説明

BMP−2エストロゲン応答エレメントおよびその使用方法

本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸、それを含むベクター、ならびに該ベクターを含む細胞に関する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンアゴニスト、アンタゴニストおよび治療薬の同定方法を提供する。さらにもう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン欠乏または外部エストロゲンもしくはそのアゴニストに対する応答の欠如に関連した症状の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
成人の一生を通して、骨形成および吸収の相互作用サイクルにより骨はリモデリングを受け続けている(骨のターンオーバー)。典型的には、骨吸収は迅速であり、骨リモデリング部位の単核食細胞前駆体により生成される破骨細胞(骨吸収細胞)により媒介される。このプロセスの後に、骨芽細胞(骨形成細胞)が出現し、それがゆっくりと骨を形成して失われた骨に取って代わる。リモデリングプロセスに関与する種々の細胞タイプの活性は、相互作用する全身性因子(例えば、ホルモン、リンホカイン、成長因子、ビタミン)および局所性因子(例えば、サイトカイン、接着分子、リンホカインおよび成長因子)により制御されている。このプロセスの完了は、通常、バランスのとれた骨の置換および更新を導くという事実は、骨のリモデリングに影響する分子シグナルおよびイベントが密接に制御されていることを示す。
【0002】
骨リモデリングサイクルのバランス不良を引き起こす多くの骨の成長障害が知られている。これらのうち主なものは、骨粗鬆症、オステオプラシア(骨軟化症)、慢性腎不全および上皮小体亢進のごとき代謝性骨疾患であり、それらは異常または過剰な骨量の損失(オステオペニア)を引き起こす。パジェット病のごとき他の骨の疾患もまた、局所的に過剰な骨の損失を引き起こす。
【0003】
骨粗鬆症は、骨形成、骨吸収、あるいは両方のバランス不良から生じる骨量の損失により引き起こされる骨格の構造的な悪化であり、結果として、吸収が形成を上回り、そのことにより罹病した骨の重みを支える能力が低下するものである。健康な成人において、骨の形成および吸収の割合は厳密に制御されており、その結果、骨格の骨の更新が維持されている。しかしながら、骨粗鬆症の個体においては、これらの骨リモデリングサイクルのバランス不良が生じ、骨量の損失および骨格の連続状態における微細構造の欠失が起こる。骨粗鬆症は、米国の50歳以上の約50%の女性および約10%の男性において見られる。骨粗鬆症の個体において、骨量損失の増大はもろい骨を生じさせ、結果として、骨折の危険性が高まる。パジェット病および転移性の骨の癌のごとき他の骨吸収に関する疾患は同様の徴候を示す。
【0004】
骨形態形成蛋白(BMPs)は形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーであり、元々、無機質脱落した骨の骨誘導性抽出物中における存在により確認された(Wozney et al., 1988; Rosen et al., 1996)。BMP作用の主な標的が初期の骨芽前駆細胞または間葉幹細胞であると考えられている(Oreffo et al., 1999)。BMPファミリーのメンバーである組み換え型ヒトBMP−2は軟骨および骨形成をインビボにおいて誘導し(Wozney et al., 1988; Wang et al., 1990; Gazit et al., 1999)、インビボにおけるいくつかの間葉細胞タイプの骨形成分化を誘導する(Katagiri et al., 1990; Theis et al., 1992; Wang et al., 1993; Yamaguchib et al., 1996; Hanada et al., 1997; Gazit et al., 1999; Moutsatsos et al., 2001; Turgeman et al., 2001)。
【0005】
発明の概要
1の具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸配列を含む単離核酸を提供する。
【0006】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを提供する。
【0007】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含み、BMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸配列を含む単離核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0008】
もう1つの具体例において、本発明は、骨粗鬆症の予防および/または治療のための潜在的治療剤の同定方法を提供し、該方法は、(a)エストロゲン応答エレメントを含み、レポーター遺伝子に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を細胞に導入し、(b)細胞を候補薬剤と接触させ、次いで(c)レポーター遺伝子によりコードされた蛋白の発現をモニターすることを含み、蛋白の誘導された発現が、候補薬剤が潜在的な治療剤であることを示すものである。
【0009】
もう1つの具体例において、対象におけるBMP−2の発現を調節する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含み、そのことにより対象におけるBMP−2の発現を調節するものである。
【0010】
もう1つの具体例において、本発明は、対象におけるBMP−2の発現を調節する方法を提供し、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の細胞を対象に投与し、次いで、該調節を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより対象におけるBMP−2の発現を調節するものである。
【0011】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンまたはエストロゲンアゴニストに対する細胞の応答性を増大させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与する工程を含み、そのことによりエストロゲンに対する細胞の応答性を増大させるものである。
【0012】
もう1つの具体例において、本発明は、骨の修復が必要な対象の体内における骨の修復を促進する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、目的とする第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を投与し、次いで、骨の修復を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより骨の修復が必要な対象の体内における骨の修復を促進するものである。
【0013】
もう1つの具体例において、本発明は、骨の収縮を促進する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の宿主細胞を対象に投与し、次いで、対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより対象において骨の修復を促進するものである。
【0014】
もう1つの具体例において、エストロゲンの減少により引き起こされる、あるいはエストロゲンの減少を伴った骨粗鬆症にかかっている対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大することが必要な対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大することが必要な対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させるものである。
【0015】
もう1つの具体例において、エストロゲンの減少により引き起こされる、あるいはエストロゲンの減少を伴った骨粗鬆症にかかっている対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の宿主細胞を対象に投与し、次いで、骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大することが必要な対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大することが必要な対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させるものである。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、対象の体内における骨の修復を促進する方法を提供し、該方法は、骨の修復を必要とする対象から細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターで細胞をトランスフェクションし、遺伝子操作された細胞を該対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを該対象に投与する工程を含み、そのことにより該対象の体内における骨の修復を促進するものである。
【0017】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンの減少により引き起こされる、あるいはエストロゲンの減少を伴った骨粗鬆症にかかっている対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させる方法を提供し、該方法は、骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させることを必要とする対象から細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターで細胞をトランスフェクションし、遺伝子操作された細胞を該対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを該対象に投与する工程を含み、そのことにより該対象において骨の体積、骨の質、または骨の強さを維持または増大させるものである。
【0018】
もう1つの具体例において、本発明は、移植可能な骨マトリックスの製造方法を提供し、該方法は、細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸であって、ものを含むベクターで細胞をトランスフェクションし、次いで、移植可能な骨マトリックスを形成させるに有効な時間、細胞を細胞結合マトリックスとともに培養する工程を含む。
【0019】
もう1つの具体例において、本発明は、骨芽細胞の分化を促進する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸であって、ものを含むベクターを投与し、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そのことにより骨芽細胞の分化を促進するものである。
【0020】
もう1つの具体例において、本発明は、対象における骨の疾病を処置する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含み、そのことにより対象における骨の疾病を処置するものである。
【0021】
もう1つの具体例において、本発明は、対象における骨の疾病を処置する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の宿主細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを骨の疾病の処置を要する対象に投与する工程を含み、そのことにより対象における骨の疾病を処置するものである。
【0022】
もう1つの具体例において、本発明は、試料中の化合物をヒトエストロゲンアゴニストとして同定する方法を提供し、該方法は、(a)ヒトエストロゲンに対する受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターにより安定にトランスフェクションされており、該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答してレポーター遺伝子の発現を制御しうるものであり、(b)ヒトエストロゲンがレポーター遺伝子の増大した発現を引き起こすであろう条件下において、ヒトエストロゲンアゴニストを含む可能性のある試料とトランスフェクションされた細胞系とを接触させ、次いで、(c)レポーター遺伝子の発現レベルを測定することを含み、バッファー対照により生じるレベルと比較した場合のレポーター遺伝子の増大した発現レベルを測定することにより試料中のヒトエストロゲンアゴニストが同定されるものである。
【0023】
もう1つの具体例において、本発明は、試料中の化合物をヒトエストロゲンアンタゴニストとして同定する方法を提供し、該方法は、(a)ヒトエストロゲンに対する受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターにより安定にトランスフェクションされており、該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答してレポーター遺伝子の発現を制御しうるものであり、(b)ヒトエストロゲンアンタゴニストを含む可能性のある試料とトランスフェクションされた細胞系とを接触させ、該試料には一定量のエストロゲンが添加されており、かかるアンタゴニストがない場合にはレポーター遺伝子の発現の測定可能な増大が生じるものであり、次いで、(c)レポーター遺伝子の発現レベルを測定することを含み、かかるアンタゴニストがない場合にヒトエストロゲンにより生じるレベルと比較した場合のレポーター遺伝子の減少したレベルを測定することにより試料中のヒトエストロゲンアンタゴニストが同定されるものである。
【0024】
本発明の詳細な具体例
本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域に対応する核酸配列を含む単離核酸、それを含むベクター、および該ベクターを含む細胞に関するものである。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンアゴニスト、アンタゴニストおよび治療薬の同定方法を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン不足または外部エストロゲンまたはそのアゴニストに対する応答の欠乏に関連する症状の治療方法を提供する。
【0025】
1の具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を提供する。
【0026】
1の具体例において、「エストロゲン応答エレメント」は、プロモーターに作動可能に結合された場合、エストロゲンによりプロモーターを誘導可能にするものである。かかる結合の結果として、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターによって安定に形質転換された細胞は、エストロゲンまたはエストロゲンアゴニストの存在下において産生されるレポーター遺伝子産物のレベルを上昇させる。
【0027】
1の具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも95%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも90%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも85%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも80%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも77%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して少なくとも70%相同的な核酸を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する核酸に対して70%ないし100%相同的な核酸を提供する。
【0028】
1の具体例において、「エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメント」は、エストロゲンまたはエストロゲンアゴニストにより誘導可能なBMP−2遺伝子である。この誘導の結果として、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターにより安定に形質転換された細胞は、ヒトエストロゲンの存在下において産生されるレポーター遺伝子産物(例えば、BMP−2に対する限定はない)のレベルを上昇させる。
【0029】
もう1つの具体例において、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸は配列番号:1の核酸配列を有する。マウスBMP−2プロモーター配列において、出願人は、−415から−402までに存在する変種の非−パリンドローム性ERE(5’−GGCAnnnTGACC−3’)(配列番号:1)を見出した。マウスBMP−2変異EREは、古典的なビテロゲニン ERE(5’−GGCAnnnTGACC−3’)(配列番号:2)に対して15bpにわたって3bpの変化を有する。しかしながら、コア13bpコンセンサスERE配列(5’−GGCAnnnTGACC−3’)(配列番号:3)においてはわずか1塩基対しか変化していない。本明細書に示すように、マウスBMP−2プロモーターの異なる欠失およびBMP−2変異EREの変異を比較することにより、ERαおよびERβによるプロモーターの調節はこの変異ERE結合部位を介して行われ、AP−1またはSp1部位を介して行われるのではないことが示された。
【0030】
本明細書の開示を参照して、化学合成、インビトロ増幅(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を包含するが、これに限らない)、あるいはこれらの方法の組み合わせにより、哺乳動物細胞のクラスター、かかる細胞由来のゲノムDNAまたはかかるDNAのライブラリーのごとき天然に存在する源から、本発明のエストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントをコードするDNAを得てもよい。
【0031】
本発明のエストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸をレポーター遺伝子に作動可能に連結させて、トランスフェクション(これに限らない)を包含するDNAにより媒介される遺伝子導入手段、エレクトロポレーションおよびウイルスにより媒介される感染のごとき当該分野でよく知られた適当なベクター、構築物および手段を用いることにより適当な宿主細胞を一時的または安定に形質転換するために用いてもよい。ウイルスを用いる場合には、使用ウイルスは1の具体例であるアデノウイルス中にあってもよい。
【0032】
もう1つの具体例において、ベクターは、宿主細胞中での遺伝子の転写に必要な調節エレメントを含むDNA分子である。典型的には、遺伝子は、構成的もしくは誘導可能プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーエレメントを包含する特定の調節エレメントの制御下に置かれる。調節エレメントが遺伝子の発現を制御する場合に、かかる遺伝子は調節配列に「作動可能に連結」されているといわれる。典型的には、発現ベクターは、発現ベクターを含む細胞の選択を可能にする真核性および/または細菌性の選択可能マーカーを含む。
【0033】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを提供する。
【0034】
プロモーターおよびレポーター遺伝子のベクターへの挿入は、かかるエレメントを含むDNAとベクターの両方の末端が適合した制限酵素部位を含む場合に、簡単に行われる。
【0035】
別法として、ヌクレオチド配列(リンカー)を末端に連結することにより所望部位を作成してもよい。かかるリンカーは、所望制限酵素部位を表す特定のオリゴヌクレオチド配列を含んでいてもよい。ホモポリマーテイリングに必要な場合には、開裂されたベクターおよびDNAフラグメントを修飾してもよい。
【0036】
プラスミドpSV2Apap、pMAMneo−CAT、pMAMneo−LUC、pSVOCAT、pBCO、pBLCAT2、pBLCAT3、pON1、pCH110、p.O、slashed.GH、pIL−4、RE−SV40−LacZ、pSP72およびDe Wet et al.,に記載された種々のプラスミド(これらに限らない)を包含する多くの哺乳動物レポーター遺伝子含有ベクターに応答エレメントを挿入することができる。所望ベクターが異なるプロモーターを含む場合には、標準的方法を用いてかかるプロモーターを切断し、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに置き換えてもよい。別法として、エストロゲン応答エレメントを別のプロモーターと結合させて配置して、それがエストロゲンにより誘導可能となるようにすることもできる。
【0037】
上述の組み換えベクターを用いて、エストロゲンまたはそのアゴニストに応答しうる哺乳動物細胞、すなわちエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストに応答する受容体を含む細胞を安定に形質転換することができる。現在に至るまで、2つのタイプのエストロゲン受容体が知られており、それらはエストロゲン受容体αおよびエストロゲン受容体βである。
【0038】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0039】
もう1つの具体例において、本発明の細胞を修飾して、Berry, et al., E.M.B.O.J., 9:2811-2818 (1990)に記載されたような、末端切断またはキメラエストロゲン受容体、または天然のエストロゲン受容体を得てもよい。これらの修飾は、増大したエストロゲンアフィニティーおよび感受性を生じさせうるし、治療効果も上昇させるであろう。
【0040】
もう1つの具体例において、本発明の細胞は骨芽細胞、間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化可能な細胞であってもよい。
【0041】
1の具体例において、「第2の核酸」は、エストロゲン不足の状態またはエストロゲンに対する宿主による応答の欠乏に関連した核酸(遺伝子)である。遺伝病または後天性疾患の治療にために対象の細胞において発現されるべき特に興味ある核酸は、骨形成因子または遺伝子をコードするものを包含し、それらはエストロゲンの他の作用、例えば認識機能、神経保護、神経再生促進および神経突起成長刺激に関連したものである。もう1つの具体例において、遺伝子は癌、血管形成、卒中および循環器疾患に関連したものである。
【0042】
もう1つの具体例において、本発明のエストロゲン応答エレメントを用いて種々の骨の疾患または症状を治療することができ、それらはエストロゲン欠乏またはエストロゲンに対する応答の欠損に関連したものである。治療により、第2の核酸によりコードされた産物が高度に発現されるであろう。
【0043】
もう1つの具体例において、第2の核酸は、OP−1、OP−2、BMP−5、BMP−6、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−9、DPP、Vg−1、60A、Vgr−1のごとき骨形成因子をコードする遺伝子であってもよい。
【0044】
もう1つの具体例において、目的遺伝子産物の発現が少なくとも1.5倍増加するであろう。もう1つの具体例において、BMP−2の産物の発現が1.5ないし30倍増加するであろう。
【0045】
本発明に使用される細胞は原理的には一時的に形質転換されたものであってもよいが、安定に形質転換された細胞が好ましい。上記組み換えベクターの1つと、抗生物質のごとき選択物質に対する耐性を付与する第2のベクター(pSVneoまたはpRSVneo)との同時形質転換を行うための標準的方法を用いてヒト細胞系の安定な形質転換を行うことができる。別法として、プロモーター遺伝子構築物および選択マーカー遺伝子の両方を含む単一のベクターを用いて形質転換を行うこともできる。
【0046】
定量的リアルタイムRT−PCRの結果は、マウス骨髄由来MSCsにおいて24時間処理後にE2がBMP−2遺伝子発現を増加させることを示した。蛋白合成阻害剤シクロヘキシミドでの同時処理は、E2処理によるBMP−2 mRNAのアップレギュレーションをブロックしなかった。しかしながら、同じ濃度の阻害剤はc−myc mRNAレベルのスーパーインダクションを引き起こし、それが蛋白合成をブロックしたことを意味するものであった(Hauguel-de Mouzon and Kahn, 1991)。かくして、これらの結果は、E2がBMP−2 mRNAレベルを直接調節することを示すものである。さらに、タモキシフェン、ラロキシフェンおよびICIのごときSERMsはマウスBMP−2遺伝子発現を活性化しなかったが、ICIは遺伝子発現のE2刺激を阻害した。これらの結果は、E2によるBMP−2 mRNAの増加がER依存的であることを示すものである。
【0047】
E2が転写的にマウスBMP−2プロモーターを活性化する機構を決定するために、プロモーター−ルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物を多能性マウス間葉C3H10T1/2細胞中に一時的に形質転換することによりモデル系が開発された。C3H10T1/2細胞はERsを発現しないので、ヒトERαおよび/またはERβをコードする発現ベクターとともに該細胞が同時形質転換された(An et al. 1999)。ERαまたはERβのいずれかとともに同時形質転換された細胞においてE2は用量依存的にマウスBMP−2プロモーター活性を誘導した。10nMのE2の用量において、ERαはマウスBMP−2プロモータールシフェラーゼ活性を9.0倍誘導したが、ERβとともに同時形質転換された細胞においては3.3倍の増加が観察された。ICIは、ERαまたはERβを介するE2によるマウスBMP−2プロモーター活性の活性化をブロックし、プロモーター活性化がER依存的であることが示された。この結果は、マウス骨髄MSCsにおけるBMP−2 mRNA発現に関するRT−PCRの結果を確認するものであった。
【0048】
もう1つの具体例において、本発明の細胞を修飾して、Berry et al., E.M.B.O.J., 9:2811-2818 (1990)に記載されたような、末端切断またはキメラエストロゲン受容体を提供してもよい。これらの修飾は増加したエストロゲンアフィニティーおよび増加したアッセイ感度をもたらす可能性があり、細胞を治療目的に使用する場合には、それは治療効果を増大させるであろう。
【0049】
もう1つの具体例において、本発明は、骨粗鬆症の予防および/または治療のための潜在的な治療薬の同定方法を提供し、該方法は、(a)エストロゲン応答エレメントを含み、レポーター遺伝子に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを細胞に導入し、(b)細胞を候補化合物と接触させ、次いで(c)受容体遺伝子によりコードされる蛋白の発現をモニターすることを含み、誘導された蛋白の発現が、候補薬剤が潜在的な治療剤であることを示すものである。
【0050】
もう1つの具体例において、本発明は、試料中の化合物をエストロゲンアゴニストとして同定する方法を提供し、該方法は、(a)ヒトエストロゲン受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターにより安定にトランスフェクションされており、該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答したレポーター遺伝子の発現を制御しうるものであり、(b)ヒトエストロゲンがレポーター遺伝子の増加した発現を引き起こす条件下で、ヒトエストロゲンアゴニストを含むと考えられる試料にトランスフェクションされた細胞系を接触させ、次いで(c)レポーター遺伝子の発現レベルを測定することを含み、そのことにより、バッファー対照により得られるレベルと比較して、レポーター遺伝子の増加した発現レベルが測定されることによって試料中のヒトエストロゲンアゴニストが同定される。
【0051】
もう1つの具体例において、本発明は、試料中の化合物をエストロゲンアンタゴニストとして同定する方法を提供し、該方法は、(a)ヒトエストロゲン受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターにより安定にトランスフェクションされており、該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答したレポーター遺伝子の発現を制御しうるものであり、(b)かかるアンタゴニストが存在しなければレポーター遺伝子の測定可能な増加した発現を引き起こす量のエストロゲンを添加して、ヒトエストロゲンアンタゴニストを含むと考えられる試料にトランスフェクションされた細胞系を接触させ、次いで(c)レポーター遺伝子の発現レベルを測定することを含み、そのことにより、かかるアンタゴニストが存在しない場合にヒトエストロゲンにより生じさせられるレベルと比較して、レポーター遺伝子の減少した発現レベルが測定されることによって試料中のヒトエストロゲンアンタゴニストが同定される。
【0052】
1の具体例において、「レポーター遺伝子」は、その産物が容易にアッセイされるコーティングユニットである(例えば、ルシフェラーゼまたはクロラムフェニコールトランスアセチラーゼであるが、これらに限定されない)。レポーター遺伝子は、ゲノムDNAから単離されたDNA分子であってイントロンを含むあるいは含まないものであってもよく、あるいはメッセンジャーRNAを鋳型として用いて調製された相補的DNA(cDNA)であってもよい。いずれの場合においても、DNAは、例えば生物学的活性のアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイミノアッセイ(RIA)によって容易に測定可能な発現産物をコードするものである。標準的な方法を用いてレポーター遺伝子の発現産物を測定することができる。競合イムノアッセイ、直接イムノアッセイおよび間接イムノアッセイのごとき種々のタイプのイムノアッセイを使用することができる。
【0053】
かかるイムノアッセイは、受容体遺伝子産物と測定可能な標識を含む免疫複合体の形成を包含する。1の具体例において、「標識」は、蛍光発色団および放射性標識のごとき直接検出可能な部分、ならびに検出のために反応あるいは誘導体化されるべき酵素のごとき部分を包含する。
【0054】
使用される個々の標識は、使用されるイムノアッセイのタイプによるであろう。使用可能な標識の例は、例えば、32P、125I、Hおよび14Cのごとき放射性標識、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシルおよびその誘導体のごとき蛍光標識、種々のルシフェリン化合物のごとき化学発光標識、ならびにセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、リゾチームおよびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼのごとき酵素を包含する。
【0055】
適切な場合には、既知方法によりかかる標識で抗体またはレポーター遺伝子産物にタグを付すことができる。例えば、アルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、イミデート、サクシンイミド、ビスジアゾ化ベンザジン等のごときカップリング剤を用いて、抗体に蛍光、化学発光または酵素標識を付してもよい。
【0056】
競合イムノアッセイにおいて、誘導培地からの試料(レポーター遺伝子産物が分泌されない場合には細胞破壊後のもの)を、レポーター遺伝子産物に対する抗体および既知量の標識レポーター遺伝子産物とともにインキュベーションする。細胞により産生された未標識産物は、抗体との結合に関して標識された物質と競合する。生じた免疫複合体を分離し、標識された複合体の量を決定する。観察された測定値を標準曲線から得られた結果と比較することにより、細胞により産生されたレポーター遺伝子産物を定量することができる。直接イムノアッセイは、レポーター遺伝子産物に対する標識された抗体とともに試料をインキュベーションし、形成される免疫複合体を分離することを包含する。複合体中の標識量を決定し、標準曲線と比較することにより定量することができる。
【0057】
よく知られた方法、例えば、米国特許第4665018号に記載されたような方法により酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行うこともできる。
【0058】
骨粗鬆症の治療剤のスクリーニングにおいて、本発明の組み換えベクターの1つで形質転換された細胞を用意する。使用細胞の種類に適した培地を入れた多くの培養ディッシュまたはマルチウェル培養プレートに細胞を撒き、次いで、骨粗鬆症の治療剤を含むと考えられる試料と接触させる。これらの試料は、例えば、単離化合物が溶解されている水性または水混和性溶液であってもよく、あるいはクロマトグラフィーまたは調製用電気泳動のごとき精製工程からの個々のまたはプールされたフラクションであってもよい。陰性(サンプルバッファーのみ)および陽性(既知量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニスト)対照を付す。
【0059】
本発明は、エストロゲンにより媒介される種々の癌(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌)および他の疾病(例えば、子宮内膜症)の治療または予防のための所望特性を有することに関して、大量の試験化合物をスクリーニングする効率的な方法を提供する。かくして、本発明は、間接的なエストロゲン応答をブロックし、そして/あるいは古典的なエストロゲン応答エレメントにおけるエストロゲン作用をブロックする新規タイプの抗エストロゲン化合物をスクリーニングする方法を提供する。本明細書で用いる「抗エシトロゲン」は、エストロゲン活性の標準的アッセイ、例えば、Webb et al. Mol. Endocrinol., 6:157-167 (1993)に記載されたような細胞アッセイにおいて測定されるようなエストロゲン活性を実質的に阻害する化合物である。
【0060】
誘導期間中細胞をインキュベーションした後、各試料により産生されたレポーター遺伝子のレベルを、使用遺伝子に適したアッセイにより測定する。測定を行うための最適時間を常套的な実験により決定するが、典型的には、約24ないし72時間の範囲であろう。刺激されない(バッファー対照)レベルよりも高いレポーター遺伝子発現レベルを測定することによって試料中の骨粗鬆症の治療剤が同定される。
【0061】
エストロゲン活性に関して環境化合物を試験する場合、典型的には、その方法は、高レベルのヒトエストロゲン受容体を産生する培養細胞を包含する。かかる細胞はMCF−7細胞(ATCC番号HTB22)、MDA453細胞(ATCC番号HTB131)、ZR−75−1細胞(ATCC番号CRL1500)またはKushner et al., Mol. Endocrinol/. 4:1465-1473 (1990)に記載されたERC1細胞ならびにWebb, et al. Mol. Endocrinol., 6:157-167 (1993)に記載されたERC2およびERC3細胞を包含する。
【0062】
エストロゲン化合物に対する感受性が低下した変異エストロゲン受容体を発現する細胞を用いて環境化合物を試験してもよい。野生型受容体を発現する細胞(例えば、MCF7細胞)を用いてもよい。もう1つの具体例において、スクリーニングアッセイ用の細胞は、上記ERC細胞のように変異エストロゲン受容体を過剰発現する細胞を包含してもよい。
【0063】
さらに、他の応答エレメント(例えばAP1)がレポーター遺伝子の発現を調節するレポーター遺伝子でこれらの細胞をトランスフェクションしてもよい。典型的には、2つの異なる受容体遺伝子を用いる。一方の遺伝子は、本発明のエストロゲン応答系により誘導される転写をレポートし、他方の遺伝子は、間接的なエストロゲン応答により誘導される転写をレポートする。典型的には、2つのレポーター遺伝子および応答エレメントは別個の細胞中に置かれるが、両方の構築物を同じ細胞中に用いる方法を用いることもできる。
【0064】
DNA領域が互いに機能的に関連させられる場合に、それらは作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコーディング配列の発現を制御する場合に、それはコーディング配列に作動可能に連結されている。リボソーム結合部位が翻訳を可能にするような位置に置かれている場合に、それはコーディング配列に作動可能に連結されている。一般的には、作動可能に連結とは隣接していることを意味する。
【0065】
多細胞生物に由来する細胞の培養物は、本発明のエストロゲン応答エレメントの発現のための望ましい宿主である。原理的には、本来的にエストロゲン受容体を発現するものであっても、遺伝子操作されてエストロゲン受容体(または当該受容体の一部)を発現するようになったものであっても、高等真核細胞培養物を使用することができる。実施例にて説明するように哺乳動物細胞が好ましい。細胞培養物中でのかかる細胞の増殖は常套的手順となっている。Tissue Culture, Academic Press, Kruse & Patterson, editors (1973)参照。有用な宿主細胞系の例はMCF−7、MG63、HeLa、RL95.2、HepG2およびCHO細胞である(すべてAmerican Type Culture Collection, Rockville, Mdから入手可能)。本発明の目的のためには、MCF−7細胞系は構成的にエストロゲン受容体を発現するので、その使用が特に好ましい。
【0066】
要約すると、本発明の実施例は、マウスBMP−2遺伝子転写のE2調節はBMP−2プロモーター中の変異ERE結合部位を必要とし、ERαが遺伝子発現の優勢アクチベーターであることを示す。これらの知見は、骨粗鬆症の病理生理学におけるエストロゲンの効果ならびに骨格に対するエストロゲンの高用量の同化効果に関する機構の説明を提供する。
【0067】
もう1つの具体例において、本発明は、対象におけるBMP−2の発現調節方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、BMP−2蛋白をコードする核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象中のBMP−2の発現を調節する方法である。
【0068】
もう1つの具体例において、本発明は婦人科学および生殖の分野に関する。エストロゲン応答エレメントを用いて、例えばLHまたはFSH(これらに限らない)のようなホルモンの遺伝子の発現を調節してもよい。
【0069】
もう1つの具体例において、本発明は、対象におけるBMP−2の発現を調節する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントを含む有効量の細胞を対象に投与し、次いで、該調節を要する対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象中のBMP−2の発現を調節する方法である。
【0070】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンまたはエストロゲンアゴニストに対する細胞の応答性を増大させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与する工程を含む方法であり、そうすることによってエストロゲンに対する細胞の応答性を増大させる方法である。
【0071】
細胞系は対象中の細胞であってもよく、あるいは別の具体例において、かかる細胞は酵母細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞、例えば、SchneiderおよびsF9細胞、哺乳動物細胞、例えばHeLa細胞(ヒト)、NIH3T3(ネズミ)、RK13(ウサギ)細胞、胚性幹細胞系、例えばD3およびJ1、ならびに肝性幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、気道上皮および皮膚上皮細胞のごとき細胞タイプあるいは組み換え型真核宿主(これらに限らない)を包含する。
【0072】
修飾された細胞を対象に移植して、対象中においてエストロゲンまたはそのアゴニストに対する特定の遺伝子の応答性を誘導することができる。
【0073】
もう1つの具体例において、本発明は、本発明のエストロゲン応答エレメントを抑制することによる、エストロゲンまたはそのアゴニストに対する特定の遺伝子の応答または過敏応答を抑制する方法を提供する。このことは、Ersの結合のためのおとりとして本発明のエストロゲン応答エレメントに対するアフィニティーを用いることにより行うことができ、そうすることによって、大量のおとりを細胞に導入することによりゲノム上の機能的なEREsに対するERの結合が阻害される。
【0074】
もう1つの具体例において、本発明は、対象体内の骨の修復を促進する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象体内の骨の修復を促進する方法である。
【0075】
もう1つの具体例において、本発明は、骨の修復を促進する方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象の骨の修復を促進する方法である。
【0076】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによってかかる維持または増加を必要とする対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法である。
【0077】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法を提供し、該方法は、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによってかかる維持または増加を必要とする対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法である。
【0078】
もう1つの具体例において、本発明は、対象体内の骨の修復を促進する方法を提供し、該方法は、対象から細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターで細胞をトランスフェクションし、遺伝子操作された細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによってかかる修復を必要とする対象体内の骨の修復を促進する方法である。
【0079】
もう1つの具体例において、本発明は、エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法を提供し、該方法は、対象から細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターで細胞をトランスフェクションし、遺伝子操作された細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含む方法であり、そうすることによってかかる維持または増加を必要とする対象中の骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増加させる方法である。
【0080】
もう1つの具体例において、本発明は、移植可能な骨マトリックスの製造方法を提供し、該方法は、細胞を得て、エストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターで細胞をトランスフェクションし、次いで、移植可能な骨マトリックスの形成を可能にするに有効な時間、細胞結合マトリックスとともに細胞を培養する工程を含む。
【0081】
もう1つの具体例において、本発明は、骨芽細胞分化を刺激する方法を提供し、該方法は、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含む方法であり、そうすることによって骨芽細胞分化の発現を刺激する方法である。
【0082】
もう1つの具体例において、本発明は、対象における骨の疾病の治療方法を提供し、該方法は、骨芽細胞分化を刺激する方法を提供し、該方法は、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含むベクターを投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象における骨の疾病を治療する方法である。
【0083】
もう1つの具体例において、本発明は、対象における骨の疾病の治療方法を提供し、該方法は、第2の核酸に作動可能に連結されたBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸を含む有効量の細胞を対象に投与し、次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含む方法であり、そうすることによって対象における骨の疾病を治療する方法である。
【0084】
SERMsはタモキシフェンおよびラロキシフェンと同様に、乳癌および骨粗鬆症の治療および/または予防を包含する、数種の徴候に対する治療薬であり、それらは循環器系に対して潜在的に有益なエストロゲン様効果も有する(Peach et al. 1997; Black et al. 1994; Sato et al. 1996; Yang et al. 1996a; Yang et al. 1996b)。最近、ラロキシフェンが骨粗鬆症の予防および治療に関して認可された(Clement and Spencer 2000)。このSERMは、骨の鉱物質密度の維持において多くのステロイド性エストロゲン類よりも強力でなく(Sato et al. 1996)、認識機能を改善せず(Nickelson et al. 1999)あるいは尾てい骨の骨折を予防しない(Ettinger et al. 1999)。かくして、ホルモン置換療法(HRT)のための優れたSERMsの探求が重点研究領域であり続けている(An et al. 2001)。本明細書に示すように、結果は、タモキシフェンおよびラロキシフェンのごときSERMsは、ERαを介するマウスBMP−2プロモーターの弱いアクチベーターであるが、ERβを介するものではない。これらのSERMsはヒトBMP−4プロモーター活性に対して類似の効果を有する。ゲニステインのごときフィトエストロゲンはERαよりもERβに対していくぶんかの優先性を示す(An et al. 2001)。その中庸の結合選択性と矛盾せずに、ゲニステインがERαとともにでなくERβとともにマウスBMP−2遺伝子の転写活性化経路の引き金を引くことが本発明において示された。ここで本発明は、遺伝子発現を「オン」または「オフ」にできること、あるいは多面的効果または第棒毒性を引き起こすことなく迅速、有効かつ制御される様式で遺伝子発現のレベルを調節することが望ましい種々の状況に広く適用可能である。本発明は、遺伝病または後天性の疾病の治療におけるヒトの遺伝子治療目的に有用である。遺伝子治療の一般的アプローチは、1またはそれ以上の核酸分子を細胞に導入して、導入された遺伝物質によりコードされる1またはそれ以上の遺伝子産物を細胞に産生させて機能活性を回復または促進させることを包含する。しかしながら、現在の遺伝子治療ベクターは、典型的には、内在性の転写因子に応答可能な構成的な調節エレメントを用いるものである。これらのベクター系は、対象における遺伝子発現のレベルをモジュレーションすることを可能にしない。対照的に、本発明の調節系はこの可能性を提供する。
【0085】
1の具体例において、本発明の細胞またはベクター系は組織または器官特異的なプロモーターを含み、その結果、特定の組織または器官において遺伝子発現を可能にするものであってもよい。もう1つの具体例において、当該分野においてよく知られたデリバリー方法を用いることにより、細胞またはベクターを特定の組織または器官に適用してもよい。かくして、本発明の調節系は、治療状況の必要性に応じて遺伝子発現レベルをモジュレーションすることを可能にすることで、構成的な調節系に優る利点を提供する。
【0086】
本発明の調節系を用いて、細胞中で条件付きの様式で自殺遺伝子を発現させて特定の治療後に細胞を破壊すること(例えば、インビボで)を可能にしてもよい。例えば、自殺遺伝子を腫瘍細胞に導入して抗癌免疫化に使用することができ、あるいは生きた弱毒化ウイルスのゲノムに導入してワクチンとして使用することができる。自殺遺伝子を担持する腫瘍細胞またはウイルスワクチンを、Tc(またはそのアナログ)の存在下で対象に投与する。免疫後、薬剤を取りやめて(投与をやめて)、そのことにより自殺遺伝子の発現を誘導し、生きたウイルスを担持する腫瘍細胞(複数も可)を破壊する。
【0087】
遺伝子治療目的に修飾されうる細胞タイプは、肝性幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、気道上皮および皮膚上皮を包含する。細胞タイプをさらに説明するために、遺伝子治療のための遺伝子および方法につき、例えば、Wilson, J. M et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014-3018; Armentano, D. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6141-6145; Wolff, J. A. et al. (1990) Science 247:1465-1468; Chowdhury, J. R. et al. (1991) Science 254:1802-1805; Ferry, N. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381; Wilson, J. M. et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:963-967; Quantin, B. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2581-2584; Dai, Y. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10892-10895; van Beusechem, V. W. et al. (1992) Proc. Natl. Acad Sci. USA 89:7640-7644; Rosenfeld, M. A. et al. (1992) Cell 68:143-155; Kay, M. A. et al. (1992) Human Gene Therapy 3:641-647; Cristiano, R. J. et al. (1993) Proc. Natl. Acad Sci. USA 90:2122-2126; Hwu, P. et al. (1993) J. Immunol. 150:4104-4115;および Herz, J. and Gerard, R. D. (1993) Proc. Natl. Acad Sci. USA 90:2812-2816参照。
【0088】
本発明の調節系を用いて、目的の遺伝子産物(例えば、蛋白)を製造または単離することもできる。1)本発明のエストロゲン応答エレメントをコードする核酸および2)本発明のエストロゲン応答エレメントを含むBMP−2プロモーターまたはそのフラグメントに作動可能に連結された第2の核酸(例えば、目的蛋白をコードしている)を含むように修飾された培養細胞をインビトロで用いて目的蛋白の大規模製造を行うことができる。例えば、上で説明したようにして哺乳動物、酵母または真菌細胞を修飾してこれらの核酸成分を含むようにすることができる。別法として、昆虫細胞/バキュロウイルス発現系を用いることもできる。目的の遺伝子産物を製造または単離するために、本発明のエストロゲン応答エレメントを含み、第2の核酸が目的遺伝子産物をコードする核酸に連結されたBMP−2プロモーターまたはそのフラグメントを含む宿主細胞(例えば、哺乳動物、酵母または真菌細胞)を、先ず、エストロゲン不存在の培地中で増殖させる。これらの条件下において、第2の核酸の発現は抑制される。次に、培地中のエストロゲンまたはエストロゲンアナログの濃度を増加させて第2の核酸の転写を刺激する。その後、標準的な方法により、集めた細胞または培地から遺伝子産物を単離することができる。
【0089】
本発明は、トランスジェニック農場動物のごとき動物における目的蛋白の大規模製造も提供する。トランスジェニック法の利点は、ウシ、ヤギ、ブタおよびヒツジのごときトランスジェニック家畜の製造を可能にしたことである(Wall, R. J. et al. (1992) J. Cell. Biochem. 49:113-120;およびClark, A. J. et al. (1987) Trends in Biotechnology 5:20-24にレビューあり)。したがって、ゲノム中に本発明の調節系の成分を担持するトランスジェニック家畜を構築することができる。
【0090】
例えば、本発明のエストロゲン調節エレメントに連結された目的蛋白をコードする核酸を、受精した卵母細胞の雄性前核中に、例えばマイクロインジェクションにより導入し、次いで、偽妊娠雌性フォスター動物中で卵母細胞を発達させることにより、トランスジェニック動物を作成することができる。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルを導入遺伝子に含ませて、導入遺伝子の発現効率を高めることもできる。トランスジェニック動物、特にマウスのごとき動物を得る方法は当該分野において慣用的なものとなっており、例えば、米国特許第4736866号および第4870009号ならびにHogan, B. et al., (1986) A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている。トランスジェニックファウンダー動物を用いて、導入遺伝子を担持するさらなる動物を繁殖させることができる。導入遺伝子を担持するトランスジェニック動物をさらに繁殖させて、第2の導入遺伝子を担持する別のトランスジェニック動物を得て、2つの導入遺伝子を担持する、いわゆる「ダブルトランスジェニック」動物を得ることができる。
【実施例】
【0091】
材料および方法
化学試薬
特記しない限りすべての材料をSigma Chemical Co. (St. Louis, MO)から購入した。DMEM、ペニシリン−ストレプトマイシン、L−グルタミンをBiological Industries (Beit Haemek, Israel)から購入した。ICI−182,780をZeneca Pharmaceuticals, UKから購入した。
【0092】
プラスミド構築
ヒトERαおよびヒトERβ(485)用の発現ベクターは以前記載されたものであった(Webb et al. 1998)。マウスBMP−2プロモーターの全長(−2712から+165まで)および5’−末端欠失物(−838から+165まで、および−150から+165まで)を、以前記載されたようにして(Harris et al. 2000)pGL3ベクター中のルシフェラーゼcDNAの上流にクローンした。全長プロモータープラスミド中のマウスBMP−2変異EREの変異(Δ変異ERE:5’−GAACCActcTACCTC−3’)を、QuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, USA)を製造者のプロトコルに従って用いて行った。プロモーターフラグメントをPCR産物と同様にpGL3−basicベクター中にサブクローンした(−448から+23まで、および−400から+23まで)。以前記載されたようにして(An et al. 1999)ERE−tk−ルシフェラーゼベクター(カエルビテロゲニンA2遺伝子由来のEREの1コピー)を構築した。
【0093】
動物および細胞培養
生後2ヶ月のSwiss-Webster雌性マウス(ICR)を、ヒトのケアに定められた標準法に従ってOVXし、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って動物を維持した。術後5ヶ月目に大腿骨および脛骨から骨髄を単離し、以前記載されたようにして(Gazit et al. 1999aおよびZhou et al. 2001)MSCsを培養した。15% FBS(チャコールストリップト、熱不活性化)、100ユニット/mlぺニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを含有するDMEM(フェノールレッド不含、1.0g/Lグルコース、Biological Industries, Israel)中で骨髄細胞を維持した。4日目に、培養物に50μg/mlのアスコルビン酸、10mM β−グリセロホスフェートおよび10nMデキサメタソンを補足した。10日目から、2%チャコールストリップト(CS)−FBSを含み、骨形成性補足物を含まないDMEM中で細胞を培養した。11日目に、培養物をE2(Sigma)、ICI−182,780(AstraZeneca Pharmaceuticals, UK)、タモキシフェン(Sigma)またはラロキシフェンで24時間処理した。次いで、2日目にRNAを単離した。E2がマウスMSCsにおいてBMP−2 mRNAの発現を直接調節するかどうかを決定するために、5.0 Mシクロヘキシミドを、新鮮DMEMプラス2%CF−FBSとともに培養物に45分間添加し、次いで、100nMのE2で処理し、E2処理から4時間後にRNAを単離した。10% FBA、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを含有するDMEM(Sigma and Biological Industries)中でマウスC3H10T1/2細胞を培養した。
【0094】
細胞のトランスフェクションおよびルシフェラーゼアッセイ
以前記載されたようにして(An et al. 1999)一時的なトランスフェクションを行った。簡単に説明すると、C3H10T1/2細胞を100mmディッシュ中で集密になるまで培養した。トリプシン処理により細胞を集め、培地に懸濁し、計数し、800rpmで5分間ペレット化させ、1.5x10個の細胞を、0.1%グルコースを含む0.5mlのPBSに再懸濁した。細胞懸濁液を5μgのルシフェラーゼレポータープラスミドおよび2μgのhERαまたはhERβ発現ベクターと混合した。細胞をキュベットに移し、Bio-Radジーンパルサーを用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、2% CS−FBSを含有するDMEM(フェノールレッド不含)に細胞を懸濁し、12ウェルマルチプレートにウェル1個あたり1mlの割合で撒いた。細胞をE2(10−8M)またはエタノール(ビヒクル)で24時間処理し、Promegaのキットを用いてルミノメーター(Turner Desingn TD-20/20, CA)にてルシフェラーゼ活性をアッセイした。0.5μgのpNGVL1−nt−betaGalプラスミド(University of Michigan, Ann Arbor, USAのNational Gene Vector Laboratoryにより構築された)の同時トランスフェクションによりトランスフェクション効率をモニターし、Galacto-Light Chemiluminescent Reporter Assay System Kit(Tropix of Biosystems, USA)を用いてβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。β−ガラクトシダーゼ発現に対して正規化後、ビヒクル対照処理細胞に対するE2処理細胞のRLU誘導倍数として、トランスフェクションの結果を示した。誤差のバーは3系で5回行った実験の標準偏差を示す。
【0095】
RNA単離、半定量的RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCR
すべての実験を3ないし5回独立して行った。データは平均値±平均の標準偏差で示される。半定量的RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCRを、1回につき3〜6匹の動物から得たMSCsから単離された全RNAを用いて独立した実験で3回行った。ノンパラメトリックMann-Whitney検定またはANOVA検定のいずれかを用いて定量的なデータを分析した。
【0096】
実験結果
実施例1
E2はマウスMSCsにおいてBMP−2 mRNA発現を直接調節する
卵巣摘出マウス(術後5ヶ月)から得た骨髄MSCsがBMP−2 mRNAを発現することがリアルタイムRT−PCRにより示された(図1A)。100nMのE2での処理から24時間後、BMP−2 mRNAレベルは有意に2.4倍増加し、2μgの全RNA中570±81コピーから1337±177コピーになった(p<0.05,ANOVA)(図1D)。リボソーム蛋白L19(RPL19)は内部標準として役立ち、その発現はE2処理によっては変化しなかった(図1B)。
【0097】
マウスBMP−2用のPCRプライマーが目的とする標的以外のmRNA配列を増幅した可能性を排除するために、増幅生成物を精製し、クローン化し、配列決定した。その後のBLAST分析(データ示さず)により、GenBankデータベースにリストされたマウスBMP−2(Feng et al. 1994;受託番号NM007553)に対応する配列が同定された。次いで、クローン化されたマウスBMP−2 cDNA生成物(pGEM−T−マウスBMP−2ベクター)をリアルタイムTR−PCRに用いて、マウスBMP−2遺伝子に関する標準曲線を得た(図1C)。
【0098】
図2Aに示すように、100nMのE2でマウスMSCsを処理してから24時間後に、半定量的RT−PCRにより調べたところBMP−2 mRNAレベルのアップレギュレーションが存在した。5.0μMのシクロヘキシミド(蛋白合成阻害剤)での同時処理によってはBMP−2 mRNAのこの増加はブロックされなかったが、同じ濃度シクロヘキシミドはc−myc mRNAのスーパーインダクションを引き起こし、それが蛋白合成の阻害において有効であることが示された(Hauguel-de Mouzon and Kahn 1991)(図2B)。この結果は、MSCsにおけるマウスBMP−2 mRNAのE2調節が直接的なものであり、進行中の蛋白合成とは無関係であることを示す。
【0099】
実施例2
マウスMSCsにおけるBMP−2 mRNA発現のE2調節はER依存的である
半定量的RT−PCRにより決定されたように、24時間の処理期間後において、ERアンタゴニストICI(10μM)単独では構成的なマウスBMP−2 mRNAレベルに対する影響がなかった(図3A)。しかしながら、それはマウスMSCsにおけるE2(100nM)によるBMP−2 mRNA発現のアップレギュレーションをブロックし、MSCsにおいてE2がERsを媒介としてマウスBMP−2 mRNA発現を調節することが示された。さらに、マウスBMP−2 mRNA発現はMSCsのE2(100nM)処理によりアップレギュレーションされたが、タモキシフェン(1.0μM)またはラロキシフェン(100nM)のごとき選択的エストロゲン受容体によってはアップレギュレーションされなかった(図3B)。
【0100】
実施例3
E2はC3H101/2細胞においてERαおよびERβを介して用量依存的にマウスBMP−2プロモーター活性を調節する
エストロゲンが変種エストロゲン応答エレメント結合部位を介して転写的にマウスBMP−2遺伝子発現を活性化させるという仮説を検証するために、間葉幹細胞系C3H10T1/2においてマウスBMP−2プロモーター活性に対するE2の影響を試験した。マウスC3H10T1/2細胞は検出可能なレベルのERsを発現しないのでこの細胞系を使用したが、それゆえ転写に対するE2の影響を誘発するためにERsのトランスフェクションが必要となる(図4)。全長マウスBMP−2プロモーター(−2712)−ルシフェラーゼまたは古典的なERE−tk−ルシフェラーゼ(An et al., 1999)プラスミドを、ヒトERαまたはERβ発現ベクターとともにC3H10T1/2細胞中に同時トランスフェクションした。次いで、異なる濃度のE2で細胞を24時間処理し、ルシフェラーゼ活性をルミノメーターにより測定した。結果(図5A)は、E2はERαまたはERβのいずれかを介してBMP−2プロモーター(−2712)活性を用量依存的にアップレギュレーションしたが、ERαがマウスBMP−2プロモーターおよび古典的なEREの両方に対するより効率的なアクチベーターであることを示すものであった(図5B)。
【0101】
実施例4
マウスBMP−2プロモーター活性のE2刺激はER依存的である
図6に示すように、ERアンタゴニストであるICIは、10nMのE2によるERαまたはERβのいずれかを介するマウスBMP−2プロモーター(−2712)活性の刺激を用量依存的に阻害した。これらのルシフェラーゼアッセイ結果は、E2およびICIで同時処理されたマウス骨髄MSCsを用いて得られたBMP−2 mRNAの発現データ(図3)と一致した。
【0102】
実施例5
マウスBMP−2プロモーター中のER調節部位の位置
Harris et al. (20000)はマウスBMP−2プロモーター(−2712から+165まで)をクローニングし、配列決定し、それがSpIおよびAP−1を含む数個のシス−作用性DNA制御エレメントを含んでいることを報告した。さらに、本発明において、プロモーターの−415から−402に存在するかつて認識されていなかった変種非パリンドローム性ERE(3’−GGGCCActcTGACCC−3’)(配列番号:4)が同定された。Heller et al. (1999)もマウスBMP−2プロモーター(−3365から−1658)をクローニングしたが、Harris et al. (2000)と同様に、これらの著者はエストロゲン応答エレメント様配列の存在を報告しなかった。
【0103】
マウスBMP−2プロモーター中のERに対する調節部位を見出すために、本発明者らは全長プロモーター(−2712)の活性を異なるプロモーター欠失体と比較し、さらに推定変異EREの変異体とも比較した(図7)。全長プロモーター(−2712)は2つのAP−1応答エレメントを有し、GC豊富Sp1部位および可能性のある変異EREであり、ERはこれらすべてを介して作動しうる(Peach et al. 1997)。−838フラグメントはSp1部位および推定変異EREを含むが、2つのAP−1応答エレメントを欠く。一方、−150フラグメントはこれらの部位をいずれも欠いている。−448フラグメントはやはりSp1および変異ERE部位を含むが、−400フラグメントは変異EREを欠くがSp1部位を保持している。結局、推定変異EREもまた、全長プロモーター(−2712)中において変異しているが(Δ変異ERE:5’−GAACCActcTACC−3’)、他の調節部位は無傷のままである。これらの異なるマウスBMP−2プロモーター−ルシフェラーゼ構築物をヒトERαまたはERβ発現ベクターとともにC3H10T1/2細胞中に一時的に同時トランスフェクションし、10nMのE2で処理してから24時間後にルシフェラーゼ活性をアッセイした。
【0104】
図7に示すように、ERαまたはERβのいずれかを介して作用するE2はマウスBMP−2プロモーターの全長(−2712)ならびに−838および−448フラグメントの活性をアップレギュレーションしたが、これらすべての調節部位を欠く−150フラグメントの発現を増加させなかった。全長(−2712)ならびに−838および−448フラグメントの活性に差異はないので、AP−1応答エレメントはE2誘導に必要とされなかった。他方、推定変異EREの欠失体(−400)または変異体(Δ変異ERE)はE2の能力を除去し、ERαまたはERβのいずれかを介してマウスBMP−2プロモーター活性を増加させた。かくして、Sp1部位はプロモーターに対するERの作用に重要とは思われないが、推定変異EREは当該ホルモンの効果に重要と思われる。
【0105】
実施例6
選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびゲニステインによるマウスBMP−2プロモーターの刺激
選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびゲニステインならびにE2がマウスBMP−2プロモーター活性を調節するかどうかを調べるために、全長プロモーター(−2712)−ルシフェラーゼプラスミドをヒトERαまたはERβ発現ベクターとともにC3H10T1/2細胞中に一時的に同時トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を担体(エタノール対照)、10nM E2、100nMラロキシフェン、1.0μMタモキシフェン、100nMゲニステインまたは100nMゲニステインまたは100nM ICIで24時間処理し、次いで、ルミノメーターによりルシフェラーゼ活性をアッセイした。図8に示すように、タモキシフェンおよびラロキシフェンはERαを介するBMP−2プロモーターの不完全アゴニストであるが、ERβを介するものではない。
【0106】
さらに図8に示すように、ゲニステインもまたマウスBMP−2プロモーター活性を刺激するが、この効果はERαを介して媒介されるのであり、ERβを介するものでない。結局、E2の作用の場合と同様に、全長(−2712)プロモーターにおける変異EREの変異によりSERMsおよびゲニステインの刺激が無くされ、変異EREがこれらの効果に関与していることが示される。上記結果のまとめを図9に示す。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、OVXマウスから得たMSCs中のマウスBMP−2 mRNA発現をE2が調節することを示すリアルタイムRT−PCRを示す。100nMのE2で処理してから24時間後に、2μgの全RNA中のマウスBMP−2 mRNAレベルが570±81コピーから1337±177コピーに有意に増加した(p<0.05,ANOVA)。
【図2】図2は、卵巣除去マウスから得たMSCs中のBMP−2 mRNA発現をE2が直接調節することを示す図である。5μMのシクロヘキシミドは、4時間のエストラジオール(E2)処理によるBMP−2のアップレギュレーションをブロックしなかったが(A)、同じ濃度のシクロヘキシミドはc−mycのスーパーインダクションを引き起こした(B)。
【図3】図3は、卵巣除去マウスから得たMSCs中のBMP−2 mRNA発現を調節するのはE2であり、選択的エストロゲン受容体モジュレーターでないことを示す図である。(A)半定量的RT−PCRにより示されるように、ICI(10μM)は、E2(10−7M)で24時間処理することによるMSCs中の mRNA発現のアップレギュレーションをブロックした。(B)24時間のE2(10−7M)処理によりMSCsにおいてBMP−2 mRNA発現はアップレギュレーションされたが、タモキシフェン(10−6M)またはラロキシフェン(10−7M)によってはアップレギュレーションされなかった。
【図4】図4は、野生型マウス10T1/2細胞が機能的なERsを発現せず、ERαまたはERβのトランスフェクションを必要とすることを示す図である。(A)野生型(WT)あるいはヒトERαまたはヒトERβのいずれかを過剰発現する安定なC3H10T1/2細胞系からRNAを単離し、ERsまたはGADPDHに関してRT−PCRを行った。レーン:M,1kbの分子量ラダー;1,ERαに関して分析されたWT細胞;2,ERβに関して分析されたERβ細胞;3,ERβ cDNA対照;4,GAPDHに関して分析されたWT細胞;5,GAPDHに関して分析されたERβ細胞;6,ERαに関して分析されたWT細胞;7,ERαに関して分析されたERα細胞;8,ERα cDNA対照;9,GAPDHに関して分析されたWT細胞;10,GAPDHに関して分析されたERα細胞。(B)野生型(WT)あるいはヒトERαまたはヒトERβのいずれかを過剰発現する安定なC3H10T1/2細胞系のいずれかをERE−tk−ルシフェラーゼプラスミドにて一時的にトランスフェクションし、10nMのE2で2時間処理し、次いで、ルシノメーターによりルシフェラーゼ活性に関してアッセイした。
【図5】図5は、E2がERαおよびERβを介してマウスBMP−2プロモーター活性を刺激することを示す図である。E2は、ERsを介して全長のマウスBMP−2プロモーター(−2712)(B)および古典的なエストロゲン応答エレメント(ERE)(C)を用量依存的に調節した。5μgのBMP−2プロモーター−ルシフェラーゼプラスミド(pGL3ベクター中のルシフェラーゼに連結されたBMP−2全長プロモーター)またはERE−tk−ルシフェラーゼプラスミドを、各2μgのヒトERαまたはヒトERβ発現ベクターとともに、マウスC3H10T1/2細胞中に一時的に同時トランスフェクションした。次いで、細胞を異なる用量のE2で24時間処理し、ルシノメーターによりルシフェラーゼ活性をアッセイした。
【図6】図6は、ICI−182,780が用量依存的に、ERαおよびERβを介するマウスBMP−2プロモーター活性に対するE2の刺激を阻害することを示す図である。図5で説明したように、マウスC3H10T1/2細胞を、マウスBMP−2プロモーター−ルシフェラーゼベクター(−2712)ならびにERα(A)およびERβ(B)発現ベクターでトランスフェクションした。
【図7】図7は、マウスBMP−2プロモーター中のER調節部位の位置を示す図である。制限酵素での消化により全長プロモーター(−2712)からマウスBMP−2プロモーターの特異的欠失を得た(−838および−150)。ついで、プロモーターフラグメントをPCR生成物としてpGL3−basicベクター中にサブクローンした(−448から+23までおよび−400から+23まで)。全長プロモーター−ルシフェラーゼプラスミド中の野生型BMP−2プロモーター変異ERE(Δ変異ERE:5’−GAACCActcTACCTC−3’)の変異を、材料および方法に記載のごとく行った。
【図8】図8は、ERαおよびERβを介するマウスBMP−2プロモーター活性に対するE2、SERMsおよびゲニステインの影響を示す図である。図5で説明したように、BMP−2プロモーター−ルシフェラーゼベクター(−2712)を、hERαまたはhERβ発現ベクターとともにC3H10T1/2細胞中に一時的にトランスフェクションした。細胞を10nMのE2、10μMのタモキシフェン、100nMのラロキシフェン、100nMのICI−182,780、または100nMのゲニステインで処理した。
【図9】図9は、マウスBMP−2プロモーターの変種エストロゲン応答エレメントにおけるER作用のモデルである。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域に対応する核酸を含む単離核酸分子。
【請求項2】
核酸が第2の核酸に作動可能に連結されている、請求項1記載の核酸を含むベクター。
【請求項3】
請求項2のベクターを含む宿主細胞。
【請求項4】
さらにエストロゲン受容体を含む請求項3の宿主細胞。
【請求項5】
エストロゲン受容体がαである請求項4の宿主細胞。
【請求項6】
エストロゲン受容体がβである請求項4の宿主細胞。
【請求項7】
骨粗鬆症の予防および/または治療のための治療薬を同定する方法であって、下記工程:
(a)請求項2のベクターを細胞に導入し;
(b)細胞を候補薬剤と接触させ;次いで
(c)レポーター核酸によりコードされる蛋白の発現をモニターする
を含み、誘導された蛋白の発現が、候補化合物が潜在的な治療薬であることを示すものである方法。
【請求項8】
工程(a)においてエストロゲン受容体をコードする核酸分子を含む第2の発現ベクターが細胞に導入される、請求項7の方法。
【請求項9】
エストロゲン受容体がαである請求項8の方法。
【請求項10】
エストロゲン受容体がβである請求項8の方法。
【請求項11】
対象におけるBMP−2の発現を調節する方法であって、請求項2のベクターを投与し、ここに該第2の核酸はBMP−2をコードするものであり;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含み、そうすることによって対象におけるBMP−2の発現を調節するものである方法。
【請求項12】
対象におけるBMP−2の発現を調節する方法であって、有効量の請求項3の細胞を対象に投与し、ここに該第2の核酸はBMP−2をコードするものであり;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを、該調節を必要とする対象に投与する工程を含み、そうすることによって対象におけるBMP−2の発現を調節するものである方法。
【請求項13】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項12の方法。
【請求項14】
エストロゲンまたはエストロゲンアゴニストに対する細胞の応答性を高める方法であって、請求項2のベクターを投与する工程を含み、そうすることによってエストロゲンに対する細胞の応答性を高めるものである方法。
【請求項15】
細胞がエストロゲン受容体を含むものである請求項14の方法。
【請求項16】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項14の方法。
【請求項17】
対象の体内における骨の修復を促進する方法であって、請求項2のベクターを投与し;次いで、該促進を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって該促進を必要とする対象の体内における骨の修復を促進するものである方法。
【請求項18】
骨の修復を促進する方法であって、有効量の請求項3の細胞を対象に投与し;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを該促進を必要とする対象に投与する工程を含み、そうすることによって対象における骨の修復を促進するものである方法。
【請求項19】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項18の方法。
【請求項20】
エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させる方法であって、請求項2のベクターを投与し;次いで、該維持または増大を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって該維持または増大を必要とする対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させるものである方法。
【請求項21】
エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させる方法であって、有効量の請求項3の細胞を対象に投与し;次いで、該維持または増大を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって該維持または増大を必要とする対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させるものである方法。
【請求項22】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項21の方法。
【請求項23】
対象の体内における骨の修復を促進する方法であって、対象から細胞を得て;細胞を請求項2のベクターでトランスフェクションし;遺伝子操作された細胞を対象に投与し;次いで、該促進を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって該促進を必要とする対象の体内における骨の修復を促進するものである方法。
【請求項24】
エストロゲンの減少により引き起こされるあるいはそれに伴う骨粗鬆症にかかっている対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させる方法であって、対象から細胞を得て;細胞を請求項2のベクターでトランスフェクションし;遺伝子操作された細胞を対象に投与し;次いで、該維持または増大を必要とする対象に有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって該維持または増大を必要とする対象における骨の体積、骨の質、または骨の強度を維持または増大させるものである方法。
【請求項25】
有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程が、発現されるBMP−2のレベルをさらに1.5ないし30倍増大させるものである、請求項24の方法。
【請求項26】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項24の方法。
【請求項27】
移植可能な骨マトリックスを製造する方法であって、細胞を得て;細胞を請求項2のベクターでトランスフェクションし;次いで、移植可能な骨マトリックスの形成に有効な時間、細胞を細胞結合マトリックスとともに培養する工程を含む方法。
【請求項28】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項27の方法。
【請求項29】
骨芽細胞の分化を刺激する方法であって、請求項2のベクターを投与し;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを投与する工程を含み、そうすることによって骨芽細胞の分化を刺激する発現を調節するものである方法。
【請求項30】
対象における骨の疾病を治療する方法であって、請求項2のベクターを投与し;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含み、そうすることによって対象における骨の疾病を治療するものである方法。
【請求項31】
対象における骨の疾病を治療する方法であって、有効量の請求項3の細胞を対象に投与し;次いで、有効量のエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストを対象に投与する工程を含み、そうすることによって対象における骨の疾病を治療するものである方法。
【請求項32】
細胞が間葉幹細胞、前駆細胞、または骨芽細胞に分化しうる細胞である請求項31の方法。
【請求項33】
試料中の化合物をエストロゲンアゴニストとして同定する方法であって、下記工程:
(a)ヒトエストロゲンに対する受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター核酸を含むベクターにより安定にトランスフェクションされたものであり、ここに該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答してレポーター核酸の発現を制御しうるものであり;
(b)ヒトエストロゲンがレポーター核酸の発現増加を引き起こす条件下で、トランスフェクションされた細胞系を、ヒトエストロゲンアゴニストを含むと考えられる試料と接触させ;次いで、
(c)レポーター核酸の発現レベルを測定する
を含み、バッファー対照により生じたレベルと比較して増大したレポーター核酸の発現レベルを測定することによって試料中のヒトエストロゲンアゴニストが同定されるものである方法。
【請求項34】
試料中の化合物をエストロゲンアンタゴニストとして同定する方法であって、下記工程:
(a)ヒトエストロゲンに対する受容体を発現する細胞系を用意し、該細胞系は、エストロゲン応答エレメントを含むBMP−2調節領域、またはそのフラグメントに対応する単離核酸に作動可能に連結されたレポーター核酸を含むベクターにより安定にトランスフェクションされたものであり、ここに該エストロゲン応答エレメントは、エストロゲンに応答してレポーター核酸の発現を制御しうるものであり;
(b)トランスフェクションされた細胞系を、ヒトエストロゲンアンタゴニストを含むと考えられる試料と接触させ、該試料には一定量のエストロゲンが添加されており、かかるアンタゴニストがない場合にはレポーター遺伝子の発現の測定可能な増大が生じるものであり;次いで、
(c)レポーター遺伝子の発現レベルを測定することを含み、かかるアンタゴニストがない場合にヒトエストロゲンにより生じるレベルと比較した場合のレポーター遺伝子の減少したレベルを測定することにより試料中のヒトエストロゲンアンタゴニストが同定されるものである方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−500925(P2006−500925A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529191(P2004−529191)
【出願日】平成15年8月18日(2003.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/023271
【国際公開番号】WO2004/016639
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【出願人】(598126759)イーサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (1)
【氏名又は名称原語表記】Yissum Research Development Company of the Hebrew University of Jerusalem
【Fターム(参考)】