説明

COシフト反応装置及びこれを備えた石炭ガス化複合発電システム

【課題】CO濃度が高い条件で運転されても、充填された触媒の劣化を抑制できるCOシフト反応装置を提供する。
【解決手段】直列接続された複数のシフト反応器22、24、26と、主ガスライン21から分岐して最上流のシフト反応器22をバイパスさせるガス流量を調節する第1の流量調節手段29及び/又は30と、最下流のシフト反応器26から流出されるガスを昇圧して、最上流のシフト反応器22の上流に戻すリサイクルガスライン64と、リサイクルガスの流量を調節する第2の流量調節手段66と、シフト反応用蒸気ミキサー32とを備え、最上流のシフト反応器22の出口部のガス温がシフト反応触媒の耐熱限界温度より低く、かつCOをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1及び第2の流量調節手段により最上流のシフト反応器22に流入するガス流量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化複合発電システムに用いられるCOシフト反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚火力発電プラントの効率の向上を図る技術として、石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Cycle)システム(以下単に「石炭ガス化システム」という)が研究・開発されている。石炭ガス化システムでは、石炭ガス化過程で高濃度のCO(一酸化炭素)が発生するため、COシフト反応装置を設け、COを水蒸気と反応(以下「シフト反応」という)させて、H(水素)とCO(二酸化炭素)を生成させる。このうち、Hはガスタービンへ燃料の一部として供給し、COはCO回収設備(吸収液等)で効率的に回収して、プラントからのCO放出量の低減、発電効率の向上が図られている。
【0003】
このようなシステムでは、CO吸収装置に流入するガスに空気が含まれず、ガス処理量が石炭焚ボイラと比較して約3分の1と少なく、運転圧力が2.5[MPa]と高いため、吸収液へのCO吸収が容易という利点がある。COシフト反応装置が有するシフト反応器には、シフト反応触媒(以下単に「触媒」という)が充填されている。シフト反応により高濃度のCOを十分に低い濃度まで低減させるために、温度特性等の異なる複数種類の触媒を用い、ガス上流側に高温シフト反応器、下流側に低温シフト反応器を備えた図6に記載のシフト反応装置が一般的である。
【0004】
ここで、シフト反応器を高温用・低温用と2段階設けるのは、CO濃度が非常に高く、反応に伴い大きな発熱が生じるためである。すなわち、CO濃度の高いガスは、まず触媒の耐熱性の大きい高温シフト触媒で反応させた後、冷却器で冷却し触媒耐熱限界温度の低い低温シフト触媒にて反応させる。また、シフト反応が一気に進行すると、高温シフト触媒の触媒耐熱限界温度も超過する可能性があるため、高温シフト反応器も2段に分けて使用する。
【0005】
ところで、石炭ガス化過程で発生するCOの濃度は、起動時等の低負荷運転において、単位処理ガス量あたりのCO量が増加して高濃度となるため、定格運転時よりも10[vol.%]程度高くなる。また、ガス化炉構造及び酸化剤の形式・方式にも依存し、特に、酸素吹石炭ガス化方式の場合には、定格運転時でも50〜60[vol.%]に達する。このようなCO濃度が非常に高い被処理ガスがCOシフト反応装置へ流れ込むと、上流の高温シフト反応器で急激にシフト反応が進んで温度上昇し、充填された触媒の耐熱限界温度を超え、触媒の劣化が加速し、耐用年数が短くなる可能性がある。
【0006】
そこで、図6に示すように、被処理ガスである精製ガスを流量調節弁31を用いて第1のバイパスライン28により、第1の高温シフト反応器22をバイパスする。このように精製ガスの一部を、第1のバイパスライン28へ分岐することで、第1の高温シフト反応器22に入るガス量を減らし、反応器の温度上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−331701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、精製ガスの一部を第1の高温シフト反応器22をバイパスする構成とするのみでは、以下に示す問題が生ずる。すなわち、シフト反応装置においては、触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度域での運転を行い、最上流と2段目以降の高温シフト反応器での反応量を等しく、つまり、シフト反応器内温度を等しくして触媒の劣化を防ぎ、耐用年数を長くする運転が望ましい。
【0009】
ここで、図7にシフト反応温度推移を示す。なお、高温シフト触媒の反応温度域は300〜470℃で触媒耐熱限界温度は480℃、低温シフト触媒の反応温度域は220〜260℃で触媒耐熱限界温度は280℃である。バイパスラインのみによる従来例のシフト反応温度推移を見ると、各シフト反応器において、触媒耐熱限界温度は超過していない。しかし、触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度での運転ができないため、触媒耐熱限界温度を超過していないとしても、触媒の劣化が早く進み、耐用年数が短くなるという問題がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、CO濃度が高い条件で運転されても、充填された触媒の劣化を抑制できるCOシフト反応装置及びこれを備えた石炭ガス化複合発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のCOシフト反応装置の第1の態様は、石炭ガス中のCOと水蒸気を触媒によりCOとHにシフトさせる直列接続された複数のシフト反応器(22、24、26)と、最上流のシフト反応器(22)の上流側(27)から分岐し、該最上流のシフト反応器(22)をバイパスして下流側に接続するバイパスライン(28)と、該バイパスライン(28)に流入するガス流量を調節可能な第1の流量調節手段(29及び/又は30、あるいは27と一体化した29と30)と、最下流のシフト反応器(26)の下流側と前記最上流のシフト反応器(22)の上流側であって前記バイパスライン(28)の分岐部(27)よりも下流側とを接続し、昇圧手段(62)により最下流のシフト反応器(26)の下流側のガスを前記最上流のシフト反応器(22)の上流側に戻すリサイクルガスライン(64)と、該リサイクルガスライン(64)に流入するガス流量を調節可能な第2の流量調節手段(66)と、前記最上流のシフト反応器(22)と前記リサイクルガスライン(64)の前記最上流のシフト反応器(22)の上流側への接続部との間に設けられるシフト反応用蒸気ミキサー(32)と、前記最上流のシフト反応器(22)から排出されるガス又は最上流のシフト反応器(22)の触媒充填部出口付近のガス温度の少なくとも一方を計測する温度計測手段(58)とを備え、該温度計測手段(58)で計測された温度が前記最上流のシフト反応器(22)の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつCOをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1の流量調節手段及び前記第2の流量調節手段(66)を用いて前記最上流のシフト反応器(22)に流入するガス流量を調節することを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様の構成は、後述する本発明の実施例1のCOシフト反応装置に対応する。すなわち、実施例1のCOシフト反応装置によれば、図7に示したシフト反応温度推移のように、各シフト反応器において、触媒耐熱限界温度は超過しておらず、最上流の高温シフト反応器22の触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度での運転が可能となるから、従来よりも触媒の劣化を改善できる。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、最下流のシフト反応器の下流側のガス(CO)の一部を圧縮機によって最上流のシフト反応器の上流側に戻すことにより、最上流のシフト反応器に流入する被処理ガスのCO濃度を低くして、急激なシフト反応による触媒温度の急上昇を抑制することができるので、触媒の劣化を抑制してその耐用年数を長くすることができる。
【0014】
この場合において、前記最上流のシフト反応器から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段を備え、該温度計測手段で計測された温度が前記最上流のシフト反応器の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の少なくとも一方を用いて前記最上流のシフト反応器に流入する被処理ガス流量を調節する。
【0015】
これにより、第1及び第2の流量調節手段を用いて、最上流のシフト反応器の触媒の温度が耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、最上流のシフト反応器に流入する被処理ガスの一部をその下流の次段のシフト反応器に流入させることで、最上流のシフト反応器に流入する被処理ガスのCO濃度を低くすることができ、触媒の劣化を抑制することができる。
【0016】
また、最上流のシフト反応器として鉄系高温シフト触媒を有する第1の高温シフト反応器と、該第1の高温シフト反応器の下流側に設けられる次段のシフト反応器として鉄系高温シフト触媒を有する第2の高温シフト反応器と、最下流のシフト反応器として銅・亜鉛系の低温シフト反応触媒を有する低温シフト反応器とを有する構成とすることができる。なお、各温度に適するシフト反応器の数は、これに限られない。
【0017】
また、以上説明したシフト反応装置を用いた石炭ガス化複合発電システムとして、石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化された石炭ガスを精製するガス精製設備と、該精製されたガスを燃焼させて発電するガスタービンと、精製されたガスの一部もしくは全量のCOをCOとHにシフトさせるCOシフト反応装置と、該COシフト反応装置から排出されたシフトガスからCOを分離回収し、シフトガスから分離されたHをガスタービンの燃料の一部として供給するためのCO分離回収設備とを備えたシステムを構成できる。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明のCOシフト反応装置の第2の態様は、石炭ガス中のCOと水蒸気を触媒によりCOとHにシフトさせる直列接続された複数のシフト反応器(22、24、26)と、最上流のシフト反応器(22)に被処理ガスを供給する主ガスライン(21)から分岐され、前記シフト反応器(22)をバイパスして下流側に接続されたバイパスライン(28)と、前記最上流のシフト反応器(22)に流入するガス流量と前記バイパスライン(28)に流入するガス流量を調節可能な第1の流量調節手段(29及び/又は30、あるいは27と一体化した29と30)と、最下流のシフト反応器(26)の下流側から抜き出したガスを昇圧手段(62)により昇圧して前記第1の流量調整手段と前記最上流のシフト反応器(22)との間の前記主ガスライン(21)に戻すリサイクルガスライン(64)と、該リサイクルガスライン(64)から分岐され、前記抜き出したガスを前記最上流のシフト反応器(22)の次段のシフト反応器(24)の上流側に戻すリサイクルガスバイパスライン(112)と、前記リサイクルガスライン(64)に流れるガス流量と前記リサイクルガスバイパスライン(112)に流れるガス流量を調節可能な第2の流量調節手段(100及び/又は102、あるいは113と一体化した100、102)と、前記主ガスライン(21)に接続された前記リサイクルガスライン(64)の接続部と前記最上流のシフト反応器(22)との間に設けられたシフト反応用蒸気ミキサー(32)と、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段(58、108)を備え、該温度計測手段(58,108)で計測された温度が前記最上流のシフト反応器(22)の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1と前記第2の流量調節手段の少なくとも一方を用いて、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)に流入するガス流量を調節することを特徴とする石炭ガス中のCOと水蒸気を触媒によりCOとHにシフトさせる直列接続された複数のシフト反応器(22、24、26)と、最上流のシフト反応器(22)に被処理ガスを供給する主ガスライン(21)から分岐され、前記シフト反応器(22)をバイパスして下流側に接続されたバイパスライン(28)と、前記最上流のシフト反応器(22)に流入するガス流量と前記バイパスライン(28)に流入するガス流量を調節可能な第1の流量調節手段(29及び/又は30、あるいは27と一体化した29と30)と、最下流のシフト反応器(26)の下流側から抜き出したガスを昇圧手段(62)により昇圧して前記第1の流量調整手段と前記最上流のシフト反応器(22)との間の前記主ガスライン(21)に戻すリサイクルガスライン(64)と、該リサイクルガスライン(64)から分岐され、前記抜き出したガスを前記最上流のシフト反応器(22)の次段のシフト反応器(24)の上流側に戻すリサイクルガスバイパスライン(112)と、前記リサイクルガスライン(64)に流れるガス流量と前記リサイクルガスバイパスライン(112)に流れるガス流量を調節可能な第2の流量調節手段(100及び/又は102、あるいは113と一体化した100、102)と、前記主ガスライン(21)に接続された前記リサイクルガスライン(64)の接続部と前記最上流のシフト反応器(22)との間に設けられたシフト反応用蒸気ミキサー(32)と、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段(58、108)を備え、該温度計測手段(58,108)で計測された温度が前記最上流のシフト反応器(22)の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1と前記第2の流量調節手段の少なくとも一方を用いて、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)に流入するガス流量を調節することを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の態様の構成は、本発明の第1の態様のCOシフト反応装置を改良したものであり、後述する本発明の実施例2に対応する。すなわち、後述する本発明の実施例1のCOシフト反応装置によれば、図7に示したシフト反応温度推移のように、各シフト反応器において、触媒耐熱限界温度は超過していないから、従来よりも触媒の劣化を改善できる。しかし、第1の高温シフト反応器22の触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度での運転によっても、第2の高温シフト反応器24の触媒温度が上昇し、同じように触媒の劣化が早く進み、耐用年数が短くなるという問題がある。このことに鑑み、実施例2に対応する本発明の第2の態様を提案するものである。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、最下流のシフト反応器の下流側のガス(CO)の一部を圧縮機によって最上流のシフト反応器の上流側及び次段のシフト反応器の上流側に戻すことにより、最上流のシフト反応器及び次段のシフト反応器に流入する被処理ガスのCO濃度を低くして、急激なシフト反応による触媒温度の急上昇を抑制することができるので、次段のシフト反応器を含めて触媒の劣化を抑制してその耐用年数を長くすることができる。
【0021】
この場合において、前記最上流のシフト反応器から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段を備え、該温度計測手段で計測された温度が前記最上流のシフト反応器の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の少なくとも一方を用いて前記最上流のシフト反応器に流入する被処理ガス流量を調節する。また、次段のシフト反応器から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段を備え、該温度計測手段で計測された温度が次段のシフト反応器の触媒耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、第2の流量調節手段を用いて最上流のシフト反応器に流入するガス流量を調節する構成とすることが望ましい。
【0022】
これにより、第1及び第2の流量調節手段を用いて、最上流のシフト反応器の触媒の温度が耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、最上流のシフト反応器に流入する被処理ガスの一部をその下流の次段のシフト反応器に流入させることで、最上流のシフト反応器に流入する被処理ガスのCO濃度を低くすることができ、触媒の劣化を抑制することができる。また、同様に、第2の流量調節手段を用いて、最上流のシフト反応器の上流側及び次段のシフト反応器の上流側へリサイクルする最下流のシフト反応器の下流側のガス(CO)の流入量を調節することで触媒の劣化を抑制することもできる。なお、耐熱限界温度より低い温度とは、耐熱限界温度より30℃以上低い温度であることが望ましい。
【0023】
また、最上流のシフト反応器として鉄系高温シフト触媒を有する第1の高温シフト反応器と、該第1の高温シフト反応器の下流側に設けられる次段のシフト反応器として鉄系高温シフト触媒を有する第2の高温シフト反応器と、最下流のシフト反応器として銅・亜鉛系の低温シフト反応触媒を有する低温シフト反応器とを有する構成とすることができる。なお、各温度に適するシフト反応器の数は、これに限られない。
【0024】
また、以上説明したシフト反応装置を用いた石炭ガス化複合発電システムとして、石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化された石炭ガスを精製するガス精製設備と、該精製されたガスを燃焼させて発電するガスタービンと、精製されたガスの一部もしくは全量のCOをCOとHにシフトさせるCOシフト反応装置と、該COシフト反応装置から排出されたシフトガスからCOを分離回収し、シフトガスから分離されたHをガスタービンの燃料の一部として供給するためのCO分離回収設備とを備えたシステムを構成できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、CO濃度が高い条件で運転されても、充填された触媒の劣化を抑制できるCOシフト反応装置及びこれを備えた石炭ガス化複合発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のCOシフト反応装置を用いた石炭ガス化複合発電システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明のCOシフト反応装置の実施例1の構成を示す図である。
【図3】実施例1による流量調節弁のバイパス率の変化と、第1の高温シフト反応器の出口温度の変化との関係を示す図である。
【図4】比較例1による流量調節弁のバイパス率と、第1の高温シフト反応器の出口温度の変化との関係を示す図である。
【図5】比較例2による流量調節弁のバイパス率と、第1の高温シフト反応器の出口温度の変化との関係を示す図である。
【図6】従来例1のCOシフト反応装置の構成を示す図である。
【図7】従来例の構成によるシフト反応温度推移と、本発明の実施例1,2の構成によるシフト反応温度推移を対比して示す図である。
【図8】本発明の実施例2のCOシフト反応装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のCOシフト反応装置を用いた石炭ガス化複合発電システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の石炭ガス化複合発電システムは、石炭を供給する石炭加圧供給設備2と、石炭をガス化するガス化炉4と、ガス熱交換器6と、脱塵・脱硫設備8と、石炭ガスを精製するガス精製設備10と、精製されたガスを燃焼させて発電するガスタービン12と、精製されたガスの一部又は全部のCOをCOとHにシフトさせるCOシフト反応装置14と、COシフト反応装置14から排出されたシフトガスからCOを分離回収し、シフトガスから分離されたHをガスタービン12の燃料の一部又は全部として供給するための吸収塔16、吸収液再生装置18及び吸収液循環ポンプ20からなるCO分離回収設備とを備えている。
【0028】
石炭は、石炭加圧供給設備2に供給されて粉砕乾燥され、窒素にて加圧されてガス化炉4へ供給されガス化される。ガス化された石炭ガスは、ガス熱交換器6にて熱回収され、脱塵・脱硫設備8で石炭ガス中の煤塵、硫黄酸化物が除去され、ガス精製設備10で精製され、その精製ガスはCOシフト反応装置14へ導入される。
【0029】
ここで、COシフト反応装置14の入口の精製ガスは代表組成が、H:25[vol.%]、CO:55[vol.%]、CO:2[vol.%]、CH:1[vol.%]、N:17[vol.%]程度の混合ガスであり、COシフト反応装置14において水蒸気と混合し、COシフト反応によりCOとHが発生する。
【0030】
COシフト反応装置14の出口のガス組成は、COが35〜40%程度に増加しており、吸収塔16内でアミン系吸収液に吸収させることによって、シフトガス中のCOのほぼ全量はCO吸収液に吸収され、後続のシステム(ガスタービン12)に燃料(H)として供給される。COを吸収した吸収液は吸収液再生装置18にて加熱又は減圧によって吸収したCOを分離し、吸収液循環ポンプ20により吸収塔16に供給される。吸収液再生装置18にて分離したCOは、液化、固形化等の固定化処理が施される。以下、本発明のCOシフト反応装置14を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0031】
ここで、本発明のCOシフト反応装置14の構成の実施例1を、図2を参照して説明する。COシフト反応装置14は、被処理ガスの主ガスライン21により直列接続された複数のシフト反応器として、鉄系高温シフト触媒を有する第1の高温シフト反応器22と、第1の高温シフト反応器22の下流側に設けられ、鉄系高温シフト触媒を有する第2の高温シフト反応器24と、最下流のシフト反応器として銅・亜鉛系の低温シフト反応触媒を有する低温シフト反応器26とを備えて構成される。第1の高温シフト反応器22の上流側に接続された主ガスライン21には、分岐部27で分岐されて最上流の第1の高温シフト反応器22をバイパスして第1の高温シフト反応器22の下流側に精製ガスを導入する第1のバイパスライン28が備えられている。分岐部27から第1の高温シフト反応器22の上流側に精製ガスを導入する主ガスライン21に本流用流量調整弁29が設けられ、第1のバイパスライン28上にバイパス用流量調整弁30が設けられている。本流用流量調整弁29と第1の高温シフト反応器22との間にシフト反応用蒸気ミキサー32が設けられている。
なお、本実施例においては、本流用流量調整弁29とバイパス用流量調整弁30とが独立し、かつ双方を備えた構成の例を示しているが、これらが、本発明の課題を解決するための手段としての流量調節手段(第1の流量調節手段)として機能するものであれば、構成を問わず、例えば分岐部27と一体的に構成されるものであっても良い。つまり、本流用流量調整弁29とバイパス用流量調整弁30のいずれか一方により第1の流量調節手段を構成することができる。また、分岐点27と本流用流量調整弁29とバイパス用流量調整弁30とを一体化して、第1の流量調節手段を構成するようにすることができる。
【0032】
また、COシフト反応装置14は、導入される精製ガスを予熱する第1の予熱器34と、第1の予熱器34で予熱された精製ガスを脱硫処理する脱硫器36と、シフト反応用蒸気ミキサー32から第1の高温シフト反応器22に導入されるガスを予熱する第2の予熱器38と、第1の高温シフト反応器22から第2の高温シフト反応器24に導入されるガスを冷却する第1のシフトガス冷却器40と、第2の高温シフト反応器24から低温シフト反応器26に導入されるガスを冷却する第2のシフトガス冷却器42と、低温シフト反応器26から排出されるガスを冷却する第3のシフトガス冷却器46と、第3のシフトガス冷却器46から排出されるガスが導入されるノックアウトドラム48とを備えている。また、脱硫器36と分岐部27の間の主ガスライン21の精製ガスをノックアウトドラム48の下流のシフト済ガスのガスライン68にバイパスする第2のバイパスライン50が備えられている。第2のバイパスライン50上には、流量調節手段52が備えられている。また、ガスライン68から分岐したガスを第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すリサイクルガスライン64が設けられている。低温シフト反応器26の下流側のガスを第1の高温シフト反応器22の上流側のシフト反応用蒸気ミキサー32のガス流入側に戻すラインであり、リサイクルガスライン64上にリサイクルガス圧縮機62とリサイクルガス用流量調整弁66とが設けられている。
【0033】
さらに、COシフト反応装置14に流入される精製ガス(被処理ガス)の流量を検出する第1の流量発信器54と、第2のバイパスライン50のガスの流量を検出する第2の流量発信器56と、第1の高温シフト反応器22から排出されるガスの温度を計測する温度計測器58が設けられている。各流量発信器54、56の流量と、温度計測器58の温度は制御装置60に入力され、制御装置60はそれらの流量及び温度に基づいて流量調節手段29、30の開度を制御して各ラインに流れるガスの流量を調節するようになっている。なお、第1の高温シフト反応器22から排出されるガスの温度を計測する温度計測器58は、第1の高温シフト反応器22の触媒充填部出口付近の触媒層内のガス温度を計測するようにしても良い。
【0034】
このように構成されるCOシフト反応装置14の動作について説明する。ガス精製設備10から排出された精製ガスは、第1の予熱器34により、脱硫器36の使用温度へと加熱される。脱硫器36は、下流のシフト触媒の触媒毒となる精製ガス中の硫黄分を低減する。脱硫されたガスは、分岐部27で、主ガスライン21と、第1のバイパスライン28に分岐する。第1のバイパスライン28に流入した精製ガスは、第1の高温シフト反応器22をバイパスして、第1のシフトガス冷却器40に向かう。主ガスライン21に流入したガスには、シフト反応用蒸気ミキサー32によりシフト反応に必要な水蒸気が供給される。
【0035】
第2の予熱器38は、水蒸気が供給された混合ガスを第1の高温シフト反応器22の触媒反応温度である300℃まで加熱する。第1の高温シフト反応器22は、混合ガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。第1のシフトガス冷却器40は、第1の高温シフト反応器22から出たシフトガスと第1のバイパスライン28からの精製ガスを、第2の高温シフト反応器24の触媒反応温度である300℃まで冷却する。
【0036】
第2の高温シフト反応器24は、冷却されたガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。第2のシフトガス冷却器42は、第2の高温シフト反応器24から出たシフトガスを低温シフト反応器26の触媒反応温度である220℃まで冷却する。低温シフト反応器26は、冷却されたガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。
【0037】
第3のシフトガス冷却器46は、低温シフト反応器26から出たシフトガスを常温近くまで冷却するため、ガス中に含まれる水分とガスが分離する。凝縮した水分は、ノックアウトドラム48でドレンとして排出される。ノックアウトドラム48を出たガスは、前述したように吸収塔16へ流入する。なお、脱硫器36から排出されたガスの一部を、第2のバイパスライン50からノックアウトドラム48の下流に流入させることでも、第1の高温シフト反応器22の温度上昇を抑制できるようになっている。
【0038】
以上説明したCOシフト反応装置14の構成において、第1のバイパスライン28を用いれば、第1の高温シフト反応器22の温度上昇を抑制できる。しかし、図7を参照して前述したように、精製ガスを第1の高温シフト反応器22をバイパスする構成とするのみでは、触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度での運転ができないため、触媒耐熱限界温度を超過していないとしても、触媒の劣化が早く進み、耐用年数が短くなるという問題がある。
【0039】
そこで、本実施例1では、低温シフト反応器26の下流側と第1の高温シフト反応器22の上流側とを接続し、リサイクルガスの昇圧手段であるリサイクルガス圧縮機62により低温シフト反応器26の下流側のガスを第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すリサイクルガスライン64と、リサイクルガスライン64上に設けられたリサイクルガス用流量調整弁66とを備えてCOシフト反応装置14を構成している。
リサイクルガス用流量調整弁66は、本発明の課題を解決するための手段としての第2の流量調節手段として機能する。
【0040】
ノックアウトドラム48を出たシフト反応が終了したガスは、ノックアウトドラム48下流で分岐し、その一部は、リサイクルガス圧縮機62及びリサイクルガス用流量調整弁66を通るリサイクルガスライン64に流入して、本流用流量調節弁29とシフト反応用蒸気ミキサー32との間に流入する。なお、リサイクルガスの昇圧手段であるリサイクルガス圧縮機62は、リサイクルガスライン64の圧力を調整する装置で構成されている。
本実施例1の説明においては、リサイクルガス圧縮機62として説明するが、必ずしも当該機器の内部でガスが圧縮可能なものである必要は無い。リサイクルガスライン64を通じたガスの搬送が可能であれば、ルーツ式ブロワなどのブロワの類も適用でき、望ましくは0.2MPa程度の昇圧ができれば良い。
【0041】
このようにリサイクルガスライン64によって、精製ガス中に含まれる高いCO濃度ガスと、シフト反応後でH及びCOリッチとなったガスとを混合することにより、第1の高温シフト反応器22の上流側の精製ガスのCO濃度を希釈することができる。
【0042】
ここで、運転条件の一例として、精製ガス量とリサイクルガス量の割合を5:1、CO濃度55%とした場合における本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30のバイパス率と、第1の高温シフト反応器22の出口温度の変化を表した図3を示す。なお、バイパス率とは、第1の高温シフト反応器22に流れるガス流量と、第1のバイパスライン28に流れるガス流量との割合を表すものである。例えば、図3で、バイパス率0.6とは、第1の高温シフト反応器22に流れるガス流量:第1のバイパスライン28に流れるガス流量=4:6である。バイパス率の調整は、制御装置60が行う。また、CO濃度は一例であって、これより高い場合も低い場合も傾向は同様である。
【0043】
図3から分かるように、バイパス率の変化は、第1の高温シフト反応器22の出口温度に影響を及ぼし、安定運転の目安である反応器出口温度450℃以下を満たすためには、本流用流量調節弁29とバイパス用流量調節弁30のバイパス率(以下、流量調節弁のバイパス率と略称する。)が約0.5以上必要である。また、第2の高温シフト反応器24の出口温度に対する流量調節弁のバイパス率は約0.75以下である。よって、本実施例において、安定運転には流量調節弁のバイパス率が0.55〜0.7程度である必要がある。
【0044】
本実施例では、シフト反応に伴う発熱反応を防ぐために、リサイクルガス及びシフト反応用蒸気ミキサー32のシフト反応用蒸気により、CO濃度を希釈することが可能である。このため、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30に対してリサイクルガスとシフト反応用蒸気の投入箇所が重要となる。
【0045】
そこで、比較例1として、図4(a)に、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30の上流にシフト反応用蒸気ミキサー32を設け、シフト反応用蒸気ミキサー上流にリサイクルガスライン64を接続した場合の構成図を示す。また、この構成による本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30で調節するバイパス率と第1の高温シフト反応器22の出口温度の変化を図4(b)に示す。なお、その他の構成及び条件は実施例1と同じであり、冷却器等は省略している。
【0046】
図4(b)から分かるように、本比較例1では、バイパス率の変化による第1の高温シフト反応器22の出口温度に影響が及んでいない。よって、リサイクルガス流量に関係なく、シフト反応触媒耐熱温度を超過するため、安全運転はできないので、この構成は適切でないと判断できる。
【0047】
また、比較例2として、図5(a)に、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30の上流にリサイクルガスライン64を接続した場合の構成図を示す。また、この構成によるバイパス率と第1の高温シフト反応器22の出口温度の変化を図5(b)に示す。なお、その他の構成及び条件は実施例1と同じである。
【0048】
図5(b)から分かるように、バイパス率の変化は、第1の高温シフト反応器22の出口温度に影響を及ぼし、安定運転の目安である反応器出口温度450℃以下を満たすためには、全てのリサイクルガス流量に対して流量調節弁のバイパス率が約0.55以上である。また、第2の高温シフト反応器24の出口温度450℃以下を満たすためには、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30で調節するバイパス率は約0.75以下である。本比較例において、安定運転には流量調節弁のバイパス率を0.6〜0.7程度とする必要がある。
【0049】
以上の結果から、安定運転のためのバイパス率の幅が大きい本実施例1の構成が最適であることが分かる。すなわち、安定運転のためのバイパス率の幅が大きければ、石炭性状によりCO濃度が変化したとしても、その変化を吸収して安定運転上限温度を超過することなく運転することができる。また、石炭性状の異なる炭種によってCOガス濃度が変化しても対応できることから、幅広い炭種に適用することができる。
【0050】
前述したようにCOシフト反応装置は、触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度域での運転、かつ、第1、第2の高温シフト反応器での反応量を等しくし、シフト反応器内温度を等しくすることが望ましい。また、石炭ガス化ガス組成をはじめとして運転条件が同一であることはないため、約0.55〜0.7のバイパス率を変化させて安定運転を行うことが望ましい。
【0051】
また、CO濃度が低く、第1の高温シフト反応器22で被処理ガスである精製ガスを全量処理しても触媒耐熱限界温度を超過せずに運転することができ、第2の高温シフト反応器24へのバイパスを行わなくてよい場合であっても、バイパスを行って、可能な限り第1、第2の高温シフト反応器での反応量を等しくすることが望ましい。
【0052】
なお、図6に示す従来例のCOシフト反応装置の第1のバイパスライン28でバイパスするのみでは、図7からわかるように、第1の高温シフト反応器22の触媒温度はかなり高い。また、石炭原料性状やガス流量の変動により、CO濃度が高いだけでなく不安定であるため、第1の高温シフト反応器22内の温度を制御することが重要であるが、従来例の構成では、この課題を解決することは困難である。
【0053】
以上説明したように本実施例1によれば、低温シフト反応器26の下流側のガス(CO)の一部をリサイクルガス圧縮機62によって第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すことにより、第1の高温シフト反応器22に流入する前のガスのCO濃度を低くして、急激なシフト反応による触媒温度の急上昇を抑制することができるので、触媒の劣化を抑制してその耐用年数を長くすることができる。
【0054】
また、本流用流量調節弁29を用いて、第1の高温シフト反応器22の触媒の温度が耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、第1の高温シフト反応器22に流入する前の精製ガスの一部をその下流の第2の高温シフト反応器24に流入させることで、第1の高温シフト反応器22に流入する精製ガスのCO濃度を低くすることができ、触媒の劣化を抑制することができる。また、同様に、バイパス用流量調節弁30を用いて、低温シフト反応器26の下流側のガス(CO)の、第1の高温シフト反応器22の上流側への流入量を調節することで触媒の劣化を抑制することもできる。特に、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30の両方を用いて、バイパス率を変えることができるので、各シフト反応器の温度上昇を抑制して、触媒の劣化を抑制できる。
【0055】
以上、本実施例1について説明したが、本発明は、これらに限らず適宜構成を変更して適用することができる。例えば、シフト反応器の数は、さらに増やすことができ、低温シフト反応器を2段以上とすることもでき、温度検出手段を適宜増やすこともできる。
【0056】
また、第2のバイパスライン50がなくても、本発明の課題は解決できる。また、制御装置60による精製ガスとリサイクルガスの混合流量調節は、本流用流量調節弁29とリサイクルガス用流量調整弁66とを用いて行ってもよく、バイパス用流量調節弁30とリサイクルガス用流量調整弁66とを用いて行ってもよい。また、バイパス用流量調節弁30は、第1の高温シフト反応器22に流入するガス量を調節可能ならば、第1のバイパスライン28上になくてもよい。
【実施例2】
【0057】
本発明のCOシフト反応装置14の実施例2の構成を図8を参照して説明する。COシフト反応装置14は、主ガスライン21により直列接続された複数のシフト反応器として、鉄系高温シフト触媒を有する第1の高温シフト反応器22と、第1の高温シフト反応器22の下流側に設けられ、鉄系高温シフト触媒を有する第2の高温シフト反応器24と、最下流のシフト反応器として銅・亜鉛系の低温シフト反応触媒を有する低温シフト反応器26とを備えて構成される。第1の高温シフト反応器22の上流側に接続された主ガスライン21には、分岐部27で分岐されて最上流の第1の高温シフト反応器22をバイパスして第1の高温シフト反応器22の下流側に精製ガスを導入する第1のバイパスライン28が備えられている。分岐部27から第1の高温シフト反応器22の上流側に精製ガスを導入する主ガスライン21に本流用流量調整弁29が設けられ、第1のバイパスライン28上にバイパス用流量調整弁30が設けられている。本流用流量調整弁29と第1の高温シフト反応器22との間にシフト反応用蒸気ミキサー32が設けられている。また、実施例1と同様、本流用流量調整弁29とバイパス用流量調整弁30とにより第1の流量調節手段が構成され、さらに、例えば分岐部27と一体的に構成されても良い。
【0058】
また、COシフト反応装置14は、導入される精製ガスを予熱する第1の予熱器34と、予熱された精製ガスを脱硫処理する脱硫器36と、シフト反応用蒸気ミキサー32から第1の高温シフト反応器22に導入されるガスを予熱する第2の予熱器38と、第1の高温シフト反応器22から第2の高温シフト反応器24に導入されるガスを冷却する第1のシフトガス冷却器40と、第2の高温シフト反応器24から低温シフト反応器26に導入されるガスを冷却する第2のシフトガス冷却器42と、低温シフト反応器26から排出されるガスを冷却する第3のシフトガス冷却器46と、第3のシフトガス冷却器46から排出されるガスが導入されるノックアウトドラム48とを備えている。また、第1のシフトガス冷却器40に流通するガスをバイパスするライン上に流量調節弁104が設けられ、第2のシフトガス冷却器42に流通するガスをバイパスするライン上に流量調節弁106が設けられている。脱硫器36と分岐部27の間の主ガスライン21の精製ガスをノックアウトドラム48の下流のシフト済みのガスライン68にバイパスする第2のバイパスライン50が備えられている。第2のバイパスライン50上には、流量調節手段52が備えられている。また、ガスライン68から分岐したガスを第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すリサイクルガスライン64が設けられている。低温シフト反応器26の下流側のガスを第1の高温シフト反応器22の上流側のシフト反応用蒸気ミキサー32のガス流入側に戻すラインであり、リサイクルガスライン64上にリサイクルガス圧縮機62とリサイクルガス用流量調整弁100とが設けられている。リサイクルガス用流量調整弁100の上流側のリサイクルガスライン64から分岐して、リサイクルガスを流量調節弁102を介して第2の高温シフト反応器24の上流に戻すことができるようになっている。
【0059】
さらに、第1の高温シフト反応器22から排出されるガスの温度を計測する温度計測器58と、第2の高温シフト反応器24から排出されるガスの温度を計測する温度計測器108と、低温シフト反応器26から排出されるガスの温度を計測する温度計測器110と、各温度計測器の温度に基づいて各流量調節弁29、30、52、100、102、104,105の開度を制御して各ラインに流れるガスの流量調節手段を備えている。
【0060】
このように構成されるCOシフト反応装置14の動作について説明する。ガス精製設備10から排出された精製ガスは、第1の予熱器34により、脱硫器36の使用温度へと加熱される。脱硫器36は、下流のシフト触媒の触媒毒となる精製ガス中の硫黄分を低減する。脱硫されたガスは、分岐部27で、主ガスラインである主ガスライン21と、第1のバイパスライン28に分岐する。第1のバイパスライン28に流入した精製ガスは、第1の高温シフト反応器22をバイパスして、第1のシフトガス冷却器40に向かう。主ガスライン21に流入したガスには、シフト反応用蒸気ミキサー32によりシフト反応に必要な水蒸気が供給される。
【0061】
第2の予熱器38は、水蒸気が供給された混合ガスを第1の高温シフト反応器22の触媒反応温度である300℃まで加熱する。第1の高温シフト反応器22は、混合ガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。第1のシフトガス冷却器40は、第1の高温シフト反応器22から出たシフトガスと第1のバイパスライン28からの精製ガスを、第2の高温シフト反応器24の触媒反応温度である300℃まで冷却する。
【0062】
第2の高温シフト反応器24は、冷却されたガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。第2のシフトガス冷却器42は、第2の高温シフト反応器24から出たシフトガスを低温シフト反応器26の触媒反応温度である220℃まで冷却する。低温シフト反応器26は、冷却されたガス中のCOとHOから、触媒を用いてCOとHにシフトさせる。
【0063】
第3のシフトガス冷却器46は、低温シフト反応器26から出たシフトガスを常温近くまで冷却するため、ガス中に含まれる水分とガスが分離する。凝縮した水分は、ノックアウトドラム48でドレンとして排出される。ノックアウトドラム48を出たガスは、前述したように吸収塔16に流入する。なお、脱硫器36から排出されたガスの一部を、第2のバイパスライン50からノックアウトドラム48の下流に流入させることでも、第1の高温シフト反応器22の温度上昇を抑制できるようになっている。
【0064】
以上説明した本実施例のCOシフト反応装置14の構成において、第1のバイパスライン28を用いれば、第1の高温シフト反応器22の温度上昇を抑制できる。しかし、図7を参照して前述したように、精製ガスを第1の高温シフト反応器22をバイパスする構成とするのみでは、触媒耐熱限界温度より30℃以上低い温度での運転ができないため、触媒耐熱限界温度を超過していないとしても、触媒の劣化が早く進み、耐用年数が短くなるという問題がある。
【0065】
そこで、本実施例2では、低温シフト反応器26の下流側と第1の高温シフト反応器22の上流側とを接続し、リサイクルガス圧縮機62により低温シフト反応器26の下流側のガスを第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すリサイクルガスライン64と、リサイクルガスライン64上に設けられたリサイクルガス用流量調節弁100と、リサイクルガスライン64を分岐して第2の高温シフト反応器24の上流側に戻すリサイクルガスバイパスライン112と、リサイクルガスバイパスライン112上に設けられたリサイクルガスバイパス用流量調節弁102とを備えてCOシフト反応装置14を構成している。ここで、リサイクルガス用流量調節弁100とリサイクルガスバイパス用流量調節弁102のそれぞれにより、又はそれら双方により第2の流量調節手段を構成している。また、リサイクルガスライン64とリサイクルガスバイパスライン102との分岐点と、リサイクルガス用流量調節弁100及びリサイクルガスバイパス用流量調節弁102とを一体化して、第2の流量調節手段を構成するようにすることができる。
【0066】
ノックアウトドラム48を出たシフト反応が終了したガスは、ノックアウトドラム48下流で分岐し、その一部は、リサイクルガス圧縮機62及びリサイクルガス用流量調節弁100を通るリサイクルガスライン64に流入して、本流用流量調節弁29とシフト反応用蒸気ミキサー32との間に流入する。またリサイクルガスライン64に流入した、その一部は、リサイクルガスライン64を分岐してリサイクルガスバイパスライン112に流入して、第2の高温シフト反応器24の上流側に流入する。なお、リサイクルガス圧縮機62は、リサイクルガスライン64及びリサイクルガスバイパスライン112の圧力調整をする装置で構成されている。
【0067】
このようにリサイクルガスライン64及びリサイクルガスバイパスライン112によって、精製ガス中に含まれる高いCO濃度ガスと、シフト反応後でH及びCOリッチとなったガスとを混合することにより、第1の高温シフト反応器22の上流側の精製ガスのCO濃度及び第2の高温シフト反応器24の上流側のガス中CO濃度を希釈することができる。
【0068】
また、CO濃度が低く、第1の高温シフト反応器22で石炭ガス化ガスを精製した精製ガスを全量処理しても触媒耐熱限界温度を超過せずに運転することができ、第2の高温シフト反応器24のバイパスを行わなくてよい場合であっても、バイパスを行って、可能な限り第1、第2の高温シフト反応器での反応量を等しくすることが望ましい。
【0069】
なお、図6に示す従来例のCOシフト反応装置の第1のバイパスライン28でバイパスするのみでは、図7からわかるように、第1の高温シフト反応器22の触媒温度はかなり高い。また、石炭原料性状やガス流量の変動により、CO濃度が高いだけでなく不安定であるため、第1の高温シフト反応器22内の温度を制御することが重要であるが、従来例の構成では、この課題を解決することは困難である。
【0070】
以上説明したように、本実施例2によれば、低温シフト反応器26の下流側のガス(CO)の一部をリサイクルガス圧縮機62によって第1の高温シフト反応器22の上流側に戻すことにより、第1の高温シフト反応器22に流入する前のガスのCO濃度を低くして、また第2の高温シフト反応器24の上流側に戻すことにより、第2の高温シフト反応器24に流入する前のガスのCO濃度を低くして、急激なシフト反応による触媒温度の急上昇を抑制することができるので、触媒の劣化を抑制してその耐用年数を長くすることができる。
【0071】
また、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30を用いて、第1の高温シフト反応器22の触媒の温度が耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHシフトさせる温度以上になるように、第1の高温シフト反応器22に流入する前のガスの一部をその下流の第2の高温シフト反応器24に流入させることで、第1の高温シフト反応器22に流入するガスのCO濃度を低くすることができ、触妹の劣化を抑制することができる。また、同様に、リサイクルガス用流量調節弁100及びリサイクルガスバイパス用流量調節弁102を用いて、低温シフト反応器26の下流側のガス(CO)の、第1の高温シフト反応器22の上流側への流入量、及び第2の高温シフト反応器24の上流側への流入量を調節することで触媒の劣化を抑制することもできる。特に、本流用流量調節弁29及びバイパス用流量調節弁30の両方を用いて、バイパス率を変えることができるので、各シフト反応器の温度上昇を抑制して、触媒の劣化を抑制できる。
【0072】
以上、本実施例2について説明したが、本発明は、これらに限らず適宜構成を変更して適用することができる。例えば、シフト反応器の数は、さらに増やすことができ、低温シフト反応器を2段以上とすることもでき、温度検出手段を適宜増やすこともできる。
【0073】
また、第2のバイパスライン50がなくても、本発明の課題は解決できる。また、バイパス用流量調節弁30は、第1の高温シフト反応器に流入するガス量を調節可能ならば、第1のバイパスライン28上になくてもよい。また、リサイクルガスバイパス用流量調節弁102は、第2の高温シフト反応器に流入するガス量を調節可能ならば、リサイクルガスバイパスライン112上になくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
14 COシフト反応装置
21 主ガスライン
22 第1の高温シフト反応器
24 第2の高温シフト反応器
26 低温シフト反応器
28 第1のバイパスライン
29 本流用流量調節弁
30 バイパス用流量調節弁
32 シフト反応用蒸気ミキサー
50 第2のバイパスライン
58 温度計測器
60 制御装置
62 リサイクルガス圧縮機
64 リサイクルガスライン
66 リサイクルガス用流量調節弁
100 リサイクルガス用流量調節弁
102 リサイクルガスバイパス用流量調節弁
112 リサイクルガスバイパスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭ガス中のCOと水蒸気を触媒によりCOとHにシフトさせる直列接続された複数のシフト反応器(22、24、26)と、最上流のシフト反応器(22)の上流側(27)から分岐し、該最上流のシフト反応器(22)をバイパスして下流側に接続するバイパスライン(28)と、該バイパスライン(28)に流入するガス流量を調節可能な第1の流量調節手段(29及び/又は30、あるいは27と一体化した29と30)と、最下流のシフト反応器(26)の下流側と前記最上流のシフト反応器(22)の上流側であって前記バイパスライン(28)の分岐部(27)よりも下流側とを接続し、昇圧手段(62)により最下流のシフト反応器(26)の下流側のガスを前記最上流のシフト反応器(22)の上流側に戻すリサイクルガスライン(64)と、該リサイクルガスライン(64)に流入するガス流量を調節可能な第2の流量調節手段(66)と、前記最上流のシフト反応器(22)と前記リサイクルガスライン(64)の前記最上流のシフト反応器(22)の上流側への接続部との間に設けられるシフト反応用蒸気ミキサー(32)と、前記最上流のシフト反応器(22)から排出されるガス又は最上流のシフト反応器(22)の触媒充填部出口付近のガス温度の少なくとも一方を計測する温度計測手段(58)とを備え、該温度計測手段(58)で計測された温度が前記最上流のシフト反応器(22)の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつCOをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1の流量調節手段及び前記第2の流量調節手段(66)を用いて前記最上流のシフト反応器(22)に流入するガス流量を調節することを特徴とするCOシフト反応装置。
【請求項2】
石炭ガス中のCOと水蒸気を触媒によりCOとHにシフトさせる直列接続された複数のシフト反応器(22、24、26)と、最上流のシフト反応器(22)に被処理ガスを供給する主ガスライン(21)から分岐され、前記シフト反応器(22)をバイパスして下流側に接続されたバイパスライン(28)と、前記最上流のシフト反応器(22)に流入するガス流量と前記バイパスライン(28)に流入するガス流量を調節可能な第1の流量調節手段(29及び/又は30、あるいは27と一体化した29と30)と、最下流のシフト反応器(26)の下流側から抜き出したガスを昇圧手段(62)により昇圧して前記第1の流量調整手段と前記最上流のシフト反応器(22)との間の前記主ガスライン(21)に戻すリサイクルガスライン(64)と、該リサイクルガスライン(64)から分岐され、前記抜き出したガスを前記最上流のシフト反応器(22)の次段のシフト反応器(24)の上流側に戻すリサイクルガスバイパスライン(112)と、前記リサイクルガスライン(64)に流れるガス流量と前記リサイクルガスバイパスライン(112)に流れるガス流量を調節可能な第2の流量調節手段(100及び/又は102、あるいは113と一体化した100及び102)と、前記主ガスライン(21)に接続された前記リサイクルガスライン(64)の接続部と前記最上流のシフト反応器(22)との間に設けられたシフト反応用蒸気ミキサー(32)と、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)から排出されるガスの温度を計測する温度計測手段(58、108)を備え、該温度計測手段(58,108)で計測された温度が前記最上流のシフト反応器(22)の触媒の耐熱限界温度より低い温度で、かつ、COをCOとHにシフトさせる温度以上になるように、前記第1と前記第2の流量調節手段の少なくとも一方を用いて、前記最上流のシフト反応器(22)及び前記次段のシフト反応器(24)に流入するガス流量を調節することを特徴とするCOシフト反応装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載のCOシフト反応装置において、
前記最上流のシフト反応器として鉄系高温シフト触媒を有する第1の高温シフト反応器と、前記次段のシフト反応器として前記鉄系高温シフト触媒を有する第2の高温シフト反応器と、前記最下流のシフト反応器として銅・亜鉛系の低温シフト反応触媒を有する低温シフト反応器とを有することを特徴とするCOシフト反応装置。
【請求項4】
石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化された石炭ガスを精製するガス精製設備と、該精製されたガスを燃焼させて発電するガスタービンと、前記精製されたガスの一部もしくは全量のガスのCOをCOとHにシフトさせるCOシフト反応装置と、該COシフト反応装置から排出されたシフトガスからCOを分離回収し、前記シフトガスから分離されたHを前記ガスタービンの燃料として供給するためのCO分離回収設備とを備え、前記COシフト反応装置は請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCOシフト反応装置であることを特徴とする石炭ガス化複合発電システム。
【請求項5】
石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化された石炭ガスを精製するガス精製設備と、該精製されたガスを燃焼させて発電するガスタービンと、前記精製されたガスの一部もしくは全量のガスのCOをCOとHにシフトさせるCOシフト反応装置と、該COシフト反応装置から排出されたシフトガスからCOを分離回収し、前記シフトガスから分離されたHを前記ガスタービンの燃料として供給するためのCO分離回収設備とを備え、前記COシフト反応装置は請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCOシフト反応装置であることを特徴とする石炭ガス化複合発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21144(P2012−21144A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121840(P2011−121840)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】