説明

ALC片の製造方法、ALC片、ALC壁面の製造方法、ALC壁面

【課題】優れた意匠のALC片又はALC壁面を効率よく製造すること。
【解決手段】ALCパネルを切断してALC片を製造するALC片の製造方法であって、ALCパネルの切断予定部に対し該ALCパネル表面に意匠部及びシーリング部からなる切削溝を形成する切削工程と、前記切削溝が形成されたALC片の少なくとも表面及び意匠部を塗装する塗装工程と、前記シーリング部の底部中心を該シーリング部に沿って切断具で切断する切断工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく製造作業を行うことができる、ALC片の製造方法、及び当該製造方法によって製造されたALC(軽量気泡コンクリート)片、及び当該ALC片により形成されるALC壁面の製造方法、及び当該製造方法によって製造されたALC壁面に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定尺のALCパネルを切断してALC片を形成する方法がある。図6は従来のALC片の製造手順を説明する図である。図6において(a)が切断工程、(b)が切削工程、(c)が塗装工程の各状態を示している。また、各図の上から、平面図、側面図、該側面図の一部の拡大断面図を示している。
【0003】
従来のALC片の製造方法を図を用いて説明する。まず図6(a)に示すように、定尺のALCパネル101を所望の大きさに切断する(切断工程)。分割されたALCパネルの一部をALC片110という。図6(a)の拡大断面図のように、分割された後のALC片110は、表面加飾となるように加工された意匠部111と、切断面となった切断小口120とを有する。尚、図6(a)中で、右側のALC片110を用いたとき、左側のALC片110は廃棄したり他の部位に用いたりする。
【0004】
図6(b)に示すように、次に意匠部111の底部を切削する(切削工程)。切削した部分はシーリング部112となる。シーリング部112は、壁面を形成する際にALC片を隣接配置したときに隣接するALC片のシーリング部112と互いに当接することで、シーリング材を埋め込むシーリングポケットとなる。また、意匠部111及びシーリング部112からなる溝を切削溝113と呼ぶ。
【0005】
図6(c)に示すように、最後にALC片110の表面側から防水塗装を行う(塗装工程)。これによりALC片110表面には下塗り塗装層114が形成される。
【0006】
以上のように、従来のALC片の製造においては、切断工程、切削工程、塗装工程の順で行われていた。このように板状の生成素材から、実際に使用する大きさの部材に切り出して製造する方法としては電気回路の分野でも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−134646
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、定尺ALCパネルを各ALC片に分割した後に切断し塗装すると、ALC片に塗装することになるため、各工程の作業所への運搬作業に手間がかかるという問題があった。また、塗装後のALC片は切断小口120をも塗装されてしまうが、これが塗料の無駄となる。また切断小口120は非塗装の方が意匠的に好ましいが、切断後に塗装を行うと、切断小口120が塗装されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、意匠性に優れるALC片又はALC壁面を効率よく製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の手段は、ALCパネルを切断してALC片を製造するALC片の製造方法であって、ALCパネルの切断予定部に対し該ALCパネル表面に意匠部及びシーリング部からなる切削溝を形成する切削工程と、前記切削溝が形成されたALC片の少なくとも表面及び意匠部を塗装する塗装工程と、前記シーリング部の底部中心を該シーリング部に沿って切断具で切断する切断工程と、を有することを特徴とするALC片の製造方法である。
【0011】
第2の手段は、前記切削工程において、前記シーリング部は、表面から裏面にいくに従って幅が変わらない形状又は幅が狭まる形状に切削することを特徴とする第1の手段に記載のALC片の製造方法である。
【0012】
第3の手段は、前記切削工程において、前記シーリング部の底部の幅は、前記切断工程で用いられる切断具の幅よりも大きいことを特徴とする第1又は第2の手段に記載のALC片の製造方法である。
【0013】
第4の手段は、第1乃至第3の手段のいずれかに記載のALC片の製造方法によって製造されたALC片であって、断面形状が前記ALC片の表面に対して傾斜して形成される意匠部と、表面から裏面にいくに従って幅が変わらない形状又は幅が狭まる形状を有するシーリング部と、該シーリング部から前記ALC片の裏面に達する切断面が前記ALC片表面と垂直に形成される切断小口とが連続して構成され、少なくとも前記表面と前記意匠部が塗装されていることを特徴とするALC片である。
【0014】
第5の手段は、ALC片を複数隣接配置して形成されるALC壁面の製造方法であって、第4の手段に記載のALC片を互いに当接させて敷き並べる敷設工程と、前記シーリング部にシーリング材を充填する充填工程と、前記塗装の上に上塗り塗装を行う上塗り塗装工程と、を有することを特徴とするALC壁面の製造方法である。
【0015】
第6の手段は、窓枠と屋根面との間に形成されるALC壁面であって、前記窓枠及び前記屋根面に当接させる第4の手段に記載の複数のALC片を有し、前記窓枠と屋根面との間に配置される前記ALC片に形成される前記切削溝が、鉛直方向に直線状になるように並べて配設されることを特徴とするALC壁面である。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段によれば、ALCパネルの表面における切断予定部に切削溝を形成する。このため、従来のように切断されたALC片ごとに切削、塗装する必要がなくなり、効率よくALC片を製造することができる。
【0017】
また、切断工程の前に塗装工程があることで、塗装を行うときは、1つのALCパネルを塗装行えば足り、複数のALC片に対して塗装を行う必要がない。このように1つの部材を1つの手順で塗装を行うことができる、効率的に製造することができる。
【0018】
また、塗装工程においては、切断前であるので切断小口が存在しない。この状態で塗装を行うために、切断工程の後の切断小口は非塗装のままである。このため、意匠的に優れたALC片を製造することができる。
【0019】
第2の手段によれば、シーリング部にシーリング材が入りやすくまた、意匠的にも優れたALC片を製造することができる。
【0020】
第3の手段によれば、切断工程において、切断具にて切削溝を切断した時に、シーリング部の底部のみを切断し、意匠部やシーリング部が削れてしまうことはない。このため、ALC片を意匠的に優れたものとすることができる。
【0021】
第4の手段によれば、塗装が必要な表面、意匠部は確実に塗装され、また切断小口は塗装後に切断したことにより塗装されていないため、無駄がなくALC片を効率よく製造することができる。また、意匠的に優れたALC片を製造することができる。
【0022】
第5の手段によれば、シーリング材でシーリング部を覆い、且つ上塗り塗装をすることで、より意匠的に優れた壁面とすることができる。
【0023】
第6の手段によれば、切削溝を鉛直方向に直線状になるように並べて配設されるため、意匠上優れたALC壁面とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図を用いて、本発明の実施形態を具体的に説明する。まず、ALC片の製造方法の説明をしたのちに、ALC片の構造を説明する。そしてその次に、このALC片を用いた壁面について説明する。
【0025】
〔ALC片の製造方法〕
ALC片の製造方法を説明する。図1はALC片の製造手順を示す図である。図1において、(a)が切削工程を説明する図、(b)が塗装工程を説明する図、(c)が切断工程を説明する図、(d)が完成した状態を説明する図である。尚、各図は、上からそれぞれ、平面図、側面図、該側面図の一部の拡大断面図を示している。
【0026】
まず、図1(a)に示すように、定尺のALCパネル1上において、後ほど切断する予定である部分(切断予定部A)に切削溝10を形成する(切削工程)。切削溝10は、ALC片の外表面の意匠となる意匠部11とシーリングポケットの一部であるシーリング部12とで構成される。
【0027】
尚、本実施形態においては、切断予定部Aを2つとしたが、定尺のパネル1の範囲で3つ以上の切削溝を形成してもよい。複数の切削溝を形成し、1つのALCパネル1から複数のALC片2をとると、複数の切削工程が工場内で同じ場所で可能であるので、効率よくALC片を製造することができる。また、同じ場所で切削を一度に行うことにより、ALCの移動時に発生する位置決め誤差がなくなるため、製品の寸法制度が上がる。この高効率・高精度の効果については、以下に示す塗装工程及び切断工程についても同じである。
【0028】
次に、図1(b)に示すように、ALCパネル1の表面全体に防水を目的にした下塗り塗装を行う(塗装工程)。これにより、ALCパネル1の表面側に塗装がなされる。この塗装工程では、少なくともALCパネル1の表面3及び意匠部11を覆うように下塗り塗装層13がなされるが、必ずしもシーリング部12を完全に覆う必要はない。シーリング部12は、ALC壁面を構成する際にシーリング材により覆われるためである。
【0029】
次に、図1(c)に示すように、切削溝10のシーリング部12の底部中心に沿って、丸鋸等の切断具によってALCパネル1を各ALC片2に分割する(切断工程)。ここで、シーリング部12の底部12aの幅は、切断具の幅Wよりも大きい。
【0030】
図1(d)に示すように、分割されたALC片2の切断小口14は非塗装である。このため、意匠性に優れたALC片とすることができる。また、切断工程の前に塗装工程を行うため、切断小口14に塗装を行うことはなく、塗料の消費量を減らすことができる。
【0031】
〔ALC片の詳細構成〕
以上の製造方法によって製造されたALC片のシーリング部の構造を説明する。図2は分割後のALC片の断面図である。図1(c)の拡大断面図を更に拡大したものである。図2において、(a)がシーリング部側面の幅が変わらない例を示す図、(b)がシーリング部側面の幅が拡大する例を示す図である。
【0032】
図2に示すように、ALC片2は、断面形状がALC片2の表面に対して傾斜して形成される意匠部11と、表面から裏面に向かって幅が変わらない形状又は幅が狭まる形状を有するシーリング部12と、シーリング部12からALC片2の裏面に達する切断面がALC片2の表面3と垂直に形成される切断小口14とが連続して構成される。
【0033】
また、ALC片2のシーリング部12は、表面から裏面に向かって幅が変わらない形状(図2(a)参照、幅Hが一定)又は表面から裏面に向かって幅が狭まる形状(図2(b)参照、幅H1>幅H2)となるように切削されている。このように構成されているとシーリング材がシーリング部12に入り込みやすく、ALC壁面を構成する際に隣接配置されるALC片2どうしの間を確実にシールすることができる。また、意匠性の面でも優れている。
【0034】
また、シーリング部12の底部12aの幅(図2(a)における幅H又は図2(b)における幅H2)は、切断具の幅Wよりも大きい。このため、ALCパネル1の表面3や意匠部11やシーリング部12を傷つけることがない。従って、確実に意匠性に優れたALC片とすることができる。
【0035】
図3は本実施形態のALC片の変形例を示す図である。前述の実施形態においては、意匠部11に沿ってシーリング部12が切削されて切削溝10が形成されていたが、これに限るものではない。例えば、図3に示すように、ALC片2の意匠部をまたいで斜めに切削溝10を形成してもよい。
【0036】
〔ALC壁面〕
前述のALC片2を用いてALC壁面を説明する。図4はALC壁面の製造方法の説明図である。図4において、(a)が敷設工程及び充填工程を説明する図、(b)が上塗り塗装工程を説明する図である。
【0037】
まずALC壁面を構成する際には、図4(a)に示すように、ALC片2を互いに当接させて敷き並べる(敷設工程)。そして、切削溝10のシーリング部12にシーリング材15を充填する(充填工程)。これにより、ALC片2とALC片2との間のシーリング部12が埋まる。
【0038】
次に図4(b)に示すように、ALC表面3の塗装層13やシーリング材15を覆うように上塗り塗装を行い上塗り塗装層16を形成する(上塗り塗装工程)。このようにしてALC壁面を構成すると、上塗り塗装層16がシーリング材15を覆うため、化粧目地としての意匠部11と、切削溝10の意匠部11とを見分けにくくすることができる。このため、意匠性が向上する。
【0039】
以上のような製造方法で製造することで、ALC片2からALC壁面を構成する。この例を図5に示す。図5はALC壁面の一例を示す図である。
【0040】
図5に示すALC壁面は、窓枠Bと屋根面を有する箇所に配設されるものである。配設されるALC片2には、台形のALC片2A及び2B、長方形のALC片2C、平行四辺形のALC片2D及び2E等、複数の種類がある。ALC片2A及び2Eは所定の単位幅を有し、ALC片2B、2C、2Dは所定の単位幅の2倍の幅を有する。このように、所定の単位幅の整数倍の幅を持つALC片2を組み合わせると、サイズの種類が限定されるため、容易にALC壁面を構成することができる。
【0041】
また、図5に示すように、窓枠Bを挟んだALC片2CとALC片2Dの幅Lを同一にすることで、シーリング材を有する切削溝10の位置が鉛直方向に直線状に並べて配設されることになる。このようにすると、化粧目地としての意匠部11は、意匠部11どうし鉛直方向に直線状に並び、シーリング材を施した切削溝10は、切削溝10どうし鉛直方向に直線状に並び、目地の並びに一貫性を持たせることができる。このため、意匠性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明はALC片を製造する又は配置する際に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ALC片の製造手順を示す図。
【図2】分割後のALC片の断面図。
【図3】本実施形態のALC片の変形例を示す図。
【図4】ALC壁面の製造方法の説明図。
【図5】ALC壁面の一例を示す図。
【図6】従来のALC片の製造手順を説明する図。
【符号の説明】
【0044】
A…切断予定部、B…窓枠、1…ALCパネル、2…ALC片、3…ALC表面、10…切削溝、11…意匠部、12…シーリング部、12a…底部、13…塗装層、14…切断小口、15…シーリング材、16…上塗り塗装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALCパネルを切断してALC片を製造するALC片の製造方法であって、
ALCパネルの切断予定部に対し該ALCパネルの表面に意匠部及びシーリング部からなる切削溝を形成する切削工程と、
前記切削溝が形成されたALC片の少なくとも表面及び意匠部を塗装する塗装工程と、
前記シーリング部の底部中心を該シーリング部に沿って切断具で切断する切断工程と、を有することを特徴とするALC片の製造方法。
【請求項2】
前記切削工程において、前記シーリング部は、表面から裏面にいくに従って幅が変わらない形状又は幅が狭まる形状に切削することを特徴とする請求項1に記載のALC片の製造方法。
【請求項3】
前記切削工程において、前記シーリング部の底部の幅は、前記切断工程で用いられる切断具の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のALC片の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のALC片の製造方法によって製造されたALC片であって、
断面形状が前記ALC片の表面に対して傾斜して形成される意匠部と、表面から裏面にいくに従って幅が変わらない形状又は幅が狭まる形状を有するシーリング部と、該シーリング部から前記ALC片の裏面に達する切断面が前記ALC片の表面と垂直に形成される切断小口とが連続して構成され、
少なくとも前記表面と前記意匠部が塗装されていることを特徴とするALC片。
【請求項5】
複数のALC片を隣接配置して形成されるALC壁面の製造方法であって、
請求項4に記載のALC片を互いに当接させて敷き並べる敷設工程と、
前記シーリング部にシーリング材を充填する充填工程と、
前記塗装の上に上塗り塗装を行う上塗り塗装工程と、
を有することを特徴とするALC壁面の製造方法。
【請求項6】
窓枠と屋根面との間に形成されるALC壁面であって、
前記窓枠及び前記屋根面に当接させる請求項4に記載の複数のALC片を有し、
前記窓枠と屋根面との間に配置される前記ALC片に形成される前記切削溝が、鉛直方向に直線状になるように並べて配設されることを特徴とするALC壁面。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241384(P2009−241384A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90145(P2008−90145)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】