説明

CD20に対するヒトモノクローナル抗体

ヒトCD20に結合して阻害する単離されたヒトモノクローナル抗体、及び、並びに関連する抗体ベースの組成物及び分子を開示する。更に、前記ヒト抗体を含む医薬組成物、並びに、前記ヒト抗体を用いる治療法及び診断法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CD20分子(ヒトBリンパ球限定分化抗原又はBp35とも呼ばれる)は、分子量がほぼ35kDの疎水性膜貫通たんぱく質であり、プレB及び成熟Bリンパ球上に位置する(Valentine et al. (1989) J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287; 及びEinfield et
al. (1988) EMBO J. 7(3):711-717)。CD20は末梢血又はリンパ系器官由来のB細胞の90%を超えるものの表面に見られ、初期プレB細胞発生中に発現し、形質細胞分化まで残る。CD20は正常なB細胞と悪性のB細胞の両方に存在する。特に、CD20はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%を超えるものに発現している(Anderson et al. (1984) Blood 63(6):1424-1433)が、造血系幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞、又は他の正常組織上には見られない(Tedder et al. (1985) J.
Immunol. 135(2):973-979)。
【0002】
CD20たんぱく質の85個アミノ酸カルボキシル末端領域は細胞質内に位置する。この領域の長さは、それぞれ3個、3個、28個、15個、及び16個のアミノ酸という比較的に短い細胞質内領域を有するIgM、IgD、及びIgG重鎖又は組織適合性抗原クラスIIα又はβ鎖など、他のB細胞特異的表面構造のそれとは対照的である(Komaromy et al. (1983) NAR 11:6775-6785)。最後の61個のカルボキシル末端アミノ酸のうちで、21個が酸性残基であり、他方2個のみが塩基性であることから、この領域が正味で強い負の電荷を有することが示唆される。GenBank受託番号はNP 690605である。
【0003】
CD20がB細胞の活性化及び分化プロセスのうちの初期段階の調節に関与しており(Tedder et al. (1986) Eur. J.
Immunol. 16:881-887)、カルシウムイオン・チャンネルとして機能する(Tedder et al. (1990) J. Cell.
Biochem. 14D:195)のではないかと考えられている。
【0004】
B細胞の増殖及び/又は分化を促進する上でのCD20の実際の機能は確かではないが、それは、癌及び自己免疫異常に関与するB細胞を制御する又は致死させる抗体媒介治療の重要なターゲットとなる。特に、NHLなどの腫瘍細胞上にCD20が発現していることから、治療薬をCD20陽性の新生物性細胞に特異的に狙い撃ちする抗体媒介治療にとって重要なターゲットである。しかしながら、今日までに得られた結果では、CD20が免疫治療にとって有用なターゲットであることが明確に証明されたが、現在入手できるマウス及びキメラ抗体が理想的な治療薬とはならないことも示された。
【0005】
従って、CD20発現細胞が関与する範囲の疾患を防止及び/又は治療する上で有効な、CD20に対する優れた治療用抗体が求められている。
【0006】
発明の概要
本発明は、ヒトCD20に特異的に結合すると共に、重鎖可変領域がSEQ ID NO:10のVHCDR3を含む、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むヒトモノクローナル抗体を提供するものである。
【0007】
ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、SEQ
ID NO:8のVHCDR1、SEQ ID NO:9のVHCDR2、及び SEQ ID NO:10のVHCDR3を含む。
【0008】
ある実施態様では、本発明は、ヒトCD20に特異的に結合すると共に、SEQ ID NO:2のVH領域、あるいは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVH領域、を含むヒトモノクローナル抗体を提供する。
【0009】
ある実施態様では、上記の実施態様のいずれかで開示されたヒトモノクローナル抗体は
(i)SEQ ID NO:16のVLCDR3、
(ii)SEQ ID NO:14のVLCDR1、SEQ ID NO:15のVLCDR2、及びSEQ ID NO:16のVLCDR3、
(iii)SEQ ID NO:5のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、
(iv)SEQ ID NO:13のVLCDR3、
(v)SEQ ID NO:11のVLCDR1、SEQ ID NO:12のVLCDR2、及びSEQ ID NO:13のVLCDR3、
(vi)SEQ ID NO:4のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、
(vii)SEQ ID NO:19のVLCDR3、
(viii)SEQ ID NO:17のVLCDR1、SEQ ID NO:18のVLCDR2、及びSEQ ID NO:19のVLCDR3、
(ix)SEQ ID NO:7のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、
を含む。
【0010】
ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、例えばIgG1,κ又はIgM,κ抗体など、IgG1又はIgM抗体である。
【0011】
ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、可変重鎖ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1及び可変軽鎖ヌクレオチド配列SEQ
ID NO:3又はSEQ ID NO:6、あるいはこれらの保存的配列改変を含む、ヒト重鎖核酸及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされている。
【0012】
ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した、SEQ ID NO:2に規定された通りの重鎖可変領域、又はSEQ ID NO:4、5又は7に規定された通りの軽鎖可変領域、の形の結合ドメインポリペプチド、(ii)前記ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)前記CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、抗体フラグメントか、一本鎖抗体か、結合ドメイン免疫グロブリン融合たんぱく質、である。
【0013】
ある実施態様では、本発明は、ヒトCD20に特異的に結合すると共に、ヒト生殖系配列VH3-20を由来とする重鎖可変領域と、ヒト生殖系配列VκIII-L6又はVκI-L15を由来とする軽鎖可変領域とを含むヒトモノクローナル抗体に関する。
【0014】
ある実施態様では、上記の実施態様のいずれかに定義されたヒトモノクローナル抗体は、位置163又は166で変異したCD20には結合しない。より具体的には、本ヒト抗体は、ヒトCD20変異体N163D又はN166Dには結合しない。
【0015】
ある実施態様では、上記の実施態様のいずれかに定義されたヒトモノクローナル抗体は、CD20上の不連続なエピトープに結合するが、この場合、当該エピトープは、第一の小型細胞外ループの部分と、第二の細胞外ループの部分とを有する。
【0016】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID
NO:1に記載された通りのヌクレオチド配列をそれらの可変重鎖領域に、そしてSEQ ID NO:3 又は SEQ ID NO:6に記載された通りのヌクレオチド配列をそれぞれ可変軽鎖領域に、あるいはこれらの保存的配列改変を、含むヒト重鎖及びヒト軽鎖核酸にコードされた、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。
【0017】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID NO:2に記載された通りのヒト重鎖可変アミノ酸配列、及びそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、又はSEQ ID NO:7に記載された通りのヒト軽鎖可変アミノ酸配列、あるいはこれらの保存的配列改変、を含むヒト重鎖及びヒト軽鎖可変領域を有する、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。
【0018】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID
NO:1に記載された通りのヒト重鎖可変核酸、及びSEQ
ID NO:3 又はSEQ ID NO:6に記載された通りのヒト軽鎖核酸、あるいはこれらの保存的配列改変、にコードされた、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマに関する。
【0019】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID
NO:2に記載された通りのヒト重鎖可変アミノ酸配列、及びそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、又は SEQ ID NO:7に記載された通りのヒト軽鎖可変アミノ配列、あるいはこれらの保存的配列改変、を含むヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマに関する。
【0020】
ある実施態様では、本発明は、上記の実施態様のいずれかに、あるいはこれらの保存的配列改変に開示された通りの、ヒトモノクローナル抗体を産生する真核性もしくは原核性ホスト細胞に関する。
【0021】
ある実施態様では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0022】
ある実施態様では、本医薬組成物は、一種以上の更なる治療薬を含んでいてもよい。
【0023】
ある実施態様では、本発明の抗体に、放射性同位元素を付着させるためのキレータ・リンカを更に含めることができる。
【0024】
ある実施態様では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体を、細胞毒性物質、放射性同位元素、又は薬物に連結させて含む免疫複合体に関する。
【0025】
ある実施態様では、本免疫複合体は、本発明による単量体IgM抗体を細胞毒性物質、放射性同位元素、又は薬物に連結させて含む。
【0026】
ある実施態様では、本発明は、本発明の抗体と、例えばヒトFc受容体に対する結合特異性部分、又は、CD3などのT細胞受容体に対する結合特異性部分など、ヒトエフェクタ細胞に対する結合特異性部分とを含む二重特異的分子に関する。
【0027】
ある実施態様では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体、医薬組成物、免疫複合体、又は二重特異的分子、あるいは発現ベクタを、CD20発現細胞が関与する疾患又は異常を治療又は防止するために有効量、対象に投与するステップを含む、該疾患又は異常を治療又は防止する方法に関する。一種以上の更なる治療薬を対象に投与するステップも更に含むこのような方法を、以下の項で更に詳しく開示する。
【0028】
ある実施態様では、本発明は:
試料を本発明の抗体に、前記抗体とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で接触させるステップと、
複合体の形成を検出するステップと
を含む、試料中のCD20抗原又はCD20発現細胞の存在を検出するin vitro法に関する。
【0029】
ある実施態様では、本発明は、本発明の抗体を含む試料中で、CD20抗原又はCD20発現細胞の存在を検出するキットに関する。
【0030】
ある実施態様では、本発明は、本発明の抗体を、前記抗体とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で投与するステップと、
形成された複合体を検出するステップと
を含む、対象においてCD20抗原又はCD20発現細胞を検出するin vivo法に関する。
【0031】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID NO:1の重鎖ヌクレオチド配列、SEQ
ID NO:3 又はSEQ ID NO:6の軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域、あるいは、SEQ ID NO:1の重鎖ヌクレオチド配列の可変領域とSEQ ID NO:3 又はSEQ ID NO:6の軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域の両者、あるいはこれらの保存的改変、を含む発現ベクタに関する。
【0032】
ある実施態様では、前記発現ベクタは、ヒトCD20に結合するヒト抗体の軽鎖、重鎖又は軽鎖及び重鎖の両者、の定常領域をコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0033】
ある実施態様では、本発明は、SEQ ID
NO:2に記載された通りのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5 又はSEQ ID NO:7に記載された通りのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、あるいはこれらの保存的改変、を含む発現ベクタに関する。
【0034】
ある実施態様では、本発明は、上記の実施態様のいずれかで開示された発現ベクタと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0035】
ある実施態様では、本発明は、2C6IgG1,κなどの本発明の抗体への抗イディオタイプ抗体の結合と、試料中のCD20に対するヒトモノクローナル抗体のレベルを検出するためのこのような抗イディオタイプ抗体の使用とに関する。
【0036】
抗イディオタイプ抗体は、2C6 IgG1,κ,などの本発明の抗体でBalb/Cマウスを免疫し、標準的な技術を用いてこれらのマウスの脾臓をNS1骨髄腫細胞と融合させることでハイブリドーマを作製することにより、産生させることができる。この抗イディオタイプ抗体は、関係する抗体への特異的結合について、(37℃で2時間、最終濃度1-2μg/mlになるまでPBSで希釈した)精製済み抗体でELISAプレートを被覆することにより、検査することができる。
【0037】
特異的抗イディオタイプ抗体を、研究用又は患者試料中でCD20に対するヒトモノクローナル抗体を検出し、そのレベルを定量するための免疫診断用ツールとして用いることができる。これは、抗CD20抗体の薬物動態を調べたり、あるいは、抗CD20抗体の投与量を決定及び調節したり、患者における当該疾患及び治療効果を観察したりするために、有用であろう。このような検定の一例として、ELISAプレートを4μg/mlの抗イディオタイプ抗体で被覆する。0.05% Tween及び2% ニワトリ血清を含有するPBSでプレートを遮断する(室温、1時間)。次に、このプレートを、例えば2C6 IgG1,κなどの関連する抗体の連続希釈液と一緒にインキュベートする(10,000-9.77 ng/ml、室温、2時間)。結合した2C6
IgG1,κを、マウス抗ヒトIgG HRP結合抗体で検出する。
【0038】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白であろう。
【0039】
配列表の簡単な説明
SEQ ID NO:1
は VH 2C6 ヌクレオチド配列である。
SEQ ID NO:2
は VH 2C6 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:3 は VLa 2C6 ヌクレオチド配列である。
SEQ ID NO:4
は VLa 2C6 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:5
は VLb 2C6 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:6 は VL 11B8 ヌクレオチド配列である。
SEQ ID NO:7
は VL 11B8 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:8
は VH 2C6 CDR1 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:9
は VH 2C6 CDR2 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:10 は VH 2C6 CDR3 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:11 は VLa 2C6 CDR1 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:12 は VLa 2C6 CDR2 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:13 は VLa 2C6 CDR3 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:14 は VLb 2C6 CDR1 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:15 は VLb 2C6 CDR2 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:16 は VLb 2C6 CDR3 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:17 は VL 11B8 CDR1 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:18 は VL 11B8 CDR2 アミノ酸配列である。
SEQ ID
NO:19 は VL 11B8 CDR3 アミノ酸配列である。
SEQ ID NO:20-27 は実施例3で用いられるプライマである。
【0040】
発明の詳細な説明
本発明がより容易に理解されるように、いくつかの用語をまず定義する。付加的な定義は、本詳細な説明全体を通じて記載されている。
【0041】
用語「CD20」及び「CD20抗原」はここでは交換可能に用いられており、細胞により天然で発現する、あるいはCD20遺伝子をトランスフェクトした細胞上で発現する、あらゆるバリアント、アイソフォーム及び種相同体を包含する。本発明の抗体のCD20抗原への結合は、CD20を失活させることにより、CD20発現細胞(例えば腫瘍細胞)の致死を媒介する。CD20発現細胞の致死は、以下の機序のうちの一つ以上により起こると考えられる:
CD20発現細胞の補体依存的細胞障害性(CDC);
CD20発現細胞のエフェクタ細胞貪食;又は
CD20発現細胞のエフェクタ細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)。
【0042】
当業で認識されているCD20の同義語には、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu-16、Bp35、BM5、及びLF5がある。
【0043】
ここで用いられる場合の用語「(例えば細胞に言及しつつ)成長を阻害する」とは、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%の細胞培養株の成長阻害など、抗CD20抗体に接触させていない同じ細胞の成長に比較したときの、抗CD20抗体に接触させた場合の細胞成長のあらゆる測定可能な減少を包含することを意図している。細胞成長におけるこのような減少は、例えばエフェクタ細胞貪食、ADCC、CDC、及び/又はアポトーシスなど、多種の機序によって起き得る。
【0044】
ここで言及される用語「抗体」には、全抗体や、そのあらゆる抗原結合フラグメント(即ち「抗原結合部分」)又は一本鎖が含まれる。「抗体」とは、ジスルフィド結合により相互に接続された少なくとも二つの重鎖(H)及び二つの軽鎖(L)を含む糖たんぱく質、あるいはその抗原結合部分を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと省略される)及び重鎖定常領域(ここではCHと省略される)から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVLと省略される)及び軽鎖定常領域(ここではCLと省略される)から成る。VH及びVL領域は、更に、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域間に介在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に分割することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ三つのCDR及び4つのFRから成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクタ細胞)及び伝統的補体系の第一コンポーネント(C1q)を含むホスト組織又は因子への当該免疫グロブリンの結合を媒介しているのであろう。
【0045】
ここで用いられる場合の、ある抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」という用語は、抗体のうちで抗原(例えばCD20)への特異的結合能を保持した一つ以上のフラグメントを言う。一個の抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の数フラグメントに行わせることができることが示されている。ある抗体の用語「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例には、 (i) VL、VH、CL 及び CH1 ドメインから成る一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii) 二つのFabフラグメントをジスルフィド架橋でヒンジ領域で連結して含む二価のフラグメントであるF(ab’)2 フラグメント;(iii) VH
及び CH1 ドメインから成るFdフラグメント;(iv) 抗体の一本の腕のVL
及びVH ドメインから成るFvフラグメント、 (v) VHドメインから成るdAb フラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546); (vi) 単離された相補性決定領域(CDR)、及び (vii)選択的に合成リンカで接合してもよい二つ以上の単離されたCDRの組み合わせ、がある。更に、Fv フラグメント、VL 及び VH の二つのドメインは別々の遺伝子にコードされているが、このVL及びVH領域が対になって一価の分子を形成しているような一本のたんぱく質鎖(一本鎖 Fv (scFv)として知られる;例えば Bird et al.
(1988) Science 242:423-426; 及び Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)に作製できるようにする合成リンカにより、組換え法を用いてこれらを接合することができる。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものと意図されている。更なる例は、(i) 免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合させて結合ドメインポリペプチド、(ii) ヒンジ領域に融合させた免疫グロブリン重鎖CH2 定常領域、及び (iii)
CH2定常領域に融合させた免疫グロブリン重鎖 CH3 定常領域、を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合たんぱく質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域でも、又は軽鎖可変領域でもよい。このような結合ドメイン免疫グロブリン融合たんぱく質は、
米国2003/0118592 及び 米国2003/0133939に開示されている。これらの抗体フラグメントを、当業者に公知の従来技術を用いて得、これらのフラグメントを、インタクト抗体と同じ態様で、実用性についてスクリーニングする。
【0046】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することのできるたんぱく質決定基である。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群から成り、通常は特異的な三次元構造上の特徴や、特異的な荷電上の特徴を有する。コンホメーション的エピトープ及び非コンホメーション的なエピトープは、前者への結合が、変性溶媒の存在時に失われるが、後者の場合では失われないことで区別される。
【0047】
用語「不連続なエピトープ」は、ここで用いられる場合、当該たんぱく質の一次配列中の少なくとも二つの別々の領域から形成される、たんぱく質抗原上のコンホメーション的なエピトープを意味する。
【0048】
用語「二重特異的分子」には、二つの異なる結合特異性部分を有する、例えばたんぱく質、ペプチド、又はたんぱく質もしくはペプチド複合体などのあらゆる作用物質が含まれることが意図されている。例えば、この分子は、(a)細胞表面抗原及び(b)エフェクタ細胞の表面上のFc受容体に結合又は相互作用してもよい。用語「多重特異的分子」又は「ヘテロ特異的分子」には、3つ以上の異なる結合特異性部分を有する、例えばたんぱく質、ペプチド、又はたんぱく質もしくはペプチド複合体などのあらゆる作用物質が含まれることが意図されている。例えば、この分子は、(a)細胞表面抗原及び(b)エフェクタ細胞の表面上のFc受容体、及び(c)少なくとも一つの他の成分、に結合又は相互作用してもよい。従って、本発明には、限定はしないが、CD20と、例えばエフェクタ細胞上のFc受容体などの他の細胞表面抗原又はターゲットとに向けられた、二重特異的、三重特異的、四重特異的、及び他の多重特異的分子が含まれる。
【0049】
用語「二重特異的抗体」にはジアボディ(原語:diabodies)も含まれる。ジアボディはVH及びVLドメインが一本のポリペプチド鎖上に発現するが、同じ鎖上のこれら二つのドメイン間で対を形成するには短すぎるリンカを用いることで、これらのドメインに、別の鎖の相補なドメインとペアを作らせて二つの抗原結合部位を生じさせたような二価の二重特異的抗体である(例えば Holliger, P., et al. (1993) Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak, R.J., et al. (1994) Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0050】
用語「ヒト抗体由来体」とは、例えば抗体と別の作用物質又は抗体との結合体など、修飾された形の抗体を言う。
【0051】
ここで用いられる場合のヒト抗体は、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を持つトランスジェニック・マウスを免疫したり、あるいは、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングしたりするなどにより、ヒト免疫グロブリン配列を用いた系から得られた場合に、ある特定の生殖細胞系配列を「由来とする」ものであり、この場合、選択されたヒト抗体は、この生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子にコードされたアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも
95%、更により好ましくは少なくとも96%、97%、98%、又は 99% 、アミノ酸配列において同一である。典型的には、ある特定のヒト生殖細胞系配列を由来とするヒト抗体は、当該生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子にコードされたアミノ酸配列から10個以下のアミノ酸の違い、より好ましくは5個以下、又は更により好ましくは4個、3個、2個、又は1個以下のアミノ酸の違いを有するであろう。
【0052】
ここで用いられる用語「ヒト抗体」には、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する抗体が含まれるものと意図されている。本発明のヒト抗体には、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えばin vitroでのランダムもしくは部位特異的な変異誘発により導入された変異、あるいはin vivoでの体細胞変異)が含まれよう。しかしながら、ここで用いる場合の用語「ヒト抗体」に、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系を由来とするCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されたような抗体が含まれるとは意図されていない。
【0053】
ここで用いられる場合の用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子の製剤を言う。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を言う。
【0054】
ここで用いられる用語「組換えヒト抗体」には、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック又はトランスクロモゾマルな動物(例えばマウス)から、あるいは、それから調製されたハイブリドーマ(下のセクションIで更に解説する)から、単離された抗体、(b)例えばトランスフェクトーマなど、当該抗体を発現するように形質転換させたホスト細胞から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングに関与するいずれか他の手段により調製された、発現させた、作製した又は単離された抗体など、組換え手段により調製された、発現させた、作製した又は単離された全てのヒト抗体が含まれる。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する。しかしながら、いくつかの実施態様では、このような組換えヒト抗体にin vitroで変異誘発する(あるいはヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を用いる場合はin vivo体細胞変異誘発する)ことができ、すると、この組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列を由来とし、また関連はするが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内には天然では存在しないであろう配列である。
【0055】
ここで用いられる場合の用語「トランスフェクトーマ」には、CHO細胞、NS/0 細胞、 HEK293 細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含む真菌など、当該抗体を発現する組換え真核性ホスト細胞が含まれる。
【0056】
ここで用いられる「異種抗体」は、抗体などの非ヒトトランスジェニック生物に関連して定義される。この用語は、非ヒトトランスジェニック動物から成らない生物で見られるものに相当するアミノ酸配列又はコーディング核酸配列を有すると共に、一般的には非ヒトトランスジェニック動物のもの以外の種を由来とする抗体を言う。
【0057】
ここで用いられる「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、CD20に特異的に結合する単離抗体は、CD20以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を言うものと意図されている。しかしながら、ヒトCD20のエピトープ、アイソフォーム又はバリアントに特異的に結合する単離抗体は、例えば他の種などを由来とする他の関連抗原(例えばCD20種相同体など)に対して交差反応性を有するかも知れない。更に、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないかも知れない。本発明のある実施態様では、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせを、明確な組成で組み合わせる。
【0058】
ここで用いられる「特異的結合」とは、所定の抗原への抗体の結合を言う。典型的には、当該の抗体は、FACSでIC50値を基にした見掛けの親和性として測定した場合に、約10−7M 以下、例えば約10−8 M 以下、例えば約10−9 M 以下、約10−10 M 以下、又は約10−11
M 以下、更にはそれ以下のKDに相当する親和性で結合し、 所定の抗原に対しては、所定の抗原又は関係の近い抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)へのその結合親和性の少なくとも10分の1、例えば少なくとも100分の1のKDに相当する親和性で結合する。文言「ある抗原を認識する抗体」及び「ある抗原に対して特異的な抗体」は、ここでは「ある抗体に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いられている。
【0059】
ここで用いられる用語「KD」(M)は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数を言うものと意図されている。
【0060】
ここで用いられる場合の「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子にコードされた抗体クラス(例えばIgM又はIgG1)を言う。
【0061】
ここで用いられる場合の「アイソタイプ・スイッチング」とは、ある抗体のクラス、又はアイソタイプが一つの免疫グロブリン・クラスから他の免疫グロブリン・クラスの一つに変化する現象を言う。
【0062】
ここで用いられる場合の「スイッチングのないアイソタイプ」とは、アイソタイプ・スイッチングが起きなかったときに産生される重鎖のアイソタイプ・クラスを言う。スイッチングのないアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能的に再編成されるVDJ遺伝子からすぐ下流にある一番目のCH遺伝子である。アイソタイプ・スイッチングは、伝統的又は非伝統的アイソタイプ・スイッチングに分類されてきた。伝統的なアイソタイプ・スイッチングは、導入遺伝子中の少なくとも一つのスイッチ配列が関与する組換え事象により起きる。非伝統的なアイソタイプ・スイッチングは、例えばヒトσμとヒトΣμとの間での相同組換え(σ関連欠失)などで起きる場合がある。例えばとりわけ導入遺伝子間及び/又は染色体間の組換えなど、代替的な非伝統的スイッチング機序が起きてアイソタイプ・スイッチングが起きることもある。
【0063】
ここで用いられる場合の用語「スイッチ配列」とは、スイッチ組換えを担うようなDNA配列を言う。典型的にはμスイッチ領域である「スイッチ・ドナー」配列は、スイッチ組換え中に欠失させようとするコンストラクト領域の5'側(つまり上流)にあるであろう。「スイッチ・アクセプタ」領域は、欠失させようとするコンストラクト領域と、置換定常領域(例えばγ、ε、等)との間にあるであろう。組換えがいつも起きるという特定の部位はないため、最終的な遺伝子配列は、典型的には、コンストラクトから予測不能であろう。
【0064】
ここで用いられる場合の「糖鎖付加パターン」とは、あるたんぱく質、より具体的には免疫グロブリン(抗体)たんぱく質に共有結合する糖単位のパターンであると定義しておく。ある異種抗体の糖鎖付加パターンが、導入遺伝子のCH遺伝子の由来となった種よりも当該非ヒトトランスジェニック動物の種での糖鎖付加パターンにより似ていると当業者が認識するのであれば、その異種抗体の糖鎖付加パターンを、当該非ヒトトランスジェニック動物の種の産生する抗体に天然で起きる糖鎖付加パターンに実質的に似ていると特徴付けることができる。
【0065】
用語「天然で発生する」は、ある物質に当てはめてここで用いられる場合、物質が天然で見られるという事実を言う。例えば、天然の源から単離することができると共に、研究室で人為的な修飾を行われていないような、(ウィルスを含む)ある生物中に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は天然で発生したものである。
【0066】
ここで用いられる場合の用語「再編成のある」とは、Vセグメントが、それぞれ完全VH又はVLドメインを基本的にコードするコンホメーションでD-J又はJセグメントのすぐ隣に位置するような重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座のコンホメーションを言う。再編成のあった免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系DNAに対する比較により特定することができる;再編成のあった遺伝子座であれば、少なくとも一つの組み換えられた7量体/9量体相同因子を有するであろう。
【0067】
用語「再編成のない」又は「生殖細胞系の配置」とは、ここでVセグメントに言及して用いられる場合、Vセグメントが、D又はJセグメントのすぐ隣に来るように組み換えられていないような配置を言う。
【0068】
ここで用いられる場合の用語「核酸分子」には、DNA分子及びRNA分子が含まれるものと意図されている。核酸分子は一本鎖である場合も、又は二本鎖である場合もあるが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0069】
CD20に結合する抗体全体又は抗体部分(例えばVH、VL、CDR3)をコードする核酸に言及してここで用いられる用語「単離された核酸分子」は、インタクト抗体又は抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、CD20以外の抗原に結合する抗体全体又は抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列であって、ヒトゲノムDNA中で当該核酸を天然でフランクしているかも知れないような他のヌクレオチド配列、を含まないような核酸分子を言うものと意図されている。
【0070】
ここで開示され、また請求項に挙げられるように、
SEQ ID NO:1-19 に記載された配列は、「保存的配列改変」、即ち、当該ヌクレオチド配列にコードされた、又は当該アミノ酸を含有する、抗体の結合特徴に大きく影響しないヌクレオチド及びアミノ酸配列の改変、が含まれる。このような保存的配列改変には、ヌクレオチド及びアミノ酸の置換、追加及び欠失が含まれる。改変は、例えば部位指定変異誘発法及びPCR媒介変異誘発法など、当業で公知の標準的な技術により、当該配列に導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸に置換されるものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸の残基のファミリは当業で定義されている。これらのファミリには、塩基性の側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性の側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族の側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、ファニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、がある。従って、ヒトCD20抗体で予測される非必須のアミノ酸残基を、好ましくは同じ側鎖ファミリ内の別のアミノ酸残基に置換するとよい。
【0071】
更に本発明は、SEQ ID NO:2、4、5、及び7に記載された通りのアミノ酸配列及びその保存的配列改変の「誘導体」であって、この場合、当該アミノ酸残基の一つ以上が、例えばアシル化又は糖鎖付加などにより、当該アミノ酸残基を含有する抗体の結合特徴に大きく影響する又は変化させることなく、誘導体化させたような誘導体も包含するものである。
【0072】
更に、本発明は、当該抗体の機能的又は薬理上の特性を変えるために一つ以上の変更がFc領域に行われた抗体も包含する。このような変更の結果、C1q結合及びCDC(補体媒介性細胞障害性)が減少又は増加したり、あるいは、FcγR結合及び抗体媒介性細胞障害性(ADCC)が減少又は増加したりするかも知れない。置換は、例えば重鎖定常領域のアミノ酸位置234、235、236、237、297、318、320、及び322 のうちの一つ以上などで行うことができ、それにより、未改変の抗体に比較して抗原への結合を保持しながらもエフェクタ機能を変えることができる。米国 5,624,821 及び米国 5,648,260を参照されたい。ADCCを増加させるようなFc領域の変更を持つ抗体を開示したWO 00/42072
、及び、CH2ドメインのN末端領域を変異させて抗体のFcRへの結合能を変えることで、抗体のC1qへの結合能を減少させ、ひいては抗体の補体固定能を減少させた抗体を開示したWO 94/29351 を更に参照してもよい。更に、Shields et
al., J. Biol. Chem. (2001)
276:6591-6604 は、FcγRIII結合を向上させる、組み合わせによるバリアント、例えば T256A/S298A、S298A/E333A、及びS298A/E333A/K334Aを教示している。
【0073】
当該分子がインタクトCH2ドメイン又はインタクトIg
Fc領域を含まないようにIg定常ドメイン又はIg様定常ドメインのサルベージ受容体エピトープを修飾することによって、当該抗体のin vivo 半減期を向上させることもできる。米国 6,121,022 及び米国6,194,551を参照されたい。更にin vivo 半減期は、例えば位置252のロイシンをスレオニンに、位置254のセリンをスレオニンに、あるいは位置256のフェニルアラニンをスレオニンに置換するなど、Fc領域に変異を作ることでも、増加させることができる。米国 6,277,375を参照されたい。
【0074】
更に、当該抗体のエフェクタ機能を変えるために、当該抗体の糖鎖付加パターンを改変することができる。例えば、FcγRIIIに対するFcの親和性を高め、ひいてはNK細胞存在下での当該抗体のADCCを増加させるために、Fcの位置297のAsnに付着する糖に通常は付着するフコース単位を加えないようなトランスフェクトーマで当該抗体を発現させることができる。Shield et al. (2002) J. Biol. Chem., 277:26733を参照されたい。更に、CDCを改変するために、ガラクトシル化の改変を行うことができる。更に、GntIIIを発現するように操作することで、糖の形が変化してADCC活性が向上したモノクローナル抗体を発現するCHO細胞株を開示したWO 99/54342
及びUmana et al., Nat. Biotechnol. (1999) 17:176 を参照するべきであろう。
【0075】
更に、本発明の、例えばFabフラグメントなどの抗体フラグメントをペグ化して半減期を増加させることができる。これは、例えばFocus on Growth Factors (1992) 3:4-10, EP 154 316 及び EP 401 384などで解説された通りに、当業で公知のペグ化反応により行わせることができる。
【0076】
更に、当該の抗体をベータ-グルカンと組み合わせて投与して、ADCC活性を高めることができる。 Ross, G.D., et al. (1999) Immunopharmacology 42:61-74; Vetvicka,
V., et al. JCI (1996) 98:50-61; Yan, J., et
al. JI (1999) 163:3045-3052; Cheung, N-K. V., et al. Cancer Immunol. Immunother (2002) 51:557-564; and Hong
F., et al. Cancer Research (2003) 63:9023-9031を参照されたい。
【0077】
代替的には、別の実施態様では、例えば飽和変異誘発法などにより、抗CD20抗体をコードする配列の全部又は一部にわたってランダムに変異を導入することができ、その結果できた改変された抗CD20抗体を、結合活性についてスクリーニングすることもできる。
【0078】
従って、ここで開示された(即ちSEQ ID
NO:1、3 及び 6)(重鎖及び軽鎖可変領域)ヌクレオチド配列にコードされた、及び/又は、ここで開示された(即ちSEQ ID NO:2、4、5 及び 7)(重鎖及び軽鎖可変領域)アミノ酸配列を含有する、抗体には、保存的に改変された類似の配列にコードされた、あるいは保存的に改変された類似の配列を含有する、実質的に類似の抗体が含まれる。このような実質的に類似の抗体を、ここで開示された部分的(即ち重鎖及び軽鎖可変領域)配列に基づいてどのように作製できるかに関する更なる議論を以下に提供する。
【0079】
ヌクレオチド及びアミノ酸配列に関し、用語「相同性」は、適した挿入又は欠失がありながらも、最適にアライメント及び比較したときの、二つの核酸又はアミノ酸配列間の同一性の程度を指す。代替的には、DNAセグメントが、選択的なハイブリダイゼーション条件下で当該鎖の相補鎖にハイブリダイズするであろうときに、実質的な相同性が存在するものとする。
【0080】
二つの配列間の同一性のパーセントは、この二つの配列を最適にアライメントするために導入せねばならないギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れたときの、当該配列間に共通の同一位置の数の関数である(即ち、相同性%=同一な位置の数/位置の総数×100)。二つの配列間の配列の比較や、同一性のパーセントの決定は、以下の非限定的な例で解説するように、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0081】
二つのヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMP マトリックスと、40、50、60、70、又は80 のギャップ・ウェイト及び1、2、3、4、5、又は6のレングス・ウェイトを用いて計算することができる。二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性のパーセントは、更に、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り入れられたE. Meyers 及び W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988)) のアルゴリズムを用い、PAM120 ウェイト残基表、12 のギャップ・レングス・ペナルティ及び 4のギャップ・ペナルティを用いても、決定することができる。加えて、二つのアミノ酸配列間の同一性のパーセントは、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに取り入れられた Needleman 及びWunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970)) アルゴリズムを用い、Blossum 62 マトリックスか、又はPAM250 マトリックスのいずれかと、16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ・ウェイト及び 1、2、3、4、5、又は6のレングス・ウェイトを用いて決定することもできる。
【0082】
当該核酸は、全細胞中にあっても、細胞ライセート中にあっても、あるいは部分的に精製されているか、もしくは実質的に純粋な形で、存在していてもよい。核酸は、他の細胞成分又は他の混入成分、例えば他の細胞内核酸又はたんぱく質などを、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラム・クロマトグラフィ、アガロース・ゲル電気泳動法及び陶業で公知の他のものを含む標準的な技術により、取り除かれて精製されている場合に、「単離された」又は「実質的に純粋にされた」ことになる。F. Ausubel, et al., ed.
Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley
Interscience, New York (1987)を参照されたい。
【0083】
本発明の核酸組成物は、しばしば天然配列(改変された制限部位等を除き)のままであり、cDNA、ゲノム又はそれらの混合物を由来とするが、遺伝子配列を提供する標準的技術に従って変異させてもよい。コーディング配列の場合、これらの変異は、所望のアミノ酸配列に影響する場合がある。具体的には、天然のV、D、J、定常、スイッチ、及び、ここで解説された他のこのような配列に対して実質的に相同であるか、あるいは由来とするDNA配列が考えられる(この場合「由来とする」はある配列が、別の配列と同一であるか、あるいは改変されていることを指す)。
【0084】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれているときに「作動的に連結して」いることになる。例えば、あるプロモータ又はエンハンサが、あるコーディング配列の転写に影響を与えるのであれば、それはその配列に作動的に連結していることになる。調節配列の転写に関する場合、作動的に連結して、とは、連結させようとするDNA配列同士が連続していることを意味し、そして二つのたんぱく質コーディング領域を接合するために必要な場合は、連続し、かつ読み枠内にあることを意味する。スイッチ配列の場合、作動的に連結して、とは、その配列が、スイッチ組換えを起こし得ることを指す。
【0085】
ここで用いられる場合の用語「ベクタ」とは、連結された先の別の核酸を輸送することのできる核酸分子を言うものと、意図されている。ベクタの一種が、途中に付加的なDNAセグメントを連結させることのできる環状の二本鎖DNAループを言う「プラスミド」である。もう一つの種類のベクタは、付加的なDNAセグメントをウィルス・ゲノム中に連結させることのできるウィルス・ベクタである。いくつかのベクタは、それらが導入された先のホスト細胞内で自律的複製を行うことができる(例えば細菌性の複製開始点を有する細菌ベクタや、エピソーム性哺乳類ベクタなど)。他のベクタ(例えば非エピソーム性哺乳類ベクタ)は、ホスト細胞に導入されるや、このホスト細胞のゲノムに一体化させることができるため、ホスト・ゲノムと一緒に複製される。更に、いくつかのベクタは、それらが作動的に連結された先の遺伝子の発現を命令することができる。このようなベクタをここでは「組換え発現ベクタ」(又は単に「発現ベクタ」)と言う。一般的に、組換えDNA技術で実用性のある発現ベクタはプラスミドの形であることが多い。本明細書においては、プラスミドが最も普通に用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」を交換可能に用いている場合がある。しかしながら、本発明には、ウィルス・ベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルスなど)など、同等の機能を果たす他の形の発現ベクタも含まれるものと、意図されている。
【0086】
用語「組換えホスト細胞」(又は単に「ホスト細胞」)とは、ここで用いられる場合、組換え発現ベクタが中に導入された細胞を言うものと意図されている。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も言うものと意図されていることは理解されねばならない。突然変異又は環境による影響が原因で、後の世代にいくつかの改変が起きる場合があるため、このような後代は実際には親細胞と同一ではないかも知れないが、それでも尚、ここで用いられる用語「ホスト細胞」の範囲に含まれる。組換えホスト細胞には、例えば、CHO細胞、NS/0 細胞、及びリンパ球性の細胞などのトランスフェクトーマなどが含まれる。
【0087】
ここで用いられる用語「対象」には、あらゆるヒト又は非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等、哺乳動物及び非哺乳動物など、あらゆる脊椎動物が含まれる。
【0088】
用語「非ヒトトランスジェニック動物」とは、一つ以上のヒト重鎖及び/又は軽鎖導入遺伝子又は導入染色体(その動物の天然のゲノムDNAに組み込まれているか、又は組み込まれていないかに関係なく)を含むゲノムを有すると共に、完全ヒト抗体を発現することのできる非ヒト動物を言う。例えば、トランスジェニック・マウスは、CD20抗原及び/又はCD20発現細胞で免疫したときにヒト抗CD20抗体をこのマウスが産生するように、
ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子又はヒト重鎖導入染色体のいずれかとを有することができる。ヒト重鎖導入遺伝子を、例えばHCo7又はHCo12マウスなど、HuMabマウスなどのトランスジェニックの場合と同様に、マウスの染色体DNAに組み込ませることができ、あるいは、ヒト重鎖導入遺伝子を、WO 02/43478に解説されたようにトランスクロモゾーマルKMマウスの場合と同様に、染色体外に維持することもできる。このようなトランスジェニック及びトランスクロモゾーマル・マウスは、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、複数のアイソタイプ(例えばIgM、IgG、IgA 及び/又は IgE)の抗CD20ヒトモノクローナル抗体を産生することができる。
【0089】
本発明の多様な局面を以下の小項で更に詳述する。
【0090】
I. CD20に対するヒト抗体の作製
本発明のヒトモノクローナル抗体は、例えばKohler and Milstein, Nature
256:495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術など、従来のモノクローナル抗体法を含め、多様な技術により、作製することができる。原則的には体細胞ハイブリダイゼーション法が好ましいが、例えばBリンパ球のウィルス性又は腫瘍形成性形質転換や、あるいは、ヒト抗体遺伝子のライブラリを用いたファージ・ディスプレイ技術など、モノクローナル抗体を作製する他の技術を利用することもできる。
【0091】
ある好適な実施態様では、CD20を狙うヒトモノクローナル抗体を、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を持つトランスジェニック又はトランスクロモゾーマル・マウスを用いて作製することができる。これらのトランスジェニック及びトランスクロモゾーマル・マウスには、それぞれここでHuMAb マウス及びKM マウスを呼ばれるマウスがあり、ここではまとめて「トランスジェニック・マウス」と呼ばれる。
【0092】
HuMAb マウスは、未編成のヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子最小遺伝子座を、内因性のμ及びκ鎖遺伝子座を不活性化する標的決定された変異と一緒に含有する (Lonberg, N. et al.
(1994) Nature 368 (6474):856-859)。従って、このマウスの示すマウスIgM又はκの発現は低く、そして免疫処理に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子はクラス・スイッチング及び体細胞変異を起こして、高親和ヒトIgG,κモノクローナル抗体を産生する
(上記のLonberg, N. et al. (1994), ;Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101でレビュー; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. Vol. 13:65-93, and
Harding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann.
N.Y. Acad. Sci 764:536-546)。HuMAb マウスの調製は、Taylor,
L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International
Immunology 5:647-656; Tuaillon et al.
(1994) J. Immunol. 152:2912-2920;
Lonberg et al., (1994) Nature 368(6474):856-859; Lonberg, N.
(1994) Handbook of Experimental
Pharmacology 113:49-101; Taylor, L. et
al. (1994) International Immunology
6:579-591; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol.
Vol. 13:65-93; Harding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci 764:536-546; Fishwild, D. et al. (1996) Nature
Biotechnology 14:845-851に詳述されている。更に、すべてLonberg
and Kayに付与された米国5,545,806;
5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,789,650; 5,877,397; 5,661,016; 5,814,318;
5,874,299; 及び 5,770,429や、Surani et
al.に付与された米国5,545,807 ; WO
98/24884、WO 94/25585、WO 93/1227、WO 92/22645、WO 92/03918 及び WO 01/09187を参照されたい。
【0093】
KM マウスはヒト重鎖導入染色体及びヒトカッパ軽鎖導入遺伝子を含有する。更に当該の内因性のマウス重鎖及び軽鎖遺伝子は、このKMマウスを免疫するとマウス免疫グロブリンではなくヒト免疫グロブリンが産生されるように、このマウスでは破壊されている。 KMマウスの作製や、ヒト免疫グロブリンを生じさせるためのその使用法はWO 02/43478に詳述されている。
【0094】
免疫処理
CD20に対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製するためには、ヒト免疫グロブリン遺伝子(例えば HCo12、HCo7 又は KM マウス)を含有するトランスジェニック又はトランスクロモゾーマル・マウスを、例えば上記のLonberg et
al. (1994);上記のFishwild et al.
(1996)、及びWO 98/24884で解説された通りに、CD20抗原の濃縮製剤及び/又はCD20発現細胞で免疫することができる。代替的には、マウスをヒトCD20をコードするDNAで免疫することができる。好ましくは、マウスは、一回目の輸注時に6乃至16週齢であるとよいであろう。例えば、CD20抗原の濃縮製剤(5乃至50μg)を用いて、HuMAbマウスを腹腔内免疫することができる。CD20抗原の精製済み又は濃縮製剤を用いた免疫処理で抗体が生じない場合、マウスを、細胞株などのCD20発現細胞で免疫して免疫応答を促進することもできる。
【0095】
多様な抗原を用いて蓄積された経験から、HuMAbトランスジェニック・マウスは、まずCD20発現細胞を完全フロイント・アジュバントに入れて腹腔内(i.p.)又は皮下(s.c.)的に免疫した後、一週置きにCD20発現細胞のPBS溶液でi.p.免疫(最高10回)すると、最もよく応答することが示されている。免疫応答は、眼窩後方の採血で得られた血漿試料で、当該免疫プロトコルの経過にわたって観察することができる。血漿をFACS分析でスクリーニングすることができ、充分な抗体価の抗CD20ヒト免疫グロブリンを持つマウスを融合に用いることができる。マウスは、と殺及び脾臓摘出から4又は3日前に、CD20発現細胞で静脈内により追加刺激することができる。
【0096】
CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
ヒトCD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するには、免疫後のマウスの脾細胞及びリンパ節細胞を取り出し、マウス骨髄腫細胞株などの適した不死化細胞株に融合させることができる。次に、その結果できたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫後のマウス由来の脾臓リンパ球の単個細胞懸濁液を、50%のPEG(w/v)で SP2/0 非分泌性マウス骨髄腫細胞 (ATCC, CRL 1581) に融合させることができる。細胞を平底微量定量プレートに1ウェル当りほぼ1×105個になるようにプレートした後、通常の試薬の他に10% 胎児クローン活性、5-10% オリゲン・ハイブリドーマ・クローニング因子 (IGEN) 及び1X HAT (シグマ社)を含有する選択培地で2週間、インキュベートすることができる。ほぼ2週間後、HATをHTに置き換えた培地で細胞を培養することができる。次に、個々の細胞をELISAでヒトカッパ軽鎖含有抗体について、そしてCD20発現細胞を用いたFACS分析でCD20特異性について、スクリーニングすることができる。広汎なハイブリドーマ成長が起きたら、培地を通常10乃至14日後に観察することができる。抗体を分泌しているハイブリドーマを再プレートし、再度スクリーニングし、そしてヒトIgGについて未だ尚陽性であれば、抗CD20モノクローナル抗体を少なくとも2回、限界希釈でサブクローニングすることができる。その後安定なサブクローンをin vitroで培養して、抗体を、特徴付け用の組織培養培地中に作製することができる。
【0097】
CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
本発のヒト抗体は、当業で公知のように、例えば組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組み合わせなどを用いて、ホスト細胞トランスフェクトーマ内に産生させることもできる。例えばMorrison, S. (1985) Science 229:1202を参照されたい。
【0098】
例えば、本抗体又はその抗体フラグメントを発現させるために、部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術(例えばPCR増幅法、部位指定変異誘発法)により得ることができ、これら遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結しているように、発現ベクタ内に挿入することができる。この文脈において、用語「作動可能に連結して」とは、当該ベクタ内の転写及び翻訳調節配列が、当該抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するというそれらに意図された機能を果たせるように、その抗体電子がベクタ内に連結されていることを意味するものと、意図されている。発現ベクタ及び発現調節配列は、用いる発現ホスト細胞に適合性があるように選択される。当該の抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子を別々のベクタ内に挿入することもできるが、より典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクタ内に挿入する。当該抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば抗体遺伝子フラグメント上に相補的な制限部位とベクタとの連結、あるいは、制限部位が存在しない場合は平滑末端の連結など)で発現ベクタに挿入される。ここで解説される抗体の軽鎖及び重鎖可変領域を用い、VHセグメントがベクタ内のCHセグメントに作動的に連結し、そしてVLセグメントがベクタ内のCLセグメントに作動的に連結しているように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクタ内にそれらを挿入することにより、いずれの抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子をも作製することができる。加えて又は代替的には、組換え発現ベクタに、抗体鎖のホスト細胞からの分泌を容易にするシグナル・ペプチドをコードさせることができる。当該の抗体鎖遺伝子は、このシグナル・ペプチドがイン-フレームで当該抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結しているように、ベクタ内にクローニングすることができる。このシグナル・ペプチドは、免疫グロブリン・シグナル・ペプチドであっても、又は、異種のシグナル・ペプチド(即ち非免疫グロブリンたんぱく質由来のシグナル・ペプチド)であってもよい。
【0099】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクタは、ホスト細胞内でのこの抗体鎖遺伝子の発現を調節する調節配列を持つ。用語「調節配列」には、当該抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節するプロモータ、エンハンサ及び他の発現調節因子(例えばポリアデニレーション・シグナル)が含まれるものと、意図されている。このような調節配列は、例えば Goeddel; Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185,
Academic Press, San Diego, Calif. (1990) に解説されている。当業者であれば、調節配列の選択を含め、当該発現ベクタのデザインは、形質転換させようとするホスト細胞の選択、所望のたんぱく質の発現レベル等の因子に依存するであろうことを理解されよう。哺乳動物ホスト細胞発現のために好適な調節配列には、例えばサイトメガロウィルス (CMV)、シミアン・ウィルス 40
(SV40)、アデノウィルス、(例えばアデノウィルス主要後期プロモータ (AdMLP)) 及びポリオーマ由来のプロモータ及び/又はエンハンサなど、哺乳動物細胞で高レベルのたんぱく質発現を命令するウィルス因子がある。代替的には、例えばユビキチン・プロモータ又はβ-グロビン・プロモータなど、非ウィルス性の調節配列を用いてもよい。
【0100】
当該の抗体鎖遺伝子及び調節配列に加え、本発明の組換え発現ベクタは、例えばホスト細胞でこのベクタの複製を調節する配列(例えば複製開始点)及び選択マーカ遺伝子など、付加的な配列を持っていてもよい。選択マーカ遺伝子は、ベクタが導入されたホスト細胞の選抜を容易にするものである(例えばすべてAxel et al.による米国
4,399,216、米国4,634,665 及び米国 5,179,017を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカ遺伝子は、例えばG418、ヒグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を、ベクタが導入されたホスト細胞にもたらすものである。好適な選択マーカ遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ (DHFR) 遺伝子(メトトレキセート選抜/増幅でdhfr-ホスト細胞で用いるため)及びneo
遺伝子(G418 選抜のため)がある。
【0101】
軽鎖及び重鎖の発現のためには、当該の重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクタを、標準的な技術によりホスト細胞にトランスフェクトする。例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラン・トランスフェクション、リポフェクション等を含め、多様な形の用語「トランスフェクション」は、外因性のDNAを原核又は真核ホスト細胞に導入するために通常用いられている幅広い技術を包含するものと、意図されている。
【0102】
ある実施態様では、当該の抗体を、哺乳動物ホスト細胞などの真核細胞で発現させる。本発明の組換え抗体を発現させるために好適な哺乳動物ホスト細胞には、(例えばR. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621などに解説されたDHFR選択マーカと一緒に用いられる、Urlaub
and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 77:4216-4220に解説されたdhfr-CHO細胞を含む) CHO 細胞、NS/0 骨髄腫細胞、COS 細胞、HEK293 細胞及びSP2.0 細胞、がある。具体的には、NS/0
骨髄腫細胞と一緒に用いる場合、別の好適な発現系はWO
87/04462、WO 89/01036 及び EP 338 841に開示されたGS(グルタミン・シンターゼ)遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクタを哺乳動物ホスト細胞に導入する場合、ホスト細胞で抗体が発現するのに充分な時間、あるいはより好ましくは、ホスト細胞を成長させた培地中に抗体が分泌されるのに充分な時間、ホスト細胞を培養することにより、抗体を作製する。抗体は、標準的なたんぱく質精製法を用いて培地から回収することができる。
【0103】
CD20に対するヒトモノクローナル抗体を作製するための更なる組換え手段
代替的には、クローニングされた抗体遺伝子を、scFv抗体の産生用のE. coliなどの微生物、藻類などの原核細胞や昆虫細胞などを含め、他の発現系で発現させることもできる。更に、ヒツジ及びウサギの乳中や、ニワトリ卵に、あるいはトランスジェニック植物になど、非ヒトトランスジェニック動物で抗体を産生させることもできる。例えば
Verma, R., et al. (1998) “Antibody engineering: Comparison of bacterial, yeast,
insect and mammalian expression systems”, J.Immunol.Meth.
216:165-181; Pollock, et al. (1999) “Transgenic milk
as a method for the production of recombinant antibodies”, J.Immunol.Meth. 231:147-157; and Fischer, R., et al.
(1999) “Molecular farming of recombinant antibodies in plants”, Biol.Chem. 380:825-839を参照されたい。
【0104】
インタクト抗体を発現させるための部分的抗体配列の使用
抗体は、標的抗原に対し、主に6番目の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて相互作用する。これが理由で、CDR内のアミノ酸配列は、CDR以外の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は大半の抗体−抗原相互作用を担っているため、特定の天然で生じる抗体由来のCDR配列を、異なる特性を持つ異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植した形で含むような発現ベクタを構築することにより、特定の天然で生じる抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature
332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; and Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照されたい)。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースから得ることができる。これらの生殖細胞系配列は、B細胞成熟中にV(D)Jジョイニングにより形成される、完全に集合した可変遺伝子を含まないであろうため、成熟抗体遺伝子配列とは異なるであろう。更に、生殖細胞系遺伝子配列は、可変遺伝子全体を通じて、しかし典型的にはCDRに集中する変異を含有する高親和二次レパートリー抗体の配列とも異なるであろう。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分や、フレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では、比較的に頻度が少ない。そのために、もとの抗体のものと類似の結合特性を有するインタクト組換え抗体を作製するためにも、特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(WO
99/45962を参照されたい)。典型的には、当該のCDR領域にわたる部分的重鎖及び軽鎖配列があれば、この目的のためには充分である。この部分的配列を用いて、どの生殖細胞系の可変及びジョイニング遺伝子セグメントが、組み換えられた抗体可変遺伝子に寄与したかを判断する。次に、この生殖細胞系配列を用いて、可変領域の消失部分を充填する。重鎖及び軽鎖リーダ配列はたんぱく質成熟中に切断されるため、最終的な抗体の特性に寄与しない。消失配列を加えるためには、クローニングされたcDNA 配列を、ライゲーション又はPCR増幅法により、合成オリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。代替的には、可変領域全体を、一組の短い、重複するオリゴヌクレオチドとして合成し、PCR増幅法で組み合わせて、完全に合成の可変領域クローンを作製することもできる。このプロセスは、例えば特定の制限部位の消失又は含有させたり、あるいは特定のコドンを最適化するなど、いくつかの長所を有する。
【0105】
ハイブリドーマから得た重鎖及び軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を用いて、重複する組の合成オリゴヌクレオチドをデザインして、天然配列を同一のアミノ酸コーディング能を持つ合成V配列を作製する。この合成の重鎖及びカッパ鎖配列は、三つの態様で天然配列と異ならせることができる:反復するヌクレオチド塩基の連なりに、オリゴヌクレオチド合成及びPCR増幅が簡単になるような中断を入れる;最適な翻訳開始部位をコザックの規則に従って導入する (Kozak, 1991, J. Biol. Chem. 266:19867-19870); そして、HindIII 部位を翻訳開始部位の上流で操作する。
【0106】
重鎖及び軽鎖可変領域の両方については、最適化されたコーディング鎖配列及び対応する非コーディング鎖配列を、対応する非コーディングオリゴヌクレオチドの中間点でほぼ30乃至50ヌクレオチドに分割する。このように、各鎖ごとに、当該のオリゴヌクレオチドを、150乃至400ヌクレオチドのセグメントに渡る重複する二本鎖の組に集合させることができる。次に、このプールをテンプレートとして用いて、150乃至400ヌクレオチドのPCR増幅産物を作製する。典型的には、一組の可変領域オリゴヌクレオチドを二つのプールに分割し、この二つのプールを別々に増幅して二つの重複するPCR産物を作製することになるであろう。次に、これらの重複する産物をPCR増幅法で組み合わせて、完全な可変領域を形成する。このPCR増幅で重鎖又は軽鎖定常領域(カッパ軽鎖のBbsI部位、又は、ガンマ重鎖のAgeI部位を含む)の重複するフラグメントを含有させて、発現ベクタコンストラクト内に容易にクローニングすることのできるフラグメントを作製することも好ましいであろう。
【0107】
次に、再構築された重鎖及び軽鎖可変領域を、クローニングされたプロモータ、リーダ、翻訳開始、定常領域、3’側非翻訳、ポリアデニレーション、及び転写終了、配列と組み合わせて、発現ベクタコンストラクトを形成する。重鎖及び軽鎖発現コンストラクトを組み合わせて一個のベクタにすることも、ホスト細胞に同時にトランスフェクトすることも、連続的にトランスフェクトすることも、あるいは別々にトランスフェクトすることもでき、こうしてこのホスト細胞を融合させて、両方の鎖を発現する一個のホスト細胞を形成する。
【0108】
本発明の別の局面では、本発明のヒト抗CD20抗体の構造上の特徴を用いて、例えばCD20への結合など、本発明の抗体の少なくとも一つの機能上の特性を保持した、構造上関連するヒト抗CD20抗体を作製する。より具体的には、2C6の一つ以上のCDR領域を、公知のヒトフレームワーク領域及びCDRに組換えにより組み合わせて、本発明による付加的な、組換えにより操作されたヒト抗CD20抗体を作製することができる。
【0109】
従って、別の実施態様では、本発明は、
(1)ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRであって、前記ヒト重鎖CDRのうちの少なくとも一つが、SEQ ID NO:8-10に示されたアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRと、
(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRであって、前記ヒト軽鎖CDRのうちの少なくとも一つが、SEQ ID NO:11-3、14-16 又は 17-19に示されたアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRと
を含む抗体であって、前記抗体がCD20への結合能を保持した、抗体を調製するステップを含む、抗CD20抗体を調製する方法を提供するものである。
【0110】
当業においては、抗体の重鎖及び軽鎖CDR3ドメインが、ある抗原に対するある抗体の結合特異性/親和性で特に重要な役割を果たすことが公知であるため、上記の通りに調製された本発明の組換え抗体は、好ましくはSEQ ID NO:10のVH CDR3を含むとよい。
【0111】
II. CD20に結合する二重特異的/多重特異的分子
本発明の更に別の実施態様では、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を、例えば別のペプチド又はたんぱく質(例えばFab’フラグメント)に誘導体化するか、又は連結して、複数の結合部位又は標的エピトープに結合する二重特異的又は多重特異的分子を作製することができる。例えば、本発明の抗体を(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有結合による会合又は他の手段により)、別の抗体、ペプチド又は結合ミメティックなどの一つ以上の他の結合分子に連結することができる。
【0112】
従って、本発明は、CD20に対する少なくとも一つの第一の結合特異性部分と、第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性部分とを含む二重特異的及び多重特異的分子を包含するものである。本発明のある具体的な実施態様では、前記の第二の標的エピトープは、ヒトFcγRI(CD64)又はヒトFcα受容体(CD89)などのFc受容体か、あるいは、CD3などのT細胞受容体である。従って、本発明は、FcγR、FcαR又はFcεR発現エフェクタ細胞(例えば単球、マクロファージ又は多核白血球(PMN))と、CD20を発現する標的細胞との両方に結合することができる二重特異的及び多重特異的分子を包含する。これらの二重特異的及び多重特異的分子は、CD20発現細胞をエフェクタ細胞の標的に決定し、そして本発明のヒトモノクローナル抗体と同様に、例えばCD20発現細胞の貪食、抗体依存性細胞障害性(ADCC)、サイトカイン放出、又はスーパーオキシド・アニオンの生成など、Fc受容体媒介性エフェクタ細胞活性を惹起する。
【0113】
本発明の二重特異的及び多重特異的分子には、更に、第三の結合特異性部分を、抗Fc結合特異性部分及び抗CD20結合特異性部分に加え、含めることができる。ある実施態様では、この第三の結合特異性部分は抗エンハンスメント因子(EF)部分であり、例えば細胞障害性に関与する表面たんぱく質に結合し、ひいては標的細胞に対する免疫応答を増す分子などである。「抗エンハンスメント因子部分」は、抗原又は受容体などの特定の分子に結合することで、Fc受容体又は標的細胞抗原に対する結合決定基の効果を高める、機能的な抗体フラグメント又はリガンドであってよい。この「抗エンハンスメント因子部分」は、Fc受容体又は標的細胞抗原に結合することができる。代替的には、抗エンハンスメント因子部分は、第一及び第二の結合特異性部分を結合する先の実体とは異なる実体に結合することができる。例えば、抗エンハンスメント因子部分は、細胞障害性T 細胞(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1を介して 、又は、標的細胞に対する免疫応答を増加させる他の免疫細胞を介して)に結合することができる。
【0114】
ある実施態様では、本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、例えばFab、Fab'、F(ab')2 、Fv、又は一本鎖Fvを含め、少なくとも一つの更なる抗体を結合特異性部分として含む。この抗体は、軽鎖又は重鎖2量体であっても、あるいは、 Ladner et al. が米国4,946,778で解説したようなFv又は一本鎖コンストラクトなど、そのいずれかの最小フラグメントであってもよい。この抗体は、更に、US 2003/0118592 及びUS
2003/0133939で開示されたような結合ドメイン免疫グロブリン融合たんぱく質であってもよい。
【0115】
ある実施態様では、Fc受容体に対する結合特異性部分を、その結合がヒト免疫グロブリンG(IgG)では遮断されないヒトモノクローナル抗体に提供させる。ここで用いる場合の用語「IgG受容体」とは、1番染色体に位置する8つのγ鎖遺伝子のいずれかをも言う。これらの遺伝子は、三つのFcγ受容体クラス:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)、に分類される合計12個の膜貫通又は可溶性受容体アイソフォームをコードしている。ある好適な実施態様では、当該のFcγ受容体はヒト高親和FcγRIである。
【0116】
これらの好適なモノクローナル抗体の作製及び特徴付けは、Fanger et al. のWO 88/00052 及び米国 4,954,617に解説されている。これらの抗体は、FcγRI、FRcγRII又はFcγRIIIのエピトープに、当該受容体のFcγ結合部位とは異なる部位で結合するために、それらの結合は、生理的レベルのIgGでは実質的に遮断されない。本発明において有用な特異的抗FcγRI抗体はmAb 22、mAb 32、mAb 44、mAb 62 及び mAb 197である。他の実施態様では、当該の抗Fcγ受容体抗体はヒト化型のmAb
22 (H22)である。H22抗体の作製及び特徴付けは、Graziano, R.F. et al. (1995) J. Immunol. 155 (10):4996-5002 及び WO 94/10332に解説されている。H22 抗体を産生する細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに1992年11月4日に指定番号HA022CL1で預託され、受託番号CRL
11177を受けている。
【0117】
更に他の好適な実施態様では、Fc受容体に対する結合特異性部分を、その結合が好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)では遮断されない、Fcα受容体(FcαI(CD89))などのヒトIgA受容体に結合する抗体に提供させる。用語「IgA受容体」には、19番染色体に位置する一つのα-遺伝子の遺伝子産物(FcαRI)を包含するものと、意図されている。この遺伝子は、55乃至110kDaのいくつかに選択的スプライシングされる膜貫通アイソフォームをコードしていることが公知である。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸性及び好中性顆粒球上で構成的に発現するが、非エフェクタ細胞集団上では発現しない。FcαRIはIgA1及びIgA2の両者に対して中程度の親和性を有するが、この親和性は、G-CSF 又は GM-CSFなどのサイトカインへの曝露時に増加する (Morton, H.C. et al. (1996) Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。A3、A59、A62 及び A77と同定され、IgAリガンド結合ドメインの外側でFcαRIに結合する4種類のFcαRI特異モノクローナル抗体が解説されている (Monteiro, R.C. et al. (1992) J. Immunol. 148:1764)。
【0118】
FcαRI、FcγRI、FcγRII及びFcγRIII、特にFcγRII及びFcγRIIIは、本発明で用いるのに好適なトリガ受容体である。なぜならこれらは(1)例えば単球、PMN、マクロファージ及び樹状細胞などの免疫エフェクタ細胞上で主に発現する;(2)高レベル(例えば細胞一個当り5,000-100,000)で発現する;(3)細胞障害活性(例えばADCC、貪食)の媒介物質である;そして(4)自己抗原を含め、それらが標的とする抗原の抗原提示亢進を媒介する、からである。
【0119】
「エフェクタ細胞特異抗体」とは、ここで用いられる場合、エフェクタ細胞のFc受容体に結合する抗体又は機能的抗体フラグメントを言う。本発明で用いるのに好適な抗体は、エフェクタ細胞のFc受容体に、内因性の免疫グロブリンが結合しない部位で結合するものである。
【0120】
ここで用いられる場合の用語「エフェクタ細胞」とは、免疫応答の認識及び活性化段階ではなく、免疫応答のエフェクタ段階に関与する免疫細胞を言う。免疫細胞の例には、骨髄又はリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラル・キラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多核白血球、顆粒球、マスト細胞、及び好塩基球、がある。いくつかのエフェクタ細胞は特異的Fc受容体を発現して、特異的免疫機能を行う。好適な実施態様では、エフェクタ細胞は、ADCCを誘導することのできる好中球など、抗体依存性細胞障害性(ADCC)を誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的致死と、免疫系の他の成分への抗原提示、あるいは、抗原を提示する細胞への結合、に関与している。他の実施態様では、エフェクタ細胞は、標的抗原、標的細胞、又は微生物を貪食することができる。エフェクタ細胞上での特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子により調節され得る。例えば、FcγRIの発現が、インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)及び/又はG-CSFにより上方調節されることが見出されている。このように亢進された発現により、標的に対するFcγRI担持細胞の細胞障害性が増す。エフェクタ細胞は、標的抗原又は標的細胞を貪食又は溶解させることができる。
【0121】
「標的細胞」とは、本発明のある組成物(例えばヒトモノクローナル抗体、二重特異的又は多重特異的分子)で標的に決定された、対象(例えばヒト又は動物)内のいずれかの好ましくない細胞を意味するものとする。好適な実施態様では、標的細胞はCD20を過剰発現する細胞である。CD20を過剰発現する細胞には、典型的には、B細胞及びB細胞腫瘍がある。
【0122】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異的又は多重特異的分子で利用することのできる他の抗体は、マウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体である。このようなマウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当業で公知の方法により調製することができる。
【0123】
本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、化学的技術(例えばD. M. Kranz et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5807を参照されたい)、「ポリドーマ」技術(米国 4,474,893を参照されたい)、又は組換えDNA技術を用いて、作製することができる。
【0124】
具体的には、本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、当業で公知の方法を用いて、抗FcR及び抗CD20結合特異性部分など、構成する結合特異性部分を結合させることにより、調製することができる。例えば、二重特異的及び多重特異的分子の各結合特異性部分を別々の作製した後、互いに結合させることができる。当該の結合特異性部分がたんぱく質又はペプチドである場合、多種の結合剤又は架橋剤を共有結合に用いることができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸) (DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、及びスルホスクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (スルホ-SMCC) がある。例えば Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, M. A., et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい。他の方法には、Paulus
(Behring Ins. Mitt. (1985)
No. 78, 118-132); Brennan et al.
(1985) Science 229:81-83, 及びGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139:2367-2375が解説したものがある。好適な結合剤は、両者ともPierce Chemical Co. (イリノイ州ロックフォード) から入手可能な SATA 及びスルホ-SMCCである。
【0125】
結合特異性部分が抗体である場合、これらを、二つの重鎖のC末端ヒンジ領域をスルフヒドリル結合することにより、結合させることができる。特に好適な実施態様では、このヒンジ領域を修飾して、結合前に奇数の、好ましくは一つの、スルフヒドリル残基を含有させる。
【0126】
代替的には、両方の結合特異性部分を同じベクタにコードさせ、同じホスト細胞内で発現及び集合させることができる。この方法は、二重特異的及び多重特異的分子が mAb x mAb、mAb x Fab、Fab x F(ab')2
又はリガンド x Fab 融合たんぱく質である場合に、特に有用である。本発明の二重特異的及び多重特異的分子、例えば二重特異的分子、は、一本鎖の二重特異的抗体などの一本鎖分子でも、一つの一本鎖抗体と結合決定基とを含む一本鎖二重特異的分子でも、
あるいは、二つの結合決定基を含む一本鎖二重特異的分子でもよい。更に、二重特異的及び多重特異的分子は一本鎖分子でもよく、あるいは、少なくとも二つの一本鎖分子を含んでいてもよい。二重-及び多重-特異的分子を調製する方法は、例えば米国5,260,203; 米国 5,455,030; 米国 4,881,175; 米国 5,132,405; 米国 5,091,513; 米国 5,476,786; 米国 5,013,653; 米国 5,258,498; 及び米国 5,482,858に解説されている。
【0127】
当該の二重特異的及び多重特異的分子の、それらの特異的標的への結合は、酵素結合免疫吸着検定法 (ELISA)、ラジオイムノアッセイ
(RIA)、FACS 分析、バイオアッセイ (例えば成長阻害)、又はウェスタン・ブロット検定法により、確認することができる。これらの検定法の各々は、概略的には、目的のたんぱく質−抗体複合体に特異的な標識済み試薬(例えば抗体)を利用することにより、この複合体の存在を検出するものである。例えば、当該のFcR-抗体複合体は、この抗体-FcR複合体を認識して特異的に結合する酵素結合抗体又は抗体フラグメントなどを用いて、検出することができる。代替的には、当該の複合体を、多種の他の免疫検定法のいずれかを用いて検出することができる。例えば、当該の抗体を放射性標識し、ラジオイムノアッセイ (RIA) で用いることができる(例えば
Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on
Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986を参照されたい)。その放射性同位元素は、例えばγカウンタ又はシンチレーション・カウンタ又はオーロラジオグラフィの使用などの手段により、検出することができる。
【0128】
III. 免疫複合体
別の局面では、本発明は、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射性同位元素などの治療的部分に結合させたヒト抗CD20モノクローナル抗体を特徴とする。このような複合体をここでは「免疫複合体」と呼ぶ。細胞毒又は細胞障害性薬剤には、細胞にとって有害な(例えば致死させる)あらゆる物質が含まれる。例には、タキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにこれらの類似体又は相同体がある。
【0129】
本発明の免疫複合体を形成するために適した化学療法薬には、限定はしないが、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アザチプリン、ゲムシタビン及びクラドリビン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、及びcis-ジクロロジアミンプラチナム (II)
(DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセル及びビノレルビン)、がある。
【0130】
適した放射性同位元素は、例えばヨウ素-131、イットリウム-90 又はインジウム-111である。
【0131】
治療的部分の更なる例は、所望の生物学的活性を持つたんぱく質又はポリペプチドであろう。このようなたんぱく質には、例えば、酵素活性毒素、又はその活性フラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス・エキソトキシン又はジフテリア毒素;腫瘍壊死因子又はインターフェロン-γなどのたんぱく質;あるいは生物学的応答修飾物質、例えばリンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニ刺激因子 (GM-CSF)、顆粒球コロニ刺激因子 (G-CSF)、又は他の成長因子が含まれよう。
【0132】
ある好適な実施態様では、当該の治療的部分はドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド又はリシンAである。
【0133】
このような治療的部分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えば Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In
Cancer Therapy”, Monoclonal Antibodies
And Cancer Therapy, Reisfeld et al.
(eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe,
“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, Monoclonal Antibodies 1984: Biological
And Clinical Applications, Pinchera et
al. (eds.), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective
Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection
And Therapy, Baldwin et al.
(eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), and Thorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin
Conjugates”, Immunol. Rev., 62:119-58
(1982)を参照されたい。
【0134】
更なる実施態様では、本発明によるヒトモノクローナル抗体を、例えばチウキセタン(原語:tiuxetan)など、抗体を放射性同位元素に結合可能にするリンカ-キレータに付着させる。
【0135】
IV. 医薬組成物
別の局面では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体を含む医薬組成物などの組成物を提供するものである。本医薬組成物を、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤や、Remington: The Science and
Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing
Co., Easton, PA, 1995に開示されたものなど、従来技術に従った他のいずれかの公知のアジュバント及び医薬品添加物と一緒に調合してよい。
【0136】
本医薬組成物をいずれの適した経路及び形態で投与してもよい。当業者が理解するように、投与の経路及び/又は形態は、所望の結果に応じて様々であろう。
【0137】
本発明の医薬組成物には、経口、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、経膣及び腸管外投与に適したものがある。
【0138】
経膣投与に適した本発明の調合物には、適切であることが当業で公知の担体を含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー調合物がある。本発明の組成物の局所又は経皮投与のための剤型には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤がある。
【0139】
本医薬組成物は、好ましくは腸管外投与されるとよい。
【0140】
ここで用いられる場合の文言「腸管外投与」及び「非経口投与」は、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与形態を意味し、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸注がある。
【0141】
ある実施態様では、本医薬組成物を、静脈内又は皮下注射又は輸注により、投与する。
【0142】
ある実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、皮下注射により結晶型で投与する。Yang et al. (2003) PNAS, 100(12):6934-6939を参照されたい。
【0143】
選択された投与経路に関係なく、薬学的に許容可能な塩又は適した水和型で用いてもよい本発明の化合物、及び/又は、本発明の医薬組成物を、当業者に公知の常法により、薬学的に許容可能な剤型に調合する。
【0144】
ここで用いられる場合の「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性ある、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤、抗酸化剤及び吸収遅延剤等が含まれる。
【0145】
薬学的に許容可能な担体には、無菌の注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌の水溶液又は分散液及び無菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質及び作用物質の使用は当業で公知である。いずれかの従来の媒質又は作用物質が当該の活性化合物にとって不適合でない限り、本発明の医薬組成物中へのその使用は考察されたところである。
【0146】
好ましくは、担体は、例えば静脈内又は皮下注射又は輸注など、非経口投与に適しているとよい。
【0147】
医薬組成物は、製造及び保管条件下で無菌かつ安定でなければならない。本組成物は、高い薬物濃度に適した溶液、マイクロ乳濁液、リポソーム、又は他の秩序ある構造として調合することができる。本発明の医薬組成物中に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物性油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、がある。適正な流動性は、レシチンなどのコーティング剤を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持することができる。
【0148】
本医薬組成物には、更に、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含めてもよい。微生物の存在の防止は、滅菌法と、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の多様な抗菌剤及び抗カビ剤の含有させることの両方により、確実となるであろう。更に、糖類、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、グリセロール又は塩化ナトリウムなどの等張剤を本組成物中に含めることも好ましいであろう。薬学的に許容可能な抗酸化剤には、更に、例えば(1)水溶性の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、異性重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等;及び(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等、がある。
【0149】
注射用組成物の吸収を長引かせるには、組成物中に、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅らせる作用物質を含有させることにより、可能である。
【0150】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じ、上で列挙したものなどの成分のうちの一つ又は組み合わせと一緒に、適した溶媒中に取り入れた後、滅菌マイクロ濾過することにより、調製することができる。一般的には、分散液は、塩基性の分散媒と、上に列挙したものなどの必要な他の成分とを含有する無菌の賦形剤に活性化合物を取り入れることにより、調製される。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)であり、その結果、活性成分と、予め無菌濾過されたその溶液から出る付加的な所望の成分とから成る粉末ができる。
【0151】
適当な場合、本抗体を、適した水和化型か、又は、薬学的に許容可能な塩型で、用いてもよい。「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、また望ましくない毒性効果をもたらさない塩を言う(例えばBerge, S.M., et al. (1977)
J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。このような塩の例には、酸添加塩及び塩基添加塩がある。酸添加塩には、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン等の非毒性の無機酸を由来とするものや、脂肪族モノ-及びジ-カルボン酸、フェニル-置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸等の非毒性の有機酸を由来とするものがある。塩基添加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属を由来とするものや、N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性の有機アミンを由来とするものがある。
【0152】
投与経路に依っては、当該の活性化合物、即ち抗体、及び二重特異的/多重特異的分子、を、この化合物を失活させかねない酸及び他の天然条件の作用からこの化合物を保護する物質で被覆してもよい。例えば、当該の化合物、リポソームなどの適した担体に入れて、対象に投与してもよい。リポソームには、水中油中水CGF エマルジョンや従来のリポソームがある (Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0153】
インプラント、経皮用パッチ、及びマイクロ封入送達系を含め、制御放出調合物など、化合物を急速な放出から保護するであろう担体と一緒に、当該の活性化合物を調製することができる。例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性で、生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の調製法は、当業者に広く公知である。例えば Sustained and Controlled
Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed.,
Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0154】
本医薬組成物を、当業で公知の医療用器具で投与することができる。例えば、好適な実施態様では、本発明の治療的組成物を、米国5,399,163; 米国 5,383,851; 米国 5,312,335; 米国 5,064,413; 米国 4,941,880;
米国 4,790,824; 又は米国 4,596,556で開示された器具などの、無針型皮下注射器具で投与することができる。本発明で有用な公知のインプラント及びモジュールの例には:制御された速度で医薬を配分する移植可能なマイクロ輸注ポンプを開示した米国4,487,603;医薬に皮膚を透過させて投与する治療用器具を開示した米国4,486,194;精確な輸注速度で医薬を送達する医薬輸注ポンプを開示した米国4,447,233;継続的な薬物送達のための、可変流量のインプラント可能な輸注装置を開示した米国 4,447,224;複数のチャンバ区画を有する浸透圧送達系を開示した米国 4,439,196;及び浸透圧薬物送達系を開示した米国4,475,196、がある。他にも多くのこのようなインプラント、送達系、及びモジュールが当業者に公知である。
【0155】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、in vivoで確実に適正に分布するように調合することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は数多くの疎水性の高い化合物を排除する。本発明の治療的化合物がBBBを確実に透過するように(望ましい場合)、これらを、例えばリポソーム中に調合することができる。リポソームの製造法については、例えば米国4,522,811; 米国 5,374,548; 及び米国5,399,331を参照されたい。このリポソームは、特定の細胞に選択的に輸送され、ひいては標的決定された薬物送達を高めるような一つ以上の成分を含んでいてもよい(例えば V.V. Ranade (1989) J. Clin.
Pharmacol. 29:685を参照されたい)。標的決定成分の例には、葉酸又はビオチン(例えば Low et al. の米国 5,416,016 を参照されたい);マンノシド(Umezawa
et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett.
357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);サーファクタント・プロテインA受容体(Briscoe et
al. (1995) Am.
J. Physiol. 1233:134)、本発明の調合物や本発明の分子の成分を含んでもよい、これらの異なる種; p120 (Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)があり;更に K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273を参照されたい。本発明のある実施値亜用では、本発明の治療的化合物をリポソーム中に調合する;より好適な実施態様では、当該のリポソームは標的決定成分を含む。最も好適な実施態様では、リポソーム中の治療的化合物は、大量注射により、炎症部位又は腫瘍部位などの所望の区域の近位部位に送達される。本組成物は、注入が容易な程度に流動性でなくてはならない。それは製造及び保管条件下で安定でなくてはならず、また、細菌及びカビなどの微生物の汚染作用から守られていなくてはならない。
【0156】
更なる実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、胎盤を透過したそれらの輸送を妨げる又は減らすように調合することができる。これは、例えば本抗体のPEG化、又はF(ab)‘フラグメントの使用など、当業で公知の方法により、行うことができる。更に、Cunningham-Rundles C.,
Zhuo Z., Griffith B., Keenan J. (1992) Biological
activities of polyethylene-glycol immunoglobulin conjugates. Resistance to
enzymatic degradation. J Immunol Methods. 152:177-190; 及びLandor M.
(1995) Maternal-fetal transfer of immunoglobulins, Ann. Allergy Asthma Immunol. 74:279-283を参考にすることができる。このことは、抗体を再発性自発性流産を治療又は防止するために用いる場合に特に関係する。
【0157】
投薬計画は、所望の応答(例えば治療的応答)が最適になるように調節される。例えば、一個の巨丸剤を投与してもよく、複数に分割された用量を経時的に投与してもよく、あるいは、治療状況の緊急度を指標として、当該用量を比例的に増減させてもよい。非経口用組成物を単位剤型で調合すると、投与の簡便性及び投薬量の均一性のためには特に有利である。ここで用いられる単位剤型とは、治療しようとする単位投薬量として適合された物理的に別個の単位を言い、各単位は、必要な薬剤用担体との関係から所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤型の詳細は、(a)当該の活性化合物の固有の特徴、及び(b)当該個体の感受性の治療に向けてこのような活性化合物を配合する当業に内在する限界、に決定され、また直接依存する。
【0158】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルを、患者に有害となることなく、特定の患者、組成物及び投与形態にとって所望の治療効果を達成するのに有効な活性成分量を得るように、変更してもよい。選択された投薬レベルは、用いる本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出速度、治療期間、特定の本組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物及び/又は物質、治療しようとする患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び加療歴、及び医業で公知の同様の因子、を含め、様々な薬動力学的因子に依存するであろう。
【0159】
当業で通常の技術を有する内科医又は獣医であれば、必要となる本医薬組成物の有効量を用意に決定かつ処方することができる。例えば、例えば、この内科医又は獣医は、本医薬組成物中に用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも少ないレベルで開始し、所望の効果が達成されるまでこの投薬量を次第に増加させていくこともできよう。一般的には、本発明の組成物の適した一日当りの用量は、所望の効果を生じるのに有効な最も少ない用量である化合物量であろう。このような有効量は、一般に、上述したような因子に依存するであろう。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であることが好ましく、好ましくは、標的部位に近位に投与されるとよい。必要に応じ、治療的組成物の有効な一日当りの用量を、全日にわたって適当な間隔で投与される2回、3回、4回、5回、6回、又はそれ以上の用量にして別々に投与してもよく、選択的には単位剤型で投与してもよい。本発明の化合物を単独で投与することもできるが、本化合物を医薬調合物(組成物)として投与することが好ましい。
【0160】
ある実施態様では、本発明によるヒトモノクローナル抗体を、例えば200 乃至400 mg/m2
など、10乃至500 mg/m2の週間投薬量にして輸注により投与することができる。このような投与を、例えば3乃至5回など、1乃至8回など反復することができる。この投与を例えば2乃至12時間など、2乃至24時間の期間にわたって継続輸注により行ってもよい。
【0161】
別の実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、毒性の副作用を減らすために、例えば24時間を越えるなど、長時間にわたってゆっくりとした継続輸注により、投与することができる。
【0162】
更に別の実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、例えば300 mg、500 mg、700 mg、1000 mg、1500 mg 又は 2000 mgなどの50mg乃至4000mgの週間投薬量にして、例えば4乃至6回など、最高8回まで、投与することができる。この投与を、例えば2乃至12時間など、2乃至24時間の期間にわたって継続輸注により行ってもよい。このような計画を、例えば6ヶ月又は12ヶ月後など、必要に応じて一回又はそれ以上、繰り返してもよい。
【0163】
更に別の実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、例えば300 mg、500 mg、700 mg、1000 mg、1500 mg 又は 2000 mgなどの250mg乃至2000mgなど、50mg乃至4000mgの週間投薬量にして、例えば4乃至6回など、最高8回まで、投与することができる。この週間投薬量を、2回又は3回の小分けした用量に分割してもよく、そして2日以上にわたって投与してもよい。例えば、300 mg の投薬量を、1日目(1)を100mgに、2日目(2)を200mgにして2日間にわたって投与してもよい。500mgの投薬量を、1日目(1)を100mgにし、2日目(2)を200mgにし、3日目(3)を200mgにして3日間にわたって投与してもよく、そして700mgの投薬量を、1日目(1)を100mgにし、2日目(2)を300mgにし、3日目(3)を300mgにして3日間にわたって投与してもよい。このような投与形態は、CLLなどで有用であろう。この計画を、例えば6ヶ月又は12ヵ月後など、必要に応じて繰り返してもよい。
【0164】
投薬量は、抗CD20抗体を狙う抗イディオタイプ抗体を用いることにより、生体試料中に入れて投与してときの循環モノクローナル抗CD20抗体の量を測定することにより、決定又は調節することができる。
【0165】
更に別の実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、例えば6ヶ月以上の期間にわたって1週間に一回など、維持療法により、投与することができる。
【0166】
更に別の実施態様では、本発明によるヒトモノクローナル抗体を、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を一回、輸注した後、放射性同位元素に結合させた抗CD20ヒトモノクローナル抗体を輸注するステップを含む計画により、投与することができる。この計画を7乃至9日後に繰り返してもよい。
【0167】
腫瘍治療のための「治療上有効量」は、完全でも、又は部分的でもよい他覚的腫瘍応答により、測定することができる。完全応答(CR)は、疾患の非臨床的、放射線的、又は証拠と定義しておく。部分的応答(PR)は、50%を超える腫瘍塊の大きさの減少の結果である。進行までの中央時間は、他覚的腫瘍応答の長さを特徴付ける尺度である。
【0168】
腫瘍治療にとっての「治療上有効量」は、疾患の進行を安定させるその能力によっても測定することができる。ある化合物の癌阻害能は、ヒトの腫瘍での効験を予測する動物モデル系で評価することができる。代替的には、ある組成物のこの性質は、その化合物の癌成長又はアポトーシスの阻害能を当業者に公知のin vitro検定法により調べることで、評価することができる。治療的化合物の治療上有効量であれば、腫瘍の大きさを低下させるか、あるいは、対象の症状を軽減させることができる。当業者であれば、対象の体格、対象の症状の重篤度、及び、選択された特定の組成物又は投与経路といった因子に基づき、このような量を決定できよう。
【0169】
リウマチ様関節炎にとっての「治療上有効量」は、好ましくは、患者におけるACR20の改善の予備的定義(原語:Preliminary Definition of Improvement )、より好ましくはACR50
の改善の予備的定義、そして更により好ましくはARC70 の改善の予備的定義に至るものであろう。
【0170】
ACR20 の改善の予備的定義は以下のように定義される:
≧ 20% 圧痛関節数 (TJC) 及び腫脹関節数 (SJC)の改善及び
≧20% 以下の5つの評価のうちの3つの改善:患者による疼痛度の評価 (VAS)、患者による全般的評価
(VAS)、医師による全般的評価 (VAS)、患者による運動機能の評価 (HAQ)、急性相反応物質 (CRP 又は ESR)。
【0171】
ACR50 及びACR70 は同じ態様で、それぞれ≧ 50% 及び ≧ 70% の改善と定義される。更なる詳細については、Felson et al. in American
College of Rheumatology Preliminary Definition of Improvement in Rheumatoid
Arthritis; Arthritis Rheumatism (1995)
38:727-735を参照されたい。
【0172】
本発明の医薬組成物に、一つ又は組み合わせになった本発明のヒトモノクローナル抗体を含めてもよい。従って、更なる実施態様では、本医薬組成物は、例えば一方の抗体がCDCを誘導することにより主に作用し、別の抗体がアポトーシスを誘導することにより主に作用するなど、異なる機序で作用する複数の(例えば二つ以上の)本発明の単離されたヒト抗体を含む。
【0173】
更に本発明の医薬組成物を、併用療法で投与することもでき、即ち、いずれかの適した比で一つ以上の更なる治療薬を組み合わせることができる。例えば、当該の併用療法には、少なくとも一つの化学療法薬、少なくとも一つの抗炎症薬、少なくとも一つの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、又は少なくとも一つの免疫抑制剤と一緒の、本発明の組成物の投与を含めることができる。このような投与は同時であっても、別々であっても、又は順次であってもよい。同時投与の場合、当該の作用物質を、一つの組成物として投与することも、あるいは、適宜、別々の組成物として投与することもできる。
【0174】
ある実施態様では、このような治療薬は、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アザチプリン、ゲムシタビン及びクラドリビン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、及びcis-ジクロロジアミンプラチナム (II)
(DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセル及びビノレルビン)
から選択される一つ以上の化学療法薬を含む。
【0175】
更なる実施態様では、化学療法薬を、ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、シクロホスファミド、及びクロラムブシルから選択する。
【0176】
本発明のヒト抗CD20抗体の化学療法薬との同時投与により、ヒト腫瘍細胞に対して細胞障害効果を生ずる異なる機序を通じて作用する二つの抗癌剤が提供される。このような同時投与は、薬物耐性が発生したり、又は、腫瘍細胞の抗原性の変化が起きたりして、それらが本抗体に対して非反応性になるという問題を解決することができる。
【0177】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を、クロラムブシル及びプレドニゾロン;シクロホスファミド及びプレドニゾロン;シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニ損;シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、及びプレドニゾン;フルダラビン及びアントラサイクリンと組み合わせて投与しても;あるいは例えばNon-Hodgkin’s Lymphomas: Making sense of
Diagnosis, Treatment, and Options, Lorraine Johnston, 1999, O’Reilly and
Associates, Incなどで開示されたものなど、NHLのための他の共通の多剤計画と組み合わせて投与してもよい。
【0178】
更に別の実施態様では、本ヒト抗体を、放射線療法及び/又は自己由来末梢幹細胞又は骨髄移植との関連から投与してもよい。
【0179】
また更なる実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、例えば移植片対宿主疾患患者など、水疱性類天疱瘡の治療のために、抗CD25抗体と組み合わせて投与することができる。
【0180】
別の実施態様では、このような治療薬は、例えば ステロイド系薬物又はNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)などの一つ以上の抗炎症薬を含む。好適な作用薬には、例えば、アスピリン及び他のサリチル酸、ロフェコキシブ及びセレコキシブなどのCox-2阻害剤、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ジクロフェナック、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサール、ナブメトン、エトドラック、オキサプロジン、及びインドメタシンなどのNSAIDがある。
【0181】
別の実施態様では、このような治療薬には、一つ以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキセート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、レフルノミドなどのピリミジン合成阻害剤、IL-1受容体遮断剤、アナキンラ、及びエタネルセプト、インフリキシマブ、及びアダリムマブなどのTNF-α遮断剤がある。
【0182】
更に別の実施態様では、このような治療薬には、シクロスポリン及びアザチオプリンなどの一種以上の免疫抑制剤が含まれる。
【0183】
別の具体的な実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体を、悪性疾患の治療のために抗CD19 抗体、抗CD21 抗体、抗CD22 抗体、抗CD37 抗体、及び抗CD38 抗体から選択される一種以上の抗体と組み合わせて投与してもよい。
【0184】
更に別の具体的な実施態様では、本ヒト抗体を、炎症性疾患の治療のために抗IL6R 抗体、抗IL8 抗体、抗IL15 抗体、抗IL15R 抗体、抗CD4 抗体、抗CD11a 抗体(例えばエファリズマブ)、抗アルファ-4/ベータ-1 インテグリン (VLA4) 抗体(例えばナタリズマブ)、及びCTLA4-Ig から選択される一種以上の抗体と組み合わせて投与する。
【0185】
更に更なる実施態様では、補体活性化を高めるために、本ヒト抗体を、抗C3b(i) 抗体と組み合わせて投与してもよい。
【0186】
更に本発明の範囲には、本発明の抗体組成物(例えばヒト抗体及び免疫複合体)及び使用に関する指示を含むキットも含まれる。このキットには、更に、例えば免疫抑制性の試薬、細胞障害性作用物質又は放射毒性物質、あるいは、一種上の付加的な本発明のヒト抗体(例えば相補的な活性を有するヒト抗体など)など、一種以上の付加的な作用物質を含めることができる。
【0187】
V. 発明の用途及び方法
本発明のヒト抗体(ここで解説された免疫複合体、二重特異的/多重特異的分子、組成物及び他の誘導体を含む)は、CD20発現細胞が関与する異常の診断及び治療を含む in vitro 及び in vivo での診断上及び治療上の実用性を数多く、有する。例えば、本抗体を、in vitro 又はex vivoの培養細胞に投与したり、あるいは多種の疾患を治療、防止及び診断するためにin vivoなどでヒトの対象に投与したりすることができる。ここで用いられる場合の用語「対象」には、CD20に対するヒト抗体に応答するヒト及び非ヒト動物が含まれるものと、意図されている。好適な対象には、B細胞(正常又は悪性)を阻害又は制御することにより是正又は軽減することのできる異常を有するヒトの患者が含まれる。
【0188】
例えば、本ヒト抗体を用いて以下の生物活性のうちの一つ以上をin vivo 又は in vitro で惹起することができる:CD20発現細胞の成長及び/又は分化を阻害する、CD20発現細胞のアポトーシスを誘導する、CD20発現細胞を致死させる、ヒトエフェクタ細胞の存在下でCD20発現細胞の貪食又はADCCを媒介する、及び、補体の存在下でCD20発現細胞のCDCを媒介する。
【0189】
本発明は、対象のCD20発現細胞が関与する異常を、本発明のヒト抗体をこの対象に投与することにより治療する方法を提供するものである。このような抗体及びその誘導体を用いて、例えば増殖及び/分化など、特定の異常に関連するCD20により誘導された活性を阻害する。本抗体をCD20に(例えば本抗体を対象に投与するなどにより)接触させることにより、このような活性を誘導するCD20の能力が阻害され、ひいては関連する異常が治療される。
【0190】
従って、ある実施態様では、本発明は、CD20発現細胞が関与する腫瘍形成性異常を治療又は防止する方法を提供するものである。
【0191】
本方法は、本発明の抗体組成物を、当該異常を治療又は防止するのに有効量、対象に投与するステップを含む。本抗体組成物を単独で投与することも、あるいは、例えば本抗体組成物と連係して又は相乗的に作用してCD20発現細胞が関与する疾患を治療又は防止するような細胞障害性又は放射毒性作用物質など、別の治療薬と一緒に投与することもできる。代替的には、免疫複合体を用いて、細胞毒又は放射性毒素をCD20に狙い打ちすることにより、CD20をそれらの表面に発現させた細胞を致死させることができる。
【0192】
ある具体的な実施態様では、本抗体はCD20担持腫瘍細胞を枯渇させるために、本発明の抗体を用いて、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのB細胞リンパ腫を治療又は防止することができる。CD20は通常、NHLに関連する新形成性(即ち腫瘍形成性)B細胞上では高レベル、発現している。従って、本発明のCD20結合性の抗体を用いると、NHLにつながるCD20担持腫瘍細胞を枯渇させることができるため、この疾患を防止又は治療するために用いることができる。
【0193】
B細胞リンパ腫は、例えば化学療法(例えばシスプラチン療法)後、あるいは、別の抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)での治療後、に再発したB細胞リンパ腫などの再発性Bリンパ腫であってもよい。
【0194】
非ホジキンリンパ腫(NHL)はB細胞リンパ腫の一種である。B細胞リンパ腫などのリンパ腫は、リンパ球(血球)が悪性になったときに生じる一群の関連する癌である。リンパ球の正常な機能は、侵入物:細菌、ウィルス、カビ、更には癌などから身体を守ることである。リンパ球には数多くの下位種類及び成熟段階があるため、多種のリンパ腫がある。正常な細胞と同様に、悪性リンパ球は身体の多くの部分に移動することができる。典型的には、リンパ腫細胞はリンパ系:骨髄、リンパ節、脾臓、及び血液、で腫瘍を形成する。しかしながら、これらの細胞は他の器官に遊走することができる。いくつかの種類のリンパ腫は、正常な形のその細胞が常在する位置で成長する傾向があるであろう。例えば、濾胞性NHL腫瘍は、リンパ節で発生するのが普通である。
【0195】
非ホジキンリンパ腫(NHL)の例には、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫及び成熟B細胞新生物、例えばB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞プロリンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、低級、中級、及び高級FLを含む濾胞性リンパ腫(FL)、皮膚濾胞中心リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫(MALT型、節型及び脾臓型)、ヘアリー細胞白血病、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキット・リンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ滲出性異常、ワルデンストローム大グロブリン血症、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、重鎖疾患(γ、μ、及びα疾患を含む)、シクロスポリン誘導性リンパ腫及びメトトレキセート誘導性リンパ腫など、免疫抑制剤による療法で誘導されるリンパ腫、がある。
【0196】
ある実施態様では、当該の疾患は濾胞性リンパ腫(FL)である。別の実施態様では、当該の疾患はリンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0197】
更なる実施態様では、本発明のヒト抗体を用いてホジキンリンパ腫を治療することができる。
【0198】
更に本発明のヒト抗体(例えばヒトモノクローナル抗体、多重特異的及び二重特異的分子)を用いて、CD20の他の効果を遮断又は阻害することができる。例えば、CD20がBリンパ球上で発現し、これらの細胞の増殖及び/又は分化に関与していることが公知である。Bリンパ球は免疫モジュレータとして機能するため、CD20 は、免疫、自己免疫、炎症性又は感染性疾患や、又はヒトCD20が関与する異常に関与する、Bリンパ球を不活性化する又は致死させるためなど、Bリンパ球を標的にする抗体媒介療法の重要なターゲットである。
【0199】
CD20発現B細胞が関与する、治療及び/又は防止の可能な疾患及び異常の例には、免疫、自己免疫、炎症性及び感染性疾患並びに異常、例えば乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性硬化症、炎症性腸疾患 (IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、腎炎、湿疹、喘息、アテローム性硬化症、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年型糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体性腎炎、IgA ネフロパチー、IgM 多発性神経炎、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎(RA)、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、グレーブズ病、重症急性呼吸窮迫症候群、舞踏病様網膜炎、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性感染性単核細胞症、HIV、疱疹ウィルス関連疾患や、エプスタインーバー・ウィルス(EBV)など、B細胞のウィルス感染により引き起こされる又は媒介される疾患及び異常、がある。
【0200】
自己抗体及び/又は過剰なBリンパ球活性が著明であり、治療及び/又は防止の可能な炎症性、免疫及び/又は自己免疫異常の更なる例には、以下のものがある:
血管炎及び他の血管異常、例えば顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、及び他のANCA関連血管炎、結節性多発性動脈炎、本態性クリオグロブリン血症性血管炎、皮膚白血球破壊性血管炎、川崎病、高安動脈炎、巨細胞関節炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、原発性又は孤立性脳血管炎、結節性紅斑、閉塞性血栓動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病(溶血性尿毒症症候群を含む)、及び皮膚白血球破壊性血管炎を含む続発性血管炎(例えばB型肝炎、C型肝炎、ワルデンストローム大グロブリン血症、B細胞新形成、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、及び全身性エリテマトーデスに続発する)、結節性紅斑、アレルギー性血管炎、脂肪層炎、ウェーバー・クリスチャン病、紫斑性グロブリン過剰血症、及びバージャー病;
皮膚の異常、例えば接触性皮膚炎、線形IgA皮膚症、白斑、壊疽性膿皮症、後天性表皮水疱症、尋常性天疱瘡(瘢痕性類天疱瘡及び水疱性類天疱瘡を含む)、円形脱毛症(全身性脱毛症及び完全脱毛症を含む)、疱疹状皮膚炎、多発性紅斑、及び慢性自己免疫性蕁麻疹(血管神経性浮腫及び血管性蕁麻疹を含む);
免疫媒介性血球減少症、例えば自己免疫性好中球減少症及び赤血球糸無形成症;
結合組織異常、例えばCNS ループス、円板状エリテマトーデス、CREST 症候群、混合型結合組織疾患、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、続発性アミロイド症、I型及びII型クリオグロブリン血症、線維筋痛、ホスホリピド抗体症候群、続発性血友病、再発性多発性軟骨炎、サルコイドーシス、スティフマン症候群、リウマチ熱、及び好酸球性筋膜炎;
関節炎疹、例えば強直性脊椎炎、若年性慢性関節炎、成人性スティル病、SAPHO症候群、仙腸骨炎、反応性関節炎、スティル病、及び痛風;
血液の異常、例えば再生不良性貧血、原発性溶血性貧血(寒冷凝集素症候群を含む)、温暖自己抗体による溶血性貧血、CLL又は全身性エリテマトーデスに続発する溶血性貧血;POEMS 症候群、悪性貧血、ワルデンストロームの高グロブリン血性紫斑病、エヴァンス症候群、無顆粒球症、自己免疫好中球性減少症、フランクリン病、セリグマン病、μ鎖病、第VIII因子阻害剤形成、第IX因子阻害剤形成、及び胸腺腫及びリンパ腫に続発する腫瘍随伴症候群;
内分泌障害、例えば多腺性内分泌障害、及びアジソン;更なる例は自己免疫性高血糖症、自己免疫性甲状腺機能減退症、自己免疫性インシュリン症候群、デ・カーベーン甲状腺炎、及びインシュリン受容体抗体媒介性インシュリン耐性;
肝−胃腸管異常、例えばセリアック病、ウィップル病、原発性胆汁性肝硬変、慢性進行性肝炎、原発性硬化性胆管炎、及び自己免疫性胃炎;
腎症、例えば急速進行性糸球体腎炎、連鎖球菌性腎炎、グッドパスチャーズ症候群、膜性糸球体腎炎、クリオグロブリン性腎炎、微小変化疾患、及びステロイド依存性腎炎症候群;
神経学的異常、例えば自己免疫性腎症、多発性単神経炎、ランバート-イートン筋無力症候群、シドナム舞踏病、脊髄癆、及びギラン-バレー症候群;更なる例はミエロパチー/熱帯性痙性不全対麻痺、重症筋無力症、急性炎症性脱髄性多発性神経炎、及び慢性炎症性脱髄性神経炎である;
心臓及び肺の異常、例えば線維化性肺胞隔炎、閉塞性細気管支炎、アレルギー性アスペルギルス症、嚢胞性線維症、レフレル症候群、心筋炎、及び心膜炎;更なる例は過敏性肺臓炎、及び肺癌に続発する腫瘍随伴症候群である;
アレルギー性の異常、例えば気管支喘息、高IgE症候群、及び血管神経性症候群;
眼科の異常、例えば特発性脈絡網膜炎、及び一過性黒内症;
感染性疾患、例えばパルボウィルスB感染(手足病を含む);
産婦人科系の異常、例えば再発性流産、再発性胎児喪失、子宮内成長遅滞、及び婦人科系の新生物に続発するパラネオプラスチック症候群;
男性の生殖異常、例えば、精巣の新生物に続発するパラネオプラスチック症候群;及び
移植由来の異常、例えば同種移植片及び異種移植片拒絶、及び移植片対宿主疾患。
【0201】
ある実施態様では、当該の疾患はリウマチ様関節炎(RA)である。
【0202】
別の実施態様では、当該の疾患は炎症性腸症候群(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、若年性糖尿病、多発性硬化症、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血(自己免疫性溶血性貧血を含む)、重症筋無力症、全身性硬化症、及び尋常性天疱瘡から選択される。
【0203】
更に更なる実施態様では、当該の疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び多発性硬化症から選択される。
【0204】
例えば本発明の組成物(例えばヒト抗体、二重特異的/多重特異的)に連結させたエフェクタ細胞などの標的特異的エフェクタ細胞は、治療薬としても用いることができる。標決定されるエフェクタ細胞は、例えばマクロファージ、好中球又は単球などのヒト白血球であってよい。他の細胞には、好酸球、ナチュラル・キラー細胞及び他のIgG-又はIgA-受容体担持細胞がある。必要に応じ、エフェクタ細胞を、治療しようとする対象から得ることができる。当該の標的特異的エフェクタ細胞は、生理学的に許容可能な溶液に入れた細胞懸濁液として投与することができる。投与される細胞数は、108 乃至 109
のオーダーであってよいが、治療目的に応じて様々であろう。一般的には、この量は、CD20発現腫瘍細胞などの標的細胞での位置限定ができ、そして貪食などにより細胞致死が行えるように、充分なものであろう。
【0205】
標的特異的エフェクタ細胞を用いた治療法は、標的とされた細胞を除去する他の技術との組み合わせて行うことができる。例えば、本発明の組成物(例えばヒト抗体、二重特異的/多重特異的分子)、及び/又は、これらの組成物で武装したエフェクタ細胞を用いた抗腫瘍療法を、化学療法と組み合わせて用いることができる。加えて、併用免疫療法を、二つの異なる細胞障害性エフェクタ集団に腫瘍細胞拒絶を命令するために用いてもよい。例えば、抗FcγRI又は抗CD3 に連結させた抗CD20抗体を、IgG又はIgA受容体特異的結合剤と組み合わせて用いてもよい。
【0206】
本発明の二重特異的及び多重特異的分子を用いて、例えばエフェクタ細胞上の受容体をキャッピング及び消失させるなどにより、これらの細胞上のFcγR又はFcαRレベルを調節することもできる。抗Fc受容体の混合物も、この目的のために用いることができる。
【0207】
IgG1、-2、もしくは-3 又は IgM を由来とする部分など、補体に結合する補体部位を有する本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子及び免疫複合体)を、補体の存在下で用いることもできる。ある実施態様では、標的細胞を含む細胞集団を本発明の結合剤及び適したエフェクタ細胞で ex vivo 処理するステップを、補体又は補体含有血清を追加することで補うことができる。本発明の結合剤で被覆した標的細胞の貪食は、補体たんぱく質の結合により、向上させることができる。別の実施態様では、本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子)で被覆した標的細胞を、補体により溶解させることもできる。更に別の実施態様では、本発明の組成物は補体を活性化しない。
【0208】
本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子並びに免疫複合体)を、補体と一緒に投与することもできる。従って、ヒト抗体、二重特異的/多重特異的分子及び血清又は補体を含む組成物は、本発明の範囲内である。これらの組成物は、補体が当該のヒト抗体、二重特異的/多重特異的分子の近くに位置するという点で有利である。代替的には、本発明のヒト抗体、二重特異的/多重特異的分子と、補体又は血清を別々に投与することができる。本発明の組成物の標的細胞へ結合させると、CD20抗原−抗体複合体が、細胞膜の脂質ラフトに転位すると考えられる。このような転位により、高密度の抗原−抗体複合体が生じて、CDCを有効に活性化及び/又は亢進するであろう。
【0209】
他の実施態様では、例えば対象をサイトカインで治療するなど、Fcα又はFcγ受容体の発現又は活性を亢進又は阻害するなど調節するような作用物質で対象を付加的に治療することができる。本多重特異的分子による治療中に投与するのに好適なサイトカインには、顆粒球コロニ刺激因子(G-CSF)、顆粒球−マクロファージコロニ刺激因子 (GM-CSF)、インターフェロン-γ (IFN-γ)、及び腫瘍壊死因子 (TNF)がある。
【0210】
更に本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子)を、FcγR又はCD20発現細胞を標識するなどのために、このような細胞を標的に決定するためにも用いることができる。このような用途の場合、結合剤を、検出可能な分子に連結させることができる。従って、本発明は、FcγRなどのFc受容体又はCD20を発現する細胞をex vivo 又は in vitro で位置特定するための方法を提供するものである。検出可能な標識は、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、又は酵素コファクタなどであってよい。
【0211】
ある具体的な実施態様では、本発明は、試料中のCD20抗原の存在を検出する、あるいは、CD20抗原の量を測定する方法を提供するものであり、この方法は、試料及びコントロール試料を、本抗体又はその部分とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で、CD20に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体に接触させるステップを含む。次に、ある複合体の形成を検出するが、このとき、コントロール試料に比較したときの、当該試料との間の複合体形成の違いは、当該試料中のCD20抗原の存在の指標である。
【0212】
別の実施態様では、本発明のヒト抗体を用いて、循環中CD20のレベルを、又は、CD20をそれらの膜表面上に含有する細胞のレベルを、検出することができ、その後このレベルを特定の疾患症状に結び付けることができる。代替的には、本抗体を用いて、CD20発現細胞を枯渇させるか、又はその機能と相互作用させることで、これらの細胞を当該疾患の重要な媒介物質として結び付けることができる。これは、試料及びコントロール試料を、抗CD20抗体に、この抗体とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で接触させることにより、行うことができる。この抗体とCD20との間で形成されたいずれかの複合体を検出し、試料及びコントロール間で比較する。
【0213】
本発明のヒト抗体をまず、治療上又は診断上の用途に関係する結合活性について、in vitroで検査することができる。例えば、本抗体を、下の実施例で解説するフローサイトメトリ検定法を用いて検査することができる。更に、CD20発現細胞の成長の阻害、及び/又は致死を含め、少なくとも一つのエフェクタ媒介性エフェクタ細胞活性を惹起する上での本抗体の活性を検定することができる。例えば、本抗体のCDC及び/又はアポトーシス惹起能を検定することができる。CDC、同型接着、分子クラスタリング又はアポトーシスを検定するプロトコルは、下の実施例で解説されている。
【0214】
更に別の実施態様では、本発明は、in vivo
又はin vitroにおけるCD20発現細胞の存在を検出する、又はその量を定量する方法を提供するものである。本方法は、(i)検出可能なマーカに結合させた本発明の組成物(例えば多重又は二重特異的分子)を対象に投与するステップ;(ii)前記検出可能なマーカを検出する手段に前記対象を暴露して、CD20発現細胞を含有する区域を特定するステップ、を含む。
【0215】
更に別の実施態様では、本発明の免疫複合体を用いて、化合物(例えば治療薬、方式、細胞毒、放射性毒素、免疫抑制剤等)を本抗体に連結することにより、CD20をそれらの表面に発現させて有する細胞にこのような化合物を標的決定することができる。このように、更に本発明は、リード-ステルンベルグ細胞など、CD20発現細胞をex vivo又はin vitroで(例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、又は酵素コファクタで)位置特定する方法も提供するものである。
【0216】
更に本発明を以下の実施例で描写するが、以下の実施例を更に限定的なものと捉えられてはならない。
【0217】
実施例
実施例で用いられるB細胞株
【0218】
【表1】

【0219】
Daudi及びRaji B細胞株を、10% ウシ胎児血清(FCS) (カナダ、ブルーノ、Wisent社、Optimum C241)、2 mM L-グルタミン、100 IU/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン、及び1 mM ピルビン酸ナトリウム(すべてスコットランド、ペーズリー、 Gibco BRL、ライフ・テクノロジーズ社)を添加したRPMI 1640 培養基で培養した。
【0220】
培養物を、加湿した5% CO2
インキュベータ内で37℃に維持し、分割し、80-90%
コンフルエントになった時点で採集した。培地を1週間に2回、更新した。この時点で細胞を分割し、生存及び最適な成長が確実になるように1-1.5 x 106 細胞/ml に播種した。
【0221】
実施例1 CD20に対するIgMヒトモノクローナル抗体の作製
KMマウス: CD20に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、ヒト抗体遺伝子を発現するKMマウスを用いて調製した。このKMマウス株において、内因性のマウスカッパ軽鎖遺伝子は、Chen et al. (1993) EMBO J. 12:811-820に解説された通りにホモ接合型に破壊され、そして内因性のマウス重鎖遺伝子は、WO 01/09187の実施例1に解説された通りにホモ接合型になるように破壊されていた。このマウス株は、 Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に解説された通りに、ヒトカッパ軽鎖導入遺伝子KCo5を持つ。このマウス株は更に、WO 02/43478に解説された通りに、14番染色体断片hCF (SC20)から成るヒト重鎖導入染色体も持つ。
【0222】
KMマウス免疫処理: KMマウスを、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0細胞で免疫した。一回目の免疫処理には、マウス1匹毎に、1
x 107 個の細胞を入れた100μl PBSを完全フロイント・アジュバントに1:1に混合し、腹腔内(i.p.)注射した。その後、腹腔内免疫処理(合計9回の免疫処理)を隔週、アジュバントなしで同様な量の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れたものを用いて行った。融合から4乃至3日前に、マウスを1 x 105
個の細胞のPBS懸濁液で静脈内により追加刺激した。
【0223】
マウス血清中の、ヒトCD20に対する抗対の存在を、フローサイトメトリにより、FACS分析を用い、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0 細胞やCD20陰性親NS/0 細胞を用いて観察した。
【0224】
CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製:マウス脾細胞をKMマウスから単離し、PEGでマウス骨髄腫細胞株に標準的なプロトコルに基づいて融合した。次に、こうして出来たハイブリドーマをヒト抗体の産生についてELISAで、そしてCD20特異性について、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0及びSKBR3細胞を用いてFACS分析でスクリーニングした。
【0225】
より具体的には、免疫後のマウスの脾臓リンパ球の単個細胞懸濁液をSP2/0 非分泌性マウス骨髄腫細胞
(ATCC、CRL 1581) の4分の1の数に50% PEG (Sigma社)で融合した。細胞をほぼ 1
x 105/ウェル になるように平底微量定量プレートにプレートした後、10% ウシ胎児血清 (FBS)、10% P388D1 (ATCC、CRL TIB-63) 調整培地、3-5% origen (IGEN) のDMEM (Mediatech社、CRL 10013、グルコース、L-グルタミン及びピルビン酸ナトリウム値の高いもの) 溶液と 5 mM HEPES、0.055 mM 2-メルカプトエタノール、50
mg/ml ゲンタマイシン及び 1x HAT (Sigma社、H-0262)を含有する選択培地で約2週間、インキュベートした。1乃至2週間後、細胞をHATをHT(Sigma社、H-0137)に替えた培地で培養した。次に個々の細胞をフローサイトメトリでヒト抗CD20モノクローナル抗体についてスクリーニングした。通常は10乃至14日後であるが、広汎なハイブリドーマ成長がいったん、起きた後で、培地を観察した。当該抗体を分泌しているハイブリドーマを再プレートし、再度スクリーニングし、そしてヒト抗CD20モノクローナル抗体についてまだ尚、陽性であれば、限界希釈でサブクローニングした。その後、安定なサブクローンをin vitro で培養して、少量の抗体を組織培養基中に産生させて、特徴付けに向けた。親細胞の反応性を(FACSにより)保持していた各ハイブリドーマから採った一個のクローンを選び出し、5-10 バイアルの細胞バンクを、各クローン毎に作製し、液体窒素中で保存した。
【0226】
ヒトモノクローナルIgM抗CD20抗体を発現しており、2C6と名付けられたハイブリドーマを以下の実施例で更に特徴付ける。
【0227】
実施例2 2C6 IgMの機能上の特徴付け
CD20-NS/0 細胞への結合: 2C6 IgM クローンから得た上清を用いて、CD20-陽性NS/0細胞上のCD20への結合を判定した。 ここでリツキシマブ(IDEC)との比較には、ヒトIgM コントロール抗体及びヒトIgG1コントロール抗体を用いた。FACS染色を以下の通りに行った: 1
x 105 個の細胞を/ウェルに、50μl FACS 緩衝液 (PBS 、アジド、ウシ血清アルブミン
(BSA)) に入れたものと、50μlの上清又は精製済み抗体 (10μg/ml)を30分間、4℃でインキュベートした。その後、細胞をFACS 緩衝液で洗浄し、複合体をこの細胞に加えた(リツキシマブ検出には、抗ヒトIgM-FITC 又は抗ヒトIgG-FITC、4℃で30分間)。洗浄後、細胞をフローサイトメトリで分析した。表2のデータは、2C6
IgM はCD20に結合するが、蛍光はリツキシマブの結合後の蛍光のほぼ半分であることを示す。
【0228】
遮断実験: この遮断実験のために、細胞をまず2C6
IgM 上清と一緒にインキュベートし、ここでリツキシマブとの比較には、ヒトIgM コントロール抗体 及びヒトIgG1 コントロール抗体 (4℃で30分間)と一緒にインキュベートし、この場合は細胞をリツキシマブ-FITC (10μg/ml) で染色し、FACSで分析した。下の表2に示すデータは、2C6 IgM はリツキシマブの結合を完全には遮断できなかったことを示す。
【0229】
CDC活性:2C6 IgMのCDC活性を判定するために、上昇した膜透過性を、ヨウ化プロピジウム(PI)染色した細胞のFACS分析を用いて評価した。簡単に説明すると、Daudi 細胞を洗浄し、RPMI/1%
BSA に1 x 106 個の細胞/mlになるように再懸濁させた。2C6 IgM含有上清の多様な希釈液と、ここでの比較としてリツキシマブ、IgM コントロール抗体 及びIgG1 コントロール抗体をこの細胞に加え、Daudi 細胞上に発現したCD20に10乃至15分間、室温で結合させた。その後、補体の源としての血清を最終濃度20% (v/v) になるように加え、この混合液を45分間、37℃でインキュベートした。その後この細胞を、分析まで4℃に維持した。次に、各試料(150μl)を10μlの PI 溶液(PBS中10μg/ml)にFACS試験管内で加えた。すぐ、この混合液をフローサイトメトリで評価した。表2に示すデータは、2C6 IgM がCDCを誘導することができるが、その程度はリツキシマブよりも小さいことを示す。
【0230】
【表2】

2C6 IgMの機能上の特徴
【0231】
1: 数値は平均蛍光で示されている。
2: 数値は溶解率%で示されている。
3: 判定されず
【0232】
実施例3 2C6 IgMの2C6 IgG1,κへのクラス・スイッチング
本実施例では、2C6 IgM抗体の IgG1,κ抗体へのクラス・スイッチングを開示する。
【0233】
以下では、全てのキットは、そうでないと明示しない限り、メーカの指示に従って用いられた。
【0234】
ほぼ107 個のハイブリドーマ細胞を遠心分離(1500rpm、4℃)で採集し、1mlのPBSで洗浄した。細胞懸濁液を 1.5
ml 入りマイクロ遠心管に写し、遠心分離(13,000rpm、10秒間)でペレットにした。
【0235】
mRNAは、Amersham Biosciences 社(スウェーデン、ウプサラ)のQuickprep-micro mRNA 精製キットを用いて調製された。
【0236】
cDNA は、Amersham Biosciences社の1st ストランドcDNA 合成キットsynthesis kit を用いて調製された。
【0237】
両重鎖及び可変鎖領域DNAを、μ及びκ鎖の定常領域配列の5'側シグナル配列及び3'開始点を認識したプライマを用いたPCRにより増幅した:
【0238】
【表3】

【0239】
標的配列のばらつきは、D = A 又は T 又は G; H = A 又は T 又は C; K = T 又は
G; R = A 又は G; S = C 又は G; V = A 又は C 又は G; 及びY = C 又は Tになった縮重プライマを用いることにより、見越された。
【0240】
DNA増幅は、目的のDNA配列に挿入される複製可能なエラーの数を減らすためにPfu ポリメラーゼ (英国、サザンプトン、Promega社)を用いて行われた。簡単に説明すると、1μlの該当する 5’ 側及び3’ 側プライマ (100
ng/ml) を、2.5μlのPfu 反応緩衝液及び0.5μlのdNTP ミックスを加えた0.5μlのcDNA に、0.5μlの Pfu ポリメラーゼ (5 U/μl) と一緒に加えて総量を25μlとした。
【0241】
当該のPCRは、PTC-100 熱制御システム(米国マサチューセッツ州、ウォルサム、MJ Research 社)を用いて行われた。DNAを、94℃で5分間、変性させた後、94℃で30秒間の変性、55℃で1分間のアニール、そして72℃で2分間の伸長というサイクルを30サイクル、行った。最終的な10分間の伸長反応を行って、完全長転写産物の形成を確実にした。
【0242】
PCR産物を2.8μlのゲル充填緩衝液と混合し、各試料を、臭化エチジウムを含有する0.7%の水平アガロース・ゲルに充填し、120
Vで1 kB DNA ラダー(Gene-ruler、リトアニア、ヴィルヌス、Fermentas AB社) と一緒に分離して、断片サイズを推測できるようにした。PCR産物を紫外光で可視化し、切断し、Qiagen社(オランダ、ロイスデン、Westburg
B.V.)のQIAEX II ゲル抽出キットを用いてゲル抽出した。
【0243】
次に、精製済みのPCR産物を、Invitrogen社のZero Blunt TOPO PCR クローニング・キットでクローニングし、このキットのTOP10 化学的コンピテント E.coli に導入し、カナマイシン選択LB寒天プレートにプレートした。個々のコロニを摘み出し、カナマイシン選択LB培地で一晩、成長させ、Qiagen社のQIAprep ミニプレップ・キットを用いたDNA精製に向けた。
【0244】
精製後のDNAを、インサートの存在についてEcoRI
(Promega社) 消化物で選抜し、配列決定した。正しいサイズのインサートを含有する2.5μlのミニ・プレップ試料に、2μlのBig Dye Terminator v1.1 Cycle Sequencing ミックス、2μlの10倍反応緩衝液(米国カリフォルニア州フォスター・シティ、Applied Biosystems社)及び1μlのT7 もしくは SP6 プライマ(1 pmol/ml) 及び2.5μlの水を加えて、各配列反応に用いた。PCR 反応を、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700
を3時間、用いて;96℃で10秒間の変性、50℃で5秒間のアニーリング、及び60℃で4分間の伸長、から成るサイクルを25回という、標準的なBigDyeプロトコルを用いて行わせた後、試料を4℃まで冷却した。
【0245】
次に、1μlの3M酢酸ナトリウムおよび25μlの100%エタノールを、1.5ml入りのマイクロ遠心管に入れた10μlの試料に加え、この試料を氷上で10分間、インキュベートすることにより、各PCR反応で出たDNAを沈殿させた。16,000gで40分間、4℃で遠心分離してDNAをペレットにした後、250μlの70%エタノールで洗浄し、10分間、再度ペレットにした。エタノールを完全に取り除き、DNAペレットを2μlの充填緩衝液(1:4のデキストラン:ホルムアルデヒド)中に再懸濁させた。
【0246】
DNA配列試料をPerkin Elmer ABI Prism 377 DNA Sequencer(米国カリフォルニア州フレモント) で泳動させ、DNASTAR
Sequence Manager ソフトウェア(米国ウィスコンシン州マジソン)を用いて分析した。
【0247】
得られた配列を既知の配列に比較し、定常領域配列によるクローニングのための制限部位が導入されるであろう新しいプライマをデザインした:
【0248】
【表4】

【0249】
制限部位が挿入された軽鎖及び重鎖可変領域を、上記の一回目のPCRに関して詳述したようにPCRで作製したが、例外としてアニーリング温度は50℃に変更した。
【0250】
そのPCR産物を単離し、TOPO 平滑末端PCR ベクタ中にサブクローニングし、上に詳述したように配列決定した。
【0251】
得られた配列をソースの配列に比較した後、それぞれIgG1及びκ鎖のヒトIgG定常領域を含有するベクタと一緒に、HindIII/SpeI で重鎖を狙って、又はHindIII/BsiWI
で軽鎖を狙って、消化した。前に詳述したように消化産物を可視化し、抽出した。次に、消化後の断片をT4 DNA リガーゼ (Promega社) を用いて一晩、4℃でライゲートし、化学的コンピテントJM109 E.coli (Promega社) に形質転換し、アンピシリン選択LB寒天プレートにプレートした。個々のコロニーを摘み出し、アンピシリン選択LB培地で一晩、成長させて、Qiagen社のQIAprep ミニプレップ・キットを用いたDNA精製と、適した制限酵素によるその後の診断的消化に向けた。
【0252】
その後、それらの定常領域とライゲートした後の完全長重鎖及び軽鎖を、HindIII 及びEcoRI をそれぞれ pEE6.1 及び pEE14.1 哺乳動物発現ベクタと一緒に用いた二重制限消化により、抽出した (英国スロー、Lonza
Biologics社)。次に、消化後の断片を
T4 DNA リガーゼ (Promega社) を用いて一晩、4℃でライゲートし、化学的コンピテントJM109 E.coli (Promega社) に形質転換し、アンピシリン選択LB寒天プレートにプレートした。個々のコロニを摘み出し、アンピシリン選択LB培地で一晩、成長させて、Qiagen社のQIAprep ミニプレップ・キットを用いたDNA精製と、適した制限酵素によるその後の診断的消化に向けた。
【0253】
この実験により、2C6 はVH ヌクレオチド配列 SEQ ID NO:1 及びアミノ酸配列SEQ ID NO:2を有することが明らかになった。更に、2C6 ハイブリドーマは、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:3
、そしてアミノ酸配列SEQ ID NO:4を持つVLa 2C6 と、アミノ酸配列SEQ ID NO:5を持つVLb 2C6 という2つの可変軽鎖を発現する。
【0254】
実施例4 フリースタイル293発現系(オランダ、ブレダのInvitrogen社)を用いた2C6重鎖及び11B8軽鎖の一過性トランスフェクション
HEK293F細胞を、Invitrogen社から得、2C6 重鎖IgG1 DNA 及び11B8κ軽鎖DNA をメーカの指示に従って293fectinを用いてトランスフェクトした。その組換え抗体は2C6 IgG1,κと指定され、以下の実施例で開示された実験で用いられている。ヒトモノクローナル抗CD20 抗体 11B8 の作製を下に開示する。
【0255】
CD20に結合するヒトモノクローナル抗体11B8の作製
HCo7免疫処理: HCo7マウスを、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0細胞で免疫した。一回目の免疫処理には、マウス1匹当り、150μlのPBSに入れた1×107個の細胞を1:1になるように完全フロイント・アジュバントと混合し、腹腔内(i.p.)注射した。次のi.p.免疫処理は、同様な量の細胞をアジュバントなしでPBSに入れたものを用いて行われた。融合から3又は4日前に、マウスを、0.5×107個の細胞をPBSに懸濁させた懸濁液で静脈内により追加刺激した。
【0256】
HCo7 マウスは、それらの内因性の軽鎖(カッパ)遺伝子にJKD の破壊(Chen et al. (1993) EMBO J. 12:821-830に解説された通り)、それらの内因性の重鎖遺伝子にCMD 破壊(WO 01/14424の実施例1に解説された通り)、KCo5 ヒトカッパ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al. (1996) Nature
Biotechnology 14:845-851に解説された通り)、及びHCo7
ヒト重鎖導入遺伝子(米国5,770,429に解説された通り)を有する。
【0257】
このマウスの血清中で、ヒトCD20に対する抗体の存在を、FACS分析を用いたフローサイトメトリにより、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0細胞やCD20陰性のNS/0 細胞を用いて観察した。
【0258】
マウス脾細胞をこのHCo7マウスから単離し、標準的なプロトコルに基づいてマウス骨髄腫細胞株にPEGで融合させた。次に、こうして出来たハイブリドーマをヒトIgG,κの産生についてELISAで、そしてCD20特異性については、ヒトCD20をトランスフェクトしたNS/0 及びSKBR3 細胞を用いたFACS 分析で、スクリーニングした。免疫後のマウスの脾臓リンパ細胞の単個細胞懸濁液は、50%のPEG(Sigma社)で、SP2/0 非分泌性マウス骨髄腫細胞 (ATCC、CRL 1581) の4分の1の数に融合させた。細胞をほぼ1×105個/ウェルになるように平底微量定量プレートにプレートした後、10% ウシ胎児血清、 10%
P388D1 (ATCC, CRL TIB-63) 調整培地、3-5% origen
(IGEN) のDMEM (Mediatech社、CRL 10013、高グルコース、L-グルタミン及びピルビン酸ナトリウムを加えて)溶液に 5 mM HEPES、0.055 mM 2-メルカプトエタノール、50 mg/ml ゲンタマイシン及び1x HAT (Sigma社、CRL P-7185)を加えたもの、を含有する選択培地で約2週間、インキュベートした。
1−2週間後、HATをHTに取り替えた培地で細胞を培養した。その後、個々の細胞を、ヒト抗CD20モノクローナルIgG抗体について、フローサイトメトリでスクリーニングした。通常は10乃至14日後であるが、広範なハイブリドーマ成長が起きたら直ちに培地を観察した。当該抗体を分泌しているハイブリドーマを再プレートし、再度スクリーニングし、まだ尚、ヒトIgG抗CD20 モノクローナル抗体について陽性であれば、限界希釈によりサブクローニングした。次に安定なサブクローンをin vitroで培養して、少量の抗体を組織培地中に産生させ、特徴付けに向けた。親細胞の反応性を(FACSにより)保持していた各ハイブリドーマからクローン一個を選び出し、 各クローンについて5乃至10バイアルの細胞バンクを作製して、液体窒素中に保存した。
【0259】
11B8と指名された、ヒトモノクローナルIgG3,κ抗CD20 抗体を発現する以下のハイブリドーマをHCoマウスから作製した。
【0260】
該11B8 抗体を、実施例3で開示したのと同様な態様で、適したプライマを用いて標準的な技術に従って配列決定した。11B8 抗体は、SEQ ID
NO:6に記載した通りのVLヌクレオチド配列、及びSEQ ID NO:7に記載した通りのVLアミノ酸配列を有する。当該のVH 領域は以下のアミノ酸配列:
Met Glu Leu
Gly Leu Ser Trp Val Phe Leu Val Ala Ile Leu Lys Gly Val Gln Cys Glu Val Gln Leu
Val Gln Ser Gly Gly Gly Leu Val His Pro Gly Gly Ser Leu Arg Leu Ser Cys Thr Gly
Ser Gly Phe Thr Phe Ser Tyr His Ala Met His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly
Leu Glu Trp Val Ser Ile Ile Gly Thr Gly Gly Val Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val Lys
Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Val Lys Asn Ser Leu Tyr Leu Gln Met Asn Ser
Leu Arg Ala Glu Asp Met Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Asp Tyr Tyr Gly Ala Gly Ser
Phe Tyr Asp Gly Leu Tyr Gly Met Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser
Ser
を有する。
【0261】
実施例5 CD20に対する2C6 IgG1,κの結合特性
Daudi及びRaji細胞株への結合:Daudi 及びRaji細胞を30分間、4℃でFITC 結合ヒト抗体: 2C6 IgG1κ、又は基準抗体であるリツキシマブ2F2 、又は11B8と一緒にインキュベートした。結合をフローサイトメトリで評価した。図1A及び1Bに示すように、2C6 IgG1,κは2つの異なるBurkitt リンパ腫B細胞株に結合したことから、2C6 IgG1,κは、もとの2C6 IgM 抗体の結合特性を保持していることが示された。
【0262】
2F2 は、可変VHアミノ酸配列:
Met Glu
Leu Gly Leu Ser Trp Ile Phe Leu Leu Ala Ile Leu Lys Gly Val Gln Cys Glu Val Gln
Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Arg Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala
Ala Ser Gly Phe Thr Phe Asn Asp Tyr Ala Met His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys
Gly Leu Glu Trp Val Ser Thr Ile Ser Trp Asn Ser Gly Ser Ile Gly Tyr Ala Asp Ser
Val Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ala Lys Lys Ser Leu Tyr Leu Gln Met
Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Leu Tyr Tyr Cys Ala Lys Asp Ile Gln Tyr Gly
Asn Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser
及び可変VL アミノ酸配列:
Met Glu Ala Pro Ala Gln Leu Leu Phe Leu Leu Leu Leu
Trp Leu Pro Asp Thr Thr Gly Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Ala Thr Leu Ser Leu
Ser Pro Gly Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Ser Val Ser Ser Tyr Leu
Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ala Pro Arg Leu Leu Ile Tyr Asp Ala Ser Asn
Arg Ala Thr Gly Ile Pro Ala Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu
Thr Ile Ser Ser Leu Glu Pro Glu Asp Phe Ala Val Tyr Tyr Cys Gln Gln Arg Ser Asn
Trp Pro Ile Thr Phe Gly Gln Gly Thr Arg Leu Glu Ile Lys
を有するKMマウスで生じさせたヒトモノクローナルIgG1,κ抗CD20抗体である。本実験で用いられる2F2 抗体は、組換えによりCHO細胞で産生される。
【0263】
本実験で用いられる11B8 抗体もまた、組換えによりCHO細胞で産生される。
【0264】
図1は更に、2C6 IgG1,κが、基準抗体と同様な見かけのKDを示すことを示しており、2C6 IgG1,κは同様な親和性で結合することが示唆される。
【0265】
125I-標識抗CD20モノクローナル抗体 の Daudi 細胞への結合: 125I−標識抗CD20 モノクローナル抗体(2C6 IgG1,κ、及び基準抗体リツキシマブ及び2F2)をDaudi 細胞と一緒に2時間、室温で様々な濃度にしてインキュベートした。次に、細胞に結合した、及び遊離した125I-標識抗CD20 モノクローナル抗体を、フタル酸油を通す遠心分離で分離し、その細胞ペレットを、結合した抗体と一緒に、放射活性についてガンマ・カウンタで計数した。その結果を図2に示す。検査した抗体はすべて、同様な態様でDaudi 細胞に結合し、0.5μg/mlで飽和した。
【0266】
解離速度:該モノクローナル抗体の解離速度を判定するために、Raji 細胞を10分間、室温で、10μg/ml FITC結合モノクローナル抗体 と一緒にインキュベートして、最大の結合を達成した。このRaji 細胞を洗浄し、高濃度の未標識抗体(200μg/ml)の存在下でインキュベートした。Raji細胞への最大時の(最初の)結合を100%に設定した。充填後の320分間のうちの何箇所かの時点で、1×105個の細胞を各試料から取り出して、細胞表面上に残っているFITCモノクローナル抗体のレベルを判定した。図3に見られるように、 2C6 IgG1,κは、リツキシマブよりも速く、Raji細胞表面から解離した。ほぼ55分の時点で、リツキシマブ分子のうちの50%が、細胞に結合したままであり、他方、2C6 IgG1,κ分子のうちの50%は、ほぼ35分後に解離した。
【0267】
125I-標識抗CD20 モノクローナル抗体 のDaudi 細胞からの解離速度: 125I−標識抗CD20 モノクローナル抗体 (2C6 IgG1,κ、及び基準抗体であるリツキシマブ及び2F2)2μg/ml)をDaudi 細胞に加え、1時間、室温でインキュベートした後、ペレットにし、1mg/mlの未標識のモノクローナル抗体を含有する600μlの培地に再懸濁させた。細胞を室温に維持し、多様な時点でのアリクォートを採ってガンマ・カウンタで放射活性を計数することにより、細胞に結合したモノクローナル抗体のレベルを判定した。各時点で残っている計数を最初の計数のパーセンテージで表した。図4は、2乃至4回の実験の平均値を示す。図4で見られるように、2C6 IgG1,κはリツキシマブよりも速く、解離する。
【0268】
実施例6 2C6 IgG1,κのCDC
血清の調製: 健康なボランティアの血液をオートセップ・ゲル・アンド・クロット・アクチベータ・バキュテイナー・チューブ(BD biosciences社、ニュージーランド州ルターフォード)内 に吸引し、室温で30乃至60分間、維持した後3000rpmで5分間、遠心分離することで、補体溶解用の血清を調製した。血清を採集し、−80℃で保管した。
【0269】
フローサイトメトリ: フローサイトメトリには、FACScalibur
フローサイトメータをCellQuest プロソフトウェア(BD Biosciences社、カリフォルニア州マウンテンビュー)と一緒に用いた。少なくとも5000回の事象を、前方側方散乱(FCS)閾値の調節により排除される細胞破壊片の分析に向けて採集した。
【0270】
B細胞系株における抗CD20のCDC活性: 各抗体のCDC活性を判定するために、膜透過性の上昇を、PI染色した細胞のFACS分析を用いて評価した。
【0271】
Raji 又はDaudi 細胞を、それぞれある濃度範囲の2C6 IgG1,κ、2F2、11B8、リツキシマブ及びコントロール抗体(抗KLH)と一緒に10分間、プレインキュベートしてからNHS を添加した。37℃で45分間インキュベート後、最大の細胞溶解が起きたときに、細胞をPI溶液に再懸濁させ、フローサイトメトリで細胞溶解(PI陽性細胞の数)を測定した。
【0272】
図5A(Daudi 細胞)及び5B(Raji 細胞)は、溶解した(PI陽性の)細胞のパーセンテージを抗体濃度の関数で示す。2C6 IgG1,κや基準抗体、2F2 及びリツキシマブは、Daudi細胞で細胞溶解の濃度依存的増加を誘導する。重要なことに、2C6 IgG1,κは、2μg/mlを加えたときにDaudi細胞の80%を超える溶解を誘導したが、他方、リツキシマブでは、このレベルには10μg/mlを添加した後でも達しなかった。2C6 IgG1,κによるRaji細胞の溶解の誘導は、Daudi細胞よりも低かったが、それでも尚、ほぼ50%の溶解に、10μg/mlの抗体濃度で達した。 リツキシマブは、最高濃度のときでも、Raji細胞の溶解を誘導することができなかった。
【0273】
実施例7 経時的な結合及びCDC活性
Daudi細胞をFITC-標識抗CD20 モノクローナル抗体 (2C6 IgG1,κ及び基準抗体リツキシマブ)(5μg/ml) と一緒に60分間、37℃でインキュベートして、細胞に結合させた。少量の高濃度のリツキシマブF(ab)2又はFab'フラグメントを細胞に添加(最終濃度は300μg/ml)して、結合したFITC-標識抗CD20モノクローナル抗体と競合させた。多様な時点で試料を採取し、この試料を2つの部分に分けた。試料の一方の部分を用いて、細胞に結合したFITCモノクローナル抗体の量を判定した(図6A及び6B)。他方の部分を正常なヒト血清(NHS)(20% vol/vol)で処理し、この細胞を37℃で15分間、インキュベートした。PI排除検定を用いたフローサイトメトリにより細胞溶解を評価し、 CDCのレベルを総細胞のうちのPI陽性細胞のパーセンテージで表す(図6C及び6D)。図は、3つの別々の実験の平均(±SEM)を示す。
【0274】
これらの実験は、リツキシマブ及び2C6 IgG1,κが競合剤の添加直後では細胞に結合したままであり、そして予想通り、より次第に細胞から解離したことを示している。更にこれらの実験は、2C6 IgG1,κはリツキシマブよりも細胞から速く解離するが、細胞溶解誘導能はリツキシマブ及び2C6 IgG1,κ間で同様であったことも示している。リツキシマブに比較して、匹敵するレベルの溶解を起こさせるのに必要な2C6 IgG1,κ分子の数は少なかった。これらのデータは、細胞に結合した抗CD20モノクローナル抗体の密度のみが、溶解を決定する唯一の因子ではないことを示唆するものである。
【0275】
実施例8 アナフィラトキシン(C3a、C4a、C5a)の作製
Raji 又はDaudi 細胞を飽和量の抗CD20モノクローナル抗体 (2C6
IgG1,κ及び基準抗体リツキシマブ)(10μg/ml) と一緒に30分間、室温でインキュベートして、細胞に結合させた。NHS (20%
vol/vol) をこの細胞に加えた後、37℃で15分間、インキュベートした。細胞を遠心で沈降させ、上清をプロテアーゼ阻害剤FUT-175の存在下で適宜、希釈して、更なる補体活性化を防いだ。Becton Dickinson社の血球計算ビーズ・アレイをこのメーカの指示通りに用いてアナフィラトキシンを測定した。図7は、4つの別々の実験の平均及びSDを示す。
【0276】
Raji細胞では、アナフィラトキシンの産生は、検査された抗CD20モノクローナル抗体間で同様だった。Daudi細胞では、アナフィラトキシンの高い産生が、2C6 IgG1,κ及びリツキシマブで観察された。2C6
IgG1,κ及びリツキシマブ間の違いは大きくなかった。
【0277】
実施例9 2C6 IgG1,κのADCC
51Cr-標識標的細胞の調製: Raji細胞を、10%ウシ胎児血清及びpen/strep (RPMI++)を含有するRPMI中に採集し(5×106個の細胞)、遠心して沈降させ(1500 rpm; 5 分間)、140μl 51Cr (クロム-51; 140μlは約100μCiである) 中に再懸濁させ、インキュベートした(37℃の水槽、1時間)。細胞を洗浄(1500 rpm、5分間、PBS中、3回)した後、細胞をRPMI++ 中に再懸濁させ、トリパン・ブルー排除法により計数した。細胞を 1×105個の細胞/mlの濃度にした。
【0278】
エフェクタ細胞の調製: 新鮮な末梢血単核細胞
(PBMC) を、ヘパリン抗凝固血液から Ficoll(Bio Whittaker社;リンパ球分離培地、カタログ17-829E) によりメーカの指示を用いて単離した。細胞をRPMI++中に再懸濁させた後、細胞をトリパン・ブルー排除法により計数し、濃度1×106個の細胞/mlに調節した。
【0279】
ADCCの準備: 50μlのRPMI++ を96ウェル・プレートにピペットで入れ、50μlの51Cr-標識標的細胞を添加した。その後、50μlの抗体を添加し、RPMI++
(最終濃度10、1、0.1μg/ml)に希釈した。細胞を(室温で10分間)インキュベートし、50μlのエフェクタ細胞を添加して、エフェクタ対標的比を100:1(最大の溶解の判定には、50μlの5% Triton-X-100 をエフェクタ細胞の代わりに添加した。細胞を遠心で沈降させ(500rpm、5分間)、インキュベート(37℃、5% CO2、4時間)した。この細胞を遠心(1500 rpm、5分間)させた後、100μlの上清をマイクロ試験管に採集し、ガンマ・カウンタで計数した。特異的溶解率を以下のように計算した:
%特異的溶解=(cpm試料−cpm標的細胞のみ)/(cpm最大溶解−cpm標的細胞のみ)×100
【0280】
Raji細胞の抗体濃度依存的溶解: Rajiを標的細胞として用いた場合、2C6
IgG1,κは、Raji細胞の末梢血単核細胞(PBMC)媒介性溶解(2C6 IgG1,κで達する最大の溶解はほぼ63%だった)を、2F2 及びリツキシマブと同様なレベルで誘導した。図8を参照されたい。自発的な溶解はほぼ20%だった。アイソタイプ・コントロール抗体(抗KLH)を添加してもADCCは誘導されなかった。PBMCがないと何ら特異的溶解は観察されなかった(データは図示せず)。
【0281】
実施例10 12C6
IgG1,κによるバーキット細胞株のアポトーシス
アポトーシス: Daudi 又はRaji 細胞を0.5×106個、 1 ml の組織培養培地の入れたものを24ウェル平底プレートに1又は10μg/mlの2C6 IgG1,κ又はコントロール抗体、抗CD20
抗体 B1、アイソタイプ・コントロール抗体 抗KLHと一緒に、又は抗体なしで配置し、37℃でインキュベートした。20時間後、細胞を採集し、アネキシン-V-FITC 結合緩衝液(BD
biosciences社)で洗浄し、アネキシンV-FITC (BD
biosciences社) で15分間、暗室内で4℃で標識した。分析まで細胞を4℃に維持した。各試料(150μl)を、FACS試験管に入れた10μlのPI溶液(10μg/mlのPBS溶液)に添加した。直ぐに、この混合液を、FACScalibur フローサイトメータをCellQuest
プロ・ソフトウェア (BD Biosciences社、カリフォルニア州マウンテンビュー)と一緒に用いたフローサイトメトリで評価した。少なくとも10,000回の事象を分析用に採集した。
【0282】
図9に示すデータは、2つの実験の平均を示す。2C6は、両方の細胞株でアポトーシス誘導の兆候を何ら示さず、アイソタイプ・コントロール抗体と同様だった、予測通り、基準抗体B1は、両方のB細胞株でアポトーシス(30−40%)を誘導した。
【0283】
実施例11 2C6 IgG1,κによる細胞の同型接着
同型接着はアポトーシスの誘導と相関する。従って、抗CD20モノクローナル抗体のB細胞同型接着誘導能を調べた。
【0284】
Daudi 細胞及びRaji 細胞の同型接着: Daudi 又はRaji 細胞を、24ウェル平底プレートに、1又は10μg/ml 抗CD20モノクローナル抗体 又はコントロール抗体 (抗KLH)と一緒に配置し、37℃で4時間、インキュベートした。同型接着の程度を光学顕微鏡で判定した。図10に見られるように、2C6 IgG1,κは、1.0μg/mlでも(そして10μg/mlでも、データは図示せず)Daudi(図10A)又はRaji (図10B)細胞の同型接着をあまり誘導しなかった。リツキシマブはDaudi 及びRaji 細胞の同型接着をいくらか、生じさせた。対照的に、11B8 は同型接着の強力な誘導物質だった。
【0285】
実施例12 部位指定変異誘発法を用いたエピトープ・マッピング
変異誘発法を用いたエピトープ・マッピング研究から、第二細胞外ループの位置170のアラニン(A170)及び位置172のプロリン(P172)が、既知の抗CD20抗体によるヒトCD20の認識にとって重要であることが示されている。Deans 及び共同研究者 (M.J. Polyak, et al., (2002) Blood
99(9): pp 3256-3262) による研究では、検査された全ての抗CD20モノクローナル抗体の結合が、A170
及びP172 を対応するマウスCD20残基のS170 及びS172に変えると損なわれた。A170xP172 のモチーフも、本発明による当該抗体の結合にとって重要であるのかを確認するために、このAxP配列を部位指定変異誘発を用いてSxSに変異させ(AxP 変異体= A170S、P172S)、細胞にこのAxP 変異型及び野生型 (WT) CD20 DNAをトランスフェクトし、抗CD20 モノクローナル抗体の結合特性を比較した。
【0286】
変異したアミノ酸残基が本発明の抗体の結合にとって重要であるかどうかを評価するために、P172S (位置172のプロリンをセリンに変異させたもの)、N166D (位置166のアスパラギンをアスパラギン酸に変異させたもの)及びN163D(位置163のアスパラギンをアスパラギン酸に変異させたもの)という更なる変異型を部位指定変異誘発法を用いて調製した。
【0287】
これを調べるために、制限部位と、最適な発現のために理想的なコザック配列とを導入する、適したプライマを用いてCD20コーディング配列を増幅することにより、CD20発現ベクタを構築した。増幅された断片を消化し、発現ベクタ pEE13.4 (英国、スロー、ロンザ)中にライゲートした。E. coliでの形質転換後、インサートについてコロニーを選抜し、2つのクローンを配列決定に選び出して、正確な配列を確認した。このコンストラクトをpEE13.4CD20HSと命名した。
【0288】
ヒトCD20の細胞外ループ領域にAxP 変異を導入し、そして20箇所のマウス変異を導入するために変異誘発法を行った。変異誘発は、制限酵素消化及び配列決定によりチェックされた。このコンストラクトをCHO 細胞(AxP 変異に)又はHEK293F 細胞に一過性にトランスフェクトし、トランスフェクトから24又は48時間後にフローサイトメトリを用いて分析した。
【0289】
オリゴヌクレオチドPCRプライマ: オリゴヌクレオチド・プライマを合成し、Isogen BV (オランダ、マールセン)で定量した。プライマは、水中で100 pmol/μl の濃度に再構築され、必要になるまで−20℃で保存された。PCR用及び配列決定用プライマの要約を表2に示す。
【0290】
核酸の光学密度判定: 光学密度をUltrospec
2100 pro Classic (Amersham
Biosciences社、スウェーデン、ウプサラ)をメーカの指示に従って用いて判定した。1単位のOD260nm=50μg/mlとしたときのOD260nmの分析によりDNA濃度を測定した。基準溶液は、核酸を溶解させるために用いた溶液と同一だった。
【0291】
E. coli 培養株からのプラスミドDNAの単離: プラスミドDNAをE. coli 培養株からQiagen 社のキットをこのメーカの指示に従って用いて単離した(Westburg BV、オランダ、ロイスデン)。「バルク」のプラスミド調製には、Hi-Speed プラスミドMaxi キット又はHi-Speed プラスミドMidi キットを用いた(Qiagen社)。小規模のプラスミド調製(即ち2 ml の E. coli 培養株)には、Qiaprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社) を用い、 DNA は 50μlのTE(Tris-HCl 10 mM pH 8.0、EDTA 1 mM)に溶出させた。
【0292】
PCR増幅: PCR反応を、Pfu-Turbo(コピーライト) Hotstart DNA ポリメラーゼ(Stratagene社、オランダ、アムステルダム)に関するメーカの指示に従って行った。各20μlの反応液は、1倍のPCR 反応緩衝液、200μMの混合dNTP、6.7 pmol の各正方向及び逆方向プライマ、ほぼ1 ngのテンプレートDNA及び1単位のPfu-Turbo(コピーライト)
Hotstart DNA ポリメラーゼを含有していた。PCR反応は、T-勾配Thermocycler 96 (Biometra GmbH社、ドイツ、ゲッチンゲン) で:+95℃を2分間を30サイクルというプログラム、続いて+95℃を30秒間、アニール:45−65℃の勾配を30秒間及び伸長+72℃を2分間を30サイクルを用いて行われ、その後、72℃で10分間の最後の伸長ステップを行った後、4℃で保存した。完了後の反応液を、アガロース・ゲル電気泳動法で分析した。
【0293】
アガロース・ゲル電気泳動法: アガロース・ゲル電気泳動法をSambrook (Molecular Cloning Laboratory
Manual, 第3版) に従って1 x Tris/酢酸/EDTA (TAE) 緩衝液の50mlのゲルを用いて行った。ゲルに臭化エチジウムを含有させてDNAを可視化し、紫外光下で観察した。ゲル画像をCCDカメラ及び画像分析システム(GeneGnome; Syngene、英国、ケンブリッジ)で記録した。
【0294】
制限酵素消化: 制限酵素はニューイングランド・バイオラブズ(マサチューセッツ州ビバリー) から提供され、提供業者の推奨に従って用いられた。概略的には、100 ng を、5単位の酵素を、最終体積10μlになるように溶かした、適した緩衝液溶液で消化した。反応体積は適宜、基準化された。消化物を、最小60分間、メーカの推奨温度でインキュベートした。
【0295】
緩衝液又は温度要件が適合しない制限酵素による二重消化を必要とする断片の場合、消化は、各酵素にとって好ましい条件が順に提供されるように、順次、行われた。
【0296】
アルカリホスファターゼ処理: Shrimp アルカリホスファターゼ(USB社、オハイオ州クリーブランド)をこの提供業者の推奨に従って用いた。アルカリホスファターゼは、DNA断片の末端の5’-リン酸基を取り除くことで自己ライゲーションを防ぐ。これは、DNA断片の自己再ライゲーションの結果、複製コンピテントなベクタができるかも知れない場合に特に重要である。この酵素は大半の制限酵素緩衝液中で活性であり、適宜、添加された。消化後、温度を70℃まで15分間、上げることにより、この酵素を失活させた。
【0297】
PCR産物及び制限酵素反応産物の精製: 精製は、ミニ-エルートPCR Purification キット(Qiagen社提供)をこのメーカの指示に従って用いて行われた。簡単に説明すると、DNA 試料を5容の結合緩衝液 I (Qiagen社) に希釈し、エッペンドルフ遠心分離管にいれてミニ-エルート・カラムに充填した。この集成体をベンチ・トップマイクロ遠心分離機で遠心分離した。このカラムを緩衝液II (Qiagen社)で二回、洗浄した。緩衝液を施した後、該集成体を遠心分離し、フロー-スルーを廃棄した。緩衝液を追加せずに遠心分離してこのカラムを乾燥させた。溶出緩衝液をカラムに追加してDNAを溶出させ、その溶出物を遠心分離により採集した。単離されたDNAを紫外光分光法で定量し、その性質をアガロース・ゲル電気泳動法で評価した。
【0298】
アガロース・ゲルからのDNA断片の単離: 適当な場合(即ち、多数の断片が存在する場合)、消化後のDNA試料をゲル電気泳動法で分離し、所望の断片をゲルから切り出し、QIAEX II ゲル抽出キット(Qiagen社)をこのマーカの指示に従って用いて回収した。簡単に説明すると、DNA バンドをアガロース・ゲルから切り出し、+55℃の適した緩衝液に溶融させた。QIAEX II レジンを添加し、5分間、インキュベートした。短時間の遠心分離ステップ(1分間、14000g、室温)でQIAEX II レジンをペレットにし、500μlの洗浄緩衝液PEで2回、洗浄した。最後のペレットをフード内で乾燥させ、DNAを適量のTE及び温度(DNAのサイズに応じて)で溶出させた。
【0299】
DNA断片のライゲーション: Quick Ligation Kit (New
England Biolabs社) をこのメーカの指示に従って用いてライゲーションを行った。各ライゲーションには、DNAの合計量が10μl中200ng未満になるように、適宜水で量を調節しながら、ベクタDNAをほぼ3倍モル過剰のインサートDNAと混合した。これに10μlの2 x Quick Ligation Buffer 及び1μlのQuick T4 DNA リガーゼを加え、そのライゲーション・ミックスを5乃至30分間、室温でインキュベートした。
【0300】
DNAの細菌中への形質転換: DNAの試料を用いて、ワン・ショットDH5α-T1R コンピテントE. coli 細胞(Invitrogen社、オランダ、ブレダ)をこのメーカの指示に従って熱ショック法を用いて形質転換した。簡単に説明すると、1-5μlのDNA 溶液(典型的には2μlのDNAライゲーション・ミックス)を一アリクォートの 形質転換コンピテント細菌細胞に添加し、この混合液を氷上で30分間、インキュベートした。次にこの細胞を42℃の水槽に30秒間、移して熱ショックした後、更に氷上で5分間、インキュベートした。細胞を残して、非選択的培地(SOC)で1時間、37℃で攪拌しながらインキュベートすることにより回収し、その後、適した選択剤(50μg/mlのアンピシリン)を含有する寒天プレートに拡げた。プレートを16乃至18時間、+37℃で、あるいは、細菌コロニが見えるようになるまで、インキュベートした。
【0301】
PCRによる細菌コロニのスクリーニング: 所望の配列を含有するベクタの存在について、PCRコロニ・スクリーニング技術を用いて細菌コロニをスクリーニングした。0.5 容のHotStarTaq Master Mix (Qiagen社)、4 pmol の正方向及び逆方向プライマを含有し、水で完成させた20μlのPCR反応混合液をPCR管に添加した。コロニの一つは、培養試験管に入れた2mlのLB中で(対応するプラスミドを含有する細菌を成長させるため)触れられたが、20μlのピペット先端で、軽く触れ、20μlのPCRミックスに再懸濁させた。PCRをT-勾配Thermocycler 96 (Biometra社) で、+95℃を15分間、続いて+94℃で30秒間、アニール:55℃で30秒間、及び伸長:+72℃で2分間を、35サイクル・プログラム、用いて行い、72℃での10分間という最後の伸長ステップの後、4℃で保存した。完了後の反応液をアガロース・ゲル電気泳動法で分析した。コロニPCRに用いたプライマ・ペアの詳細については表2を参照されたい。
【0302】
DNA配列決定: プラスミドDNA試料を、配列解析のためにAGOWA (ドイツ、ベルリン)に送付した。配列は VectorNTI ソフトウェア・パッケージ (Informax社、米国メリーランド州フレデリック)を用いて解析された。
【0303】
【表5】

【0304】
変異誘発: QuikChange(登録商標) XL Site-Directed
Mutagenesis キット(カタログ 200517-5、ロット 1120630、 Stratagene Europe社)をこのメーカの指示に従って用いて変異誘発を行った。
【0305】
変異誘発反応液をエタノール沈殿法を用いて濃縮し、ワンショットDH5α-T1R コンピテントE. coli 細胞中に形質転換するか、ElectroTen-Blue(登録商標)Electroporation-Competent
Cellsに電気穿孔法注入した。トランスフェクション前にコロニをコロニPCR又は制限消化でチェックした。
【0306】
HEK293F 細胞のトランスフェクション: HEK293F細胞をInvitrogen 社から得、メーカの指示に従って、293fectinを用いてトランスフェクトした。このHEK293F 細胞を、全ての単一変異配列に用いた。
【0307】
抗CD20抗体の結合: HEK293F細胞及びCHO 細胞をPBS 中に2×106個/mlの濃度になるように採り、丸底プレートに加えた(1×105個/ウェル)。次に、50μlの抗CD20モノクローナル抗体を、1ウェル当り10、5、2.5、又は0μgの連続希釈液にして加えた(4℃、30分間)。FACS 緩衝液(0.1% BSA 及び0.002% NaN3を補ったPBS)で洗浄した後、細胞をフローサイトメータ(Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州、サン・ディエゴ)で分析し、一試料当り5000回の事象を高流速で獲得した。図11のデータは、たんぱく質、対、蛍光の比で補正してある。
【0308】
図11A−Eに見られるように、2C6 IgG1,κ及び基準抗体リツキシマブの両者とも、WT CD20を発現するCHO細胞に効率的に結合した。予想通り、リツキシマブは AxP 変異型にも、P172S 変異型にも結合しなかった(図11B及びC)。対照的に、2C6 IgG1,κは、WT CD20にも、AxP 変異型CD20 にも、そしてP172S 変異型CD20にも等しく良好に結合した。
【0309】
位置163のアスパラギンがアスパラギン酸に置換してある(N163D)CD20変異型の場合、リツキシマブはCD20N163Dに結合することができたが、他方、2C6 IgG1,κは大変低い結合しか、示さなかった。図11Dを参照されたい。
【0310】
位置166のアスパラギンがアスパラギン酸に置換してある(N166D)変異型でも、やはり2C6 IgG1,κは大変低い結合しか示さなかったが、他方、リツキシマブは結合することができた。図11Eを参照されたい。
【0311】
これらの実験は、2C6 IgG1,κ及びリツキシマブは異なるエピトープに結合することを示すものである。更に、この研究は、2C6 IgG1,κのヒトCD20への結合は位置163及び166での変異には感受性があるが、位置170及び172での変異には感受性がないことを示している。従って2C6 IgG1,κは、新規なCD20エピトープを認識する新しいクラスの抗CD20 モノクローナル抗体に属するのである。
【0312】
実施例13 免疫沈降及びウェスタン・ブロット法
Raji 細胞を、プロテアーゼ阻害剤 (1μg/ml アプロチニン、1μg/ml ロイペプチン、1 mM NaMoO4、1 mM NaVO4、1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、及び 1 mM EDTA) と、 1% Triton X-100 (Tx-100) 又は1% ジギトニンのいずれかとを含有する溶解緩衝液中で15分間、氷上で溶解させた。ライセートを抗体 (2C6 IgG1,κ、及び基準抗体リツキシマブ、2F2、及び7D8、並びにアイソタイプ・コントロール抗KLH 抗体) と密に(回転させながら)一緒に一晩、インキュベートした後、プロテイン−G セファロースを加え(ビーズ及び溶解緩衝液の1:1混合液から採ったほぼ30μl)、この混合液を1乃至2時間、4℃でインキュベートした。ビーズを溶解緩衝液で洗浄し、沈殿したたんぱく質を非還元性SDS試料緩衝液で溶出させ、SDS-PAGE(4-15% Criterion ゲル、Biorad社)で分離し、PVDF メンブレン(Biorad社)に移した。このメンブレンを、抗CD20 抗体 (7D1、Serotec社)でプローブした1% トップブロック(Biorad社)で遮断し、当該結合抗体をHRP-結合ウサギ抗マウス抗体
(Amersham社)で検出した。たんぱく質は、CDCイメージャ(Westburg社)に記録された強調化学発光
(Pierce社、イリノイ州ロックフォード) を用いて可視化された。
【0313】
図12は、Tx-100ライセート及びジギトニン・ライセートの両方でリツキシマブがCD20を効率的に沈殿させたことを示しており、それが、両方の条件で損なわれずに残っているエピトープに結合することを示唆している。対照的に、2F2、7D8 及び2C6 IgG1,κは、ジギトニン・ライセートからのみ、CD20を沈殿させたことから、これらのヒト抗体のエピトープには、多量体型のCD20の構造上の一体性が必要であることが示唆された。
【0314】
7D8は、WO 2004/035607で更に開示されたヒトモノクローナル抗CD20抗体である。
【0315】
実施例14 Pepscan法を用いたエピトープ・マッピング
ペプチドの合成及びpepscanスクリーニング: 重複する主に15量体の合成ペプチドを合成し、クレジット・カード・フォーマット・ミニ-PEPSCAN カード(3μlウェルを持つ455ウェルプレート)を Slootstra et al., (1996) Structural aspects of
antibody-antigen interaction revealed through small random peptide libraries. Mol-Divers. 1:87-96に解説された通りに用いてスクリーニングした。抗体 (2C6 IgG1,κ及びリツキシマブ) の各ペプチドへの結合をPEPSCAN-ベースの酵素結合免疫検定法(ELISA)で検査した。共有結合させたペプチドを含有する455ウェルのクレジット・カード・フォーマットのポリプロピレン・カードを試料(例えば、5% ウマ血清 (体積/体積) 及び5% オブアルブミン (重量/体積)及び1% Tweenを含有するPBS溶液に、あるいは、2F2の場合、4% ウマ血清 (体積/体積) 及び1% Tween
80 を添加したPBS溶液に、1/1000に希釈した10μg/mlの抗体又は血清)と一緒にインキュベートした(4℃、一晩)。洗浄後、このペプチドを 抗-抗体ペルオキシダーゼ(希釈度
1/1000、例えばウサギ抗マウスペルオキシダーゼ、Dako社)、(1時間、25℃)と一緒にインキュベートし、その後、このペルオキシダーゼを洗浄した後、基質 2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS) 及び2μl/mlの 3% H2O2 を加えた。1時間後に発色を測定した。ELISAの発色はCCD-カメラ及び画像処理システムで定量された。この装置は、CCD-カメラ及び55 mm レンズ (Sony CCD Video Camara XC-77RR、Nikon マイクロ-nikkor
55 mm f/2.8 レンズ)、カメラ・アダプター
(Sony Camara adaptor DC-77RR) 及びImage Processing Software パッケージOptimas、バージョン6.5
(Media Cybernetics社、米国20910メリーランド州シルバースプリング)から成るものである。Optimas はペンチアム・コンピュータ・システムで作動する。
【0316】
・合成されるペプチド:
・グループ-1: 一組の505種の異なる15量体単一ドメインループ・ペプチド
ペプチドLMIPAGIYAPIAVTV、KISHFLKMESLNFIR、KMESLNFIRAHTPYI、MESLNFIRAHTPYIN、YINIYNAEPANPSEK、YNAEPANPSEKNSPS、NAEPANPSEKNSPST、EPANPSEKNSPSTQY、PANPSEKNSPSTQYA、NPSEKNSPSTQYAYS、SEKNSPSTQYAYSIQの、例えば CXXXXCXXXXXXXXX、XXXCXXXXCXXXXXX
又は
CXXXXXXXXXXXXXC等、スペーシングが4乃至13のすべての15量体ペプチドを合成した。
【0317】
・グループ-2: 一組の400種の異なる直線状2ドメイン15量体ペプチド
以下の20個の配列 NFIRAHT、FIRAHTP、IRAHTPY, RAHTPYI、HFLKMES、FLKMESL、LKMESLN、KMESLNF、MESLNFI、EPANPSE、PANPSEK、ANPSEKN、NPSEKNS、PSEKNSP、SEKNSPS、EKNSPST、KNSPSTQ、NSPSTQY、PAGIAYP、AGIYAPI を持つXXXXXXXGXXXXXXX の全ての400通りの組み合わせを合成した。
【0318】
エピトープの表現方法: Pepscanデータを分析して、CD20配列中のアミノ酸のそれぞれの寄与度の表現を得るために、905種のペプチドで得られた全てのデータを考慮に入れ、コンホメーション上のエピトープに対するアミノ酸寄与度の特定を斟酌しながら、新規なエピトープ分析法を考案した。各ペプチドで、考えられる全てのトリペプチド・モチーフ、即ち、最小の非反復単位、を決定した。例えば当該ペプチドがABCDEである場合、全トリペプチド・モチーフには、ABC、BCD、CDE、ABXD、ABXXE、AXCD、AXXDE、AXCXE、がある。次に、これらのトリペプチド・モチーフのそれぞれに、ペプチド全体のELISA値を与えた。この手法は、905種のペプチドのすべてのトリペプチド・モチーフすべてに採られた。次に、結合が強いから弱いまででこれらのトリペプチド・モチーフを序列化できるように、各個々のモチーフについて得られるELISA値を、検査された905種のすべての検査された15量体の平均ELISA値で除算することにより、相対的シグナルを計算し、数値が小さくなるに従って分類した。
【0319】
検査された抗体のそれぞれについて、得点が2.5を超えたすべてのトリペプチド・モチーフ(ほぼ上位500位までのモチーフ)を選抜した。このことは、これらのモチーフを含有するペプチドのELISA値が、全905ペプチドで得られる平均ELISA値の少なくとも2.5倍であったことを意味する。2C6 IgG1,κの場合、この得点は、2.50よりも小さく、従ってカットオフ値は1.50と選択された。最後に、これらのデータを、採点システムにより逆重畳積分して、直線状のCD20配列上で表された一個のアミノ酸寄与度にした。この直線状CD20配列上をたどっていき、非反復トリペプチド単位を基準点として用いることにより、この組の高得点ペプチドにCD20アミノ酸が存在するたびに、一点を与えた。グラフは、一個のアミノ酸のそれぞれについて得られた、検査された抗体のそれぞれについて表された合計点を示す。例えば、リツキシマブで最も高得点の残基はP172 (500種の高得点トリペプチド・モチーフのうちの約125種がこのP172を含有する)。
【0320】
その結果を図14に示す。図14は、リツキシマブとは対照的に、2C6 IgG1,κは、A170/P172からN末端側にあるペプチドに結合し、また2つの細胞外CD20ループ(AGIYAPI)のうちの小さい方由来のペプチドにも結合することを示す。2C6 IgG1,κの大変弱い結合がC A170/P172のC末端側で観察された。
【0321】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説された本発明の具体的な実施例の均等物を数多く、認識され、又は確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと意図されている。従属請求項に開示された実施態様のいかなる組み合わせも、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0322】
引用による援用
ここで引用された全ての特許、係属中特許出願及び他の公開文献の全文を、引用をもってここに援用することとする。

【図面の簡単な説明】
【0323】
【図1】図1A及び1Bは、2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブ(キメラ抗CD20 抗体、IDEC)、2F2 (ここで、そしてWO 2004/035607で更に開示された)ヒト組換えモノクローナルIgG1,κ抗CD20 抗体 及び11B8 (ここで、そしてWO2004/035607で更に開示された)ヒト組換えモノクローナルIgG1,κ抗CD20 抗体の、Daudi 細胞(図1A)又はRaji 細胞(図1B)への結合をフローサイトメトリを用いて示す。
【図2】図2は、2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブ及び2F2の、Daudi 細胞への結合を示す。
【図3】図3は、2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブの、Raji細胞における経時的な解離速度を示す。
【図4】図4は、2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブの、Daudi細胞における経時的な解離速度を示す。
【図5】図5A及び5Bは、フローサイトメトリを用いた、2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブ、2F2、11B8、及びヒトモノクローナルアイソタイプコントロール抗体 (抗KLH)による、Daudi 細胞(図5A)又はRaji細胞(図5B)のCDC(補体依存的細胞障害性)の抗体濃度依存的誘導を示す。
【図6】図6は、様々な時点での 2C6 IgG1,κ、そしてここで比較としてリツキシマブのDaudi 細胞からの解離(図6A及び6B)と、これらの時点におけるNHS存在下で抗体のCDC誘導能(図6C及び6D)を示す。
【図7】図7は、NHS存在下における2C6IgG1,κによる、そしてここで比較としてリツキシマブによる、Raji細胞及びDaudi細胞標的を用いた補体活性化検定におけるアナフィラトキシン(C3a、C4a及びC5a)の産生を示す。
【図8】図8は、様々な濃度の2C6 IgG1,κによる、そしてここで比較としてリツキシマブ、2F2、及びアイソタイプ・コントロール抗体(抗KLH)による、末梢血単核細胞(PBMC)存在下での51Cr-標識Raji細胞の溶解を示す。
【図9】図9は、2C6 IgG1,κによる、そしてここで比較としてB1(131I-標識マウス抗ヒトCD20抗体である未標識型のBexxarTM、Coulter社)、アイソタイプ・コントロール抗体(抗KLH)による、そして抗体非存在下での、20時間インキュベート後のDaudi又はRaji細胞のアポトーシス誘導を示す。
【図10】図10A及び10Bは、2C6 IgG1,κによる、そしてここで比較としてリツキシマブ、11B8、及びアイソタイプ・コントロール抗体(抗KLH)による、Daudi細胞(図10A)又はRaji細胞(図10B9の光学顕微鏡法を用いた同型接着を示す。
【図11】図11A−11Eは、2C6 IgG1,κの、そしてここで比較としてリツキシマブの、野生型(WT)CD20(図11A)、変異型CD20 (AxP A170SxP172S) (図11B)、変異型 CD20 (P172S) (図11C)、変異型 CD20 (N163D) (図11D)、及び変異型CD20 (N166D) (図11E)への結合を示す。
【図12】図12は、免疫沈降検定における、 2C6 IgG1,κの、そしてここで比較としてリツキシマブ、2F2、7D8 (WO 2004/035607に更に開示された通りのヒトモノクローナル抗CD20抗体)の、 1%Triton-X (Tx-100) 又はジギトニンで溶解させたRaji細胞への結合を示す。
【図13】図13は、2C6 IgG1,κの、そしてここで比較としてリツキシマブの、Pepscan法を用いたエピトープ・マッピングの結果を示す。
【図14】図14は、VH 2C6、VLa2C6、VLb 2C6、及びVL 11B8 アミノ酸配列をそれらの生殖細胞系配列と整列させて示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD20に特異的に結合すると共に、重鎖可変領域がSEQ ID NO:10のVHCDR3を含む、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むヒトモノクローナル抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO:8のVHCDR1、SEQ ID NO:9のVHCDR2、及び SEQ ID NO:10のVHCDR3を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトCD20に特異的に結合すると共に、SEQ ID NO:2のVH領域、あるいは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVH領域、を含むヒトモノクローナル抗体。
【請求項4】
SEQ ID NO:16のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
SEQ ID NO:14のVLCDR1、SEQ ID NO:15のVLCDR2、及びSEQ ID NO:16のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
SEQ ID NO:5のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
SEQ ID NO:13のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
SEQ ID NO:11のVLCDR1、SEQ ID NO:12のVLCDR2、及びSEQ ID NO:13のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
SEQ ID NO:4のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項10】
SEQ ID NO:19のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項11】
SEQ ID NO:17のVLCDR1、SEQ ID NO:18のVLCDR2、及びSEQ ID NO:19のVLCDR3を含む、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
SEQ ID NO:7のVL領域、あるいは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列に少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%相同、又は少なくとも99%相同なVL領域、を含む、上記請求項1乃至3に記載の抗体。
【請求項13】
IgG1又はIgM抗体であることを特徴とする、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項14】
IgG1,κ又はIgM,κ抗体であることを特徴とする、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項15】
可変重鎖ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1及び可変軽鎖ヌクレオチド配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO:6、あるいはこれらの保存的配列改変を含む、ヒト重鎖核酸及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項16】
抗体フラグメント又は一本鎖抗体である、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項17】
(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した、請求項3に規定された通りの重鎖可変領域、又は請求項6、9又は12に規定された通りの軽鎖可変領域、の形の結合ドメインポリペプチド、(ii)前記ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)前記CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合たんぱく質である、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項18】

ヒトCD20に特異的に結合すると共に、ヒト生殖系配列VH3-20を由来とする重鎖可変領域と、ヒト生殖系配列VκIII-L6又はVκI-L15を由来とする軽鎖可変領域とを含む、単離されたヒト抗体。
【請求項19】
位置163又は166で変異したCD20変異型には結合しない、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項20】
CD20上の不連続なエピトープに結合するが、この場合、前記エピトープは、第一の小型細胞外ループの部分と、第二の細胞外ループの部分とを有する、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項21】
SEQ ID NO:1に記載された通りのヌクレオチド配列をそれらの可変重鎖領域に、そしてSEQ ID NO:3 又は SEQ ID NO:6に記載された通りのヌクレオチド配列をそれぞれ可変軽鎖領域に、あるいはこれらの保存的配列改変を、含むヒト重鎖及びヒト軽鎖核酸にコードされた、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項22】
SEQ ID NO:2に記載された通りのヒト重鎖可変アミノ酸配列、及びそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、又はSEQ ID NO:7に記載された通りのヒト軽鎖可変アミノ酸配列、あるいはこれらの保存的配列改変、を含むヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項23】
SEQ ID NO:1に記載された通りのヒト重鎖可変核酸、及びSEQ ID NO:3 又はSEQ ID NO:6に記載された通りのヒト軽鎖核酸、あるいはこれらの保存的配列改変、にコードされた、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマ。
【請求項24】
SEQ ID NO:2に記載された通りのヒト重鎖可変アミノ酸配列、及びそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、又は SEQ ID NO:7に記載された通りのヒト軽鎖可変アミノ配列、あるいはこれらの保存的配列改変、を含むヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する、CD20に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマ。
【請求項25】
上記の請求項のいずれかに基づく、あるいはこれらの保存的配列改変に基づく、ヒトモノクローナル抗体を産生する真核性もしくは原核性ホスト細胞。
【請求項26】
請求項1乃至20のいずれかに記載されたヒトモノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項27】
一つ以上の更なる治療薬を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
放射性同位元素を付着させるためのキレータ・リンカを更に含む、請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体。
【請求項29】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体を、細胞毒性物質、放射性同位元素、又は薬物に連結させて含む免疫複合体。
【請求項30】
免疫複合体は、請求項1乃至20のいずれかに記載の単量体IgM抗体を細胞毒性物質、放射性同位元素、又は薬物に連結させて含む、請求項28に記載の免疫複合体。
【請求項31】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体と、ヒトエフェクタ細胞に対する結合特異性部分とを含む二重特異的分子。
【請求項32】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体と、ヒトFc受容体に対する結合特異性部分、又は、CD3などのT細胞受容体に対する結合特異性部分、とを含む二重特異的分子。
【請求項33】
請求項1乃至20、26乃至32、又は52乃至55のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体、医薬組成物、免疫複合体、又は二重特異的分子、あるいは発現ベクタを、CD20発現細胞が関与する疾患又は異常を治療又は防止するために有効量、対象に投与するステップを含む、前記疾患又は異常を治療又は防止する方法。
【請求項34】
前記疾患又は異常がB細胞リンパ腫である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患又は異常がB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患又は異常が、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫及び成熟B細胞新生物、例えばB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞プロリンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、外套細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、皮膚濾胞中心リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫(MALT型、節型及び脾臓型)、ヘアリー細胞白血病、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキット・リンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ滲出性異常、ワルデンストローム大グロブリン血症、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、重鎖疾患(γ、μ、及びα疾患を含む)、シクロスポリン誘導性リンパ腫及びメトトレキセート誘導性リンパ腫などの免疫抑制剤で誘導されるリンパ腫、から成る群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患又は異常が濾胞性リンパ腫(FL)である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患又は異常がB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患又は異常が、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性硬化症、炎症性腸疾患 (IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、腎炎、湿疹、喘息、アテローム性硬化症、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年型糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体性腎炎、IgA ネフロパチー、IgM 多発性神経炎、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎(RA)、アトピー性皮膚炎、天疱瘡(尋常性天疱瘡を含む)、グレーブズ病、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性感染性単核細胞症、HIV、疱疹ウィルス関連疾患や、エプスタインーバー・ウィルス(EBV)など、B細胞のウィルス感染により引き起こされる又は媒介される疾患及び異常、から成る群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記疾患又は異常がリウマチ様関節炎(RA)である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記疾患又は異常が、炎症性腸症候群(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、若年性糖尿病、多発性硬化症、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、全身性硬化症、及び尋常性天疱瘡から成る群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患又は異常が、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び多発性硬化症から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
一種以上の更なる治療薬を対象に投与するステップを含む、請求項33乃至42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記一種以上の更なる治療薬が、化学療法薬、抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、及び免疫抑制剤から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記一種以上の更なる治療薬が、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アザチプリン、ゲムシタビン及びクラドリビン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、及びcis-ジクロロジアミンプラチナム (II)
(DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセル及びビノレルビン)
から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記治療薬が、ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル及びシクロホスファミドから成る群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記治療薬が、サイトカイン又はケモカインなどの免疫調節物質である。請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記治療薬が、抗CD25抗体、抗CD19抗体、抗CD21抗体、抗CD22抗体、抗CD37抗体、抗CD38抗体、抗IL6R 抗体、抗IL8 抗体、抗IL15 抗体、抗IL15R 抗体、抗CD4 抗体、抗CD11a 抗体、抗アルファ-4/ベータ-1 インテグリン (VLA4) 抗体、CTLA4-Ig、及び抗C3b(i) 抗体から成る群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
試料を、請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体に、前記抗体とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で接触させるステップと、
複合体の形成を検出するステップと
を含む、試料中のCD20抗原又はCD20発現細胞の存在を検出するin vitro法。
【請求項50】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体を含む試料中で、CD20抗原又はCD20発現細胞の存在を検出するキット。
【請求項51】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体を、前記抗体とCD20との間の複合体形成が可能な条件下で投与するステップと、
形成された複合体を検出するステップと
を含む、対象においてCD20抗原又はCD20発現細胞を検出するin vivo法。
【請求項52】
SEQ ID NO:1の重鎖ヌクレオチド配列、SEQ ID NO:3 又はSEQ ID NO:6の軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域、あるいは、SEQ ID NO:1の重鎖ヌクレオチド配列の可変領域とSEQ
ID NO:3 又はSEQ ID NO:6の軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域の両者、あるいはこれらの保存的改変、を含む発現ベクタ。
【請求項53】
ヒトCD20に結合するヒト抗体の軽鎖、重鎖又は軽鎖及び重鎖の両者、の定常領域をコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項52に記載の発現ベクタ。
【請求項54】
SEQ ID NO:2に記載された通りのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5 又はSEQ ID NO:7に記載された通りのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、あるいはこれらの保存的改変、を含む発現ベクタ。
【請求項55】
請求項52乃至54のいずれかに記載の発現ベクタと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項56】
請求項1乃至20のいずれかに記載の抗体に結合する抗イディオタイプ抗体。
【請求項57】
本発明は、2C6IgG1,κに結合する抗イディオタイプ抗体。
【請求項58】
試料中のCD20に対するヒトモノクローナル抗体のレベルを検出するための、請求項56又は57に記載の抗イディオタイプ抗体の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−508853(P2008−508853A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508729(P2007−508729)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000270
【国際公開番号】WO2005/103081
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506092156)
【氏名又は名称原語表記】GENMAB A/S
【住所又は居所原語表記】Toldbodgade 33 DK−1253 Copenhagen KDenmark
【Fターム(参考)】