説明

COFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置

【課題】 破損しにくいCOFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 COFタイプのフレキシブル配線基板10は、所定長さの帯状の薄膜絶縁フィルム11上に半導体素子21を実装し、長手方向の両端にそれぞれ接続部22、23を形成する。前記フレキシブル配線基板10の幅方向の両端部19a、19bは、前記一方の接続部22から所定距離L離れた箇所から傾斜して縮幅され、さらに前記縮幅により形成された傾斜角部19a、19bは、その角が落とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(Chip On Film)タイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置に係り、さらに詳しくは、配線基板に亀裂等が発生しにくくなるよう構成したCOFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶パネルと外部制御基板がフレキシブル配線基板で接続されている。このフレキシブル配線基板には、TCP(Tape Carrier Package)タイプ及びCOF(Chip On Film)タイプのものがある。
【0003】
このうちCOFは、TCPと比べて、柔軟性があり、コストが安価である等の理由から、最近では、COFが多く使用されるようになってきている。(特許文献1参照)。
【0004】
図3は、下記特許文献1に記載されたCOFタイプのフレキシブル配線基板を示している。
【0005】
このフレキシブル配線基板10Aは、テープキャリア20を用いて構成される。このテープキャリア20は、自由に折り曲げることが可能な柔軟性の高い薄膜のポリイミド系絶縁テープ11を基材とし、この絶縁テープの表面に所定の厚さの銅箔パターンが形成されている。銅箔パターンは、インナーリード12及びアウターリード13からなる配線パターン14となっている。
【0006】
配線パターン14上には、搭載される半導体素子21の対応する電極に電気的に接続される部分、つまりインナーリード12の先端部12aと、外部の端子に接続されるアウターリード13とを除いて、ソルダーレジスト15が塗布され、これにより絶縁状態が確保されている。このソルダーレジスト15は、絶縁テープ11の半導体素子搭載領域16に対応する箇所に開口16aを有し、この開口16aから、インナーリード12先端の接続部12aを含む絶縁テープ11部分が露出している。
【0007】
このように構成されたテープキャリア20は、その上に半導体素子21が搭載され、これらの工程が終了した後に、図3の枠線Xに沿って、個々のフレキシブル配線基板が打ち抜かれる。
【特許文献1】特許第3536023号公報(図1、段落〔0026〕〜〔0032〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このようにして打ち抜かれたフレキシブル配線基板10Aは、テープ20の両側縁に段部17a、17bが形成されている。しかし、薄膜フィルムは、その基材に柔軟性が高く薄肉のポリイミド系絶縁テープが使用されているので、この基材は、柔軟性が高いが、一方で機械的強度が弱く、容易に破断し易くなっている。
【0009】
このようなフレキシブル配線基板は液晶表示装置に多く使用されている。図4は、液晶表示装置に装着されたフレキシブル配線基板を拡大した斜視図であり、この部分は、図2におけるA部に相当する部分である。
【0010】
図4に示すように、フレキシブル配線基板10Aは、一端が液晶パネル、他端が外部制御基板に接続して使用される。しかし、液晶パネル及び外部制御基板は、何れもこのフレキシブル配線基板に比べて、格段に機械的強度が強いものとなっているので、液晶パネル及び外部制御基板の扱い方によっては、簡単に配線基板に亀裂が入り破断等してしまうことがある。
【0011】
例えば、液晶表示装置の組み立て時に、液晶パネルをLCDモジュールの内枠32に組み込んだ後、このフレキシブル配線基板10Aは、一端を液晶パネル、他端を外部制御基板に接続したまま内枠32の外周面に沿わせて、装置の背面に外部制御基板を配設することになるが、このとき、フレキシブル配線基板10Aの段部17a、17bが内枠32等に引っ掛かり、亀裂18a、18bが入ってしまう。
【0012】
しかも、この組み立て時には、フレキシブル配線基板10Aのどの部分が内枠32と接触するかが分からない状態にあり、そのため、組み立て時において段部17a、17bが内枠32の角部等に当たる確率が高くなっている。
【0013】
また、組み立て後、位置の調整をする場合があるが、このときも、段部17a、17bに応力が加わり亀裂18a、18bが入ることがある。
【0014】
本発明は、上述のような従来技術が抱える課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、破損しにくいCOFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板は、所定長さの帯状の薄膜絶縁フィルム上に半導体素子を実装し、長手方向の両端にそれぞれ接続部を形成しており、
前記フレキシブル配線基板の幅方向の両端部は、前記一方の接続部から所定距離離れた箇所から傾斜して縮幅され、さらに前記縮幅により形成された傾斜角部は、その角が落とされていることを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板において、前記傾斜角部は、アール加工又はテーパ加工によりその角が落とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板を用い、前記フレキシブル配線基板の一方の接続部を液晶パネルに他方の接続部を外部制御基板にそれぞれ接続して内枠に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1のCOFタイプのフレキシブル配線基板の発明によれば、COFタイプのフレキシブル配線基板の両端部は、一方の接続部から所定距離離れた箇所から傾斜して縮幅され、これにより形成された傾斜角部がその角を落とされており、従来技術のように基板の両端部に段部が形成されず、特定箇所に応力が加わることがないので、亀裂等が発生しにくくなる。
【0019】
請求項2の発明によれば、COFタイプのフレキシブル配線基板の両端部における傾斜角部は、アール加工又はテーパ加工によりその角が落されているので、アール加工の場合には、円半径を大きくすることでより段部ができにくくなり、特定箇所への応力がより緩和されることで、亀裂等がさらに発生しにくくなる。
【0020】
請求項3の液晶表示装置の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板は、液晶表示装置の外枠である額縁で一体に収容されても、フレキシブル配線基板に段部がないので、特定箇所で内枠等に引っ掛かることがなくなる。しかも、組み立て時に、フレキシブル配線基板が内枠の角部に当たっても、フレキシブル配線基板には段部がないためこの角部を滑り、特定箇所への引っ掛かりがなくなり、液晶パネル及び外部制御基板の接続部に悪影響を及ぼすこともなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するためのCOFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置を例示するものであって、本発明をこのCOFタイプのフレキシブル配線基板及びこの配線基板を用いた液晶表示装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の1実施例に係るCOFタイプのフレキシブル配線基板を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線の側断面図である。
【0023】
COFタイプのフレキシブル配線基板は、従来技術のものとほぼ同じ構成を有している。そこで、共通する部分は従来技術の図3と同じ符号を付し、重複説明を避けて異なる構成を中心にして詳述する。
【0024】
このCOFタイプのフレキシブル配線基板10は、図1に示すように、フレキシブル配線基板10の幅方向の両端部19a、19bが、一方の接続部22から所定距離L離れた箇所から傾斜して縮幅され、これにより形成された傾斜角部19a、19bの角が落とされている構成が従来と異なる。しかしながら、このフレキシブル配線基板10もテープキャリア20を用いて作製され、その方法は前述の配線基板10Aの方法と同じである。
【0025】
そして、このようにして作製されたテープキャリア20は、その上に半導体素子21が搭載され、これらの工程が終了した後に、傾斜角部19a、19bの角が落とされるようにして、個々のフレキシブル配線基板10が打ち抜かれる。
【0026】
この構成によれば、COFタイプのフレキシブル配線基板10の両端部は、一方の接続部22から所定距離L離れた箇所から傾斜して縮幅され、これにより形成された傾斜角部19a、19bの角が落とされているので、従来技術のように基板の両端部19a、19bに段部が形成されず、特定箇所に応力が加わることがないので、亀裂等が発生しにくくなる。
【0027】
さらに、傾斜角部19a、19bは、図1に示すように、アール加工によりその角が落されている。
【0028】
この構成によれば、アール加工における円半径を大きくすることでより段部ができにくくなり、特定箇所への応力集中がより緩和されることで、亀裂等がさらに発生しにくくなる。もっとも、傾斜角部19a、19bの角を落す加工はアール加工に限られず、テーパ加工によるもの等段部をなくすあらゆる加工を含む。
【0029】
図2は、このフレキシブル配線基板10を液晶表示装置に装着した状態を示し、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大図である。
【0030】
液晶表示装置30は、液晶パネル31と、この液晶パネル31を収容する内枠32と、この内枠32の背面に配設される外部制御基板(図示省略)と、これらを一体に成形する額縁(図示省略)とを備えている。
【0031】
フレキシブル配線基板10は、一端の接続部22が液晶パネル31に接続され、他端の接続部23が外部制御基板に接続される。
【0032】
組み立て時には、液晶パネル31は内枠32に収容される。次いで、液晶パネル31に接続されたフレキシブル配線基板10は、内枠32の外面に当接して屈曲させ、他端に接続された外部制御基板が内枠32の背面に配設される。
【0033】
このフレキシブル配線基板10は、段部がないので、液晶表示装置30として額縁により一体に収容されても特定箇所で内枠32等に引っ掛かることがなくなる。しかも、組み立て時に、フレキシブル配線基板10が内枠32の角部に当たっても、この角部を滑ることで特定の箇所の引っ掛かりがなくなり、液晶パネル31及び外部制御基板のそれぞれの接続部に悪影響を及ぼすこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1実施例に係るCOFタイプのフレキシブル配線基板を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A側断面図、
【図2】図1のフレキシブル配線基板を液晶表示装置に装着した状態を示し、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大図、
【図3】従来技術のCOFタイプのフレキシブル配線基板を示す平面図、
【図4】図3のフレキシブル配線基板を液晶表示装置に装着した状態を示す斜視図、である。
【符号の説明】
【0035】
10、10A ・・・COFタイプのフレキシブル配線基板
11 ・・・絶縁フィルム(テープ)
19a、19b ・・・両端部
19a、19b・・・傾斜角部
21 ・・・半導体素子
22、23 ・・・接続部
32 ・・・内枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの帯状の薄膜絶縁フィルム上に半導体素子を実装し、長手方向の両端にそれぞれ接続部を形成したCOF(Chip On Film)タイプのフレキシブル配線基板において、
前記フレキシブル配線基板の幅方向の両端部は、前記一方の接続部から所定距離離れた箇所から傾斜して縮幅され、さらに前記縮幅により形成された傾斜角部は、その角が落とされていることを特徴とするCOFタイプのフレキシブル配線基板。
【請求項2】
前記傾斜角部は、アール加工又はテーパ加工によりその角が落とされていることを特徴とする請求項1に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のCOFタイプのフレキシブル配線基板を用い、前記フレキシブル配線基板の一方の接続部を液晶パネルに他方の接続部を外部制御基板にそれぞれ接続して内枠に収容されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−49590(P2006−49590A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228802(P2004−228802)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】