説明

CPT活性亢進剤及び飲食物

【課題】CPT活性を亢進して、脂質代謝経路を亢進させ、脂肪肝を改善し、血中中性脂肪量を低減し、ひいては抗疲労作用、抗ストレス作用、身体疲労軽減作用及び消費熱量亢進作用を有する組成物を提供すること。
【解決手段】ウコン含有成分を有効成分とする組成物を提供することにより、CPT活性を亢進させ、これにより副作用もなく脂質代謝経路を亢進させ、脂肪肝を改善し、血中中性脂肪量を低減する。該組成物は、抗疲労作用、抗ストレス作用及び身体疲労軽減作用も有する。また、ウコン含有成分とカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数とを組み合わせることにより、これらの作用が増幅し、さらに消費熱量亢進作用も有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCPT活性亢進用組成物、脂肪肝改善用組成物、血中中性脂肪量低減用組成物、抗疲労用組成物、抗ストレス用組成物、身体疲労軽減用組成物、消費熱量亢進用組成物及びそれらの組成物を含有する医薬品及び飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会に伴い、健康に対する人々の関心は次第に高まってきている。しかし、西洋化した現代の食事はトリグリセリドやコレステロールに代表される脂質類の血中及び臓器中での含有濃度を上昇させ、動脈硬化や脂肪肝等の生活習慣病を誘発させる原因となる。現在「メタボリックシンドローム」という言葉が注目されてきているように、代謝の低下は様々な病気の源になるという意識が広がってきている。脂質代謝のメカニズムに関しては、カルニチンが関与した系が知られている。
【0003】
1.カルニチン
カルニチンはミトコンドリア内の基質、特に脂質代謝において重要な役割を担っている成分である。また、カルニチンは摂食による摂取の他、生体内でアミノ酸から生合成されるが、加齢により生成能が低下することが知られている。そのため、カルニチンに慢性疲労や皮質代謝改善効果を期待した薬品、食品が多く上市されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
2.カルニチンが関与する脂質代謝経路について
カルニチンが関与する脂質代謝経路を詳述する。脂質代謝経路は大きく分けて2段階に分類される。第1段階は、脂肪酸をミトコンドリア内へ運び込む段階、第2段階はミトコンドリア内で脂肪酸を分解する段階である。第1段階は、次に説明するとおりである。まず細胞質に取り込まれた長鎖脂肪酸は、アシルCoAシンターゼ(ACS)によりコエンザイムA(CoA)と結合し、アシル−CoAとなる。次いで、ミトコンドリア外膜に存在するカルニチンパルミトイル転移酵素1型(CPT−I)の触媒によりアシル-CoAのアシル基がカルニチンに移行してアシルカルニチンが生成し、この形でミトコンドリア内膜を通過してミトコンドリアのマトリックスに移行する。そこでカルニチンパルミトイル転移酵素2型(CPT−II)が触媒することによりアシルカルニチンのアシル基が再度CoAに受け渡され、アシル−CoAとカルニチンに分離され、第1段階が完了する。第2段階は、脂肪酸を分解する段階である。これは、アシル−CoAがβ酸化酵素の触媒によりβ酸化を受けることにより脂肪酸がエネルギーとして用いられる(非特許文献2)。ウコン含有成分として知られるクルクミンが第2段階のβ酸化を促進することは知られている(特許文献2)。
【0005】
3.カルニチンパルミトイル転移酵素
カルニチンパルミトイル転移酵素(CPT−I及びCPT−II)は、第1段階で作用する酵素である。CPT−Iは、脂肪酸から生成されたアシルCo−Aとカルニチンを結合させ、アシルカルニチンとする。脂肪酸はアシルカルニチンの形でミトコンドリアの内膜を通過し、ミトコンドリア内へ移動する。CPT−IIは、ミトコンドリア内膜を通過してきたアシルカルニチンを、カルニチンとアシルCo−Aに分離する。
CPT−I及びCPT−IIは肝臓の他、筋肉、脂肪組織等にも分布していることが知られており、これらの機能亢進は、この酵素が分布する各器官の基質代謝を亢進させ、疲労の軽減や蓄積脂肪の消費の促進等につながる。CPT−I及びCPT−IIが効率的に機能しなければ、脂肪酸はミトコンドリア内に取り込まれて、β酸化される前段階の状態にならないため、β酸化酵素がいくら活性化されたとしても脂肪酸の分解を促進できない。ヒトの場合、急激な運動の後にはCPT活性が低下することが報告されている(非特許文献3)。特にCPT−IIの機能が欠損すると、筋緊張低下、呼吸障害、不整脈、心肥大、発作性ミオグロビン尿症等の疾病が引き起こされることが知られている。
【0006】
以上の脂質代謝経路を亢進させるにあたっては、カルニチンを医薬品やサプリメントとして外部から補給したり、クルクミン等の有効成分を用いて第2段階のβ酸化を促進する方法は従来から行われているものの、生体内での第1段階のCPT−I及びCPT−II活性を亢進させて、ミトコンドリアに取り込まれる脂肪酸を増加させることにより脂質代謝経路を亢進させる方法はこれまで行われていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−196485号公報
【特許文献2】特開平11−246399号公報
【非特許文献1】王堂哲、食品工業、46(22)、26(2003)
【非特許文献2】C.J.Rebouche, J.Appl.Nutr., 40,99(1988)
【非特許文献3】Lennon et al., J.Appl.Physiol., 55,489(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、CPT活性、特にCPT−II活性を亢進する組成物を提供することを目的とする。詳細には、CPT活性を亢進させることにより、脂質代謝経路を亢進させ、脂肪肝、とりわけアルコール性脂肪肝を改善し、血中中性脂肪量を低減すること、また、抗疲労作用、抗ストレス作用、身体疲労軽減作用及び消費熱量亢進作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ウコン中の成分がCPT活性亢進作用、脂肪肝、とりわけアルコール性脂肪肝改善作用、血中中性脂肪低減作用、更に抗疲労作用、抗ストレス作用及び身体疲労軽減作用を有することを見出し、本発明を完成した。また、本発明者らは、ウコン中の成分とカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数とを組み合わせることにより、これらの作用が増幅し、さらに消費熱量亢進作用を有することを見出した。
より具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0010】
1.ウコン含有成分を有効成分とするCPT活性亢進用組成物。
2.ウコン含有成分を有効成分とする脂肪肝改善用組成物。
3.前記脂肪肝がアルコール性脂肪肝である2に記載の脂肪肝改善用組成物。
4.ウコン含有成分を有効成分とする血中中性脂肪量低減用組成物。
5.ウコン含有成分を有効成分とする抗疲労用組成物。
6.ウコン含有成分を有効成分とする抗ストレス用組成物。
7.ウコン含有成分を有効成分とする身体疲労軽減用組成物。
8.前記ウコン含有成分が非アセトン溶媒抽出物である1〜7のいずれかに記載の組成物。
9.さらにカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数を含む1〜8のいずれかに記載の組成物。
10.ウコン含有成分とカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数とを含む消費熱量亢進用組成物。
11.1〜10のいずれかに記載の組成物を含む飲食物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、CPT活性、特にCPT−IIを亢進させ、これにより副作用もなく脂質代謝経路を亢進させ、脂肪肝、とりわけアルコール性脂肪肝を改善し、血中中性脂肪量を低減することができる。体力維持用組成物、抗疲労用組成物、抗ストレス用組成物及び消費熱量亢進用組成物としても利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.原料
本発明の組成物の原料はショウガ科ウコン属の多年生植物で、特に通常ターメリックやアキウコンとも呼ばれるウコン(学名:Curcuma longa L.)が好ましい。使用可能な植物部位としては根茎、葉部、茎部、花部、実等がある。根茎を使用することが好ましい。本発明の組成物に用いるウコンの形態は、CPT活性亢進作用、脂肪肝(とりわけアルコール性脂肪肝)改善作用、血中中性脂肪低減作用、更に抗疲労作用、抗ストレス作用及び身体疲労軽減作用を有するウコン含有成分を含有するものであれば、生のまま使用しても、乾燥したものであってもよく、これらを組み合わせて使用することも可能であり、抽出物の形態でもよいが、添加・加工の簡便性及び摂取等の観点から、乾燥したものを使用することが好ましい。乾燥方法は天日乾燥等の一般的な手法が用いられるが、食品素材用、あるいは医薬品・医薬部外品原料用等に流通されている乾燥状のウコン(塊、粉末等)をそのまま、あるいは適宜加工の上用いるのが最も簡便である。
【0013】
2.ウコン含有成分
本発明の組成物に用いるウコン含有成分とは、1以上のCPT活性、特にCPT−II活性を亢進する成分(クルクミンを除く)を意味するものである。このようなCPT活性を有するウコン含有成分の好ましい例は、非アセトン溶媒抽出物であるが、これは物性を意味し、当該活性を有する限りにおいて加工工程を限定するものではなく、また形態を限定するものでもない。非アセトン抽出物が好ましい理由については以下に説明する。これらの配分量は、特に飲食物に用いる場合においては、呈味性、嗜好性により適宜考慮されるべきものである。
【0014】
先述の技術文献2には、ウコン粉末をアセトンで抽出したクルクミン含有精製物を1%添加した飼料をマウスに投与して肝臓中のトリグリセリド蓄積量を約40%程度抑制したデータが記載されている。一方、本発明のウコン含有成分を有効成分とする組成物は、ウコン粉末を5%添加した飼料をマウスに投与したところ、クルクミンを0.2%未満にしか含有していないのにも関わらず、肝臓中のトリグリセリド蓄積量を約74%も低減させている(実施例、表5参照)。また、同重量のウコン末とクルクミンを用い、身体疲労軽減効果を比較したところ、クルクミンとしての投与量が少ないにも拘わらず、ウコン末を用いた方が有効であることが示されている(実施例3参照)。したがって、ウコン粉末はCPT活性亢進作用、脂肪肝(とりわけアルコール性脂肪肝)改善作用、血中中性脂肪低減作用、更に抗疲労作用、抗ストレス作用及び身体疲労軽減作用を有する成分を含有しており、該成分はアセトンにより抽出されない、クルクミンとは別個の成分であることが示唆される。それ故、本発明におけるウコン含有成分は、非アセトン溶媒抽出物である。そのような成分を含有させることが可能な浸出媒体としては、水性又は親水性(水に可溶)の溶媒、つまり、水又は親水性溶剤を含んだ溶媒を用いることができる。これらを単独又は混合溶媒の形態で使用することができ、例えば、水と親水性溶剤との混合溶媒や複数種の親水性溶剤の混合物であってもよい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン等のジオール及びポリオール類;アセトニトリル等の低級脂肪族ニトリル;DMF;DMSO等、各種極性有機溶剤が挙げられるが、摂食に用いる旨を考慮する場合は食品衛生法等、各用途に定められた範囲内での溶剤を用いる。本明細書においてこれらを併せて「水性溶媒」と表すこととする。水性溶媒は、好ましくは水である。水性溶媒の浸出温度を上げることによって浸出効率を上げることができ、例えば、水を用いる場合、約50〜100℃、好ましくは80〜100℃の熱水によって良好に浸出できる。浸出時間は浸出温度とウコンの形態を考慮しつつ適した時間を選択する。例えば90℃〜100℃の場合は1〜720分、好ましくは5〜180分である。浸出時間が短すぎると有効成分の抽出が不十分となり、長すぎると不純物の溶出が多くなり、また加工及び呈味に影響を与える。これらの抽出時間は目安であり、最適な時間は、目的成分の抽出効率と作業効率を考慮して適宜選択されるべきである。また、複数の異なる溶媒系、もしくは同じ溶媒系を用いて繰り返し浸出操作を行ってもよく、例えば、水又は熱水で浸出した後の残渣を更にアルコール等の親水性有機溶剤、あるいは水性溶媒で浸出し、両浸出物を併せて利用することができる。使用する浸出溶媒の割合がウコンの乾燥重量に対して5〜200倍程度となるようにすることによって好適に抽出することができる。
【0015】
3.カルニチンとの組み合わせ
本発明の組成物に、カルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数をさらに添加することが好ましい。カルニチンを添加することによりアシルCoAとカルニチンとの反応をさらに亢進し、CPT活性亢進作用、脂肪肝(とりわけアルコール性脂肪肝)改善作用、血中中性脂肪低減作用、更に抗疲労作用、抗ストレス作用、身体疲労軽減作用を増強することができる。また、ウコン含有成分とカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数を組み合わせることにより、消費熱量亢進作用という新たな作用を得ることができる。カルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数の添加量は、ウコン及び/またはウコン抽出物の重量に基づいて、0.01〜10000重量%、好ましくはサプリメントとして摂取する場合に推奨されている量を鑑みて0.1〜1000重量%、更に好ましくは1〜300重量%、最も好ましくは30〜50重量%の割合で添加するとよい。
【0016】
以上の本発明の組成物は、所望の作用の程度等の条件、投与方法ならびに嗜好性、呈味性に応じて適宜選択が可能である。また、これらの組成物を含有する抽出物及び画分、あるいはウコン粉末、ピューレ等、多方面にわたって様々な摂取形態で応用することが可能である。多くの場合、他の結合剤や、飲食可能な飲食用素材と組み合わせて所謂組成物として使用することができる。例えば、医薬品とする場合は、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤と組み合わせて経口固形剤として、あるいはイオン交換水又は生理的食塩水と組み合わせて経口液剤又は注射剤として使用できる。また、このような医薬品に限らず、緑茶、紅茶、烏龍茶、雑穀茶、野菜汁、果汁、乳等に配合して飲料として、あるいはビスケット、パン、飴等に配合して食品として日常的に摂取可能な形態で提供することも可能である。また、上記医薬品に準じて錠剤とすることにより所謂サプリメントとしても利用可能である。
【0017】
以下に、これら摂取形態について具体的に説明する。
本発明を医薬品として用いる場合は、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、上記油脂組成物の他、経口投与剤の形態に応じて一般に用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加して製造することができる。
【0018】
本発明を飲食物として用いる場合は、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品や飲料としての使用が挙げられる。具体的には、かかる化合物を含有したカプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤等からなる所謂サプリメント、パン、ケーキ、クッキー等のベーカリー食品類;ソース類、スープ類、ドレッシング類、マヨネーズ類等の調味料:牛乳、ヨーグルト、クリーム類等の乳製品;チョコレート、キャンデー等の菓子;あるいは緑茶、紅茶、烏龍茶、麦茶、雑穀茶、果汁、野菜、乳飲料、清涼飲料、及び炭酸飲料等の飲料等が挙げられる。なお、ここで、抽出物は抽出液であってもよい。
【0019】
本発明の組成物を含有する浸出液、抽出物及び画分あるいはウコン粉末等は、果汁・果実飲料、コーヒー飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、野菜飲料、雑穀茶飲料等の他の飲料と組み合わせることで、幅広い範囲の飲料を提供することが可能である。例えばソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュースや、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料等に適宜添加することもできる。また消費者の嗜好にあわせて茶葉の微粉末のような不溶性化合物をあえて懸濁させた形態も使用できる。さらに、該成分の摂取について携帯性、保存性を考慮に入れた場合、該当成分を含有させた粉末飲料や、該当成分を利用者自らの操作による浸出により飲用が可能となるような食品とすることもできる。
【0020】
添加時の安定性等を考慮すると、飲料において特にウコンをそのままの形態で利用する場合は、沈殿等の恐れがある。したがって、飲用時の外観が嗜好性等に与える影響を考慮すると、沈殿を防ぐためにある程度の粘稠性を有する組成のものを用いることが望ましい。粘稠性を有する組成のものとしては、果実、野菜等のピューレ等を用いる方法や増粘多糖類、糊料を添加する等の方法が挙げられる。
【0021】
飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、又は併用して配合しても良い。
【0022】
飲料を容器詰飲料にする場合、使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0023】
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器内を完全に液で満たすか、脱気、窒素置換又はその両方を行った後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【0024】
本発明の組成物を、医薬として使用する場合の投与量は、精製度、およびどの段階の抽出物及び/または画分を用いるか、または、年齢、体重、性別、症状、治療効果、投与方法、処理時間などの種々の要因によって異なるが、経口投与の場合は通常大人1人1日当たり植物原体重量(乾燥重量)として0.05〜15g、特に0.1〜10gの範囲を1日1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物を飲食物として摂取する場合の摂取量も医薬として使用する場合に準ずるが、飲食物の場合は医薬品とは異なり、保健機能の維持という目的、並びに、呈味性、嗜好性を考慮した場合においては、上記の範囲に限定されるものではない。
【0026】
以下に、本発明の実施の態様について実施例をあげて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
ウコン(C. longa)を約80メッシュに粉砕した市販ウコン末(日本粉末薬品社製)を用いた。
クルクミノイド(クルクミン、およびその誘導体)量は、内部標準法により測定した。分析条件は以下のとおりである。なお、測定の結果、クルクミン1.83重量%、デメトキシクルクミン0.67重量%、ビスデメトキシクルクミン0.81重量%であった。
【0028】
<分析条件>
カラム:Nucleosil C18 φ4.6×150mm
移動層:アセトニトリル:0.1%リン酸水溶液=45:55
注入量:10μL
流速:1.0mL/min
検出:UV254nm
カラム温度:40℃
<内部標準溶液>
4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキシル(東京化成社製)20mgをメタノール(和光純薬社製)に溶解し、50mLに定容した。
<標準溶液>
各分析対象のクルクミノイドの標準品(長良サイエンス社製)5mgを秤量してメタノール(和光純薬社製)に溶解し、内部標準溶液5mLを添加し、メタノールで全体量50mLに定容した。
<検量線作成>
標準溶液を高速液体クロマトグラフに10μL注入し、得られた内部標準及び分析対象のピーク高さ比と濃度から、1点検量線を作成した。
<試料の調整>
試料200mgを採取し、内部標準溶液5mLを添加して、メタノールで50mLに定容し、30分静置した。0.45μmメンブレンフィルターで濾過後、高速液体クロマトグラフに10μL注入し、定量した。検量線を越えた値を示した場合は希釈倍率を上げ、範囲内に入るようにして再分析を行った。
【0029】
7週齢のC57BK/6J系統マウス(n=6)を1週間の予備飼育の後、対照群(高脂肪食群;脂肪分30%)と発明群(ウコン粉末添加飼料群;ウコン粉末5.0%+脂肪分30%)の各群に分け、8週間個別飼育した。試験期間終了後に全採血により屠殺し、CPT−II活性、体重変化、食餌摂取量、脂肪酸吸収率、組織重量、血中及び肝臓の総コレステロール量、トリグリセリド量、GOT活性、GPT活性、リン脂質量を測定した。
【0030】
CPT(CPT−II)活性測定方法
肝臓のホモジネートを用いてCPT(CPT−II)活性を測定した。測定方法は、独立行政法人 食品総合研究所のウェブページ「食品機能性マニュアル」の「VI−3 分光法による肝臓の代謝系酵素活性の測定」に記載された「カルニチンパルミトイル転移酵素活性の測定」に記された方法に従って行った(http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/manual/6-3ide.html参照)。
測定用のキュウベットに測定用緩衝液(0.5mL)、酵素源(0.005〜0.01mL)を入れ、水を加えて最終容量を0.97mLとし、混合後30℃に保温した恒温セルホルダーに装着した。記録計のフルスケールをOD0.1〜0.2として412nm波長でOD変化をチェースした。OD上昇が認められなくなった時点でパルミトイル−CoA溶液0.02mLを添加した。その後アシル−CoA水解酵素反応により、再びODが上昇する(ブランク反応)ので、このブランク反応の直線性を確認した後、カルニチン溶液0.01mLを添加して反応を開始させた。この反応の直線部分からブランク反応を差し引きCPT−II活性とした。分子吸光係数は13600M−1cm−1である。
<反応液の最終組成:1mL>
58mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)
1.25mM EDTA
0.25mM ジチオニトロ安息香酸(DTNB)
0.04mM パルミトイル−CoA
0.1% トリトンX−100
1.25mM L−カルニチン
<試薬>
1.緩衝液:116mMトリス−塩酸緩衝液、2.5mM
EDTA、0.2%トリトンX−100(pH8.0)
2.1.25mM L−カルニチン
3.2mM パルミトイル−CoA
4.測定用緩衝液:測定当日に5μmolのDTNBを緩衝液(1)10mLに溶解する。
【0031】
食餌摂取量(kcal/week)は、マウスが実際に1週間に摂取した餌の量と、餌のカロリーから算出した。また、肝重量及び脂肪組織重量は、マウス解剖時に切除した各組織の測定重量を、マウスの体重あたりに換算して算出した。
【0032】
GOT活性及びGPTを、市販測定キット(トランスアミナーゼCIIテストキット、和光純薬社製)を用いて測定した。血中総コレステロール量、トリグリセリド量及びリン脂質量もまた、それぞれ市販の測定キット(和光純薬社製)を用いて測定した(参考文献:Ikeda
et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 69, 1049(2005).参照)。また、脂肪酸吸収率を、摂取脂質量と、糞中の脂質重量の比により算出した。糞中の脂質重量に関しては、糞より有機溶媒にて抽出した後滴定法にて測定した(参考文献:鈴木他,
日本食品科学工学会誌、54, 167(2005).参照)。また、肝臓中の脂質等を、抽出後の比色法により測定した(参考文献:Folsh et al., J.
Biol. Chem., 226. 497 (1957). 及びIkeda et al., J. Nutr., 124, 1898 (1994). 参照)。
【0033】
結果を表1に示す。また、飼育前後の体重変化・摂取カロリー、血中TG、血中コレステロール、肝重量、肝脂肪、脂肪組織重量も測定した。結果を表2〜5に示す。
なお、全ての結果数値は平均値±標準偏差(n=6)で表す。*印は対照群と比較してP<0.05で有意差が得られたことを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
試験の結果、カルニチンパルミトイル転移酵素(CPT)活性は、発明群が有意に高かった(表1)。摂食量及び脂肪酸吸収率は、対照群と発明群との間に差が見られなかったが、試験終了時の体重及び体重増加量は、対照群よりも発明群が有意に低かった(表2)。体重あたりの肝重量は、発明群において増加が見られたが、脂肪組織重量は対照群よりも発明群が有意に低かった(表3)。血中及び肝臓内トリグリセリド量は対照群よりも発明群が有意に低かった(表4及び表5)。特許文献2(特開平11−246399)に記載される試験1によれば、試験系に多少の違いはあるものの、肝臓中のトリグリセリド量が、対照群では39.9であるのに対し、クルクミン1%添加群では18.1と約40%の低下であったのに比べ、本発明は表5から明らかなとおり、飼料中のクルクミン量が0.165%であるのにも拘わらず約74%も低下していた。なお、特許文献2において定義されている「クルクミン」は、「クルクミンならびにその誘導体」のことであり、本発明にて分析したクルクミノイドと同義であると判断される。試験の結果より、アセトンにより溶出せず、クルクミンではない、CPT活性を亢進する能力が高いウコン含有成分の関与を示唆するものである。
総コレステロール及び肝臓内リン脂質に関しては、発明群において若干の低下が見られたものの有意な差は見られなかった(表4及び5)。
【0040】
以上の結果より、発明群は摂取エネルギー及び吸収脂質量に関して対照群との間に有意な差が見られない一方で、血液及び肝臓での中性脂肪量の蓄積及び増加が抑制されていることが分かった。発明群はCPT活性を亢進することにより、カルニチンの利用効率が増進し、基質の代謝を促進したためと考えられる。また、ウコンの機能性成分としてはクルクミンおよびクルクミノイドが知られているが、ウコン粉末添加飼料群のクルクミノイド含量は0.165%と極少量であるから、クルクミン以外の機能性成分(ウコン含有成分)が関与している可能性が示唆される。
【0041】
(実施例2)
ウコン末(日本粉末薬品製)を160℃で15分間加熱して呈味改善ウコン末とした(特願2005−311523)。ニンジン、リンゴ及びバナナを含む野菜果実混合飲料125mLに、前記ウコン末を0.58重量%(飲料125mLあたり750mg)になるように混和させた飲料を調製した。前述の方法により本ウコン末1gに含まれるクルクミノイド量を測定した結果、クルクミン10.73mg、デメトキシクルクミン4.44mg、ビスデメトキシクルクミン5.21mgであった。
【0042】
前記飲料を22歳〜62歳成人ボランティア16名(男性8名、女性8名)に1日2本、90日間摂取させた。90日後に、目覚め、だるさ、欠伸の数、頭痛及び疲れの残り感について自覚症状の改善が認められた項目をチェックする形でアンケートを実施した。被験者16名中12名の有効回答が得られた。この結果を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
だるさ、疲れ残り等の疲労や倦怠感に関する項目における改善回答は4割以上にのぼり、目覚めにおいても約3割の被験者で改善が見られ、本発明品は抗疲労、抗ストレス効果あることが分かった。また、ウコンの機能性成分としてはクルクミンが知られているが、本試験におけるクルクミン含量は飲料1回摂取分あたり15.3mg(クルクミノイドとして)と少量であるから、クルクミン以外の機能性成分(ウコン含有成分)が関与している可能性が示唆される。
【0045】
(実施例3)
ウコンの身体疲労軽減作用を、強制歩行による疲労負荷実験により検討した。
実験には7週齢のマウスCDF1系統(オス・n=15)を用い、クロスオーバー試験とし、1週間のトレーニング後、本試験に用いた。
投与試料はウコン末(日本粉末薬品社製、実施例1にて用いたものと同等品)およびクルクミン(試薬、キシダ化学社製)を0.5%メチルセルロース溶液に混濁させ、80mg/mg/kg
b.w.となるように強制経口投与(10mL/kg)させた。投与後、直ちにラット・マウス用マルチファンクショナル回転ゲージMK770(室町機械社製)を用いて、1分間に15回転する速度(以下15rpmと記す)で180分間強制歩行させた。その後、回転式運動量測定器SN450(マウス用)A型カウンター付(シナノ製作所製)を用いて180分間の自発運動量を1時間おきに測定した。試験全体の流れを図1に示す。
【0046】
結果を図2に示す。試験の結果、クルクミンを80mg/kg
b.w.で投与した時よりも、同用量のウコン末を投与したときの方が、自発運動量が増加した(エラーバーは(平均±S.D.)を示す。1時間の時点では10%の危険率で有意差が認められた(paired
t-test))。本ウコン末中にはクルクミノイドは約3.3%含まれることから、実投与量としては2.6mg/kg b.w.となる。ウコン末投与群におけるクルクミンの投与量は、クルクミン投与群と比して大変少ないにもかかわらず、ウコン末投与群はクルクミン投与群よりも運動量が増加する結果が得られた。従って、本試験における、ウコン末による疲労改善はクルクミン以外の機能性成分(ウコン含有成分)が関与している可能性が示唆される。
【0047】
(実施例4)
9週齢の雄性SDラットを1週間の予備飼育の後、対照群1(高脂肪食群;ラード25%)、発明群1(高脂肪食+ウコン2.5%)、対照群2(高脂肪食+カルニチン1.0%)と発明群2(高脂肪食+ウコン2.5%+カルニチン1.0%)の各群に分け(n=8)27日間、個別飼育した。なお餌の組成を表7に示す。餌の摂取は暗期のみに限定し、毎日の摂餌量および体重を測定した。試験期間終了日、すなわち27日目の18時より呼気ガス分析を行い、測定後28日目の朝より3〜4時間絶食させた後に屠殺し解剖した。各ラットの肝臓を摘出し、総脂質重量ならびにトリグリセリド量の分析を行った(参考文献:日本栄養食糧学会誌、第59巻、第2号、107〜113頁、2006年)。
【0048】
【表7】

【0049】
餌に用いたビタミン並びにミネラル混合は、其々オリエンタル酵母製のものを用いた。またカルニチンは、ロンザ社製のL−カルニチンL−酒石酸塩68.6%含有粉末を用いた。呼気ガス分析方法は、代謝計測システムMK−5000RQ/02(室町機械製)を用い、マニュアルに則り行った。
【0050】
飼育期間のカロリーおよび被験物質の総摂取量を表8に示す。総摂取カロリーに有意な差は見られなかった。
【0051】
【表8】

【0052】
また、ラットに前述のノーマル食、高脂肪食、ウコン食、カルニチン食、カルニチン+ウコン食を投与し飼育した期間中の体重変化を図3に示す。体重変化に有意な差は見られなかった。
【0053】
飼育期間の18時より午前6時までに得られた呼吸商の推移を図4に示す。なお、全ての結果数値は平均値±標準偏差で表す。有意差については、図中にアルファベットが記載されている場合は、異なるアルファベット間で認められていることを示す。*印は対照群1と比較してP<0.05で有意差が得られたことを示す。呼吸商とは生体二酸化炭素排出量の酸素摂取量に対する比を言う。呼吸商は消費エネルギー源を反映することが知られており、消費エネルギー源が糖質の場合の値は1.00、タンパク質の場合は0.80、脂質の場合が0.70とされている。従って、消費エネルギー源に糖質以外の物質が使われると、総和として観測される呼吸商は低下する。また通常、エネルギー源として優先的に用いられるのは糖質ならびにグリコーゲンであるが、これらの消費の後に次いで脂質が使われることが知られている(参考文献:生理学テキスト、大地睦男著、文光堂、1992年)。
【0054】
飼育期間の18時より午前6時までの消費カロリー量を図5に示す。また、飼育期間の18時より午前6時までに得られた呼吸商の平均値である暗期平均呼吸商と消費カロリー量を併記した表9を示す。
【0055】
【表9】

【0056】
呼吸商については、高脂肪食のみを与えた群(対照群1)と比して、ウコン食摂取群(発明群1)ならびにウコン+カルニチン食摂取群(発明群2)の暗期平均呼吸商に有意な低下が認められた(表9)。摂取期間終了時の呼吸商もまた、発明群1および2で有意な低下が認められた(図4)。これらの現象はカルニチンのみの摂取群(対照群2)では認められなかった。以上より、本試験において、ウコンの摂取(発明群1および2)により呼吸商が低下したことは、ウコンが脂質の消費を促進することを示唆するものである。なおこの効果はカルニチンの単独摂取すなわち対照群2には認められなかったことから、カルニチン単独では脂質消費の亢進は認められない事が示された(図4)。
【0057】
一方、消費カロリー量は、高脂肪食のみを与えた群(対照群1)と比較して、ウコン食摂取群(発明群1)では変化が無く、カルニチン投与群(対照群2)は増加傾向を示したが有意差は認められなかった。ところが、ウコン+カルニチン食摂取群(発明群2)ではカロリー消費が亢進され、有意な増加が認められた(表9、図5)。この結果より、ウコンのみの投与(発明群1)では消費カロリー量は増加せず、カルニチンのみの投与(対照群2)でも、消費カロリー量は若干量増加するものの顕著に亢進するものではないことが示された。ところが、ウコンとカルニチンの併用投与(発明群2)では、驚くべきことに各々単独で与えた場合の相和以上にカロリーの消費が亢進されることが示された。
【0058】
CPTは、カルニチンを用いてエネルギー代謝系へのエネルギー源運搬を行う酵素であることから、カルニチンを摂取することでカロリー消費量が若干量増加することは容易に想像される。しかし本試験の結果では、カルニチンのみの摂取では、その量を反映するほどにカロリー消費は増加しなかった。ところがカルニチンとウコンを同時摂取することにより、カロリー消費は劇的に促進され、その効果はウコン、カルニチン各々を単独で与えた効果の相和値以上のものであった。これは投与されてカルニチンが、ウコンのもつCPT活性亢進効果により効率的に利用された結果、単独で与えた場合よりもカロリー消費が亢進されたものと推測された(表9、図5)。以上の結果より、ウコンとカルニチンの同時摂取により、カロリー消費量を増大させ、エネルギー源としての脂肪利用促進に効果的であることが示された(図4)。
【0059】
(実施例5)
4週齢の雄性SDラットを1週間の予備飼育の後、対照群1(コントロール液体食)、対照群2(アルコール液体食)と発明群1(アルコール液体食+ウコン)の各群に分け(n=5)、28日間飼育した。餌の組成を表10に示す。これらの液体食は、オリエンタル酵母製・F2LCWを用い、調製方法(オリエンタル酵母工業株式会社OYC実験動物関連総合カタログ2003、52頁)に則り各々の液体餌ベースに懸濁させて用いた。またウコン投与群(発明群)では、餌粉体量に対し0.6%のウコン末を加えて同様に懸濁液を調製して試験に供した。摂餌量は飼育中最も少ない量の群に合わせてペアフィーディングを行った。
【0060】
【表10】

【0061】
29日目の朝に餌を1時間投与後、5〜7時間絶食させた後に屠殺し肝臓ならびに血清を採取し、肝臓中総脂質量、肝臓中トリグリセリド(TG)量、肝臓中コレステロール(TG)量、血清中の逸脱酵素グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)量(血清GOT量;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とも呼ばれる場合がある)、血清中のグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)量(血清GPT量;アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とも呼ばれる場合がある)及び肝臓中の脂肪酸合成酵素比活性量(FAS比活性)を測定した。各分析試験の方法は本明細書に記した他の同試験、ならびに常法に基づいて行った。肝臓中総脂質量、TG量及びTG量は脂肪肝の判定指標である。血清GOT量及び血清GPT量は肝機能指標である。FAS比活性は脂質合成機能の指標である。
【0062】
各群の肝臓中総脂質量、TG量及びTG量、血清GOT量、血清GPT量及びFAS比活性を、それぞれ図6、図7、図8、図9、図10及び図11に示す。
【0063】
肝臓中の脂質分析を行った結果、コントロール液体餌群(対照群1)に比して、アルコール液体餌群(対照群2)では肝臓中総脂質量、トリグリセリド(TG)量、総コレステロール(TC)量のすべてが増加し、脂肪肝が形成された。一方、アルコール液体食+ウコン群(発明群)では、肝臓中総脂質量、TG量及びTG量の増加が抑制された。特に発明群はTG量、TC量とも、アルコール非投与群(対照群1)と有意差を認めないほどに、ほぼ完全に増加が抑えられた。また同時に、発明群では脂質合成酵素(Fatty Acid Synthase=FAS)の比活性が抑制されており、新たな脂質合成を抑制している。
【0064】
また、GOT量(AST量)及GPT量(ALT量)は、アルコール摂取群(対照群2)で有意に上昇し、肝障害の進行が確認された。一方、アルコール+ウコン摂取群(発明群)ではその上昇が抑えられる傾向が示され、肝障害の進行が抑制された。
【0065】
これらの結果から、ウコン末の摂取はアルコールの摂取に伴う肝臓内蓄積脂肪量の低減、すなわちアルコール性脂肪肝の形成の抑制効果を有することが確認された。これらもまた、ウコンの有するCPT活性亢進効果により、蓄積脂肪が効率的に消費に回された結果と推測される。
【0066】
本発明の組成物は、CPT活性を亢進することにより、カルニチンの利用効率を増進させ、これにより副作用もなく脂質代謝経路を亢進させ、脂肪肝(とりわけアルコール性脂肪肝)を改善し、血中中性脂肪量を低減することができる。抗疲労用組成物、抗ストレス用組成物、身体疲労軽減用組成物及び消費熱量亢進用組成物としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】強制歩行による疲労負荷実験(実施例3)の全体の流れを示す図である。
【図2】強制歩行による疲労負荷実験(実施例3)の結果を示す図である。
【図3】ラットに高脂肪食、さらにカルニチン、ウコンまたはカルニチンとウコン両者を投与し飼育した期間中の体重変化を示す図である。
【図4】ラットに被験食を摂取させ、摂取期間終了時の18時より午前6時までの呼吸商の推移を示す図である。
【図5】ラットに高脂肪食、さらにカルニチン、ウコンまたはカルニチンとウコン両者を投与し飼育した期間中の消費カロリー量を示す図である。
【図6】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際の肝臓蓄積総脂肪量を示す図である。
【図7】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際の肝臓中の中性脂肪量を示す図である。
【図8】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際の肝臓中の総コレステロール量を示す図である。
【図9】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際の血清中のGOT量を示す図である。
【図10】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際の血清中のGPT量を示す図である。
【図11】ラットにコントロールまたはアルコール液体食を与え、さらにウコンを与えて飼育した際のFASの比活性強度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコン含有成分を有効成分とするCPT活性亢進用組成物。
【請求項2】
ウコン含有成分を有効成分とする脂肪肝改善用組成物。
【請求項3】
前記脂肪肝がアルコール性脂肪肝である請求項2に記載の脂肪肝改善用組成物。
【請求項4】
ウコン含有成分を有効成分とする血中中性脂肪量低減用組成物。
【請求項5】
ウコン含有成分を有効成分とする抗疲労用組成物。
【請求項6】
ウコン含有成分を有効成分とする抗ストレス用組成物。
【請求項7】
ウコン含有成分を有効成分とする身体疲労軽減用組成物。
【請求項8】
前記ウコン含有成分が非アセトン溶媒抽出物である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらにカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数を含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ウコン含有成分とカルニチン及びカルニチン誘導体のうち1または複数とを含む消費熱量亢進用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物を含む飲食物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−133272(P2008−133272A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283745(P2007−283745)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】