説明

3,5−セコ−4−ノルコレスタンの新規な誘導体及びその使用

本発明は式(I)の化合物に関する:ここで、X+Y=ケト、又はX=OH、及びY=H、又はX+Y=オキシム又はメチルオキシム、B=OH、及びC+D=C1−C4直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又はC=H、及びD=C1−C4直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又はB+C=ケト、及びD=メチル、ヒドロキシル、若しくはメチルアミノ、又はBとC=H、及びD=メチルアミノ、又はB+C=オキシム、及びD=メチル、及びR=C1−C10直鎖若しくは分岐鎖アルキル、医薬としてのその塩、エステル、又はエステルの塩、特に、神経保護剤としての式(I)の新規な化合物、及び医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物として、3,5−セコ−4−ノルコレスタンの誘導体の、特に、例えば、運動ニューロンの変性又は死に関する病状及び外傷における神経保護的な適用、これらを含有する医薬組成物、新規な誘導体、及びこれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性プロセスは、脳(中枢神経系、CNS)、脊髄、及び末梢神経系(PNS)により媒介される神経機能の喪失をもたらすニューロンの機能障害及び死により特徴づけられる。これらは、神経変性疾患又は障害、外傷又は毒に対する暴露からもたらされうる。
【0003】
神経変性プロセスにより特徴づけられる最も重要な病状は、以下のものである:
−神経変性、遺伝性又は孤発性慢性疾患、顕著なアルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋萎縮症、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、腎白質ジストロフィー、癲癇、認知症、統合失調症、及びAIDSに関する神経性症候群;
−加齢に関する神経細胞の病変;
−遺伝性又は損傷性末梢神経障害、例えば、ファブリー病、シャルコー・マリー・トゥース病、クラッベ病、ロイコジストロフィー、糖尿病性神経障害、及び抗癌治療により誘発されるもの;
−脳、末梢神経、及び脊髄の外傷;
−脳血管卒中の結果による、あるいは血液洗浄(irrigation)の喪失により誘発される脳又は脊髄の虚血;
−視覚の感覚ニューロンの遺伝性、損傷性神経変性、又は加齢に関するもの、例えば、黄斑変性症、色素性網膜炎、又は緑内障により誘発される視覚神経の変性;
−聴覚の機能障害又は喪失をもたらす、聴覚の感覚ニューロンの外傷性、遺伝性変性又は加齢に関するもの。
【0004】
これらの病状に影響するシグナル伝達経路の部分は、多くの神経変性疾患に共通する。アルツハイマー病は最も頻度の高い認知症である。これは脳の萎縮症、アンモン角におけるニューロンの主な喪失の出現の原因となり、そしてまたコリン作動性神経に影響する。他の病状、例えば、肺萎縮症(ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、レビー小体型認知症、血管性認知症、パーキンソン病)はこれらの認知症の症状の起源において有意な神経細胞死に関係する。
【0005】
現在、神経変性を停止するための有効な治療は存在しない。死に対してニューロンを保護するための治療的アプローチは神経栄養タンパク質を供することである。
【0006】
これらのタンパク質、例えば、BDNF(脳由来神経栄養因子)、CNTF(繊毛様神経栄養因子)、NGF(神経成長因子)、GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)は、胚発生の間あるいは成人における病変後に合成される。これらの成長因子は、神経細胞の生存、成熟、及び分化を促進する。さらにこれらは、アポトーシスのメカニズムを抑制し、複数の生存経路を活性化し、そして多くの神経細胞集団を保護する。これらの使用は、ほとんどの神経変性において提唱される。
【0007】
神経栄養因子の発現を活性化する、あるいはこれらの因子の作用を模倣する化合物は、神経変性症候群を治療するための治療的可能性を有する。
【0008】
特に、神経変性を治療するために神経栄養性分子を供することは以下の目的に向けられる;
−ニューロンの末梢又は中枢標的からの供給の喪失、及び/又はこれらの因子の逆行性輸送の障害に関する神経栄養因子の潜在的な喪失を補償する;
−変性カスケードに関する生化学経路における非特異的経路に干渉する;
−樹状細胞の成長及び神経終末の分枝を補償する自然現象を促進する。
【0009】
従って、これらの化合物は多くの病状、特に中枢及び末梢神経系に影響する病状において有益な効果を有する。
【0010】
更に、上記の範囲内において、運動ニューロンは骨髄及び脳幹に顕著に存在するニューロンである。これらの変性又はこれらの死は、手足の筋肉の漸進的な衰えに導き、そして筋肉の萎縮及び痙攣の可能性(すなわち永久収縮)に導きうる。
【0011】
脊髄及び/又は延髄運動ニューロンの変性及び死からもたらされる最も重要な病状は、シャルコー病、または更にルー・ゲーリック病としても知られる筋萎縮性側索硬化症、及びウェルドニッヒ・ホフマン病又はクーゲルベルク・ヴェランダー病としても知られる乳児脊髄筋萎縮症である。
【0012】
更に、運動ニューロンの変性は、脊髄又は末梢運動神経の粉砕及び/又は切断を伴う外傷の場合にも観察される。
【0013】
より一般的には、脊髄の運動ニューロンの変性又は死が関係する疾患についての脊髄筋萎縮症について言われている。
【0014】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、異なるタイプの封入体、例えば、レビー小体に関する神経変性疾患であり、脊髄及び皮質運動ニューロンの変性、前頭型認知症にしばしば関係する致命的な結果により特徴づけられる。ALSの発生の間、神経支配の喪失を通じて変性現象は脳だけでなく脊髄、従って筋肉中にも発生する。
【0015】
上述の病気を制御するための活性成分は常に求められている。
【発明の開示】
【0016】
このたび、本出願人は、3,5−セコ−4−ノル−コレスタンの誘導体、及び特に3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オールが、運動及び末梢神経の神経保護特性、特に運動ニューロン、中枢神経系のニューロンに寄与し、従って薬物として有用であることを発見した。
【0017】
本発明は、ヒト又は動物の治療のための治療的方法における使用、即ち薬物としての、式Iの化合物
【化1】

(式中、
−XはYと一緒にケト官能基を表し、あるいはXはヒドロキシを表し、そしてYは水素を表し、あるいはXとYは一緒にオキシム(−NOH)又メチルオキシム(=NHOMe)を表し、
−Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表し、あるいはCとDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、あるいはCは水素を表し、そしてDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、
あるいはBはCと一緒にケト官能基を表し、そしてDはメチル、ヒドロキシ又はメチルアミンを表し、
あるいはBとCは水素を表し、そしてDはメチルアミンを表し、
あるいはBとCは一緒にオキシムを表し、そしてDはメチルを表し、
そしてRは1〜10個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表す)、
これらのエステル、並びに医薬的に許容される酸を伴うこれらの付加塩を供する。
【0018】
医薬的に許容される酸を伴う付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、アルカン−スルホン酸、例えば、メタン−若しくはエタン−スルホン酸、アリールスルホン酸、例えば、ベンゼン−若しくはパラトルエン−スルホン酸、又はカルボン酸と形成される塩であってよい。
【0019】
当業者に理解されるとおり、1又は複数のヒドロキシル基を含んで成る一定の式Iの化合物は、エステル化することができる。これらのエステル並びに医薬的に許容される酸を伴うこれらの付加塩は、一般的にそれ自体は直接的に活性ではないが、これらは対応するヒドロキシル化類似体のプロドラッグを形成する。ヒト器官中で代謝されるこれらのエステルは活性化合物に導く。これらのエステルもまた本発明の対象である。化学官能基を誘導するエステル、例えば、硫酸塩、リン酸塩、水溶性及び生物学的利用能を増大する酸及び塩基鎖にも言及することができる。塩基性官能基を有する化合物のエステルは、好ましくは例えば、1〜4個の炭素原子のアルキルを伴うジアルキルグリシンの誘導体であり、そして最も好ましくはジメチルグリシン、ジエチルグリシン、及びまたメチルピペラジンである。
【0020】
本明細書中、「1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキル」の語は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、好ましくはメチル又はエチル、そして特にはメチルを意味する。
【0021】
本明細書中、「1〜10個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキル」の語は、例えば、以下に示すとおり、コレスタンの2−メチル−3−エチル−ヘプタン、3−エチル−ヘプタン、3−メチル−ヘプタン、好ましくは2−エチル−ヘプタン、そして特には2−メチル−ヘプタンラジカルを意味する。
【化2】

【0022】
従って、以下の式
【化3】

(式中、B、C、D、X及びYは既に示された意味を有する)の化合物が、より特に保持される。
【0023】
上述の式Iの化合物中、XがYと一緒にケト官能基を表す式Iの化合物、並びに医薬的に許容される酸を伴う付加塩が特に保持される。
【0024】
上記化合物は、より特には、
式中、
−Bがヒドロキシルを表し、そしてCとDが水素を表し、あるいはCとDは1〜4個の炭素原子をとも成る2つの直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、
−BがCと一緒にケト官能基を表し、そしてDがメチルを表す
化合物、並びにこれらのエステル及び医薬的に許容される酸を伴う付加塩が保持される。
【0025】
上記の式Iの化合物中、式中XとYが一緒にオキシムを表すもの、並びにこれらのエステル及び医薬的に許容される酸を伴う付加塩が特に保持される。
【0026】
より特には、上記化合物は、
−BがCと一緒にケト官能基を表し、そしてDがメチル、ヒドロキシ、メチルアミンを表し、
−Bがヒドロキシを表し、そしてCとDが水素を表し、あるいはCとDが1〜4個の炭素原子を伴う2つの直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、あるいはCが水素を表し、そしてDが1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、
−BとCが水素を表し、そしてDがメチルアミンを表し、
−BがCと一緒にオキシムを表し、そしてDがメチルを表す、
化合物、並びにこれらのエステル及び医薬的に許容される酸を伴う付加塩が保持される。
【0027】
最も特には、
−3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オール、
−3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアルコール、
−3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−ジメチルアルコール、
並びにこれらのエステル及びこれらの医薬的に許容される酸を伴う付加塩が保持される。
【0028】
式Iの化合物又は上記化合物のファミリーの医薬的に許容される酸を伴う付加塩、これらのエステル、及び該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩は、これにより特に保持される。
【0029】
本発明の対象である化合物は、極めて興味深い薬理特性を有する。これらは特に運動ニューロンに関して、顕著な神経保護特性に著しく寄与する。
【0030】
これらの特性は本明細書の以下の実施例において示される。これらは、上記の化合物、並びに医薬的に許容される酸を伴うこれらの付加塩の薬物としての使用を正当化する。
【0031】
本発明に従う薬物は、これらの神経保護特性、例えば、神経変性障害、例えば、ハンチントン病、神経変性、遺伝性又は孤発性慢性疾患、加齢、遺伝性又は損傷性の末梢神経障害に関係する神経細胞病変、シャルコー・マリー・トゥース病、糖尿病性神経障害、又は抗癌治療、脳、末梢医神経又は脊髄の外傷、脳又は脊髄の虚血により誘発される神経障害、視覚の感覚ニューロンの遺伝性、損傷性変性若しくは加齢に関するもの又は視覚神経の変性、聴覚の感覚ニューロンの遺伝性、外傷性変性又は加齢に関するもの、肺萎縮症、及び血管性認知症、及び特に脊髄筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、及び脊髄又は末梢運動神経の外傷による病状の治療又は予防のための神経保護特性のためのこれらの用途が発見される。
【0032】
本発明において、「治療」の語は、予防的、治癒的、対症的処置、並びに患者の管理(苦痛の軽減、寿命の向上、疾患の進行の減速)等を意味する。更に治療は他の成分又は治療、例えば、特に、本願において具体的にされた病状又は外傷の治療のための他の活性化合物との組み合わせにおいて行うことができる。
【0033】
運動ニューロンに関するこれらの神経保護特性のために、上述したとおり、脊髄筋萎縮症、特に筋萎縮性側索硬化症又は乳児型脊髄性筋萎縮症の治療、及び脊髄又は末梢運動神経の外傷の治療においてこれらの用途が特に発見されている。
【0034】
一般に、上記化合物の一日量は、治療効果を得るための最小用量となる。該用量は前述の異なる要因に依存する。前記の化合物、例えば、3,5−セコ−4−ノルコレスタン−5−オン オキシム−3−オールの用量は、ヒトの場合、1日あたり0.001〜100mg/kgである。
【0035】
必要ならば、1日あたり1、2、3、4、5、6回又はそれ以上の摂取、又は1日の適当な間隔あたり投与される複数回の副用量により投与することができる。
【0036】
選択された量は、複数の要因、特に、投与経路、投与器官、投与瞬間、化合物の排出速度、該化合物との組み合わせにおいて使用される異なる製品、患者の年齢、体重、生理状態、並びに患者の病歴、及び医薬において知られるいずれかの他の情報に依存する。
【0037】
担当医の処方は、一般に使用されるものより少ない投与量で開始することができ、これらの用量は、副作用の発生の可能性をより制御できるように徐々に増やされる。
【0038】
また、本発明は、活性成分として、少なくとも1つの上述の化合物、又は医薬的に許容される酸を伴う1つのその付加塩を含有する医薬組成物に関する。
【0039】
これらの組成物中、活性化合物は生理的に有効な投与量において有利に存在する;上述の化合物は、特に、神経保護に有効な量の少なくとも1つの上記活性成分を含有する。
【0040】
薬物として、式Iにより記載された化合物、これらのエステル、医薬的に許容される酸を伴うこれらの付加塩、並びに上記エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩は、消化性又は非経口経路のために意図される医薬組成物中に組み込むことができる。
【0041】
本発明に従う医薬組成物は、特に上述のとおり、運動ニューロンの変性又は死に関する病状又は外傷に影響する対象の治療の間において、同時に、別々に、又は時間別に使用するための、更に少なくとも1つのほかの治療的な活性成分を含んで成ってよい。
【0042】
本発明に従う医薬組成物又は薬物は、有利には、1又は複数の不活性な、即ち医薬的に不活性であり且つ無毒な、賦形剤又は担体を含んで成る。例えば、医薬用途に適合し、当業者に知られる生理食塩水、生理的、等張性緩衝溶液等にも言及できる。
【0043】
該組成物は、分散剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤等から選択される1又は複数の薬剤又は担体を含んでよい。製剤(液体及び/又は注射用固形製剤)中に使用できる薬剤又は媒体は、特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物若しくは動物油、アカシア等である。該組成物は、注射用懸濁液として、任意的には剤形又は装置による持続性及び/又は遅延性放出を伴う、ゲル、油、錠剤、座薬、粉末、ゼラチンカプセル、カプセル等として処方することができる。このタイプの製剤について、薬剤、例えば、セルロース、カルボナート又はセルロースが有利に用いられる。
【0044】
投与は当業者に既知のいずれかの方法、好ましくは経口経路又は注射により、典型的には腹腔内、脳内、くも膜下腔内、静脈内、動脈内、又は筋肉内経路により達成することができる。経口投与が好ましい。長期間の治療の場合、好ましい投与経路は舌下、経口又は経皮である。
【0045】
注射のために、該化合物は一般的に、例えば、シリンジ又は点滴により注射することができる液体懸濁液として調製される。投与される流速、及び/又は注射用量又は一般的な用量は、患者、病状、投与方法等に従い当業者により適応することができるものと理解される。反復投与は、任意的に他の活性成分又はいずれかの医薬的に許容される担体(安定化剤の存在下におけるバッファー、生理食塩水、等張液等)との組み合わせにおいて行うことができる。
【0046】
本発明は哺乳類、特にヒトにおいて使用することができる。
【0047】
本発明の対象は、更に、上述のとおり、組成物を調製するための方法であって、既知の方法に従い、活性成分を許容される賦形剤、特に医薬的に許容される賦形剤と混合することを特徴とする方法である。
【0048】
上述の式Iの化合物は既知であり、あるいは文献に記載される方法に従い調製することができる。式Iの一定の誘導体は新規な生成物である。
【0049】
本発明の対象は、式I
【化4】

により記載される新規な化合物
(式中、
−XとYは一緒にオキシムを表し、BとCは水素を表し、Cは水素を表し、そしてDはメチルアミンを表し、
−XはYと一緒にケト官能基を表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDはメチルを表し、
−XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDはメチルを表し、
−XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、Cは水素を表し、そしてDはメチルを表し、
−XとYは一緒にメチルオキシム基を表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表す)、
並びに無機又は有機酸を伴うこれらの付加塩である。
【0050】
また、本発明の対象は、上述の式Iの新規な化合物、並びにこれらの塩を調製するための方法であって、式II
【化5】

(式中、Rは1〜10個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表す)の化合物を、
−式Iの化合物(式中、Rは既に示された意味を有し、XとYは一緒にオキシムを表し、BはCと一緒にケト官能基を表し、そしてDはメチルアミンを表す)を得るためにメチルアミン、続いてヒドロキシルアミンの作用にかけるか、
−あるいは
式III
【化6】

(式中、Rは既に示された意味を有する)の化合物を得るためにメチル化し、これを、
−式IV
【化7】

(式中、Rは既に示された意味を有する)の化合物を得るために5位のケトン官能基を保護する薬剤の作用にかけ、これを
メチルリチウムと反応させ、それから5位のケトン官能基を保護する薬剤の作用にかけ、それから式I(式中、Rは既に示された意味を有し、XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖のアルキルを表す)を得るためにヒドロキシルアミンと反応させるか、
−あるいは、これをけん化し、それから式H3C−NH−OCH3の化合物と反応させ、それから式V
【化8】

の化合物を得るためにメチルリチウムと反応させ、
これをケトン官能基の還元にかけ、それから5位のケトン官能基を脱保護する薬剤にかけ、それから式I(式中、Rは既に示された意味を有し、XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCは1〜4個の炭素原子を伴う任意的に置換された直鎖又は分岐鎖のアルキルを表し、そしてDは水素を表す)の化合物を得るためにヒドロキシルアミンと反応させるか、
−あるいは
これを式VI
【化9】

(式中、Rは既に示された意味を有し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表す)の化合物を得るために還元し、
これを
−式VII
【化10】

(式中、Rは既に示された意味を有する)の化合物を得るために酸化剤の作用にかけ、シッフ塩基により還元し、それから5位のケトン官能基を脱保護するための薬剤の作用にかけ、それから式I(式中、Rは既に示された意味を有し、XとYは一緒にオキシムを表し、Bはメチルアミンを表し、そしてCとDは水素を表す)を得るためにヒドロキシルアミンと反応させるか、
−または5位のケトン官能基を脱保護するための薬剤の作用にかけ、それから式I(式中、Rは既に示された意味を有し、XとYは一緒にオキシム、メチルオキシム、及びカルボキシメチルオキシムをそれぞれ表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表す)の化合物を得るためにヒドロキシルアミン、メチルヒドロキシルアミン、及びカルボキシヒドロキシルアミンから選択されるアミンと反応させ、
そして式Iの化合物を単離し、そして所望の場合には塩化し、あるいは所望の場合には、それから式Iの化合物をエステル化する、
ことを特徴とする方法である。
【0051】
上述の方法を適用するための優先的な条件下において、
−式IIの化合物とメチルアミンの反応は、特に適当な溶媒、例えば、ジクロロメタン又はジメチルホルムアミド中、塩基、例えば、N−メチルモルホリンの存在下において、酸性官能基、例えば、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)又はTBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)を活性化するカップリング剤の存在下において行う。好ましくは、これはジクロロメタン中で4−ジメチルアミノピリジンに付随したEDCI(1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド)の存在下において行われ、該混合物は室温において24時間撹拌にかけられる。それから該生成物を溶液、好ましくはピリジン中に入れ、そしてその後5〜7、特には6当量のヒドロキシアミン塩酸塩を添加する。
【0052】
式IIの化合物のメチル化は、塩化チオニルの存在下においてメタノールとの反応により、好ましくは適当な容量の70%のメタノールと30%のジクロロメタンの混合物中に式IIの酸を溶解することにより達成される。これを0℃に冷却し、そして3当量の塩化チオニルを滴下する。それからこれを室温で2時間撹拌する。
【0053】
該化合物において、ケトン官能基の保護は、好ましくは過剰量、例えば、10当量のトリメチルオルトホルマート及び十分な容量のエチレングリコール中に生成物を溶解し、それから無水p−トルエンスルホン酸を添加することにより行われる。
【0054】
式IVの化合物とメチルリチウムの反応は、好ましくは無水THF中で行われ、そして好ましくは約−45℃に冷却後、過剰量のメチルリチウムを滴下する。
【0055】
5位のケトン官能基をブロックするジオキソランの脱保護は、硫酸の存在下においてアセトン中で達成される。好ましくはこれは水/酢酸 1/1の混合物の存在下においてジオキサン中で達成される。該ケトンのオキシムは、上のとおり有利に産生される。
【0056】
式IVの化合物のけん化は、ソーダにより、好ましくはジオキサン中で達成される。約2当量のソーダ水溶液が特に添加される。
【0057】
該生成物は、式H3C−NH−OCH3の化合物と、例えば、適当な溶媒、例えば、ジクロロメタン又はジメチルホルムアミド中で、塩基、例えば、N−メチルモルホリンの存在下において、酸性官能基、例えば、BOP又はTBTUを活性化するカップリング剤の存在下において反応させる。好ましくは、これは溶媒中に滴下されているトリエチルアミンを伴うヒドロキシベンゾトリアゾールに付随するEDCIの存在下において達成される。
【0058】
該生成物を、上述の手順に従い、アルゴン雰囲気下においてメチルリチウムと反応させ、それから3位のケトン官能基を水素化ホウ素ナトリウムにより還元する。
【0059】
それから得られた生成物を5位のケトン官能基の脱保護にかけ、そして上述と同じ手順に従いヒドロキシアミンと反応させる。
【0060】
−式VIの化合物を得るための式IVの化合物の還元は、好ましくは水素化アルミニウムリチウムにより、特にはこれをテトラヒドロフラン中の懸濁液に置くことにより達成される。これは、硫酸ナトリウム溶液を添加することにより、注意深く加水分解する。
【0061】
−式VIの化合物の酸化は、ピリジニウムクロロクロメートにより達成される。
【0062】
該生成物におけるシッフ塩基は、特にアルゴン下において、好ましくはエタノール中、トリエチルアミン、メチルアミン塩酸塩、及びチタンテトライソプロポキシドの存在下における可溶化により、それから水素化ホウ素ナトリウムを添加することにより即時に還元されて得られる。
【0063】
5位のケトン官能基の脱保護、並びにヒドロキシアミンとの反応は、前述の条件下において行われる。
【0064】
式IIの化合物は、文献において記載され、且つ商業的に利用できる既知の誘導体である。
【0065】
本発明の対象は、更に、神経変性疾患、例えば、ハンチントン病、遺伝性又は孤発性の神経変性慢性疾患、加齢に関係する神経変性病変、遺伝性又は損傷性の末梢性神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、糖尿病性神経障害又は抗癌治療、脳、末梢神経若しくは脊髄の外傷、脳若しくは脊髄の虚血により誘発される神経障害、感覚ニューロンの遺伝性、外傷性若しくは加齢に関する変性又は視覚神経の変性に関するもの、聴覚の感覚ニューロンの遺伝性、外傷性若しくは加齢に関する変性、大葉性萎縮症(lobar atrophies)及び血管性認知症、運動ニューロンの変性に関係する疾患及び外傷、ならびにより特には脊髄性筋萎縮症、特に乳児型脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及び脊髄又は末梢運動神経の外傷を治療することが特に意図される、神経保護薬を得るための、式I
【化11】

(式中、
−XはYと一緒にケト官能基を表し、あるいはXはヒドロキシルを表し、そしてYは水素を表し、あるいはXとYは一緒にオキシム(=NOH)又メチルオキシム(=NHOMe)を表し、
−Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表し、あるいはCとDは1〜4個の炭素原子を伴う2つの直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、あるいはCは水素を表し、そしてDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、
あるいはBはCと一緒にケト官能基を表し、そしてDはメチル、ヒドロキシ又はメチルアミンを表し、
あるいはBとCは水素を表し、そしてDはメチルアミンを表し、
あるいはBとCは一緒にオキシムを表し、そしてDはメチルを表わす)の化合物、
あるいはそのエステルの1つ又はその医薬的に許容される酸を伴う付加塩の1つ、又は医薬的に許容される酸を伴うそのエステルの1つの付加塩の1つの使用である。
【0066】
特に、本発明の対象は、特に症状又は外傷に罹患した哺乳類(一般的には患者)におけるニューロンの変性又は死に関係する症状又は外傷を治療するための神経保護薬を得るための上記式Iの化合物、塩、又はエステルの使用である。
【0067】
より特には、本発明の対象は、乳児型脊髄性筋萎縮症及び筋萎縮性側索硬化症を治療するために意図される神経保護薬を得るための式Iの化合物、又はその塩若しくはエステルの1つの使用である。
【0068】
これらの薬物の適用は、特にニューロンの生存率を向上するため、又は軸索成長を促進するために、これらの哺乳類に対して、通常、治療的有効量の式Iの化合物、又はそのエステルの1つ、特には3,5−セコ−4−ノルコレスタン−5−オン オキシム−3−オールの投与を含んで成る。本発明の対象は、上述の疾患、特に神経変性疾患を治療するための方法、特にニューロンの生存率を向上するため又は軸索成長を促進するための症状又は外傷に罹患した哺乳類(一般的には患者)におけるニューロンの変性又は死に関係する症状又は外傷を治療するための方法であって、これらの哺乳類に対して治療的有効量の3,5−セコ−4−ノルコレスタン−5−オン オキシム−3−オールの投与を含んで成る方法である。
【0069】
更に本発明の対象は、特にニューロンの生存率を向上させるための、上述の障害及び特に症状又は外傷に罹患した哺乳類(一般的には患者)において、ニューロンの変性又は死に関係する症状又は外傷の1つを治療するための方法であって、これらの哺乳類に対して治療的有効量の式Iの化合物又はその塩若しくはエステルの1つの投与を含んで成る方法である。より具体的には、運動ニューロンの変性又は死に関係する症状は、筋萎縮性側索硬化症又は乳児型脊髄性筋萎縮症である。
【0070】
本発明の対象は、4−コレステン−3−オンの利用可能な新規な誘導体、並びに先行技術において記載されているものを除く4−コレステン−3−オンの誘導体の製造である。従って、文献中に記載されているものは除外される。
【0071】
式Iの薬物を適用するために上述された優先的な条件もまた、上に標的とされた発明のほかの対象、特に組成物、新規な誘導体、治療方法に適用され、そして逆もまた同じである。
【0072】
以下の実施例は本願を説明する。
【0073】
以下の保持時間は分と1/100分で表される。
【0074】
全ての生成物に使用される液体クロマトグラフィー法は以下のとおりである:
カラム:Macherey-Nagel-Nucleosil(登録商標) 300-6 C4-150×4.6 mm
勾配:水(+0.05%のトリフルオロ酢酸)/アセトニトリル(+0.05%のトリフルオロ酢酸)
t=0分:60%のアセトニトリル,40%のH2
t=6分:100%のアセトニトリル,0%のH2
t=11分:100%のアセトニトリル,0%のH2
t=13分:60%のアセトニトリル,40%のH2
t=15分:60%のアセトニトリル,40%のH2O。
【0075】
マススペクトロメーターのイオン化条件は:
ソース温度:250℃
コーン電圧:50V
キャピラリー電圧:3kV
Rf レンズ:0.3V
【実施例】
【0076】
実施例1: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアミド
段階A:
最初の段階において、250mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オイックアシッド(3,5-seco-4-nor-cholestan-5-one oxime-3-oic acid)、38mgのメチルアミン塩酸塩、250mgのEDCI、100mgのDMAP、及び2.5mLのジクロロメタンをフラスコに入れる。該溶液を室温で24時間撹拌し、それからジクロロメタンを添加することにより反応媒体を希釈し、そして10%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(95/5 CH2Cl2/MeOH)により精製する。176mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン 3−メチルアミドが68%の収率で回収される。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:4.42分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=418;[2M+H]+=835
【0077】
段階B
次に、1mLのピリジン中の50mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン 3−メチルアミド、50mgのヒドロキシルアミン塩酸塩をフラスコに入れる。室温において16時間撹拌を行い、それから反応媒体を減圧下で濃縮する。得られた残渣をCH2Cl2/H2O混合物に取り、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮する。40.6mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアミドが78%の収率で回収される。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.70分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=433;[2M+H]+=865
【0078】
実施例2: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−ジメチルアルコール
段階A:
378mLのメタノール中の10.5gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−オイックアシッド(3,5-seco-4-nor-cholestan-5-one-3-oic acid)、及び146mLのジクロロメタンをフラスコ中で可溶化する。該混合物を0℃に冷却し、そして5.7mLの塩化チオニルを滴下する。それから該混合物を室温で2時間撹拌する。反応媒体を減圧下で濃縮し、トルエンそれからジクロロメタンで同時蒸発させる。10.3gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−メチルエステルが収率94%で得られる。該生成物はいずれの精製もすることなく使用される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:4.69分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=419;[2M+H]+=785
【0079】
段階B: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルエステル
25mLのオルトギ酸トリメチル中の9.62gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−メチルエステル、及び53mLのエチレングリコールをフラスコ中の溶液に入れる。それから400mg(2.3mmol)の無水p−トルエンスルホン酸を添加し、そして該混合物を室温で1晩撹拌する。酢酸エチルを反応媒体に添加し、10%炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄を行う。有機相を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。9.95gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルエステルが収率93%で得られる。該生成物は精製することなく使用される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.76分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=463
【0080】
段階C:
300mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5−(エチレンジオキシ)−3−メチルエステルを5mLの無水THF中に溶解する。該媒体を−45℃に冷却し、それからエーテル中の1.36mLの1.6Mメチルリチウム溶液を滴下する。−45℃で30分間撹拌後、数滴のメタノールを反応媒体に添加し、そして室温に戻す。20mLのジエチルエーテル中に取り、炭酸水素ナトリウム飽和溶液、それから塩化ナトリウム飽和溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから減圧下で濃縮する。295mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−ジメチルアルコール(MW=462)が98%の収率で得られる。
保持時間:5.56分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M−(CH2OH−CH2OH+H2O)+H]+=401
【0081】
段階D:
6mLの1/1の水/酢酸混合物、及び295mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−ジメチルアルコールをフラスコに添加し、該混合物を還流温度に1時間30分加熱する。冷却後、反応媒体を酢酸エチルで希釈し、塩化ナトリウム飽和溶液、それから炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄する。最後に、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた原生成物をフラッシュクロマトグラフィー(8/2 石油エーテル/酢酸エチル)により精製する。180mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−ジメチルアルコールが68%の収率で得られる。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.08分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=419;[M−H2O+H]+=401;[2M+H]=837
【0082】
実施例3: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−ジメチルアルコール
53mLのピリジン中の1gの実施例2の化合物、1gのヒドロキシルアミン塩酸塩、及び数mLのジクロメタンを、ケトンを溶解するためにフラスコに入れる。該混合物を室温で16時間撹拌し、それから減圧下で反応媒体を濃縮する。得られた残渣をCH2Cl2/H2O混合物中に取り、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。814mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−ジメチルアルコールが78%の収率で回収される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.09分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=434;[2M+H]=867
【0083】
実施例4: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアルコール
段階A:
26mLのジオキサン中の2gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルエステルをフラスコに入れる。8.6mLの1Nソーダ溶液を添加する。該反応媒体を還流温度に1時間30分加熱し、そしてジオキサンを減圧下で蒸発させる。得られた溶液を1Nの塩酸溶液を添加することによりpH=1となるまで酸性化し、そしてトルエンで2回抽出する。有機相を回収し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。1.92gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−オイックアシッドが99%の収率で回収される。これは更に処理することなく以下の工程において使用する。
【0084】
段階B:
30mLのジクロロメタン中の1.9gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−オイックアシッドをフラスコに入れる。該溶液に、1.06gのEDCI、743mgのHOBT、537mgのN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩を添加し、それから1.37mLのトリエチルアミンを滴下する。該混合物を室温で16時間撹拌する。CH2Cl2/H2O混合物を該反応媒体に添加し、そしてジクロロメタンで3回抽出する。有機相を回収し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(8/2 CH2Cl2/酢酸エチル)により精製する。1.46gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−(N,N−メトキシ−メチル)アミドが70%の収率で回収される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.31分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=492
【0085】
段階C:
20mLの無水テトラヒドロフラン中の1.4gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−(N,N−メトキシ−メチル)アミドをアルゴン下のフラスコに入れ、そして0℃に冷却する。それからエーテル中の3.38mLの1.6Mメチルリチウム溶液を滴下する。該反応媒体を0℃で3時間40分撹拌し、それから7.28mLtの水中の0.72mLの濃塩酸溶液を滴下する。テトラヒドロフランを減圧下で蒸発させ、得られた水溶液を、1Nソーダを添加することによりpH=10となるまでアルカリ化する。該溶液をジエチルエーテルで抽出し、有機相を回収し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(9/1 石油エーテル/酢酸エチル)により精製する。930mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルケトンが73%の収率で回収される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.65分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=403
【0086】
段階D:
1.5mLのメタノール中の工程C由来の119mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルケトンをフラスコに入れる。該混合物を0℃に冷却し、そして10mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加する。該反応媒体を0℃で1時間撹拌し、それから減圧下で濃縮する。残渣を水に取り、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。94mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルアルコールが78%の収率で回収され、該生成物はそれ自体として使用される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.22分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=387
【0087】
段階E:
5位のケトンを脱保護するために、実施例2の段階Dのとおりに実施する。
【0088】
段階F:
121mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−メチルアルコール、1.5mLのピリジン、及び121mgのヒドロキシルアミン塩酸塩をフラスコに入れる。該溶液を室温で2日間撹拌する。反応媒体を減圧下で濃縮し、水中に取り、そしてジクロロメタンで抽出する。それから有機相を水で洗浄し、それから硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。これにより得られた生成物をフラッシュクロマトグラフィー(9/1 石油エーテル/酢酸エチル)により精製する。66mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアルコールが53%の収率で回収される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:4.91分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=420
【0089】
実施例5: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアミン
段階A:
615mgのLiAlH4をフラスコ中の57mLのTHFに懸濁させる。該混合物を0℃に冷却し、そして3.0gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−メチルエステルの溶液を57mLのテトラヒドロフラン中に滴下する。それから該混合物を0℃で5時間撹拌する。硫酸ナトリウム溶液を添加することにより注意深く加水分解を行い、得られた白色溶液を30分間撹拌し、それから濾過する。濾液を減圧下で濃縮し、そして水中に取り、酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから減圧下で濃縮する。2.55gの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−オールが85%の収率で得られ、該生成物はそのまま使用される。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:4.82分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M−(CH2OH−CH2OH+H2O)+H]+=373
【0090】
段階B:
7mLのジクロロメタン中の476mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−オールをアルゴン下においてフラスコ中で溶解し、それから189mgの中性アルミナ及び399mgのクロロクロム酸ピリジニウムを添加し、該混合物を室温で3時間30分撹拌する。該反応媒体をセライト(登録商標)において濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(9/1その後8/2のトルエン/酢酸エチル)により精製する。328mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−アールが69%の収率で得られる。
保持時間:5.57分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=433
【0091】
段階C:
3mLのエタノール中の323mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−3−アールをアルゴン下においてフラスコ中で溶解させ、それから209μLのトリエチルアミン、100mgのメチルアミン塩酸塩、及び444μLのチタンテトライソプロポキシドを添加する。該反応媒体を室温で6時間撹拌し、そして42.5mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加する。該混合物を室温で16時間撹拌する。該反応媒体を濾過し、そしてジクロロメタンで洗浄する。濾液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(9/1から5/5のジクロロメタン/メタノール)により精製する。84mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−オキシム−3−メチルアミンが25%の収率で得られる。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.93分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=448
【0092】
段階D:
50mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5,5(エチレンジオキシ)−オキシム−3−メチルアミン、及び976μLの1/1の水/酢酸混合物をフラスコに入れる。該混合物を6時間還流させる。冷却後、該反応媒体を酢酸エチルで希釈し、そして塩化ナトリウム飽和溶液、その後5%炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた生成物をフラッシュクロマトグラフィー(95/5 ジクロロメタン/メタノール)により精製し、5mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−メチルアミンが11%の収率で得られる。
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.68分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=404
【0093】
段階E:
5mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−メチルアミン、5mgのヒドロキシルアミン塩酸塩、及び287μLのピリジンをフラスコに入れる。該混合物を室温で16時間撹拌する。それからこれをジクロロメタン中に取り、そして水で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。5mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアミンが91%の収率で得られる。
保持時間:3.66分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=419
【0094】
実施例6: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン メチルオキシム−3−オール
1mLのピリジン中の20mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−オール、20mgのO−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩をフラスコに入れる。該混合物を室温で16時間撹拌し、そして10mgのO−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩を再度添加する。該混合物を、再度室温で16時間撹拌し、それから該反応媒体を減圧下で濃縮する。得られた残渣をCH2Cl2/H2O混合物中に取り、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィー(9/1 石油エーテル/酢酸エチル)により精製される、18mgの黄色の油が得られ、5.8mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン メチルオキシム−3−オールが27%の収率で回収される。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:5.50分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=420
【0095】
実施例7: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン カルボキシメチルオキシム−3−オール
0.5mLのピリジン中の52mgのケトン、25mgのカルボキシメトキシルアミンのヘミ塩酸塩をフラスコに入れる。該混合物を室温で2日間撹拌し、そして該反応媒体を減圧下で濃縮する。得られた残渣をCH2Cl2/H2O混合物中に取り、有機相を分離し、水、その後2%塩酸溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(8/2 石油エーテル/酢酸エチル)により精製する。カルボキシメチルオキシムとして、39%の収率を伴い24mgが得られる。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:4.40分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=464;[2M+H]+=927
【0096】
実施例8
記載される処方により懸濁液を調製した。
3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オール 20mg/mL
賦形剤:油性乳濁液
【0097】
実施例9
記載される処方により乾燥形態を調製した。
3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−N,N−ジメチルグリシンエステル塩酸塩 250mg
賦形剤:gspを満たしたカプセル 750mg
【0098】
実施例10: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オールのプロドラッグ:3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−N,N−ジメチルグリシンエステル
10〜15mLのジクロロメタン中の509mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−オール、182mgのN,N−ジメチルグリシン塩酸塩、275mgのEDCI、及び207mgのDMAPをフラスコに入れる。該混合物を室温で16時間撹拌する。該反応媒体に5%炭酸水素ナトリウム溶液を添加し、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(8/2 トルエン/酢酸エチル)により精製する。78%の収率で488mgを回収する。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.77分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=476
【0099】
それから上記生成物を以下の反応にかける:
23mLのピリジン中の488mgの得られた生成物、及び488mgのヒドロキシルアミン塩酸塩をフラスコに入れる。該混合物を室温で16時間撹拌し、それから反応媒体をCH2Cl2/H2O混合物中に取り、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。75%の収率で378mgのオキシムが回収される。それから塩酸塩としての生成物を得るために、該生成物をHCl溶液で酸性化したエーテル溶液の存在下において塩化する。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.43分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=491
【0100】
実施例11: 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オールのプロドラッグ:3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−(4−メチル−1−ピペラジン)プロパノエートエステル
2〜3mLのジクロロメタン中の264mgの3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン−3−オール、121mgのリチウム塩としての4−メチル−1−ピペラジン−プロパン酸、1.425mgのEDCI、及び106mgのDMAPをフラスコに入れる。該混合物を室温で1晩撹拌する。水を該反応媒体に添加し、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(98/2 トルエン/酢酸エチル)により精製する。54mgの所望の生成物が15%の収率で回収される。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.66分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=545
【0101】
それから生成物を以下の反応にかける:
1.2mLのピリジン中の30mgの得られた生成物、及び30mgのヒドロキシルアミン塩酸塩をフラスコに入れる。該混合物を室温で5時間30分撹拌し、それから反応媒体をCH2Cl2/H2O混合物中に取り、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮する。13%の収率で19mgのオキシムが回収される。
分析
1H−NMR(CDCl3):一致
保持時間:3.66分
マススペクトロメトリーにおいて検出されたピーク:[M+H]+=560
【0102】
それから二塩酸塩としての生成物を得るために、該生成物を塩酸水溶液で酸性化したエーテル溶液の存在下において塩化する。
【0103】
【表1】

【0104】
1.運動ニューロンの生存率における式Iの化合物の効果
式Iの化合物の神経保護作用を示すために、出願人はラット運動ニューロンの栄養欠乏のin vitroモデルにおいて、これらの活性を調査した。脊髄運動ニューロンの培養において、有用な参照は本願出願人のWO 0142784特許出願に従い作成することができる。
【0105】
ラットE14胎仔の脊髄を解剖し、そしてトリプシン化(trypsination)後、腹側部を分離する。既知の方法により、運動ニューロンを他の脊髄細胞から分離する("Immunoselection Strategies for Neural cell culture" におけるCamu et al., 1993,イムノパニングによるニワトリ及びラット胚からの脊髄運動ニューロンの精製、ニューロプロトコール:Neuroscience 2, 191-199における方法の手引き;Henderson et al., 1993。好中球は運動ニューロンの生存を促進し、胚性肢芽中に存在する。Nature 363 (6426): 266-70)。該細胞を密度勾配において遠心する。運動ニューロンは大細胞(低密度細胞)の画分に多く存在する。該画分の細胞を、運動ニューロンに存在する表面抗原である、抗−p75抗体と共にインキュベートする。マグネチックビーズとカップリングした二次抗体を加え、そして該細胞混合物をマグネット中のカラムに通過させる(Arce et al., 1999)。運動ニューロンのみが保持される:これらの純度は90%のオーダーである。
【0106】
運動ニューロンは、Raoul et al., 1999, Programed cell death of embryonic motoneurons triggerd through the Fas death receptor. J. Cell. Biol 147(5): 1049-62に従い供給されたニューロベース培地中のポリオルニチン−ラミニンの基質における培養ウェル中に低密度で蒔かれる。ネガティブ・コントロール(栄養因子の不存在)及びポジティブ・コントロール(米国の会社であるPEPROTECH, Inc及びSigma-Aldrich 社から購入した、1ng/mLのBDNF(脳由来神経栄養因子)、1ng/mLのGDNF(グリア由来神経栄養因子)、及び10ng/mLのCDNF(毛様体神経栄養因子)の存在下)を各系においてインキュベートする。
【0107】
播種から60分後、試験する化合物を添加し、そして培養液を5%CO2下において37℃で3日間維持する。
【0108】
神経栄養因子の不存在下において、運動ニューロンは自発的な死の傾向を有する (Pettmann and Henderson, 1998, Neuronal cell death. Neuron 20 (4): 633-47)。3日後、生存している細胞中で蛍光するカルセインの存在下において細胞をインキュベート後、蛍光を測定することにより、生存率を評価する。
【0109】
37℃の培養で3日後、5%CO2下の飽和湿度において、神経栄養因子を補充した培地中で最初に播種した運動ニューロンの最大50%が生存し、一方基本培地のみにおける運動ニューロンは15%以下の生存率である。
【0110】
試験される化合物の活性は、神経栄養因子を補充した培地における運動ニューロンの生存率の比較として、神経細胞用培地(neurobasal medium)にこれらを添加した場合の運動ニューロン死を防止する能力により評価した。
【0111】
基本培地中で運動ニューロンの良好な生存率を許容できる濃度において、本発明に従う式Iの化合物の活性を実証した。該生存率は数字、割合により表される。該割合が0以上であるならば、運動ニューロンの生存率における化合物の効果は陽性である。
【0112】
得られた結果は以下のとおりである:
【表2】

【0113】
脊髄運動ニューロンにおけるこれらの栄養作用の長所により、本発明に従う式Iの化合物は、特に筋萎縮症の治療において、特に筋萎縮性側索硬化症又は乳児型脊髄性筋萎縮症において、そして精髄の外傷の治療において、薬物として有用であることが証明された。
【0114】
2.神経保護における式Iの化合物の効果
2〜3日齢の新生仔ラットにおいて顔面神経の軸索切断を行う。該動物は、神経の片側切断の4時間前、その後5日間毎日、化合物番号11、3及び4の化合物を皮下に受ける。神経の切断から7日後、動物を麻酔し、それからパラホルムアルデヒドの心臓内注入により固定する。脳を取り出し、パラフィン中でインキュベートする。クレシルバイオレットで染色した顔面神経核の連続した7μmの切片の組織学的分析により、無傷側並びに切断した神経側の運動ニューロンの数を計測することができる(Casanovas et al. Prevention by lamotrigine, MK-801 and N omega-nitro-L-arginine metyl ester of motoneuron cell death after neonatal axotomy, Neuroscience, 1996, 71, 313-325)。
【0115】
得られた結果は以下のとおりである:
軸索切断し、そして化合物番号11、3及び4で経口的に処理した新生仔ラットにおける顔面神経核の運動ニューロンの生存率は、非切断神経と比較して、3〜30mg/kgの用量において最大40%の増加、10mg/kgの用量において最大25%の増加、30mg/kgの用量において最大30%の増加をそれぞれ与えた。
【0116】
毒性実験
30mg/kg/日の用量において、特に化合物番号11、3及び4のマウスへの腹腔内経路を介する投与は、最大14日間継続する毎日の投与処理によって、いかなる有意な毒性も示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、
−XはYと一緒にケト官能基を表し、あるいはXはヒドロキシル基を表し、そしてYは水素を表し、あるいはXとYは一緒にオキシム基(−NOH)又メチルオキシム基(=NHOMe)を表し、
−Bはヒドロキシル基を表し、そしてCとDは水素を表し、あるいはCとDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、あるいはCは水素を表し、そしてDは1〜4個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表し、
あるいはBはCと一緒にケト官能基を表し、そしてDはメチル、ヒドロキシル又はメチルアミンを表し、
あるいはBとCは水素を表し、そしてDはメチルアミンを表し、
あるいはBとCは一緒にオキシムを表し、そしてDはメチルを表し、
そしてRは1〜10個の炭素原子を伴う直鎖又は分岐鎖アルキルを表す)
により記載される、ヒト又は動物の身体を処置するための治療方法における使用のための、即ち薬物としての化合物、
あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項2】
式Iにおいて、Rが以下のコレスタンラジカル
【化2】

を表すことにより特徴づけられる、薬物としての、請求項1に記載の化合物、あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項3】
式Iにおいて、XがYと一緒にケト官能基を表すことにより特徴づけられる、薬物としての、請求項1又は2に記載の化合物、あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項4】
式Iにおいて、Bがヒドロキシルを表し、そしてCとDが水素を表し、あるいはCとDが1〜4個の炭素原子を伴う2つの直鎖又は分岐鎖アルキルを表すことにより特徴づけられる、薬物としての、請求項1、2、又は3に記載の化合物、あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項5】
式Iにおいて、BがCと一緒にケト官能基を表し、そしてDがメチルを表すことにより特徴づけられる、薬物としての、請求項1、2、又は3に記載の化合物、あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項6】
式Iにおいて、XとYが一緒にオキシムを表すことにより特徴づけられる、薬物としての、請求項1又は2に記載の化合物、あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項7】
− 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オール、
− 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−メチルアルコール、
− 3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−ジメチルアルコール、
から選択される、薬物としての、請求項1に記載の化合物、
あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項8】
神経保護薬を得るための、請求項1に記載の化合物、あるいはその医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩の使用。
【請求項9】
前記神経保護薬が神経変性疾患を治療するために意図される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記神経保護薬が、ハンチントン病、遺伝性又は孤発性の神経変性慢性疾患、加齢に関係する神経変性病変、遺伝性又は損傷性の末梢性神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、糖尿病性神経障害又は抗癌治療、脳、末梢神経若しくは脊髄の外傷、脳若しくは脊髄の虚血により誘発される神経障害、視覚の感覚ニューロンの遺伝性、損傷性若しくは加齢に関する変性又は視覚神経の変性、聴覚の感覚ニューロンの遺伝性、外傷性若しくは加齢に関する変性、大葉性萎縮症(lobar atrophies)及び血管性認知症、運動ニューロンの変性に関係する疾患及び外傷、ならびにより特には脊髄性筋萎縮症、特に乳児型脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及び脊髄又は末梢運動神経の外傷、から選択される神経変性疾患を治療するために意図される、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記神経保護薬が、ニューロンの変性又は死に関係する病変又は外傷から選択される神経変性疾患を、このような病変又は外傷に罹患した動物において治療するために意図されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記神経保護薬が、乳児型脊髄性筋萎縮症を治療するために意図されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記神経保護薬が、筋萎縮性側索硬化症を治療するために意図されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の式Iの化合物が、3,5−セコ−4−ノル−コレスタン−5−オン オキシム−3−オール、あるいはその医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩であることを特徴とする、請求項8〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
式I
【化3】

(式中、
−XとYは一緒にオキシムを表し、BとCは水素を表し、Cは水素を表し、そしてDはメチルアミンを表し、
−XはYと一緒にケト官能基を表し、Bはヒドロキシルラジカルを表し、そしてCとDはメチルを表し、
−XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDはメチルを表し、
−XとYは一緒にオキシムを表し、Bはヒドロキシルを表し、Cは水素を表し、そしてDはメチルを表し、
−XとYは一緒にメチルオキシム基を表し、Bはヒドロキシルを表し、そしてCとDは水素を表す)により記載される化合物、
あるいは、その医薬的に許容される酸を伴う付加塩、又はそのエステル若しくは該エステルの医薬的に許容される酸を伴う付加塩。
【請求項16】
活性成分として、少なくとも1つの請求項1に規定される薬物、並びに医薬的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項17】
活性成分として、少なくとも1つの請求項2に規定される薬物、並びに医薬的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項18】
活性成分として、少なくとも1つの請求項3〜7のいずれか一項に規定される薬物、並びに医薬的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする、医薬組成物。

【公表番号】特表2008−512368(P2008−512368A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529376(P2007−529376)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002116
【国際公開番号】WO2006/027454
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(505342058)
【Fターム(参考)】