説明

CT装置およびCT装置の較正方法

【課題】撮影倍率を変更しても都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像を得る。
【解決手段】撮影距離FCDと検出距離FDDを設定するシフト機構(撮影距離設定手段、検出距離設定手段)7と、第一の撮影距離FCDを設定してスキャンして得た既知の大きさの第一の基準体の第一の断面像上の大きさと、第二の撮影距離FCDを設定してスキャンして得た第一の基準体の断面像上の大きさとから、FCD及びFDDの誤差を求め較正する較正計算手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下CT(Computed Tomography)装置と記載する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCT装置で、所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)と呼ばれるCT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸の方向に対し交差する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、一回転中の所定回転位置ごとに被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0003】
従来例として図8に、特許文献1に記載されているCT装置の構成を示す(正面図)。X線管101と、ここから発生する角錐状のX線ビーム102を2次元の分解能で検出するX線検出器103が対向して配置され、このX線ビーム102に入るようにテーブル104上に載置された被検体105の透過像(透過データ)を得るようになっている。
【0004】
テーブル104は回転・昇降機構106上に配置され、被検体105の断面像を撮影する時は、テーブル104を回転軸RAに対し回転・昇降機構106により1回転させながら複数の回転位置について透過像を得る(スキャンと言う)。このスキャンにより得られた多数の透過像を制御処理部107で処理して被検体105の断面像(1枚ないし多数枚)を得る。
【0005】
さらに、シフト機構108は、回転軸RAおよびX線検出器103をX線管101のX線焦点Fに近づけあるいは遠ざける(シフトする)ことができ、X線焦点Fと回転軸RAとの間の撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)と、X線焦点FとX線検出器103の検出面103aとの間の検出距離FDD(Focus to Detector Distance)を変えて、目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更できるようになっている。
【0006】
ところで、制御処理部107は設定したFCD,FDDの値を用いて1画素の寸法を設定して断面像を再構成するので、得られた断面像上で被検体の寸法を測定することができる。ここで、撮影倍率(=FDD/FCD)が正確なら1画素の寸法も正確に設定でき、被検体の寸法も正確に測定できる。
【0007】
ところが、X線焦点Fは、X線管101の中にあり、その正確な位置を目視することができず、機械的に正確にFCD,FDDの値を設定するのは難しいため、従来は既知の大きさの被検体を撮影して、寸法合わせ(1画素の寸法を合せること)を行なっている。
【0008】
特許文献1では、回転テーブルを断層撮影し、断面像上で求めた直径dgと実測した直径dtとの比dt/dgを、現在用いた撮影距離FCD値に乗算して修正した撮影距離FCD’値を求める。そして、シフト機構108の図示しないFCD値読み取り用エンコーダを較正(始点の修正)することでFCD較正(寸法合わせ)している。
【0009】
これによりFCD較正をしたシフト位置で正しい寸法合わせができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−62268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術では、既知の大きさの被検体を撮影してFCD較正を行なっているが、正確に言うと、これは撮影倍率(=FDD/FCD)を正しく合わせる較正であり、FCDやFDDそれぞれを単独で正しく合わせる較正にはなっていない。すなわちFDD値に誤差があるとFCD値が正しく較正されない。そのためFCD較正を行なったシフト位置では正確に寸法合わせができるが、その位置からFCDあるいはFDDを変更したときは、変更量が大きいほど寸法合わせに誤差が出てくる。このため、FCDあるいは、FDDを変更するたびにFCD較正を行なう必要があり使用上煩わしいという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、撮影倍率を変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明に係る請求項1記載のCT装置は、テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段と、第一の撮影距離を設定してスキャンして得た既知の大きさの第一の基準体の第一の断面像上の大きさと、第二の撮影距離を設定してスキャンして得た前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体の第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正する較正計算手段とを有することを要旨とする。
【0014】
この構成により、撮影距離をFCD、検出距離をFDDとして、較正計算手段により、第一のFCD設定(FCD=g1,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体の第一の断面像上の大きさ(D1)と第二のFCD設定(FCD=g2,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0またはE0)の基準体の第二の断面像上の大きさ(D2またはE2)とから、連立方程式を解くことでFCDとFDDそれぞれの誤差(εg,εh)を求めてFCDとFDDの両方を較正することができる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載のCT装置は、請求項1に記載のCT装置において、前記撮影距離を測定する撮影距離測定手段を有し、前記撮影距離の較正は前記撮影距離測定手段のオフセット値の較正であることを要旨とする。
【0016】
この構成により、FCDの誤差(εg)からFCD測定手段のオフセット値の較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FCDを変更しても正しいFCDが求まるので、この正しいFCDを用いて再構成することでFCDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0017】
本発明に係る請求項3記載のCT装置は、請求項1または請求項2に記載のCT装置において、前記検出距離を測定する検出距離測定手段を有し、前記検出距離の較正は前記検出距離測定手段のオフセット値の較正であることを要旨とする。
【0018】
この構成により、FDDの誤差(εh)からFDD測定手段のオフセット値の較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FDDを変更しても正しいFDDが求まるので、この正しいFDDを用いて再構成することでFDDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0019】
本発明に係る請求項4記載のCT装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、前記撮影距離設定手段を制御して前記第一の撮影距離あるいは前記第二の撮影距離を設定する較正制御手段を有することを要旨とする。
【0020】
この構成により、較正制御手段により、第一のFCDあるいは第二のFCDを所定の値に自動設定することができる。
【0021】
本発明に係る請求項5記載のCT装置は、テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段と、第一の検出距離を設定してスキャンして得た既知の大きさの第一の基準体の第一の断面像上の大きさと、第二の検出距離を設定してスキャンして得た前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体の第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正する較正計算手段とを有することを要旨とする。
【0022】
この構成により、撮影距離をFCD、検出距離をFDDとして、較正計算手段により、第一のFDD設定(FCD=g1,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体の第一の断面像上の大きさ(D1)と第二のFDD設定(FCD=g1,FDD=h2)で得た既知の大きさ(D0またはE0)の基準体の第二の断面像上の大きさ(D2またはE2)とから、連立方程式を解くことでFCDとFDDそれぞれの誤差(εg,εh)を求めてFCDとFDDの両方を較正することができる。
【0023】
本発明に係る請求項6記載のCT装置は、請求項5記載のCT装置において、前記検出距離を測定する検出距離測定手段を有し、前記検出距離の較正は前記検出距離測定手段のオフセット値の較正であることを要旨とする。
【0024】
この構成により、FDDの誤差(εh)からFDD測定手段のオフセット値の較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FDDを変更しても正しいFDDが求まるので、この正しいFDDを用いて再構成することでFDDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0025】
本発明に係る請求項7記載のCT装置は、請求項5または請求項6に記載のCT装置において、前記撮影距離を測定する撮影距離測定手段を有し、前記撮影距離の較正は前記撮影距離測定手段のオフセット値の較正であることを要旨とする。
【0026】
この構成により、FCDの誤差(εg)からFCD測定手段のオフセット値の較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FCDを変更しても正しいFCDが求まるので、この正しいFCDを用いて再構成することでFCDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0027】
本発明に係る請求項8記載のCT装置は、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のCT装置において、前記検出距離設定手段を制御して前記第一の検出距離あるいは前記第二の検出距離を設定する較正制御手段を有することを要旨とする。
【0028】
この構成により、較正制御手段により、第一のFDDあるいは第二のFDDを所定の値に自動設定することができる。
【0029】
本発明に係る請求項9記載のCT装置の較正方法は、テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段とを有するCT装置において、第一の撮影距離を設定し、既知の大きさの第一の基準体をスキャンして第一の断面像を得るステップと、第二の撮影距離を設定し、前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体をスキャンして第二の断面像を得るステップと、前記第一の基準体の前記第一の断面像上の大きさと前記第一の基準体あるいは前記第二の基準体の前記第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正するステップとを有することを要旨とする。
【0030】
この方法により、撮影距離をFCD、検出距離をFDDとして、較正計算手段により、第一のFCD設定(FCD=g1,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体の第一の断面像上の大きさ(D1)と第二のFCD設定(FCD=g2,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0またはE0)の基準体の第二の断面像上の大きさ(D2またはE2)とから、連立方程式を解くことでFCDとFDDそれぞれの誤差(εg,εh)を求めてFCDとFDDの両方を較正することができる。
【0031】
本発明に係る請求項10記載のCT装置の較正方法は、テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段とを有するCT装置において、第一の検出距離を設定し、既知の大きさの第一の基準体をスキャンして第一の断面像を得るステップと、第二の検出距離を設定し、前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体をスキャンして第二の断面像を得るステップと、前記第一の基準体の前記第一の断面像上の大きさと前記第一の基準体あるいは前記第二の基準体の前記第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正するステップとを有することを要旨とする。
【0032】
この構成により、撮影距離をFCD、検出距離をFDDとして、較正計算手段により、第一のFDD設定(FCD=g1,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体の第一の断面像上の大きさ(D1)と第二のFDD設定(FCD=g1,FDD=h2)で得た既知の大きさ(D0またはE0)の基準体の第二の断面像上の大きさ(D2またはE2)とから、連立方程式を解くことでFCDとFDDそれぞれの誤差(εg,εh)を求めてFCDとFDDの両方を較正することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、撮影倍率を変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図2】本発明の第一実施形態に係るCT装置のシフト機構7の詳細構成を示した模式図(平面図)。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る断層撮影に先立つFCD,FDD較正のフロー図。
【図4】基準体12の第一の断面像13を示す模式図(a)と、基準体12の第二の断面像14を示す模式図(b)。
【図5】断面像上での大きさを説明する幾何図(平面図)。
【図6】本発明の第一の実施形態の変形例8に係る断層撮影に先立つFCD,FDD較正のフロー図。
【図7】本発明の第二実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図8】従来のCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0036】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1、図2を参照して説明する。
【0037】
図1は本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0038】
X線管(放射線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部である角錐状のX線ビーム(放射線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)3とが対向して配置され、このX線ビーム2に入るようにテーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過データ)として出力される。
【0039】
テーブル4は回転・昇降機構(回転手段)6上に配置され、回転・昇降機構6によりX線ビーム2と垂直に交差する回転軸RAに対して回転されるとともに、回転軸RAと平行なz方向にz移動(昇降)される。ここで、回転軸RAは、正確には、X線ビーム2の中央の線で定義されるX線光軸Lに対して垂直な方向でX線ビーム2と交差するように設定されている。
【0040】
さらに、シフト機構(撮影距離設定手段、検出距離設定手段)7は、回転軸RAおよびX線検出器3を位置決めし、撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)と検出距離FDD(Focus to Detector Distance)を設定するとともに、回転軸RAおよびX線検出器3をX線管1のX線焦点Fに近づけあるいは遠ざけて撮影距離FCD、検出距離FDDを変更する。
【0041】
ここで、シフト機構7は目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更するために用いられ、回転・昇降機構6のz移動は被検体5の着目部をX線ビーム2の高さに合わせるのに用いられる。また、回転・昇降機構6の回転は断面像を撮影する場合に被検体5をX線ビーム2に対し回転させて、複数の回転位置についての透過像を得るために用いられる。
【0042】
図2は本発明の第一実施形態に係るCT装置のシフト機構7の詳細構成を示した模式図(平面図)である。
【0043】
シフト機構7はベース7a上にX線光軸Lの方向であるy方向に沿ったレール7bを配置し、レール7bで支持した回転・昇降機構6をボールネジ7cを使ってy方向に移動させる。ボールネジ7cは、y方向に合わせて軸受け7dを介してベース7aに固定され、モータ7eで回転され、係合したボールナット7fをy方向に送り、ボールナット7fに固定された回転・昇降機構6をy方向に移動させる。
【0044】
同様に、シフト機構7はレール7bで支持したX線検出器3の支柱8をボールネジ7gを使ってy方向に移動させる。ボールネジ7gは、y方向に合わせて軸受け7hを介してベース7aに固定され、モータ7iで回転され、係合したボールナット7jをy方向に送り、ボールナット7jに固定された支柱8をy方向に移動させる。
【0045】
シフト機構7は、FCDを測定するFCD測定部(撮影距離測定手段)7kを有する。FCD測定部7kはボールネジ7cに取り付けられ一定回転角度ごとにパルス信号を出力するエンコーダ7k1とパルス信号を計数するカウンタ7k2より成る。FCD測定部7kはFCDの読み値gを出力する。FCDの読み値gは、式、
g=Δg・ng+Og ………(1)
で表される値である。ここで、ngは始点からのパルス計数値、Δgは1パルスあたりのy方向移動量、OgはgをFCDに合わせるオフセット値で、OgとΔgは予め機械的に求めてカウンタ7k2に記憶してある。
【0046】
また、シフト機構7は、FDDを測定するFDD測定部(検出距離測定手段)7mを有する。FDD測定部7mはボールネジ7gに取り付けられ一定回転角度ごとにパルス信号を出力するエンコーダ7m1とパルス信号を計数するカウンタ7m2より成る。FDD測定部7mはFDDの読み値hを出力する。FDDの読み値hは、式、
h=Δh・nh+Oh ………(2)
で表される値である。ここで、nhは始点からのパルス計数値、Δhは1パルスあたりのy方向移動量、OhはhをFDDに合わせるオフセット値で、OhとΔhは予め機械的に求めてカウンタ7m2に記憶してある。
【0047】
なお、回転・昇降機構6もシフト機構7と同様に、回転角度測定部(図示省略)と昇降位置測定部(図示省略)を持ち、回転角度φと昇降位置zを出力する。
【0048】
図1を参照して、構成要素として、他に、各機構部(回転・昇降機構6、シフト機構7)を制御し、また、X線検出器3からの透過データを処理する制御処理部9、処理結果等を表示する表示部9a、X線管1を制御するX線制御部(図示省略)等がある。
【0049】
制御処理部9は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、表示部9a、入力部(キーボードやマウス等)9b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0050】
制御処理部9は、機構制御ボードにより、各機構部6,7が出力する動作位置の信号(g,h,φ,z)を受けて各機構部6,7を制御して被検体の位置合わせやスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器3に送る(制御する)。
【0051】
また、制御処理部9は、断層撮影時にX線検出器3からの透過データを収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部9aに表示する。
【0052】
さらに、制御処理部9は、X線制御部(図示省略)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0053】
図1に示すように、制御処理部9はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、FCDおよびFDDの較正のための走査を行なわせる較正制御部(較正制御手段)9c、較正のための走査で得られた断面像からFCD及びFDDのオフセット値を較正する較正計算部(較正計算手段)9d、断層撮影のスキャンをするためのスキャン制御部(スキャン制御手段)9eとスキャンで得られた透過データから断面像を作成する再構成部(再構成手段)9f、等を備えている。
【0054】
(第一の実施の形態の作用)
図3及び図4を参照して作用を説明する。
【0055】
図3は本発明の第一の実施形態に係る断層撮影に先立つFCD,FDD較正のフロー図である。
【0056】
FCD測定部7kとFDD測定部7mが測定するFCDとFDDの読み値gとhは、式(1)と式(2)で計算されて出力される。ここで、計算に用いる1パルスあたりのy方向移動量ΔgとΔhは正確に求められているのに対し、オフセット値OgとOhは正確でない。これは、X線焦点FはX線管1の中にあり、また、検出面3aはX線検出器3の表面ではなくさらに内側の面に埋設されている、というように共に目視できない状態にあるため、オフセット値OgとOhを機械的に正確に求めることが困難だからである。
【0057】
従って、ΔgとΔhが正確であるとすると、FCD,FDDの真値と読み値g,hにはオフセット誤差εg,εhだけがあり、式、
FCD真値=g+εg ………(3)
FDD真値=h+εh ………(4)
の関係がある。
【0058】
そこで、断層撮影に先立ち、図3のフローに従って、以下に記載するようにFCD,FDD較正を行なう。ここで、FCDの較正はFCD測定部7kのオフセット値Ogの較正であり、オフセット誤差εgを求めて記憶する処理である。FDDの較正はFDD測定部7mのオフセット値Ohの較正であり、オフセット誤差εhを求めて記憶する処理である。
【0059】
ステップS1で、操作者は、既知の大きさの基準体12をテーブル4に載置する。基準体12としては例えば、円柱形の部材を用い、円柱の軸が回転軸RAと平行になるように載置する。さらに、予め正確に測定した既知の直径D0を制御処理部9に入力して記憶させるが、すでに記憶されている場合は入力の必要はない。
【0060】
ステップS2で、操作者が較正開始を入力すると、較正制御部9cはシフト機構7を制御して回転軸RAとX線検出器3を移動させ、第一のFCD,FDD設定を行う。例えば、FCD,FDDの読み値g,hをそれぞれ所定値g1,h1に設定する。
【0061】
ステップS3で、較正制御部9cはスキャン制御部9eに指令を出し(制御し)、スキャン制御部9eは断層撮影を制御し、基準体12をX線ビーム2に対し回転させて、複数の回転位置について透過像を得る。較正制御部9cは更に再構成部9fに指令を出し(制御し)、再構成部9fは、得られた複数の回転位置についての透過像を処理して基準体12の回転軸RAに垂直な方向の第一の断面像13を得て制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0062】
図4(a)は基準体12の第一の断面像13を示す模式図である。第一の断面像13上で基準体12は円形となる。
【0063】
ステップS4で、較正制御部9cはシフト機構7を制御して回転軸RAを移動させ、第二のFCD,FDD設定を行う。例えば、FCDの読み値gを所定値g2に設定する。ここで、FDDの設定は読み値h1のまま不変である。
【0064】
ステップS5で、ステップS3と同様に、較正制御部9cはスキャン制御部9eと再構成部9fに指令を出し(制御し)、基準体12の回転軸RAに垂直な方向の第二の断面像14を得て制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0065】
図4(b)は基準体12の第二の断面像14を示す模式図である。第二の断面像14上で基準体12は円形となる。
【0066】
ステップS6で、較正計算部9dは第一の断面像13上で基準体12の直径D1を求める。これは、既知の画像処理技術で求められる。例えば、基準体12の面積Sを画素数単位で求め、2×SQRT(S/π)を計算することで画素単位の直径を求めることができる。画素単位の直径に対し1画素あたりの実寸法を乗算することで実寸法の直径D1を求めることができる。
【0067】
更に、較正計算部9dは、同様に第二の断面像14上で基準体12の直径D2を求める。
【0068】
ステップS7で、較正計算部9dは、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g2、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D2を測定
から式、
εg=g1・g2・(D1−D2)/(g1・D2−g2・D1)………(5)
εh=h1・{g1・D2・(D1−D0)−g2・D1・(D2−D0)}
/{D0・(g1・D2−g2・D1)} ………(6)
を計算して、FCD,FDDのオフセット誤差εg,εhを求めて制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0069】
以上のステップS1乃至ステップS7によりFCD,FDD較正が終了する。
【0070】
次に、操作者は基準体12の代わりに被検体5をテーブル4に載置し、入力部9bへの入力により所望するFCD,FDDの位置(g,h)及びテーブルのz位置を設定し、さらに断層撮影の指令を入力する。スキャン制御部9eは断層撮影を制御し、被検体5をX線ビーム2に対し回転させて、複数の回転位置について透過像を得る。再構成部9fは、FCD,FDDの読み値g,hに対し記憶されているオフセット誤差εg,εhを用いて式(3)、式(4)でFCD,FDDの真値を計算し、このFCD,FDDの真値を用いて得られた複数の回転位置の透過像を処理して被検体5の着目部内の断面像を得る。
【0071】
なお、本実施形態で、FCD,FDD較正は頻繁に行なう必要はなく、X線管1やX線検出器3の配置が変わったときやシフト機構を修理した時、また定期点検の時などに行えばよい。
【0072】
<式(5)、式(6)の導出>
式(5)、(6)の導出は、gの誤差はオフセット誤差εgのみであることを前提とする(式(3))。これは言い換えると、第一のFCD,FDD設定と第二のFCD,FDD設定の間のFCD読み値の差(g2−g1)が正確であるという前提である。
【0073】
図5は断面像上での大きさを説明する幾何図(平面図)である。再構成部9fは、再構成処理をする際、再構成部9fが認識しているFCD,FDDの値を用いて検出面3a上に実寸法dで投影されるものが断面像上で実寸法Dとなるとして、DがD=d・FCD/FDDで計算される値になるように再構成する(そのように1画素の寸法を設定する)。
【0074】
従って測定1より、検出面上で直径d1の投影を、g1,h1を用いて再構成した直径D1は、式、
D1=d1・g1/h1 ………(7)
で表される。また、式(7)で、もしg1,h1がFCD,FDDの真値なら、D1は真値D0になるはずなので、式(3)と式(4)を参照すると、式、
D0=d1・(g1+εg)/(h1+εh) ………(8)
の関係が導ける。式(7)、式(8)からd1を消去すると、式、
D1/D0=g1・(h1+εh)/{h1・(g1+εg)} ………(9)
が得られる。
【0075】
測定2について、同様に考察して、式、
D2/D0=g2・(h1+εh)/{h1・(g2+εg)} ………(10)
(式(9)において、D1をD2で、g1をg2で置き換えた式)が得られる。
【0076】
次に、未知数εg,εhに対する連立方程式である式(9)、式(10)を解いて、式(5)、式(6)を導くことができる。<>終了
【0077】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態の要点は、2つのFCD,FDD設定において基準体の断面像上の基準体の大きさを測定することで、FCDとFDDのオフセット値を同時に較正することである。
【0078】
第一の実施形態によれば、較正計算部9dにより、第一のFCD,FDD設定(FCD=g1,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体12の第一の断面像上の大きさ(D1)と第二のFCD,FDD設定(FCD=g2,FDD=h1)で得た既知の大きさ(D0)の基準体12の第二の断面像上の大きさ(D2)とから、連立方程式を解くことでFCDとFDDそれぞれの誤差(εg,εh)を求めてFCDとFDDの両方を較正することができる。
【0079】
さらに、FCDの誤差(εg)からFCD測定部7kのオフセット値Ogの較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FCDを変更しても常に正しいFCDが求まるので、この正しいFCDを用いて再構成することでFCDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0080】
また、FDDの誤差(εh)からFDD測定部7mのオフセット値Ohの較正をすることができるので、FCDとFDDの較正の後、FDDを変更しても常に正しいFDDが求まるので、この正しいFDDを用いて再構成することでFDDを変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0081】
従って、第一の実施形態によれば、撮影倍率を変更してもその都度較正を行なうことなく寸法精度のよい断面像が得られる。
【0082】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0083】
(変形例1)
第一の実施形態では、測定1(第一FCD,FDD設定)と測定2(第二FCD,FDD設定)で同じ基準体12を用い、また、FCDのみ変更しているが、測定1と測定2で異なる基準体を用いてもよければ、FDDを変更してもFCDとFDDの両方を変更してもよい。
【0084】
(ケース1)例えば、測定2で直径E0の基準体を用い、FCDとFDDを両方変更する場合、較正計算部9dは、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g2、h2にて真値直径E0に対し画像上の直径E2を測定
を行った後、式、
εg=g1・g2・{h1・E0・(D1−D0)−h2・D0・(E2−E0)}
/{g1・h2・D0・E2−g2・h1・D1・E0} ………(11)
εh=h1・h2・{g1・E2・(D1−D0)−g2・D1・(E2−E0)}
/{g1・h2・D0・E2−g2・h1・D1・E0} ………(12)
を計算して、FCD,FDDのオフセット誤差εg,εhを求めて制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0085】
(ケース2)例えば、測定1と測定2で、異なる基準体を用いて、FCDのみ変更する場合、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g2、h1にて真値直径E0に対し画像上の直径E2を測定
を行った後、式(11)、式(12)においてh2をh1で置き換えた式を用いてεg,εhを求める。
【0086】
(ケース3)例えば、測定1と測定2で、異なる基準体を用いて、FDDのみ変更する場合、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g1、h2にて真値直径E0に対し画像上の直径E2を測定
を行った後、式(11)、式(12)においてg2をg1で置き換えた式を用いてεg,εhを求める。
【0087】
(ケース4)例えば、測定1と測定2で、同じ基準体を用いて、FCDとFDDを両方変更する場合、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g2、h2にて真値直径D0に対し画像上の直径D2を測定
を行った後、式(11)、式(12)においてE0、E2をそれぞれD0,D2で置き換えた式を用いてεg,εhを求める。
【0088】
(ケース5)例えば、測定1と測定2で、同じ基準体を用いて、FDDのみ変更する場合、2つの直径測定、
測定1; g1、h1にて真値直径D0に対し画像上の直径D1を測定
測定2; g1、h2にて真値直径D0に対し画像上の直径D2を測定
を行った後、式(11)、式(12)においてg2,E0,E2をそれぞれg1,D0,D2で置き換えた式を用いてεg,εhを求める。
【0089】
変形例1において測定1と測定2で異なる基準体を用いる場合、小さな基準体に対しては大きな撮影倍率、大きな基準体に対しては小さな撮影倍率を設定するようにして、透過像上で基準体がはみ出さず、また小さくなりすぎないようにするとεg,εhが正確に求められる。あるいは、撮影倍率が大きいときは小さな基準体、撮影倍率が小さいときは大きな基準体を選ぶようにしても同じである。
【0090】
<式(11)、式(12)の導出>
式(11)、(12)の導出はg,hの誤差はオフセット誤差εg,εhのみであることを前提とする(式(3)式(4))。これは言い換えると、第一の設定と第二の設定の間のFCD読み値gの差(g2−g1)及びFDD読み値hの差(h2−h1)が正確であるという前提である。
【0091】
式(5)、式(6)の導出と同様に考察して、測定1について、式、
D1/D0=g1・(h1+εh)/{h1・(g1+εg)} ………(13)
が得られる。
【0092】
測定2について、同様に、式、
E2/E0=g2・(h2+εh)/{h2・(g2+εg)} ………(14)
(式(13)において、g1,h1,D0,D1をそれぞれでg2,h2,E0,E2置き換えた式)が得られる。
【0093】
次に、未知数εg,εhに対する連立方程式である式(13)、式(14)を解いて、式(11)、式(12)を導くことができる。<>終了
【0094】
(変形例2)
第一の実施形態、及び変形例1で、予め大きさの異なる複数の円柱形の基準体を用意しておき、操作者がそのうちの任意の1つあるいは2つを用いるようにしてもよい。この場合、基準体全ての真値直径(既知の直径)を予め測定して制御処理部9のメモリに記憶しておく。較正計算部9dは求めた断面像上の直径D1を、記憶してある真値直径と比較してから一番近い真値直径D0を選ぶ。これにより、自動的に基準体を特定し、D0が得られる。また求めた断面像上の直径E2(またはD2)から一番近い真値直径E0(またはD0)を選ぶ。これにより、自動的に基準体を特定し、E0(またはD0)が得られる。
【0095】
これにより、操作者は基準体の真値直径の入力または基準体の識別の入力をすることが不要となる。
【0096】
(変形例3)
第一の実施形態では、シフト機構7は撮影距離FCDと検出距離FDDの両方を変更するが、撮影距離FCDのみ変更して検出距離FDDは変更しないシフト機構7とすることもできる。この場合、シフト機構(検出距離設定手段)7は検出距離FDDを1つの固定値に設定する検出距離設定手段である。また、この場合FDDの較正により、FDD固定値の誤差εhが求められる。
【0097】
また、第一の実施形態で、検出距離FDDのみ変更して撮影距離FCDは変更しないシフト機構7とすることもできる。この場合、変形例1に記載したFDDのみを変更して第二の断面像を撮影する場合(ケース3とケース5)の較正を行なう。この場合、シフト機構(撮影距離設定手段)7は撮影距離FCDを1つの固定値に設定する撮影距離設定手段である。また、この場合FCDの較正により、FCD固定値の誤差εgが求められる。
【0098】
(変形例4)
第一の実施形態では、制御処理部9は、FCD,FDD較正で求めて記憶したFCD,FDDのオフセット誤差εg,εhを用いて、FCD,FDDの読み値g,hに対し補正計算してFCD,FDDの真値を計算しているが、εg,εhをそれぞれFCD測定部7kとFDD測定部7mに送信し、FCD,FDDのオフセット値Og,Ohを修正して記憶させるようにしてもよい。
【0099】
この変形例によれば、FCD測定部7kとFDD測定部7mが出力するFCD,FDDの読み値g,hがそれぞれFCD,FDDの真値となるので、制御処理部9は補正計算を行う必要が無くなる。
【0100】
(変形例5)
第一の実施形態では、基準体として円柱形の部材を用いたが、円柱形でなくてもよい。例えば正方形や長方形の角柱や不定形などでもよい。例えば、角柱を使った場合、断面像上で面積を求め、この面積の平方根を第一の実施形態の直径に代わる量として用いることもできれば、両辺の長さを求め、この両辺の長さを平均した長さを直径に代わる量として用いることもできる。また、例えば、不定形の基準体を用い場合、面積の平方根を第一の実施形態の直径に代わる量として用いることもできる。
【0101】
また、第一の実施形態で、直径を求める代わりに半径を求めてもよい。要は、大きさを表す量を求めればよい。
【0102】
(変形例6)
第一の実施形態で、第一の断面像及び第二の断面像はそれぞれ1枚でなくz方向の複数位置における複数枚の断面像であってもよい。この場合、それぞれの断面像上で求めた基準体の直径を平均して直径を求めることで統計精度を上げることができる。
【0103】
(変形例7)
第一の実施形態で、断面像上で基準体の直径を求めるとき、面積測定を利用して求めているがこれには限られない。例えば、一般的な画像上の寸法測定の方法が利用できる。例えば、基準体の中心(重心)を求め、この中心を通る複数の線分上のプロファイルからそれぞれ直径を求めて平均する方法などでもよい。
【0104】
(変形例8)
第一の実施形態で、図3を参照して第一のFCD,FDD設定(ステップS2)及び第二のFCD,FDD設定(ステップS4)は較正制御部9cが自動で行なっているが、両方の設定とも操作者が自由にFCD,FDDを設定するようにしてもよい。
【0105】
また、第一のFCD,FDD設定のみ操作者が設定するようにして、第二のFCD,FDD設定(ステップS4)は較正制御部9cが自動で所定量だけFCDを変えて設定するようにしてもよい。この場合の、FCD,FDD較正の作用の一例を、以下に説明する。
【0106】
図6は本発明の第一の実施形態の変形例8に係る断層撮影に先立つFCD,FDD較正のフロー図である。
【0107】
ステップS11で、操作者は第一のFCD,FDD設定を行う。これにより操作者の所望するFCD,FDDの読み値としてg1,h1が設定される。
【0108】
ステップS12で、操作者は、予め用意されている大きさの異なる複数の円柱形の基準体のうち、透過像上で基準体がはみ出さずまた小さくなりすぎないような大きさの基準体12を選んでテーブル4に載置する。なお、複数の基準体のそれぞれの直径は予め測定して制御処理部9に記憶しておくものとする。
【0109】
ステップS13で、操作者が較正開始を入力すると、較正制御部9cは第一実施形態のステップS3と同様に断層撮影を行い、基準体12の第一の断面像を得て制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0110】
ステップS14で、較正制御部9cはシフト機構7を制御して回転軸RAを移動させ、第二のFCD,FDD設定を行う。ここで、所定の式、例えば、式、
g2=(3・g1)と(0.8・h1)の小さいほうを採用 ………(15)
で、g2を計算し、FCDの読み値gをg2に設定する。ここで、FDDの設定は読み値h1のまま不変である。
【0111】
ステップS15で、較正制御部9cは第一実施形態のステップS5と同様に断層撮影を行い、基準体12の第二の断面像を得て制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0112】
ステップS16で、較正計算部9dは第一実施形態のステップS6と同様に第一の断面像上で基準体12の直径D1を求め、また、第二の断面像上で基準体12の直径D2を求める。
【0113】
ステップS17で、較正計算部9dは、まず、求めた直径D1あるいはD2を、予め測定して記憶してある複数の基準体それぞれの直径(既知の直径)と比較して、一番近い既知の直径D0を選ぶ。これにより、自動的に基準体を特定し、D0が得られる。次に、較正計算部9dは、第一実施形態のステップS7と同様にFCD,FDDのオフセット誤差εg,εhを求めて制御処理部9内のメモリに記憶する。
【0114】
(変形例9)
第一の実施形態で、FCD,FDDの変更は回転軸RAとX線検出器3を移動させて行なっているが、X線管1あるいはX線焦点Fを移動させて行なってもよい。
【0115】
(変形例10)
第一の実施形態で、2つのFCD,FDD設定それぞれで得た第一の断面像と第二の断面像からオフセット誤差εg,εhを求めているが、3つ以上のFCD,FDD設定それぞれで得た3つ以上の断面像を使ってオフセット誤差εg,εhを求めてもよい。この場合は、データとして冗長性があるがそれらが平均され、統計精度の上がったオフセット誤差εg,εhを得ることができる。この場合の具体的なεg,εhの計算としては、例えば、3つ以上の断面像から2つを選択して第一の実施形態と同様にεg,εhを求め、2つの組み合わせ方を変えて求めたεg,εhを平均することで計算される。
【0116】
(変形例11)
第一の実施形態では、FCD測定部7k、FDD測定部7mとしてボールネジに取り付けられたエンコーダとエンコーダのパルス信号を計数するカウンタを用いているが、これには限られない。例えば、回転角度を測るエンコーダの代わりに直進運動を測ってパルス信号を出力する直進型のエンコーダを用いてもよい。
【0117】
また、FCD測定部7k、FDD測定部7mとして、例えば、レーザー距離計等を用いてもよい。
【0118】
(変形例12)
放射線としては、X線だけでなく、被検体に応じ、γ線、マイクロ波等の被検体に対して透過性のある放射線を用いることができる。
【0119】
(本発明の第二の実施の形態の構成)
以下、本発明の第二の実施形態の構成について図7を参照して説明する。
【0120】
図7は本発明の第二の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0121】
X線管(放射線源)31と、X線管31のX線焦点Fより放射されたX線の一部である角錐状のX線ビーム(放射線)32を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)33とが対向してシフト機構34上に配置され、このX線ビーム32に入るようにテーブル35上に載置された被検体36を透過したX線ビーム32がX線検出器33により検出され、透過像(透過データ)として出力される。
【0122】
X線管31とX線検出器33はシフト機構34とともに回転機構37(回転手段)によりX線ビーム32と垂直に交差する回転軸RAに対して回転され、回転機構37はベース38から支柱39により支持されている。ここで、回転軸RAは、正確には、X線ビーム32の中央の線で定義されるX線光軸Lに対して垂直な方向でX線ビーム32と交差するように設定されている。
【0123】
さらに、シフト機構(撮影距離設定手段、検出距離設定手段)34はX線管31およびX線検出器33を位置決めし、撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)と検出距離FDD(Focus to Detector Distance)を設定するとともに、X線管31およびX線検出器33を回転軸RAに近づけあるいは遠ざけて撮影距離FCD、検出距離FDDを変更する。
【0124】
テーブル35は昇降機構40上に配置され、回転軸RAと平行なz方向にz移動(昇降)される。
【0125】
ここで、シフト機構34は目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更するために用いられ、昇降機構40は被検体36の着目部をX線ビーム32の高さに合わせるのに用いられる。また、回転機構37は断面像を撮影する場合にX線ビーム32を被検体36に対し回転させて、複数の回転位置について透過像を得るために用いられる。
【0126】
シフト機構34は、FCDを測定するFCD測定部(撮影距離測定手段)(図示省略)及びFDDを測定するFDD測定部(検出距離測定手段)(図示省略)を有する。FCD測定部とFDD測定部は第一実施形態の場合と同様にそれぞれFCDとFDDを測定しFCDの読み値gとFDDの読み値hを出力する。
【0127】
回転機構37と昇降機構40もシフト機構34と同様に、それぞれ回転角度測定部(図示省略)と昇降位置測定部(図示省略)を持ち、回転角度φと昇降位置zを出力する。
【0128】
構成要素として、他に、各機構部(シフト機構34、回転機構37、昇降機構40)を制御し、また、X線検出器33からの透過データを処理する制御処理部9、処理結果等を表示する表示部9a、X線管31を制御するX線制御部(図示省略)等がある。
【0129】
制御処理部9は通常のコンピュータで、第一実施形態と同一の構成で、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、表示部9a、入力部(キーボードやマウス等)9b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0130】
制御処理部9は、機構制御ボードにより、各機構部34,37,40が出力する動作位置の信号(g,h,φ,z)を受けて各機構部34,37,40を制御して被検体の位置合わせやスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器33に送る(制御する)。
【0131】
また、制御処理部9は、断層撮影時にX線検出器33からの透過データを収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部9aに表示する。
【0132】
さらに、制御処理部9は、X線制御部(図示省略)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0133】
図7に示すように、制御処理部9はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、FCDおよびFDDの較正のための走査を行なわせる較正制御部(較正制御手段)9c、較正のための走査で得られた断面像からFCD及びFDDのオフセット値を較正する較正計算部(較正計算手段)9d、断層撮影のスキャンをするためのスキャン制御部(スキャン制御手段)9eとスキャンで得られた透過データから断面像を作成する再構成部(再構成手段)9f、等を備えている。
【0134】
(第二の実施の形態の作用)
第二実施形態の作用においては、第一実施形態に係る、シフト機構7によるFCD,FDD設定及び回転・昇降機構6による回転角度φの変更とz移動とが、第二実施形態では、それぞれ、シフト機構34によるFCD,FDD設定、回転機構37による回転角度φの変更及び昇降機構40によるz移動に置き換わるのみである。これらの動きによる被検体36とX線ビーム32間の相対的な動きは第一実施形態と第二実施形態で全く同じである。
【0135】
したがって、第二実施形態の作用は第一実施形態の作用と同様になるので記載を省略する。
【0136】
(第二の実施の形態の効果)
第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様の効果をあげることができるが、それに加えて、被検体を回転させずに断層撮影できるので、軟弱な被検体でも断層撮影できる効果がある。
【0137】
(第二の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能で、例えば、第一の実施形態と同様の変形が可能である。また、以下の変形も可能である。
【0138】
(変形例1)
第二実施形態ではテーブル35を昇降機構40でz移動させているがX線管31とX線検出器33とを一体的にz移動させてもよい。要は、テーブル35とX線ビーム32とが相対的にz移動すればよい。
【符号の説明】
【0139】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、3a…検出面、4…テーブル、5…被検体、6…回転・昇降機構、7…シフト機構、7a…ベース、7b…レール、7c…ボールネジ、7d…軸受け、7e…モータ、7f…ボールナット、7g…ボールネジ、7h…軸受け、7i…モータ、7j…ボールナット、7k…FCD測定部、7k1…エンコーダ、7k2…カウンタ、7m…FDD測定部、7m1…エンコーダ、7m2…カウンタ、8…支柱、9…制御処理部、9a…表示部、9b…入力部、9c…較正制御部、9d…較正計算部、9e…スキャン制御部、9f…再構成部、12…基準体、13…第一の断面像、14…第二の断面像、31…X線管、32…X線ビーム、33…X線検出器、33a…検出面、34…シフト機構、35…テーブル、36…被検体、37…回転機構、38…ベース、39…支柱、40…昇降機構、101…X線管、102…X線ビーム、103…X線検出器、103a…検出面、104…テーブル、105…被検体、106…回転・昇降機構、107…制御処理部、108…シフト機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、
前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段と、
第一の撮影距離を設定してスキャンして得た既知の大きさの第一の基準体の第一の断面像上の大きさと、第二の撮影距離を設定してスキャンして得た前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体の第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正する較正計算手段とを有することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCT装置において、
前記撮影距離を測定する撮影距離測定手段を有し、
前記撮影距離の較正は前記撮影距離測定手段のオフセット値の較正であるCT装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のCT装置において、
前記検出距離を測定する検出距離測定手段を有し、
前記検出距離の較正は前記検出距離測定手段のオフセット値の較正であるCT装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記撮影距離設定手段を制御して前記第一の撮影距離あるいは前記第二の撮影距離を設定する較正制御手段を有することを特徴とするCT装置。
【請求項5】
テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、
前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段と、
第一の検出距離を設定してスキャンして得た既知の大きさの第一の基準体の第一の断面像上の大きさと、第二の検出距離を設定してスキャンして得た前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体の第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正する較正計算手段とを有することを特徴とするCT装置。
【請求項6】
請求項5記載のCT装置において、
前記検出距離を測定する検出距離測定手段を有し、
前記検出距離の較正は前記検出距離測定手段のオフセット値の較正であるCT装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のCT装置において、
前記撮影距離を測定する撮影距離測定手段を有し、
前記撮影距離の較正は前記撮影距離測定手段のオフセット値の較正であるCT装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記検出距離設定手段を制御して前記第一の検出距離あるいは前記第二の検出距離を設定する較正制御手段を有することを特徴とするCT装置。
【請求項9】
テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段とを有するCT装置において、
第一の撮影距離を設定し、既知の大きさの第一の基準体をスキャンして第一の断面像を得るステップと、
第二の撮影距離を設定し、前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体をスキャンして第二の断面像を得るステップと、
前記第一の基準体の前記第一の断面像上の大きさと前記第一の基準体あるいは前記第二の基準体の前記第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正するステップとを有することを特徴とするCT装置の較正方法。
【請求項10】
テーブル上に載置された被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して透過像として出力する放射線検出手段と、前記放射線と交差する回転軸に対し前記テーブルと前記放射線とを相対的に回転させる回転手段と、前記回転手段と前記放射線検出手段とを制御して複数の前記回転の位置で前記被検体の透過像を得るスキャンを実施するスキャン制御手段と、前記スキャンで得た透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、前記放射線源と前記回転軸との距離である撮影距離を設定する撮影距離設定手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離である検出距離を設定する検出距離設定手段とを有するCT装置において、
第一の検出距離を設定し、既知の大きさの第一の基準体をスキャンして第一の断面像を得るステップと、
第二の検出距離を設定し、前記第一の基準体あるいは既知の大きさの第二の基準体をスキャンして第二の断面像を得るステップと、
前記第一の基準体の前記第一の断面像上の大きさと前記第一の基準体あるいは前記第二の基準体の前記第二の断面像上の大きさとから、前記撮影距離及び前記検出距離を較正するステップとを有することを特徴とするCT装置の較正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−185859(P2010−185859A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51332(P2009−51332)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】