説明

4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの結晶形態

本発明は、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの新規な結晶形態に関する。さらに、本発明はまた、胃腸障害を治療するための新規な結晶形態の使用、それを含む医薬組成物、および新規な結晶形態を製造する方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予期しえない有利な特性を有する4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの新規な結晶形態(変形B)に関する。さらに、本発明はまた、神経障害、精神障害または胃腸障害のようなmGluR5受容体仲介性障害を予防または治療するための新規な結晶形態の使用に関する。本発明はまた、新規な結晶形態を含む医薬組成物ならびに新規な結晶形態を製造するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化合物4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンは特許文献1に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの粉末X線回折図形(diffractogram)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/040982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の説明)
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンが予想外の長所を有する新規な結晶形態で存在し得ることが、意外にも見出された。初めて開示される新規な結晶形態は、本明細書以降で、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bと呼ばれる。新規な結晶形態は、その粉末X線回折パターン、特に、その7.6Åおよび5.6Åのd−間隔値により特徴付けられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、有利な特性を有する4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの中性型の結晶形態を提供することが本発明の目的である。
【0007】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bを提供することが本発明の局面である。
【0008】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bは、以下のd−値(d−値:結晶格子中で連続的にパラレルなhkl平面の間隔)を有する主ピークを実質的に示す粉末X線回折パターンを提供することで特徴付けられる:
【表1】

【0009】
ブラッグの公式および強度から計算されたd値を用いて同定されたピークを、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの回折図形から抽出した。最も特徴的であり、重要で、注目すべきかつ/または再現可能な主ピークだけを一覧にしているが(多数の弱いピークは除外されている。ピークは、35°2θまでしか列挙されない)、しかし従来の方法を使用して追加のピークを回折図形から抽出し得る。再現可能で、かつ誤差限界内のこれらの主ピークの存在は、ほとんどの状況について前記結晶変形の存在を確立するのに十分である。
【0010】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bは、図1に基本的に示されるような粉末X線回折パターンによりさらに特徴付けられる。
【0011】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bは、製造および後処理の間、向上した化学的および物理的安定性、低い吸湿性、より高い純度、より多い収率およびロバストな取扱特性のような非晶形に対して有利な特性を示す結晶形態である。
【0012】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bを製造するための方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、請求項2に記載の結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンを製造する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
a)非水極性溶媒中(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール、4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンおよび塩基を混合する工程;
b)混合物を少なくとも60℃に、少なくとも10時間加熱する工程;
c)反応混合物を高くても25℃の温度で冷却する工程;および
d)冷却した反応混合物に、場合により種結晶として請求項2に記載の結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンと一緒に水を添加する工程。
【0014】
1つの実施形態において、非水極性溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンおよびアセトニトリルの群から選択される。
【0015】
あるいは、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール)を、単一結晶化溶媒として、または共溶媒として水を含むか、または含まない任意の組み合わせとして使用し得る。さらに、エステル(例えば、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、酢酸イソプロピル)、エーテル(例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン)またはケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ−ブチルケトン)が、単一結晶化溶媒または任意の組み合わせとして考慮され得る。
【0016】
1つの実施形態において、塩基は、炭酸セシウムおよびカリウムtert−ブトキシドの群から選択される。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bを製造する方法を提供し、結晶質または非晶形の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンを、高くても20℃の温度で、少なくとも1時間、酢酸エチルまたは2−プロパノールの群から選択される溶媒中で懸濁される。
【0018】
本発明に従って得られた4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bは、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの他の結晶および非結晶形態を実質的に含まない。当然のことながら、用語「4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの他の結晶および非結晶形態を実質的に含まない」とは、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの所望の結晶形態が、 15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの任意の他の形態を含むことを意味する。
【0019】
本発明に従う結晶変形は、胃食道逆流症、IBS、機能性消化不良、咳、肥満、アルツハイマー病、老年性認知症、AIDS誘発性認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、偏頭痛、てんかん、統合失調症、うつ、不安、急性不安、強迫性障害、眼科障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、聴覚神経障害、例えば耳鳴、化学療法誘発性神経障害、帯状疱疹後神経痛および三叉神経痛、耐性(tolerance)、依存、嗜癖および渇望、神経発達障害(脆弱X、自閉症、精神遅滞、統合失調症およびダウン症候群を含む)、偏頭痛に関係する疼痛、炎症性疼痛、慢性疼痛性障害、急性疼痛性障害、神経障害性疼痛障害、例えば糖尿病性神経障害、関節炎およびリウマチ様疾患(rheumatitiod diseases)、種々の状態(腰痛、術後痛、狭心症、腎疝痛または胆石疝痛、月経、偏頭痛および痛風を含む)と関連する疼痛、脳卒中、頭部外傷、酸素欠乏障害および虚血性傷害、低血糖症、循環器疾患、およびてんかんを予防または治療するのに有用である。
【0020】
薬学的に受容可能な担体、賦形剤または添加剤および任意の他の活性医薬成分を伴って、活性剤として本発明に従う結晶変形を含む医薬組成物をさらに提供する。本発明の医薬組成物は、治療が所望される疾患状態に通常の方法で、例えば、経口、局所、非経口、口腔、経鼻、経膣もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送(insufflation)により投与され得る。これらの目的について、本発明に従う結晶変形は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル剤、水溶液もしくは油性溶液、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏、ゲル、鼻腔用スプレー、坐薬、微粉または吸入のためのエアロゾルもしくは噴霧器の形態に、および非経口用(静脈、筋肉内または注入を含む)の滅菌の水性もしくは油性の溶液または懸濁剤または滅菌乳剤の形態に、当該分野で公知の方法で製剤され得る。
【0021】
本発明に従う結晶変形に加えて、本発明の医薬組成物はまた、本明細書中で言及される1つまたはそれ以上の疾患状態を治療するのに有効である1種またはそれ以上の薬剤を含むか、またはこれらの薬剤と(同時または連続的に)共投与され得る。
【0022】
動物(ヒトを含む)の治療において、式Iの化合物の適切な日用量は、経口投与では約0.01〜250mg/kg体重であり、そして非経口投与では約0.001〜250mg/kg体重である。活性成分の典型的な日用量は、広範囲にわたって変更され、そして関連する適応、投与経路、患者の年齢、体重および性別のような種々の因子に依存し、そして医師により決定され得る。
【0023】
本発明の実施に際して、最も適切な投与経路ならびに治療用量は、治療される疾患の性質および重症度に依存する。用量、および投薬回数はまた、個々の患者の年齢、体重および反応に従って変更され得る。
【0024】
本発明に従う結晶変形は、適切な医薬製剤に製剤化する前にさらに処理され得る。例えば、結晶変形は、より小さい粒子に粉砕(mill)または粉砕され(ground)得る。
【0025】
誤解を避けるために、「治療」は、状態の治療的治療、ならびに予防を含む。
【0026】
薬学的添加剤のような粉末X線回折により特徴付けられるサンプル中の追加物質の存在は、上で特徴付けられる結晶変形中のいくつかのピークをマスクし得る。もちろん、この事実のみでは結晶変形がサンプル中に存在しないということを証明できない。このような状況下、相当な注意が払われなければならず、そして粉末X線回折パターン中の実質的に全ての主ピークの存在が結晶変形を特徴付けるのに十分であり得る。従って、追加の物質なしに、本発明の結晶変形を分析することが好ましい。
【0027】
本発明のさらなる局面に従って、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bが必要であるか、または所望される状態を治療する方法が提供され、該方法は、治療有効量の本発明に従う結晶変形をこのような治療が必要な患者に投与することを包含する。
【0028】
本発明に従う結晶変形は、非晶形と比較して、製造および後処理の間、向上した化学的および物理的安定性、低い吸湿性、より高い純度、より多い収率およびロバストな取扱特性を提供する形態であるという利点を有する。本発明の結晶変形は、他の公知の結晶変形よりも約20℃高い141℃の明確に定義された融点を有する。当業者に当然のことながら、純度および溶媒の存在のような因子が融点に影響を与え得る。
【0029】
結晶化される結晶形態は、特定の条件で、各結晶変形の動力学および平衡条件に関連している。従って、当業者に当然のことながら、得られる結晶変形は、結晶化プロセスの動力学および熱力学の両方に依存する。特定の熱力学的条件下(溶媒系、温度、圧力および本発明の化合物の濃度)、ある結晶変形は、別のものよりも(または実際の他のどれよりも)安定であり得る。しかし、比較的低い熱力学的安定性を有する結晶変形は、動力学的に有利であり得る。従って、さらに、時間、不純物プロファイル、撹拌、種晶(seed)の存在または不在などのような動力学的因子はまた、どの結晶変形が結晶化するかに影響を与え得る。
【0030】
本明細中に開示される場合、用語「純粋」および「純粋な結晶化画分」とは、少なくとも90%(wt)の純度を有する4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bをいう。
【0031】
本発明を以下の実施例で説明するが、決して限定されない。
【実施例】
【0032】
(概要)
例えば、Giacovazzo,C.et al(1995),Fundamentals of Crystallography,Oxford University Press;Jenkins,R.and Snyder,R.L.(1996),Introduction to X−Ray Powder Diffractometry,John Wiley & Sons,New York;Bunn,C.W.(1948),Chemical Crystallography,Clarendon Press,London;またはKlug,H.P.& Alexander,L.E.(1974),X−ray Diffraction Procedures,John Wiley and Sons,New Yorkに記載される標準方法に従って、製造したサンプルに対し粉末X線回折分析(XRPD)を行なった。PANalytical X’Pert Pro,Bragg−Brentano,θ−θ、Cu Kα、回転サンプルを使用して、X線分析を行なった。
【0033】
XRPD距離値(distance value)は、最終小数桁(last decimal place)で±2の範囲で変動し得る。
【0034】
当業者に当然のことながら、例えば、優先方位を含む様々な理由で、本質的に同一の結晶形態を測定しても、XRPD強度は変動し得る。
【0035】
参照実施例1
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Aの製造
(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールおよび4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンをWO2007/043939の開示に従って得た。(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(10g、44.7mmol)、4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン(12.8g、53.7mmol)、および炭酸セシウム(14.6g、44.7mmol)を無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(50ml)に溶解/懸濁した。混合物を60℃に加熱し、そしてその温度で20時間維持した。次いで、混合物を70℃に加熱し、そして追加の炭酸セシウム(2.9g、8.9mmol)を添加した。5.5時間後、変換率は97%であった。水(210ml)を混合物に14時間中添加している間に混合物を室温まで冷却し、これにより液相および油相への相分離が生じた。次いで、混合物をメチルtert−ブチルエーテル(100ml)、酢酸イソプロピル(50ml)および酢酸エチル(30ml)と混合し、これにより2つの透明な液相が生じ、これを分離した。有機相をゆっくりとエバポレートし、この後生成物が結晶化した。次いで、水で2回洗浄し、そして単離した。75%の単離収率に相当する生成物(12.8g)が得られた。
【0036】
実施例1
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの製造
(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールおよび4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンをWO2007/043939の開示に従って得た。(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(130g、518.2mmol)および4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン(166.2g、697.5mmol)を無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(650ml)に懸濁した。塩化セシウム(189.4g、581.2mmol)を添加し、そして混合物を70℃に加熱した。反応液を激しい撹拌下18時間70℃に維持し、この後98.5%の変換率が達成された。次いで、反応温度を20℃に調整し、この後水(91ml)を30分の間中添加した。この段階で、種晶(130mg)を添加することにより、結晶化が開始した。次いで、スラリーを20℃で1時間維持し、この後追加の水(559ml)を4時間かけて添加した。次いで、混合物を撹拌下、20℃に一晩維持し、この後結晶をろ過し、そしてDMSO/水(1/1)で2回、そして水で2回洗浄した。最後に、結晶を減圧下、50℃で乾燥させた。91%の単離収率に相当する生成物(207.7g)が単離された。
【0037】
実施例2
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの製造
(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(4kg、17.9mol)および4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン(5.1kg、21.4mol)、および14.6g(44.7mmol)を無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(22kg)に懸濁した。炭酸セシウム(5.9kg、18.1mol)を添加し、そして混合物を70℃に加熱した。反応液を激しい撹拌下一晩70℃に維持し、この後追加の塩化セシウム(1.2kg、3.7mol)を添加した。反応液を70℃で2時間維持し、この後変換率は>99%であった。次いで、反応液を清浄ろ過し(clear−filtered)、そして反応器/フィルターをDMSO(2×4.4kg)でリンスした。次いで、反応混合物の温度を70℃から20℃に1時間かけて下降させた(ramp)。水(4.0kg)を1時間かけて添加して、結晶化を開始させ、この後混合物を1時間撹拌し続けた。水(24.2kg)を4時間かけてさらに添加した。次いで、結晶混合物を8時間撹拌し続けた。結晶をろ過し、そしてDMSO:水(1:1)で6回、そして水で2回洗浄した。最後に、結晶を減圧下40℃で乾燥させた。84%の単離収率に相当する生成物(5.8kg)が単離された。
【0038】
実施例3
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの製造
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形A(参照実施例1に従って得た)を20℃の温度で、少なくとも1時間酢酸エチルに懸濁した。4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの結晶を回収した。
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Aを20℃の温度で、少なくとも1時間2−プロパノールに懸濁しても同じ結果が得られた。
【0039】
実施例4
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの粉末X線回折(XRPD)パターン
実施例1〜3で得られた結晶化画分は、純粋な4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bであることを示した。変形Bを、以下の表ならびに図1における粉末X線回折(XPRD)パターンにより同定し得る。
【表2】

d−値:結晶格子中の連続的にパラレルなhkl面間の間隔
【0040】
ブラッグの公式および強度から計算されたd値を用いて同定されたピークは、図1に示される4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン、変形Bの回折図形から抽出されている。相対強度は信頼性が少く、そして数値の代わりに以下の定義が使用される:
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン。
【請求項2】
以下:
【表1】

のd値を有する主ピークを実質的に示す粉末X線回折パターンを与えることを特徴とする、請求項1に記載の結晶形態の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン。
【請求項3】
以下:
【表2】

のd値を有する主ピークを実質的に示す粉末X線回折パターンを与えることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶形態の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン。
【請求項4】
以下:
【表3】

のd値を有する主ピークを実質的に示す粉末X線回折パターンを与えることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶形態の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン。
【請求項5】
本質的に図1に示されるような粉末X線回折パターンを与えることを特徴とする、請求項2に定義される結晶形態の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジン。
【請求項6】
治療に使用するための請求項1〜5のいずれか1項に定義される化合物。
【請求項7】
少なくとも1つの薬学的に受容可能な添加剤との混合物中に請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬製剤。
【請求項8】
胃食道逆流症、IBS、機能性消化不良、咳、肥満、アルツハイマー病、老年性認知症、AIDS誘発性認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、偏頭痛、てんかん、統合失調症、うつ、不安、急性不安、強迫性障害、眼科障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、聴覚神経障害、例えば耳鳴、化学療法誘発性神経障害、帯状疱疹後神経痛および三叉神経痛、耐性、依存、嗜癖および渇望、神経発達障害(脆弱X、自閉症、精神遅滞、統合失調症およびダウン症候群を含む)、偏頭痛に関係する疼痛、炎症性疼痛、慢性疼痛性障害、急性疼痛性障害、神経障害性疼痛障害、例えば糖尿病性神経障害、関節炎およびリウマチ様疾患(rheumatitiod diseases)、種々の状態(腰痛、術後痛、狭心症、腎疝痛または胆石疝痛、月経、偏頭痛および痛風を含む)と関連する疼痛、脳卒中、頭部外傷、酸素欠乏障害および虚血性傷害、低血糖、循環器疾患、およびてんかんの群から選択されるmGluR5受容体仲介性障害を予防または治療するための医薬の製造における活性成分としての請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
胃食道逆流症、IBS、機能性消化不良、咳、肥満、アルツハイマー病、老年性認知症、AIDS誘発性認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、偏頭痛、てんかん、統合失調症、うつ、不安、急性不安、強迫性障害、眼科障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、聴覚神経障害、例えば耳鳴、化学療法誘発性神経障害、帯状疱疹後神経痛および三叉神経痛、耐性、依存、嗜癖および渇望、神経発達障害(脆弱X、自閉症、精神遅滞、統合失調症およびダウン症候群を含む)、偏頭痛に関係する疼痛、炎症性疼痛、慢性疼痛性障害、急性疼痛性障害、神経障害性疼痛障害、例えば糖尿病性神経障害、関節炎およびリウマチ様疾患(rheumatitiod diseases)、種々の状態(腰痛、術後疼痛、狭心症、腎疝痛または胆石疝痛、月経、偏頭痛および痛風を含む)と関連する疼痛、脳卒中、頭部外傷、酸素欠乏障害および虚血性傷害、低血糖、循環器疾患、およびてんかんの群から選択されるmGluR5受容体仲介性障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を、それらを被る患者に投与することを含む、上記方法。
【請求項10】
請求項2に記載の結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンを製造する方法であって、以下:
a)非水極性溶媒中(R)−1−[5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール、4−(5−メタンスルホニル−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンおよび塩基を混合する工程;
b)混合物を少なくとも60℃に、少なくとも10時間加熱する工程;
c)反応混合物を高くても25℃の温度で冷却する工程;および
d)冷却した反応混合物に、場合により種結晶として請求項2に記載の結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンと一緒に、水を添加する工程を含む、上記方法。
【請求項11】
非水極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンおよびアセトニトリルの群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩基が、炭酸セシウムおよびカリウムtert−ブトキシドの群から選択されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項2に記載の結晶質の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンを製造する方法であって、結晶質または非晶形の4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンを、高くても20℃の温度で、少なくとも1時間、酢酸エチルまたは2−プロパノールの群から選択される溶媒中で懸濁することを特徴とする、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530590(P2011−530590A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522938(P2011−522938)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050928
【国際公開番号】WO2010/019101
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】