説明

CGRPアンタゴニスト1−〔N2−〔3,5−ジブロモ−N−〔〔4−(3,4−ジヒドロ−2(1H)−オキソキナゾリン−3−イル)−1−ピペリジニル〕カルボニル〕−D−チロシル〕−L−リシル〕−4−(4−ピリジニル)−ピペラジンを含む新規吸入粉末製剤

本発明はCGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)、又はその医薬上許される塩を含む、肺又は鼻吸入のための粉末製剤、その製造方法並びに頭痛、片頭痛及び群発性頭痛の治療のための薬物の製造のためのその使用方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)又はその医薬上許される塩を含む、肺又は鼻吸入のための粉末製剤、それらの調製方法並びに頭痛、片頭痛及び群発性頭痛の治療のための医薬組成物を調製するためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)は国際特許出願PCT/EP97/04862(WO 98/11128として公開された)から知られており、下記の構造:
【0003】
【化1】

【0004】
を有する。
従来技術
活性物質塩基(A)は頭痛、特に片頭痛及び群発性頭痛の急の治療及び予防治療に高度に有効なCGRPアンタゴニストであり、これは通常の製剤を使用して経口投与し得ない。何とならば、その物質が非常に制限された経口生物学的利用能を有するからである。
片頭痛の急の発作を治療するために、活性物質ができるだけ迅速に全身利用し得ることが必須である。その治療は患者が投与するのに複雑であるべきではなく、生物学的利用能(例えば、食物効果)に影響し得るその他の条件が患者のための薬物の使用を制限すべきではない。
全身利用できることが意図されている活性物質は通常経口経路により投与される。この経路が活性物質の特別な性質又は適用についてなされる特別な要求のために不適であり、又は望ましくない場合、物質を全身投与する別の可能な方法が当業界で知られている。例えば、活性物質が全身だけでなく、局所に投与し得る、吸入が、或る時期に検討されていた。溶液中のそれらの分解のために重大と判明し、又はそれ自体で不十分な溶解性を有する物質について、粉末吸入が選択肢である。適用当り投与されるべきである活性物質の絶対量が製剤の特別な要求をつくる。一方で、活性物質の物理的安定性(例えば、空気力学的粒子サイズ、分散性、物理化学的性質)が吸入可能な粉末の開発及び製造に重要な要件であることが判明していた。
粉末吸入剤型の製剤では、吸入可能な粉末(これらは、例えば、好適なカプセル(インハレット)中に詰められる)が、粉末吸入器により肺に送出される。同様に、投与すべき粉末の量が予備投薬されるその他の系(例えば、ブリスター)及び多投薬粉末系がまた知られている。また、薬物はまた、例えば、噴射剤ガスとしてのHFA134a、HFA227又はこれらの混合物中に懸濁される好適な粉末吸入エアゾールの使用により吸入されてもよい。
粉末吸入では、純粋な活性物質の微粒子が吸入方法により、例えば、肺胞中の肺の表面に気道を通って投与される。これらの粒子は表面に沈降し、活性かつ受動的輸送プロセスにより溶解プロセス後に生体に吸収し得るにすぎない。
吸入系が文献で知られており、この場合、活性物質が担体としての好適な溶媒系中の微粉砕された懸濁液としての固体粒子の形態又は乾燥粉末の形態で存在する。通常、例えば、吸入のためのカプセルの形態の、粉末吸入剤はDE-A-1792207に記載されたような一般の教示に基づいて調製される。この種の多物質系の重要な因子は粉末混合物中の医薬組成物の一様な分布である。
【0005】
粉末吸入剤の別の問題は、活性物質が吸入により投与される場合に、或る空気力学的サイズの粒子のみが標的臓器、肺に達することである。これらの肺に結合される粒子(吸入フラクション)の平均サイズは数ミクロンの範囲、典型的には0.1〜10μm、好ましくは6μm未満である。このような粒子は通常微粉砕(空気ジェット粉砕)により製造される。
微粉砕された製剤及び特別な性質を有する賦形剤(担体物質)が使用される場合、製剤は活性物質を含む吸入粉末としての使用のみに好適であり、活性物質対賦形剤の比は特定範囲内にあり、特定量の粉末がその適用に利用できる。加えて、特別な気候条件が医薬組成物の製造中に固守される必要がある。
これらの基本的な技術要件に鑑みて、問題は活性物質塩基1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)及びその生理学上許される塩の特別な性質に従って解決策(それにより、物質が粉末吸入剤の形態で充分に全身で生物学的に利用できるようにされ得る)を提案することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はCGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン又はその生理学上許される塩の新規な、安定な製剤を提供することにあり、それにより経口で生物学的に利用できないこれらの物質についての適当な全身の血液レベルを生じることが可能である。同様に、本発明はまたこのような製剤の調製方法及び医薬組成物を調製するためのその使用を含む。
活性物質塩基1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)だけでなく、その生理学上許される塩は賦形剤との粉末混合物の形態で物理的に安定であり、肺又は鼻吸入により充分に生物学的に利用できるようにし得ることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
驚くことに、無定形形態で存在する、微粉砕された活性物質1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)、又はその生理学上許される塩は生理学上許される、均一な賦形剤との粉末混合物の製剤中で物理的に安定であると判明したことがわかった。ここに記載された粉末製剤は粉末が吸入中に分散されることを可能にし、活性物質がこの方法で服用されることにより全身投与に利用できるようにされる。 固体の無定形状態は熱力学的に不安定であることが知られている。特に、これは無定形部分を有し、又は純粋に無定形である微粒子がそれらの物理化学的性質において準安定であるという事実に寄与する。典型的には、無定形又は部分無定形の医薬活性物質及び賦形剤、例えば、糖は通常の条件下の貯蔵中に自然に再結晶化する。そのプロセスは相対湿度そしておそらく温度の上昇により加速されるかもしれない。この再結晶化と関連して、粒子がそれらの表面特性、それらの粒子形態及びそれらの粒子サイズを変化する。
驚くことに、それらから調製された無定形の微粉砕された粒子の形態の無定形活性物質1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)(X線結晶学/X線粉末回折により検出される)は安定な吸入粉末を調製するのに使用し得ることがわかった。活性物質の無定形形態は薬物の貯蔵寿命にわたって維持される。
本発明によれば、その活性物質塩基に加えて、例えば、1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩及びヒドロキシコハク酸塩の中から選ばれる酸付加塩が使用され、1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩、硫酸塩及び臭化水素酸塩が特に好ましく、1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩が特に最も好ましい。
【0008】
ここに記載される製剤は、本発明の高い活性物質含量を確実にするために、1μmから6μmまで、好ましくは1μmから3.5μmまでの範囲の粒子サイズX50、及び少なくとも60%(体積基準)のQ(5.8)<5.8μmの粒子の一部を有する微粉砕された活性物質1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)が、不活性賦形剤と1:9〜5:1の比で混合されるように設計される。
メジアン値X50は粒子の量の50%が入る粒子サイズを意味する。Q(5.8)値は5.8μm未満のサイズである粒子の%を記載する。
吸入粉末の分散性が夫々の吸入について充分に保証される投薬を調製するために、微粉砕された活性物質が上記比率で一層粗大な賦形剤(例えば、ラクトース)と合わされてもよいことがわかった。
この種の粉末製剤は吸入による適用当り、25mgから100mgまで、好ましくは50mgの量で投与される。使用中に、治療血液レベルを多投与により得ることがまた可能である。
こうして、第一局面において、本発明は活性物質としての活性物質塩基の形態のCGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)又はその生理学上許される塩及び不活性の、均一な賦形剤を含む、肺又は鼻吸入による投与のための吸入粉末であって、
(a) 活性物質の粒子サイズに関するパラメーターX50が1μmから6μmまで、好ましくは1μmから3.5μmまでの範囲であり、かつ
(b) 活性物質に関する特性値Q(5.8)が少なくとも60%であることを特徴とする吸入粉末に関する。
【0009】
通常の担体物質又は流動性アジュバントが本発明によれば生理学上許される均一な賦形剤として使用されてもよい。通常の担体物質は単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖及び多糖類(例えば、デキストラン、澱粉、セルロース誘導体)、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、ポリラクチド、ポリグリコリド及びこれらの賦形剤の混合物の中から選ばれてもよい。流動性アジュバントは、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ベヘン酸カルシウム、アラキドン酸カルシウム、水素化植物油、例えば、水素化ヒマシ油又は水素化綿実油、脂肪酸エステル、ナトリウムステアリルフマレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸マグネシウム及びこれらの流動性アジュバントの混合物からなる群から選ばれてもよい。
本発明の吸入粉末は、例えば、測定チャンバー(例えば、米国特許第4570630A号記載の)により溜めから単一用量を計量する吸入器を使用して、又はその他の装置(例えば、DE3625685A記載の)を使用して投与されてもよい。しかしながら、本発明の吸入粉末はカプセル(所謂インハレットを形成するための)に詰められることが好ましく、これらは、例えば、WO 94/28958に記載された吸入器中で使用される。
【0010】
本発明の吸入粉末は以下に記載される方法により得られてもよい。
活性物質塩基(A)だけでなく、その塩が吸湿性であるので、これらの物質を計量する場合には、特別な周囲条件が維持される必要がある。
活性物質の好適な微粉砕後に、それが特定の温度及び湿度で状態調節され、この方法では平衡が活性物質の含水量と環境の相対湿度の間で得られる。次いで状態調節された活性物質が一種以上の賦形剤と好適に混合され、投与すべき量の得られる粉末混合物がこれらの条件に従って得られた活性物質の含水量(修正された重量)を考慮して特定の気候条件(温度及び湿度)のもとに単一用量で詰められる。混合物がインハレットに詰められ、これらがこの目的に適した吸入器中でその後に使用される。次いで吸入粉末の調製に続いて、粉末充填カプセルが製造され、これらは好適な様式でそれらの最終パッケージング(ブリスターバック)に入れられるべきである。
こうして、第二局面において、本発明は
(a) 活性物質を微粉砕し、
(b) 微粉砕された活性物質を状態調節し、
(c) 本発明の一種以上の賦形剤と好適に混合し、そして
(d) 投与すべき量の得られる粉末混合物を特定の気候条件下で単一用量としてインハレットに詰めることを特徴とする、本発明の粉末吸入剤の調製方法に関する。
【0011】
本発明の粉末混合物は吸入されてもよく、粉末が予備計量された医薬製剤の形態で患者に与えられることが好ましい。この一例は吸入カプセル系である。また、粉末製剤が、例えば、ブリスターパック中のウェルに戻された単一投薬の形態で与えられる系が可能である。ここに記載された粉末製剤は好適な装置を使用して吸入され、こうして肺に送出されてもよい。
このような製剤から製造し得る物質を含む吸入粉末は活性物質塩基1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)又はその生理学上許される塩が肺への浸透に適したサイズの微粒子の形態であることを特徴とする粒子サイズを有する。同時に、この製剤の記載に従って得られてもよいような粉末混合物は、それらの凝集性に関して、加工するのに充分に容易であって、医薬組成物を再現性良く生成することがわかる。こうして、一方で、患者による吸入プロセスの経過中の粉末の分散中に、無定形活性物質が鼻又は肺吸入後に肺中の活性物質の沈降をもたらす空気力学的粒子サイズを有し、他方で、粉末(微粉砕された活性物質及び担体物質からなる)が機械による加工に適するように設計されるように、肺(そして必要により鼻)吸入における使用のための粉末製剤を設計することが可能である。肺中の鼻又は肺吸入による活性物質のこの投与(これはこの技術を使用して得られる)のために、活性物質が充分な全身の生物学的利用能を有する。
驚くことに、活性物質塩基1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)の微粉砕された製剤(これは、例えば、空気ジェット粉砕の如き既知の方法により調製されてもよい)は、粒子サイズに関する上記条件に加えて、それがまた製剤の不活性賦形剤の表面積に対する(A)の比表面積に関して特別な性質を有する場合にのみ好適であることがまたわかった。夫々の場合に適用当りに利用できる粉末の合計量を基準として、(A)の微粉砕された製剤の比表面積対不活性賦形剤の比表面積の商が、0.05より大きく、好ましくは0.1より大きく、特に好ましくは0.5より大きく、最も特に好ましくは0.7より大きく、かつ夫々の場合に22未満、好ましくは15未満である場合に製剤が特に好適であることがわかる。
空気ジェット粉砕された1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)の使用に加えて、別法により製造された、上記された粒子サイズで存在する(A)の微粉砕された製剤を使用することがまた好適である。それ故、このような製剤はまた、例えば、活性物質(A)又はその生理学上許される塩の微粉砕された製剤を使用して調製されてもよく、この噴霧微粉砕された製剤が単一成分系として、又は活性物質と一種以上の賦形剤からなるスプレー粒子の形態で得られるにもかかわらず、これらは噴霧乾燥により調製される。
【0012】
活性物質の粒子サイズ及び活性物質対賦形剤の比表面積の比に関する上記要件を満足する成分からなる粉末製剤は均一な粉末混合物を生成すると知られている方法により加工され、既知の方法によりカプセル又は予備投薬のためのその他の系に詰められる。しかしながら、このような製造工程は粉末の取扱が厳密な気候制御のもとに行なわれる場合にのみ成功する。成功裏の製造のために、最大温度差及び相対湿度が特別な製造工程中に変動すべきバンド幅が重要である。何とならば、本発明の活性物質が強く吸湿性であるからである。理想的には、温度は自由に選ばれる平均値の両側の±5℃、好ましくは±3℃以下だけ異なるべきであり、湿度は自由に選ばれる平均値の両側の±15%、好ましくは±10%以下だけ変動すべきである。計量される活性物質の量の調節(重量修正)は、活性物質の吸湿性に応じて、環境の相対湿度と活性物質の含水量の間の平衡を調節した後に行なわれるべきである。
第三局面において、本発明は特に頭痛、片頭痛又は群発性頭痛の治療のための医薬組成物を調製するための、医薬組成物としての本発明の吸入粉末の使用に関する。
第四局面において、本発明はカプセル(インハレット)を調製するための本発明の吸入粉末の使用に関する。このようなカプセル(インハレット)は2〜50mgの本発明の吸入粉末の含量を特徴とする。
【実施例】
【0013】
実験部分
1) 測定の方法
a) レーザー回折(フラウエンホッファー回折)による粒子サイズの測定
測定方法:粒子サイズを測定するために、分散ユニットを使用して粉末をレーザー回折分光光度計に供給する。メジアン値X50は粒子の量の50%が入る粒子サイズを表す。Q(5.8)値は5.8μm未満のサイズである粒子の%を記載する。
測定装置:シンパテック社製レーザー回折分光光度計(HELOS)
ソフトウェア:WINDOXバージョン3.3/REL 1
分散ユニット:RODOS/分散圧力:3バール
焦点距離:100mm〔測定範囲:0.9.....175μm〕
評価方法:HRLD (V 3.3 Rel. 1)
b) 比表面積の測定
測定方法:粉末サンプルを異なる圧力で窒素雰囲気に暴露することにより比表面積を測定する。サンプルの冷却が窒素分子を粒子の表面に凝縮させる。凝縮された窒素の量を系中の圧力の低下により測定し、サンプルの表面を表面窒素要求及びサンプルの重量により計算する。
測定装置:ミクロメリチクス社製トリ・スター・マルチ・ポイントBET
加熱ステーション:ミクロメリチクス社製VacPrep 061
加熱:約12時間/40℃
【0014】
分析パラメーター
サンプル管:1.27cm(1/2インチ);フィルターロッド付き
分析方法:10ポイントBET表面測定
0.1〜0.20 p/p0
絶対圧トレランス:6.67hPa(5.0 mm Hg)
相対圧トレランス:5.0%
排気速度:66.67hPa/秒(50.0 mm Hg/秒)
排気閾値:13.33hPa(10.0 mm Hg)
排気時間:0.1時間
自由空間:低デュワー、t:0.5時間
保持時間:20秒
最小平衡遅れ:600秒
吸着:窒素
【0015】
2) 例
a) 20.2m2/gの比表面積を有する(無水の)空気ジェット粉砕された活性物質50gを8時間にわたって25℃及び45%の相対湿度で状態調節し、比表面積0.96m2/gのファーマトース(登録商標)200M(ダノン製)450gと混合する(層毎に篩分け、ターブラミキサー)。出発物質の調製及び個々の成分の混合と同じ周囲条件下で、混合物を単一カプセルに移す。上記組成を有する粉末混合物20.12mgの充填はカプセル当りの微粉砕された活性物質(無水)含量2mgに相当する。
b) 20.2m2/gの比表面積を有する(無水の)空気ジェット粉砕された活性物質100gを8時間にわたって25℃及び45%の相対湿度で状態調節し、比表面積0.25m2/gのファーマトース(登録商標)325M(DMV製)200gと混合する(層毎に篩分け、ターブラミキサー)。出発物質の調製及び個々の成分の混合と同じ周囲条件下で、混合物を単一カプセルに移す。上記組成を有する粉末混合物48.96mgの充填はカプセル当りの微粉砕された活性物質(無水)含量16mgに相当する。
【0016】
c) 7.8m2/gの比表面積を有する(無水の)噴霧乾燥された活性物質200gを8時間にわたって25℃及び30%の相対湿度で状態調節し、比表面積0.75m2/gのラクトケム(登録商標)スーパー・ファイン・パウダー(ボークロ製)200gと混合する(層毎に篩分け、ターブラミキサー)。出発物質の調製及び個々の成分の混合と同じ周囲条件下で、混合物を単一カプセルに移す。上記組成を有する粉末混合物51mgの充填はカプセル当りの微粉砕された活性物質(無水)含量25mgに相当する。
d) 1.4m2/gの比表面積を有する(無水の)噴霧乾燥された活性物質400gを8時間にわたって25℃及び30%の相対湿度で状態調節し、比表面積0.96m2/gのファーマトース(登録商標)200M(ダノン製)100gと混合する(層毎に篩分け、ターブラミキサー)。出発物質の調製及び個々の成分の混合と同じ周囲条件下で、混合物を単一カプセルに移す。上記組成を有する粉末混合物51.6mgの充填はカプセル当りの微粉砕された活性物質(無水)含量40mgに相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質としてのCGRPアンタゴニスト1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン
【化1】

又はその生理学上許される塩及び不活性の、均一な賦形剤を含む、肺又は鼻吸入による投与のための吸入粉末であって、
(a) 活性物質の粒子サイズに関するパラメーターX50が1μmから6μmまで、好ましくは1μmから3.5μmまでの範囲であり、かつ
(b) 活性物質に関する特性値Q(5.8)が少なくとも60%であることを特徴とする吸入粉末。
【請求項2】
活性物質塩基1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)が無定形の微粉砕された製剤の形態で存在することを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項3】
生理学上許される塩が1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩及びヒドロキシコハク酸塩の中から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項4】
生理学上許される塩が1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩、硫酸塩及び臭化水素酸塩の中から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項5】
生理学上許される塩が1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン塩酸塩であり、かつ無定形の微粉砕された製剤として存在することを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項6】
使用される賦形剤が単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖類、ポリアルコール、塩、ポリラクチド、ポリグリコリド又はこれらの賦形剤の互いの混合物であることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項7】
使用される賦形剤がグルコース、アラビノース、ラクトース又はサッカロース、マルトース、トレハロース、デキストラン、澱粉、セルロース誘導体、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリラクチド、ポリグリコリド又はこれらの賦形剤の互いの混合物であることを特徴とする、請求項6記載の吸入粉末。
【請求項8】
流動性アジュバントが賦形剤として使用されることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項9】
使用される流動性アジュバントがステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ベヘン酸カルシウム、アラキドン酸カルシウム、水素化植物油、脂肪酸エステル、ナトリウムステアリルフマレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸マグネシウム又はこれらの流動性アジュバントの混合物であることを特徴とする、請求項8記載の吸入粉末。
【請求項10】
活性物質対賦形剤の比が1:9から5:1までであることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項11】
活性物質の比表面積対不活性賦形剤の比表面積の商が、夫々の場合に適用当りに利用できる粉末の合計量を基準として、0.05より大きく、好ましくは0.1より大きく、特に好ましくは0.5より大きく、最も特に好ましくは0.7より大きく、かつ22未満、好ましくは15未満であることを特徴とする、請求項1記載の吸入粉末。
【請求項12】
(a) 活性物質を微粉砕し、
(b) 微粉砕された活性物質を状態調節し、
(c) 本発明の一種以上の賦形剤と好適に混合し、そして
(d) 投与すべき量のこうして得られた粉末混合物を特定の周囲の気候条件下で単一用量でインハレットに詰めることを特徴とする、請求項1から11の1項記載の吸入粉末の調製方法。
【請求項13】
請求項12に従って得られる、請求項1から11のいずれか1項記載の吸入粉末。
【請求項14】
医薬組成物としての請求項1から11のいずれか1項又は請求項13記載の吸入粉末の使用。
【請求項15】
頭痛、片頭痛又は群発性頭痛の治療のための医薬組成物を調製するための請求項1から11のいずれか1項又は請求項13記載の吸入粉末の使用。
【請求項16】
カプセル(インハレット)を調製するための請求項1から11のいずれか1項又は請求項13記載の吸入粉末の使用。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか1項又は請求項13記載の吸入粉末2mg〜50mgの充填物を含むことを特徴とする、カプセル(インハレット)。
【請求項18】
1-〔N2-〔3,5-ジブロモ-N-〔〔4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル〕カルボニル〕-D-チロシル〕-L-リシル〕-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)2mg〜50mgを含むことを特徴とする、請求項17記載のカプセル(インハレット)。

【公表番号】特表2007−502791(P2007−502791A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523579(P2006−523579)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009017
【国際公開番号】WO2005/018604
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】