説明

CO2回収装置およびCO2回収方法

【課題】脱炭酸排ガスに残存して放出される塩基性アミン化合物類の濃度をより一層低減することのできるCO2回収装置およびCO2回収方法を提供する。
【解決手段】CO2吸収液12でCO2含有排ガス11A中のCO2を吸収するCO2吸収部13Aと、CO2除去排ガス11Bを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液12を回収する水洗部13Bと、洗浄水20を前記水洗部13Bの頂部から直接循環する循環ラインL1と、CO2吸収液12を含む洗浄水20の一部を抜出液21として抜出す抜出しラインL2と、抜出液21からガス成分24を分離する第1の気液分離部22Aと、抜出液21中のCO2吸収液12を濃縮し、ガス成分24を分離する濃縮部22Bと、CO2吸収液12を濃縮した濃縮液23を水洗部13Bの下方側のCO2吸収部13A側に戻す濃縮液返送ラインL3と、分離されたガス成分24を吸収塔13に導入するガス導入ラインL4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収液と接触してCO2を除去された脱炭酸排ガスに残存して放出される塩基性アミン化合物類の濃度を低減するCO2回収装置およびCO2回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては、化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い、大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの排ガスをアミン化合物水溶液などのアミン系吸収液と接触させ、排ガス中のCO2を除去し回収する方法が精力的に研究されている。
【0003】
このような吸収液を用いて排ガスからCO2を回収する場合、CO2が回収された脱炭酸排ガスにアミン化合物が同伴してしまう。そして、アミン化合物による大気汚染が発生する事態を防ぐため、脱炭酸排ガスと共に放出されるアミン化合物の放出量を低減する必要がある。
【0004】
従来、特許文献1では、吸収液との気液接触によりCO2が吸収除去された脱炭酸排ガスに対して洗浄水を気液接触させることで、脱炭酸排ガスに同伴されたアミン化合物を回収する水洗部を複数段設け、この複数段の水洗部にて、順次、脱炭酸排ガスに同伴するアミンの回収処理を行うことが示されている。この特許文献1の洗浄水は、CO2を吸収したアミン系吸収液からCO2を除去してアミン系吸収液を再生する処理において、CO2に含まれる水分を凝縮して分離した凝縮水が用いられている。
【0005】
また、従来、特許文献2では、吸収液との気液接触によりCO2が吸収除去された脱炭酸排ガスを冷却する冷却部と、冷却部で凝縮した凝縮水と脱炭酸排ガスとを向流接触させる接触部を設けたものが示されている。さらに、特許文献2では、吸収液との気液接触によりCO2が吸収除去された脱炭酸排ガスに対して洗浄水を気液接触させることで、脱炭酸排ガスに同伴されたアミン化合物を回収する水洗部を設けたものが示され、洗浄水は、CO2が回収される前の排ガスを冷却する冷却塔で凝縮された凝縮水が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−126439号公報
【特許文献2】特開平8−80421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年では、環境保全の見地から、脱炭酸排ガスに残存して放出される吸収液成分の濃度をより一層低減することが望まれている。特に、将来予想される処理ガス流量の多い火力発電所などの排ガスに対して、CO2回収装置を設置する場合、排ガスの放出量が多量であることから、脱炭酸排ガスに残存して放出される吸収液成分の放出量が増加する傾向にあり、放出される吸収液成分の濃度をより一層低減することが必要である。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、脱炭酸排ガスに残存して放出される塩基性アミン化合物類の濃度をより一層低減することのできるCO2回収装置およびCO2回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2を含有するCO2含有排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を分離してCO2吸収液を再生する吸収液再生塔と、前記吸収液再生塔でCO2が除去されたリーン溶液をCO2吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔が、CO2吸収液によりCO2含有排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収部と、前記CO2吸収部のガス流れ後流側に設けられ、洗浄水によりCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する水洗部と、前記水洗部で回収されたCO2吸収液を含む洗浄水を前記水洗部の頂部側から供給して循環・洗浄する循環ラインと、前記循環ラインから、CO2吸収液を含む洗浄水の一部を抜出液として抜出す抜出しラインと、前記抜出液からガス成分を分離する第1の気液分離部と、前記抜出液中のCO2吸収液を濃縮し、ガス成分を分離する濃縮部と、を具備することを特徴とするCO2回収装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1の気液分離部にアルカリを添加して抜出液のpHを調整するアルカリ供給部と、前記濃縮部から分離されるガス成分から揮発性塩基性成分を酸により回収する酸洗浄塔と、前記濃縮部で濃縮された濃縮液からCO2吸収液を再生する副再生装置と、を具備することを特徴とするCO2回収装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記水洗部を複数段とすることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記水洗部を複数段とし、各々の段において洗浄水を循環させると共に、最上段の水洗部で循環する洗浄水に酸を添加することを特徴とするCO2回収装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記濃縮部の濃縮を空気又は水蒸気により行うことを特徴とするCO2回収装置にある。
【0014】
第6の発明は、CO2を含有するCO2含有排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を分離してCO2吸収液を再生する吸収液再生塔とを用い、前記吸収液再生塔でCO2が除去されたリーン溶液をCO2吸収塔で再利用するCO2回収方法であって、前記CO2吸収塔の後流側において、洗浄水によりCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する水洗部の一部を抜出液として抜出し、前記抜出液からガス成分を気液分離し、次いで前記抜出液中のCO2吸収液を濃縮し、ガス成分を分離することを特徴とするCO2回収方法にある。
【0015】
第7の発明は、第6の発明において、前記気液分離する際にアルカリを添加して抜出液のpHを調整し、ガス成分に含まれる揮発性塩基性成分を酸により回収し、濃縮された濃縮液からCO2吸収液を再生することを特徴とするCO2回収方法にある。
【0016】
第8の発明は、第6又は7の発明において、空気又は水蒸気により濃縮を行うことを特徴とするCO2回収方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脱炭酸排ガスに残存して放出される吸収液の塩基性アミン化合物類の濃度をより一層低減できると共に、回収した吸収液を濃縮して再利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1に係るCO2回収装置の概略図である。
【図2】図2は、図1における吸収塔と濃縮部とを含む構成部分の拡大図である。
【図3】図3は、実施例2に係るCO2回収装置の概略図である。
【図4】図4は、図3における吸収塔と濃縮部とを含む構成部分の拡大図である。
【図5】図5は、実施例2に係る他のCO2回収装置の概略図である。
【図6】図6は、実施例3に係るCO2回収装置の概略図である。
【図7】図7は、図6における吸収塔と濃縮部とを含む構成部分の拡大図である。
【図8】図8は、実施例4に係るCO2回収装置の概略図である。
【図9】図9は、図8における吸収塔と濃縮部とを含む構成部分の拡大図である。
【図10】図10は、pHと抜出液中の各成分の残存率との関係図である。
【図11】図11は、pHと酸処理液中の各揮発性塩基性成分の回収率との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0020】
本発明による実施例に係るCO2回収装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係るCO2回収装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Aは、CO2を含有するCO2含有排ガス11AとCO2吸収液(リーン溶液12B)とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔(以下「吸収塔」という)13と、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液12A)を再生する吸収液再生塔14と、前記吸収液再生塔(以下「再生塔」という)14でCO2が除去されたリーン溶液12BをCO2吸収塔13で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔13が、CO2吸収液12(リーン溶液12B)でCO2含有排ガス11A中のCO2を吸収するCO2吸収部13Aと、前記CO2吸収部13Aの上部(ガス流れ後流)側に設けられ、CO2除去排ガス11Bを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液12を回収する水洗部13Bと、前記水洗部13Bで回収されたCO2吸収液12を含む洗浄水20を前記水洗部13Bの頂部から直接循環する循環ラインL1と、前記循環ラインL1から、CO2吸収液12を含む洗浄水20の一部を抜出液21として抜出す抜出しラインL2と、抜出液21からガス成分24を分離する第1の気液分離部22Aと、抜出液21中のCO2吸収液12を濃縮し、ガス成分24を分離する濃縮塔22Bと、CO2吸収液12を濃縮した濃縮液23を水洗部13Bの下方側のCO2吸収部13A側に戻す濃縮液返送ラインL3と、分離されたガス成分24を吸収塔13に導入するガス導入ラインL4とを具備するものである。
【0021】
前記吸収塔13では、CO2含有排ガス11Aは、CO2吸収塔13の下部側に設けられたCO2吸収部13Aにおいて、例えばアルカノールアミンをベースとするCO2吸収液12と対向流接触し、CO2含有排ガス11A中のCO2は、化学反応(R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3)によりCO2吸収液12に吸収される。
【0022】
そしてCO2除去後のCO2除去排ガス11Bは、チムニートレイ16を介して水洗部13B側へ上昇し、水洗部13Bの頂部側から供給される洗浄水20と気液接触して、CO2除去排ガス11Bに同伴するCO2吸収液12を回収する。
その後、CO2吸収液12が除去されたCO2吸収液除去排ガス11Cは、CO2吸収塔13の頂部13Cから外部へ排出される。なお、符号73はガス中のミストを捕捉するミストエリミネータを図示する。
【0023】
CO2を吸収したリッチ溶液12Aは、リッチ溶液供給管50に介装されたリッチソルベントポンプ51により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器52において、吸収液再生塔14で再生されたリーン溶液12Bにより加熱され、吸収液再生塔14の頂部側に供給される。
【0024】
前記再生塔14の頂部側から塔内部に放出されたリッチ溶液12Aは、塔底部からの水蒸気による加熱により、大部分のCO2を放出する。再生塔14内で一部または大部分のCO2を放出したCO2吸収液12は「セミリーン溶液」と呼称される。この図示しないセミリーン溶液は、再生塔14底部に流下する頃には、ほぼ全てのCO2が除去されたリーン溶液12Bとなる。このリーン溶液12Bは循環ラインL20に介装された再生加熱器61で飽和水蒸気62により加熱される。加熱後の飽和水蒸気62は水蒸気凝縮水63となる。
【0025】
一方、再生塔14の塔頂部14Aからは塔内においてリッチ溶液12A及び図示しないセミリーン溶液から逸散された水蒸気を伴ったCO2ガス41が放出される。
そして、水蒸気を伴ったCO2ガス41がガス排出ラインL21により導出され、ガス排出ラインL21に介装されたコンデンサ42により水蒸気が凝縮され、分離ドラム43にて凝縮水44が分離され、CO2ガス45が系外に放出されて、別途圧縮回収等の後処理がなされる。
分離ドラム43にて分離された凝縮水44は凝縮水ラインL22に介装された凝縮水循環ポンプ46にて吸収液再生塔14の上部に供給される。
なお、図示していないが、一部の凝縮水44はCO2吸収液の洗浄水20として水洗部13Bの頂部に供給され、CO2除去排ガス11Bに同伴するCO2吸収液12の吸収に用いている。
【0026】
再生されたCO2吸収液(リーン溶液12B)はリーン溶液供給管53を介してリーン溶液ポンプ54によりCO2吸収塔13側に送られ、CO2吸収液12として循環利用される。
よって、CO2吸収液12は、CO2吸収塔13と吸収液再生塔14とを循環する閉鎖経路を形成し、CO2吸収塔13のCO2吸収部13Aで再利用される。なお、必要に応じて図示しない補給ラインによりCO2吸収液12は供給され、また必要に応じて図示しないリクレーマによりCO2吸収液を再生するようにしている。
【0027】
なお、CO2吸収塔13に供給されるCO2含有排ガス11Aは、その前段側に設けられた冷却塔70において、冷却水71により冷却され、その後CO2吸収塔13内に導入される。なお、冷却水71の一部もCO2吸収液のCO2吸収塔13洗浄水20として水洗部13Bの頂部に供給され、CO2除去排ガス11Bに同伴するCO2吸収液12の洗浄に用いる場合もある。なお、符号72は循環ポンプ、75は冷却器、74は循環ラインを図示する。
【0028】
このように、CO2吸収塔13と吸収液再生塔14とを循環利用されるCO2吸収液12は、水洗部13Bにおいて、CO2が除去されたCO2除去排ガス11Bと、洗浄水20とを向流接触させ、CO2除去排ガス11Bに同伴されたCO2吸収液12を洗浄水20で吸収除去し、吸収塔13の外部への放散を防止している。
【0029】
この洗浄水20に吸収除去されたCO2吸収液12を再利用するために、本実施例では濃縮部22を設け、CO2吸収液12を濃縮利用するようにしている。
【0030】
図2は、図1における吸収塔13と濃縮部22とを含む構成部分の拡大図である。
図2に示すように、本実施例に係る濃縮部22は、第1の気液分離部22Aと濃縮塔22Bとから構成されている。
前記水洗部13Bにおいて、洗浄水20を循環する循環ラインL1から、CO2吸収液12を含む洗浄水20の一部を抜出しラインL2を介して抜出液21として抜出し、第1の気液分離部22Aへ導入する。
この第1の気液分離部22Aにおいて、抜出液21を放散させることで、ガス体と液体とを分離し、ガス成分24を抜出液21から分離している。
このガス成分24は、CO2吸収液12中に含まれるアンモニア等の揮発性の高い例えばアンモニアガス等であり、ガス導入ラインL4へ供給ラインL4Fを介して供給している。
【0031】
第1の気液分離部22Aでガス成分24を分離した抜出液21は、供給ラインL5を介して濃縮塔22Bの濃縮液循環ラインL6に合流している。
【0032】
濃縮塔22Bにはその底部側から空気31を吹き込み、循環する抜出液21中に残存するガス成分24をさらに抜出すようにしている。
【0033】
すなわち、濃縮塔22Bにおいては、濃縮液23に合流された抜出液21は、その頂部から塔内部に流入され、流入した濃縮液23が例えば充填部60等の充填物の表面を底部側に流下する間に、揮発性の高いガス成分24が底部側より導入される空気31と接触して、空気中に放散する。この放散されたガス成分24は、ガス導入ラインL14を介して、水洗部13Bの後流(塔頂部)側に導入され、CO2吸収液12が除去されたCO2吸収液除去排ガス11Cと共に、CO2吸収塔13の頂部から外部に放出される。
【0034】
また、濃縮塔22Bの頂部からガス成分24が導出される供給ラインL4Aには、分離ドラム22Cが設けられており、ガス成分24中から水分を分離することで、水分の外部への同伴を防止し、系外への水分の逸散を防止している。分離ドラム22Cで分離されたガス成分24は供給ラインL4Bを介してガス導入ラインL4へ導出している。
また,分離ドラム22Cで分離された液は、供給ラインL4Cを介して、濃縮塔22Bに戻される。
なお、ガス成分24を吸収塔13の塔頂部側に導入する場合には、そのまま外部に放出されるので、ガス規制が高い場合には、その水洗部13Bの後流(塔頂部)側に導入するようにしてもよい。
【0035】
また、濃縮塔22Bを循環することでCO2吸収液が濃縮された濃縮液23は、濃縮液返送ラインL3を介して、水洗部13Bの前流(塔底部)側のCO2吸収部13Aに導入され、CO2吸収液12として再利用される。
【0036】
本実施例では、CO2吸収液が濃縮された濃縮液23をCO2吸収部13Aに戻す場合には、濃縮液23を返送する返送ラインL3をリーン溶液供給管53のポンプ54の吸引側に合流させ、リーン溶液12Bと共に、CO2吸収部13Aに導入し、CO2吸収液12として再利用される。
なお、濃縮液23を返送する返送ラインL3をCO2吸収部13A内に別途導入するようにしてもよい。
【0037】
本実施例によれば、脱炭酸排ガスに残存して外部に放出される吸収液の塩基性アミン化合物類の濃度をより一層低減できると共に、回収した吸収液を濃縮して再利用を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
図3は、実施例2に係るCO2回収装置の概略図である。図4は、図3における吸収塔と濃縮部とを含む構成部分の拡大図である。図1に示す実施例1に係るCO2回収装置10Aと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図3及び図4に示すように、本実施例のCO2回収装置10Bでは、実施例1において用いた第1の気液分離部22Aに、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム等)32を供給するアルカリ供給部33を設け、第1の気液分離部22Aにおいて抜出液21のpHを調整するようにしている。
ここで供給するアルカリ32としては、例えば水酸化ナトリウムを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、アルカリ32としては、水酸化ナトリウム以外に、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0039】
また、第1の気液分離部22Aにアルカリ32を添加することで、ガス成分24中に含まれる揮発性塩基性成分が分離されるので、この揮発性塩基性成分を酸処理して回収する揮発性塩基性成分回収部である酸洗浄塔27が設けられており、第1の気液分離部22A及び濃縮塔22Bから分離されるガス成分24中の揮発性塩基性成分を回収・除去するようにしている。
【0040】
酸洗浄塔27には、酸供給部28から供給ラインL7に酸29が添加され、硫酸塩として酸処理液29A中で回収され、供給ラインL8を介して廃液処理部30で処理している。
ここで投入する酸29としては、例えば硫酸を用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、酸29としては、硫酸以外に、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、シュウ酸等を挙げることができる。
【0041】
図10は、pHと抜出液中の各成分の残存率との関係図である。
図10に示すように、抜出液21中には、CO2吸収液12と洗浄水20と揮発性塩基性成分が含まれている。この揮発性塩基性成分のうちで、アンモニアのように沸点が低い揮発性塩基性成分(ガス成分)Aは、第1の気液分離部22Aの放散作用により、ほとんどが気化されるが、アンモニアよりも沸点が高い揮発性塩基性成分(ガス成分)Bについては、その挙動がガス成分Aとは異なる。
すなわち、吸収液の種類に応じた所定のpHを「基準pH」とすると、その基準pHよりもpHを+1〜+4側に上げるにつれて、ガス成分Bは液体側から気体側へ変化する。
【0042】
よって、濃縮部22の第1の気液分離部22Aにおいて、pHを基準値(0)とする場合には、図10に示すように、揮発性塩基性成分(ガス成分)Aのみがガス成分24中に含まれることとなる。
これに対して、濃縮部22の第1の気液分離部22Aにおいて、アルカリ32を添加してpHを基準値より+1〜4側に上昇させる場合には、図10に示すように、揮発性塩基性成分(ガス成分)Aのみならず、揮発性塩基性成分(ガス成分)Bもガス成分24中に含まれることとなるので、濃縮液23から大部分の揮発性塩基性成分(ガス成分)A、Bを分離することができる。
【0043】
この分離された揮発性塩基性成分(ガス成分)Bはそのままの状態ではガス成分24中に含まれ、ガス導入ラインL4により吸収塔13側に導入されるので、本実施例では酸洗浄塔27を設け、酸29を添加する酸処理により、硫酸塩として回収し、ガス成分24側への同伴を防止している。
【0044】
図11は、pHと酸処理液中の各揮発性塩基性成分の回収率との関係図である。
図11に示すように、所定の酸を添加しpHを基準値(0)とする場合には、図11に示すように、揮発性塩基性成分(ガス成分)A、Bの大部分は酸処理液中に存在する。
これに対して、酸洗浄塔27における酸29の添加量を減らして、pHを基準値より+1〜3側(アルカリ側)に上昇させる場合には、図11に示すように、揮発性塩基性成分(ガス成分)Bが酸処理液に残り、揮発性塩基性成分(ガス成分)Aはガスとして分離されることとなる。
この揮発性塩基性成分(ガス成分)Aは、アンモニア等であるので、アンモニア規制が無い場合には、ガス導入ラインL4により吸収塔13側に導入し、外部に排出するようにしている。
【0045】
これに対して、排ガス規制が厳しく、アンモニアの排出も制限される場合には、酸29を添加して、基準以下の酸性側のpHとして、ガス成分24中へ排出しないようにしている。
【0046】
このように、酸処理する際に、pHを調整することで、揮発性塩基性成分の分別回収が可能となる。
【0047】
また、第1の気液分離部22Aにおいて、アルカリを添加するので、実施例1のように濃縮液23をそのままCO2吸収液12側へ戻すことができない。これは、アルカリの添加によりpHが高くなりアルカリ側となっているので、そのまま吸収塔13側へ戻す場合には、添加したアルカリが吸収液12に蓄積し、pHバランスの変動を来すからである。
【0048】
よって、本実施例では、副再生装置38を設け、濃縮液23にアルカリ32をさらに添加して強アルカリ側とし、この強アルカリ条件で図示しない飽和水蒸気を用いて間接的に熱交換して再生することで、CO2吸収液12を気化させている。この気化したCO2吸収液は、第2の気液分離部39により水蒸気を含むガス成分24とCO2吸収液12との気液分離している。この分離されたCO2吸収液12は、供給ラインL10を介して、水洗部13Bの前流(CO2吸収部13A)側へ戻すようにしている。なお、水蒸気等のガス成分24は供給ラインL11を介して、塔頂部13Cへ戻すようにしている。
【0049】
図5は、実施例2に係る他のCO2回収装置の概略図である。
図3に示すCO2回収装置10Cでは、吸収塔13の水洗部13Bは一段の場合であるが、図5に示すCO2回収装置10Bでは、2段の水洗部(下段)13B1、水洗部(上段)13B2としている。
本発明では、2段に限定されず、3段以上としてもよい。
本実施例の場合のCO2吸収液12は、供給ラインL10を介して下段側の水洗部13B1側へ戻すようにしている。
【実施例3】
【0050】
図6は、実施例3に係るCO2回収装置の概略図である。図1、図3及び図5に示す実施例1に係るCO2回収装置10A、10B及び10Cと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
本実施例に係るCO2回収装置10Dでは、水洗部(上段)13B2の循環ラインL1に酸性液供給部36から酸性液37を供給して、洗浄水20を酸性としている。酸洗の洗浄水20としているので、水洗部でのCO2吸収液の吸収度合いが向上する。
また、抜出液21も酸性となっているので、抜出液21にアルカリ32を供給して、イオンからフリーの状態に遊離させ、塩基性揮発性成分の気化を容易にしている。
図7に示すように、吸収液(気体状態)を分離させ、同伴するガス成分24を第2の気液分離装置39で分離し、再生吸収液として吸収塔13側へ戻すようにして、再利用に供される。第1の気液分離器22Aで、分離されたガス成分24が供給されるラインL4Fと分離ドラム22Cで分離されたガスのラインL4Bが合体した供給ラインL4Eを介して、ガス成分24は酸洗浄ラインに供給される。副再生装置38からのCO2吸収液の気化ガス12は、供給ラインL9を介して、気液分離部39に送られる。
【0051】
なお、ガス成分24は、供給ラインL4を介して水洗部13B2の塔頂部側に戻し、再生したCO2吸収液12は供給ラインL10を介して第1の水洗部(下段)13B1側に戻している。
【実施例4】
【0052】
図8は、実施例4に係るCO2回収装置の概略図である。図1、図3及び図5に示す実施例1に係るCO2回収装置10A、10B及び10Cと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
本実施例に係るCO2回収装置10Eでは、実施例2の濃縮塔22Bにおいて、空気31を供給する代わりに、水蒸気35を供給して水蒸気によるガス成分24の追い出しを行うようにしている。
【0053】
この水蒸気35を用いる場合には、ガス成分24の戻し先を実施例2のように吸収塔13側とせずに、再生塔14の塔頂部に導入するようにしている。
【0054】
これは、実施例2のような空気31を用いる場合には、ガス成分24の戻し先を再生塔14側とすると、回収CO2中に空気が混入することとなる。
この空気の混入は、回収CO2としては、不純物の混入となり、回収CO2の純度が低下する。
【0055】
これに対して、空気31の代わりに水蒸気35を用いる場合には、このような純度が低下することがないので、再生塔14側へ導入してもよいこととなる。
以上、説明したように、本発明によれば、脱炭酸排ガスに残存して放出される塩基性アミン化合物類の濃度をより一層低減できると共に、濃縮した吸収液を再度有効利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10A〜10E CO2回収装置
11A CO2含有排ガス
12 CO2吸収液
12A リッチ溶液
12B リーン溶液
13 CO2吸収塔(吸収塔)
14 吸収液再生塔(再生塔)
20 洗浄水
21 抜出液
22 濃縮部
22A 第1の気液分離部
22B 濃縮塔
23 濃縮液
24 ガス成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含有するCO2含有排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、
CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を分離してCO2吸収液を再生する吸収液再生塔と、
前記吸収液再生塔でCO2が除去されたリーン溶液をCO2吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、
前記CO2吸収塔が、
CO2吸収液によりCO2含有排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収部と、
前記CO2吸収部のガス流れ後流側に設けられ、洗浄水によりCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する水洗部と、
前記水洗部で回収されたCO2吸収液を含む洗浄水を前記水洗部の頂部側から供給して循環・洗浄する循環ラインと、
前記循環ラインから、CO2吸収液を含む洗浄水の一部を抜出液として抜出す抜出しラインと、
前記抜出液からガス成分を分離する第1の気液分離部と、
前記抜出液中のCO2吸収液を濃縮し、ガス成分を分離する濃縮部と、を具備することを特徴とするCO2回収装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の気液分離部にアルカリを添加して抜出液のpHを調整するアルカリ供給部と、
前記濃縮部から分離されるガス成分から揮発性塩基性成分を酸により回収する酸洗浄塔と、
前記濃縮部で濃縮された濃縮液からCO2吸収液を再生する副再生装置と、を具備することを特徴とするCO2回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記水洗部を複数段とすることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記水洗部を複数段とし、各々の段において洗浄水を循環させると共に、最上段の水洗部で循環する洗浄水に酸を添加することを特徴とするCO2回収装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記濃縮部の濃縮を空気又は水蒸気により行うことを特徴とするCO2回収装置。
【請求項6】
CO2を含有するCO2含有排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を分離してCO2吸収液を再生する吸収液再生塔とを用い、前記吸収液再生塔でCO2が除去されたリーン溶液をCO2吸収塔で再利用するCO2回収方法であって、
前記CO2吸収塔の後流側において、洗浄水によりCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する水洗部の一部を抜出液として抜出し、
前記抜出液からガス成分を気液分離し、次いで前記抜出液中のCO2吸収液を濃縮し、ガス成分を分離することを特徴とするCO2回収方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記気液分離する際にアルカリを添加して抜出液のpHを調整し、ガス成分に含まれる揮発性塩基性成分を酸により回収し、
濃縮された濃縮液からCO2吸収液を再生することを特徴とするCO2回収方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
空気又は水蒸気により濃縮を行うことを特徴とするCO2回収方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−236166(P2012−236166A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107695(P2011−107695)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】