説明

4(フェニル−ピペラジニル−メチル)ベンズアミド誘導体及び疼痛、不安症又は胃腸障害の治療のためのその使用

【課題】疼痛、不安症及び機能性胃腸障害の治療に有用な新規化合物の提供。
【解決手段】一般式Iの化合物


一般式Iの化合物個々の鏡像異性体及び塩並びに新規化合物を含んでなる医薬組成物並びに治療、特に疼痛、不安症及び機能性胃腸障害の処置におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、その製造方法、その使用及び新規化合物を含んでなる医薬組成物に関する。新規化合物は、治療、特に疼痛、不安症及び機能性胃腸障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
δ受容体は、循環系や痛覚系といったような多くの身体機能において役割を有することが確認されている。従って、δ受容体のリガンドは、鎮痛剤及び/又は抗高血圧剤としての使用可能性を見出すことができる。また、δ受容体のリガンドは、免疫調節活性を有することがわかった。
今のところ、少なくとも3つの異なる個体群のオピオイド受容体(μ、δ及びκ)が確認されており、3つは、いずれもヒトを含めた多くの種の中枢及び末梢神経系の両方で見られる。これらの受容体の1つ以上が活性化された時に、種々の動物モデルで痛覚脱失が観察された。
【0003】
一部の例外を除いて、現在入手可能な選択的オピオイドδリガンドは、性質がペプチド性であり、全身経路による投与に適していない。非ペプチド性δ作動薬の一例は、SNC80である(非特許文献1)。しかし、改善された選択性を有するだけでなく副作用プロフィールも改善された選択的δ作動薬が、なお必要とされている。
従って、本発明の根本的な課題は、改善された鎮痛効果を有するだけでなく、現在のμ作動薬よりも改善された副作用プロフィールを有し、しかも改善された全身有効性を有する新しい鎮痛剤を見出すことである。
【0004】
先行技術において確認された既存の鎮痛剤は、薬理動態に乏しく、全身経路によって投与した場合に鎮痛性がないといった多くの欠点を有する。また、先行技術に記載された好ましいδ作動薬化合物は、全身投与した場合、有意な痙攣効果を示すことが報告されている。
ここで、本発明者らは、驚くほど改善された性質、すなわち改善されたδ作動薬効力、生体内効力、薬理動態、生物学的利用能、生体外安定性及び/又はより低い毒性を示すある種の化合物を見出した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bilsky E.J.等, Journal of Pharmacology ahd Experimental Therapeutics, 273(1), 第359-366頁 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の新規化合物は、式I
【化1】

(式中、R1は、
(i)フェニル;
【化2】

(ii)ピリジニル
【化3】

(iii)チエニル
【化4】

(iv)フラニル
【化5】

(v)イミダゾリル
【化6】

(vi)トリアゾリル
【化7】

(vii)ピロリル
【化8】

(viii)チアゾリル
【化9】

(ix)ピリジル−N−オキシド
【化10】

のいずれか一つから選ばれ、その際、R1複素芳香族環は、それぞれ場合により、独立して直鎖及び分枝C1−C6アルキル、ハロゲン化C1−C6アルキル、NO2、CF3、C1−C6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードから選ばれる1、2又は3個の置換基によってさらに置換されていてもよく、
2は、独立してエチル及びイソプロピルから選ばれ;
3は、独立して水素及びフルオロから選ばれ;
4は、独立して−OH、−NH2及び−NHSO25から選ばれ;そして
5は、独立して水素、−CF3及びC1−C6アルキルから選ばれるが、但し、R2がエチルであり、R3が水素である時は、R4は、−OHであることができない)によって定義される。
複素芳香族環上の置換は、前記環系上の任意の位置で行うことができる。
【0007】
1フェニル環及びR1複素芳香族環が置換されている場合、好ましい置換基は、CF3、メチル、ヨード、ブロモ、フルオロ及びクロロのいずれか1つより選ばれ、このうちメチルが最も好ましい。
従って、本発明のさらなる実施態様は、R1が上記定義された通りであり、そしてR1フェニル環及びR1複素芳香族環は、それぞれ独立してメチル基によってさらに置換される
ことができる。
【0008】
本発明のさらなる実施態様は、R1がフェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;R4は、−NH2又は−NHSO25であり;そしてR5はC1−C6アルキルであり、場合によりR1フェニル又はR1複素芳香族環上に1個又は2個の好ましい置換基を有する式Iの化合物である。
本発明のさらなる実施態様は、R1が、フェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素であり;R4は、−NHSO25であり;そしてR5は、C1−C6アルキルである、場合によりR1フェニル又はR1複素芳香族環上で1個又は2個の好ましい置換基を有する式Iの化合物である。
【0009】
本発明の別の実施態様は、a) R1が、フェニル、ピロリル又はフラニルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;そしてR4は、−NH2であり;b) R1は、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロ
ピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;そしてR4は、−NH2であり;c) R1は、フェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;R4は、−NHSO25であり;そしてR5は、C1−C6アルキルであり;そしてd) R1は、フェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;R4は、−NHSO25であり、そしてR5は、C1−C6アルキルであり、その際、a)〜d)の全ての実施態様では、場合により、R1フェニル又はR1複素芳香族環上で1個又は2個の好ましい置換基で置換されていてもよい式Iの化合物である。
【0010】
また、式Iの化合物の個々の鏡像異性体及び塩は、鏡像異性体の塩を含めて本発明の範囲内にある。また、個々の鏡像異性体の混合物、例えばラセミ混合物だけでなく個々の鏡像異性体の混合物の塩も本発明の範囲内である。
【0011】
ラセミ混合物を個々の鏡像異性体へ分離することは、当分野でよく知られており、例えば適切なキラルクロマトグラフィカラム上での分離によって実施することができる。塩の製造は、当分野でよく知られており、例えば式Iの化合物を適切な溶媒中で所望のプロトン性酸と混合し、当分野で標準的な方法で単離することによって実施することができる。式Iの化合物の塩には、医薬上許容しうる塩、そしてまた、医薬上許容しえない塩が含まれる。
【0012】
本発明の新規化合物は、治療、特に種々の疼痛状態、例えば慢性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、癌性疼痛、慢性関節リウマチによって生じる疼痛、偏頭痛、内臓痛等の治療に有用である。しかし、このリストは、網羅するものとして解釈してはならない。
本発明の化合物は、免疫調節物質として、特に自己免疫疾患、例えば関節炎、皮膚移植片、臓器移植及び同様の外科的必要性、膠原病、種々のアレルギー、抗腫瘍剤及び抗ウイルス剤としての使用に有用である。
本発明の化合物は、オピオイド受容体の退行変性又は機能不全が存在する又はそのパラダイムが関与する疾病状態に有用である。診断技術及び画像化用途、例えば陽電子射出断層撮影法(PET)においては、本発明化合物の同位元素的に標識化されたバージョンの使用を含むことができる。
【0013】
本発明の化合物は、下痢、うつ病、不安症及びストレス関連障害、例えば心的外傷後ストレス障害、恐慌性障害、全般性不安障害、社会的恐怖症、及び強迫性障害;尿失禁、種々の精神的な病気、咳、肺水腫、種々の胃腸障害、例えば便秘、機能性胃腸障害、例えば過敏性腸症候群及び機能性消化不良、パーキンソン病及び他の運動性障害、外傷性脳損傷、卒中、心筋梗塞後の心臓保護、脊髄損傷及び薬物嗜癖(アルコール、ニコチン、オピオイド及び他の薬物乱用の治療を含む)並びに交感神経系の障害、例えば高血圧の治療に有用である。
本発明の化合物は、全身麻酔やモニターによる麻酔治療中に使用する鎮痛剤として有用である。麻酔状態(例えば記憶喪失、痛覚脱失、筋弛緩及び鎮静作用)を維持するために必要な効果のバランスを得るため、しばしば異なる性質の薬剤の組合せが用いられる。この組合せには、吸入麻酔剤、催眠剤、不安緩解剤、神経筋遮断剤及びオピオイドが含まれる。
【0014】
また、上で議論したいずれかの状態を治療する医薬の製造における上記式Iのいずれかの化合物の使用は、本発明の範囲である。
本発明のさらなる態様は、上記式Iの化合物の有効量を治療の必要な患者に投与することによって上で議論したいずれかの状態で苦しむ患者を治療する方法である。
【0015】
製造方法
本発明の化合物は、以下の一般的方法を用いて製造することができる。
フェノールの製造:実施例1〜3
4が−OHである式Iの化合物は、一般式II
【化11】

(式中、R2及びR3は、式Iに定義された通りであり、そしてR4は、OMeである)の化合物を標準条件下でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて標準条件下でBoc保護基を除去して式III
【化12】

の化合物を得、その後、これを還元条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル化し、続いてジクロロメタン中のBBr3を用いてメチルエーテルを開裂してR4が−OHである式Iの化合物を得ることによって製造される。
【0016】
アニリンの製造:実施例4〜6
4が−NH2である式Iの化合物は、一般式IV
【化13】

(式中、R2及びR3は、式Iに定義された通りであり、そしてR4は、NO2である)の化合物を、標準条件下でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて標準条件下でBoc保護基を除去して式V
【化14】

の化合物を得、その後、これを還元条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル化し、続いて水素及び木炭上のパラジウムを用いてニトロ基を還元してR4が−NH2である式Iの化合物を得ることによって製造される。
【0017】
メチルスルホンアニリドの製造;実施例7〜8
4が−NHSO25である式Iの化合物は、一般式VI
【化15】

(式中、R2及びR3は、式Iに定義された通りであり、そしてR4はNO2である)の化合物を、標準条件下でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて触媒として木炭上のパラジウムを用いる水素化分解によりニトロ基を還元し、トリエチルアミンの存在下でジクロロメタン中のメタンスルホニル無水物を用いてメタンスルホニル化し、その後、標準条件下でBoc保護基を除去して式VII
【化16】

の化合物を得、その後、これを還元的条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル化し、続いて水素及び木炭上のパラジウムを用いてニトロ基を還元してR4が−NHSO25である式Iの化合物を得ることによって製造される。
【0018】
また、式Iの化合物の個々の鏡像異性体及び塩は、鏡像異性体の塩を含めて本発明の範囲内にある。式Iの化合物は、ステレオジェン中心であるジアリールメチルピペラジン基を有するキラル化合物である(下記の式I*参照)。
【化17】

【0019】
従って、本発明のさらなる実施態様は、式Iの化合物の(−)−鏡像異性体、及び前記化合物の塩である。
従って、本発明のさらなる実施態様は、式Iの化合物の(+)−鏡像異性体、及び前記化合物の塩である。
【0020】
〔実施例〕
ここで、本発明を以下の実施例によってより詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものとして解釈されない。
【化18】

【0021】
中間体1:4−[(4−フルオロ−3−メトキシフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
N,N−ジイソプロピル−4−ヨードベンズアミド(6.0g,18mmol)をTHF(200mL)に溶解し、窒素雰囲気下で−78℃に冷却した。n−BuLi(14mL,ヘキサン中の1.3M溶液,18mmol)を−65〜−78℃で10分間の間に滴加した。4−フルオロ−3−メトキシベンズアルデヒド(2.8g,18mmol)を、THF(5mL)に滴加して溶解した。30分後、NH4Cl(水性)を加えた。真空下で濃縮した後、EtOAc/水で抽出し、乾燥(MgSO4)し、有機相を蒸発させ、残留物をシリカ上のクロマトグラフィ(0〜75%EtOAc/ヘプタン)によって精製して所望の生成物(3.9g,60%)を得た。1H NMR (CDCl3) δ 1.0-1.6 (m, 12H), 2.65 (d, J = 4Hz,
1H), 3.4-3.9 (m, 2H), 3.80 (s, 3H), 6.10 (d, J= 4Hz, 1H), 6.76 (m, 1H), 6.95 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.76 (m, 1H), 7.25, 7.40 (2d, J=7.5Hz, 4H).
【0022】
中間体2:4−[(4−フルオロ−3−メトキシフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]−N,N−ジイソプロピルベンズアミド
中間体1(3.9g,11mmol)を乾燥CH2Cl2(50mL)に溶解し、0〜25℃
で30分間SOBr2(0.88mL,11mmol)で処理した。KHCO4(水性)で中和し、有機相を乾燥(K2CO4)し、続いて真空下で溶媒を蒸発させた。残留物及びEt3
N(1.8mL,13mmol)をMeCN(50mL)に溶解し、Boc−ピペラジン(2.1g,11mmol)と共に25℃で12時間撹拌した。真空下で濃縮し、シリカ上のクロマトグラフィ(ヘプタン中の0〜50%EtOAc)により4.6gを得た。1.6gを、CH2Cl2中TFA(1:1)で処理し、真空下で濃縮して、CH2Cl2/K2CO4(水性)で抽出し、乾燥(K2CO4)し、そして真空下で蒸発させて中間体2を得た(1.3g,中間体1から81%)。MS (ES) 428.21 (MH+).
[実施例1]
【0023】
4−[1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
中間体2(0.41g,0.96mmol)及びトリエチルアミン(0.20mL,1.4mmol)をMeCN(10mL)に溶解した。臭化ベンジル(0.14mL,1.1mmol)を加え、25℃で撹拌した。12時間後、溶液を濃縮し、逆相クロマトグラフィ(LiChroprep RP-18,水中の10〜80%MeCN,0.1%TFA)によって精製した。CH2C12/K2CO4(水性)で抽出し、乾燥(K2CO4)し、そして真空下で蒸発させた後、0.53gの遊離塩基を得た。−78℃でCH2Cl2中の三臭化ホウ素(4当量,CH2Cl2中の1M溶液)で処理し、水を加え真空下で濃縮し、逆相クロマトグラフィにより、実施例1をトリフルオロアセテート(0.35g,50%)として得た。MS (ES) 504.22 (MH+). IR (NaCl) 3222, 1677, 1592, 1454, 1346, 1201, 1135(cm-1). 1H NMR(CD3OD) δ= 1.1, 1.5(m, 12H), 2.3 (m, 3H), 2.9-3.8 (m, 7H), 4.33 (s, 2H), 4.75 (s, 1H), 6.60 (m, 1H), 6.83 (m, 1H), 6.94 (m,1H), 7.24 (d, J= 8Hz, 2H), 7.47 (m, 7H). C31H38FN3O2×0.8C4H2F6O4についての分析計算値 C: 59.87, H: 5.82, N: 6.12. 実測値 C: 60.06, H: 5.83, N: 6.19.
[実施例2]
【0024】
4−[1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−1−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
中間体2(0.43g,1.0mmol)を、3−チオフェン−カルボキシアルデヒド(0.11mL,1.2mmol)及びHOAc(57μl,1.0mmol)と共にMeOH(5mL)に溶解し、そして1時間撹拌した。ナトリウムシアノボロヒドリド(63mg,1.0mmol)をひとかたまりで6時間かけて加え、反応物を25℃でさらに12時間撹拌し、その後、真空下で濃縮し、抽出(CH2Cl2/K2CO3(水性))して後処理した。実施例1のように逆相クロマトグラフィによって精製し、遊離塩基として0.32g(0.62mmol)を得た。実施例1のように三臭化ホウ素で処理し、そしてクロマトグラフィによりトリフルオロアセテートとして実施例2(0.20g,26%)を得た。MS (ES) 510.17 (MH+).
IR (NaCl) 3281, 1674, 1606, 1454, 1346, 1200, 1135 (cm-1). 1H NMR (CD3OD) δ=1.1, 1.5 (m, 12H), 2.30 (m, 2H), 2.9-3.7 (m, 10H), 4.37 (s, 2H), 4.75 (s,1H), 6.60
(m, 1H), 6.84 (m, 1H), 6.94 (m, 1H), 7.18 (m, 1H), 7.25, 7.48 (2d, J=8.0Hz, 4H), 7.55 (m, 1H), 7.65 (m, 1H). C29H36FN3O2S x0.8 C4H2F6O4 x0.5 H2Oについての分析計算値 C: 55.16, H: 5.55, N: 5.99. 実測値 C: 55.12, H: 5.39, N: 6.07.
[実施例3]
【0025】
4−{1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−1−[4−(1H−イミダゾール−2−イルメチル)−ピペラジン−1−イル]−メチル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
実施例2と同じ手順を用いて、2−イミダゾール−カルボキシアルデヒド(0.10g,1.1mmol)と反応させ、続いて三臭化ホウ素(6当量)で処理してトリフルオロアセテートとして実施例3(0.18g,25%)を得た。MS (ES) 494.23 (MH+). IR (NaCl)
3123, 1673, 1592, 1454, 1350, 1201, 1135 (cm-1). 1H NMR (CD3OD) δ=1.1, 1.5 (m,
12H), 2.7-3.8 (m, 10H), 3.95 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 6.70 (m, 1H), 6.94 (m, 1H),
7.02 (m, 1H), 7.32, 7.58 (2d, J = 8.0Hz, 4H), 7.46 (s, 1H). C28H36FN5O2 x 1.2 C4H2F6O4x0.7 H2Oについての分析計算値 C: 50.51, H: 5.14, N: 8.98. 実測値 C: 50.44,
H: 5.18, N: 9.11.
【0026】
【化19】

【0027】
中間体3:4−[ヒドロキシ(3−ニトロフェニル)メチル]−N,N−ジイソプロピルベン
ズアミド
中間体1の方法を用いたが、n−BuLiを添加した後、溶液を、−78℃でトルエン/THF(約1:1,100mL)中の3−ニトロベンズアルデヒド(2.7g,18mmol)の溶液中にカニューレを通して入れた。後処理してクロマトグラフィにより中間体3(2.4g,37%)を得た。1H NMR (CDCl3) δ1.1-1.7 (m, 12H), 3.90 (d, J=3.5 Hz,
1H), 3.4-3.9 (m, 2H), 5.91 (s, J=3.5Hz,1H), 7.27, 7.35 (2d, J= 8Hz; 4H), 7.51 (m, 1H), 7.71 (m, 1H), 8.13 (m, 1H), 8.30 (s, 1H).
【0028】
中間体4:N,N−ジイソプロピル−4−[(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)
メチル]ベンズアミド
中間体2と同じ手順を用いて、中間体3(2.4g,6.7mmol)からBoc−保護された中間体4(2.83g,81%)を得た。TFA処理して中間体4を定量的に得た。MS (ES) 425.23 (MH+).
[実施例4]
【0029】
4−[1−(3−アミノ−フェニル)−1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
実施例1のように、7(0.40g,0.94mmol)を臭化ベンジルと反応させ、続いてEtOH(25mL)及び2N HCl(1.2mL,2.4mmol)中の10%Pd/C(
50mg)を用いて2時間水素化(H2,40psi)した。実施例1と同じ条件を用いて逆相クロマトグラフィにより精製してトリフルオロアセテートとして実施例4(0.20g,30%)を得た。MS (ES) 485.40 (MH+). IR(NaCl) 3414, 1673, 1605, 1455, 1345, 1201, 1134 (cm-1). 1H NMR(CD3OD) δ=1.1, 1.5 (m, 12H), 2.3 (m, 2H), 2.9-3.8 (m, 8H), 4.31 (s, 2H), 4.47 (s, 1H), 7.02 (m, 1H), 7.21-7.52 (m, 12H). C31H40N4O×1.2 C4H2F6O4×0.5H2Oについての分析計算値 C: 56.04, H: 5.70, N: 7.30. 実測値 C:
56.06, H: 5.67, N: 7.41.
[実施例5]
【0030】
4−[1−(3−アミノ−フェニル)−1−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラ
ジン−1−イル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
実施例2のように、中間体4(0.40g,0.94mmol)を3−チオフェン−カルボキシアルデヒドと反応させ、続いてEtOH(25mL)及び2N HCl(1.0mL,2.0mmol)中の10%Pd/C(50mg)を用いて12時間水素化(H2,30psi)した。実施例1と同じ条件を用いて逆相クロマトグラフィにより精製してジトリフルオロアセテートとして実施例5(0.13g,20%)を得た。MS (ES) 491.28 (MH+). IR (NaCl) 3408, 1673, 1605, 1455, 1345, 1201, 1134 (cm-1).1H NMR(CD3OD) δ= 1.1, 1.5 (m, 12H), 2.3 (m, 2H), 2.9-3.8 (m, 8H), 4.35 (s, 2H), 4.44 (s, 1H), 6.98 (m, 1H), 7.16-7.32 (m, 6H), 7.49 (d, J=8Hz, 2H), 7.55 (m,1H), 7.64 (m, 1H). C29H38N4OS×1.3 C4H2F6O4×0.6 H2Oについての分析計算値 C: 51.48, H: 5.28, N: 7.02. 実測値 C: 51.51, H: 5.20, N: 7.01.
[実施例6]
【0031】
4−{1−(3−アミノ−フェニル)−1−[4−(1H−イミダゾール−2−イルメチル)−ピペラジン−1−イル]−メチル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
実施例2と同じ手順を用いて、中間体4を2−イミダゾール−カルボキシアルデヒド(0.10g,1.1mmol)と反応させ、続いて水素化してジトリフルオロ酢酸塩として実施例6(45mg,7%)を得た。MS (ES) 475.30 (MH+). IR (2x TFA, NaCl) 3351, 1674, 1621, 1455, 1349, 1202, 1134 (cm-1). 1H NMR(2xTFA, CD3OD) δ 1.1, 1.5 (m, 12H), 2.9-3.8 (m, 8H), 4.35 (s, 2H), 4.44 (s, 1H), 6.98 (m, 1H), 7.16-7.32 (m, 6H), 7.49 (d, J= 8Hz, 2H), 7.55 (m, 1H), 7.64 (m, 1H). C28H38N6O×1.6 C4H2F6O4×0.8 H2Oについての分析計算値 C: 48.39, H: 5.05, N: 9.84. 実測値 C: 48.43, H:5.06, N: 9.85.
【0032】
【化20】

【0033】
中間体5:N,N−ジイソプロピル−4−[{3−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド
上記中間体4について記載されたように、中間体3からBoc−保護された中間体4を得た。Boc−保護された中間体4(1.21g,2.3mmol)を、AcOH(25mL)中10%Pd/C(150mg)を用いてH2下、30psiで12時間水素化した。真空下で蒸発させ、CH2Cl2/K2CO4(水性)で抽出し、中間体アニリン1.1g(2.3mmol)を得、これをMeCN/CH2Cl2(1:1,10mL)に溶解した。Et3N(0.48mL,3.4mmol)、次いでメタンスルホニル無水物(0.41g,2.4mmol)を0℃で加えた。室温に加温した後、反応物をCH2Cl2/食塩水で抽出して後処理した。シリカ上のクロマトグラフィ(0〜5%MeOH/CH2Cl2)により精製してBoc−保護された中間体5(1.3g,97%)を得た。CH2C12中のTFAで処理して中間体5を定量的に得た。MS (ES) 473.16 (MH+).
[実施例7]
【0034】
N,N−ジイソプロピル−4−[1−(3−メタンスルホニルアミノ−フェニル)−1−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−ベンズアミド
実施例2と同様の還元アミノ化法により、中間体5(0.20g,0.43mmol)からジトリフルオロ酢酸塩として実施例7(90mg,26%)を得た。CH2Cl2/K2CO4(水性)を用いて遊離塩基を抽出し、2当量のHCl(水性)で処理して二塩酸塩を得た。MS (ES) 569.21 (MH+). IR(遊離塩基, NaCl) 1604, 1455, 1340, 1151 (cm-1). 1H NMR
(遊離塩基, CDCl3) δ= 0.9-1.7 (m, 12H), 2.5 (m, 8H), 2.85 (s, 3H), 3.55 (s, 2H),
3.8 (m, 2H), 4.22 (s, 1H), 7.00-7.40 (m, 12H). C30H40N4O3S2×2.6 HClについての分析計算値 C: 54.30, H: 6.47, N: 8.44. 実測値 C: 54.33, H: 6.20, N: 8.32.
[実施例8]
【0035】
4−([4−(3−フリルメチル)−1−ピペラジニル]{3−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド
中間体7と同じ手順を用いて、中間体5(0.21g,0.45mmol)から遊離塩基として実施例8(80mg,32%)を得た。MS (ES) 553.23 (MH+). IR (遊離塩基, NaCl) 1604, 1455, 1340, 1151 (cm-1).1H NMR (遊離塩基, CDCl3) δ=1.0-2.6(m, 20H), 2.91
(s, 3H), 3.40 (s, 2H), 4.22 (s, 1H), 6.39 (s, 1H), 7.06-7.42 (m, 11H). C30H40N4O4S × 2.8 HClについての分析計算値 C: 55.03, H: 6.59, N: 8.56. 実測値 C: 54.93, H: 5.93, N: 8.49.
【0036】
【化21】

[実施例9]
【0037】
4−{(3−アミノフェニル)[4−(3−チエニルメチル)−1−ピペラジニル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド
N,N−ジエチル−4−[(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド(スキーム2の中間体(4)と同様に製造)(0.85g,2.1mmol)を3−チオフェンカルボキシアルデヒド(0.40mL,4.3mmol)及びHOAc(60μl,1.
0mmol)と共にMeOH(5mL)に溶解し、1時間撹拌した。ナトリウムシアノボロヒドリド(135mg,2.1mmol)をひとかたまりで6時間かけて加え、反応物をさらに25℃で12時間撹拌し、その後、真空下で濃縮し、抽出(CH2Cl2/K2CO3(水性))によって後処理した。シリカ上のクロマトグラフィにより精製して3−チエニルメチル誘導体(0.45g,43%)を得た。生成物(0.30g,0.61mmol)を水素化し、逆相クロマトグラフィによりトリス−トリフルオロアセテートとして標題化合物(0.17g,35%)を得た。MS (ES) 463.34 (MH+). IR (NaCl) 3418, 1673, 1600, 1461, 1200, 1135 (cm-1). 1H NMR (CD3OD) δ= 1.17, 1.31 (m, 6H), 2.45 (m, 2H), 3.11 (m, 2H), 3.24-3.66 (m, 10H), 4.47 (s, 2H), 4.62 (s, 1H), 7.21 (m, 1H), 7.31 (m, 1H), 7.39-7.56 (m, 5H), 7.61-7.68 (m, 3H), 7.77 (m, 1H).
[実施例10]
【0038】
4−[(3−アミノフェニル)(4−ベンジル−1−ピペラジニル)メチル]−N,N−ジエ
チルベンズアミド
N,N−ジエチル−4−[(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド(1.7g,4.3mmol)及びトリエチルアミン(1.2mL,8.6mmol)をMeCN(10mL)に溶解した。臭化ベンジル(0.56mL,4.7mmol)を25℃で撹拌しながら加えた。12時間後、溶液を真空下で濃縮した。抽出(CH2C12/K2CO3(水性)
)し、シリカ上のクロマトグラフィにより精製してベンジル化生成物(1.4g,2.9mmol)を得た。EtOH(25mL)及び2N HCl(2.5mL,5mmol)中の10%Pd/C(100mg)を用いて4時間水素化(H2,40psi)し、続いて真空下で濃縮し、逆相クロマトグラフィによりトリス−トリフルオロアセテート(0.9g,26%)として、標題化合物を得た。MS (ES) 457.26 (MH+). IR (NaCl) 3422, 1672, 1603, 1458, 1209, 1133 (cm-1). 1H NMR(CD3OD) δ=1.1, 1.2 (m, 6H), 2.3 (m,2H), 2.9-3.6 (m, 10H), 4.33 (s, 2H), 4.49 (s, 1H), 5.48 (s, 2H), 7.01 (m, 1H), 7.24-7.34 (m, 5H),
7.47 (m, 5H), 7.52 (d, J =7.5 Hz, 2H).
[実施例11]
【0039】
4−((4−ベンジル−1−ピペラジニル){3−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}メチル)−N,N−ジエチルベンズアミド
実施例10の生成物(0.35g,0.76mmol)及びトリエチルアミン(0.12mL,0.84mmol)をMeCN(10mL)に溶解し、メタンスルホン酸無水物(0.14g,0.84mmol)を0℃で加えた。25℃で10分撹拌した後、溶液を真空下で濃縮し、逆相クロマトグラフィによって精製し、ビス−トリフルオロアセテート(0.23g,40%)として標題化合物を得た。MS (ES) 535.21 (MH+). IR (NaCl) 3479, 1673, 1604, 1458, 1337, 1200, 1150(cm-1). 1H NMR(CD3OD) δ= 1.18, 1.31 (m,6H), 2.41 (m, 2H),
2.98 (s, 3H), 3.13 (m, 2H), 3.28-3.65 (m, 8H), 4.44 (s, 2H), 4.57 (s, 1H), 5.57
(d, J=2Hz, 2H), 7.15 (m, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.37 (m, 1H), 7.42 (m, 2H), 7.54-7.60 (m, 6H), 7.63 (m, 2H).
【0040】
医薬組成物
本発明による新規な化合物は、経口的に、筋内に、皮下に、局所的に、鼻腔内に、腹膜内に、胸腔内に、静脈内に、硬膜外に、髄膜下に、脳室内に、そして関節への注射によって投与することができる。
好ましい投与経路は、経口的、静脈内又は筋内である。
用量は、投与経路、疾患の重さ、患者の年齢及び体重並びに個々の処方計画及び特定の患者にとって最適な用量レベルを決定する時に主治医によって通常考慮される他の因子に左右される。
【0041】
本発明の化合物から医薬組成物を製造する際、不活性の医薬上許容しうる担体は、固体
又は液体であることができる。固形製剤には、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が含まれる。
また、固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤又は錠剤崩壊剤として作用することができる1つ以上の物質であることができ、それはまたカプセル化物質であってもよい。
散剤では、担体は微粉砕された活性成分との混合物中にある微粉砕された固形物である。錠剤では、活性成分を、必要な結合性を有する担体と適切な比率で混合して所望の形状及びサイズに成形する。
坐剤組成物を製造するには、最初に、低融点ロウ、例えば脂肪酸グリセリド及びカカオ脂の混合物を溶融し、活性成分を、例えば撹拌によってその中に分散させる。次に、溶融した均質な混合物を、都合のよいサイズの型に注ぎ、冷やして凝固させる。
【0042】
適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、砂糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカンタ、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ロウ、カカオ脂、等である。
【0043】
塩には、医薬上許容しうる塩が含まれるが、これに限定されるものではない。本発明の範囲内の医薬上許容しうる塩の例には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、酒石酸水素塩、臭化物、酢酸カルシウム、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、グルカプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプチル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオジド、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛が含まれる。本発明の範囲内の医薬上許容しえない塩の例には、ヨウ化水素酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩が含まれる。医薬上許容しえない塩は、それらの有益な物理的及び/又は化学的性質、例えば結晶化度のため有用である可能性がある。
【0044】
好ましい医薬上許容しうる塩は、塩酸塩、硫酸塩及び酒石酸水素塩である。塩酸塩及び硫酸塩は、特に好ましい。
組成物なる用語は、カプセル供給担体としてカプセル化物質を用いた活性成分の製剤を含むものとし、その中で活性成分(他の担体と共に又はなしで)は担体によって囲まれ、担体と会合している。同様に、カシェ剤が含まれる。
錠剤、散剤、カシェ剤及びカプセル剤は、経口投与に適切な固体剤形として使用することができる。
【0045】
組成物の液体には、液剤、懸濁剤及び乳剤が含まれる。活性化合物の滅菌水又は水−プロピレングリコール溶液は、非経口投与に適切な液体製剤の例として記載することができる。また、液体組成物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の液剤として処方することができる。
経口投与の水性液剤は、活性成分を水中に溶解し、 所望の適切な着色剤、着香剤、安
定剤及び増粘剤を加えることによって製造することができる。経口用の使用について水性懸濁剤は、微粉砕された活性成分を、水中で、粘性物質、例えば天然の合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び医薬製剤技術で知られている他の懸濁化剤と共に分散させることによって製造することができる。
【0046】
好ましくは、医薬組成物は、単位剤形である。このような形態では、組成物は適当な量の活性成分を含む単位用量に分割される。単位剤形は、パック製剤、離散量の製剤を含むパッケージ、例えばパケット単位にされた錠剤、カプセル剤及びバイアル又はアンプル中の散剤であることができる。また、単位剤形は、カプセル、カシェ剤又は錠剤それ自体であることができるし、又は適当な数のこれらのいずれかのパック形態であることができる。
【0047】
生物学的評価
生体外モデル
細胞培養
A.クローニングされたヒトμ、δ及びκ受容体及びネオマイシン耐性を発現するヒト293S細胞を、37℃及び5%CO2で、カルシウムを含まないDMEM10%FBS、5%BCS、0.1%Pluronic F−68及び600μg/mlのジェネチシンを含む振盪フラスコ中の懸濁液中で成長させた。
B.マウス及びラット脳を計量し、氷冷PBS(2.5mM EDTAを含む、pH7.
4)中ですすいだ。ポリトロンを用いて、氷冷溶解緩衝液(50mMトリス,pH7.0
,2.5mM EDTA、使用直前に、フェニルメチルスルホニルフルオリドを、DMSO:エタノール中の0.5MmM〜0.5Mのストックに加えた)中で、脳を15秒間(マウス)又は30秒間(ラット)均一化した。
【0048】
膜調製
細胞をペレット化し、溶解緩衝液(50mMトリス,pH7.0,2.5mM EDTA,使用直前にPMSFを、エタノール中0.1mM〜0.1Mのストックに加えた)中で再懸濁し、氷上で15分間インキューベートし、次いでポリトロンで30秒間均一化した。懸濁液を4℃で10分間、1000g(最大)で遠心した。上澄液を氷上で保存し、ペレットを再懸濁し、前と同様に遠心した。両遠心からの上澄液を合わせ、46,000g(
最大)で30分間遠心した。ペレットを冷トリス緩衝液(50mMトリス/Cl,pH7.0)中で再懸濁し、再び遠心した。最終的なペレットを、膜緩衝液(50mMトリス,0.32Mスクロース,pH7.0)中で再懸濁した。ポリプロピレン管中のアリコート(1ml)をドライアイス/エタノール中で冷凍し、使用するまで−70℃で保存した。硫酸ドデシルナトリウムを用いて改良されたLowryアッセイによってタンパク質濃度を測定し
た。
【0049】
結合アッセイ
膜を37℃で解凍し、氷冷し、25ゲージニードルに3回通過させ、そして結合緩衝液(50mMのトリス,3mMのMgCl2,1mg/mlのBSA(Sigma A-7888),pH7.4、これを0.22mフィルタで濾過した後、4℃で保存し、これに新しく5μg/mlのアプロチニン,10μMのベスタチン、10μMのジプロチンを加えた、DTTは含まない)中に希釈した。適当な放射性リガンド100μl及び種々の濃度の試験化合物100μlを含む氷冷した12×75mmのポリプロピレン管に、100μlのアリコートを加えた。全結合(TB)及び非特異的(NS)結合を、それぞれ10μMナロキソンの非存在下及び存在下で測定した。管をかき混ぜ、25℃で60〜75分間インキューベートし、この後、内容物を急速に真空濾過し、少なくとも2時間、0.1%のポリエチレンイミン中に前もって浸したGF/Bフィルタ(Whatman)を通して、約12ml/管の氷冷洗浄緩衝液(50mMのトリス,pH7.0,3mMのMgCl2)により洗浄した。6〜7mlのシンチレーション液を含むミニバイアル中に少なくとも12時間フィルタを浸した後にベータカウンターを用いてフィルタに保持された放射活性(dpm)を測定した。アッセイを96穴深型プレートで行う場合、96箇所のPEI浸漬ユニフィルタで濾過し、これを3×1mlの洗浄緩衝液で洗浄し、オーブン中55℃で2時間乾燥した。フィ
ルタープレートは、50μlのMS−20シンチレーション液/穴を加えた後にTopCount
(Packard)で計数した。
【0050】
機能性アッセイ
化合物の作動薬活性は、化合物受容体複合体が、GTPと、受容体が結合するG−タンパク質との結合を活性化する程度を測定することによって評価した。GTP結合アッセイでは、GTP[γ]35Sを、試験化合物及びクローニングされたヒトオピオイド受容体を発現するHEK−293S細胞からの膜、又は均一化されたラット及びマウス脳からの膜と結合させる。作動薬は、これらの膜中のGTP[γ]35Sの結合を刺激する。化合物のEC50及びEmax値は、用量応答曲線から決定される。作動薬活性がδ受容体を介して仲介されることを確認するため、δ拮抗薬ナルトリンドールによる用量応答曲線の右シフトを実施した。
【0051】
ラット脳GTP法
ラット脳膜を37℃で解凍し、25ゲージブラントエンドニードルに3回通過させ、GTPγS結合液(50mM Hepes,20mMのNaOH,100mMのNaCl,1mMのEDTA,5mMのMgCl2,pH7.4、新たな1mMのDTT,0.1%のBSAを加えた)で希釈した。最終的に120μMのGDPを膜希釈物に加えた。適当な量の膜タンパク質(20μg/穴)及び100000〜130000dpmのGTPγ35S/穴(0.11〜0.14nM)を用いて300μl中で実施した10点用量応答曲線から化合物のEC50及びEmaxを評価した。刺激された結合の基底及び最大を3μMのSNC−8
0の非存在下及び存在下で測定した。
【0052】
データ分析
特異的結合(SB)をTB−NSとして算出し、そして種々の試験化合物の存在下でのSBを、対照SBのパーセンテージとして示した。特異的に結合した放射性リガンドの置換におけるリガンドのIC50及びヒル係数(nH)の値は、対数プロット又は曲線適合プログラム、例えばLigand、GraphPad Prism、SigmaPlotもしくはReceptorFitから算出した。Kiの数値は、Cheng-Prussoff式から算出した。IC50、Ki及びnHの平均±S.E.M.値を、少なくとも3つの置換曲線で試験したリガンドについて報告した。本発明の化合物の生物活性を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
受容体飽和実験
予想されるKδ値の0.2〜5倍の範囲の濃度(必要な放射性リガンドの量が可能ならば、10倍まで)で適当な放射性リガンドを用いて細胞膜における結合アッセイを実施することによって放射性リガンドのKδ値を測定した。特異的な放射性リガンド結合は、pmole/mgの膜タンパク質として示した。個々の実験からのKδ及びBmaxの値は、ワンサイトモデル(one−site model)に従って特異結合(B)対個体からのnM遊離(F)放射性リガンドの非線形適合から得た。
【0055】
Von Frey試験を用いた機械性異痛の測定
試験は、Chaplan等(1994)に記載された方法を用いて08:00〜16:00時の間で実施した。脚へのアクセス可能なワイヤーメッシュボトム上のプレキシガラスケージ中にラットを入れ、10〜15分間、順化させた。試験部分は、左後脚の足底中央であり、感受性の低い足の肉趾を避けた。硬さが対数的に徐々に増加する一連の8種のVon Frey毛(0.41、0.69、1.20、2.04、3.63、5.50、8.51及び15.14グラム;Stoelting、III、USA)を脚に接触させた。von Frey毛は、脚に対してわずかな反りが生じるのに十分な力で、足底表面に対して垂直にメッシュ床の下側から適用し、約6〜8秒間保持した。脚を急激に引っ込める場合、正の反応と記載した。また、毛を除去して直ちに畏縮するのも正の反応とみなした。歩行はあいまいな反応とみなし、このような場合、刺激を繰り返した。
【0056】
試験プロトコール
FCA処理した群について、手術後1日に動物を試験した。50%の引っ込め閾値は、Dixon (1980)のアップ−ダウン法(up−down method)を用いて測定した。試験は、一連の中程にあたる2.04gの毛で開始した。上り又は下りにかかわらず、刺激は常に連続的なやり方で与えた。最初に選択された毛に対して脚の引っ込め反応がなければ、より強い刺激を与え;脚を引っ込めた場合には、次により弱い刺激を選んだ。この方法による最適閾値の算出には50%閾値付近で6つの反応が必要であり、これらの6つの反応の計数は、反応の最初の変化が生じた時、例えば閾値が最初に超えた時に開始した。閾値が刺激の範囲外になった場合は、それぞれ15.14(通常の感度)又は0.41(最大異痛)の値にした。正及び負の反応の得られたパターンを、表記法を用いて表にした。X=引っ込めなかった;O=引っ込めた、そして50%の引っ込め閾値は、式:
50%g閾値=10(Xf+kδ)/10,000
を用いて内挿した。式中、Xf=使用する最後のvon Frey毛の値(ログ単位);k=正/負の反応パターンについての表の数値(Chaplan等(1994));そしてδ=刺激間の平均の
差分(ログ単位)である。ここでδ=0.224。
【0057】
Von Frey閾値は、Chaplan等1994に従って最大可能な効果(%MPE)のパーセントに変換した。以下の式は、%MPEを計算するために用いた:
【数1】

【0058】
試験物質の投与
von Frey試験前に、試験物質をラットに注射(皮下に、腹膜内に、静脈内に又は経口的に)し、試験化合物の投与間の時間及びvon Frey試験は、試験化合物の性質に応じて変更した。
【0059】
身もだえ(writhing)試験
酢酸は、マウスの腹膜内に投与した時に腹筋を収縮させる。次に典型的なパターンでは、これはマウスの身体に広がる。鎮痛薬を投与した時には、この記載した運動はあまり頻繁に観察されず、その薬物は潜在的に良好な候補物質として選ばれる。
以下の要素:動物が身動きしない;下背部をわずかに下げる;両脚の足底状況が観察可能である、があるときにのみ完全な及び典型的な身もだえ反射とみなした。本アッセイでは、本発明の化合物は、1〜100μmol/kgの経口投薬後、身もだえ反応の有意な阻
害を示した。
【0060】
(i)液剤調製
酢酸(AcOH):0.6%AcOHの最終濃度で20mlの最終体積にするため12
0μlの酢酸を19.88mlの蒸留水に加えた。次に、液剤を混合し(かきまぜ)、注射の準備をした。
化合物(薬物):各化合物を製造し、標準方法に従って最も適切なビヒクル中に溶解した。
【0061】
(ii) 液剤投与
化合物(薬物)を、試験前20分、30分又は40分に(化合物の種類及びその特性による)、10ml/kg(平均マウス体重を考慮して)で経口的に、腹膜内に(i.p.)皮下に(s.c.)又は静脈内に(i.v.)投与した。化合物を中枢に供給する時は、心室内に(i.c.v.)又は髄膜下に(i.t.)、5μlの体積を投与した。
試験直前に10ml/kg(平均マウス体重を考慮して)で、AcOHを2箇所に腹膜内(i.p.)投与した。
【0062】
(iii)試験
動物(マウス)を20分間観察し、事象(身もだえ反射)数を記し、実験終了後にまとめた。接触床を備えた個々の「シューボックス」ケージ中にマウスを保持した。通常、合計4匹のマウスを同時に観察した(一つの対照及び3つの用量の薬物)。
不安症及び不安症に類似の適応症について、ラットにおけるgeller−seifter葛藤試験
で有効性を確認した。
機能性胃腸障害の適応症について、Coutinho SV 等, in American Journal of Physiology-Gastrointestinal & Liver Physiology. 282(2):G307-16, 2002年2月に記載されたアッセイではラットにおける有効性を確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、R1は、
(i)フェニル;
【化2】

(ii)ピリジニル
【化3】

(iii)チエニル
【化4】

(iv)フラニル
【化5】

(v)イミダゾリル
【化6】

(vi)トリアゾリル
【化7】

(vii)ピロリル
【化8】

(viii)チアゾリル
【化9】

(ix)ピリジル−N−オキシド
【化10】

のいずれか一つから選ばれ、その際、R1複素芳香族環は、それぞれ場合により独立して
直鎖及び分枝C1−C6アルキル、ハロゲン化C1−C6アルキル、NO2、CF3、C1−C6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードから選ばれる1、2又は3個の置換基によってさらに置換されていてもよく;
2は、独立してエチル及びイソプロピルから選ばれ;
3は、独立して水素及びフルオロから選ばれ;
4は、独立して−OH、−NH2およびNHSO25から選ばれ;そして
5は、独立して水素、−CF3及びC1−C6アルキルから選ばれるが、但し、R2がエ
チルであり、R3が水素である時は、R4は、−OHであることができない)の化合物若しくはその塩又は個々の鏡像異性体及びその塩。
【請求項2】
1が、フェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素又はフルオロであり;R4は、−NH2若しく
は−NHSO25であり;そしてR5は、C1−C6アルキルである請求項1記載の化合物

【請求項3】
1が、フェニル、ピロリル、フラニル、チエニル又はイミダゾリルであり;R2は、エチル又はイソプロピルであり;R3は、水素であり;R4は、−NHSO25であり;そしてR5は、C1−C6アルキルである請求項1記載の化合物。
【請求項4】
複素芳香族環が、CF3、メチル、ヨード、ブロモ、フルオロ又はクロロによって置換
される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
複素芳香族環が、メチルによって置換される請求項1記載の化合物。
【請求項6】
4−[1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
4−[1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−1−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズア
ミド;
4−{1−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−1−{4−(1H−イミダゾール−2−イルメチル)−ピペラジン−1−イル]−メチル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
4−[1−(3−アミノ−フェニル)−1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
4−[1−(3−アミノ−フェニル)−1−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
4−{1−(3−アミノ−フェニル)−1−[4−(1H−イミダゾール−2−イルメチル)−ピペラジン−1−イル]−メチル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
N,N−ジイソプロピル−4−[1−(3−メタンスルホニルアミノ−フェニル)−1
−(4−チオフェン−3−イルメチル−ピペラジン−1−イル)−メチル]−ベンズアミド;
4−([4−(3−フリルメチル)−1−ピペラジニル]{3−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}−N,N−ジイソプロピル−ベンズアミド;
4−{(3−アミノフェニル)[4−(3−チエニルメチル)−1−ピペラジニル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド;
4−[(3−アミノフェニル)(4−ベンジル−1−ピペラジニル)メチル]−N,N−ジエチルベンズアミド、及び
4−((4−ベンジル−1−ピペラジニル){3−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}メチル)−N,N−ジエチルベンズアミド
のいずれか一つから選ばれる請求項1記載の化合物。
【請求項7】
塩酸塩、二塩酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、ジトリフルオロ酢酸塩又はクエン酸塩の形態の請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
一般式II
【化11】

(式中、R2及びR3は請求項1に定義された通りであり、そしてR4はOMeである)の
化合物を標準条件でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて標準条件下でBoc保護基を除去して式III
【化12】

の化合物を得、その後、これを還元条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル化
し、続いてジクロロメタン中のBBr3を用いてメチルエーテルを開裂してR4が−OHである式Iの化合物を得ることからなる、R4が−OHである式Iの化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式IV
【化13】

(式中、R2及びR3は、請求項1において定義された通りであり、そしてR4は、NO2である)の化合物を、標準条件でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて標準条件下でBoc保護基を除去して式V
【化14】

の化合物を得、その後、これを還元的条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル
化し、続いて水素及び木炭上のパラジウムを用いてニトロ基を還元してR4が−NH2である式Iの化合物を得ることからなる、R4が−NH2である式Iの化合物の製造方法。
【請求項10】
一般式VI
【化15】

(式中、R2及びR3は、請求項1に定義された通りであり、そしてR4はNO2である)の化合物を、標準条件でトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中のBoc−ピペラジンと反応させ、続いて触媒として木炭上のパラジウムを用いる水素化分解によりニトロ基を還元し、トリエチルアミンの存在下でジクロロメタン中のメタンスルホニル無水物を用いてメタンスルホニル化し、その後、標準条件下でBoc保護基を除去して式VII
【化16】

の化合物を得、その後、これを還元的条件下で式R1−CHOの化合物を用いてアルキル
化し、続いて水素及び木炭上のパラジウムを用いてニトロ基を還元してR4が−NHSO25である式Iの化合物を得ることからなる、R4が−NHSO25である式Iの化合物の製造方法。
【請求項11】
治療に使用するための請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
疼痛、不安症又は機能性胃腸障害の治療に使用する医薬を製造するための請求項1記載の式Iによる化合物の使用。
【請求項13】
活性成分として請求項1記載の式Iの化合物を、薬理学上及び医薬上許容しうる担体と共に含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1記載の式Iの化合物の有効量を疼痛処置の必要な患者に投与する疼痛の治療方法。
【請求項15】
請求項1記載の式Iの化合物の有効量を機能性胃腸障害の患者に投与する機能性胃腸障害の治療方法。

【公開番号】特開2010−132670(P2010−132670A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2450(P2010−2450)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2002−591467(P2002−591467)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】