説明

CT計測を使用する境界推定のためのシステム及び方法

【課題】 CT計測において使用するためのCT再構成の技法が提供される。
【解決手段】 境界単位CT再構成方法は、推定境界(50)を獲得するために、被検体の境界を初期設定する過程(48)と、推定境界(50)に基づいて、フォワードモデルを定義する過程と、システム行列(54)を獲得するために、フォワードモデルを線形化する過程と、推定境界(50)を更新するために、システム行列(54)を使用して、反復画像再構成プロセスを実現する過程とを含む。そして、境界は、ほぼ一様な減衰を有する1つの領域の1つの稜線に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非侵入撮影の分野に関し、特に、コンピュータ断層撮影(CT)による撮影検査システムの分野に関する。特に、本発明は、CT計測において使用するための境界単位CT再構成技法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用検査プロセスにおいては、壁厚の測定、又は製造部品の欠陥の識別などの多種多様な用途で、コンピュータ断層撮影(CT)、座標測定機械(CMM)、レーザー利用プロファイル測定、光ゲージ、赤外線などの様々な種類の測定システムが使用される。それらの測定/検査システムは、それぞれ、利点と欠点を有する。CMM及びレーザー利用プロファイル測定などのモダリティは、通常、高い精度で外面を測定するが、被検体を切り開かない限り、内部特徴を測定できない。今日に至るまで、工業部品の内部構造と、外部構造の双方を非破壊方式で明示するための測定/検査システムの中で、最も融通性に優れているのは、CTである。内部測定と、外部測定の双方を実行できる能力があるため、CTを利用する技法は、リバースエンジニアリング、急速プロトタイピング、鋳造物シミュレーション及び妥当性検査、タイヤ開発、第1品目検査、セラミック多孔度検査、プロセス妥当性検査、部品品質認定及び欠陥検査などのプロセスに好都合であろう。しかし、CTを利用する技法は、検査精度が相対的に低いという欠点も有し、これが、CT利用技法の普及を妨げていると考えられる。
【0003】
例えば、リバースエンジニアリングの分野においては、詳細な外面特徴を捕捉することは、設計意図を把握する上で、極めて重要である。しかし、CTは、その詳細な特徴を捕捉するには不十分であろう。この点に関して、CTの精度に影響を及ぼす要因には、ビーム硬化、部分ボリューム効果、散乱放射及び焦点はずれ放射などが含まれる。従って、CTの検査精度を改善するために、更に効果的な方法が、このようなアーティファクトを除去するのに必要とされる。
【0004】
これらの種類のアーティファクトは、採用されるCT再構成プロセスの種類を含めて、多様な理由によって起こる。例えば、フィルタ補正逆投影(FBP)は、計算が高速で実行され、実現が容易であるために、CT画像を再構成するための一般的な技法となっている。しかし、FBPは、特定の収集ジオメトリに応じて、CTデータ収集を、平行ビームラドン変換、ファンビーム変換、円錐ビーム変換又は他の幾何線積分変換などの理想的な数理変換に過剰簡単化することに基づいている。そのため、再構成された画像は、先に述べたようなビーム硬化及び部分ボリュームなどのアーティファクトによって損なわれ、それが、画質及び検査精度の低下をもたらす。更に、FBP再構成を実行する前に、データの事前修正を行っても、関連するアーティファクトは、完全には修正されない。
【0005】
反復CT画像再構成は、これらの画質低下の問題のいくつかに対応する。これらの技法は、例えば、最大尤度の統計的方式又は最小二乗方式などの様々に異なる数学的原理に基づいてもよい。反復方法により、CTスキャンのデータ収集及び物理的プロセスの専用フォワードモデルが再構成アルゴリズムに組み込まれ、画像を繰り返し判定することが可能になるので、精度は改善される。しかし、反復再構成方法は、通常、集中的な計算を要求するために、計算時間が長くなり、計算に関しては効率が悪いであろう。更に、FBP技法及び反復再構成技法は、共に、画素格子表現及び/又は画像セグメンテーションに依存するので、精度が限定されてしまう。
【特許文献1】米国特許6,421,409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、検査されるべき被検体の内部特徴及び外部特徴の双方を、計算効率及び時間効率のよい低コストの方法により、正確に捕捉する改善された検査方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単に言うと、本発明の1つの面によれば、CT再構成のための方法が提供される。方法は、推定境界を獲得するために、被検体の境界を初期設定することと、推定境界に基づいてフォワードモデルを定義することと、システム行列を獲得するためにフォワードモデルを線形化することと、推定境界を更新するために、システム行列を使用して反復画像再構成プロセスを実現することとを提供する。この方法により定義される種類の機能性を提供するシステム及びコンピュータプログラムは、本発明により提供されることが可能である。
【0008】
本発明の別の面によれば、CT再構成のための方法が提供される。方法は、測定サイノグラムから被検体の推定境界を生成することと、推定境界に基づいてシステム行列を更新することと、推定境界に基づいて部分計算サイノグラムを生成することと、システム行列及び境界摂動のセットのうちの少なくとも一方から、少なくとも1つのサイノグラム摂動を計算することと、総計算サイノグラムを取り出すために、部分計算サイノグラムと少なくとも1つのサイノグラム摂動とを加算することと、測定サイノグラム、総計算サイノグラム及びシステム行列のうちの少なくとも1つに基づいて境界摂動のセットを更新することと、境界摂動のセットに基づいて推定境界を更新することとを提供する。この方法により定義される種類の機能性を提供するシステム及びコンピュータプログラムは、本発明により提供されることが可能である。
【0009】
本発明の上記の特徴、面及び利点、並びにその他の特徴、面及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、更によく理解されるであろう。尚、図面中、図1〜図4を通して、同じ図中符号は、同じ部分を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、一般に、検査精度の改善という成果をもたらすコンピュータ断層撮影(CT)再構成方法に関する。そのような再構成技法は、CT撮影検査システム、CT計測などの多様な撮影の場面で有用であろう。ここでは、産業用として適用される撮影に関連して本発明を説明するが、医療の分野における撮影、セキュリティのための鑑別及び/又は手荷物又は荷物の検査などの他の分野にそれらの技法を適用しても、本発明の範囲からの逸脱にならないことは、当業者には容易に理解されるであろう。
【0011】
そこで、図1を参照すると、本発明に従って使用するための撮影システム10が示されている。図示される実施形態においては、撮影システム10は、原画像データを収集するという目的と、本発明に従って表示及び解析のために画像データを処理するという目的の双方を実現するように設計されたコンピュータ断層撮影(CT)システムである。図示される実施形態においては、撮影システム10は、X線源などの放射線源12を含む。放射線源12から発出する放射線の流れ14の大きさ及び形状を調整するために、放射線源12に隣接して、コリメータが配置されてもよい。
【0012】
通常の動作中、放射線源12は、放射線源12の反対側に配置された検出器アレイ16に向かって、X線ビームなどの放射線の流れ14を投射する。放射線の流れ14は、撮影されるべきタービンブレード又はその他の物品などの被検体18が位置決めされている特定の領域を通過する。尚、撮影に際して、被検体18の特定の領域は、領域の最も有効な走査データを収集できるように、オペレータにより選択されてもよい。
【0013】
放射線の一部20は、被検体を通過するか、又はその周囲を通過し、検出器アレイ16に入射する。検出器アレイ16は、シングルスライス検出器又はマルチスライス検出器のいずれであっても良く、一般に、複数の検出要素から形成される。一実施形態においては、検出器アレイ16は、個別に読み出し可能な検出器要素の行及び列として形成されたフラットパネル検出器であってもよい。各検出器要素は、放射線20が検出器アレイ16に当たったときに、その検出器要素に入射した放射線20の強さを表す電気信号を発生する。被検体18の内部の特徴及び外側の特徴を表す画像を再構成するために、それらの信号は収集され、処理される。
【0014】
1つの実現形態においては、被検体18は、ターンテーブルなどのテーブル22の上に配置される。テーブル22は、検査プロセスの間、被検体18のあらゆる面を放射線の流れ14にさらすように、被検体18を回転させることができるような構成であってもよい。あるいは、検査プロセスの間、被検体18の周囲を回転するガントリに、放射線源12及び検出器アレイ16を配置してもよい。被検体18及び放射線源12が、互いに相対的に回転する間、検出器アレイ16は、被検体18に対して、様々な視角で、放射線減衰のデータを収集する。走査された被検体18の減衰係数の線積分を表現するように、データを調整するために、検出器アレイ16から収集されたデータは、この後、前処理され、校正される。処理後のデータは、一般に、プロジェクションと呼ばれる。プロジェクションは、この後、走査領域の画像を数式化するために、フィルタリングされ、逆投影される。従って、1つの画像を数式化するために、いくつかのモードにおいて、360°未満のプロジェクションデータ又は360°を超えるプロジェクションデータを含む画像又はスライスが収集される。
【0015】
放射線源12、テーブル22及び(場合によっては)ガントリの動作は、システムコントローラ24により制御される。システムコントローラ24は、CT検査シーケンスに必要な電力と、制御信号の双方を供給する。更に、検出器アレイ16は、システムコントローラ24に結合される。システムコントローラ24は、検出器アレイ16で発生された信号の収集を指令する。更に、システムコントローラ24は、ダイナミックレンジの初期調整、デジタル画像データのインタリービングなどのために、様々な信号処理機能及び信号フィルタリング機能を実行してもよい。一般に、システムコントローラ24は、検査プロトコルを実行し且つ収集されたデータを処理するために、撮影システム10の動作を指令する。本発明に関して言えば、システムコントローラ24は、通常は汎用デジタルコンピュータ又は特定アプリケーション向けデジタルコンピュータ34に基づく信号処理回路及びその他の回路、コンピュータ34により実行されるプログラム及びルーチン、並びに構成パラメータ及び画像データを格納する関連メモリ回路、インタフェース回路などを更に含んでもよい。実際には、システムコントローラ24は、示されるコンピュータ34のハードウェアコンポーネント及びソフトウェアコンポーネントとして実現されてもよい。
【0016】
図1に示される実施形態においては、システムコントローラ24は、テーブル22に結合される。特に、システムコントローラ24は、電動テーブル22の動作を制御するテーブルモータコントローラ26を含んでもよい。このような構成では、テーブルモータコントローラ26は、テーブル22を回転させ、それにより、検査中、被検体18を1回転させるか又は何度か回転させてもよい。更に、放射線源12は、システムコントローラ24内部に配置された放射線コントローラ28により制御されてもよい。特に、放射線コントローラ28は、放射線源12に電力及びタイミング信号を供給するように構成されてもよい。1つの実現形態においては、システムコントローラ24は、ガントリの回転速度及び位置を制御するガントリモータコントローラを更に含んでもよい。
【0017】
更に、システムコントローラ24は、データ収集回路30を含んでもよい。この実施形態においては、検出器アレイ16は、システムコントローラ24、特に、データ収集回路30に結合される。通常、データ収集回路30は、検出器アレイ16から、サンプリングされたアナログ信号を受信し、その後の処理のために、そのデータをデジタル信号に変換する。画像再構成装置32は、コンピュータ34又はその一部に結合される。画像再構成装置32は、データ収集回路30から、サンプリングされ、デジタル化されたデータを受信し、本発明のいくつかの面に従って、高速画像再構成を実行してもよい。あるいは、コンピュータ34の汎用回路又は専用回路により、画像の再構成が実行されてもよい。再構成が終了した後、撮影システム10により生成される画像は、被検体18の内部特徴並びに外部特徴を明示する。
【0018】
コンピュータ34は、メモリ36を含むか、又はメモリ36と通信してもよい。この実施形態の撮影システム10においては、大量のデータを格納するための、どのような種類のメモリが利用されてもよいことを理解すべきである。更に、コンピュータ34は、オペレータから、オペレータワークステーション38を介して、コマンド及び走査パラメータを受信するように構成されてもよい。例えば、オペレータワークステーション38は、オペレータが撮影システム10を制御するために使用できるキーボード及び/又はその他の入力装置を具備してもよい。従って、オペレータは、コンピュータ34からの再構成画像及びシステムに関連する他のデータを見る、撮影を開始するなどの動作を実行できる。
【0019】
ディスプレイ40は、オペレータワークステーション38及びコンピュータ34のうちの一方に結合され、再構成画像を見るため及び撮影を制御するために利用されてもよい。更に、プリンタ42において、走査画像が印刷されてもよい。プリンタ42は、コンピュータ34及び/又はオペレータワークステーション38に、直接又はネットワークを介して結合されてもよい。尚、コンピュータ34及び/又はオペレータワークステーション38は、標準型コンピュータモニタ又は専用コンピュータモニタ、並びに関連処理回路を含む他の出力装置に結合されてもよい。また、2人以上のオペレータが、撮影システム10に関連する動作を実行できるように、システムパラメータの出力、検査の要求、画像の観測などの目的のために、追加のオペレータワークステーション38を撮影システム10に更にリンクさせてもよい。例えば、1人のオペレータが、画像データを収集するために、1つのオペレータワークステーション38を利用している間に、2人目のオペレータは、撮影ルーチンの結果を再構成し且つ/又は検討するために、第2のオペレータワークステーションを利用する。一般に、撮影システム10内部で供給されるディスプレイ、プリンタ、ワークステーション及びそれに類する装置は、データ収集コンポーネントに対してローカルなものであってもよいし、あるいはそれらのコンポーネントから遠く離れた場所にあり、インターネット、バーチャルプライベートネットワークなどの1つ以上の構成可能なネットワークを介して、撮影システム10にリンクされてもよい。
【0020】
この実施形態の撮影システム10は、境界単位画像再構成技法などの、ここで説明される技法により、画像データを収集し、再構成してもよい。特に、当業者には理解されるであろうが、ここで説明される技法及び過程を実行するための制御論理及び/又は自動化ルーチンは、図1の撮影システム10において、ハードウェア又はソフトウェアにより、あるいはハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより実現されてもよい。例えば、ここで説明される技法の一部又は全てを実行するために、コンピュータ34により、適切なコードがアクセスされ、実行されてもよい。同様に、ここで説明される技法の一部又は全てを実行するように構成された特定アプリケーション向け集積回路(ASIC)が、コンピュータ34、システムコントローラ24及び/又は画像再構成装置32に組み込まれてもよい。
【0021】
例えば、図2を参照すると、撮影システム10のようなシステムにおいて、境界単位画像再構成技法を使用して、境界を生成するための制御論理の一例が示される。フローチャートに示されるように、まず、図2に示される通り、推定境界50は、測定サイノグラム46に基づいて、画素単位再構成などの多様なソースから取り出されてもよい。初期推定境界50を最初に取り出すために、隣接するスライスからの1つ以上の輪郭を利用する技法、以前の再構成から1つ以上の輪郭を利用する技法、コンピュータ支援設計/製図(CAD)モデルを利用する技法、1つ以上の非CT撮影モダリティから獲得された画像を利用する技法、又は撮影された被検体に関する他の従来の何らかの知識を利用する技法などの、他の技法を採用してもよい。最初に推定境界50を取り出すために、画素単位再構成が採用される場合、再構成は、フィルタ補正逆投影(FBP)技法、反復フィルタ補正逆投影(IFBP)技法、反復再構成技法及び/又は統計的再構成技法などの適切な再構成技法により生成されてもよい。最初に推定境界50を取り出すために、非CT撮影モダリティが使用される場合には、外側境界を初期設定するために、座標測定機械(CMM)、マイクロメータ、又はレーザー利用測定システムなどのモダリティが使用されてもよい。そのような測定システムが採用される場合、内側境界に関する初期推定は、以前の再構成又はCADモデルから提供されてもよい。
【0022】
ステップ48で初期設定された被検体境界(図示されるように、測定サイノグラム46から取り出されるか、又は先に説明したような別の技法により取り出される)は、被検体18と関連する輪郭又は被検体境界の初期推定を構成してもよい。特に、識別される境界は、被検体18の内部で、減衰がほぼ均一である(おそらくは、密度又は組成が一様であるために、減衰がほぼ均一になる)領域を表現してもよい。図示される例では、測定サイノグラム46において識別される境界は、被検体内部の境界の推定場所を表現する初期推定境界50を確定するために使用されてもよい。スキャナのジオメトリ及び推定境界50は、識別された境界のパラメトリックモデル又はフォワードモデルを定義するために使用されてもよい。フォワードモデルは、ステップ52で、システム行列54を初期設定するために使用されてもよい。本発明の一実施形態においては、システム行列54を初期設定することは、推定境界50に関してフォワードモデルを線形化することを含み、推定境界に対する更新が相対的に小さいと仮定する。その後、ステップ56で、サイノグラムをシミュレートするために、システム行列54は、推定境界50と共に、反復再構成プロセスにおいて使用されてもよい。ステップ56で得られたシミュレートされたサイノグラム58は、ステップ60で、測定サイノグラム46と共に、推定境界50を更新するために使用されてもよい。必要に応じて、このプロセスは、所望の反復回数だけ繰り返されるか、又は終了条件に適合するまで繰り返されてもよい。あるいは、現在の推定境界に関して、フォワードモデルを線形化することにより、システム行列が発見された後、適切に選択された線形方程式のセットを解くことにより、境界の最適の摂動が直接発見されてもよい。その後、線形化及び線形方程式を解くプロセスは、所望の反復回数だけ繰り返されるか、又は終了条件に適合するまで繰り返されることが可能である。
【0023】
別の例として、図2に示される境界単位再構成技法は、図3に示されるように、更に精密化されてもよい。図3に示される制御論理においては、ステップ48で、1つ以上の被検体境界を初期設定するために、測定サイノグラム46が採用されてもよく、先に説明したように、初期推定境界50が獲得される。ステップ52で、フォワードモデルを線形化し、システム行列54を初期設定するために、推定境界50が使用されてもよい。また、推定境界50は、ステップ74で、部分計算サイノグラム76を獲得する目的で、サイノグラムをシミュレートするために使用されてもよい。更に、ステップ78では、システム行列54及び境界摂動のセット80のうちの少なくとも一方から、1つ以上のサイノグラム摂動82が計算されてもよい。当初(すなわち、第1回目の繰り返しにおいては)、境界摂動は、ステップ88で示されるように、0又は他の何らかのプリセット値になることが当業者には理解されるであろう。
【0024】
ステップ78で獲得された1つ以上のサイノグラム摂動82は、総計算サイノグラム86を取り出すために、ステップ84で、部分計算サイノグラム76に加算されてもよい。ステップ90で、境界摂動のセット80は、測定サイノグラム46、総計算サイノグラム86及び/又はシステム行列54に基づいて、更新されてもよい。一実施形態においては、境界摂動のセット80は、境界の1つ以上の部分に対して制約される。ステップ92で、推定境界50は、更新後の境界摂動のセット80に基づいて更新されてもよい。このプロセスは、所望の反復回数だけ繰り返されるか、又は終了条件に適合するまで繰り返されてもよい。
【0025】
先に図2及び図3を参照して説明したようなフォワードモデルを線形化するステップが、図4に更に詳細に示される。図示されるように、被検体18の位置Xj94を有するコーナーポイントjごとに、法線方向96の無限小増分.jが定義され、その後、フォワードモデルにおいて使用される全ての投影線に対して、サイノグラム値Yi100を有するサイノグラム要素iにおける対応する応答.ij98が計算されてもよい。全てのパラメータ(コーナーポイント94)に対して、これを繰り返すと、その結果、全てのパラメータに関して、ヤコビの行列のような線形化システム行列A={aij}が得られる。式中、aij=.ij/.jである。スプラインなどの他のパラメータ化の場合、システム行列は、形状微分又はドメイン微分を使用する類似の手続きを経て取り出されてもよい。
【0026】
先に図2及び図3を参照して説明された技法においては、推定境界50は、直接又は間接的に表現されてもよい。例えば、推定境界50は、レベルセットを使用することにより、間接的に表現されてもよい。逆に、直接表現においては、推定境界50は、1つ以上のスプラインを使用して表現されてもよい。特定の例では、推定境界50は、図4のコーナーポイント94のようなそれぞれのコーナーポイントにより表現される区分的線形輪郭として表現されてもよい。別の例においては、推定境界50は、二次スプライン又はそれより高次のスプラインを使用して表現されてもよい。あるいは、推定境界は、パラメータにより定義されてもよく、複数の基底関数の重み付き和により表現されてもよい。例えば、複数の基底関数は、調和分解、ウェーブレット分解又は多項式展開を含んでもよい。
【0027】
推定境界50が直接表現される実施形態においては、座標は、1つ以上の原点からの距離により、それぞれ対応する原点に対する角度の関数としてモデル化されてもよい。あるいは、そのような実施形態においては、推定境界50の座標は、基準境界までのそれぞれの垂直距離によりモデル化されるか、又はデカルト座標系などの何らかの座標系に従ってモデル化されてもよい。
【0028】
尚、本発明において使用される反復再構成アルゴリズムは、反復フィルタ補正逆投影(IHBP)技法であってもよいし、あるいは最大事後確率(MAP)、最大尤度(ML)、代数的再構成技法(ART)、エントロピー利用最適化、最小二乗(LS)、ペナルティ付き重み付き最小二乗(PWLS)、統計的再構成に基づくアルゴリズムを利用する技法などの別の反復再構成技法であってもよい。これらのアルゴリズムは、ニュートン‐ラフソンの反復アルゴリズム、制約付きニュートン‐ラフソンアルゴリズム、共役勾配アルゴリズム、勾配上昇アルゴリズム又は確率的最適化アルゴリズムなどの最適化方法を採用してもよい。実際には、一般に、当該技術分野において知られている反復再構成アルゴリズムを使用して差し支えない。
【0029】
一実施形態においては、反復画像再構成プロセスは、CT画像データの収集と関連する収集物理プロセスのモデルを更に含んでもよい。そのような収集モデルは、焦点サイズ、検出器セルサイズ、検出器点広がり関数、方位角ぶれ、多色源X線スペクトル、検出器感度、ヒステリシス、残光、遅延、検出器クロストーク、焦点はずれ放射、ビーム硬化、散乱放射、測定雑音及び検出器記憶効果などの要因を考慮に入れてもよい。
【0030】
更に、採用される反復画像再構成アルゴリズムは、事前情報に基づいて、境界の1つ以上の部分に対する制約を組み込んでもよい。そのような事前情報は、CTにより取り出された測定値、あるいは座標測定機械(CMM)、マイクロメータ及びレーザー利用測定システムなどの非CT測定モダリティにより取り出された測定値に基づいてもよい。他のモダリティからの情報が、多種多様な形態で含まれてもよい。例えば、いくつかのパラメータを制約するか、又は固定することにより、情報が直接含まれてもよい。この実施形態においては、境界の1つの部分に関するCMMデータが利用可能である場合、レジストレーションの後、対応する境界パラメータに対する制約として、そのデータを直接含めることができる。あるいは、例えば、他のモダリティからのデータを中心、回転角度及び既知のテンプレート傾きのパラメータ推定として数式化することにより、データのレジストレーションプロセスを推定境界プロセスに組み込むことができる。
【0031】
更に、反復画像再構成アルゴリズムは、境界の滑らかさに関する事前情報に基づいて、境界の1つ以上の部分に対する制約を組み込んでもよい。通常、これは、滑らかな稜線からの偏移にペナルティを課すように、費用関数に損失関数を追加することにより実現される。また、パラメータ化の基底関数に規則性条件を課すことにより、そのような滑らかさペナルティを、暗黙に組み込むことも可能である。境界をパラメータ化する場合、パラメータの数が事前にわかっているとは限らない。しかし、通常、事前に定義されたサンプリング距離におけるサンプリングポイントが使用される。あるいは、AIC(Akaike情報基準)又はMDL(最小記述長さ)などのモデルオーダ選択基準ペナルティを費用関数の数式化に組み込むことにより、データから、最適の数のパラメータを推定できる。その後、組み合わせ費用関数を最小にするモデルオーダとして、最適モデルオーダが自動的に選択される。更に、一実施形態においては、反復画像再構成アルゴリズムは、境界の少なくとも一部に対して、既知の境界形状に変換を適用することに基づいてもよい。変換は、厳密変換であってもよいし、あるいは非厳密変換であってもよい。
【0032】
各々の領域における、走査された被検体の減衰係数がわかっている場合もあり、わからない場合もあることは、当業者には理解されるであろう。減衰係数がわからない場合、それらを推定してもよい。これは、例えば、試行錯誤又は交互最適化により実行可能である。境界単位再構成が何度か繰り返された後、減衰係数は再び推定される。このプロセスを何度も繰り返すことができる。何度かの繰り返しの後、任意に、新たなオペレーティングポイントに関して、システム行列54を再度計算し、線形化することも可能である。この「再線形化」プロセスを何度も繰り返すことができる。
【0033】
上記の様々な実施形態において説明された境界単位CT再構成技法は、減衰がほぼ均一である領域(おそらくは、密度及び/又は組成が一様である領域を表現する)などの、区分的均一被検体の境界を、正確に、効率よく判定するように適応されてもよい。先に説明された技法は、被検体18の全体を表現する画素密度ではなく、境界座標のみを含むため、相対的に疎なモデルを使用する。その結果、システム行列が相対的に小さくなるので、計算効率が向上する。更に、所望の量、すなわち、境界位置が直接再構成されるため、画素表現及びセグメンテーションに起因するエラーを回避できる。加えて、必要に応じて、他のモダリティからの情報を組み込むことができる。更に、十分に小さなシステム行列に対して、摂動問題に対する直接の解を採用できる。
【0034】
また、上述の技法は、コンピュータ又はコントローラで実現されるプロセス及びそれらのプロセスを実行するための装置の形態をとってもよいことが理解されるであろう。開示内容は、フロッピー(登録商標)ディスケット、CD‐ROM、ハードドライブ又は他の何らかのコンピュータ可読記憶媒体などの有形媒体において実現される命令を含むコンピュータプログラムコードの形態で実現されてもよい。その場合、コンピュータプログラムコードがコンピュータ又はコントローラにロードされ、実行されるとき、コンピュータは、本発明を実施するための装置になる。また、開示内容は、例えば、記憶媒体に格納されるか、コンピュータ又はコントローラにロードされ且つ/又は実行されるか、あるいは電気配線又はケーブル、光ファイバ、又は電磁放射などの何らかの送信媒体を介して送信されるかに関わらず、コンピュータプログラムコード又は信号の形態で実現されてもよい。この場合、コンピュータプログラムコードがコンピュータにロードされ、実行されるとき、コンピュータは、本発明を実施するための装置になる。汎用マイクロプロセッサにおいて実現される場合、コンピュータプログラムコードセグメントは、特定の論理回路を作成するように、マイクロプロセッサを構成する。
【0035】
本発明のいくつかの特徴のみを例示し、説明したが、数多くの変形及び変更は、当業者には明らかであろう。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の1つの面に従った被検体の非破壊評価及び計測のためのCT計測システムの一例を示す図。
【図2】本発明の1つの面に従った境界単位反復再構成プロセスの一例を示すフローチャート。
【図3】本発明の1つの面に従った図2の例のプロセスを更に詳細に示すフローチャート。
【図4】本発明の1つの面に従ってシステム行列を獲得するための線形化のプロセスを示す図。
【符号の説明】
【0037】
10…撮影システム、12…放射線源、16…検出器アレイ、18…被検体、22…テーブル、24…システムコントローラ、26…テーブルモータコントローラ、28…放射線コントローラ、30…データ収集回路、32…画像再構成装置、34…コンピュータ、36…メモリ、38…オペレータワークステーション、40…ディスプレイ、42…プリンタ、46…測定サイノグラム、50…推定境界、54…システム行列、76…部分計算サイノグラム、80…境界摂動のセット、82…サイノグラム摂動、86…総計算サイノグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ断層撮影(CT)再構成の方法において、
推定境界(50)を獲得するために、被検体の境界を初期設定すること(48)と;
前記推定境界(50)に基づいて、フォワードモデルを定義することと;
システム行列(54)を獲得するために、前記フォワードモデルを線形化すること(52)と;
前記推定境界(50)を更新するために、前記システム行列(54)を使用して、反復画像再構成プロセスを実現することとから成る方法。
【請求項2】
境界は、ほぼ一様な減衰を有する1つの領域の1つの稜線に対応する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フォワードモデルを線形化することは、
前記境界を定義する複数のコーナーポイント(94)を、それぞれ対応する法線方向に、ある増分量だけ増分すること(96)と;
前記システム行列(54)を生成するために、測定ドメイン(100)における応答(98)を計算することとを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記反復画像再構成プロセスを実現することは、境界摂動を発見するために、線形化方程式系を直接解くことを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
コンピュータ断層撮影(CT)計測方法において、
測定サイノグラム(46)から、被検体の推定境界(50)を生成すること(48)と;
前記推定境界(50)に基づいて、部分計算サイノグラム(76)を生成すること(74)と;
前記推定境界(50)に基づいて、システム行列(54)を更新すること(52)と;
前記システム行列(54)及び境界摂動のセット(80)のうちの少なくとも一方から、少なくとも1つのサイノグラム摂動(82)を計算すること(78)と;
総計算サイノグラム(86)を取り出すために、前記部分計算サイノグラム(76)と、前記少なくとも1つのサイノグラム摂動(82)とを加算すること(84)と;
前記測定サイノグラム(46)、前記総計算グラム(86)及び前記システム行列(54)のうちの少なくとも1つに基づいて、前記境界摂動のセット(80)を更新すること(90)と;
前記境界摂動のセット(80)に基づいて、前記推定境界(50)を更新すること(92)とから成る方法。
【請求項6】
前記システム行列(54)を初期値に初期設定すること(52)を更に含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記境界摂動のセット(80)を初期値に初期設定すること(88)を更に含む請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記システム行列(54)を更新すること(52)は、前記推定境界(50)に関してフォワードモデルを線形化することを含む請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記システム行列を更新する過程(52)と、前記部分計算サイノグラム(76)を生成する過程(74)と、前記少なくとも1つのサイノグラム摂動(82)を計算する過程(78)と、前記部分計算サイノグラム(76)及び前記少なくとも1つのサイノグラム摂動(82)を加算する過程(84)と、前記境界摂動のセット(80)を更新する過程(90)と、前記推定境界(50)を更新する過程(92)とを繰り返すことを更に含む請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記境界摂動のセット(80)を更新すること(90)は、最尤アルゴリズム、最大事後アルゴリズム、統計的再構成アルゴリズム、共役勾配アルゴリズム、勾配上昇アルゴリズム、代数的再構成アルゴリズム、重み付き最小二乗アルゴリズム、反復フィルタ補正逆投影、エントロピー利用アルゴリズム及び反復再構成アルゴリズムのうちの少なくとも1つを適用することを含む請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17714(P2006−17714A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189090(P2005−189090)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】