説明

3次元表示用パターン配向膜用原版およびその製造方法

【課題】本発明は、高品質な3次元表示装置用パターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、上記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、を有し、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、上記金属基材および凸部の表面で90°異なることを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質な3次元表示装置用パターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図12はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図12に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用と左目用の円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0004】
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
【0005】
ところで、上述したようにパッシブ方式においてはパターン位相差フィルムを用いることが必須になるところ、このようなパターン位相差フィルムについてはまだ広く研究・開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。この点、特許文献1にはパターン位相差フィルムとして、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するパターン位相差板が開示されている。しかしながら、このような特許文献1に開示されたパターン位相差板は、ガラス板を用いることが必須となっていることから、高価であり、また大面積のものを大量に製造できるというものではなく、その実用性に難点があった。
【0006】
また、特許文献2では、パターン位相差フィルムの製造方法として、レーザーによりパターンを形成したロール版を用い、このようなロール版と、配向層形成用層とを接触させることにより表面にパターン状の微細凹凸を有する賦型されたパターン配向膜を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には同一平面に研磨により微細凹凸をパターン状に形成する方法が記載されている。
しかしながら、レーザーによりパターンが形成された原版を用いて製造されたパターン位相差フィルムは、右目用および左目用の位相差層のパターン、すなわち、液晶化合物の配列方向の異なる領域間の端部近傍、すなわち、第1位相差領域および第2位相差領域の境界部分で液晶化合物の配列方向が乱れる配向欠陥が生じやすく、液晶表示装置に用いた場合には、上記端部近傍の液晶に配向欠陥を生じさせるといった問題があった。その結果、端部近傍からの光漏れを生じ、コントラストが低いものとなるといった問題があった。また、レーザーにより微細凹凸を描画する場合、微細凹凸を一本一本描画するため数十nm、数百nmの凹凸を大面積(液晶TVサイズ)に渡って形成するのに相当の時間を要する。また数十nm、数百nmの凹凸のピッチで高精度で制御する装置が必要となるといった問題があった。
また、一般にレーザーでの加工は線幅が数百nmレベルが下限であり数十nmレベルの線幅は困難であり、優れた配向規制力を有するパターン配向膜とすることが難しいといった問題や、レーザー加工装置が高価であるといった問題があった。
また、特許文献2は研磨方法による原版作製の記載があるが、特許文献2の方法では同一平面上に研磨によりパターンを形成した場合に、数百μmのパターン領域毎に研磨を実施したり、微細凹凸が形成された領域パターンを組み合わせてロール版を形成する必要があり、プロセスが複雑で相当な時間と高精度の作業が必要であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【特許文献2】特開2010−152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高品質な3次元表示装置用パターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、上記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、を有し、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、上記金属基材および凸部の表面で90°異なることを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版を提供する。
【0010】
また、本発明は、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、上記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、を有し、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、上記金属基材および凸部の表面で45°異なることを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版を提供する。
【0011】
本発明によれば、凸部と、凸部に隣接し露出する金属基材表面である凹部と、が平行な帯状に形成されていることにより、このような3次元表示用パターン配向膜用原版(以下、単に原版とする場合がある。)を用いることで、第1配向領域と、上記第1配向領域よりも厚みが小さい第2配向領域とがパターン状に形成された配向層を有するパターン配向膜を容易かつ大量に形成することができる。
また、このようなパターン配向膜を使用し、上述の配向領域を有する配向層上に、例えば、液晶化合物を含む位相差層を形成することにより、3次元表示装置に用いられるパターン位相差フィルムを容易かつ大量に製造することが可能となる。
さらに、このようなパターン配向膜を用いて位相差層を形成した場合には、各領域の端部近傍、すなわち、隣り合ったパターンの境界近傍において上記液晶化合物の配向が乱れることを抑制することができる。
このように、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い配向欠陥を抑制することが可能となり、境界近傍からの光漏れのない高品質なパターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に得ることができる。
また、凸部および凹部の表面に形成される微小なライン状凹凸構造の形成方向が90°異なる、または、45°異なることにより、3次元表示装置に好適に用いられるものとすることができる。
【0012】
本発明においては、上記金属基材の形状がロール状であることが好ましい。上記金属基材の形状がロール状であること、すなわち、上記原版がロール版であることにより、原版を回転しながら連続的に配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量にパターン配向膜を形成可能なものとすることができ製造効率の高いものとすることができるからである。
【0013】
本発明においては、凸部の厚みが10nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。上記第1配向領域および上記第1配向領域よりも厚みが小さい第2配向領域がパターン状に形成された配向層を安定的に形成することができるからである。
【0014】
本発明においては、上記微小なライン状凹凸構造の周期が1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。液晶化合物を安定的に配列させることができる配向層を安定的に形成することができるからである。
【0015】
本発明においては、上記微小なライン状凹凸構造の高さが1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。液晶化合物を安定的に配列させることができる配向層を安定的に形成することができるからである。
【0016】
本発明は、金属基材を準備し、上記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第1研磨工程と、上記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成するレジスト・凸部形成工程と、上記凸部の表面に上記第1研磨工程とは90°異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第2研磨工程と、上記レジストを剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、金属基材を準備し、上記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第1研磨工程と、上記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成するレジスト・凸部形成工程と、上記凸部の表面に上記第1研磨工程とは45°異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第2研磨工程と、上記レジストを剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0018】
本発明によれば、高品質な3次元表示装置用パターン位相差フィルムを容易かつ大量に製造することが可能なパターン配向膜を作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版を容易かつ安定的に得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版によれば、高品質なパターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に作製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の一例を示す概略図である。
【図2】図1の原版の表面を示す概略平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明における微小なライン状凹凸構造を説明する説明図である。
【図5】本発明における微小なライン状凹凸構造を説明する説明図である。
【図6】本発明における微小なライン状凹凸構造を説明する説明図である。
【図7】本発明における微小なライン状凹凸構造を説明する説明図である。
【図8】本発明の原版を用いて製造されるパターン配向膜を使用したパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図9】本発明における凸部を説明する説明図である。
【図10】本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明におけるレジスト・凸部形成工程を説明する説明図である。
【図12】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、3次元表示用パターン配向膜用原版およびその製造方法に関するものである。
以下、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版および3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法について詳細に説明する。
【0022】
A.3次元表示用パターン配向膜用原版
まず、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版について説明する。
本発明の原版は、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、上記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、を有し、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、上記金属基材および凸部の表面で異なることを特徴とするものである。
【0023】
このような本発明の原版について図を参照して説明する。図1は、本発明の原版の一例を示す概略図である。図2は図1の原版表面の概略平面図であり、図3は図2のA−A線断面図である。図1〜図3に例示するように、本発明の原版10は、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材1と、上記金属基材1上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部2と、を有し、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、上記金属基材1および凸部2の表面、すなわち、上記凸部に隣接する露出した金属基材1である凹部3および凸部2の表面で異なるものである。
なお、この例においては、上記原版10はロール版であり、上記凸部および凹部表面の上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、原版(ロール版)の回転方向に対して135°および45°であり、90°異なるものを示すものである。また、図2中の矢印は、微小なライン状凹凸構造の形成方向を示すものである。
【0024】
本発明によれば、凸部と、凸部に隣接し露出する金属基材である凹部と、が平行な帯状に形成されていることにより、このような原版を用いることで、第1配向領域と、第2配向領域とがパターン状に形成された配向層を有するパターン配向膜を容易に形成することができる。
このため、このようなパターン配向膜を使用し、上述の配向領域を有する配向層上に例えば、液晶化合物を含む位相差層を形成することにより、3次元表示装置に用いられるパターン位相差フィルムを容易かつ大量に製造することが可能となる。
また、第1配向領域および第2配向領域がそれぞれ凸形状および凹形状であり、両領域の微小なライン状凹凸構造が形成された表面の高さ方向の位置が異なることにより、両領域の高さが同程度である場合と比較して、このような配向領域を有する配向層上に液晶化合物を含む位相差層を形成した場合には、それぞれの配向領域に対応する位相差層の位相差領域にのみ選択的に配向規制力を及ぼすことが可能となり、両領域間の境界付近において位相差層に含まれる液晶化合物の配向が乱れることを抑制することができる。
すなわち、本発明の原版を用いて形成されたパターン配向膜の配向層上に液晶化合物を含む位相差層を形成した場合には、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い配向欠陥を抑制することが可能となり、境界近傍からの光漏れのない高品質なパターン位相差フィルムを得ることができる。
このように、境界近傍からの光漏れのない高品質なパターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を容易かつ大量に得ることができる。
さらに、凸部および凹部の表面に形成される微小なライン状凹凸構造の形成方向が90°異なる、または、45°異なるものとすることにより、3次元表示装置に好適に用いられるものとすることができる。
【0025】
また、上記原版の表面に形成された形状、すなわち、第1配向領域および第2配向領域に配向規制力を付与するための形状を微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものとすることで、例えば、金属基材表面の研磨等により容易に形成することができる。
さらに、微小なライン状凹凸構造が凹部および凸部表面のように、高さの異なる位置に形成されていることにより、凹部および凸部の端部近傍、すなわち、凹部および凸部の境界近傍においても、微小なライン状凹凸構造を所定の方向となるように容易かつ精度良く形成することができる。したがって、液晶化合物の配向規制力に優れたものとすることができる。
【0026】
ここで、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版は、金属基材と、凸部と、を有するものである。また、上記凸部および上記凸部に隣接する露出した金属基材である凹部の表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものである。
以下、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の各構成について詳細に説明する。
【0027】
1.微小なライン状凹凸構造
本発明における微小なライン状凹凸構造は、上記金属基材および凸部の表面、すなわち、上記凸部に隣接し露出する金属基材である凹部および凸部の表面に略一定方向にランダムに形成されたものである。
ここで、略一定方向にランダムに形成された微小なライン状凹凸構造とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に形成されたものである。
【0028】
ここで、本発明における微小なライン状凹凸構造としては、本発明の原版を用いて形成されたパターン配向膜により3次元表示可能なパターン位相差フィルムとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が上記凸部および凹部の表面で90°異なる態様(第1実施態様)と、上記凸部および凹部の表面で45°異なる態様(第2実施態様)と、の2態様に分けることができる。
以下、各態様に分けて説明する。
【0029】
(1)第1実施態様
本態様の微小なライン状凹凸構造は、上記凸部および凹部の表面で形成方向が90°異なるものである。
このような本態様の微小なライン状凹凸構造としては、上記凸部および凹部の表面で形成方向が90°異なるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、原版がロール版である場合には、ロールの回転方向に対して凸部および凹部の微小なライン状凹凸構造の形成方向(凸部/凹部)が、45°/135°、0°/90°であることが好ましい。
このように互いに直交する方向の場合、本態様の微小なライン状凹凸構造を有する原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成された配向層を形成し、さらに第1配向領域および第2配向領域上に形成される第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値をλ/4とすることにより、これらの位相差領域を透過することで直線偏光がそれぞれ右円偏光、左円偏光になるため、3次元表示が可能な表示装置を容易に製造するために好適に用いられるものにできるからである。
既に説明した図2は、凸部および凹部の表面に形成される微小なライン状凹凸構造の方向が45°および135°、図4は0°および90°の場合のロール版表面を示すものである。
なお、図4中の符号については、図2のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0030】
本態様の微小なライン状凹凸構造の断面形状としては、凹凸構造を有し、上記液晶化合物を所定の方向に配列できるものであれば特に限定されるものではなく、略矩形、略三角形、略台形等とすることができる。また、一定の形状でなくともよい。
【0031】
本態様の微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期としては、液晶化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明において、微小なライン状凹凸構造の幅は、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、微小なライン状凹凸構造の高さは、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
さらに、微小なライン状凹凸構造の周期は、必ずしも一定ではなくても良いが、概ね1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。微小なライン状凹凸構造が上述のサイズであることにより、安定的に液晶化合物を配列させることができるからである。
【0032】
ここで、微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期はそれぞれ図5におけるl、m、nで示される距離を意味する。
なお、図5は、微小なライン状凹凸構造の断面形状が矩形状である場合を示す説明図である。
【0033】
本態様の微小なライン状凹凸構造の形成方法としては、所望のサイズかつ形成方向のライン状凹凸構造を凸部および凹部の表面に形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、凸部および凹部のそれぞれの表面に対して研磨する方法を挙げることができる。
このような研磨方法としては、微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成し、本発明の原版を用いて液晶化合物を配列可能な第1配向領域および第2配向領域を形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、砥石研磨法、ペーパー研磨法、テープ研磨法、サンドブラスト法、ショットブラスト法、グリットブラスト法、ガラスビーズブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの合成繊維からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーで引っかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイニング法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等を挙げることができる。本態様においては、なかでもテープ研磨法、ペーパー研磨法であることが好ましい。微小なライン状凹凸の方向を制御しやすいからである。
【0034】
(2)第2実施態様
本態様の微小なライン状凹凸構造は、上記凸部および凹部の表面で形成方向が45°異なるものである。
このような本態様の微小なライン状凹凸構造としては、上記凸部および凹部の表面で形成方向が45°異なるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、原版がロール版である場合には、ロールの回転方向に対して凸部および凹部の微小なライン状凹凸構造の形成方向(凸部/凹部)が、0°/45°、0°/135°であることが好ましい。
このように上記微小なライン状凹凸構造の形成方向が45°異なる方向の場合、本態様の微小なライン状凹凸構造を有する原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成された配向層を形成した場合には、上記第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値をλ/2分に相当するものとし、さらに、λ/4板と組み合わせて用いることにより、3次元表示が可能な表示装置を容易に製造するために好適に用いられるものにできるからである。
図6は、凸部および凹部の表面に形成される微小なライン状凹凸構造の方向が0°/45°、図7は0°/135°の場合のロール版表面を示すものである。
なお、図6〜図7中の符号については、図2のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図中の矢印は、微小なライン状凹凸構造の形成方向を示すものである。
【0035】
ここで、このような位相差領域を有する場合に、λ/4板と組み合わせることにより、容易に3次元表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図8は、本発明の原版を用いて形成されたパターン配向膜を使用して作製されたパターン位相差フィルムを説明する概略図であり、パターン位相差フィルムとλ/4板とを組み合わせた、3次元表示可能な発光型表示装置の一例を示すものである。図8に例示するように、パターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用いる発光型表示装置は、パッシブ方式により3次元表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、発光型ディスプレイの画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、パターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第1位相差領域以外の領域(図8では、当該領域には何も形成されていないものとする。)が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このような本態様に用いられるパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図8においては、第2直線偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、第2直線偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光に(0°)変換された各映像は、本態様に用いられるパターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は位相差層が形成されていない領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、パターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、それぞれ右円偏光と左円偏光とに変換されることになるため、視聴者に右目用フィルターと左目用フィルターとを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用フィルターのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用フィルターのみを通過するようにすることによって、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
なお、図8においては、パターン位相差フィルムにおける位相差層において、第2位相差領域には何も形成されていない例を説明したが、例えば、上記第2位相差領域に、面内レターデーション値がλ/2分に相当し、かつ遅相軸方向が上記第1位相差領域の遅相軸方向と45°で交差する関係にあり、さらに遅相軸方向が、第2直線偏光板の偏光軸方向と平行又は直交の関係にある第2位相差領域が形成されている場合であっても、上記と同様に3次元表示可能な発光型表示装置を得ることができる。
【0036】
本態様における微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期、ならびに、微小なライン状凹凸構造の形成方法については、上記「(1)第1実施態様」の項に記載したものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0037】
2.凸部および凹部
本発明における凸部は、上記金属基材上に平行な帯状に形成され、無機材料からなるものである。また、凹部はこのような凸部に隣接するものであり、上記凸部に隣接する露出した金属基材を指すものである。
したがって、本発明における凸部および凹部は、両者が交互に平行な帯状に形成されたものである。
【0038】
本発明における凸部および凹部の形成方向、すなわち、平行な帯状の方向としては、配向層形成用層に精度良く原版の表面形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではないが、原版がロール版である場合には、ロールの回転方向に沿った方向であることが好ましい。
【0039】
本工程における凹部および凸部の幅としては、両者の幅が同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
しかしながら、本発明においては凹部および凸部の幅が同一であることが好ましい。通常右目用の画素と左目用の画素部が同一の幅で形成されていることから、凹部および凸部の幅を同一幅とすることにより、この凹部および凸部に対応して形成される配向層の第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることができるからである。その結果、本発明の製造方法により製造されるパターン配向膜を用いて3次元表示可能な液晶表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本発明の製造方法により製造されるパターン配向膜を用いて容易に3次元液晶表示装置を製造することができるようになるからである。また、発光型表示装置に用いられる画素部も同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、本発明の製造方法により製造されるパターン配向膜を用いて3次元表示可能な発光型表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられる画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本発明の製造方法により製造されるパターン配向膜を用いて容易に3次元発光型表示装置を製造することができるようになるからである。尚、発光型表示装置の色純度やコントラストを向上させる目的で、発光型表示装置と本発明の製造方法により製造されるパターン配向膜の間にカラーフィルタを配置しても良いが、その場合は、凹部および凸部のパターン、すなわち、形成される第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが好ましい。
【0040】
上記凹部および凸部の具体的な幅としては、本発明の原版を用いて形成されるパターン配向膜の用途に応じて適宜決定される。例えば、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、凹部および凸部の幅は右目用、左目用の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように凹部および凸部の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0041】
本工程における凸部の厚さ、すなわち、凹部および凸部の段差としては、10nm〜5μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、50nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。上記段差が上述の範囲内であることにより、上記凹部および凸部に対応して配向層に形成される第1位相差領域および第2位相差領域の端部近傍での液晶化合物の配向の乱れを効果的に抑制できるからである。また、第1配向領域および第2配向領域上に形成される位相差層の厚みの調整が容易だからである。
【0042】
なお、上記凸部の厚みは、図9中のD1で示す距離を意味するものとする。また、図9に示すように、表面に形成された微小なライン状凹凸構造を含む厚みをいうものとする。
また、図9中の符号については、図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0043】
本発明に用いられる凸部を構成する無機材料としては、上記金属基材上に安定的に積層できるものであれば特に限定されるものではなく、ニッケル、銅、アルミニウム、スズ、クロム、ステンレス(SUS)、鉄等の金属材料;SiO、SiO、Al、GeO、TiO、Cr、ZrO、Ta、Nb等の無機酸化物;Si、AlN等の無機窒化物;SiO等の無機酸化窒化物;SiC等の無機炭化物;DLC(ダイアモンドライクカーボン)等を挙げることができ、なかでも、金属材料、DLC等であることが好ましく、なかでも、ニッケル、DLCであることが好ましく、特に、DLCであることが好ましい。金属基材上に容易に形成可能だからである。また、微小なライン状凹凸構造の形成が容易だからである。
なお、本発明における無機材料として金属材料を用いる場合には、金属基材を構成する材料と同じものであっても、異なるものであっても良い。
【0044】
本発明における凸部の形成方法としては、所望の厚みの凸部を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、材料に応じて適宜選択されるものである。例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)、気相成長法(CVD法)、めっき法、塗布法等を挙げることができる。
より具体的には、ニッケル等の金属材料である場合には、めっき法を用いることが好ましく、DLC等である場合には、CVD法を用いることが好ましい。このような方法であることにより、厚み精度良く形成することができるからである。
【0045】
3.金属基材
本発明に用いられる金属基材を構成する材料としては、表面に微小なライン状凹凸構造を形成でき、上記凸部を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、ニッケル、クロム、銅、ステンレス(SUS)、鉄、アルミ等であることが好ましく、なかでも、ニッケル、銅であることが好ましい。表面に微小なライン状凹凸構造を容易に形成できるからである。また、剥離性に優れるため、本工程後の配向層形成用層を容易に剥離できるからである。
【0046】
本発明における金属基材の形状としては、表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成することができ、さらに凸部を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、板状、ロール状とすることができるが、なかでも、ロール状であることが好ましい。ロール状であること、すなわち、原版をロール版とすることができることにより、原版を回転しながら連続的に配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量にパターン配向膜を形成可能なものとすることができ、製造効率の高いものとすることができるからである。
また、ロール状としては、表面に所望の形状を形成でき、安定的にパターン配向膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ロール形状、スリーブ形状等とすることができ、なかでも、スリーブ形状であることが好ましい。
スリーブ形状であることにより、本発明の原版を用いて、パターン配向膜を製造効率高く製造することが可能となるからである。また、スリーブ形状の原版は、ロール形状のものに比べて軽量であり、取扱いが容易となるといった利点を有するからである。
ここで、ロール形状の金属基材としては、具体的には、軸付ロール、軸なしパイプ等を挙げることができる。ここで、軸なしパイプとは、その厚みが3000μm以上である円筒形状の金属基材を指すものである。
また、スリーブ形状とはシームレスの金属基材の帯状体を表し、上記スリーブ形状の金属基材は空気圧力や応力により容易に変形させることができるものであり、具体的にはその厚みが1000μm以下の円筒形状の金属基材を指すものである。
本発明においては、ロール形状またはスリーブ形状等のロール状の場合には、継ぎ目のないシームレスであることが好ましいが、板状の金属基材を円筒状にした継ぎ目を有するものも用いることができる。
【0047】
4.3次元表示用パターン配向膜用原版
本発明の原版は、金属基材と、凸部と、を有するものであるが、必要に応じて、その他の構成を有するものであっても良い。
具体的には、金属基材の凸部が形成される面の反対表面上に配置され、金属基材および凸部を支持する支持基体等を挙げることができる。なお、このような支持基体としては、一般的な原版に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
本発明の原版の用途としては、3次元表示装置に用いられるパターン位相差フィルムの製造に使用されるパターン配向膜の形成用途に用いられるものであるが、なかでも本発明においては、配向欠陥がなく高品質性が要求されるパターン位相差フィルム用のパターン配向膜の形成に用いられることが好ましい。
【0049】
B.3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法
次に、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法について説明する。
本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法は、金属基材を準備し、上記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第1研磨工程と、上記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成するレジスト・凸部形成工程と、上記凸部の表面に上記第1研磨工程とは異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第2研磨工程と、上記レジストを剥離する剥離工程と、を有することを特徴とするものである。
【0050】
このような本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法について図を参照して説明する。図10は、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法の一例を示す工程図である。図10に例示するように、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法は、金属基材1を準備し、上記金属基材1の表面を略一定方向に研磨することにより(図10(a))、微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成した後、レジスト材料を塗工し、さらにレーザー描画法により露光することにより(図10(b))、金属基材1の表面に平行な帯状にレジスト4を形成し(図10(c))、次いで、無機材料としてDLCからなる凸部2をCVD法により形成し(図10(d))、上記凸部2の表面に上記金属基材1の表面に行った研磨方向とは90°異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成し(図10(e))、その後、上記レジスト4を剥離し、原版10を得るものである(図10(f))。
なお、図10(a)が第1研磨工程、(b)〜(d)がレジスト・凸部形成工程、(e)が第2研磨工程、(f)が剥離工程である。
【0051】
本発明によれば、高品質かつ、3次元表示装置に好適に用いられるパターン位相差フィルムを形成可能な原版を容易かつ安定的に得ることができる。
【0052】
本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法は、第1研磨工程、レジスト・凸部形成工程、第2研磨工程、および剥離工程を有するものである。
以下、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0053】
1.第1研磨工程
本発明における第1研磨工程は、金属基材を準備し、上記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する工程である。
なお、本工程で用いられる金属基材および上記金属基材の表面を略一定方向に研磨する研磨方法については、上記「A.3次元表示用パターン配向膜用原版」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
2.レジスト・凸部形成工程
本発明におけるレジスト・凸部形成工程は、上記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成する工程である。
本工程において平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成する方法としては、レジストおよび凸部を所望のパターンとなるように形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、レジストを平行な帯状に形成するレジスト形成処理、および露出した金属基材を覆うように無機材料からなる層を形成し凸部を形成する凸部形成処理を有する方法を挙げることができる。
具体的には、レジスト形成処理としては、既に説明した図10(b)〜(c)を挙げることができ、凸部形成処理としては、図10(d)を挙げることができる。
【0055】
上記レジスト形成処理においてレジストを平行な帯状に形成する方法としては、レジストをパターン精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なレジスト形成方法を用いることができるが、具体的には、レジスト材料を塗布することによりレジスト膜を形成した後、平行な帯状に露光し、次いで、現像することにより形成する方法を用いることができる。
【0056】
本工程に用いられるレジスト材料としては、上記第2研磨工程を行った際に、レジストが覆う金属基材表面の微小なライン状凹凸構造を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
【0057】
本工程において、上記レジスト材料を塗工してレジスト膜を形成する方法としては、一般的な塗工方法を用いることができ、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を使用することができる。
【0058】
本工程において、上記レジスト膜を平行な帯状に露光する方法としては、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。また、マスクを介して紫外線照射を行う方法を用いることもできる。
本工程においては、なかでも、レーザー描画法であることが好ましい。上記金属基材の形状がロール状である場合であっても、精度良くパターン状に露光することができるからである。
また、露光後のレジスト膜の現像方法としては、一般的な現像方法を用いることができる。
【0059】
本工程における凸部形成処理において、露出した金属基材を覆うように無機材料からなる層を形成し凸部を形成する方法としては、上記凸部を安定的に形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、用いられる金属基材や凸部の材料の種類等により異なるものであるが、上記「A.3次元表示用パターン配向膜用原版」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0060】
本工程においては、上記凸部形成処理が、平行な帯状に形成されたレジスト上に無機材料からなる無機材料層を形成するものである場合には、レジストおよび無機材料層を剥離する剥離処理および露出した金属基材を覆うようにレジストを再度形成するレジスト再形成処理を行うことが好ましい。上記レジスト上に無機材料層があると、上記第2研磨工程で上記凸部表面の研磨が困難になる可能性があるからである。
なお、剥離処理におけるレジストの剥離方法については、一般的なレジストの剥離方法を用いることができる。具体的には、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う方法を挙げることができる。
また、レジスト再形成処理におけるレジストの形成方法については、上述のレジスト膜の形成方法と同様とすることができる。
【0061】
図11は、上記剥離処理およびレジスト再形成処理を行う場合の一例を示すものである。図11に例示するように、平行な帯状に形成されたレジスト4と、露出した金属基材1およびレジスト4を覆うように無機材料(DLC)からなる凸部2および無機材料層5と、が形成された基板に対して、有機アルカリ液等の剥離剤を塗布することにより(図11(a))、レジスト4を無機材料層5と共に剥離し、次いで、レジスト材料を再度塗布し(図11(b))、レジスト4および凸部2を平行な帯状に形成するものである(図11(c))。
なお、この例においては、レジスト材料として、DLCとの親和性が低く、凸部上ではじかれる材料を用い、再度形成されたレジストが凸部上に形成されないものである。
【0062】
3.第2研磨工程
本発明における第2研磨工程は、上記凸部の表面に上記第1研磨工程とは異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する工程である。
このような第2研磨工程としては、本発明の製造方法により製造される原版を用いて形成されたパターン配向膜により3次元表示可能なパターン位相差フィルムとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記第1研磨工程とは90°異なる方向に研磨する態様(第3実施態様)と、上記第1研磨工程とは45°異なる方向に研磨する態様(第4実施態様)と、の2態様に分けることができる。
なお、各態様における具体的な研磨方向および上記凸部の表面を略一定方向に研磨する研磨方法については、上記「A.3次元表示用パターン配向膜用原版」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
4.剥離工程
本発明における剥離工程は、上記レジストを剥離する工程である。
本工程におけるレジストの剥離方法としては、一般的な剥離方法を用いることができ、上記レジスト・凸部形成工程に用いられる剥離処理におけるレジストの剥離方法と同様とすることができる。
【0064】
5.3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法
本発明の原版の製造方法は、第1研磨工程、レジスト・凸部形成工程、第2研磨工程および剥離工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、例えば、上記第2研磨工程および第2研磨工程後に金属基材または凸部の研磨カスを除去する除去工程等を挙げることができる。なお、除去方法としては、例えば、吸引する方法や、溶剤等を用いて除去する方法等を挙げることができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0067】
[実施例]
円筒状のニッケル基板の円周方向に対して45°方向にペーパー研磨したニッケル基板に、溶剤希釈したネガ型レジストをコーティングし乾燥後、レーザー露光方法で360μm幅の平行な帯状にパターンを形成し、現像処理を行い、その後余分なレジストを除去することにより、レジスト層をニッケル基板上に360μm周期(ピッチ)で高さ5μmで形成した。さらにその上にDLCからなる凸部形成用層を厚み0.5μmとなるように形成した後、基板の長尺方向に対して135°方向にペーパー研磨を実施した。その後、レジストを剥離し、ランダムに形成された微小なライン状凹凸構造を表面に備える凸部および凹部を有する原版を製造した。
【0068】
[評価]
透明フィルム基材として60μmのTACに、希釈溶剤としてMEKとMIBKとが質量比4対1で混合されてなる希釈溶剤で希釈された固形分45%、2500mPa・sのアクリル系紫外線硬化樹脂組成物を厚み8μmとなるようにコーティングし、溶剤を80℃で30秒間で乾燥蒸発させた後、上記で製造した原版にゴムロールで1000MPa/cmの加重で押し付け、微小なライン状凹凸構造を表面に備える凸部および凹部のパターンに充填した後、紫外線を照射し、固化させたのち剥離し、パターン配向層をもつ基材(パターン配向膜)を得た。
得られたパターン配向膜表面を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、表面の凹凸形状を測定したところ、微小なライン状凹凸構造の周期(ピッチ)は、ほぼ5nm〜500μmの範囲内でランダムに分布していた。また、微小なライン状凹凸構造の高さは1nm〜100nmの範囲内であり、幅は5nm〜500nmの範囲内であった。
このように、パターン配向膜を容易に形成できることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
1 … 金属基材
2 … 凸部
3 … 凹部
4 … レジスト
5 … 無機材料層
10 … 3次元表示用パターン配向膜用原版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、
前記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、
を有し、
前記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、前記金属基材および凸部の表面で90°異なることを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項2】
表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された金属基材と、
前記金属基材上に平行な帯状に形成され、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された無機材料からなる凸部と、
を有し、
前記微小なライン状凹凸構造の形成方向が、前記金属基材および凸部の表面で45°異なることを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項3】
前記金属基材の形状がロール状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項4】
前記凸部の厚みが10nm〜5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項5】
前記微小なライン状凹凸構造の周期が1nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項6】
前記微小なライン状凹凸構造の高さが1nm〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版。
【請求項7】
金属基材を準備し、前記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第1研磨工程と、
前記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成するレジスト・凸部形成工程と、
前記凸部の表面に前記第1研磨工程とは90°異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第2研磨工程と、
前記レジストを剥離する剥離工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項8】
金属基材を準備し、前記金属基材の表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第1研磨工程と、
前記第1研磨工程後の金属基材の表面に平行な帯状にレジストおよび無機材料からなる凸部を形成するレジスト・凸部形成工程と、
前記凸部の表面に前記第1研磨工程とは45°異なる方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成する第2研磨工程と、
前記レジストを剥離する剥離工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−226218(P2012−226218A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95339(P2011−95339)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】