部6は、図2から図4に示すように、平面視で同じ形状を有する表側プレート10と裏側プレート11とが貼り合わされたものであって、表側プレート10と裏側プレート11の略中央位置には、平面視略円形の凹溝12,13がそれぞれ形成されている。そして、各凹溝12,13の内部には、前記反射部7,8がそれぞれ設けられている。尚、本体部6の平面視形状は、本実施例に限定されず適宜設計変更が可能である。また、本実施例では表側プレート10と裏側プレート11を貼り合せることで本体部6を構成したが、1枚の厚いプレートで本体部6を構成することも可能である。更に、凹溝12,13の平面視形状やその形成位置も、本実施例に限定されず適宜設計変更が可能である。また、凹溝12,13を形成することなく、表側プレート10と裏側プレート11の平坦な表面上に反射部7,8を設けてもよい。
【0019】
反射部7,8は、前記ストロボ装置4から発せられたストロボ光を撮像装置3に向かって反射するためのものである。この反射部7,8は、図4に示すように、表側プレート10の凹溝12と裏側プレート11の凹溝13の内部にそれぞれ設けられることにより、ターゲット板2の表裏両面に設けられている。そして、各反射部7,8は、凹溝12,13の底部に設けられた反射材14,15と、この反射材14,15の表面を覆って設けられたカラーフィルター16,17とから構成されている。
【0020】
反射材14,15は、何れの方向から入射した光でも常に入射した方向へ反射する再帰性反射材であって、平面視で凹溝12,13と略同径の円形に形成されている。そして、図4に示すように、ターゲット板2の表面に設けられた反射材14と裏面に設けられた反射材15は、平面視で略同心円となるようにそれぞれ設けられている。これにより、ある1つのターゲット板2の表面側及び裏面側のどちら側から撮像装置3で撮影しても、各撮影画像中にはそのターゲット板2の反射材14,15で反射されたストロボ光がそれぞれ写し出され、それらは同一の反射材で反射された光とみなすことができるので、これら撮影画像を画像処理することにより、反射材14,15の3次元座標を特定することができる。尚、本実施例では再帰性反射材として、いわゆる露出レンズ型と呼ばれる反射効率の高いものを使用しているが、これに代えて、封入レンズ型、カプセルレンズ型、フィルター貼付型、マイクロプリズム型等の再帰性反射材を用いることも可能である。また、反射材14,15の材質は、ストロボ光から発せられた光を撮像装置3に向かって反射し得るものであれば足り、再帰性反射材には限定されない。また、反射材14,15の形状は、凹溝12,13の形状に合わせて適宜設計変更が可能である。
【0021】
一方、カラーフィルター16,17は、ストロボ光から特定の色の光だけを抽出するためのものである。このカラーフィルター16,17は、平面視で凹溝12,13と略同径の円形に形成されたシート状の部材であって、赤色の光だけを透過する特性を有している。尚、カラーフィルター16,17が透過する光の色は、赤色だけに限定されず、例えば青色、緑色、黄色、灰色等であってもよい。但し、後述するように、撮像装置3によって撮影された画像中で、ストロボ装置4から発せられてターゲット板2の反射部7,8で反射された光を、同じくストロボ装置4から発せられて車体やガラス面で反射された光と区別するためには、本実施例のように赤色の光だけを透過するカラーフィルター16,17、或いは青色の光だけを透過するカラーフィルター16,17が最も好適である。これは、車体やガラス面で反射された光は撮影画像中で白っぽく写し出されるため、これとの識別容易性を考慮すれば、ターゲット板2の反射部7,8で反射された光が撮影画像中に写し出された時の色は、光の3原色のうち最も輝度の高い色と最も輝度の低い色との輝度比率が大きく、且つ、3原色の最大輝度ができるだけ大きい色が好ましい。この2つの条件を共に満たすのが、赤色の光だけ或いは青色の光だけを透過するカラーフィルター16,17だからである。尚、緑色の光だけを透過するカラーフィルター16,17は、前記輝度比率の条件は満たすものの、最大輝度が赤色や青色の場合と比べると低くなるという特性がある。
【0022】
また、カラーフィルター16,17は、少なくとも反射材14,15の表面を覆っていれば足り、例えば本体部6の表面全体を覆うようにして設けてもよい。更に、カラーフィルター16,17は、必ずしも反射材14,15に密着させて設ける必要はなく、反射材14,15から所定距離だけ離れた位置に設けてもよい。
【0023】
車両取付部9は、ターゲット板2を車両Sに取り付けるためのものである。この車両取付部9は、図2及び図3に示すように、永久磁石からなる縦断面四角形の長手部材であって、その一側面が本体部6に固着されている。尚、この車両取付部9の形状・本体部6への固着位置・個数等は、本実施例に限定されず適宜設計変更が可能である。また、ターゲット板2を車両Sに取り付ける手段は永久磁石の磁着力に限られず、例えば車両取付部9を粘着シートで構成し、この車両取付部9を車体やガラス面に貼り付けることでターゲット板2を車両Sに取り付けてもよい。
【0024】
以上のように構成されるターゲット板2は、測定しようとする項目に応じ、車両Sにおける所定の測定ポイントに取り付けられる。図5は、ターゲット板2の車両Sへの取付状態の一例を示す概略斜視図である。本実施例では、車幅を測定するためのターゲット板2を車両Sの左右両側面Saに、また車高を測定するためのターゲット板2を屋根面Sbやボンネット上面Scに、それぞれ取り付けている。もちろん、ターゲット板2の車両Sへの取付位置は、撮像装置3で撮影可能な範囲内で、測定項目に応じた任意の位置に変更することができる。
【0025】
前記撮像装置3は、車両Sの画像を取得するためのものであり、例えばデジタルカメラ,銀塩カメラ,ビデオカメラ等を使用することができる。ここで、図6は、撮像装置3及びストロボ装置4の構成を示す概略斜視図である。撮像装置3は、カメラ本体18と、このカメラ本体18を支持する支持アーム19と、この支持アーム19の基端に固定されたベース板20とを有している。そして、ベース板20は、壁面に敷設された2本のガイドレール21に沿って上下方向にスライド可能となっており、カメラ本体18の位置を上下方向に調整できるようになっている。また、支持アーム19は、カメラ本体18を回動可能に支持しており、カメラ本体18の傾斜角度を調整できるようになっている。尚、撮像装置3の設置台数は、本実施例の4台に限られず、任意の台数とすることができる。また、撮像装置3は、本実施例のように壁面に固定して設ける以外に、ユーザが手で持って使用してもよい。
【0026】
前記ストロボ装置4は、撮像装置3による撮影時にターゲット板2に向かって光を照射するためのものである。このストロボ装置4は、図6に示すように、ストロボ本体22と、このストロボ本体22を支持する支持アーム23と、この支持アーム23の基端に固定されたベース板24とを有している。そして、このストロボ装置4のベース板24は、前記撮像装置3のベース板20より上方の位置を、2本のガイドレール21に沿って上下方向にスライド可能となっており、ストロボ本体22の位置を上下方向に調整できるようになっている。また、ストロボ装置4の支持アーム23も、ストロボ本体22を回動可能に支持しており、ストロボ本体22の傾斜角度を調整できるようになっている。
【0027】
前記画像処理装置5は、撮像装置3が撮影した複数枚の画像に基づいて車両Sの3次元座標を算出するものである。より詳細に説明すると、画像処理装置5は、同一のターゲット板2を異なる角度から撮影した複数枚の画像データが撮像装置3から入力されると、そのターゲット板2の反射材14,15で反射されたストロボ光が各画像中で写し出された位置を、各画像の特徴点としてそれぞれ抽出する。その後、画像処理装置5は、各画像の特徴点同士を対応付けることにより、反射材14,15の3次元座標を特定する。ここで、特徴点同士の対応付けとは、従来公知である三角測量の原理に基づき、各撮像装置3の焦点から各画像の特徴点に対して直線を引き、同一のターゲット板2を撮影した各画像に引いた直線が交わる交点を、反射材14,15の存在位置とすることを意味する。そして、画像処理装置5は、各ターゲット板2の反射材14,15について特定した3次元座標に基づいて、車両Sの3次元座標を算出する。尚、本実施例では、図1に示すように画像処理装置5が撮像装置3に接続され、撮像装置3から画像処理装置5に対して画像データが直接入力される構成であるが、撮像装置3が銀塩カメラの場合には、撮影した画像をスキャナ(不図示)等を用いてデジタルデータに変換した後、このスキャナから画像処理装置5に対して画像データ入力する構成としてもよい。
【0028】
次に、3次元座標測定装置1による車両Sの3次元座標測定手順、及びその作用効果について説明する。まず初めに、撮像装置3とストロボ装置4の位置決めを行う。具体的には、図に詳細は示さないが、まだ車両Sを配置していない状態の床面上に、予め定めた間隔毎に複数のターゲット板2を配置する。そして、撮像装置3を用いて各ターゲット板2を異なる角度から撮影し、その画像データを画像処理装置5に入力することにより、各ターゲット板2の間隔を算出する。そして、その算出結果を実際のターゲット板2の間隔と比較することにより、撮像装置3を構成するカメラ本体18の上下方向位置や傾斜角度を適宜調整する。また、ストロボ装置4についても、ターゲット板2で反射されたストロボ光が撮影画像中に十分高い輝度で写し出されるよう、ストロボ装置4を構成するストロボ本体22の上下方向位置や傾斜角度を適宜調整する。
【0029】
次に、撮像装置3による車両撮影が行われる。この時、各撮像装置3は、まず初めに、車両Sにターゲット板2を取り付けない状態において、ストロボ装置4を作動させて光を照射して車両Sを撮影する。次に、各撮像装置3は、車両Sにターゲット板2を取り付けた状態において、ストロボ装置4を作動させて光を照射して車両Sを撮影する。最後に、各撮像装置3は、車両Sにターゲット板2を取り付けた状態において、ストロボ装置4を作動させず光を照射しないで車両Sを撮影する。そして、各撮像装置3は、それぞれの状態で撮影した画像データを、画像処理装置5に入力する。
【0030】
次に、画像処理装置5によって車両Sの3次元座標が算出される。より詳細に説明すると、まず画像処理装置5は、ストロボ装置4から光を照射した状態で撮影した画像と、ストロボ装置4から光を照射しない状態で撮影した画像の両画像データに基づいて、差分画像を作成する。ここで、太陽光のような背景光や水銀灯の光は、常時車両Sに照射しているため、ストロボ装置4から光を照射したか否かによらず撮影画像中に常に写し出される。従って、差分画像には背景光や水銀灯の光が写し出されない。
【0031】
そして、画像処理装置5は、作成した各差分画像について特徴点を抽出する。すなわち、前述のように、差分画像においてターゲット板2の反射材14,15で反射されたストロボ光が写し出された位置を、その差分画像の特徴点として抽出する。この時、差分画像には背景光や水銀灯の光は写し出されないので、画像処理装置5はこれらの光を特徴点として誤って抽出することがない。更に、前述のように反射材14,15の表面は赤色の光だけを透過するカラーフィルター16,17で覆われているため、反射材14,15で反射されたストロボ光は、差分画像では赤色の領域として写し出される。一方、車体やガラス面で反射されたストロボ光は、差分画像では白っぽい領域として写し出される。従って、画像処理装置5は、車体やガラス面で反射されたストロボ光を、反射材14,15で反射されたストロボ光と誤認して特徴点として抽出することがない。このようにして、各差分画像について特徴点を抽出するに際し、背景光,水銀灯の光,車体やガラス面で反射されたストロボ光の影響を排除することにより、正確な抽出が可能となる。
【0032】
その後、画像処理装置5は、前述のように、各差分画像の特徴点同士を対応付けることにより反射材14,15の3次元座標を特定し、各ターゲット板2の反射材14,15について特定した3次元座標に基づいて、車両Sの3次元座標を算出する。
【0033】
また、画像処理装置5は、車両Sにターゲット板2を取り付けた状態で撮影した画像と、ターゲット板2を取り付けない状態で撮影した画像の両画像データに基づいて、差分画像を作成する。ここで、ターゲット板2の反射材14,15で反射されたストロボ光以外の光は、いずれの状態で撮影した画像にも写し出されるため、両画像から作成した差分画像には写し出されない。そして、画像処理装置5は、前述と同様に、作成した各差分画像について特徴点を抽出する。この時、差分画像には、反射材14,15で反射されたストロボ光以外の光は写し出されないので、画像処理装置5はこれらの光を特徴点として誤って抽出することがなく、特徴点の正確な抽出が可能となる。その後、画像処理装置5は、前述と同様に、各差分画像の特徴点同士を対応付けることにより反射材14,15の3次元座標を特定し、各ターゲット板2の反射材14,15について特定した3次元座標に基づいて、車両Sの3次元座標を算出する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る3次元座標測定装置は、いわゆる車検と呼ばれる継続検査のみならず、構造等変更検査や街頭検査等においても使用することができる。また、本実施例では車両検査として自動車検査を例に説明したが、自動二輪車や原動機付自転車等の検査においても使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 3次元座標測定装置
2 ターゲット板
3 撮像装置
4 ストロボ装置
5 画像処理装置
14,15 反射材
16,17 カラーフィルター
S 車両(被測定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する反射材が設けられ被測定物に取り付けられるターゲット板と、
異なる角度から前記被測定物の画像を撮影する複数台の撮像装置と、
前記被測定物に対して光を照射するストロボ装置と、
同一の前記ターゲット板を異なる角度から前記撮像装置で撮影した複数枚の画像について、前記ストロボ装置から発せられて前記反射材で反射された光が写し出された領域を前記各画像の特徴点としてそれぞれ抽出し、前記各画像の特徴点同士を対応付けて前記被測定物の3次元座標を測定する画像処理装置と、
を備える3次元座標測定装置であって、
前記ターゲット板における少なくとも反射材の表面に、前記ストロボ装置から発せられた光のうち特定の色の光だけを透過するカラーフィルターが設けられたことを特徴とする3次元座標測定装置。
【請求項2】
前記各撮像装置が、前記ストロボ装置から光を照射した状態と光を照射しない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置が、前記被測定物に対して光を照射した状態で撮影した画像と光を照射しない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定することを特徴とする請求項1に記載の3次元座標測定装置。
【請求項3】
前記各撮像装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態と前記ターゲット板を取り付けない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態で撮影した画像と前記ターゲット板を取り付けない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元座標測定装置。
【請求項4】
光を反射する反射材が設けられ被測定物に取り付けられるターゲット板と、
異なる角度から前記被測定物の画像を撮影する複数台の撮像装置と、
前記被測定物に対して光を照射するストロボ装置と、
同一の前記ターゲット板を異なる角度から前記撮像装置で撮影した複数枚の画像について、前記ストロボ装置から発せられて前記反射材で反射された光が写し出された領域を前記各画像の特徴点としてそれぞれ抽出し、前記各画像の特徴点同士を対応付けて前記被測定物の3次元座標を測定する画像処理装置と、
を備える3次元座標測定装置であって、
前記各撮像装置が、前記ストロボ装置から光を照射した状態と光を照射しない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置が、前記被測定物に対して光を照射した状態で撮影した画像と光を照射しない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定することを特徴とする3次元座標測定装置。
【請求項5】
前記各撮像装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態と前記ターゲット板を取り付けない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態で撮影した画像と前記ターゲット板を取り付けない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定することを特徴とする請求項4に記載の3次元座標測定装置。
【請求項6】
光を反射する反射材が設けられ被測定物に取り付けられるターゲット板と、
異なる角度から前記被測定物の画像を撮影する複数台の撮像装置と、
前記被測定物に対して光を照射するストロボ装置と、
同一の前記ターゲット板を異なる角度から前記撮像装置で撮影した複数枚の画像について、前記ストロボ装置から発せられて前記反射材で反射された光が写し出された領域を前記各画像の特徴点としてそれぞれ抽出し、前記各画像の特徴点同士を対応付けて前記被測定物の3次元座標を測定する画像処理装置と、
を備える3次元座標測定装置であって、
前記各撮像装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態と前記ターゲット板を取り付けない状態の両方の状態で、前記被測定物の画像をそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置が、前記被測定物に前記ターゲット板を取り付けた状態で撮影した画像と前記ターゲット板を取り付けない状態で撮影した画像とから差分画像を作成し、該差分画像に基づいて前記被測定物の3次元座標を測定することを特徴とする3次元座標測定装置。
【請求項7】
前記反射材が、前記ターゲット板の表裏両面に、平面視で中心位置が一致するようにそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の3次元座標測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−181325(P2010−181325A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26014(P2009−26014)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(509037352)株式会社ティ.アール.アイ (3)
【出願人】(301021658)株式会社三次元メディア (15)
【Fターム(参考)】