説明

C型肝炎ウイルスコドン最適化非構造NS3/4A融合遺伝子

本発明の態様は、コドン最適化C型肝炎ウイルス(HCV)NS3/4A遺伝子の作製に関する。実施形態は、上記NS3/4A遺伝子、上記遺伝子の断片、上記核酸によりコードされるHCVペプチド、上記HCVペプチドをコードする核酸、上記ペプチドに対する抗体、上記核酸およびペプチドを含有する組成物、ならびに上記組成物の製造および使用方法、例えばHCV感染の治療および予防のための診断および薬剤(これらに限定されない)を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明の態様は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化された新規のC型肝炎ウイルス(HCV)NS3/4A遺伝子の作製に関する。実施形態は、コドン最適化NS3/4A遺伝子、上記核酸によりコードされるHCVペプチド、上記HCVペプチドをコードする核酸、上記ペプチドに対する抗体、上記核酸およびペプチドを含有する組成物、ならびに上記組成物の製造および使用方法、例えばHCV感染の治療および予防のための診断および薬剤(これらに限定されない)を包含する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、複製および増殖のために宿主細胞の生化学的機構を必要とする細胞内寄生体である。ウイルス粒子は全て、ウイルス構造タンパク質および酵素をコードする何らかの遺伝情報を含有する。遺伝物質は、二本鎖または一本鎖形態のDNAまたはRNAであり得る(Virology, Fields ed., third edition, Lippencott-Raven publishers, pp 72-83 (1996))。ウイルス核酸は、キャプシドと呼ばれるタンパク質の被膜に取り囲まれる(同上)。いくつかのウイルスでは、キャプシドは、エンベロープと呼ばれる脂質膜から成る付加的層により取り囲まれる(同上、83〜95)。
【0003】
典型的ウイルス生活環は、細胞表面受容体へのウイルス粒子の付着およびウイルスキャプシドのインターナリゼーションによる宿主細胞の感染に伴って開始する(同上、103)。したがって、ウイルスの宿主域は適切な細胞表面レセプターを発現する細胞に制限される。一旦インターナライズされると、ウイルス粒子はばらばらにされ、その核酸は転写され、翻訳され、または複製される(同上)。この時点で、ウイルスは溶菌的複製を受け得るが、この場合、新しいウイルス粒子が生成され、感染細胞から放出される(同上、105〜11)。インフルエンザウイルスは、宿主細胞の感染時に直ちに溶菌的複製を受けるウイルスの典型的例である(同上、1369〜85)。
【0004】
あるいはウイルスは、溶原期として言及される潜伏期に入り得るが、ここでは、ゲノムは複製されるが、しかしウイルスタンパク質は実質的に殆ど発現せず、また、ウイルス粒子は形成されない(同上、219〜29)。ヘルペスウイルス、例えばエプスタイン・バーウイルスは、宿主細胞中で潜伏感染を確立するウイルスの典型的例である(同上、229〜34)。結局、ウイルスが伝播するためには、それは溶原期を抜け出して、溶解期に入らねばならない。溶解期中に放出されるウイルス粒子は、同一個体の他の細胞に感染するか、あるいは別の個体に伝染され得るが、この場合は新規の感染が確立される。
【0005】
ウイルス生活環は細胞内および細胞外期の両方を含むため、ウイルス感染と闘うためには、体液性および細胞媒介性免疫防御系の両方が重要である(同上、467〜73)。ウイルスタンパク質に対する抗体は、細胞受容体とのウイルス粒子の相互作用を遮断するか、そうでなければ、インターナリゼーションまたは放出プロセスを妨害し得る(同上、471)。ウイルス生活環を妨害し得る抗体は、中和抗体と呼ばれる。
【0006】
細胞内複製中に、宿主細胞に対して異物であるウイルスタンパク質が産生され、これらのタンパク質のあるものは、感染細胞の表面に提示される主要組織適合複合体(MHC)分子とのカップリング後に細胞プロテアーゼにより消化される(同上、350〜58)。したがって感染細胞は、Tリンパ球、マクロファージまたはNK細胞により認識され、ウイルスが複製し、隣接細胞に伝播する前に抹殺される(同上、468〜70)。さらに、特に二本鎖RNAとしてのウイルス核酸の存在は、感染細胞の翻訳機構を止め、そしてイ
ンターフェロンとして既知である抗ウイルスシグナル伝達分子の産生を誘発する(同上、376〜79)。
【0007】
しかしながらウイルスは、宿主の免疫防御系をすり抜ける種々の手段を進化させてきた。例えば潜伏期(すなわち溶原期)を確立することにより、ウイルスは溶解期に入らず、体液性免疫防御系を回避する(同上、224)。潜伏期中、ウイルスタンパク質はほとんど産生されず、感染細胞は、それらの感染状態の形跡を周囲リンパ球およびマクロファージに示すことは殆どできない(同上、225〜26)。さらにいくつかのウイルスタンパク質、最も顕著には潜伏期中に産生されるものは、細胞媒介性免疫防御系に効率的に提示され得ないポリペプチド配列を進化させている(Levitskaya et al., Nature 375: 685-88 (1995))。最後に、いくつかのウイルスは、例えばMHC分子の表面発現を防止することにより(Fruh et al., J. Mol. Med. 75: 18-27 (1997))、あるいはインターフェロンシグナル伝達を撹乱することにより(Fortunato et al., Trends Microbiol. 8: 111-19 (2000))、感染宿主の免疫応答を積極的に妨げ得る。
【0008】
特に回避的なのは、一科としては分類されていないが、肝臓の細胞に感染する能力に基づいて分類される肝炎ウイルスである。C型肝炎ウイルス(HCV)は、フラビウイルス科の一本鎖RNAウイルスに属する(Virology, 上記、pp 945-51)。HCVゲノムは約9.6kb長であり、少なくとも10のポリペプチドをコードする(Kato, Microb. Comp. Genomics, 5: 129-151 (2000))。ゲノムRNAはある単一ポリタンパク質に翻訳され、これはその後、ウイルスおよび細胞プロテアーゼにより切断されて、機能性ポリペプチドを産生する(同上)。ポリタンパク質は、3つの構造タンパク質(コアタンパク質、E1およびE2)に、未知の機能を有するp7に、そして6つの非構造(NS)タンパク質(NS2、NS3、NS4A/B、NS5A/B)に切断される(同上)。NS3は、ウイルス成熟に必要とされるタンパク質分解事象のいくつかに関与するセリンプロテアーゼをコードし(Kwong et al., Antiviral Res., 41: 67-84 (1999))、そしてNS4AはNS3プロテアーゼに関するコファクターとして作用する(同上)。NS3はさらにNTPアーゼ活性を示し、in vitroでRNAヘリカーゼ活性を保有する(Kwong, et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 242: 171-96 (2000))。
【0009】
HCV感染は、典型的には急性期から慢性期に進行する(Virology、上記、pp 1041-47)。急性感染は、肝臓組織および末梢血中での高ウイルス複製および高ウイルス量により特徴付けられる(同上、1041-42)。急性感染は、感染個体の約15%において患者の免疫防御系により取り除かれ、他の85%では、ウイルスは慢性持続性感染を確立する(Lawrence, Adv. Intern. Med., 45: 65-105 (2000))。慢性期中、複製は肝臓で起こり、そしていくつかのウイルスは末梢血中で検出され得る(Virology、上記、pp 1042)。
【0010】
持続性感染の確立に不可欠であるのは、宿主の免疫防御系をすり抜けるための戦略の進化である。一本鎖RNAウイルスとしてのHCVは、そのゲノムの複製および転写において高突然変異率を示す(同上、1046)。したがって溶解期中に産生される抗体は慢性感染中に産生されるウイルス株をめったに不活化しない、ということが注目された(同上)。HCVはMHC−1分子における抗原のプロセシングおよび提示を妨害していないと思われるが、しかしウイルスNS5Aタンパク質はPKRプロテインキナーゼの抑制によりインターフェロンシグナル伝達の抑制に関与し得る(Tan et al., Virology, 284: 1-12 (2001))。
【0011】
感染宿主は、HCVウイルスに対する体液性および細胞性免疫応答の両方を備えるが、しかしほとんどの場合、応答は慢性疾患の確立を防止できない。急性期後、感染患者は抗ウイルス抗体、例えばエンベロープタンパク質E1およびE2に対する中和抗体を産生する(同上、1045)。この抗体応答は、慢性感染中、持続される(同上)。慢性感染患者で
は、肝臓もCD8+およびCD4+リンパ球の両方に浸潤される(同上、1044-45)。さらに感染患者は、ウイルス感染に対する早期応答としてインターフェロンを産生する(同上、1045)。感染に対する初期免疫応答の活力が、ウイルスが除去されるか否か、あるいは感染が慢性期に進行するか否かを決定する、と思われる(Pape et al., J. Viral. Hepat., 6 Supp. 1: 36-40 (1999))。その他の努力にもかかわらず、HCV感染の予防および治療のための効果的な免疫原および薬剤に対する必要性は明白である。
【発明の開示】
【0012】
新規のHCV単離物が発見された。HCVゲノムの新規NS3/4A断片が、HCVに感染した患者からクローニングされ、シーケンシングされた(配列番号1)。この配列は、最も密接に関連するHCV配列と93%相同であるに過ぎないことが判明した。実施形態は、このペプチド(配列番号2)またはその断片であって配列番号2のうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片、これらの分子をコードする核酸、上記核酸を有するベクター、ならびに上記ベクター、核酸またはペプチドを有する細胞を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る。NS3/4A核酸、その断片および対応するペプチドは、免疫原性であることが判明した。したがって、好ましい実施形態は、配列番号2のHCVペプチド、またはその断片であって配列番号2のうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号14および15)、あるいは上記ペプチドまたは断片をコードする核酸を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成るワクチン組成物および免疫原製剤を包含する。
【0013】
NS3/4Aペプチドの突然変異体も作製され、そして免疫原性であることが判明した。いくつかの突然変異体は、NS3/4Aペプチドの短縮(truncated)バージョンであり(例えば配列番号12および13)、そして他のものはタンパク質分解性開裂部位を欠く(例えば配列番号3〜11)。これらのペプチド(例えば配列番号3〜13)およびその断片であって配列番号3〜13のいずれか1つのうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号15〜26)、これらの分子をコードする核酸、上記核酸を有するベクター、ならびに上記ベクター、核酸またはペプチドを有する細胞は、本発明の実施形態である。特に好ましい実施形態は、配列番号3〜11のうち少なくとも1つのHCVペプチド、またはその断片であって配列番号3〜11のいずれか1つのうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号16〜26)、あるいは上記ペプチドまたは断片をコードする核酸を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成るワクチン組成物または免疫原製剤である。
【0014】
付加的実施形態としては、ヒトにおいて最も頻繁に用いられるコドンに関して最適化された配列を含むNS3/4Aコード核酸または対応するペプチドが挙げられる。コドン最適化NS3/4A(coNS3/4A)核酸配列の核酸配列は、配列番号35で提供されるが、一方、上記核酸配列によりコードされるペプチドは配列番号36で提供される。この核酸および対応するNS3/4Aペプチドは、いかなる既知のHCV配列またはゲノムとも対応しない。コドン最適化NS3/4Aコード核酸は、ヌクレオチド位置3417〜5475の領域内で、HCV−1と79%相同であるに過ぎないことが判明し、総計433の異なるヌクレオチドを含有した。コドン最適化核酸配列によりコードされるNS3/4Aペプチドは、HCV−1と98%相同であるに過ぎず、総計15の異なるアミノ酸を含有した。コドン最適化核酸は、体液性および細胞性応答に関して、ネイティブNS3/
4A遺伝子と比較して、より高い発現レベルのNS3を生成することが判明し、そしてより免疫原性であることが判明した。
【0015】
ヒトHepG2細胞の一過性トランスフェクションは、coNS3/4A遺伝子が、CMVプロモーターを用いる場合、wtNS3/4A遺伝子と比較して11倍高いレベルのNS3を生じる、ということを示した。NS4Aの存在はセムリキ森林ウイルス(SFV)による発現を増強する、ということも示された。SFV構築物を含有する野生型NS3/4Aは、SpeI−BStB1断片としてポリメラーゼ連鎖反応によりwtNS3/4A遺伝子を単離し、キャプシドの34アミノ酸長翻訳エンハンサー配列とその後のFMDV2a切断ペプチドを含有するpSFV10EnhのSpeI−BStB1部位に挿入することにより作製された。rSFV粒子中への組換えRNAのパッケージングは、2−ヘルパーRNA系を用いて実行された。コドン最適化およびSFVレプリカーゼにより媒介されるmRNA増幅はともに、より高レベルのNS3特異的抗体により立証されるような免疫原性改良を生じた。この免疫原性改良は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のより迅速なプライミング(priming)も生じた。HCVは非細胞溶解性ウイルスであるため、プライミングされたCTL応答の機能性は、NS3/4A発現同系腫瘍細胞を用いたin vivoチャレンジ(challenge)により評価した。腫瘍防御免疫のプライミングは免疫原およびCD8+CTLの内因性産生を要したが、しかしBおよびCD4+T細胞とは無関係であった。このモデルは、コドン最適化およびmRNA増幅によるNS3/4A特異的腫瘍抑制免疫性のより迅速なin vivo活性化を確証した。最後に、腫瘍注入後6〜12日目の、遺伝子銃を用いたcoNS3/4A遺伝子による治療的ワクチン接種は、in vivoでの腫瘍増殖を有意に低減した。コドン最適化およびmRNA増幅は、NS3/4Aの全体的な免疫原性を有効に増強する。したがってこれらのアプローチのいずれかまたは両方が、NS3/4AベースのHCV遺伝子ワクチンにおいて選択される。
【0016】
したがって、本発明の態様は、配列番号35の配列により提供される核酸配列、および/または配列番号36の配列により提供されるペプチド配列を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る組成物を包含する。例えば好ましい実施形態としては、配列番号35のうちの少なくとも12〜2112の間の任意数の連続したヌクレオチドまたはその相補鎖(例えば12〜15、15〜20、20〜30、30〜50、50〜100、100〜200、200〜500、500〜1000、1000〜1500、1500〜2079または1500〜2112個連続したヌクレオチド)を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る組成物が挙げられる。好ましい実施形態としては、配列番号35のうちの少なくとも12〜2112の間の任意数の連続したヌクレオチドまたはその相補鎖(例えば配列番号35のうちの少なくとも3、4、6、8、10、12、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100個連続したアミノ酸)を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る組成物も挙げられる。付加的実施形態としては、配列番号36またはその断片をコードする配列、即ち配列番号36のうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る核酸が挙げられる。さらなる実施形態としては、配列番号36の配列またはその断片、即ち配列番号36のうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成るペプチドが挙げられる。
【0017】
本明細書中に記載された組成物の製造および使用方法も提供される。具体化された核酸およびペプチドの製造方法のほかに、他の実施形態としては、HCV感染を治療または予防するために用いられ得る免疫原および/またはワクチン組成物の製造方法が挙げられる。いくつかの方法は、例えば単一組成物(例えばワクチン組成物)を処方するために、アジ
ュバントを上記のようなペプチドまたは核酸抗原(例えばHCVペプチドまたはHCV核酸)と混合することにより実行される。好ましい方法は、リバビリンを、本明細書中に開示されたHCV遺伝子または抗原と混合することを包含する。
【0018】
本明細書中に記載された組成物の好ましい使用方法は、HCVに対する免疫応答を必要とする動物に、本明細書中に記載された十分量の1つまたは複数の核酸またはペプチド実施形態を提供することを包含する。例えば一アプローチにより、HCVに対する免疫応答を必要とする動物(例えばHCVに感染する危険があるかまたはすでに感染した動物、例えばヒト)が同定され、そして上記の動物は、肝炎ウイルス抗原に対する免疫応答を増強または促進するのに有効である量のNS3/4A(配列番号2または配列番号36)、突然変異体NS3/4A(配列番号3〜13)、それらの断片(例えば配列番号14〜26)または上記分子をコードする核酸を提供される。付加的方法は、HCVに対する強力な免疫応答を必要とする動物を同定し、そして配列番号2〜27または配列番号36上に存在する抗原またはエピトープを含むペプチドまたは上記ペプチドをコードする核酸を含む組成物を上記動物に提供することにより実施される。特に好ましい方法は、HCVに対する免疫応答を必要とする動物を同定し、そして上記抗原に対する免疫応答を増強するかまたは促進するに十分な量のHCV抗原(例えばNS3/4A(配列番号2または配列番号36))、突然変異体NS3/4A(配列番号3〜13)、その断片であって配列番号2または配列番号36のうちの少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号14〜26)または1または複数のこれらの分子をコードする核酸を含む組成物を上記動物に提供することを包含する。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、アジュバント作用を提供する量のリバビリンも含有する。
【0019】
さらなる実施形態では、例えば遺伝子銃を用いて、本明細書中に記載されたHCV核酸(例えば上記のような配列番号35またはその断片)を、HCVに対する免疫応答を必要とする哺乳類に投与する。いくつかの実施形態では、遺伝子銃による送達の前に、ある量のリバビリンがDNA免疫原と混合される。他の実施形態では、DNA免疫原は、DNA接種の同一部位またはその付近でのリバビリンの投与の直前または後に、遺伝子銃により提供される。
【0020】
[発明の詳細な説明]
HCVのNS3/4Aドメインに対応する新規の核酸およびタンパク質は、HCVに感染した患者からクローニングした(配列番号1)。クローン配列はHCV配列との最大相同性を有するが、しかし最も近いHCV類縁体(寄託番号AJ 278830)とは93%相同であるに過ぎない、ということをGenBank検索は明示した。この新規のペプチド(配列番号2)、その断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)である断片(例えば配列番号14および15)、これらの分子をコードする核酸、上記核酸を有するベクター、ならびに上記ベクター、核酸またはペプチドを有する細胞は、本発明の実施形態である。NS3/4A遺伝子(配列番号1)および対応するペプチド(例えば配列番号2)がともにin vivoで免疫原性である、ということも発見された。
【0021】
新規NS3/4Aペプチドの突然変異体が作製された。短縮型突然変異体(例えば配列番号12および13)ならびにタンパク質分解性開裂部位を欠く突然変異体(配列番号3〜11)がin vivoで免疫原性である、ということも発見された。これらの新規ペプチド(配列番号3〜13)およびその断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35
、40、45または50個連続したアミノ酸)である断片(例えば配列番号16〜26)、これらの分子をコードする核酸、上記核酸を有するベクター、ならびに上記ベクター、核酸またはペプチドを有する細胞も、本発明の実施形態である。
【0022】
NS3/4Aをコードするコドン最適化核酸も作製され、免疫原性であることが判明した。配列番号1の核酸はコドン使用頻度に関して分析され、そしてその配列を、ヒト細胞において最も一般的に用いられるコドンと比較した。HCVはヒト病原体であるため、ウイルスが、ヒトタンパク質をコードすることが最も高頻度で見出されるコドン(例えば最適ヒトコドン)を用いるよう未だ進化していなかった、ということを発見することは予期されなかった。総計435ヌクレオチドを置換して、コドン最適化合成NS3/4A核酸を生成した。コドン最適化核酸配列によりコードされたNS3/4Aペプチド(配列番号36)は、HCV−1と98%相同であり、総計15の異なるアミノ酸を含有した。
【0023】
コドン最適化核酸(MSLF1またはcoNS3/4A)(配列番号35)は、ネイティブNS3/4Aよりin vitroで効率的に翻訳されることが、そしてMSLF1含有構築物で免疫されたマウスは野生型NS3/4A含有構築物で免疫されたマウスより有意に多いNS3/4A特異的抗体を生成することが判明した。さらに、MSLF1含有構築物で免疫されたマウスは、野生型NS3/4A含有構築物で免疫されたマウスより有効にNS3特異的CTLをプライミングし、そしてより良好なin vivo腫瘍抑制免疫応答を示す、ということが判明した。
【0024】
上記のペプチドおよび核酸は免疫原として有用であり、これらは単独でまたはアジュバントと一緒に投与され得る。好ましい実施形態は、1つまたは複数の上記の核酸および/またはペプチドを、アジュバントとともにまたはアジュバントを伴わずに含む組成物を包含する。即ち、本明細書中に記載された組成物のいくつかはアジュバントを用いてまたは用いずに調製され、そしてNS3/4Aペプチド(配列番号2または配列番号36)、またはその断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)である断片(例えば配列番号14および15)、あるいは1または複数のこれらの分子をコードする核酸(例えば配列番号35、またはその断片であって少なくとも12〜2112の間の任意数の連続したヌクレオチド(例えば12〜15、15〜20、20〜30、30〜50、50〜100、100〜200、200〜500、500〜1000、1000〜1500、1500〜2079または1500〜2112個連続したヌクレオチド)である断片)を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る。付加的組成物は、アジュバントを用いてまたは用いずに調製され、そしてNS3/4A突然変異体ペプチド(配列番号3〜13)およびその断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)である断片を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成る。
【0025】
リバビリンおよび抗原(例えば1または複数の上記HCVペプチドまたは核酸)を含む組成物は、抗原に対する動物の免疫応答を増強するかまたは促進する、ということも発見された。即ち、リバビリンは、本開示の目的のために、特定の抗原に対する免疫応答を増強するかまたは促進する能力を有する物質として言及される非常に有効な「アジュバント」である、ということが発見された。リバビリンのアジュバント活性は、抗原に対する免疫媒介性防御の有意の増大、抗原に対して作られた抗体の力価の増大、ならびに増殖性T細胞応答の増大により明示された。
【0026】
したがってリバビリンおよび本明細書中に記載された1または複数のペプチドまたは核酸を含む組成物(例えばワクチンおよびその他の薬剤)は、本発明の実施形態である。こ
れらの組成物は、リバビリンの量、リバビリンの形態、ならびにHCV核酸またはペプチドの配列によって変わり得る。
【0027】
本発明の実施形態は、上記の組成物の製造および使用方法も包含する。いくつかの方法は、NS3/4A、コドン最適化NS3/4A、突然変異体NS3/4A、その断片であって少なくとも9〜100の間の任意数の連続したヌクレオチド(例えば9、12、15、18、21、24、27、30、50、60、75、80、90または100個連続したヌクレオチド)である断片をコードする核酸、該核酸に対応するペプチド、該核酸を含む構築物、ならびに上記組成物を含有する細胞の製造方法を包含する。しかしながら好ましい方法は、新しく発見されたNS3/4A断片、コドン最適化NS3/4A、またはNS3/4A突然変異体(例えば短縮型突然変異体またはタンパク質分解性開裂部位を欠く突然変異)またはその断片、あるいは上記のような1つまたは複数のこれらの分子をコードする核酸を含み、それらから成り、または本質的にそれらから成るワクチン組成物または免疫原製剤の製造に関する。本明細書中に記載された方法とともに用いるための好ましい断片としては、配列番号12〜27、ならびに少なくとも30個連続したヌクレオチドを含有する配列番号35の断片が挙げられる。上記の組成物は、アジュバント(例えばリバビリン)を提供し、HCV抗原(例えば(配列番号2〜11または36)のようなHCV抗原を含むペプチド、または配列番号12〜26のようなそれらの断片、あるいは1または複数の上記ペプチドをコードする核酸)を提供し、そして上記アジュバントおよび上記抗原を混合して、上記抗原に対する被験体における免疫応答を増強するかまたは促進するために用いられ得る組成物を処方することにより製造され得る。
【0028】
抗原に対する動物、例えばヒトにおける免疫応答を増強するかまたは促進する方法も、提供される。このような方法は、例えばHCVに対する免疫応答を必要とする動物を同定し、そして1または複数の上記の核酸またはペプチドならびに抗原/エピトープに対する免疫応答を増強するかまたは促進するのに有効な量のアジュバントを含む組成物を上記動物に提供することにより実施され得る。いくつかの実施形態では、抗原およびアジュバントは、単一の混合物としてではなく、別々に投与される。好ましくはこの場合、アジュバントは抗原投与の直前にまたは直後に投与される。好ましい方法は、リバビリンおよびNS3/4A(例えば配列番号2)、コドン最適化NS3/4A(例えば配列番号36)、突然変異体NS3/4A(例えば配列番号3〜13)、その断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号14〜26)、あるいは上記分子のいずれか1または複数をコードする核酸を必要とする動物に提供することを包含する。
【0029】
その他の実施形態は、HCV感染を治療し、予防する方法に関する。一アプローチにより、HCV感染の治療および/または予防のための薬剤を調製するために、本明細書中に記載された1または複数のHCV核酸またはペプチドを含む免疫原が用いられる。別のアプローチにより、HCV感染を予防および/または治療する薬剤を必要とする個体が同定され、そして上記個体は、リバビリンおよびHCV抗原、例えばNS3/4A(例えば配列番号2)、コドン最適化NS3/4A(例えば配列番号36)または突然変異体NS3/4A(例えば配列番号3〜13)、その断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号14〜26)、あるいはこれらの分子のいずれか1つまたは複数をコードする核酸を含む薬剤を提供される。
【0030】
以下の節は、新規のNS3/4A遺伝子の発見、コドン最適化NS3/4A遺伝子、NS3/4A突然変異体の作製、ならびにそれらに対応する核酸およびペプチドの特性を考
察する。
【0031】
NS3/4A、NS3/4A突然変異体およびコドン最適化NS3/4A
HCVのNS3/4Aドメインに対応する新規の核酸およびタンパク質は、HCVに感染した患者からクローニングした(配列番号1および2)。クローン配列はHCV配列との最大相同性を有するが、しかし最も近いHCV類縁体(寄託番号AJ 278830)とは93%相同であるに過ぎない、ということをGenBank検索は明示した。この新規のNS3/4Aペプチドの短縮型突然変異体、およびタンパク質分解性開裂部位を欠くNS3/4A突然変異体、(ならびに対応する核酸)も作製された。さらに、ヒトコドン最適化NS3/4A核酸およびペプチドが作製された。これらの新規ペプチドおよび上記ペプチドをコードする核酸は、HCVに対する免疫応答を提供するようレシピエントを誘導する組成物を製造するためにアジュバントと混合され得る強力な免疫原である、ということが発見された。新規のNS3/4A遺伝子のクローニング、ならびに種々のNS3/4A突然変異体およびコドン最適化NS3/4A遺伝子の作製を、以下の実施例に記載する。
【実施例1】
【0032】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、HCV感染患者(HCV遺伝子型1a)の血清からNS3/4A配列を増幅した。総RNAを血清から抽出し、そしてcDNA合成およびPCRを標準プロトコルに従って実施した(Chen M et al., J. Med. Virol. 43: 223-226 (1995))。アンチセンスプライマー「NS4KR」(5’−CCG TCT AGA TCA GCA CTC TTC CAT TTC ATC−3’(配列番号28))を用いて、cDNA合成を開始した。このcDNAから、NS3およびNS4A遺伝子を包含する、アミノ酸1007〜1711に対応するHCVの2079塩基対DNA断片を増幅した。高忠実性ポリメラーゼ(Expand High Fidelity PCR, Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germany)を、「NS3KF」プライマー(5’−CCT GAA TTC
ATG GCG CCT ATC ACG GCC TAT−3’(配列番号29))およびNS4KRプライマーとともに用いた。NS3KFプライマーはEcoRI制限酵素切断部位および開始コドンを含有し、そしてプライマーNS4KRはXbaI制限酵素切断部位および停止コドンを含有した。
【0033】
次に増幅断片をシーケンシングした(配列番号1)。配列比較分析は、遺伝子断片が遺伝子型1aのウイルス株から増幅される、ということを明示した。NCBIウエブサイトを用いたGenBankデータベースに対するコンピュータによるBLAST検索は、最も近いHCVホモログがヌクレオチド配列において93%同一である、ということを明示した。
【0034】
次に増幅DNA断片をEcoRIおよびXbaIで消化し、同一酵素で消化されたpcDNA3.1/Hisプラスミド(Invitrogen)中にインサートした。次にNS3/4A−pcDNA3.1プラスミドをEcoRIおよびXbaIで消化し、インサートをQiaQuickキット(Qiagen, Hamburg, Germany)を用いて精製し、そしてNS3/4A−pVAXプラスミドを生成するために、EcoRI/XbaI消化pVAXベクター(Invitrogen)にライゲーションした。
【0035】
NS3/4A DNAからNS4A配列を欠失することにより、rNS3短縮型突然変異体を得た。したがってそれぞれEcoRIおよびNotI制限部位を含有するプライマーNS3KFおよび3’NotI(5’−CCA CGC GGC CGC GAC GAC CTA CAG−3’(配列番号30))を用いて、NS3/4A−pVAXのNS3遺伝子配列をPCR増幅した。次にNS3断片(1850bp)をEcoRIおよびNotI消化pVAXプラスミドにライゲーションして、NS3−pVAXベクターを生成した。プラスミドをBL21大腸菌細胞中で増殖させた。プラスミドをシーケンシングし、制限酵素切断により立証し、結果は、本来の配列に基づいて予測されたとおりであっ
た。
【0036】
表1は、NS3およびNS4A間の切断点として言及されるNS3/4Aのタンパク質分解性開裂部位の配列を記載する。いくつかの異なるNS3/4A切断点突然変異体を生成するために、この野生型切断点配列を多数の異なる方法で突然変異化した。表1は、これらの突然変異体切断点配列も同定する。表1に列挙した断片は、HCVに対する上記動物における免疫応答を誘導するために、動物への投与のための組成物中に、アジュバント(例えばリバビリン)とともにまたはアジュバントを伴わずに組入れられ得る好ましい免疫原である。
【0037】
【表1】

【0038】
NS3およびNS4A間のタンパク質分解性切断部位を変更するために、メーカーの推奨に従って、QUICKCHANGE(商標)突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて、NS3/4A−pVAXプラスミドを突然変異化した。例えば「TPT」突然変異を生成するために、プライマー5’−CTGGAGGTCGTCACGCCTACCTGGGTGCTCGTT−3’(配列番号31)および5’−ACCGAGCACCCAGGTAGGCGTGACGACCTCCAG−3’(配列番号32)を用いてプラスミドを増幅して、NS3/4A−TPT−pVAXを生じた。例えば「RGT」突然変異を生成するために、プライマー5’−CTGGAGGTCGTCCGCGGTACCTGGGTGCTCGTT−3’(配列番号33)および5’−ACCGAGCACCCAGGTACC−GCGGACGACCTCCAG−3’(配列番号34)を用いてプラスミドを増幅して、NS3/4A−RGT−pVAXを生じた。全ての突然変異化構築物をシーケンシングして、突然変異が正しく作製されていたことを立証した。コンピテントBL21大腸菌中で、プラスミドを増殖させた。
【0039】
ヒト細胞中で最も一般的に用いられるコドンに関して、予め単離され、シーケンシングされた固有のNS3/4A遺伝子の配列(配列番号1)のコドン使用頻度を分析した。総
計435ヌクレオチドを置換して、コドン使用頻度をヒト細胞に最適化した。配列をRetrogen Inc. (6645 Nancy Ridge Drive, San Diego, CA92121)に送リ、彼等に、全長合成コドン最適化NS3/4A遺伝子を生成するための説明書を提供した。コドン最適化NS3/4A遺伝子は、HCV−1参考株のヌクレオチド位置3417〜5475間の領域内に79%の配列相同性を有した。総計433ヌクレオチドが異なった。アミノ酸レベルでは、HCV−1株との相同は98%であり、総計15アミノ酸が異なった。
【0040】
高忠実性ポリメラーゼ(Expand High Fidelity PCR, Boehringer-Mannheim, Mannheim,
Germany)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、NS3およびNS4A、NS3/4A遺伝子断片を包含するアミノ酸1007〜1711に対応するHCVの2.1kb DNA断片を増幅した。次に、MSLF1−pVAX(coNS3/4A−pVAX)プラスミドを生成するBamHIおよびXbaIによって消化されたpVAXベクター(Invitrogen, San Diego)中にアンプリコンを挿入した。全発現構築物をシーケンシングした。プラスミドを、コンピテントBL21大腸菌中で増殖させた。in vivo注入のために用いられるプラスミドDNAを、メーカーの使用説明書(Qiagen GmbH, Hilden, FRG)に従って、QiagenDNA精製カラムを用いて精製した。その結果生じたプラスミドDNAの濃度を分光光度的に確定し(Dynaquant, Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、そして精製DNAを1mg/mlの濃度で滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解した。
【0041】
wtNS3/4A(野生型NS3/4A)およびcoNS3/4AプラスミドからのNS3およびNS3/4Aタンパク質の発現を、in vitro転写および翻訳検定により分析した。検定は、タンパク質がプラスミドから正確に翻訳され、そしてcoNS3/4AプラスミドはwtNS3/4Aプラスミドと比較した場合、より高いプラスミド希釈で検出可能なNS3およびNS3/4Aバンドを生じる、ということを示した。この結果は、coNS3/4Aプラスミドからのin vitro翻訳がwtNS3/4Aより効率的である、という強力な証拠を提供した。発現レベルをより精確に比較するために、HepG2細胞をwtNS3/4AおよびcoNS3/4Aプラスミドで一過的にトランスフェクトした。これらの実験は、濃度測定および組換えNS3の標準曲線により確定されるように、coNS3/4Aプラスミドが、wtNS3/4Aプラスミドと比較して、11倍高いNS3タンパク質の発現レベルを生じる、ということを明示した。wtNS3/4AおよびcoNS3/4Aプラスミドはサイズが同一であるため、プラスミド間のトランスフェクション効率に任意の大きな差があるとは考えられない。トランスフェクトされ、SFV感染されたcoNS3/4Aプラスミドの染色により、BHK細胞は前に観察されたような類似したNS3の核周囲および細胞質分布を明示し、このことは、細胞内局在化不変を確証した。
【0042】
いくつかの核酸実施形態は、本明細書中に記載されたHCVペプチドをコードするヌクレオチド(配列番号2〜11または配列番号36)またはその断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号14および15)を包含する。例えばいくつかの実施形態としては、ゲノムDNA、RNAおよびこれらのHCVペプチドをコードするcDNAが挙げられる。HCVヌクレオチド実施形態は、配列表に示されたDNA配列(例えば配列番号1または配列番号35)を包含するだけでなく、配列表に示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(例えば配列番号2〜11または配列番号36)、ならびにストリンジェントな条件下(例えば0.5MのNaHPO4、7.0%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中で50℃でフィルター結合DNAとのハイブリダイゼーション、ならびに50℃で0.2×SSC/0.2%SDS中での洗浄)、およびより低ストリンジェントな条件下(例えば0.5MのNaHPO4、7.0%のドデシル硫酸ナトリウム(S
DS)、1mMのEDTA中で37℃でのハイブリダイゼーション、ならびに37℃で0.2×SSC/0.2%SDS中での洗浄)において配列表に提供されたアミノ酸配列をコードするDNA配列(配列番号2〜11または配列番号36)とハイブリダイズする任意のヌクレオチド配列も包含する。
【0043】
本発明の核酸実施形態としては、上記の配列の断片、修飾体、誘導体および変異体も挙げられる。例えば所望の実施形態としては、新規のHCV配列またはそれと相補的な配列の1つのうちの少なくとも25個連続した塩基を有する核酸が挙げられ、そして好ましい断片は、配列番号2または配列番号36のNS3/4A分子、または配列番号3〜13の突然変異体NS3/4A分子をコードする核酸、あるいはそれと相補的な配列のうちの少なくとも25個連続した塩基を含む。
【0044】
この点では、本明細書中に記載された核酸実施形態は、配列番号1または配列番号35のうちの約12〜約2112の間の任意数の連続したヌクレオチドを有し得る。例えばいくつかのDNA断片は、配列番号1または配列番号35のうちの少なくとも12〜15、15〜20、20〜30、30〜50、50〜100、100〜200、200〜500、500〜1000、1000〜1500、1500〜2079または1500〜2112個連続したヌクレオチド、あるいはその相補鎖を有する核酸を包含する。これらの核酸実施形態は、変更がHCV核酸の構造または機能(例えば免疫原として役立つ能力)に有意に影響を及ぼさない限り、置換、付加または欠失によっても変更され得る。例えばヌクレオチドコード配列の縮重のため、配列番号2〜13または配列番号36で示されるような同一HCVアミノ酸配列を実質的にコードする他のDNA配列が、いくつかの実施形態で用いられ得る。これらの例としては、HCVペプチドの全部または一部をコードする核酸配列(配列番号2〜13)、あるいは配列内の機能的に等価のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換により変更され、したがってサイレント変化が生じるか、または配列内の機能的に等価でないアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換により変更され、したがって検出可能な変化を生じる配列の全部または一部を相補する核酸が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の核酸実施形態は、上記の修飾の点から見て、配列番号2〜27または配列番号36のいずれか1つをコードする核酸を含み、それらから成りまたは本質的にそれらから成ると言える。
【0045】
上記の核酸配列を用いることにより、これらの分子を相補するプローブが設計され、オリゴヌクレオチド合成により製造され得る。望ましいプローブは、このHCV単離体に固有である配列番号1の核酸配列を含む。そのいくつかがそれ自体新規のHCV配列であり得るHCVの天然供給源を単離するために、これらのプローブを用いて患者からのcDNAをスクリーニングし得る。スクリーニングは、フィルターハイブリダイゼーションによる、または例えばPCRによるものであり得る。フィルターハイブリダイゼーションでは、標識化プローブは好ましくは、このNS3/4Aペプチドに固有である配列番号1の核酸配列の少なくとも15〜30塩基対を含有する。用いられるハイブリダイゼーション洗浄条件は、好ましくは中〜高ストリンジェントのものである。ハイブリダイゼーションは、0.5MのNaHPO4、7.0%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中で42℃で一晩実施され、そして洗浄は、0.2×SSC/0.2%SDS中で42℃で実施され得る。このような条件に関する手引きとしては、例えばSambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Press, N.Y.;およびAusubel et al.、 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
【0046】
HCV核酸は、本明細書中に記載された核酸を用いて、HCVに感染した患者からも単離され得る(実施例1も参照)。したがってHCV感染患者から得られるRNAが逆転写され、その結果生じたcDNAはPCRまたは別の増幅技法を用いて増幅される。プライ
マーは、好ましくはNS3/4A配列(配列番号1)から得られる。
【0047】
PCR技法の再検討のためには、Molecular Cloning to Genetic Engineering White, B.A. Ed. In Methods in Molecular Biology 67: Humana Press, Totowa (1997)ならびに「PCR Methods and Applications」という表題の出版物(1991, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。mRNAの増幅のためには、mRNAを逆転写してcDNAとし、その後PCR処理する(RT−PCR)こと、あるいは米国特許第5,322,770号に記載されているように、両過程のために単一酵素を用いることは本発明の範囲内である。別の技法は、Marshall R.L. et al. (PCR Methods and Applications 4: 80-84, 1994)に記載されているように、逆転写酵素不斉ギャップリガーゼ連鎖反応(Reverse Transciptase Asymmetric Gap Ligase Chain Reaction (RT−AGLCR))の使用を包含する。
【0048】
要するに、RNAは標準手法に従って単離される。逆転写反応は、一次鎖合成のプライマーとして増幅断片のほとんどの5’末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNA上で実施される。その結果生じるRNA/DNAハイブリッドは次に、標準ターミナルトランスフェラーゼ反応を用いてグアニンテールが付加(tailed)される。次にハイブリッドはRNase Hで消化され、そして二次鎖合成がポリCプライマーでプライミングされる。したがって増幅断片の下流のcDNA配列は、容易に単離される。用いられ得るクローニング戦略の再検討に関しては、例えばSambrook et al., 1989(上記)を参照されたい。
【0049】
これらの増幅手法の各々において、増幅されるべき配列のいずれかの側のプライマーが、dNTPおよび熱安定性ポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼ、PfuポリメラーゼまたはVentポリメラーゼと一緒に、適切に調製された核酸試料に付加される。試料中の核酸は変性され、そしてプライマーは、試料中の相補的核酸配列と特異的にハイブリダイズされる。次にハイブリダイズ化プライマーが延長される。その後、変性、ハイブリダイゼーションおよび延長の別のサイクルが開始される。サイクルは多数回反復されて、プライマー部位間の核酸配列を含有する増幅断片を生成する。PCRはさらに、いくつかの特許、例えば米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,965,188号に記載されている。
【0050】
プライマーは、このNS3/4A分子に固有である(配列番号1)の核酸配列の一部と実質的に相補的であり、それによりプライマー間の配列を増幅させるよう選択される。好ましくはプライマーは、少なくとも16〜20、20〜25または25〜30ヌクレオチド長の間の任意数であり得る。安定なハイブリッドの形成は、DNAの溶融温度(Tm)に依っている。Tmは、プライマーの長さ、溶液のイオン強度およびG+C含量に依っている。G:C対は3つのH結合により保持され、一方、A:T対は2つのみを有するため、プライマーのG+C含量が高いほど、溶融温度は高い。本明細書中に記載された増幅プライマーのG+C含量は、好ましくは10%〜75%、さらに好ましくは35%〜60%、最も好ましくは40%〜55%の範囲である。特定組の検定条件下でのプライマーに関する適切な長さは、当業者により経験的に確定され得る。
【0051】
プライマーのスペーシングは、増幅されるべきセグメントの長さに関連づけられる。本明細書中に記載された実施形態の情況では、HCVペプチドをコードする核酸配列を保有する増幅セグメントは、少なくとも約25bpからHCVゲノムの全長までのサイズ範囲であり得る。25〜1000bpの増幅断片が典型的であり、50〜1000bpの断片が好ましく、そして100〜600bpの断片が非常に好ましい。増幅プライマーは、NS3/4A領域の特異的増幅を可能にする任意の配列を有し、そして例えばクローニングを促すための制限酵素認識部位のような修飾を包含し得る、と理解される。
【0052】
PCR産物は、増幅配列がHCVペプチドの配列を表すことを保証するようサブクローニングされ、シーケンシングされ得る。次にPCR断片を用いて、種々の方法により全長cDNAクローンを単離し得る。例えば増幅断片は標識され、cDNAライブラリー、例えばバクテリオファージcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いられ得る。あるいは標識化断片を用いて、ゲノムライブラリーのスクリーニングによりゲノムクローンを単離し得る。さらに発現ライブラリーは、例えば感染患者から単離されるRNAから合成されるcDNAを利用して構築し得る。このようにして、標準抗体スクリーニング技法をHCV遺伝子産物に対して作られた抗体とともに用いて、HCV遺伝子産物を単離し得る(スクリーニング技法に関しては、例えばHarlow, E. and Lane, eds., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照されたい)。
【0053】
本発明の実施形態は、(a)上記核酸配列および/またはそれらの相補体(即ちアンチセンス)のいずれかを含有するDNAベクター;(b)核酸の発現を司る調節要素と有効に結合する上記核酸配列のいずれかを含有するDNA発現ベクター;ならびに(c)宿主細胞中でのコード配列の発現を司る調節要素と有効に結合する上記核酸配列のいずれかを含有する遺伝子工学処理宿主細胞も包含する。これらの組換え構築物は、宿主細胞中で自律的に複製し得る。あるいは組換え構築物は、宿主細胞の染色体DNA中に組入れられるようになり得る。このような組換えポリヌクレオチドは典型的には、人為操作による半合成または合成起源のHCVゲノムまたはcDNAポリヌクレオチドを含む。したがって天然に生じないこれらの配列およびその相補体を含む組換え核酸が提供される。
【0054】
HCVペプチドをコードする核酸、あるいはそれらが現実に出現するようにHCV遺伝子を相補する配列を有する核酸が用いられ得るが、しかしそれらはしばしば、例えば欠失、置換または挿入により変更され、そしてヒトに存在しない配列を伴い得る。本明細書中で用いる場合、調節要素としては、誘導性および非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーターならびに発現を誘導し調節する当業者に既知のその他の要素が挙げられるが、これらに限定されない。このような調節要素としては、サイトメガロウイルスhCMV即時性遺伝子、SV40アデノウイルスの早期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fd外被タンパク質の制御領域、3−ホスホグリセレートキナーゼのためのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーターおよび酵母接合因子のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
さらに、組換えHCVペプチドコード核酸配列およびそれらの相補的配列は、それらのプロセシングまたは発現を修飾するよう、設計され得る。例えば本明細書中に記載されたHCV核酸は、プロモーター配列および/またはリボソーム結合部位と併合され得るし、あるいはシグナル配列は、ペプチドの分泌を可能にし、それにより収穫または生物利用能を促進するために、HCVペプチドコード配列の上流に挿入され得るが、これらに限定されない。さらに所定のHCV核酸は、翻訳、開始および/または終止配列を作製しおよび/または破壊するために、あるいはコード領域に変異を作製しおよび/または新規制限部位を形成するかまたは先在するものを破壊するために、あるいはin vitro修飾をさらに促進するために、in vitroまたはin vivoで突然変異処理され得る(実施例1参照)。当該技術分野で既知の突然変異誘発のための任意の技法が用いられ、例としてはin vitro部位特異的突然変異誘発(Hutchinson et al., J. Biol. Chem., 253: 6551 (1978))が挙げられるが、これらに限定されない。上記のHCVペプチドをコードする核酸は、HCVペプチドを発現する組換え構築物を作製するために、分子生物学における慣用的技法を用いて操作され得る。
【0056】
さらに、その他のタンパク質またはその他のタンパク質のドメインをコードする核酸は、融合タンパク質を作製するために、HCVペプチドをコードする核酸と連結され得る。融合タンパク質をコードするヌクレオチドとしては、全長NS3/4A配列(配列番号2または配列番号36)、突然変異体NS3/4A配列(例えば配列番号3〜11)、または非関連タンパク質またはペプチドと融合したNS3/4A配列のペプチド断片、例えば下記のようなポリヒスチジン、ヘマグルチニン、酵素、蛍光タンパク質または発光タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
構築物「NS3/4A−pVAX」は、構築物「NS3−pVAX」よりin vivoで有意に免疫原性である、ということが発見された。意外にも、コドン最適化NS3/4A含有構築物(「MSLF1−pVAX」)はNS3/4ApVAXよりin vivoでより免疫原性である、ということも発見された。以下の実施例は、これらの実験を記載する。
【実施例2】
【0058】
体液性免疫応答がNS3−pVAXおよびNS3/4A−pVAXベクターにより引き出されたか否かを判定するために、メーカーの使用説明書に従ってQiagenDNA精製系を用いて、実施例1に記載した発現構築物を精製し、そして精製DNAベクターを用いて4〜10匹のBalb/cマウスの群を免疫した。以前に記載されたように(Davis et al., Human Gene Therapy 4(6): 733 (1993))、再生中の前脛骨(TA)筋に直接プラスミドを注入した。要するに、0.9%滅菌NaCl中の0.01mMの心臓毒(Latoxan, Rosans, France)50μl/TAをマウスに筋注した。5日後、各TA筋に、rNS3またはDNAを含有するPBS 50μlを注入した。
【0059】
近交マウス系統C57/BL6(H−2b)、Balb/C(H−2d)およびCBA(H−2k)を、Mollegard Denmark, Charles River Uppsala, SwedenまたはB&K Sollentuna Swedenの繁殖施設から入手した。全マウスが雌であり、4〜8週齢で用いた。体液性応答をモニタリングするために、全マウスに50μl/TAのプラスミドDNAを4週間毎に追加抗原注射した。さらに数匹のマウスには、本明細書中に記載したように精製した組換えNS3(rNS3)タンパク質を投与した。rNS3摂取マウスには、2回より多く免疫することはなかった。全マウスを、月に2回採血した。
【0060】
酵素免疫測定法(Enzyme immunosorbent assays)(EIA)を用いて、マウスNS3特異的抗体の存在を検出した。これらの検定を、本質的には記載どおりに実施した(Chen
et al., Hepatology 28 (1): 219 (1998))。要するに、rNS3を、50mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に1μg/mlで、96ウエルマイクロタイタープレート(Nunc, Copenhagen, Denmark)に4℃で一晩、受動的に吸着させた。次に、PBS、2%ヤギ血清および1%ウシ血清アルブミンを含有する希釈緩衝液中で37℃で1時間インキュベーションすることにより、プレートをブロックした。次に1:60から開始するマウス血清の連続希釈液を、プレート上で1時間インキュベートした。アルカリ性ホスファターゼ接合ヤギ抗マウスIgG(Sigma Cell Products, Saint Louis, MO)と、その後の基質pNPP(1錠/5mlの1Mジエタノールアミン緩衝液+0.5mMのMgCl2)の付加により、結合マウス血清抗体を検出した。1MのNaOHの付加により反応を停止して、吸光度を405nmで読取った。
【0061】
4週間後、NS3/4A−pVAXで免疫したマウス5匹のうち4匹が、NS3抗体を産生していたが、一方、NS3−pVAXで免疫した5匹のうち1匹が、抗体を産生した(図1)。6週間後、NS3/4A−pVAXで免疫したマウス5匹のうち4匹は高レベル(>104)のNS3抗体(平均レベル10800±4830)を産生し、そして1匹は2160の力価を有した。NS3−pVAXで免疫したマウスは全てNS3抗体を産生
したが、しかしそれらのうち、NS3/4A−pVAX構築物により産生されたような高レベルを発現したものはなかった(平均レベル1800±805)。NS3/4A融合構築物により誘導される抗体レベルは、6週目でNS3−pVAXにより誘導されるものより有意に高かった(平均順位7.6対3.4、p<0.05、Mann-Whitney順位和検定、およびp<0.01、スチューデントt検定)。したがってNS3−pVAXまたはNS3/4A−pVAXによる免疫は、NS3特異的抗体の産生を生じたが、NS3/4A含有構築物はより強力な免疫原であった。
【0062】
同様の実験を実行して、NS3/4A−pVAXおよびMSLF1−pVAX構築物の免疫原性を比較した。しかしながらヒトにおける将来的ワクチン接種計画をより良好になぞらえるために、遺伝子銃を用いて10匹のマウスの群にプラスミドを送達した。要するに、製造者(Bio−Rad Laboratories, Hercules, CA)により供給されたプロトコルに従って、プラスミドDNAを金粒子と連結した。免疫前に注射域を剃毛し、メーカーのプロトコルに従って免疫した。各注入用量は、4μgのプラスミドDNAを含有した。0、4および8週目に、免疫した。
【0063】
NS3特異的抗体は、二次および三次免疫感作後2週間目にMSLF1−pVAX構築物で免疫したマウスにおいて有意に高かったため、MSLF1遺伝子は、ネイティブNS3/4A遺伝子より免疫原性である、ということが判明した(表2)。これらの結果は、コドン最適化MSLF1−pVAXがNS3/4A−pVAXより強力なB細胞免疫原である、ということを確証した。
【0064】
【表2】

【0065】
以下の実施例は、MSLF−1(coNS3/4a)が強力な体液性応答を生じるというさらなる証拠を提供する。
<実施例2A>
【0066】
異なるNS3遺伝子の内因性の免疫原性を試験するために、BALB/c(H−2d)マウスの群を以下のベクターで免疫した:wtNS3/4A(野生型NS3/4A)、coNS3/4A(コドン最適化NS3/4AまたはMSLF−1)またはwtNS3/4A−SFV(SFV発現から得られる野生型NS3/4A)。4μgDNAを遺伝子銃を用いて投与し、そして107用量のSFV粒子を皮下注射(s.c.)した。4週間後に、マウスに追加免疫した。wtNS3/4A−SFVで免疫したマウスは最初の注射後にすでに抗体を発現したが、これは、強力な免疫原性を示唆する(図10)。2回目の免疫後2週間目に、coNS3/4AまたはwtNS3/4A−SFVベクターで免疫されたほとんどのマウスは103以上の平均抗体レベルを発現した(図10)。これに反して、wtNS3/4Aプラスミドで免疫したマウスで、6週間目に検出可能なNS3特異的抗体を発現していたものはなかった(図10)。したがってコドン最適化およびSFVによるmRNA増幅はともに、NS3/4A遺伝子のB細胞免疫原性増大を生じる。
【0067】
wtNS3/4A、coNS3/4AおよびwtNS3/4A−SFV免疫によりプライミングしたT細胞応答のTヘルパー1(Th1)およびTh2−非対称性(skewing)を間接的に比較するために、NS3特異的IgG1(Th2)およびIgG2a(Th1)抗体のレベルを分析した(図10)。アジュバントを用いてまたは用いずにrNS3で免疫したIgG2a/IgG1比は、マウスハプロタイプにかかわらず、常に<1であり、Th2優勢応答を示していた。対照的に、wtNS3(野生型NS3)、wtNS3/4AまたはcoNS3/4A含有プラスミドで筋内免疫したマウスは、>1であるIgG2a/IgG1比により立証されるTh1に傾いたTh細胞応答を有した(図10)。したがってコドン最適化は、IgGサブクラス分布を変えなかった。遺伝子銃を用いてNS3/4AでBALB/cマウスを遺伝子免疫した場合、サブクラス比は混合型のTh1/Th2応答を示唆した(図10)。ネイティブプラスミドと比較して、コドン最適化プラスミドはB細胞のin vitro刺激能力増大を示さなかったが、これは何らの主要免疫刺激モチーフも失われておらず、導入もされていないことを示唆する、ということに留意すべきである。
【0068】
SFVを用いた免疫は、Th1−または混合Th1/Th2−様アイソタイプ分布をプライミングした。wtNS3/4A−SFV免疫後の抗NS3 IgG2a/IgG1比は、異なる実験間で2.4〜20の範囲であったが、これはTh1様応答の証拠を提示する。これは、Th−1に傾いたIgGサブクラス分布が観察されたSFVベクターを用いた以前の経験と類似する。
【0069】
以下の実施例は、タンパク質分解性開裂部位を欠く突然変異体NS3/4AペプチドがNS3に対する免疫応答を引き出すか否かを判定するために実施した実験を記載する。
【実施例3】
【0070】
NS3/4Aの免疫原性増強が専らNS4Aの存在に起因するか否か、あるいはNS3/4A融合タンパク質がさらにNS3/4A接合部で切断される必要があるか否かを試験するために、別の組の実験を実施した。第一の実験では、NS3−pVAX、NS3/4A−pVAXおよび突然変異体NS3/4A構築物の免疫原性を、Balb/cマウスで比較した。マウスを上記のように0週目に免疫し、2週間後、全マウスを採血して、1:60の血清希釈液でのNS3に対する抗体の存在を判断した(表3)。4週目にマウスを再び採血した。表3に示したように、全構築物が免疫応答を誘導した;例えば突然変異体構築物NS3/4A−TGT−pVAXベクターは、NS3−pVAXベクターに匹敵した(4/10対0/10;NS、フィッシャーの正確確率検定)。しかしながらNS3/4A−pVAXベクターは突然変異体構築物より強力であった。
【0071】
【表3】

【0072】
感染の慢性期中、HCVは肝細胞中で複製し、そして肝臓内に広がる。慢性および持続性ウイルス感染と闘う場合の主要因子は、細胞媒介性免疫防御系である。CD4+およびCD8+リンパ球はHCV感染の慢性期中に肝臓に浸潤するが、しかしそれらはウイルスを除去することまたは肝臓損傷を予防することができない。さらに持続性HCV感染は、肝細胞癌(HCC)の開始に関連づけられる。以下の実施例は、NS3、NS3/4AおよびMSLF1構築物がNS3に対するT細胞媒介性免疫応答を引き出し得るか否かを判定するために実施した実験を記載する。
【実施例4】
【0073】
上記の構築物がNS3に対する細胞媒介性応答を誘導し得るか否かを試験するために、in vivo腫瘍増殖検定を実施した。この目的のために、NS3/4A遺伝子で安定的にトランスフェクトされたSP2/0腫瘍細胞株(SP2/0−Ag14骨髄腫細胞株(H−2d))を作製した。10%ウシ胎仔血清(FCS;Sigma Chemicals, St Louis, MO)、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL, Gaithersburg, MD)を補足したDMEM培地中に、SP2/0細胞を保持した。NS3/4A遺伝子を含有するpcDNA3.1プラスミドを、BglII消化により線状化した。総計5μgの線状化プラスミドDNAを60μgのトランスフェクション試薬(Superfect, Qiagen, Germany)と混合し、混合物を35mm皿中のSP2/0細胞の50%集密的細胞単層(confluent layer)に付加した。メーカーのプロトコルに従って、トランスフェクション手法を実施した。
【0074】
希釈を制限することによりトランスフェクトされた細胞をクローニングし、14日後、800μgのジェネテシン(G418)/ml完全DMEM培地の付加により選抜した。PCRおよびRTPCRにより、および/またはNS3に対するモノクローナル抗体を用いた捕捉EIAにより、安定的なNS3/4A発現SP2/0クローンを同定した。マウスNS3抗体の検出のための全EIAを、本質的には以下のように実施した:要するに、rNS3(大腸菌中で産生され、PBSに対して一晩透析され、滅菌濾過された組換えNS3タンパク質)を、50mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に1μg/mlで、96ウエルマイクロタイタープレート(Nunc, Copenhagen, Denmark)に4℃で一晩、受動的に吸着させた。次に、+37℃で1時間、PBS、2%ヤギ血清および1%ウシ血清アルブミンを含有する希釈緩衝液を用いたインキュベーションにより、プレートをブロックした。次に1:60から始まるマウス血清の連続希釈液を、プレート上で1時間インキュベートした。アルカリ性ホスファターゼ接合ヤギ抗マウスIgG(Sigma cellproducts, Saint Louis, Missouri USA)と、その後の基質pNPP(1錠/5mlの1Mジエタノールアミン緩衝液+0.5mMのMgCl2)の付加により、結合マウス血清抗体を検出した。1MのNaOHの付加により反応を停止した。次に吸光度を405nmで読取った。
【0075】
次にSP2/0およびNS3/4A−SP2/0細胞株のin vivo増殖動態を、Balb/cマウスで評価した。マウスの右脇腹に2×106個の腫瘍細胞を皮下注射した。毎日、皮膚を通して腫瘍のサイズを測定した。2つの細胞株の増殖動態は類似していた。平均腫瘍サイズは、例えば任意の時点での2つの細胞株間で異ならなかった(表4参照)。
【0076】
【表4】

【0077】
以下の実施例は、NS3/4A構築物で免疫したマウスがNS3に対するT細胞応答を発現したか否かを判定するために実施した実験を記載する。
【実施例5】
【0078】
T細胞応答がNS3/4A免疫により誘導されるか否かを調べるために、NS3発現腫瘍細胞株を攻撃する免疫マウスの免疫防御系の能力を検定した。Balb/cマウスにおけるSP2/0骨髄腫細胞株の腫瘍増殖のin vivo抑制に関して試験するためのプロトコルは、以前に詳細に記載されている(Encke et al., J Immunol, 161: 4917-4923 (1998))。このモデルにおける腫瘍増殖の抑制は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のプライミングに依っている。第一組の実験では、10匹のマウスの群を、100μgのNS3−pVAXまたは100μgのNS3/4A−pVAXを用いて、月1回の間隔で5回、筋内免疫した。最終免疫の2週間後、2×106個のSP2/0またはNS3/4A−SP2/0細胞を各マウスの右脇腹に注入した。2週間後、マウスを屠殺し、最大腫瘍サイズを測定した。NS3−pVAX免疫マウスにおける平均SP2/0およびNS3/4A−SP2/0腫瘍サイズ間に差は認められなかった(表5参照)。
【0079】
【表5】

【0080】
異なるNS3含有組成物の投与が細胞媒介性免疫応答の誘発に影響を及ぼすか否かを分析するために、マウスをPBS、rNS3、対照DNAまたはNS3/4A構築物で免疫し、上記のように腫瘍サイズを測定した。NS3/4A構築物は、腫瘍サイズの統計学的に有意の低減を引き起こすのに十分なT細胞応答を誘導し得た(表6参照)。
【0081】
【表6】

【0082】
以下の実施例は、腫瘍サイズの低減がNS3特異的Tリンパ球の生成に起因し得るか否かを判定するために実施したさらなる実験を記載する。
【実施例6】
【0083】
次の組の実験では、SP2/0またはNS3/4A−SP2/0腫瘍増殖の抑制もまた、NS3/4A−pVAX免疫Balb/cマウスで評価した。NS3/4A−pVAXプラスミドで免疫したマウスにおいて、NS3/4A−SP2/0腫瘍細胞の増殖は、非トランスフェクト化SP2/0細胞の増殖と比較して、有意に抑制された(表7参照)。したがって、NS3/4A−pVAX免疫は、in vivoでNS3/4Aを発現する細胞の増殖を抑制するCTLを誘導する。
【0084】
【表7】

【0085】
別の組の実験では、NS3/4A発現SP2/0腫瘍増殖の抑制を、MSLF1−pVAX免疫Balb/cマウスで評価した。要するに、マウスの群を、0、4、8、12および16週目に、遺伝子銃を用いて異なる免疫原(4μgのプラスミド)で免疫した。最終免疫後2週間目に、約2×106個のNS3/4A発現SP2/0細胞をマウスの右脇腹に皮下注射した。次に7、11および13日目に、皮膚を通して腫瘍サイズを測定することにより、腫瘍増殖の動態を観察した。平均腫瘍サイズを算定し、群をマン−ホイットニーノンパラメトリック検定を用いて比較した。14日目に、全マウスを屠殺した。
【0086】
1回だけの免疫後、腫瘍抑制応答を観察した(図2および表8参照)。2回免疫後、NS3/4A−pVAXおよびMSLF1−pVAXプラスミドはともに、腫瘍抑制応答をプライミングした(図3および表9参照)。しかしながらネイティブNS3/4A遺伝子と比較して、MSLF1遺伝子で免疫したマウスにおいては、腫瘍は有意に小さかった。3回注射後、両プラスミドは、匹敵する腫瘍抑制応答を有効にプライミングした(図4および表10参照)。これらの実験は、MSLF−1遺伝子が、NS3/4A−pVAXと比較してin vivoで腫瘍抑制免疫応答をより効率的に活性化するという証拠を提供した。
【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
以下の実施例は、NS3に対する細胞媒介性応答を誘導するに際しての種々のNS3含有組成物の効率を分析するために実施した実験を記載する。
【実施例7】
【0091】
NS3特異的T細胞がNS3/4A免疫により引き出されるか否かを判定するために、in vitro T細胞媒介性腫瘍細胞溶解検定を用いた。検定は、以前に詳細に記載されている(Sallberg et al., J. Virol. 71: 5295 (1997))。第一組の実験では、5匹のBalb/cマウスからなるグループに対して、100μgのNS3/4A−pVAXを用いて3回、筋内免疫した。最終注射の2週間後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を収穫した。3×106個の脾臓細胞および3×106個のNS3/4A−SP2/0細胞による再刺激培養を設定した。5日後、標的としてNS3/4A−SP2/0またはSP2/0細胞を用いて、標準51Cr放出検定を実施した。本発明の特異的溶解を、NS3/4A−SP2/0細胞の溶解およびSP2/0細胞の溶解間の比として算定した。NS3/4A−pVAXで免疫したマウスは、20:1のエフェクター対標的比を用いた際には、5匹の試験したマウスのうちの4匹において10%を上回る特異的溶解を示した(図5Aおよび図5B参照)。
【0092】
次の組の実験では、MSLF1−pVAXおよびNS3/4A−pVAXに対するT細胞応答を比較した。H−2b制限NS3エピトープは以前にマッピングされていたため、in vitro検出可能CTLをプライミングする2つのプラスミドの能力をC57BL/6マウスにおいて評価した。マウスの群を2つのプラスミドで免疫し、ペプチド被覆H−2b発現RMA−S細胞またはNS3/4A発現EL−4細胞を用いて、CTLをin vitroで検出した。要するに、5U/mlの組換えマウスIL−2(mIL−2;R&D Systems, Minneapolis, MN)を最終容積12mlで含有する25mlフラスコ中で5日間、in vitro刺激を実行した。再刺激培養は、総計40×106個の免疫脾臓細胞およびNS3/4Aタンパク質を発現する2×106個の放射線照射(10,000rad)同系のSP2/0細胞を含有した。in vitro刺激の5日後、標準51Cr放出検定を実施した。エフェクターを収穫し、総容積200μl中で、96ウエルU底プレート中で4時間51Cr検定を実施した。総計1×106個の標的細胞を20μlの51Cr(5mCi/ml)で1時間標識し、次にPBS中で3回洗浄した。5×103個の51Cr標識標的細胞/ウエルを用いて、40:1、20:1および10:1のエフェクター:標的(E:T)比で、細胞傷害性活性を測定した。
【0093】
あるいはペプチド免疫後12日目にC57BL/6マウスから脾臓細胞を採取し、10%FCS、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノールおよび1mMのピルビン酸ナトリウムを補足したRPMI 1640培地中に再懸濁した。25×106脾臓細胞および2×106照射(2000 rad)同系脾細胞を含入する総容量12mlで、25mlフラスコ中にて5日間、in vitro刺激を実行した。0.05μMのNS3/4A H−2Db結合ペプチド(配列GAVQNEVTL、配列番号37)または対照ペプチド H−2Dbペプチド(配列KAVYNFATM、配列番号38)の存在下で、再刺激を実施した。5日後、51Cr放出検定を実施した。RMA−S標的細胞を、51Cr標識前に+37℃で1.5時間、50μMのペプチドでパルス処理し、次にPBS中で3回洗浄した。エフェクター細胞を収穫し、4時間51Cr検定を上記と同様に実施した。5×103個の51Cr標識標的細胞/ウエルを用いて、60:1、20:1および7:1のE:T比で、細胞傷害性活性を確定した。これらの検定により、NS3/4A−pVAXベクターと比較して、MSLF1遺伝子はより高レベルのin vitro溶解活性をプライミングすることが明らかになった(図6A〜図6L参照)。ペプチド被覆H−2b発現RMA−S細胞およびNS3/4A発現EL−4細胞の両方を用いて、同様の結果を得た。
【0094】
フローサイトメトリーを用いて、コドン最適化MSLF1遺伝子がNS3特異的CTLをネイティブNS3/4A遺伝子より有効にプライミングする、という付加的証拠を得た。組換え可溶性二量体マウスH−2Db:Ig融合タンパク質を用いたNS3/4A DNA免疫マウスからの脾臓細胞のex vivo染色により、NS3/4A−ペプチド特異的CD8+T細胞の頻度を分析した。本明細書中に記載したモノクローナル抗体およびMHC:Ig融合タンパク質の多くは、BDB Pharmingen(San Diego, CA)から購入した;抗CD16/CD32(Fc−ブロック(商標)、クローン2.4G2)、FITC接合抗CD8(クローン53−6.7)、FITC接合抗H−2Kb(クローンAF6−88.5)、FITC接合抗H−2Db(クローンKH95)、組換え可溶性二量体マウスH−2Db:Ig、PE接合ラット−αマウスIgG1(クローンX56)。
【0095】
100μlのPBS/1%FCS(FACS緩衝液)中に再懸濁した約2×106個の脾臓細胞を、1μg/106細胞のFc遮断抗体とともに氷上で15分間インキュベートした。次にそれらの細胞を、過剰量の640nM NS3/4A由来ペプチドで+4℃で48時間前負荷した2μg/106細胞のH−2Db:Ig(配列GAVQNEVTL、配
列番号37)、または2μg/106細胞の非負荷H−2Db:Ig融合タンパク質とともに、氷上で1.5時間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、10μl/100μlのPE接合ラット−αマウスIgG1二次抗体を含有するFACS緩衝液100μl中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、1μg/106細胞のFITC接合α−マウスCD8抗体とともに30分間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、0.5μg/mlのPIを含有するFACS緩衝液0.5ml中に再懸濁した。各試料からの約200,000事象をFACSCalibur(BDB)で獲得し、死細胞(PI陽性細胞)を分析から排除した。
【0096】
FACS分析により特異的CTLを定量することの利点は、それが、分析に先だってCTLのin vitro増殖の考え得る欠点を回避する、という点である。NS3−ペプチド負荷二価H−2Db:Ig融合タンパク質分子を用いたNS3特異的CTLの直接的ex−vivo定量により、コドン最適化MSLF−1遺伝子は2回の免疫後すでに有効にプライミングされたNS3特異的CTLをプライミングするが、一方、本来のNS3/4A遺伝子はプライミングしないということが明らかとなった(表)。したがって最適化MSLF−1遺伝子は、本来のNS3/4A遺伝子と比較した場合、試験した全てのパラメーターにおいてより高い頻度およびより良好な機能性を有するNS3特異的CTLを有効にプライミングする。以下の実施例は、コドン最適化NS3/4AがNS3特異的細胞傷害性T細胞を効率的にプライミングするというさらなる証拠を提供する。
<実施例7A>
【0097】
最初に、wtNS3、wtNS3/4AおよびcoNS3/4A発現プラスミドを用いて、遺伝子銃免疫によりプライミングされ得るNS3特異的CTLの頻度を測定した。coNS3/4Aプラスミドは、wtNS3遺伝子と比較して、NS3特異的CTL前駆体をより高い頻度でプライミングしたが、これはNS4Aの重要性を強く示すものである(図11)。CTL前駆体頻度の統計学的差は、ex vivoで直接的に分析した場合、wtNS3/4AおよびcoNS3/4A発現プラスミド間には認められなかった(図11)。coNS3/4AプラスミドまたはwtNS3/4A−SFVによる1回の免疫は、免疫から2週間以内にペプチド特異的CTLの約1%をプライミングした(図11)。NS3特異的CTLの検出の特異性を、NS3−ペプチドを用いてin vitroで5日間の再刺激により確証したが、これにより、coNS3/4A遺伝子による免疫後に高頻度で前駆体が観察された(図11)。
【0098】
異なるベクターによりプライミングされたNS3特異的CTLのin vitro溶解活性を直接比較するために、標準51Cr放出検定を1回または2回免疫後に実施した。in vivoでプライミングされたCTLの溶解活性を、NS3−ペプチド負荷H−2Db発現RMA−S細胞およびNS3/4Aを安定的に発現するEL−4細胞の両方で検定した。1回投与後、coNS3/4AプラスミドおよびwtNS3/4A−SFVベクターは、NS3−ペプチド被覆標的細胞を溶解したCTLのプライミングに際して、wtNS3/4Aプラスミドより明らかに効率的であった(図12)。このように、CTLプライミング事象は、NS3/4A遺伝子のコドン最適化またはmRNA増幅により増大した。おそらく、この検定は感受性が低いため、NS3/4A発現EL−4細胞を用いた場合の差はさほど明白ではなかった(図12)。2回の免疫後、全てのNS3/4Aベクターは同様の効率でNS3特異的CTLをプライミングするように思われた(図12)。しかしながらNS3/4A含有ベクターのいずれかによる2回の免疫は、wtNS3遺伝子のみを含有するプラスミドと比較して、NS3特異的CTLをプライミングするに際して明らかにより効率的であり(図12)、これは、CTL前駆体分析および以前の観察と完全に一致する。このようにNS3/4A遺伝子のコドン最適化またはmRNA増幅は、NS3特異的CTLをより迅速にプライミングする。
【0099】
SP2/0骨髄腫細胞を用いたBALB/cマウスにおける、あるいはHCVウイルス抗原を発現するEL−4リンパ腫細胞を用いたC57BL/6マウスにおけるin vivoでの腫瘍増殖の抑制の分析は、in vivo機能性HCV特異的免疫応答を意味することが、当業者により認識されている(Encke J et al., J Immunol 161: 4917-4923 (1998)参照)。NS3/4Aを安定に発現するSP2/0細胞株は、以前に記載されており(Frelin L et al., Gene Ther 10: 686-699 (2003)参照)、NS3/4A発現EL−4細胞株は、下記のように特徴付けされた。
【0100】
NS3/4A発現EL−4細胞株を用いた腫瘍増殖の抑制がNS3/4A特異的免疫応答に完全に依存している、ということを確証するために、対照実験を実施した。10匹のC57BL/6マウスの群を、非免疫のままか、またはcoNS3/4Aプラスミドで2回免疫した。最終免疫の2週間後、106個のネイティブEL−4またはNS3/4A発現EL−4細胞(NS3/4A−EL−4)を、皮下注射によってマウスにチャレンジした。NS3/4A−EL−4細胞株の増殖に対して免疫マウスのみが保護されたことから、NS3/4A特異的免疫応答は保護のために必要であった(図13)。したがってこのH−2b制限モデルは、SP2/0 H−2b制限モデルと同様に振舞う。
【0101】
組換えNS3タンパク質による免疫は、NS3/4A特異的B細胞およびCD4+T細胞の両方が腫瘍増殖に対する防御においてきわめて重要であるというわけではない、という証拠を提供した。in vitro系でのcoNS3/4Aプラスミド免疫H−2bマウスからの脾臓細胞のCD4+またはCD8+T細胞の枯渇は、CD8+T細胞が51Cr放出検定における主要エフェクター細胞である、という証拠を提供した。in vivo機能性抗腫瘍エフェクター細胞集団を明らかにするために、NS3/4A−EL−4腫瘍細胞株チャレンジの1週間前および最中にcoNS3/4Aプラスミドで免疫したマウスにおいて、CD4+またはCD8+T細胞を選択的に枯渇させた。フローサイトメトリーによる分析は、CD4+およびCD8+T細胞の85%がそれぞれ枯渇していた、ということを明示した。この実験は、in vivoでのCD4+T細胞の枯渇は腫瘍免疫性に有意の作用を及ぼさない、ということを明示した(図13)。対照的に、in vivoでのCD8+T細胞の枯渇は、腫瘍免疫性を有意に低下させた(p<0.05、ANOVA;図13)。したがって予測どおり、NS3/4A特異的CD8+CTLは、腫瘍増殖の抑制に関するin vivoモデルにおけるエフェクター段階での主要防御細胞であると思われる。
【0102】
次に、腫瘍チャレンジモデルを用いて、in vivoでのNS3/4A−EL−4腫瘍細胞の増殖に対する防御免疫をプライミングするに際して異なる免疫原がいかに有効であるかを評価した。プライミング事象の有効性が試験されたことを保証するために、全てのマウスを1回だけ免疫した。in vitroでのCTLデータと完全に一致して、空のpVAXプラスミドで免疫した場合と比較して、NS3/4Aを含有するベクターのみが防御的免疫応答を迅速にプライミングし得る、ということをわれわれは見出した(p<0.05、ANOVA;図14)。しかしながらこれは、NS4Aに依存していたが、しかしコドン最適化またはmRNA増幅とは無関係であり、このことは、C57BL/6マウスが遺伝子免疫を用いて腫瘍増殖から全く容易に保護される、ということを示唆する。
【0103】
in vivo防御的CD8+CTL応答のプライミングのための必要前提条件をさらに明らかにするために、さらなる実験を実施した。まず、NS3由来CTLペプチドで免疫したC57BL/6マウスは、NS3/4A−EL−4腫瘍の増殖に対して防御されなかった(図14)。第二に、アジュバント中の組換えNS3による免疫は、腫瘍増殖を防御しなかった(図14)。NS3由来CTLペプチドはC57BL/6マウスにおけるCTLを有効にプライミングし、アジュバント中のrNS3は高レベルのNS3特異的Tヘ
ルパー細胞をプライミングする。したがってNS3/4Aの内因性産生は、in vivoで防御的CTLをプライミングするために必要であると思われる。プライミング事象をさらに特徴付けするために、B細胞の群(μMT)またはCD4欠損C57BL/6マウスを、遺伝子銃を用いてcoNS3/4A遺伝子で1回免疫し、2週間後にチャレンジした(図14)。両系列はともに腫瘍増殖から保護されたため、B細胞またはCD4+T細胞は、in vivo機能性NS3/4A特異的CTLのプライミングにとって必要がなかった、と結論づけた(図14)。要するに、C57BL/6マウスにおけるin vivo腫瘍防御性NS3/4A特異的CTLのプライミングには、NS4A、ならびに免疫原の内因性発現が必要である。C57BL/6マウスにおいて、プライミングは、遺伝子送達経路または補助細胞、例えばB細胞またはCD4+T細胞にあまり依存しない。coNS3/4A DNAプラスミドによるin vivo機能性CTLのプライミングはCD4+Tヘルパー細胞に無関係であったという事実は、プライミングが生じた速度を説明するのに役立ち得る。
【0104】
NS3/4A−EL−4細胞株を用いたC57BL/6マウスにおける反復実験は、腫瘍増殖に対する防御は、コドン最適化またはmRNA増幅とは無関係に、NS3/4A遺伝子による最初の免疫後すでに得られる、ということを示した。さらにまた2回注入後、NS3/4A−EL−4腫瘍増殖に対する免疫性はさらに増強されたが、しかしNS4Aが存在した場合のみであった。したがってこのモデルは、異なる免疫原の内在性免疫原性における微妙な差を明示するのに十分なほど高感度であるというわけではない。
【0105】
wtNS3/4AおよびcoNS3/4A DNAプラスミドの免疫原性をより良好に比較するために、H−2bマウスにおいてさらなる実験を実施したが、この場合、少なくとも2回の免疫が、腫瘍防御免疫のために必要であると思われた。BALB/cマウスにおけるNS3/4A遺伝子を用いた遺伝子銃免疫後に得られるIgGサブクラス分布は混合型Th1/Th2様応答を示した、ということを思い起こすことは重要である。したがって、Th2傾向BALB/cマウス株におけるTh2様免疫経路(遺伝子銃)は、in
vivoにおいて、有効なCTL応答をプライミングする能力を弱める可能性があった。
【0106】
10匹のBALB/cマウスの群を、遺伝子銃を用いて4μgのそれぞれのDNAプラスミドで、1回、2回または3回免疫した(図15)。最終注入後2週間目に、マウスにチャレンジを行った。したがって、これらの実験は、coNS3/4Aプラスミドが、野生型プラスミドより迅速にin vivo機能性NS3/4A特異的腫瘍抑制免疫をプライミングする、というさらなる証拠を提供した(図15)。coNS3/4Aの2回投与は、wtNS3/4Aプラスミドと比較して、有意により良好にNS3/4A特異的腫瘍抑制免疫をプライミングした(p<0.05、ANOVA;図15)。3回投与後、腫瘍抑制免疫は同一であった。したがって上記のデータは、NS3/4A遺伝子のコドン最適化がNS3特異的CTLをより迅速にプライミングする、ということを立証した。
【0107】
本明細書中に記載したように、NS3/4A遺伝子は、ワクチンとして用いられ得る。NS3/4Aはin vivoで機能性CTLを迅速にプライミングすることが確定されたが、しかし腫瘍細胞の注入後の治療的免疫の効果を次に分析した。10匹のC57BL/6マウスの群に106個のNS3/4A−EL−4腫瘍細胞をチャレンジした。1群を腫瘍チャレンジ後6日目に4μgのcoNS3/4Aで経皮的に免疫感作し、別の群を12日目に免疫感作した。治療的ワクチン接種後、両群は、非免疫対照群と比較して、有意に小さい腫瘍を有した(それぞれp<0.01、ANOVA;図16)。これは、ワクチンがCTLを迅速にプライミングし、CTLがNS3/4A発現腫瘍に向かって進み、そして浸潤し得る、ということを確証する。したがってcoNS3/4Aプラスミドを用いた遺伝子銃免疫は、治療用ワクチンとしても機能する。即ち、NS3/4A発現腫瘍細胞
の接種後6〜12日目のcoNS3/4A遺伝子を用いた遺伝子銃免疫は、腫瘍増殖を有意に抑制した。全体的に見て、in vivoで機能的であるHCV NS3特異的免疫応答の迅速なプライミングは、コドン最適化遺伝子を用いたDNAベースの免疫により、またはSFVレプリコンによるmRNA増幅によりもたらされる。これらのアプローチを用いることにより、慢性HCV感染の治療および予防のための非常に有効なワクチンを調製し得る。次の実施例では、本明細書中に記載した実験に用いられる材料および方法のいくつかをより詳細に記載した。
<実施例7B>
【0108】
マウス
近交系BALB/c(H−2d)およびC57/BL6(H−2b)マウスは、営利業者(Mollegard, Denmark)から入手した。B細胞(μMT)欠損マウスは、カリン・サンドステッド(Karin Sandstedt)博士(カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)、Sweden)の懇意により提供された。CD4欠損C57BL/6マウスは、カロリンスカ研究所、微生物学および腫瘍生物学センター(Microbiology and Tumorbiology Centre)の繁殖施設から入手した。全マウスが雌であり、実験開始時に4〜8週齢で用いた。
【0109】
組換えNS3 ATPアーゼ/ヘリカーゼドメインタンパク質
組換えNS3(rNS3)タンパク質は、ダレル・L.ピーターソン氏(Darrell L., Peterson)(Department of Biochemistry, Commonwealth University, VA)の懇意により提供された。大腸菌中での組換えNS3タンパク質(NS4Aを含まない)の産生は、当該技術分野で記載されている。使用前に、rNS3タンパク質をPBSに対して一晩透析し、滅菌濾過した。
【0110】
合成コドン最適化(co)NS3/4A遺伝子の生成
前に単離され、シーケンシングされた固有のwtNS3/4A遺伝子の配列について、ヒト細胞において最も一般的に用いられるコドンに関してコドン使用頻度を分析した。総計435ヌクレオチドを置き換えて、ヒト細胞のためのコドン使用頻度を最適化した。全長合成coNS3/4A遺伝子の生成のために、配列をRetrogen Inc(San Diego, CA)に送付した。coNS3/4A遺伝子は、HCV−1参考株のヌクレオチド位置3417〜5475の領域と79%の配列相同性を有した。総計433ヌクレオチドが異なった。アミノ酸レベルでは、HCV−1株との相同性は98%であった(15アミノ酸が異なった)。
【0111】
全長コドンは、NS3およびNS4Aを包含するアミノ酸1007〜1711に対応するHCVゲノム型1bの2.1kb DNA断片を最適化した。NS3/NS4A遺伝子断片をBamHIおよびXbaI消化pVAXベクター(Invitrogen, San Diego)中に挿入して、coNS3/4A−pVAXプラスミドを得た。発現構築物をシーケンシングして、正確な配列およびリーディングフレームを保証した。タンパク質発現をin vitro転写および翻訳検定により分析した。プラスミドを、コンピテントTOP10大腸菌(Invitrogen)中で増殖させた。メーカーの使用説明書(Qiagen GmbH, Hilden, FRG)に従って、QiagenDNA精製カラムを用いることにより、in vivo注入用に用いたプラスミドDNAを精製した。その結果生じたプラスミドDNAの濃度を分光光度的に確定した(Dynaquant, Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)。精製DNAを1mg/mlの濃度で滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解した。
【0112】
in vitro翻訳検定
wtNS3/4AおよびcoNS3/4A遺伝子が無傷であり、そして翻訳され得る、ということを保証するために、原核生物T7結合網状赤血球溶解物系を用いたin vitro転写検定(TNT;Promega, Madison, WI)を実施した。2つのプラスミドからの
翻訳効率を比較するために、TNT検定への付加の前に、投入DNA量を連続希釈(6ng〜1ng)で希釈した。
【0113】
一過性トランスフェクション
標準プロトコルにより、HepG2細胞を一過的にトランスフェクトした。要するに、HepG2細胞を、トランスフェクト前日にDMEM倍地中の2.5cm2ウエル中に入れた(0.5×106)。Fugene6トランスフェクション試薬(Roche)を用いてHepG2細胞中に、各プラスミドDNA構築物(wtNS3/4AおよびcoNS3/4A)2μgをトランスフェクトした。トランスフェクション後、HepG2細胞を24〜48時間インキュベートした。
【0114】
タンパク質試料の調製および分析
免疫沈降とその後のSDS−PAGEにより、細胞溶解物を分析した。要するに、一過的にトランスフェクトされたHepG2細胞をRIPA緩衝液(0.15MのNaCl、50mMのトリス、1%トリトン−X100、1%デオキシコール酸ナトリウムおよび1%SDS)中で溶解した。細胞溶解物をプロテインAセファロースおよび抗NS3ポリクローナル抗体とともに4℃で一晩免疫沈降させた。洗浄ペレットをSDS試料緩衝液中に再懸濁して、100℃で5分間加熱した後、4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen)上でSDS−PAGE分析し、そしてニトロセルロース膜上にエレクトロトランスファーした。
【0115】
NS3タンパク質発現の分析
化学発光結合ウエスタンブロットキット(WesternBreeze; Invitrogen)を用いることにより、メーカーのプロトコルに従って、NS3タンパク質の検出を実行した。NS3特異的ポリクローナル抗体を用いて、化学発光シグナルとしてNS3タンパク質発現を検出し、定量した。GeneGnome(Syngene, Cambridge, UK)を用いて、化学発光シグナルを検出した。化学発光ウエスタンブロットの定量をGeneGnomeで実施し、各タンパク質バンドからの強度の単位を算定し、rNS3の標準曲線と比較した。
【0116】
セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクター
仔ハムスター腎(BHK)−21細胞を、5%FCS、10%トリプトースリン酸ブロス、2mMのグルタミン、20mMのHepesおよび抗生物質(ストレプトマイシン10μg/mlおよびペニシリン100 IU/ml)を補足した完全BHK培地中にて維持した。
【0117】
wtNS3/4A遺伝子を、PCRによりSpe1−BStB1断片として単離し、キャプシドの34アミノ酸長翻訳エンハンサー配列およびその後に続くFMDV2a切断ペプチドを含有するpSFV10EnhのSpe1−BstB1部位に挿入した。2−ヘルパーRNA系を用いて、rSFV粒子中への組換えRNAのパッケージングを実行した。感染BHK細胞の間接的免疫蛍光を実施して、組換えウイルスストックの力価を確定した。
【0118】
免疫蛍光
BHK細胞を、リポフェクトアミンプラス試薬(Invitrogen)を用いて標準技法に従ってcoNS3/4A−pVAX1で一過性トランスフェクトするか、またはrSFVにより感染させた。間接的免疫蛍光法により、NS3タンパク質を検出した。
【0119】
免疫法プロトコル
雌BALB/c(H−2d)またはC57BL/6(H−2b)マウス、4〜8週齢の群(5〜10匹のマウス/群)を、個々のまたは多数のHCVタンパク質をコードするプラ
スミドDNA100μgの注射針注入により、免疫した。PBS中のプラスミドDNAを、前脛骨(TA)筋に筋肉内(i.m.)投与した。本文中に示す場合、0.9%滅菌食塩水NaCl中の0.01mMの心臓毒(Latoxan, Rosans, France)50μl/TAをマウスに筋注し、5日後、DNAを免疫した。4週間間隔で、マウスに追加免疫した。
【0120】
遺伝子銃ベースの免疫法に関しては、メーカー(Bio−Rad Laboratories, Hercules, CA)により供給されたプロトコルに従って、プラスミドDNAを金粒子(1μm)と連結した。免疫前に、腹部注射域を剃毛して、500psiのヘリウム放出圧で、メーカーのプロトコルに従って免疫した。各回につき4μgのプラスミドDNAを注入した。1ヶ月間隔で、同一用量をマウスに追加免疫した。
【0121】
rSFV粒子での免疫に関しては、100μlの最終容積で、PBS中に希釈した1×107個のウイルス粒子(wtNS3/4A−SFV)を用いて、尾の基部でマウスを皮下免疫した。完全フロイントアジュバント中に1:1で混合したペプチド100μgを用いて、尾の基部に皮下免疫することにより、ペプチド免疫を実施した。
【0122】
マウス抗HCV NS3抗体の検出のためのELISA
抗体検出およびアイソタイピングのための血清を、イソフルオラン麻酔したマウスの眼窩後方採血により初回免疫後2週間または4週間毎に回収した。前に記載したように、酵素免疫検定を実施した。
【0123】
細胞株
10%ウシ胎仔血清(FCS;Sigma Chemicals, St Louis, MO)、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL, Gaithersburg, MD)を補足したDMEM培地中で、SP2/0−Ag14骨髄腫細胞株(H−2d)を維持した。NS3/4Aの安定な発現を示すSP2/0−Ag14細胞を、800μgのゲネチシン(G418)/完全DMEM培地1ml中にて維持した。
【0124】
EL−4リンパ腫(H−2b)細胞を、10%FCS、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(GIBCO-BRL)を補足したRPMI 1640培地中にて培養した。SuperFect(Qiagen GmbH, Hilden, FRG)トランスフェクション試薬を用いた線状化NS3/4A−pcDNA3.1プラスミドによるEL−4細胞のトランスフェクションにより、NS3/4Aの安定的な発現を示すEL−4細胞を作出した。メーカーのプロトコルに従ってトランスフェクション手法を実施した。トランスフェクトされた細胞を限界希釈法によりクローニングし、800μgのゲネチシン(G418)/完全RPMI 1640培地1mlの付加により選択した。
【0125】
RMA−S細胞(Klas Karre教授(カロリンスカ研究所、Sweden)の懇意による)を、5%FCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したRPMI 1640培地中で培養した。全細胞を、加湿された37℃、5%CO2インキュベーター中で増殖させた。
【0126】
T細胞のin vivo枯渇
精製ハイブリドーマ上清の腹腔内注射により、CD4およびCD8 T細胞亜集団をin vivoで枯渇させた。総計0.4mg/マウス/注射の抗CD4(クローンGK1.5)または抗CD8(クローン53−6.7)を、腫瘍チャレンジの3日前、2日前お
よび1日前、ならびにチャレンジ後3、6、10および13日目に注射した。0、3、6、10および13日目の末梢血単核球細胞集団のフローサイトメトリー分析は、CD4およびCD8 T細胞の85%より多くが枯渇したことを実証した。
【0127】
NS3/4A発現腫瘍細胞のin vivoチャレンジ
上記のEncke等により記載された方法に従って、免疫マウスに対するNS3/4A発現SP2/0骨髄腫またはEL−4リンパ腫細胞株のin vivoチャレンジを実施した。要するに、上記のように0、4および8週目に、異なる免疫原でBALB/cまたはC57BL/6マウスの群を免疫した。最終免疫後2週間目に、1×106個のNS3/4A発現SP2/0またはEL−4細胞を右脇腹に皮下注射した。6〜20日目に皮膚を通して腫瘍のサイズを測定することにより、腫瘍増殖の動態を判定した。2群のマウスにおける動的腫瘍進展を、曲線下面積(AUC)を用いて比較した。分散分析(ANOVA)検定を用いて平均腫瘍サイズを比較した。20日目に、全マウスを屠殺した。
【0128】
ワクチンの治療効果を試験するために、上記のようにマウスの群に腫瘍細胞を接種した。6または12日後、マウスを1回免疫した。6日目から20日目まで、腫瘍増殖をモニタリングした。
【0129】
抗体およびMHC:Ig融合タンパク質
モノクローナル抗体およびMHC:Ig融合タンパク質は全て、BDB Pharmingen(San Diego, CA)から購入した;抗CD16/CD32(Fc−ブロック(商標)、クローン2.4G2)、FITC接合抗CD8(クローン53−6.7)、Cy−クロム接合抗CD4(クローンRM4−5)、FITC接合抗H−2Db(クローンKH95)、組換え可溶性二量体マウスH−2Db:Ig、PE接合ラット−αマウスIgG1(クローンX56)。
【0130】
NS3/4A特異的CTL活性の検出
DNAまたはrSFV免疫C57BL/6マウスからの脾臓細胞を、10%FCS、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウムを補足した完全RPMI 1640培地中に再懸濁した。in vitro刺激は、25mlフラスコ中で、5U/mlの組換えマウスIL−2(mIL−2;R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)を含有する最終容積12mlで5日間行った。再刺激培養は、総計25×106個の免疫脾臓細胞、およびNS3/4Aタンパク質を発現する2.5×106個の放射線照射(10,000rad)同系EL−4細胞を含有した。in vitro刺激の5日後、標準51Cr放出検定を実施した。エフェクター細胞を収穫し、総容積200μl中で、96ウエルU底プレート中で4時間51Cr検定を実施した。総計1×106個の標的細胞(NS3/4A発現EL−4細胞)を20μlの51Cr(5mCi/ml)で+37℃で1時間標識し、次にPBS中で3回洗浄した。異なる数のエフェクターおよび51Cr標識標的細胞(5×103個の細胞/ウエル)を、60:1、20:1および7:1のエフェクター:標的(E:T)比で、ウエルに付加した。+37℃で4時間のエフェクターおよび標的のインキュベーション後、細胞溶解性活性のレベルを測定した。100μlの上清を回収し、γ−計数器で放射能を測定した。
【0131】
DNAまたはrSFV免疫マウスからの脾細胞を、C57BL/6マウスから採取し、前述の完全RPMI 1640培地中に再懸濁した。要するに、25×106個の脾臓細胞および25×106個の放射線照射(2,000rad)同系脾細胞を混合することにより、5日間、in vitro刺激を実行した。再刺激培養は、0.05μMのNS3/4A H−2Db結合ペプチド(配列GAVQNEVTL(配列番号37))の存在下で
実施した。再刺激後、51Cr標識化ペプチドパルス処理RMA−S細胞を標的として用いて、4時間51Cr放出検定を実施した。細胞傷害性活性を、60:1、20:1および7:1のE:T比で測定した。
【0132】
次式に従って、結果を表した:特異的溶解%=(実験的放出−自発的放出)/(最大放出−自発的放出)。実験的放出は、エフェクター細胞の存在下で標的細胞により放出された平均数/分である。最大放出は、10%トリトンX−100による標的細胞の溶解後に放出された放射能である。自発的放出は、培地中への標的細胞の放射能の漏出である。
【0133】
4℃で30分間、抗CD4または抗CD8、モノクローナル抗体含有ハイブリドーマ上清(クローンRL172.4;抗CD4またはクローン31M;抗CD8)とともにエフェクター細胞をインキュベーションすることにより、in vitro T細胞枯渇実験を実行した。次に細胞を洗浄し、補体(低毒性ウサギ補体の1/20希釈液;Saxon, UK)とともに37℃で1時間インキュベーションした後、上記のCTL検定を実施した。
【0134】
フローサイトメトリーによるNS3/4A特異的CTLの定量
DNAまたはrSFV免疫マウスからの脾臓細胞を前述のように組換え可溶性二量体マウスH−2Db:Ig融合タンパク質を用いてex vivo染色することにより、NS3−ペプチド特異的CD8+T細胞の頻度を分析した。要するに、脾臓細胞をPBS/1%FCS(FACS緩衝液)中に再懸濁し、Fc遮断抗体とともにインキュベーションした。次に細胞を洗浄し、NS3/4A由来ペプチドで前負荷したH−2Db:Igとともにインキュベーションした。その後、細胞を洗浄し、PE接合ラット−αマウスIgG1抗体、FITC接合α−マウスCD8抗体およびCy−クロムα−マウスCD4抗体とともにインキュベーションした。洗浄後、ヨウ化プロピジウム(PI)を含有するFACS緩衝液中で細胞を希釈した。各試料からの約200,000の総事象をFACSCalibur(BDB)で獲得し、死細胞(PI陽性細胞)を分析から除外した。
【0135】
統計学的分析
頻度分析のためにフィッシャーの正確確率検定を用い、2つの群からの値を比較するためにはマン−ホイットニーU検定を用いた。マウスの2つの群における動的腫瘍進展を、曲線下面積(AUC)を用いて比較した。AUC値を、分散分析(ANOVA)を用いて比較した。StatViewソフトウェアのマッキントッシュバージョン(バージョン5.0)を用いて、算定を行なった。
【0136】
次の節は、本発明のペプチド実施形態のいくつかを記載する。
【0137】
HCVペプチド
具体化されたHCVペプチドまたはその誘導体としては、実質的には配列表に示されるような全てのアミノ酸配列のうちの主要アミノ酸配列(配列番号2〜11および配列番号36)、ならびに少なくとも4アミノ酸長である配列番号2〜11および配列番号36の断片(例えば配列番号14〜16)、例えば機能的に等価のアミノ酸残基が配列内の残基を置換して、サイレント変化を生じる配列変更を含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。配列番号2〜11および配列番号36の配列の好ましい断片は少なくとも4つのアミノ酸であり、発見されたNS3/4Aペプチドまたはその突然変異体に固有のアミノ酸配列、例えば機能的に等価のアミノ酸残基が配列内の残基を置換して、サイレント変化を生じる配列変更を含む。HCVペプチドは、例えば少なくとも12〜704アミノ酸長(例えば12〜15、15〜20、20〜25、25〜50、50〜100、100〜150、150〜250、250〜500または500〜704アミノ酸長間の任意の数)であり得る。
【0138】
実施形態としては、上記のものと実質的に同一であるHCVペプチドも挙げられる。即ち、配列番号2〜11および配列番号36ならびにその断片内の1つまたは複数のアミノ酸残基を有するHCVペプチドは、機能的等価物として作用する同様の極性を有する別のアミノ酸により置換されて、サイレント変化を生じる。さらに、HCVペプチドは、融合によりHCVペプチドの構造または機能(例えば免疫原特性)に有意な変更が生じない限り、配列番号2〜11および配列番号36またはその断片に融合された1または複数のアミノ酸残基を有し得る。配列内のアミノ酸残基の置換基は、アミノ酸が属するクラスの他の成員から選択され得る。例えば非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。中性極性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが挙げられる。したがって、本発明のペプチド実施形態は、上記の修飾の点から見て、本質的に配列番号2〜27および配列番号36から成ると言える。
【0139】
本明細書中に記載されたHCVペプチドは、当該技術分野で既知の技法、例えばMerrifield et al., J. Am. Chem. Soc. 85: 2149 (1964), Houghten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 51: 32 (1985)、Stewart and Young (Solid phase peptide synthesis, Pierce Chem Co., Rockford, IL (1984)およびCreighton, 1983, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman & Co., N.Y.により記載された技法を用いて、化学合成方法(例えば固相ペプチド合成)により調製され得る。このようなポリペプチドは、アミノ末端にメチオニンを伴ってまたは伴わずに合成され得る。化学合成HCVペプチドは、これらの参照文献中に記載された方法を用いて酸化されて、ジスルフィド架橋を形成し得る。
【0140】
本明細書中に記載されたHCVペプチドは化学的に合成され得るが、一方、組換えDNA技法によりこれらのポリペプチドを産生することはより有効であり得る。このような方法は、例えば上記のHCVヌクレオチド配列、ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために用いられ得る。これらの方法としては、例えばin vitro組換えDNA技法、合成技法およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。あるいはHCVヌクレオチド配列をコードし得るRNAは、例えば合成機を用いて化学的に合成され得る(例えばOligonucleotide Synthesis, 1984, Gait, M.J. ed.,
IRL Press, Oxfordに記載された技法を参照)。したがって、いくつかの実施形態は、体現されたHCVペプチドを発現するよう人工的に作出された細胞株に関する。例えばいくつかの細胞は、配列番号2〜11および配列番号36のHCVペプチドまたはこれらの分子の断片(例えば配列番号14〜26)を発現するよう作製される。
【0141】
種々の宿主発現ベクター系は、体現されたHCVペプチドを発現させるのに利用され得る。適切な発現系としては、HCVヌクレオチド配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物、例えば細菌(例えば大腸菌または枯草菌);HCVヌクレオチド配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス、ピキア);HCV配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;HCV配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳類細胞のゲノム由来(例えばメタロチオネインプロモーター)の、または哺乳類ウイルス由来(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ
ー)のプロモーターを含有する組換え発現構築物を保有する哺乳類細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
細菌系では、多数の発現ベクターは、発現されているHCV遺伝子産物に対して意図される用途に応じて有利に選択され得る。例えばこのようなタンパク質が大量に産生されるべき場合、例えばHCVペプチドの薬学的組成物の生成のために、またはHCVペプチドに対する抗体の産生のために、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指図するベクターが所望され得る。このようなベクターとしては、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J., 2: 1791 (1983))、この場合、融合タンパク質が産生されるよう、HCVコード配列は、lacZコード領域を有するフレーム内でベクターに個別にライゲーションできる;pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res., 13: 3101-3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem., 264: 5503-5509 (1989))等が挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するためにも用いられ得る。概して、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着と、その後の遊離グルタチオンの存在下での溶離により、溶解細胞から精製され得る。PGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るよう、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0143】
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして用いられる。ウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。HCVコード配列は、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に独立してクローニングされ、そしてAcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。HCV遺伝子コード配列の上首尾の挿入は、ポリヘドリン遺伝子の不活性化および非閉塞性組換えウイルス(即ちポリヘドリン遺伝子によりコードされるタンパク質様被膜を欠くウイルス)の産生を生じる。次にこれらの組換えウイルスは、挿入遺伝子を発現させるSpodoptera frugiperda細胞に感染するために用いられる(例えばSmith et al., J. Virol. 46: 584 (1983);および米国特許第4,215,051号(Smith)参照)。
【0144】
哺乳類宿主細胞では、多数のウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、当該HCVヌクレオチド配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび三連リーダー配列にライゲーションされ得る。このキメラ遺伝子は次に、in vitroまたはin vivo組換えによりアデノウイルスゲノム中に挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば領域E1またはE3)中への挿入は、実行可能な、そして感染宿主中でHCV遺伝子産物を発現し得る組換えウイルスを生じる(例えばLogan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659 (1984)参照)。挿入HCVヌクレオチド配列の効率的翻訳のためには、特定の開始シグナルも必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を包含する。
【0145】
しかしながらHCVコード配列の一部分のみが挿入される場合、外因性翻訳制御シグナル、例えばおそらくはATG開始コドンが提供され得る。さらに開始コドンは、全挿入物の翻訳を保証するための所望のコード配列のリーディングフレームと一致し得る。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源のものであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等の含入により増強され得る(Bittner et al., Methods in Enzymol., 153: 516-544 (1987)参照)。
【0146】
さらに、挿入配列の発現を調節し、あるいは所望の特定の方式で遺伝子産物を修飾し、
プロセシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のこのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に関する特徴的および特異的メカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系は、発現する外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを保証するために選択され得る。この目的のために、一次転写産物の適正なプロセシング、グリコシル化および遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を保有する真核生物宿主細胞が用いられ得る。このような哺乳類宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
組換えタンパク質の長期高収率産生のためには、安定的な発現が好ましい。例えば上記のHCVペプチドを安定的に発現する細胞株が人工的に作出され得る。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを用いるというよりむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能マーカーにより制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNAの導入後、組換え細胞は強化培地中で1〜2日間増殖され、次に選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞の染色体中にプラスミドを安定的に組入れさせ、そして増殖させて病巣を形成させ、これは次にクローニングされ、細胞株中に拡げられる。この方法は、HCV遺伝子産物を発現する細胞株を人工的に作出するために有益に用いられる。
【0148】
多数の選択系が用いられ、例としては単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, et al., Cell 11: 223 (1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026 (1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, et al., Cell 22: 817 (1980))遺伝子がそれぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞で用いられ得るが、これらに限定されない。さらにまた抗代謝産物耐性が、以下の遺伝子に関する選択の基礎として用いられ得る:dhfr(メトトレキセートに対する耐性を付与する)(Wigler, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 3567 (1980);O'Hare, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527 (1981));gpt(ミコフェノール酸に対する耐性を付与する)(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072 (1981));neo(アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する)(Colberre-Garapin, et al., J. Mol. Biol. 150: 1 (1981));およびhygro(ハイグロマイシンに対する耐性を付与する)(Santerre, et al., Gene 30: 147 (1984))。
【0149】
あるいは、発現している融合タンパク質に特異的な抗体を利用することにより、任意の融合タンパク質が容易に精製され得る。例えばJanknecht等により記載された系は、ヒト細胞株中で発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknecht, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8972-8976 (1991))。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが6つのヒスチジン残基から成るアミノ末端タグに翻訳的に融合されるよう、当該遺伝子はワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングされる。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物は、Ni2+ニトリロ酢酸−アガロースカラム上に載せられ、ヒスチジンタグ化タンパク質はイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶離される。以下の実施例は、具体化された核酸によりコードされるHCVペプチドを発現するために用いられた方法を記載する。
【実施例8】
【0150】
実施例1に記載されたNS3/4A−pVAX、MSLF1−pVAXおよびNS3/4A突然変異体構築物を特徴付けするために、プラスミドをin vitroで転写および翻訳して、その結果生じたポリペプチドを、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により可視化した。メーカーの使用説明書に従ってT7結合網状赤血球溶解物系(Promega, Madison, WI)を用いて、in vitro転写および翻訳を実施した。発現構築物のin vitro翻訳反応は全て、35S標識化メチオニン(Amersham、 International, Plc, Buckinghamshire, UK)を用いて、30℃で実行した。12%SDS−PAGEにより標識化タンパク質を分離し、X線フィルム(Hyper Film-MP, Amersham)に6〜18時間曝露することにより可視化した。
【0151】
in vitro分析は、全てのタンパク質がそれらのそれぞれの発現構築物から多量に発現する、ということを明示した。rNS3構築物(NS3−pVAXベクター)は約61kDaの単一ペプチドを生成し、一方、突然変異体構築物(例えばTGT構築物(NS3/4A−TGT−pVAX)およびRGT構築物(NS3/4A−RGT−pVAX))は、約67kDaの単一ポリペプチドを生成したが、これはNS3/4A−pVAX構築物から生成される非切断NS3/4Aペプチドの分子量と同一である。発現NS3/4Aペプチドから生成された切断生産物は、約61kDaであり、これはNS3−pVAXベクターから生成されたrNS3と同じサイズだった。これらの結果は、発現構築物が機能的であり、NS3/4A構築物が酵素的に活性であり、rNS3が予測サイズのペプチドを生成し、そして切断点突然変異がNS3−NS4A接合部での切断を完全に無効にする、ということを実証した。
【0152】
NS3/4A−pVAXおよびMSLF1−pVAXプラスミドからの翻訳効率を比較するために、検定への付加の前に、投入DNA量を連続的に希釈した。プラスミドの連続希釈は、高希釈プラスミドにおいてMSLF1プラスミドが野生型NS3/4Aプラスミドより強力なバンドを示すということを明示し、これは、転写および翻訳はMSLF1プラスミドからの方がより効率的である、という証拠を提供した。次に一過的にトランスフェクトされたHep−G2細胞を用い、タンパク質発現に関してNS3/4A−pVAXおよびMSLF1プラスミドを分析した。MSLF−1遺伝子がネイティブNS3/4A遺伝子より効率的なNS3の発現を提供するという、同様の結果を得た。
【0153】
具体的なHCV核酸およびペプチドを含む配列、構築物、ベクター、クローンおよびその他の物質は、濃縮または単離形態であり得る。本明細書中で用いる場合、「濃縮」とは、物質の濃度がその天然濃度の多数倍、例えばその天然濃度の少なくとも約2、5、10、100または1000倍であり、有益には0.01重量%、好ましくは少なくとも約0.1重量%であるということを意味する。約0.5重量%またはそれ以上、例えば1重量%、5重量%、10重量%および20重量%からの濃縮調製物も意図される。「単離された」という用語は、物質がその本来の環境(例えばそれが天然のものである場合には、天然環境)から移動させられることを必要とする。例えば生きている動物中に存在する天然ポリヌクレオチドは単離されていないが、しかし天然系中の共存物質のいくつかまたは全てから分離される同一ポリヌクレオチドは、単離されている。配列が精製された形態である、ということも好都合である。「精製された」という用語は絶対的純粋を必要としない。むしろそれは、相対的定義として意図される。単離タンパク質は慣用的には、例えばクマシー染色による電気泳動的均質にまで精製される。出発物質または天然物質の少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、さらに好ましくは4または5桁の純度への精製が、明確に意図される。
【0154】
本明細書中に記載されたHCV遺伝子産物は、遺伝子導入生物を作製するために、植物、昆虫および動物中でも発現され得る。HCVペプチドを有する望ましいトランスジェニック植物系としては、シロイヌナズナ、トウモロコシおよびクラミドモナスが挙げられる。HCVペプチドを有する望ましい昆虫系としてはキイロショウジョウバエおよび線虫が挙げられるが、これらに限定されない。任意の種の動物、例えば両生類、爬虫類、鳥類、マウス、ハムスター、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、イヌ、ネコ
および非ヒト霊長類、例えばヒヒ、サルおよびチンパンジー(これらに限定されない)が、具体的なHCV分子を有するトランスジェニック動物を作製するために用いられ得る。これらのトランスジェニック生物は、望ましくは本明細書中に記載されたHCVペプチドの生殖系列移入を示す。
【0155】
当該技術分野で既知の任意の技法は、好ましくは動物にHCV導入遺伝子を導入して、トランスジェニック動物の始祖系列を生成し、あるいは既存のHCV遺伝子を破壊するかまたは置き換えるために用いられる。このような技法としては、前核マイクロインジェクション(Hoppe, P. C. Wagner, T. E., 1989、米国特許第4,873,191号);生殖系列中へのレトロウイルス媒介性遺伝子移入(Van der Putten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 6148-6152 (1985));胚幹細胞における遺伝子ターゲッティング(Thompson et al., Cell 56: 313-321 (1989));胚の電気穿孔(Lo, Mol Cell. Biol. 3: 1803-1814 (1983));ならびに精子媒介性遺伝子移入(Lavitrano et al., Cell 57: 717-723 (1989))が挙げられるが、これらに限定されない(Gordon, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115: 171-229 (1989)も参照)。
【0156】
HCVペプチドの合成または発現および単離または精製後、単離または精製ペプチドを用いて抗体を生成し得る。状況によって、「抗体」という用語は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリにより生成される断片を包含し得る。HCVペプチドを認識する抗体は多数の用途を有し、例えばバイオテクノロジー用途、治療的/予防的用途および診断用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
抗体産生のため、HCVペプチドの注入により、種々の宿主、例えばヤギ、ウサギ、ラット、マウスおよびヒト等を免疫し得る。宿主種によって、種々のアジュバントを用いて免疫学的応答を増大し得る。このようなアジュバントとしては、リバビリン、フロイント、無機ゲル、例えば水酸化アルミニウム、および界面活性剤、例えばリソレシチン、プルロニック ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、カギアナカサガイ(keyhole limpet)ヘモシアニンおよびジニトロフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。BCG(Bacillus Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)も潜在的に有用なアジュバントである。
【0158】
特異的抗体を誘導するために用いられるペプチドは、少なくとも4つのアミノ酸、好ましくは少なくとも10〜15のアミノ酸から成るアミノ酸配列を有し得る。一アプローチにより、キメラ分子に対して抗体が産生されるよう、NS3/4Aの断片をコードするアミノ酸の短鎖を別のタンパク質、例えばカギアナカサガイヘモシアニンのものと融合する。さらに、リバビリンおよびHCVペプチド(配列番号2〜11および配列番号36)、その断片であって少なくとも3〜50の間の任意数の連続したアミノ酸(例えば3、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45または50個連続したアミノ酸)を含有する断片(例えば配列番号4〜26)、あるいは1または複数のこれらの分子をコードする核酸を含む組成物を、動物、好ましくは哺乳類、例えばヒトに投与する。HCVペプチドに対応する合成3−mer、10−merおよび15−merペプチドをマウスに注入することによりHCVを特異的に認識し得る抗体を生成し得るが、一方、上記のように調製される組換えHCVペプチドを用いることにより、より多様な抗体組を生成し得る。
【0159】
HCVペプチドに対する抗体を生成するために、実質的に純粋なペプチドをトランスフェクトあるいは形質転換された細胞から単離する。例えばAmiconフィルター装置上での濃度で数μg/mlのレベルになるよう、最終調製物中のペプチドの濃度を調整する。次に当該ペプチドに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を、以下のように調製し
得る:
【0160】
培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いて、HCVペプチドに対するモノクローナル抗体を調製し得る。これらの例としては、Koehler and Milstein(Nature 256: 495-497 (1975))により最初に記載されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al. Immunol Today 4: 72 (1983); Cote et al Proc Natl Acad Sci 80: 2026-2030 (1983));ならびにEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al. Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss Inc, New York N.Y., pp 77-96 (1985))が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法である、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためのヒト抗体遺伝子とのマウス抗体遺伝子のスプライシングを用い得る(Morrison et al. Proc Natl Acad Sci 81: 6851-6855 (1984);Neuberger et al. Nature 312: 604-608 (1984); Takeda et al. Nature 314: 452-454 (1985))。あるいは、一本鎖抗体の産生に関して記載された技法(米国特許第4,946,778号)を、HCV特異的一本鎖抗体を産生するために適合させ得る。Orlandi et al., Proc Natl Acad Sci 86:
3833-3837 (1989)およびWinter G. and Milstein C; Nature 349: 293-299 (1991)に開示されているように、リンパ球集団中でのin vivo産生を誘導することにより、あるいは高特異的結合試薬の組換え免疫グロブリンライブラリーまたはパネルをスクリーニングすることによっても、抗体を産生し得る。
【0161】
HCVペプチドに対する特異的結合部位を含有する抗体断片も生成し得る。例えばこのような断片としては、F(ab’)2、抗体分子のペプシン消化により産生され得る断片、ならびにF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。あるいはFab発現ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ容易な同定を可能にし得る(Huse W.D. et al. Science 256: 1275-1281 (1989))。
【0162】
一アプローチにより、HCVペプチドに対するモノクローナル抗体を以下のように作製する。要するに、数週間の期間に亘って、数μgの選定タンパク質またはそれらに由来するペプチドをマウスに反復接種する。次にマウスを屠殺し、脾臓の抗体産生細胞を単離する。脾臓細胞をポリエチレングリコールの存在下でマウス骨髄腫と融合させて、アミノプテリンを含む選択培地(HAT培地)上での系の増殖により、余分量の非融合細胞を破壊する。首尾よく融合した細胞を希釈し、希釈液のアリコート(aliquots)をマイクロタイタープレートのウエル中に入れて、ここで培養物の増殖を継続させる。Engvall, E., Meth. Enzymol. 70: 419 (1980)により最初に記載されたELISAのような免疫検定手法により、そしてその派生的方法により、ウエルの上清液中の抗体の検出により、抗体産生クローンを同定する。選定陽性クローンを増殖させて、それらのモノクローナル抗体産物を回収して用いる。モノクローナル抗体産生に関する詳細な手法は、Davis, L. et al. Basic Methods in Molecular Biology Elsevier, New York. Section 21-2に記載されている。
【0163】
免疫原性を増強するために修飾されることもされないこともあり得る上記の発現タンパク質またはそれに由来するペプチドで適切な動物を免疫することにより、単一タンパク質の異種エピトープに対する抗体を含有するポリクローナル抗血清を調製し得る。抗原および宿主種の両方に関連した多数の因子により、有効なポリクローナル抗体産生が影響を及ぼされる。例えば小分子は、他のものより低免疫原性の傾向があり、担体およびアジュバントの使用を要する可能性がある。さらにまた宿主動物は、接種部位および用量に応答して変わり、不適切なまたは過剰な用量の抗原は低力価抗血清を生じる。多数の皮膚内部位で投与される少用量(ngレベル)の抗原が、最も信頼できると思われる。ウサギに関する有効な免疫プロトコルは、Vaitukaitis, J. et al. J. Clin. Endocrinol. Metab. 33:
988-991 (1971)に見出され得る。
【0164】
追加免疫注入を一定間隔で行い、例えば既知の濃度の抗原に対する寒天中の二重免疫拡散によって半定量的に測定して、その抗体力価が下がり始めたら、抗血清を採取する(例えばOuchterlony, O. et al., Chap. 19 in: Handbook of Experimental Immunology D. Wier (ed) Blackwell (1973)参照)。抗体のプラトー濃度は、通常は0.1〜0.2mg/血清1ml(約12μM)の範囲である。例えばFisher, D., Chap. 42 in: Manual of
Clinical Immunology, 2d Ed. (Rose and Friedman, Eds.) Amer. Soc. For Microbiol., Washington, D.C. (1980)により記載されたような競合的結合曲線を調製することにより、抗原に対する抗血清の親和性を確定する。いずれかのプロトコルに従って調製された抗体調製物は、生物学的試料中の抗原保有物質の濃度を確定する定量的免疫検定に有用である;それらは、半定量的または定性的にも用い得る(例えば生物学的試料中のHCVの存在を同定する診断的実施形態において)。次の節は、上記の新規の核酸およびペプチドのいくつかを診断において用い得る方法を記載する。
【0165】
診断的実施形態
具体的な診断は、一般に、核酸ベースの検定が用いられるかまたはタンパク質ベースの検定が用いられるかによって分類される。いくつかの診断検定は患者から得られた試料中の具体的なHCV核酸配列の存在または非存在を検出するが、一方、他の検定は、具体的なHCVペプチドが患者から得られた生物学的試料中に存在するか否かを同定しようと試みる。さらに、本明細書中に記載された試薬および方法を組入れ、HCVの迅速な検定および同定を可能にするキットの製造も具体化される。これらの診断キットとしては、例えばHCVを特異的に検出する具体的な核酸プローブまたは抗体が挙げられる。これらのキットの検出構成成分は、典型的には1または複数の以下の試薬と組合せて供給される。DNA、RNA又はタンパク質を吸収するかまたは別の方法で結合し得る支持体が、しばしば供給される。利用可能な支持体としては、正荷電置換基のアレイを保有することにより特徴付けされ得るニトロセルロース、ナイロンまたは誘導体化ナイロンの膜が挙げられる。1または複数の制限酵素、制御試薬、緩衝液、増幅酵素および仔ウシ胸腺またはサケ精子DNAのような非ヒトポリヌクレオチドがこれらのキット中に供給され得る。
【0166】
有用な核酸ベースの診断としては、直接DNAシーケンシング、サザンブロット分析、ドットブロット分析、核酸増幅、ならびにこれらのアプローチの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。これらの分析の出発点は、HCVの罹患が疑われる患者またはHCVに罹患する恐れのある患者から得られた生物学的試料からの単離または精製された核酸である。核酸を試料から抽出し、そして具体的なHCV核酸配列(例えばNS3/4A(配列番号1))と隣接する領域に対応するプライマーを用いて、RT−PCRおよび/またはDNA増幅により増幅し得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、HCV配列と特異的にハイブリダイズする核酸プローブは整列アレイで支持体に結合されるが、この場合、核酸プローブは互いに重複しない支持体の異なる領域に結合される。好ましくはこのような整列アレイは、「アドレッサブル(addressable)」であるよう設計され、この場合、プローブの異なる位置が記録され、検定手法の一部としてアクセスされ得る。これらのプローブは、異なる既知の位置で支持体に連結される。各核酸プローブの正確な位置についての知識は、結合検定においてこれらの「アドレッサブル」アレイを特に有用にする。次にいくつかの生物学的試料の調製物からの核酸は、慣用的アプローチ(例えば放射能または蛍光)により標識され、そして標識試料は、ハイブリダイゼーションを可能にする条件下でアレイに適用される。
【0168】
試料中の核酸がアレイ上のプローブとハイブリダイズする場合には、シグナルは、ハイブリッドの位置に対応する支持体上の一位置で検出される。各標識試料の特性は既知であ
り、標識試料が適用される支持体の領域は既知であるため、多型変異体の存在は迅速に同定され得る。これらのアプローチは、ハイスループット診断または検出分析の技術分野の当業者に既知の技法を用いて、容易に自動化される。
【0169】
さらに、上に提示したものと逆のアプローチを用い得る。アドレッサブルアレイを作製するために、生物学的試料中に存在する核酸を支持体上に配置し得る。好ましくは試料を、重複しない既知の位置で支持体上に配置する。生物学的試料が配置された位置に対応するアレイ上の場所に、HCVペプチドをコードする核酸を相補する標識核酸プローブを適用することにより、各試料中のHCV核酸の存在を判断する。生物学的試料の特性およびアレイ上でのその位置は既知であるため、HCVに感染している患者が迅速に同定され得る。これらのアプローチも、ハイスループット診断分析の当業者に既知の技法を用いて、容易に自動化される。
【0170】
当該技術分野で既知の任意のアドレッサブルアレイ技法を用い得る。ポリヌクレオチドアレイの特定の一実施形態はGenechips(商標)として既知であり、米国特許第5,143,854号、PCT公告WO 90/15070および92/10092に一般的に記載されている。これらのアレイは一般に、機械的合成法または光照射化学合成法(フォトリソグラフ法および固相オリゴヌクレオチド合成の組合せを組入れる)を用いて生成される(Fodor et al., Science, 251: 767-777, (1991))。固体支持体上でのオリゴヌクレオチドのアレイの固定化は、「非常に大規模な固定化ポリマー合成」(VLSPIS(商標))として一般に同定される技術の開発により可能にされてきたが、この場合、典型的にはプローブはチップの固体表面の高密度アレイで固定化される。VLSPIS(商標)技術の例は、米国特許第5,143,854号および第5,412,087号に、ならびにPCT公告WO 90/15070、WO 92/10092およびWO 95/11995に提示されており、これらは、光照射化学合成技法のような技法によるオリゴヌクレオチドアレイの生成方法を記載する。固体支持体上で固定化されるヌクレオチドのアレイを提供することに向けられる設計戦略では、ハイブリダイゼーションパターンおよび診断情報を最大にするための試みにおいて、チップ上にオリゴヌクレオチドアレイを並べ、そして表示するために、さらなる提示戦略が開発された。このような提示戦略の例は、PCT公告WO 94/12305、WO 94/11530、WO 97/29212およびWO 97/31256に開示されている。
【0171】
広範な種々の標識および接合技法が当業者に既知であり、種々の核酸検定に用いられ得る。ハイブリダイゼーションまたはPCRのために標識核酸を生成するためのいくつかの方法が存在し、例としてはオリゴラベリング、ニックトランスレーション、末端ラベリングまたは標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅が挙げられるが、これらに限定されない。あるいはHCVペプチドをコードする核酸は、mRNAプローブの生成のためにベクター中にクローニングされ得る。このようなベクターは当該技術分野で既知であり、市販されており、そして適切なRNAポリメラーゼ、例えばT7、T3又はSP6および標識ヌクレオチドの付加によりin vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。多数の会社、例えばPharmacia Biotech(Piscataway N.J.)、Promega (Madison, Wis)、およびU.S. Biochemical Corp(Cleveland Ohio)が商業用キットおよびこれらの手法のためのプロトコルを供給する。適切なレポーター分子または標識としては、放射性核種、酵素、蛍光物質、化学発光物質または発色剤、ならびに基質、補因子、阻害剤、磁性粒子等が挙げられる。
【0172】
患者から得られるタンパク質試料中のHCVペプチドの存在も、慣用的検定および本明細書中に記載された実施形態により検出され得る。例えば開示されたHCVペプチドと免疫反応性である抗体を用いて、HCV感染の存在に関して生物学的試料をスクリーニングし得る。好ましい実施形態では、具体化されたHCVペプチドに対して反応性である抗体
を用いて、生物学的試料からの開示HCVペプチドを免疫沈降するか、あるいはそれらを用いて、ウエスタンブロットまたはイムノブロット上で生物学的試料から得られるタンパク質と反応させる。好ましい診断実施形態としては、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射分析法(IRMA)および免疫酵素検定(IEMA)、例えば開示HCVペプチドに特異的なモノクローナルおよび/またはポリクローナル抗体を用いたサンドイッチ検定も挙げられる。サンドイッチ検定の例は、David等により米国特許第4,376,110号および第4,486,530号に記載されている。その他の実施形態は、米国特許第5,290,678号、第5,604,105号、第5,710,008号、第5,744,358号および第5,747,274号に開示された免疫ストリップ(immune-strip)技法の態様を用いる。
【0173】
別の好ましいタンパク質ベースの診断では、本明細書中に記載された抗体は整列アレイで支持体に結合されるが、この場合、複数の抗体が、互いに重複しない支持体の異なる領域に結合される。核酸ベースの検定を用いた場合と同様に、タンパク質ベースの検定は、異なる位置が記録され、検定手法の一部としてアクセスされ得るように、「アドレッサブル」であるよう設計される整列アレイである。これらのプローブは、異なる既知の位置で支持体に連結される。各プローブの正確な位置についての知識は、結合検定においてこれらの「アドレッサブル」アレイを特に有用にする。例えばアドレッサブルアレイは、生物学的試料中に存在するHCVペプチドを特異的に認識し、本明細書中で同定されたHCVアイソタイプを区別する複数の抗体プローブを連結するいくつかの領域を有する支持体を含み得る。
【0174】
一アプローチにより、生物学的試料からタンパク質を得て、次に慣用的アプローチ(例えば放射能、比色測定的にまたは蛍光的に)により標識する。次に結合を可能にする条件下で標識試料をアレイに適用する。試料中のタンパク質がアレイ上で抗体プローブと結合する場合には、抗体−タンパク質複合体の位置に対応する支持体上の位置でシグナルが検出される。各標識試料の同一性は既知であり、標識試料が適用された支持体上の領域は既知であるため、存在、濃度および/または発現レベルは迅速に検証され得る。即ち、HCVペプチドの既知の濃度の標識化標準を用いることにより、研究者は試験試料中の特定のペプチドのタンパク質濃度を精確に確定し得るし、そしてHCVペプチドの発現レベルを査定することもできる。濃度測定における慣用的方法を用いて、HCVペプチドの濃度または発現レベルをより精確に確定することも可能である。これらのアプローチは、ハイスループット診断分析の当業者に既知の技法を用いて容易に自動化される。
【0175】
別の実施形態では、上に提示したものと逆のアプローチを用い得る。アドレッサブルアレイを作製するために、生物学的試料中に存在するタンパク質を支持体上に配置し得る。好ましくはタンパク質試料を、重複しない既知の位置で支持体上に配置する。次に、HCVペプチドに特異的なエピトープを認識する標識化抗体プローブを適用することにより、各試料中のHCVペプチドの存在を確定する。生物学的試料の特性およびアレイ上のその位置は既知であるため、HCVペプチドの存在、濃度および/または発現レベルは迅速に検証され得る。
【0176】
即ち、濃度既知のHCVペプチドの標識化標準を用いることにより、研究者は試料中のペプチドの濃度を精確に確定し得るし、そしてこの情報から、ペプチドの発現レベルを査定し得る。濃度測定における慣用的方法を用いて、HCVペプチドの濃度または発現レベルをより精確に確定することも可能である。これらのアプローチも、ハイスループット診断分析の当業者に既知の技法を用いて容易に自動化される。上で詳述したように、当該技術分野で既知の任意のアドレッサブルアレイ技術を用い得る。次の節は、本明細書中に記載されたHCV核酸および/またはHCVペプチドを含むさらなる組成物を記載する。
【0177】
HCV核酸またはペプチドを含む組成物
本発明の実施形態は、NS3/4A融合タンパク質またはこれらの分子をコードする核酸も包含する。例えば組換えタンパク質の産生および精製は、「タグ」を形成するための補助アミノ酸の付加により促され得る。このようなタグとしては、His−6、Flag、MycおよびGSTが挙げられるが、これらに限定されない。タグは、C末端、N末端またはNS3/4Aアミノ酸配列内に付加され得る。さらなる実施形態は、アミノまたはカルボキシ末端の欠損あるいは内部欠失を有するか、あるいはアミノまたはカルボキシ末端に付加されるかまたは内部的に付加された付加的ポリペプチド配列を有するNS3/4A融合タンパク質を包含する。その他の実施形態としては、NS3/4A融合タンパク質、あるいはその短縮型または突然変異化バージョンが挙げられるが、この場合、NS3/4Aタンパク質分解性切断部位の残基は置換されている。このような置換としては、P1’部位がSer、GlyまたはProであるか、あるいはP1位置がArgである配列、あるいは、P8〜P4’配列がSer−Ala−Asp−Leu−Glu−Val−Val−Thr−Ser−Thr−Trp−Val(配列番号15)である配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
さらなる実施形態は、NS3に対する免疫応答増強を引き出し得るNS3/4A融合タンパク質またはその短縮、突然変異または修飾バージョンを含む免疫原に関する。免疫原は、実質的に精製された形態で提供され得るが、これは、免疫原がそれと天然に会合する他のタンパク質、脂質、炭水化物またはその他の化合物を実質的に含有しないことを意味する。
【0179】
いくつかの実施形態は、支持体に連結された少なくとも1つのHCV核酸またはHCVペプチド(例えば配列番号1〜27、35または36)を含有する。好ましくはこれらの支持体は、多量体の薬剤を作製するよう製造される。これらの多量体薬剤は、分子に対する十分な親和性が達成されるような形態で、または方法で、HCVペプチドまたは核酸を提供する。HCV核酸またはペプチドを有する多量体薬剤は、所望の分子を高分子支持体に連結することにより得られる。「支持体」は、担体、タンパク質、樹脂、細胞膜、キャプシドまたはそれらの部分、あるいはこのような分子を連結するかまたは固定するために用いられる任意の高分子構造と呼ばれるものであり得る。固体支持体としては、反応トレーのウエルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、ニトロセルロースストリップ、膜、例えばラテックス粒子などの微小粒子、動物細胞、デュラサイト(商標)、人工細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。HCV核酸またはペプチドは、例えばヒドロキシ、カルボキシまたはアミノ基および担体上の反応基を介した共有結合により、無機担体、例えば酸化ケイ素物質(例えばシリカゲル、ゼオライト、珪藻土またはアミン化ガラス)に連結され得る。
【0180】
いくつかの多量体薬剤では、高分子支持体は、疎水性非共有的相互作用によりHCV核酸またはペプチドの一部と相互作用する疎水性表面を有する。いくつかの場合、支持体の疎水性表面は、疎水性基が連結された可塑性または任意の他のポリマー、例えばポリスチレン、ポリエチレンまたはポリビニルのようなポリマーである。さらに、HCV核酸またはペプチドは、担体、例えばタンパク質およびオリゴ/多糖(例えばセルロース、デンプン、グリコーゲン、キトサンまたはアミン化セファロース)に共有的に結合され得る。これら後者の多量体薬剤では、分子上のヒドロキシまたはアミノ基のような反応基が、担体上の反応基に連結して共有結合を作製するために用いられる。さらなる多量体薬剤は、HCV核酸またはペプチドを結合するよう、化学的に活性化される他の反応基を有する支持体を含む。例えば臭化シアン活性化マトリックス、エポキシ活性化マトリックス、チオおよびチオプロピルゲル、ニトロフェニルクロロ蟻酸およびN−ヒドロキシスクシンイミドクロロ蟻酸結合、あるいはオキシランアクリル支持体が用いられる(Sigma)。
【0181】
身体中に用いるため(即ち予防的または治療的用途)の担体は、望ましくは生理学的、非毒性および好ましくは非免疫応答性である。身体に用いるための適切な担体としては、ポリ−L−リジン、ポリ−D、L−アラニン、リポソーム、所望のHCVペプチドまたは核酸を表示するキャプシド、およびクロモソルブ(商標)(Johns-Manville Products, Denver Co.)が挙げられる。リガンド接合クロモソルブ(商標)(Synsorb-Pk)は、溶血尿毒性症候群の予防のためにヒトで試験されており、副作用を示さないと報告された(Armstrong et al. J. Infectious Diseases 171: 1042-1045 (1995))。いくつかの実施形態では、生物の身体中でHCV核酸またはペプチドを結合する能力を有する「裸の」担体(即ち結合HCV核酸またはペプチドを欠く)が投与される。このアプローチにより、裸の担体がHCV核酸またはペプチドとは別に投与され、ひとたび両者が生物の身体中に存在すれば、担体およびHCV核酸またはペプチドが集合して多量体複合体を形成する、「プロドラッグ型」療法が意図される。
【0182】
HCVペプチド、ハイブリッドまたは結合相手のより大きな柔軟性を助長し、それを通じて支持体による任意の立体障害を克服するために、HCV核酸またはペプチドと支持体との間の適切な長さのリンカー(例えばλファージの可動領域に類似するよう設計された「λリンカー」)の挿入も意図される。最適な細胞応答を可能にするかまたはそれを欠くリンカーの適切な長さの決定は、本発明の開示に詳述した検定において種々のリンカーを用いて、HCV核酸またはペプチドをスクリーニングすることにより確定され得る。
【0183】
1より多い型のHCV核酸またはペプチドを含む複合支持体も意図される。「複合支持体」は、2またはそれ以上の異なるHCV核酸またはペプチドを結合するかまたは固定するために用いられる担体、樹脂または任意の高分子構造であり得る。上記のように、分子中のより大きな柔軟性を促し、生じ得る任意の立体障害を克服するために、HCV核酸またはペプチドと支持体との間の適切な長さのリンカー、例えばλリンカーの挿入も意図される。最適細胞応答を可能にするかまたはそれを欠くリンカーの適切な長さの確定は、本発明の開示に詳述した検定において種々のリンカーを用いて、HCV核酸またはペプチドをスクリーニングすることにより確定され得る。
【0184】
別の実施形態では、それぞれ「多量体化多量体支持体」および「多量体化複合支持体」を作製するために、上記の多量体および複合支持体が多量体化HCV核酸またはペプチドを結合し得る。多量体化リガンドは、例えば分子生物学における慣用的技法を用いて、直列に2またはそれ以上のHCV核酸またはペプチドを結合することにより得られる。多量体化形態のHCV核酸またはペプチドは、例えばより高い親和性を有する薬剤を生成する能力のため、多数の用途のために有益であり得る。多量体化薬剤を作り上げる個々のドメイン間のリンカーまたはスペーサー、例えば柔軟性λリンカーの組入れも、いくつかの実施形態のために有益であり得る。例えばタンパク質結合ドメイン間の適切な長さのλリンカーの挿入は、分子におけるより大きな柔軟性を助長し、立体障害を克服し得る。同様に多量体化HCV核酸またはペプチドおよび支持体間のリンカーの挿入は、より大きな柔軟性を促し、支持体により提示される立体障害を限定し得る。リンカーの適切な長さの決定は、本発明の開示に詳述した検定においてHCV核酸またはペプチドをスクリーニングすることによってなされ得る。
【0185】
実施形態は、NS3/4A融合タンパク質あるいはその短縮化または突然変異化バージョンを、そして任意にアジュバントを含むワクチン組成物および免疫原製剤も包含する。次の節は、これらの組成物のいくつかをより詳細に説明する。
【0186】
ワクチン組成物および免疫原製剤
具体化されたHCV核酸またはHCVペプチドまたはその両方(例えば任意の1または複数の配列番号1〜27、35または36)を含むか、それらから成るか、または本質的
にそれらから成るワクチン組成物および免疫原製剤が意図される。これらの組成物は通常はアジュバントを含有するが、しかし、アジュバントを必ずしも必要とするわけではない。即ち本明細書中に記載された核酸およびペプチドの多くは、そのままで投与された場合にも、免疫原として機能する。本明細書中に記載された組成物(例えばリバビリンのようなアジュバントを含有するHCV免疫原およびワクチン組成物)は、製剤調製学の慣用的方法に従って製造されて、動物、例えばヒトを含めた哺乳類への投与のための薬剤を生成し得る。
【0187】
種々の核酸ベースのワクチンが既知であり、これらの組成物および免疫療法へのアプローチは、リバビリンを用いた組成変更により増大され得る、ということが意図される(例えば米国特許第5,589,466号および第6,235,888号参照)。一アプローチにより、例えば本明細書中に記載されたHCVペプチド(例えば配列番号1または配列番号35)のうちの1つをコードする遺伝子が、被験体に導入されるとポリペプチドを発現し得る発現ベクター中にクローニングされる。発現構築物は、アジュバント(例えばリバビリン)の混合物中で、あるいはアジュバント(例えばリバビリン)と一緒に、被験体に導入される。例えばアジュバント(例えばリバビリン)は、発現構築物の直後に、同一部位に投与される。あるいは当該HCVポリペプチド抗原をコードするRNAが、リバビリンとの混合物中で、またはアジュバント(例えばリバビリン)と一緒に被験体に提供される。
【0188】
抗原がDNAであるべき場合(例えばDNAワクチン組成物の調製物)、適切なプロモーターとしては、シミアンウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、例えばHIV末端反復配列(LTR)プロモーター、モロニーウイルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)、例えばCMV極初期(immediate early)プロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられ、ならびにヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびヒトメタロチオネインのようなヒト遺伝子からのプロモーターが用いられ得る。いくつかの実施形態に関して、特にヒトのための遺伝子ワクチンの生成において有用なポリアデニル化シグナルの例としては、SV40ポリアデニル化シグナルおよびLTRポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。特に、SV40ポリアデニル化シグナルとして言及されるpCEP4プラスミド(Invitrogen, San Diego, Calif.)中に存在するSV40ポリアデニル化シグナルが用いられる。
【0189】
遺伝子発現に必要とされる調節要素のほかに、その他の要素も遺伝子構築物中に含まれ得る。このような付加的要素としては、エンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ならびにウイルスエンハンサー、例えばCMV、RSVおよびEBVからのものから成る群から選択され得るが、これらに限定されない。構築物を染色体外に保持し、そして細胞中に構築物の多数のコピーを生成するために、遺伝子構築物は、哺乳類複製起点を与えられ得る。Invitrogen (San Diego, CA)からのプラスミドpCEP4およびpREP4は、エプスタイン・バーウイルス複製起点および核抗原EBNA−1コード領域を含有し、これは、取り込みを伴わずに高コピーエピソーム複製を生成する。複製しても、複製しなくても、ゲノム中に取り込まれるようにはならない、そして発現可能である全形態のDNAが用いられ得る。好ましくは遺伝子ワクチンは、リバビリン、ならびにNS3/4A、NS3またはそれらの断片または突然変異体をコードする核酸(配列番号2〜26および36)を含む。以下の実施例は、ヒトに用いるのに適した遺伝子ワクチンの作製を記載する。
【実施例9】
【0190】
HCV発現プラスミドは、NS3/4Aペプチド(配列番号2または配列番号36)を
発現するよう設計される。NS3/4A−pVAXまたはMSLF1−pVAXのNS3/4Aコード配列を酵素的に取り出し、それがCMVプロモーターおよびRSVエンハンサー要素の転写制御下にあるよう、単離断片をプラスミドA中に挿入する(米国特許第6,235,888号(Pachuk等)参照)。プラスミド主鎖Aは3969塩基対からなる;それは、大腸菌Escherichia coli中での複製のためのPBR複製起点、およびカナマイシン耐性遺伝子を含有する。NS3/4Aまたはコドン最適化NS3/4Aのようなインサートをポリリンカー領域にクローニングするが、該インサートはポリリンカー領域中でプロモーターとポリアデニル化シグナルとの間に機能的に連結されている。クローンインサートの転写は、CMVプロモーターおよびRSVエンハンサー要素の制御下にある。ポリアデニル化シグナルは、ちょうどクローニング部位の3’に位置するSV40ポリAシグナルの存在により提供される。次に、約0.5〜500mg、例えば0.5〜1μg、1〜2μg、2〜5μg、5〜10μg、10〜20μg、20〜50μg、50〜75μg、75〜100μg、100〜250μg、250〜500μgの任意量の構築物を、約0.1〜10mg、例えば0.1mg〜0.5mg、0.5mg〜1mg、1mg〜2mg、2mg〜5mgまたは5mg〜10mgの任意量のリバビリンと混合することにより、NS3/4A含有ワクチン組成物または免疫原製剤が作られる。
【0191】
上記のワクチン組成物を用いて、哺乳類(例えばマウスまたはウサギ)において抗体を産生し得るし、あるいは抗体を産生するよう、ヒトに、好ましくはHCVウイルスに慢性的に感染しているヒトに筋肉内注射され得る。レシピエントは、好ましくは同様に、4週間間隔で混合物の追加免疫を3回施される。3回目の追加免疫により、HCVに特異的な抗体の力価は有意に増大される。さらにこの時点で、上記被験体は、EIAにより検出されるようなNS3特異的抗体の画分増大により立証されるように、NS3に対する抗体およびT細胞媒介性免疫応答の増強、ならびにRT−PCRにより検出されるようなウイルス量の低減を経験する。
【0192】
本明細書中に記載された1または複数のHCVペプチドを含むワクチン組成物も意図される。好ましくは具体化されたペプチドワクチンは、リバビリンおよびNS3/4A、NS3あるいはそれらの断片または突然変異体(例えば配列番号2〜26および36)を含む。以下の実施例は、NS3/4A融合タンパク質およびアジュバントを含むワクチン組成物を作製するためのアプローチを記載する。
【実施例10】
【0193】
タグ化NS3/4A構築物を生成するために、NS3/4A−pVAXまたはMSLF1−pVAXのNS3/4Aコード配列を酵素的に取り出し、単離断片をXpressベクター(Invitrogen)中に挿入する。Xpressベクターは、二価陽イオンに対する高親和性を有する短いN末端リーダーペプチドを有する組換え融合タンパク質の産生を可能にする。ニッケルキレート樹脂(Invitrogen)を用いて、組換えタンパク質を一工程で精製し、エンテロキナーゼを用いた切断によりリーダーを実質的に除去し得る。好ましいベクターは、pBlueBacHis2 Xpressである。pBlueBacHis2
Xpressベクターは、多数のクローニング部位、アンピシリン耐性遺伝子およびlac z遺伝子を含有するバキュロウイルス発現ベクターである。したがって消化された増幅断片をpBlueBacHis2 Xpressベクター中でクローニングし、そしてSF9細胞を感染させる。次に、メーカーの使用説明書に従って、発現タンパク質を単離または精製する。次に、約0.1〜500mg、例えば1〜5μg、5〜10μg、10〜20μg、20〜30μg、30〜50μg、50〜100μg、100〜250μgまたは250〜500μgの任意量のrNS3/4Aを、約0.1mg〜10mg、例えば0.1mg〜0.5mg、0.5mg〜1mg、1mg〜2mg、2mg〜5mgまたは5mg〜10mgの任意量のリバビリンと混合することにより、NS3/4A含有ワクチン組成物が作られる。
【0194】
上記のワクチン組成物を用いて、哺乳類(例えばマウスまたはウサギ)において抗体を産生し得るし、あるいは抗体を産生するよう、ヒトに、好ましくはHCVウイルスに慢性的に感染しているヒトに筋肉内注射し得る。レシピエントは、好ましくは4週間間隔で混合物の追加免疫を3回施される。3回目の追加免疫により、HCVに特異的な抗体の力価は有意に増大される。さらにこの時点で、上記被験体は、EIAにより検出されるようなNS3特異的抗体の画分増大により立証されるように、NS3に対する抗体およびT細胞媒介性免疫応答の増強、ならびにRT−PCRにより検出されるようなウイルス量の低減を経験する。
【0195】
1または複数の具体化されたHCV核酸またはペプチドを含む組成物は、他の成分、例えばアジュバント、結合剤、賦形剤、例えば安定剤(長期保存を促すため)、乳化剤、増粘剤、塩、防腐剤、溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等(これらに限定されない)を含有し得る。これらの組成物は、疾患または症状を回避するための予防手段として、あるいは疾患または症状にすでに悩まされている動物を治療するための療法として、動物の治療に適している。
【0196】
多数のその他の成分が存在してもよい。例えばアジュバントおよび抗原は、慣用的賦形剤(例えばアジュバントおよび/または抗原と有害に反応しない非経口的、経腸的(例えば経口)、または局所的適用に適している薬学的に許容可能な有機または無機担体物質)と混合して用いられ得る。薬学的に許容可能な適切な担体としては、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、例えばラクトース等の炭水化物、アミロースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されない。多数のさらに適切な担体が、Remmington's Pharmaceutical Sciences, 15th Edition, Easton:Mack Publishing Company, pages 1405-1412 and 1461-1487 (1975)ならびにThe National Formulary XIV, 14th Edition, Washington, American Pharmaceutical Association (1975)に記載されている。
【0197】
本明細書中に記載した遺伝子構築物は特に、同一遺伝子ワクチンがこのような薬剤の非存在下で投与される場合に生じる細胞による遺伝子構築物の取込みおよび/または発現と比較して、細胞による遺伝子構築物の取込みおよび/または発現を増大させる薬剤とともに処方されるかまたは投与され得る。このような薬剤ならびにそれらを遺伝子構築物と一緒に投与するためのプロトコルは、PCT特許出願番号PCT/US94/00899(1994年1月26日提出)に記載されている。このような薬剤の例としては、以下のものが挙げられる:CaPO4、DEAEデキストラン、陰イオン性脂質;細胞外マトリックス活性酵素;サポニン;レクチン;エストロゲン様化合物およびステロイドホルモン;ヒドロキシル化低級アルキル;ジメチルスルホキシド(DMSO);尿素;および安息香酸エステルアニリド、アミジン、ウレタンおよびその塩酸塩、例えば局所麻酔薬のファミリーのもの。さらに、遺伝子構築物は、脂質/ポリカチオン複合体内に封入され/それらとともに投与され得る。
【0198】
本明細書中に記載した組成物は、滅菌され、そして所望により、アジュバントまたは抗原と有害に反応しない助剤、例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、風味および/または芳香物質等と混合され得る。
【0199】
特定の処方物の有効用量および投与方法は、個々の患者ならびに疾患の型および段階、ならびに当業者に既知のその他の因子に基づいて変わり得る。ワクチンの治療効力および毒性は、細胞培養または実験動物における標準薬学手法により、例えばED50(集団の5
0%に治療的に有効な用量)により確定され得る。細胞培養検定および動物試験から得られるデータは、ヒト使用のための一連の投与量を処方するために用いられ得る。ワクチンの投与量は、好ましくは毒性を伴わないED50を含む一連の血中濃度範囲内である。投与量は、アジュバント誘導体およびHCV抗原の型、用いられる剤形、患者の感受性ならびに投与経路によって、この範囲内で変化する。
【0200】
数年の間に多数のアジュバント、例えばリバビリンが市場に出回ったため、多数の剤形および投与経路が既知である。既知の剤形および投与経路は全て、本明細書中に記載した実施形態の情況内に提供され得る。好ましくは動物における抗原に対する免疫応答を増強するのに有効であるアジュバントの量は、動物において約0.25〜12.5μg/ml、好ましくは約2.5μg/mlの抗原の血中血清レベルを達成するのに十分な任意量であると考えられ得る。いくつかの実施形態では、アジュバントの量は、ワクチンを投与される動物の体重によって確定される。したがって特定の処方物中のアジュバント量は、約0.1〜6.0mg/体重1kgの任意量であり得る。即ちいくつかの実施形態は、約0.1〜1.0mg/動物の体重1kg、1.1〜2.0mg/kg、2.1〜3.0mg/kg、3.1〜4.0mg/kg、4.1〜5.0mg/kgおよび5.1〜6.0mg/kgの任意量に対応するアジュバントの量を有する。より慣用的には、本明細書中に記載された組成物のいくつかは、約0.25mg〜2000mgの間の任意量のアジュバントを含有する。即ち、いくつかの実施形態は、約250μg、500μg、1mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9gおよび2gのアジュバントを有する。
【0201】
当業者が理解するように、ワクチン中の抗原または免疫原製剤の量は、抗原の型およびその免疫原性によって変わり得る。それに応じてワクチン中の抗原の量は変化し得る。それでもなお、一般的指針として、本明細書中に記載された組成物は、約0.25〜2000mgの間の任意量の本明細書中で考察されたHCV抗原を有し得る。例えば抗原の量は、約0.25mg〜5mg、5〜10mg、10〜100mg、100〜500mgおよび2000mgより上の量の間であり得る。好ましくはHCV抗原の量は、上記抗原が核酸である場合、0.1μg〜1mg、望ましくは1μg〜100μg、好ましくは5μg〜50μg、最も好ましくは7μg、8μg、9μg、10μg、11μg〜20μgであり、そして上記抗原がペプチドである場合、1μg〜100mg、望ましくは10μg〜10mg、好ましくは100μg〜1mg、最も好ましくは200μg、300μg、400μg、500μg、600μgまたは700μg〜1mgである。
【0202】
本明細書中に記載したいくつかのアプローチでは、アジュバントおよび/またはHCV抗原の的確な量は、治療される患者を考慮して、個々の医師により選定される。さらにアジュバントの量は、同一のまたは等価の量の抗原と組合せて、あるいはそれらとは別個に付加され得るし、そしてこれらの量は、患者特異的または抗原特異的考察の点から見て十分なレベルを提供するために、個々のワクチン接種プロトコルの間に調整することができる。この趣旨で、考慮され得る患者特異的および抗原特異的因子としては、患者の疾患状態の重症度、患者の年齢および体重、食生活、投与の時間および頻度、薬剤組合せ(単数または複数)、反応感受性、ならびに療法に対する耐容/応答が挙げられるが、これらに限定されない。次の節は、アジュバントとしてのリバビリンの使用をより詳細に記載する。
【0203】
リバビリン
ヌクレオシド類似体は、ウイルス複製を低減する能力のため、抗ウイルス療法に広範に
用いられてきた(Hosoya et al., J. Inf. Dis., 168: 641-646 (1993))。リバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)は、RNAおよびDNAウイルス複製を阻害するために用いられてきた合成グアノシン類似体である(Huffman et al., Antimicrob. Agents. Chemother., 3: 235 (1973); Sidwell et al., Science, 177: 705 (1972))。リバビリンは、IMPをIMX(これは次にGMPに転化される)に転化するイノシトールモノホスフェート(IMP)デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の競合的阻害剤であることが示されている(De Clercq, Anti viral Agents: characteristic activity spectrum depending on the molecular target with which they interact, Academic press, Inc., New York N.Y., pp. 1-55 (1993))。GTPの細胞内プールは、長期リバビリン治療の結果として枯渇するようになる。
【0204】
抗ウイルス活性のほかに、いくつかのグアノシン類似体が免疫系にある作用を及ぼす、ということを研究者等は観察した(米国特許第6,063,772号および第4,950,647号)。リバビリンは、機能的体液性免疫応答(Peavy et al., J. Immunol., 126: 861-864 (1981); Powers et al., Antimicrob. Agents. Chemother., 22: 108-114 (1982))および肥満細胞分泌のIgE媒介性変調(Marquardt et al., J. Pharmacol. Exp. Therapeutics, 240: 145-149 (1987))を抑制することが示されている。数人の研究者等は、リバビリンの1日経口療法がヒトおよびマウスに及ぼす免疫変調作用を有する、と報告している(Hultgren et al., J. Gen. Virol., 79: 2381-2391 (1998)およびCramp et al., Gastron. Enterol., 118: 346-355 (2000))。それにもかかわらず、免疫系に及ぼすリバビリンの作用についての一般的理解は、初期段階にある。以下に開示されるように、リバビリンは強力なアジュバントであることが判明した。
【実施例11】
【0205】
第一組の実験では、3〜5匹のBalb/cマウスの群(BK Universal, Uppsala, Sweden)を、10μgまたは100μgの組換えC型肝炎ウイルス非構造3(rNS3)タンパク質で腹腔内または皮下(例えば尾の基部)免疫した。rNS3をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)単独または1mgのリバビリン(ICN, Costa Mesa, CAから入手)を含有するPBS中に溶解した。マウスには、一度の注入につき総量100μlを注入した。
【0206】
腹腔内免疫後2および4週目に、眼窩後方サンプリングにより全マウスを採血した。血清試料を収集し、rNS3に対する抗体の存在に関して分析した。抗体力価を確定するために、酵素免疫検定(EIA)を実施した(例えばHultgren et al., J. Gen. Virol. 79: 2381-2391 (1998)およびHultgren et al., Clin. Diagn. Lab. Immunol. 4: 630-632 (1997)参照)。非免疫マウスの2倍より大きい405nmでの光学的濃度を示す最高血清希釈として、抗体レベルを記録した。
【0207】
PBS中で1mgのリバビリンと混合された10μgまたは100μgのrNS3を摂取したマウスは、一貫して高レベルのNS3抗体を示した。免疫後2週間目にEIAにより検出された抗体力価を、図7に示す。1mgのリバビリンおよび10μgまたは100μgのrNS3を有するワクチン処方物は、rNS3のみから成るワクチン処方物より有意に大きい抗体力価を誘導した。
【0208】
第二組の実験では、0mg、1mg、3mgまたは10mgのリバビリン(Sigma)を含有するリン酸緩衝生理食塩水100μl中の10または50μgのrNS3を用いて、8匹のBalb/cマウスの群を腹腔内免疫した。4、6および8週間目に、マウスを採血し、血清を分離して、凍結させた。試験完了後、上記のように組換えNS3に対する抗体のレベルに関して血清を試験した。rNS3に対する平均抗体レベルを、スチューデントt検定(パラメトリック分析)またはマン−ホイットニー(ノンパラメトリック分析)およびソフトウェアパッケージStatView4.5(Abacus Concepts, Berkely, CA)を用い
て、群間で比較した。10μgのrNS3に対し3つの用量で添加した場合のリバビリンのアジュバント作用を、表11に示す。50μgのrNS3に3つの用量で添加した場合のリバビリンのアジュバント作用を、表11に示す。異なる10μgまたは50μgのrNS3、ならびに異なる用量のリバビリンを摂取しているマウスにおける平均rNS3抗体力価のパラメトリック比較をそれぞれ表12および13に示す。異なる10μgまたは50μgのrNS3および異なる用量のリバビリンを摂取しているマウスにおける平均NS3抗体力価のノンパラメトリック比較を、それぞれ表14〜16に示す。示された値は、組換えrNS3に対する終点力価を表す。
【0209】
【表11】

【0210】
【表12】

【0211】
【表13】

【0212】
【表14】

【0213】
【表15】

【0214】
【表16】

【0215】
上記のデータは、リバビリンがHCV抗原またはHCVエピトープに対する免疫応答を促進するかまたは増強する、ということを実証する。1mgのリバビリンおよび10μgのrNS3抗原という少量を含むワクチン組成物による免疫後に、rNS3に対する強力な免疫応答が誘導された。上記のデータは、抗原に対する免疫応答を促すのに十分であるリバビリンの量は25〜30gのBalb/cマウスに関して1〜3mg/注入である、という証拠も提供する。しかしながらこれらの量は指針としてのみ意図されると理解されるべきであり、いかなる点でも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。それでもやはり、約1〜3mg用量のリバビリンを含むワクチン組成物は、リバビリンの非存在下で誘導される免疫応答の12倍以上高い免疫応答を誘導する、ということをデータは示す。このようにリバビリンは動物の体液性免疫応答に及ぼす有意のアジュバント作用を有
し、それにより抗原に対する免疫応答を増強するかまたは促進する。以下の実施例では、抗原に対する免疫応答を増強するかまたは促進するために必要とされるリバビリンの量をより良好に理解するために実行した実験を説明する。
【実施例12】
【0216】
アジュバント作用を提供するのに十分なリバビリンの用量を確定するために、以下の実験を実施した。第一組の実験では、マウスの群(3匹/群)を20μgのrNS3単独または20μgのrNS3と0.1mg、1mgまたは10mgのリバビリンの混合物を用いて免疫した。次にEIAにより、抗原に対する抗体のレベルを確定した。1および3週目の平均終点力価をプロットし、図8に示す。リバビリンにより提供されるアジュバント作用は、提供されるリバビリンの用量によって異なる動態を有する、ということを発見した。例えば低用量(<1mg)のリバビリンでも、3週目でなく1週目に抗体レベルを増強することが見出されたが、一方、高用量(1〜10mg)は、3週目に抗体レベルを増強することが判明した。
【0217】
第二組の実験も実施した。これらの実験では、マウスの群に、種々の量のリバビリンおよびrNS3を含むワクチン組成物を注入し、これらの動物におけるIgG応答をモニタリングした。ワクチン組成物は、約100μlのリン酸緩衝生理食塩水および20μgのrNS3から成り、0.1mg、1.0mgまたは10mgのリバビリン(Sigma)を含有する場合としない場合があった。6週目にマウスを採血し、上記のようにEIAによりrNS3特異的IgGレベルを確定した。表17に示すように、持続性抗体レベルに及ぼすアジュバントの作用は、25〜30gのマウスに対する1〜10mg/注入の用量範囲で最も明白であった。
【0218】
【表17】

【0219】
第三組の実験では、初回および追加抗原注射後のリバビリンのアジュバント作用を調べた。これらの実験では、10μgのrNS3を、リバビリンとともにまたはリバビリンを伴わずに含むワクチン組成物の2回の腹腔内注射をマウスに施し、上記と同様に、抗原に対するIgGサブクラス応答をモニタリングした。10μgの組換えNS3単独、0.1または1.0mgのリバビリン(Sigma)とともにまたはリバビリンを伴わずに含有する
100μlのリン酸緩衝液で、0および4週目にマウスを免疫した。6週目にマウスを採血し、上記のようにEIAによりNS3特異的IgGサブクラスを確定した。表18に示したように、注射前の免疫原へのリバビリンの付加は、NS3特異的免疫応答においてIgGサブクラス応答を変えなかった。したがってリバビリンおよび抗原を含むワクチン組成物のアジュバント作用は、Th1/Th2平衡の移行により説明され得ない。別のメカニズムがリバビリンのアジュバント作用に関与し得ると思われる。
【0220】
【表18】

【0221】
本実施例で提示したデータは、リバビリンがアジュバントとして投与できることを立証し、そしてリバビリンの用量がアジュバント作用の動態を調節し得る、ということをさらに立証する。以下の実施例には、抗原に対する免疫応答を増強または促進するリバビリンの能力を評価するために実施した別の検定を記載する。
【実施例13】
【0222】
この検定は、特定のワクチン処方物が細胞性免疫応答を調節する程度を確定するために、任意のリバビリン誘導体またはリバビリン誘導体の組合せとともに用い得る。リバビリン含有ワクチンに対するCD4+T細胞応答を判定するために、PBS中の100μgのrNS3またはPBS中の100μgのrNS3および1mgのリバビリンを用いてマウスの群を皮下免疫した。免疫後10日目にマウスを屠殺し、それらのリンパ節を採取して液を抜いた。次にin vitroリコール (recall) 検定を実施した(例えばHultgren
et al., J. Gen. Virol., 79: 2381-91 (1998)およびHultgren et al., Clin. Diagn. Lab. Immunol. 4: 630-632 (1997)参照)。[3H]チミジンの混入による培養96時間目に、CD4+T細胞増殖の量を確定した。
【0223】
図9に示すように、1mgのリバビリンと混合した100μgのrNS3で免疫したマウスは、PBS中の100μgのrNS3で免疫したマウスより非常に大きいT細胞増殖応答を示した。このデータは、リバビリンが細胞性免疫応答を増強または促進する(例えばT細胞の有効なプライミングを促進することにより)、というさらなる証拠を提供する。
【0224】
付加的実験を実行して、リバビリンが市販ワクチン製剤に対する免疫応答を増強する、ということを立証した。以下の実施例は、市販のHBVワクチン製剤を伴うリバビリンの使用を記載する。
【実施例14】
【0225】
HBsAgおよびミョウバンを含有する2用量の市販ワクチン(Engerix, SKB)と混合した場合の、リバビリンのアジュバント作用を試験した。約0.2μgまたは2μgのEngerixワクチンを、PBSまたはPBS中の1mgのリバビリンと混合し、混合物をマウスの群(3匹/群)に腹腔内注射した。同一混合物を含有する追加免疫を4週目に投与し、6週目に全マウスを採血した。血清試料を1:60〜1:37500に希釈し、希釈液を上記と同様にEIAにより試験したが、但し、精製ヒトHBsAgを固相抗原として用いた。表19に示すように、リバビリンを有するワクチン処方物は、ワクチンがすでにミョウバンを含有しているという事実にもかかわらず、2μgの現存ワクチンに対する応答を増強した。即ち、準最適ワクチン用量(即ち、単独では検出可能な抗体を誘導しない用量)にリバビリンを付加することにより、抗体は検出可能になり、リバビリンの付加が免疫応答を弱めることなくワクチン処方物中のより低い抗原量の使用を可能にする、という証拠を提供した。
【0226】
【表19】

【0227】
上記の実験に用いたリバビリンは、商業的供給元(例えばSigmaおよびICN)から入手した。本明細書中に記載した実施形態とともに用いられ得るリバビリンも商業的供給元から入手するか、あるいは合成し得る。リバビリンおよび/または抗原は、修飾を伴って、ならびに伴わずに処方し得る。例えばリバビリンを修飾するかまたは誘導体化して、より安定な分子および/またはより強力なアジュバントを作製し得る。一アプローチにより、支持体、例えば親水性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)にリバビリン分子をカップリングすることにより、リバビリンの安定性を増強し得る。
【0228】
理論的薬剤設計およびコンビナトリアルケミストリーにおける慣用的技法を用いて、多数のさらなるリバビリン誘導体を生成し得る。例えばMolecular Simulations Inc. (MSI)、ならびに多数のその他の供給元は、有機分子の組合せライブラリを当業者に構築させるソフトウエアを提供する。例えばC2.アナログビルダー(Analog Builder)プログラムは、Cerius2分子多様性ソフトウエアのMSIセットとともに組み込まれて、本明細書中に記載した実施形態とともに用い得るリバビリン誘導体のライブラリを発現させ得る(例えばhttp://msi.com/life/products/cerius2/index.html参照)。
【0229】
一アプローチにより、リバビリンの化学構造をコンピューター読取可能媒体に記録し、1つまたは複数のモデリングソフトウエア適用プログラムによりアクセスする。C2.アナログビルダープログラムをC2多様性プログラムと一緒に用いると、例えば各置換基位置に関するR基の多様性に基づいて非常に大きなバーチャルライブラリをユーザーは生成し得る。次に、バーチャルライブラリ中に作製したモデル化リバビリン誘導体と同一構造を有する化合物は、慣用的化学を用いて製造するか、あるいは商業的供給基から入手し得る。
【0230】
次に新規製作リバビリン誘導体を、分子のアジュバント活性の程度および/または免疫
応答を調節するその能力の程度を確定する検定でスクリーニングし得る。いくつかの検定は、バーチャル薬剤スクリーニングソフトウエア、例えばC2.Ludiを包含し得る。C2.Ludiは、当該タンパク質(例えばRAC2または別のGTP結合タンパク質)の活性部位と相互作用するそれらの能力に関して分子(例えばリバビリン誘導体)のデータベースをユーザーに調査させるソフトウエアプログラムである。バーチャル薬剤スクリーニングソフトウエアを用いて発見された予測相互作用に基づいて、リバビリン誘導体に対するさらなる特徴付けを、ある分子のアジュバント活性および/または免疫応答を調節する程度を確定する慣用的検定によって優先的に行うことができる。以下の節は、本明細書中に記載した組成物の使用方法に関するさらなる説明を提供する。
【0231】
ワクチン組成物および免疫原製剤の使用方法
本明細書中に記載した実施形態の投与経路としては、経皮、非経口、胃腸、経気管支および経肺胞が挙げられるが、これらに限定されない。経皮投与は、アジュバントおよびHCV抗原を皮膚に浸透させ得るクリーム、リンス、ゲルなどの適用により成し遂げられ得る。非経口的投与経路としては、電気的または直接注入、例えば中心静脈への直接注入、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮膚内または皮下注入が挙げられるが、これらに限定されない。胃腸投与経路としては、摂取および直腸的経路が挙げられるが、これらに限定されない。経気管支および経肺胞投与経路としては、口を介したまたは鼻腔内の吸入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
経皮投与に適したアジュバントおよびHCV抗原を有する組成物としては、皮膚に直接適用されるかまたは経皮デバイス(「経皮パッチ」)のような保護担体中に組入れられる薬学的に許容可能な懸濁液、油、クリームおよび軟膏が挙げられるが、これらに限定されない。適切なクリーム、軟膏等の例は、例えばPhysician's Desk Referenceに見出され得る。適切な経皮デバイスの例は、例えば米国特許第4,818,540号(Chinen等、1989年4月4日発行)に記載されている。
【0233】
非経口投与に適したアジュバントおよびHCV抗原を有する組成物としては、薬学的に許容可能な滅菌等張溶液が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶液としては、中心静脈への注入、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮膚内または皮下注入のための生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水および油調製物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
経気管支および経肺胞投与に適したアジュバントおよびHCV抗原を有する組成物としては、吸入用の種々の型のエアロゾルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの経気管支および経肺胞投与に適した用具も実施形態である。このような用具としては、噴霧器および気化器が挙げられるが、これらに限定されない。多数の形態の一般的に利用可能な噴霧器および気化器が、リバビリンおよび抗原を有するワクチンを送達するために容易に適合可能である。
【0235】
胃腸投与に適したアジュバントおよびHCV抗原を有する組成物としては、摂取用の薬学的に許容可能な粉末、ピルまたは液体、ならびに直腸投与のための座薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
特に本明細書中に記載した遺伝子構築物は、例えば旧来の注射器、無針注入用具または「微粒子衝撃遺伝子銃(microprojectile bombardment gene guns)」といった手段により投与され得るが、これらに限定されない。あるいは遺伝子ワクチンは、種々の手段により、個体から取り出された細胞中に導入され得る。このような手段としては、例えばex
vivoトランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクションおよび微粒子銃が挙げられる。遺伝子構築物が細胞に組み込まれた後、それらを個体に再移植する。さもなければ、細胞中に組入れられた遺伝子構築物を有する非免疫原性の細胞を、たとえその
ワクチンされた細胞が元々別の個体から採取された場合であっても、個体中に移植し得ることを意図している。
【0237】
いくつかの実施形態によれば、無針注入用具を用いて個体に遺伝子構築物を投与し得る。いくつかの実施形態によれば、無針注入用具を用いて、皮内、皮下および筋肉内に、遺伝子構築物を個体に同時投与する。無針注射用具は既知であり、広範に利用可能である。当業者は、本明細書中の教示にしたがって、個体の細胞に遺伝物質を送達するために無針注入用具を使用する。無針注入用具は、全ての組織に遺伝物質を送達するのによく適している。それらは特に、皮膚および筋肉細胞に遺伝物質を送達するのに有用である。いくつかの実施形態では、無針注入用具を用いて、個体の皮膚表面に向けてDNA分子を含有する液体を噴射し得る。皮膚との衝突時に、液体が皮膚の表面に浸透し、その下の皮膚および筋肉組織に透過するよう、十分な速度で液体を噴射する。したがって遺伝物質は、皮内、皮下および筋肉内に同時に投与される。いくつかの実施形態では、その器官の細胞に核酸分子を導入するために、無針注入用具を用いて他の器官の組織に遺伝物質を送達し得る。
【0238】
好ましい実施形態は、HCV感染の治療または予防方法に関する。これらの実施形態では、処置を要する動物に、HCV抗原(例えば本明細書中に記載したようなペプチド抗原または核酸ベースの抗原(配列番号1〜27および35〜36))ならびに上記動物においてアジュバント活性を示すのに十分な量のアジュバントを提供する。したがって、一般に利用可能な診断試験または臨床評価を用いて、処置を要する動物を同定し得る。アジュバントおよび抗原は、別々にあるいは組合せて提供し得るし、そして他のアジュバント(例えば油、ミョウバンまたは免疫応答を増強するその他の薬剤)も処置を要する動物に提供し得る。
【0239】
本発明の他の実施形態は、上記免疫応答を増強するのに有効な量のアジュバント(例えばリバビリン)および1または複数の配列番号1〜11および35〜36、またはその断片、好ましくは配列番号12〜27を、必要とする動物に提供することによるHCV抗原に対する免疫応答の増強方法を包含する。これらの実施形態では、一般的に利用可能な診断試験または臨床評価を用いて、抗原に対する免疫応答増強を必要とする動物を同定する。例えば一アプローチにより、上記個体がHCVに感染するのを防御するために、NS3に対する細胞性および体液性免疫応答を引き出すのに十分な量で上記のワクチン組成物を非感染個体に提供する。別の実施形態では、HCV感染個体を同定し、HCV感染を低減するかまたは排除するために、NS3に対する細胞性および体液性免疫応答を増強するのに十分な量でリバビリンおよびNS3を含むワクチン組成物を提供する。このような個体は、感染の慢性期または急性期にあり得る。さらに別の実施形態では、HCCに罹患しているHCV感染個体に、NS3発現腫瘍細胞に対する細胞性および体液性免疫応答を引き出すのに十分な量でアジュバントおよびNS3/4A融合遺伝子を含む組成物を提供する。
【0240】
実施形態および実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱しない限り、種々の修正が成され得る、と理解されるべきである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】H−2dマウスにおけるNS3に対する抗体力価を初回筋肉内免疫後の時間の関数として示したグラフである。菱形はNS3/4A−pVAXで免疫したマウスにおける抗体力価を意味し、そして正方形はNS3−pVAXで免疫したマウスにおける抗体力価を意味する。
【図2】NS3/4A−pVAX1(4μg)またはMSLF1−pVAX1(4μg)の1回遺伝子銃免疫により付与されるin vivo防御を示す。マウスをそれぞれのプラスミドで免疫し、14日後、該マウスにNS3/4A発現SP2/0細胞株をチャレンジした(約106細胞/マウス)。次に、チャレンジ後6日目以後、毎日皮膚を通して腫瘍サイズを測定し、データをプロットした。
【図3】NS3/4A−pVAX1(4μg)またはMSLF1−pVAX1(4μg)の2回遺伝子銃免疫により付与されるin vivo防御を示す。マウスをそれぞれのプラスミドで0週目および4週目に免疫し、そして最終免疫の14日後、該マウスにNS3/4A発現SP2/0細胞株をチャレンジした(約106細胞/マウス)。次に、チャレンジ後6日目以後、毎日皮膚を通して腫瘍サイズを測定し、データをプロットした。
【図4】NS3/4A−pVAX1(4μg)またはMSLF1−pVAX1(4μg)の3回遺伝子銃免疫により付与されるin vivo防御を示す。マウスをそれぞれのプラスミドで0週目、4週目および8週目に免疫し、そして最終免疫の14日後、該マウスにNS3/4A発現SP2/0細胞株をチャレンジした(約106細胞/マウス)。次に、チャレンジ後6日目以後、毎日皮膚を通して腫瘍サイズを測定し、データをプロットした。
【図5A】エフェクター対標的比の関数としてSP2/0標的細胞の特異的CTL媒介性溶解パーセンテージを示したグラフである。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を対照免疫原として用いた。
【図5B】エフェクター対標的比の関数としてSP2/0標的細胞の特異的CTL媒介性溶解パーセンテージを示したグラフである。プラスミドNS3/4A−pVAXを免疫原として用いた。
【図6A】ペプチド被覆RMA−S細胞で刺激したナイーブ脾臓T細胞の応答を示すグラフである。C57/BL6マウスからナイーブ脾臓T細胞を得た。
【図6B】ペプチド被覆RMA−S細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのMSLF1−pVAX1を1回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6C】ペプチド被覆RMA−S細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのNS3/4A−pVAX1を1回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6D】ペプチド被覆RMA−S細胞で刺激したナイーブ脾臓T細胞の応答を示すグラフである。C57/BL6マウスからナイーブ脾臓T細胞を得た。
【図6E】ペプチド被覆RMA−S細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのMSLF1−pVAX1を2回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6F】ペプチド被覆RMA−S細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのNS3/4A−pVAX1を2回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6G】NS3/4A発現EL−4細胞で刺激したナイーブ脾臓T細胞の応答を示すグラフである。C57/BL6マウスからナイーブ脾臓T細胞を得た。
【図6H】NS3/4A発現EL−4細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのMSLF1−pVAX1を1回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6I】NS3/4A発現EL−4細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのNS3/4A−pVAX1を1回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6J】NS3/4A発現EL−4細胞で刺激したナイーブ脾臓T細胞の応答を示すグラフである。C57/BL6マウスからナイーブ脾臓T細胞を得た。
【図6K】NS3/4A発現EL−4細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのMSLF1−pVAX1を2回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図6L】NS3/4A発現EL−4細胞で再刺激した脾臓T細胞の応答を示すグラフである。4μgのNS3/4A−pVAX1を2回投与したC57/BL6マウスから脾臓T細胞を得た。
【図7】1mgのリバビリンを1回同時に投与した場合の、平均終点力価により確定される、10および100μgの組換えC型肝炎ウイルス(HCV)非構造3タンパク質(NS3)に対する体液性応答を示すグラフである。
【図8】0.1、1.0または10mgのリバビリンを1回同時に投与した場合の、平均終点力価により確定される、20μgの組換えC型肝炎ウイルス(HCV)非構造3タンパク質(NS3)に対する体液性応答を示すグラフである。
【図9】in vitroリコール応答により確定されるような、NS3特異的リンパ節増殖性応答に及ぼす1mgのリバビリンの1回投与の作用を示すグラフである。
【図10】10匹のH−2dマウスの群における、4μgのwtNS3/4A−pVAX1およびcoNS3/4A−pVAX1を用いた遺伝子銃免疫により、または107のwtNS3/4A−SFV粒子の皮下注射によりプライミングされた平均NS3特異的抗体応答を示す(a)。0週目および4週目に、全マウスを免疫した。値は、平均終点抗体力価(±SD)として示されている。wtNS3/4A−pVAX1筋注、coNS3/4A−pVAX1筋注または遺伝子銃(gg)、ならびにwtNS3/4A−SFV皮下投与により2回免疫した5匹のマウスの群からのIgGサブクラスパターンも示す(b)。値は、平均終点抗体力価(±SD)として示されている。「**」印は、p<0.01の統計学的差を示し、「*」印は、p<0.05の差を示し、そしてNS(有意でない)は統計学的差が認められないことを示す(Mann-Whitney)。NS3に対するIgG2a抗体の平均終点力価をNS3に対するIgG1抗体の平均終点力価で割ることにより得られる力価比も示す。高比率(>3)はTh1様応答を示し、そして低比率(<0.3)はTh2様応答を示すが、一方、1から3倍以内の差の値(0.3〜3)は混合型Th1/Th2応答を示す。
【図11】ペプチド負荷H−2Db:Ig融合タンパク質を用いたNS3/4A特異的CD8+T細胞の前駆体頻度のフローサイトメトリー定量を示す。a)では、遺伝子銃を用いてwtNS3−pVAX1、wtNS3/4ApVAX1またはcoNS3/4A−pVAX1で2回免疫した5匹のマウスの群からのNS3特異的CD8+T細胞の平均%を示す。「*」印は、p<0.05の差を示し、そしてNS(有意でない)は統計学的差が認められないことを示す(Mann-Whitney)。上記の群を代表する個々のマウス(e、fおよびh)からの、ならびにcoNS3/4A−pVAX1(b)またはwtNS3/4A−SFV(c)で1回免疫した個々のマウスからの生データも示す。(d)および(g)には、異なる実験からの非免疫対照マウスを示した。(i)および(j)では、分析前にNS3−ペプチドを用いて5日間、脾細胞を再刺激した。総計150,000〜200,000データ点を収集し、H−2Db:Igに対して染色されたCD8+細胞のパーセンテージを各ドットプロットについて挿入的に示す。
【図12】wtNS3−pVAX1、wtNS3/4AおよびcoNS3/4Aプラスミドの遺伝子癌免疫、あるいはwtNS3/4A−SFV粒子の皮下注入による、H−2bマウスにおけるin vitro検出可能CTLのプライミングを示す。5〜10匹のH−2bマウスの群を、1回(a)または2回(b)免疫した。特異的溶解%は、NS3−ペプチド被覆RMA−S細胞((a)および(b)の上パネル)またはNS3/4A発現EL−4細胞(aおよびbの下パネル)を用いて得られた溶解%から非負荷または非トランスフェクトEL−4細胞を用いて得られた溶解%を引いた値に相当する。値は、60:1、20:1および7:1のエフェクター対標的(E:T)細胞比について示されている。各線は、個々のマウスを示す。
【図13】遺伝子銃免疫によりプライミングされた腫瘍抑制免疫応答の特異性を示す(パネル(a))。10匹のC57BL/6マウスの群を、未処理のままか、あるいは4μgのcoNS3/4A−pVAX1で1ヶ月毎に2回免疫した。最終免疫の2週間後に、マウスにEL−4親細胞株または106のNS3/4A発現EL−4細胞を皮下注射した。腫瘍注射後6、7、10、11、12および14日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。(b)では、遺伝子銃を用いてcoNS3/4A−pVAX1プラスミドで2回免疫した10匹のC57BL/6マウスの群において、in vivo機能性エフェクター細胞集団を決定した。2つの群では、NS3/4A発現EL−4細胞株チャレンジの1週間前または最中に、モノクローナル抗体の投与によりCD4+またはCD8+T細胞のいずれかを枯渇させた。腫瘍注射後5、6、8、11、13、14および15日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。値は、平均腫瘍サイズ±標準誤差として示した。「**」印は、p<0.01の統計学的差を示し、「*」印は、p<0.05の差を示し、そしてNS(有意でない)は統計学的差が認められないことを示す(曲線下面積の値を、ANOVAにより比較)。
【図14】種々の免疫原が1回免疫後にHCV NS3/4A特異的腫瘍抑制応答をプライミングする能力の評価を示す。10匹のC57BL/6マウスの群を、未処理のままか、あるいは指示免疫原を用いて1回免疫した((a)、(b)、(c)、(g)および(h)では遺伝子銃を用いて4μgのDNA;(d)では107 SFV粒子皮下投与;(e)ではCFA中の100μgのペプチドを皮下投与;ならびに(f)ではCFA中の20μgのrNS3を皮下投与)。最終免疫後2週間目に、マウスに106 NS3/4A発現EL−4細胞を皮下注射した。腫瘍注射後6〜19日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。値は、平均腫瘍サイズ±標準誤差として示した。(a)〜(e)では、陰性対照として、遺伝子銃により空のpVAXプラスミドを用いて免疫した群からの平均データを、各グラフにプロットした。(f)〜(h)では、陰性対照は非免疫マウスであった。曲線下面積およびANOVAを用いた対照と各曲線との統計学的比較から得られたp値も示す。
【図15】遺伝子銃送達wtNS3/4A−pVAX1およびcoNS3/4A−pVAX1プラスミドの、腫瘍抑制免疫応答をプライミングする効率の比較を示す。10匹のBALB/cマウスの群を、未処理のままか、あるいは4μgのプラスミドで1ヶ月毎に1、2または3回免疫した。最終免疫の2週間後に、マウスに106 NS3/4A発現SP2/0細胞を皮下注射した。腫瘍注射後6、8、10、11、12、13および14日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。値は、平均腫瘍サイズ±標準誤差として示した。「**」印は、p<0.01の統計学的差を示し、「*」印は、p<0.05の差を示し、そしてNS(有意でない)は統計学的差が認められないことを示す(曲線下面積の値を、ANOVAにより比較)。
【図16】遺伝子銃を用いたcoNS3/4Aプラスミドによる治療的ワクチン接種の効果を示す。10匹のC57BL/6マウスの群に、106 NS3/4A−EL4細胞を接種した。1群は、チャレンジの2週間前に遺伝子銃を用いて4μgのcoNS3/4A DNAで1回免疫し(陽性対照)、1群は、腫瘍接種後6日目に同一方法で免疫し、そして1群は、腫瘍接種後12日目に免疫した。1群は、免疫しなかった(陰性対照)。腫瘍注射後6、10、11、12、13、14、18、19および20日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。値は、平均腫瘍サイズ±標準誤差として示した。「**」印は、p<0.01の統計学的差を示し、「*」印は、p<0.05の差を示し、そしてNS(有意でない)は統計学的差が認められないことを示す(曲線下面積の値を、ANOVAにより比較)。
【配列表】






























【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号35の配列のうちの少なくとも30個連続したヌクレオチドまたはその相補鎖を含む精製または単離された核酸。
【請求項2】
配列番号35の配列を含む請求項1の精製または単離された核酸。
【請求項3】
配列番号35の配列から成る請求項1の精製または単離された核酸。
【請求項4】
少なくとも50個連続したヌクレオチドを含む請求項1の核酸。
【請求項5】
少なくとも100個連続したヌクレオチドを含む請求項1の核酸。
【請求項6】
少なくとも200個連続したヌクレオチドを含む請求項1の核酸。
【請求項7】
少なくとも500個連続したヌクレオチドを含む請求項1の核酸。
【請求項8】
配列番号36のアミノ酸配列をコードする精製または単離された核酸。
【請求項9】
請求項1の核酸を含むベクター。
【請求項10】
請求項1の核酸を含む細胞。
【請求項11】
配列番号36の配列のうちの少なくとも30個連続したアミノ酸を含む精製または単離されたペプチド。
【請求項12】
配列番号36のアミノ酸配列を含む精製または単離されたペプチド。
【請求項13】
配列番号36のアミノ酸配列から成る精製または単離されたペプチド。
【請求項14】
少なくとも35個連続したアミノ酸を含む請求項12のペプチド。
【請求項15】
少なくとも40個連続したアミノ酸を含む請求項12のペプチド。
【請求項16】
少なくとも45個連続したアミノ酸を含む請求項12のペプチド。
【請求項17】
少なくとも50個連続したアミノ酸を含む請求項12のペプチド。
【請求項18】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8の核酸および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項19】
アジュバントをさらに含む請求項18の薬学的組成物。
【請求項20】
前記アジュバントがリバビリンである請求項19の薬学的組成物。
【請求項21】
請求項11、12、13、14、15、16または17のペプチドのいずれか1種類を含む薬学的組成物。
【請求項22】
アジュバントをさらに含む請求項21の薬学的組成物。
【請求項23】
前記アジュバントがリバビリンである請求項22の薬学的組成物。
【請求項24】
免疫原製剤の製造方法であって、
リバビリンを提供すること、
配列番号35の核酸を提供すること、および
前記免疫原製剤を調合するために前記リバビリンおよび前記核酸を混合すること
を包含する方法。
【請求項25】
免疫原製剤の製造方法であって、
リバビリンを提供すること、
配列番号36のペプチドを提供すること、および
前記免疫原製剤を調合するために前記リバビリンおよび前記ペプチドを混合することを包含する方法。
【請求項26】
免疫原製剤の製造方法であって、
リバビリンを提供すること、
配列番号35の核酸またはその断片であって連続した少なくとも30塩基の断片を提供すること、および
前記免疫原製剤を調合するために前記リバビリンおよび前記核酸を併合すること
を包含する方法。
【請求項27】
免疫原製剤の製造方法であって、
リバビリンを提供すること、
配列番号36の核酸またはその断片であって連続した少なくとも10アミノ酸の断片を提供すること、および
前記免疫原製剤を調合するために前記リバビリンおよび前記核酸を混合すること
を包含する方法。
【請求項28】
改良型C型肝炎ウイルス免疫原製剤であって、配列番号35の配列のうちの少なくとも30個連続したヌクレオチドを含む核酸を包含する免疫原製剤。
【請求項29】
配列番号35の配列から成る核酸を包含する請求項28の免疫原製剤。
【請求項30】
配列番号35の配列を含む核酸を包含する請求項28の免疫原製剤。
【請求項31】
抗HCVウイルス組成物を調製するための請求項1の核酸の使用。
【請求項32】
抗HCVウイルス組成物を調製するための請求項12のペプチドの使用。
【請求項33】
請求項1の核酸を含む組成物。
【請求項34】
請求項2の核酸を含む組成物。
【請求項35】
請求項3の核酸を含む組成物。
【請求項36】
請求項8の核酸を含む組成物。
【請求項37】
請求項11のペプチドを含む組成物。
【請求項38】
請求項12の核酸を含む組成物。
【請求項39】
請求項13の核酸を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図6K】
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【図6L】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−523434(P2006−523434A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554859(P2004−554859)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006361
【国際公開番号】WO2004/048402
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501429782)
【Fターム(参考)】