説明

DC−DCコンバータ用コンデンサおよび燃料電池システム

【課題】コンデンサ素子の過熱を防止する。
【解決手段】DC−DCコンバータ用コンデンサは、一対のバスバーB1、B2と、バスバーB1、B2間に並列に接続される複数のコンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdとを含んで構成されている。一方のバスバーB1には燃料電池の陽極側と接続される入力側端子Pが設けられ、他方のバスバーB2には燃料電池の陰極側と接続される出力側端子Nが設けられている。各コンデンサ素子は、入力側端子Pから近い順に、Ca、Cb、Cc、Cdの順に配置されているとともに、出力側端子Nから近い順に、Cd、Cc、Cb、Caの順に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータ用コンデンサおよび燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、直流電源からの直流電圧を昇圧してモータに供給する昇圧コンバータが開示されている。このような昇圧コンバータに用いられるコンデンサは、一般に、複数のコンデンサ素子を備え、各コンデンサ素子を並列に配置することで、昇圧動作に必要な容量を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−201409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンデンサに含まれる複数のコンデンサ素子は、例えば図8に示すように配置される。図8に示すコンデンサは、一対のバスバーB1、B2と、バスバーB1、B2間に並列に接続される複数のコンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdと、を有する。一方のバスバーB1には入力側端子Pが設けられ、他方のバスバーB2には出力側端子Nが設けられている。各コンデンサ素子は、入力側端子Pおよび出力側端子Nの位置から近い順に、Ca、Cb、Cc、Cdの順に配置されている。したがって、各コンデンサ素子のそれぞれの配線における抵抗成分は、Ca<Cb<Cc<Cdの関係になる。
【0005】
このように構成されているコンデンサに電流を流した場合には、バスバーのインピーダンスが最小となるコンデンサ素子Caに最も電流が流れやすくなるため、コンデンサ素子Caに電流が集中してしまい、コンデンサ素子Caが過熱するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、コンデンサ素子の過熱を防止することができるDC−DCコンバータ用コンデンサおよび燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係るDC−DCコンバータ用コンデンサは、直流電圧を昇圧するDC−DCコンバータに用いられるコンデンサであって、コンデンサは、複数のコンデンサ素子および当該コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化する導電部材を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、燃料電池からの電力を消費する電力消費装置と、燃料電池と電力消費装置との間に配置されるDC−DCコンバータと、を備え、DC−DCコンバータは、複数のコンデンサ素子および当該コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化する導電部材を含むコンデンサを有することを特徴とする。
【0009】
これらの発明によれば、各コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化することができるため、一部のコンデンサ素子に電流が集中することで生じ得るコンデンサ素子の過熱を防止することが可能となる。
【0010】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記導電部材は、入力側の端子部と、出力側の端子部と、コンデンサ素子ごとに入力側の端子部からコンデンサ素子を介して出力側の端子部までをそれぞれ接続する配線部と、を有し、それぞれの配線部のインピーダンスは、コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流が均一化されていると判定可能な所定の範囲内に設定されていることとしてもよい。
【0011】
このようにすることで、各コンデンサ素子のそれぞれの配線部におけるインピーダンスを、各コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化することが可能な範囲内に収めることが可能となる。
【0012】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記それぞれの配線部の長さを略同等にしてもよい。
【0013】
このようにすることで、各コンデンサ素子のそれぞれの配線部におけるインピーダンスを略同等にすることができるため、各コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化することが可能となる。
【0014】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記導電部材は、バスバーであることとしてもよい。
【0015】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、コンデンサは、燃料電池と昇圧回路および共振回路との間で燃料電池と並列に接続され、燃料電池の出力電圧を平滑することとしてもよい。
【0016】
このようにすることで、コンデンサには、DC−DCコンバータの駆動周波数の電流の他に、DC−DCコンバータの駆動周波数よりも高い周波数で発信する共振回路からの共振電流が流れ込むため、共振電流が流れ込んだ際の導電部材のインピーダンスも大きくなり、上記コンデンサ素子の過熱防止効果もより増大する。
【0017】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、コンデンサは、昇圧回路に含まれ、電力消費装置側に出力する電圧を平滑することとしてもよい。
【0018】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、コンデンサは、共振回路に含まれ、燃料電池側に出力する電流の供給源となることとしてもよい。
【0019】
上記DC−DCコンバータ用コンデンサまたは燃料電池システムにおいて、上記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、コンデンサは、燃料電池の出力電圧を平滑するコンデンサ、昇圧回路に含まれ、電力消費装置側に出力する電圧を平滑するコンデンサ、共振回路に含まれ、燃料電池側に出力する電流の供給源となるコンデンサのうちの少なくとも二種類以上のコンデンサを一体化したものであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンデンサ素子の過熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態における燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】実施形態におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの内部構成を模式的に示す図である。
【図3】実施形態におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。
【図4】実施形態におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。
【図5】第1変形例におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。
【図6】第1変形例におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。
【図7】第2変形例におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの内部構成を模式的に示す図である。
【図8】従来のコンデンサの内部構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るDC−DCコンバータ用コンデンサおよび燃料電池システムの好適な実施形態について説明する。実施形態では、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムとして用いた場合について説明する。なお、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)にも適用することができ、さらに、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムにも適用することができる。
【0023】
まず、図1を参照して、実施形態における燃料電池システムの構成について説明する。図1は、実施形態における燃料電池システムを模式的に示した図である。
【0024】
同図に示すように、燃料電池システム1は、反応ガスである酸化ガスと燃料ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池2と、燃料電池用のDC/DCコンバータ3(以下「燃料電池用コンバータ」という。)、二次電池としてのバッテリ4、バッテリ用のDC/DCコンバータ5(以下「バッテリ用コンバータ」という。)、負荷としてのトラクションインバータ6およびトラクションモータ7(電力消費装置)、システム全体を統括制御する制御部8とを有する。燃料電池2および燃料電池用コンバータ3の組と、バッテリ4およびバッテリ用コンバータ5の組は、トラクションインバータ6およびトラクションモータ7に対して並列に接続されている。
【0025】
燃料電池2は、例えば、高分子電解質型燃料電池であり、多数の単セルを積層したスタック構造となっている。単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極および燃料極を両側から挟み込むように一対のセパレータを有する構造となっている。この場合、一方のセパレータの水素ガス通路に水素ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス通路に酸化ガスが供給され、これらの反応ガスが化学反応することで電力が発生する。
【0026】
燃料電池用コンバータ3は、直流の電圧変換器であり、燃料電池2から入力された直流電圧を昇圧して電力消費装置側であるトラクションインバータ6に出力する機能を有する。この燃料電池用コンバータ3によって燃料電池2の出力電圧が制御される。
【0027】
燃料電池用コンバータ3は、例えば、燃料電池2の出力電圧である直流電圧を平滑する平滑用コンデンサC1と、直流電圧を昇圧するための昇圧回路を構成する昇圧用コイルL1、昇圧用コンデンサC3および昇圧用スイッチS1と、昇圧用スイッチS1のゼロ電流スイッチングを実現するための共振回路を構成する共振用コンデンサC2、共振用コイルL2および共振用スイッチS2と、を含んで構成される。平滑用コンデンサC1、共振用コンデンサC2および昇圧用コンデンサC3が、本発明に係るDC−DCコンバータ用コンデンサに該当する。以下、平滑用コンデンサC1、共振用コンデンサC2および昇圧用コンデンサC3を総称してDC−DCコンバータ用コンデンサという。
【0028】
昇圧回路を構成する昇圧用コンデンサC3は、電力消費装置側であるトラクションインバータ6に出力する電圧を平滑する機能を有する。共振回路を構成する共振用コンデンサC2は、燃料電池2側に出力する共振電流を供給する供給源としての機能を有する。
【0029】
図2は、DC−DCコンバータ用コンデンサの内部構成を模式的に示した図である。図2に示すDC−DCコンバータ用コンデンサは、一対のバスバーB1、B2(導電部材)と、バスバーB1、B2間に並列に接続される複数のコンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdとを含んで構成されている。バスバーB1、B2は、端子部と配線部とを有する。一方のバスバーB1には燃料電池2の陽極側と接続される入力側端子Pが設けられ、他方のバスバーB2には燃料電池2の陰極側と接続される出力側端子Nが設けられている。各コンデンサ素子は、入力側端子Pから近い順に、Ca、Cb、Cc、Cdの順に配置されているとともに、出力側端子Nから近い順に、Cd、Cc、Cb、Caの順に配置されている。
【0030】
このように構成することで、DC−DCコンバータ用コンデンサに含まれる各コンデンサ素子のそれぞれの配線部の長さを略同等にすることができる。図2を参照して具体的に説明すると、コンデンサ素子Caの配線部の長さは、P−a部分とb−N部分とを合算した長さとなり、コンデンサ素子Cbの配線部の長さは、P−c部分とd−N部分とを合算した長さとなり、コンデンサ素子Ccの配線部の長さは、P−e部分とf−N部分とを合算した長さとなり、コンデンサ素子Cdの配線部の長さは、P−g部分とh−N部分とを合算した長さとなる。つまり、DC−DCコンバータ用コンデンサに含まれる各コンデンサ素子のそれぞれの配線部の長さは略同等となる。
【0031】
各コンデンサ素子のそれぞれの配線部の長さを略同等にすることで、各コンデンサ素子のそれぞれの配線部におけるバスバーのインピーダンスも略同等にすることができる。これにより、コンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdのそれぞれに流れる電流を均一化することができるため、一部のコンデンサ素子に電流が集中することで生じ得るコンデンサ素子の過熱を防止することが可能となる。
【0032】
図3および図4は、DC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。図3および図4に示すDC−DCコンバータ用コンデンサは、一対のバスバーB1、B2と、バスバーB1、B2間に並列に接続される8個のコンデンサ素子とを含んで構成されている。図2に示す内部構成と対応させて説明する便宜上、以下では、このDC−DCコンバータ用コンデンサが、図3および図4に示す4個のコンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdからなるものとして説明する。図3および図4に示す各コンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdは、バスバーB1の入力側端子Pから近い順に、Ca、Cb、Cc、Cdの順に配置されているとともに、バスバーB2の出力側端子Nから近い順に、Cd、Cc、Cb、Caの順に配置されている。このように構成することで、DC−DCコンバータ用コンデンサに含まれる各コンデンサ素子のそれぞれの配線部の長さを略同等にすることができる。
【0033】
なお、各コンデンサ素子のそれぞれの配線部におけるバスバーのインピーダンスは略同等にすることが望ましいが、各インピーダンス間に多少のばらつきが存在しても、コンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdのそれぞれに流れる電流が均一化されていると判定可能な所定の範囲内に各インピーダンスが収まっていればよい。
【0034】
図1に示すバッテリ4は、バッテリセルが積層されて一定の高電圧を端子電圧とし、図示しないバッテリコンピュータの制御によって燃料電池2の余剰電力を充電したり補助的に電力を供給したりすることが可能になっている。バッテリ用コンバータ5は、直流の電圧変換器であり、バッテリ4から入力された直流電圧を調整(昇圧)して電力消費装置側であるトラクションインバータ6に出力する機能と、燃料電池2またはトラクションモータ7から入力された直流電圧を調整(降圧)してバッテリ4に出力する機能と、を有する。このようなバッテリ用コンバータ5の機能により、バッテリ4の充放電が実現される。トラクションインバータ6は、直流電流を三相交流に変換し、トラクションモータ7に供給する。トラクションモータ7は、例えば三相交流モータであり、燃料電池システム1が搭載される燃料電池車両の主動力源を構成する。
【0035】
制御部8は、燃料電池車両に設けられた加速操作部材(例えば、アクセル)の操作量を検出し、加速要求値(例えば、トラクションモータ7等の電力消費装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、電力消費装置には、トラクションモータ7の他に、例えば、燃料電池2を作動させるために必要な補機装置、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等が含まれる。
【0036】
制御部8は、物理的には、例えば、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを有する。メモリは、CPUで処理される制御プログラムや制御データを記憶するROMと、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAMとを有する。これらの要素は、互いにバスを介して接続されている。入出力インターフェースには、電流センサや電圧センサ等の各種センサが接続されているとともに、トラクションモータ7等を駆動させるための各種ドライバが接続されている。
【0037】
CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って、入出力インターフェースを介して各種センサでの検出結果を受信し、RAM内の各種データ等を用いて処理することで、燃料電池システム1における各種制御処理を実行する。また、CPUは、入出力インターフェースを介して各種ドライバに制御信号を出力することにより、燃料電池システム1全体を制御する。
【0038】
制御部8は、例えば、昇圧用スイッチS1や共振用スイッチS2のオン/オフを制御することで、ゼロ電流スイッチング制御を行う。以下において、ゼロ電流スイッチング制御について説明する。
【0039】
ゼロ電流スイッチング制御は、スイッチのオン/オフ時に発生するスイッチング損失を解消するためのスイッチング手法である。本実施形態におけるゼロ電流スイッチング制御は、昇圧用スイッチS1のオン/オフ時に発生するスイッチング損失を解消するものである。以下に、図1を参照してその手順を説明する。
【0040】
まず、昇圧用スイッチS1をオンからオフに切り換える場合に、昇圧用スイッチS1をオンからオフに徐々に切り換える(手順1)。これにより、昇圧用スイッチS1に流れる電流が減少していくため、ダイオードD3および共振用コンデンサC2側に電流が集中することになる。
【0041】
その後、昇圧用スイッチS1に流れる電流が0になった後に、昇圧用スイッチS1をオンからオフに完全に切り換える(手順2)。これにより、昇圧用スイッチS1に電流が流れていないときに昇圧用スイッチS1をオフにすることができるため、スイッチング損失を0にすることができる。
【0042】
一方、電流が共振用コンデンサC2に流れ込むことによって、共振用コンデンサC2には電荷が蓄積されていくことになる。
【0043】
続いて、共振用コンデンサC2に蓄積された電荷を放出するために、共振用スイッチS2をオフからオンに切り換える(手順3)。これにより、共振用コンデンサC2からダイオードD2および共振用コイルL2を介して平滑用コンデンサC1に電流が流れ込み、平滑用コンデンサC1に電荷が蓄積されていくことになる。つまり、共振回路から平滑用コンデンサC1に電流が流れ込み、平滑用コンデンサC1に電荷が蓄積されていくことになる。
【0044】
その後、共振用コンデンサC2から全ての電荷が放出され、共振用コンデンサC2の電圧が0になると、ダイオードD3および共振用コンデンサC2からなる直列回路の両端の電位差が0になり、昇圧用スイッチS1の両端の電位差も0になる。
【0045】
昇圧用スイッチS1の両端の電位差が0になった後に、昇圧用スイッチS1をオフからオンに切り換える(手順4)。これにより、昇圧用スイッチS1に電流が流れないときに昇圧用スイッチS1をオンにすることができるため、スイッチング損失を0にすることができる。
【0046】
このようなゼロ電流スイッチング制御を実行する場合には、上記手順3を実行したときに、共振用コンデンサC2から出力される共振電流が、平滑用コンデンサC1に流れ込むことになる。つまり、平滑用コンデンサC1には、DC−DCコンバータ3の駆動周波数の電流の他に、駆動周波数よりも数十倍程高い周波数の共振電流が流れ込むことになる。
【0047】
一般に、バスバーのインピーダンスは、周波数が高くなるほど大きくなるため、平滑用コンデンサC1のバスバーB1、B2のインピーダンスは、駆動周波数の電流が流れ込むときよりも、高周波数の共振電流が流れ込むときの方が大きくなる。バスバーのインピーダンスが大きくなるほど、インピーダンスの不均衡によって生じ得るコンデンサ素子の過熱度合いが高まる。言い換えると、本発明をコンデンサに適用した際に得られるコンデンサ素子の過熱防止効果は、バスバーB1、B2のインピーダンスが大きいほど効果が増大する。したがって、本発明を平滑用コンデンサC1に適用した場合には、本発明を共振用コンデンサC2および昇圧用コンデンサC3に適用した場合に比べて、より大きなコンデンサ素子の過熱防止効果を得ることが可能となる。
【0048】
上述してきたように、本実施形態における燃料電池システム1によれば、コンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdのそれぞれの配線部におけるバスバーのインピーダンスを略同等にすることができるため、各コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化することができる。これにより、一部のコンデンサ素子に電流が集中することで生じ得るコンデンサ素子の過熱を防止することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態におけるDC−DCコンバータ用コンデンサの構成は、図2〜図4に示す構成には限定されない。各コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化することが可能な構成であればよい。
【0050】
例えば、図5および図6に示す構成であってもよい。図5および図6は、上述した実施形態における平滑用コンデンサC1と共振用コンデンサC2とを一体化したDC−DCコンバータ用コンデンサの外部構成を例示する斜視図である。図5および図6に示すDC−DCコンバータ用コンデンサは、3本のバスバーB11、B12、B2と、平滑用コンデンサC1を構成する9個のコンデンサ素子C1a〜C1iと、共振用コンデンサC2を構成する6個のコンデンサ素子C2a〜C2fと、を含んで構成されている。
【0051】
バスバーB11、B12には、燃料電池2の陽極側と接続される入力側端子P1、P2がそれぞれ設けられている。バスバーB2には燃料電池2の陰極側と接続される出力側端子Nが設けられている。
【0052】
平滑用コンデンサC1を構成するコンデンサ素子C1a〜C1iは、バスバーB11とバスバーB2との間に配置されている。共振用コンデンサC2を構成するコンデンサ素子C2a〜C2fは、バスバーB12とバスバーB2との間に配置されている。
【0053】
平滑用コンデンサC1を構成する各コンデンサ素子C1a〜C1iは、バスバーB11の入力側端子P1から近い順に、C1a、C1i、C1b、C1c、C1h、C1d、C1e、C1g、C1fの順に配置されているとともに、バスバーB2の出力側端子Nから近い順に、C1f、C1g、C1e、C1d、C1h、C1c、C1b、C1i、C1aの順に配置されている。このように構成することで、平滑用コンデンサC1に含まれる各コンデンサ素子C1a〜C1iのそれぞれの配線部の長さを略同等にすることができる。
【0054】
共振用コンデンサC2を構成する各コンデンサ素子C2a〜C2fは、バスバーB12の入力側端子P2から近い順に、C2a、C2b、C2c、C2d、C2e、C2fの順に配置されているとともに、バスバーB2の出力側端子Nから近い順に、C2f、C2e、C2d、C2c、C2b、C2aの順に配置されている。このように構成することで、共振用コンデンサC2に含まれる各コンデンサ素子C2a〜C2fのそれぞれの配線部の長さを略同等にすることができる。
【0055】
ここで、複数のコンデンサを一体化したDC−DCコンバータ用コンデンサは、上記平滑用コンデンサC1と共振用コンデンサC2とを一体化したものには限定されない。上述した実施形態における平滑用コンデンサC1、共振用コンデンサC2および昇圧用コンデンサC3のうちの少なくとも二種類以上のコンデンサを一体化したものであってもよい。複数のコンデンサを一体化することで、DC−DCコンバータの小型化に寄与することが可能となる。
【0056】
また、DC−DCコンバータ用コンデンサの構成は、例えば、図7に示す構成であってもよい。図7に示すDC−DCコンバータ用コンデンサは、複数のコンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdと、各コンデンサ素子を並列に接続する電線部(導電部材)と、を含んで構成されている。このように構成することで、DC−DCコンバータ用コンデンサに含まれる各コンデンサ素子のそれぞれの配線部の長さを略同等にすることができるため、各コンデンサ素子のそれぞれの配線部における電線部のインピーダンスも略同等にすることができる。これにより、コンデンサ素子Ca、Cb、Cc、Cdのそれぞれに流れる電流を均一化することができ、一部のコンデンサ素子に電流が集中することで生じ得るコンデンサ素子の過熱を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1…燃料電池システム、2…燃料電池、3…DC/DCコンバータ、6…トラクションインバータ、7…トラクションモータ、8…制御部、C1…平滑用コンデンサ、C2…共振用コンデンサ、C3…昇圧用コンデンサ、Ca、Cb、Cc、Cd…コンデンサ素子、B1、B2…バスバー、L1…昇圧用コイル、L2…共振用コイル、N…出力側端子、P…入力側端子、S1…昇圧用スイッチ、S2…共振用スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を昇圧するDC−DCコンバータに用いられるコンデンサであって、
前記コンデンサは、複数のコンデンサ素子および当該コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化する導電部材を含むことを特徴とするDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項2】
前記導電部材は、入力側の端子部と、出力側の端子部と、前記コンデンサ素子ごとに入力側の端子部から前記コンデンサ素子を介して出力側の端子部までをそれぞれ接続する配線部と、を有し、それぞれの前記配線部のインピーダンスは、前記コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流が均一化されていると判定可能な所定の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項3】
それぞれの前記配線部の長さが略同等であることを特徴とする請求項2記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項4】
前記導電部材は、バスバーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項5】
前記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記燃料電池と前記昇圧回路および前記共振回路との間で前記燃料電池と並列に接続され、前記燃料電池の出力電圧を平滑することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項6】
前記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記昇圧回路に含まれ、前記電力消費装置側に出力する電圧を平滑することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項7】
前記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記共振回路に含まれ、前記燃料電池側に出力する電流の供給源となることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項8】
前記DC−DCコンバータは、燃料電池の出力電圧を昇圧させ、電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記燃料電池の出力電圧を平滑するコンデンサ、前記昇圧回路に含まれ、前記電力消費装置側に出力する電圧を平滑するコンデンサ、前記共振回路に含まれ、前記燃料電池側に出力する電流の供給源となるコンデンサのうちの少なくとも二種類以上のコンデンサを一体化したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のDC−DCコンバータ用コンデンサ。
【請求項9】
燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの電力を消費する電力消費装置と、
前記燃料電池と前記電力消費装置との間に配置されるDC−DCコンバータと、を備え、
前記DC−DCコンバータは、複数のコンデンサ素子および当該コンデンサ素子のそれぞれに流れる電流を均一化する導電部材を含むコンデンサを有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
前記導電部材は、入力側の端子部と、出力側の端子部と、前記コンデンサ素子ごとに、入力側の端子部から前記コンデンサ素子を介して出力側の端子部までをそれぞれ接続する配線部と、を有し、それぞれの前記配線部のインピーダンスが、前記電流を均一化するために設けられた所定の範囲内にあることを特徴とする請求項9記載の燃料電池システム。
【請求項11】
それぞれの前記配線部の長さが略同等であることを特徴とする請求項10記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記導線部材は、バスバーであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記DC−DCコンバータは、
前記燃料電池の出力電圧を昇圧させ、前記電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記燃料電池と前記昇圧回路および前記共振回路との間で前記燃料電池と並列に接続され、前記燃料電池の出力電圧を平滑することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記DC−DCコンバータは、前記燃料電池の出力電圧を昇圧させ、前記電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記昇圧回路に含まれ、前記電力消費装置側に出力する電圧を平滑することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
前記DC−DCコンバータは、前記燃料電池の出力電圧を昇圧させ、前記電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記共振回路に含まれ、前記燃料電池側に出力する電流の供給源となることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項16】
前記DC−DCコンバータは、前記燃料電池の出力電圧を昇圧させ、前記電力消費装置側および前記燃料電池側の双方に電流を出力可能な昇圧回路および共振回路をさらに備え、
前記コンデンサは、前記燃料電池の出力電圧を平滑するコンデンサ、前記昇圧回路に含まれ、前記電力消費装置側に出力する電圧を平滑するコンデンサ、前記共振回路に含まれ、前記燃料電池側に出力する電流の供給源となるコンデンサのうちの少なくとも二種類以上のコンデンサを一体化したものであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−50210(P2011−50210A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198392(P2009−198392)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】