説明

CNTF遺伝子多型に基づく、精神病および統合失調症の処置方法

【課題】本発明は薬理学、医学および医薬品化学の分野に属し、統合失調症および関連状態を含む精神病性の状態を処置する方法を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、イロペリドンを含む抗精神病薬に対する患者応答を測定するためのゲノム解析の使用、および最適な処置方針を決定する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】a)個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aのヌクレオチド対の同一性を決定すること;(b)ヌクレオチド対の両方がGであるか、または両方がAであると、個体はイロペリドンで処置されることを含む、かかる処置が必要な患者の精神病性障害を処置する方法を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は薬理学、医学および医薬品化学の分野に属し、統合失調症および関連状態を含む精神病性の状態を処置する方法を提供する。具体的には、本発明は、イロペリドンを含む抗精神病薬に対する患者応答を測定するためのゲノム解析の使用、および最適な処置方針を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
毛様体神経栄養因子(CNTF)は、試験管内のニワトリ毛様体神経ニューロンの生存因子として知られていたが、最近になって、別の種類のニューロンの生存因子であると示された。CNTFは運動ニューロンの軸索の変性の予防と関係し、かつインターロイキン−6サイトカインファミリーのメンバーである。Barbinらは、ニワトリの胚毛様体神経節由来ニューロンの生存アッセイを用いて、ニワトリの眼由来のCNTFの神経栄養作用を報告している。Barbin, G et al., J. Neurochem. 43 : 1468- 1478, 1984を参照。CNTFは交感神経および感覚神経にも作用すると、この研究で示された。
【0003】
CNTF遺伝子は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および他の同様の関連疾患の処置の希望でもある。ホモ接合性pmn/pmnマウスでは、生後3週齢の終わりに明らかとなる、後肢の進行性ニューロパチーである疾患を生じる。全マウスが、生後6から7週で呼吸麻痺で死亡する。Sendtnerらは、CNTFで該マウスを処置し、運動機能を十分に改善し、変性変化が既に存在する場合でさえ、神経変性の形態学的症状を軽減した。Sendtner et al., Nature 358 : 502-504, 1992を参照。
【0004】
マウスのCNTF遺伝子発現が相同組換えによりなくなると、筋力の若干の低下と付随して進行性萎縮および運動ニューロンの喪失が依然生じることがさらに理解される。Masu et al. Nature 365 : 27-32, 1993を参照されたい。この論文の著者は、これらの結果が、該遺伝子の発現が、形態学的基準により決定される脊髄運動ニューロンの発生に必須ではないが、生後、運動ニューロンの機能を維持するのに必須であることを示すと述べている。
【0005】
Takahashiらは、CNTFノックアウトマウスにおいては影響がないことを同様に発見した。彼らは、日本の人口のおおよそ2.5%がCNTF遺伝子を不活性化する変異のホモ接合体であることを発見した。Takahashi et al. Nature Genet 7 : 79-84, 1994を参照されたい。CNTFを欠損しているものは、悪影響を受けないと思われ、関連する神経欠損の何れも示さない。
【0006】
CNTF受容体サブユニットは、レプチン(LEP)受容体と類似の配列を有している。研究では、CNTFおよびLEPサイトカインの両方が視床下部の満腹中枢にシグナル伝達可能なことを示す。これらの結果は、弓状核でのtis−11初期応答遺伝子の急激な誘導を導くob/obマウスへのCNTFおよびLEPの全身投与の後のものである。機能的レプチンを欠損しているob/obマウスがCNTFで処置されると、レプチン欠損と関連する肥満症、過食症、および高インスリン血症が改善される。レプチンと対照的に、CNTFは、機能的レプチン受容体を欠損するdb/dbマウス、およびレプチンの作用に部分的に抵抗する食事誘導性糖尿病マウスでも糖尿病関連フェノタイプを減少する。
【0007】
CNTFタンパク質は、傷害により誘発されるある機序による放出をおそらく待ちながら、成体グリア細胞内に貯蔵されている。それは発生に必須ではない。事実、傷害、またはある別の種類のストレスに応答して作用する。CNTFは、毛様体神経節および脊髄の運動ニューロンの栄養因子として特徴付けられた。
【0008】
CNTF遺伝子の多型
CNTF遺伝子の多型が同定された。CNTF遺伝子は11q12.2に位置し、多型は、GENBANK配列X55890(バージョン1)の103G>Aである(PubMed:9285965参照)。スプライス受容部位の変異がmRNAの不正確なスプライスを引き起こし、これによりCNTFタンパク質の発現が消滅する。ヌクレオチドの変更はスプライス受容部位の位置−6でのGからAへの転位であり、アミノ酸39からのフレームシフトを導き、24アミノ酸下流に停止コドンを生じる。イレギュラーなmRNAは、62アミノ酸長の切断タンパク質をコードすると予測された(FS63 TER)
【0009】
組織試料の分析および培養細胞へのCNTFミニ遺伝子のトランスフェクションは、変異型対立遺伝子が変異型mRNAのみ発現することを示した。ホモ接合性変異遺伝子は、正常および変異型CNTF共に認識する抗体が、ホモ接合性変異対象由来の末梢神経組織でCNTF免疫反応性を完全に欠くという発見で示される様に、タンパク質に翻訳されない。Takahashi et al. Nature Genet. 7 : 79-84, 1994を参照されたい。
【0010】
精神病性障害
精神病は、患者、家族、そして概して社会に大変な感情的および経済的犠牲を強いる。精神病の症状のある情動障害(気分障害)(例えば、双極性障害)を含む、統合失調症および関連疾患(例えば、統合失調症情動障害)のような精神病性の状態は複雑であり、世界的に見て全人口の大きなパーセンテージを苦しめるある種の病因の雑多な疾患である。
【0011】
統合失調症は、「陽性症状」(幻覚、妄想、および概念的な秩序の破壊)および「陰性症状」(感情鈍麻、引きこもり、情動、および会話の欠如)を共に有することで区別される。神経伝達物質ドーパミンの異常活性が統合失調症の顕著な特徴である。ドーパミン作動性の活性は中脳皮質系で減少され(陰性症状を生じる)、中脳辺縁系で増強される(陽性または精神病の症状を生じる)。セロトニン、グルタミン酸、およびγ−アミノ酪酸(GABA)を含む別の神経伝達物質のいくつかが関与する。
【0012】
抗精神病薬は、どのような形にせよ長い間精神病性障害の処置の基盤であった。該薬物は、時として、リチウムまたは抗うつ剤の様な気分制御薬と組み合わせて用いられる。長い間、統合失調症は、中枢のドーパミン受容体を遮断する古典的な抗精神病薬である神経遮断薬で処置された。該神経遮断薬は、統合失調症の陽性症状を処置するのに有効だが、陰性症状にはほとんど、あるいは全く作用しない。ドーパミン受容体と拮抗する該薬物の作用は、抗精神病作用と相関する。神経遮断薬は、脂肪族化合物(例えば、クロルプロマジン)、ピペリジン(例えば、チオリダジン)、およびピペラジン(例えば、フルフェナジン)を含むフェノチアジン;ブチロフェノン(例えば、ハロペリドール);チオキサンテン(例えば、フルペンチキソール);オキソインドール(例えば、モリンドン);ジベンズオキサゼピン(例えば、ロキサピン)、およびジフェニルピペリジン(例えば、ピモジド)を含む。
【0013】
不運なことに、神経遮断薬−抵抗性の陰性症状は、統合失調症により引き起こされる社会的および職務上の能力障害の大部分の原因となる。さらに、神経遮断薬は、硬直、震顫、運動緩慢(遅い動作)、および精神活動緩慢(bradypherenia)(遅い思考活動)、ならびに遅発性ジスキネジアおよびジストニアを含む錐体外路症状を引き起こす。薬物での精神病の処置については、精神薬理学の教科書(Schatzberg AF and Nemeroff CB, Editors, American Psychiatric Press. Wash. D. C. 1995)を参照されたい。
【0014】
精神病性の状態の処置の進歩は、新しい非定型抗精神病薬の導入により成し遂げられた。該非定型抗精神病薬の副作用特性は、伝統的な薬物のものより大変優れている。非定型抗精神病薬は、異なる受容体結合特性を有し、そして統合失調症の症状に対して有効な別の種類の抗精神病薬である。ハロペリドールの様な定型抗精神病薬と比較して、該非定型抗精神病薬の必須の特徴は、治療と関連する急性錐体外路症状、特にジストニアの減少である。プロトタイプの非定型抗精神病薬であるクロザピンは、定型抗精神病薬と以下の特徴で異なる:(1)定型抗精神病薬に非応答性の統合失調症患者の全体的な精神病理処置において、より有効であること;(2)統合失調症の陰性症状の処置において、より有効であること;および(3)治療と関連する血清プロラクチン濃度の増加が、頻繁でなくなり、かつ量的に少なくなること(Beasley, et al., Neuropsychopharmacology, 14 (2), 111-123, (1996))。
【0015】
非定型抗精神病薬は、D2ドーパミン受容体に加えて、中枢セロトニン2(5−HT2)受容体に結合する。神経遮断薬と異なり、それらは陰性ならびに陽性症状を改善する。それらは錐体外路症状を最小とし、そしてまれに遅発性ジスキネジア、静座不能、または急性ジストニア反応を引き起こす。総合失調の処置のため改良された第1の非定型抗精神病薬は、クロザピンであった。該クロザピンは、統合失調症、特に伝統的な神経遮断薬療法に応答しない対象の処置に有効である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
抗精神病薬での精神病性障害の処置は、何年にもわたり着実に改良されてきた。しかしながら、患者が抗精神病薬に応答するか、そして与えられた患者が必要とする、副作用が働くことなく治療上の応答を生じる用量レベルを決めるための試行錯誤以外の方法は、今までなかった。抗精神病薬は全て、新しい非定型のものでさえ、硬直、振戦、運動緩慢(遅い動作)、および精神活動緩慢(遅い思考活動)、ならびに遅発性ジスキネジアおよびジストニアの様な錐体外路症状を含む優位な副作用があるので、この「試行錯誤」の期間は、時間がかかり、患者にとって不快であり、そして危険でさえあり、ノンコンプライアンスの可能性を増加させるものである。これらの副作用および毒性作用は、用量依存である。従って、患者が抗精神病薬に応答するか否か、そして特定の患者において、副作用を最小とする一方で有効となる用量範囲を決めるための方法を開発する必要が大いにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要約
本発明は、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、多型部位103G>Aのヌクレオチド対の同一性(identity)を決定することを含む(CNTF遺伝子は11q12.2に位置し、多型はGENBANK配列X55890(バージョン1)の103G>Aである)、統合失調症および精神病の症状のある気分障害(これらに制限されない)を含む精神病性障害に罹患しているか、または罹患しやすい患者を処置する方法を提供することで、この要求を満たす。このヌクレオチドのバリエーションは、新たなスプライス受容部位、変更されたmRNA、および生じた異常タンパク質(FS63 TER)を生じる。PubMED ID番号9285965を参照されたい。処置の決定は、ヌクレオチド対の両方がGであるか、またはヌクレオチド対の両方がAであると、個体がイロペリドン(これに限らない)を含む抗精神病薬での処置に応答することに基づく。ヌクレオチド対の1つがAであり、もう1つがGであると、個体は、イロペリドン(これに限らない)を含む抗精神病薬にほとんど応答せず、そしてより多い用量、あるいは抗精神病薬に加えてまたは代わりに補助的療法を必要とると予測される。この情報に基づき、個体は、副作用を最小とし、かつ応答および患者コンプライアンスを最大とするために計画された、適切な抗精神病薬の有効量を投与される。
【0018】
従って、1つの態様において、本発明は、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aでのヌクレオチド対の同一性を決定すること(ヌクレオチド対の両方がGであるか、または両方がAであると、個体はイロペリドンで処置され、そしてヌクレオチド対の1つがAであるか、またはGであると、個体は、代替療法または代替療法と組み合わせてイロペリドンで処置される)を含む、かかる処置が必要な患者の精神病性障害を処置する方法を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、該患者の体液または組織のCNTFタンパク質の存在についてアッセイすること(CNTFタンパク質が、正常レベルまたは検出できないレベル(これはそれぞれGGまたはAA遺伝子型を示している)で見出されると、患者はイロペリドンで処置され、CNTFタンパク質が中間レベルで見出されると、患者は、代替療法または代替療法と組み合わせてイロペリドンで処置される)を含む、かかる処置が必要な患者の精神病性障害を処置する方法を提供する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>AでのCNTF遺伝子のG変異体に相当するmRNA発現レベルを検出すること、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>AでのCNTF遺伝子のA変異体に相当するmRNA発現レベルを検出すること、上記(a)および(b)で検出されたmRNAのレベルを比較すること((a)が(b)の値の2倍以上であるか、または(b)が(a)のレベルの2倍以上であると、患者はイロペリドン(抗精神病薬)で処置され、そして(a)および(b)が同じような値であると、患者は、代替療法または代替療法と組み合わせてイロペリドンで処置される)を含む、かかる処置が必要な患者の精神病性障害を処置する方法を提供する。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aでのヌクレオチド対の同一性を決定すること(ヌクレオチド対の両方がGであるか、または両方がAであると、個体は試験に含まれ、ヌクレオチド対の1つがAであり、かつもう1つがGであると、個体は該試験から除外される)を含む、抗精神病薬の臨床試験で含まれる対象を選択する方法を提供する。
【0022】
本発明の別の態様は、CNTF遺伝子のポリペプチド発現産物を認識して結合可能な抗体、該抗体および該個体由来の体液試料を入れるのに適当な容器(ここで、もし存在すればCNTFポリペプチドと抗体が結合することができる)、CNTFポリペプチドと該抗体の結合体を検出する手段、およびキットの使用説明書を含む、精神病性障害の患者の処置方針を決定する際に使用するキットである。
【0023】
本発明のさらなる態様は、CNTF遺伝子のmRNA発現産物を認識して結合可能な抗体、該ポリヌクレオチドおよび該個体由来の体液試料を入れる容器(ここで、もし存在すればCNTFmRNAと該ポリヌクレオチドが結合することができる)、CNTFmRNAと該ポリヌクレオチドの結合体を検出する手段、およびキットの使用説明書を含む、精神病性障害の患者の治療方針を決定する際に使用するキットである。
【0024】
別の態様において、本発明は、CNTF遺伝子のDNA配列のある部分を認識して結合できるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドおよび該個体由来の体液試料を入れる容器(ここで、もし存在すればCNTF DNA配列とポリヌクレオチドが結合することができる)、CNTF DNA配列と該ポリヌクレオチドの結合体を検出する手段、およびキットの使用説明書を含む、抗精神病性障害の患者の処置方針を決定する際に使用するキットを提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)のCNTF103G>Aの多型部位と連鎖不均衡である、CNTF遺伝子領域の多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定すること;および患者を、103G>Aの多型部位と連鎖不均衡であるCNTF遺伝子領域の多型部位のヌクレオチド対が、103G>AのCNTF多型部位のヌクレオチド対の両方がGCであるか、または両方がATであることを示す場合、応答性のよい群とし、そして該ヌクレオチド対が、CNTF103G>A部位の対の1つがATであり、かつもう1つがGCであることを示す場合、応答性のよくない群とすることを含む、イロペリドンでの処置に対する精神病性障害の患者の応答性を決定する方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、103G>AのCNTF多型部位での患者の多型パターンを同定するキットを提供し、該キットは103G>AのCNTF多型部位の遺伝子多型パターンを決定する手段を含む。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、DNA試料収集手段をさらに含む、上記段落に記載のキットに関する。
【0028】
本発明の別の実施態様は、103G>AのCNTF多型部位の遺伝子多型パターンを決定する手段が、少なくとも1つのCNTF遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含む、上記段落に記載のキットである。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、103G>AのCNTF多型部位の遺伝子多型パターンを決定する手段が、2つのCNTF遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含む、上記段落に記載のキットである。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、103G>AのCNTF多型部位の遺伝子多型パターンを決定する手段が、少なくとも1つのCNTF遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのCNTF遺伝子型同定プライマー組成物を含む、上記段落に記載のキットに関する。
【0031】
本発明のさらなる実施態様は、CNTF遺伝子同定プライマー組成物が少なくとも2組の対立遺伝子特異的プライマー対を含む、上記段落に記載のキットである。
【0032】
本発明の別の実施態様では、2つのCNTF遺伝子同定オリゴヌクレオチドが別々の容器にパッケージされる、上記段落に記載のキットを提供する。
【0033】
本発明のさらなる実施態様は、上記の実施態様に記載のキットを用いて、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aのヌクレオチド対の同一性を決定し、そして/または個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)のCNTF103G>Aの多型部位と連鎖不均衡であるCNTF遺伝子領域の多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定する、方法である。
【0034】
本発明の別の態様は、CNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキットであり、該キットは、CNTF遺伝子のmRNA産物を決定する手段を含む。
【0035】
本発明のさらなる実施態様は、CNTF遺伝子のmRNA産物を測定する手段が、CNTF遺伝子のmRNA発現産物に結合可能なポリヌクレオチドを含む、上記段落に記載のキットである。
【0036】
別の実施態様において、本発明は、CNTF遺伝子のmRNA産物を決定する手段が、多型部位103G>AのCNTF遺伝子の変異体の1つに特異的な少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、上記段落に記載のCNF遺伝子のmRNA発現を同定するキットを提供する。
【0037】
さらなる実施態様において、本発明は、ポリヌクレオチドが多型部位103G>AのCNTF遺伝子のG変異体のmRNA発現に特異的である、CNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキットを提供する。
【0038】
本発明の別の実施態様は、ポリヌクレオチドが多型部位103G>AのCNTF遺伝子のA変異体のmRNA発現に特異的である、CNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキットである。
【0039】
別の実施態様において、本発明は、ポリヌクレオチドが62アミノ酸である切断タンパク質をコードするイレギュラーなmRNAに特異的である、上記段落に記載のキットを提供する。
【0040】
さらなる実施態様において、本発明は、ポリヌクレオチドが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でCNTF遺伝子のGまたはA変異体のmRNA発現産物を結合する、上記のCNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキットを提供する。
【0041】
本発明の別の実施態様は、CNTF遺伝子のmRNA産物を測定する手段が、少なくとも2つのポリヌクレオチド(1つのポリヌクレオチドが多型部位103G>AのCNTF遺伝子のG変異体のmRNA発現に特異的であり、そしてもう1つのポリヌクレオチドが多型部位103G>AのCNTF遺伝子のA変異体のmRNA発現に特異的である)を含む、上記記載のCNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキットである。
【0042】
本発明のさらなる実施態様において、2つのポリヌクレオチドが別々の容器にパッケージされる、上記段落に記載のキットが提供される。
【0043】
本発明の別の実施態様は、本発明のCNTF遺伝子のmRNA発現を同定する上記実施例の1つが、(a)GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103のCNTF遺伝子のG変異体に相当するmRNA発現レベルの検出、および/または(b)GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>AのCNTF遺伝子のA変異体に相当するmRNA発現レベルの検出のいずれかのために用いられる、方法である。
【0044】
別の態様においては、本発明は、CNTF遺伝子のポリペプチド発現産物を検出する手段を含む、患者のCNTFタンパク質レベルを同定するキットを提供する。
【0045】
本発明のさらなる実施態様は、手段がCNTFポリペプチドを認識する抗体を含む、上記段落に記載のキットである。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、抗体の結合が、10e−6〜10e−13のK範囲であり、好ましくは、10e−8〜10e−12の範囲である、上記段落に記載のキットを提供する。
【0047】
本発明の別の実施態様は、患者のCNTFタンパク質レベルを同定する上記キットの1つが、患者体液または組織のCNTFタンパク質の存在をアッセイするために用いられる、手段である。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、体液または組織試料を収集する手段をさらに含む、上記のキットを提供する。
【0049】
本発明のさらなる実施態様は、かかる処置が必要な患者の精神病性障害を処置する方法、抗精神病薬の臨床研究で含まれる対象を選択する方法、またはイロペリドンでの処置に対する精神病性障害の個体の応答性を決定する方法(該方法はエキソビボで行われる)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、実施例1で記載のGG TOTPANSSおよび非GG TOTPANSSの平均パーセンテージの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
好ましい実施態様の記載
従って第1の態様において、本発明は、イロペリドン(これに限らない)を含む抗精神病薬での処置に対する精神病性障害の個体の応答性を決定する方法を提供する。該方法は、CNTF遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプを測定すること、およびCNTF遺伝子の1以上の多型変異体の存在または非存在に基づき、応答性を決定することを含む。CNTF遺伝子は11q12.2に位置し、多型はGENBANK配列X55890(バージョン1)の103G>Aである。このヌクレオチドバリエーションは、新たなスプライス受容部位、変更されたmRNA、生じた異常タンパク質の生成を生じる。PubMED ID番号9285965を参照されたい。
【0052】
この多型検出を用いて、特定の抗精神病薬に対する個体の応答性を決定または推定できる。さらに、該多型は、直接、または一般的なCNTF型に対する多型変異体遺伝子特有のmRNAを検出することにより検出される。
【0053】
さらに、体液または組織中のCNTF遺伝子のポリペプチド(タンパク質)発現産物の検出を用いて、多型の存在または非存在を決定し、そしてポリペプチド発現産物の相対レベルを用いて、多型がホモ接合体またはヘテロ接合体で存在するかを決定し、これにより抗精神病薬に対する患者の応答性を決定する。
【0054】
従って、本発明の1つの実施態様は、CNTF遺伝子のタンパク質発現産物の存在の同定により、患者中の多型の存在または非存在を決定する方法である。研究により、A変異体由来のmRNAがポリペプチド発現産物に翻訳されないことが分かっている。従って、正常量のタンパク質が患者の体液または組織試料で見られる場合、患者が一般的なホモ接合性G変異体を有すると推測され、抗精神病薬に応答する。CNTFタンパク質発現レベルが検出不可能である場合、患者はホモ接合性A変異体を有すると推定され、抗精神病薬に応答する。しかしながら、患者が体液または組織試料中に中間レベルのタンパク質を有すると分かった場合、該患者は、多型部位でGを含有する1つの対立遺伝子およびAを含有する1つの対立遺伝子を有する、ヘテロ接合性多型を有すると予測される。この場合、該患者はイロペリドンを含む抗精神病薬に対して応答しないと予測され、イロペリドンの様な抗精神病薬のみでの処置は適応しない。
【0055】
体液または体組織中の測定されたCNTF遺伝子のポリペプチド発現産物のレベルに関して用いられる場合、本明細書で用いられる用語「正常レベル」は、測定レベルが、(GENBANK受託番号X55890(バージョン1)の配列の)ヒトCNTF遺伝子の103G>A多型部位の遺伝子座両方でG変異体を有すると分かっている、少なくとも10の個体で測定されたCNTF遺伝子ポリペプチド発現産物の平均レベル±1標準偏差である(同じ種類の体液または組織、かつ同じアッセイ技術で測定)ことを意味する。
【0056】
体液または体組織中の測定されたCNTF遺伝子のポリペプチド発現産物のレベルに関して用いられる場合、本明細書で用いられる用語「中間レベル」は、測定レベルが、(GENBANK受託番号X55890(バージョン1)の配列の)ヒトCNTF遺伝子の103G>A多型部位の遺伝子座両方でG変異体を有すると分かっている、少なくとも10の個体で測定されたCNTF遺伝子ポリペプチド発現産物の平均レベルより1標準偏差以上低い(同じ種類の体液または組織、かつ同じアッセイ技術で測定)ことを意味する。
【0057】
別の実施態様において、本発明は、抗精神病薬に対する患者の応答性を決定し、精神病性障害の処置方針を開発する方法を提供する。該方法は、Gの代わりにAを有するというあまり一般的でない多型変異体に対して、CNTF遺伝子の一般的な変異体(すなわち、位置103がG)に相当するmRNAの量および割合を測定することを含む。該実施態様においては、2つのmRNAの割合が患者の体液または体組織試料で決定される。全mRNAがG変異体由来であると、患者はイロペリドンを含む抗精神病薬での処置に応答する。全mRNAがA変異体由来であると、患者はイロペリドンの様な抗精神病薬での処置に応答する。しかしながら、両種類のmRNAが見られる場合、患者は多型のヘテロ接合体であり、イロペリドンを含む抗精神病薬での処置にほとんど応答せず、代替処置方針が考えられる。
【0058】
当該技術分野の技術者は、本明細書で記載の特定の多型に加えて、該多型と連鎖不均衡である多型のいずれかが、同一の薬物または治療に対する応答性を示す代わりのマーカーとして働くこと、連鎖不均衡である一塩基多型も同様であることを容易に理解する。従って、本明細書に記載のSNPと連鎖不均衡のSNPのいずれかが用いられ、これが本発明に含まれることが意図される。
【0059】
SNPの同定および特徴付け
1本鎖高次構造多型解析、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)によるヘテロ2本鎖解析、直接DNA配列決定、およびコンピューターを利用した方法を含む、他の多くの技術を用いて、SNPを同定し、そして特徴付ける。Shi MM, Clin Chem 2001, 47 : 164-172を参照されたい。公開データベースの大量の配列情報のおかげで、コンピューターを利用したツールを用いて、与えられた遺伝子の提示配列(cDNAまたはゲノム配列のいずれか)を個々にアラインメントすることにより、コンピューターでSNPを同定できる。実験で得られたSNPとコンピューター方法で得られたSNPの比較は、SNPFinder(http://lpgws. nci. nih. gov:82/perl/snp/snp_cgi. pl)により分かったSNP候補のうち55%が、該実験で分かったことを示す。Cox et al. Hum Mutal 2001, 17 : 141-150を参照されたい。しかし、該コンピューター方法では実際のSNPの27%しか発見できなかった。
【0060】
最も一般的なSNP同定方法は、現在、ハイブリダイゼーション、プライマー伸長反応法、および切断方法を含む。該方法のそれぞれが適当な検出システムと組み合わされる。検出技術は、蛍光偏光(Chan X et al. Genome Res 1999, 9 : 492-499を参照)、ピロリン酸放出の発光検出(ピロシーケンス法(pyrosequencing))(Ahmadian A et al. Anal Biochem 2000, 280 : 103-10を参照)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づく切断アッセイ、DHPLC、および質量分析(Shi MM, Clin Chem 2001, 47 : 164-172および米国特許番号第6300076B1号を参照)を含む。SNPを検出および特徴付ける別の方法は、米国特許番号第6297018B1号および6300063B1号に記載されている。上記参考文献の記載は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。
【0061】
特に好ましい実施態様において、多型の検出は、いわゆるINVADER[登録商標]技術(Third Wave Technologies Inc. Madison, WIS.から市販)により成し遂げられる。該アッセイでは、特異的な上流の「インベーダー(invader)」オリゴヌクレオチドおよび部分的に重なる下流プローブは、相補的なDNA鋳型に結合すると、特異的な構造物を形成する。該構造物は制限酵素に認識され、特異部位で切断され、そしてこれがプローブオリゴヌクレオチドの5’フラップの放出を引き起こす。該フラグメントは、反応混合物に含まれる2次標的および2次蛍光標識シグナルプローブの「インベーダー」オリゴヌクレオチドとして働く。これは、制限酵素による2次シグナルプローブの特異的切断を引き起こす。蛍光共鳴エネルギー転移が可能な色素分子で標識された該2次プローブが切断されると、蛍光シグナルが生じる。該切断は、重複するDNA配列またはフラップにより形成された構造物に関して、ストリンジェントさが要求されるため、下流DNA鎖切断部位のすぐ上流の1塩基対ミスマッチを特異的に検出するために用いられる。Ryan D et al. Molecular Diagnosis Vol. 4 No 2 1999 : 135-144およびLyamichev et al. Nature Biotechnology Vol. 17 1999 : 292- 296、米国特許番号第5,846,717および6,001,567号を参照されたい(この記載は、全体として引用により本明細書に取り込まれる)。
【0062】
ある実施態様において、組成物は、2以上の多型部位のヌクレオチドの同一性を同時に調べるために、2以上の異なる標識をされた遺伝子同定オリゴヌクレオチドを含有する。プライマー組成物は2組以上の対立遺伝子特異的プライマー対を含有し、多型部位を含む2以上の領域の同時標的および増幅を可能とすることも考慮されている。
【0063】
本発明のCNTF遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、マイクロチップ、ビーズ、またはガラススライドの様な固体表面に固定化されるか、または合成されてもよい(例えば、WO98/20020およびWO98/20019を参照)。かかる固定化遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長反応アッセイ(これらに限らない)を含む様々な多型検出アッセイで用いられる。本発明の固定化CNTF遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、同時に複数の遺伝子の多型についてDNA試料を迅速にスクリーニングするために設計された、定められた配列のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0064】
本発明の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、特定のSNPの1つのヌクレオチドにのみ相補的な3’末端オリゴヌクレオチド、好ましくは3’の最後から2番目のヌクレオチドを有し、このことにより、該ヌクレオチドを含む対立遺伝子が存在する場合のみ、ポリメラーゼ仲介性伸長反応のプライマーとして働く。コード鎖または非コード鎖のいずれかにハイブリダイズする対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プライマーが本発明で考慮される。CNTF遺伝子多型を検出するASOプライマーは、当該技術分野の技術者に既知の技術を用いて作られる。
【0065】
本発明の別の遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、本明細書で同定された新規多型部位のうちの1つの下流ヌクレオチドのいくつかのうち1つに位置する、標的領域にハイブリダイズする。該オリゴヌクレオチドは、上記の新規多型の1つを検出するポリメラーゼ仲介性伸長反応法で有用であり、それゆえ該遺伝子型同定オリゴヌクレオチドが「プライマー−伸長反応のオリゴヌクレオチド」として本明細書で言及される。好ましい実施態様において、プライマー−伸長反応のオリゴヌクレオチドの3’末端は、多型部位にすぐ隣接するヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0066】
別の実施態様において、本発明は、別々の容器にパッケージされた少なくとも2つの遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。該キットは、別の容器にパッケージされた他の成分、例えばハイブリダイゼーションバッファー(オリゴヌクレオチドが、プローブとして用いられる)を含んでいてもよい。また、オリゴヌクレオチドを用いて標的領域が増幅される場合、該キットは、別々の容器にパッケージされたポリメラーゼおよびPCRの様なポリメラーゼにより仲介されるプライマー伸長反応に最適化された反応バッファーを含んでいてもよい。
【0067】
上記のオリゴヌクレオチド組成物およびキットは、個体のCNTF遺伝子の遺伝子型同定および/またはハプロタイプ決定法で有用である。本明細書で用いる用語「CNTF遺伝子型」および「CNTFハプロタイプ」は、本明細書で記載の1以上の新規多型部位に存在するヌクレオチド対あるいはヌクレオチドをそれぞれ含み、そして必要に応じてCNTF遺伝子の1以上の追加多型部位に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドを含むこともできる、遺伝子型またはハプロタイプを意味する。該追加多型部位は現在、知られている多型部位または、後に発見される部位であり得る。
【0068】
遺伝子型同定方法の1つの実施態様は、個体から、該個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子またはそのフラグメントを含む核酸混合物を単離すること、および個体のCNTF遺伝子型を与えるために、2コピー中の1以上の多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定することを含む。個体中の2「コピー」の遺伝子は同一の対立遺伝子であってもよいし、異なる対立遺伝子であってもよいことを、当該技術者は容易に理解する。特に好ましい実施態様において、遺伝子型同定方法は各多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定する方法を含む。
【0069】
典型的には、核酸混合物またはタンパク質は、血液試料または組織試料の様な個体から採取された生物学的試料から単離される。適当な組織試料は、全血、精液、唾液、涙液、尿、糞便、汗、頬側塗抹標本、皮膚、および筋肉または神経組織の様な特定の器官組織の生検、および髪の毛を含む。核酸混合物はゲノムDNA、mRNA、またはcDNAからなり、後の2つの場合は、生物学的試料がCNTF遺伝子が発現する器官から得られなければならない。さらに、mRNAまたはcDNA調製物を用いて、イントロンまたは5’および3’非翻訳領域に位置する多型を検出できないことは、当該技術者に理解される。CNFT遺伝子フラグメントが単離される場合、それが遺伝子同定されるべき多型部位を含む。
【0070】
ハプロタイプ決定法の1つの実施態様は、個体から、該個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子、またはそのフラグメントのうち1つだけを含む核酸分子を単離すること、および個体にCNTFハプロタイプを与えるために、該コピーにおいて、該コピーの1以上の多型部位のヌクレオチドの同一性を決定することを含む。核酸は、好ましいアプローチである標的化生体内クローニングにより、CNTF同質遺伝子の上記調製方法の1つ(これに限らない)を含む、2コピーのCNTF遺伝子またはフラグメントを区別可能ないずれかの方法を用いて単離される。
【0071】
任意の個々のクローンは、個体に存在する2つのCNTF遺伝子コピーのうち1つのハプロタイプ情報のみを提供することは、当該技術分野の技術者に容易に理解される。個体の別のコピーのハプロタイプ情報が必要なら、追加CNTFクローンが調べられる必要がある。典型的に、個体の両コピーのCNTF遺伝子のハプロタイプを決定する確率が90%より高くなる、少なくとも5クローンが調べられる。特に好ましい実施態様において、それぞれの多型部位のヌクレオチドが同定される。
【0072】
好ましい実施態様において、CNTFハプロタイプ対は、個体に存在するCNTF遺伝子の各コピーの1以上の多型部位のヌクレオチド位相配列の同定により、個々に決定される。特に好ましい実施態様において、ハプロタイプ決定法は、CNTF遺伝子の各コピーのそれぞれの多型部位のヌクレオチド位相配列を同定することを含む。該遺伝子の両コピーをハプロタイプ決定する際、同定工程は、好ましくは、別々の容器に入れられた該遺伝子の各コピーで行われる。しかしながら、2コピーが異なる標識で標識されるか、またはそうでなければ別々にして区別可能または同定可能であると、場合によっては同一容器で該方法を行うことが可能であることも想定されている。例えば、該遺伝子の第1および第2のコピーが、それぞれ異なる第1および第2の蛍光色素で標識されると、第3の異なる蛍光色素で標識された対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを用いて多型部位をアッセイし、第1と第3の色素の組合せを検出することで、第1の遺伝子コピーの多型を同定する一方で、第2と第3の色素の組合せを検出することで、第2の遺伝子コピーの多型を同定する。
【0073】
遺伝子型同定およびハプロタイプ決定方法において、多型部位のヌクレオチド(またはヌクレオチド対)の同一性は、1または2コピーのCNTF遺伝子またはそのフラグメントから、多型部位を含む標的領域を直接増幅することで決定され、該増幅領域の配列は通常の方法で決定される。1つのヌクレオチドのみが個体の多型部位で検出されると、該個体は該部位のホモ接合体であり、一方2つの異なるヌクレオチドが検出されると、該個体は該部位のヘテロ接合体であることは、当該技術者に容易に理解される。多型は、直接同定される(正のタイプ(positive-type)同定として知られている)か、または推測により同定される(負のタイプ(negative-type)同定として知られている)。例えば、対照集団のSNPがグアニンおよびシトシンであると分かっている場合、部位は、該部位の個々のホモ接合体全てについてグアニンまたはシトシンのいずれかであることが、あるいは個体が該部位のヘテロ接合であるならグアニンおよびシトシンの両方であることが、正のタイプで決定される。または、該部位がグアニンでない(従って、シトシン/シトシン)か、またはシトシンでない(従って、グアニン/グアニン)ことが負のタイプで決定されてもよい。
【0074】
さらに、本明細書に記載の新規多型部位のいずれかに存在する対立遺伝子の同一性が、興味ある多型部位と連鎖不均衡である、本明細書に記載されていない多型部位を遺伝子型同定することで、間接的に決定されてもよい。2つの部位は、一方の部位の特定の変異体の存在が、もう一方の部位の別の変異体の予測可能性を増す場合、連鎖不均衡であるとされる(Stevens, JC 1999, Mol Diag 4 : 309-317を参照)。現在明らかな多型部位と連鎖不均衡の多型部位は、本明細書で調べられていない遺伝子の領域、または別の遺伝子領域に位置している。本明細書に記載の新規多型部位と連鎖不均衡の多型部位の遺伝子型同定は、多型部位の対立遺伝子の同一性を検出する上記の方法のいずれか(これに限らない)で行われる。
【0075】
標的領域は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)(米国特許番号第4,965,188号)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)(Barany et al., Proc Natl Acad Sci USA 88 : 189-193, 1991;WO90/01069)、およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landergen et al., Science 241 : 1077-1080, 1988)(これらに限らない)を含む、オリゴヌクレオチドが指揮する増幅方法のいずれかを用いて増幅される。該方法でプライマーまたはプローブとして有用なオリゴヌクレオチドは、多型部位を含むか、または隣接する核酸領域に特異的にハイブリダイズする。典型的には、該オリゴヌクレオチドは、10〜35ヌクレオチド長、そして好ましくは15〜30ヌクレオチド長である。最も好ましくは、該オリゴヌクレオチドは20〜25ヌクレオチド長である。該オリゴヌクレオチドの正確な長さは、当該技術分野の技術者が日常的に考慮して行う多くの因子に依存する。
【0076】
転写に基づく増幅システム(米国特許番号第5,130,238号;EP329,822;米国特許番号第5,169,766号;WO89/06700)および等温方法(Walker et al., Proc Natl Acd Sci USA 89 : 392-396, 1992)を含む、既知の別の核酸増幅方法を用いて、標的領域を増幅する。
【0077】
標的領域の多型は、当該技術分野で既知のハイブリダイゼーションに基づく方法のうちの1つを用いて、増幅の前または後でアッセイされてもよい。典型的には、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドが、該方法を行う際に利用される。該対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、異なる標識をされたプローブ対(対の一方が、標的配列の1つの変異体に対して完全な一致を示し、対のもう一方が別の変異体に対して完全な一致を示す)として用いられる。ある実施態様においては、1以上の多型部位が、1組の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド対を用いてすぐに検出される。好ましくは、該組のメンバーは、各多型部位へのハイブリダイゼーションが検出される際の互いの融解温度差が5℃以内、より好ましくは2℃以内である。
【0078】
標的ポリヌクレオチドへの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、溶液中の両成分で行われるか、または該ハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドのいずれかが固体支持体に共有結合または非共有結合で接着する場合、行われる。該結合は、例えば、抗体抗原相互作用、ポリ−L−リジン、ストレプトアビジンまたはアビジン−ビオチン、塩橋、疎水性相互作用、化学結合、UV架橋ベーキングなどにより仲介されてもよい。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、固体支持体上で直接合成されるか、または合成された後に固体支持体に接着される。本発明の検出方法での使用に適当な固体支持体は、例えば、ウェル(例えば、96ウェルプレート)、スライドガラス、シート、膜、繊維、チップ、ディッシュ、およびビーズとなる、シリコン、ガラス、プラスチック、紙などからなる基材を含む。固体支持体を処置、コート、または誘導体化し、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定を促進する。
【0079】
個体のCNTF遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプは、WO95/11995に記載される様な核酸配列およびサブ配列への、1または2コピーの遺伝子を含む核酸試料のハイブリダイゼーションによっても決定される。該配列は、遺伝子型またはハプロタイプで含まれるべき各多型部位を表す、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの1群を含む。
【0080】
多型の同一性は、リボプローブを用いるRNaseプロテクション法(Winter et al., Proc Natl Acad Sci USA 82 : 7575, 1985;Meyers et al., Science 230 : 1242, 1985)および大腸菌mutSタンパク質の様なヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質(Modrich P. Ann Rev Genet 25 : 229-253, 1991)(これらに限らない)を含む、ミスマッチ検出技術を用いても決定される。または、変異体対立遺伝子は、1本鎖高次構造多型(SSCP)解析(Orita et al., Genomics 5 : 874-879, 1989;Humphries et al., in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases, R. Elles, ed., pp. 321-340, 1996)または変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et at., Nucl Acids Res 18 : 2699-2706, 1990;Sheffield et al., Proc Natl Acad Sci USA 86 : 232-236, 1989)により同定される。
【0081】
ポリメラーゼが仲介するプライマー伸長反応法も、多型を同定するために用いられる。該方法のいくつかは特許および科学文献に記載され、「遺伝子少量分析(Genetic Bit Analysis)」方法(WO92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼが仲介する遺伝子少量分析(米国特許番号第5,679,524号)を含む。関連する方法が、WO91/02087、WO90/09455、WO95/17676、米国特許番号第5,302,509および5,945,283号に記載されている。多型を含む伸長されたプライマーは、米国特許番号第5,605,798号に記載の質量分析法で検出される。別のプライマー伸長法は、対立遺伝子特異的PCRである(Ruafio et al., Nucl Acids Res 17 : 8392, 1989;Ruafio et al., Nucl Acids Res 19, 6877-6882, 1991;WO93/22456;Turki et al., I Clin Invest 95 : 1635- 1641, 1995)。さらに、複数の多型部位が、Wallaceらが記載する(WO89/10414)1組の対立遺伝子特異的プライマーを用いて核酸の複数領域を同時に増幅することにより調べられる。
【0082】
好ましい実施態様において、それぞれの民族(ethnogeographic)群のハプロタイプ頻度データが、ハーディ−ワインベルク平衡則と一致するかを決めるために調べられた。該ハーディ−ワインベルク平衡則(D. L. Hartl et al., Principles of Population Genomics, Sinauer Associates (Sunderland, MA), 3rd Ed., 1997)は、ハプロタイプ対H/Hの発見頻度が、H≠HであるとPH−W(H/H)=2p(H)p(H)と、そしてH=HであるとPH−W(H/H)=p(H)p(H)と等しくなると仮定している。観察されたハプロタイプ頻度と予測されたハプロタイプ頻度間の統計的に有意な差は、集団群の深刻な近親交配、遺伝子の強大な選択圧、試料採取バイアス、および/または遺伝子型同定過程でのエラーを含む、1以上の因子に起因する。民族群において、ハーディ−ワインベルク平衡則との大変な偏りが観察される場合は、該偏りが試料採取バイアスに起因するかをみるために、該群の個体数が増やされる。試料数を多くしても、観察されたハプロタイプ対頻度と予測されたハプロタイプ対頻度間の差が減少しない場合は、例えば、CLASPER System[登録商標]技術(米国特許番号第5,866,404号)、または対立遺伝子特異的ロングレンジPCR(Michalotos-Beloin et al., Nucl Acids Res 24 : 4841-4843, 1996)の様な直接ハプロタイプ決定法を用いて、個体をハプロタイプ決定することを考慮されたい。
【0083】
CNTFハプロタイプ対の予測方法の1つの実施態様において、ハプロタイプ決定段階は、以下の解析を行うことを含む。まず、可能性のあるハプロタイプ対のそれぞれが、対照集団のハプロタイプ対と比較される。一般に、対照集団のハプロタイプ対の1つだけが、可能性のあるハプロタイプ対とマッチし、該対が個体に決定される。時たま、対照ハプロタイプ対で表されるハプロタイプの1つしか、個体の可能性のあるハプロタイプ対と一致せず、かかる場合、個体は、既知のハプロタイプおよび可能性のあるハプロタイプ対から既知のハプロタイプを引くことでもたらされる新たなハプロタイプを含む、ハプロタイプ対に割り付けられる。希な場合では、対照集団のいずれのハプロタイプも可能性のあるハプロタイプ対と一致しないか、または複数の対照ハプロタイプ対が可能性のあるハプロタイプ対と一致する。かかる場合、個体は、好ましくは、例えば、CLASPER System[登録商標]技術(米国特許番号第5,866,404号)または対立遺伝子特異的ロングレンジPCR(Michalotos-Belon et al., Nucl Acids Res 24 : 4841-4843, 1996)の様な分子の直接ハプロタイプ決定法を用いて、ハプロタイプ決定される。
【0084】
本発明は、集団のCNTF遺伝子型またはCNTFハプロタイプの頻度を決定する方法も提供する。該方法は、集団のそれぞれのメンバーに存在するCNTF遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプ対(遺伝子型またはハプロタイプは、FS63 TER多型(これに限らない)を含むCNTF遺伝子の1以上の多型部位で検出されるヌクレオチド対またはヌクレオチドを含む)を決定すること;および集団でみられる特定の遺伝子型またはハプロタイプのいずれかの頻度を決定することを含む。該集団は、対照集団、家族集団、同姓集団、集団群、形質集団(例えば、病状の様な興味ある形質、または治療上の処置に対する応答を示す個体群)であってもよい。
【0085】
本発明の別の態様において、対照集団で見られるCNTF遺伝子型および/またはハプロタイプの頻度データは、形質とCNTF遺伝子型またはCNTFハプロタイプとの関連を同定する方法で用いられる。該形質は、異常の疑いまたは処置に対する応答性(これらに限らない)を含む、検出可能なフェノタイプのいずれかであってもよい。該方法は、対照集団ならびに形質を示す集団の興味ある遺伝子型またはハプロタイプの頻度データを得ることを含む。対照および形質集団の一方または両方の頻度データは、上記の方法の1つを用いて、該集団の各個体を遺伝子型同定またはハプロタイプ決定することで得られる。該形質集団のハプロタイプは、直接、または上記のハプロタイプに対して遺伝子型を予測するアプローチにより、測定される。
【0086】
別の実施態様において、対照および/または形質集団の頻度データは、書面または電子形態の既に測定された頻度データの評価により得られる。例えば、該頻度データは、コンピューターでアクセス可能なデータベースに存在する。該頻度データが得られると、対照と形質集団の興味ある遺伝子型またはハプロタイプの頻度が比較される。好ましい実施態様においては、集団で観察される全遺伝子型および/またはハプロタイプの頻度が比較される。CNTF遺伝子の特定の遺伝子型またはハプロタイプが、対照集団より形質集団で統計的に有意な量でより高頻度となると、該形質がCNTF遺伝子型またはハプロタイプと関連すると予測される。
【0087】
好ましい実施態様において、統計解析は、遺伝子型フェノタイプ相関を何度もシュミレートして有意な値を計算する、ボンフェロニーの補正をしたバリエーションの標準的解析(ANOVA)法および/またはブーストラッピング法を用いて行われる。多くの多型が解析される際に、因子の補正を行い、偶然に見つけられた有意な関連性について補正する。本発明の方法で使用する統計方法については、Statistical Methods in Biology, 3rd edition, Bailey NTJ, Cambridge Univ. Press (1997);Introduction to Computational Biology, Waterman MS, CRC Press (2000)、およびBioinformatics, Baxevanis AD and Ouellette BFF editors (2001) John WILEY & Sons, Inc.を参照されたい。
【0088】
該方法の好ましい実施態様において、興味ある形質は、ある治療上の処置に対して患者が示す臨床上の応答であり、例えば、CNTFを標的とする薬物に対する応答、または病状の治療上の処置に対する応答である。
【0089】
本発明の別の実施態様において、興味あるCNTF遺伝子型またはハプロタイプと連鎖不均衡である、検出可能な遺伝子型またはハプロタイプは、代わりのマーカーとして用いられる。CNTF遺伝子型と連鎖不均衡である遺伝子型が、CNTF遺伝子の特定の遺伝子型またはハプロタイプが、対照集団より可能性のある代わりのマーカー遺伝子型を示す集団でより、統計上有意な量で高頻度となるかを測定することにより見つけられ、該マーカー遺伝子型はCNTF遺伝子型またはハプロタイプと関連すると予測され、CNTF遺伝子型に代わるマーカーとして用いられる。
【0090】
本明細書で用いられる「病状」は、処置が望まれる1以上の身体的および/または心理的症状として示される状態または異常のいずれかであるが、これらに制限されず、既に、そして新たに同定された異常および別の障害を含む。
【0091】
本明細書において用いられる用語「臨床上の応答」は、以下のいずれか、または全てを意味する:応答定量的測定、非応答、および不都合な応答(すなわち、副作用)。
【0092】
処置に対する臨床上の応答とCNTF遺伝子型またはハプロタイプとの相関を導き出すためには、処置を受けた個体の集団(以下「臨床集団」)により示される臨床上の応答データを得る必要がある。該臨床データは、既に行われた臨床試験の結果を解析することで得られてもよいし、および/または該臨床データは、1以上の新たな臨床試験を計画し行うことで得られてもよい。
【0093】
本明細書で用いられる用語「臨床試験」は、特定の処置に対する応答の臨床データを収集するために計画された任意の調査研究を意味し、第1相、第II相および第III相臨床試験(これらに限らない)を含む。標準的方法を用いて、患者集団を定義し、対象登録する。
【0094】
好ましくは、臨床集団に含まれる個体は、興味ある症状の存在について分類された。これは、該患者により示される症状が、1以上の背景病状(underlying conditions)により引き起こされる場合、および該背景病状の処置が同じでない場合に重要である。この例は、患者が喘息または呼吸器感染症のいずれかによる呼吸困難を経験する場合である。両者が、喘息薬で処置されると、実際には喘息でない、明らかに非応答の偽りの群が存在する。これらの人々は、ハプロタイプと処置結果との何らかの相関の検出能力に影響する。可能性のある患者の該分類分けは、標準的な身体検査または1以上の臨床検査を利用する。または、患者の分類分けは、ハプロタイプ対と異常感受性または重症度との強力な相関が存在する状況についてのハプロタイプ決定を用いる。
【0095】
興味ある治療上の処置が臨床集団の各個体に施され、該処置に対する各個体の応答が1以上の事前に決められた基準を用いて測定される。多くの場合、臨床集団は応答範囲を表し、調査者が、様々な応答により構成された応答群(例えば、低、中間、高)の数を選択することを考慮している。さらに、臨床集団の各個体のCNTF遺伝子が、処置を施す前または後に、遺伝子型同定および/またはハプロタイプ決定される。
【0096】
臨床および多型データが共に得られた後、個体応答とCNTF遺伝子型またはハプロタイプの中身との相関が与えられる。該相関はいくつかの方法で与えられる。1つの方法において、個体は、そのCNTF遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)により分類され(多型群としても言及される)、続いて、それぞれの多型群のメンバーにより示された臨床上の応答の平均および標準偏差が計算される。
【0097】
次に、これらの結果を解析し、多型群の臨床上の応答で観察されたバリエーションのどれが、統計上有意であるかを決定する。用いられる統計解析法は、L. D. Fisher and G. vanBell,"Biostatistics : A Methodology for the Health Sciences", Wiley-Interscience (New York) 1993に記載されている。該解析は、フェノタイプの差に最も重大に関与するCNTF遺伝子の多型部位の回帰測定を含んでいてもよい。本発明で有用な回帰モデルの1つは、2000年6月26日に出願された、発明の名称「Methods for Obtaining and Using Haplotype Data」のPCT出願に記載されている。
【0098】
CNTFハプロタイプの中身と臨床上の応答との相関を見つける第2の方法は、エラーを最小にする最適化アルゴリズムに基づく予測モデルを用いる。多くの可能性のある最適化アルゴリズムの1つは、遺伝子アルゴリズム(R. Judson,"Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry"in Reviews in Computational Chemistry, VOL. 10, PP. 1-73, K. B. Lipkowitz and D. B. Boyd, eds. (VCH Publishers, New York, 1997)である。シュミレートされたアニーリング(Press et al., "Numerical Recipes in C : The Art of Scientific Computing", Cambridge University Press (Cambridge) 1992, Ch. 10)、神経ネットワーク(E. Rich and K. Knight,"Artifical Intelligence", 2nd Edition McGraw-Hill, New York, 1991, Ch. 18)、標準的勾配降下方法(上記のPress et al., Ch. 10)、または別の全体的または部分的最適化アプローチ(上記JUDSON,の記載を参照)も用いられる。好ましくは、該相関は、2000年6月26日に出願された、発明の名称「Methods for Obtaining and Using Haplotype Data」のPCT出願に記載される遺伝子アルゴリズムアプローチを用いて見つけられる。
【0099】
相関は、ANOVA技術を用いて解析され、臨床データのバリエーションのどれだけがCNTF遺伝子の多型部位の異なるサブセットにより説明されるかが決定される。2000年6月26日に出願された、発明の名称「Methods for Obtaining and Using Haplotype Data」のPCT出願に記載されるANOVAを用いて、応答性の変わりやすさが測定される1以上の形質または変わりやすさにより引き起こされるか、または相関付けられるかについての仮説を検証する(Fisher and vanBelle, supra, Ch. 10)。
【0100】
上記の解析より、当該技術分野の技術者により容易に作られる数学的モデルが、CNTF遺伝子型またはハプロタイプの中身の機能として臨床上の応答を予測する。好ましくは、該モデルは、モデルを検証するために計画された1以上の追認臨床試験において確認される。
【0101】
臨床上の応答とCNTF遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)との関連性の同定は、処置に対して応答するかまたは応答しない個体、あるいは低レベルで応答し、それゆえさらなる処置、すなわち、より多量の薬物を必要とする個体を決定するための診断方法の設計の基礎である。該診断方法はいくつかの形態の1つをとる:例えば、直接DNA検査(すなわち、CNTF遺伝子の1以上の多型部位を遺伝子型同定またはハプロタイプ決定する)、血清学的検査、または身体計測。唯一必要なことは、診断検査結果と背景的なCNTF遺伝子型またはハプロタイプ、ひいては臨床上の応答との良好な相関である。好ましい実施態様において、該診断方法は、上記の予測ハプロタイプ決定方法を用いる。
【0102】
コンピューターは、本発明の方法を行う際に関与する分析および数学的操作のいずれかまたは全てを実行する。さらに、該コンピューターは、ディスプレイ装置に表示される画面(またはスクリーン)を作るプログラムを実行し、そしてユーザーがこれを用いて、CNTF遺伝子、および染色体位置、遺伝子構造、および遺伝子ファミリーを含む遺伝子バリエーション、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝子配列データ、集団データの臨床データ(例えば、1以上の集団についての民族起源、臨床上の応答、遺伝子型、およびハプロタイプ)と関連する大量の情報を解析する。本明細書に記載のCNTF多型データは、関連するデータベース(例えば、オラクルのデータベース、または一連のASCIIフラットファイル)の一部として保存される。該多型データは、コンピューターのハード装置に保存されるか、または例えば、CD−ROM、またはコンピューターでアクセス可能な1以上の別の記憶装置に保存される。例えば、データは、ネットワークを通じてコンピューターと通信する1以上のデータベースに保存されてもよい。
【0103】
別の実施態様において、本発明は、個体のCNTF遺伝子のハプロタイプ決定および/または遺伝子型同定方法、組成物、およびキットを提供する。該方法は、GENBANK受託番号X55890(バージョン1)のヌクレオチド103G>Aに存在するヌクレオチドまたはヌクレオチド対の同定を含む。該ヌクレオチド置換は、新たなスプライス受容部位、および生じた異常タンパク質の生成を生じる。PubMed ID番号9285965を参照されたい。
【0104】
組成物は、多型部位を含むかまたは隣接する、1以上の標的領域に特異的にハイブリダイズするように設計された、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含有する。上記の新規多型部位での個体の遺伝子型またはハプロタイプを確立する方法および組成物は、CNTFタンパク質の発現および機能、またはそれがないことにより影響される異常の病因での多型作用の研究、CNTFを標的とする薬物の有効性の研究、CNTFタンパク質の発現または機能により影響される異常が疑われる個体の予測、およびCNTFを標的とする薬物に対する個体応答性の予測に有用である。
【0105】
なお別の実施態様において、本発明は、遺伝子型またはハプロタイプと形質との関連を同定する方法を提供する。好ましい実施態様において、該形質は、疾病の感受性、疾病の重篤度、疾病の進行度または薬物に対する応答性である。該方法は、遺伝子型と有効性の測定、薬物動態学(PK)測定、および副作用の測定を含む処置結果との関連性のため、可能な薬理遺伝学的応用の全てについての診断検査および治療上の処置を開発する際での応用可能性を有する。
【0106】
本発明は、CNTF遺伝子について測定された多型データを保存および表示するコンピューターシステムも提供する。該コンピューターシステムは、コンピュータープロセッシング単位;ディスプレイ;および多型データを含むデータベースを含む。該多型データは、対照集団のCNTF遺伝子について同定された多型、遺伝子型およびハプロタイプを含む。好ましい実施態様において、該コンピューターシステムは、進化の関係により構成されたCNTFハプロタイプを示すディスプレイを作成することもできる。
【0107】
別の態様において、本発明は、遺伝子バリエーションの種類によりヒトを分類する際に有用なSNPプローブを提供する。本発明に記載のSNPプローブは、通常の対立遺伝子識別アッセイでSNP核酸の対立遺伝子を識別可能なオリゴヌクレオチドである。
【0108】
本明細書で用いられる「SNP核酸」は、個体または個体群の同じヌクレオチド内で変化し、従って対立遺伝子として表されるヌクレオチドを含む核酸配列である。該SNP核酸は、好ましくは、約15〜約500ヌクレオチド長である。該SNP核酸は染色体の一部であるか、または例えば、PCRまたはクローニングを介しての染色体の一部の増幅による染色体の一部分の正確なコピーである。該SNP核酸は、ただ「SNP」として本明細書で言及される。本発明に記載のSNPプローブは、SNP核酸に相補的なヌクレオチドである。
【0109】
本明細書において用いられる用語「相補的」は、ワトソンとクリックのセンス鎖という言葉でヌクレオチド長の端から端まで正確に相補的であることを意味する。
【0110】
ある好ましい実施態様において、本発明の該態様に記載のオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の一方の対立遺伝子に相補的であるが、SNP核酸のもう一方の対立遺伝子には相補的でない。本発明の該実施態様に記載のオリゴヌクレオチドは、様々な方法においてSNP核酸の対立遺伝子を識別する。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、適当な長さのオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の一方の対立遺伝子にハイブリダイズするが、SNP核酸のもう一方の対立遺伝子にはハイブリダイズしない。該オリゴヌクレオチドは、放射性または蛍光標識で標識されていてもよい。または、適当な長さのオリゴヌクレオチドは、3’末端のヌクレオチドがSNP核酸の一方の対立遺伝子に相補的であるが、もう一方の対立遺伝子には相補的でないPCRプライマーとして用いられる。該実施態様において、PCRによる増幅の存在または存在しないことが、SNP核酸のハプロタイプを決定する。
【0111】
従って、1つの実施態様において、本発明は、CNTF遺伝子またはそのフラグメントの対照配列の多型変異体であるヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを提供する。該対照配列はGENBANK受託番号X55890(バージョン1)を含み、多型変異体はヌクレオチド103G>A(これに限らない)を含む少なくとも1つの多型を含む。特に好ましい多型変異体は、CNTF遺伝子の天然で生じるアイソフォーム(「同質遺伝子」としても本明細書で言及される)である。
【0112】
本発明の遺伝子およびcDNAフラグメントは、本明細書で同定された少なくとも1つの新規多型部位を含み、少なくとも10ヌクレオチドの長さを有し、そして最大該遺伝子の全長となる。好ましくは、本発明に記載のフラグメントは、100〜3000ヌクレオチド長であり、そしてより好ましくは、200〜2000ヌクレオチド長、そして最も好ましくは500〜1000ヌクレオチド長である。
【0113】
本明細書で同定される多型部位の記載において、対照は、便宜上遺伝子のセンス鎖からなっている。しかしながら、CNTF遺伝子を含む核酸分子は相補的な2本鎖分子であり、従ってセンス鎖の特定の部位への言及が、相補的アンチセンス鎖の対応部位にも言及するものであることは、当該技術分野の技術者は理解する。従って、対照はいずれかの鎖の同一多型部位からなり、オリゴヌクレオチドは多型部位を含む標的領域のいずれかの鎖に特異的にハイブリダイズするように設計される。従って、本発明は、本明細書に記載のCNTF遺伝子変異体のセンス鎖に相補的な1本鎖ポリヌクレオチドも含む。
【0114】
本明細書で同定された多型のCNTF発現への作用は、組換え細胞および/または生物、好ましくは、CNTF遺伝子の多型変異体を含有する組換え動物を用意することにより調べられる。本明細書で記載される「発現」は、次に掲げる1以上のものを含むが、これらに限らない:mRNA前駆体への遺伝子の転写;mRNA成熟型を生成するためのmRNA前駆体のスプライシングまたは他のプロセッシング;mRNA安定化;CNTFタンパク質へのmRNA成熟型の翻訳(コドン使用およびtRNA利用性を含む);および適当な発現および機能に必要な場合、翻訳産物の糖修飾および/または別の修飾。
【0115】
本発明の組換え細胞を用意するために、ベクター中の所望のCNTF同質遺伝子が、該同質遺伝子が染色体外にとどまる様に、細胞へ導入される。かかる状況で、該遺伝子は、染色体外の位置で細胞によって発現される。好ましい実施態様において、CNTF同質遺伝子は、細胞に存在する内在性CNTF遺伝子と組換わる様に、細胞に導入される。該組換えは、2つの組換え現象の発生を必要とし、これにより、所望のCNTF遺伝子多型を生じる。組換えおよび染色体外での維持のための遺伝子の導入ベクターは当該技術分野で既知であり、適当なベクターまたはベクター構造物が本発明で用いられる。細胞へDNAを導入する、エレクトロポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈殿、およびウイルス導入の様な方法が当該技術分野において既知である;それゆえ、該方法の選択は当該技術分野の技術者の能力および好みによる。
【0116】
CNTF同質遺伝子が導入される細胞の例としては、COS、NIH/3T3の様な継続培養細胞、および関連組織種類(すなわち、CNTF同質遺伝子を発現する)の初代または培養細胞を含むが、これらに限らない。該組換え細胞を用いて、異なるタンパク質変異体の生物学的活性を比較する。
【0117】
変異体遺伝子を発現する組換え生物(すなわち、遺伝子導入動物)は、当該技術分野において既知の標準的方法を用いて用意される。好ましくは、変異体遺伝子を含む構造物が、非ヒト動物または胚期(すなわち、1細胞期)、またはおおよそ8細胞期以降でない動物の原型に導入される。本発明の構造物を有する遺伝子導入動物は、当該技術分野の技術者に既知のいくつかの方法により作られる。1つの方法は、1以上のインスレーターエレメント、興味ある遺伝子または複数の遺伝子、および導入遺伝子として挿入された遺伝子を宿す完全なシャトルベクターを与えるための、当該技術分野の技術者に既知の他の成分を含有するように構築されたレトロウイルスの胚へのトランスフェクションを含む。例えば、米国特許番号第5,610,053号を参照されたい。もう1つの方法は、導入遺伝子を胚へ直接導入することを含む。第3の方法は、胚性幹細胞の使用を含む。
【0118】
CNTF同質遺伝子が挿入される動物の例としては、マウス、ラット、他のげっ歯類、および非ヒト霊長類を含むが、これらに限らない("The Introduction of Foreign Genes into Mice"およびそのなかで引用されているRecombinant DNA, Eds. J. D. Watson, M. Gilman, J. Witkowski, and M. Zoller ; W. H.Freeman and Company, New York, pages 254-272を参照)。非ヒトCNTF同質遺伝子を安定的に発現し、ヒトCNTFタンパク質を産生する遺伝子導入動物は、異常CNTF発現および/または活性と関連する異常の研究、および該異常の症状または影響を改善するための様々な薬物候補、化合物、および治療計画のスクリーニングおよびアッセイの生物学的モデルとして用いられる。
【0119】
本発明で用いられる化合物の多くまたは全てが塩を形成可能であること、そしてしばしば遊離塩基より容易に結晶精製されるため、塩の形の医薬品が通常用いられることは、当該技術分野の技術者に理解される。全ての場合で、塩としての上記の医薬品の使用が本明細書で考慮され、好ましくはしばしば、全化合物の薬学的に許容される塩がその名称に含まれる。
【0120】
本発明で用いられる化合物の多くはアミンであり、従って多くの無機酸および有機酸のいずれかと反応し、薬学的に許容される酸の別の塩を形成する。本発明の化合物の遊離アミンのいくつかは典型的には室温で油であるため、取り扱いおよび投与に容易な様に、遊離アミンを薬学的に許容される酸の別の塩へと転化することが望ましい。形成後のものは室温で通常個体である。該塩を形成するために日常的に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびP−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、P−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。
【0121】
従って、該薬学的に許容される塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スペリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキサン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルフォン酸塩、キシレンスルフォン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルフォン酸塩、ナフタレン−1−スルフォン酸塩、ナフタレン−2−スルフォン酸塩、マンデル酸塩などである。好ましくは、薬学的に許容される塩は、塩酸、シュウ酸、またはフマル酸とで形成されたものである。
【0122】
投与
本発明で用いられる薬物の投与量は、最終的な解析で、該薬物の知識、臨床試験で測定される組合せの該薬物の特性、および医師が患者を処置する以外の異常を含む患者の特徴を用いて、管理者である医師により決められなければならない。投与量、および好ましい投与量の一般的な概要が本明細書で与えられる。例えば;イロペリドン:1日当たり1回、1〜50mg、最も好ましくは、1日当たり1回、12〜16mg;オランザピン:1日当たり1回、0.25〜50mg;好ましくは、1日当たり1回、1〜30mg;そして最も好ましくは、1日あたり1回、1〜25mg;クロザピン:1日当たり、約12.5〜900mg;好ましくは、1日当たり、約150〜450mg;リスペリドン:1日当たり、約0.25〜16mg;好ましくは、1日あたり、約2〜8mg;セルチンドール:1日当たり、約0.0001〜1.0mg/kg;クエチアピン:1日当たり1回、1.0〜40mg/kg、または分割した用量;ジプラシドン:1日当たり、約5〜500mg;好ましくは、1日当たり、約50〜100mg;ハロベリドール:1日あたり1回、0.5〜40mg。
【0123】
関係する化合物の全てが経口投与可能であり、普通は経口投与される。そして経口投与の補助薬の組合せが好ましい。それらは1つの剤形で一緒に投与されてもよいし、または別々に投与されてもよい。しかしながら、経口投与がただ1つの経路でも、ただ1つの好ましい経路でもない。例えば、経皮投与は、経口薬物を取ることを忘れやすいか、またはせっかちな患者にとって大変望ましい。薬物の1つが、経口の様な1つの経路で投与され、別のものが特定の状況において、経皮、経皮的、静脈内、筋内、経鼻または直腸内経路で投与される。投与経路は、薬物の物質特性、および患者および介護者の都合(これらに限らない)により変えられる。
【0124】
転写状態の測定
好ましくは、転写状態の測定は、転写物アレイへのハイブリダイゼーションにより実施し、これについてはこのサブセクションに記載する。転写状態測定法のある種別の方法についてはこのサブセクションの後半に記載する。
【0125】
転写物アレイ一般
本発明の1つの実施態様において、「転写物アレイ」(本明細書では「マイクロアレイ」とも呼ぶ)を使用する。転写物アレイは細胞の転写状態の解析に利用される。
【0126】
1つの実施態様において、該転写物アレイは、細胞中に存在するmRNA転写物を表す、検出可能に標識されたポリヌクレオチド(例えば、細胞全mRNAから合成される蛍光標識cDNA)をマイクロアレイにハイブリダイズさせることで作られる。マイクロアレイは、細胞または生物のゲノム中の遺伝子の多く、好ましくは、遺伝子のほとんどまたはほとんど全ての産物の結合(例えば、ハイブリダイゼーション)部位の定められ配列を有する表面である。マイクロアレイは多くの方法で生成され、その幾つかについて以下に記載する。どのように生成された場合でも、マイクロアレイはある種の特徴を有する:アレイは再現性があること、所定の配列の複数のコピーが生成されることが可能であること、および互いに容易に比較されること。好ましくは、マイクロアレイは小さく、通常、5cm未満であり、結合(例えば、核酸ハイブリダイゼーション)条件下に安定な材料から造られる。マイクロアレイの所定の結合部位またはユニークなセットの結合部位が、細胞の1つの遺伝子産物に特異的に結合する。特定のmRNA当たり1つ以上の物理的結合部位(以下「部位」)が存在するが、明確にするために、以下の考察では1つの部位が存在すると仮定する。特定の実施態様において、それぞれの位置で既知の配列の固定された核酸を含む、位置を決定可能なアレイを用いる。
【0127】
細胞のRNAに相補的なcDNAが作られ、適当なハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイにハイブリダイズさせる場合、特定の遺伝子に対応する配列部位へのハイブリダイゼーションレベルが、該遺伝子から転写されたmRNAの細胞での普及率を反映することが、考慮される。例えば、細胞の全mRNAに相補的な、検出可能に標識された(例えば、フルオロフォアで)cDNAがマイクロアレイにハイブリダイズされ、該細胞で転写されない遺伝子に対応するアレイ部位(すなわち、該遺伝子の産物に特異的に結合可能)は、ほとんどまたは全くシグナル(例えば、蛍光シグナル)を発せず、コード化されたmRNAが行き渡っている遺伝子は、比較的強いシグナルを発する。
【0128】
マイクロアレイの調製
マイクロアレイは当該技術分野で既知であり、遺伝子産物(例えば、cDNA、mRNA、cRNA、ポリペプチド、およびそのフラグメント)に対応する配列のプローブが、既知の位置で特異的にハイブリダイズまたは結合する表面からなる。1つの実施態様において、該マイクロアレイは、それぞれの位置が遺伝子によりコード化される産物(例えば、タンパク質またはRNA)の別の結合部位を表すアレイ(すなわち、マトリックス)であり、該結合部位は生物のゲノムのほとんどまたはほとんど全ての遺伝子産物について存在する。好ましい実施態様において、該「結合部位」(以下「部位」)は、核酸または核酸類似体であり、これに対して、特定の同族cDNAが特異的にハイブリダイズする。結合部位の核酸または類似体は、例えば、合成オリゴマー、全長cDNA、全長未満のcDNA、または遺伝子フラグメントである。
【0129】
好ましい実施態様において、マイクロアレイは標的生物ゲノムの全てまたはほとんど全ての遺伝子産物の結合部位を含有するが、かかる包括性は必ずしも必要ではない。通常、マイクロアレイは、ゲノムの遺伝子の少なくとも約50%、多くの場合、少なくとも75%、より多くの場合、少なくとも約85%、さらにより多くの場合、約90%以上、そして最も多くの場合少なくとも約99%に対応する結合部位を有する。好ましくは、該マイクロアレイは、興味ある生物学的ネットワークモデルの検証および確認に関連する遺伝子の結合部位を有する。
【0130】
「遺伝子」は、好ましくは、少なくとも50、75、または99個のアミノ酸のオープンリーディングフレーム(ORF)として同定される、ここからメッセンジャーRNAが生物(例えば、単細胞生物)、または多細胞生物のある細胞で転写される。ゲノム中の遺伝子数は、生物により発現されるmRNAの数から、またはゲノムのうまく区別された部分からの推定により、見積もられる。対象生物のゲノムが配列決定されている場合、ORFの数が決定され、mRNAコード領域がDNA配列の解析により同定される。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のゲノムが完全に配列決定され、99アミノ酸よりも長い約6275のオープンリーディングフレーム(ORF)を有すると報告されている。これらのORFの解析では、特定のタンパク質産物であると思われる5885のORFが存在することを示す(Goffeau et al., 1996, Life with 600 genes, Science 274:546-567(全目的のため、全体として引用により本明細書に取り込まれる))。対照的に、ヒトゲノムは約100,000遺伝子を含有すると見積もられる。
【0131】
マイクロアレイ用核酸の調製
特定の同族cDNAが特異的にハイブリダイズする、上記の「結合部位」は、通常、該結合部位で結合する核酸または核酸類似体である。1つの実施態様において、マイクロアレイの結合部位は、生物のゲノムの各遺伝子の少なくとも一部に対応するDNAポリヌクレオチドである。これらのDNAは、ゲノムcDNA、cDNA(例えば、RT−PCRにより)、またはクローン化配列から遺伝子セグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により得られる。PCRプライマーは、遺伝子またはcDNAの既知の配列に基づき選択され、ユニークなフラグメント(すなわち、マイクロアレイ上のいずれのフラグメントとも、連続する10塩基以上の同じ配列を共有しないフラグメント)を増幅する。コンピュータープログラムは、必要とされる特異性と最適な増幅特性をもつプライマーの設計に有用である。例えば、Origo plバージョン5.0(National Bioscience)を参照されたい。非常に長い遺伝子に対応する結合部位の場合、遺伝子の3’末端に近いセグメントを増幅することが時に必要となり、つまり、オリゴ−dT開始cDNAプローブがマイクロアレイにハイブリダイズする場合;全長未満の長さのプローブが効率的に結合する。典型的には、マイクロアレイ上の各フラグメントは、約50bpと約2000bpの間、より典型的には、約100bpと約1000bpの間であり、通常、約300bpと約800bp長の間である。PCR法は周知であり、例えば、Innis et al. eds., 1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press Inc. San Diego, Calif(すべての目的のため、全体として引用により取り込まれる)に記載されている。コンピューター制御ロボットシステムが核酸を単離および増幅するのに有用であることは明らかである。
【0132】
マイクロアレイ用の核酸を生成する代替手段は、N−ホスホン酸塩またはホスホロアミダイト化学反応を用いる、合成ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの合成によるものである(Froehier et al., 1986, Nucleic Acid Res 14:5399-5407; McBride et al., 1983, Tetrahedron Lett. 24:245-248)。合成配列は、長さ約15と約500塩基の間であり、より典型的には約20と約50塩基間である。ある実施態様において、合成核酸は、非天然の塩基、例えば、イノシンを含む。上記の核酸類似体は、ハイブリダイゼーションの結合部位として用いられる。適当な核酸類似体の例はペプチド核酸である(例えば、Egholm et al., 1993, PNA hybridizes to complementary oligonucleotides obeying the Watson-Crick hydrogen-boding rules, Nature 365:566-568;米国特許番号第5,539,083号も参照)。
【0133】
代わりの実施態様において、結合(ハイブリダイゼーション)部位は、遺伝子のプラスミドまたはファージクローン、cDNA(例えば、発現した配列タグ)、またはそのインサートから作られる(Nguyen et al., 1995, Differential gene expression in the murine thymus assayed by quantitative hybridization of arrayed cDNA clones, Genomics 29:207-209)。さらに別の実施態様において、結合部位のポリヌクレオチドはRNAである。
【0134】
固体表面への核酸接着
核酸または類似体は、ガラス、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、または他の材料から作られる、固体支持体に接着される。核酸を表面に接着させる好ましい方法は、ガラスプレート上にプリントすることによる(一般的記載例、Schena et al., 1995, Quantitative monitoring of gene expression patterns with a complementary DNA microarray, Science 270:467-470参照)。この方法はcDNAのマイクロアレイの調製に特に有用である。DeRisi et al., 1996, Use of a cDNA microarray to analyze gene expression pattern in human cancer, Nature Genetics 14:457-460;Shalon et al., 1996, A DNA microarray system for analyzing complex DNA samples using two-color fluorescent probe hybridaization, Genome Res. 6:639-645;およびSchena et al., 1995, Parallel human genome analysis; microarray-based expression of 1000 genes, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10539-11286も参照されたい。上記の文献はそれぞれ、すべての目的のため、全体として引用により取り込まれる。
【0135】
マイクロアレイを作製する第2の好ましい方法は、高密度オリゴヌクレオチド配列の作製による。組織での合成のため、写真平板技術を用いて、表面上の定義された位置の定義された配列に相補的な何1000ものオリゴヌクレオチドを含有するアレイを生成する技術が知られている(Fodor et al., 1991, Light-directed spatially addressable chemical synthesis, Science 251:767-773;Pease et al., 1994, Light-directed oligonucleotide arrays for rapid DNA sequence analysis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5022-5026;Lockhart et al., 1996, Expression monitoring by hybridaization to high-density oligonucleotide arrays, Nature Biotech 14:1675;米国特許番号第5,578,832号、第5,556,752号;および第5,510,270号;これらの文献はそれぞれ、すべての目的のため、全体として引用により本明細書に取り込まれる)、また定義されたオリゴヌクレオチドの迅速合成および沈着の別の方法も既知である(Blanchard et al., 1996, High-Density Oligonucleotide arrays, Biosensors & Bioelectronics 11:687-90)。これらの方法を使用する場合、既知の配列のオリゴヌクレオチド(例えば、20mer)が誘導体化されたガラススライドのような表面で直接合成される。通常、生成されたアレイは、RNA1個当たり数個のオリゴヌクレオチド分子で重複している。オリゴヌクレオチドプローブは、選択的スプライスmRNAを検出するために選択される。
【0136】
例えば、マスキング法(Maskos and Southern, 1992, Nuc. Acids Res. 20:1679-1684)によるマイクロアレイの別の作製方法も用いられる。原則として、いずれのタイプのアレイも、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜上のドットブロット(Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol.1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989(全ての目的のため、全体として本明細書に取り込まれる)参照)も使用されるが、当業者が認識する非常に小さなアレイが、ハイブリダイゼーション容量が小さくなるため、好ましい。
【0137】
標識プローブの生成
全長およびポリ(A)RNAの調製法は周知であり、上記Sambrook et alに一般的に記載されている。1つの実施態様において、RNAは、チオシアン酸グアニジン溶解を用いて本発明の興味ある様々な種類の細胞から抽出され、続いてCsCl遠心分離される(Chirgwin et al., 1979, Biochemistry 18:5294-5299)。ポリ(A)RNAは、オリゴ−dTセルロースによる選択によって選択される(上記のSambrook et al.,を参照)。対象の細胞は、野生型細胞、薬物に暴露された野生型細胞、修飾/動揺細胞成分を有する細胞、および修飾/動揺細胞成分を有する薬物に暴露された細胞である。
【0138】
標識cDNAは、オリゴdT−開始またはランダム−開始逆転写(共に、当該技術分野で周知である(例えば、Klug and Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:316-325を参照)によりmRNAから調製される。逆転写は検出可能な標識に結合したdNTP、最も好ましくは、蛍光標識dNTPの存在下で行われる。別法として、単離mRNAが、標識dNTPの存在下で2本鎖cDNAの試験管内転写により合成される、標識アンチセンスRNAに変換される(Lockhart et al., 1996, Expression monitoring by hybridization to high-density oligonucleotide arrays, Nature Biotech. 14:1675(全ての目的のために、全体として引用により本明細書に取り込まれる)を参照)。別の実際態様において、cDNAまたはRNAプローブは、検出可能な標識の非存在下で合成され、続いてビオチニル化dNTPまたはrNTPを取り込むこと、あるいはある種の同様の手段(例えば、ビオチンのプソラレン誘導体をRNAに光架橋すること)により標識され、続いて標識ストレプトアビジン(例えば、フィコエリスリン結合ストレプトアビジン)または均等物が添加される。
【0139】
蛍光標識プローブが用いられる場合、例えば、フルオレセイン、リサミン、フィコエリスリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)、および他のものを含む、多くの適当な発光団が知られている(例えば、Kricka, 1992, nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Diego, Califを参照)。発光団の対は、容易に区別されるように区別可能な放出スペクトルを選ぶのがよい。
【0140】
別の実施態様において、蛍光標識以外の標識が用いられる。例えば、放射性標識、または区別可能な放出スペクトルを有する1対の放射性標識が用いられる(Zhao et al., 1995, High density cDNA filter analysis: a novel approach for large-scale, quantitative analysis of gene expression, Gene 156:207;Pietu et al., 1996, Novel gene transcripts preferentially expressed in human muscles revealed by quantitative hybridization of a high density cDNA array, Genome Res. 6:492を参照)。しかしながら、放射性粒子の散乱があり、結果として広範な結合部位を必要とするため、放射性同位元素の使用はあまり好ましい実施態様ではない。
【0141】
1つの実施態様において、標識cDNAは、0.5mM dGTP、dATPおよびdCTP+0.1mM dTTP+蛍光デオキシリボヌクレオチド(例えば、0.1mM ローダミン110UTP(Perken Elmer Cetus)または0.1mM Cy3dUTP(Amersham))を含む混合液を、逆転写酵素(例えば、SupreScript TM.II、LTI Inc.)と42℃で60分間インキュベートすることにより合成される。
【0142】
マイクロアレイへのハイブリダイゼーション
核酸のハイブリダイゼーションと洗浄条件は、特定の配列に「特異的に結合」または「特異的にハイブリダイズ」、すなわち、プローブが、相補的な核酸配列の配列アレイ部位にハイブリダイズ、2量体形成、または結合するが、相補的でない核酸配列の部位にはハイブリダイズしないように、選択される。本明細書で使用されるあるポリヌクレオチド配列は、別のものに相補的であることが考慮され、短いポリヌクレオチドが25塩基未満または等しいと、標準的塩基対形成法則を用いるのにミスマッチはなく、短いポリヌクレオチドが25塩基より長いと、5%を超えるミスマッチはない。好ましくは、該ポリヌクレオチドは完全に相補的(ミスマッチなし)である。特異的なハイブリダイゼーション条件が、負の対照を含むハイブリダイゼーションアッセイを行うことで、結果として特異的なハイブリダイゼーションに至ることを証明するのは容易である(例えば、上記Shalon et al., および上記Chee et al.,を参照)。
【0143】
最適なハイブリダイゼーション条件は、標識プローブおよび固定化ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの長さ(例えば、オリゴマーに対するポリヌクレオチドが200塩基より長い)および種類(例えば、RNA、DNA、PNA)に左右される。核酸の特異的(すなわち、ストリンジェント)なハイブリダイゼーション条件の一般的なパラメータは、上記文献(Sambrook et al.)およびAusubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York(すべての目的のため、全体として本明細書に取り込まれる)に記載されている。SchenaらのcDNAマイクロアレイが用いられると、典型的なハイブリダイゼーション条件は、5×SSC+0.2%SDS中、65℃、4時間のハイブリダイゼーション、引き続く低ストリンジェントな洗浄バッファー(1×SSC+0.2%SDS)中、25℃での洗浄、そして高ストリンジェントな洗浄バッファー(0.1×SSC+0.2%SDS)中、25℃、10分間の洗浄である(Shena et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:10614)。有用なハイブリダイゼーション条件は、例えば、Tijessen, 1993, Hybridization With Nucleic Acid Probes, Elsevier Science Publishers B.V. and Kricka, 1992, Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Diego, Calif,でも提供されている。
【0144】
シグナル検出およびデータ解析
蛍光標識プローブが用いられる場合、転写物アレイの各部位での蛍光は、好ましくは、走査型共焦点レーザー顕微鏡により検出される。1つの実施態様において、適切な励起光を用いての別々の走査が、用いられた2つの発光団のそれぞれについて行われる。または、用いられた発光団に特異的な波長で標本照射を可能とするレーザーが用いられ、発光団からの放出が分析される。好ましい実施態様において、該アレイはコンピューター制御X−Yステージのレーザー蛍光スキャナーおよび顕微鏡の対物レンズで走査される。発光団の連続励起は、多重線混合ガスレーザーにより行われ、放出された光が波長により分けられ、光増幅管により検出される。蛍光レーザー走査装置は、Schena et al., 1996, Genome Res. 6:639-645および本明細書に引用した他の文献に記載がある。あるいは、線維光学束(Ferguson et al., 1996, Nature Biotech. 14:1681-1684)を使用して、多数部位で同時にmRNAの存在レベルをモニターする。
【0145】
シグナルを記録し、好ましい実施態様においては、コンピューターにより、例えば、12ビットのアナログ/デジタルボードを用いて解析される。1つの実施態様において、走査像はグラフィックプログラム(例えば、Hijaak Graphics Suite)を用いて干渉模様を除き、続いて各部位で各波長での平均ハイブリダイゼーションのスプレッドシートを生じる画像格子プログラムを用いて解析される。
【0146】
必要なら、実験的に決定された、2つの蛍光体用チャンネル間の「クロストーク」(またはオーバーラップ)についての補正が成される。転写物アレイ上の特定のハイブリダイゼーション部位のいずれかについて、2つの発光団の放出の割合が好ましくは計算される。この割合は、同族遺伝子の絶対的発現レベルからは独立しているが、その発現が薬物投与、遺伝子欠失、または何らかの他の検査された事象により有意に調節される遺伝子にとっては有用である。
【0147】
好ましくは、動揺を陽性または陰性として確認することに加えて、動揺の大きさを測定することが有利である。このことは、当業者にとって容易に明らかとなる方法により行われる。
【0148】
転写状態測定の別の方法
細胞の転写状態は、当該技術分野で既知の別の発現技術により測定される。
【0149】
TAQMAN[登録商標]に基づくmRNAレベルの解析
RT−PCR(リアルタイム定量的PCR)アッセイは、mRNA鎖を含むRNA鎖からのDNA鎖の合成を触媒するためにRNA逆転写酵素を利用する。生じたDNAが特異的に検出されて定量され、そしてこの工程を用いて、特定の種のmRNAレベルを測定する。これを実施するための1つの方法は、PCR反応で特異的形状のプローブを切断するためにAMPLITAQ GOLD[登録商標]DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用する、TAQMAN[登録商標](PE Applied Biosystem, Foster City, CA)として知られている。これは、TAQMAN[登録商標]プローブとも言われる。Luthra R, et al., Novel 5' exonuclease-based real-time PCR assay for the detection of t(14;18)(q32;q21) in patients with follicular lymphoma., Am J Pathol., Vol 153, (1998), pp:63-68を参照されたい。該プローブは、5’−レポーター色素と3’−クエンチャー色素をもつオリゴヌクレオチド(通常〜20mer)からなる。FAM(6−カルボキシフルオレセイン)の様な蛍光レポーター色素は、オリゴヌクレオチドの5’末端に共有結合する。該レポーターは、3’末端に位置するリンカーアームを介して接着するTAMRA(6−カルボキシ−N,N,N’,N’−テトラメチルローダミン)によりクエンチャーされる。Kuimelis RG, et al., Atructural analogues of TaqMan probes for real-time quantitative PCR., Nucleic Acids Symp Ser., Vol 37, (1997), pp:255-256;およびMullah B, et al., Efficient synthesis of double dye-labeled oligodeoxyribonucleotide probes and their application in a real time PCR assay., Nucleic Acids Res., Vol 15, (1998), pp:1026-1031を参照されたい。この反応に際し、プローブの切断がレポーター色素とクエンチャー色素を分断し、レポーターの蛍光を増大させる。
【0150】
PCR産物の蓄積は、レポーター色素の蛍光の増加をモニターすることにより直接検出される。Heid CA, et al., Real time quantitative PCR., Genome Res., Vol 6, (1996), pp:986-994を参照されたい。反応は、所定サイクル数後の蓄積PCR産物の量よりむしろ、PCR産物の増幅が先に検出される、サイクルの時間ポイントで区別される。核酸標的の開始コピー数が多いと、蛍光の有意な増加がより早期に観察される。Gibson UE, et al., A novel method for real time quantitative RT-PCR, Genome Res., Vol 6, (1996), pp:995-1001を参照されたい。
【0151】
プローブが未変化である場合、レポーター色素がクエンチャー色素に近接すると、主としてフォースター(Forster)型エネルギー転移によりレポーター蛍光の抑制が起こる。Lakowicz JR, et al., Oxygen quenching and fuluorescence depolarization of tyrosine residues in proteins., J Biol Chem., Vol 258, (1983), pp:4794-4801を参照されたい。PCRに際し、もし対象の標的が存在するならば、プローブはフォワードおよびリバースプライマー部位の間に特異的にアニールする。AMPLITAQ GOLD[登録商標]DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレオ活性により、プローブが標的にハイブリダイゼーションする場合にのみ、レポーターとクエンチャー間でプローブを切断する。プローブフラグメントは次いで標的から離れ、鎖の伸長は続けられる。この工程はすべてのサイクルで起こり、対数的に蓄積した産物と干渉し合わない。プローブの3’末端をブロックし、PCRでのプローブの伸張を防ぐ。
【0152】
受動的対照は、TAQMAN[登録商標]バッファーに含まれる色素であり、5’ヌクレアーゼアッセイには関与しない。受動的対照は内部基準を提供するが、この基準に対してレポーター色素シグナルは解析に際し標準化される。標準化は濃度または容積の変化による蛍光のゆらぎを補正するために必要である。
【0153】
標準化はレポーター色素の発光強度を受動的対照標準の発光強度で割って、所定の反応チューブに対するRnn(標準化レポーター)と定義する比を得ることにより実施する。
【0154】
閾値サイクルまたはCt値は、統計的に有意な増加ΔRnが最初に検出されるサイクルである。Rn対サイクル数のグラフ上、閾値サイクルは、配列検出方法がPCR産物の対数増加と関連するシグナルの増加を検出することが始まった時である。
【0155】
定量測定を行うために、cRNA(標準)の連続希釈液が、正確で早いmRNA定量に必要な標準曲線を作成するために、各実験で含まれる。この技術の再現性を評価するために、同じcRNA試料の増幅を数回実施してもよい。
【0156】
細胞の転写状態を測定する他の技法では、電気泳動分析のために限度はあるが複雑な制限酵素フラグメントのプールを生じる;例えば、2つの制限酵素切断と段階的プライマーとの組み合わせ方法(例えば、Zabeauらにより、1992年9月24日に出願された欧州特許番号第0 534858A1号を参照されたい)、または規定のmRNA末端に最も近接する部位を有する制限酵素フラグメント選択する方法(例えば、Prashar et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:659-663を参照)などである。
【0157】
他の方法では統計的にcDNAプールを試験する;例えば、多数のcDNAのそれぞれ十分な塩基(例えば、20〜50塩基)の配列を決定するか、または限定されたmRNA末端(例えば、Velculescu, 1995, Science 270:484-487参照)経路パターンに比例して既知位置に生成する短いタグ(例えば、9〜10塩基)の配列を決定する。
【0158】
他の状況の測定
本発明の様々な実施態様において、転写状態以外の生物学的状態の状況、例えば、翻訳状態、活性状態、または混合状況などが、薬物応答および経路応答を得るために測定される。これらの態様の詳細をこのセクションに記載する。
【0159】
翻訳状態の測定
遺伝子によりコード化されるタンパク質の発現は、検出可能に標識されたプローブ、または続いて標識されるプローブにより検出される。一般に、該プローブは発現タンパク質を認識する抗体である。
【0160】
本明細書で用いられる用語、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、およびタンパク質への結合に十分な生物学的機能抗体フラグメントを含むが、これらに限らない。
【0161】
記載の遺伝子の1つによりコード化されるタンパク質に対する抗体を産生するため、種々の宿主動物にポリペプチドまたはその一部分を注射して免疫する。かかる宿主動物は、限定されるものではないが、ウサギ、マウス、およびラットなど、ほんの一部ではあるが例示される。免疫応答を上昇させるために種々のアジュバントを使用し得る;これは宿主の種により、フロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リソレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、スカシガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(無菌化ウシ型結核菌)やコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物などの抗原またはその抗原性機能誘導体により免疫した動物の血清からもたらされる抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体の産生には、上記のような宿主動物にコード化されたタンパク質またはその一部を上記のアジュバントと共に注射し、免疫する。
【0163】
モノクローナル抗体(mAb)は特定の抗原に対する抗体の均一な集団であり、継代細胞株の培養による産生を提供する技術のいずれかによっても入手し得る。これらの方法は、制限されるものではないが、ハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497 (1975);および米国特許番号第4,376,110号);ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al., Immunology Today, 4:72 (1983); Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026-2030 (1983);およびEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985)などである。かかる抗体は免疫グロブリンクラスのもので、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDなどとそのサブクラスを包含する。本発明のmAb産生ハイブリドーマは、試験管内または生体内で培養される。高力価のmAbを生体内で生産することが、現在の好適な産生方法である。
【0164】
さらに、「キメラ抗体」の産生用に開発された技法(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 81:6851-6855 (1984); Neuberger et al., Nature, 312:604-608 (1984); Takdea et al., Nature, 314:452-454 (1985))は、適切な抗原特異性をもつマウスの抗体分子由来の遺伝子と、適切な生物活性をもつヒト抗体分子由来の遺伝子とをつなぎ合わせることによるもので、これらの技法も使用される。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来の分子であり、マウスmAb由来の可変もしくは超可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とをもつ抗体である。
【0165】
別法として、1本鎖抗体生成について記載された技法(米国特許番号第4,946,778号;Bird Science, 242:423-426 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883 (1988);およびWard et al., Nature, 334:544-546 (1989))が、別個に発現された遺伝子−1本鎖抗体を生成するために適用される。1本鎖抗体はFv領域の重鎖と軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋を介してつなぎ、1本鎖ポリペプチドとすることにより形成される。
【0166】
より好ましくは、「ヒト化抗体」の生成に有用な技法が、タンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体に対する抗体を生産するのに適用される。かかる技法は以下の米国特許に記載されている:第5,932,448;5,693,762;5,693,761;5,585,089;5,530,101;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,661,016;および5,770,429号。
【0167】
抗体フラグメントは特定のエピトープを認識するものであり、既知技法により生成される。例えば、かかるフラグメントは限定されるものではないが、抗体分子のペプシン切断により作られるF(ab')フラグメント、およびF(ab')フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成させるFabフラグメントなどである。あるいは、Fab発現ライブラリーが構築され(Huse et al., Science, 246:1275-1281 (1989))、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定し得るようにしてもよい。
【0168】
次に、既知タンパク質が試料中で発現されている程度を、上記の抗体を利用するイムノアッセイ法により定量する。かかるイムノアッセイ法は、限定されるものではないが、ドットブロット法、ウエスタンブロット法、競合および非競合タンパク結合アッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫組織化学、蛍光活性化細胞分離法(FACS)、およびその他の一般的に使用され、科学文献および特許文献に広く記載され、かつ商業的に採用される多くの方法を含む。
【0169】
検出が容易であるという点で特に好ましいのは、サンドイッチELISAであり、これについては多くの変法があるが、本発明ではそのすべてを包含するものとする。例えば、典型的なフォワードアッセイ法では、未標識抗体を固体基板に固相化し、適当な時間インキュベーションした後に、テストする試料を結合した分子と十分な時間接触させて、抗体−抗原2元複合体を形成させる。この時点で、検出可能なシグナルを誘発し得るレポーター分子で標識した2次抗体が加えられて、インキュベートされ、十分な時間を掛けて抗体−抗原−標識抗体の3元複合体を形成させる。未反応物質はすべて洗い流し、抗原の存在をシグナル観察により判定するか、または既知量の抗原を含む対照試料を比較することにより定量し得る。フォワードアッセイの変法は同時アッセイも含み、その場合、試料と抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する;リバースアッセイでは標識抗体と試験する試料を最初に組合せ、インキュベートした後に、未標識表面結合抗体に加える。これらの技法は当業者周知であり、わずかな変更の可能性は容易に明らかとなる。本明細書で用いられる「サンドイッチ」アッセイとは基本的な2つの部位による技法に関するすべての変法を包含するものとする。本発明のイムノアッセイにとって、唯一の制限因子は標識抗体が対象とする遺伝子が発現するタンパク質に特異的な抗体でなければならないということである。
【0170】
この種のアッセイに最も共通に使用されるレポーター分子は、酵素、発光団−または放射性核−含有分子である。酵素イムノアッセイの場合、酵素は2次抗体に、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸により接合させる。しかし、容易に分かるように、多様な連結反応法が存在することが、当業者周知である。一般的に使用される酵素としては、とりわけ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼである。特定の酵素と共に使用すべき基質は、一般に、対応する酵素による加水分解により、検出可能な色調変化を生ずるように選択される。例えば、p−ニトロフェニルリン酸エステルはアルカリホスファターゼ結合体での使用に適しており、ペルオキシダーゼ結合体には1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが共通して使用される。発光基質を採用することも可能であり、その場合は上記の色素原基質よりもむしろ蛍光産物を生じる。適切な基質を含有する溶液を次いで3元複合体に加える。この基質を2次抗体に結合した酵素と反応させて、定量的可視シグナルを生じさせ、このシグナルを通常分光光度法によりさらに定量して、血清試料中に存在するタンパク質量を評価する。
【0171】
別法としては、フルオレセインおよびローダミンの様な蛍光化合物を、その結合能力を変化させることなく交互に抗体に化学的に共役させる。特定波長の光の照射により活性化した場合、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子に励起状態を誘発し、次いで特徴的な長波長にて光を放出する。放出光は光学顕微鏡により可視で検出し得る特徴的な色として現れる。免疫蛍光とEIA技法は共に技術的によく確立されており、とりわけ本発明では好適である。しかし、放射性同位元素、化学発光または生物発光分子などの他のレポーター分子も採用し得る。必要な用途に合致させるために手法をどのように変更するかは当業者に容易に明らかである。
【0172】
翻訳状態の測定もまた幾つかのさらなる方法にしたがって実施し得る。例えば、タンパク質についての全ゲノムのモニター(すなわち、「プロテオーム」、上記のGoffeau et al.,)は、その結合部位が細胞ゲノムのコードする複数のタンパク質種に特異的な固定化抗体、好ましくはモノクローナル抗体からなるマイクロアレイを構築することにより行われる。好ましくは、抗体はコード化タンパク質の実質的な分画に対し、または少なくとも対象の生物学的ネットワークモデルの検証または確認に関連するタンパク質に対し存在する。モノクローナル抗体の作製方法は周知である(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.; すべての目的のため、全体として本明細書に取り込まれる)。1つの好ましい実施態様において、モノクローナル抗体は細胞のゲノム配列に基づいて設計された合成ペプチドフラグメントに対して生じる。かかる抗体アレイにより、細胞由来のタンパク質がアレイに接着し、その結合を当該技術分野において既知のアッセイ法によりアッセイする。
【0173】
別法として、タンパク質は2次元ゲル電気泳動システムにより分離される。2次元ゲル電気泳動法は技術上周知であり、典型的には第1の次元に沿う等電点電気泳動と引き続く第2の次元に沿うSDS−PAGE電気泳動からなる。例えば、Hames et al., 1990, Gel Electrophoresis of Proteins: A Practical Approach, IRL Press, New York; Shevchenko et al., 1996, Proc. Natl Acad. Sci. USA 93:1440-1445; Sagliocco et al., 1996, Yeast 12:1519-1533; Lander, 1996, Science 274:536-539を参照されたい。生じた電気泳動図は幾つかの技法、例えば、質量スペクトル技法、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロット法および免疫ブロット解析、および内部およびN−末端ミクロ配列決定法などにより解析される。これらの技法を用い、所定の生理的条件下、例えば、薬物に暴露された細胞(例えば、酵母)、または例えば、特定遺伝子の欠失または過剰発現により修飾された細胞などで産生されたすべてのタンパク質の実質的分画を同定することが可能である。
【0174】
生物学的状態の他の観点に基づく態様
mRNAの存在量以外の細胞構成成分のモニターは、mRNAのモニターに際しては遭遇することのなかったある種の技術的難しさが現在存在するが、当業者にとって、細胞機能の特性化に関連するタンパク質の活性を測定し得る本発明の使用、すなわち、本発明の態様がかかる測定に基づくものであることは明らかである。活性の測定は特性化すべき特定の活性に適切な機能的、生物化学的、または物理的手段により実施し得る。その活性が化学的形質転換に関る場合、細胞性タンパク質を天然の基質と接触させ、その形質転換率を測定する。その活性が多重合単位の関連、例えば、DNAとの活性化DNA結合複合体の関連に関る場合、関連タンパク質の量または関連の二次的結果、例えば、転写されたmRNAの量を測定する。また、機能的活性のみが判明している場合、例えば、細胞サイクル制御における機能など、その機能の仕事能力を観察し得る。それが既知であり測定されていたとしても、タンパク質活性の変化は本発明の前記方法により解析された応答データを形成する。
【0175】
別の制限のない態様において、応答データは細胞の生物学的状態の混じりあった側面から形成されることもある。応答データは、例えば、あるmRNAの存在量の変化、あるタンパク質存在量の変化、およびあるタンパク質活性の変化から構成される。
【0176】
マーカーとしての核酸およびタンパク質の検出
特定の実施態様において、マーカーに対応するmRNAのレベルは、当該技術分野において既知の方法を用い生体試料中にインサイツおよび試験管内の両方により決定される。「生体試料」という用語は、対象から採取した組織、細胞、生体液およびその分離株、ならびに対象内に存在する組織、細胞および体液を含むものとする。多くの発現検出法で単離したRNAを使用する。試験管内では、RNA単離技法としてmRNAの単離に反しない方法を選択し、細胞由来のRNA精製に使用することができる(例えば、Ausubel, et al., Ed., Current Protocol in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1987-1999を参照)。さらに、大量の組織試料は、当該技術分野において既知の技法、例えば、(Chomczynski、米国特許番号第4,843,155号(1989))の1ステップRNA単離工程により容易に処理加工される。
【0177】
単離mRNAはハイブリダイゼーションまたは増殖アッセイ、例えば、限定されるものではないが、サザンもしくはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアレイなどに用いられる。mRNAレベルの検出の1つの好ましい診断方法は、検出すべき遺伝子がコードするmRNAにハイブリダイゼーションし得る核酸分子(プローブ)と該単離mRNAとを接触させることからなる。核酸プローブは、例えば、全長cDNAまたはその一部、例えば、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであって、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイゼーションするのに十分なものである。本発明の診断アッセイに使用する他の適切なプローブを本明細書に記載する。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは問題のマーカーが発現していることを示すものである。
【0178】
1つの形態で、mRNAは固体表面に固定化され、例えば、単離mRNAをアガロースゲル泳動し、次いでゲルからニトロセルロースなどの膜にmRNAを移動させることによりプローブと接触させる。代替の形態では、プローブを固体表面に固定し、mRNAとプローブとを、例えば、アフィメトリックス(Affymetrix)遺伝子チップアレイにて接触させる。当該技術分野の技術者は、本発明のマーカーによりコード化されるmRNAレベルを検出する際に使用する既知のmRNA検出方法を容易に適用する。
【0179】
試料中の本発明のマーカーに対応するmRNAレベルを測定する代替法は、核酸増幅法、例えば、RT−PCRによる方法である(実験態様については以下参照:Mullis, 米国特許番号第4,683,202号;リガーゼ連鎖反応、Barany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193 (1991);自己持続性配列複製;Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874-1878 (1990);転写増幅システム;Kwoh et al., Proc. Natl. Ac. Sci. USA, 86:1173-1177 (1989);Q−βレプリカーゼ;Lizardi et al., Bio/Technology, 6:1197 (1988);回転環式複製;Lizardi et al., 米国特許番号第5,854,033号(1988);または他の核酸増幅法とそれに続く当業者周知の技法による増幅分子の検出)。これらの検出工程図は核酸分子の検出のために、かかる分子が非常に低い分子数で存在する場合にとりわけ有用である。本明細書で用いられる増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域(それぞれプラス鎖とマイナス鎖、またはその逆)にアニールし、かつその間に短い領域を含み得る1対の核酸分子と定義する。一般に、増幅プライマーは長さが約10ないし30個のヌクレオチドからなり、長さ約50ないし200個のヌクレオチドの領域に隣接する。適切な条件下、適切な試薬類により、かかるプライマーは該プライマーが隣接するヌクレオチド配列からなる核酸分子の増幅を可能とする。
【0180】
インサイツ方法のため、mRNAは検出に先立って細胞から単離される必要はない。かかる方法において、細胞または組織試料は既知の組織学的方法を用い、調製/処理加工する。次いで、試料を支持体、一般にはガラススライドに固定化し、次いで該マーカーをコードするmRNAにハイブリダイゼーションし得るプローブと接触させる。
【0181】
マーカーの絶対的発現レベルに基づき判定する代替法としては、該マーカーの標準化発現レベルに基づいて判定を下してもよい。発現レベルは、その発現と、マーカーではない遺伝子、例えば、構成的に発現するハウウキーピング遺伝子の発現とを比較することによりマーカーの絶対的発現レベルを補正して標準化する。標準化に適した遺伝子はアクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子または上皮細胞特異遺伝子である。この標準化は1つの試料、例えば、患者の試料の発現レベルと別の試料との比較、または異なる起源由来の試料間の比較を可能とする。
【0182】
あるいは、発現レベルは相対的発現レベルとして提供し得る。マーカーの相対的発現レベルの決定のために、正常試料と疾患生体試料からの10以上の試料、好ましくは50以上の試料につき、問題試料の発現レベル決定前に、マーカーの発現レベルを決定する。大量の試料にてアッセイした遺伝子それぞれの平均発現レベルを決定し、それをマーカーの発現レベルのベースラインとして使用する。次いで、テスト試料について決定されたマーカーの発現レベル(絶対的発現レベル)をそのマーカーについて得られた平均発現値で割る。これが相対的発現レベルとなる。
【0183】
好ましくは、ベースライン決定に使用した試料は多型を有さない患者由来のものである。細胞供給源の選択は相対的発現レベルの使用に依存する。平均発現値として正常組織に見出される発現を使用することは、アッセイしたマーカーが特異的である(正常細胞に対して)か否かを確認する上での助けとなる。さらに、より多くのデータが蓄積された場合には、平均発現値を改正し、蓄積データに基づく改善相対発現値とする。
【0184】
ポリペプチドの検出
本発明の別の実施態様において、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。本発明のポリペプチドを検出する好ましい作用物質は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合し得る抗体であり、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナルでもよいし、より好ましくはモノクローナル抗体である。未処理抗体、またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab'))を使用し得る。プローブまたは抗体に関連する用語「標識」は、プローブまたは抗体に検出可能な物質を接着(すなわち、物理的結合)させることによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識した別の作用物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含するものとする。間接標識の例は、蛍光標識した2次抗体による1次抗体の検出、および蛍光標識したストレプトアビジンで検出し得るようにDNAプローブをビオチンで標識することである。
【0185】
精神病性障害の患者由来のタンパク質は、当業者周知の技法を用いて単離することができる。採用されるタンパク質単離方法は、例えば、以下に記載がある:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1988)。
【0186】
試料が所定の抗体に結合するタンパク質を含んでいるかどうかを判断するためには様々な方式を採用し得る。かかる方式の例は、限定されるものではないが、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などである。当業者は細胞が本発明のマーカーを発現するかどうかの判定に使用し得るように、既知のタンパク質/抗体検出法を容易に改造し得る。
【0187】
1つの形態において、抗体または抗体フラグメントは発現したタンパク質検出のために、ウエスタンブロットまたは免疫蛍光技法などの方法に用いられる。かかる使用において、固体支持体上に抗体またはタンパク質のいずれかを固定化することが一般に好ましい。適当な固相支持体または担体は抗原または抗体を結合し得る支持体である。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩、および磁鉄鉱である。
【0188】
当業者は抗体または抗原を結合する多くの他の適切な担体を知っていようし、本発明で使用し得るようにかかる支持体を改造することも可能である。例えば、患者細胞から単離されるタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動させ、ニトロセルロースなどの固体支持体に固定化することができる。次いで、支持体は適当なバッファーで洗浄され、検出可能に標識された抗体で処理される。固体支持体は、次いでバッファーで2度の洗浄を行い、未結合抗体を除去する。続いて、固体支持体上に結合した標識の量は常套手段で検出される。
【0189】
本発明ではまた生体試料(例えば、限定はされないが、血清、血漿、リンパ液、のう胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水、または血液を含むいずれかの体液および生体組織の剖検サンプルを含む)中の本発明マーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するキットも包含する。例えば、該キットは生体試料中本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出し得る標識化合物または作用物質、および該試料中のポリペプチドまたはmRNAの量を決定する手段(例えば、該ポリペプチドに結合する抗体または該ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含んでなる。キットはまたキットを使用して得られる結果の解釈についての指示書を含む。
【0190】
抗体に基づくキットの場合、該キットは、例えば、1)本発明マーカーに対応するポリペプチドに結合する1次抗体(例えば、固体支持体に接着);および選択肢として2)該ポリペプチドまたは1次抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識に結合されている別の2次抗体;を含有してなる。
【0191】
オリゴヌクレオチドに基づくキットの場合、該キットは、例えば、1)本発明マーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識したオリゴヌクレオチド;または2)本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するのに有用な1対のプライマー;を含んでなる。該キットはまた、例えば、バッファー試薬、保存剤、またはタンパク質安定化剤を含んでなる。該キットはさらに検出可能な標識を検出するために必要な成分(例えば、酵素または基質)をさらに含んでなる。該キットはまた1つの対照試料または一連の対照試料であって、これをアッセイして試験試料と比較するための試料を含み得る。該キットの各成分は個々の容器に納め得るものであり、その容器はすべて本キットを使用して実施したアッセイの結果を解釈するための指示書と共にひとつのパッケージに収められる。
【0192】
細胞への抗体導入
細胞へのタンパク質の特徴付けは様々な方法でなされる。抗体はいろいろな様式で、例えば、抗体のマイクロインジェクション(Morgan et al., 1988, Immunology Today 9:84-86)または所望の抗体をコードするmRNAによるハイブリドーマの形質転換(Burke et al., 1984, Cell 36:847-858)などにより、細胞中に導入することができる。さらなる技法において、組換え抗体を設計し、広範な非リンパ球細胞型中で異所性に発現させて、標的タンパク質に結合させること、また標的タンパク質の活性を遮断することができる(Biocca et al., 1995, Trends in Cell Biology 5:248-252)。該抗体の発現は、好ましくは、Tetプロモーターなどの制御可能プロモーター、または構成的に活性なプロモーター(摂動を飽和させる産生用)の制御下にある。第一工程では標的タンパク質に適切な特異性をもつ特定のモノクローナル抗体を選択する(下記参照)。選択した抗体の可変領域をコードする配列は、様々に設計した抗体方式、例えば、全抗体、Fabフラグメント、Fvフラグメント、1本鎖Fvフラグメント(ペプチドリンカーにより結合させたVHとVL領域)(「ScFv」フラグメント)、ジアボディ(diabodies)(異なる特異性をもつ2つ会合したScFvフラグメント)などにクローン化することができる(Hayden et al., 1997, Current Opinion in Immunology 9:210-212)。細胞内に発現される様々な方式の抗体は種々の既知細胞内リーダー配列との融合体として発現し、細胞性区画(例えば、細胞質、核、ミトコンドリアなど)を標的とすることができる(Bradbury et al., 1995, Antibody Engineering (vol.2)(Borrebaeck ed.), pp.295-361, IRL Press)。特に、ScFv方式が細胞質標的化にとりわけ適していると思われる。
【0193】
有用な抗体種類の多様性
抗体の種類は、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、1本鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーである。標的タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生には技術上既知の種々の手法が使用し得る。抗体を生産するには、種々の宿主動物に標的タンパク質を注射して免疫するが、かかる宿主動物としては限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラットなどである。宿主の種類に応じて、種々のアジュバントを使用して免疫応答を上昇させることができるが、アジュバントとしては、限定されるものではないが、フロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リソレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、ジニトロフェノール、および無菌化ウシ型結核菌(BCG)やコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントなどである。
【0194】
モノクローナル抗体
標的タンパク質に対するモノクローナル抗体の調製には、培養継代細胞株による抗体分子の製造技法が使用し得る。かかる技法は、制限されるものではないが、コーラーとミルシュタインが最初に開発したハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497 (1975));トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today, 4:72);およびヒトモノクローナル抗体を産生するEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96); などである。本発明の別の実施態様において、モノクローナル抗体は最新の技法を利用して無菌動物で製造することができる(PCT/US90/02545)。本発明によると、ヒト抗体が使用可能で、ヒトのハイブリドーマを用いることにより(Cote et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)またはEBVウイルスにより試験管内でヒトB細胞を形質転換することにより(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)入手し得る。事実、本発明によると、標的タンパク質に特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子と、適切な生物活性をもつヒト抗体分子由来の遺伝子とを繋ぐことによる「キメラ抗体」の製造のために開発された技法を使用し得る(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature 314:452-454);かかる抗体は本発明の範囲内にある。
【0195】
さらに、モノクローナル抗体が有利な場合、ファージディスプレイ技法を用いて大型の抗体ライブラリーから二者択一的に選択し得る(Marks et al., 1992, J. Biol. Chem. 267:16007-16010)。この技法を使用し、1012までの異なる抗体のライブラリーはfd繊維状ファージの表面に発現され、モノクローナル抗体の選択に利用し得る抗体の「シングルポット」試験管内免疫系を生じる(Griffiths et al., 1994, EMBO J. 13:3245-3260)。かかるライブラリーから抗体を選択するには、技術上既知の技法にしたがい、例えば、ファージと固定化標的タンパク質とを接触させること、標的に結合したファージを選択しクローニングすること、および抗体可変領域をコードする配列を、所望の抗体フォーマットを発現する適切なベクターへサブクローニングすることにより実施する。
【0196】
本発明によると、1本鎖抗体の製造について記載した技法(米国特許番号第4,946,778号)を標的タンパク質に特異的な1本鎖抗体を製造するために適合させることができる。本発明のさらなる態様では、Fab発現ライブラリーの構築について記載した技法(Huse et al., 1989, Science 246:1275-1281)を利用して、標的タンパク質に対し所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能とする。
【0197】
抗体フラグメントが標的タンパク質のイディオタイプを含む場合には技術上既知の技法により生成させ得る。例えば、かかるフラグメントは限定されるものではないが以下のとおりである:抗体分子のペプシン切断により製造されるF(ab')フラグメント;F(ab')フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成させ得るFab’フラグメント;抗体分子をパパインと還元剤で処理することにより生成させ得るFabフラグメント;およびFvフラグメント。
【0198】
抗体製造において、所望の抗体のスクリーニングは技術上既知の技法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により実施される。標的タンパク質に特異的な抗体を選択するためには、標的タンパク質に結合する抗体について生成したハイブリドーマまたはファージディスプレイ抗体ライブラリーをアッセイし得る。
【実施例】
【0199】
実施例1
本発明のある態様を、CNTF遺伝子の多型と抗精神病薬に対する応答性との相関をまず見つける方法を示す実施例により示す。
【0200】
イロペリドンに対する処置応答と関連する遺伝的因子を努力して同定する際に、CNTF(毛様体神経栄養因子)遺伝子の多型(11q12.2に位置し、GENBANK配列X55890(バージョン1)の103G>Aの多型、PubMed:9285965を参照)と臨床試験での抗精神病薬イロペリドンに対する臨床上の応答との関連を調べた。該試験は、統合失調症の患者に42日間、1日2回(b.i.d)投与されたプラシーボ(続いて該統合失調症の患者に4、8、12、16、または24mg/日の用量で、46週間、1日1回(p.d)投与されたイロペリドンで長期間処置された)と比較して2つの重複しない容量範囲のイロペリドン(12または16mg/日、および20または24mg/日)およびリスペリドン(6または8mg/日)の有効性および安全性を評価するために、無作為、二重盲検、プラシーボおよびリスペリドン対照、多施設試験であった。
【0201】
遺伝子多型の候補についての遺伝薬理学的解析を、臨床試験の第II相で行った。CNTF(毛様体神経栄養因子)103G>A多型部位の多型(GENBANK配列X55890(バージョン1))103G>A(発現タンパク質の変化FS63 TER)が、一連の臨床試験で研究された有効な臨床パラメーターのいずれか、およびBPRSA、全PAMMS、陽性PANNS、陰性PANNS、および一般的なPANNSスケールの特異的な変化と関連するかどうかを決定した。
【0202】
CNTF遺伝子およびイロペリドン12〜16mg処置群の処置応答(BPRSAおよび全PANNSスケール)との有意な関連を得た。PANNSスケールの記載については、Kay SR et al. 1987, Schizophrenia Bulletin 13 ; 2 : 261-276を参照されたい。この群の個体は、非GG型より有意によく応答したGG型のCNTF遺伝子であり、プラシーボに対するGG型の応答は、非常に有意(p<0.001)であった。これらの結果は、イロペリドンの様な抗精神病薬が、GG型のCNTF遺伝子の個体の統合失調症のような精神病性障害の処置により有効となることを示す。このようにして、CNTF103G>A多型(GENBANK配列X55890(バージョン1))とBPRSAおよび全PANNSスケールとの関連を同定した。
【0203】
全部で207の特異な血液試料を治験実施施設の患者から収集した。DNAをPURGENE[登録商標]DNA単離キット(D−50K)を用いてCovance(Geneva)により抽出した。CNTF103G>A多型(GENBANK配列X55890(バージョン1))多型については、Takahashiが記載している。Takahashi et alL. Nature Genet. 7 : 79-84, 1994を参照されたい。
【0204】
遺伝子型同定のためプローブセットを設計し、Third Wave Technologies, Inc(Madison, WI)で合成した。遺伝子型同定を、製造元(Third Wave Technologies, Inc, Madison WI)の指示に従い、INVADER[登録商標]アッセイを用いて、60ngのゲノムDNAで行った。Ryan D et al. Molecular Diagnosis Vol. 4 No 2 1999 : 135-144およびLyamichev V et al. Nature Biotechnology Vol 17 1999 : 292-296、米国特許番号第5,846,717および6,001,567号(これらの記載は、全体として引用により本明細書に取り込まれる)を参照されたい。
【0205】
解析は、遺伝子型同定した多型のいずれかが臨床パラメーターと有意に関連するかを調べるための処置の分散分析の解析を含む。該モデルは、遺伝子型で分類された臨床パラメーターの%変化からなる。処置をプラシーボと比較した際の遺伝子型と臨床パラメーターとの関連を、分散解析および共分散解析を用いて確立した。
【0206】
分散モデルの解析での用語は、同一の遺伝子型の個体のための処置で分類した臨床パラメーターの%変化を含む。共分散モデルの解析の用語は、同一の遺伝子型の個体の処置群で分類した研究に基づく臨床パラメーターの基準値および最終値を含む。処置の分散解析は、12〜16mg用量のイロペリドンで処置した個体(群A)について、全PANSSおよびBPRSAが、CNTFのCNTF103G>A多型と有意に関連すると明らかにした。多型はイントロンにあり、スプライス部位の修飾を生じ、代わりに切断mRNAを生じた。該修飾の結果は臨床応答を変える。
【0207】
実施例2
新たに発症した精神病性障害の30歳女性を医師が診察した。抗精神病薬の利益を得る精神病性障害であるとの診断後、医師は、CNTF遺伝子の多型の存在について試験する可能性を彼女に助言し、この結果がイロペリドンを含む薬物の使用を指すことを説明した。
【0208】
患者の同意を得て、医師は、患者の遺伝子型を決定し、患者が位置103でGG型またはAA型のCNTF遺伝子を有するかを決定するための検査を行った。医師は、短期および長期間連続する抗精神病薬処置について患者で検討した。医師は、別の利用可能な処置様式および薬物も検討した。
【0209】
これらの結果に基づき、患者が副作用を最小とする比較的低用量に望ましい応答を示すという予想により、患者が精神病性障害の症状をコントロールするのを助けるイロペリドンの様な薬物の試験を、医師が薦め、患者がこれに同意する。
【0210】
実施例3
静座不能およびジスキネジアの様な典型的な抗精神病薬の副作用症状の精神病性障害の52歳の男性を医師が診察した。当該患者をイロペリドンで処置し、精神病性症状はうまくコントロールされたが、彼は、薬物由来の多数の副作用を示している。医師は遺伝子型同定を提言し、遺伝子型同定の結果が可能とする処置の選択について患者に助言した。患者を検査し、イロペリドンに対する最も望ましい応答性と関連する遺伝子型(すなわち、GGまたはAA)の1つを有するかを決定した。この結果およびイロペリドンに対する高感受性が予測されたことに基づき、医師は、副作用を減少する見込みのある、実際に少ない用量のイロペリドンでの処置方法を進めることができる。医師は、患者のイロペリドン用量を減らし、副作用を改善し、患者と他の人に危険となる可能性のある精神病性障害の患者が悪化のリスクを負うことなく、患者コンプライアンスを向上させる。
【0211】
用語および定義
以下の用語および定義を、本明細書で頻繁に用いるある種の用語の理解を容易にするために挙げる。
【0212】
本明細書において用いられる用語「精神病性障害」は、病的な心理状態のいずれかを意味し、精神病性症状は生じるてもよいし、または生じており、以下(これらに限らない)を含む(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th Edition (DSM-IV) Francis A editor, American Psychiatric Press, Wash, DC, 1994も参照されたい)。
【0213】
統合失調症障害
統合失調症、緊張型、亜慢性(295.21)、
統合失調症、緊張型、慢性(295.22)、
統合失調症、緊張型、急性増悪時の亜慢性(295.23)、
統合失調症、緊張型、急性増悪時の慢性(295.24)、
統合失調症、緊張型、寛解(295.55)、
統合失調症、緊張型、詳細不明(295.20)、
統合失調症、解体型、亜慢性(295.11)、
統合失調症、解体型、慢性(295.12)、
統合失調症、解体型、急性増悪時の亜慢性(295.13)、
統合失調症、解体型、急性増悪時の慢性(295.14)、
統合失調症、解体型、寛解(295.15)、
統合失調症、解体型、詳細不明(295.10)、
統合失調症、妄想型、亜慢性(295.31)、
統合失調症、妄想型、慢性(295.32)、
統合失調症、妄想型、急性増悪時の亜慢性(295.33)、
統合失調症、妄想型、急性増悪時の慢性(295.34)、
統合失調症、妄想型、寛解(295.35)、
統合失調症、妄想型、詳細不明(295.30)、
統合失調症、非定型型、亜慢性(295.91)、
統合失調症、非定型型、慢性(295.92)、
統合失調症、非定型型、急性増悪時の亜慢性(295.93)、
統合失調症、非定型型、急性増悪時の慢性(295.94)、
統合失調症、非定型型、寛解(295.95)、
統合失調症、非定型型、詳細不明(295.90)、
統合失調症、残りの型、亜慢性(295.61)、
統合失調症、残りの型、慢性(295.62)、
統合失調症、残りの型、急性増悪時の亜慢性(295.63)、
統合失調症、残りの型、急性増悪時の慢性(295.94)、
統合失調症、残りの型、寛解(295.65)、
統合失調症、残りの型、詳細不明(295.60)
【0214】
妄想性(妄想型)障害(297.10)、
短期反応精神病(298.80)、
統合失調症様障害(295.40)、
統合失調症性感情障害(295.70)、
誘発された精神病性障害(297.30)、
精神病性障害NOS(非定型性精神病)(298.90)
【0215】
情動障害
大うつ病性障害、精神病性特徴のある重症型(296.33)
I型双極性障害、躁病のみ発症、精神病性特徴のある重症型(296.23)
I型双極性障害、最も最近発症した軽躁病(296.43)
I型双極性障害、最も最近発症した躁病、精神病性特徴のある重症型(296.43)
I型双極性障害、最も最近発症した混合型、精神病性特徴のある重症型(296.63)
I型双極性障害、最も最近発症したうつ病、精神病性特徴のある重症型(296.53)
I型双極性障害、最も最近発症した詳細不明型(296.89)
II型双極性障害(296.89)
気分循環性障害(301.13)
双極性障害NOS(366)
(一般病状)による気分障害(293.83)
気分障害NOS(296.90)
行為障害、単独攻撃型(312.00)、
行為障害、非定型型(312.90)、
トゥーレット症候群(307.23)、
慢性運動または発声チック障害(307.22)、
一過性のチック障害(307.21)、
チック障害NOS(307.20)
【0216】
向精神物質使用異常
アルコール離脱性せん妄(291.00)、
アルコール幻覚症(291.30)、
アルコール依存症と関連するアルコール性痴呆(291.20)、
アンフェタミンまたは同様に作用する交感神経興奮剤 中毒(305.70)、
アンフェタミンまたは同様に作用する交感神経興奮剤 幻覚症状(292.81)、
アンフェタミンまたは同様に作用する交感神経興奮剤 妄想性障害(292.11)、
大麻妄想性障害(292.11)、
コカイン中毒(305.60)、
コカイン幻覚症状(292.81)、
コカイン妄想性障害(292.11)、
幻覚剤 幻覚症(305.30)、
幻覚剤 妄想性障害(292.11)、
幻覚剤 気分障害(292.84)、
幻覚剤 幻覚発現物質後の知覚障害(292.89)、
フェンシクリジン(PCP)または同様に作用するアリールシクロヘキシルアミン 中毒(305.90)、
フェンシクリジン(PCP)または同様に作用するアリールシクロヘキシルアミン 幻覚症状(292.81)、
フェンシクリジン(PCP)または同様に作用するアリールシクロヘキシルアミン 妄想性障害(292.11)、
フェンシクリジン(PCP)または同様に作用するアリールシクロヘキシルアミン 気分障害(292.84)、
フェンシクリジン(PCP)または同様に作用するアリールシクロヘキシルアミン 器質性精神障害NOS(292.90)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 中毒(305.90)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 幻覚症状(292.81)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 痴呆(292.82)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 妄想性障害(292.11)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 幻覚症(292.12)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 気分障害(292.84)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 不安障害(292.89)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 人格障害(292.89)、
別のまたは詳細不明な向精神物質 器質性精神障害NOS(292.90)
【0217】
幻覚症状(293.00)、
痴呆(294.10)、
強迫性障害(300.30)、
間欠性爆発性障害(312.34)、
衝動調節障害NOS(312.39)
【0218】
人格障害
人格障害、妄想型(301.00)、
人格障害、総合失調型(301.20)、
人格障害、総合失調様型(301.22)、
人格障害、反社会型(301.70)、
人格障害、境界型(301.83)
【0219】
本明細書で用いられる用語「抗精神病薬」は、精神病性障害の人の精神病の症状を減少または改善するために用いられる任意の薬物を意味し、以下の化合物を含むが、これらに限らない:アセトフェナジンマレイン酸塩;アレンテモール(Alentemol)臭化水素酸塩;アルペルチン(Alpertine);アザペロン;バテラプシン(Batelapine)マレイン酸塩;ベンペリドール;ベンゾインドピリン(Benzindopyrine)塩酸塩;ブロフォキシン(Brofoxine);ブロムペリドール;ブロムペリドールデカン酸塩;ブタクロモール塩酸塩;ブタペラジン(Butaperazine);ブタペラジンマレイン酸塩;カルフェナジン(Carphenazine)マレイン酸塩;カルボトロリン(Carvotroline)塩酸塩;クロルプロマジン;クロルプロマジン塩酸塩;クロルプロチキセン;チンペレン(Chinperen);チントリアミド(Chintriamide);クロマクラン(Clomacran)リン酸塩;クロペンチキソール(Clopenthixol);クロピモザイド(Clopimozide);クロピパザン(Clopipazan)メシル酸塩;クロロペロン(Cloroperone)塩酸塩;クロチアピン;クロチキスアミド(Clothixamide)マレイン酸塩;クロザピン;シクロフェナジン(Cyclophenazine)塩酸塩;ドリペリドール;エタゾラート(Etazolate)塩酸塩;フェンイミド(Fenimide);フルチンドール(Flucindole);フルメザピン(Flumezapine);フルフェナジンデカン酸塩;フルフェナジンエナント酸塩;フルフェナジン塩酸塩;フルスピペロン;フルスピリレン(Fluspirilene);フルトロリン(Flutroline);ゲボトロリン(Gevotroline)塩酸塩;ハリペミド(Halopemide);ハロペリドール;ハロペリドールデカン酸塩;イロペリドン;イミドリン(Imidoline)塩酸塩;レンペロン(Lenperome);マザペルチン(Mazapertine)コハク酸塩;メソリダジン;メソリダジンベシレート;メチアピン(Metiapine);ミレンペロン(Milenperone);ミルペルチン(Milipertine);モリンドン塩酸塩;ナラノール(Naranol)塩酸塩;ネフルモジド(Neflumozide)塩酸塩;オカペリドン(Ocaperidon);オランザピン;オキシペロミド(Oxiperomide);ペンフリドール;ペンチアピン(Pentiapine)マレイン酸塩;ペルフェナジン;ピオジド;ピノキセピン(Pinoxepin)塩酸塩;ピパンペロン;ピペルアセタジン(Piperacetazine);ピポチアジン(Pipotiazine)パルミチン酸塩;ピキンドン(Piquindone)塩酸塩;プロクロルペラジンエディシレート;プロクロルペラジンマレイン酸塩;プロマジン塩酸塩;クエチアピン;レモキシプリド;レモキシプリド塩酸塩;リスペリドン;リムカゾール塩酸塩;セペリドール(Seperidol)塩酸塩;セルチンドール;セトペロン(Setoperone);スピペロン;チオリダジン;チオリダジン塩酸塩;チオチキセン;チオチキセン塩酸塩;チオペリドン塩酸塩;チオスプリオン(Tiosprione)塩酸塩;トリフロペラジン塩酸塩;トリフルペリドール;トリフルプロマジン;トリフルプロマジン塩酸塩;およびジプラシドン塩酸塩。
【0220】
さらに、本明細書で用いる用語「抗精神病薬」は、これらに限られないが以下を含む、いわゆる「非定型抗精神病」薬を含む。
オランザピン、2−メチル−4−(4−メチル−1−ピペラジニル)10H−チエノ[2,3b][1,5]ベンソジアエピンは既知の化合物であり、統合失調症、統合失調症様障害、急性躁病、軽い不安神経症、および精神病の処置で有用であるとして米国特許番号第5,229,382号で記載されている。米国特許番号第5,229,382号は全体として、引用により本明細書に取り込まれる。
【0221】
クロザピン、8−クロロ−11−(4−メチル−1−ピペラジニル)−5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピンは、米国特許番号第3,539,573号(全体として引用により本明細書に取り込まれる)に記載されている。統合失調症の処置で臨床上の有効性が記載されている(Hanes, et al., Psychopharmacol. Bull., 24, 62 (1988))。
【0222】
リスペリドン、3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)ピペリジノ]エチル]−2−メチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド−[1,2−a]ピリミジン−4−オン、および精神病性異常の処置でのその使用が、米国特許番号第4,804,663号(全体として、引用により本明細書に取り込まれる)に記載されている。
【0223】
セルチンドール、1−[2−[4−[5−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−インドール−3−イル]−1−ピペリジニル]エチル]イミダゾリジン−2−オンが、米国特許番号第4,710,500号に記載されている。統合失調症の処置でのその使用は、米国特許番号第5,112,838および5,238,945号に記載されている。米国特許番号第4,710,500号;5,112,838号;および5,238,945号は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。
【0224】
クエチアピン、5−[2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ−]エタノール、および統合失調症の処置での有用性を示すアッセイでのその作用が、米国特許番号第4,879,288号(全体として、引用により本明細書に取り込まれる)に記載されている。クエチアピンは、典型的には、(E)−2−ブタン酸塩(2:1)塩として投与される。
【0225】
ジプラシドン、5−[2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンは、典型的には、一水和物塩酸塩として投与される。該化合物は、米国特許番号第4,831,031号および5,312,925号に記載されている。統合失調症の処置での有効性を示すアッセイでのその作用は、米国特許番号第4,831,031号に記載されている。米国特許番号第4,831,031号および5,312,925号は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。同様に、本発明が広い意味で考えられる場合、第2の要素となる化合物は、セロトニン再取り込み阻害として機能する化合物である。
【0226】
特定の対立遺伝子(例えば、CNTF遺伝子(11q12.2に位置する)の多型、GENBANK配列X55890、PubMed:9285965参照)由来のmRNAまたはポリペプチド産物の発現レベルに関して、本明細書で用いられる「有意なレベル」は、当該技術分野の技術者が問題となる対立遺伝子が存在すると認めることを導く発現レベルを意味する。
【0227】
本明細書で用いられる「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ、1本鎖、およびヒト化抗体、ならびにFab産物を含むFabフラグメント、または他の免疫グロブリン発現ライブラリーを含む。
【0228】
「ポリヌクレオチド」は、一般に、任意のポリリボヌクレオチド(RNA)またはポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)を意味し、非修飾または修飾RNAまたはDNAであってもよい。
【0229】
「ポリヌクレオチド」は、1本および2本鎖DNA、1本および2本鎖領域の混合DNA、1本および2本鎖RNA、1本および2本鎖領域の混合RNA、1本鎖、さらに典型的には、2本鎖または1本および2本鎖領域の混合であるDNAおよびRNAを含む混成結合(これらに限らない)を含む。さらに、該「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNA、またはRNAおよびDNA共に含む、3本鎖領域を意味する。該用語「ポリヌクレオチド」は、1以上の修飾塩基および安定性または他の理由で修飾された骨格を有するDNAまたはRNAを含有する、DNAまたはRNAも含む。
【0230】
「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基およびイノシンのような普通でない塩基を含む。様々な修飾がDNAまたはRNAに対してなされる;従って、「ポリヌクレオチド」は、天然で典型的に見られるポリヌクレオチドの化学的、酵素的または代謝的に修飾した形態、ならびにウイルスおよび細胞のDNAおよびRNA特徴の化学的形態を含む。「ポリヌクレオチド」は、比較的短いポリヌクレオチド(しばしば、オリゴヌクレオチドとして言及される)も包含する。
【0231】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチドアイソスターにより互いに結合した2以上のアミノ酸を含む、任意のポリペプチドを意味する。「ポリペプチド」は、短い鎖(一般に、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーとして言及される)、およびより長い鎖(一般に、タンパク質として言及される)の両方を意味する。ポリペプチドは、20遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸を含有していてもよい。「ポリペプチド」は、翻訳後修飾プロセッシングの様な天然の工程、または当該技術分野で既知の化学修飾技術のいずれかにより、修飾されたアミノ酸配列を含む。該修飾は、基本的な教科書およびより詳細なモノグラフ、ならびに多数の研究文献に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシ末端を含む、ペプチドのどの部位でも生じる。
【0232】
同じ種類の修飾は、同じ程度または変化した程度で与えられたポリペプチドのいくつかの部位に存在する。また、与えられたポリペプチドは、多くの種類の修飾を含有していてもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝状となり、分枝を有するかまたは有さない環状であってもよい。環状、分枝、および分枝環状ポリペプチドは、天然の加工である翻訳号修飾から生じるか、または合成方法で作られる。修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、ジメチル化、架橋共有の形成、シスチンの形成、ピログルタル酸塩の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化の様なタンパク質へのアミノ酸添加を仲介するトランスファー−RNA、およびユビキチン化を含む(例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993 ; Wold, F., Post-translational Protein Modifications : Perspectives and Prospects, 1-12, in Post-translational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983 ; Seifter et al,"Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors", Meth Enzymol, 182, 626-646, 1990, and Rattan et al., "Protein Synthesis : Post-translational Modifications and Aging", Ann NY Acad Sci, 663, 48-62, 1992を参照)。
【0233】
ポリペプチド配列の「フラグメント」は、対照配列より短い配列であるが、対照ポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を本質的に維持している、ポリペプチド配列を意味する。
【0234】
「変異体」は、対照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、本質的な特性を維持している、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、対照ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変更は、対照ポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列を変えてもよいし、変えなくてもよい。ヌクレオチド変更は、以下に記載される対照配列によりコード化されるポリペプチドのアミノ酸置換、付加、欠損、融合、および切断を生じる。ポリペプチドの典型的な変異体は、対照ポリペプチドのアミノ酸配列と異なる。一般的に、変更は、対照ポリペプチドおよび変異体の配列が、全体として非常に類似し、多くの領域で同一となるようなものに、限られる。変異体および対照ポリペプチドは、1以上の置換、挿入、欠損、それらの組み合わせにより、アミノ酸配列が異なる。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによりコード化されるものであってもよいし、なくてもよい。典型的な保存置換は、Gly,Ala;Val,lie,Leu;Asp,Glu;Asn,Glu−I Ser,Thr;Lys,Arg;およびPheおよびTyrを含む。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、対立遺伝子の様な天然に生じるものであってもよいし、または天然に生じるかどうか分かっていない変異体であってもよい。天然に生じないポリヌクレオチドおよびポリペプチドの変異体は、変異誘発技術または直接合成により作られる。変異体としては、1以上の翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、リン酸化、メチル化、ADPリボシル化などを有するポリペプチドも含む。実施態様は、N末端のアミノ酸のメチル化、セリンおよびスレオニンのリン酸化、およびC末端のグリシンの修飾を含む。
【0235】
「多型」−多型部位で個々に見られる配列のバリエーション。多型は、ヌクレオチド置換、挿入、欠損、および、マイクロサテライトを含み、必要ではないが、遺伝子発現またはタンパク質機能の検出可能な差を生じる。
【0236】
「多型部位(PS)」−少なくとも2つの選択的配列が固体で見られる遺伝子座の位置、最も高頻度は、99%より多くない頻度である。
【0237】
「多型変異体」−遺伝子、mRNA、cDNA、遺伝子の多型の存在により対照配列と異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列のポリペプチドまたはペプチド。
【0238】
「多型データ」−次の特定遺伝子についての1以上に関する情報:多型部位の位置;該部位の配列バリエーション;1以上の集団の多型頻度;遺伝子について測定された異なる遺伝子型および/またはハプロタイプ;形質と遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプとのいずれかの既知の関連。
【0239】
「多型データベース」−統計的または数学的方法で整えられた多型データの収集物であり、電子的または別の方法により個々にアクセス可能である。
【0240】
「1塩基多型」(SNP)は、集団のゲノムの単一ヌクレオチド位置でのヌクレオチド可変性の発生を意味する。SNPは遺伝子内またはゲノムの遺伝子間領域に生じる。SNPは、対立遺伝子特異的増幅(ASP)を用いてアッセイされる。該方法には、少なくとも3つのプライマーが必要とされる。共通プライマーは、アッセイされる多型に相対する向きで用いられる。該共通プライマーは、多型塩基から50bpと500bpの間に位置する。他の2つ(またはそれ以上)のプライマーは、最終的に3’塩基が、多型をなす2つ(またはそれ以上)の対立遺伝子の1つと一致するようにゆらぐことを除き、互いに同一である。そして、2つ(またはそれ以上)のPCR反応が、共通プライマーおよび対立遺伝子特異的プライマーの1つのそれぞれを用いて、試料DNAで行われる。
【0241】
本明細書で用いられる「スプライスバリアント」は、同一ゲノムのDNA配列から最初に転写されるRNA分子から生成され、選択的スプライスRNAスプライシングを受けたRNAから生じるcDNA分子を意味する。選択的RNAスプライシングは、最初のRNA転写がスプライシングされるときに、一般にイントロンの除去のため生じ、それぞれが異なるアミノ酸配列をコード化する、1以上のmRNA分子を生成する。用語スプライスバリアントは、上記cDNA分子によりコード化されるタンパク質も意味する。
【0242】
「同一性」は、配列の比較により決定される、2以上のポリペプチド配列、または2以上のポリヌクレオチド配列の関係を意味する。一般的に、同一性は、比較された配列の長さにわたる、それぞれ2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列における、厳密なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸の対応関係を意味する。
【0243】
「相同」は、対照配列に対して高度の関連性を有する、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を示すために、当該技術分野で用いられる一般的な用語である。かかる関連性は、上記の2配列間の同一性および/または類似性の程度を決定することにより定量化される。この遺伝子用語には、用語「オルソログ」および「パラログ」が含まれる。「オルソログ」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドであって、機能的に等しい他の種類のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。「パラログ」は、同じ種類であって機能的に類似のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。
【0244】
「融合タンパク質」は、2つの非関連、融合遺伝子またはそのフラグメントによりコード化されるタンパク質を意味する。例えば、米国特許番号第5,541,087および5,726,044号(共に全ての目的のため、引用により本明細書に取り込まれる)に記載されている。Fc−PGPCR−3の場合、融合タンパク質の一部として免疫グロブリンFc領域を利用することは、治療に用いられる場合、融合タンパク質の薬物動態学特性を改善するために、そして2量体Fc−PGPCR−3を生成するために、Fc−PGPCR−3またはPGPCR−3のフラグメントの機能的な発現を行うのに利点がある。Fc−PGPCR−3DNA構造物は、5’から3’の向きで分泌カセット、すなわち、哺乳類細胞からの排出を誘発するシグナル配列、融合パートナーとして免疫グロブリンFc領域フラグメントをコード化するDNA、およびFc−PGPCR−3をコード化するDNAまたはそのフラグメントを含む。ある使用では、機能的なFc側を変異させる一方で、発現後完全にFc部分を分離したかまたは除去した融合タンパク質の残りを維持することで、本来そなわっている機能特性(完全結合、Fc−受容体結合)を変化させ得ることは望ましい。
【0245】
「対立遺伝子」−特定の形の遺伝子座であって、特定のヌクレオチド配列により別の形と区別されるもの。
「候補遺伝子」−疾病、状態、または処置に対する応答し、またはこれらの1つと相関すると仮定される遺伝子である。
【0246】
「遺伝子」−プロモーター、エクソン、イントロンおよび発現をコントロールする他の非翻訳領域を含む、RNA産物の制御された生合成についての全情報を含有するDNAセグメント。
【0247】
「遺伝子型」−個体の1対の相同な染色体の遺伝子座の1以上の多型部位で見られる、逆位相5’から3’配列のヌクレオチド対。本明細書で用いられる遺伝子型は、以下の全長遺伝子型および/またはサブ遺伝子型を含む。
【0248】
「全長−遺伝子型」−1個体の1対の相同な染色体の遺伝子座の既知の多型の全てで見られる、逆位相5’から3’配列のヌクレオチド対。
【0249】
「サブ−遺伝子型」−1個体の1対の相同な染色体の遺伝子座の既知の多型部位のサブセットで見られる逆位相5’から3’配列のヌクレオチド。
【0250】
「遺伝子型同定」−個体の遺伝子型を決定する方法。
「ハプロタイプ」−1個体由来の単一染色体の遺伝子座の1以上の多型部位で見られる5’から3’の配列のヌクレオチド。本明細書で用いられるハプロタイプは、以下に記載される全長−ハプロタイプおよび/またはサブ−ハプロタイプを含む。
【0251】
「全−ハプロタイプ」−1個体由来の単一染色体の遺伝子座の既知の多型部位の全てで見られる5’から3’配列のヌクレオチド。
「サブ−ハプロタイプ」−1個体由来の単一染色体の遺伝子座の既知の多型部位の部分集団で見られる5’から3’の配列のヌクレオチド。
【0252】
「ハプロタイプ対」−1個体の遺伝子座について見られる2つのハプロタイプ。
「ハプロタイプ決定」−個体の1以上のハプロタイプを決定する方法であって、家系図、分子技術および/または統計的推論の使用を含む。
【0253】
「ハプロタイプデータ」−1以上の次の特異的遺伝子に関する情報:集団の各個体のハプロタイプ対のリスト;集団の異なるハプロタイプのリスト:該または他の集団の各ハプロタイプの頻度、および1以上のハプロタイプと形質との任意の既知の関連。
【0254】
「アイソフォーム」−遺伝子、mRNA、cDNA、またはこれによりコード化されるタンパク質の特定の形であり、特定の配列および/または構造により他の形と区別される。
「同質遺伝子」−集団で見られる遺伝子のアイソフォームの1つ。同質遺伝子は、遺伝子の特定のアイソフォームに存在する多型の全てを含有する。
【0255】
「単離」−RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、またはタンパク質の様な生物学的分子に適用された場合、単離は、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞片および培養基の様な他の物質などの他の生物学的分子が実質的に含まない分子を意味する。一般的に、用語「単離」は、もし本発明の方法と実質的に干渉し合う量で存在しなければ、前記物質が完全に存在しないか、または水、バッファー、または塩が存在しないことを意味する意図はない。
【0256】
「連鎖」−同一染色体の位置することの結果として一緒に受け継がれるべき遺伝子の傾向を言いい;遺伝子座間の組換え率により測定される。
「連鎖不均衡」−遺伝子マーカーのある組合せが、離れている間隔から予測されるものより、より高頻度またはより低頻度で生じる状況を言う。マーカー群が同等に受け継がれてきたことを示唆する。それは、領域での組換えの減少、またはマーカーの1つが集団に導入されてから平衡状態に至るのに不十分な時間しかなかっという創始者効果(a founder effect)から生じ得る。
【0257】
「遺伝子座」−遺伝子または身体的もしくはフェノタイプ上の特徴に対応する染色体またはDNA分子の位置。
「天然に生じる」−適用される対象が、例えば、天然に生じるポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、天然供給源から単離され、人に故意に修飾されていないことを示すために用いられる用語である。
「ヌクレオチド対」−個体由来の2コピーの染色体の多型部位で見られるヌクレオチド。
【0258】
「位相」−遺伝子座の2以上の多型部位についてのヌクレオチド対の配列に適用された場合、位相は、1コピーの遺伝子座の多型部位に存在するヌクレオチドの組合せが既知であることを意味する。
「逆位相」−遺伝子座の2以上の多型部位についてのヌクレオチド対の配列に適用され、逆位相は、1コピーの遺伝子座の多型部位に存在するヌクレオチドの組合せが既知でないことを意味する。
【0259】
「集団群」−民族起源、病状、処置に対する応答性の様な共通の特徴を共有する個体群。
「対照集団」−集団群の1以上の特徴が代表的であると予測される対象または個体の群。典型的には、対照集団は、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも95%、そしてなおより好ましくは、少なくとも99%である確実性レベルで個体の遺伝子バリエーションを表す。
【0260】
「対象」−遺伝子型またはハプロタイプ、または処置に対する応答性または疾病の状態が決定されるべき、ヒト個体。
「処置」−対象に内服または外用で投与された刺激物。
【0261】
本明細書で引用された全引例は、個々の刊行物、または特許または特許出願が、全ての目的のため全体として引用により具体的および個々に示されているのと同程度に、全体としてそして全ての目的のため、引用により本明細書に取り込まれる。本明細書の引例の記載は、著者によってなされた主張を要約することだけを意図しており、いずれの引例も先行技術であることを認めるものではない。出願人は、引例の正確性および妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。
【0262】
さらに、本明細書で引用した全GenBank受託番号、Unigene Cluster番号、およびタンパク質受託番号は、各番号が、個々に全ての目的のため全体として引用により取り込まれることを具体的および個別に意図されるのと同程度に、全体としてそして全ての目的のため、引用により本明細書に取り込まれる。
【0263】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様の言葉に限定されるものではなく、本発明の個々の態様の単なる説明を意図したものである。本発明の多くの修飾および変更は、当該技術分野の技術者に明らかであり、その精神と範囲から逸脱することなくなされる。本明細書で列挙されたものに加えて、本発明の範囲内の機能的に均等の方法および装置類が、本明細書および添付図の記載から、当該技術分野の技術者には明らかである。かかる修飾および変更は、添付の請求の範囲に含まれることが意図されている。本発明は、添付の請求の範囲の用語によってのみ制限され、かかる請求項はその均等の全範囲についても権利を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてイロペリドンを含む、処置が必要な患者における精神病性障害を処置するための医薬であって、該処置が、個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aのヌクレオチド対の同一性を決定した後に行われ、ヌクレオチド対の両方がGであるか、または両方がAであるときに該処置が行われる、医薬。
【請求項2】
(a)個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)の多型部位103G>Aのヌクレオチド対の同一性を決定すること、
(b)両ヌクレオチド対がGであるか、または両ヌクレオチド対がAであると、個体は試験に含まれ、そして
(c)1つのヌクレオチド対がAであり、かつもう1つがGであると、個体が試験から除外されること、を含む抗精神病薬の臨床試験に含まれる対象を選択する方法。
【請求項3】
(a)CNTF遺伝子のポリペプチド発現産物を認識して結合可能な抗体;
(b)該抗体および該個体由来の体液試料を入れるのに適当な容器(ここで抗体は、もし存在するならCNTFポリペプチドと結合する)および
(c)CNTFポリペプチドと該抗体の結合を検出する手段、
(d)キットの使用説明書、
を含む、精神病性障害の患者の処置方針を決定する際に使用するキット。
【請求項4】
(a)個体に存在する2コピーのCNTF遺伝子について、GENBANK配列参考番号X55890(バージョン1)のCNTF103G>Aの多型部位と連鎖不均衡である、CNTF遺伝子領域の多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定すること;および
(b)個体を、103G>Aの多型部位と連鎖不均衡であるCNTF遺伝子領域の多型部位のヌクレオチド対が、103G>AのCNTF多型部位で、2つのヌクレオチド対がGCであるか、または2つの対がATであることを示すと、よい応答群とされ、該ヌクレオチド対が、CNTF103G>A部位の1つの対がATであり、もう1つの対がGCであると、低応答群とすること
を含む、イロペリドンでの処置に対する精神病性障害の個体の応答性を決定する方法。
【請求項5】
103G>AのCNTF多型部位の遺伝子多型パターンを決定する手段を含み、103G>AのCNTF多型部位の患者の多型パターンを同定するキット。
【請求項6】
CNTF遺伝子のmRNA産物を決定する手段を含む、CNTF遺伝子のmRNA発現を同定するキット。
【請求項7】
CNTF遺伝子のポリペプチド発現産物の検出手段を含む、患者のCNTFタンパク質レベルを同定するキット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6422(P2011−6422A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157563(P2010−157563)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2003−554926(P2003−554926)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】