DNAポリメラーゼ融合物およびその使用
本発明はPCR、DNA配列決定および変異誘発のプロトコルにおいて高pHでDNAポリメラーゼ融合物を使用する方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2003年3月25日に出願された米国出願第60/457,426号の利益を請求する。上記出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明はキメラおよび非キメラのDNAポリメラーゼの混合物、その合成方法およびその使用方法に関する。本明細書に開示したDNAポリメラーゼ混合物は多くの組み換えDNA手法、特に核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸増幅または変異誘発のために有用である。
【背景技術】
【0003】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の鋳型指向性重合を触媒してDNAを形成する熱安定性DNAポリメラーゼはDNA配列決定、DNA増幅および変異誘発のような種々のインビトロのDNA合成用とにおいて使用されている。しかしながら、熱安定性DNAポリメラーゼおよびその関連の活性(Abramson,1995,in PCR Stragegies,(Innisら編、Academic Press,Inc)参照)は所定の用途に対して常時最適であるわけではない(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/61015号参照)。一般的に核酸ポリメラーゼにより潜在的に示される特質および特性の多様性のために、当該分野の専門家等は、酵素の新しい有用な変種(variant)を開発する研究において核酸ポリメラーゼの種々の特徴を修飾、改変または組み換えることを追求している。
【0004】
1つの試みは触媒特質の独特および/または進歩した触媒特性を有する新しい好熱性の核酸ポリメラーゼの発見および単離を指向している。その結果、熱安定性のポリメラーゼは、種々の生物学的原料、例えば分類学上の属であるThermus、Thermococcus、Thermotoga、PyococcusおよびSulfolobusの種から単離されている。
【0005】
これらの天然に存在する熱安定性DNAポリメラーゼは酵素的に活性な3’−5’エキソヌクレアーゼドメインを有し、天然のプルーフリーディング能力をもたらし、これによりTaqDNAポリメラーゼよりも高い忠実度を示す。しかしながら、これらのDNAポリメラーゼはまた、TaqDNAポリメラーゼと比較して、より低いDNA伸長速度および全体的により低いプロセシビティを示し、即ち、これらの天然に存在する熱安定性DNAポリメラーゼを、その高い忠実度にもかかわらず、PCRのためにはより望ましくないものとしている。
【0006】
個々の熱安定性ポリメラーゼの欠陥を補う研究において、例えばTaqポリメラーゼおよびプルーフリーディング酵素、例えばPfuポリメラーゼまたはVentNDAポリメラーゼを組み合わせた多酵素集合体を開発する第2の試みが行われている。これらの多酵素混合物はTaqポリメラーゼのみと比較して高いPCR効率および低減されたエラー率を示す(Barnes,Proc.Natl.Acad.Sci USA91:2216−2220(1994))。
【0007】
別の試みは欠失/切断手法を介したTaqポリメラーゼの新しい有用な変種を開発することであった。例えばStoffelフラグメントは酵素的に活性な5’3’ポリメラーゼドメインは保有するが3’−5’エキソヌクレアーゼおよび5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は欠失しているTaqDNAポリメラーゼの544アミノ酸C末端切断である。他の市販の熱安定性ポリメラーゼの欠失はVent(exo−)およびDeepVent(exo−)を包含する(New England Biolabs,Beverly,MA)。しかしながら欠失変異は核酸ポリメラーゼの機能的ドメインを除去する作用を有するのみであり、如何なる新しい特徴や酵素特質も付加しない。
【0008】
ポリメラーゼ変異誘発は新しく有用な核酸ポリメラーゼ変種を開発するために試みられている別の方法である。例えば、天然に存在するDNAポリメラーゼはヌクレオチド類似体(アナログ)の取り込みを強力に識別する。この特質はDNAの複製と修復の忠実度に寄与している。しかしながら、ヌクレオチド類似体の取り込みは多くのDNA合成用途、特にDNA配列決定に有用である。従って、5’−ヌクレアーゼ活性または3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の何れかである関連するエキソヌクレオリシス活性を欠損したDNAポリメラーゼがDNA配列決定には好ましい。低減されたヌクレオチド識別性を有する熱安定性DNAポリメラーゼを作成するために、部位指向性変異誘発試験が開始され、DNA配列決定に適する必要な活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼの多くの変異型が発見されている(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,466,591号)。
【0009】
DNAポリメラーゼの特質を修飾する更に別の試みは必要な活性を有する蛋白ドメイン1つ以上がDNAポリメラーゼと組み合わせられたDNAポリメラーゼ融合物を作成することである。DNAポリメラーゼはDNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフにインフレームに融合しており、そして、Pavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載の通りキメラDNAポリメラーゼのプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を増大することがわかっている。T7DNAポリメラーゼへのチオレドキシン結合ドメインの融合は国際公開WO97/29209号、米国特許第5,972,603号およびBedfordら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:479−484(1997)に記載の通りチオレドキシンの存在下のDNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティを増強する。TaqDNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの融合は増強されたプロセシビティを有しPCNAの存在下でPCR増幅DNAのより高い収率を与えるDNAポリメラーゼ融合物をもたらす(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;277(18);16179−88)。更にまた、Sulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dのDNAポリメラーゼ、例えばPfuまたはTaqDNAポリメラーゼへの融合は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1に開示されている通りこれらのDNAポリメラーゼのプロセシビティを大きく増大させることがわかっている。異なるDNAポリメラーゼの相当するドメインを有するDNAポリメラーゼの全体または部分のドメイン置換も記載されている(米国特許出願第2002/0119461号)。
【0010】
これらの集中的研究にも関わらず、DNAポリメラーゼの核酸合成、配列決定および増幅の活性を支援するためにより適当である条件を開発する必要性がなお当該分野に存続している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はDNA合成、DNA配列決定、DNA合成産物のクローニング、または、線形または指数的PCR増幅のために高pHにおいてDNAポリメラーゼを使用する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
当業者の知るとおり、本発明に有用なDNAポリメラーゼ融合物は高pHにおいて活性であるDNAポリメラーゼ機能1つ以上を有する。DNAポリメラーゼ機能は当該分野でよく知られている(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.;(Sambrookら、(1989):Moolecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州);Stratagene Catalog)。即ち、本発明は特に当該分野で現在知られているか、入手可能となるDNAポリメラーゼ融合物のための高pHにおいて本発明のDNAポリメラーゼ融合物を使用する方法を包含する。
【0013】
本明細書においては、「DNAポリメラーゼ機能」とは、本明細書に記載するDNAポリメラーゼの活性を指す。DNAポリメラーゼの活性は、例えば、後に定義する、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド遺伝子結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度および/または室温における低減したDNA重合を包含する。DNAポリメラーゼ活性は当該分野でよく知られている(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.;(Sambrookら、(1989):Moolecular Cloning,A Laboratory Manual (第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる別の参考文献を参照);Stratagene Catalog)。即ち、本発明は特に、当該分野で現在知られている、または入手可能となるDNAポリメラーゼ活性のための高pHにて本発明のDNAポリメラーゼ融合物を使用する方法を包含する。
【0014】
DNAポリメラーゼの「機能」はまた本明細書において定義する「変異体」DNAポリメラーゼの活性も包含する。本発明は例えば本発明の「変異体」の以下のような活性、即ち:塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅(翻訳)スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減を包含する。1つの実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼはDNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性1つ以上を低減する変異1つ以上を含有するDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「変異体」とはポリメラーゼに向上した重合速度または忠実度を付与する変異を有するポリメラーゼを指す。好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたウラシル検出活性を有する。好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたウラシルおよびイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたDNA重合活性を有する。「変異体」の何れか、例えば低減したウラシル活性を有する変異体は、野生型ポリメラーゼと比較して向上したポリメラーゼ速度および/または忠実度を有してもよい。
【0015】
本発明は以下の工程:a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;およびb)該融合物を核酸鋳型と接触させ、ここで該融合物がDNA合成を可能とすることを含む、高pHにおけるDNA合成のための方法を提供する。
【0016】
本発明はまた以下の工程、即ち:a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;b)融合物を核酸鋳型と接触させること、ただしここで融合物はDNA合成を可能にして合成DNA産物を生成するものであること;および、c)合成DNA産物をクローニングベクターに挿入すること;を含む、高pHにおけるDNA合成産物のクローニングのための方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、以下の工程、即ち:(a)鋳型DNA鎖を配列決定DNAプライマーに接触させること;(b)工程(a)のDNAをDNAポリメラーゼ融合物、デオキシリボヌクレオシド三リン酸および鎖終止ヌクレオチド類似体と接触させること;(c)第1のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団を合成するために十分な条件下で工程(b)の混合物をインキュベートすること、ただしここで合成されたDNA分子は第1のDNA分子よりも短いこと、そしてここで合成されたDNA分子はその5’末端において終止ヌクレオチドを含むこと;および(d)第1のDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が決定できるようにサイズにより合成されたDNA分子を分離すること;を含む、高pHにおいてDNAを配列決定するための方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、核酸鋳型、PCRプライマー少なくとも1つおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、融合物による核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより変異した増幅産物を生成することを含む、部位指向性またはランダムの変異誘発のための高pHにおける線形または指数的PCR増殖の方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、核酸鋳型、PCRプライマー少なくとも1つおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、該融合物による該核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより増幅産物を生成する工程を含む、高pHにおける逆転写酵素PCRの方法を提供する。
【0020】
本発明は高pHにおけるDNA合成産物のクローニング、DNA配列決定、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖、DNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液を含むRT−PCRの何れか1つのための組成物を提供する。高pH緩衝液およびポリメラーゼ融合物のほかに、反応混合物の他の成分も組成物中に存在してよく、例えば鋳型、プライマー、ヌクレオチド、標識、標識ヌクレオチド等が包含される。
【0021】
本発明はまた、DNA合成のための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA合成緩衝液を含む。本発明は、DNA合成緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNA合成緩衝液のものであり、そしてDNA合成緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNA合成緩衝液を意図する。
【0022】
本発明はDNA合成産物のクローニングのための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNAクローニング緩衝液を含む。本発明は、DNAクローニング緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNAクローニング緩衝液のものであり、そしてDNAクローニング緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNAクローニング緩衝液を意図する。
【0023】
本発明はDNAを配列決定するための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA配列決定緩衝液を含む。本発明は、DNA配列決定緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNA配列決定緩衝液のものであり、そしてDNA配列決定緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNA配列決定緩衝液を意図する。
【0024】
本発明は部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖のための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH PCR反応緩衝液を含む。本発明は、PCR反応緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するPCR反応緩衝液のものであり、そしてPCR反応緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH PCR反応緩衝液を意図する。
【0025】
1つの実施形態においては、本発明の方法および組成物は更にPCR増強因子および/または添加剤も含む。
【0026】
別の実施形態において、本発明の方法において使用するDNAポリメラーゼ融合物は低減されたDNA重合活性を有する。
【0027】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物はアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含み、そして、低減されたDNA重合活性を含む。
【0028】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減された塩基類似体検出活性を含む。
【0029】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性およびV93部位における変異を含み、ここで変異はバリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である。
【0030】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性を有する。
【0031】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性を含む。
【0032】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は更にV93部位における変異を含み、ここで変異はキメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性表現型を付与するバリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である。
【0033】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は更に低減したDNA重合活性を含む。
【0034】
別の実施形態においてDNAポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含む。
【0035】
別の実施形態においては、DNアポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とするアミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む。
【0036】
別の実施形態においては、低減された塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とするアミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む。
【0037】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は野生型、変異体または化学修飾DNAポリメラーゼを含む。
【0038】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物はプルーフリーディングポリメラーゼである。
【0039】
別の実施形態においては、プルーフリーディングポリメラーゼがPfu、KOD、Tgo、VentおよびDeepVentよりなる群から選択される。
【0040】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は更に、プロセシビティ、プルーフリーディング、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力または塩耐性よりなる群から選択される活性の増大を有するポリペプチドを含む。
【0041】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は更に室温におけるDNAポリメラーゼ活性、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップ、PCR反応における伸長時間またはPCR反応における増幅サイクルよりなる群から選択される低減された活性を有するポリペプチドを含む。
【0042】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は、バクテリオファージT7のチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメイン、古細菌PCNA結合ドメイン、PCNA、DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフまたはDNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dよりなる群から選択される蛋白ドメインよりなる。
【0043】
本発明はまた、DNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;RTPCR;および線形または指数的PCR増殖、または、本明細書に含まれる何れかの別のポリメラーゼ機能よりなる群から選択される方法を高pHで実施するためのキットを提供する。
【0044】
本発明のキットは、高pH緩衝液、またはPCR増強因子および/または添加剤をさらに含んでもよい。
【0045】
(定義)
「融合体」とは、本明細書においては、例えばプロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド遺伝子結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度および/または室温における低減したDNA重合を包含するDNAポリメラーゼの活性1つ以上をモジュレートするポリペプチドを定義する第2のアミノ酸配列に連結している本発明の野生型または変異体のDNAポリメラーゼを含む第1のアミノ酸配列(蛋白)であり、ここで第1および第2のアミノ酸は天然には同じ関係においては存在しない。本発明によれば「融合体」とは連結して新しい機能性蛋白を形成する、無関係の蛋白に由来する2つ以上のアミノ酸配列(例えば野生型または変異体のDNAポリメラーゼをコードする配列およびプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド)を包含する。1つの実施形態において、本発明の「融合体」は第1のポリメラーゼ種(例えばPfuN末端)より誘導された第1のアミノ酸配列および第2のポリメラーゼ種(例えばKOD C末端)から誘導された第2のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態においては、本発明の「融合体」は第1のポリメラーゼから誘導された第1のアミノ酸およびポリメラーゼではないポリペプチドから誘導された第2のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態においては、ポリメラーゼではないポリペプチドから誘導されたアミノ酸配列は酵素的に活性ではない。
【0046】
本明細書においては、「酵素的に活性」とは特定の酵素反応を触媒することを意味する。
【0047】
本発明の融合体は第1の蛋白も発現する生物中に存在する(ただし異なる蛋白中)外来性ポリペプチドを提示するか、または、異なる種類の生物により発現される蛋白構造の「種間」、「遺伝子間」等の融合体であってよい。本発明はプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドが、本明細書に記載する、または当該分野で知られている、野生型DNAポリメラーゼまたは変異体DNAポリメラーゼとN末端またはC末端で連結されるか、または、その何れかの内部の位置に挿入される融合物を含む。
【0048】
1つの実施形態においては、本発明の融合体は例えばPfuまたはTaqのような3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するか有さない野生型または変異した熱安定性DNAポリメラーゼを含む融合DNAポリメラーゼである。PfuまたはTaqDNAに付加されるキメラ成分は、キメラ成分およびポリメラーゼが天然には存在しないような関係にあるように、NまたはC末端または何れかの内部の位置においてPfuまたはTaqDNAポリメラーゼに融合した塩基性または非塩基性の、蛋白または蛋白ドメインである。PfuまたはTaqDNAポリメラーゼの活性へのキメラの寄与はプロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、忠実度および塩耐性および/または室温における低減したDNA重合活性を増大または増強する。
【0049】
本発明のDNAポリメラーゼ融合物はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合に、以下の活性(後述する試験法を用いる)、即ち:プロセシビティ、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力、プルーフリーディング活性、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、および、塩耐性の1つ以上が>10%増大している。本発明のDNAポリメラーゼ融合物はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合に、以下の活性(後述する試験法を用いる)、即ち:トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップまたは室温におけるDNAポリメラーゼ活性の1つ以上が>10%低減している。1つの実施形態においては、本発明の「融合物」は融合物単独ではないDNAポリメラーゼの存在下で観察される伸長時間と比較して、5秒、好ましくは15秒、より好ましくは45秒低減しているPCR反応における伸長時間を有する。別の実施形態においては、本発明の「融合物」は融合物単独ではないDNAポリメラーゼと比較して、1、1〜5または5以上PCR増幅サイクル数が低減している。別の実施形態においては、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較して、本発明の「融合物」のより少ない単位(0.001、0.01、0.1または1以上)が本発明の用途において有用である。「融合物」の活性を融合物ではないDNAポリメラーゼの活性と比較する全ての場合において、融合物でないDNAポリメラーゼは融合物のポリメラーゼドメインと同一であり、そして本明細書に定義する融合物の第2のアミノ酸配列の非存在により融合物と異なるのみである。
【0050】
本明細書においては、「ゲノム鋳型」とは細胞または生物のゲノムを構成する核酸物質を含む鋳型を意味する。
【0051】
本明細書においては、「融合した」または「連結した」とは、例えば、介在ドメインを有するか有さない組み換え融合物、インテイン媒介融合物、非共有結合性の会合および共有結合、例えばジスルフィド結合、水素結合、静電気的結合およびコンフォーメーション性の結合を含む、機能的に結合したポリペプチドのドメインを得るための当該分野で知られた何れかの方法を指す。
【0052】
「ドメイン」とは、ポリペプチド配列、完全なポリペプチド配列、または複数のペプチド配列を含む蛋白または蛋白複合体の単位を指す。
【0053】
本明細書においては、「モジュレート」という用語は、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合の、本発明のDNAポリメラーゼの活性の2倍、好ましくは5倍、好ましくは20倍、好ましくは100倍、より好ましくは500倍以上の増大または低減を指す。1つの実施形態においては、融合物のDNAポリメラーゼドメインは本明細書に記載した変異を1つ以上含む。この実施形態においては、「モジュレート」という用語は、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合の、本発明のDNAポリメラーゼの活性の2倍、好ましくは5倍、好ましくは20倍、好ましくは100倍、より好ましくは500倍以上の増大または低減を指し、ここで融合物ではないDNAポリメラーゼは融合物の変異体DNAポリメラーゼドメインと同一であるが、本明細書に記載した融合物の第2のアミノ酸配列を欠失している。
【0054】
DNAポリメラーゼ融合物は本明細書に記載するPCR増強因子および/または添加剤と組み合わせて使用される。
【0055】
本明細書においては、「高pH」とは、9より高値のpHを指す。「高pH」とは好ましくは10以上、例えば10、11、12、13または14である。「高pH」には9より高値のpHが包含され、そして14までのpH、例えばpH9.1、9.5、9.8、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5または14が本発明の「高pH」である。
【0056】
本明細書においては、「プロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド」とは、ポリペプチド配列または複数のペプチド配列を含む蛋白、または蛋白の領域または蛋白複合体であるドメインを指し、ここでその領域は本明細書に定義されるとおりプロセシビティを増大するか、または本明細書に定義されるとおり塩耐性を増大させる。本発明において有用な「プロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド」は例えば、上記したPavlovら、または国際公開WO01/92501号に記載されるドメインの何れかを包含し、例えばSso7d、Sac7d、HMF様蛋白、PCNAホモログ、螺旋−ヘアピン−螺旋ドメイン、例えばトポイソメラーゼVから誘導されたもの、または国際公開WO97/29209号、米国特許第5,972,603号およびBedfordら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:479−484(1997)に記載されるT7DNAポリメラーゼのチオレドキシン結合ドメインが挙げられる。
【0057】
本明細書においては、「プロセシビティ」とは鋳型または基質に結合したまま存続し、複数の修飾反応を行うことができる核酸修飾酵素、例えばポリメラーゼの能力を指す。「修飾反応」とは例えば重合およびエキソヌクレアーゼ分解を包含する。「プロセシビティ」はまた比較的長い(例えば0.5〜1kb、1〜5kbまたは5kb以上)ヌクレオチド索を修飾する核酸修飾酵素、例えばポリメラーゼの能力を指す。「プロセシビティ」とはまた、成長中のDNA鎖からの酵素の解離を妨害することなく一連の重合工程を行える核酸修飾酵素、例えばDNAポリメラーゼの能力を指す。「プロセシビティ」はポリメラーゼの性質、DNA鋳型の配列および反応条件、例えば塩濃度、温度または特定の蛋白の存在により異なる。
【0058】
本明細書においては、「増大したプロセシビティ」とは、本明細書に定義したプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドを欠失した野生型または変異体の古細菌DNAポリメラーゼと比較して、5〜10%、好ましくは10〜50%、より好ましくは50〜100%以上の増大を指す。プロセシビティおよび増大したプロセシビティは、本明細書および上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載の方法に従って測定できる。本明細書で定義するプロセシビティを増大させるポリペプチドを含むキメラである増大したプロセシビティを有するポリメラーゼは上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載されている。
【0059】
本明細書においては、「増大した塩耐性」とは野生型ポリメラーゼが活性である最大塩濃度よりも高値であることが分かっているある塩濃度において>50%の活性を示すポリメラーゼを指す。最大塩濃度は各ポリメラーゼにより異なっており、そして当該分野で知られているか、または、本発明の方法に従って実験的に決定できる。例えば、Pfuは30mM塩(PCR反応中)で抑制され、従って、増大した塩耐性を有するPfu酵素は30mMより高い塩濃度で有意な活性(>50%)を有するはずである。本明細書に定義する塩耐性を増大させるポリペプチドを含む融合物である増大した塩耐性を有するポリメラーゼは、上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載されている。
【0060】
本明細書においては、「忠実度」とは、重合の精度、または、鋳型に相補である核酸分子(例えばRNAまたはDNA)を合成する際に正しい基質を正しくない基質から識別できるポリメラーゼの能力を指す。ポリメラーゼの忠実度がより高いほど、核酸合成の間の成長中の鎖においてポリメラーゼのヌクレオチドの誤取り込みがより低くなり;即ち、忠実度の増大または増強はエラー率の低い(誤取り込み率の低減した)より信頼できるポリメラーゼをもたらす。
【0061】
「忠実度」という用語は本明細書においてはまた、鋳型依存性のDNAポリメラーゼによるDNA重合の精度を指す。DNAポリメラーゼの忠実度はエラー率(不正確なヌクレオチド、即ち、鋳型依存的方法において取り込まれていないヌクレオチドが取り込まれる頻度)により測定される。DNA重合の精度または忠実度はDNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の両方により維持される。「高忠実度」という用語は塩基対当たり5×10−6以下のエラー率を指す。DNAポリメラーゼの忠実度またはエラー率は当該分野で知られた試験を用いて測定してよい。例えばDNAポリメラーゼ変異体のエラー率はCline,J.,Braman,J.C.,及びHogrefe,H.H.(96)NAR 24:3546−3551に記載のlacIPCR忠実度試験を用いて試験できる。慨すれば、lacIOlacZα標的遺伝子をコードする1.9kbのフラグメントを適切なPCR緩衝益虫2.5UDNAポリメラーゼ(即ち72℃30分で総dNTP25ミリモルを取り込むために必要な酵素の量)を用いてpPRIAZプラスミドDNAから増幅する。次にlacI含有PCR産物をラムダGT10アームにクローニングし、そしてlacI変異体のパーセント(MF、変異頻度)を記載するとおり色スクリーニング試験により測定する(Lundberg,K.S.,Shoemaker,D.D.,Adams,M.W.W.,Short,J.M.,Sorge,J.A.,及びMathur,E.J.(1991)Gene180:1−8)。エラー率は倍加当たりのbp当たりの変異頻度(MF/bp/d)であらわされ、ここでbpはlacI遺伝子配列の検出可能な部位の数(349)でありdは有効な標的倍加の数である。各DNAポリメラーゼ変異体につき、少なくとも2つの独立したPCR増幅を実施する。
【0062】
増大/増強/高値の忠実度を有するDNAポリメラーゼはある長さのある核酸分子の合成の間、誤取り込みされたヌクレオチドの数が約2〜約10,000倍、約2〜約5,000倍、または約2〜約2,000倍(好ましくは約5倍超、より好ましくは約10倍超、更により好ましくは約50倍超、なお好ましくは約100倍超、更に好ましくは約500倍超、最も好ましくは約1000倍超)低減しているポリメラーゼとして定義される。例えば、変異したポリメラーゼは1000塩基の合成中1ヌクレオチドを誤取り込みするのに対し、非変異ポリメラーゼは10ヌクレオチドを誤取り込みする。このような変異体ポリメラーゼは10倍の忠実度の増大を有していると言うことができる。
【0063】
低減された誤取り込みを有するDNAポリメラーゼは、本明細書においては、相当する非変異、非修飾または野生型の酵素と比較して、相対的誤取り込みが約50%未満、または好ましくは約25%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約1%未満である変異または修飾されたDNAポリメラーゼの何れかとして定義する。より低い忠実度のDNAポリメラーゼもまた非正確なヌクレオチド取り込みのDNA合成を開始させる場合がある(Perrion&Loeb,1989,J.Biol.Chem.264:2898−2905)。
【0064】
ポリメラーゼの忠実度または誤取り込み率は当該分野で知られている他の方法により配列決定反応において測定できる(Eckert&Kunkel,Nucl.Acids Res.3739−3744(1990))。1つの実施形態においては、非変異および変異のポリメラーゼにより合成されたDNA分子の配列を予測(既知)配列と比較することができる。このようにしてエラー(誤取り込み)の数を各酵素について測定し、比較することができる。
【0065】
DNA結合およびDNA結合を検出するための試験はPCT/US01/17492に記載されている。
【0066】
鎖置換とは、Hogrefeら、Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびKongら(93)J.Biol.Chem.268:1965に記載されている活性を指す。鎖置換活性を測定するための試験法はHogrefeら、Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびKongら(93)J.Biol.Chem.268:1965に記載されている。
【0067】
室温におけるDNAポリメラーゼ活性はThe Methods of Enzymology(2001)334:91−116に記載されている。室温におけるDNAポリメラーゼ活性を測定するための方法はThe Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびNielsonら(1997)Strategies 10:40−43 Newsletter記事に記載されている。
【0068】
本明細書においては「GCリッチ標的増幅効率」とはGC含量が50%超であり、PCR中に溶融することがより困難であるDNA鋳型の増幅効率を指す。これらの標的は温度がアニーリング温度までサイクルする場合に頻繁に二次構造を形成し、PCR増幅を困難にする。「GCリッチ標的増幅」は50%より高いGC含量を有する標的上でPCR増幅を実施し、そして、ゲル上に生成したアンプリコンの収率を比較することにより試験される(Biotechniques 2001年4月;32(4):866,868,870−2,874)。
【0069】
「内因性ホットスタート能力」を有するポリメラーゼとは、非ストリンジェントなプライマーアニーリング温度(≦45℃)において極めて低い(<25°)DNAポリメラーゼ活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼを指す。これらのポリメラーゼおよびその検出のための試験はNielsonら(1997)Strategies 10:40−43に記載されている。
【0070】
「DNA(翻訳)スリップ」または「トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅(翻訳)スリップ」およびこの活性の検出のための試験法はJ Mol Biol 2001年9月14日;312(2):323−33,J.Biol CHem 1999年9月24日;274(39):27481−90,EMBO J 2001年5月15日;20(10):2587−95,Biochemistry 1996年1月23日;35(3):1046−53に記載されている。
【0071】
室温で低減されたDNAポリメラーゼ活性を示すDNAポリメラーゼ融合物は好ましくは、低減されたポリメラーゼ活性が最適未満の温度(例えば非特異的プライマーアニーリング/伸長温度)で観察され、そして野生型ポリメラーゼ活性がストリンジェントなプライマーアニーリング/伸長温度において観察されるように、活性対温度の特徴におけるシフトを示す。このような融合物はPCRにおいて向上した特異性を示すことが期待される。
【0072】
DNAポリメラーゼの効率を測定する方法はPCR Primer:A Laboratory Manual,1995,CSHL Press,ChaとThilly,pp.37−51に記載されている。
【0073】
鋳型長増幅能力を測定するための方法はProc Natl.Acad.Sci USA,2002,99:596−601およびBiotechnol.,2001,88:141−149に記載されている。
【0074】
DNAポリメラーゼの特異性を測定するための方法はJ.Biochem.(Tokyo),1999,126:762−8に記載されている。
【0075】
DNAポリメラーゼの熱安定性を測定する方法はFEMS Microbiol.Lett,2002,217:89−94に記載されている。
【0076】
ヌクレオチドの結合および認識を測定するための方法はJ.Mol.Biol/.2002,322:719−729およびNucleic Acids res.,2002,30:605−13に記載されている。
【0077】
本発明に有用な「ドメイン」は当該分野で知られた、または当該分野で知られることになる、何れかの2本鎖または1本鎖のDNA結合ドメインを包含する。
【0078】
本明細書においては、「ポリメラーゼ」とはヌクレオチドの重合を触媒する(即ちポリメラーゼ活性)酵素を指す。一般的に酵素はポリヌクレオチド鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端において合成を開始し、そして鋳型鎖の5’末端に向けて進行する。「DNAポリメラーゼ」はデオキシヌクレオチドの重合を触媒する。好ましい実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼは熱安定性である。別の好ましい実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼは古細菌DNAポリメラーゼである。
【0079】
本明細書においてDNAポリメラーゼに言及する場合は、DNAポリメラーゼという用語は「その官能性フラグメント」を包含する。「その官能性フラグメント」とは、ポリメラーゼの全アミノ酸配列に満たないものを包含し、そして、ポリヌクレオチドの重合を触媒する能力を、少なくとも1セットの条件下において、温存している野生型または変異体のDNAポリメラーゼの何れかの部分を指す。このような機能的フラグメントは別の実態として存在するか、または、融合蛋白のようなより大型のポリペプチドの構成成分であってよい。
【0080】
本発明において使用する核酸ポリメラーゼは中温性または高温性であってよく、そして好ましくは高温性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼはT7DNAポリメラーゼ、T5DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、KlenowフラグメントDNAポリメラーゼDNAポリメラーゼIII等を包含する。本発明の方法において使用してよい好ましい熱安定性DNAポリメラーゼはTaq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffelフラグメント、VENT(商標)およびDEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、KOD、Tgo、JDF3およびこれらの変異体、変種および誘導体を包含する(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,18S号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;国際公開WO92/06188号;国際公開WO92/06200号;国際公開WO96/10640号;Barnes,W.M.,Hene112:29−35(1992);Lawer,F.C.ら、PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flaman,J.−Mら、Nuc.Acods Res.22(15):3259−3260(1994)。長核酸分子(例えば長さ約3〜5Kbより長い核酸分子)の増幅のためには、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(1つは実質的に3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失したもの、もう1つは3’エキソヌクレアーゼ活性を有するもの)が典型的に使用される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Fames,W.M.,Gene 112:29−35(1992);および2000年12月21日出願の同時係属米国特許出願第09/741,664号を参照できる。3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠失しているDNAポリメラーゼの例はTaq、Tne(exo−)、Tma(exo−)、Pfu(exo−)、Pwe(exo−)、exo−KODおよびTthDNAポリメラーゼおよびその変異体、変種および誘導体を包含する。
【0081】
本明細書においては、「古細菌」DNAポリメラーゼとは、ファミリーB/polI型の群(例えばPfu、KOD、Pfx、Vent、DeepVent、Tgo、Pwo)またはpolII群(例えばPyrococcus furiosusDP1/DP22−サブユニットDNAポリメラーゼ)の何れかに属するDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「古細菌」DNAポリメラーゼは熱安定性の古細菌DNAポリメラーゼ(PCR可能)を指し、例えばPyrococcus種(furiosus,GB−D種、woesii,abysii,horikoshii)、Thermococcus種(kodakaraensis KOD1,liroralis,9度North−7種、JDF−3種、gorgonarius)、Pyrodictium occultumおよびArchaeoglobus fulgidusから単離されたDNAポリメラーゼを包含する。適当な古細菌は最高生育温度>80〜85℃または最適生育温度>70〜80℃を示す。古細菌polIDNAポリメラーゼ群由来の適切なPCR酵素は市販されており、例えばPfu(Stratagene、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies,Inc.)、Vent(New Englaind BioLabs)、Deep Vent(New England BioLabs)、Tgo(Roche)およびPwo(Roche)を包含する。上記列挙したものに関連する別の古細菌は以下の参考文献:Archaea:A Laboratory Manual (Robb,F.T.とPlace,A.R.,編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州,1995に記載されている。
【0082】
本明細書においては、「変異体」ポリメラーゼとはDNAポリメラーゼの活性の1つ以上、例えば、塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減を本明細書で定義するとおり変調する変異を1つ以上含む、本明細書に定義されるDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼはDNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性の1つ以上を低減する変異1つ以上を含むDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「変異体」とは向上した重合速度または忠実度をポリメラーゼに与える変異を有するポリメラーゼを指す。好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したウラシル検出活性を有する。好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したウラシルおよびイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したDNA重合活性を有する。「変異体」、例えば低減したウラシル活性を有するいずれの変異体はまた、野生型ポリメラーゼと比較して向上した重合速度および/または忠実度を有してよい。本明細書に定義する「変異体」ポリメラーゼは1つ以上のアミノ酸置換、1つ以上のアミノ酸挿入、切断または内部の欠失を含むポリメラーゼを包含する。本明細書に定義する「変異体」ポリメラーゼは本明細書に定義する非融合および融合ポリメラーゼを包含する。
【0083】
本明細書における「変異体」ポリメラーゼは本明細書に記載する1重、2重または3重変異体DNAポリメラーゼ、本明細書に記載する挿入を含む何れかの変異体DNAポリメラーゼ、または、切断された、または本明細書に記載する欠失した変異体DNAポリメラーゼの何れかが、DNAポリメラーゼの活性、例えば、DNA重合活性、塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、ウラシルへの感受性、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減の1つ以上をモジュレートするポリペプチドと組み合わせて存在することにより本明細書に定義する融合物を形成するような、融合ポリメラーゼを包含する。例えばプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドは参照により本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1およびPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載されている。商業上有用な変異の他の特定の例は、ウラシル非感受性をPfuに付与するPfuにおけるV93R、K、E、D、および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するD141A/E143Aである。商業上有用な切断は、例えば、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqにおけるN末端切断(KlenTaq)である。
【0084】
本明細書においては、「変異」とはDNAによりコードされるアミノ酸配列を変化させる親または野生型DNA配列内に導入される変化、例えば置換、挿入、欠失または切断を指す。変異の結果は、例えば、親DNAによりコードされる蛋白内には存在しなかった新しい性質、特質、機能または形質、例えばN末端切断、C末端切断または化学修飾の創生である。「変異体」DNAポリメラーゼは本明細書においては本明細書に定義する変異を含むDNAポリメラーゼを指す。本発明の「変異体」DNAポリメラーゼは本発明のDNAポリメラーゼ「融合物」を包含する。
【0085】
本明細書においては、「低減したDNA重合活性」を有するDNAポリメラーゼは野生型酵素よりも低値のDNA重合活性を含む、例えば、野生型酵素の10%未満(例えば19.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)のまたは融合物ではないDNAポリメラーゼよりも低値の重合活性を含む、DNAポリメラーゼ変異体である。低減したDNA重合活性を有するPfuDNAポリメラーゼを作成し特性化するために使用される方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されている。本発明低減したDNA重合活性を有するDNAポリメラーゼ融合物を意図する。
【0086】
本明細書においては、「プルーフリーディング」活性とはDNAポリメラーゼの3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を指す。
【0087】
「非プルーフリーディング」酵素とは「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」または「3’〜5’exo−」であるDNAポリメラーゼを指す。
【0088】
本明細書においては、「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」または「3’〜5’exo−」とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を実質的に欠いた酵素を指す。DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ活性、例えばファミリーBポリメラーゼのメンバーにより例示される3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性は、変異を介して消失する場合があり、エキソヌクレアーゼ−欠損ポリメラーゼを生じる。本明細書においては、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が欠損であるDNAポリメラーゼとは、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いていいる。「実質的に欠いている」とは、活性の完全な消失、例えば親酵素に対して0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%またはさらには50%までのエキソヌクレアーゼ活性を包含する。D141AおよびE143A変異並びに3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる他の変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼを作成し特性化するために使用できる方法は係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる別の変異は当該分野で知られており、本発明で意図するものである。
【0089】
本明細書においては、「合成」とは鋳型依存的な方法でポリヌクレオチドの新しい鎖を作成するか、または、既存のポリヌクレオチド(即ちDNAまたはRNA)を伸長するための何れかのインビトロの方法を指す。本発明によれば合成はポリメラーゼを使用しながらポリヌクレオチド鋳型配列のコピー数を増大させる増幅を包含する。ポリヌクレオチド合成(例えば増幅)はポリヌクレオチド(即ちプライマー)へのヌクレオチドの取り込みをもたらし、これにより、ポリヌクレオチド鋳型に相補的な新しいポリヌクレオチド分子を形成する。形成されたポリヌクレオチド分子およびその鋳型は、それ以上のポリヌクレオチド分子を合成するための鋳型として使用できる。
【0090】
本発明によれば「DNA合成」とは、例えばPCR、ポリヌクレオチドの標識(即ちプローブおよびオリゴヌクレオチドプライマーのため)、および、ポリヌクレオチド配列決定を包含する。本発明は低減された塩基類似体検出(例えば特定の塩基類似体、例えばウラシルまたはイノシンの低減された検出、または、少なくとも2つの塩基類似体の低減された検出)を示す変異体DNAポリメラーゼおよびその融合物を意図している。
【0091】
本明細書においては、「塩基類似体(base analog)」とはPCR反応に必要な上昇した温度の結果として化学修飾を起こしている塩基を指す。好ましい実施形態においては、「塩基類似体」はシトシンの脱アミノ化により生じるウラシルを指す。別の好ましい実施形態においては、「塩基類似体」はアデニンの脱アミノ化により生じるイノシンを指す。
【0092】
本明細書においては、「熱安定性」とは、例えば同様の活性を有する酵素の非熱安定性形態と比較して、熱に対し、好ましくは約90〜100℃、より好ましくは約70〜980℃高温において安定で活性である酵素を指す。例えば、P.furiosus,M.jannaschii,A.fulgidusまたはP.horikoshiiのような熱安定性生物から誘導した熱安定性の核酸ポリメラーゼはE.coli由来の核酸ポリメラーゼと比較して、より高温においてより安定であり活性である。P.furiosusから単離された代表的な熱安定性核酸ポリメラーゼ(pfu)はLundbergら、1991,Gene,108:1−6に記載されている。別の代表的な温度安定性ポリメラーゼは、例えば好熱性細菌Thermus flavus、Thermus ruber、Thermus thermophilus、Bacillus stearothermophilus(これは列挙した他のものよりも幾分低温最適である)、Thermus lacteus、Thermus rubens、Thermotoga maritimaから、または、好熱性の古細菌Thermococcus litoralisおよびMethanothermus fervidusから抽出されたポリメラーゼを包含する。
【0093】
温度安定性ポリメラーゼは2本鎖核酸がPCRサイクル中の高温(約95℃)への曝露により変性する熱サイクリング過程において好ましい。
【0094】
本明細書においては、「鋳型DNA分子」という用語は例えばプライマー伸長反応においてDNAポリメラーゼにより相補核酸鎖が合成される元となる核酸の鎖を指す。
【0095】
本明細書においては、「鋳型依存的方法」という用語はプライマー分子の鋳型依存的伸長(例えばDNAポリメラーゼによるDNA合成)を含む過程を指すものとする。「鋳型依存的方法」という用語は、ポリヌクレオチドの新しく合成された鎖が相補塩基対形成のよく知られた規則により予測される、RNAまたはDNAのポリヌクレオチド合成を指す(例えばWatson,J.D.ら、Molecular Biology of the Gene,第4版、W.A.Benjamin,Inc.,Menlo Park カリフォルニア州(1987)を参照できる)。
【0096】
本明細書においては、「増幅産物」とはPCR増幅反応の終了時の2本鎖ポリヌクレオチド集団を指す。増幅産物は元のポリヌクレオチド鋳型およびPCR反応中にポリヌクレオチド鋳型を用いてDNAポリメラーゼにより合成されたポリヌクレオチドを含む。
【0097】
本明細書においては「ポリヌクレオチド鋳型」または「標的ポリヌクレオチド鋳型」または「鋳型」とは、増幅された領域を含むポリヌクレオチドを指す。「本明細書においては「増幅された領域」とは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成されるべきポリヌクレオチドの領域である。例えば、ポリヌクレオチド鋳型の増幅された領域は2つのPCRプライマーが相補である配列の間にある。
【0098】
本明細書においては、「プライマー」という用語はポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズでき、そして、第2のポリヌクレオチド鎖の酵素的合成をプライミングする1本鎖DNAまたはRNA分子を指す。本発明において有用なプライマーは10〜100ヌクレオチド長、好ましくは17〜50ヌクレオチド長、より好ましくは17〜45ヌクレオチド長である。
【0099】
「相補的」とは、塩基対形成を介して2つのポリヌクレオチド鎖の領域の間、または、2つのヌクレオチドの間の配列の相補性の広範な概念を指す。アデニンヌクレオチドはチミンまたはウラシルであるヌクレオチドと特定の水素結合を形成する(「塩基対形成」)ことができる。同様にシトシンヌクレオチドはグアニンヌクレオチドと塩基対形成することができることが知られている。
【0100】
「野生型」という用語は天然に存在する原料から単離される場合に遺伝子または遺伝子産物の特性を有するその遺伝子または遺伝子産物を指す。一方、「修飾された」または「変異体の」という用語は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に改変された特性を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。例えば、本発明における変異体DNAポリメラーゼは低減されたウラシル検出活性を示すDNAポリメラーゼである。
【0101】
本明細書においては、「低減された塩基類似体検出」とはDNA鋳型中の存在する塩基類似体、例えばウラシルまたはイノシンを認識する低減された能力を有するDNAポリメラーゼを指す。この点に関し、「低減された」塩基類似体検出活性を有する変異体DNAポリメラーゼは野生型よりも低値である塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼの変異体である。変異体DNAポリメラーゼ融合物の場合は、変異体DNAポリメラーゼの活性は、相当する非融合物DNAポリメラーゼに匹敵するもの、即ち、野生型酵素の塩基類似体検出活性の10%未満(例えば9.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)を有する。塩基類似体検出活性はGreaggら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96,9045−9050に記載の通り低減したウラシル検出活性を有するDNAポリメラーゼの検出のために記載されたものと同様の試験法に従って測定してよい。あるいは、「低減された」塩基類似体検出とは、塩基類似体を認識する低減された能力を有する変異体DNAポリメラーゼを指し、塩基類似体のその「低減された」認識は、低減された塩基類似体検出活性を有さない野生型DNAポリメラーゼと比較して、少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは90%、最も好ましくは99%以上の>10kbPCRの量の増大により顕在化される。>10kbPCR産物の量はゲル溶出された>10kbPCRDNA産物の分光光度計による吸光度試験によるか、または、例えばMolecular Dynamixs(メリーランド州)FluorImager(商標)(Amersham Biosciences,カタログ番号63−0007−79)を用いた臭化エチジウム染色アガロース電気泳動ゲルにおける>10kbPCR産物の蛍光分析により測定される。
【0102】
本明細書においては、「低減されたウラシル検出」とはDNA鋳型中に存在するウラシル塩基を認識する低減された能力を有するDNAポリメラーゼを指す。この点に関し、「低減された」ウラシル検出活性を有する変異体DNAポリメラーゼは野生型酵素よりも低値のウラシル検出活性を有する、即ち、野生型酵素のウラシル検出活性の10%未満(例えば9.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)を有するDNAポリメラーゼである。ウラシル検出活性は、Greaggら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96,9045−9050に記載の測定法によって決定してもよい。あるいは、「低減された」ウラシル検出とは、ウラシルを認識する低減された能力を有する変異体DNAポリメラーゼを指し、ウラシルのその「低減された」認識は、低減されたウラシル検出活性を有さない野生型DNAポリメラーゼと比較して、少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは90%、最も好ましくは99%以上の>10kbPCRの量の増大により顕在化される。>10kbPCR産物の量はゲル溶出された>10kbPCRDNA産物の分光光度計による吸光度試験によるか、または、例えばMolecular Dynamixs(メリーランド州)FluorImager(商標)(Amersham Biosciences,カタログ番号63−0007−79)を用いた臭化エチジウム染色アガロース電気泳動ゲルにおける>10kbPCR産物の蛍光分析により測定される。
【0103】
本明細書においては、「化学修飾された」とは、化学的または生化学的に修飾されるか、または、非天然または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む核酸を指す。このような修飾は、例えば標識、メチル化、類似体との天然に存在するヌクレオチド1つ以上の置換、未荷電結合のようなヌクレオチド間修飾(例えばメチルホスホネート、ホスホロジチオエート等)、懸垂部分(例えばポリペプチド)、介入物(例えばアクリジン、ソラレン等)キレート形成剤、アルキル化剤および修飾結合(例えばアルファアノマー性核酸等)を包含する。また、水素結合または他の化学相互作用を介した所定の配列への結合能力においてポリヌクレオチドを模倣している合成の分子も包含される。このような分子は当該分野で知られており、例えばペプチド結合が分子の骨格においてリン酸結合の代替となっているものも包含する。
【0104】
本明細書においては、「PCR増強因子」または「ポリメラーゼ増強因子」(PEF)とは、ポリヌクレオチドポリメラーゼ増強活性、例えばPEF、dUTPase、ssbPCNA、RFC、ヘリカーゼ等を有する複合体または蛋白を指す(共に参照により本明細書に組み込まれるHogrefeら、1997,Strategies 10:93−96;および米国特許第6,183,997号)。「PCR増強因子」はまた非蛋白因子、例えばDMSOおよびベタインも包含する。
【0105】
本発明はまた例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,333,158号および国際公開WO01/09347号A2に記載されている補助的因子と組み合わせた変異体の古細菌DNAポリメラーゼも意図する。
【0106】
本明細書においては、「添加剤」とはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)を指す。
【0107】
本発明はまたDNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;および線形または指数的PCR増殖よりなる群から選択される方法を高pHで実施するためのキットを提供する。本発明のキットは高pH緩衝液および/またはPCR増強因子および/または添加剤を含んでよい。
【0108】
本明細書においては、高pH緩衝液とは9より高値のpHを有する緩衝液を指す。本明細書においては、「高pH」とは、9より大きいpHを指す。「高pH」は好ましくは10以上、例えば11、12、13または14である。「高pH」には9より高値のpHが包含され、そして14までのpH、例えばpH9.1、9.5、9.8、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5または14が本発明の「高pH」である。
【0109】
好ましい実施形態においては、高pH緩衝液は、標準的なPCR反応緩衝液、例えば実施例3に記載するクローニングされたPfuの反応緩衝液であるが、緩衝剤成分は高pHとなっている(即ち9.1〜14)。例えば、本発明の緩衝剤成分は10.0または11.8のpHの30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液中の緩衝剤成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝剤成分は最終的PCR反応においては1mM〜1Mの濃度で使用し、そしてpH9.1〜14である。PCR反応用の高アルカリ緩衝液は本発明の融合DNAポリメラーゼまたは融合DNAポリメラーゼ混合物と共に使用する。本発明の緩衝剤成分は例えば、トリス、トリシン、bicine、ビス−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES,TAPSおよびTESを包含する。
【0110】
本明細書においては、「FEN−1ヌクレアーゼ」とは本発明において有用な熱安定性FEN−1を指し、そして例えばM.jannaschii,P.furiosusおよびP.woesei由来の「超好熱性物質」から精製されたFEN−1エンドヌクレアーゼを包含する。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,843,669号を参照できる。
【0111】
本発明の方法によれば、増幅反応にFEN−1を含めることで多部位の変異誘発の効率が劇的に増大する。400ng〜4000ngのFEN−1を各増幅反応に使用してよい。好ましくは400〜1000ng、より好ましくは400〜600ngのFEN−1を増幅反応に使用する。本発明の好ましい実施形態においては、400ngのFEN−1を使用する。
【0112】
本明細書においては、「ThermusDNAリガーゼ」とは各変異誘発プライマーを伸長することにより合成された変異フラグメントをライゲーションして環状の変異体鎖を形成するための多部位変異誘発増幅反応において使用される熱安定性DNAリガーゼである。TthおよびTaqDNAリガーゼはコファクターとしてNADを必要とする。
【0113】
好ましくは、1〜20UのDNAリガーゼを各増幅反応に使用し、より好ましくは2〜15UのDNAリガーゼを各増幅反応に使用する。
【0114】
好ましい実施形態においては、15UのTaqDNAリガーゼを増幅反応に使用する。TaqDNAリガーゼコファクターNDAを0〜1mM、好ましくは0.02〜0.2mM、より好ましくは0.1mMの濃度で使用する。
【0115】
本明細書においては、「混合物」とはDNAポリメラーゼ融合物少なくとも1つおよび非融合のDNAポリメラーゼを含むDNAポリメラーゼ2つ以上の組み合わせを指す(実施例2参照)。本発明は該融合または非融合のDNAポリメラーゼの少なくとも1つが熱安定性であり、古細菌または真正細菌目のDNAポリメラーゼであり、そして/または、PfuDNAポリメラーゼである「混合物」を意図する。1つの融合および1つの非融合のポリメラーゼを含む「混合物」中のDNAポリメラーゼ酵素の比率は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。「混合物」が1つの融合および2つの非融合のポリメラーゼを含む実施形態においては、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比率は、1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。本発明の「混合物」はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた混合物の非融合成分と比較した場合、以下の活性、即ち:プロセシビティ、効率、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性;内因性ホットスタート能、プルーフリーディング活性、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識および塩耐性の1つ以上において>10%増大(後述する試験を用いる)を有する。本発明の混合物はまた、以下の活性、即ち:トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップまたは室温におけるDNAポリメラーゼ活性の1つ以上において、ゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた非融合混合物と比較して>10%低減(後述する通り試験)を有する。1つの実施形態においては、本発明の「混合物」は、単なる混合物の非融合成分の存在下に観察される伸長時間と比較して、5秒、好ましくは15秒、より好ましくは45秒以上低減し得るPCR反応の伸長時間を有する。別の実施形態において、本発明の「混合物」は単なる混合物の非キメラ成分と比較した場合、1、1〜5または5以上のサイクルのPCRの増幅サイクル数が低減している。別の実施形態においては、ブレンドの非融合成分と比較した場合に、より少ない単位(0.001、0.01,0.1または1以上)の本発明の「混合物」が本発明の適用において有用となる。
【0116】
混合物は本明細書に記載したPCR増強因子および/または添加剤も含有してよい。
【0117】
本発明はまた本発明の方法を実施するために作成された組成物および本発明の方法を実施しながら得られる組成物に関する。このような組成物は本発明のポリメラーゼ1つ以上、ヌクレオチド1つ以上、鋳型1つ以上、反応緩衝液または緩衝塩1つ以上、プライマー1つ以上、本発明の方法により作成された核酸産物1つ以上等よりなる群から選択される成分1つ以上を含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
本発明は高pHにおけるPCR、DNA配列決定および変異誘発のプロトコルにおいて使用するためのDNAポリメラーゼを開示する。本発明はゲノムDNA鋳型のPCR増幅を促進し、そして、長PCRの効果を向上させるより短い伸長時間のPCR反応を可能とする。
【0119】
I.本発明のDNAポリメラーゼ
本発明はDNAポリメラーゼ融合物を提供する。本発明において有用なDNAポリメラーゼ融合物は3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有していても有していなくてもよく、即ち、プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングであり、そして好ましくは熱安定性である。本発明は本明細書に定義する融合物ではない野生型DNAポリメラーゼに通常存在する活性1つ以上を修飾する変異1つ以上を保有するDNAポリメラーゼ融合物を提供する。
【0120】
本発明において有用な別の核酸ポリメラーゼを以下に示す。
【0121】
A.バクテリオファージDNAポリメラーゼ(37℃試験で有用)
バクテリオファージDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が別のポリペプチドによりコードされているため、この活性を欠いている。適当なDNAポリメラーゼの例は、T4、T7およびφ29DNAポリメラーゼである。市販されている酵素は、T4(入手元多数、例えばEpicentreより入手可能)およびT7(入手元多数、例えば3’〜5’exo−T7「Sequenase」DNAポリメラーゼの未修飾およびUSBについてはEpicentreより入手可能)である。
【0122】
B.古細菌DNAポリメラーゼ
古細菌に発見されているDNAポリメラーゼには2種の異なるクラス、即ち1.ファミリーB/polI型(Pyrococcus furiosus由来のPfuホモログ)および2.polII型(p.furiosus DP1/DP2の2−サブユニットポリメラーゼのホモログ)がある。両方のクラスに由来するDNAポリメラーゼが関連する5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を生来欠いており、そして3’〜5’エキソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性を有することが分かっている。適当なDNAポリメラーゼ(polIまたはpolII)は所望の試験温度と同様の最適生育温度で古細菌から誘導することができる。
【0123】
熱安定性の古細菌DNAポリメラーゼはPyrococcus種(furiosusGB−D種、woesii,abysii,horikoshii)、Thermococcus種(kodakaraensis KOD1,liroralis,9度North−7種、JDF−3種、gorgonarius)、Pyrodictium occultumおよびArchaeoglobus fulgidusから単離される。適当な古細菌は最高生育温度>80〜85℃または最適生育温度>70〜80℃を示す。古細菌polIDNAポリメラーゼ群由来の適切なPCR酵素は市販されており、例えばPfu(Stratagene、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies,Inc.)、Vent(New Englaind BioLabs)、Deep Vent(New England BioLabs)、Tgo(Roche)およびPwo(Roche)を包含する。
【0124】
上記列挙したものに関連する別の古細菌は以下の参考文献:Archaea:A Laboratory Manual(Robb,F.T.とPlace,A.R.,編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州,1995およびThermophilic Bacteria(KristjanssonmJ.K.編)CRC Press,Inc.,Boca Raton,フロリダ,1992に記載されている。
【0125】
従って本発明はファミリーB/polI型またはpolII型並びにこれらの変異体または誘導体の何れかの熱安定性古細菌DNAポリメラーゼを提供する。
【0126】
表1.クローニングされたファミリーBポリメラーゼの受託情報
Vent Thermococcus litoralis
受託 AAA72101
PID g348689
バージョン AAA72101.1 GI:348689
DBソース 遺伝子座 THCVDPE 受託 M74198.1
THEST THERMOCOCCUS SP.(系統 TY)
受託 O33845
PID g3913524
バージョン O33845 GI:3913524
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THEST,受託 O33845
Pab Pyrococcus abyssi
受託 P77916
PID g3913529
バージョン P77916 GI:3913529
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRAB,受託 P77916
PYRHO Pyrococcus horikoshii
受託 O59610
PID g3913526
バージョン O59610 GI:3913526
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRHO,受託 O59610
PYRSE PYROCOCCUS SP.(系統 GE23)
受託 P77932
PID g3913530
バージョン P77932 GI:3913530
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRSE,受託 P77932
DeepVent Pyrococcus sp.
受託 AAA67131
PID g436495
バージョン AAA67131.1 GI:436495
DBソース 遺伝子座 PSU00707 受託 U00707.1
Pfu Pyrococcus furiosus
受託 P80061
PID g399403
バージョン P80061 GI:399403
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRFU,受託 P80061
JDF−3 Thermococcus sp.
未発表
Baross gi|2097756|pat|US|5602011|12配列 米国特許5602011由来の12
9degN THERMOCOCCUS SP.(系統 9ON−7).
受託 Q56366
PID g3913540
バージョン Q56366 GI:3913540
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THES9,受託 Q56366
KOD Pyrococcus sp.
受託 BAA06142
PID g1620911
バージョン BAA06142.1 GI:1620911
DBソース 遺伝子座 PYWKODPOL 受託 D29671.1
Tgo Thermococcus gorgonarius.
受託 4699806
PID g4699806
バージョン GI:4699806
DBソース pdb:鎖 65,公開 1999年2月23日
THEFM Thermococcus fumicolans
受託 P74918
PID g3913528
バージョン P74918 GI:3913528
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THEFM,受託 P74918
METTH Methanobacterium thermoautotrophicum
受託 O27276
PID g3913522
バージョン O27276 GI:3913522
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_METTH,受託 O27276
Metja Methanococcus jannaschii
受託 Q58295
PID g3915679
バージョン Q58295 GI:3915679
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_METJA,受託 Q58295
POC Pyrodictium occultum
受託 B56277
PID g1363344
バージョン B56277 GI:1363344
DBソース pir:遺伝子座 B56277
ApeI Aeropyrum pernix
受託 BAA81109
PID g5105797
バージョン BAA81109.1 GI:5105797
DBソース 遺伝子座 AP000063 受託 AP000063.1
ARCFU Archaeoglobus fulgidus
受託 O29753
PID g3122019
バージョン O29753 GI:3122019
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_ARCFU,受託 O29753
Desulfurococcus sp.Tok.
受託 6435708
PID g64357089
バージョン GT:6435708
DBソース pdb.鎖 65,公開 1999年1月2日
【0127】
C.真正細菌目のDNAポリメラーゼ:
真正細菌目のDNAポリメラーゼには3つのクラス、即ち、polI、IIおよびIIIが存在する。PolIDNAポリメラーゼファミリーの酵素は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、そして特定のメンバーは3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性も示す。PolIIDNAポリメラーゼは生来より5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているが、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性は示す。PolIIIDNAポリメラーゼは細胞の大部分の複製DNAポリメラーゼに相当し、複数のサブユニットよりなる、PolIIIの触媒サブユニットは5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているが、場合により、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が同じポリペプチド内に位置する。
【0128】
真正細菌目polIIおよびpolIIIのDNAポリメラーゼの市販元はない。
【0129】
種々の市販PolIDNAポリメラーゼがあり、その一部は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失するように修飾されている。
【0130】
適当な熱安定性polIDNAポリメラーゼは種々の好熱性の真正細菌目、例えばThermus種およびThermotoga maritima、例えばThermus Aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)およびThermotoga maritima(TmaU1Tma)から単離できる。
【0131】
上記の真正細菌目に関連した他の真正細菌目は、Thermophilic Bacteria(Krisjansson,J.K.編)CRC Press,Inc.,Boca Raton,フロリダ,1992に記載されている。
【0132】
本発明は更に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,677,152号、第6,479,264号および第6,183,998号に開示されている方法に従って化学修飾されるキメラまたは非キメラのDNAポリメラーゼも提供する。
【0133】
II.変異体DNAポリメラーゼの製造
本発明によれば、DNAポリメラーゼは野生型の、または、野生型ポリメラーゼとは異なった挙動をDNAポリメラーゼにとらせる変異1つ以上、例えば点変異1つ以上、Nおよび/またはC切断、内部の欠失または挿入を含むように修飾された何れかのDNAポリメラーゼから作成できる。本発明に有用なDNAポリメラーゼの変異は、例えば、塩基類似体またはウラシル非感受性を付与するか、忠実度を上昇させるか、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失させるか、または、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を消失させるか、ポリメラーゼ活性を低減するような変異である。有用な変異または切断の特定の例は、ウラシル非感受性を付与するPfuDNAポリメラーゼにおけるV93R、K、E、D、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuDNAポリメラーゼにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqDNAポリメラーゼのN末端切断(KlenTaq)である。DNAポリメラーゼ変異体を作成するための方法は以下に記載するとおりであり、そして他の方法は当該分野で知られている。
【0134】
遺伝子修飾−変異誘発
多様な生物に由来するDNAポリメラーゼの直接の比較によれば、これらの酵素のドメイン構造は高度に保存されており、多くの場合において酵素の十分定義されたドメインにある特定の機能を割り付けることが可能である。例えば、約340アミノ酸に渡る6つの最も保存されたC末端領域は同じ線状の配置で位置しており、そして金属とdNTPの結合部位およびDNA鋳型を保持するための裂け目を形成し、従って重合機能に必須である高度に保存されたモチーフを含んでいる。別の例においては、金属結合1本鎖DNA結合および3’〜5’エキソヌクレアーゼ反応の触媒に関与するE.coliDNAポリメラーゼ内の重要な残基を含む3アミノ酸領域がいくつかの原核生物および真核生物のDNAポリメラーゼ中でアミノ末端半分に同じ線状のアレンジメントで位置している。これらの保存された領域の位置は、必須の機能、例えばDNA重合およびプルーフリーディング活性を保存しながら、修飾された活性を有する変異体のDNAポリメラーゼを製造するための遺伝子的修飾を指向するための有用なモデルを与える。
【0135】
例えば、変異体DNAポリメラーゼは遺伝子的修飾により(例えば野生型DNAポリメラーゼのDNA配列の修飾により)作成できる。DNA配列のランダム並びにターゲティングされた変異を可能にする多くの方法が当該分野で知られている(例えばAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.)。更に、従来およびPCR系の方法の両方を含む部位指向性変異誘発のための多くの市販キットが存在する。例としては、Stratageneより入手可能なEXSITE(商標)PCR系部位指向的変異誘発キット(カタログ番号200502)およびStratageneのQUIKCHANGE(商標)部位指向性変異誘発キット(カタログ番号200518)およびやはりStratageneのCHAMELEON(登録商標)2本鎖部位指向性変異誘発キット(カタログ番号200509)が挙げられる。
【0136】
更にまた、変異体DNAポリメラーゼは当業者の知る方法に従って挿入変異または切断(N末端、内部またはC末端)により作成してもよい。
【0137】
当該分野で知られている部位指向性変異誘発のより以前の方法は1本鎖DNA鋳型の単離を可能にするM13バクテリオファージベクターのようなベクターに変異導入される配列サブクローニングに依存している。これらの方法においては、変異誘発性のプライマー(即ち変異すべき部位にアニーリングすることができるが変異すべき部位においてミスマッチのヌクレオチド1つ以上を保有するプライマー)を1本鎖鋳型にアニーリングし、次に変異誘発性プライマーの3’末端から鋳型の相補物の重合を開始する。次に得られた二重らせんを宿主細菌に形質転換し、所望の変異を有するプラークをスクリーニングする。
【0138】
より最近では、部位指向性変異誘発は1本鎖鋳型を必要としない利点を有するPCR法を使用している。更に、サブクローニングを必要としない方法も開発されている。PCR系の部位指向性変異誘発を行う際にはいくつかの懸案がある。第1にこれらの方法においてはポリメラーゼにより導入される望ましくない変異の拡大を防止するためにPCRサイクルの数を低減することが望ましい。第2に反応中存続し続ける非変異の親分子の数を低減するために選択を使用しなければならない。第3に、単一のPCRプライマーセットの使用を可能とするためには伸長PCR法が望ましい。そして第4に、一部の熱安定性ポリメラーゼの非鋳型依存性の末端伸長のため、PCR生成した変異体産物の平滑末端ライゲーションの前に、末端ポリッシング工程を操作に組み込む必要が生じる場合が多い。
【0139】
後述するプロトコルは以下の工程を介して上記懸案に対応している。第1に使用する鋳型濃度は従来のPCR反応で使用したものより約1000倍高値とし、これにより産物の収率を劇的に低下させること無く、サイクル数を25〜30から5〜10まで低減することができる。第2に、E.coliDamの最も一般的な菌株は配列5−GATC−3においてそのDNAをメチル化するため、制限エンドヌクレアーゼDpnI(認識標的配列:5−Gm6ATC−3、ここでA残基はメチル化されている)を用いて親DNAとの選別を行う。第3に長(即ちプラスミド完全長)のPCR産物の比率を増大させるためにTaqエクステンダーをPCRミックス中に使用する。最後に、PfuDNAポリメラーゼを用いてPCR産物の末端をポリッシュした後に、T4DNAリガーゼを用いた分子内ライゲーションを行う。
【0140】
非キメラ変異体DNAポリメラーゼの単離に関する非限定的な例を以下に詳述する。
【0141】
プラスミド鋳型DNA(約0.5pmol)を1×変異誘発緩衝液(20mMトリスHCl、pH7.5;8mM MgCl2;40μg/ml BSA);12〜20pmoleの各プライマー(当業者はオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング特性に影響する塩基の組成、プライマー長および意図する緩衝塩濃度のような要因を考慮しながら、必要に応じて変異誘発性プライマーを設計してよく;1つのプライマーは所望の変異を含むようにし、そして1つ(同じものまたは他方)は後のライゲーションを促進するための5’リン酸を含有しなければならない)、250μM各dNTP、2.5UTaqDNAポリメラーゼ、および2.5UのTaq Extender(Stratageneより入手可能;Nielsonら(1994)Strategies 7:27および米国特許第5,556,772号参照)を含有するPCRカクテルに添加する。プライマーは参照により本明細書に組み込まれるMatteucciら、1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185−3191のトリエステル法を用いて製造できる。あるいは、例えばシアノエチルホスホロアミダイト化学を用いたBiosearch 8700 DNAシンセサイザー上の自動合成が好ましい場合がある。
【0142】
PCRサイクルは以下の通り、即ち:4分94℃、2分50℃および2分72℃の1サイクル;次いで1分94℃、2分54℃および1分72℃の5〜10サイクルを行う。親鋳型DNAおよび変異誘発プライマーを組み込んだ線状のPCR作成DNAをDpnI(10U)およびPfuDNAポリメラーゼ(2.5U)で処理する。これによりインビボメチル化親鋳型およびハイブリッドDNAのDpnI消化および線状PCR鎖物上の非鋳型志向性のTaqDNAポリメラーゼ伸長塩基のPfuDNAポリメラーゼによる除去が起こる。反応液を30分間37℃でインキュベートし、更に30分72℃とする。0.5mM ATPを含有する変異誘発緩衝液(1×を115ul)をDpnI消化PfuDNAポリメラーゼポリッシュPCR産物に添加する。溶液を混合し、10ulを新しいミクロ遠沈管に写し、T4DNAリガーゼ(2〜4U)を添加する。ライゲーションは37℃で60分間超インキュベートする。最後に、処理した溶液を定法に従ってコンピテントなE.coli内に形質転換する。
【0143】
ランダムに位置する変異1つ以上を保有する変異体のパネルをもたらすランダム変異誘発の方法が当該分野で存在している。次にこのような変異体パネルを、野生型ポリメラーゼと比較して進歩した活性、例えば、低減したDNA重合活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠失および/または低減したウラシル検出活性を有するものがあるかどうか、スクリーニングする(例えば200μM dUTPの存在下および所定のDNAポリメラーゼに対する最適温度における30分間の重合体形態へのdNTP10ナノモルの取り込みを測定することによる)。ランダム変異誘発のための方法の一例はいわゆる「変異性(erroe−prone)PCR法」である。名称が意味するとおり、方法はDNAポリメラーゼが高忠実度取り込みを支援しない条件下で所定の配列を増幅する。種々のDNAポリメラーゼに関する変異性の取り込みを促進する条件は変動するが、当業者は所定の酵素に関するそのような条件を決定してよい。増幅の信頼性において多くのDNAポリメラーゼで変動する要因は例えば緩衝液中の2価の金属イオンの種類および濃度である。従ってマンガンイオンの使用および/またはマグネシウムまたはマンガンイオン濃度の変動をポリメラーゼのエラー率に影響させてよい。
【0144】
変異誘発により生成する所望の変異体DNAポリメラーゼの遺伝子は変異の部位および数を発見するために配列決定してよい。1つ以上の変異を含む変異対に関しては、所定の変異の作用は特定の変異体により運ばれる他の変異とは独立した部位指向性変異誘発により野生型遺伝子に発見された変異を導入することにより評価してよい。次にこのようにして作成された単一の変異体のスクリーニング試験によりその変異単独の作用を調べることができる。
【0145】
1つの実施形態において、本発明は本明細書に記載した添加剤を使用するか使用することなく、本発明のDNAポリメラーゼ融合物1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0146】
好ましい実施形態においては、本発明は少なくとも1つがPfuDNAポリメラーゼより誘導されている、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および変異体DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0147】
別の好ましい実施形態においては、本発明は少なくとも1つがTaqDNAポリメラーゼより誘導されている、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および非キメラDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0148】
別の好ましい実施形態においては、本発明は融合DNAポリメラーゼを用いるか、または、融合DNAポリメラーゼと野生型、変異体または化学修飾されたDNAポリメラーゼの混合物および/または野生型、変異体または化学修飾されたDNAポリメラーゼの製剤を用いるPCR増幅反応において使用される高pH緩衝液を提供する(実施例2参照)。本明細書においては、「DNAポリメラーゼ」製剤は、本明細書に定義する添加剤を伴った、または伴わない、DNAポリメラーゼ2つ以上、例えば2、3、4、5またはそれ以上の混合物である。
【0149】
本開示の利益を有する当業者が知る通り、他のexo+DNAポリメラーゼから誘導されたDNAポリメラーゼ、例えば、VentDNAポリメラーゼ、JDF−3DNAポリメラーゼ、TgoDNAポリメラーゼ、KODDNAポリメラーゼ等を対象となる組成物中で適宜使用してよい。
【0150】
野生型PfuDNAポリメラーゼのアミノ酸およびDNAのコーディング配列は図20に示すとおりである(Genbank 受託番号P80061)PfuDNAポリメラーゼの構造および機能の詳細な説明は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,948,663号;第5,866,395号;第5,545,552号;第5,556,772号に記載されている。
【0151】
対象となる組成物の酵素はまだ単離されていないDNAポリメラーゼを含む場合がある。
【0152】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および融合物ではない変異体または野生型のDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0153】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/280,962号(Sorgeら、2002年10月25日出願)および係属米国特許出願第10/298,680号(Sorgeら、2002年11月18日出願)に開示されているような塩基類似体検出活性を低減させる変異1つ以上を含有する非融合の変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0154】
好ましい実施形態においては、DNAポリメラーゼ2つ以上の混合物はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびアミノ酸位置93においてバリンからアルギニン、バリンからグルタミン酸、バリンからリジン、バリンからアスパラギン酸またはバリンからアスパラギンへの置換を含む本発明の非融合PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含む。
【0155】
本発明は更にDNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびアミノ酸位置93においてバリンからアルギニン、バリンからグルタミン酸、バリンからリジン、バリンからアスパラギン酸またはバリンからアスパラギンへの置換を含む低減された塩基類似体検出活性を有する非融合変異体古細菌DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0156】
低減したウラシル検出を有するPfuDNAポリメラーゼ変異体は以下の通り製造できる。変異はポリメラーゼまたはプルーフリーディング活性に対する影響を最小限としながらウラシル検出を低減させると思われるPfuDNAポリメラーゼ中に導入する。変異誘発に使用するDNA鋳型はpBluescriptにクローニングされたPfupol遺伝子を含む(米国特許第5,489,523号記載のpF72クローン)。点変異はQuikChangeまたはQuikChange Multi Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を用いて導入する。QuikChangeキットを用いる場合、点変異は変異誘発プライマーの対を用いて導入する(V93E、H、K、RおよびN)。QuikChangeMultiキットを使用する場合、1つのリン酸化変異誘発プライマーを取り込むことにより、または、変性コドン(V93GおよびL)を取り込んで作成されたPfuV93変異形のライブラリからランダム変異体を選択することにより導入される。クローンを配列決定して取り込まれた変異を発見する。
【0157】
PfuDNAポリメラーゼにおけるバリン93は図10に示すQuikChangeプライマー配列を用いてグリシン(G)、アスパラギン(N)、アルギニン[R]、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)およびロイシン(L)で置換した。
【0158】
変異体のキメラまたは非キメラのPfuDNAポリメラーゼの活性の試験は以下の通り行う。
【0159】
低減されたウラシル検出活性を有する部分精製された融合または非融合のPfuDNAポリメラーゼ製剤(熱処理細菌抽出液)のPCR中のdUTP取り込みについて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属米国特許出願第10/280,962号(Sorgeら、2002年10月25日出願)に記載の通り試験した。この例では、Pfupol遺伝子を含む2.3kbのフラグメントをPCRプライマー(FPfuLIC)5’gACgACgACAAgATgATTTTAgATgTggAT−3’および(RPfuLIC)5’−ggAACCAAgACCCgTCTAggATTTTTTAATg−3’を用いてプラスミドDNAより得た。増幅反応の組成は1×クローニングPfuPCR緩衝液、7ngプラスミドDNA、100ng各プライマー、2.5UPfu変異体(または野生型Pfu)および200μM各dGTP、dCTPおよびdATPとした。相対的なdUTP取り込みを評価するために、種々の量のdUTP(0〜400μM)および/またはTTP(0〜200μM)をPCR反応カクテルに添加する。増幅反応は以下の通りのサイクルとした。
【表A】
【0160】
本発明は更にDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および低減されたDNA重合活性を有するG387P変異体古細菌DNAポリメラーゼを有する非融合変異体古細菌DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0161】
本発明は更に、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびV93PfuDNAポリメラーゼの別の活性1つ以上、例えばDNA重合活性または3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性をモジュレートする別の変異1つ以上を含む低減されたウラシル検出活性を有する非融合のV93変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。1つの実施形態においては、本発明の非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼはDNAポリメラーゼを3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損とする変異1つ以上を含む。別の実施形態においては、本発明の非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼは非融合V93PfuDNAポリメラーゼのDNA重合活性を低減する変異1つ以上を含む。
【0162】
本発明は更に、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に記載のDNA重合を低減する変異1つ以上を含む低減したウラシル検出活性を有する非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0163】
1つの実施形態において本発明は低減されたDNA重合活性および低減されたウラシル検出活性を有するV93R/G387P、V93E/G387P、V93D/G387P、V93K/G387P二重変異PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0164】
本発明は更に、係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら、2000年10月27日出願)に開示される3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる変異1つ以上を含む低減されたウラシル検出活性を有するV93R、V93E、V93D、V93KまたはV93N変異体PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0165】
1つの実施形態においては、本発明は低減された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性および低減されたウラシル検出活性を有する非融合V93R/D141A/E143A三重変異体PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0166】
本発明は更に、古細菌DNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性を増大または消失させる変異1つ以上の何れかの組み合わせを含む本発明のPfuDNAポリメラーゼ1つ以上を提供する。
【0167】
別の変異を含むDNAポリメラーゼは、当該分野で知られており、本明細書に記載する鋳型DNA分子として本発明のDNAポリメラーゼ、例えばPfuDNAポリメラーゼまたはPfuV93cDNAを使用しながら部位指向性変異誘発により作成される。
【0168】
本発明は本明細書に記載する、そして当該分野で知られた変異の何れかを融合物のDNAポリメラーゼドメインが含んでいるDNAポリメラーゼ融合物を意図している。
【0169】
本発明の低減したDNA重合活性を有するPfuDNAポリメラーゼを作成する方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる争中の米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願);および係属米国特許出願第10/324,846号(Bornsら、;2002年12月20日出願)に開示されている。
【0170】
D141AおよびE143A変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損JDF−3DNAポリメラーゼを作成するために使用する方法は係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている内容を把握している当業者は、確立された部位指向性変異誘発方を用いて、係属米国特許出願第09/698,341号に開示されている通り、非キメラV93PfuDNAポリメラーゼcDNAを含む本発明のDNAポリメラーゼに、相当するD141AおよびE143A変異の両方または他の3’〜5’エキソヌクレアーゼ変異を容易に導入できる。
【0171】
3種の3’〜5’エキソヌクレアーゼモチーフが発見されており、これらの領域における変異はKlenow、φ29、T4、T7およびVentDNAポリメラーゼ、酵母Polα、Polβ、Polγおよびバチルス・サブチルスのPolIIIにおける3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失させることが分かっている(Derbeyshireら、1995,Methods.Enzymol.262:363参照)。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が低減されるか消失した別のDNAポリメラーゼ変異体を作成する方法は当該分野で知られている。
【0172】
5’〜3’および3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性の両方を欠いた市販の酵素はSequenase(exo−T7;USB)、Pfuexo−(Stratagene)、exo−Vent(New England BioLabs)、exo−DeepVent(New England BioLabs)、exo−Klenowフラグメント(Stratagene)、Bst(BioRad)、Isotherm(Epicentre)、Ladderman(Panvera)、KlenTaq1(Ab Peptides),Stoffelフラグメント(Perkin−Elmer)、ThermoSequenase(USB)およびTaqFS(Hoffman−LaRoche)を包含し、これらのいずれも本明細書に開示した本発明の混合物中の非キメラDNAポリメラーゼ成分として使用してよい。
【0173】
本発明によれば、上記した変異のほかに、別の変異または修飾(またはその組み合わせ)1つ以上を目的のポリメラーゼに対して行ってよい。特定の目的の変異または修飾は(1)3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失または低減する;および(2)ジデオキシヌクレオチドの識別を低減する(即ちジデオキシヌクレオチドの取り込みを増大させる)変異の修飾を包含する。ポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性はポリメラーゼ遺伝子を変異することにより、または、5’〜3’エキソヌクレアーゼドメインを欠失させることにより、低減または消失させることができる。そのような変異は、点変異、フレームシフト変異、欠失、および挿入を含む。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性をコードしている遺伝子の領域を当該分野でよく知られた方法を用いて欠失させる。例えば、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性に関連する6つの保存されたアミノ酸の何れか1つを変異させる。TaqDNAポリメラーゼに関するこれらの保存されたアミノ酸の例はAsp18、Glu117、Asp119.Asp120、Asp142およびAsp144である。
【0174】
ポリメラーゼ変異体はポリメラーゼがジデオキシヌクレオチドのような非天然のヌクレオチドを識別できなくするように作成することもできる(米国特許第5,614,365号参照)。O−螺旋内の変化、例えば他の点変異、欠失および挿入を行うことにより、ポリメラーゼを非識別性とすることができる。例えば、この性質を有する1つのTneDNAポリメラーゼ変異体はO−螺旋内のPhe730に対してTyrのような非天然のアミノ酸を置換する。
【0175】
典型的には、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性、識別化成および忠実度は典型的には異なる特質を有するアミノ酸の置換により影響を受ける。例えば、Aspのような酸性アミノ酸は塩基性、中性または極性であるが未荷電のアミノ酸、例えばLys、Arg、His(塩基性);Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp(中性)またはGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln(極性であるが未荷電)に変えてよい。GluはAsp、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGlnに変えてよい。
【0176】
好ましくは、オリゴヌクレオチド指向変異誘発を用いて、コードするDNA分子に沿った何れかの所定の部位における塩基対交換の全ての可能なクラスが行えるような変異対ポリメラーゼを作成する。一般的に、本手法は目的のDNAポリメラーゼをコードする1本鎖ヌクレオチド配列に相補的(1つ以上のミスマッチがあることを除く)なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることを含む。次にミスマッチしたオリゴヌクレオチドをDNAポリメラーゼで伸長し、一方の鎖において配列の望ましい変化を含んでいる2本鎖DNA分子を作成する。配列の変化は当然ながら、アミノ酸の欠失、置換または挿入をもたらす。次に2本鎖ポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに挿入し、このようにして変異ポリペプチドを作成することができる。上記したオリゴヌクレオチド指向変異誘発は当然ながらPCRを介して実施できる。
【0177】
1つの実施形態において非キメラ変異PfuDNAポリメラーゼは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,489,523号に記載されている通り発現させ、精製される。
【0178】
III.DNAポリメラーゼ融合物の製造
本発明のDNAポリメラーゼは、一方のポリペプチドは1つの蛋白の配列またはドメインに由来し、もう一方のポリペプチドは別の蛋白の配列またはドメインに由来する共有結合したポリペプチド少なくとも2個を有する。本発明によれば、DNAポリメラーゼ融合物のドメインの少なくとも1つは本発明の野生型または変異体のDNAポリメラーゼを起源としている。ポリペプチドは直接、または、共有結合リンカー、例えばアミノ酸リンカー、例えばポリギリシンリンカーまたは他の型の化学リンカー、例えば炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えばPEG等を介して連結してよい(例えばHermanson,Bioconjugate techniques(1996)参照)。融合ポリペプチドを形成するポリペプチドは、C末端からC末端、N末端からN末端、またはN末端からC末端に連結することもできるが、典型的にはC末端からN末端に連結される。ポリペプチドドメイン1つ以上を本発明のDNAポリメラーゼ内の内部位置に挿入してよい。融合蛋白のポリペプチドはいずれの順序であることもできる。「融合ポリペプチド」または「キメラ」という用語はまた、保存的に修飾された変種、多形変種、対立遺伝子、変異体、融合蛋白を構成するポリペプチドのサブ配列および種間のホモログとも称する。融合蛋白は1つの蛋白配列に由来するアミノ酸の鎖を別の蛋白配列に由来するアミノ酸の鎖に共有結合することにより、例えば融合蛋白を隣接してコードしている組み換えポリペプチドを製造することにより、作成してよい。融合蛋白は同じか異なる種に由来するアミノ酸の異なる鎖2、3、4以上を含むことができる。融合蛋白内のアミノ酸の異なる鎖は、直接共にスプライシングされるか、または、化学結合基または約200アミノ酸長以上、典型的には1〜100アミノ酸であることができるアミノ酸連結基を介して間接的にスプライシングしてよい。一部の実施形態においては、プロリン残基をリンカーに組み込むことにより、リンカーによる大きな二次構造エレメントの形成を防止する。リンカーは組み換え融合蛋白の一部として合成される可変アミノ酸配列である場合が多い。そのような可変リンカーは当該分野でよく知られている。
【0179】
好ましい実施形態においては、本発明において有用なDNAポリメラーゼ融合物は低減されたDNAポリメラーゼ活性を有するか、低減されたウラシル検出活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼである。更に本発明のDNAポリメラーゼ融合物は3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有していてもいなくてもよい。
【0180】
1つの実施形態においては、DNAポリメラーゼに融合する成分はNまたはC末端において、または何れかの内部の位置において、DNAポリメラーゼに融合した何れかの非天然の蛋白または蛋白ドメインである。DNAポリメラーゼ融合相手(即ち本明細書に記載する融合物の第2のアミノ酸配列)からのDNAポリメラーゼの活性への寄与は、例えば、以下のDNAポリメラーゼ活性、即ち、プロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、忠実度および塩耐性および/または室温における低減されたDNAポリメラーゼ活性の1つ以上の増大を包含する。
【0181】
DNAポリメラーゼ融合物は当該分野で知られた融合蛋白を製造する分子生物学的な手法により製造できる。
【0182】
当該分野でよく知られた方法(Sambrookら、(1989),Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州)を用いて、DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを所望の活性を有する別のポリメラーゼのドメインで置換することができる。本発明のDNAポリメラーゼ融合物を製造する方法はまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1およびPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載されている。
【0183】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は変異1つ以上を含む本発明の異なるDNAポリメラーゼの蛋白ドメインに融合した本発明の1つの野生型DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。
【0184】
別の好ましい実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はPfuまたはTaqDNAポリメラーゼの全体または一部を含む。
【0185】
1つの実施形態においては本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されているとおり、低減されたDNA重合を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0186】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/280,962号(Hogrefeら;2002年10月25日出願)および係属米国特許出願第10/298,680号(Hogrefeら;2002年11月18日出願)および係属米国特許出願第10/324,846号(Bornsら;2002年12月20日出願)に開示されている通り、塩基類似体検出活性を低減する変異1つ以上を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0187】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物が変異1つ以上を含む本発明の異なるDNAポリメラーゼの蛋白ドメインに融合する本発明の1つの変異DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。
【0188】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は本発明の別のDNAポリメラーゼ内の類似の蛋白ドメインを置き換える1つのDNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。本明細書においては、2つの蛋白ドメインは、それらが少なくとも1つのDNAポリメラーゼ活性、例えばプロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、例えば3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性、忠実度、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性または塩耐性を付与するドメインを共有している場合に「類似の」といわれる。
【0189】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載の通りプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を増大させるDNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフを含む。
【0190】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は、国際公開WO97/29209号記載の通りDNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティを増大させるチオレドキシン結合ドメインを含む。
【0191】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はTaqDNAポリメラーゼまたは関連の真正細菌目DNAポリメラーゼに融合した古細菌PCNA結合ドメインを含む。PCNA結合ドメイン−TaqDNAポリメラーゼキメラを含むPCR反応にPCNAを加えることにより、DNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティが増強され、PCR増幅DNAの収率が向上する(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;277(18);16179−88)。
【0192】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は本発明のDNAポリメラーゼに融合した例えばSulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dを含む。本発明のDNAポリメラーゼ融合物、例えばPfuまたはTaqDNAポリメラーゼへのDNA結合蛋白Sso7dおよびSac7dの融合は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1に開示されている通りこれらのDNAポリメラーゼのプロセシビティを大きく増大させる。
【0193】
本発明は当該分野で知られたHhHドメインの何れか(Belovaら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:6015,および図18参照)が本明細書に記載する野生型または変異体のDNAポリメラーゼの何れかに融合しているDNAポリメラーゼ融合物を意図する。HhHは本明細書に記載した野生型または変異体のDNAポリメラーゼのNまたはC末端に直接融合するか、または、何れかの内部の部位に融合できる。1つ以上(例えばH−LまたはE−L)のHhHドメインを用いてDNAポリメラーゼ融合物を作成できる。
【0194】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は低減された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。D141AおよびE143A変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損JDF−3DNAポリメラーゼを作成するために使用される方法は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。係属米国特許出願第09/698,341(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている内容を把握している当業者は、本発明のDNAポリメラーゼ融合物の何れか1つ、即ち、本明細書に定義した低減された塩基類似体検出活性または低減されたDNA重合活性を有するDNAポリメラーゼ融合物内に、相当するD141AおよびE143A変異の両方または他の3’〜5’エキソヌクレアーゼ変異を容易に導入できる。
【0195】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は5’〜3’および3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性の両方を欠いたDNAポリメラーゼまたはその一部、例えば、Sequenase(exo−T7;USB)、Pfuexo−(Stratagene)、exo−Vent(New England BioLabs)、exo−DeepVent(New England BioLabs)、exo−Klenowフラグメント(Stratagene)、Bst(BioRad)、Isotherm(Epicentre)、Ladderman(Panvera)、KlenTaq1(Ab Peptides),Stoffelフラグメント(Perkin−Elmer)、ThermoSequenase(USB)およびTaqFS(Hoffman−LaRoche)を含み、これらのいずれも本明細書に開示した本発明のキメラDNAポリメラーゼ融合物として使用してよい。
【0196】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,795,762号に開示されている通り本発明のDNAポリメラーゼ融合物に増大した忠実度を付与する増強された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0197】
IV.本発明の野生型または変異体の酵素の発現
当該分野で知られている方法を本発明のDNAポリメラーゼを発現させ単離するために適用してよい。多くの細菌発現ベクターは外来性配列によりコードされる蛋白の高濃度の誘導発現を可能とする配列エレメントまたは配列エレメントの組み合わせを含んでいる。例えば、上記した通り、T7RNAポリメラーゼ遺伝子の組み込み誘導型を発現する細菌を、T7プロモーターに連結した変異したDNAポリメラーゼ遺伝子を有する発現ベクターで形質転換してよい。lac−誘導性プロモーターに対する適切なインデューサー、例えばイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によるT7RNAポリメラーゼの誘導は、T7プロモーターからの変異した遺伝子の高濃度の発現を誘導する。
【0198】
細菌の適切な宿主系統は当業者の使用できるものから選択してよい。非限定的な例としては、E.coliの他の菌株と比較してプロテアーゼ欠損であることから、E.coli菌株BL−21が外因性蛋白の発現のために一般的に使用されている。誘導T7RNAポリメラーゼ遺伝子を有するBL−21菌株はWJ56およびER2566を包含する(Gardner&Jack,1999,上出)。特定のポリメラーゼ遺伝子のためのコドンの使用がE.coli遺伝子において通常観察されるものとは異なる場合は、より希少なアンチコドンを有するtRNAをコードするtRNA遺伝子(例えばargU、ileY、leuWおよびproLのtRNA遺伝子)を担持するように修飾されたBL−21系統が存在し、クローニングされた蛋白遺伝子、例えばクローニングされた古細菌酵素遺伝子の高効率発現を可能とする(例えばStratageneから希少コドンtRNAを担持する数種のBL21−CODONPLUSTM細胞系統が入手可能である)。
【0199】
本発明のDNAポリメラーゼの精製のために適している当該分野で知られた多くの方法がある。例えばLawyerら(1993,PCR Meth.&App.2:275)はE.coliにおいて発現されるDNAポリメラーゼの単離に適しており、Taqポリメラーゼの単離のために当初設計された。あるいは、宿主蛋白を破壊するための過熱変性工程および2つのカラム精製工程(DEAR−Sepharoseおよびヘパリン−Sepharoseカラム上)を使用して高活性で約80%純度のDNAポリメラーゼを単離するKongら(1993,J.Biol.Chem.268:1965,参照により本明細書に組み込まれる)の方法を使用してよい。更にまた、DNAポリメラーゼは硫酸アンモニウム分画、次いでQSepharoseおよびDNAセルロースカラム、またはHiTrapQカラム上の夾雑物吸着、次いでHiTrapヘパリンカラムからの勾配溶離により単離してよい。
【0200】
V.融合および非融合DNAポリメラーゼの混合物
本発明のDNAポリメラーゼ融合物ブレンド製剤は少なくとも1つのDNAポリメラーゼ、および、(1)プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングのキメラDNAポリメラーゼ;または(2)プルーフリーディング+非プルーフリーディング、非プルーフリーディング+非プルーフリーディング、または、プルーフリーディング+プルーフリーディングの非融合DNAポリメラーゼ混合物、例えばPfu、Taq、Pfu/Taq、Pfu/exo−Pfu、Taq/exo−Pfu、Pfu/JDF3、またはpol−Pfu(PfuG387P)とのこれらの組み合わせの何れかを含むことができる。1つの融合および1つの非融合のポリメラーゼを含む「混合物」中のDNAポリメラーゼ酵素の比率は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。「混合物」が1つの融合および2つの非融合のポリメラーゼを含む実施形態においては、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比率は、1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。本発明の製剤は個々の成分の比に関する限定条項はない。
【0201】
1つの実施形態において、本発明の混合物製剤は2.5UPfu/0.25UキメラPfuである。
【0202】
DNAポリメラーゼ融合物とブレンドされる野生型DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性およびプルーフリーディング活性のネイティブの水準を有する何れかのネイティブまたはクローニングされたDNAポリメラーゼであることができ、そして、好ましくは、PfuまたはTaqのような熱安定性である。DNAポリメラーゼ融合物および野生型DNAポリメラーゼは上記した比の範囲でブレンドされ、そして、何れかの複製アクセサリ因子またはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)と混合することもできる。
【0203】
本発明のDNAポリメラーゼ融合物とブレンドされる変異体DNAポリメラーゼは野生型DNAポリメラーゼとは異なる活性を有するDNAポリメラーゼを生成する導入された変異および/または切断を有する何れかのDNAポリメラーゼである。変異体は何れかの量のポリメラーゼおよび/またはプルーフリーディング活性を有する。有用な変異または切断の特定の例は、ウラシル非感受性を付与するPfuDNAポリメラーゼにおけるV93R、K、EまたはD、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuDNAポリメラーゼにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqのN末端切断(KlenTaq)である。
【0204】
本発明はまた向上した逆転写活性を有する別の変異1つ以上を含む変異体V93R、V93E、V93D、V93KまたはV93N非融合PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0205】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物の非融合DNAポリメラーゼに対する比率が1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である混合物を提供する。本発明はDNAポリメラーゼ融合物と1つより多い非融合DNAポリメラーゼの混合物を含む混合物を意図する。非融合DNAポリメラーゼ2つと組み合わせられたDNAポリメラーゼを含む混合物については、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比の範囲は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。
【0206】
VI.要件発明の用途
本発明は本明細書に定義する高pHで本発明のポリメラーゼ融合物を使用する方法を提供する。
【0207】
本発明で有用な高pH緩衝液は例えば緩衝成分が高pH(即ち9.3〜14)であるクローニングPfu反応緩衝液(実施例3に記載)のような標準的なPCR反応緩衝液である。以下の実施例において使用する緩衝成分はpH10.0または11.8における30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液の緩衝成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝成分は最終PCR反応において1mM〜1Mの濃度で使用し、そして9.5〜14の何れかのpHであってよい。本発明の緩衝成分は例えばトリス、トリシン、bicine、Bis−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPSおよびTESである。
【0208】
1つの態様において、本発明は要件となる発明の組成物を用いたDNA合成のための方法を提供する。典型的には、ポリヌクレオチドの合成は合成プライマー、合成鋳型、新しく合成されるポリヌクレオチドに取り込まれるためのポリヌクレオチド前駆体(例えばdATP、dCTP、dGTP、dTTP)等を必要とする。ポリヌクレオチド合成を行うための詳細な方法は当該分野の当業者にはよく知られており、例えばMolecular Cloning第2版、Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)に記載されている。
【0209】
A.増幅反応における適用
「ポリメラーゼ連鎖反応」即ち「PCR」は特定のポリヌクレオチド鋳型配列を増幅するためのインビトロの方法である。PCRの手法は多くの文献、例えばPCR:A Practical Approach,M.J.McPhersonら、IRL Press(1991),PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら、Academic Press(1990)およびPCR Technology:Principals and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich,Stockton Press(1989)に記載されている。PCRはまた、多くの米国特許、例えば米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;第4,889,818号;第5,075,216号;第5,079,352号;第5,104,792号;第5,023,171号;第5,091,310号;および第5,066,584号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0210】
本発明により与えられる利点を簡単に理解するために、PCRの要約を示す。PCR反応は温度サイクルの反復シリーズを含み、典型的には50〜100μlの容量で行われる。反応混合物はdNTP(4種のデオキシヌクレオチドdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPの各々)、プライマー、緩衝液、DNAポリメラーゼおよびポリヌクレオチド鋳型を含む。PCRは増幅すべき標的ポリヌクレオチド配列の2本鎖とハイブリダイズするプライマー2つを必要とする。PCRにおいては、この2本鎖標的配列を変性させ、プライマー1つを変性した標的の各鎖にアニーリングする。プライマーは標的ポリヌクレオチドが相互に脱離した部位において、相補体から分離した際の一方のプライマーの伸長産物が、もう一方のプライマーにハイブリダイズできるような方向において、アニーリングする。あるプライマーが標的配列にハイブリダイズすると、プライマーはDNAポリメラーゼの作用により伸長される。次に伸長産物を標的配列から変性させて方法を反復する。
【0211】
この方法の継続的サイクルにおいて、早期のサイクルで生成した伸長産物はDNA合成の鋳型として作用する。第2サイクルの開始時に、増幅産物は対数的速度で蓄積を開始する。増幅産物は最終的には第2のプライマーに相補的な配列が後続する第1のプライマーの配列を含む第1の鎖および第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む個別の2本鎖DNA分子である。
【0212】
PCR法によれば大量の増幅が可能であるため、高濃度DNAの試料、陽性対照鋳型または前の増幅から引き継がれた低濃度のDNAは、意図的に添加された鋳型DNAの非存在下であっても、PCR産物を与えうる。可能であれば、全ての反応混合物をPCR産物分析および試料調製から離れた領域でセットアップする。RNA/DNAの調製、反応混合および試料分析のための専用または使い捨ての容器、溶液およびピペット(好ましくは陽圧置換ピペット)を使用することにより、交差汚染を最小限にする。参照により本明細書に組み込まれるHiguchiとKwokm 1989,Nature,339:237−238,KwokとOrrego,Innisら編、1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,カリフォルニア州を参照できる。
【0213】
本明細書に記載する酵素はdUTPを取り込むPCR酵素を必要とするdUTP/UNGクリーンアップ法のためにも有用である(Longoら、上出)。
【0214】
1.熱安定性酵素
PCR増幅のためには、本発明において使用される酵素は好ましくは熱安定性である。本明細書においては、「熱安定性」とは熱に対して安定であり、熱抵抗性であり、そして、高温、例えば50〜90℃で機能する酵素を指す。本発明の熱安定性酵素は増幅反応のために有効であるべき唯一の基準、即ち、酵素は2本鎖ポリヌクレオチドの変性を起こすために必要な時間、高温に付されても非可逆的に変性(不活性化)されてはならないということを満足しなければならない。「非可逆的な変性」とは、この関連において使用する場合は酵素活性の永久的および完全な消失をもたらす過程を意味する。変性に必要な加熱条件は、例えば緩衝塩濃度および変性すべきポリヌクレオチドの長さおよびヌクレオチド組成により異なるが、典型的には、温度およびポリヌクレオチド長に主に依存する時間、典型的には短いポリヌクレオチドの場合の0.25分〜DNAの長片の場合の4.0分にわたり、短いポリヌクレオチドの場合の85℃から105℃までの範囲である。緩衝塩濃度および/またはポリヌクレオチドのGC組成が上昇するに従い、より高温も耐容性となる場合もある。好ましくは、酵素は90〜100℃で非可逆的に変性されない。本発明によれば非可逆的に変性されない酵素は増幅反応の間、少なくとも10%、または少なくとも25%、または少なくとも50%以上の機能または活性を維持する。
【0215】
2.PCR反応混合物
要件となる酵素混合物の他に、当業者は合成/増幅反応の忠実度を向上させるために他のPCRパラメーターも使用してよい。PCRの忠実度はdNTPの濃度、反応当たり使用する酵素の単位、pHおよび反応中に存在するdNTPに対するMg2+の比のような要素に影響されることが報告されている(Mattilaら、上出)。
【0216】
Mg2+濃度はプライマー−鋳型相互作用を安定化させることにより鋳型DNAへのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリングに影響し、有機層はまた鋳型−プライマーとのポリメラーゼの複製複合体も安定化させる。従って、非特異的アニーリングを増大させ、望ましくないPCR産物を生成する(ゲル中の複数のバンドを生じる)。非特異的増幅が起こる場合は、Mg2+の濃度を低下させる必要が生じるか、または、EDTAを添加してMg2+をキレートし、増幅の精度および特異性を上昇させることができる。
【0217】
他の2価のカチオン、例えばMn2+またはCo2+もまたDNA重合に影響する場合がある。各DNAポリメラーゼに適するカチオンは当該分野で知られている(例えばDNA Replication 第2版、上出を参照)。2価のカチオンはMgCl2、Mg(OAc)2、MgSO4、MnCl2、Mn(OAc)2またはMnSO4のような塩の形態で供給される。トリス−CHl緩衝液中の使用可能なカチオン濃度はMnCl2の場合は0.5〜7mM、好ましくは0.5〜2mMであり、MgCl2の場合は0.5〜10mMである。Bicine/KOAc緩衝液中の使用可能なカチオン濃度はMn(OAc)2の場合は1〜20mM、好ましくは2〜5mMである。
【0218】
DNAポリメラーゼに必要な1価のカチオンは塩化物または酢酸塩としてのカリウム、ナトリウム、アンモニウムまたはリチウム塩で供給される。KClの場合は、濃度は1〜200mM、好ましくは濃度は40〜100mMであるが、最適濃度は反応において使用されるポリメラーゼにより変動してよい。
【0219】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を2ナトリウムまたはリチウムの塩のようなdATP、dCTP、dGTP、dUTPおよびdTTPのような塩の溶液として添加する。本発明においては各々1μM〜2mMの範囲の終濃度が適当であり、そして100〜600μMが好ましいが、ヌクレオチドの最適濃度は総dNTPおよび2価金属イオンの濃度、および、緩衝液、塩、特定のプライマーおよび鋳型によりPCR反応において変動してよい。より長い産物、即ち1500bpより長いものについては、トリス−HCl緩衝液を用いる場合は500μMの各dNTPが好ましい。
【0220】
dNTPは2価のカチオンとキレート形成するため、使用する2価のカチオンの量は反応におけるdNTPの濃度に従って変更する必要がある。過剰な量のdNTP(例えば1.5mM超)はエラー率を増大させ、DNAポリメラーゼを阻害する可能性がある。従って、dNTPを低下(例えば10〜50μMまで)させることがエラー率を低下させる。より長いサイズの鋳型を増幅するためのPCR反応はより多くのdNTPを要する場合がある。
【0221】
PCR反応緩衝液は高pH(即ち9.1〜14)の緩衝成分を有する以外はクローニングPfu反応緩衝液のような標準的なPCR反応緩衝液である。適当な緩衝成分の一例はpH10.0または11.8の30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液中の緩衝剤成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝剤成分はpH9.1〜14の最終的PCR反応においては1mM〜1Mの濃度で使用する。本発明で有用な緩衝剤成分は例えば、トリス、トリシン、bicine、Bis−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPSおよびTESを包含する。
【0222】
PCRはDNA増幅のための極めて強力なツールであり、従ってほとんど鋳型DNAを必要としない。しかしながら一部の実施形態においては、エラーの確立を低下させるために、より高いDNA濃度を用いるが、鋳型が多すぎると夾雑物の量を増大させ、効率を低下させる場合がある。
【0223】
通常は3μMまでのプライマーを使用するが、高いプライマーの鋳型に対する比は非特異的増幅およびプライマー−二量体形成をもたらす場合がある。従って通常はプライマー−二量体形成を回避するためにプライマー配列を確認する必要がある。
【0224】
本発明は鋳型におけるシトシンの脱アミノ化を最小限にすることにより、そして、より高値の変性時間および変性温度の使用を可能にすることにより、GCリッチのDNA鋳型のPCRを増強する低減したウラシル検出活性を有するPfuV93R、V93E、V93K、V93DまたはV93Nの融合または非融合のDNAポリメラーゼを提供する。
【0225】
3.サイクリングパラメータ
変性時間は鋳型のGC含量が高値の場合は増大する場合がある。より高いアニーリング温度は高いGC含量を有するプライマーまたはより長いプライマーの場合に必要となる。勾配PCRはアニーリング温度を決定する通常の方法である。伸長時間はより大きいPCR産物の増幅の場合には延長しなければならない。しかしながら、伸長時間は酵素の損傷を制限するため可能な限り低減する必要がある。
【0226】
サイクル数は鋳型DNAの数が極めて少ない場合は増大し、そして多量の鋳型DNAを使用する場合は低下する。
【0227】
4.PCR増強因子および添加剤
PCR増強因子もまた増幅の効率を向上させるために使用してよい。本明細書においては「PCR増強因子」または「ポリメラーゼ増強因子(PEF)」とは、ポリヌクレオチドポリメラーゼ増強活性を有する複合体または蛋白を指す(共に参照により本明細書に組み込まれるHogrefeら、1997,Strategies 10:93−96;米国特許第6,183,997号)。PfuDNAポリメラーゼの場合は、PEFはネイティブの形態(P50およびP45の複合体)で、または組み換え蛋白としてP45を含む。PfuP50およびP45のネイティブの複合体においては、P45のみがPCR増強活性を示す。P50蛋白は細菌フラボ蛋白と構造において同様である。P45蛋白はdCTP脱アミノ酵素およびdUTPaseと構造が同様であるが、dUTPをdUMPおよびピロリン酸に変換するdUTPaseとしてのみ機能する。PEFは本発明によれば、古細菌細菌原料(例えばPyrococcus furiosus)から得られる単離または精製された天然に存在するポリメラーゼ増強蛋白;ポリメラーゼ増強活性を有するPfuP45と同じアミノ酸配列を有する完全または部分的に合成された蛋白またはその類似体;天然に存在するか完全または部分的に合成された蛋白の1つ以上のポリメラーゼ増強混合物;天然に存在するか完全または部分的に合成された蛋白の1つ以上のポリメラーゼ増強蛋白複合体;または、該天然に存在する蛋白の1つ以上を含有するポリメラーゼ増強制の部分精製された細胞抽出液よりなる群から選択することもできる(米国特許第6,183,997号、上出)。PEFのPCR増強活性は当該分野で知られた手段により定義される。PEFの単位の定義はdUTPからのピロリン酸(PPi)の生成をモニタリングすることにより測定されるPEF(P45)のdUTPase活性に基づいている。例えば、PEFをdUTP(1×クローニングPfuPCR緩衝液中10mM dUTP)と共にインキュベートし、その間、PEFがdUTPを加水分解してdUMPとPPiとする。形成されたPPiの量をSigma(#P7275)から市販されているカップルド酵素試験系を用いて定量する。活性の1単位は時間当たり(85℃)形成されたPPiの4.0ナノモルとして計算上定義される。
【0228】
他のPCR添加剤もまたPCR反応の精度および特異性に影響する。0.5mM未満のEDTAを増幅反応混合物中に存在させてよい。Tween−20(商標)およびNonidet(商標)P−40のような洗剤は酵素希釈緩衝液中に存在させる。ノニオン系洗剤の終濃度は約0.1%以下が適切であるが、0.01〜0.05%が好ましく、ポリメラーゼの活性を妨害しない。同様に、グリセロールを酵素調製物中に存在させる場合が多く、一般的には反応混合物中1〜20%の濃度まで希釈する。グリセロール(5〜10%)、ホルムアミド(1〜5%)またはDMSO(2〜10%)を高GC含量または長い(例えば>1kb)鋳型DNAのPCRにおいて添加することができる。これらの添加剤はプライマー−鋳型ハイブリダイゼーション反応のTm(融点)およびポリメラーゼ酵素の熱安定性を変化させる。BSA(0.8μg/μl以下)がPCR反応の効率を向上させる場合がある。ベタイン(0.5〜2M)もまた高GC含量およびDNA長フラグメントについては有用である。塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC、>50mM)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)およびトリメチルアミンNオキシド(TMANO)も使用してよい。上記した各添加剤の最適濃度を決定するために試験PCR反応を実施してよい。
【0229】
本発明は添加剤、例えば抗体(ホットスタートPCRの場合)およびssb(1本鎖DNA結合蛋白;より高い特異性)を提供する。本発明はまたアクセサリ因子、例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,333,158号および国際公開WO01/09347号A2に記載のものと組み合わせた変異体古細菌DNAポリメラーゼも意図する。
【0230】
種々の特異的PCR増幅が当該分野で使用可能である(例えば参照により本明細書に組み込まれるErlich,1999,Rev.Immunogenet.,I:127−34;PPrediger 2001,Methods Mol.Biol.160:49−63;Jurecicら、2000,Curr.Opin.Microbiol.3:316−21;Triglia,2000,Methods Mol.Biol.130:79−83;MaClellandら、1994,PCR Methods Appl.4:S66−81;AbramsonとMyers,1993,Current Opinion in Biotechnology,4:41−47を参照できる)。
【0231】
要件となる発明はPCR用途、例えばi)非特異的増幅を低減するホットスタートPCR;ii)高いアニーリング温度で開始し、次に段階的にアニーリング温度を低下させることにより非特異的なPCR産物を低減させるタッチダウンPCR;iii)アウターセットのプライマーおよびインナーセットのプライマーを使用することより信頼性の高い産物を合成するネステッドPCR;iv)既知配列に隣接する領域の増幅のためのPCR;(この方法では、DNAを消化し、所望のフラグメントをライゲーションにより環化し、次に既知配列に相補のプライマーを用いたPCRにより外側に伸長する);v)AP−PCR(任意プライミング)/RAPD(ランダム増幅多形DNA);これらの方法は任意のオリゴヌクレオチドを使用した増幅によりあまり知られていない標的配列を有する種からゲノムフィンガープリントを作成する;vi)RNA指向性DNAポリメラーゼ(例えば逆転写酵素)を使用してcDNAを合成し、次にこれをPCRに使用するするRT−PCR。この方法は組織または細胞における特定の配列の発現の検出において極めて感度が高い。これはまたmRA転写物の定量のためにも使用してよい;vii)RACE(cDNA末端の急速増幅)。これはDNA/蛋白配列の情報が限定されている場合に使用する。この方法はcDNAの3’または5’末端を増幅し、各々1つのみの特異的プライマー(+アダプタープライマー)を有するcDNAのフラグメントを形成する。次にオーバーラップするRACE産物を合わせて完全長cDNAとする;viii)種々の組織において異なって発現される遺伝子を発見するために使用されるDD−PCR(示差ディスプレイPCR)。DD−PCRにおける第1工程はRT−PCRを含み、次に短い意図的に非特異性とされたプライマーを用いて増幅を行う;ix)同じ標本におけるDNA配列の独特の標的2つ以上を同時に増幅するマルチプレックスPCR。1つのDNA配列を対照として使用することによりPCRの品質を評価する;x)同じセットのプライマーにつき標的DNAを競合させる(競合的PCR)内標準DNA配列(ただしサイズは異なる)を用いるQ/C−PCR(低調的競合的);xi)遺伝子を合成するために使用する帰納的PCR。この方法で用いられるオリゴヌクレオチドは末端が重複(〜20塩基)したセンスおよびアンチセンスの鎖に交替して遺伝ストレッチ(>80塩基)に相補的である;xii)非対称PCR;xiii)インサイツPCR;xiv)部位指向性PCR変異誘発、において使用できるが、これに限定されない。
【0232】
本発明は何れかの特定の増幅系に限定されるわけではない。他の系が開発されれば、それらの系は本発明の実施による利益を被る。
【0233】
B.PCR増幅産物の直接クローニングにおける適用
要件となる酵素を使用して作成した増幅産物は当該分野で知られた何れかの方法によりクローニングすることができる。1つの実施形態においては、本発明はPCR増幅産物の直接のクローニングを可能にする組成物を提供する。
【0234】
PCR産物をクローニングするための最も一般的な方法はプライマー分子末端上へのフランキング制限部位の取り込みを含む。PCRサイクルを実施し、次に増幅されたDNAを精製し、適切なエンドヌクレアーゼで制限し、適合するベクター調製物にライゲーションする。
【0235】
PCR産物を直接クローニングするための方法は、制限認識配列を有するプライマーの調製の必要を排除し、そしてクローニングのためのPCR産物を調製する制限工程の必要を排除する。更に、そのような方法は好ましくは精製工程を介することなく直接PCR産物をクローニングできるようにする。
【0236】
米国特許第5,827,657号および第5,487,993号(参照により本明細書に組み込まれる)はPCR生成した核酸の3’末端に結合させた単一の3’−デオキシ−アデノシンモノリン酸(dAMP)残基を利用するDNAポリメラーゼを用いたPCR産物の直接クローニングのための方法を開示している。適当な制限酵素と反応させると単一の3’−末端デオキシチミジン一リン酸(dTMP)残基を与える認識配列を有するベクターを作成する。即ち、適当な制限部位を内部に有するプライマーを作成する必要なく、遺伝子のPCR生成コピーをベクターに直接クローニングできる。
【0237】
TaqDNAポリメラーゼは鋳型の非存在下においてPCR産物の3’末端に単一のdATPを付加させる末端トランスフェラーゼ活性を示す。この活性はTaqを用いて増幅したPCR産物を単一の3’dTオーバーハングを含有するベクターに直接ライゲーションするTAクローニング法の基本となる。一方、PfuDNAポリメラーゼは末端トランスフェラーゼ活性を欠いており、即ち、平滑末端ベクターに効率的にクローニングされる平滑末端PCR産物を生成する。本発明はまた参照によりその全体が本明細書に組み込まれる争中の米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されている通り、Taq(5U/ul)、組み換えPEF(4U/ul)およびPfuG387P(40ng/μl)の混合物を含有するEasyA組成物を包含する。2.5U/ul即ちul当たり〜20〜50ngの低減された塩基類似体検出活性を有するクローニングされた古細菌DNAポリメラーゼを用いると、Taq:Pfuの比率は好ましくは1:1、より好ましくは2:1以上である。
【0238】
1つの実施形態において、本発明は高pHにおいてDNAポリメラーゼ融合物の存在下に生成され、その後、15〜30分間72℃でdATPの存在下TaqDNAポリメラーゼと共にインキュベートされるPCR産物を提供する。次に増幅されたDNA産物の末端に3’−dAMPを添加することにより、当該分野でよく知られた方法に従ったTAクローニングベクター内へのクローニングを可能とする。
【0239】
C.DNA配列決定における適用
本発明はまた高pHでプライマー伸長反応を触媒するための熱安定性DNAポリメラーゼ融合物を使用したジデオキシヌクレオチドDNA配列決定方法を提供する。ジデオキシヌクレオチドDNA配列決定のための方法は当該分野で知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,216号、第4,795,699号および第5,885,813号に開示されている。本発明は低減されたddNTP識別を有するexo−Pfu(例えばD141A/E143A二重変異体)またはJDF3P410L/A485T変異体を含むDNAポリメラーゼ融合物を包含する。
【0240】
D.変異誘発における適用
本発明のDNAポリメラーゼ融合物はまたPCR系または直線増幅系の変異誘発に関わる向上した効果を提供する。従って本発明は高pHにおける部位指向性変異誘発のためのDNAポリメラーゼ融合物および市販のキット、例えばQuikChange Site−directed Mutagenesis、QuikChange Multi−Site−Directed Mutagenesis(Stratagene)への、その組み込みを提供する。部位指向性変異誘発法および試薬は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/198,449号(Hogrefeら;2002年7月18日出願)に記載されている。本発明はまたMutazime(PEFと組み合わせたexo−Pfu、GeneMorph Kit)も包含する。GeneMorphのキットは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/154,206号(2002年5月23日出願)に開示されている。
【0241】
本明細書に記載したDNAポリメラーゼ融合物は従来のDNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ製剤と同様の方法で使用され、そして、PCRを含む何れかのプライマー伸長用途において高pHで使用することによりより短い伸長時間で高い生成物収率をもたらすことができる。特に、典型的には1〜2分/kbの伸長時間を必要とし、増幅に数時間かかるゲノム標的の増幅は、本明細書に記載したDNAポリメラーゼ融合物を用いれば伸長時間が5〜30秒/kb以下まで低減されるため、開示した発明により大きく促進される(実施例3参照)。
【0242】
本発明の他の用途はRT−PCR、部位指向性変異誘発およびランダム変異誘発を包含する。これらの用途の全てにおいて使用される本発明のDNAポリメラーゼ融合物は長さの許容力を増大させ、反応時間を短縮し、そして、全ての標準的プロトコルにおいて全体的な性能を向上させる(例えば3参照)。
【0243】
プルーフリーディング活性(3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性)を有するDNAポリメラーゼ融合物は高忠実度のPCRのために有用である。高忠実度PCRに有用なDNAポリメラーゼ融合物は、複合ゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた相当する非融合ポリメラーゼ(3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有する)のみの場合と比較して、≧10%増大した3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性およびPCR忠実度および取り込み精度を示す。
【0244】
より高い誤挿入および/または誤対形成伸長の頻度を有するDNAポリメラーゼ融合物はPCRランダム変異誘発に有用である。PCRランダム変異誘発に有用なDNAポリメラーゼ融合物は好ましくは、プラスミド鋳型のための相当する非融合のポリメラーゼと比較して、≧10%増大した変異誘発特性または変異スペクトルの変化を示す。
【0245】
「変異誘発特性」とは変異率およびアンプリコンのkb当たりの変異例の全体数を意味する。
【0246】
「変異スペクトル」とは一過性および転換型の変異の数を意味する。「変異スペクトル」とはまた一過性の転換型に対する比も包含する。好ましくは、一過性の転換型に対する比は1:1である。
【0247】
本発明において意図するDNAポリメラーゼ融合物は全てPCRおよびRT−PCRに有用である。
【0248】
PCR増幅および直線増幅のために使用されるプルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼ融合物は部位指向性変異誘発に有用である。
【0249】
3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたDNAポリメラーゼ融合物は配列決定用途に有用である。配列決定に有用なDNAポリメラーゼ融合物はより短い伸長時間、より高い効率、より高い特異性、より高い忠実度(より高精度の取り込み)およびより高いプロセシビティ(配列決定鋳型のための混合物の非キメラ成分より≧10%高値の増大)の1つ以上を示す。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたDNAポリメラーゼ融合物もまたランダム変異誘発に有用である。
【0250】
キット
本発明はまた、要件となる組成物の容器1つ以上、および、一部の実施形態においてはPCRにおける合成を含むポリヌクレオチド合成のために使用する種々の試薬の容器を有するパッケージユニットを含むキットフォーマットを意図する。キットはまた、以下の要素、即ち:ポリヌクレオチド前駆体、プライマー、緩衝液(好ましくは高pH緩衝液)、使用上の注意および対照品の1つ以上を含んでよい。キットは本発明の方法を実施するための適当な比率で混合された試薬の容器を含んでよい。試薬の容器は好ましくは要件となる方法を実施する際に測定工程を不要にする単位量の試薬を含有する。
【0251】
本発明は本発明のDNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液、PCR増強試薬、および、PCR増幅、DNA配列決定または変異誘発のための試薬を含むキットを意図する。
【0252】
DNAを配列決定するためのキットは多くの容器手段を含む。第1の容器手段は例えば本発明のポリメラーゼの実質的に精製された試料を含む。第2の容器手段はDNA鋳型に相補なDNA分子を合成するために必要とされる1種または多くの種類のヌクレオチドを含んでよい。第3の容器手段は1種または多くの異なる種類のターミネーター(例えばジデオキシヌクレオシド三リン酸)を含んでよい。第4の容器手段はピロリン酸を含んでよい。上記した容器手段のほかに、1種または多くのプライマーおよび/または適当な配列決定緩衝液、好ましくは高pH緩衝液を含む、別の容器手段をキットに含めてよい。
【0253】
核酸の増幅または合成のために使用されるキットは例えば本発明の実質的に純粋なポリメラーゼ融合物を含む第1の容器手段、および、単一種類のヌクレオチドまたはヌクレオチドの混合物および/または高pH緩衝液を含む別の容器手段の1つまたは多くを含む。
【0254】
種々のプライマー並びに適当な増幅用または合成用の緩衝液をキットに含めてよい。
【0255】
所望により、本発明のキットはまた核酸分子の合成または配列決定の間に使用してよい検出可能に標識されたヌクレオチドを含む容器手段も含んでよい。多くの標識の1つをこのようなヌクレオチドを検出するために使用してよい。代表的な標識の例は、放射性同位体、蛍光標識、ケミルミネセント標識、バイロルミネセント標識および酵素標識である。
【0256】
以上のように本発明を詳述したが、これは特段の記載が無い限り本発明を限定する意図のない説明目的のみに提示される以下の実施例を参照することにより更に容易に理解される。
【実施例】
【0257】
実施例1.
DNAポリメラーゼ融合物の構築
異なるDNAポリメラーゼのドメインを組み合わせることにより、例えばE.coliDNAポリメラーゼI中の相同部位内にバクテリオファージT7のDNAポリメラーゼのチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメインの挿入により、キメラを作成する。これによりチオレドキシン存在下におけるキメラE.coliDNAポリメラーゼIのプロセシビティの実質的な増大が促進される(Bedford,E.ら、PNAS,USA vol.94,pp.479−484,1997年1月、Biochem.)。この手法の別の例はTaqDNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの付加である。次にPCNAをTaqキメラを有するPCR反応液に添加し、プロセシビティを増強し、より高値の収率を得る(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;177(18);16179−88)。
【0258】
キメラDNAポリメラーゼはまたDNAポリメラーゼに2本鎖DNA結合蛋白のエレメント(蛋白またはドメイン)を組み合わせることにより作成する。DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフがTaqDNAポリメラーゼのNH(2)末端またはCOOH末端、TaqDNAポリメラーゼまたはPfuDNAポリメラーゼのStoffelフラグメントに付加されている。得られるキメラは増大したプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を有する(Pavlov,AR.ら、PNAS USA 2002年10月15日;99(21);13510−5)。別の例はSulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dまたは古細菌PCNADNA結合ドメインとのDNAポリメラーゼの融合物である。この手法はPfuまたはTaqDNAポリメラーゼのプロセシビティを増強するために使用される(国際公開WO01/92501号A1)。
【0259】
本発明のDNAポリメラーゼ、例えばPfu融合物蛋白はPCT/US0117492またはPavlovら、上出に記載の通り精製する。
【0260】
(実施例2)
キメラDNAポリメラーゼ混合物製剤
キメラDNAポリメラーゼ混合物製剤はキメラDNAポリメラーゼ、および、(1)プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングのキメラDNAポリメラーゼ;または(2)プルーフリーディング+非プルーフリーディング、非プルーフリーディング+非プルーフリーディング、または、プルーフリーディング+プルーフリーディングのDNAポリメラーゼ混合物、例えばPfu、Taq、Pfu/Taq、Pfu/exo−Pfu、Taq/exo−Pfu、Pfu/JDF3、またはpol−Pfu(PfuG387P)とのこれらの組み合わせの何れかよりなる。混合物製剤の特定の非限定的な例は2.5UPfu/0.25UキメラPfuである。キメラDNA混合物は少なくとも1つの野生型および/または少なくとも1つの変異体のDNAポリメラーゼ(本明細書において定義)と組み合わせてキメラDNAポリメラーゼを含む。
【0261】
DNAポリメラーゼキメラとブレンドする野生型DNAポリメラーゼはポリメラーゼ活性、プルーフリーディング活性のネイティブの水準を有する何れかのネイティブまたはクローニングされたDNAポリメラーゼであり、そして好ましくはPfuまたはTaqのような熱安定性である。キメラDNAポリメラーゼとwtDNAポリメラーゼをブレンド(例えば本明細書に記載した何れかの比において)し、そして何れかの複製アクセサリ因子(DNA合成を増強する蛋白)またはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)と混合する。市販の有用な変異または切断の特定の非限定的な例は、ウラシル非感受性を付与するPfuにおけるV93R、K、E、D、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqのN末端切断(KlenTaq)である。キメラDNAポリメラーゼおよび変異体DNAポリメラーゼは何れかの比率でブレンドし、そして何れかの複製アクセサリ因子またはPCR添加剤と混合する。DNAポリメラーゼ製剤はwt、wtおよび変異体、変異体および変異体DNAポリメラーゼの何れかの混合物である。キメラDNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ製剤はいずれかの比で混合し、そして、いずれかの複製アクセサリ因子またはPCR添加剤と混合する。
【0262】
高pH PCR反応緩衝液
高pH PCR反応緩衝液は10×濃度で製剤し、最も一般的に作成されているPCR反応緩衝液のための標準である終濃度1×でPCR反応に使用する。本発明において有用な10×緩衝液製剤は300mMトリスpH10.0またはpH11.8;100mM KCl;100mM硫酸アンモニウム;20mM硫酸マグネシウム;1%TritionX−100;1mg/mlヌクレアーゼ非含有ウシ血清アルブミン(BSA)である。この製剤は本発明で用いる成分または成分濃度を限定するものではない。緩衝成分以外の緩衝剤の成分は特定のDNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼ混合物の最高の活性のための要件に応じて変動する。
【0263】
(実施例3)
キメラPfuDNAポリメラーゼを用いた、またはキメラPfuDNAポリメラーゼを含有するDNAポリメラーゼ混合物を用いたPCR増幅
PCR反応条件
PCR反応は1)トリス成分はpH10.0または11.8であり、終濃度30mMであること、および2)混合物は0.15〜1.3UPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼ(配列は本明細書および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる1001/92501に記載)または0.25UPfu−Sso7dおよび2.5Uまたは5.0Uの何れかのPfuDNAポリメラーゼよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を含有していたこと以外は、標準的な条件下において1×クローニングPfuPCR緩衝液(10mM KCl、10mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%TritonX−100および100μg/ml BSA)中で実施した。全てのPCR反応は2U/50μlのクローニングされたPyrococcus furiosus dUTPase(PEF)を含有していた。長さ0.9〜6.0kbの全てのゲノム標的に対し、PCR反応の組成は100ngヒトゲノムDNA、300μM各dNTPおよび100ng各プライマーとした。19kbのゲノム標的に対しては、PCR反応の組成は250ngヒトゲノムDNA、500μM各dNTPおよび200ng各プライマーとした。
【表B】
【0264】
PCR増幅に対する緩衝液pHの影響
キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼを用いたPCR反応に対するpHの影響を明らかにするために、1×Pfu反応緩衝液を用いてPCR反応を準備し、その際トリス成分のpHをpH5.0〜12.0に滴定した(図#1&2)。Pfu−Sso7d/PfuTurbo混合物(0.25UPfu−Sso7d+2.5Uまたは5.0UのPhuTurbo)を用いながらkb当たり15秒の伸長時間で6kbのヒトベータグロビンゲノム標的を増幅した。PhuTurbo単独では、この標的をkb当たり15秒で増幅することはできない。増幅はよりプロセシビティの高いPhu−Sspo7dの寄与によってのみ達成される。増幅はpH8.5で生じ、pH10.0〜12.0で最強となり、キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼに対する高pHの増強作用が明らかになった(図1&2)。
【0265】
長ゲノム標的のPCR増幅のための高pH PCR反応緩衝液の増強作用を明らかにするために、ヒトベータグロビンの19kbフラグメントをPfu−Sso7d/PfuTurbo混合物を用いてkb当たり30秒の伸長時間で増幅した。kb当たり30秒の伸長時間によるこの標的の増幅は混合物のよりプロセシビティの高いPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼの寄与によってのみ達成できる、pH10.0およびpH11.8の反応緩衝液中のPCR増幅をPufTurboのための最適PCR反応緩衝液である1.5×クローニングPfu反応緩衝液中の増幅と比較した(Strategies:Viol.12,#4;High fidelity PCR of genomic targets up to 19kb)。高pH10.0および11.8反応緩衝液を用いたPCRは1.5×クローニングPfu緩衝液よりも劇的に優れており、Pfu−Sso7dによるPCR増幅に対する高pHの増強作用が更に明らかになった(図3)。
【0266】
キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼを用いたPCR増幅に対する高pHの増強作用を更に明らかにするために、19kbヒトベータグロビンゲノム標的の増幅をkb当たり30秒の伸長時間でpH10.0PCR反応緩衝液中Pfu−Sso7d/PfuTurbo混合物(0.25UPfu−Sso7d+2.5Uまたは5.0PfuTurbo)および0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dを用いて比較した(図4)。これらのPCR反応の間の有意差は、これらが全てpH10.0を用いているため、各反応に次いでPfu−Sso7dの量となる(即ち混合物では0.25UのPfu−Sso7dであり、非混合物の反応では0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dとなる)。クローニングされたPfuDNAポリメラーゼを用いない0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dを有する反応(#3および#4図4)はDNAポリメラーゼの総単位は混合物反応のほうが高値であったにもかかわらず僅か0.25UのPfu−Sso7dを有していた混合物の反応(#1および#2図4)よりも劇的に高値の収率をもたらしている(混合物では2.75U#1、5.25U#2,そしてPfu−Sso7d反応の場合は0.83U#3および1.3U#4−図4)。
【0267】
pH10.0における反応緩衝液を用いたPCTの性能
HerculaseDNAポリメラーゼ、KODホットスタートDNAポリメラーゼおよびPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼの単位滴定を用いた19kbヒトベータグロビン標的の増幅効率を比較した(図5)。全ての酵素はその最適反応緩衝液中で使用した。Pfu−Sso7dについてはpH10.0の緩衝液を使用し、KODホットスタートについてはKODホットスタート緩衝液を、そしてHerculaseにはHerculase緩衝液を使用した。長さ10kb超のゲノム標的の増幅のために最適であるHerculase反応には3%DMSOを添加した。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。大部分のPCR酵素はこの長さの標的についてはkb当たり1〜2分の伸長時間を必要とする。pH10.0緩衝液中のPfu−Sso7dの全ての単位量(0.25〜1.3U)はPCR産物をもたらした。HerculaseおよびKODホットスタート反応はこの伸長時間ではいずれのPCR産物も生成しなかった。
【0268】
より小さいゲノム標的の増幅も高pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼおよびKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼを用いて比較した。ヒトアルファ−1抗トリプシン(Hα1AT)の900bpフラグメントを1)pH10.0またはpH11.8のPCR反応緩衝液中0.5Uまたは0.83UのPfu−Sso7d、および2)KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタート1Uを用いて1秒の総伸長時間で増幅した(図6)。Hα1ATの2.6kbフラグメントを、pH10.0PCR反応緩衝液中0.5U、0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7d、および、KODホットスタートPCR反応緩衝液中1.25Uおよび2.5UのKODホットスタートを用いながら、kb当たり2秒の伸長時間(総伸長時間5秒)(図7)およびkb当たり30秒の伸長時間(総伸長時間1分18秒)(図9)で増幅した。6kbのヒトベータグロビンをpH10.0PCR反応緩衝液中0.5U、0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7d、および、KODホットスタートPCR反応緩衝液中1.25Uおよび2.5UのKODホットスタートを用いながら、kb当たり10秒の伸長時間(総伸長時間1分)(図8)で増幅した。全ての標的の伸長時間は大部分のPCR酵素の標準的な時間より短かった。kb当たり30秒〜2分が大部分のPCR酵素の標準である。全ての標的に対し、高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼは全ての単位量(反応当たり0.25〜1.3U)において非常に優れた性能を示した。
【0269】
プロセシビティのあるキメラPfuDNAポリメラーゼと共に高pH PCR反応緩衝液を使用することにより(PEF/dUTPase存在下)、PCR伸長時間はゲノム標的の増幅において大きく低減した。1〜6kbのゲノム標的の場合は、非キメラDNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ製剤に対して1分/kbの伸長時間はkb当たり1〜10秒に低減された。17〜19kbのゲノム標的の場合は、非キメラDNAポリメラーゼ/ポリメラーゼ製剤に対して2分/kbの伸長時間は30秒/kbに低減された。高pH反応緩衝液/キメラDNAポリメラーゼ/キメラDNAポリメラーゼ混合物の組み合わせは従来のPCR反応緩衝液/DNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ混合物の組み合わせと同様の方法で使用され、そして、PCRを含む何れかのプライマー伸長用途において使用することにより短縮された伸長時間で高収率とすることができる。主な用途は典型的にはkb当たり1〜2分の伸長時間を有し、増幅に数時間かかる場合があるゲノム標的の増幅である。伸長時間は高pH緩衝液およびキメラDNAポリメラーゼを用いれば、kb当たり1〜30秒またはそれより短時間まで低減できる。増幅時間も劇的に低減され、PCR用途が大きく向上した。他の用途はRT−PCR、部位指向性変異誘発およびランダム変異誘発を包含する。これらの用途の全てにおいて使用される高pH反応緩衝液/キメラの組み合わせは長さの許容性を増大させ、反応時間を短縮し、そして全ての標準的プロトコルにおいて全体的性能を高度に増大させる。
【0270】
本発明の実施は特段の記載が無い限り当業者のよく知る分子生物学、細胞生物学、微生物学および組み換えDNA手法の従来の手法を使用する。このような手法は文献に詳述されている。例えばSambrook,Fritcsh&Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Harnes&S.J.Higgins編、1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal,1984);(Harlow,E.とLane,D.)Using Antibodies:A Laboratory Manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびMethods in Enzymologyシリーズ(Academic Press,Inc.);Short Protocols In Molecular Biology,(Ausbelら編、1995)を参照できる。
【0271】
本明細書において引用した全ての特許、特許出願および公開された参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明はその好ましい実施形態を参照しながら特に示し記載されているが、当業者の知るとおり、添付の請求項により包含される本発明の範囲を外れることなく種々の形態および詳細事項の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】kb当たり15秒の伸長時間により増幅した6kbヒトベータグロビンゲノムDNA標的(総伸長時間1分30秒)。PCR反応緩衝液は5.0〜10.0の30mMトリスpH勾配を用いた1×クローニングPfu緩衝液よりなるものとした。キメラDNAポリメラーゼ混合物は、A;合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurbo、およびB;合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboとした。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。
【図2】kb当たり15秒の伸長時間により増幅した6kbヒトベータグロビンゲノムDNA標的(総伸長時間1分30秒)。PCR反応緩衝液は9.5〜12.0の30mMトリスpH勾配を用いた1×クローニングPfu緩衝液よりなるものとした。キメラDNAポリメラーゼ混合物は、合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼとした。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。
【図3】19kbベータグロビンゲノム標的に関する高pH反応緩衝液と1.5×クローニングPfu反応緩衝液の比較。レーン1および2はpH10緩衝液の場合である。レーン3および4はpH11緩衝液の場合である。レーン5および6は1.5×クローニングPfu反応緩衝液の場合である。レーン1、3および5は合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。レーン2、4および6は合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。
【図4】19kbベータグロビンゲノム標的のPCR増幅に関する、キメラPfuDNAポリメラーゼ/PfuTurboDNAポリメラーゼ混合物および高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼおよびHerculasePCR反応緩衝液中のHarculaseDNAポリメラーゼの比較。レーン1〜4はpH10のPCR反応緩衝液を使用した。レーン5〜8はHerculasePCR反応緩衝液を使用した。レーン1は合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物で増幅した。レーン2は合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。レーン3は0.83UのPfuキメラDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン4は1.3UのキメラDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン5および6はDMSO非存在下で5.0UのHerculaseDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン7および8は3%DMSO存在下で5.0UのHerculaseDNAポリメラーゼを用いて増幅した。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。MはLambdaHindIIIDNAマーカー(Stratagene)である。
【図5】高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼの単位滴定およびkb当たり30秒の伸長時間による19kbヒトベータグロビンの増幅に関するのHerculaseDNAポリメラーゼおよびKODホットスタートとの性能の比較。#1〜4、pH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#1−0.25U;#2−0.5U;#3−0.83U;#4−1.3U。#5〜6、1×HerculasePCR反応緩衝液および3%DMSO中のHerculaseDNAポリメラーゼ5.0U。#7〜8、KODホットスタートDNAポリメラーゼPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#7−1.25U;#8−2.5U。MはLambda/HindIIIDNAマーカー(Stratagene)。
【図6】1秒の総伸長時間による900bpヒトアルファ−1アンチトリプシン(Hα1AT)の増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートの性能の比較。#1〜2、pH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#3〜4、pH11.8PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#5〜6、KODホットスタートPCR反応緩衝液中の1.0UKODホットスタート。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−0.5U;#4−0.83U。M−1kbDNAマーカー(Stratagene)。
【図7】kb当たり2秒の伸長時間(総伸長時間5秒)による2.6kbヒトアルファ−1アンチトリプシン(Hα1AT)の増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼのPCR性能の比較。#1〜3、pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図8】kb当たり10秒の伸長時間による6kbヒトベータグロビンの増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートのPCR性能の比較。#1〜3、pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図9】kb当たり30秒の伸長時間(総伸長時間1分18秒)による2.6kbHα1ATの増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートのPCR性能の比較。#1〜3、Pfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図10】QuickChange突然変異誘発用のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号6〜14)。
【図11】(a)野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のV93EおよびV93R変異体のdUTP取り込み。 (b)100%dUTP存在下におけるPfuV93R変異体抽出物のPCR増幅。
【図12】PfuDNAポリメラーゼ変異体とwt酵素の「長」PCR増幅の効果の比較。
【図13A】変異体古細菌DNAポリメラーゼのDNA配列。
【図13B】変異体古細菌DNAポリメラーゼのアミノ酸配列。
【図14】変異体TgoDNAポリメラーゼDNAのDNAおよびアミノ酸配列。
【図15A】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfu変異体のdUTP取り込み。野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfu変異体V93W、V93Y、V93M、V93KおよびV93RのdUTP取り込み。
【図15B】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfuV93DおよびV93R変異体のdUTP取り込み。
【図15C】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfuV93NおよびV93G変異体のdUTP取り込み。
【図16】N末端PfuDNAポリメラーゼ切断変異体のDNAポリメラーゼ活性。
【図17】以下の配列を示す。
【0273】
A.HMf様蛋白
B.HMf様蛋白−Taq融合物
C.HMf様蛋白−Taq融合物
D.PfuWT−HMf様蛋白融合物
E.PfuWT−HMf様蛋白融合物
F.Pfu−V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
G.Pfu−V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
H.Pfu−G387P/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
I.Pfu−G387P/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
J.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
K.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
L.KOD−HMf様蛋白融合物
M.KOD−HMf様蛋白融合物
N.HMf様蛋白−Vent融合物
O.HMf様蛋白−Vent融合物
P.HMf様蛋白−DeepVent融合物
Q.HMf様蛋白−DeepVent融合物
R.HMf様蛋白−KDF3融合物
S.HMf様蛋白−KDF3融合物
T.PCNA
U.PCNA−Taq融合物
V.PCNA−Taq融合物
W.PCNA−PfuWT融合物
X.PCNA−PfuWT融合物
Y.Pfu−V93RまたはE−PCNA融合物
Z.Pfu−V93RまたはE−PCNA融合物
AA.Pfu−G387P/V93RまたはE−PCNA融合物
BB.Pfu−G387P/V93RまたはE−PCNA融合物
CC.Pfu−D141A/E134A/V93RまたはE−PCNA融合物
DD.Pfu−D141A/E134A/V93RまたはE−PCNA融合物
EE.KOD−PCNA融合物
FF.KOD−PCNA蛋白融合物
GG.PCNA−Vent融合物
HH.PCNA−Vent融合物
II.PCNA−DeepVent融合物
JJ.PCNA−DeepVent融合物
KK.PCNA−JDF3融合物
LL.PCNA−JDF3融合物
MM.Sac7d
NN.Sac7d−Taq融合物
OO.Sac7d−Taq融合物
PP.Sac7d−PfuWT融合物
QQ.Sac7d−PfuWT融合物
RR.Pfu−V93RまたはE−Sac7d様蛋白融合物
SS.Pfu−V93RまたはE−Sac7d融合物
TT.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sac7d融合物
UU.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sac7d融合物
VV.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−Sac7d融合物
WW.KOD−Sac7d融合物
XX.KOD−Sac7d蛋白融合物
YY.Sac7d−Vent融合物
ZZ.Sac7d−Vent融合物
AAA.Sac7d−DeepVent融合物
BBB.Sac7d−DeepVent融合物
CCC.Sac7d−JDF3融合物
DDD.Sac7d−JDF3融合物
EEE.Sso7D
FFF.Sso7D−Taq融合物
GGG.Sso7D−PfuWT融合物
HHH.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sso7D融合物
III.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sso7D融合物
JJJ.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−Sso7D融合物
KKK.KOD−Sso7D融合物
LLL.KOD−Sso7D融合物
MMM.Sso7D−Vent融合物
NNN.Sso7D−Vent融合物
OOO.Sso7D−DeepVent融合物
PPP.Sso7D−DeepVent融合物
QQQ.Sso7D−JDF3融合物
RRR.Sso7D−JDF3融合物
【図18】HhHモチーフ配列。(a)topoV、RecAおよびロイシン応答性レギュレーターシグニチャー配列の間で保存されているモチーフ。TopoVアミノ酸領域236〜298はデータベースにヒットがなく、図示しない。リピートGおよびHを連結している位置677〜695および配列末端の19aa残基の間の短い領域は簡便化のため図示しない。不変の残基は白色レタリングを伴ったブルーのバックグラウンド腕に示す。保存位置は黄色バックグラウンド上のハイライトとする。(b)topoVHhHモチーフの構造。−polのLys−68およびLys−72およびtopoVのCおよびGリピートにおける相当する位置のバックグラウンドはそれぞれシアンとマゼンタの色とする。aおよびbにおける二次構造はJPREDを用いて推定した。シリンダーは−螺旋およびそれらの間の線(b)は−ヘアピンを示す。MkTpV、M.kandleri topoV;HTHasnC、asnCの細菌調節蛋白のHTHモチーフのシグネチャーを与える3エレメントのフィンガープリント;HTHSS,HTHモチーフの二次構造;A−L、topoVのHhHリピート;EcRuvA、E.coliRuvA蛋白、HsPolB、ヒトポリメラーゼ;TaqPol、T.aquaticusポリメラーゼI;HhHSS、HhHモチーフの二次構造。ALSCRIPT(Pargellisら(1988)J.Biol.Chem.263,7678−7685)を用いてアライメントを説明する。引用はBelovaら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98:6015。
【図19】本発明の別の配列。
【図20】野生型PfuDNAポリメラーゼのDNAおよびアミノ酸配列。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2003年3月25日に出願された米国出願第60/457,426号の利益を請求する。上記出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明はキメラおよび非キメラのDNAポリメラーゼの混合物、その合成方法およびその使用方法に関する。本明細書に開示したDNAポリメラーゼ混合物は多くの組み換えDNA手法、特に核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸増幅または変異誘発のために有用である。
【背景技術】
【0003】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の鋳型指向性重合を触媒してDNAを形成する熱安定性DNAポリメラーゼはDNA配列決定、DNA増幅および変異誘発のような種々のインビトロのDNA合成用とにおいて使用されている。しかしながら、熱安定性DNAポリメラーゼおよびその関連の活性(Abramson,1995,in PCR Stragegies,(Innisら編、Academic Press,Inc)参照)は所定の用途に対して常時最適であるわけではない(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/61015号参照)。一般的に核酸ポリメラーゼにより潜在的に示される特質および特性の多様性のために、当該分野の専門家等は、酵素の新しい有用な変種(variant)を開発する研究において核酸ポリメラーゼの種々の特徴を修飾、改変または組み換えることを追求している。
【0004】
1つの試みは触媒特質の独特および/または進歩した触媒特性を有する新しい好熱性の核酸ポリメラーゼの発見および単離を指向している。その結果、熱安定性のポリメラーゼは、種々の生物学的原料、例えば分類学上の属であるThermus、Thermococcus、Thermotoga、PyococcusおよびSulfolobusの種から単離されている。
【0005】
これらの天然に存在する熱安定性DNAポリメラーゼは酵素的に活性な3’−5’エキソヌクレアーゼドメインを有し、天然のプルーフリーディング能力をもたらし、これによりTaqDNAポリメラーゼよりも高い忠実度を示す。しかしながら、これらのDNAポリメラーゼはまた、TaqDNAポリメラーゼと比較して、より低いDNA伸長速度および全体的により低いプロセシビティを示し、即ち、これらの天然に存在する熱安定性DNAポリメラーゼを、その高い忠実度にもかかわらず、PCRのためにはより望ましくないものとしている。
【0006】
個々の熱安定性ポリメラーゼの欠陥を補う研究において、例えばTaqポリメラーゼおよびプルーフリーディング酵素、例えばPfuポリメラーゼまたはVentNDAポリメラーゼを組み合わせた多酵素集合体を開発する第2の試みが行われている。これらの多酵素混合物はTaqポリメラーゼのみと比較して高いPCR効率および低減されたエラー率を示す(Barnes,Proc.Natl.Acad.Sci USA91:2216−2220(1994))。
【0007】
別の試みは欠失/切断手法を介したTaqポリメラーゼの新しい有用な変種を開発することであった。例えばStoffelフラグメントは酵素的に活性な5’3’ポリメラーゼドメインは保有するが3’−5’エキソヌクレアーゼおよび5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は欠失しているTaqDNAポリメラーゼの544アミノ酸C末端切断である。他の市販の熱安定性ポリメラーゼの欠失はVent(exo−)およびDeepVent(exo−)を包含する(New England Biolabs,Beverly,MA)。しかしながら欠失変異は核酸ポリメラーゼの機能的ドメインを除去する作用を有するのみであり、如何なる新しい特徴や酵素特質も付加しない。
【0008】
ポリメラーゼ変異誘発は新しく有用な核酸ポリメラーゼ変種を開発するために試みられている別の方法である。例えば、天然に存在するDNAポリメラーゼはヌクレオチド類似体(アナログ)の取り込みを強力に識別する。この特質はDNAの複製と修復の忠実度に寄与している。しかしながら、ヌクレオチド類似体の取り込みは多くのDNA合成用途、特にDNA配列決定に有用である。従って、5’−ヌクレアーゼ活性または3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の何れかである関連するエキソヌクレオリシス活性を欠損したDNAポリメラーゼがDNA配列決定には好ましい。低減されたヌクレオチド識別性を有する熱安定性DNAポリメラーゼを作成するために、部位指向性変異誘発試験が開始され、DNA配列決定に適する必要な活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼの多くの変異型が発見されている(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,466,591号)。
【0009】
DNAポリメラーゼの特質を修飾する更に別の試みは必要な活性を有する蛋白ドメイン1つ以上がDNAポリメラーゼと組み合わせられたDNAポリメラーゼ融合物を作成することである。DNAポリメラーゼはDNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフにインフレームに融合しており、そして、Pavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載の通りキメラDNAポリメラーゼのプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を増大することがわかっている。T7DNAポリメラーゼへのチオレドキシン結合ドメインの融合は国際公開WO97/29209号、米国特許第5,972,603号およびBedfordら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:479−484(1997)に記載の通りチオレドキシンの存在下のDNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティを増強する。TaqDNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの融合は増強されたプロセシビティを有しPCNAの存在下でPCR増幅DNAのより高い収率を与えるDNAポリメラーゼ融合物をもたらす(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;277(18);16179−88)。更にまた、Sulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dのDNAポリメラーゼ、例えばPfuまたはTaqDNAポリメラーゼへの融合は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1に開示されている通りこれらのDNAポリメラーゼのプロセシビティを大きく増大させることがわかっている。異なるDNAポリメラーゼの相当するドメインを有するDNAポリメラーゼの全体または部分のドメイン置換も記載されている(米国特許出願第2002/0119461号)。
【0010】
これらの集中的研究にも関わらず、DNAポリメラーゼの核酸合成、配列決定および増幅の活性を支援するためにより適当である条件を開発する必要性がなお当該分野に存続している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はDNA合成、DNA配列決定、DNA合成産物のクローニング、または、線形または指数的PCR増幅のために高pHにおいてDNAポリメラーゼを使用する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
当業者の知るとおり、本発明に有用なDNAポリメラーゼ融合物は高pHにおいて活性であるDNAポリメラーゼ機能1つ以上を有する。DNAポリメラーゼ機能は当該分野でよく知られている(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.;(Sambrookら、(1989):Moolecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州);Stratagene Catalog)。即ち、本発明は特に当該分野で現在知られているか、入手可能となるDNAポリメラーゼ融合物のための高pHにおいて本発明のDNAポリメラーゼ融合物を使用する方法を包含する。
【0013】
本明細書においては、「DNAポリメラーゼ機能」とは、本明細書に記載するDNAポリメラーゼの活性を指す。DNAポリメラーゼの活性は、例えば、後に定義する、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド遺伝子結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度および/または室温における低減したDNA重合を包含する。DNAポリメラーゼ活性は当該分野でよく知られている(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.;(Sambrookら、(1989):Moolecular Cloning,A Laboratory Manual (第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる別の参考文献を参照);Stratagene Catalog)。即ち、本発明は特に、当該分野で現在知られている、または入手可能となるDNAポリメラーゼ活性のための高pHにて本発明のDNAポリメラーゼ融合物を使用する方法を包含する。
【0014】
DNAポリメラーゼの「機能」はまた本明細書において定義する「変異体」DNAポリメラーゼの活性も包含する。本発明は例えば本発明の「変異体」の以下のような活性、即ち:塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅(翻訳)スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減を包含する。1つの実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼはDNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性1つ以上を低減する変異1つ以上を含有するDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「変異体」とはポリメラーゼに向上した重合速度または忠実度を付与する変異を有するポリメラーゼを指す。好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたウラシル検出活性を有する。好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたウラシルおよびイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減されたDNA重合活性を有する。「変異体」の何れか、例えば低減したウラシル活性を有する変異体は、野生型ポリメラーゼと比較して向上したポリメラーゼ速度および/または忠実度を有してもよい。
【0015】
本発明は以下の工程:a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;およびb)該融合物を核酸鋳型と接触させ、ここで該融合物がDNA合成を可能とすることを含む、高pHにおけるDNA合成のための方法を提供する。
【0016】
本発明はまた以下の工程、即ち:a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;b)融合物を核酸鋳型と接触させること、ただしここで融合物はDNA合成を可能にして合成DNA産物を生成するものであること;および、c)合成DNA産物をクローニングベクターに挿入すること;を含む、高pHにおけるDNA合成産物のクローニングのための方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、以下の工程、即ち:(a)鋳型DNA鎖を配列決定DNAプライマーに接触させること;(b)工程(a)のDNAをDNAポリメラーゼ融合物、デオキシリボヌクレオシド三リン酸および鎖終止ヌクレオチド類似体と接触させること;(c)第1のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団を合成するために十分な条件下で工程(b)の混合物をインキュベートすること、ただしここで合成されたDNA分子は第1のDNA分子よりも短いこと、そしてここで合成されたDNA分子はその5’末端において終止ヌクレオチドを含むこと;および(d)第1のDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が決定できるようにサイズにより合成されたDNA分子を分離すること;を含む、高pHにおいてDNAを配列決定するための方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、核酸鋳型、PCRプライマー少なくとも1つおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、融合物による核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより変異した増幅産物を生成することを含む、部位指向性またはランダムの変異誘発のための高pHにおける線形または指数的PCR増殖の方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、核酸鋳型、PCRプライマー少なくとも1つおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、該融合物による該核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより増幅産物を生成する工程を含む、高pHにおける逆転写酵素PCRの方法を提供する。
【0020】
本発明は高pHにおけるDNA合成産物のクローニング、DNA配列決定、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖、DNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液を含むRT−PCRの何れか1つのための組成物を提供する。高pH緩衝液およびポリメラーゼ融合物のほかに、反応混合物の他の成分も組成物中に存在してよく、例えば鋳型、プライマー、ヌクレオチド、標識、標識ヌクレオチド等が包含される。
【0021】
本発明はまた、DNA合成のための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA合成緩衝液を含む。本発明は、DNA合成緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNA合成緩衝液のものであり、そしてDNA合成緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNA合成緩衝液を意図する。
【0022】
本発明はDNA合成産物のクローニングのための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNAクローニング緩衝液を含む。本発明は、DNAクローニング緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNAクローニング緩衝液のものであり、そしてDNAクローニング緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNAクローニング緩衝液を意図する。
【0023】
本発明はDNAを配列決定するための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA配列決定緩衝液を含む。本発明は、DNA配列決定緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するDNA配列決定緩衝液のものであり、そしてDNA配列決定緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH DNA配列決定緩衝液を意図する。
【0024】
本発明は部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖のための組成物を提供し、ここで組成物はDNAポリメラーゼ融合物および高pH PCR反応緩衝液を含む。本発明は、PCR反応緩衝液の組成が、当該分野で知られ本明細書において「要件発明の用途」と題されたセクションで記載するPCR反応緩衝液のものであり、そしてPCR反応緩衝液が本明細書において定義する「高pH」緩衝液であるような、高pH PCR反応緩衝液を意図する。
【0025】
1つの実施形態においては、本発明の方法および組成物は更にPCR増強因子および/または添加剤も含む。
【0026】
別の実施形態において、本発明の方法において使用するDNAポリメラーゼ融合物は低減されたDNA重合活性を有する。
【0027】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物はアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含み、そして、低減されたDNA重合活性を含む。
【0028】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減された塩基類似体検出活性を含む。
【0029】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性およびV93部位における変異を含み、ここで変異はバリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である。
【0030】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性を有する。
【0031】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は低減した塩基類似体検出活性を含む。
【0032】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は更にV93部位における変異を含み、ここで変異はキメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性表現型を付与するバリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である。
【0033】
別の実施形態において、DNAポリメラーゼ融合物は更に低減したDNA重合活性を含む。
【0034】
別の実施形態においてDNAポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含む。
【0035】
別の実施形態においては、DNアポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とするアミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む。
【0036】
別の実施形態においては、低減された塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ融合物は更に該キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とするアミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む。
【0037】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は野生型、変異体または化学修飾DNAポリメラーゼを含む。
【0038】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物はプルーフリーディングポリメラーゼである。
【0039】
別の実施形態においては、プルーフリーディングポリメラーゼがPfu、KOD、Tgo、VentおよびDeepVentよりなる群から選択される。
【0040】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は更に、プロセシビティ、プルーフリーディング、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力または塩耐性よりなる群から選択される活性の増大を有するポリペプチドを含む。
【0041】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は更に室温におけるDNAポリメラーゼ活性、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップ、PCR反応における伸長時間またはPCR反応における増幅サイクルよりなる群から選択される低減された活性を有するポリペプチドを含む。
【0042】
別の実施形態においては、DNAポリメラーゼ融合物は、バクテリオファージT7のチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメイン、古細菌PCNA結合ドメイン、PCNA、DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフまたはDNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dよりなる群から選択される蛋白ドメインよりなる。
【0043】
本発明はまた、DNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;RTPCR;および線形または指数的PCR増殖、または、本明細書に含まれる何れかの別のポリメラーゼ機能よりなる群から選択される方法を高pHで実施するためのキットを提供する。
【0044】
本発明のキットは、高pH緩衝液、またはPCR増強因子および/または添加剤をさらに含んでもよい。
【0045】
(定義)
「融合体」とは、本明細書においては、例えばプロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド遺伝子結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度および/または室温における低減したDNA重合を包含するDNAポリメラーゼの活性1つ以上をモジュレートするポリペプチドを定義する第2のアミノ酸配列に連結している本発明の野生型または変異体のDNAポリメラーゼを含む第1のアミノ酸配列(蛋白)であり、ここで第1および第2のアミノ酸は天然には同じ関係においては存在しない。本発明によれば「融合体」とは連結して新しい機能性蛋白を形成する、無関係の蛋白に由来する2つ以上のアミノ酸配列(例えば野生型または変異体のDNAポリメラーゼをコードする配列およびプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド)を包含する。1つの実施形態において、本発明の「融合体」は第1のポリメラーゼ種(例えばPfuN末端)より誘導された第1のアミノ酸配列および第2のポリメラーゼ種(例えばKOD C末端)から誘導された第2のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態においては、本発明の「融合体」は第1のポリメラーゼから誘導された第1のアミノ酸およびポリメラーゼではないポリペプチドから誘導された第2のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態においては、ポリメラーゼではないポリペプチドから誘導されたアミノ酸配列は酵素的に活性ではない。
【0046】
本明細書においては、「酵素的に活性」とは特定の酵素反応を触媒することを意味する。
【0047】
本発明の融合体は第1の蛋白も発現する生物中に存在する(ただし異なる蛋白中)外来性ポリペプチドを提示するか、または、異なる種類の生物により発現される蛋白構造の「種間」、「遺伝子間」等の融合体であってよい。本発明はプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドが、本明細書に記載する、または当該分野で知られている、野生型DNAポリメラーゼまたは変異体DNAポリメラーゼとN末端またはC末端で連結されるか、または、その何れかの内部の位置に挿入される融合物を含む。
【0048】
1つの実施形態においては、本発明の融合体は例えばPfuまたはTaqのような3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するか有さない野生型または変異した熱安定性DNAポリメラーゼを含む融合DNAポリメラーゼである。PfuまたはTaqDNAに付加されるキメラ成分は、キメラ成分およびポリメラーゼが天然には存在しないような関係にあるように、NまたはC末端または何れかの内部の位置においてPfuまたはTaqDNAポリメラーゼに融合した塩基性または非塩基性の、蛋白または蛋白ドメインである。PfuまたはTaqDNAポリメラーゼの活性へのキメラの寄与はプロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、忠実度および塩耐性および/または室温における低減したDNA重合活性を増大または増強する。
【0049】
本発明のDNAポリメラーゼ融合物はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合に、以下の活性(後述する試験法を用いる)、即ち:プロセシビティ、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力、プルーフリーディング活性、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、および、塩耐性の1つ以上が>10%増大している。本発明のDNAポリメラーゼ融合物はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合に、以下の活性(後述する試験法を用いる)、即ち:トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップまたは室温におけるDNAポリメラーゼ活性の1つ以上が>10%低減している。1つの実施形態においては、本発明の「融合物」は融合物単独ではないDNAポリメラーゼの存在下で観察される伸長時間と比較して、5秒、好ましくは15秒、より好ましくは45秒低減しているPCR反応における伸長時間を有する。別の実施形態においては、本発明の「融合物」は融合物単独ではないDNAポリメラーゼと比較して、1、1〜5または5以上PCR増幅サイクル数が低減している。別の実施形態においては、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較して、本発明の「融合物」のより少ない単位(0.001、0.01、0.1または1以上)が本発明の用途において有用である。「融合物」の活性を融合物ではないDNAポリメラーゼの活性と比較する全ての場合において、融合物でないDNAポリメラーゼは融合物のポリメラーゼドメインと同一であり、そして本明細書に定義する融合物の第2のアミノ酸配列の非存在により融合物と異なるのみである。
【0050】
本明細書においては、「ゲノム鋳型」とは細胞または生物のゲノムを構成する核酸物質を含む鋳型を意味する。
【0051】
本明細書においては、「融合した」または「連結した」とは、例えば、介在ドメインを有するか有さない組み換え融合物、インテイン媒介融合物、非共有結合性の会合および共有結合、例えばジスルフィド結合、水素結合、静電気的結合およびコンフォーメーション性の結合を含む、機能的に結合したポリペプチドのドメインを得るための当該分野で知られた何れかの方法を指す。
【0052】
「ドメイン」とは、ポリペプチド配列、完全なポリペプチド配列、または複数のペプチド配列を含む蛋白または蛋白複合体の単位を指す。
【0053】
本明細書においては、「モジュレート」という用語は、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合の、本発明のDNAポリメラーゼの活性の2倍、好ましくは5倍、好ましくは20倍、好ましくは100倍、より好ましくは500倍以上の増大または低減を指す。1つの実施形態においては、融合物のDNAポリメラーゼドメインは本明細書に記載した変異を1つ以上含む。この実施形態においては、「モジュレート」という用語は、融合物ではないDNAポリメラーゼと比較した場合の、本発明のDNAポリメラーゼの活性の2倍、好ましくは5倍、好ましくは20倍、好ましくは100倍、より好ましくは500倍以上の増大または低減を指し、ここで融合物ではないDNAポリメラーゼは融合物の変異体DNAポリメラーゼドメインと同一であるが、本明細書に記載した融合物の第2のアミノ酸配列を欠失している。
【0054】
DNAポリメラーゼ融合物は本明細書に記載するPCR増強因子および/または添加剤と組み合わせて使用される。
【0055】
本明細書においては、「高pH」とは、9より高値のpHを指す。「高pH」とは好ましくは10以上、例えば10、11、12、13または14である。「高pH」には9より高値のpHが包含され、そして14までのpH、例えばpH9.1、9.5、9.8、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5または14が本発明の「高pH」である。
【0056】
本明細書においては、「プロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド」とは、ポリペプチド配列または複数のペプチド配列を含む蛋白、または蛋白の領域または蛋白複合体であるドメインを指し、ここでその領域は本明細書に定義されるとおりプロセシビティを増大するか、または本明細書に定義されるとおり塩耐性を増大させる。本発明において有用な「プロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチド」は例えば、上記したPavlovら、または国際公開WO01/92501号に記載されるドメインの何れかを包含し、例えばSso7d、Sac7d、HMF様蛋白、PCNAホモログ、螺旋−ヘアピン−螺旋ドメイン、例えばトポイソメラーゼVから誘導されたもの、または国際公開WO97/29209号、米国特許第5,972,603号およびBedfordら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:479−484(1997)に記載されるT7DNAポリメラーゼのチオレドキシン結合ドメインが挙げられる。
【0057】
本明細書においては、「プロセシビティ」とは鋳型または基質に結合したまま存続し、複数の修飾反応を行うことができる核酸修飾酵素、例えばポリメラーゼの能力を指す。「修飾反応」とは例えば重合およびエキソヌクレアーゼ分解を包含する。「プロセシビティ」はまた比較的長い(例えば0.5〜1kb、1〜5kbまたは5kb以上)ヌクレオチド索を修飾する核酸修飾酵素、例えばポリメラーゼの能力を指す。「プロセシビティ」とはまた、成長中のDNA鎖からの酵素の解離を妨害することなく一連の重合工程を行える核酸修飾酵素、例えばDNAポリメラーゼの能力を指す。「プロセシビティ」はポリメラーゼの性質、DNA鋳型の配列および反応条件、例えば塩濃度、温度または特定の蛋白の存在により異なる。
【0058】
本明細書においては、「増大したプロセシビティ」とは、本明細書に定義したプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドを欠失した野生型または変異体の古細菌DNAポリメラーゼと比較して、5〜10%、好ましくは10〜50%、より好ましくは50〜100%以上の増大を指す。プロセシビティおよび増大したプロセシビティは、本明細書および上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載の方法に従って測定できる。本明細書で定義するプロセシビティを増大させるポリペプチドを含むキメラである増大したプロセシビティを有するポリメラーゼは上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載されている。
【0059】
本明細書においては、「増大した塩耐性」とは野生型ポリメラーゼが活性である最大塩濃度よりも高値であることが分かっているある塩濃度において>50%の活性を示すポリメラーゼを指す。最大塩濃度は各ポリメラーゼにより異なっており、そして当該分野で知られているか、または、本発明の方法に従って実験的に決定できる。例えば、Pfuは30mM塩(PCR反応中)で抑制され、従って、増大した塩耐性を有するPfu酵素は30mMより高い塩濃度で有意な活性(>50%)を有するはずである。本明細書に定義する塩耐性を増大させるポリペプチドを含む融合物である増大した塩耐性を有するポリメラーゼは、上述したPavlovら、および国際公開WO01/92501号A1に記載されている。
【0060】
本明細書においては、「忠実度」とは、重合の精度、または、鋳型に相補である核酸分子(例えばRNAまたはDNA)を合成する際に正しい基質を正しくない基質から識別できるポリメラーゼの能力を指す。ポリメラーゼの忠実度がより高いほど、核酸合成の間の成長中の鎖においてポリメラーゼのヌクレオチドの誤取り込みがより低くなり;即ち、忠実度の増大または増強はエラー率の低い(誤取り込み率の低減した)より信頼できるポリメラーゼをもたらす。
【0061】
「忠実度」という用語は本明細書においてはまた、鋳型依存性のDNAポリメラーゼによるDNA重合の精度を指す。DNAポリメラーゼの忠実度はエラー率(不正確なヌクレオチド、即ち、鋳型依存的方法において取り込まれていないヌクレオチドが取り込まれる頻度)により測定される。DNA重合の精度または忠実度はDNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の両方により維持される。「高忠実度」という用語は塩基対当たり5×10−6以下のエラー率を指す。DNAポリメラーゼの忠実度またはエラー率は当該分野で知られた試験を用いて測定してよい。例えばDNAポリメラーゼ変異体のエラー率はCline,J.,Braman,J.C.,及びHogrefe,H.H.(96)NAR 24:3546−3551に記載のlacIPCR忠実度試験を用いて試験できる。慨すれば、lacIOlacZα標的遺伝子をコードする1.9kbのフラグメントを適切なPCR緩衝益虫2.5UDNAポリメラーゼ(即ち72℃30分で総dNTP25ミリモルを取り込むために必要な酵素の量)を用いてpPRIAZプラスミドDNAから増幅する。次にlacI含有PCR産物をラムダGT10アームにクローニングし、そしてlacI変異体のパーセント(MF、変異頻度)を記載するとおり色スクリーニング試験により測定する(Lundberg,K.S.,Shoemaker,D.D.,Adams,M.W.W.,Short,J.M.,Sorge,J.A.,及びMathur,E.J.(1991)Gene180:1−8)。エラー率は倍加当たりのbp当たりの変異頻度(MF/bp/d)であらわされ、ここでbpはlacI遺伝子配列の検出可能な部位の数(349)でありdは有効な標的倍加の数である。各DNAポリメラーゼ変異体につき、少なくとも2つの独立したPCR増幅を実施する。
【0062】
増大/増強/高値の忠実度を有するDNAポリメラーゼはある長さのある核酸分子の合成の間、誤取り込みされたヌクレオチドの数が約2〜約10,000倍、約2〜約5,000倍、または約2〜約2,000倍(好ましくは約5倍超、より好ましくは約10倍超、更により好ましくは約50倍超、なお好ましくは約100倍超、更に好ましくは約500倍超、最も好ましくは約1000倍超)低減しているポリメラーゼとして定義される。例えば、変異したポリメラーゼは1000塩基の合成中1ヌクレオチドを誤取り込みするのに対し、非変異ポリメラーゼは10ヌクレオチドを誤取り込みする。このような変異体ポリメラーゼは10倍の忠実度の増大を有していると言うことができる。
【0063】
低減された誤取り込みを有するDNAポリメラーゼは、本明細書においては、相当する非変異、非修飾または野生型の酵素と比較して、相対的誤取り込みが約50%未満、または好ましくは約25%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約1%未満である変異または修飾されたDNAポリメラーゼの何れかとして定義する。より低い忠実度のDNAポリメラーゼもまた非正確なヌクレオチド取り込みのDNA合成を開始させる場合がある(Perrion&Loeb,1989,J.Biol.Chem.264:2898−2905)。
【0064】
ポリメラーゼの忠実度または誤取り込み率は当該分野で知られている他の方法により配列決定反応において測定できる(Eckert&Kunkel,Nucl.Acids Res.3739−3744(1990))。1つの実施形態においては、非変異および変異のポリメラーゼにより合成されたDNA分子の配列を予測(既知)配列と比較することができる。このようにしてエラー(誤取り込み)の数を各酵素について測定し、比較することができる。
【0065】
DNA結合およびDNA結合を検出するための試験はPCT/US01/17492に記載されている。
【0066】
鎖置換とは、Hogrefeら、Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびKongら(93)J.Biol.Chem.268:1965に記載されている活性を指す。鎖置換活性を測定するための試験法はHogrefeら、Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびKongら(93)J.Biol.Chem.268:1965に記載されている。
【0067】
室温におけるDNAポリメラーゼ活性はThe Methods of Enzymology(2001)334:91−116に記載されている。室温におけるDNAポリメラーゼ活性を測定するための方法はThe Methods of Enzymology(2001)334:91−116およびNielsonら(1997)Strategies 10:40−43 Newsletter記事に記載されている。
【0068】
本明細書においては「GCリッチ標的増幅効率」とはGC含量が50%超であり、PCR中に溶融することがより困難であるDNA鋳型の増幅効率を指す。これらの標的は温度がアニーリング温度までサイクルする場合に頻繁に二次構造を形成し、PCR増幅を困難にする。「GCリッチ標的増幅」は50%より高いGC含量を有する標的上でPCR増幅を実施し、そして、ゲル上に生成したアンプリコンの収率を比較することにより試験される(Biotechniques 2001年4月;32(4):866,868,870−2,874)。
【0069】
「内因性ホットスタート能力」を有するポリメラーゼとは、非ストリンジェントなプライマーアニーリング温度(≦45℃)において極めて低い(<25°)DNAポリメラーゼ活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼを指す。これらのポリメラーゼおよびその検出のための試験はNielsonら(1997)Strategies 10:40−43に記載されている。
【0070】
「DNA(翻訳)スリップ」または「トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅(翻訳)スリップ」およびこの活性の検出のための試験法はJ Mol Biol 2001年9月14日;312(2):323−33,J.Biol CHem 1999年9月24日;274(39):27481−90,EMBO J 2001年5月15日;20(10):2587−95,Biochemistry 1996年1月23日;35(3):1046−53に記載されている。
【0071】
室温で低減されたDNAポリメラーゼ活性を示すDNAポリメラーゼ融合物は好ましくは、低減されたポリメラーゼ活性が最適未満の温度(例えば非特異的プライマーアニーリング/伸長温度)で観察され、そして野生型ポリメラーゼ活性がストリンジェントなプライマーアニーリング/伸長温度において観察されるように、活性対温度の特徴におけるシフトを示す。このような融合物はPCRにおいて向上した特異性を示すことが期待される。
【0072】
DNAポリメラーゼの効率を測定する方法はPCR Primer:A Laboratory Manual,1995,CSHL Press,ChaとThilly,pp.37−51に記載されている。
【0073】
鋳型長増幅能力を測定するための方法はProc Natl.Acad.Sci USA,2002,99:596−601およびBiotechnol.,2001,88:141−149に記載されている。
【0074】
DNAポリメラーゼの特異性を測定するための方法はJ.Biochem.(Tokyo),1999,126:762−8に記載されている。
【0075】
DNAポリメラーゼの熱安定性を測定する方法はFEMS Microbiol.Lett,2002,217:89−94に記載されている。
【0076】
ヌクレオチドの結合および認識を測定するための方法はJ.Mol.Biol/.2002,322:719−729およびNucleic Acids res.,2002,30:605−13に記載されている。
【0077】
本発明に有用な「ドメイン」は当該分野で知られた、または当該分野で知られることになる、何れかの2本鎖または1本鎖のDNA結合ドメインを包含する。
【0078】
本明細書においては、「ポリメラーゼ」とはヌクレオチドの重合を触媒する(即ちポリメラーゼ活性)酵素を指す。一般的に酵素はポリヌクレオチド鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端において合成を開始し、そして鋳型鎖の5’末端に向けて進行する。「DNAポリメラーゼ」はデオキシヌクレオチドの重合を触媒する。好ましい実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼは熱安定性である。別の好ましい実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼは古細菌DNAポリメラーゼである。
【0079】
本明細書においてDNAポリメラーゼに言及する場合は、DNAポリメラーゼという用語は「その官能性フラグメント」を包含する。「その官能性フラグメント」とは、ポリメラーゼの全アミノ酸配列に満たないものを包含し、そして、ポリヌクレオチドの重合を触媒する能力を、少なくとも1セットの条件下において、温存している野生型または変異体のDNAポリメラーゼの何れかの部分を指す。このような機能的フラグメントは別の実態として存在するか、または、融合蛋白のようなより大型のポリペプチドの構成成分であってよい。
【0080】
本発明において使用する核酸ポリメラーゼは中温性または高温性であってよく、そして好ましくは高温性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼはT7DNAポリメラーゼ、T5DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、KlenowフラグメントDNAポリメラーゼDNAポリメラーゼIII等を包含する。本発明の方法において使用してよい好ましい熱安定性DNAポリメラーゼはTaq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffelフラグメント、VENT(商標)およびDEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、KOD、Tgo、JDF3およびこれらの変異体、変種および誘導体を包含する(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,18S号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;国際公開WO92/06188号;国際公開WO92/06200号;国際公開WO96/10640号;Barnes,W.M.,Hene112:29−35(1992);Lawer,F.C.ら、PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flaman,J.−Mら、Nuc.Acods Res.22(15):3259−3260(1994)。長核酸分子(例えば長さ約3〜5Kbより長い核酸分子)の増幅のためには、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(1つは実質的に3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失したもの、もう1つは3’エキソヌクレアーゼ活性を有するもの)が典型的に使用される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Fames,W.M.,Gene 112:29−35(1992);および2000年12月21日出願の同時係属米国特許出願第09/741,664号を参照できる。3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠失しているDNAポリメラーゼの例はTaq、Tne(exo−)、Tma(exo−)、Pfu(exo−)、Pwe(exo−)、exo−KODおよびTthDNAポリメラーゼおよびその変異体、変種および誘導体を包含する。
【0081】
本明細書においては、「古細菌」DNAポリメラーゼとは、ファミリーB/polI型の群(例えばPfu、KOD、Pfx、Vent、DeepVent、Tgo、Pwo)またはpolII群(例えばPyrococcus furiosusDP1/DP22−サブユニットDNAポリメラーゼ)の何れかに属するDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「古細菌」DNAポリメラーゼは熱安定性の古細菌DNAポリメラーゼ(PCR可能)を指し、例えばPyrococcus種(furiosus,GB−D種、woesii,abysii,horikoshii)、Thermococcus種(kodakaraensis KOD1,liroralis,9度North−7種、JDF−3種、gorgonarius)、Pyrodictium occultumおよびArchaeoglobus fulgidusから単離されたDNAポリメラーゼを包含する。適当な古細菌は最高生育温度>80〜85℃または最適生育温度>70〜80℃を示す。古細菌polIDNAポリメラーゼ群由来の適切なPCR酵素は市販されており、例えばPfu(Stratagene、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies,Inc.)、Vent(New Englaind BioLabs)、Deep Vent(New England BioLabs)、Tgo(Roche)およびPwo(Roche)を包含する。上記列挙したものに関連する別の古細菌は以下の参考文献:Archaea:A Laboratory Manual (Robb,F.T.とPlace,A.R.,編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州,1995に記載されている。
【0082】
本明細書においては、「変異体」ポリメラーゼとはDNAポリメラーゼの活性の1つ以上、例えば、塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減を本明細書で定義するとおり変調する変異を1つ以上含む、本明細書に定義されるDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼはDNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性の1つ以上を低減する変異1つ以上を含むDNAポリメラーゼを指す。1つの実施形態においては、「変異体」とは向上した重合速度または忠実度をポリメラーゼに与える変異を有するポリメラーゼを指す。好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したウラシル検出活性を有する。好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したウラシルおよびイノシン検出活性を有する。別の好ましい実施形態においては、本発明の「変異体」ポリメラーゼは低減したDNA重合活性を有する。「変異体」、例えば低減したウラシル活性を有するいずれの変異体はまた、野生型ポリメラーゼと比較して向上した重合速度および/または忠実度を有してよい。本明細書に定義する「変異体」ポリメラーゼは1つ以上のアミノ酸置換、1つ以上のアミノ酸挿入、切断または内部の欠失を含むポリメラーゼを包含する。本明細書に定義する「変異体」ポリメラーゼは本明細書に定義する非融合および融合ポリメラーゼを包含する。
【0083】
本明細書における「変異体」ポリメラーゼは本明細書に記載する1重、2重または3重変異体DNAポリメラーゼ、本明細書に記載する挿入を含む何れかの変異体DNAポリメラーゼ、または、切断された、または本明細書に記載する欠失した変異体DNAポリメラーゼの何れかが、DNAポリメラーゼの活性、例えば、DNA重合活性、塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、プロセシビティ、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、ウラシルへの感受性、3’−5’または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度、効率、特異性、熱安定性および内因性のホットスタート能または室温における低減されたDNA重合、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の低減された増幅スリップ、低減された増幅サイクル、低減された伸長時間および本明細書に記載した用途のために必要とされるポリメラーゼの量の低減の1つ以上をモジュレートするポリペプチドと組み合わせて存在することにより本明細書に定義する融合物を形成するような、融合ポリメラーゼを包含する。例えばプロセシビティおよび/または塩耐性を増大させるポリペプチドは参照により本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1およびPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載されている。商業上有用な変異の他の特定の例は、ウラシル非感受性をPfuに付与するPfuにおけるV93R、K、E、D、および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するD141A/E143Aである。商業上有用な切断は、例えば、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqにおけるN末端切断(KlenTaq)である。
【0084】
本明細書においては、「変異」とはDNAによりコードされるアミノ酸配列を変化させる親または野生型DNA配列内に導入される変化、例えば置換、挿入、欠失または切断を指す。変異の結果は、例えば、親DNAによりコードされる蛋白内には存在しなかった新しい性質、特質、機能または形質、例えばN末端切断、C末端切断または化学修飾の創生である。「変異体」DNAポリメラーゼは本明細書においては本明細書に定義する変異を含むDNAポリメラーゼを指す。本発明の「変異体」DNAポリメラーゼは本発明のDNAポリメラーゼ「融合物」を包含する。
【0085】
本明細書においては、「低減したDNA重合活性」を有するDNAポリメラーゼは野生型酵素よりも低値のDNA重合活性を含む、例えば、野生型酵素の10%未満(例えば19.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)のまたは融合物ではないDNAポリメラーゼよりも低値の重合活性を含む、DNAポリメラーゼ変異体である。低減したDNA重合活性を有するPfuDNAポリメラーゼを作成し特性化するために使用される方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されている。本発明低減したDNA重合活性を有するDNAポリメラーゼ融合物を意図する。
【0086】
本明細書においては、「プルーフリーディング」活性とはDNAポリメラーゼの3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を指す。
【0087】
「非プルーフリーディング」酵素とは「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」または「3’〜5’exo−」であるDNAポリメラーゼを指す。
【0088】
本明細書においては、「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」または「3’〜5’exo−」とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を実質的に欠いた酵素を指す。DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ活性、例えばファミリーBポリメラーゼのメンバーにより例示される3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性は、変異を介して消失する場合があり、エキソヌクレアーゼ−欠損ポリメラーゼを生じる。本明細書においては、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が欠損であるDNAポリメラーゼとは、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いていいる。「実質的に欠いている」とは、活性の完全な消失、例えば親酵素に対して0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%またはさらには50%までのエキソヌクレアーゼ活性を包含する。D141AおよびE143A変異並びに3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる他の変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼを作成し特性化するために使用できる方法は係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる別の変異は当該分野で知られており、本発明で意図するものである。
【0089】
本明細書においては、「合成」とは鋳型依存的な方法でポリヌクレオチドの新しい鎖を作成するか、または、既存のポリヌクレオチド(即ちDNAまたはRNA)を伸長するための何れかのインビトロの方法を指す。本発明によれば合成はポリメラーゼを使用しながらポリヌクレオチド鋳型配列のコピー数を増大させる増幅を包含する。ポリヌクレオチド合成(例えば増幅)はポリヌクレオチド(即ちプライマー)へのヌクレオチドの取り込みをもたらし、これにより、ポリヌクレオチド鋳型に相補的な新しいポリヌクレオチド分子を形成する。形成されたポリヌクレオチド分子およびその鋳型は、それ以上のポリヌクレオチド分子を合成するための鋳型として使用できる。
【0090】
本発明によれば「DNA合成」とは、例えばPCR、ポリヌクレオチドの標識(即ちプローブおよびオリゴヌクレオチドプライマーのため)、および、ポリヌクレオチド配列決定を包含する。本発明は低減された塩基類似体検出(例えば特定の塩基類似体、例えばウラシルまたはイノシンの低減された検出、または、少なくとも2つの塩基類似体の低減された検出)を示す変異体DNAポリメラーゼおよびその融合物を意図している。
【0091】
本明細書においては、「塩基類似体(base analog)」とはPCR反応に必要な上昇した温度の結果として化学修飾を起こしている塩基を指す。好ましい実施形態においては、「塩基類似体」はシトシンの脱アミノ化により生じるウラシルを指す。別の好ましい実施形態においては、「塩基類似体」はアデニンの脱アミノ化により生じるイノシンを指す。
【0092】
本明細書においては、「熱安定性」とは、例えば同様の活性を有する酵素の非熱安定性形態と比較して、熱に対し、好ましくは約90〜100℃、より好ましくは約70〜980℃高温において安定で活性である酵素を指す。例えば、P.furiosus,M.jannaschii,A.fulgidusまたはP.horikoshiiのような熱安定性生物から誘導した熱安定性の核酸ポリメラーゼはE.coli由来の核酸ポリメラーゼと比較して、より高温においてより安定であり活性である。P.furiosusから単離された代表的な熱安定性核酸ポリメラーゼ(pfu)はLundbergら、1991,Gene,108:1−6に記載されている。別の代表的な温度安定性ポリメラーゼは、例えば好熱性細菌Thermus flavus、Thermus ruber、Thermus thermophilus、Bacillus stearothermophilus(これは列挙した他のものよりも幾分低温最適である)、Thermus lacteus、Thermus rubens、Thermotoga maritimaから、または、好熱性の古細菌Thermococcus litoralisおよびMethanothermus fervidusから抽出されたポリメラーゼを包含する。
【0093】
温度安定性ポリメラーゼは2本鎖核酸がPCRサイクル中の高温(約95℃)への曝露により変性する熱サイクリング過程において好ましい。
【0094】
本明細書においては、「鋳型DNA分子」という用語は例えばプライマー伸長反応においてDNAポリメラーゼにより相補核酸鎖が合成される元となる核酸の鎖を指す。
【0095】
本明細書においては、「鋳型依存的方法」という用語はプライマー分子の鋳型依存的伸長(例えばDNAポリメラーゼによるDNA合成)を含む過程を指すものとする。「鋳型依存的方法」という用語は、ポリヌクレオチドの新しく合成された鎖が相補塩基対形成のよく知られた規則により予測される、RNAまたはDNAのポリヌクレオチド合成を指す(例えばWatson,J.D.ら、Molecular Biology of the Gene,第4版、W.A.Benjamin,Inc.,Menlo Park カリフォルニア州(1987)を参照できる)。
【0096】
本明細書においては、「増幅産物」とはPCR増幅反応の終了時の2本鎖ポリヌクレオチド集団を指す。増幅産物は元のポリヌクレオチド鋳型およびPCR反応中にポリヌクレオチド鋳型を用いてDNAポリメラーゼにより合成されたポリヌクレオチドを含む。
【0097】
本明細書においては「ポリヌクレオチド鋳型」または「標的ポリヌクレオチド鋳型」または「鋳型」とは、増幅された領域を含むポリヌクレオチドを指す。「本明細書においては「増幅された領域」とは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成されるべきポリヌクレオチドの領域である。例えば、ポリヌクレオチド鋳型の増幅された領域は2つのPCRプライマーが相補である配列の間にある。
【0098】
本明細書においては、「プライマー」という用語はポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズでき、そして、第2のポリヌクレオチド鎖の酵素的合成をプライミングする1本鎖DNAまたはRNA分子を指す。本発明において有用なプライマーは10〜100ヌクレオチド長、好ましくは17〜50ヌクレオチド長、より好ましくは17〜45ヌクレオチド長である。
【0099】
「相補的」とは、塩基対形成を介して2つのポリヌクレオチド鎖の領域の間、または、2つのヌクレオチドの間の配列の相補性の広範な概念を指す。アデニンヌクレオチドはチミンまたはウラシルであるヌクレオチドと特定の水素結合を形成する(「塩基対形成」)ことができる。同様にシトシンヌクレオチドはグアニンヌクレオチドと塩基対形成することができることが知られている。
【0100】
「野生型」という用語は天然に存在する原料から単離される場合に遺伝子または遺伝子産物の特性を有するその遺伝子または遺伝子産物を指す。一方、「修飾された」または「変異体の」という用語は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に改変された特性を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。例えば、本発明における変異体DNAポリメラーゼは低減されたウラシル検出活性を示すDNAポリメラーゼである。
【0101】
本明細書においては、「低減された塩基類似体検出」とはDNA鋳型中の存在する塩基類似体、例えばウラシルまたはイノシンを認識する低減された能力を有するDNAポリメラーゼを指す。この点に関し、「低減された」塩基類似体検出活性を有する変異体DNAポリメラーゼは野生型よりも低値である塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼの変異体である。変異体DNAポリメラーゼ融合物の場合は、変異体DNAポリメラーゼの活性は、相当する非融合物DNAポリメラーゼに匹敵するもの、即ち、野生型酵素の塩基類似体検出活性の10%未満(例えば9.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)を有する。塩基類似体検出活性はGreaggら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96,9045−9050に記載の通り低減したウラシル検出活性を有するDNAポリメラーゼの検出のために記載されたものと同様の試験法に従って測定してよい。あるいは、「低減された」塩基類似体検出とは、塩基類似体を認識する低減された能力を有する変異体DNAポリメラーゼを指し、塩基類似体のその「低減された」認識は、低減された塩基類似体検出活性を有さない野生型DNAポリメラーゼと比較して、少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは90%、最も好ましくは99%以上の>10kbPCRの量の増大により顕在化される。>10kbPCR産物の量はゲル溶出された>10kbPCRDNA産物の分光光度計による吸光度試験によるか、または、例えばMolecular Dynamixs(メリーランド州)FluorImager(商標)(Amersham Biosciences,カタログ番号63−0007−79)を用いた臭化エチジウム染色アガロース電気泳動ゲルにおける>10kbPCR産物の蛍光分析により測定される。
【0102】
本明細書においては、「低減されたウラシル検出」とはDNA鋳型中に存在するウラシル塩基を認識する低減された能力を有するDNAポリメラーゼを指す。この点に関し、「低減された」ウラシル検出活性を有する変異体DNAポリメラーゼは野生型酵素よりも低値のウラシル検出活性を有する、即ち、野生型酵素のウラシル検出活性の10%未満(例えば9.9%、9%、8%、6%、4%、2%または1%未満)を有するDNAポリメラーゼである。ウラシル検出活性は、Greaggら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96,9045−9050に記載の測定法によって決定してもよい。あるいは、「低減された」ウラシル検出とは、ウラシルを認識する低減された能力を有する変異体DNAポリメラーゼを指し、ウラシルのその「低減された」認識は、低減されたウラシル検出活性を有さない野生型DNAポリメラーゼと比較して、少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは90%、最も好ましくは99%以上の>10kbPCRの量の増大により顕在化される。>10kbPCR産物の量はゲル溶出された>10kbPCRDNA産物の分光光度計による吸光度試験によるか、または、例えばMolecular Dynamixs(メリーランド州)FluorImager(商標)(Amersham Biosciences,カタログ番号63−0007−79)を用いた臭化エチジウム染色アガロース電気泳動ゲルにおける>10kbPCR産物の蛍光分析により測定される。
【0103】
本明細書においては、「化学修飾された」とは、化学的または生化学的に修飾されるか、または、非天然または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む核酸を指す。このような修飾は、例えば標識、メチル化、類似体との天然に存在するヌクレオチド1つ以上の置換、未荷電結合のようなヌクレオチド間修飾(例えばメチルホスホネート、ホスホロジチオエート等)、懸垂部分(例えばポリペプチド)、介入物(例えばアクリジン、ソラレン等)キレート形成剤、アルキル化剤および修飾結合(例えばアルファアノマー性核酸等)を包含する。また、水素結合または他の化学相互作用を介した所定の配列への結合能力においてポリヌクレオチドを模倣している合成の分子も包含される。このような分子は当該分野で知られており、例えばペプチド結合が分子の骨格においてリン酸結合の代替となっているものも包含する。
【0104】
本明細書においては、「PCR増強因子」または「ポリメラーゼ増強因子」(PEF)とは、ポリヌクレオチドポリメラーゼ増強活性、例えばPEF、dUTPase、ssbPCNA、RFC、ヘリカーゼ等を有する複合体または蛋白を指す(共に参照により本明細書に組み込まれるHogrefeら、1997,Strategies 10:93−96;および米国特許第6,183,997号)。「PCR増強因子」はまた非蛋白因子、例えばDMSOおよびベタインも包含する。
【0105】
本発明はまた例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,333,158号および国際公開WO01/09347号A2に記載されている補助的因子と組み合わせた変異体の古細菌DNAポリメラーゼも意図する。
【0106】
本明細書においては、「添加剤」とはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)を指す。
【0107】
本発明はまたDNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;および線形または指数的PCR増殖よりなる群から選択される方法を高pHで実施するためのキットを提供する。本発明のキットは高pH緩衝液および/またはPCR増強因子および/または添加剤を含んでよい。
【0108】
本明細書においては、高pH緩衝液とは9より高値のpHを有する緩衝液を指す。本明細書においては、「高pH」とは、9より大きいpHを指す。「高pH」は好ましくは10以上、例えば11、12、13または14である。「高pH」には9より高値のpHが包含され、そして14までのpH、例えばpH9.1、9.5、9.8、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5または14が本発明の「高pH」である。
【0109】
好ましい実施形態においては、高pH緩衝液は、標準的なPCR反応緩衝液、例えば実施例3に記載するクローニングされたPfuの反応緩衝液であるが、緩衝剤成分は高pHとなっている(即ち9.1〜14)。例えば、本発明の緩衝剤成分は10.0または11.8のpHの30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液中の緩衝剤成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝剤成分は最終的PCR反応においては1mM〜1Mの濃度で使用し、そしてpH9.1〜14である。PCR反応用の高アルカリ緩衝液は本発明の融合DNAポリメラーゼまたは融合DNAポリメラーゼ混合物と共に使用する。本発明の緩衝剤成分は例えば、トリス、トリシン、bicine、ビス−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES,TAPSおよびTESを包含する。
【0110】
本明細書においては、「FEN−1ヌクレアーゼ」とは本発明において有用な熱安定性FEN−1を指し、そして例えばM.jannaschii,P.furiosusおよびP.woesei由来の「超好熱性物質」から精製されたFEN−1エンドヌクレアーゼを包含する。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,843,669号を参照できる。
【0111】
本発明の方法によれば、増幅反応にFEN−1を含めることで多部位の変異誘発の効率が劇的に増大する。400ng〜4000ngのFEN−1を各増幅反応に使用してよい。好ましくは400〜1000ng、より好ましくは400〜600ngのFEN−1を増幅反応に使用する。本発明の好ましい実施形態においては、400ngのFEN−1を使用する。
【0112】
本明細書においては、「ThermusDNAリガーゼ」とは各変異誘発プライマーを伸長することにより合成された変異フラグメントをライゲーションして環状の変異体鎖を形成するための多部位変異誘発増幅反応において使用される熱安定性DNAリガーゼである。TthおよびTaqDNAリガーゼはコファクターとしてNADを必要とする。
【0113】
好ましくは、1〜20UのDNAリガーゼを各増幅反応に使用し、より好ましくは2〜15UのDNAリガーゼを各増幅反応に使用する。
【0114】
好ましい実施形態においては、15UのTaqDNAリガーゼを増幅反応に使用する。TaqDNAリガーゼコファクターNDAを0〜1mM、好ましくは0.02〜0.2mM、より好ましくは0.1mMの濃度で使用する。
【0115】
本明細書においては、「混合物」とはDNAポリメラーゼ融合物少なくとも1つおよび非融合のDNAポリメラーゼを含むDNAポリメラーゼ2つ以上の組み合わせを指す(実施例2参照)。本発明は該融合または非融合のDNAポリメラーゼの少なくとも1つが熱安定性であり、古細菌または真正細菌目のDNAポリメラーゼであり、そして/または、PfuDNAポリメラーゼである「混合物」を意図する。1つの融合および1つの非融合のポリメラーゼを含む「混合物」中のDNAポリメラーゼ酵素の比率は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。「混合物」が1つの融合および2つの非融合のポリメラーゼを含む実施形態においては、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比率は、1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。本発明の「混合物」はゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた混合物の非融合成分と比較した場合、以下の活性、即ち:プロセシビティ、効率、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性;内因性ホットスタート能、プルーフリーディング活性、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識および塩耐性の1つ以上において>10%増大(後述する試験を用いる)を有する。本発明の混合物はまた、以下の活性、即ち:トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅スリップまたは室温におけるDNAポリメラーゼ活性の1つ以上において、ゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた非融合混合物と比較して>10%低減(後述する通り試験)を有する。1つの実施形態においては、本発明の「混合物」は、単なる混合物の非融合成分の存在下に観察される伸長時間と比較して、5秒、好ましくは15秒、より好ましくは45秒以上低減し得るPCR反応の伸長時間を有する。別の実施形態において、本発明の「混合物」は単なる混合物の非キメラ成分と比較した場合、1、1〜5または5以上のサイクルのPCRの増幅サイクル数が低減している。別の実施形態においては、ブレンドの非融合成分と比較した場合に、より少ない単位(0.001、0.01,0.1または1以上)の本発明の「混合物」が本発明の適用において有用となる。
【0116】
混合物は本明細書に記載したPCR増強因子および/または添加剤も含有してよい。
【0117】
本発明はまた本発明の方法を実施するために作成された組成物および本発明の方法を実施しながら得られる組成物に関する。このような組成物は本発明のポリメラーゼ1つ以上、ヌクレオチド1つ以上、鋳型1つ以上、反応緩衝液または緩衝塩1つ以上、プライマー1つ以上、本発明の方法により作成された核酸産物1つ以上等よりなる群から選択される成分1つ以上を含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
本発明は高pHにおけるPCR、DNA配列決定および変異誘発のプロトコルにおいて使用するためのDNAポリメラーゼを開示する。本発明はゲノムDNA鋳型のPCR増幅を促進し、そして、長PCRの効果を向上させるより短い伸長時間のPCR反応を可能とする。
【0119】
I.本発明のDNAポリメラーゼ
本発明はDNAポリメラーゼ融合物を提供する。本発明において有用なDNAポリメラーゼ融合物は3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有していても有していなくてもよく、即ち、プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングであり、そして好ましくは熱安定性である。本発明は本明細書に定義する融合物ではない野生型DNAポリメラーゼに通常存在する活性1つ以上を修飾する変異1つ以上を保有するDNAポリメラーゼ融合物を提供する。
【0120】
本発明において有用な別の核酸ポリメラーゼを以下に示す。
【0121】
A.バクテリオファージDNAポリメラーゼ(37℃試験で有用)
バクテリオファージDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が別のポリペプチドによりコードされているため、この活性を欠いている。適当なDNAポリメラーゼの例は、T4、T7およびφ29DNAポリメラーゼである。市販されている酵素は、T4(入手元多数、例えばEpicentreより入手可能)およびT7(入手元多数、例えば3’〜5’exo−T7「Sequenase」DNAポリメラーゼの未修飾およびUSBについてはEpicentreより入手可能)である。
【0122】
B.古細菌DNAポリメラーゼ
古細菌に発見されているDNAポリメラーゼには2種の異なるクラス、即ち1.ファミリーB/polI型(Pyrococcus furiosus由来のPfuホモログ)および2.polII型(p.furiosus DP1/DP2の2−サブユニットポリメラーゼのホモログ)がある。両方のクラスに由来するDNAポリメラーゼが関連する5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を生来欠いており、そして3’〜5’エキソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性を有することが分かっている。適当なDNAポリメラーゼ(polIまたはpolII)は所望の試験温度と同様の最適生育温度で古細菌から誘導することができる。
【0123】
熱安定性の古細菌DNAポリメラーゼはPyrococcus種(furiosusGB−D種、woesii,abysii,horikoshii)、Thermococcus種(kodakaraensis KOD1,liroralis,9度North−7種、JDF−3種、gorgonarius)、Pyrodictium occultumおよびArchaeoglobus fulgidusから単離される。適当な古細菌は最高生育温度>80〜85℃または最適生育温度>70〜80℃を示す。古細菌polIDNAポリメラーゼ群由来の適切なPCR酵素は市販されており、例えばPfu(Stratagene、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies,Inc.)、Vent(New Englaind BioLabs)、Deep Vent(New England BioLabs)、Tgo(Roche)およびPwo(Roche)を包含する。
【0124】
上記列挙したものに関連する別の古細菌は以下の参考文献:Archaea:A Laboratory Manual(Robb,F.T.とPlace,A.R.,編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州,1995およびThermophilic Bacteria(KristjanssonmJ.K.編)CRC Press,Inc.,Boca Raton,フロリダ,1992に記載されている。
【0125】
従って本発明はファミリーB/polI型またはpolII型並びにこれらの変異体または誘導体の何れかの熱安定性古細菌DNAポリメラーゼを提供する。
【0126】
表1.クローニングされたファミリーBポリメラーゼの受託情報
Vent Thermococcus litoralis
受託 AAA72101
PID g348689
バージョン AAA72101.1 GI:348689
DBソース 遺伝子座 THCVDPE 受託 M74198.1
THEST THERMOCOCCUS SP.(系統 TY)
受託 O33845
PID g3913524
バージョン O33845 GI:3913524
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THEST,受託 O33845
Pab Pyrococcus abyssi
受託 P77916
PID g3913529
バージョン P77916 GI:3913529
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRAB,受託 P77916
PYRHO Pyrococcus horikoshii
受託 O59610
PID g3913526
バージョン O59610 GI:3913526
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRHO,受託 O59610
PYRSE PYROCOCCUS SP.(系統 GE23)
受託 P77932
PID g3913530
バージョン P77932 GI:3913530
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRSE,受託 P77932
DeepVent Pyrococcus sp.
受託 AAA67131
PID g436495
バージョン AAA67131.1 GI:436495
DBソース 遺伝子座 PSU00707 受託 U00707.1
Pfu Pyrococcus furiosus
受託 P80061
PID g399403
バージョン P80061 GI:399403
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_PYRFU,受託 P80061
JDF−3 Thermococcus sp.
未発表
Baross gi|2097756|pat|US|5602011|12配列 米国特許5602011由来の12
9degN THERMOCOCCUS SP.(系統 9ON−7).
受託 Q56366
PID g3913540
バージョン Q56366 GI:3913540
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THES9,受託 Q56366
KOD Pyrococcus sp.
受託 BAA06142
PID g1620911
バージョン BAA06142.1 GI:1620911
DBソース 遺伝子座 PYWKODPOL 受託 D29671.1
Tgo Thermococcus gorgonarius.
受託 4699806
PID g4699806
バージョン GI:4699806
DBソース pdb:鎖 65,公開 1999年2月23日
THEFM Thermococcus fumicolans
受託 P74918
PID g3913528
バージョン P74918 GI:3913528
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_THEFM,受託 P74918
METTH Methanobacterium thermoautotrophicum
受託 O27276
PID g3913522
バージョン O27276 GI:3913522
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_METTH,受託 O27276
Metja Methanococcus jannaschii
受託 Q58295
PID g3915679
バージョン Q58295 GI:3915679
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_METJA,受託 Q58295
POC Pyrodictium occultum
受託 B56277
PID g1363344
バージョン B56277 GI:1363344
DBソース pir:遺伝子座 B56277
ApeI Aeropyrum pernix
受託 BAA81109
PID g5105797
バージョン BAA81109.1 GI:5105797
DBソース 遺伝子座 AP000063 受託 AP000063.1
ARCFU Archaeoglobus fulgidus
受託 O29753
PID g3122019
バージョン O29753 GI:3122019
DBソース swissprot:遺伝子座 DPOL_ARCFU,受託 O29753
Desulfurococcus sp.Tok.
受託 6435708
PID g64357089
バージョン GT:6435708
DBソース pdb.鎖 65,公開 1999年1月2日
【0127】
C.真正細菌目のDNAポリメラーゼ:
真正細菌目のDNAポリメラーゼには3つのクラス、即ち、polI、IIおよびIIIが存在する。PolIDNAポリメラーゼファミリーの酵素は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、そして特定のメンバーは3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性も示す。PolIIDNAポリメラーゼは生来より5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているが、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性は示す。PolIIIDNAポリメラーゼは細胞の大部分の複製DNAポリメラーゼに相当し、複数のサブユニットよりなる、PolIIIの触媒サブユニットは5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているが、場合により、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が同じポリペプチド内に位置する。
【0128】
真正細菌目polIIおよびpolIIIのDNAポリメラーゼの市販元はない。
【0129】
種々の市販PolIDNAポリメラーゼがあり、その一部は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失するように修飾されている。
【0130】
適当な熱安定性polIDNAポリメラーゼは種々の好熱性の真正細菌目、例えばThermus種およびThermotoga maritima、例えばThermus Aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)およびThermotoga maritima(TmaU1Tma)から単離できる。
【0131】
上記の真正細菌目に関連した他の真正細菌目は、Thermophilic Bacteria(Krisjansson,J.K.編)CRC Press,Inc.,Boca Raton,フロリダ,1992に記載されている。
【0132】
本発明は更に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,677,152号、第6,479,264号および第6,183,998号に開示されている方法に従って化学修飾されるキメラまたは非キメラのDNAポリメラーゼも提供する。
【0133】
II.変異体DNAポリメラーゼの製造
本発明によれば、DNAポリメラーゼは野生型の、または、野生型ポリメラーゼとは異なった挙動をDNAポリメラーゼにとらせる変異1つ以上、例えば点変異1つ以上、Nおよび/またはC切断、内部の欠失または挿入を含むように修飾された何れかのDNAポリメラーゼから作成できる。本発明に有用なDNAポリメラーゼの変異は、例えば、塩基類似体またはウラシル非感受性を付与するか、忠実度を上昇させるか、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失させるか、または、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を消失させるか、ポリメラーゼ活性を低減するような変異である。有用な変異または切断の特定の例は、ウラシル非感受性を付与するPfuDNAポリメラーゼにおけるV93R、K、E、D、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuDNAポリメラーゼにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqDNAポリメラーゼのN末端切断(KlenTaq)である。DNAポリメラーゼ変異体を作成するための方法は以下に記載するとおりであり、そして他の方法は当該分野で知られている。
【0134】
遺伝子修飾−変異誘発
多様な生物に由来するDNAポリメラーゼの直接の比較によれば、これらの酵素のドメイン構造は高度に保存されており、多くの場合において酵素の十分定義されたドメインにある特定の機能を割り付けることが可能である。例えば、約340アミノ酸に渡る6つの最も保存されたC末端領域は同じ線状の配置で位置しており、そして金属とdNTPの結合部位およびDNA鋳型を保持するための裂け目を形成し、従って重合機能に必須である高度に保存されたモチーフを含んでいる。別の例においては、金属結合1本鎖DNA結合および3’〜5’エキソヌクレアーゼ反応の触媒に関与するE.coliDNAポリメラーゼ内の重要な残基を含む3アミノ酸領域がいくつかの原核生物および真核生物のDNAポリメラーゼ中でアミノ末端半分に同じ線状のアレンジメントで位置している。これらの保存された領域の位置は、必須の機能、例えばDNA重合およびプルーフリーディング活性を保存しながら、修飾された活性を有する変異体のDNAポリメラーゼを製造するための遺伝子的修飾を指向するための有用なモデルを与える。
【0135】
例えば、変異体DNAポリメラーゼは遺伝子的修飾により(例えば野生型DNAポリメラーゼのDNA配列の修飾により)作成できる。DNA配列のランダム並びにターゲティングされた変異を可能にする多くの方法が当該分野で知られている(例えばAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版、John Wiley&Sons,Inc.)。更に、従来およびPCR系の方法の両方を含む部位指向性変異誘発のための多くの市販キットが存在する。例としては、Stratageneより入手可能なEXSITE(商標)PCR系部位指向的変異誘発キット(カタログ番号200502)およびStratageneのQUIKCHANGE(商標)部位指向性変異誘発キット(カタログ番号200518)およびやはりStratageneのCHAMELEON(登録商標)2本鎖部位指向性変異誘発キット(カタログ番号200509)が挙げられる。
【0136】
更にまた、変異体DNAポリメラーゼは当業者の知る方法に従って挿入変異または切断(N末端、内部またはC末端)により作成してもよい。
【0137】
当該分野で知られている部位指向性変異誘発のより以前の方法は1本鎖DNA鋳型の単離を可能にするM13バクテリオファージベクターのようなベクターに変異導入される配列サブクローニングに依存している。これらの方法においては、変異誘発性のプライマー(即ち変異すべき部位にアニーリングすることができるが変異すべき部位においてミスマッチのヌクレオチド1つ以上を保有するプライマー)を1本鎖鋳型にアニーリングし、次に変異誘発性プライマーの3’末端から鋳型の相補物の重合を開始する。次に得られた二重らせんを宿主細菌に形質転換し、所望の変異を有するプラークをスクリーニングする。
【0138】
より最近では、部位指向性変異誘発は1本鎖鋳型を必要としない利点を有するPCR法を使用している。更に、サブクローニングを必要としない方法も開発されている。PCR系の部位指向性変異誘発を行う際にはいくつかの懸案がある。第1にこれらの方法においてはポリメラーゼにより導入される望ましくない変異の拡大を防止するためにPCRサイクルの数を低減することが望ましい。第2に反応中存続し続ける非変異の親分子の数を低減するために選択を使用しなければならない。第3に、単一のPCRプライマーセットの使用を可能とするためには伸長PCR法が望ましい。そして第4に、一部の熱安定性ポリメラーゼの非鋳型依存性の末端伸長のため、PCR生成した変異体産物の平滑末端ライゲーションの前に、末端ポリッシング工程を操作に組み込む必要が生じる場合が多い。
【0139】
後述するプロトコルは以下の工程を介して上記懸案に対応している。第1に使用する鋳型濃度は従来のPCR反応で使用したものより約1000倍高値とし、これにより産物の収率を劇的に低下させること無く、サイクル数を25〜30から5〜10まで低減することができる。第2に、E.coliDamの最も一般的な菌株は配列5−GATC−3においてそのDNAをメチル化するため、制限エンドヌクレアーゼDpnI(認識標的配列:5−Gm6ATC−3、ここでA残基はメチル化されている)を用いて親DNAとの選別を行う。第3に長(即ちプラスミド完全長)のPCR産物の比率を増大させるためにTaqエクステンダーをPCRミックス中に使用する。最後に、PfuDNAポリメラーゼを用いてPCR産物の末端をポリッシュした後に、T4DNAリガーゼを用いた分子内ライゲーションを行う。
【0140】
非キメラ変異体DNAポリメラーゼの単離に関する非限定的な例を以下に詳述する。
【0141】
プラスミド鋳型DNA(約0.5pmol)を1×変異誘発緩衝液(20mMトリスHCl、pH7.5;8mM MgCl2;40μg/ml BSA);12〜20pmoleの各プライマー(当業者はオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング特性に影響する塩基の組成、プライマー長および意図する緩衝塩濃度のような要因を考慮しながら、必要に応じて変異誘発性プライマーを設計してよく;1つのプライマーは所望の変異を含むようにし、そして1つ(同じものまたは他方)は後のライゲーションを促進するための5’リン酸を含有しなければならない)、250μM各dNTP、2.5UTaqDNAポリメラーゼ、および2.5UのTaq Extender(Stratageneより入手可能;Nielsonら(1994)Strategies 7:27および米国特許第5,556,772号参照)を含有するPCRカクテルに添加する。プライマーは参照により本明細書に組み込まれるMatteucciら、1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185−3191のトリエステル法を用いて製造できる。あるいは、例えばシアノエチルホスホロアミダイト化学を用いたBiosearch 8700 DNAシンセサイザー上の自動合成が好ましい場合がある。
【0142】
PCRサイクルは以下の通り、即ち:4分94℃、2分50℃および2分72℃の1サイクル;次いで1分94℃、2分54℃および1分72℃の5〜10サイクルを行う。親鋳型DNAおよび変異誘発プライマーを組み込んだ線状のPCR作成DNAをDpnI(10U)およびPfuDNAポリメラーゼ(2.5U)で処理する。これによりインビボメチル化親鋳型およびハイブリッドDNAのDpnI消化および線状PCR鎖物上の非鋳型志向性のTaqDNAポリメラーゼ伸長塩基のPfuDNAポリメラーゼによる除去が起こる。反応液を30分間37℃でインキュベートし、更に30分72℃とする。0.5mM ATPを含有する変異誘発緩衝液(1×を115ul)をDpnI消化PfuDNAポリメラーゼポリッシュPCR産物に添加する。溶液を混合し、10ulを新しいミクロ遠沈管に写し、T4DNAリガーゼ(2〜4U)を添加する。ライゲーションは37℃で60分間超インキュベートする。最後に、処理した溶液を定法に従ってコンピテントなE.coli内に形質転換する。
【0143】
ランダムに位置する変異1つ以上を保有する変異体のパネルをもたらすランダム変異誘発の方法が当該分野で存在している。次にこのような変異体パネルを、野生型ポリメラーゼと比較して進歩した活性、例えば、低減したDNA重合活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠失および/または低減したウラシル検出活性を有するものがあるかどうか、スクリーニングする(例えば200μM dUTPの存在下および所定のDNAポリメラーゼに対する最適温度における30分間の重合体形態へのdNTP10ナノモルの取り込みを測定することによる)。ランダム変異誘発のための方法の一例はいわゆる「変異性(erroe−prone)PCR法」である。名称が意味するとおり、方法はDNAポリメラーゼが高忠実度取り込みを支援しない条件下で所定の配列を増幅する。種々のDNAポリメラーゼに関する変異性の取り込みを促進する条件は変動するが、当業者は所定の酵素に関するそのような条件を決定してよい。増幅の信頼性において多くのDNAポリメラーゼで変動する要因は例えば緩衝液中の2価の金属イオンの種類および濃度である。従ってマンガンイオンの使用および/またはマグネシウムまたはマンガンイオン濃度の変動をポリメラーゼのエラー率に影響させてよい。
【0144】
変異誘発により生成する所望の変異体DNAポリメラーゼの遺伝子は変異の部位および数を発見するために配列決定してよい。1つ以上の変異を含む変異対に関しては、所定の変異の作用は特定の変異体により運ばれる他の変異とは独立した部位指向性変異誘発により野生型遺伝子に発見された変異を導入することにより評価してよい。次にこのようにして作成された単一の変異体のスクリーニング試験によりその変異単独の作用を調べることができる。
【0145】
1つの実施形態において、本発明は本明細書に記載した添加剤を使用するか使用することなく、本発明のDNAポリメラーゼ融合物1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0146】
好ましい実施形態においては、本発明は少なくとも1つがPfuDNAポリメラーゼより誘導されている、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および変異体DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0147】
別の好ましい実施形態においては、本発明は少なくとも1つがTaqDNAポリメラーゼより誘導されている、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および非キメラDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0148】
別の好ましい実施形態においては、本発明は融合DNAポリメラーゼを用いるか、または、融合DNAポリメラーゼと野生型、変異体または化学修飾されたDNAポリメラーゼの混合物および/または野生型、変異体または化学修飾されたDNAポリメラーゼの製剤を用いるPCR増幅反応において使用される高pH緩衝液を提供する(実施例2参照)。本明細書においては、「DNAポリメラーゼ」製剤は、本明細書に定義する添加剤を伴った、または伴わない、DNAポリメラーゼ2つ以上、例えば2、3、4、5またはそれ以上の混合物である。
【0149】
本開示の利益を有する当業者が知る通り、他のexo+DNAポリメラーゼから誘導されたDNAポリメラーゼ、例えば、VentDNAポリメラーゼ、JDF−3DNAポリメラーゼ、TgoDNAポリメラーゼ、KODDNAポリメラーゼ等を対象となる組成物中で適宜使用してよい。
【0150】
野生型PfuDNAポリメラーゼのアミノ酸およびDNAのコーディング配列は図20に示すとおりである(Genbank 受託番号P80061)PfuDNAポリメラーゼの構造および機能の詳細な説明は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,948,663号;第5,866,395号;第5,545,552号;第5,556,772号に記載されている。
【0151】
対象となる組成物の酵素はまだ単離されていないDNAポリメラーゼを含む場合がある。
【0152】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および融合物ではない変異体または野生型のDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0153】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/280,962号(Sorgeら、2002年10月25日出願)および係属米国特許出願第10/298,680号(Sorgeら、2002年11月18日出願)に開示されているような塩基類似体検出活性を低減させる変異1つ以上を含有する非融合の変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0154】
好ましい実施形態においては、DNAポリメラーゼ2つ以上の混合物はDNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびアミノ酸位置93においてバリンからアルギニン、バリンからグルタミン酸、バリンからリジン、バリンからアスパラギン酸またはバリンからアスパラギンへの置換を含む本発明の非融合PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含む。
【0155】
本発明は更にDNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびアミノ酸位置93においてバリンからアルギニン、バリンからグルタミン酸、バリンからリジン、バリンからアスパラギン酸またはバリンからアスパラギンへの置換を含む低減された塩基類似体検出活性を有する非融合変異体古細菌DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0156】
低減したウラシル検出を有するPfuDNAポリメラーゼ変異体は以下の通り製造できる。変異はポリメラーゼまたはプルーフリーディング活性に対する影響を最小限としながらウラシル検出を低減させると思われるPfuDNAポリメラーゼ中に導入する。変異誘発に使用するDNA鋳型はpBluescriptにクローニングされたPfupol遺伝子を含む(米国特許第5,489,523号記載のpF72クローン)。点変異はQuikChangeまたはQuikChange Multi Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を用いて導入する。QuikChangeキットを用いる場合、点変異は変異誘発プライマーの対を用いて導入する(V93E、H、K、RおよびN)。QuikChangeMultiキットを使用する場合、1つのリン酸化変異誘発プライマーを取り込むことにより、または、変性コドン(V93GおよびL)を取り込んで作成されたPfuV93変異形のライブラリからランダム変異体を選択することにより導入される。クローンを配列決定して取り込まれた変異を発見する。
【0157】
PfuDNAポリメラーゼにおけるバリン93は図10に示すQuikChangeプライマー配列を用いてグリシン(G)、アスパラギン(N)、アルギニン[R]、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)およびロイシン(L)で置換した。
【0158】
変異体のキメラまたは非キメラのPfuDNAポリメラーゼの活性の試験は以下の通り行う。
【0159】
低減されたウラシル検出活性を有する部分精製された融合または非融合のPfuDNAポリメラーゼ製剤(熱処理細菌抽出液)のPCR中のdUTP取り込みについて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属米国特許出願第10/280,962号(Sorgeら、2002年10月25日出願)に記載の通り試験した。この例では、Pfupol遺伝子を含む2.3kbのフラグメントをPCRプライマー(FPfuLIC)5’gACgACgACAAgATgATTTTAgATgTggAT−3’および(RPfuLIC)5’−ggAACCAAgACCCgTCTAggATTTTTTAATg−3’を用いてプラスミドDNAより得た。増幅反応の組成は1×クローニングPfuPCR緩衝液、7ngプラスミドDNA、100ng各プライマー、2.5UPfu変異体(または野生型Pfu)および200μM各dGTP、dCTPおよびdATPとした。相対的なdUTP取り込みを評価するために、種々の量のdUTP(0〜400μM)および/またはTTP(0〜200μM)をPCR反応カクテルに添加する。増幅反応は以下の通りのサイクルとした。
【表A】
【0160】
本発明は更にDNAポリメラーゼ融合物1つ以上および低減されたDNA重合活性を有するG387P変異体古細菌DNAポリメラーゼを有する非融合変異体古細菌DNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0161】
本発明は更に、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上およびV93PfuDNAポリメラーゼの別の活性1つ以上、例えばDNA重合活性または3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性をモジュレートする別の変異1つ以上を含む低減されたウラシル検出活性を有する非融合のV93変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。1つの実施形態においては、本発明の非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼはDNAポリメラーゼを3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損とする変異1つ以上を含む。別の実施形態においては、本発明の非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼは非融合V93PfuDNAポリメラーゼのDNA重合活性を低減する変異1つ以上を含む。
【0162】
本発明は更に、DNAポリメラーゼ融合物1つ以上および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に記載のDNA重合を低減する変異1つ以上を含む低減したウラシル検出活性を有する非融合V93変異体PfuDNAポリメラーゼ1つ以上を含むDNAポリメラーゼ2つ以上の混合物を提供する。
【0163】
1つの実施形態において本発明は低減されたDNA重合活性および低減されたウラシル検出活性を有するV93R/G387P、V93E/G387P、V93D/G387P、V93K/G387P二重変異PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0164】
本発明は更に、係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら、2000年10月27日出願)に開示される3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低減または消失させる変異1つ以上を含む低減されたウラシル検出活性を有するV93R、V93E、V93D、V93KまたはV93N変異体PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0165】
1つの実施形態においては、本発明は低減された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性および低減されたウラシル検出活性を有する非融合V93R/D141A/E143A三重変異体PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0166】
本発明は更に、古細菌DNAポリメラーゼの塩基類似体検出活性を増大または消失させる変異1つ以上の何れかの組み合わせを含む本発明のPfuDNAポリメラーゼ1つ以上を提供する。
【0167】
別の変異を含むDNAポリメラーゼは、当該分野で知られており、本明細書に記載する鋳型DNA分子として本発明のDNAポリメラーゼ、例えばPfuDNAポリメラーゼまたはPfuV93cDNAを使用しながら部位指向性変異誘発により作成される。
【0168】
本発明は本明細書に記載する、そして当該分野で知られた変異の何れかを融合物のDNAポリメラーゼドメインが含んでいるDNAポリメラーゼ融合物を意図している。
【0169】
本発明の低減したDNA重合活性を有するPfuDNAポリメラーゼを作成する方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる争中の米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願);および係属米国特許出願第10/324,846号(Bornsら、;2002年12月20日出願)に開示されている。
【0170】
D141AおよびE143A変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損JDF−3DNAポリメラーゼを作成するために使用する方法は係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている内容を把握している当業者は、確立された部位指向性変異誘発方を用いて、係属米国特許出願第09/698,341号に開示されている通り、非キメラV93PfuDNAポリメラーゼcDNAを含む本発明のDNAポリメラーゼに、相当するD141AおよびE143A変異の両方または他の3’〜5’エキソヌクレアーゼ変異を容易に導入できる。
【0171】
3種の3’〜5’エキソヌクレアーゼモチーフが発見されており、これらの領域における変異はKlenow、φ29、T4、T7およびVentDNAポリメラーゼ、酵母Polα、Polβ、Polγおよびバチルス・サブチルスのPolIIIにおける3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失させることが分かっている(Derbeyshireら、1995,Methods.Enzymol.262:363参照)。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が低減されるか消失した別のDNAポリメラーゼ変異体を作成する方法は当該分野で知られている。
【0172】
5’〜3’および3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性の両方を欠いた市販の酵素はSequenase(exo−T7;USB)、Pfuexo−(Stratagene)、exo−Vent(New England BioLabs)、exo−DeepVent(New England BioLabs)、exo−Klenowフラグメント(Stratagene)、Bst(BioRad)、Isotherm(Epicentre)、Ladderman(Panvera)、KlenTaq1(Ab Peptides),Stoffelフラグメント(Perkin−Elmer)、ThermoSequenase(USB)およびTaqFS(Hoffman−LaRoche)を包含し、これらのいずれも本明細書に開示した本発明の混合物中の非キメラDNAポリメラーゼ成分として使用してよい。
【0173】
本発明によれば、上記した変異のほかに、別の変異または修飾(またはその組み合わせ)1つ以上を目的のポリメラーゼに対して行ってよい。特定の目的の変異または修飾は(1)3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を消失または低減する;および(2)ジデオキシヌクレオチドの識別を低減する(即ちジデオキシヌクレオチドの取り込みを増大させる)変異の修飾を包含する。ポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性はポリメラーゼ遺伝子を変異することにより、または、5’〜3’エキソヌクレアーゼドメインを欠失させることにより、低減または消失させることができる。そのような変異は、点変異、フレームシフト変異、欠失、および挿入を含む。好ましくは、DNAポリメラーゼ活性をコードしている遺伝子の領域を当該分野でよく知られた方法を用いて欠失させる。例えば、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性に関連する6つの保存されたアミノ酸の何れか1つを変異させる。TaqDNAポリメラーゼに関するこれらの保存されたアミノ酸の例はAsp18、Glu117、Asp119.Asp120、Asp142およびAsp144である。
【0174】
ポリメラーゼ変異体はポリメラーゼがジデオキシヌクレオチドのような非天然のヌクレオチドを識別できなくするように作成することもできる(米国特許第5,614,365号参照)。O−螺旋内の変化、例えば他の点変異、欠失および挿入を行うことにより、ポリメラーゼを非識別性とすることができる。例えば、この性質を有する1つのTneDNAポリメラーゼ変異体はO−螺旋内のPhe730に対してTyrのような非天然のアミノ酸を置換する。
【0175】
典型的には、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性、識別化成および忠実度は典型的には異なる特質を有するアミノ酸の置換により影響を受ける。例えば、Aspのような酸性アミノ酸は塩基性、中性または極性であるが未荷電のアミノ酸、例えばLys、Arg、His(塩基性);Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp(中性)またはGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln(極性であるが未荷電)に変えてよい。GluはAsp、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGlnに変えてよい。
【0176】
好ましくは、オリゴヌクレオチド指向変異誘発を用いて、コードするDNA分子に沿った何れかの所定の部位における塩基対交換の全ての可能なクラスが行えるような変異対ポリメラーゼを作成する。一般的に、本手法は目的のDNAポリメラーゼをコードする1本鎖ヌクレオチド配列に相補的(1つ以上のミスマッチがあることを除く)なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることを含む。次にミスマッチしたオリゴヌクレオチドをDNAポリメラーゼで伸長し、一方の鎖において配列の望ましい変化を含んでいる2本鎖DNA分子を作成する。配列の変化は当然ながら、アミノ酸の欠失、置換または挿入をもたらす。次に2本鎖ポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに挿入し、このようにして変異ポリペプチドを作成することができる。上記したオリゴヌクレオチド指向変異誘発は当然ながらPCRを介して実施できる。
【0177】
1つの実施形態において非キメラ変異PfuDNAポリメラーゼは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,489,523号に記載されている通り発現させ、精製される。
【0178】
III.DNAポリメラーゼ融合物の製造
本発明のDNAポリメラーゼは、一方のポリペプチドは1つの蛋白の配列またはドメインに由来し、もう一方のポリペプチドは別の蛋白の配列またはドメインに由来する共有結合したポリペプチド少なくとも2個を有する。本発明によれば、DNAポリメラーゼ融合物のドメインの少なくとも1つは本発明の野生型または変異体のDNAポリメラーゼを起源としている。ポリペプチドは直接、または、共有結合リンカー、例えばアミノ酸リンカー、例えばポリギリシンリンカーまたは他の型の化学リンカー、例えば炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えばPEG等を介して連結してよい(例えばHermanson,Bioconjugate techniques(1996)参照)。融合ポリペプチドを形成するポリペプチドは、C末端からC末端、N末端からN末端、またはN末端からC末端に連結することもできるが、典型的にはC末端からN末端に連結される。ポリペプチドドメイン1つ以上を本発明のDNAポリメラーゼ内の内部位置に挿入してよい。融合蛋白のポリペプチドはいずれの順序であることもできる。「融合ポリペプチド」または「キメラ」という用語はまた、保存的に修飾された変種、多形変種、対立遺伝子、変異体、融合蛋白を構成するポリペプチドのサブ配列および種間のホモログとも称する。融合蛋白は1つの蛋白配列に由来するアミノ酸の鎖を別の蛋白配列に由来するアミノ酸の鎖に共有結合することにより、例えば融合蛋白を隣接してコードしている組み換えポリペプチドを製造することにより、作成してよい。融合蛋白は同じか異なる種に由来するアミノ酸の異なる鎖2、3、4以上を含むことができる。融合蛋白内のアミノ酸の異なる鎖は、直接共にスプライシングされるか、または、化学結合基または約200アミノ酸長以上、典型的には1〜100アミノ酸であることができるアミノ酸連結基を介して間接的にスプライシングしてよい。一部の実施形態においては、プロリン残基をリンカーに組み込むことにより、リンカーによる大きな二次構造エレメントの形成を防止する。リンカーは組み換え融合蛋白の一部として合成される可変アミノ酸配列である場合が多い。そのような可変リンカーは当該分野でよく知られている。
【0179】
好ましい実施形態においては、本発明において有用なDNAポリメラーゼ融合物は低減されたDNAポリメラーゼ活性を有するか、低減されたウラシル検出活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼである。更に本発明のDNAポリメラーゼ融合物は3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有していてもいなくてもよい。
【0180】
1つの実施形態においては、DNAポリメラーゼに融合する成分はNまたはC末端において、または何れかの内部の位置において、DNAポリメラーゼに融合した何れかの非天然の蛋白または蛋白ドメインである。DNAポリメラーゼ融合相手(即ち本明細書に記載する融合物の第2のアミノ酸配列)からのDNAポリメラーゼの活性への寄与は、例えば、以下のDNAポリメラーゼ活性、即ち、プロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、忠実度および塩耐性および/または室温における低減されたDNAポリメラーゼ活性の1つ以上の増大を包含する。
【0181】
DNAポリメラーゼ融合物は当該分野で知られた融合蛋白を製造する分子生物学的な手法により製造できる。
【0182】
当該分野でよく知られた方法(Sambrookら、(1989),Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州)を用いて、DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを所望の活性を有する別のポリメラーゼのドメインで置換することができる。本発明のDNAポリメラーゼ融合物を製造する方法はまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1およびPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載されている。
【0183】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は変異1つ以上を含む本発明の異なるDNAポリメラーゼの蛋白ドメインに融合した本発明の1つの野生型DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。
【0184】
別の好ましい実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はPfuまたはTaqDNAポリメラーゼの全体または一部を含む。
【0185】
1つの実施形態においては本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されているとおり、低減されたDNA重合を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0186】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/280,962号(Hogrefeら;2002年10月25日出願)および係属米国特許出願第10/298,680号(Hogrefeら;2002年11月18日出願)および係属米国特許出願第10/324,846号(Bornsら;2002年12月20日出願)に開示されている通り、塩基類似体検出活性を低減する変異1つ以上を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0187】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物が変異1つ以上を含む本発明の異なるDNAポリメラーゼの蛋白ドメインに融合する本発明の1つの変異DNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。
【0188】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は本発明の別のDNAポリメラーゼ内の類似の蛋白ドメインを置き換える1つのDNAポリメラーゼの蛋白ドメインを含む。本明細書においては、2つの蛋白ドメインは、それらが少なくとも1つのDNAポリメラーゼ活性、例えばプロセシビティ、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合および認識、プルーフリーディング、例えば3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性、忠実度、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性または塩耐性を付与するドメインを共有している場合に「類似の」といわれる。
【0189】
1つの実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はPavlovら、2002,Proc.Atl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に記載の通りプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を増大させるDNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフを含む。
【0190】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は、国際公開WO97/29209号記載の通りDNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティを増大させるチオレドキシン結合ドメインを含む。
【0191】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物はTaqDNAポリメラーゼまたは関連の真正細菌目DNAポリメラーゼに融合した古細菌PCNA結合ドメインを含む。PCNA結合ドメイン−TaqDNAポリメラーゼキメラを含むPCR反応にPCNAを加えることにより、DNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティが増強され、PCR増幅DNAの収率が向上する(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;277(18);16179−88)。
【0192】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は本発明のDNAポリメラーゼに融合した例えばSulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dを含む。本発明のDNAポリメラーゼ融合物、例えばPfuまたはTaqDNAポリメラーゼへのDNA結合蛋白Sso7dおよびSac7dの融合は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO01/92501号A1に開示されている通りこれらのDNAポリメラーゼのプロセシビティを大きく増大させる。
【0193】
本発明は当該分野で知られたHhHドメインの何れか(Belovaら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:6015,および図18参照)が本明細書に記載する野生型または変異体のDNAポリメラーゼの何れかに融合しているDNAポリメラーゼ融合物を意図する。HhHは本明細書に記載した野生型または変異体のDNAポリメラーゼのNまたはC末端に直接融合するか、または、何れかの内部の部位に融合できる。1つ以上(例えばH−LまたはE−L)のHhHドメインを用いてDNAポリメラーゼ融合物を作成できる。
【0194】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は低減された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有するPfuDNAポリメラーゼまたはその一部を含む。D141AおよびE143A変異を含む3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損JDF−3DNAポリメラーゼを作成するために使用される方法は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第09/698,341号(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている。係属米国特許出願第09/698,341(Sorgeら;2000年10月27日出願)に開示されている内容を把握している当業者は、本発明のDNAポリメラーゼ融合物の何れか1つ、即ち、本明細書に定義した低減された塩基類似体検出活性または低減されたDNA重合活性を有するDNAポリメラーゼ融合物内に、相当するD141AおよびE143A変異の両方または他の3’〜5’エキソヌクレアーゼ変異を容易に導入できる。
【0195】
別の実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は5’〜3’および3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性の両方を欠いたDNAポリメラーゼまたはその一部、例えば、Sequenase(exo−T7;USB)、Pfuexo−(Stratagene)、exo−Vent(New England BioLabs)、exo−DeepVent(New England BioLabs)、exo−Klenowフラグメント(Stratagene)、Bst(BioRad)、Isotherm(Epicentre)、Ladderman(Panvera)、KlenTaq1(Ab Peptides),Stoffelフラグメント(Perkin−Elmer)、ThermoSequenase(USB)およびTaqFS(Hoffman−LaRoche)を含み、これらのいずれも本明細書に開示した本発明のキメラDNAポリメラーゼ融合物として使用してよい。
【0196】
別の実施形態においては、本発明のDNAポリメラーゼ融合物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,795,762号に開示されている通り本発明のDNAポリメラーゼ融合物に増大した忠実度を付与する増強された3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼまたはその一部を含む。
【0197】
IV.本発明の野生型または変異体の酵素の発現
当該分野で知られている方法を本発明のDNAポリメラーゼを発現させ単離するために適用してよい。多くの細菌発現ベクターは外来性配列によりコードされる蛋白の高濃度の誘導発現を可能とする配列エレメントまたは配列エレメントの組み合わせを含んでいる。例えば、上記した通り、T7RNAポリメラーゼ遺伝子の組み込み誘導型を発現する細菌を、T7プロモーターに連結した変異したDNAポリメラーゼ遺伝子を有する発現ベクターで形質転換してよい。lac−誘導性プロモーターに対する適切なインデューサー、例えばイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によるT7RNAポリメラーゼの誘導は、T7プロモーターからの変異した遺伝子の高濃度の発現を誘導する。
【0198】
細菌の適切な宿主系統は当業者の使用できるものから選択してよい。非限定的な例としては、E.coliの他の菌株と比較してプロテアーゼ欠損であることから、E.coli菌株BL−21が外因性蛋白の発現のために一般的に使用されている。誘導T7RNAポリメラーゼ遺伝子を有するBL−21菌株はWJ56およびER2566を包含する(Gardner&Jack,1999,上出)。特定のポリメラーゼ遺伝子のためのコドンの使用がE.coli遺伝子において通常観察されるものとは異なる場合は、より希少なアンチコドンを有するtRNAをコードするtRNA遺伝子(例えばargU、ileY、leuWおよびproLのtRNA遺伝子)を担持するように修飾されたBL−21系統が存在し、クローニングされた蛋白遺伝子、例えばクローニングされた古細菌酵素遺伝子の高効率発現を可能とする(例えばStratageneから希少コドンtRNAを担持する数種のBL21−CODONPLUSTM細胞系統が入手可能である)。
【0199】
本発明のDNAポリメラーゼの精製のために適している当該分野で知られた多くの方法がある。例えばLawyerら(1993,PCR Meth.&App.2:275)はE.coliにおいて発現されるDNAポリメラーゼの単離に適しており、Taqポリメラーゼの単離のために当初設計された。あるいは、宿主蛋白を破壊するための過熱変性工程および2つのカラム精製工程(DEAR−Sepharoseおよびヘパリン−Sepharoseカラム上)を使用して高活性で約80%純度のDNAポリメラーゼを単離するKongら(1993,J.Biol.Chem.268:1965,参照により本明細書に組み込まれる)の方法を使用してよい。更にまた、DNAポリメラーゼは硫酸アンモニウム分画、次いでQSepharoseおよびDNAセルロースカラム、またはHiTrapQカラム上の夾雑物吸着、次いでHiTrapヘパリンカラムからの勾配溶離により単離してよい。
【0200】
V.融合および非融合DNAポリメラーゼの混合物
本発明のDNAポリメラーゼ融合物ブレンド製剤は少なくとも1つのDNAポリメラーゼ、および、(1)プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングのキメラDNAポリメラーゼ;または(2)プルーフリーディング+非プルーフリーディング、非プルーフリーディング+非プルーフリーディング、または、プルーフリーディング+プルーフリーディングの非融合DNAポリメラーゼ混合物、例えばPfu、Taq、Pfu/Taq、Pfu/exo−Pfu、Taq/exo−Pfu、Pfu/JDF3、またはpol−Pfu(PfuG387P)とのこれらの組み合わせの何れかを含むことができる。1つの融合および1つの非融合のポリメラーゼを含む「混合物」中のDNAポリメラーゼ酵素の比率は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。「混合物」が1つの融合および2つの非融合のポリメラーゼを含む実施形態においては、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比率は、1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。本発明の製剤は個々の成分の比に関する限定条項はない。
【0201】
1つの実施形態において、本発明の混合物製剤は2.5UPfu/0.25UキメラPfuである。
【0202】
DNAポリメラーゼ融合物とブレンドされる野生型DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性およびプルーフリーディング活性のネイティブの水準を有する何れかのネイティブまたはクローニングされたDNAポリメラーゼであることができ、そして、好ましくは、PfuまたはTaqのような熱安定性である。DNAポリメラーゼ融合物および野生型DNAポリメラーゼは上記した比の範囲でブレンドされ、そして、何れかの複製アクセサリ因子またはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)と混合することもできる。
【0203】
本発明のDNAポリメラーゼ融合物とブレンドされる変異体DNAポリメラーゼは野生型DNAポリメラーゼとは異なる活性を有するDNAポリメラーゼを生成する導入された変異および/または切断を有する何れかのDNAポリメラーゼである。変異体は何れかの量のポリメラーゼおよび/またはプルーフリーディング活性を有する。有用な変異または切断の特定の例は、ウラシル非感受性を付与するPfuDNAポリメラーゼにおけるV93R、K、EまたはD、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuDNAポリメラーゼにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqのN末端切断(KlenTaq)である。
【0204】
本発明はまた向上した逆転写活性を有する別の変異1つ以上を含む変異体V93R、V93E、V93D、V93KまたはV93N非融合PfuDNAポリメラーゼを提供する。
【0205】
本発明はDNAポリメラーゼ融合物の非融合DNAポリメラーゼに対する比率が1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である混合物を提供する。本発明はDNAポリメラーゼ融合物と1つより多い非融合DNAポリメラーゼの混合物を含む混合物を意図する。非融合DNAポリメラーゼ2つと組み合わせられたDNAポリメラーゼを含む混合物については、第1の非融合DNAポリメラーゼの第2の非融合DNAポリメラーゼに対する比の範囲は1:1〜1:5〜5:1、または1:1〜1:10〜10:1または1:1〜1:25〜25:1または1:1〜1:100〜100:1である。
【0206】
VI.要件発明の用途
本発明は本明細書に定義する高pHで本発明のポリメラーゼ融合物を使用する方法を提供する。
【0207】
本発明で有用な高pH緩衝液は例えば緩衝成分が高pH(即ち9.3〜14)であるクローニングPfu反応緩衝液(実施例3に記載)のような標準的なPCR反応緩衝液である。以下の実施例において使用する緩衝成分はpH10.0または11.8における30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液の緩衝成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝成分は最終PCR反応において1mM〜1Mの濃度で使用し、そして9.5〜14の何れかのpHであってよい。本発明の緩衝成分は例えばトリス、トリシン、bicine、Bis−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPSおよびTESである。
【0208】
1つの態様において、本発明は要件となる発明の組成物を用いたDNA合成のための方法を提供する。典型的には、ポリヌクレオチドの合成は合成プライマー、合成鋳型、新しく合成されるポリヌクレオチドに取り込まれるためのポリヌクレオチド前駆体(例えばdATP、dCTP、dGTP、dTTP)等を必要とする。ポリヌクレオチド合成を行うための詳細な方法は当該分野の当業者にはよく知られており、例えばMolecular Cloning第2版、Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)に記載されている。
【0209】
A.増幅反応における適用
「ポリメラーゼ連鎖反応」即ち「PCR」は特定のポリヌクレオチド鋳型配列を増幅するためのインビトロの方法である。PCRの手法は多くの文献、例えばPCR:A Practical Approach,M.J.McPhersonら、IRL Press(1991),PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら、Academic Press(1990)およびPCR Technology:Principals and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich,Stockton Press(1989)に記載されている。PCRはまた、多くの米国特許、例えば米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;第4,889,818号;第5,075,216号;第5,079,352号;第5,104,792号;第5,023,171号;第5,091,310号;および第5,066,584号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0210】
本発明により与えられる利点を簡単に理解するために、PCRの要約を示す。PCR反応は温度サイクルの反復シリーズを含み、典型的には50〜100μlの容量で行われる。反応混合物はdNTP(4種のデオキシヌクレオチドdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPの各々)、プライマー、緩衝液、DNAポリメラーゼおよびポリヌクレオチド鋳型を含む。PCRは増幅すべき標的ポリヌクレオチド配列の2本鎖とハイブリダイズするプライマー2つを必要とする。PCRにおいては、この2本鎖標的配列を変性させ、プライマー1つを変性した標的の各鎖にアニーリングする。プライマーは標的ポリヌクレオチドが相互に脱離した部位において、相補体から分離した際の一方のプライマーの伸長産物が、もう一方のプライマーにハイブリダイズできるような方向において、アニーリングする。あるプライマーが標的配列にハイブリダイズすると、プライマーはDNAポリメラーゼの作用により伸長される。次に伸長産物を標的配列から変性させて方法を反復する。
【0211】
この方法の継続的サイクルにおいて、早期のサイクルで生成した伸長産物はDNA合成の鋳型として作用する。第2サイクルの開始時に、増幅産物は対数的速度で蓄積を開始する。増幅産物は最終的には第2のプライマーに相補的な配列が後続する第1のプライマーの配列を含む第1の鎖および第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む個別の2本鎖DNA分子である。
【0212】
PCR法によれば大量の増幅が可能であるため、高濃度DNAの試料、陽性対照鋳型または前の増幅から引き継がれた低濃度のDNAは、意図的に添加された鋳型DNAの非存在下であっても、PCR産物を与えうる。可能であれば、全ての反応混合物をPCR産物分析および試料調製から離れた領域でセットアップする。RNA/DNAの調製、反応混合および試料分析のための専用または使い捨ての容器、溶液およびピペット(好ましくは陽圧置換ピペット)を使用することにより、交差汚染を最小限にする。参照により本明細書に組み込まれるHiguchiとKwokm 1989,Nature,339:237−238,KwokとOrrego,Innisら編、1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,カリフォルニア州を参照できる。
【0213】
本明細書に記載する酵素はdUTPを取り込むPCR酵素を必要とするdUTP/UNGクリーンアップ法のためにも有用である(Longoら、上出)。
【0214】
1.熱安定性酵素
PCR増幅のためには、本発明において使用される酵素は好ましくは熱安定性である。本明細書においては、「熱安定性」とは熱に対して安定であり、熱抵抗性であり、そして、高温、例えば50〜90℃で機能する酵素を指す。本発明の熱安定性酵素は増幅反応のために有効であるべき唯一の基準、即ち、酵素は2本鎖ポリヌクレオチドの変性を起こすために必要な時間、高温に付されても非可逆的に変性(不活性化)されてはならないということを満足しなければならない。「非可逆的な変性」とは、この関連において使用する場合は酵素活性の永久的および完全な消失をもたらす過程を意味する。変性に必要な加熱条件は、例えば緩衝塩濃度および変性すべきポリヌクレオチドの長さおよびヌクレオチド組成により異なるが、典型的には、温度およびポリヌクレオチド長に主に依存する時間、典型的には短いポリヌクレオチドの場合の0.25分〜DNAの長片の場合の4.0分にわたり、短いポリヌクレオチドの場合の85℃から105℃までの範囲である。緩衝塩濃度および/またはポリヌクレオチドのGC組成が上昇するに従い、より高温も耐容性となる場合もある。好ましくは、酵素は90〜100℃で非可逆的に変性されない。本発明によれば非可逆的に変性されない酵素は増幅反応の間、少なくとも10%、または少なくとも25%、または少なくとも50%以上の機能または活性を維持する。
【0215】
2.PCR反応混合物
要件となる酵素混合物の他に、当業者は合成/増幅反応の忠実度を向上させるために他のPCRパラメーターも使用してよい。PCRの忠実度はdNTPの濃度、反応当たり使用する酵素の単位、pHおよび反応中に存在するdNTPに対するMg2+の比のような要素に影響されることが報告されている(Mattilaら、上出)。
【0216】
Mg2+濃度はプライマー−鋳型相互作用を安定化させることにより鋳型DNAへのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリングに影響し、有機層はまた鋳型−プライマーとのポリメラーゼの複製複合体も安定化させる。従って、非特異的アニーリングを増大させ、望ましくないPCR産物を生成する(ゲル中の複数のバンドを生じる)。非特異的増幅が起こる場合は、Mg2+の濃度を低下させる必要が生じるか、または、EDTAを添加してMg2+をキレートし、増幅の精度および特異性を上昇させることができる。
【0217】
他の2価のカチオン、例えばMn2+またはCo2+もまたDNA重合に影響する場合がある。各DNAポリメラーゼに適するカチオンは当該分野で知られている(例えばDNA Replication 第2版、上出を参照)。2価のカチオンはMgCl2、Mg(OAc)2、MgSO4、MnCl2、Mn(OAc)2またはMnSO4のような塩の形態で供給される。トリス−CHl緩衝液中の使用可能なカチオン濃度はMnCl2の場合は0.5〜7mM、好ましくは0.5〜2mMであり、MgCl2の場合は0.5〜10mMである。Bicine/KOAc緩衝液中の使用可能なカチオン濃度はMn(OAc)2の場合は1〜20mM、好ましくは2〜5mMである。
【0218】
DNAポリメラーゼに必要な1価のカチオンは塩化物または酢酸塩としてのカリウム、ナトリウム、アンモニウムまたはリチウム塩で供給される。KClの場合は、濃度は1〜200mM、好ましくは濃度は40〜100mMであるが、最適濃度は反応において使用されるポリメラーゼにより変動してよい。
【0219】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を2ナトリウムまたはリチウムの塩のようなdATP、dCTP、dGTP、dUTPおよびdTTPのような塩の溶液として添加する。本発明においては各々1μM〜2mMの範囲の終濃度が適当であり、そして100〜600μMが好ましいが、ヌクレオチドの最適濃度は総dNTPおよび2価金属イオンの濃度、および、緩衝液、塩、特定のプライマーおよび鋳型によりPCR反応において変動してよい。より長い産物、即ち1500bpより長いものについては、トリス−HCl緩衝液を用いる場合は500μMの各dNTPが好ましい。
【0220】
dNTPは2価のカチオンとキレート形成するため、使用する2価のカチオンの量は反応におけるdNTPの濃度に従って変更する必要がある。過剰な量のdNTP(例えば1.5mM超)はエラー率を増大させ、DNAポリメラーゼを阻害する可能性がある。従って、dNTPを低下(例えば10〜50μMまで)させることがエラー率を低下させる。より長いサイズの鋳型を増幅するためのPCR反応はより多くのdNTPを要する場合がある。
【0221】
PCR反応緩衝液は高pH(即ち9.1〜14)の緩衝成分を有する以外はクローニングPfu反応緩衝液のような標準的なPCR反応緩衝液である。適当な緩衝成分の一例はpH10.0または11.8の30mM Tris[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]である。標準的なPCR反応緩衝液中の緩衝剤成分のpHは8.3〜8.8である。緩衝剤成分はpH9.1〜14の最終的PCR反応においては1mM〜1Mの濃度で使用する。本発明で有用な緩衝剤成分は例えば、トリス、トリシン、bicine、Bis−トリス、CAPS、EPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPSおよびTESを包含する。
【0222】
PCRはDNA増幅のための極めて強力なツールであり、従ってほとんど鋳型DNAを必要としない。しかしながら一部の実施形態においては、エラーの確立を低下させるために、より高いDNA濃度を用いるが、鋳型が多すぎると夾雑物の量を増大させ、効率を低下させる場合がある。
【0223】
通常は3μMまでのプライマーを使用するが、高いプライマーの鋳型に対する比は非特異的増幅およびプライマー−二量体形成をもたらす場合がある。従って通常はプライマー−二量体形成を回避するためにプライマー配列を確認する必要がある。
【0224】
本発明は鋳型におけるシトシンの脱アミノ化を最小限にすることにより、そして、より高値の変性時間および変性温度の使用を可能にすることにより、GCリッチのDNA鋳型のPCRを増強する低減したウラシル検出活性を有するPfuV93R、V93E、V93K、V93DまたはV93Nの融合または非融合のDNAポリメラーゼを提供する。
【0225】
3.サイクリングパラメータ
変性時間は鋳型のGC含量が高値の場合は増大する場合がある。より高いアニーリング温度は高いGC含量を有するプライマーまたはより長いプライマーの場合に必要となる。勾配PCRはアニーリング温度を決定する通常の方法である。伸長時間はより大きいPCR産物の増幅の場合には延長しなければならない。しかしながら、伸長時間は酵素の損傷を制限するため可能な限り低減する必要がある。
【0226】
サイクル数は鋳型DNAの数が極めて少ない場合は増大し、そして多量の鋳型DNAを使用する場合は低下する。
【0227】
4.PCR増強因子および添加剤
PCR増強因子もまた増幅の効率を向上させるために使用してよい。本明細書においては「PCR増強因子」または「ポリメラーゼ増強因子(PEF)」とは、ポリヌクレオチドポリメラーゼ増強活性を有する複合体または蛋白を指す(共に参照により本明細書に組み込まれるHogrefeら、1997,Strategies 10:93−96;米国特許第6,183,997号)。PfuDNAポリメラーゼの場合は、PEFはネイティブの形態(P50およびP45の複合体)で、または組み換え蛋白としてP45を含む。PfuP50およびP45のネイティブの複合体においては、P45のみがPCR増強活性を示す。P50蛋白は細菌フラボ蛋白と構造において同様である。P45蛋白はdCTP脱アミノ酵素およびdUTPaseと構造が同様であるが、dUTPをdUMPおよびピロリン酸に変換するdUTPaseとしてのみ機能する。PEFは本発明によれば、古細菌細菌原料(例えばPyrococcus furiosus)から得られる単離または精製された天然に存在するポリメラーゼ増強蛋白;ポリメラーゼ増強活性を有するPfuP45と同じアミノ酸配列を有する完全または部分的に合成された蛋白またはその類似体;天然に存在するか完全または部分的に合成された蛋白の1つ以上のポリメラーゼ増強混合物;天然に存在するか完全または部分的に合成された蛋白の1つ以上のポリメラーゼ増強蛋白複合体;または、該天然に存在する蛋白の1つ以上を含有するポリメラーゼ増強制の部分精製された細胞抽出液よりなる群から選択することもできる(米国特許第6,183,997号、上出)。PEFのPCR増強活性は当該分野で知られた手段により定義される。PEFの単位の定義はdUTPからのピロリン酸(PPi)の生成をモニタリングすることにより測定されるPEF(P45)のdUTPase活性に基づいている。例えば、PEFをdUTP(1×クローニングPfuPCR緩衝液中10mM dUTP)と共にインキュベートし、その間、PEFがdUTPを加水分解してdUMPとPPiとする。形成されたPPiの量をSigma(#P7275)から市販されているカップルド酵素試験系を用いて定量する。活性の1単位は時間当たり(85℃)形成されたPPiの4.0ナノモルとして計算上定義される。
【0228】
他のPCR添加剤もまたPCR反応の精度および特異性に影響する。0.5mM未満のEDTAを増幅反応混合物中に存在させてよい。Tween−20(商標)およびNonidet(商標)P−40のような洗剤は酵素希釈緩衝液中に存在させる。ノニオン系洗剤の終濃度は約0.1%以下が適切であるが、0.01〜0.05%が好ましく、ポリメラーゼの活性を妨害しない。同様に、グリセロールを酵素調製物中に存在させる場合が多く、一般的には反応混合物中1〜20%の濃度まで希釈する。グリセロール(5〜10%)、ホルムアミド(1〜5%)またはDMSO(2〜10%)を高GC含量または長い(例えば>1kb)鋳型DNAのPCRにおいて添加することができる。これらの添加剤はプライマー−鋳型ハイブリダイゼーション反応のTm(融点)およびポリメラーゼ酵素の熱安定性を変化させる。BSA(0.8μg/μl以下)がPCR反応の効率を向上させる場合がある。ベタイン(0.5〜2M)もまた高GC含量およびDNA長フラグメントについては有用である。塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC、>50mM)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)およびトリメチルアミンNオキシド(TMANO)も使用してよい。上記した各添加剤の最適濃度を決定するために試験PCR反応を実施してよい。
【0229】
本発明は添加剤、例えば抗体(ホットスタートPCRの場合)およびssb(1本鎖DNA結合蛋白;より高い特異性)を提供する。本発明はまたアクセサリ因子、例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,333,158号および国際公開WO01/09347号A2に記載のものと組み合わせた変異体古細菌DNAポリメラーゼも意図する。
【0230】
種々の特異的PCR増幅が当該分野で使用可能である(例えば参照により本明細書に組み込まれるErlich,1999,Rev.Immunogenet.,I:127−34;PPrediger 2001,Methods Mol.Biol.160:49−63;Jurecicら、2000,Curr.Opin.Microbiol.3:316−21;Triglia,2000,Methods Mol.Biol.130:79−83;MaClellandら、1994,PCR Methods Appl.4:S66−81;AbramsonとMyers,1993,Current Opinion in Biotechnology,4:41−47を参照できる)。
【0231】
要件となる発明はPCR用途、例えばi)非特異的増幅を低減するホットスタートPCR;ii)高いアニーリング温度で開始し、次に段階的にアニーリング温度を低下させることにより非特異的なPCR産物を低減させるタッチダウンPCR;iii)アウターセットのプライマーおよびインナーセットのプライマーを使用することより信頼性の高い産物を合成するネステッドPCR;iv)既知配列に隣接する領域の増幅のためのPCR;(この方法では、DNAを消化し、所望のフラグメントをライゲーションにより環化し、次に既知配列に相補のプライマーを用いたPCRにより外側に伸長する);v)AP−PCR(任意プライミング)/RAPD(ランダム増幅多形DNA);これらの方法は任意のオリゴヌクレオチドを使用した増幅によりあまり知られていない標的配列を有する種からゲノムフィンガープリントを作成する;vi)RNA指向性DNAポリメラーゼ(例えば逆転写酵素)を使用してcDNAを合成し、次にこれをPCRに使用するするRT−PCR。この方法は組織または細胞における特定の配列の発現の検出において極めて感度が高い。これはまたmRA転写物の定量のためにも使用してよい;vii)RACE(cDNA末端の急速増幅)。これはDNA/蛋白配列の情報が限定されている場合に使用する。この方法はcDNAの3’または5’末端を増幅し、各々1つのみの特異的プライマー(+アダプタープライマー)を有するcDNAのフラグメントを形成する。次にオーバーラップするRACE産物を合わせて完全長cDNAとする;viii)種々の組織において異なって発現される遺伝子を発見するために使用されるDD−PCR(示差ディスプレイPCR)。DD−PCRにおける第1工程はRT−PCRを含み、次に短い意図的に非特異性とされたプライマーを用いて増幅を行う;ix)同じ標本におけるDNA配列の独特の標的2つ以上を同時に増幅するマルチプレックスPCR。1つのDNA配列を対照として使用することによりPCRの品質を評価する;x)同じセットのプライマーにつき標的DNAを競合させる(競合的PCR)内標準DNA配列(ただしサイズは異なる)を用いるQ/C−PCR(低調的競合的);xi)遺伝子を合成するために使用する帰納的PCR。この方法で用いられるオリゴヌクレオチドは末端が重複(〜20塩基)したセンスおよびアンチセンスの鎖に交替して遺伝ストレッチ(>80塩基)に相補的である;xii)非対称PCR;xiii)インサイツPCR;xiv)部位指向性PCR変異誘発、において使用できるが、これに限定されない。
【0232】
本発明は何れかの特定の増幅系に限定されるわけではない。他の系が開発されれば、それらの系は本発明の実施による利益を被る。
【0233】
B.PCR増幅産物の直接クローニングにおける適用
要件となる酵素を使用して作成した増幅産物は当該分野で知られた何れかの方法によりクローニングすることができる。1つの実施形態においては、本発明はPCR増幅産物の直接のクローニングを可能にする組成物を提供する。
【0234】
PCR産物をクローニングするための最も一般的な方法はプライマー分子末端上へのフランキング制限部位の取り込みを含む。PCRサイクルを実施し、次に増幅されたDNAを精製し、適切なエンドヌクレアーゼで制限し、適合するベクター調製物にライゲーションする。
【0235】
PCR産物を直接クローニングするための方法は、制限認識配列を有するプライマーの調製の必要を排除し、そしてクローニングのためのPCR産物を調製する制限工程の必要を排除する。更に、そのような方法は好ましくは精製工程を介することなく直接PCR産物をクローニングできるようにする。
【0236】
米国特許第5,827,657号および第5,487,993号(参照により本明細書に組み込まれる)はPCR生成した核酸の3’末端に結合させた単一の3’−デオキシ−アデノシンモノリン酸(dAMP)残基を利用するDNAポリメラーゼを用いたPCR産物の直接クローニングのための方法を開示している。適当な制限酵素と反応させると単一の3’−末端デオキシチミジン一リン酸(dTMP)残基を与える認識配列を有するベクターを作成する。即ち、適当な制限部位を内部に有するプライマーを作成する必要なく、遺伝子のPCR生成コピーをベクターに直接クローニングできる。
【0237】
TaqDNAポリメラーゼは鋳型の非存在下においてPCR産物の3’末端に単一のdATPを付加させる末端トランスフェラーゼ活性を示す。この活性はTaqを用いて増幅したPCR産物を単一の3’dTオーバーハングを含有するベクターに直接ライゲーションするTAクローニング法の基本となる。一方、PfuDNAポリメラーゼは末端トランスフェラーゼ活性を欠いており、即ち、平滑末端ベクターに効率的にクローニングされる平滑末端PCR産物を生成する。本発明はまた参照によりその全体が本明細書に組み込まれる争中の米国特許出願第10/035,091号(Hogrefeら;2001年12月21日出願);係属米国特許出願第10/079,241号(Hogrefeら;2002年2月20日出願);係属米国特許出願第10/208,508号(Hogrefeら;2002年7月30日出願);および係属米国特許出願第10/227,110号(Hogrefeら;2002年8月23日出願)に開示されている通り、Taq(5U/ul)、組み換えPEF(4U/ul)およびPfuG387P(40ng/μl)の混合物を含有するEasyA組成物を包含する。2.5U/ul即ちul当たり〜20〜50ngの低減された塩基類似体検出活性を有するクローニングされた古細菌DNAポリメラーゼを用いると、Taq:Pfuの比率は好ましくは1:1、より好ましくは2:1以上である。
【0238】
1つの実施形態において、本発明は高pHにおいてDNAポリメラーゼ融合物の存在下に生成され、その後、15〜30分間72℃でdATPの存在下TaqDNAポリメラーゼと共にインキュベートされるPCR産物を提供する。次に増幅されたDNA産物の末端に3’−dAMPを添加することにより、当該分野でよく知られた方法に従ったTAクローニングベクター内へのクローニングを可能とする。
【0239】
C.DNA配列決定における適用
本発明はまた高pHでプライマー伸長反応を触媒するための熱安定性DNAポリメラーゼ融合物を使用したジデオキシヌクレオチドDNA配列決定方法を提供する。ジデオキシヌクレオチドDNA配列決定のための方法は当該分野で知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,216号、第4,795,699号および第5,885,813号に開示されている。本発明は低減されたddNTP識別を有するexo−Pfu(例えばD141A/E143A二重変異体)またはJDF3P410L/A485T変異体を含むDNAポリメラーゼ融合物を包含する。
【0240】
D.変異誘発における適用
本発明のDNAポリメラーゼ融合物はまたPCR系または直線増幅系の変異誘発に関わる向上した効果を提供する。従って本発明は高pHにおける部位指向性変異誘発のためのDNAポリメラーゼ融合物および市販のキット、例えばQuikChange Site−directed Mutagenesis、QuikChange Multi−Site−Directed Mutagenesis(Stratagene)への、その組み込みを提供する。部位指向性変異誘発法および試薬は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/198,449号(Hogrefeら;2002年7月18日出願)に記載されている。本発明はまたMutazime(PEFと組み合わせたexo−Pfu、GeneMorph Kit)も包含する。GeneMorphのキットは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる係属米国特許出願第10/154,206号(2002年5月23日出願)に開示されている。
【0241】
本明細書に記載したDNAポリメラーゼ融合物は従来のDNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ製剤と同様の方法で使用され、そして、PCRを含む何れかのプライマー伸長用途において高pHで使用することによりより短い伸長時間で高い生成物収率をもたらすことができる。特に、典型的には1〜2分/kbの伸長時間を必要とし、増幅に数時間かかるゲノム標的の増幅は、本明細書に記載したDNAポリメラーゼ融合物を用いれば伸長時間が5〜30秒/kb以下まで低減されるため、開示した発明により大きく促進される(実施例3参照)。
【0242】
本発明の他の用途はRT−PCR、部位指向性変異誘発およびランダム変異誘発を包含する。これらの用途の全てにおいて使用される本発明のDNAポリメラーゼ融合物は長さの許容力を増大させ、反応時間を短縮し、そして、全ての標準的プロトコルにおいて全体的な性能を向上させる(例えば3参照)。
【0243】
プルーフリーディング活性(3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性)を有するDNAポリメラーゼ融合物は高忠実度のPCRのために有用である。高忠実度PCRに有用なDNAポリメラーゼ融合物は、複合ゲノムおよび/またはプラスミド鋳型を用いた相当する非融合ポリメラーゼ(3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有する)のみの場合と比較して、≧10%増大した3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性およびPCR忠実度および取り込み精度を示す。
【0244】
より高い誤挿入および/または誤対形成伸長の頻度を有するDNAポリメラーゼ融合物はPCRランダム変異誘発に有用である。PCRランダム変異誘発に有用なDNAポリメラーゼ融合物は好ましくは、プラスミド鋳型のための相当する非融合のポリメラーゼと比較して、≧10%増大した変異誘発特性または変異スペクトルの変化を示す。
【0245】
「変異誘発特性」とは変異率およびアンプリコンのkb当たりの変異例の全体数を意味する。
【0246】
「変異スペクトル」とは一過性および転換型の変異の数を意味する。「変異スペクトル」とはまた一過性の転換型に対する比も包含する。好ましくは、一過性の転換型に対する比は1:1である。
【0247】
本発明において意図するDNAポリメラーゼ融合物は全てPCRおよびRT−PCRに有用である。
【0248】
PCR増幅および直線増幅のために使用されるプルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼ融合物は部位指向性変異誘発に有用である。
【0249】
3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたDNAポリメラーゼ融合物は配列決定用途に有用である。配列決定に有用なDNAポリメラーゼ融合物はより短い伸長時間、より高い効率、より高い特異性、より高い忠実度(より高精度の取り込み)およびより高いプロセシビティ(配列決定鋳型のための混合物の非キメラ成分より≧10%高値の増大)の1つ以上を示す。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたDNAポリメラーゼ融合物もまたランダム変異誘発に有用である。
【0250】
キット
本発明はまた、要件となる組成物の容器1つ以上、および、一部の実施形態においてはPCRにおける合成を含むポリヌクレオチド合成のために使用する種々の試薬の容器を有するパッケージユニットを含むキットフォーマットを意図する。キットはまた、以下の要素、即ち:ポリヌクレオチド前駆体、プライマー、緩衝液(好ましくは高pH緩衝液)、使用上の注意および対照品の1つ以上を含んでよい。キットは本発明の方法を実施するための適当な比率で混合された試薬の容器を含んでよい。試薬の容器は好ましくは要件となる方法を実施する際に測定工程を不要にする単位量の試薬を含有する。
【0251】
本発明は本発明のDNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液、PCR増強試薬、および、PCR増幅、DNA配列決定または変異誘発のための試薬を含むキットを意図する。
【0252】
DNAを配列決定するためのキットは多くの容器手段を含む。第1の容器手段は例えば本発明のポリメラーゼの実質的に精製された試料を含む。第2の容器手段はDNA鋳型に相補なDNA分子を合成するために必要とされる1種または多くの種類のヌクレオチドを含んでよい。第3の容器手段は1種または多くの異なる種類のターミネーター(例えばジデオキシヌクレオシド三リン酸)を含んでよい。第4の容器手段はピロリン酸を含んでよい。上記した容器手段のほかに、1種または多くのプライマーおよび/または適当な配列決定緩衝液、好ましくは高pH緩衝液を含む、別の容器手段をキットに含めてよい。
【0253】
核酸の増幅または合成のために使用されるキットは例えば本発明の実質的に純粋なポリメラーゼ融合物を含む第1の容器手段、および、単一種類のヌクレオチドまたはヌクレオチドの混合物および/または高pH緩衝液を含む別の容器手段の1つまたは多くを含む。
【0254】
種々のプライマー並びに適当な増幅用または合成用の緩衝液をキットに含めてよい。
【0255】
所望により、本発明のキットはまた核酸分子の合成または配列決定の間に使用してよい検出可能に標識されたヌクレオチドを含む容器手段も含んでよい。多くの標識の1つをこのようなヌクレオチドを検出するために使用してよい。代表的な標識の例は、放射性同位体、蛍光標識、ケミルミネセント標識、バイロルミネセント標識および酵素標識である。
【0256】
以上のように本発明を詳述したが、これは特段の記載が無い限り本発明を限定する意図のない説明目的のみに提示される以下の実施例を参照することにより更に容易に理解される。
【実施例】
【0257】
実施例1.
DNAポリメラーゼ融合物の構築
異なるDNAポリメラーゼのドメインを組み合わせることにより、例えばE.coliDNAポリメラーゼI中の相同部位内にバクテリオファージT7のDNAポリメラーゼのチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメインの挿入により、キメラを作成する。これによりチオレドキシン存在下におけるキメラE.coliDNAポリメラーゼIのプロセシビティの実質的な増大が促進される(Bedford,E.ら、PNAS,USA vol.94,pp.479−484,1997年1月、Biochem.)。この手法の別の例はTaqDNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの付加である。次にPCNAをTaqキメラを有するPCR反応液に添加し、プロセシビティを増強し、より高値の収率を得る(Motz,M.ら、J.Biol.Chem.2002年5月3日;177(18);16179−88)。
【0258】
キメラDNAポリメラーゼはまたDNAポリメラーゼに2本鎖DNA結合蛋白のエレメント(蛋白またはドメイン)を組み合わせることにより作成する。DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフがTaqDNAポリメラーゼのNH(2)末端またはCOOH末端、TaqDNAポリメラーゼまたはPfuDNAポリメラーゼのStoffelフラグメントに付加されている。得られるキメラは増大したプロセシビティ、塩耐性および熱安定性を有する(Pavlov,AR.ら、PNAS USA 2002年10月15日;99(21);13510−5)。別の例はSulfolobus sulfataricus由来の配列非特異的DNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dまたは古細菌PCNADNA結合ドメインとのDNAポリメラーゼの融合物である。この手法はPfuまたはTaqDNAポリメラーゼのプロセシビティを増強するために使用される(国際公開WO01/92501号A1)。
【0259】
本発明のDNAポリメラーゼ、例えばPfu融合物蛋白はPCT/US0117492またはPavlovら、上出に記載の通り精製する。
【0260】
(実施例2)
キメラDNAポリメラーゼ混合物製剤
キメラDNAポリメラーゼ混合物製剤はキメラDNAポリメラーゼ、および、(1)プルーフリーディングまたは非プルーフリーディングのキメラDNAポリメラーゼ;または(2)プルーフリーディング+非プルーフリーディング、非プルーフリーディング+非プルーフリーディング、または、プルーフリーディング+プルーフリーディングのDNAポリメラーゼ混合物、例えばPfu、Taq、Pfu/Taq、Pfu/exo−Pfu、Taq/exo−Pfu、Pfu/JDF3、またはpol−Pfu(PfuG387P)とのこれらの組み合わせの何れかよりなる。混合物製剤の特定の非限定的な例は2.5UPfu/0.25UキメラPfuである。キメラDNA混合物は少なくとも1つの野生型および/または少なくとも1つの変異体のDNAポリメラーゼ(本明細書において定義)と組み合わせてキメラDNAポリメラーゼを含む。
【0261】
DNAポリメラーゼキメラとブレンドする野生型DNAポリメラーゼはポリメラーゼ活性、プルーフリーディング活性のネイティブの水準を有する何れかのネイティブまたはクローニングされたDNAポリメラーゼであり、そして好ましくはPfuまたはTaqのような熱安定性である。キメラDNAポリメラーゼとwtDNAポリメラーゼをブレンド(例えば本明細書に記載した何れかの比において)し、そして何れかの複製アクセサリ因子(DNA合成を増強する蛋白)またはPCR増強添加剤、例えばPfudUTPase(PEF)、PCNA、RPA、ssb、抗体、DMSO、ベタインまたは3’〜5’エキソヌクレアーゼ(例えばPfuG387P)と混合する。市販の有用な変異または切断の特定の非限定的な例は、ウラシル非感受性を付与するPfuにおけるV93R、K、E、D、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するPfuにおけるD141A/E143A、および、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するTaqのN末端切断(KlenTaq)である。キメラDNAポリメラーゼおよび変異体DNAポリメラーゼは何れかの比率でブレンドし、そして何れかの複製アクセサリ因子またはPCR添加剤と混合する。DNAポリメラーゼ製剤はwt、wtおよび変異体、変異体および変異体DNAポリメラーゼの何れかの混合物である。キメラDNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ製剤はいずれかの比で混合し、そして、いずれかの複製アクセサリ因子またはPCR添加剤と混合する。
【0262】
高pH PCR反応緩衝液
高pH PCR反応緩衝液は10×濃度で製剤し、最も一般的に作成されているPCR反応緩衝液のための標準である終濃度1×でPCR反応に使用する。本発明において有用な10×緩衝液製剤は300mMトリスpH10.0またはpH11.8;100mM KCl;100mM硫酸アンモニウム;20mM硫酸マグネシウム;1%TritionX−100;1mg/mlヌクレアーゼ非含有ウシ血清アルブミン(BSA)である。この製剤は本発明で用いる成分または成分濃度を限定するものではない。緩衝成分以外の緩衝剤の成分は特定のDNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼ混合物の最高の活性のための要件に応じて変動する。
【0263】
(実施例3)
キメラPfuDNAポリメラーゼを用いた、またはキメラPfuDNAポリメラーゼを含有するDNAポリメラーゼ混合物を用いたPCR増幅
PCR反応条件
PCR反応は1)トリス成分はpH10.0または11.8であり、終濃度30mMであること、および2)混合物は0.15〜1.3UPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼ(配列は本明細書および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる1001/92501に記載)または0.25UPfu−Sso7dおよび2.5Uまたは5.0Uの何れかのPfuDNAポリメラーゼよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を含有していたこと以外は、標準的な条件下において1×クローニングPfuPCR緩衝液(10mM KCl、10mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%TritonX−100および100μg/ml BSA)中で実施した。全てのPCR反応は2U/50μlのクローニングされたPyrococcus furiosus dUTPase(PEF)を含有していた。長さ0.9〜6.0kbの全てのゲノム標的に対し、PCR反応の組成は100ngヒトゲノムDNA、300μM各dNTPおよび100ng各プライマーとした。19kbのゲノム標的に対しては、PCR反応の組成は250ngヒトゲノムDNA、500μM各dNTPおよび200ng各プライマーとした。
【表B】
【0264】
PCR増幅に対する緩衝液pHの影響
キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼを用いたPCR反応に対するpHの影響を明らかにするために、1×Pfu反応緩衝液を用いてPCR反応を準備し、その際トリス成分のpHをpH5.0〜12.0に滴定した(図#1&2)。Pfu−Sso7d/PfuTurbo混合物(0.25UPfu−Sso7d+2.5Uまたは5.0UのPhuTurbo)を用いながらkb当たり15秒の伸長時間で6kbのヒトベータグロビンゲノム標的を増幅した。PhuTurbo単独では、この標的をkb当たり15秒で増幅することはできない。増幅はよりプロセシビティの高いPhu−Sspo7dの寄与によってのみ達成される。増幅はpH8.5で生じ、pH10.0〜12.0で最強となり、キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼに対する高pHの増強作用が明らかになった(図1&2)。
【0265】
長ゲノム標的のPCR増幅のための高pH PCR反応緩衝液の増強作用を明らかにするために、ヒトベータグロビンの19kbフラグメントをPfu−Sso7d/PfuTurbo混合物を用いてkb当たり30秒の伸長時間で増幅した。kb当たり30秒の伸長時間によるこの標的の増幅は混合物のよりプロセシビティの高いPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼの寄与によってのみ達成できる、pH10.0およびpH11.8の反応緩衝液中のPCR増幅をPufTurboのための最適PCR反応緩衝液である1.5×クローニングPfu反応緩衝液中の増幅と比較した(Strategies:Viol.12,#4;High fidelity PCR of genomic targets up to 19kb)。高pH10.0および11.8反応緩衝液を用いたPCRは1.5×クローニングPfu緩衝液よりも劇的に優れており、Pfu−Sso7dによるPCR増幅に対する高pHの増強作用が更に明らかになった(図3)。
【0266】
キメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼを用いたPCR増幅に対する高pHの増強作用を更に明らかにするために、19kbヒトベータグロビンゲノム標的の増幅をkb当たり30秒の伸長時間でpH10.0PCR反応緩衝液中Pfu−Sso7d/PfuTurbo混合物(0.25UPfu−Sso7d+2.5Uまたは5.0PfuTurbo)および0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dを用いて比較した(図4)。これらのPCR反応の間の有意差は、これらが全てpH10.0を用いているため、各反応に次いでPfu−Sso7dの量となる(即ち混合物では0.25UのPfu−Sso7dであり、非混合物の反応では0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dとなる)。クローニングされたPfuDNAポリメラーゼを用いない0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7dを有する反応(#3および#4図4)はDNAポリメラーゼの総単位は混合物反応のほうが高値であったにもかかわらず僅か0.25UのPfu−Sso7dを有していた混合物の反応(#1および#2図4)よりも劇的に高値の収率をもたらしている(混合物では2.75U#1、5.25U#2,そしてPfu−Sso7d反応の場合は0.83U#3および1.3U#4−図4)。
【0267】
pH10.0における反応緩衝液を用いたPCTの性能
HerculaseDNAポリメラーゼ、KODホットスタートDNAポリメラーゼおよびPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼの単位滴定を用いた19kbヒトベータグロビン標的の増幅効率を比較した(図5)。全ての酵素はその最適反応緩衝液中で使用した。Pfu−Sso7dについてはpH10.0の緩衝液を使用し、KODホットスタートについてはKODホットスタート緩衝液を、そしてHerculaseにはHerculase緩衝液を使用した。長さ10kb超のゲノム標的の増幅のために最適であるHerculase反応には3%DMSOを添加した。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。大部分のPCR酵素はこの長さの標的についてはkb当たり1〜2分の伸長時間を必要とする。pH10.0緩衝液中のPfu−Sso7dの全ての単位量(0.25〜1.3U)はPCR産物をもたらした。HerculaseおよびKODホットスタート反応はこの伸長時間ではいずれのPCR産物も生成しなかった。
【0268】
より小さいゲノム標的の増幅も高pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dキメラDNAポリメラーゼおよびKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼを用いて比較した。ヒトアルファ−1抗トリプシン(Hα1AT)の900bpフラグメントを1)pH10.0またはpH11.8のPCR反応緩衝液中0.5Uまたは0.83UのPfu−Sso7d、および2)KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタート1Uを用いて1秒の総伸長時間で増幅した(図6)。Hα1ATの2.6kbフラグメントを、pH10.0PCR反応緩衝液中0.5U、0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7d、および、KODホットスタートPCR反応緩衝液中1.25Uおよび2.5UのKODホットスタートを用いながら、kb当たり2秒の伸長時間(総伸長時間5秒)(図7)およびkb当たり30秒の伸長時間(総伸長時間1分18秒)(図9)で増幅した。6kbのヒトベータグロビンをpH10.0PCR反応緩衝液中0.5U、0.83Uおよび1.3UのPfu−Sso7d、および、KODホットスタートPCR反応緩衝液中1.25Uおよび2.5UのKODホットスタートを用いながら、kb当たり10秒の伸長時間(総伸長時間1分)(図8)で増幅した。全ての標的の伸長時間は大部分のPCR酵素の標準的な時間より短かった。kb当たり30秒〜2分が大部分のPCR酵素の標準である。全ての標的に対し、高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼは全ての単位量(反応当たり0.25〜1.3U)において非常に優れた性能を示した。
【0269】
プロセシビティのあるキメラPfuDNAポリメラーゼと共に高pH PCR反応緩衝液を使用することにより(PEF/dUTPase存在下)、PCR伸長時間はゲノム標的の増幅において大きく低減した。1〜6kbのゲノム標的の場合は、非キメラDNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ製剤に対して1分/kbの伸長時間はkb当たり1〜10秒に低減された。17〜19kbのゲノム標的の場合は、非キメラDNAポリメラーゼ/ポリメラーゼ製剤に対して2分/kbの伸長時間は30秒/kbに低減された。高pH反応緩衝液/キメラDNAポリメラーゼ/キメラDNAポリメラーゼ混合物の組み合わせは従来のPCR反応緩衝液/DNAポリメラーゼ/DNAポリメラーゼ混合物の組み合わせと同様の方法で使用され、そして、PCRを含む何れかのプライマー伸長用途において使用することにより短縮された伸長時間で高収率とすることができる。主な用途は典型的にはkb当たり1〜2分の伸長時間を有し、増幅に数時間かかる場合があるゲノム標的の増幅である。伸長時間は高pH緩衝液およびキメラDNAポリメラーゼを用いれば、kb当たり1〜30秒またはそれより短時間まで低減できる。増幅時間も劇的に低減され、PCR用途が大きく向上した。他の用途はRT−PCR、部位指向性変異誘発およびランダム変異誘発を包含する。これらの用途の全てにおいて使用される高pH反応緩衝液/キメラの組み合わせは長さの許容性を増大させ、反応時間を短縮し、そして全ての標準的プロトコルにおいて全体的性能を高度に増大させる。
【0270】
本発明の実施は特段の記載が無い限り当業者のよく知る分子生物学、細胞生物学、微生物学および組み換えDNA手法の従来の手法を使用する。このような手法は文献に詳述されている。例えばSambrook,Fritcsh&Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Harnes&S.J.Higgins編、1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal,1984);(Harlow,E.とLane,D.)Using Antibodies:A Laboratory Manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびMethods in Enzymologyシリーズ(Academic Press,Inc.);Short Protocols In Molecular Biology,(Ausbelら編、1995)を参照できる。
【0271】
本明細書において引用した全ての特許、特許出願および公開された参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明はその好ましい実施形態を参照しながら特に示し記載されているが、当業者の知るとおり、添付の請求項により包含される本発明の範囲を外れることなく種々の形態および詳細事項の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】kb当たり15秒の伸長時間により増幅した6kbヒトベータグロビンゲノムDNA標的(総伸長時間1分30秒)。PCR反応緩衝液は5.0〜10.0の30mMトリスpH勾配を用いた1×クローニングPfu緩衝液よりなるものとした。キメラDNAポリメラーゼ混合物は、A;合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurbo、およびB;合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboとした。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。
【図2】kb当たり15秒の伸長時間により増幅した6kbヒトベータグロビンゲノムDNA標的(総伸長時間1分30秒)。PCR反応緩衝液は9.5〜12.0の30mMトリスpH勾配を用いた1×クローニングPfu緩衝液よりなるものとした。キメラDNAポリメラーゼ混合物は、合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼとした。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。
【図3】19kbベータグロビンゲノム標的に関する高pH反応緩衝液と1.5×クローニングPfu反応緩衝液の比較。レーン1および2はpH10緩衝液の場合である。レーン3および4はpH11緩衝液の場合である。レーン5および6は1.5×クローニングPfu反応緩衝液の場合である。レーン1、3および5は合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。レーン2、4および6は合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。Mは1kbDNAマーカー(Stratagene)である。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。
【図4】19kbベータグロビンゲノム標的のPCR増幅に関する、キメラPfuDNAポリメラーゼ/PfuTurboDNAポリメラーゼ混合物および高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼおよびHerculasePCR反応緩衝液中のHarculaseDNAポリメラーゼの比較。レーン1〜4はpH10のPCR反応緩衝液を使用した。レーン5〜8はHerculasePCR反応緩衝液を使用した。レーン1は合計2.75U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび2.5UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物で増幅した。レーン2は合計5.25U/反応に対し0.25UキメラPfuDNAポリメラーゼおよび5.0UPfuTurboよりなるキメラDNAポリメラーゼ混合物を用いて増幅した。レーン3は0.83UのPfuキメラDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン4は1.3UのキメラDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン5および6はDMSO非存在下で5.0UのHerculaseDNAポリメラーゼを用いて増幅した。レーン7および8は3%DMSO存在下で5.0UのHerculaseDNAポリメラーゼを用いて増幅した。kb当たり30秒の伸長時間を用いた。MはLambdaHindIIIDNAマーカー(Stratagene)である。
【図5】高pH PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼの単位滴定およびkb当たり30秒の伸長時間による19kbヒトベータグロビンの増幅に関するのHerculaseDNAポリメラーゼおよびKODホットスタートとの性能の比較。#1〜4、pH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#1−0.25U;#2−0.5U;#3−0.83U;#4−1.3U。#5〜6、1×HerculasePCR反応緩衝液および3%DMSO中のHerculaseDNAポリメラーゼ5.0U。#7〜8、KODホットスタートDNAポリメラーゼPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#7−1.25U;#8−2.5U。MはLambda/HindIIIDNAマーカー(Stratagene)。
【図6】1秒の総伸長時間による900bpヒトアルファ−1アンチトリプシン(Hα1AT)の増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfuDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートの性能の比較。#1〜2、pH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#3〜4、pH11.8PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#5〜6、KODホットスタートPCR反応緩衝液中の1.0UKODホットスタート。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−0.5U;#4−0.83U。M−1kbDNAマーカー(Stratagene)。
【図7】kb当たり2秒の伸長時間(総伸長時間5秒)による2.6kbヒトアルファ−1アンチトリプシン(Hα1AT)の増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼのPCR性能の比較。#1〜3、pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図8】kb当たり10秒の伸長時間による6kbヒトベータグロビンの増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートのPCR性能の比較。#1〜3、pH10.0PCR反応緩衝液中のPfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図9】kb当たり30秒の伸長時間(総伸長時間1分18秒)による2.6kbHα1ATの増幅に関するpH10.0PCR反応緩衝液中のキメラPfu−Sso7dDNAポリメラーゼとKODホットスタートPCR反応緩衝液中のKODホットスタートのPCR性能の比較。#1〜3、Pfu−Sso7dDNAポリメラーゼ。#4〜5、KODホットスタートDNAポリメラーゼ。#1−0.5U;#2−0.83U;#3−1.3U;#4−1.25U:#5−2.5U。M−1kbDNAラダー(Stratagene)。
【図10】QuickChange突然変異誘発用のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号6〜14)。
【図11】(a)野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のV93EおよびV93R変異体のdUTP取り込み。 (b)100%dUTP存在下におけるPfuV93R変異体抽出物のPCR増幅。
【図12】PfuDNAポリメラーゼ変異体とwt酵素の「長」PCR増幅の効果の比較。
【図13A】変異体古細菌DNAポリメラーゼのDNA配列。
【図13B】変異体古細菌DNAポリメラーゼのアミノ酸配列。
【図14】変異体TgoDNAポリメラーゼDNAのDNAおよびアミノ酸配列。
【図15A】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfu変異体のdUTP取り込み。野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfu変異体V93W、V93Y、V93M、V93KおよびV93RのdUTP取り込み。
【図15B】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfuV93DおよびV93R変異体のdUTP取り込み。
【図15C】野生型PfuDNAポリメラーゼと比較した場合のPfuV93NおよびV93G変異体のdUTP取り込み。
【図16】N末端PfuDNAポリメラーゼ切断変異体のDNAポリメラーゼ活性。
【図17】以下の配列を示す。
【0273】
A.HMf様蛋白
B.HMf様蛋白−Taq融合物
C.HMf様蛋白−Taq融合物
D.PfuWT−HMf様蛋白融合物
E.PfuWT−HMf様蛋白融合物
F.Pfu−V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
G.Pfu−V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
H.Pfu−G387P/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
I.Pfu−G387P/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
J.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
K.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−HMf様蛋白融合物
L.KOD−HMf様蛋白融合物
M.KOD−HMf様蛋白融合物
N.HMf様蛋白−Vent融合物
O.HMf様蛋白−Vent融合物
P.HMf様蛋白−DeepVent融合物
Q.HMf様蛋白−DeepVent融合物
R.HMf様蛋白−KDF3融合物
S.HMf様蛋白−KDF3融合物
T.PCNA
U.PCNA−Taq融合物
V.PCNA−Taq融合物
W.PCNA−PfuWT融合物
X.PCNA−PfuWT融合物
Y.Pfu−V93RまたはE−PCNA融合物
Z.Pfu−V93RまたはE−PCNA融合物
AA.Pfu−G387P/V93RまたはE−PCNA融合物
BB.Pfu−G387P/V93RまたはE−PCNA融合物
CC.Pfu−D141A/E134A/V93RまたはE−PCNA融合物
DD.Pfu−D141A/E134A/V93RまたはE−PCNA融合物
EE.KOD−PCNA融合物
FF.KOD−PCNA蛋白融合物
GG.PCNA−Vent融合物
HH.PCNA−Vent融合物
II.PCNA−DeepVent融合物
JJ.PCNA−DeepVent融合物
KK.PCNA−JDF3融合物
LL.PCNA−JDF3融合物
MM.Sac7d
NN.Sac7d−Taq融合物
OO.Sac7d−Taq融合物
PP.Sac7d−PfuWT融合物
QQ.Sac7d−PfuWT融合物
RR.Pfu−V93RまたはE−Sac7d様蛋白融合物
SS.Pfu−V93RまたはE−Sac7d融合物
TT.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sac7d融合物
UU.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sac7d融合物
VV.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−Sac7d融合物
WW.KOD−Sac7d融合物
XX.KOD−Sac7d蛋白融合物
YY.Sac7d−Vent融合物
ZZ.Sac7d−Vent融合物
AAA.Sac7d−DeepVent融合物
BBB.Sac7d−DeepVent融合物
CCC.Sac7d−JDF3融合物
DDD.Sac7d−JDF3融合物
EEE.Sso7D
FFF.Sso7D−Taq融合物
GGG.Sso7D−PfuWT融合物
HHH.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sso7D融合物
III.Pfu−G387P/V93RまたはE−Sso7D融合物
JJJ.Pfu−D141A/E143A/V93RまたはE−Sso7D融合物
KKK.KOD−Sso7D融合物
LLL.KOD−Sso7D融合物
MMM.Sso7D−Vent融合物
NNN.Sso7D−Vent融合物
OOO.Sso7D−DeepVent融合物
PPP.Sso7D−DeepVent融合物
QQQ.Sso7D−JDF3融合物
RRR.Sso7D−JDF3融合物
【図18】HhHモチーフ配列。(a)topoV、RecAおよびロイシン応答性レギュレーターシグニチャー配列の間で保存されているモチーフ。TopoVアミノ酸領域236〜298はデータベースにヒットがなく、図示しない。リピートGおよびHを連結している位置677〜695および配列末端の19aa残基の間の短い領域は簡便化のため図示しない。不変の残基は白色レタリングを伴ったブルーのバックグラウンド腕に示す。保存位置は黄色バックグラウンド上のハイライトとする。(b)topoVHhHモチーフの構造。−polのLys−68およびLys−72およびtopoVのCおよびGリピートにおける相当する位置のバックグラウンドはそれぞれシアンとマゼンタの色とする。aおよびbにおける二次構造はJPREDを用いて推定した。シリンダーは−螺旋およびそれらの間の線(b)は−ヘアピンを示す。MkTpV、M.kandleri topoV;HTHasnC、asnCの細菌調節蛋白のHTHモチーフのシグネチャーを与える3エレメントのフィンガープリント;HTHSS,HTHモチーフの二次構造;A−L、topoVのHhHリピート;EcRuvA、E.coliRuvA蛋白、HsPolB、ヒトポリメラーゼ;TaqPol、T.aquaticusポリメラーゼI;HhHSS、HhHモチーフの二次構造。ALSCRIPT(Pargellisら(1988)J.Biol.Chem.263,7678−7685)を用いてアライメントを説明する。引用はBelovaら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98:6015。
【図19】本発明の別の配列。
【図20】野生型PfuDNAポリメラーゼのDNAおよびアミノ酸配列。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;および前記融合物を核酸鋳型と接触させ、ここで前記融合物がDNA合成を可能とすることを含む、高pHにおけるDNA合成のための方法。
【請求項2】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;
b)前記融合物を核酸鋳型と接触させること、ただしここで前記融合物はDNA合成を可能にして合成DNA産物を生成するものであること;および、
c)前記合成DNA産物をクローニングベクターに挿入すること;
を含む、高pHにおけるDNA合成産物のクローニングのための方法。
【請求項4】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
(a)鋳型DNA鎖を配列決定DNAプライマーに接触させること;
(b)工程(a)の前記DNAをDNAポリメラーゼ融合物、デオキシリボヌクレオシド三リン酸および鎖終止ヌクレオチド類似体(アナログ)と接触させること;
(c)前記第1のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団を合成するために十分な条件下で工程(b)の混合物をインキュベートすること、ただしここで前記合成されたDNA分子は前記第1のDNA分子よりも短いこと、そしてここで前記合成されたDNA分子はその5’末端において終止ヌクレオチドを含むこと;および、
(d)前記第1のDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が決定できるようにサイズにより前記合成されたDNA分子を分離すること;
を含む、高pHにおいてDNAを配列決定するための方法。
【請求項6】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
核酸鋳型、少なくとも1つのPCRプライマーおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、前記融合物による前記核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより変異した増幅産物を生成することを含む、部位指向性またはランダムの変異誘発のための、高pHにおける線形または指数的PCR増幅の方法。
【請求項8】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
核酸鋳型、少なくとも1つのPCRプライマーおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、前記融合物による前記核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより増幅産物を生成する工程を含む、高pHにおける逆転写酵素PCRの方法。
【請求項10】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を有する、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項12】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、アミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含み、かつ低減されたDNA重合活性を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を有する、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項14】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、低減された塩基類似体検出活性およびV93部位における変異を含み、ここで前記変異は、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換、またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を有する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更にV93部位における変異を含み、ここで前記変異は前記キメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性の表現型を付与する、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換、またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更にV93部位における変異を含み、ここで前記変異は前記キメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性の表現型を付与する、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を更に有する、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項23】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とする、アミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項24】
低減された塩基類似体検出活性を有する前記DANポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とする、アミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項25】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、野生型、変異体、または化学修飾DNAポリメラーゼを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項26】
前記DNAポリメラーゼ融合物がプルーフリーディングポリメラーゼである、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項27】
前記プルーフリーディングポリメラーゼが、Pfu、KOD、Tgo、VentおよびDeepVentからなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更に、プロセシビティ、プルーフリーディング、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力、または塩耐性よりなる群から選択される、少なくとも1つの活性の増大を有するポリペプチドを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項29】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更に、室温におけるDNAポリメラーゼ活性、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅(翻訳)スリップ、PCR反応における伸長時間、またはPCR反応における増幅サイクルよりなる群から選択される、少なくとも1つの低減された活性を有するポリペプチドを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項30】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、バクテリオファージT7のチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメイン、古細菌PCNA結合ドメイン、PCNA、DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフ、またはDNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dよりなる群から選択される蛋白ドメインよりなる、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項31】
DNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;RT PCR;および線形または指数的PCR増殖からなる群から選択される方法を、高pHで実施するためのキット。
【請求項32】
更に高pH緩衝液を含む、請求項31記載のキット。
【請求項33】
更にPCR増強因子および/または添加剤を含む、請求項31記載のキット。
【請求項34】
DNA合成、高pHにおけるDNA合成産物のクローニング、DNA配列決定、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖、DNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液を含むRT−PCRのうち、何れか1つのための組成物。
【請求項35】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA合成緩衝液を含む、DNA合成のための組成物。
【請求項36】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNAクローニング緩衝液を含む、DNA合成産物のクローニングのための組成物。
【請求項37】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA配列決定緩衝液を含む、DNAを配列決定するための組成物。
【請求項38】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH PCR反応緩衝液を含む、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖のための、またはRT−PCRのための組成物。
【請求項39】
更にPCR増強因子および/または添加剤を含む、請求項34、35、36、37または38に記載の組成物。
【請求項1】
a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;および前記融合物を核酸鋳型と接触させ、ここで前記融合物がDNA合成を可能とすることを含む、高pHにおけるDNA合成のための方法。
【請求項2】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
a)DNAポリメラーゼ融合物を準備すること;
b)前記融合物を核酸鋳型と接触させること、ただしここで前記融合物はDNA合成を可能にして合成DNA産物を生成するものであること;および、
c)前記合成DNA産物をクローニングベクターに挿入すること;
を含む、高pHにおけるDNA合成産物のクローニングのための方法。
【請求項4】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
(a)鋳型DNA鎖を配列決定DNAプライマーに接触させること;
(b)工程(a)の前記DNAをDNAポリメラーゼ融合物、デオキシリボヌクレオシド三リン酸および鎖終止ヌクレオチド類似体(アナログ)と接触させること;
(c)前記第1のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団を合成するために十分な条件下で工程(b)の混合物をインキュベートすること、ただしここで前記合成されたDNA分子は前記第1のDNA分子よりも短いこと、そしてここで前記合成されたDNA分子はその5’末端において終止ヌクレオチドを含むこと;および、
(d)前記第1のDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部が決定できるようにサイズにより前記合成されたDNA分子を分離すること;
を含む、高pHにおいてDNAを配列決定するための方法。
【請求項6】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
核酸鋳型、少なくとも1つのPCRプライマーおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、前記融合物による前記核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより変異した増幅産物を生成することを含む、部位指向性またはランダムの変異誘発のための、高pHにおける線形または指数的PCR増幅の方法。
【請求項8】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
核酸鋳型、少なくとも1つのPCRプライマーおよびDNAポリメラーゼ融合物を含む反応混合物を、前記融合物による前記核酸鋳型の増幅を可能とする条件下でインキュベートすることにより増幅産物を生成する工程を含む、高pHにおける逆転写酵素PCRの方法。
【請求項10】
PCR増強因子および/または添加剤を更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を有する、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項12】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、アミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を含み、かつ低減されたDNA重合活性を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を有する、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項14】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、低減された塩基類似体検出活性およびV93部位における変異を含み、ここで前記変異は、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換、またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を有する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減された塩基類似体検出活性を含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更にV93部位における変異を含み、ここで前記変異は前記キメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性の表現型を付与する、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換、またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更にV93部位における変異を含み、ここで前記変異は前記キメラDNAポリメラーゼに低減された塩基類似体検出活性の表現型を付与する、バリンからアルギニンへの置換、バリンからグルタミン酸への置換、バリンからリジンへの置換、バリンからアスパラギン酸への置換またはバリンからアスパラギンへの置換である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を更に有する、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記DNAポリメラーゼ融合物が低減されたDNA重合活性を更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼに低減されたDNA重合表現型を付与するアミノ酸位置387におけるグリシンからプロリンへの置換(G387P)を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項23】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とする、アミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項24】
低減された塩基類似体検出活性を有する前記DANポリメラーゼ融合物が、前記キメラDNAポリメラーゼを3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損とする、アミノ酸141におけるアスパルテートからアラニンへの置換(D141A)およびアミノ酸位置143におけるグルタミン酸からアラニンへの置換(D141A/E143A)を更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項25】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、野生型、変異体、または化学修飾DNAポリメラーゼを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項26】
前記DNAポリメラーゼ融合物がプルーフリーディングポリメラーゼである、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項27】
前記プルーフリーディングポリメラーゼが、Pfu、KOD、Tgo、VentおよびDeepVentからなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更に、プロセシビティ、プルーフリーディング、忠実度、DNA結合活性、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合および認識、効率性、鋳型長増幅能力、GCリッチ標的増幅効率、特異性、熱安定性、内因性ホットスタート能力、または塩耐性よりなる群から選択される、少なくとも1つの活性の増大を有するポリペプチドを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項29】
前記DNAポリメラーゼ融合物が更に、室温におけるDNAポリメラーゼ活性、トリヌクレオチドリピートストレッチを有する鋳型上の増幅(翻訳)スリップ、PCR反応における伸長時間、またはPCR反応における増幅サイクルよりなる群から選択される、少なくとも1つの低減された活性を有するポリペプチドを含む、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項30】
前記DNAポリメラーゼ融合物が、バクテリオファージT7のチオレドキシンプロセシビティ因子結合ドメイン、古細菌PCNA結合ドメイン、PCNA、DNAトポイソメラーゼV由来の螺旋−ヘアピン−螺旋DNA結合モチーフ、またはDNA結合蛋白Sso7dまたはSac7dよりなる群から選択される蛋白ドメインよりなる、請求項1、3、5、7または9記載の方法。
【請求項31】
DNAポリメラーゼ融合物およびそのためのパッケージング材料を含む、DNA合成;DNA合成産物のクローニング;DNAの配列決定;RT PCR;および線形または指数的PCR増殖からなる群から選択される方法を、高pHで実施するためのキット。
【請求項32】
更に高pH緩衝液を含む、請求項31記載のキット。
【請求項33】
更にPCR増強因子および/または添加剤を含む、請求項31記載のキット。
【請求項34】
DNA合成、高pHにおけるDNA合成産物のクローニング、DNA配列決定、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖、DNAポリメラーゼ融合物および高pH緩衝液を含むRT−PCRのうち、何れか1つのための組成物。
【請求項35】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA合成緩衝液を含む、DNA合成のための組成物。
【請求項36】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNAクローニング緩衝液を含む、DNA合成産物のクローニングのための組成物。
【請求項37】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH DNA配列決定緩衝液を含む、DNAを配列決定するための組成物。
【請求項38】
DNAポリメラーゼ融合物および高pH PCR反応緩衝液を含む、部位指向性またはランダム変異誘発のための線形または指数的PCR増殖のための、またはRT−PCRのための組成物。
【請求項39】
更にPCR増強因子および/または添加剤を含む、請求項34、35、36、37または38に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11】
【図12】
【図13A−1】
【図13A−2】
【図13A−3】
【図13A−4】
【図13A−5】
【図13A−6】
【図13B−1】
【図13B−2】
【図13B−3】
【図13B−4】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B−1】
【図17B−2】
【図17B−3】
【図17B−4】
【図17B−5】
【図17C−1】
【図17C−2】
【図17C−3】
【図17C−4】
【図17C−5】
【図17D−1】
【図17D−2】
【図17D−3】
【図17D−4】
【図17E−1】
【図17E−2】
【図17E−3】
【図17E−4】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図17J】
【図17K】
【図17L】
【図17M−1】
【図17M−2】
【図17M−3】
【図17N】
【図17O】
【図17P】
【図17Q】
【図17R】
【図17S】
【図17T】
【図17U−1】
【図17U−2】
【図17U−3】
【図17U−4】
【図17U−5】
【図17U−6】
【図17V−1】
【図17V−2】
【図17V−3】
【図17V−4】
【図17V−5】
【図17V−6】
【図17W−1】
【図17W−2】
【図17W−3】
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【図17W−5】
【図17X−1】
【図17X−2】
【図17X−3】
【図17X−4】
【図17Y−1】
【図17Y−2】
【図17Y−3】
【図17Z】
【図17AA−1】
【図17AA−2】
【図17BB−1】
【図17BB−2】
【図17CC−1】
【図17CC−2】
【図17DD−1】
【図17DD−2】
【図17DD−3】
【図17EE】
【図17FF−1】
【図17FF−2】
【図17FF−3】
【図17GG】
【図17HH−1】
【図17HH−2】
【図17II−1】
【図17II−2】
【図17II−3】
【図17JJ−1】
【図17JJ−2】
【図17KK】
【図17LL−1】
【図17LL−2】
【図17MM】
【図17NN−1】
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【図17NN−4】
【図17NN−5】
【図17OO−1】
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【図17OO−3】
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【図17OO−5】
【図17PP−1】
【図17PP−2】
【図17PP−3】
【図17PP−4】
【図17QQ−1】
【図17QQ−2】
【図17QQ−3】
【図17QQ−4】
【図17RR】
【図17SS】
【図17TT】
【図17UU】
【図17VV】
【図17WW】
【図17XX】
【図17YY】
【図17ZZ】
【図17AAA】
【図17BBB】
【図17CCC】
【図17DDD】
【図17EEE】
【図17FFF−1】
【図17FFF−2】
【図17FFF−3】
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【図17FFF−5】
【図17GGG−1】
【図17GGG−2】
【図17GGG−3】
【図17GGG−4】
【図17HHH】
【図17III】
【図17JJJ】
【図17KKK】
【図17LLL】
【図17MMM】
【図17NNN】
【図17OOO】
【図17PPP】
【図17QQQ】
【図17RRR−1】
【図17RRR−2】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【図19−7】
【図19−8】
【図19−9】
【図19−10】
【図19−11】
【図20A】
【図20I】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11】
【図12】
【図13A−1】
【図13A−2】
【図13A−3】
【図13A−4】
【図13A−5】
【図13A−6】
【図13B−1】
【図13B−2】
【図13B−3】
【図13B−4】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B−1】
【図17B−2】
【図17B−3】
【図17B−4】
【図17B−5】
【図17C−1】
【図17C−2】
【図17C−3】
【図17C−4】
【図17C−5】
【図17D−1】
【図17D−2】
【図17D−3】
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【図17E−1】
【図17E−2】
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【図17F】
【図17G】
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【図17N】
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【図17V−1】
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【図17V−6】
【図17W−1】
【図17W−2】
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【図17W−4】
【図17W−5】
【図17X−1】
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【図17X−3】
【図17X−4】
【図17Y−1】
【図17Y−2】
【図17Y−3】
【図17Z】
【図17AA−1】
【図17AA−2】
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【図17BB−2】
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【図17DD−1】
【図17DD−2】
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【図17EE】
【図17FF−1】
【図17FF−2】
【図17FF−3】
【図17GG】
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【図17II−1】
【図17II−2】
【図17II−3】
【図17JJ−1】
【図17JJ−2】
【図17KK】
【図17LL−1】
【図17LL−2】
【図17MM】
【図17NN−1】
【図17NN−2】
【図17NN−3】
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【図17OO−1】
【図17OO−2】
【図17OO−3】
【図17OO−4】
【図17OO−5】
【図17PP−1】
【図17PP−2】
【図17PP−3】
【図17PP−4】
【図17QQ−1】
【図17QQ−2】
【図17QQ−3】
【図17QQ−4】
【図17RR】
【図17SS】
【図17TT】
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【図17XX】
【図17YY】
【図17ZZ】
【図17AAA】
【図17BBB】
【図17CCC】
【図17DDD】
【図17EEE】
【図17FFF−1】
【図17FFF−2】
【図17FFF−3】
【図17FFF−4】
【図17FFF−5】
【図17GGG−1】
【図17GGG−2】
【図17GGG−3】
【図17GGG−4】
【図17HHH】
【図17III】
【図17JJJ】
【図17KKK】
【図17LLL】
【図17MMM】
【図17NNN】
【図17OOO】
【図17PPP】
【図17QQQ】
【図17RRR−1】
【図17RRR−2】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【図19−7】
【図19−8】
【図19−9】
【図19−10】
【図19−11】
【図20A】
【図20I】
【公表番号】特表2006−521112(P2006−521112A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507492(P2006−507492)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/008875
【国際公開番号】WO2004/087868
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(302019809)ストラタジーン カリフォルニア (23)
【氏名又は名称原語表記】Stratagene California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/008875
【国際公開番号】WO2004/087868
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(302019809)ストラタジーン カリフォルニア (23)
【氏名又は名称原語表記】Stratagene California
【Fターム(参考)】
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