説明

3次元画像表示装置及びその表示方法

【課題】共有のレンズを用いる3次元画像表示装置に小型化することができる技術を提供すること。
【解決手段】3次元画像表示装置10は、水平方向に配列されたプロジェクタe1〜enと、表示部となるスクリーン14と、これらの間に配置され、各プロジェクタe1〜enからの各画像光22−1〜22−nをスクリーン14に導く共有レンズ19とを備えている。共有レンズ19の焦点距離f2は、投影面17からスクリーン14までの距離より長く設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の発生源が複数ある多眼式の3次元画像表示装置及びその表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元画像を生成する装置として、複数の画像発生源から、個々に視差のある画像を投射させる装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。人間は、当該拡散板から出射される画像を水平方向に並んだ左右の目で観察するため、水平方向で視差が発生する。したがって、上記特許文献1の装置では、水平方向で表示方向の異なる、つまり、視差のある画像が、水平方向の各画像発生源から発生する。このような視差のある複数の画像が合成されることにより、3次元画像が表示される。
【0003】
この特許文献1の装置は、複数の画像発生源からの投射光をそれぞれ平行光とするアフォーカル光学系を用いている。2次元的に配置された複数の画像発生源ごとに配置されたマイクロレンズアレイと、例えば1枚の共有レンズとでアフォーカル光学系が構成される。アフォーカル光学系が用いられることにより、複数の画像発生源からの各投射光の光束が、スクリーンとなる拡散板(垂直方向拡散板)上で同一位置に投影される。一般的に、このような多眼式では、スクリーン上で各画像が重なる範囲で3次元画像が表示可能である。したがって、特許文献1では、アフォーカル光学系により、画像発生源から拡散板までの投射距離をできるだけ短くして、拡散板上で画像が重なる範囲をできるだけ大きくすることができる。
【0004】
【特許文献1】特許第3576521号公報(段落[0047]、図3(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、少なくとも共有レンズの焦点距離以上の上記投射距離が必要となる。表示装置の小型化には、さらに工夫が必要である。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、上記のように共有のレンズを用いる3次元画像表示装置に小型化することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る3次元画像表示装置は、投影面と、視差のある複数の画像を前記投影面からそれぞれ投影する複数の投影素子とを有する投影部と、前記複数の投影素子から投射された前記複数の画像が入射されて3次元画像を表示する表示部と、前記投影面と前記表示部との間に配置され、前記投影面から前記表示部までの距離より長い焦点距離を有し、前記各投影素子からそれぞれ投影された前記各画像の光を前記表示部に導く共有レンズとを具備する。
【0008】
本発明では、共有レンズの焦点距離が、投影面から表示部までの距離より長いので、結果的に投影面と表示部との距離を短くすることができる。したがって、3次元画像表示装置の小型化が実現される。
【0009】
本発明において、共有レンズがフレネルレンズである場合に、特に有利になる。焦点距離が短いフレネルレンズの場合、当該フレネルレンズの周辺部の収差が大きくなり、また周辺部の輝度が低下する。しかし、本発明の場合、特許文献1のように、共有レンズの焦点距離を投影部から表示部までの距離に合わせなくてもよいので、当該収差を低減し、輝度を高くすることができる。すなわち、特許文献1の装置に比べ、画質を低下させずに小型化を図ることができる。さらに、フレネルレンズはレンズ厚が薄いので、3次元画像表示装置の薄型化に寄与する。
【0010】
本発明に係る3次元画像表示方法は、視差のある複数の画像を投影面から投影し、前記投影面と表示部との間に配置され、前記投影面から前記表示部までの距離より長い焦点距離を有する共有レンズにより、前記投影面から投影された前記複数の画像の光を前記表示部に導き、前記共有レンズからの出射光を前記表示部で受けて3次元画像を表示する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、共有レンズを用いる3次元画像表示装置に小型化することができる。また、3次元画像の輝度の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施の形態に係る3次元画像表示装置を説明する前に、まず、3次元画像表示の原理について説明する。
【0014】
図1は、2次元画像と3次元画像の違いを説明するための図である。図1(A)に示すように、一般的な2次元ディスプレイの表示面は、どの方向にも同じ光線強度を発する拡散面を有する。これに対し、図1(B)に示すように、3次元ディスプレイの表示面3は、方向により異なる光線強度を発する機能を有する。これにより、観察者11が異なる方向から3次元ディスプレイを見た場合、左右の眼で異なる画像を見ることができ、そのとき発生する視差により3次元画像を見ることができる。
【0015】
3次元画像を実現するための方式の1つとして、多眼式がある。図2は、その原理を説明するための図である。例えば、投影素子としてプロジェクタ4が、例えば水平方向(X方向)に1列に複数配置され、これらのプロジェクタ4から投影された画像がスクリーン5に映し出される。各プロジェクタ4からは、視差のある画像がそれぞれ投影される。視差の複数の画像を得る方法としては、複数のカメラが用意され、当該各カメラでそれぞれ撮像された画像でよい。
【0016】
スクリーン5は、水平方向(X方向)より垂直方向(Z方向)の方が強い拡散力を持つスクリーンが用いられる。この場合、水平方向の拡散角(例えば1つのプロジェクタ4からの画像光の光束の発散角)は、例えば1度程度の微小角度であり、垂直方向の拡散角は数十度である。このようなスクリーン5としては、例えばレンチキュラーシート、ホログラムシート等が用いられる。
【0017】
しかし、このようなスクリーン5に限られず、例えばプロジェクタ4が、2次元的に、つまり水平方向及び垂直方向に複数配置される場合、水平及び垂直方向の拡散角はほぼ同じであってもよい。この場合、2次元的に配置された複数のプロジェクタ4は、水平方向にも、または、垂直方向にも視差のある画像を投影する。
【0018】
ちなみに、図2のようにプロジェクタ4が2次元的に多数配列されることで、いわゆる光線再生法による3次元画像を実現することができる。光線再生法を利用する場合、スクリーン5は必ずしも必要ない。光線再生法は、複数のカメラによって撮像された視差のある複数の画像が画像処理され、それらの画像が合成されることで1つの3次元画像が生成される。その画像処理は、例えば当該視差の角度やそれに伴う屈折率等に基づいて行われる。
【0019】
図3は、図2に示した多眼式を応用した画像表示装置の構成を示す模式図であり、画像表示装置の真上から見た図である。画像表示装置100は、水平方向に1列に並べられた複数のプロジェクタ(n個のプロジェクタ)e1、・・・ec、・・・enと、各プロジェクタe1〜enから投影される画像が映し出されるスクリーン14とを備えている。図3では、説明を分かりやすくするため、多数あるプロジェクタe1〜enのうち、両端のe1及びenの2つのプロジェクタと、中央辺りの1つのプロジェクタecを代表して描いている。また、この例では、水平方向(X方向)に1列にプロジェクタe1〜enが配列され、スクリーン14は上記したように、垂直方向(Z方向)の拡散が強く、水平方向の拡散が弱いスクリーンが用いられている。
【0020】
プロジェクタe1〜enは、例えば液晶パネルやDMD(Digital Micro-mirror Device)等の光変調素子15と、この光変調素子15で表示された画像を拡大投影するレンズ系16とをそれぞれ有する。また、プロジェクタe1〜enは、図示しない光源をそれぞれ有している。これらのプロジェクタe1、ec、enから出射された各画像光22−1、22−c、22−nがそれぞれ反転する位置が並んだ面を投影面17とする。投影面17からスクリーン14までの距離をdとしている。なお、図3において、プロジェクタe1〜enの光変調素子15とレンズ系16とが、水平方向(X方向)にずれて、すなわちオフセットされて配置されている。これは、各プロジェクタe1〜enから出射した画像光22−1〜22−nが、スクリーン14上においてできるだけ大画面で重なるようにするためである。
【0021】
図3の装置100では、観察者11の1つの瞳にプロジェクタe1、ec、enからの各画像が数画素分としてそれぞれ一定の幅w0を持って観察される。3つのプロジェクタe1、ec、enからの光は、スクリーン14によってX方向では微小な角度で拡散されるとともにZ方向では強く拡散される。したがって、横幅w0でピッチp0の3つの縦長の断片画像としてとして観察される。実際のプロジェクタe1、ec、enの数をnとすると、n本の縦長断片映像が隙間なく並んでいるため、実際は1つの画像として認識される。瞳から見えるこの1つの画像の幅はu0である。この幅u0は、観察距離kが大きくなれば広くなる。しかし、無限大にならない限りスクリーン幅sよりは必ず小さく、実質的にスクリーン14の全画面に渡る3次元画像は観察できない。すなわち、スクリーン14のサイズに対してほぼ同じ幅(X方向の幅)で複数のプロジェクタe1〜enが配置された場合、観察者はスクリーンの中央付近での一部にしか3次元画像を見ることができない。
【0022】
そこで、このような問題を解決するために、図4に示すように、スクリーン14と各プロジェクタe1〜enとの間であって、スクリーン14のすぐ背面側に1枚の共有レンズ18が配置される画像表示装置200がある。これは、原理的には上記特許文献1に示した装置の構造に近い。この共有レンズ18の焦点距離f1(観察者側)は、投影面17からスクリーン14までの距離dに一致しており、レンズ系16及び共有レンズ18でアフォーカル光学系が構成される。すなわち、投影面17からの平行光の画像光22−1、22−c、22−nの群がスクリーン14に映し出されることになる。したがって、観察者11は、投影面17と実質的に同一幅u1で3次元画像を見ることができる。なお、図4において、破線で示す光線23は、共有レンズ18の焦点距離f1を表現するための光線である。図4において、観察者11の瞳から見える画像全体の幅u1は、観察距離kがd(=f1)よりも大きい場合にスクリーン幅sと一致する。
【0023】
図5は、本発明の一実施の形態に係る3次元画像表示装置の構成を示す模式図である。この3次元画像表示装置10は、水平方向に配列されたプロジェクタe1〜enと、表示部となるスクリーン14と、これらの間に配置され、各プロジェクタe1〜enからの各画像光22−1〜22−nをスクリーン14に導く共有レンズ19とを備えている。図5では、図3及び図4と同様に、光変調素子15とレンズ系16とがオフセットされて構成されるプロジェクタを示した。しかし、これらの位置がオフセットされていないプロジェクタが用いられてもよい。
【0024】
本実施の形態に係る3次元画像表示装置10と図4の装置200との違いは、投影面17からスクリーン14までの距離より長い焦点距離f2(破線で示す光線23を参照)を持つ共有レンズ19が用いられている点にある。すなわち、投影面17とスクリーン14との距離dを短くすることができ、3次元画像表示装置10の薄型化または小型化が図れる。共有レンズ19は、集光のための屈折力を有しているレンズであれば何でもよい。
【0025】
プロジェクタe1〜enからの各画像光22−1〜22−nは、共有レンズ19を通った後は、観察者11の瞳に幅w2で届く。図4に示す共有レンズ18と共有レンズ19とが同じレンズである場合、上記したd<f2の関係から、図5に示す各画像光22−1、22−nの共有レンズ19への入射角が、図4に示す場合のそれより大きくなるので、w2はw1より大きくなる。観察者11の瞳から見える画像全体の幅u2は、観察距離kがdよりも大きい場合にスクリーン幅sと一致する。例えばdは、例えばf2の2〜3倍程度に設定することができるが、もちろんこの範囲に限られない。なお、
【0026】
図6は、本発明の他の実施の形態に係る3次元画像表示装置の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る3次元画像表示装置20では、上記共有レンズとしてフレネルレンズ29が用いられている。この例においても、フレネルレンズ29の焦点距離f3は、投影面からスクリーンまでの距離dより長く設定されている。一般的に、焦点距離が短いフレネルレンズの場合、当該フレネルレンズ29の周辺部の収差が大きくなり、また周辺部の輝度が低下する。しかし、本実施の形態の場合、フレネルレンズ29の焦点距離f3を投影面17からスクリーン14までの距離に合わせて短くしなくてもよいので、当該収差を低減し、輝度を高くすることができる。すなわち、特許文献1の装置に比べ、画質を低下させずに小型化を図ることができる。さらに、フレネルレンズ29はレンズ厚が薄いので、3次元画像表示装置20の薄型化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】2次元画像と3次元画像の違いを説明するための図である。
【図2】3次元画像を実現するための方式の1つとして多眼式の原理を説明するための図である。
【図3】図2に示した多眼式を応用した画像表示装置の構成を示す模式図である。
【図4】スクリーンの背面側に1枚の共有レンズが配置される画像表示装置の例を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る3次元画像表示装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る3次元画像表示装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0028】
e1、ec、en…プロジェクタ
f1、f2、f3…焦点距離
4…プロジェクタ
5…スクリーン
10、20…3次元画像表示装置
5、14…スクリーン
15…光変調素子
16…レンズ系
17…投影面
18、19…共有レンズ(29…フレネルレンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影面と、視差のある複数の画像を前記投影面からそれぞれ投影する複数の投影素子とを有する投影部と、
前記複数の投影素子から投射された前記複数の画像が入射されて3次元画像を表示する表示部と、
前記投影面と前記表示部との間に配置され、前記投影面から前記表示部までの距離より長い焦点距離を有し、前記各投影素子からそれぞれ投影された前記各画像の光を前記表示部に導く共有レンズと
を具備することを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元画像表示装置であって、
前記共有レンズはフレネルレンズであることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項3】
視差のある複数の画像を投影面から投影し、
前記投影面と表示部との間に配置され、前記投影面から前記表示部までの距離より長い焦点距離を有する共有レンズにより、前記投影面から投影された前記複数の画像の光を前記表示部に導き、
前記共有レンズからの出射光を前記表示部で受けて3次元画像を表示する
ことを特徴とする3次元画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−107583(P2008−107583A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290616(P2006−290616)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】