説明

4値PPM信号の伝送方法及び伝送装置

【課題】データレートを高めることなく、ノイズの影響を低減する。
【解決手段】PPMパルス列の信号に、各PPMパルスとは逆極性の同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列をPPMパルス列の前位置に付け加えた複合信号を用いて伝送を行う。送信信号である(a)の4値PPM信号より、(b)の複合信号を生成する。この複合信号は、各スロットに逆極性の前置パルスを組み合わせる。スロット1に対応する前置パルスがスロット1´であり、このスロット1´は、スロット1と同一パルス幅、波高値はスロット1のM倍、極性は逆極性とする。スロット2〜4及び7も同様に前置パルスであるスロット2´〜4´及び7´を追加する。スロット5及び6は、前置スロットとして2倍のスロット長のスロット5´及び6´を追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4値PPM信号等の多値パルス位置変調技術に適用可能な伝送方法及び伝送装置に関するものであって、特に、赤外線通信や可視光通信などの光通信を用いて情報を空間伝送するのに適したものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に示すように、赤外線や可視光を使用した空間伝送を行う場合に、4値PPM変調回路を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−107125号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】平成19年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会、講演番号:136「パルス幅変調プリエンファシスを用いた多値波形等化技術」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、低データレート信号を繰り返し伝送することによって、送信時のデータレートを比較的高速な一定した値に保つことができる。また、低域に周波数成分を有する照明機器による妨害受信雑音を、低域カットフィルタ(ハイパスフィルタ)により除去し、妨害光の影響を受けにくい状態で低データレートの光空間伝送を達成している。
【0006】
前記の方法では、繰り返し送信を伴わないデータレートでデータ伝送を行う場合は、目的とする効果は得られない。そのため、データレートを妨害照明光の雑音周波数スペクトルの分布を鑑みて設定しなければなない。例えば、特許文献1では、照明光の雑音周波数成分が400kHzまでの範囲に収まり、データレートとして1.2288Mbpsの伝送が可能としている。
【0007】
最近の照明光の雑音周波数スペクトル成分は、インバーター式の蛍光灯が普及してきたことで、高い周波数帯に移ってきている。そのため、特許文献1の方法では、データレートをより高い値に設定しなければならない。しかし、光空間伝送を行う場合、データレートと伝送距離はトレードオフの関係があり、データレートを高めると伝送距離が短くなるため、データレートを上げずに照明光の雑音成分による影響を低減する方法が望まれている。
【0008】
従来技術の問題点を、図8及び図9によって、具体的に説明する。図8に示すように、従来技術では、送信データは、4値PPM回路50において変調された後、ハイパスフィルタ(以下、HPFと呼ぶ)51によって雑音周波数である低域の周波数成分が除去される。
【0009】
図9は、各回路における信号波形であり、(A)はHPFへの入力波形、(B)は出力波形である。(B)から分かるように、出力波形はHPFの影響により揺らいだ波形になり、そのピーク値のエンベロープも波打つ。復号は、スレッショルド電圧と比較して4値PPM信号を得るが、前記のようにHPF信号が揺らぐのでスレッショルド電圧でスライスされるレベルが変動する。更に、HPF信号の揺らぎが大きい場合は、パルスを取りこぼしてしまう場合もある。
【0010】
また、従来技術において、伝送系の周波数特性が高域で低下している場合は、HPFの出力波形は(C)のようになる。この場合、スレッショルド電圧でスライスされるレベルの変動により復号されるPPMパルスのパルス幅が大きく変動し、エラーが発生する。
【0011】
このように4値PPMのパルスを光通信により伝送し、これをHPFで処理した場合には、HPFの特性により、パルスの取りこぼしなどのエラーが発生する恐れがあった。また、このような問題点は、光空間伝送に限らず、無線あるいは有線の4値PPMの伝送信号をHPFで処理する場合に同様に存在するものであった。
【0012】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、PPMパルス列の信号に各PPMパルスとは逆極性の同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列をPPMパルス列の前位置に付け加えた複合信号を用いて伝送を行うことにより、データレートを高めることなく、ノイズの影響を低減することのできる4値PPM信号の伝送方法及び伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の伝送方法及び伝送装置は、PPMパルス列の信号に、各PPMパルスとは逆極性の同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列をPPMパルス列の前位置に付け加えた複合信号を用いて伝送を行うことを特徴とする。また、次のような態様も本発明に包含される。
【0014】
(1)受信装置に、複合信号を通過させるハイパスフィルタを設け、前記ハイパスフィルタのステップ関数応答として、単位PPMスロット時間経過後のレベルが、ステップ開始時のレベルの1/Mになるとき、送信装置において、PPMパルス列の前位置に付け加えるパルス列の波高値を、PPMパルス列のレベルのM倍の波高値に設定する。
【0015】
(2)受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値より受信レベル電圧の検出を行い、検出した受信レベル電圧をもとに、復号のための閾値電圧を得て、復号を行う。
【0016】
(3)受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値を検出して、自動利得制御に用いることもできる。
【0017】
(4)PPMパルスが、単位PPMスロットの2倍の時間となる部分のPPMパルスを、単位PPMスロット長のパルスに変換し、伝送を行うこともできる。
【0018】
(5)受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信パルス開始点を、PPMパルスの開始点、前記PPMパルスの開始点を、PPMパルスの終了点として認識することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の伝送方法及び伝送装置によれば、4値PPMパルスの応答が良好で、電圧レベルの揺らぎが生じない波形が得られる。
【0020】
特に、PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値より求めた受信レベル電圧に基づいて閾値電圧を得て、復号を行った場合には、HPFによる電圧下降による影響を受けない状況で複合を行うことができる。
【0021】
また、パルス列の受信波高値を検出して、自動利得制御を行った場合には、HPF出力の受信レベルに起因する振幅の変動があっても、出力パルスの幅を一定にして、エラーを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明におけるHPFのステップ応答を説明する波形図。
【図2】第1実施形態における各部の信号を示す波形図。
【図3】第1実施形態の送信装置のブロック図とその各部の波形図。
【図4】第1実施形態の受信装置のブロック図とその各部の波形図。
【図5】第2実施形態の受信装置のブロック図とその各部の波形図。
【図6】第3実施形態の送信装置のブロック図とその各部の波形図。
【図7】第3実施形態の受信装置のブロック図とその各部の波形図。
【図8】従来の伝送装置の基本的な構成を示すブロック図。
【図9】従来の伝送装置におけるハイパスフィルタの出力信号を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
(1)ステップ応答
本発明におけるHPFの出力信号特性として現れるステップ応答を、図1に従って、説明する。図1のHPFINに示すステップ関数信号がHPFを通過すると、HPFOUTとして、0レベルから瞬時に正の電圧値Vに達し、時間と共に正電圧が減少し0レベルに戻る応答を示す。本発明では、ステップの立ち上がりから4値PPMの1スロット時間経過した時間の正電圧が、電圧値VのM分の一すなわちV/Mとなるとする。すなわち、Mは、1スロット経過後の正電圧Vの減少率である。
【0024】
本実施形態においては、ハイパスフィルタのステップ関数応答として、単位PPMスロット時間経過後のレベルが、ステップ開始時のレベルの1/Mになるとき、送信装置において、PPMパルス列の前位置に付け加えるパルス列の波高値を、PPMパルス列のレベルのM倍の波高値に設定する。
(2)複合信号
図2(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態における各部の信号波形を示すものである。(a)の4値PPM信号は、1フレームに対する各スロットの位置によって、1シンボルの信号を送るものである。1シンボルの送信信号の信号長を1フレーム、拡散符号の符号長を1スロットとし、1フレームに4つのスロットがあり、1スロットで振動(光伝送の場合は光の強弱を変化)させることで、1フレームにおいて2ビットを表現できる。
【0025】
例えば、図2(a)において、スロット1,5はパルスがフレームの末尾に位置することから「11」、スロット2はフレームの3番目なので「10」、スロット3,4,6はフレームの先頭にするので「00」を表す。なお、図にはないがスロットがフレームの2番目の場合には、「01」を表す。
【0026】
本実施形態では、送信信号である(a)の4値PPM信号より、(b)の複合信号を生成する。この複合信号は、各スロットに逆極性の前置パルスを組み合わせたものである。すなわち、スロット1に対応する前置パルスがスロット1´であり、このスロット1´は、スロット1と同一パルス幅、波高値はスロット1のM倍、極性は逆極性とする。スロット2〜4及び7も同様に前置パルスであるスロット2´〜4´及び7´を追加する。
【0027】
スロット5及び6は、フレーム最後部にスロット5が発生した次のスロット6がフレーム最初に発生する場合であるから、見かけ上スロット長が2倍になる。その場合は前置スロットとして、2倍のスロット長のスロット5´及び6´を追加する。
【0028】
前記のようにして送信側で生成された復号信号が、図1のようなステップ応答を有する受信側のHPFを通過して得られる波形が(c)のHPF通過信号である。このHPF通過信号における各スロット及びその前置パルスの応答は以下のようになる。但し、HPFのゲインは1とする。
【0029】
(i)スロット1´,1
スロット1´により0電圧から−M電圧に入力電圧が瞬間的に変動すると、HPF出力も同一の変異が発生し、瞬間的に−M電圧になる(t)。スロット1´が、その単位スロット時間−Mの電圧を維持する期間は、前述のステップ応答に従い、時間の経過とともに電圧が漸減し0レベルに向かい、スロット1´終了時点で(t)電圧が初期電圧の1/Mとなるから、電圧値は−1となる(t)。以降入力電圧は瞬時に(M+1)上昇するが、上昇の起点電圧が−1であるから、達する電圧はM+1−1=Mとなる。
【0030】
以降スロット1が、1スロット時間の間、電圧を1に保つので、HPF出力電圧は時間の経過とともに電圧が漸減し0レベルに向かい、スロット1終了時点で(t)電圧が初期電圧の1/Mとなるから、電圧値は1となる。スロット1が終了すると、入力電圧は瞬時に1減少するので、HPF出力はそれに応じて瞬間に1V電圧を減ずる。HPF出力の電圧起点が1Vであることから、HPF出力の(t)における電圧は0に収束する。
【0031】
以上、前置パルスに続き、本パルスが終了するまで、パルス応答は0レベルに収束するので、(t)以降にはスロット1´及びスロット1の影響が残らず、0レベルを保ちリンギング等の発生が起こらない。
【0032】
(ii)スロット2〜4
次に続くスロット2´とスロット2、スロット3´とスロット3、スロット4´とスロット4の3対についても、同様にペアスロット終了直後、0レベルに速やかに収束する。
【0033】
(iii)スロット5´及び6´
スロット5´及び6´については、パルス長が単位スロット長の2倍であるためHPFによる電圧減少量が増加し、2スロット時間経過後−1より0レベルに近い電圧になる。従って、スロット5及び6によるパルス応答に従って、M+1レベルが上がることにより、波高値はMよりは大きくなる。また、スロット5及び6のパルス継続期間は電圧が漸減し、1より低い電圧となる。
【0034】
次いで、スロット5及び6の終了により電圧が1減少するので、HPF出力電圧は0レベルには戻らず、若干マイナスの電圧値になり、その後0レベルに向かって収束する。但し、そのレベルは低いので後続するパルス列に対する干渉要因としての影響度は低い。
【0035】
(3)送信装置(複合信号の生成回路)
図3は、送信装置に設けられた複合信号の生成回路及び動作波形を示す図である。入力データは、4値PPM変調回路1により、4値PPM信号Aに変換される。信号Aは、ディレー回路2とパルス幅検出回路3に印加される。
【0036】
パルス幅検出回路3は、印加された信号Aから2スロット連続するパルスを検出し、切り替え回路4に切り替え制御信号として印加する。信号Aは、ディレー回路2に印加され、ディレー回路2からは1スロット期間遅延したパルスB及び2スロット期間遅延したパルスDが出力される。
【0037】
切り替え回路4には、4値PPM変調回路1からの信号Aと、ディレー回路2からの信号Bが印加される。この切り替え回路4は、パルス幅検出回路3から取得した信号A中の各パルスの幅に従い、1スロット遅延した信号Bからその2スロット連続するパルス部分のみを取り去り、そこに4値PPM変調回路1からの遅延の無い信号Aの2スロット連続するパルスを取り込み、信号Cを得る。この信号Cとディレー回路2から出力される2スロット期間遅延した信号Dは、減算回路5に印加される。
【0038】
減算回路5は、信号Cから所定の比率で信号Dを減算し、復号された信号Eを得る。その結果、復号信号として、4値PPM信号の各パルスに逆極性で所定の波高値を持った前置パルスを設けた波形が得られる。減算回路5出力は、LEDドライブ回路6に印加され、LEDドライブ回路6は、LED7を復号信号により強度変調して光信号を送出する。
【0039】
(4)受信装置(HPF側)
図4に、HPFを有する受信装置の回路構成を示す。空間を伝送された光信号は、受光素子8により受信され、O/E回路9により電気信号に変換される。O/E回路出力は、増幅回路10により増幅される。
【0040】
復号信号生成において前述の条件を設定した場合、増幅回路出力Fはハイパスフィルタ11を通過し、信号Gの波形を呈し、4値PPMパルスの応答が良好で、電圧レベルの揺らぎが生じない波形が得られる。
【0041】
ハイパスフィルタ出力Gは、ピークレベル検出回路12に印加され、ピークレベル検出回路12は、信号Gの下側ピーク値の平均値Hを検出する。下側ピーク値は前述の説明の通り、変動がない安定したレベルとなるため、ピーク平均値Hも変動の無い正確な値が検出できる。ピーク平均値H電圧は、反転回路13により、レベルの等しい逆極性の電圧に変化され、分圧回路14により所定の比率で分圧され、比較回路15の正相入力に印加される。一方、比較回路の逆相入力にはハイパスフィルタ11の出力Gが入力され、両者が比較される。
【0042】
分圧回路14の分圧率は、ハイパスフィルタ出力Gから4値PPMパルスを再生するために最適な閾値Jを得るよう設定する。図4において、閾値Jは、復号信号のダウンエッジの直線部中央位置を閾値とするのが最も望ましい。また、2スロット連続するパルス部分については、前述の説明からダウンエッジ直線部の開始ポイントが高い電圧方向に移動するので、HPFによる電圧下降による影響を受けない状況で比較出力Kが得られる。すなわち、この比較出力Kが、図3に示す4値PPM変調回路1からの出力信号Aに対応するものである。
【0043】
このように本実施例によれば、たとえHPF出力に揺らぎが生じるような場合であっても、ハイパスフィルタ出力Gから4値PPMパルスを再生するために最適な閾値Jを得ることができ、パルス幅の変動やパルスの取りこぼしを防止できる。
【0044】
[第2実施形態]
図5に示す第2実施形態は、受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値を検出して、自動利得制御に用いることを特徴とする。
【0045】
本実施形態では、前記図4の受信装置における増幅回路10に代えて、AGC増幅回路21を設け、O/E回路9の出力信号FをこのAGC増幅回路21を介してハイパスフィルタ11に入力する。ハイパスフィルタ11の後段には比較回路16を接続し、この比較回路16の逆相入力にハイパスフィルタ出力Gが、正相入力に直流電源17からの振幅調整閾値電圧Hを入力する。
【0046】
比較回路16の比較結果は、ローパスフィルタ18を介して前記AGC増幅回路21に送られ、この比較結果に基づいて、AGC増幅回路21からハイパスフィルタ11に出力する複合信号のゲインを決定する。
【0047】
直流電源17からの振幅調整閾値電圧Hは、反転回路19によりレベルの等しい逆極性の電圧に変化され、分圧回路20により所定の比率で分圧され、比較回路15の正相入力に印加される。一方、比較回路の逆相入力にはハイパスフィルタ11の出力Gが入力され、両者が比較され、その比較出力Kが比較回路15の出力端子から出力される。
【0048】
このような構成を有する本実施例では、AGC増幅回路21によってハイパスフィルタ11からの出力信号Gの振幅を一定にすることが可能になる。その結果、前記図4の回路では受光レベルが大きい場合に増幅回路10の出力が飽和しないように増幅率を設定する必要があり、受光レベルが低い場合には比較回路15に印加される信号レベルが低くなるため、比較精度が悪くなるのに対し、本実施形態では受光レベルの大きさに依らず比較回路15に印加される信号レベルが一定の大きさになり、安定した比較が可能となる。
【0049】
[第3実施形態]
図6及び図7に示す第3実施形態は、PPMパルスが、単位PPMスロットの2倍の時間となる部分のPPMパルスを、単位PPMスロット長のパルスに変換し、伝送を行うことを特徴とする。すなわち、図1に示すステップ応答からも明らかなように、スロット5及び6は2スロット分のパルス幅を有することから、スロット長が2倍となり、1スロット分のパルス幅を有する他のスロットとは、V/Mが異なることから、その受信波高値が他のスロットと異なることになる。
【0050】
そこで、本実施形態では、送信装置において、連続した2スロットのパルスを1スロット分のパルス幅に変換して送信し、受信装置において、受信したパルス列を解析することで、1スロット分のパルスから連続した2スロットのパルスに復元する。以下、本実施形態の送信装置と受信装置を図面に従って説明する。
【0051】
(1)送信装置
図6は、本実施形態の送信装置を示すものである。図6では、前記図3の送信装置における4値PPM変調回路1の後段に単安定マルチバイブレータ23を設ける。この単安定マルチバイブレータ23は、その時定数を1スロットに設定しておくことにより、4値PPM変調回路1の出力信号Aに2スロットが繋がる部分(スロット5及び6が繋がる部分)が存在した場合に、その2スロットのパルスを1スロット分の幅のパルスに変換し、その他の1スロットのパルスはそのまま1スロット分の幅のパルスとして出力するものである。
【0052】
なお、単安定マルチバイブレータ23の出力信号Bについては、図3の送信装置と同様に複合信号に変換して、空間伝送する。
【0053】
(2)受信装置
図7は、本実施形態の受信装置を示すものである。この受信装置は、前記図5の受信装置の比較回路15の後段に、判定回路22を設けたものである。すなわち、送信装置から送られた複合信号において、例えば、フレームの末尾にパルスが有るスロット5とフレームの先頭にパルスが有るスロット6が繋がっている場合に、スロット5のフレームではその末尾に複合信号のパルスが存在し、スロット6のフレームでは何もパルスが存在しない。
【0054】
そこで、このような組み合わせの2つのフレームが連続することを判定回路で判定して、何もパルスが存在しないフレームの先頭に1スロットのパルスを追加する。これにより、図6の送信装置の4値PPM変調回路1からの出力信号Aと同様な信号、すなわち、スロット5と6が繋がった2スロット分のパルス幅の信号を、判定回路22から出力することができる。
【0055】
このような構成を有する本実施形態では、2つのパルスが繋がった2スロットの信号を1スロット分の信号として処理することが可能になるので、2スロットの信号が繋がった場合でもその受信波高値が他の1スロットのパルスと異なることがない。
【0056】
[他の実施形態]
本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、送信装置側で複合信号を作成する手段として前記実施形態に採用した4値PPM変調回路1、単安定マルチバイブレータ23、ディレー回路2、パルス幅検出回路3、切り替え回路4などに代えて、マイコンやPLD(programmable logic device)を使用することができる。同様に、受信装置においても、複合信号から4値PPM信号(あるいはそれを加工した最終的な出力信号も含めて)をマイコンやPLDで作成することも可能である。
【0057】
また、図示の実施形態は、複合信号から4値PPM信号を取り出す場合に、スレッショルド電圧とHPFの出力信号を比較したが、その代わりに、HPFの出力信号のパルス位置から4値PMM信号を生成することもできる。例えば、受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信パルス開始点を、PPMパルスの開始点、前記PPMパルスの開始点を、PPMパルスの終了点として認識することで、4値PMM信号を生成できる。
【0058】
なお、本発明は、前記4値PPM信号に限定されるものではなく、8値、16値など4値以上のすべての多値パルス位置変調に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…4値PPM変調回路
2…ディレー回路
3…パルス幅検出回路
4…切り替え回路
5…減算回路
6…LEDドライブ回路
7…LED
8…受光素子
9…O/E回路
10…増幅回路
11…ハイパスフィルタ
12…ピークレベル検出回路
13,19…反転回路
14,20…分圧回路
15,16…比較回路
17…直流電源
18…ローパスフィルタ
21…AGC増幅回路
22…判定回路
23…単安定マルチバイブレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置間で4値PPM信号を伝送するにあたり、PPMパルス列の信号に、各PPMパルスとは逆極性の、同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列をPPMパルス列の前位置に付け加えた複合信号を用いて伝送を行うことを特徴とする4値PPM信号の伝送方法。
【請求項2】
前記受信装置に、複合信号を通過させるハイパスフィルタを設け、前記ハイパスフィルタのステップ関数応答として、単位PPMスロット時間経過後のレベルが、ステップ開始時のレベルの1/Mになるとき、前記送信装置において、PPMパルス列の前位置に付け加えるパルス列の波高値を、PPMパルス列のレベルのM倍の波高値に設定することを特徴とする請求項1に記載の4値PPM信号の伝送方法。
【請求項3】
前記受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値より受信レベル電圧の検出を行い、検出した受信レベル電圧をもとに、復号のための閾値電圧を得て、復号を行うことを特徴とする請求項1に記載の4値PPM信号の伝送方法。
【請求項4】
前記受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値を検出して、自動利得制御に用いることを特徴とする請求項3に記載の4値PPM信号の伝送方法。
【請求項5】
前記送信装置において、単位PPMスロットの2倍の時間となる部分のPPMパルスを、単位PPMスロット長のパルスに変換し、伝送を行うことを特徴とする請求項1に記載の4値PPM信号の伝送方法。
【請求項6】
前記受信装置において、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信パルス開始点を、PPMパルスの開始点として認識し、前記PPMパルスの開始点を、PPMパルスの終了点として認識することを特徴とする請求項5に記載の4値PPM信号の伝送方法。
【請求項7】
送信装置と受信装置間で4値PPM信号を伝送する伝送装置において、
前記送信装置に、PPMパルス列の信号に、各PPMパルスとは逆極性の、同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列をPPMパルス列の前位置に付け加えた複合信号の生成手段と、この複合信号の送信手段を設け、
前記受信装置に、前記複合信号の受信手段と、受信した複合信号を通過させるハイパスフィルタと、このハイパスフィルタの出力信号から4値PPM信号を復号する復号手段を設けたことを特徴とする4値PPM信号の伝送装置。
【請求項8】
前記復号手段が、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値より受信レベル電圧の検出を行い、検出した受信レベル電圧をもとに、復号のための閾値電圧を得て、復号を行うことを特徴とする請求項7に記載の4値PPM信号の伝送装置。
【請求項9】
前記復号手段が、前記PPMパルス列の前位置に付け加えたパルス列の受信波高値を検出して、自動利得制御手段を有することを特徴とする請求項7に記載の4値PPM信号の伝送装置。
【請求項10】
送信装置と受信装置間で多値パルス信号を伝送するにあたり、多値パルス列の信号に、各多値パルスとは逆極性の、同じパルス幅で所定の振幅を有するパルス列を多値パルス列の前位置に付け加えた複合信号を用いて伝送を行うことを特徴とする多値パルス信号の伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239027(P2012−239027A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106549(P2011−106549)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】