説明

DC/DC電力変換装置

【課題】過電流を抑制した安定的な電圧遷移動作が可能なDC/DC電力変換装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2のブリッジ回路A11、A2の高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子をオンオフ制御することにより、第1のブリッジ回路A11に接続された平滑コンデンサCs1に蓄えられたエネルギの一部を第1のブリッジ回路A11を通してLC直列体Lcr1に移行させ、さらにLC直列体Lcr1から第2のブリッジ回路A2を通して第2のブリッジ回路A2に接続された平滑コンデンサCs2に移行する装置において、平滑コンデンサCs1、Cs2の電圧を検出するための電圧検出手段31、32と、平滑コンデンサCs1、Cs2の電圧検出値と電圧指令値Vrefに応じて動作モードを判定する動作モード判定手段100を備え、ゲート信号生成手段1A及び1Bが判定された動作モードに基づいて、ゲート信号パターンを変化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電圧を昇圧あるいは降圧した直流電圧に変換するDC/DC電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のDC/DC電力変換装置として、正の電位に接続する半導体スイッチと負の電位に接続する半導体スイッチとを備えた少なくとも2個以上の半導体スイッチを具備するインバータ回路と、直列に接続される複数の整流器と直列に接続される複数のコンデンサとを備えた多倍圧整流回路で構成され、インバータ回路で交流電圧を作り、更に、多倍圧整流回路で高圧直流電圧を作り負荷に供給するDC/DCコンバータが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来のDC/DC電力変換装置として、インバータ回路と2倍圧整流回路とで構成され、コンデンサと直列にインダクタを接続し、LC共振現象を利用してコンデンサへの充放電電流を増大させるスイッチトキャパシタコンバータがあり、大きな電力を移行しても効率の低下が少ない電力変換を実現している(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−191638号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】出利葉史俊他:「共振形スイッチトキャパシタコンバータの制御特性」,信学技法,IEICE Technical Report,EE2005-62,pp7-12,2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のDC/DC電力変換装置は、インバータ回路と整流回路とを備え、コンデンサの充放電を利用して直流/直流電力変換を行うものであり、また、コンデンサと直列にインダクタを接続してLC共振現象を利用することにより高効率で大きな電力が移行できる。 しかし、従来のDC/DC電力変換装置では、装置起動時等において平滑コンデンサの電圧差が大きい場合、半導体素子やコンデンサとインダクタのLC直列体に大きな電流が流れるため、電流定格の大きな部品を用いる必要があった。
また、従来のDC/DC電力変換装置では、昇圧比を回路段数に応じた定倍にしかできないため、低圧側電圧変動がある場合、高圧側電圧には低圧側電圧の昇圧比倍の電圧変動が発生するため、高圧側電圧に接続される部品はこの電圧変動を見込んだ耐圧の部品を使用する必要があった。
【0007】
この発明では、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、過電流を抑制した安定的な電圧遷移動作が可能なDC/DC電力変換装置を提供する。
また、過電流を抑制した状態で昇圧比を可変化することができるDC/DC電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係るDC/DC電力変換装置は、
低圧側から高圧側へ直列に接続した複数個の平滑コンデンサと、
上記低圧側の平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第1のブリッジ回路と、
上記高圧側の平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第2のブリッジ回路と、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段を備え、
上記第1のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第1の中間端子と、上記第2のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第2の中間端子との間にエネルギ移行用コンデンサ及びインダクタからなるLC直列体を接続し、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御により、上記第1又は第2のブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに蓄えられたエネルギの一部を、上記一方のブリッジ回路を通して上記一方のブリッジ回路に接続された上記LC直列体に移行させ、さらに上記LC直列体から上記LC直列体に接続された上記第1又は第2のブリッジ回路の他方のブリッジ回路を通して上記他方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに移行させるDC/DC電力変換装置において、
上記平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段と、
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段とを備え、
上記ゲート信号生成手段は、上記判定された動作モードに基づいて、ゲート信号パターンを変化させるようにしたものである。
【0009】
第2の発明に係るDC/DC電力変換装置は、
低圧側端子として基準電圧端子を高圧側端子として第1電圧端子を有する第1平滑コンデンサと、低圧側端子として第(k−1)電圧端子を高圧側端子として第k電圧端子を有する第k平滑コンデンサ(k=2、・・・、n;nは2以上の整数)とを直列に接続し、
上記第1平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第1のブリッジ回路をm個(mは整数、1≦m≦n−1)並列に接続し、
上記第k(k=2、・・・、n)平滑コンデンサの正負端子間にそれぞれ高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第2のブリッジ回路を(n−1)個設け、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段を備え、
上記第1のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第1の中間端子と、上記第2のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第2の中間端子との間にエネルギ移行用コンデンサ及びインダクタからなるLC直列体を接続し、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御により、上記第1又は第2のブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに蓄えられたエネルギの一部を、上記一方のブリッジ回路を通して上記一方のブリッジ回路に接続された上記LC直列体に移行させ、さらに上記LC直列体から上記LC直列体に接続された上記第1又は第2のブリッジ回路の他方のブリッジ回路を通して上記他方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに移行させるDC/DC電力変換装置において、
上記各平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段と、
上記各平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段とを備え、
上記ゲート信号生成手段は、上記判定された動作モードに基づいて、ゲート信号パターンを変化させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明のDC/DC電力変換装置によれば、高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段と、平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段と、平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段とを備え、ゲート信号生成手段は、動作モード判定手段によって判定された動作モードに応じてゲート信号パターンを変化させることにより、過電流を抑制した安定的な電圧遷移動作が可能となる。
【0011】
第2の発明のDC/DC電力変換装置によれば、過電流を抑制した安定的な電圧遷移動作が可能となるとともに、電圧指令値に応じた電圧を出力することが可能となる。すなわち、VH端子−Vcom端子間の電圧Vnを、V1端子−Vcom端子の電圧V1の約n倍、約(n−1)倍、・・・約1倍に昇圧することができる。また、出力電圧としてのVH−Vcom端子間の電圧Vnを、V1端子−Vcom端子間電圧V1の約n倍の状態から、約(n−1)倍、・・・約1倍の電圧に降圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置のタイミングチャートを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の第2のタイミングチャートを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード1の時の動作説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード3の時の動作説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード2の時の動作説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置のタイミングチャートを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード4の時の動作説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード4aの時の動作説明図である。
【図10】この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置の出力電圧遷移図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置のタイミングチャートを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置の動作モードがモード5の時の動作説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置の制御回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図である。図1に示したDC/DC電力変換装置は、VH端子−Vcom端子間の電圧V3をVL端子−Vcom端子の電圧V1の約3倍、または約2倍、あるいは約1倍に昇圧した電圧を出力する機能を有する。また、VM端子−Vcom端子間の電圧V2を、VL端子−Vcom端子間の電圧V1の約2倍、または約1倍に昇圧した電圧を出力する機能を有する。
【0014】
まず、図1(a)において、DC/DC電力変換装置の主回路構成について説明する。入出力電圧の平滑化とエネルギ移行のための電圧源として機能する平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3を直列接続して、平滑コンデンサCs1の低圧側端子に基準電圧端子Vcomを、平滑コンデンサCs1の高圧側端子に低圧出力端子VLを、平滑コンデンサCs2の高圧側端子に中圧出力端子VMを、平滑コンデンサCs3の高圧側端子に高圧出力端子VHを接続している。低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしての2つのMOSFET(S1L、S1H)を直列接続した回路A11と、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(S4L、S4H)を直列接続した回路A12は、平滑コンデンサCs1の両端子間に接続されることで、それぞれ第1のブリッジ回路A11、A12を構成している。また、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(S2L、S2H)を直列接続した回路A2は平滑コンデンサCs2の両端子間に接続され、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(S3L、S3H)を直列接続した回路A3は平滑コンデンサCs3の両端子間に接続されることで、それぞれ第2のブリッジ回路A2、A3を構成している。
【0015】
また、第1のブリッジ回路A11内の2つのMOSFET(S1L、S1H)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路A2内の2つのMOSFET(S2L、S2H)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCr1とインダクタLr1の直列体で構成され、エネルギ移行素子として機能するLC直列体LCr1を接続する。同様に、第1のブリッジ回路A12内の2つのMOSFET(S4L、S4H)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路A3内の2つのMOSFET(S3L、S3H)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCr2とインダクタLr2の直列体で構成され、エネルギ移行素子として機能するLC直列体LCr2を接続する。
【0016】
次に、DC/DC電力変換装置の周辺回路構成について説明する。ゲート駆動回路21〜24は、制御回路1から入力される低電圧のゲート信号(G1L〜G4L、G1H〜G4H)を、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)のソース電位基準の信号に電位レベルを変換する機能と、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)をオン/オフ制御するために必要な電圧と電流を供給する駆動機能を有している。電圧センサ31、32、33は、それぞれ平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3の両端子に接続され、各平滑コンデンサ電圧Vcs1、Vcs2、Vcs3を検出して制御回路1に伝達する。
【0017】
図1(b)に示すように、制御回路1は、動作モード判定手段100と、ゲート信号生成手段1A及び1Bによって構成されている。動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと、平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3の電圧検出値Vcs1、Vcs2、Vcs3に応じて、DC/DC電力変換装置の動作モードを判定する機能を有している。LC直列体を介してその中間端子を接続された第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路は、同じ動作モードとなるように構成する。具体的には、第1のブリッジ回路A11と第2のブリッジ回路A2は動作モードA、第1のブリッジ回路A12と第2のブリッジ回路A3は動作モードBで動作させる。動作モードAと動作モードBは、後述するように同じ場合もあるし異なる場合もある。
ゲート信号生成手段1A、1Bは、動作モード判定手段100によって判定された動作モードに応じて、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を制御するためのゲート信号を生成する手段を有している。具体的には、ゲート信号生成手段1Aは、動作モードAに応じてMOSFET(S1L、S1H、S2L、S2H)を制御するためのゲート信号G1L、G1H、G2L、G2Hを生成し、ゲート駆動回路21、22に出力する。同じく、ゲート信号生成手段1Bは、動作モードBに応じてMOSFET(S4L、S4H、S3L、S3H)を制御するためのゲート信号G4L、G4H、G3L、G3Hを生成し、ゲート駆動回路24、23に出力する。
なお、制御回路1は1個のCPUで構成しても構わないし、動作モード判定手段100をマイコンやDSP等のCPU、ゲート信号生成手段1A、1BをFPGAやCPLD等のロジック素子で別々に構成しても構わない。
【0018】
次に、動作モード判定手段100の詳細動作について説明する。図2は、VH端子−Vcom端子間の電圧V3がVL−Vcom端子間の電圧V1に等しい状態から、電圧V1の2倍、および、電圧V1の3倍の電圧に段階的に昇圧する時のタイミングチャートを示す図である。
電圧指令値Vrefが電圧V1と等しく、VH端子−Vcom端子間の電圧V3の昇圧指令値が1倍の場合、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAと、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBは、共にモード1となっている。電圧指令値VrefがV1×2となり、昇圧指令値が2倍になると、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAのみがモード2となり、平滑コンデンサCs2の電圧目標値はV1となる。そして、平滑コンデンサCs2の電圧検出値Vcs2が閾値電圧Vth1以上となると、動作モードAはモード3に移行する。次に、電圧指令値VrefがV1×3となり、昇圧指令値が3倍になると、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBのみがモード2となり、平滑コンデンサCs3の電圧目標値はV1となる。平滑コンデンサCs3の電圧検出値Vcs3が閾値電圧Vth1以上となると、動作モードBはモード3に移行する。なお、モード1、2及び3は後に詳しく説明する。
ここで、動作モードがモード2からモード3に移行する判定基準として、平滑コンデンサ電圧Vcs2、Vcs3が閾値電圧Vth1以上となった瞬間にモード移行するものとしているが、平滑コンデンサ電圧Vcs2、Vcs3がVth1以上となった時刻から所定の時間経過後にモード移行しても構わない。
閾値電圧Vth1は低圧側電圧V1よりもやや小さい値(0.6〜0.9倍程度)に設定する。閾値電圧Vth1が極端に小さいとモード2に切り替えた時に、後述の通り共振回路に流れる電流値が大きくなる。逆に、閾値電圧Vth1がV1以上だとモード2に切り替えられないので、各種誤差要因を考慮して、V1よりもやや小さな値にする必要がある。
【0019】
図3は、VH端子−Vcom端子間の電圧V3がVL−Vcom端子間の電圧V1に等しい状態から、電圧V1の3倍の電圧目標値に昇圧する時のタイミングチャートを示す図である。
電圧指令値Vrefが電圧V1と等しく、VH端子−Vcom端子間の電圧V3の昇圧指令値が1倍の場合、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAと、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBは、共にモード1となっている。電圧指令値VrefがV1×3となり、昇圧指令値が3倍になると、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAと、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBが共にモード2となる。平滑コンデンサ電圧Vcs2が閾値電圧Vth1以上となると、動作モードAはモード3に、平滑コンデンサ電圧Vcs3が閾値電圧Vth1以上となると、動作モードBはモード3に、それぞれ移行する。
【0020】
次に、ゲート信号生成手段1A、1Bの詳細動作について説明する。
図4は、動作モード判定手段100から入力される動作モードがモード1の時に、ゲート信号生成手段が出力するゲート信号波形を示す図である。ここでは、ゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)がHighの時に、それぞれ対応したMOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)がONとなるものとして説明する。
動作モードがモード1の時、平滑コンデンサCs1に接続されるMOSFET(S1L、S1H、S4L、S4H)のゲート信号(G1L、G1H、G4L、G4H)はLowで固定される。逆に、平滑コンデンサCs1以外の平滑コンデンサ(Cs2、Cs3)に接続されるMOSFET(S2L、S2H、S3L、S3H)のゲート信号(G2L、G2H、G3L、G3H)はHighで固定される。
このようなゲート信号波形を出力することで、動作モードAがモード1の時は平滑コンデンサCs2の電圧検出値Vcs2はゼロとなり、中間出力端子の電圧VMは低圧出力端子の電圧VLと等しくなる。同じく、動作モードBがモード1の時は平滑コンデンサCs3の電圧検出値Vcs3はゼロとなり、高圧出力端子の電圧VHは中間出力端子の電圧VMと等しくなる。また、動作モードAと動作モードBが共にモード1の場合は、平滑コンデンサCs2、Cs3の電圧検出値Vcs2、Vcs3は共にゼロとなるため、高圧出力端子の電圧VHは低圧出力端子の電圧VLと等しくなり、昇圧比は1倍となる。
【0021】
次に、定常昇圧モードとしてのモード3の動作について説明する。
図5は、動作モード判定手段100から入力される動作モードがモード3の時に、ゲート信号生成手段1A、1Bが出力するゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)と、LC直列体LCr1、LCr2を流れる電流、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を流れる電流を示す図である。電流の極性は、MOSFETはドレインからソースに流れる方向を正、LC直列体は高電位側のブリッジ回路から低電位側のブリッジ回路に流れる方向を正とした。
ゲート信号G1L、G1H、G4L、G4Hは、Lr1とCr1によるLC直列回路にて定まる共振周期Trよりもやや大きな周期Ts0でデューティー約50%のオンオフ信号であり、MOSFETはゲート信号がHighの時にオンとなる。
ゲート信号G1L、G4LがHighとなりS1L、S4Lがオン状態となると、平滑コンデンサCs1、Cs2に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1、Cr2に移行する。
Cs1⇒S2L⇒Lr1⇒Cr1⇒S1L
Cs1⇒Cs2⇒S3L⇒Lr2⇒Cr2⇒S4L
次いで、ゲート信号G1H、G4HがHighとなりS1H、S4Hがオン状態となると、コンデンサCr1、Cr2に充電されたエネルギが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs2、Cs3に移行する。
S1H⇒Cr1⇒Lr1⇒S2H⇒Cs2
S4H⇒Cr2⇒Lr2⇒S3H⇒Cs3⇒Cs2
【0022】
このように、コンデンサCr1、Cr2の充放電により、平滑コンデンサCs1、Cs2から平滑コンデンサCs2、Cs3にエネルギを移行する。そして、電圧端子VLとVcom間に入力された電圧V1を、約2倍に昇圧された電圧V2にして電圧端子VMとVcom間に出力し、約3倍に昇圧された電圧V3にして電圧端子VHとVcom間に出力する。ここで、各コンデンサCr1、Cr2は、インダクタLr1、Lr2が直列に接続されてLC直列回路を構成するため、上記エネルギの移行は共振現象を利用したものとなり、大きなエネルギ量を効率よく移行できる。また、MOSFETの通電電流がゼロの状態でスイッチング(ゼロ電流スイッチング)するため、高効率の直流/直流電力変換動作が可能となる。
なお、各MOSFETには寄生ダイオードが形成されているため、MOSFET(S2L、S2H、S3L、S3H)のゲート制御信号G2L、G2H、G3L、G3Hは、原則不要である。ただし、図5に示すように、MOSFETの同期整流作用を利用し、寄生ダイオード導通時に各MOSFETをオンさせるようなゲート制御信号を入力すれば、MOSFETのオン電圧が低下するため、MOSFETの損失低減が可能となる。
また、図5において、TdはMOSFET(S1L、S1H)の同時導通による短絡防止のためのデッドタイムである。Td2はエネルギ逆流防止のための動作遅れ時間である。基本的には起こらないが、コンデンサCr1の電圧がコンデンサCs1の電圧よりも高い時に、S2LがS1Lよりも先にONしてしまうとエネルギ逆流現象が起こり得る。この場合の電流経路は下記となる。
Cr1→Lr1→S2L→Cs1→S1L(ダイオード)
【0023】
動作モード3において、スイッチング周期Ts0を、インダクタLrとコンデンサCrによるLC直列回路にて定まる共振周期Trよりもやや大きな値とした理由について説明する。
スイッチング周期Ts0が共振周期Trよりも小さいと、LC直列回路に流れる電流がゼロになる前にMOSFETをターンオフすることになるため、ターンオフ損失とスイッチングサージ電圧がMOSFETに発生する。また、インダクタLrの励磁エネルギが残っている状態でMOSFETをターンオンすることになるので、ターンオン損失とスイッチングサージ電圧がMOSFETに発生する。ターンオン損失とターンオフ損失は、DC/DC電力変換装置の効率を悪化させるだけでなく、MOSFETを冷却するためのヒートシンクやファンの大型化による高コスト化要因となる。
動作モード3において、スイッチング周期Ts0が共振周期Trに比べて十分大きくなった時のデメリットについて説明する。スイッチング周期Ts0が大きくなると、単位時間当たりに電力移行を行う回数が減少するため、一定電力伝送条件で比較した場合、LC直列回路やMOSFETに流れる電流値が増加する。具体的には、スイッチング周期Ts0がk倍となった場合、一定の電力を伝送する条件では、LC直列回路やMOSFETに流れる電流実効値は、√(k)倍となり、MOSFETやLC直列回路の導通損失はk倍となる。導通損失の増加は、直流/直流電力変換装置の効率を悪化させるだけでなく、MOSFETを冷却するためのヒートシンクやファンの大型化による高コスト化要因となる。
このように、スイッチング周期Ts0が共振周期Trよりも小さくても、スイッチング周期Ts0が共振周期Trより大きすぎても、DC/DC電力変換装置の効率を悪化させる要因となるため、スイッチング周期Ts0は、共振周期Trよりもやや大きな値(1倍〜1.5倍程度)が最適条件となる。
【0024】
これまで定常動作としての動作モード3について説明したが、以下では過渡動作としての動作モード3について説明する。定常動作では、平滑コンデンサCs2及びCs3の電圧Vcs2及びVcs3が、平滑コンデンサCs1の電圧Vcs1とほぼ等しくなるため、モード3の動作を行うことで、ゼロ電流スイッチングによる高効率な昇圧動作が可能となる。しかし、平滑コンデンサ電圧Vcs2又はVcs3が、Vcs1よりも極端に低い状態でモード3の動作を行うと、MOSFETやエネルギ移行素子として機能するLC直列体に過大な電流が流れてしまう。以下、その現象について説明する。
ここでは、説明を簡単にするため、昇圧指令値が1倍から2倍に変化した直後について説明する。この条件では、動作モードBは常にモード1となるため、平滑コンデンサCs3の電圧Vcs3はゼロ、動作モードAはモード1からモード3に変化するので、平滑コンデンサCs2の初期電圧はほぼゼロとなる。また、LC直列回路にて定まる共振周期Trとスイッチング周期Ts0が一致しており、平滑コンデンサCs2の容量はエネルギ移行用コンデンサCr1の容量に比べ、十分大きいものとして説明する。
【0025】
ゲート信号G1LがHighとなりMOSFET(S1L)がオン状態になった時、平滑コンデンサCs1からコンデンサCr1に流れる電流Icr(t)は、式1、式2で表すことができる。
なお、式1及び式2は、MOSFET(S2L)、インダクタLr1、コンデンサCr1、MOSFET(S1L)からなるRLC直列回路に直流電圧Vを瞬時に加えた場合の微分方程式
Ri+L(di/dt)+q/c=Eの解である、
i=E/(ωL)×e−αtsin(ωt)に基づくものである。
ただし、R<4L/C であって、α=R/(2L)、ω=√{1/(LC)−(R/(2L))}。
【0026】
【数1】

【0027】
【数2】

【0028】
上記式1及び式2において、RはコンデンサCs1、MOSFET(S2L)、インダクタLr1、コンデンサCr1、MOSFET(S1L)の合計抵抗成分、Vcr0はモード3に移行する直前のコンデンサCr1の初期電圧である。また、コンデンサ電流Icr(t)の符号は、図1においてインダクタLr1からコンデンサCr1に流れる方向を正とした。平滑コンデンサCs1からエネルギ移行用コンデンサCr1にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧Vcraは、式3、式4で表すことができる。
【0029】
【数3】

【0030】
【数4】

【0031】
平滑コンデンサCs2の電圧Vcs2がゼロの時、エネルギ移行用コンデンサCr1の初期電圧Vcr0もゼロとなるので、コンデンサCr1の電圧Vcraは式5で表される。
【0032】
【数5】

【0033】
次に、S1Lがオフ、S1Hがオンになると、コンデンサCr1に蓄えられたエネルギは、上段の平滑コンデンサCs2に移行する。このとき、エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCs2に流れる電流Icr(t)は、式6で表され、エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCr2にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧Vcrbは、式7で表される。
【0034】
【数6】

【0035】
【数7】

【0036】
平滑コンデンサCs2の電圧Vcs2がほぼゼロの時は、V2=V1となるので、エネルギ移行動作を1回動作させた直後のコンデンサCr1の電圧Vcrbは、式8となる。
【0037】
【数8】

【0038】
式3、式5、式8より、エネルギ移行動作をN回動作させた直後のコンデンサCr1の電圧VcrNは、式9で表すことができる。
【0039】
【数9】

【0040】
Aは正の値(0<A<1)となるため、式9は、エネルギ移行動作を繰り返す毎にコンデンサCr1の電圧振幅は増大していくことを意味している。コンデンサCr1の電圧振幅が増加すると、式1より、コンデンサCr1に流れる電流Icrは増加するため、エネルギ移行動作を繰り返す毎に電流が増加することになる。
このように、平滑コンデンサ電圧Vcs2が、Vcs1よりも極端に低い状態において、動作モードAをモード3にすると、MOSFET(S1L、S1H、S2L、S2H)やエネルギ移行素子として機能するLC直列体LCr1に過大な電流が流れてしまい、過電流による素子破壊が起きる可能性がある。同様に、平滑コンデンサ電圧Vcs3が、Vcs1よりも極端に低い状態で動作モードBをモード3にすると、MOSFET(S4L、S4H、S3L、S3H)やエネルギ移行素子として機能するLC直列体LCr2に過大な電流が流れてしまい、過電流による素子破壊が起きる可能性がある。
【0041】
本実施の形態では、平滑コンデンサ電圧Vcs2、Vcs3が、入力電圧Vcs1に比べて十分小さい場合には、過電流による素子破壊を防止するために動作モードをモード2とする。以下、モード2の動作について説明する。
図6は、動作モード判定手段100から入力される動作モードがモード2の時に、ゲート信号生成手段1A、1Bが出力するゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)と、LC直列体LCr1、LCr2を流れる電流、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を流れる電流を示す図である。モード2とモード3の違いは、モード2のスイッチング周期Ts1を、モード3のスイッチング周期Ts0よりも大きくした点である。
【0042】
モード2の動作について、電流経路を交えて説明する。ここでは説明を簡単にするため、昇圧指令値が1倍から2倍に変化した直後について説明する。この条件では、動作モードBは常にモード1となるため、平滑コンデンサCs3の電圧Vcs3はゼロ、動作モードAはモード1からモード2に変化するので、平滑コンデンサCs2の初期電圧はほぼゼロとなる。
ゲート信号G1LがHighとなりS1Lがオン状態となると、平滑コンデンサCs1に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs1⇒S2L⇒Lr1⇒Cr1⇒S1L
平滑コンデンサCs1からエネルギ移行用コンデンサCr1にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧Vcraは、前述の式5で表され、V2<Vcraとなるため、コンデンサCr1に蓄えられたエネルギは、MOSFET(S1L、S2H)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路で平滑コンデンサCs1、Cs2に移行する。
Cr1⇒Lr1⇒S2H⇒Cs2⇒Cs1⇒S1L
【0043】
エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCs1、Cs2にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧Vcrcは、式10で表される。
【0044】
【数10】

【0045】
平滑コンデンサCs2の電圧Vcs2がほぼゼロの時はV2=V1、Aは正の値(0<A<1)となるため、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧Vcrcは正の値となる。この時、MOSFET(S1L)のゲート信号G1Lをオフにしておくことで、LC直列体LCr1の電流はゼロとなる。
次に、ゲート信号G1HがHighとなりS1Hがオン状態となると、コンデンサCr1に充電されたエネルギが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs2に移行する。
Cr1⇒Lr1⇒S2H⇒Cs2⇒S1H
エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCs1にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧Vcrdが正の値となった場合は、LC直列体LCr1の電流はゼロとなる。電圧Vcrdが負の値となった場合は、MOSFET(S1H、S2L)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路でコンデンサCr1に電流が流れ、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧は最終的には正の値となる。
Cr1⇒S1H⇒S2L⇒Lr1
【0046】
このように、動作モード2では、スイッチング周期Ts1を共振周期Trの2倍以上に設定し、スイッチング半周期毎にLC共振を1周期分動作させることで、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧Vcr1を下げた状態でMOSFET(S1L、S1H)のスイッチング動作を行うことができる。その結果、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧振幅を抑えることができ、平滑コンデンサ電圧Vcs2が、平滑コンデンサ電圧Vcs1よりも極端に低い状態においても、モード3で問題となったコンデンサ電流Icr1の増大を防止することが可能となる。また、MOSFET(S1L、S1H)の通電電流がゼロの時にスイッチングできるため、ゼロ電流スイッチングが可能となり、高効率のDC/DC電力変換動作が可能となる。
これまで、動作モードAがモード2の時の説明をしてきたが、動作モードBがモード2の時の動作も同様であり、エネルギ移行用コンデンサ電流Icr2の増大防止による安定動作と、MOSFET(S4L、S4H)のゼロ電流スイッチングによる高効率動作が可能となる。
【0047】
以上のように、本実施の形態1では、半導体スイッチング素子(S1L〜S4L、S1H〜S4H)のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段(1A、1B)と、平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段(31〜33)と、平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段100とを備え、ゲート信号生成手段(1A、1B)は、動作モード判定手段100によって判定された動作モードに応じてゲート信号パターンを変化させることで、電圧指令値Vrefに応じた電圧V3を安定的に出力することが可能となる。
【0048】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置について説明する。
この発明の実施の形態2によるDC/DC電力変換装置の回路構成は、この発明の実施の形態1(図1)と同じで、制御方式が異なる。図7は、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3がVL−Vcom端子間電圧V1に等しい状態から、電圧V1の2倍、および、電圧V1の3倍の電圧に昇圧する時のタイミングチャートを示す図である。実施の形態1との相違点は、平滑コンデンサCs2又はCs3の電圧検出値Vcs2又はVcs3が、それぞれ電圧目標値V1よりも低い状態の動作モードとして、実施の形態1で説明したモード2ではなく次に述べるモード4を用いている点である。
【0049】
以下、実施の形態2のモード4の動作について説明する。
図8は、動作モード判定手段100から入力される動作モードがモード4の時に、ゲート信号生成手段1A、1Bが出力するゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)と、LC直列体LCr1、LCr2を流れる電流、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を流れる電流を示す図である。図中のTs2はモード4のスイッチング周期で、モード2同様、インダクタLrとコンデンサCrによるLC直列回路にて定まる共振周期Trの2倍以上の値としている。また、図中のTon2はMOSFET(S1L、S4L)のオン時間で、LC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下の値としている。
【0050】
モード4の動作について、電流経路を交えて説明する。ここでは説明を簡単にするため、昇圧指令値が1倍から2倍に変化した直後について説明する。この条件では、動作モードBは常にモード1となるため、平滑コンデンサCs3の電圧Vcs3はゼロ、動作モードAはモード1からモード4に変化するので、平滑コンデンサCs2の初期電圧はほぼゼロとなる。
ゲート信号G1LがHighとなりMOSFET(S1L)がオン状態となると、平滑コンデンサCs1に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs1⇒S2L⇒Lr1⇒Cr1⇒S1L
【0051】
モード4では、LC直列回路に流れる電流がゼロになる前に、MOSFET(S1L)をターンオフさせる。この時、電流通電状態でMOSFETをターンオフするため、MOSFET(S1L)にはターンオフ損失とスイッチングサージ電圧が発生する。MOSFET(S1L)のターンオフ直後はインダクタLr1の励磁エネルギがあるため、インダクタLr1の励磁エネルギが、MOSFET(S1H、S2L)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Lr1⇒Cr1⇒S1H⇒S2L
この時、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧がVM端子−Vcom端子間の電圧V2以下となるように、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton2を設定しておくことで、LC直列回路に流れる電流はゼロとなる。
【0052】
次に、MOSFET(S1H)をオンすると、コンデンサCr1に蓄えられたエネルギは、以下に示す経路でコンデンサCs2に移行する。
Cr1⇒Lr1⇒S2H⇒Cs2⇒S1H
エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCs2にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧が正の値となった場合は、LC直列体LCr1の電流はゼロとなる。コンデンサCr1の電圧が負の値となった場合は、MOSFET(S1H、S2L)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路でコンデンサCr1に電流が流れ、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧は最終的には正の値となる。
Cr1⇒S1H⇒S2L⇒Lr1
【0053】
このように、動作モード4では、スイッチング周期Ts2をLC直列回路にて定まる共振周期Trよりも大きくし(好ましくはTrの2倍以上とし)、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2をLC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下にすることで、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧振幅を抑えることができ、平滑コンデンサ電圧Vcs2が、Vcs1よりも極端に低い状態においても、安定した直流/直流電力変換動作が可能となる。
【0054】
なお、動作モード4では、MOSFET(S1L)の電流通電状態でターンオフ動作を行うため、MOSFET(S1L)にターンオフ損失と、ターンオフ時のスイッチングサージ電圧がMOSFET(S1L)に発生する。これに対しては、ターンオフ損失・スイッチングサージ電圧ともに許容しうる電流値となるように、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2を設定すればよい。
ターンオン動作に関しては、全てのMOSFETは必ずゼロ電流状態でターンオン動作をすることになるため、ターンオン損失やスイッチングサージ電圧はほぼゼロとなる。これは、スイッチング周期Ts2はLC直列回路にて定まる共振周期Trの2倍以上に設定しているため、MOSFETがオンするまでに、LC直列回路LCr1に流れる電流は必ずゼロになるためである。
【0055】
次に、動作モード4の別のパターンとして、動作モード4aの動作説明図を図9に示す。図9は、ゲート信号生成手段1A、1Bが出力するゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)と、LC直列体LCr1、LCr2を流れる電流、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を流れる電流を示している。図中、Ts3は動作モード4aのスイッチング周期で、インダクタLrとコンデンサCrによるLC直列回路にて定まる共振周期Trよりも大きな値としている。Ton2は、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間で、動作モード4と同様、LC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下の値としている。Ton3はMOSFET(S1H、S4H)のオン時間で、モード2やモード3のオン時間Tonと同じかやや長い時間にしている。
【0056】
動作モード4aと動作モード4の一番の相違点は、Low側MOSFET(S1L、S4L)のターンオフした直後に、High側MOSFET(S1H、S4H)をターンオンしている点である。このような動作にすることのメリットは主に2つある。
第1のメリットは、インダクタLrからコンデンサCrへのエネルギ移行期間の間に、MOSFET(S1H、S4H)をオンさせておくことで、同期整流作用によりMOSFET(S1H)のオン電圧が低下し、損失低減が可能となることである。
第2のメリットは、動作モード4aのスイッチング周期Ts3は、動作モード4のスイッチング周期Ts2よりも短くできるため、単位時間当たりの伝送電力量が増加することである。単位時間当たりの伝送電力量が増加すると、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3の電圧遷移時間が短くなるため、直流/直流電力変換装置としての応答性が向上する。
【0057】
次に、単位時間当たりの伝送電力量をさらに増加するため、平滑コンデンサ電圧(Vcs1、Vcs2、Vcs3)に応じて、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton2を変化させる方法について説明する。これまで同様、説明を簡単にするため、昇圧指令値が1倍から2倍となり、動作モードAがモード1からモード4、動作モードBがモード1の時について説明する。
【0058】
ゲート信号G1LがHighとなりS1Lがオン状態になった時、平滑コンデンサCs1からコンデンサCr1に流れる電流Icr(t)は、前述の式1、式2で表される。ここで、MOSFET(S1L)のオン時間がLC直列回路にて定まる共振周期Trに比べて十分小さいとすると、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧振幅は小さく、エネルギ移行動作が一巡した後のコンデンサ電圧Vcr1は、平滑コンデンサCs2の電圧Vcs2とほぼ同じ値と考えられる。その結果、MOSFET(S1L)に流れるピーク電流Icr(max)は、近似的に式11で表すことができる。
【0059】
【数11】

【0060】
ここで、LrはインダクタLr1のインダクタンス値、Vcs1は平滑コンデンサCs1の電圧、Vcs2は平滑コンデンサCs2の電圧、Ton2はMOSFET(S1L)のオン時間である。式11より、MOSFET(S1L)のピーク電流Icr(max)は、平滑コンデンサ電圧Vcs2に依存することを示しており、オン時間が一定の場合、平滑コンデンサ電圧Vcs2が上昇するにつれて、ピーク電流Icr(max)は減少する。ピーク電流が減少すると伝送電力量が減少するため、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3の電圧遷移時間が増加し、DC/DC電力変換装置としての応答性が低下する。
【0061】
伝送電力量を減少させないためには、ピーク電流Icr(max)が一定となるように、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2を変化させる必要がある。式12に、MOSFET(S1L)のピーク電流を一定にするための、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2を示す。
【0062】
【数12】

【0063】
ここで、Vcs2(ref)は、平滑コンデンサCs2の目標電圧で、動作モード4では、Vcs2(ref)=Vcs1となる。式12で示したように、平滑コンデンサ電圧Vcs2が上昇するにつれて、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2を増加させることで、MOSFET(S1L)のピーク電流Icr(max)をほぼ一定にすることが可能となる。
なお、動作モードBがモード4の時の動作も同様であり、平滑コンデンサ電圧Vcs3が上昇するにつれて、MOSFET(S4L)のオン時間Ton2を増加させることで、MOSFET(S4L)のピーク電流Icr(max)をほぼ一定にすることが可能となる。
【0064】
図10に、MOSFET(S1L)のオン時間Ton2を一定にした時と、オン時間Ton2を平滑コンデンサ電圧に応じて可変した時の、電圧指令値Vrefと出力電圧V3の推移のイメージを示す。Ton2一定時は、出力電圧V3が上昇するにつれて電圧上昇率が低下するため、目標電圧に到達するまでの時間が長くなる。Ton2可変時は、出力電圧V3が上昇しても電圧上昇率はほぼ一定となるため、目標電圧に到達するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0065】
以上のように、本実施の形態2では、平滑コンデンサ電圧Vcs2、Vcs3が入力電圧Vcs1に比べて十分小さい時の動作モードとして、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton2をLC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下で動作させることで、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧振幅を抑えることができ、エネルギ移行用コンデンサ電流Icr2の増大防止による安定動作が可能となる。また、平滑コンデンサの電圧指令値Vrefと平滑コンデンサ電圧Vcs2、Vcs3の差に応じて、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton2を変化させることで、MOSFET(S1L、S4L)のピーク電流を増やさずに単位時間当たりの伝送電力量を増加できるため、DC/DC電力変換装置としての応答性を向上することが可能となる。
【0066】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置について説明する。
この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置の回路構成は、この発明の実施の形態1と同じ(図1)で、制御方式が異なる。図11は、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3がVL−Vcom端子間電圧V1の3倍の状態から、V1の2倍、および、V1と同じ電圧に電圧を下げる時のタイミングチャートを示す図である。
【0067】
電圧指令値VrefがV1×3で、VH端子−Vcom端子間の電圧V3の昇圧指令値が3倍の場合、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAと、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBは、共にモード3となっている。電圧指令値VrefがV1×2になり、昇圧指令値が2倍になると、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBのみがモード5となり、平滑コンデンサCs3の電圧目標値がゼロとなる。そして、平滑コンデンサCs3の電圧検出値Vcs3が閾値電圧Vth2以下になると、動作モードBはモード1に移行する。次に、電圧指令値VrefがV1になり、昇圧指令値が1倍になると、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAのみがモード5となり、平滑コンデンサCs2の電圧目標値がゼロとなる。そして、平滑コンデンサCs2の電圧検出値Vcs2が閾値電圧Vth2以下となると、動作モードAはモード1に移行する。
ここで、動作モードがモード5からモード1に移行する判定基準として、平滑コンデンサ電圧Vcs2やVcs3が閾値電圧Vth2以下となった瞬間にモード移行するものとして図示しているが、平滑コンデンサ電圧がVth2以下となった時刻から所定の時間経過後にモード移行しても構わない。
【0068】
以下、実施の形態3のモード5の動作について説明する。
図12は、動作モード判定手段100から入力される動作モードがモード5の時に、ゲート信号生成手段1A、1Bが出力するゲート信号波形(G1L〜G4L、G1H〜G4H)と、LC直列体LCr1、LCr2を流れる電流、各MOSFET(S1L〜S4L、S1H〜S4H)を流れる電流を示す図である。図中のTs4はモード5のスイッチング周期で、インダクタLrとコンデンサCrによるLC直列回路にて定まる共振周期Trの2倍以上の値としている。また、図中のTon4はMOSFET(S1L、S4L)のオン時間で、LC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下の値としている。
【0069】
モード5の動作について、電流経路を交えて説明する。ここでは説明を簡単にするため、昇圧指令値が2倍から1倍に変化した時について説明する。この条件では、動作モードBは常にモード1となるため平滑コンデンサCs3の電圧Vcs3はゼロ、動作モードAはモード3からモード5に変化するので、平滑コンデンサCs2の初期電圧はV1、エネルギ移行用コンデンサCr1の初期電圧はV1にほぼ等しい値となる。
【0070】
ゲート信号G2HがHighとなりMOSFET(S2H)がオン状態となると、平滑コンデンサCs2に蓄えられたエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs2⇒S2H⇒Lr1⇒Cr1⇒S1H
LC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1の時間が経過すると、LC直列回路LCr1に流れる電流はゼロになる。LC直列回路LCr1に流れる電流がゼロになった後、ゲート信号G1LをHighとし、MOSFET(S1L)がオン状態となると、平滑コンデンサCs1と平滑コンデンサCs2に蓄えられたエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs1⇒Cs2⇒S2H⇒Lr1⇒Cr1⇒S1L
【0071】
モード5では、LC直列回路に流れる電流がゼロになる前に、MOSFET(S1L)をターンオフさせる。この時、電流通電状態でMOSFETをターンオフするため、MOSFET(S1L)にはターンオフ損失とスイッチングサージ電圧が発生する。MOSFET(S1L)のターンオフ直後はインダクタLr1の励磁エネルギがあるため、平滑コンデンサCs2に蓄えられたエネルギとインダクタLr1の励磁エネルギが、MOSFET(S1H)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs2⇒S2H⇒Lr1⇒Cr1⇒S1H
この時、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧がVM端子−Vcom端子間の電圧V2以下となるように、MOSFET(S1L)のオン時間Ton4を設定しておくことで、LC直列回路に流れる電流はゼロとなる。
【0072】
次に、MOSFET(S2L)をオンすると、コンデンサCr1に蓄えられたエネルギは、以下に示す経路で平滑コンデンサCs1に移行する。
Cr1⇒Lr1⇒S2L⇒Cs1⇒S1L
この時、MOSFET(S1L)には寄生ダイオードが形成されているため、ゲート制御信号G1Lは原則不要だが、寄生ダイオード導通時にオンさせるようなゲート制御信号G1Lを入力すれば、MOSFETの同期整流作用によるオン電圧低下により、MOSFET(S1L)の損失低減が可能となる。エネルギ移行用コンデンサCr1から平滑コンデンサCs2にエネルギが移行した直後のコンデンサCr1の電圧が正の値となった場合は、LC直列体LCr1の電流はゼロとなる。コンデンサCr1の電圧が負の値となった場合は、MOSFET(S1H、S2L)の寄生ダイオードを通って、以下に示す経路でコンデンサCr1に電流が流れ、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧は最終的には正の値となる。
Cr1⇒S1H⇒S2L⇒Lr1
【0073】
このように、動作モードAをモード5で動作させることで、高電位側に配置された平滑コンデンサCs2から低電位側に配置された平滑コンデンサCs1にエネルギを移行できるため、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3を、V1×2倍からV1×1倍に下げることができる。同様に、動作モードBをモード5で動作させることで、高電位側に配置された平滑コンデンサCs3から低電位側に配置された平滑コンデンサCs1にエネルギを移行できるため、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3を、V1×3倍からV1×2倍に下げることができる。
【0074】
なお、動作モード5では、MOSFET(S1L、S4L)の電流通電状態でターンオフ動作を行うため、MOSFET(S1L、S4L)にターンオフ損失と、ターンオフ時のスイッチングサージ電圧が発生する。これに対しては、ターンオフ損失・スイッチングサージ電圧ともに許容しうる電流値となるように、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton4を設定すればよい。ターンオン動作に関しては、全てのMOSFETは必ずゼロ電流状態でターンオン動作をすることになるため、ターンオン損失やスイッチングサージ電圧はほぼゼロとなる。
【0075】
次に、単位時間当たりの伝送電力量をさらに増加するため、平滑コンデンサ電圧(Vcs1、Vcs2、Vcs3)に応じて、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton4を変化させる方法について説明する。ここでは説明を簡単にするため、昇圧指令値が2倍から1倍となり、動作モードAがモード3からモード5、動作モードBがモード1の時について説明する。
【0076】
ゲート信号G1LがHighとなりMOSFET(S1L)がオン状態になった時、平滑コンデンサCs1からコンデンサCr1に流れる電流Icr(t)は、式13と前述の式2で表される。
【0077】
【数13】

【0078】
ここで、RはCs1、Cs2、S2H、Lr1、Cr1、S1Lの合計抵抗成分、Vcr0はMOSFET(S1L)がオンする直前のコンデンサCr1の初期電圧である。また、コンデンサ電流Icr(t)の符号は、図1においてインダクタLr1からコンデンサCr1に流れる方向を正とした。MOSFET(S1L)のオン時間がLC直列回路にて定まる共振周期Trに比べて十分小さいとすると、エネルギ移行用コンデンサCr1の電圧振幅は小さく、MOSFET(S1L)がオンする直前のコンデンサ電圧Vcr0は、平滑コンデンサCs1の電圧Vcs1とほぼ同じ値と考えられる。その結果、MOSFET(S1L)に流れるピーク電流Icr(max)は、式14で近似的に表すことができる。
【0079】
【数14】

【0080】
ここで、LrはインダクタLr1のインダクタンス値、Vcs2は平滑コンデンサCs2の電圧、Ton4はMOSFET(S1L)のオン時間である。式14より、MOSFET(S1L)のピーク電流Icr(max)は、平滑コンデンサ電圧Vcs2に比例することを示しており、オン時間が一定の場合、平滑コンデンサ電圧Vcs2が減少するにつれて、ピーク電流Icr(max)は減少する。ピーク電流が減少すると伝送電力量が減少するため、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3の電圧遷移時間が増加し、直流/直流電力変換装置としての応答性が低下する。
【0081】
平滑コンデンサ電圧Vcs2に応じて、MOSFET(S1L)のオン時間Ton4を変化させることで、ピーク電流Icr(max)を一定にすることでき、伝送電力量の減少を抑制することができる。式15に、MOSFET(S1L)のピーク電流を一定にするための、MOSFET(S1L)のオン時間Ton4を示す。
【0082】
【数15】

【0083】
ここで、Vcs2(ref)は、平滑コンデンサCs2の目標電圧で、動作モード5では、Vcs2(ref)はゼロとなる。式15で示したように、MOSFET(S1L)のオン時間Ton4を、平滑コンデンサ電圧Vcs2に反比例させることで、MOSFET(S1L)のピーク電流Icr(max)をほぼ一定にすることが可能となる。動作モードBがモード5の時の動作も同様であり、MOSFET(S4L)のオン時間Ton4を、平滑コンデンサ電圧Vcs3に反比例させることで、MOSFET(S4L)のピーク電流Icr(max)をほぼ一定にすることが可能となる。
MOSFET(S1L、S4L)のピーク電流Icr(max)をほぼ一定にすることで、伝送電力量の減少を抑制することができ、目標電圧に到達するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0084】
以上のように、本実施の形態3では、昇圧比を下げる時の過渡動作モードとして、MOSFET(2H、3H)のオンしている期間内に、MOSFET(S1L、S4L)をLC直列回路にて定まる共振周期Trの2分の1以下の時間オンさせることで、高電位側に配置された平滑コンデンサから低電位側に配置された平滑コンデンサにエネルギ移行を行うことが可能となる。また、平滑コンデンサの電圧指令値Vrefと平滑コンデンサ電圧Vcs2又はVcs3の差に応じて、MOSFET(S1L、S4L)のオン時間Ton4を変化させることで、単位時間当たりの伝送電力量を増加でき、DC/DC電力変換装置としての応答性を向上することが可能となる。
【0085】
実施の形態4.
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したDC/DC電力変換装置(図1)と同じ構成及び動作モードを有する装置において、低圧側電圧(VL−Vcom間電圧)が大きく変動した場合の制御方法について説明する。
【0086】
第1の場合として、初期状態は、VL−Vcom端子間の電圧検出値Vcs1が150V、電圧指令値Vrefが300Vとする。動作モード判定手段100は、電圧指令値Vref及び電圧検出値Vcs1に基づき、昇圧指令値は2倍と判断し、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAはモード3、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBはモード1とする。
ここで、VL−Vcom端子間の電圧検出値Vcs1が150Vから100Vに減少した場合、動作モード判定手段100は昇圧指令値を2倍から3倍に変更し、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAはモード3を維持、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBはモード1からモード2(若しくはモード4、モード4a)を経由してモード3に移行する。その結果、VH−Vcom端子間の電圧は300Vとなり、低圧側電圧(VL−Vcom端子間の電圧)の減少による高圧側電圧(VH−Vcom端子間の電圧)の減少を低減することが可能となる。高圧側電圧が異常に減少するのを防止することで、高圧側電圧に接続される機器への影響を低減することが可能になる。
このように、動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと電圧検出値Vcs1に応じて昇圧指令値を決定することで、低圧側電圧(VL−Vcom間電圧)が極端に低下した場合においても、高圧側電圧(VH−Vcom間電圧)の変動を低減し、所望の値を維持することが可能となる。
【0087】
第2の場合として、初期状態は、VL−Vcom端子間の電圧検出値Vcs1が100V、電圧指令値Vrefが300Vとする。動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと電圧検出値Vcs1より、昇圧指令値は3倍と判断し、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAとゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBは共にモード3とする。
ここで、VL−Vcom端子間の電圧検出値Vcs1が100Vから150Vに増加した場合、動作モード判定手段100は昇圧指令値を3倍から2倍に変更し、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAはモード3を維持、ゲート信号生成手段1Bに出力される動作モードBはモード3からモード5を経由してモード1に移行する。その結果、VH−Vcom端子間電圧は300Vとなり、低圧側電圧(VL−Vcom端子間の電圧)の増加による高圧側電圧(VH−Vcom端子間の電圧)の増加を低減することが可能となる。高圧側電圧が異常に上昇するのを防止することで、高圧側電圧に接続される部品の耐圧を下げることが可能になる。
このように、動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと電圧検出値Vcs1に応じて昇圧指令値を決定することで、低圧側電圧(VL−Vcom間電圧)が異常に上昇した場合においても、高圧側電圧(VH−Vcom間電圧)の変動を低減し、所望の値に維持することが可能となる。
【0088】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図である。図13のDC/DC電力変換装置の回路構成は、図1のDC/DC電力変換装置の回路構成と比較して、第1のブリッジ回路の中間端子と第2のブリッジ回路の中間端子との間のLC直列体の接続態様が相違する。
【0089】
すなわち、第1のブリッジ回路A11内の2つのMOSFET(S1L、S1H)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路A2内の2つのMOSFET(S2L、S2H)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCr1とインダクタLr1の直列体で構成されるLC直列体LCr1を接続する。そして、第1のブリッジ回路A11内の2つのMOSFET(S1L、S1H)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路A3内の2つのMOSFET(S3L、S3H)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCr2とインダクタLr2の直列体で構成されるLC直列体LCr2を接続する。
【0090】
そして、図13(b)に示すように、制御回路1は、動作モード判定手段100と、ゲート信号生成手段1Aによって構成されており、動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと、平滑コンデンサCs1、Cs2、Cs3の電圧検出値Vcs1、Vcs2、Vcs3に応じて、DC/DC電力変換装置の動作モードを判定する機能を有している。ここで、LC直列体を介してその中間端子を接続された第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路は、同じ動作モードとなるように構成されているので、第1のブリッジ回路A11と第2のブリッジ回路A2及びA3は動作モードAで動作させることとなる。
そして、ゲート信号生成手段1Aは、動作モードAに応じてMOSFET(S1L、S1H、S2L、S2H、S3L、S3H)を制御するためのゲート信号G1L、G1H、G2L、G2H、G3L、G3Hを生成し、ゲート駆動回路21、22、23に出力する。
【0091】
次に、動作モード判定手段100の動作について説明する。
まず、VH端子−Vcom端子間の電圧V3がVL−Vcom端子間の電圧V1に等しい状態から、V1の3倍の電圧に昇圧する場合について説明する。
電圧指令値VrefがV1と等しく、VH端子−Vcom端子間の電圧V3の昇圧指令値が1倍の場合、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAは、モード1となっている。電圧指令値VrefがV1×3となり、昇圧指令値が3倍になると、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAがモード2、4又は4aとなり、平滑コンデンサ電圧Vcs2が閾値電圧Vth1以上となると、動作モードAはモード3に移行する。なお、モード1、2、4、4a及び3は上記の実施の形態で説明した通りである。
次に、出力電圧としてのVH−Vcom端子間電圧V3がVL−Vcom端子間電圧V1の3倍の状態から、V1と同じ電圧に降圧する場合について説明する。
電圧指令値VrefがV1×3で、VH端子−Vcom端子間の電圧V3の昇圧指令値が3倍の場合、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAは、モード3となっている。電圧指令値VrefがV1になり、昇圧指令値が1倍になると、ゲート信号生成手段1Aに出力される動作モードAがモード5となり、平滑コンデンサ電圧Vcs2が閾値電圧Vth2以下となると、動作モードAはモード1に移行する。なお、モード5は上記の実施の形態で説明した通りである。
【0092】
以上のように、図13に示すDC/DC電力変換装置の回路構成においても、上記実施の形態と同様、高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段1Aと、平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段31、32、33と、平滑コンデンサの電圧指令値Vrefと電圧検出値Vcs1、Vcs2、Vcs3に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段100とを備え、ゲート信号生成手段1Aは、動作モード判定手段100によって判定された動作モードに応じてゲート信号パターンを変化させることにより、過電流を抑制した安定的な電圧遷移動作が可能となる。
【0093】
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図14は、この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す図であり、図15は図14のDC/DC電力変換装置の制御装置を示す図である。図14に示したDC/DC電力変換装置は、VH端子−Vcom端子間の電圧VnをV1端子−Vcom端子の電圧V1の約n倍、約(n−1)倍、・・・約1倍に昇圧した電圧を出力する機能を有する。同様に、Vk端子−Vcom端子間の電圧VkをV1端子−Vcom端子の電圧V1の約k倍、約(k−1)倍、・・・約1倍に昇圧した電圧を出力する機能を有する。ただし、k=2、・・・、nであり、nは2以上の整数である。
【0094】
図14において、DC/DC電力変換装置の主回路構成は、入出力電圧の平滑化とエネルギ移行のための電圧源として機能する第1平滑コンデンサCs1、第2平滑コンデンサCs2、・・・、第k平滑コンデンサCsk、・・・、第n平滑コンデンサCsnが直列接続されている。第1平滑コンデンサCs1の低圧側端子に基準電圧端子Vcomを、第1平滑コンデンサCs1の高圧側端子に第1出力端子V1を、第2平滑コンデンサCs2の高圧側端子に第2出力端子V2を、・・・、第n平滑コンデンサCsnの高圧側端子に高圧出力端子Vn(VH)を接続している。
低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしての2つのMOSFET(S11L、S11H)を直列接続した回路A11、・・・、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(S1mL、S1mH)を直列接続した回路A1mは、それぞれ第1平滑コンデンサCs1の両端子間に接続されることで、第1のブリッジ回路A11、・・・、A1mを構成している。ただし、mは1≦m≦n−1を満たす整数である。
また、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(S2L、S2H)を直列接続した回路A2は第2平滑コンデンサCs2の両端子間に接続され、・・・、低圧側スイッチ及び高圧側スイッチとしてのMOSFET(SnL、SnH)を直列接続した回路Anは第n平滑コンデンサCsnの両端子間に接続されることで、それぞれ第2のブリッジ回路A2、・・・、Anを構成している。
【0095】
第1のブリッジ回路A11内の2つのMOSFET(S11L、S11H)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路A2内の2つのMOSFET(S2L、S2H)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCr1とインダクタLr1の直列体で構成され、エネルギ移行素子として機能するLC直列体LCr1を接続する。同様に、第1のブリッジ回路A1m内の2つのMOSFET(S1mL、S1mH)の接続点となる中間端子と、第2のブリッジ回路An内の2つのMOSFET(SnL、SnH)の接続点となる中間端子との間に、コンデンサCrmとインダクタLrmの直列体で構成され、エネルギ移行素子として機能するLC直列体LCrmを接続する。この様に、第1のブリッジ回路内の2つのMOSFETの中間端子と、第2のブリッジ回路内の2つのMOSFETの接続点となる中間端子との間には、コンデンサCrとインダクタLrの直列体で構成され、エネルギ移行素子として機能するLC直列体が接続されている。ここで、図1の構成のように、第1のブリッジ回路内の中間端子から、第2のブリッジ回路内の中間端子へ1対1の対応でコンデンサとインダクタから成るLC直列体が接続されていても良い(この場合、m=n)し、上記実施の形態5で説明したように、1つの第1のブリッジ回路内の中間端子から、複数の第2のブリッジ回路内の中間端子へ、コンデンサとインダクタから成る複数のLC直列体が接続されている構成も可能である。したがって、mは1≦m≦n−1を満たす整数となる。
【0096】
次に、図14のDC/DC電力変換装置の周辺回路構成について説明する。ゲート駆動回路211〜21mは、制御回路1から入力される低電圧のゲート信号(G11L〜G1mL、G11H〜G1mH)を、第1のブリッジ回路内の各MOSFET(S11L〜S1mL、S11H〜S1mH)のソース電位基準の信号に電位レベルを変換する機能と、各MOSFET(S11L〜S1mL、S11H〜S1mH)をオン/オフ制御するために必要な電圧と電流を供給する駆動機能を有している。同様に、ゲート駆動回路22〜2nは、制御回路1から入力される低電圧のゲート信号(G2L〜GnL、G2H〜GnH)を、第2のブリッジ回路内の各MOSFET(S2L〜SnL、S2H〜SnH)のソース電位基準の信号に電位レベルを変換する機能と、各MOSFET(S2L〜SnL、S2H〜SnH)をオン/オフ制御するために必要な電圧と電流を供給する駆動機能を有している。電圧センサ31、32、・・・、3nは、それぞれ平滑コンデンサCs1、Cs2、・・・、Csnの両端子に接続され、各平滑コンデンサ電圧Vcs1、Vcs2、・・・、Vcsnを検出して制御回路1に伝達する。
【0097】
図15に示すように、制御回路1は、動作モード判定手段100と、ゲート信号生成手段1A、・・・、1Mによって構成されている。動作モード判定手段100は、電圧指令値Vrefと、平滑コンデンサCs1、Cs2、・・・、Csnの検出電圧Vcs1、Vcs2、・・・、Vcsnに応じて、DC/DC電力変換装置の動作モードを判定する機能を有している。LC直列体を介してその中間端子を接続された第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路は、同じ動作モードとなるように構成する。具体的には、第1のブリッジ回路A11と第2のブリッジ回路A2は動作モードA11で、・・・第1のブリッジ回路A1mと第2のブリッジ回路Anは動作モードA1mで動作させる。
ゲート信号生成手段1A、・・・、1Mは、動作モード判定手段100によって判定された動作モードに応じて、第1のブリッジ回路の各MOSFET(S11L〜S1mL、S11H〜S1mH)を制御するためのゲート信号及び第2のブリッジ回路の各MOSFET(S2L〜SnL、S2H〜SnH)を制御するためのゲート信号を生成する手段を有している。具体的には、ゲート信号生成手段1Aは、動作モードA11に応じてMOSFET(S11L、S11H、S2L、S2H)を制御するためのゲート信号G11L、G11H、G2L、G2Hを生成し、ゲート駆動回路211、22に出力する。同様に、ゲート信号生成手段1Mは、動作モードA1mに応じてMOSFET(S1mL、S1mH、SnL、SnH)を制御するためのゲート信号G1mL、G1mH、GnL、GnHを生成し、ゲート駆動回路21m、2nに出力する。
【0098】
動作モード判定手段100の動作については上記実施の形態の動作と同様であり、また動作モードについては、上記実施の形態で説明したモードと同様のモードを適用することができる。
【0099】
以上のように、本実施の形態では、VH端子−Vcom端子間の電圧Vnを、V1端子−Vcom端子の電圧V1の約n倍、約(n−1)倍、・・・約1倍に昇圧することができる。同様に、Vk端子−Vcom端子間の電圧VkをV1端子−Vcom端子の電圧V1の約k倍、約(k−1)倍、・・・約1倍に昇圧することができる。
また、出力電圧としてのVH−Vcom端子間の電圧Vnを、V1端子−Vcom端子間電圧V1の約n倍の状態から、約(n−1)倍、・・・約1倍の電圧に降圧することができる。同様に、Vk端子−Vcom端子間の電圧VkをV1端子−Vcom端子の電圧V1の約k倍の状態から、約(k−1)倍、・・・約1倍に降圧することができる。
【0100】
実施の形態7.
本実施の形態では、図1又は図14に示したDC/DC電力変換装置の構成において、VH端子−Vcom端子間に入力された電圧をVL端子−Vcom端子の電圧に降圧する降圧回路として動作する場合について説明する。
ここでは、図1のDC/DC電力変換装置の降圧動作について説明する。降圧回路として動作する場合は、第2のブリッジ回路A2、A3は、平滑コンデンサCs2、Cs3の電圧を、そのMOSFET(S2L、S2H、S3L、S3H)のオンオフ動作により低電圧側に送る駆動用インバータ回路として動作する。また、第1のブリッジ回路A11、A12は、第2のブリッジ回路A2、A3で駆動された電流を整流し、エネルギを低電圧側に移行する整流回路として用いられる。
【0101】
次に、図1のDC/DC電力変換装置が降圧回路として動作するときのエネルギの移行について説明する。
ゲート信号G1H、G2HによりMOSFET(S1H、S2H)がオン状態になると、平滑コンデンサCs2に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr1に移行する。
Cs2→S2H→Lr1→Cr1→S1H
次に、ゲート信号G1L、G2LによりMOSFET(S1L、S2L)がオン状態になると、コンデンサCr1に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs1に移行する。
Cr1→Lr1→S2L→Cs1→S1L
また、ゲート信号G4H、G3HによりMOSFET(S4H、S3H)がオン状態になると、平滑コンデンサCs2、Cs3に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路でコンデンサCr2に移行する。
Cs2→Cs3→S3H→Lr2→Cr2→S4H
次に、ゲート信号G4L、G3LによりMOSFET(S4L、S3L)がオン状態になると、コンデンサCr2に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す経路で平滑コンデンサCs1、Cs2に移行する。
Cr2→Lr2→S3L→Cs2→Cs1→S4L
【0102】
以上のように、図1又は図14に示したDC/DC電力変換装置の構成において、VH端子−Vcom端子間に入力された電圧をVL端子−Vcom端子の電圧に降圧することができる。
【符号の説明】
【0103】
G1L〜G4L,G1H〜G4H ゲート信号、
G11L〜G1mL,G11H〜G1mH ゲート信号、
G2L〜GnL,G2H〜GnH ゲート信号、
S1L〜S4L,S1H〜S4H MOSFET、
S11L〜S1mL,S11H〜S1mH MOSFET、
S2L〜SnL,S2H〜SnH MOSFET、
Cs1,Cs2,Cs3,・・・,Csn 平滑コンデンサ、
Cr1,Cr2,・・・,Crm エネルギ移行用コンデンサ、
Lr1,Lr2,・・・,Lrm インダクタ、
LCr1,LCr2,・・・,LCrm LC直列体、VH 高圧電圧端子、
VM 中圧電圧端子、VL 低圧電圧端子、Vcom 基準電圧端子、1 制御回路、
1A,1B,・・・1M ゲート信号生成手段、100 動作モード判定手段、
A11,A12,・・・,A1m 第1のブリッジ回路、
A2,A3,・・・,An 第2のブリッジ回路、
211,・・・,21m,22,23,・・・,2n ゲート駆動回路、
31,32,33,・・・,3n 電圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側から高圧側へ直列に接続した複数個の平滑コンデンサと、
上記低圧側の平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第1のブリッジ回路と、
上記高圧側の平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第2のブリッジ回路と、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段を備え、
上記第1のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第1の中間端子と、上記第2のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第2の中間端子との間にエネルギ移行用コンデンサ及びインダクタからなるLC直列体を接続し、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御により、上記第1又は第2のブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに蓄えられたエネルギの一部を、上記一方のブリッジ回路を通して上記一方のブリッジ回路に接続された上記LC直列体に移行させ、さらに上記LC直列体から上記LC直列体に接続された上記第1又は第2のブリッジ回路の他方のブリッジ回路を通して上記他方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに移行させるDC/DC電力変換装置において、
上記平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段と、
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段とを備え、
上記ゲート信号生成手段は、上記判定された動作モードに基づいて、ゲート信号パターンを変化させるようにしたDC/DC電力変換装置。
【請求項2】
低圧側端子として基準電圧端子を高圧側端子として第1電圧端子を有する第1平滑コンデンサと、低圧側端子として第(k−1)電圧端子を高圧側端子として第k電圧端子を有する第k平滑コンデンサ(k=2、・・・、n;nは2以上の整数)とを直列に接続し、
上記第1平滑コンデンサの正負端子間に高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第1のブリッジ回路をm個(mは整数、1≦m≦n−1)並列に接続し、
上記第k(k=2、・・・、n)平滑コンデンサの正負端子間にそれぞれ高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を直列に接続してなる第2のブリッジ回路を(n−1)個設け、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御のためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段を備え、
上記第1のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第1の中間端子と、上記第2のブリッジ回路の高圧側スイッチ素子と低圧側スイッチ素子の接続点となる第2の中間端子との間にエネルギ移行用コンデンサ及びインダクタからなるLC直列体を接続し、
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオンオフ制御により、上記第1又は第2のブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに蓄えられたエネルギの一部を、上記一方のブリッジ回路を通して上記一方のブリッジ回路に接続された上記LC直列体に移行させ、さらに上記LC直列体から上記LC直列体に接続された上記第1又は第2のブリッジ回路の他方のブリッジ回路を通して上記他方のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサに移行させるDC/DC電力変換装置において、
上記各平滑コンデンサの電圧を検出するための電圧検出手段と、
上記各平滑コンデンサの電圧検出値と電圧指令値に応じて動作モードを判定する動作モード判定手段とを備え、
上記ゲート信号生成手段は、上記判定された動作モードに基づいて、ゲート信号パターンを変化させるようにしたDC/DC電力変換装置。
【請求項3】
上記動作モード判定手段は、上記基準電圧端子と上記第1電圧端子間の電圧が低くなった場合、上記電圧指令値と上記電圧検出値に基づいて昇圧指令値を高くして動作モードを決定し、上記基準電圧端子と第n電圧端子間に所定の電圧を出力し、上記基準電圧端子と上記第1電圧端子間の電圧が高くなった場合、上記電圧指令値と上記電圧検出値に基づいて昇圧指令値を低くして動作モードを決定し、上記基準電圧端子と第n電圧端子間に所定の電圧を出力する請求項2に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項4】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が大きい場合は、上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のスイッチング周波数を低くし、小さい場合は上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のスイッチング周波数を高くする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項5】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が所定値よりも小さい場合は、上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のスイッチング周波数を上記LC直列体の共振周波数の2分の1以上とし、所定値よりも大きい場合は、上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のスイッチング周波数を上記LC直列体の共振周波数の2分の1以下にする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項6】
上記第2のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が所定値より小さい場合は、上記第2のブリッジ回路に上記LC直列体を介して接続された上記第1のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を、上記LC直列体の共振周期Trよりやや大きなスイッチング周期Ts0で交互にオンオフ制御する請求項1又は請求項2に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項7】
上記第2のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサの電圧を昇圧する場合であって、当該平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が所定値より大きい場合は、上記第2のブリッジ回路に上記LC直列体を介して接続された上記第1のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を、上記LC直列体の共振周期Trの2倍以上のスイッチング周期で交互にオンオフ制御する請求項1又は請求項2に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項8】
上記第1のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子のオン時間を、上記LC直列体の共振周期Trの2分の1よりやや大きくする請求項6又は請求項7に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項9】
上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を、上記LC直列体の共振周期Trの2分の1以下にする請求項7に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項10】
上記第1のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子を、上記低圧側スイッチ素子のターンオフ直後にターンオンする請求項9に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項11】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差に応じて、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を変化させる請求項9に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項12】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が大きい場合、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を短くし、上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が小さい場合、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を長くする請求項11に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項13】
上記第2のブリッジ回路に接続された上記平滑コンデンサの電圧を降圧する場合であって、当該平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が所定値より大きい場合は、上記第2のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子を、上記第2のブリッジ回路に接続されたLC直列体の共振周期Trの2倍以上のスイッチング周期で交互にオンオフ制御する請求項1又は請求項2に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項14】
上記第2のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子と、上記第2のブリッジ回路に上記LC直列体を介して接続された上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子とが、同時にオンする時間を設けた請求項13に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項15】
上記第2のブリッジ回路内の上記高圧側スイッチ素子がオンした後、上記第2のブリッジ回路に接続されたLC直列体の共振周期Trの2分の1以上の時間が経過してから、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子をオンする請求項14に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項16】
上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を、上記LC直列体の共振周期Trの2分の1以下にする請求項13又は請求項14に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項17】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差に応じて、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を変化させる請求項16に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項18】
上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が大きい場合、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を短くし、上記平滑コンデンサの電圧検出値と電圧目標値の差が小さい場合、上記第1のブリッジ回路内の上記低圧側スイッチ素子のオン時間を長くする請求項17に記載のDC/DC電力変換装置。
【請求項19】
上記高圧側スイッチ素子及び低圧側スイッチ素子は、ソース・ドレイン間に寄生ダイオードを有するパワーMOSFET、あるいはダイオードを逆並列に接続した半導体スイッチング素子である請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のDC/DC電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−4557(P2011−4557A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147245(P2009−147245)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】